特許異議申立
2024-700973
粉体供給方法及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法
- 審判番号
- 2024-700973
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-502278
- 登録番号
- 7462608
- 請求日
- 2024年10月07日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】三上 敬史
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 橿本 英吾
- 審判官 河原 正
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (B29C) / P1651.121-Y (B29C) / P1651.537-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7462608号発明「粉体供給方法及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7462608号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7462608号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2021-502278号)は、2020年(令和2年)2月25日(先の出願に基づく優先権主張 平成31年(2019年)2月26日)を国際出願日とする国際出願であって、令和6年3月28日にその特許権の設定登録がされ、同年4月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和6年10月7日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対し、特許異議申立人 小松 一枝及び前田 和子(以下、両者をまとめて「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月14日に手続補正書(補正対象:特許異議申立書)が提出された。
第2 本件特許発明
特許第7462608号の請求項1~4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体の供給方法であって、
前記粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、下式を満たす、方法。
4≦(M/AS)≦135
【請求項2】
前記筒の軸と水平面とがなす角度が40~90°である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉体は容器に供給され、前記筒の下端の少なくとも一部は、前記容器の上部開口と同じ高さに位置する、又は、前記上部開口よりも下に位置している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粉を溶融混練装置のホッパに供給する工程と、前記熱可塑性樹脂粉以外の第2粉体を前記ホッパに供給する工程と、前記ホッパに供給された熱可塑性樹脂粉及び第2粉体を溶融及び混練して熱可塑性樹脂組成物を得る工程と、を含み、
前記熱可塑性樹脂粉を前記ホッパに供給する際に、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を用いる、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和6年10月7日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)
(1) 申立理由1(新規性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、優先権主張の基礎となった先の出願(以下、単に「先の出願」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
・請求項1~3:甲第1号証
(2) 申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
・請求項1~4:甲第1号証及び甲第2号証
2 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきである。
3 証拠方法
甲第1号証:「GRAVIMETRIC FEEDER」,株式会社クボタ,2019年2月2日
甲第2号証:特開平8-244026号公報
甲第3号証:伊藤光弘著,ポイント解説 粉粒体装置,2011年6月10日,第1版1刷発行,学校法人 東京電機大学 東京電機大学出版局,第128~131頁
甲第4号証:TRONOX社 酸化チタン,サンケミカル株式会社,2018年2月
(当合議体注:甲第4号証は、TRONOX社 酸化チタン,[online]、サンケミカル株式会社,2018年2月21日(作成),[令和6年10月25日検索],インターネット<URL:https://www.sun-chemical.co.jp/pdf/pickup1/titanium_201802.pdf>からも入手可能である。)
甲第5号証:水鳥正路 他,カーボンブラックの真比重,工業化学雑誌,第66巻,第12号,1963年,1757~1759頁,[online],インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1898/66/12/66_12_1757/_pdf>
(合議体注:「甲第1号証」を以下、「甲1」と略す。「甲第2号証」~「甲第5号証」についても以下同様。)
第4 合議体の判断
1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)
(1) 甲1に記載された事項
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
(ア) 6頁
「
[図:0001419372000001.jpg]
[図:0001419372000002.jpg]
[図:0001419372000003.jpg]
[図:0001419372000004.jpg]
[図:0001419372000005.jpg]
」
(イ) 26頁
「
[図:0001419372000006.jpg]
」
(ウ) 26頁
「
[図:0001419372000007.jpg]
」
(エ) 26頁(上記(ウ)中の画像)
「
[図:0001419372000008.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記ア(イ)~(エ)の甲1の26頁の記載(画像)より、甲1には、「フィーダへの原料投入」を筒により行う方法の発明として、次の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されているモノと認められる。
「以下の画像に示されるように、フィーダへの原料投入を、フィーダのホッパの蓋の開口に接続された筒により行う方法。
[図:0001419372000009.jpg]
」
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
(ア) 甲1方法発明の画像(上下方向等)及び技術常識から、甲1方法発明においては、「フィーダのホッパの蓋の開口に接続された筒」の上端から「原料」が供給されること、「筒内」を「原料」が流下すること、「筒」の下端から「原料」が排出されて、「フィーダ」の「ホッパ」に「原料」が「投入」されることは明らかである。
(イ) そうすると、甲1方法発明は、「筒」の上端から供給された「原料」を、「筒」内に流下させて「筒」の下端から排出させる「原料」の供給方法ということができる。
(ウ) 上記(イ)より、本件特許発明1と、甲1方法発明は、「筒の上端から供給された供給材料を、筒内に流下させて筒の下端から排出させる供給材料の供給方法」である点で共通するといえる。
イ 一致点及び相違点
上記アの対比結果を踏まえると、本件特許発明1と甲1方法発明は、
「筒の上端から供給された供給材料を、筒内に流下させて筒の下端から排出させる供給材料の供給方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「供給材料」が「粉体」であり、「前記粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに」、「式」「4≦(M/AS)≦135」「を満たす」のに対して、甲1方法発明においては、「供給材料」が「原料」であるものの、「粉体」とまでは特定されておらず、また、上記「式」も満たさない点。
ウ 判断
(ア) 新規性について
a 「GRAVIMETRIC FEEDER」のカタログである甲1には、例えば、「NX-S90DJ-MP」等のスクリュ式ウェイングフィーダ「NX-S」シリーズ(6頁)や、「CE-V-1D-MP」等の振動式ウェイングフィーダ「CE-V」シリーズ(14頁)など、多数のウェイングフィーダが掲載されてはいるが、筒によりフィーダへ原料として粉体を供給する際に、粉体の供給流量(M[kg/s])及び筒(管)の下端における筒の軸に垂直な断面の断面積(AS[m2])に着目し、4≦(M/AS)≦135を満たすように構成することについては記載も示唆もない。
また、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体の供給方法において、粉体の供給流量(M[kg/s])及び筒(管)の下端における筒の軸に垂直な断面の断面積(AS[m2])に着目し、4≦(M/AS)≦135を満たすように構成することが、当業者の技術常識ともいえない。
してみると、本件特許発明1と、甲1方法発明とは、相違点1において相違するから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。
(イ) 進歩性について
a 「GRAVIMETRIC FEEDER」のカタログである甲1の記載ついては、上記(ア)aで述べたとおりである。
そうすると、甲1方法発明において、原料を粉体とすることまでは、容易になし得たことということはできても、粉体の供給流量をM[kg/s]、筒の下端における筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、4≦(M/AS)≦135を満たす構成とする動機付けがない。
b また、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体の供給方法において、粉体の供給流量(M[kg/s])及び筒(管)の下端における筒の軸に垂直な断面の断面積(AS[m2])に着目し、4≦(M/AS)≦135を満たすように構成することは、特許異議申立人が提出した甲2~甲5には記載も示唆もされておらず、また、先の出願前に周知の技術であるということもできない。
c してみると、甲1発明において、粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、4≦(M/AS)≦135を満たす構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。
(ウ) 特許異議申立人の特許異議申立書における主張について
a 特許異議申立人は、特許異議申立書14頁下から13行~16頁最下行において、
本件特許発明1の「筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積As[m2]」について、当業者は、「筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積」が「粉体投入口の断面積」と同等であることを理解する、
甲第1号証の第6頁には、ウェイングフィーダNX-S90DJ-MPの外形寸法として、粉体投入口の直径が216.3mmであることが記載され、ウェイングフィーダNX-S90DJ-MPに接続される筒の断面積は3.7×10-2(m2)である蓋然性が高い、
本件特許発明1の「粉体の供給流量M[kg/s]について、甲第1号証の第6頁には、NX-S90DJ-MPの流量の最大値が2000[L/h]であることが記載されている、
甲第3号証の式(2-16)に記載されているように、スクリューフィーダの供給輸送量(供給流量)を算出するに際して、粉体のかさ密度を用いることが知られている、
甲第1号証の第6頁には、NX-Sの適応原料例として、酸化チタン、カーボンブラックおよび樹脂パウダが記載されており、甲第4号証には、二酸化チタンのかさ密度が0.6g/cm3または0.8g/cm3であることが記載されており、甲第5号証には、カーボンブラックのかさ密度が0.3~0.4g/mLと記載されており、本件特許発明の明細書段落【0039】には、樹脂パウダの一種であるポリプロピレンパウダのかさ密度が450kg/m3であることが記載されている、
そうすると、ウェイングフィーダNX-S90DJ-MPを用いて、かさ密度が600kg/m3である二酸化チタンを最大流量で供給する場合、流量は約3.3×10-1[kg/s]と算出され、かさ密度が800kg/m3である二酸化チタンを最大流量で供給する場合、流量は約4.4×10-1[kg/s]と算出され、かさ密度が300~400kg/m3であるカーボンブラックを最大流量で供給する場合、流量は約1.7×10-1~2.2×10-1[kg/s]と算出され、かさ密度が450kg/m3であるポリプロピレンパウダを最大流量で供給する場合、流量は2.5×10-1[kg/s]と算出される、
当業者は、甲第1号証に記載の流量が、筒から供給される粉体の供給流量に相当することを理解する、
以上より、甲第1号証において、本件特許発明1の「M/AS」に相当する「流量[kg/s]/「筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積[m2]」は、かさ密度が600kg/m3である二酸化チタンを最大流量で供給した場合では9.1となり、かさ密度が800kg/m3である二酸化チタンを最大流量で供給した場合では、12.1となり、かさ密度が300~400kg/m3であるカーボンブラックを最大流量で供給した場合では、4.5~6.0となり、かさ密度が450kg/m3であるポリプロピレンパウダを最大流量で供給した場合では6.8となり、いずれも、本件特許発明1の4≦(M/AS)≦135の範囲内であることは明らかである、
よって、本件特許発明1と、甲第1号証に記載された発明とは、同一の発明である、
と主張する。
b しかしながら、上記(ア)aで述べたように、「GRAVIMETRIC FEEDER」のカタログである甲1には、例えば、「NX-S90DJ-MP」等のスクリュ式ウェイングフィーダ「NX-S」シリーズ(6頁)や、「CE-V-1D-MP」等の振動式ウェイングフィーダ「CE-V」シリーズ(14頁)など、多数のウェイングフィーダが掲載されているが、甲1の記載からは、まとまりのある1つの技術思想として、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させて、スクリュ式ウェイングフィーダ「NX-S90DJ-MP」に粉体を供給する供給方法の発明が記載されているとまでは認識することはできない。
仮に、甲1の26頁の記載(画像)から理解される「フィーダへの原料投入」を筒により行う方法の発明におけるフィーダとして、スクリュ式ウェイングフィーダ「NX-S」シリーズの「NX-S90DJ-MP」に着目することができたとしても、その適応原料は、ペレット、シート粉砕品、グラスファイバ、炭酸カルシウム、カーボンファイバ、タルク、小麦粉、コーンスターチ等多数例示されていて、酸化チタン、カーボンブラックあるいは樹脂パウダに限られるわけではない。流量も、「50~2000L/h」の流量範囲内から選択されるものであって、最大流量での使用に限られるわけでもない。さらにいうと、二酸化チタンのかさ密度が、0.6g/cm3~0.8g/cm3に限られるものではなく、カーボンブラックのかさ密度が0.3~0.4g/mLに限られるわけでもなく、ポリプロピレンパウダのかさ密度が450kg/m3に限られるわけでもない。
そうすると、甲1には、甲1方法発明において、フィーダとして、「NX-S90DJ-MP」を選択し、原料として、上記特定のかさ密度の酸化チタン、上記特定のかさ密度範囲のカーボンブラックあるいは上記特定のかさ密度の樹脂パウダを選択し、かつ、流量として最大流量の2000L/hを選択する動機付けがない。
してみると、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるいうことはできないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるともいうことはできない。特許異議申立人が提出した甲2~甲5にも、相違点1に係る構成が記載も示唆もされていないことは、既に述べたとおりである。
そうすると、特許異議申立書における上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(オ) 小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。
また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3) 本件特許発明2~4について
本件特許発明2~4は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記(2)ウのとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない、または、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件特許発明2~4は、甲1に記載された発明であるということはできない、または、本件特許発明2~4は、甲1に記載された発明、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 申立理由3(サポート要件)
(1) 申立理由3(サポート要件)についての特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書25~26頁において、
発明が解決しようとする課題は「粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際における、粉体のつまりや飛散を抑制する」であるところ、明細書の段落【0033】-【0033】の記載によれば、当該課題は、粉体の供給流量をM[kg/s]、筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに4≦(M/AS)≦135を満たすことにより解決される、
ここで、気体中の粉体粒子の挙動は、粉体の種類や、大きさ、かさ密度等の様々なパラメータにより大きく影響されることが出願時の技術常識である、
しかし、請求項1-4では、粉体の種類や性状については特定されていない、本件特許発明の明細書において上記課題が解決され得ることが具体的に示されているのは、ポリプロピレンパウダ(平均粒子径750μm、密度950Kg/m3、かさ密度450kg/m3)、活性アルミナ(平均粒子径3mm、密度1600kg/m3、かさ密度860kg/m3)、透明化剤(凝集粒径270μm、かさ密度200kg/m3)を用いた場合のみであり、当業者は、4≦(M/AS)≦135を満たしされすれば、任意の種類および性状の粉体について上記課題が解決し得ることを認識できない、
したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1-4に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない、
さらに、粒子径の小さい粉体(微粉)は供給時に舞い上がりやすく、ホッパの気体出口から気体と共に飛び出しやすいことが出願時の技術常識である、
そのため、例えば甲第2号証では、微粉材料の舞い上がりを抑制するために、微粉材料を供給するための供給管をフィードホッパの内部に差し込み、供給管の開口端を材料供給口の近傍の二軸スクリュ間に位置させている(【請求項1】、【図1】を参照)、
粉体が高い位置から落下した場合、底に衝突した際のエネルギーは増加し、粉体が細かく粉砕され、発塵が増加することは技術常識である、
また、粉体が落下する際、周囲の空気を巻き込み、落下高さが大きいほど、巻き込まれる空気の量が増え、粉体の粒子が空気中に拡散しやすくなることも技術常識である、
よって、微粉の舞い上がりを抑制して気体出口からの飛び出しを抑制するためには、筒の下端は容器の上部開口(粉体入口)の位置よりも下に位置させることが必須である、
しかし、請求項3-4では、供給される材料の大きさは特定されておらず、筒の下端を容器(ホッパ)の上部開口と同じ高さに位置させた状態で微粉を供給する場合も含まれている、
この点、本件特許発明の明細書の実施例では、筒の下端を容器(ホッパ)の上部開口(粉体入口)よりも下に位置させた場合が示されているのみであり、筒の下端を上部開口と同じ高さに位置させた場合であっても上記課題が解決し得ることは示されていない、
したがって、請求項3-4は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。よって、本件特許発明の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとは言えない、
と主張する。
(2) サポート要件についての判断
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであると解される。
これを本件特許発明についてみると以下のとおりとなる。
イ 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
(ア) 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際、粉体が詰まって流れなかったり、供給後の粉体が大きく飛散したりすることがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際における、粉体のつまりや飛散を抑制する粉体供給方法を提供することを目的とする。」
(イ) 「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる方法は、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体供給方法であって、
前記粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、下式を満たす。
1.5≦(M/AS)≦135
【0007】
本発明によれば、粉体供給時の粉体のつまりや飛散が抑制される。
・・・略・・・
【0009】
また、前記粉体は容器に供給され、前記筒の下端の少なくとも一部は、前記容器の上部開口と同じ高さに位置する、又は、前記上部開口よりも下に位置していることができる。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、舞い上がった粉体が排気口などから排出される不具合や管の閉塞を回避することができる。」
(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0013】
・・・略・・・
【0022】
筒70は上端70t及び下端70bにそれぞれ開口を有する。下端70bは、ホッパ42の第1開口18Aと接続されている。具体的には、筒70の下端70bの少なくとも一部が第1開口(上部開口)同じ高さか、又は、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されている。好ましくは、筒70の下端70bの全部が、第1開口(上部開口)18Aと同じ高さか、又は、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されている。最も好ましいのは、筒70の下端70bの全部が、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されている、すなわち、下端70bの全体がホッパ42内に挿入されている態様である。
・・・略・・・
【0023】
(粉体供給方法及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
筒70の上端70tよりも上に、スクリューフィーダなどの公知の粉体搬送装置に配置し、上端70tに第1粉体を供給する。
【0024】
そして、筒70の上端70tから供給された第1粉体を、筒70内を流下させて筒70の下端70bから排出させることにより、ホッパ42に供給する。
【0025】
供給する第1粉体の種類に特段の限定はない。粉体の例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂粉、アルミナ、シリカ、等のセラミック粉、アルミニウム、鉄等の金属粉である。
【0026】
必要に応じて、第3開口18Cを介して、第2粉体を供給することができる。熱可塑性樹脂組成物を製造する際に使用される第2粉体の例は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等の添加剤である。
【0027】
第2粉体の供給流量は、第1粉体の供給流量よりも十分少なくすることができ、例えば、第1粉体の供給流量の1/10以下、あるいは、1/20以下であることができる・・・略・・・。
・・略・・・
【0029】
第1粉体および第2粉体の平均粒子径に特に限定は無いが、1.5mm以下であると効果が高い。平均粒子径は、篩法により測定した重量基準の粒度分布のD50とすることができる。なお、凝集した粒子の場合は、凝集粒径が1.5mm以下の原料に適用した場合に効果が高い。
特に、第1粉体の粒径が小さい場合(例えば、平均粒子径300μm以下)、あるいは、第1粉体の粒径が大きい場合であっても、第2粉体を供給する場合においては第2粉体の粒径が小さい場合(例えば、平均粒子径300μm以下)に、第2開口Bからの粒子の飛び出しが起こりやすく、本実施形態の効果が高い。
【0030】
粉体の粒子密度に特に限定は無いが、0.2g/cm3以上である場合、及び、凝集した粒子の場合はかさ密度が0.2g/cm3以上である場合に、効果が高い。
【0031】
筒70を介してホッパ42内に供給する粉体の供給流量Mが1kg/hr以上の場合に、粉体の飛散が多くなりやすいので効果が高い。
【0032】
本実施形態では、筒70を流下してホッパ42に供給される第1粉体の供給流量をM[kg/s]とし、筒70の下端70bにおける筒70の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、下式を満たす。
1.5≦(M/AS)≦135
(M/AS)の好ましい下限は2であってもよく、4であってもよく、10であってもよい。
(M/AS)の好ましい上限は100であり、より好ましい上限は50である。
(M/AS)の例は、1.0、1.1、1.8、2.1、2.7、2.9、4.5、6.8、7.1、16.7、20.4、21.8、52.4、87.1、108.9、130.6、130.6である。
【0033】
作用機序は明らかでないが、この供給方法によれば、筒70内における粉体のつまりを抑制しつつ、粉体の飛散を抑制することができる。筒70の断面の形状は問わず、略円形であってもよく、多角形であってもよい。
【0034】
ホッパ内に、第1粉体のみを供給する場合でも、第1粉体が小さい場合などには第1粉体の飛び出しは起こりうる。また、第3開口18C等から、第1粉体よりも軽い及び/又は粒径の小さい第2粉体を供給する場合には、第2開口18Bからの第2粉体の飛び出しが問題となりやすい。いずれの場合であっても、本実施形態によれば、飛散による粉体のロスを低減でき、複数原料粉を使用する場合には、組成のコントロールされた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。また、筒70における粉体のつまりも抑制され、安定した運転が可能となる。
・・・略・・・
【0036】
通常、添加剤の供給流量は、第1粉体の供給流量よりも十分少ない、例えば、1kg/hr未満である。しがたって、本実施形態に係る方法を、添加剤の供給に適用する必要性は低いが、ポリマーブレンドの製造時のように第2粉体の供給流量が第1粉体と同程度の場合には、第2粉体の供給に適用することも可能である。」
(エ) 「【0038】
(実施例)
表1に示すように、3つのサイズのホッパを用い、それぞれポリプロピレン粉体の供給流量Mと、筒の下端の断面積ASと、の組み合わせの条件を異ならせて、筒内に粉体を流下させ、溶融混練機のホッパに粉体を供給した。
【0039】
具体的には、図1に示すアルミ製ホッパー(β=60°)を用い、第3開口18Cを閉じ、クマエンジニアリング社製のスクリューフィーダを用いて、塩ビ製の筒70の上端70tから第一粉体を一定の供給流量Mで供給し、筒70の下端70bからホッパ42内に供給した。第一粉体には、ポリプロピレンパウダ(平均粒子径750μm、密度950kg/m3、かさ密度450kg/m3)、活性アルミナ(平均粒子径3mm、密度1600kg/m3、かさ密度860kg/m3)を使用した。第一粉体の供給と並行して、第3開口18Cから第2粉体として透明化剤(凝集粒径270μm、かさ密度200kg/m3)を供給流量M2でホッパ42内に供給した。
・・・略・・・
【0041】
熱可塑性樹脂組成物を分析し、ホッパ42内に供給した全粉体における第2粉体の質量濃度に対する、熱可塑性樹脂組成物における添加剤の質量濃度の比を、添加剤通過率として求めた。また、筒における粉体のつまりの有無(流下性)について評価した。結果を表1に示す。
【0042】
ホッパのサイズが互いに異なる3つの溶融混練機で実験を行うとともに、各溶融混練装置において、筒70の内径、すなわち、断面積ASと、粉体の供給流量Mとの組み合わせを異ならせて実験を行った。実験条件を表1に示す。
・・・略・・・
【0043】
【表1】
[図:0001419372000010.jpg]
【0044】
ここで、第一粉体の供給流量Mの単位を[kg/s]、筒70の下端70bの開口の断面積ASの単位を[m2]とした。」
(3) 本件特許発明の課題
上記(2)アによれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、「粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際における、粉体のつまりや飛散を抑制する粉体供給方法を提供する」(本件特許明細書の【0005】)ことであると認められる。
(4) 課題解決手段に係る本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び当該記載から理解される技術的事項
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0006】には、課題を解決する手段として、「本発明にかかる方法は、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体供給方法であって」、「前記粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに」、「1.5≦(M/AS)≦135」「を満たす」ことが記載され、
発明を実施するための形態として、同【0032】には、本実施形態では、1.5≦(M/AS)≦135を満たすこと、(M/AS)の好ましい下限は2であってもよく、4であってもよく、10であってもよく、(M/AS)の好ましい上限は100であり、より好ましい上限は50である、(M/AS)の例は、1.0、1.1、1.8、2.1、2.7、2.9、4.5、6.8、7.1、16.7、20.4、21.8、52.4、87.1、108.9、130.6、130.6であること、
同【0033】には、「作用機序は明らかでないが、この供給方法によれば、筒70内における粉体のつまりを抑制しつつ、粉体の飛散を抑制することができる。」こと、が記載されている。
また、筒70の下端70bの位置に関し、【0022】には、筒70の下端70bの少なくとも一部が第1開口(上部開口)同じ高さか、又は、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されていること、好ましくは、筒70の下端70bの全部が、第1開口(上部開口)18Aと同じ高さか、又は、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されていること、最も好ましいのは、下端70bの全体がホッパ42内に挿入されている態様であることが記載されている。
イ また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0038】~【0044】には、第1粉体として、ポリプロピレンパウダ粉体(平均粒子径750μm、密度950kg/m3、かさ密度450kg/m3)又は活性アルミナ(平均粒子径3mm、密度1600kg/m3、かさ密度860kg/m3)を使用し、第2粉体として透明化剤(凝集粒径270μm、かさ密度200kg/m3)を使用し、3つのサイズのホッパを用い、第1粉体の供給流量Mと、筒の下端の断面積ASと、の組み合わせの条件を異ならせて、筒内に粉体を流下させ、溶融混練機のホッパに粉体を供給した、M/ASがそれぞれ131.0、50.3、6.06及び2.06の実施例1~4が、その添加剤透過率(ホッパ内に供給した全粉体における第2粉体の質量濃度に対する、熱可塑性樹脂組成物における添加剤の質量濃度の比)がそれぞれ100、93、97、51.1となり、流下性が全て良好となって、M/ASが0.62、添加剤透過率が43、流下性が良好の比較例1、M/ASが0.55、添加剤透過率が39、流下性が良好の比較例2、及び、M/ASが139、流下性が悪い(筒上部に溜まり有り)比較例3と比較して、粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際における、粉体のつまりや飛散が抑制されている(流下性が良好、かつ透過率制御率が大きい)ことが、実施例と比較例との対比をもって具体的に示されている。
ウ そうすると、上記のア及びイの発明の詳細な説明の記載に基づけば、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させて粉体を供給する際に、粉体の供給流量をM[kg/s]、筒の下端における筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、1.5≦(M/AS)≦135とする、さらには4≦(M/AS)≦135とすることにより、上記(3)で述べた、「粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際における、粉体のつまりや飛散を抑制する粉体供給方法を提供する」との課題を解決できると、当業者は認識できる。
すなわち、粉体の種類、粒子径あるいは密度が特定されていなくても、1.5≦(M/AS)≦135を満たす構成とすることにより、そうしない場合(1.5≦(M/AS)≦135としない場合)と比較して、粉体のつまり及び飛散を抑制することができると、当業者は認識できる。
同様に、実施例が、筒の下端を容器(ホッパ)の上部開口(粉体入口)よりも下に位置させた場合であるとしても、上記のア及びイの発明の詳細な説明の記載に基づけば、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させて粉体を容器に供給する際に、筒の下端の少なくとも一部が、容器の上部開口よりも下に位置することが特定されていなくとも(あるいは、筒の下端を上部開口と同じ高さに位置させた場合であっても)、1.5≦(M/AS)≦135とすれば、粉体のつまり及び飛散を抑制することができると、当業者は認識できる。
エ 前記ウで述べた、発明の詳細な説明の記載等から理解される、課題を解決するための構成は、いずれも、本件特許発明1が具備する発明特定事項であるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。本件特許発明2~4についても同様である。
してみると、特許異議申立書における特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700973