審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2016-700844

化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法

審判番号
2016-700844
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-008335
登録番号
特許第5880584号(P5880584)
請求日
2016年09月09日
審決日
2018年03月05日
公報発行日
2018年06月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友化学株式会社
  • 【権利者代理人】田中 光雄
  • 【権利者代理人】山田 卓二
  • 【権利者代理人】森住 憲一
  • 【権利者代理人】梶田 真理奈
  • 【権利者代理人】中山 亨
  • 【権利者代理人】坂元 徹
  • 【異議申立人】小松 一枝
  • 【異議申立人】前田 知子
審判長/審判官
  • 審判長 中田 誠
  • 審判官 樋口 信宏
  • 審判官 清水 康司
分類
P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第44条、特許法第120条の5第7項、特許法第36条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5880584号発明「化合物,光学フィルム及び光学フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5880584号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第5880584号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続等の経緯 特許第5880584号発明の請求項1-請求項11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての特許出願(特願2014-8335号)は,特許法44条1項の規定に基づいて,もとの特許出願(特願2008-325289号)の一部を平成26年1月21日に新たな特許出願としたものである。また,もとの特許出願は,平成19年12月28日,平成20年3月18日及び同年7月2日に出願された,先の出願に基づく優先権の主張を伴って,同年12月22日にされた特許出願である。 本件特許について,平成28年2月12日に特許権の設定の登録,同年3月9日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である同年9月9日に,特許異議申立人小松一枝及び前田知子から特許異議の申立がされた(異議2016-700844号)。 その後の手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成28年11月25日付け:取消理由通知書 平成29年 1月26日付け:意見書(特許権者) 平成29年 4月12日付け:取消理由通知書 平成29年 6月15日付け:訂正請求書 平成29年 6月15日付け:意見書(特許権者) 平成29年 7月19日付け:意見書(特許異議申立人) 平成29年 8月10日付け:訂正拒絶理由通知書 平成29年 9月15日付け:手続補正書(特許権者) (平成29年6月15日付け訂正請求書を補正するもの) 平成29年 9月15日付け:意見書(特許権者) 平成29年10月12日付け:取消理由通知書(決定の予告) 平成29年12月15日付け:訂正請求書 (この訂正請求書による訂正の請求を,以下「本件訂正請求」という。) 平成29年12月15日付け:意見書(特許権者) 平成30年 2月13日付け:意見書(特許異議申立人) (この意見書を,以下「特許異議申立人意見書」という。) なお,平成29年6月15日付け訂正請求書による訂正の請求は,特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の趣旨及び訂正の内容 (1) 訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は,特許第5880584号の明細書及び特許請求の範囲を,本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1-請求項11について訂正することを求める,というものである。 (2) 訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正は,以下のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」と記載されているのを,「式(C)で表される基及び重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物」に訂正する。請求項1の記載を引用して記載された請求項2-請求項11についても,同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「厚みが0.1~10μmである光学フィルム。」と記載されているのを,「厚みが0.1~10μmであり,波長450nmの位相差値Re(450),波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が, Re(450)/Re(550)≦1.009,かつ 0.992≦Re(650)/Re(550) を満足する光学フィルム。」に訂正する。請求項1の記載を引用して記載された請求項2-請求項11についても,同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「R1,R2,R3及びR4は,それぞれ独立に,水素原子,フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す」と記載されているのを,「R1,R2,R3及びR4は,それぞれ独立に,水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す」に訂正する。請求項1の記載を引用して記載された請求項2-請求項11についても,同様に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「A1およびA2は,それぞれ独立に,2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。」と記載されているのを,「A1およびA2は,それぞれ独立に,2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。」に訂正する。請求項1の記載を引用して記載された請求項2-請求項11についても,同様に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に「kおよびlは,それぞれ独立に,0~3の整数を表す。」と記載されているのを,「kおよびlは,それぞれ独立に,1~3の整数を表す。」に訂正する。請求項1の記載を引用して記載された請求項2-請求項11についても,同様に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4に「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」と記載されているのを,「式(C)で表される基及び重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物」に訂正する。請求項4の記載を引用して記載された請求項5-請求項11についても,同様に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4に「R1,R2,R3及びR4は,それぞれ独立に,水素原子,フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す」と記載されているのを,「R1,R2,R3及びR4は,それぞれ独立に,水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す」に訂正する。請求項4の記載を引用して記載された請求項5-請求項11についても,同様に訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4に「A1およびA2は,それぞれ独立に,2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。」と記載されているのを,「A1およびA2は,それぞれ独立に,2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。」に訂正する。請求項4の記載を引用して記載された請求項5-請求項11についても,同様に訂正する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4に「kおよびlは,それぞれ独立に,0~3の整数を表す。」と記載されているのを,「kおよびlは,それぞれ独立に,1~3の整数を表す。」に訂正する。請求項4の記載を引用して記載された請求項5-請求項11についても,同様に訂正する。 コ 訂正事項10 (ア) 明細書の【0461】に「(実施例1)」と記載されているのを,「(実施例1)(比較)」に訂正する。 (イ) 明細書の【0466】に「(実施例4)」と記載されているのを,「(実施例4)(比較)」に訂正する。 (ウ) 明細書の【0471】に「(実施例9)」と記載されているのを,「(実施例9)(比較)」に訂正する。 (エ) 明細書の【0480】に「(実施例11)」と記載されているのを,「(実施例11)(参考)」に訂正する。 (オ) 明細書の【0487】に「(実施例12~28,比較例3)」と記載されているのを,「(実施例12~28,比較例3)(参考)」に訂正する。 2 訂正の適否 以下,本件訂正請求による訂正前の請求項1に係る発明を「訂正前発明1」といい,他の請求項及び訂正後についても同様にいう。 (1) 特許法120条の5第4項について 特許請求の範囲の請求項1~請求項11の引用関係からみて,本件訂正請求は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である,〔請求項1~請求項11〕ごとにされたものである。 (2) 訂正事項1-訂正事項5について 請求項1についてする訂正事項1-訂正事項5による訂正は,それぞれ, [1] 本件特許の願書に添付した明細書の【0180】,【0269】,【0272】,【0277】,【0328】,【0332】,【0341】及び【0428】の記載,並びに,棒状液晶化合物に関する当業者の技術常識に基づいて,訂正前発明1の「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」を,「式(C)で表される基及び重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物」に限定し, [2] 本件特許の願書に添付した明細書の【0165】,【0166】及び【0475】(表3)の実施例2に基づいて,訂正前発明1の「厚みが0.1~10μmである光学フィルム。」を,「厚みが0.1~10μmであり,波長450nmの位相差値Re(450),波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が,Re(450)/Re(550)≦1.009,かつ0.992≦Re(650)/Re(550)を満足する光学フィルム。」に限定し, [3] 訂正前発明1の「R1,R2,R3及びR4」が取り得る選択肢を減じ, [4] 訂正前発明1の「A1およびA2」が取り得る選択肢を減じ, [5] 訂正前発明1の「kおよびl」が取り得る選択肢を減じて, 訂正後発明1とするものである。また,請求項1の訂正に伴い連動して訂正されることになる請求項2-請求項11に係る発明についても,同様である。 したがって,訂正事項1-訂正事項5による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また,訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 (3) 訂正事項6-訂正事項9について 請求項4についてする訂正事項6-訂正事項9による訂正は,それぞれ, [6] 本件特許の願書に添付した明細書の【0180】,【0269】,【0272】,【0277】,【0328】,【0332】,【0341】及び【0428】の記載,並びに,棒状液晶化合物に関する当業者の技術常識に基づいて,訂正前発明6の「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」を,「式(C)で表される基及び重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物」に限定し, [7] 訂正前発明6の「R1,R2,R3及びR4」が取り得る選択肢を減じ, [8] 訂正前発明6の「A1およびA2」が取り得る選択肢を減じ, [9] 訂正前発明6の「kおよびl」が取り得る選択肢を減じて, 訂正後発明4とするものである。また,請求項4の訂正に伴い連動して訂正されることになる請求項5-請求項11に係る発明についても,同様である。 したがって,訂正事項6-訂正事項9による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また,訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 (4) 訂正事項10について 明細書についてする訂正事項10による訂正は,前記訂正事項2に伴い,「訂正後発明1」-「訂正後発明11」の発明の範囲に含まれないものとなる,実施例1,実施例4及び実施例9が,比較のためのものであることを明らかにするとともに,位相差値の測定波長が異なる実施例11-実施例28及び比較例3が,参考のためであることを明らかにするものである。 したがって,訂正事項10による訂正は,前記訂正事項2に伴い,発明の詳細な説明の記載が明瞭でないものとなることを避けることを目的としたものであるから,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。また,訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。そして,訂正事項10に係る訂正後の請求項を含む一群の請求項は,請求項1-請求項11であるところ,訂正事項10による訂正は,請求項1-請求項11について行われたものである。 (5) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は,概略,[A]特許権者は,訂正事項2による訂正の根拠として,本件特許の明細書に,各実施例の光学フィルムの波長分散特性が記載されていると説明するが,[B]この説明は,本件特許の明細書に訂正事項2の各部分に関する記載が散在しているというだけのものであり,広範な範囲に散在する事項を組み合わせて訂正事項2といったフィルムに関する特定の概念が導き出すことができることを立証するものではないから,[C]訂正事項2は,本件特許の明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であるということはできないと主張する。 しかしながら,本件訂正請求による訂正前の願書に添付した明細書の【0165】及び【0166】には,光学フィルムの波長分散特性を,よりフラットな波長分散特性,さらには逆波長分散特性を示す所望の位相差値を与えるように,化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定するという技術事項が開示されている。 そうしてみると,本件特許の明細書に記載された各実施例の光学フィルムの波長分散特性は,よりフラットな波長分散特性,さらには逆波長分散特性を示す所望の位相差値を与えるように,化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定した,例示的なものと解することができる。そして,訂正事項2による訂正は,よりフラットな波長分散特性,さらには逆波長分散特性を示す所望の位相差値の境界値を,本件特許の願書に添付した明細書の【0475】(表3)の実施例2の波長分散特性(Re(450)/Re(550)の値及びRe(650)/Re(550)の値)に基づいて,限定したものということができる。 したがって,特許異議申立人の主張は採用できない。 (6) 小括 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正(訂正事項1-訂正事項10による訂正)は,特許法120条の5第2項ただし書,同法同条第9項において準用する同法126条4項-6項の規定に適合する。また,本件訂正請求は,同法120条の5第4項の規定にも適合する。 よって,結論のとおり訂正することを認める。 第3 当合議体が通知した取消の理由について 1 本件特許発明について 前記「第2」のとおり,本件訂正請求による訂正は認められた。 したがって,本件特許の請求項1-請求項11に係る発明は,本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1-請求項11に記載された事項により特定されるとおりの,以下のものである(以下「本件特許発明1」-「本件特許発明11」といい,総称して「本件特許発明」という。)。 「【請求項1】 式(C)で表される基及び重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルムであって,厚みが0.1~10μmであり,波長450nmの位相差値Re(450),波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が, Re(450)/Re(550)≦1.009,かつ 0.992≦Re(650)/Re(550) を満足する光学フィルム。 -(B1-A1)k-E1-Ga-Da-Ara-Db-Gb-E2-(A2-B2)l- (C) [式(C)中,Araはベンゾチアゾール環を有する2価の基を表し,Ara基中の芳香環に含まれるπ電子の数Nπaは,12以上22以下である。 Da及びDbは,それぞれ独立に,単結合,-CO-O-,-O-CO-,-C(=S)-O-,-O-C(=S)-,-CR1R2-,-CR1R2-CR3R4-,-O-CR1R2-,-CR1R2-O-,-CR1R2-O-CR3R4-,-CR1R2-O-CO-,-O-CO-CR1R2-,-CR1R2-O-CO-CR3R4-,-CR1R2-CO-O-CR3R4-,-NR1-CR2R3-,-CR1R2-NR3-,-CO-NR1-,又は-NR1-CO-を表す。R1,R2,R3及びR4は,それぞれ独立に,水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。 Ga及びGbは,それぞれ独立に,2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4のフルオロアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく,該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は,-O-,-S-又は-NH-に置換されていてもよい。 E1およびE2は,それぞれ独立に,-CR5R6-,-CH2-CH2-,-O-,-S-,-CO-O-,-O-CO-,-O-CO-O-,-C(=S)-O-,-O-C(=S)-,-O-C(=S)-O-,-CO-NR5-,-NR5-CO-,-O-CH2-,-CH2-O-,-S-CH2-,-CH2-S-又は単結合を表す。R5及びR6は,それぞれ独立に,水素原子,フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。 B1およびB2は,それぞれ独立に,-CR5R6-,-CH2-CH2-,-O-,-S-,-CO-O-,-O-CO-,-O-CO-O-,-C(=S)-O-,-O-C(=S)-,-O-C(=S)-O-,-CO-NR5-,-NR5-CO-,-O-CH2-,-CH2-O-,-S-CH2-,-CH2-S-又は単結合を表す。 A1およびA2は,それぞれ独立に,2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1~4のアルキル基及び該炭素数1~4アルコキシ基に含まれる水素原子は,フッ素原子に置換されていてもよい。kおよびlは,それぞれ独立に,1~3の整数を表す。] 【請求項2】 Ara基中の芳香環に含まれるπ電子の数Nπaが,13以上22以下である請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項3】 Ga及びGbが,1,4-シクロヘキシレン基である請求項1又は2のいずれか記載の光学フィルム。 【請求項4】 式(C)で表される基及び重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物が,式(1)で表される化合物である請求項1~3のいずれか記載の光学フィルム。 P1-F1-(B1-A1)k-E1-G1-D1-Ar-D2-G2-E2-(A2-B2)l-F2-P2   (1) [式(1)中,Arはベンゾチアゾール環を有する2価の基を表し,Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数Nπは,12以上22以下である。 D1及びD2は,それぞれ独立に,*-O-CO-(*は,Arに結合する位置を表す),-C(=S)-O-,-O-C(=S)-,-CR1R2-,-CR1R2-CR3R4-,-O-CR1R2-,-CR1R2-O-,-CR1R2-O-CR3R4-,-CR1R2-O-CO-,-O-CO-CR1R2-,-CR1R2-O-CO-R3R4-,-CR1R2-CO-O-CR3R4-,-NR1-CR2R3-,-CR2R3-NR1-,-CO-NR1-,又は-NR1-CO-を表す。R1,R2,R3及びR4は,それぞれ独立に,水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。 G1及びG2は,それぞれ独立に,2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4のフルオロアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく,該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は,-O-,-S-又は-NH-に置換されていてもよい。 E1,E2,B1及びB2は,それぞれ独立に,-CR5R6-,-CH2-CH2-,-O-,-S-,-CO-O-,-O-CO-,-O-CO-O-,-C(=S)-O-,-O-C(=S)-,-O-C(=S)-O-,-CO-NR5-,-NR5-CO-,-O-CH2-,-CH2-O-,-S-CH2-,-CH2-S-又は単結合を表す。R5及びR6は,それぞれ独立に,水素原子,フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。 A1及びA2は,それぞれ独立に,2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4アルコキシ基,シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1~4のアルキル基及び該炭素数1~4アルコキシ基に含まれる水素原子は,フッ素原子に置換されていてもよい。 k及びlは,それぞれ独立に,1~3の整数を表す。 F1及びF2は,それぞれ独立に,炭素数1~12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は,炭素数1~5のアルキル基,炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく,該アルキレン基に含まれるメチレン基は,-O-又は-CO-に置換されていてもよい。 P1及びP2は,それぞれ独立に,水素原子又は重合性基(ただし,P1及びP2のうち少なくとも1つは,重合性基を表す)を表す。] 【請求項5】 波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113~163nmのλ/4板用である請求項1~4のいずれか記載の光学フィルム。 【請求項6】 波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250~300nmのλ/2板用である請求項1~4のいずれか記載の光学フィルム。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか記載の光学フィルム及び,偏光フィルムを含む偏光板。 【請求項8】 請求項1~6のいずれか記載の光学フィルムが,カラーフィルタ基板上に直接塗布された配向性ポリマー上に形成されてなるカラーフィルタ。 【請求項9】 請求項7に記載の偏光板を含む液晶パネルを備えるフラットパネル表示装置。 【請求項10】 請求項7に記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機EL表示装置。 【請求項11】 請求項8に記載のカラーフィルタを含む液晶表示装置。」 2 取消の理由の概要 平成29年10月12日付けで特許権者に通知した取消の理由は,概略,以下のとおりである。 取消理由1:本件特許発明の化合物は,AraやDa等が取り得る構造(選択肢)によっては,発明が解決しようとする課題を解決することができないものである。したがって,本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。 取消理由2:本件特許発明は,その最先の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物である甲1(特開2007-279705号公報)に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。したがって,本件特許は,同法29条2項の規定に違反してされたものであるから,取り消されるべきものである。 3 取消理由1(記載要件)について 本件特許発明の発明が解決しようとする課題に関して,発明の詳細な説明の【0004】には,「本発明の課題は,広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物を提供することである。」(以下「本件特許発明の課題」という。)と記載されている。 そこで,本件特許発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討すると,以下のとおりとなる。 本件特許の発明の詳細な説明には,実施例2,実施例3,実施例5-実施例8及び実施例10として,本件特許発明1の範囲に含まれる光学フィルムが記載されている(【0464】,【0465】,【0467】-【0470】,【0472】,【0474】及び【0475】)。ただし,これら実施例のAraに相当する基は,いずれも,2位に芳香環が結合するとともに4位と7位にDa及びDbが結合した,ベンゾチアゾ-ル環である。また,Araに結合する基についてみても,実施例のものは,以下のものである(当合議体注:「*」はAraとの結合位置を示す。以下「R-1基」という。)。 これに対して,本件特許発明1のAraは,2位に芳香環が結合するとともに4位と7位にDa及びDbが結合したベンゾチアゾ-ル環に限られるものではない。また,Araに結合する基も,R-1基に限られるものではない。 そうしてみると,本件特許発明1の範囲うち,Araが2位に芳香環が結合するとともに4位と7位にDa及びDbが結合したベンゾチアゾ-ル環であり,かつ,Araに結合する基がR-1基である発明を除く,他の発明については,発明の詳細な説明に,具体的実施例の記載がないものといえる。 しかしながら,本件特許発明1の化合物は,「ネマチック相を呈する化合物」とされている。したがって,当業者ならば,Araに結合する基を,化合物がネマチック相を呈するように(棒状に)設計することができる。また,本件特許発明1の光学フィルムは,その波長分散特性が「波長450nmの位相差値Re(450),波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が,Re(450)/Re(550)≦1.009,かつ0.992≦Re(650)/Re(550)を満足する」ものと規定されている。したがって,当業者ならば,Araの芳香環を,そのπ電子の拡がる方向を考慮しつつ設計する(例:AraをN-(2-ベンゾチアゾリル)フタルイミドとし,フタルイミド環の4位と7位にDa及びDbを結合させる)ことができる。 そうしてみると,本件特許発明1は,当業者が,出願時の技術常識に照らし本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 本件特許発明2~本件特許発明11についても,同様である。 したがって,取消理由1によっては,本件特許を取り消すことはできない。 4 取消理由2(進歩性)について (1) 甲1の記載 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。 ア 「【要約】 (修正有) 【課題】 薄型化が可能であり,且つ表示特性の良好な半透過型液晶表示装置を提供する。 【解決手段】 円盤状液晶性化合物又は棒状液晶性化合物を含有する重合性組成物を重合して形成された層を含有する光学異方性層11,17を少なくとも一層有することを特徴とする半透過型液晶表示装置である。」 イ 「【0001】 本発明は,反射領域と透過領域とを有する半透過型液晶表示装置に関する。 【背景技術】 …(省略)… 【0004】 このように,半透過型液晶表示装置は,反射型液晶表示装置や透過型液晶表示に比べて位相差層の使用枚数が多く,コストが上昇することや,セルの厚みが増大する等の不都合がある。また,用いられるλ/4板やλ/2板が可視光全域において性能を満足しないがために,色味つきが生じる等,視野角特性について問題がある。 …(省略)… 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献3及び4では,所定の光学特性を得るためにポリカーボネートの延伸フィルムを使用しているが,所定の光学特性を満足するためには,ポリカーボネートフィルムにはある程度の厚み(数十μmオーダー)が必要である。一方,半透過型液晶表示装置の用途である携帯電話等については,さらに薄型化に対する要請がある。 【0006】 本発明は,このような問題点を解決するものであり,薄型化が可能であり,且つ表示特性の良好な半透過型液晶表示装置を提供することを課題とする。」 ウ 「【発明の実施の形態】 …(省略)… 【0013】 [半透過型液晶表示装置] 本発明の半透過型液晶表示装置の一実施形態の概略断面図を図1に示す。 図1に示す半透過型液晶表示装置は,対向する2枚の透明基板12及び16と,該2枚の透明基板に挟まれた液晶材料からなる液晶層14とを有する液晶セルLC;液晶セルLCを挟んで配置された一対の偏光板10及び18;ならびに液晶セルLCと偏光板10及び18とのそれぞれの間に,光学異方性層11及び17を有する。」 (当合議体注:図1は以下の図である。) エ 「【0016】 光学異方性層11及び17は,後述する所定の式(I)もしくは(II)で表される化合物を含有する,又は式(I)もしくは(II)で表される化合物から誘導される繰り返し単位を含むポリマーを含有する層である。 そもそも半透過型液晶表示装置で,色相変化が生じる主原因は,位相差板などの光学異方性物質のもつレターデーションの波長分散特性にある。レターデーションの波長分散特性は,通常,波長が長くなるほどレターデーションが小さくなるもので,例えば,半透過型液晶表示装置でλ/4板は,直線偏光と円偏光を変換する機能を担うが,波長G(550nm)におけるレターデーションがλ/4の137.5nmのものを使った場合,波長R(600nm)に対してはそれより小さく,逆に波長B(450nm)に対してはそれよりも大きくなってしまう。この問題を解決するため,本実施形態では,面内レターデーションが逆波長分散特性(面内レターデーションが,可視光域の光に対して,波長が長波長であるほど大きくなる特性)をもつ所定の光学異方性物質を用いて形成された,λ/4板として機能する光学異方性層11及び17を用いている。 …(省略)… 【0022】 [液晶性化合物を含有する組成物からなる光学異方性層] 前記光学異方性層は,上記の様に,液晶表示装置の視野角を補償する光学異方性層として機能する。光学異方性層単独で充分な光学補償能を有する態様はもちろん,他の層(例えば,光学補償層や偏光板の保護フィルム)との組み合わせで光学補償に必要とされる光学特性を満足する態様も本発明でいう範囲に含まれる。 【0023】 前記光学異方性層は,少なくとも一つの液晶性化合物を含有する組成物から形成されることが好ましい。一般的に,液晶性化合物はその形状から,棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では,いずれの液晶性化合物を用いることもできるが,棒状液晶性化合物又は円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物,2種以上の円盤状液晶性化合物,又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから,反応性基を有する棒状液晶性化合物又は円盤状液晶性化合物を用いて形成するのがより好ましく,混合物の場合少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく,その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。前記光学異方性層の厚さは,0.1~20μmであることが好ましく,0.5~10μmであることがさらに好ましい。 【0024】 液晶化合物は通常,下記式(0)で表されるΔnの波長分散性を持たない。 式(0): Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0 式(0)を満足するΔnの波長分散性を発現させるためには,少なくとも2種類の吸収波長と遷移モーメントの方向を調整する必要がある。Δnは異常光の屈折率から常光の屈折率を差し引いた値であるため,異常光の屈折率の波長分散性よりも,常光の波長分散性が,より右肩下がり(右を長波長側,左を短波長側とおいたときのΔnの傾き)であれば,その差し引いた値は,式(0)を満足する。屈折率の波長分散性は,Lorentz-Lorenzの式で表されているように,物質の吸収に密接な関係があるため,常光の波長分散性をより右肩下がりにするためには,常光方向の吸収波長をより長波化できれば,式(0)を満たす分子を設計することができる。 【0025】 常光の方向は,例えば棒状液晶では分子の幅方向であり,そのような分子の幅方向の吸収遷移波長を長波化することは非常に困難なことである。吸収の遷移を長波化するためには,通常π共役系を広げることにより達成することが可能であるが,そのような方法を用いようとすると,分子の幅を広げることになり,液晶性は消失してしまうからである。 このような液晶性の低下を防ぐためには,William N. Thurms らが報告(Liquid Crystals,25巻,149頁,1998年)している2つの棒状液晶を側方方向でつないだ骨格を用いることが可能である。この骨格は,2つの棒状液晶をエチニル基で連結するため,棒状液晶を構成するベンゼン環のπ共役系がエチニル基のπ結合と共役した形(トラン骨格)となるため,液晶性を損なわずに分子の幅方向の吸収波長を長波化することができる。しかし,このトラン骨格は,分子の長軸方向(光軸方向)に対して,約60°しか傾いていないため,換言すれば吸収の遷移方向が約60°しか傾いていないため,常光方向の吸収波長だけでなく,異常光方向の吸収波長も長波化するため,結果として波長分散性にはほとんど寄与しない。 【0026】 常光の波長分散性のみをより右肩下がりにするためには,分子の長軸方向(光軸方向)に対して,好ましくは,吸収の遷移方向が70~90°さらに好ましくは,80~90°傾いている必要があることがわかった。傾き角が90°に近くなるほど,異常光方向の吸収がなくなるため,常光の波長分散性のみを右肩下がりにすることができ好ましい。 以上のように,異常光の屈折率に主に寄与する吸収の遷移よりも,常光の屈折率に主に寄与する吸収の遷移の方が長波長であり,且つ常光に主に寄与する吸収の遷移方向が分子の長軸方向(光軸方向)に対して,70~90°傾いている分子が好ましい。常光に主に寄与する吸収の遷移方向が分子の長軸方向(光軸方向)に対して,70~90°傾けるためには,6員環と奇数員環(3員環,5員環,7員環,9員環等)が縮環した部分構造を有することが好ましいことが分かった。 …(省略)… 【0030】 特に下記一般式(I')で表される液晶化合物が好ましい。 【0031】 【化6】 【0032】 一般式(I')中,L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表す。A1及びA2は各々独立に,-O-,-NR-(Rは水素原子又は置換基を表す。),-S-及び-CO-からなる群から選ばれる基を表す。R1,R2,R3,R4及びR5は各々独立に置換基を表す。nは0~2の整数を表す。 …(省略)… 【0036】 一般式(I)又は(I')において,R1は置換基であり,複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく,環を形成してもよい。置換基の例としては下記のものが適用できる。 【0037】 ハロゲン原子(例えば,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子),アルキル基(好ましくは炭素数1~30のアルキル基,例えば,メチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,tert-ブチル基,n-オクチル基,2-エチルヘキシル基),シクロアルキル基(好ましくは,炭素数3~30の置換又は無置換のシクロアルキル基,例えば,シクロヘキシル基,シクロペンチル基,4-n-ドデシルシクロヘキシル基),ビシクロアルキル基(好ましくは,炭素数5~30の置換又は無置換のビシクロアルキル基,つまり,炭素数5~30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば,ビシクロ[1,2,2]ヘプタン-2-イル基,ビシクロ[2,2,2]オクタン-3-イル基), 【0038】 アルケニル基(好ましくは炭素数2~30の置換又は無置換のアルケニル基,例えば,ビニル基,アリル基),シクロアルケニル基(好ましくは,炭素数3~30の置換又は無置換のシクロアルケニル基,つまり,炭素数3~30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば,2-シクロペンテン-1-イル,2-シクロヘキセン-1-イル基),ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基,好ましくは,炭素数5~30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基,つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば,ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-1-イル基,ビシクロ[2,2,2]オクト-2-エン-4-イル基),アルキニル基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換のアルキニル基,例えば,エチニル基,プロパルギル基), 【0039】 アリール基(好ましくは炭素数6~30の置換又は無置換のアリール基,例えばフェニル基,p-トリル基,ナフチル基),ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の,芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり,さらに好ましくは,炭素数3~30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば,2-フリル基,2-チエニル基,2-ピリミジニル基,2-ベンゾチアゾリル基),シアノ基,ヒドロキシル基,ニトロ基,カルボキシル基,アルコキシ基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のアルコキシ基,例えば,メトキシ基,エトキシ基,イソプロポキシ基,tert-ブトキシ基,n-オクチルオキシ基,2-メトキシエトキシ基),アリールオキシ基(好ましくは,炭素数6~30の置換又は無置換のアリールオキシ基,例えば,フェノキシ基,2-メチルフェノキシ基,4-tert-ブチルフェノキシ基,3-ニトロフェノキシ基,2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基), 【0040】 シリルオキシ基(好ましくは,炭素数3~20のシリルオキシ基,例えば,トリメチルシリルオキシ基,tert-ブチルジメチルシリルオキシ基),ヘテロ環オキシ基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基,1-フェニルテトラゾール-5-オキシ基,2-テトラヒドロピラニルオキシ基),アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基,炭素数2~30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基,炭素数6~30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基,例えば,ホルミルオキシ基,アセチルオキシ基,ピバロイルオキシ基,ステアロイルオキシ基,ベンゾイルオキシ基,p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基),カルバモイルオキシ基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基,例えば,N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基,N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基,モルホリノカルボニルオキシ基,N,N-ジ-n-オクチルアミノカルボニルオキシ基,N-n-オクチルカルバモイルオキシ基),アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基,例えばメトキシカルボニルオキシ基,エトキシカルボニルオキシ基,tert-ブトキシカルボニルオキシ基,n-オクチルカルボニルオキシ基),アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは,炭素数7~30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基,例えば,フェノキシカルボニルオキシ基,p-メトキシフェノキシカルボニルオキシ基,p-n-ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基), 【0041】 アミノ基(好ましくは,アミノ基,炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルアミノ基,炭素数6~30の置換又は無置換のアニリノ基,例えば,アミノ基,メチルアミノ基,ジメチルアミノ基,アニリノ基,N-メチル-アニリノ基,ジフェニルアミノ基),アシルアミノ基(好ましくは,ホルミルアミノ基,炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基,炭素数6~30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基,例えば,ホルミルアミノ基,アセチルアミノ基,ピバロイルアミノ基,ラウロイルアミノ基,ベンゾイルアミノ基),アミノカルボニルアミノ基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基,例えば,カルバモイルアミノ基,N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基,N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基,モルホリノカルボニルアミノ基),アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基,例えば,メトキシカルボニルアミノ基,エトキシカルボニルアミノ基,tert-ブトキシカルボニルアミノ基,n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基,N-メチルーメトキシカルボニルアミノ基),アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは,炭素数7~30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基,例えば,フェノキシカルボニルアミノ基,p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基,m-n-オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基), 【0042】 スルファモイルアミノ基(好ましくは,炭素数0~30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基,例えば,スルファモイルアミノ基,N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基,N-n-オクチルアミノスルホニルアミノ基),アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基,炭素数6~30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基,例えば,メチルスルホニルアミノ基,ブチルスルホニルアミノ基,フェニルスルホニルアミノ基,2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基,p-メチルフェニルスルホニルアミノ基),メルカプト基,アルキルチオ基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルチオ基,例えばメチルチオ基,エチルチオ基,n-ヘキサデシルチオ基),アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30の置換又は無置換のアリールチオ基,例えば,フェニルチオ基,p-クロロフェニルチオ基,m-メトキシフェニルチオ基),ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2~30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基,例えば,2-ベンゾチアゾリルチオ基,1-フェニルテトラゾール-5-イルチオ基), 【0043】 スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30の置換又は無置換のスルファモイル基,例えば,N-エチルスルファモイル基,N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基,N,N-ジメチルスルファモイル基,N-アセチルスルファモイル基,N-ベンゾイルスルファモイル基,N-(N'-フェニルカルバモイル)スルファモイル基),スルホ基,アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基,炭素数6~30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基,例えば,メチルスルフィニル基,エチルスルフィニル基,フェニルスルフィニル基,p-メチルフェニルスルフィニル基),アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基,炭素数6~30の置換又は無置換のアリールスルホニル基,例えば,メチルスルホニル基,エチルスルホニル基,フェニルスルホニル基,p-メチルフェニルスルホニル基), 【0044】 アシル基(好ましくはホルミル基,炭素数2~30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基,炭素数7~30の置換又は無置換のアリールカルボニル基,例えば,アセチル基,ピバロイルベンゾイル基),アリールオキシカルボニル基(好ましくは,炭素数7~30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基,例えば,フェノキシカルボニル基,o-クロロフェノキシカルボニル基,m-ニトロフェノキシカルボニル基,p-tert-ブチルフェノキシカルボニル基),アルコキシカルボニル基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基,例えば,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基,tert-ブトキシカルボニル基,n-オクタデシルオキシカルボニル基),カルバモイル基(好ましくは,炭素数1~30の置換又は無置換のカルバモイル基,例えば,カルバモイル基,N-メチルカルバモイル基,N,N-ジメチルカルバモイル基,N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基,N-(メチルスルホニル)カルバモイル基), 【0045】 アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6~30の置換又は無置換のアリールアゾ基,炭素数3~30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基,例えば,フェニルアゾ基,p-クロロフェニルアゾ基,5-エチルチオ-1,3,4-チアジアゾール-2-イルアゾ基),イミド基(好ましくは,N-スクシンイミド基,N-フタルイミド基),ホスフィノ基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換のホスフィノ基,例えば,ジメチルホスフィノ基,ジフェニルホスフィノ基,メチルフェノキシホスフィノ基),ホスフィニル基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換のホスフィニル基,例えば,ホスフィニル基,ジオクチルオキシホスフィニル基,ジエトキシホスフィニル基),ホスフィニルオキシ基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基,例えば,ジフェノキシホスフィニルオキシ基,ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基),ホスフィニルアミノ基(好ましくは,炭素数2~30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基,例えば,ジメトキシホスフィニルアミノ基,ジメチルアミノホスフィニルアミノ基),シリル基(好ましくは,炭素数3~30の置換又は無置換のシリル基,例えば,トリメチルシリル基,tert-ブチルジメチルシリル基,フェニルジメチルシリル基)を表わす。 …(省略)… 【0048】 R2,R3は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは置換もしくは無置換のベンゼン環,置換もしくは無置換のシクロヘキサン環である。より好ましくは置換基を有するベンゼン環,置換基を有するシクロヘキサン環であり,さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゼン環,4位に置換基を有するシクロヘキサン環である。」 オ 「【0053】 以下に,一般式(I)又は(I')で表される化合物の具体例を示すが,本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては,指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。 【0054】 【化8】 【0055】 【化9】 【0056】 【化10】 【0057】 【化11】 【0058】 【化12】 」 (2) 甲1発明 甲1の【0016】には,面内レターデーションが逆波長分散特性をもつ所定の光学異方性物質を用いて形成された,λ/4板として機能する光学異方性層が開示されている。また,【0023】には,光学異方性層は,少なくとも一つの液晶性化合物を含有する組成物から形成されることが開示されている。そして,【0055】には,例示化合物(53)が開示されている。 そうしてみると,甲1には,以下の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。 「 面内レターデーションが逆波長分散特性をもつ所定の光学異方性物質を用いて形成された,λ/4板として機能する光学異方性層であって, 前記光学異方性層は,少なくとも一つの液晶性化合物を含有する組成物から形成され, 前記液晶化合物は,次の例示化合物(53)である, 光学異方性層。」 (3) 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 光学フィルム 甲1発明の「光学異方性層」は,「面内レターデーションが逆波長分散特性をもつ所定の光学異方性物質を用いて形成された,λ/4板として機能する」ものである。したがって,甲1発明の「光学異方性層」が,光を透過しうること,薄膜といえること,複屈折を有することは,技術的にみて明らかである。 ここで,本件特許の発明の詳細な説明の【0160】には,「本発明の光学フィルムとは,光を透過し得るフィルムであって,光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは,屈折,複屈折などを意味する。」と記載されている。 以上勘案すると,甲1発明の「光学異方性層」は,本件特許発明の「光学フィルム」に相当する。 イ 化合物 甲1発明の「例示化合物(53)」は,メソゲン骨格を具備し,その両端部にスペーサ基を介してアクリロイル基(プロプ-2-エノイル)を含むから,重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物といえる。また,甲1発明の「光学異方性層」が,「例示化合物(53)」の重合により形成されることは,技術的にみて明らかである(甲1の【要約】の【解決手段】からも確認できる事項である。)。 そうしてみると,甲1発明の「光学異方性層」と本件特許発明1の「光学フィルム」は,「重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルム」の点で共通する。 (4) 一致点及び相違点 ア 一致点 本件特許発明1と甲1発明は,次の構成で一致する。 「重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルム。」 イ 相違点 本件特許発明1と甲1発明は,以下の点で相違する。 (相違点1) 本件特許発明1の「光学フィルム」は,「厚みが0.1~10μmであり,波長450nmの位相差値Re(450),波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が,Re(450)/Re(550)≦1.009,かつ0.992≦Re(650)/Re(550)を満足する」のに対して,甲1発明の「光学異方性層」は,「厚みが0.1~10μmである」とは限らず,また,その波長分散特性は明らかではない点。 (当合議体注:甲1の【0023】には,「光学異方性層の厚さは,0.1~20μmであることが好ましく,0.5~10μmであることがさらに好ましい。」と記載されている。また,「例示化合物(53)」は実施例では使用されておらず,波長分散特性は判らない。) (相違点2) 本願発明の「化合物」は,「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」であるのに対して,甲1発明の「例示化合物(53)」は,式(C)中のAraに対応する基は「ベンゾチアゾール環を有する2価の基」ではなく(「2-[シアノ(イソプロピルオキシカルボニル)メチレン]-1,3-ベンゾジチオール-4,7-ジイル基」であり),また,A1及びA2に対応する基は「2価の芳香族炭化水素基」ではない(「1,4-シクロヘキサンジイル基」である)点。 (5) 判断 事案に鑑みて,相違点2のうち,A1及びA2に関する相違点について検討する。 甲1発明の「例示化合物(53)」は,甲1の【0031】に記載の一般式(I’)を具体化したものである。また,【0048】には,一般式(I’)のR2及びR3が取り得るさらに好ましい選択肢として,「4位に置換基を有するシクロヘキサン環」が挙げられている。しかしながら,甲1には,シクロヘキサン環の4位に結合する置換基が,本件特許発明1のE1及びE2の要件を満たす連結基を介して接続される,2価の芳香族炭化水素基であって良いことは記載されておらず,示唆もない。また,甲1の【0054】-【0058】に記載の例示化合物をみても,そこにはGa及びGbに対応する基が2価の脂環式炭化水素基で,A1及びA2に対応する基が2価の芳香族炭化水素基のものは開示されていない(Ga,Gb,A1及びA2の全てが「1,4-シクロヘキサンジイル基」又は「1,4-ベンゼンジイル基」で統一されたもののみが開示されている。)。 そうしてみると,仮に,当業者が甲1発明の「例示化合物(53)」を,甲1の【0031】に記載の一般式(I’)に立ち帰って見直すこととし,かつ,一般式(I’)でいうR2及びR3として,甲1の【0048】に示唆された「4位に置換基を有するシクロヘキサン環」を採用することがあるとしても,その4位の置換基を,本件特許発明1のE1及びE2の要件を満たす連結基を介して接続される,2価の芳香族炭化水素基とすることまでは,思い到らないというべきである。 したがって,その余の相違点に係る本件特許発明1の構成ついて検討するまでもなく,本件特許発明1は,当業者が甲1発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。 (6) 本件特許発明2-本件特許発明11について 本件特許発明2-本件特許発明6の光学フィルムの化合物は,いずれも,相違点2のA1及びA2に関する本件特許発明1の構成を具備する。本件特許発明7は,本件特許発明1-本件特許発明6のいずれかの光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板であるから,相違点2のA1及びA2に関する本件特許発明1の構成を具備する。本件特許発明8のカラーフィルタ,本件特許発明9のフラットパネル表示装置,本件特許発明10の有機EL表示装置,及び本件特許発明11の液晶表示装置についても,同様に,相違点2のA1及びA2に関する本件特許発明1の構成を具備する。 そうしてみると,本件特許発明2-本件特許発明11も,本件特許発明1と同様に,当業者が甲1発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。 (7) 小括 以上のとおりであるから,取消理由2によっては,本件特許を取り消すことはできない。 第4 当合議体が通知しなかった取消の理由について 1 29条2項(甲1)について 取消事由1に関して,特許異議申立人は,概略,本件特許発明は,甲1発明の例示化合物(53)を,例示化合物(56),例示化合物(57),例示化合物(66)又は例示化合物(67)に置き換えた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも主張している。 (1) 甲1発明B 甲1発明の例示化合物(53)を,例示化合物(56)に置き換えた発明は,次のとおりである(以下「甲1発明B」という。)。 「 面内レターデーションが逆波長分散特性をもつ所定の光学異方性物質を用いて形成された,λ/4板として機能する光学異方性層であって, 前記光学異方性層は,少なくとも一つの液晶性化合物を含有する組成物から形成され, 前記液晶化合物は,次の例示化合物(56)である, 光学異方性層。」 (2) 一致点及び相違点相違点 ア 一致点 本件特許発明1と甲1発明Bを対比すると,同様の対比結果となるから,両者は,次の構成で一致する。 「重合性基を含み,ネマチック相を呈する化合物を重合してなる光学フィルム。」 イ 相違点 本件特許発明1と甲1発明Bは,以下の点で相違する。 (相違点1’) 本件特許発明1の「光学フィルム」は,「厚みが0.1~10μmであり,波長450nmの位相差値Re(450),波長550nmの位相差値Re(550)および波長650nmの位相差値Re(650)が,Re(450)/Re(550)≦1.009,かつ0.992≦Re(650)/Re(550)を満足する」のに対して,甲1発明Bの「光学異方性層」は,「厚みが0.1~10μmである」とは限らず,また,その波長分散特性は明らかではない点。 (相違点3) 本願発明の「化合物」は,「式(C)で表される基及び重合性基を含む化合物」であるのに対して,甲1発明Bの「例示化合物(56)」は,式(C)中のAraに対応する基は「ベンゾチアゾール環を有する2価の基」ではなく(「2-(ジシアノメチレン)-1,3-ベンゾジチオール-4,7-ジイル基」であり),また,Ga及びGbに対応する基は「2価の脂環式炭化水素基」ではない(「1,4-ベンゼンジイル基」である)点。 ウ 判断 相違点3について判断する。 前記「第3」4(5)で述べたとおり,仮に,当業者が甲1発明の「例示化合物(56)」を,甲1の【0031】に記載の一般式(I’)に立ち帰って見直すこととし,かつ,一般式(I’)でいうR2及びR3として,甲1の【0048】に示唆された「4位に置換基を有するシクロヘキサン環」を採用することがあるとしても,その4位の置換基を,本件特許発明1のE1及びE2の要件を満たす連結基を介して接続される,2価の芳香族炭化水素基とすることまでは,思い到らないというべきである。 (当合議体注:甲1に記載されている事項は,甲1の【0031】に記載の一般式(I’)でいうR2及びR3が,甲1の【0048】に記載された「4位に置換基を有するシクロヘキサン環」であってもよいという事項であって,甲1発明Bの「例示化合物56」における,本件特許発明1のGa及びGbに対応する基が,甲1の【0048】に記載された「4位に置換基を有するシクロヘキサン環」であっても良いという事項ではない。) したがって,その余の相違点に係る本件特許発明1の構成ついて検討するまでもなく,本件特許発明1は,当業者が甲1発明Bに基づいて容易に発明できたものであるということができない。 本件特許発明2-本件特許発明11についても同様である。また,甲1発明の例示化合物(53)を,例示化合物(57),例示化合物(66)又は例示化合物(67)に置き換えた場合についても,同様である。 (3) 小括 本件特許発明は,当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。 2 29条2項(甲2)について 特許異議申立人は,本件特許発明は,本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2(特開2006-284903号公報)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。また,特許異議申立人は,本件特許発明1の式(C)に関係する化合物として,甲2の【0118】の2段目に記載された,次の化合物を挙げている(以下「甲2化合物」という。)。 しかしながら,甲2化合物においては,本件特許発明1の式(C)のAraに対応する基(「2,2'-(p-フェニレン)ビスベンゾチアゾール-4,4',7,7'-テトライル基」,以下「Ara対応基」という。)の芳香環に含まれるπ電子の数Nπaは,本件特許発明1の「12以上22以下」の要件を満たさない(26個である。)。また,本件訂正により,式(C)のk及びlの選択肢から0が除かれたため,Ara対応基に連結する基(甲2化合物でいう「R」)も,本件特許発明1の要件を満たさないものとなった。そして,甲2の他の箇所を参照しても,上記甲2化合物における,Ara対応基や,Ara対応基に連結する基を,本件特許発明1の式(C)の要件を満たすものに替えることについて,具体的な記載や示唆がない。本件特許発明2-本件特許発明11についても,同様である。 したがって,本件特許発明は,当業者が甲2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。 第5 まとめ 以上のとおりであるから,当合議体が通知した取消の理由,及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては,本件特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700844

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決538件(住友化学株式会社、前田 知子、小松 一枝)
  • 2024-700972異議申立 / 2024-12-26 / 維持粉体貯留器、溶融混練機、及び、粉体貯留方法、及び、熱可塑性樹脂組成物の製造方法
    同じ当事者: 住友化学株式会社、前田 知子、小松 一枝
  • 2024-700973異議申立 / 2024-12-26 / 維持粉体供給方法及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法
    同じ当事者: 住友化学株式会社、前田 知子、小松 一枝
  • 2023-700641異議申立 / 2024-01-16 / 維持硬化性組成物、膜、積層体及び表示装置
    同じ当事者: 住友化学株式会社、前田 知子、小松 一枝
  • 2025-700969異議申立 / 2026-03-06 / 維持水電解用被覆膜
    同じ当事者: 前田 知子、小松 一枝
  • 2025-700847異議申立 / 2026-02-05 / 維持貸出管理システム、貸出管理方法、および貸出管理プログラム
    同じ当事者: 前田 知子、小松 一枝
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,888件(121・G02B、537・G02B)
  • 2025-700802異議申立 / 2026-03-30 / 訂正認容反射防止フィルム
    共通の審決分類: 121・G02B、537・G02B
  • 2025-700471異議申立 / 2026-03-24 / 訂正認容防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および…
    共通の審決分類: 121・G02B、537・G02B
  • 2025-700999異議申立 / 2026-02-16 / 維持光学フィルムおよび画像表示装置
    共通の審決分類: 121・G02B、537・G02B
  • 2024-701111異議申立 / 2026-01-27 / 維持反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
    共通の審決分類: 121・G02B、537・G02B
  • 2024-700176異議申立 / 2026-01-27 / 訂正認容フォトクロミック化合物、フォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及び眼鏡
    共通の審決分類: 121・G02B、537・G02B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存