審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700496

画像表示装置およびその製造方法

審判番号
2024-700496
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-007156
登録番号
7389656
請求日
2024年05月27日
審決日
2025年12月12日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人はるか国際特許事務所
  • 【権利者代理人】新宅 将人
  • 【異議申立人】寺澤 佳奈美
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 濱野 隆
分類
P1651.121-ZAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7389656号発明「画像表示装置およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7389656号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~15〕について訂正することを認める。 特許第7389656号の請求項1~5、8、9、11、13~15に係る特許を取り消す。 特許第7389656号の請求項6、7、10、12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7389656号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、令和2年1月20日(優先権主張 平成31年2月8日)の出願であって、令和5年11月21日にその特許権の設定登録がされ、同月30日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和6年5月27日に、特許異議申立人寺澤佳奈美(以下「申立人」という。)により請求項1~15に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 5月27日 : 申立人による特許異議の申立て 同年 9月19日付け: 取消理由通知書 同年11月22日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年12月18日付け: 手続補正指令書(方式) 令和7年 1月10日 : 特許権者による手続補正書(方式)の提出 同年 2月26日 : 申立人による意見書の提出 同年 3月27日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 5月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 「本件訂正請求書」という。)の提出 同年 7月29日 : 申立人による意見書の提出 以下、本件訂正請求書による訂正請求及び訂正をそれぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。 なお、本件訂正請求により、令和6年11月22日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。 第2 本件訂正について 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求めるものである。 2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~15の記載(特許権の設定登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 画像表示セル、および前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える画像表示装置であって、 前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムとを備え、 前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、 前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であり、 前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である、画像表示装置。 【請求項2】 前記位相差フィルムは、遅相軸方向に対して45°方向に張力を付与した際の、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上である、請求項1に記載の画像表示装置。 【請求項3】 前記位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす、請求項1または2に記載の画像表示装置。 【請求項4】 前記θ1が0±0.4°または90±0.4°の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項5】 前記位相差フィルムの面内レターデーションが200nm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項6】 前記位相差フィルムが、前記粘着剤層に接している、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項7】 前記粘着剤層の温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項8】 前記粘着剤層の厚みが25μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項9】 画像表示セルの表面に、偏光子と偏光子の面に配置された位相差フィルムとを備える偏光板が、粘着剤層を介して貼り合わせられている画像表示装置を製造する方法であって、 偏光子の一方の面に、波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムが積層され、前記位相差フィルム上に粘着剤層が付設された粘着剤付き偏光板を準備し、 前記粘着剤付き偏光板と画像表示セルとを、ラミネート圧0.05~0.4MPaで貼り合わせる、画像表示装置の製造方法。 【請求項10】 前記粘着剤層の温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5kPa/μm以上である、請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項11】 前記粘着剤層の厚みが25μm以下である、請求項9または10に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項12】 前記粘着剤付き偏光板において、前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせた後の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である、請求項9~11のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項13】 前記位相差フィルムの面内レターデーションが200nm以上である、請求項9~12のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項14】 前記位相差フィルムは、遅相軸方向に対して45°方向に張力を付与した際の、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上である、請求項9~13のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項15】 前記位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす、請求項9~14のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。」 3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~15の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 「 【請求項1】 画像表示セル、および前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える画像表示装置であって、 前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え、 前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、前記位相差フィルムが前記粘着剤層に接しており、 前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、 前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または 前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、 前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であり、 前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であり、 前記粘着剤層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であり、 前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である、画像表示装置。 【請求項2】 前記位相差フィルムは、遅相軸方向に対して45°方向に張力を付与した際の、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上である、請求項1に記載の画像表示装置。 【請求項3】 前記位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす、請求項1または2に記載の画像表示装置。 【請求項4】 前記θ1が0±0.4°または90±0.4°の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項5】 前記位相差フィルムの面内レターデーションが200nm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記粘着剤層の厚みが25μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像表示装置。 【請求項9】 画像表示セルの表面に、偏光子と偏光子の面に配置された位相差フィルムとを備える偏光板が、粘着剤層を介して貼り合わせられている画像表示装置を製造する方法であって、 偏光子の一方の面に、波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムが積層され、偏光子の他方の面に接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して第一透明保護フィルムが貼り合わせられ、前記位相差フィルムに接して粘着剤層が付設された粘着剤付き偏光板を準備し、 前記粘着剤付き偏光板と画像表示セルとを、ラミネート圧0.05~0.4MPaで貼り合わせ、 前記粘着剤付き偏光板において、 前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または 前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、 前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であり、 前記粘着剤層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であり、 前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせる前の前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせた後の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ0|が、0.4°以下である、 画像表示装置の製造方法。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 前記粘着剤層の厚みが25μm以下である、請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項12】(削除) 【請求項13】 前記位相差フィルムの面内レターデーションが200nm以上である、請求項9または11に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項14】 前記位相差フィルムは、遅相軸方向に対して45°方向に張力を付与した際の、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上である、請求項9,11および13のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項15】 前記位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす、請求項9,11,13および14のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。」 4 本件訂正の内容 本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕及び〔9~15〕について訂正するものであり、その内容は、以下に示す特許請求の範囲の記載に係る訂正事項1~11(このうち訂正事項1~4は一群の請求項〔1~8〕に係るものであり、訂正事項5~11は一群の請求項〔9~15〕に係るものである。)と明細書の記載に係る訂正事項12~14からなる。 (1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正) 請求項1の記載に係る訂正事項1は、次のアからオまでに示す訂正事項1-1から訂正事項1-5までからなる。 ア 訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムとを備え、」 (イ) 訂正後の記載 「前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え、」 イ 訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、」 (イ) 訂正後の記載 「前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、前記位相差フィルムが前記粘着剤層に接しており、」 ウ 訂正事項1-3 特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項1-2により付加した「前記位相差フィルムが前記粘着剤層に接しており、」との記載の後に、次の記載を付加する訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。 「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、」 エ 訂正事項1-4 特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項1-3により付加した記載と「前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であり、」との記載の間に、次の記載を付加する訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。 「前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であり、」 オ 訂正事項1-5 特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であり、前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、」 (イ) 訂正後の記載 、「前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であり、前記粘着剤層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であり、前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、」 (2) 訂正事項2(請求項6の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (3) 訂正事項3(請求項7の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (4) 訂正事項4(請求項8の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1~7のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項1~5のいずれか1項に記載の」に訂正する。 (5) 訂正事項5(請求項9の記載に係る訂正1) 請求項9の記載に係る訂正事項5は、次のアからオまでに示す訂正事項5-1から訂正事項5-5までからなる。 ア 訂正事項5-1 特許請求の範囲の請求項9の次の(ア)に示す訂正前の記載を後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項11、13~15も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「偏光子の一方の面に、波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムが積層され、前記位相差フィルム上に粘着剤層が付設された粘着剤付き偏光板を準備し、」 (イ) 訂正後の記載 「偏光子の一方の面に、波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムが積層され、偏光子の他方の面に接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して第一透明保護フィルムが貼り合わせられ、前記位相差フィルムに接して粘着剤層が付設された粘着剤付き偏光板を準備し、」 イ 訂正事項5-2 特許請求の範囲の請求項9の次の(ア)に示す訂正前の記載を後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項11、13~15も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「前記粘着剤付き偏光板と画像表示セルとを、ラミネート圧0.05~0.4MPaで貼り合わせる、」 (イ) 訂正後の記載 「前記粘着剤付き偏光板と画像表示セルとを、ラミネート圧0.05~0.4MPaで貼り合わせ、前記粘着剤付き偏光板において、前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、」 ウ 訂正事項5-3 特許請求の範囲の請求項9において、上記訂正事項5-2により付加した記載の後に、次の記載を付加する訂正を行う(請求項9の記載を引用する請求項11、13~15も同様に訂正する。)。 「前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であり、」 エ 訂正事項5-4 特許請求の範囲の請求項9において、上記訂正事項5-3により付加した記載の後に、次の記載を付加する訂正を行う(請求項9の記載を引用する請求項11、13~15も同様に訂正する。)。 「前記粘着剤層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であり、」 オ 訂正事項5-5 特許請求の範囲の請求項9において、上記訂正事項5-4により付加した記載と「画像表示装置の製造方法。」との記載の間に、次の記載を付加する訂正を行う(請求項9の記載を引用する請求項11、13~15も同様に訂正する。)。 「前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせる前の前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせた後の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ0|が、0.4°以下である、」 (6) 訂正事項6(請求項10の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (7) 訂正事項7(請求項11の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項11において、「請求項9または10に記載の」と記載されているのを「請求項9に記載の」に訂正する。 (8) 訂正事項8(請求項12の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (9) 訂正事項9(請求項13の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項13において、「請求項9~12のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項9または11に記載の」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (10) 訂正事項10(請求項14の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項14において、「請求項9~13のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項9,11および13のいずれか1項に記載の」に訂正する(請求項14の記載を引用する請求項15も同様に訂正する。)。 (11) 訂正事項11(請求項15の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項15において、「請求項9~14のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項9,11,13および14のいずれか1項に記載の」に訂正する。 (12) 訂正事項12(明細書の段落【0015】の記載に係る訂正) 明細書の段落【0015】における「|θ1-θ2|」との記載を、「|θ1-θ0|」に訂正する。 (13) 訂正事項13(明細書の段落【0018】の記載に係る訂正) 明細書の段落【0018】における次の(ア)に示す訂正前の記載を後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する。 (ア) 訂正前の記載 「偏光子と画像表示セルの間に位相差フィルムが配置されている画像表示装置としては、液晶表示装置および有機EL表示装置が挙げられる」 (イ) 訂正後の記載 「偏光子と画像表示セルの間に位相差フィルムが配置されている画像表示装置としては、液晶表示装置および有機EL表示装置が挙げられる。」 (14) 訂正事項14(明細書の段落【0073】の記載に係る訂正) 明細書の段落【0073】における「|θ1-θ2|」との記載を、「|θ1-θ0|」に訂正する。 第3 本件訂正の適否についての当合議体の判断 1 訂正の目的 (1) 訂正事項1 ア 訂正事項1-1 訂正事項1-1に係る訂正は、「偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムとを備え[る]」「偏光板」の構成を、さらに「偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え[る]」構成に限定するものである。 したがって、訂正事項1-1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項1-2 訂正事項1-2に係る訂正は、「前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置され[た]」「位相差フィルム」の構成を、「前記位相差フィルムが前記粘着剤層に接して[いる]」構成に限定するものである。 したがって、訂正事項1-2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 ウ 訂正事項1-3 訂正事項1-3に係る訂正は、「偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムとを備え[る]」「偏光板」の構成を、「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられて」いる構成に限定するとともに、次の構成に限定するものである。 「前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられている」又は 「前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられて[いる]」構成。 したがって、訂正事項1-3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 エ 訂正事項1-4 訂正事項1-4に係る訂正は、「偏光子」が「ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であ[る]」ことを限定するものである。 したがって、訂正事項1-4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 オ 訂正事項1-5 訂正事項1-5に係る訂正は、「粘着剤層」について「前記粘着剤層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であ[る]」ことを限定するものである。 したがって、訂正事項1-5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (2) 訂正事項2 訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3) 訂正事項3 訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項7を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (4) 訂正事項4 訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項8における「請求項1~7のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項1~5のいずれか1項に記載の」に訂正して、請求項8が引用する請求項から請求項6、7を除外するものである。 当該訂正は、訂正事項2、3により請求項6、7を削除したこととの整合を図るものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (5) 訂正事項5 ア 訂正事項5-1 訂正事項5-1に係る訂正は、「偏光子」について「他方の面に接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して第一透明保護フィルムが貼り合わせられ[る]」ことを限定し、かつ「位相差フィルム」と「粘着剤層」について「前記位相差フィルムに接して粘着剤層が付設された」ものであることを限定するものである。 したがって、訂正事項5-1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項5-2 訂正事項5-2に係る訂正は、「粘着剤付き偏光板」の構成を、次の構成に限定するものである。 「前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられている」又は 「前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられて[いる]」構成。 したがって、訂正事項5-2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 ウ 訂正事項5-3 訂正事項5-3に係る訂正は、「偏光子」が「ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であ[る]」ことを限定するものである。 したがって、訂正事項5-3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 エ 訂正事項5-4 訂正事項5-4に係る訂正は、「粘着剤層」について「前記粘着剤層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であ[る]」ことを限定するものである。 したがって、訂正事項5-4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 オ 訂正事項5-5 訂正事項5-5に係る訂正は、「偏光子」と「位相差フィルム」について、「前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせる前の前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせた後の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ0|が、0.4°以下である」ことを限定するものである。 したがって、訂正事項5-5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (6) 訂正事項6 訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項10を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (7) 訂正事項7 訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項11における「請求項9または10に記載の」と記載されているのを「請求項9に記載の」に訂正して、請求項11が引用する請求項から請求項10を除外するものである。 当該訂正は、訂正事項6により請求項10を削除したこととの整合を図るものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (8) 訂正事項8 訂正事項8に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項12を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (9) 訂正事項9 訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項13における「請求項9~12のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項9または11に記載の」に訂正して、請求項13が引用する請求項から請求項10、12を除外するものである。 当該訂正は、訂正事項6、8により請求項10、12を削除したこととの整合を図るものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (10) 訂正事項10 訂正事項10に係る訂正は、訂正前の請求項14における「請求項9~13のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項9,11および13のいずれか1項に記載の」に訂正して、請求項14が引用する請求項から請求項10、12を除外するものである。 当該訂正は、訂正事項6、8により請求項10、12を削除したこととの整合を図るものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (11) 訂正事項11 訂正事項11に係る訂正は、訂正前の請求項15における「請求項9~14のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項9,11,13および14のいずれか1項に記載の」に訂正して、請求項15が引用する請求項から請求項10、12を除外するものである。 当該訂正は、訂正事項6、8により請求項10、12を削除したこととの整合を図るものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (12) 訂正事項12 訂正事項12に係る訂正は、訂正前の段落【0015】に「|θ1-θ2|」と記載されていたものを「|θ1-θ0|」に訂正するものである。 ここで、同段落には、当該「|θ1-θ2|」の前に「画像表示セルと貼り合わせる前の粘着剤付き偏光板における、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、粘着剤付き偏光板を画像表示セルと貼り合わせた後の偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値」と記載されているところ、当該「|θ1-θ2|」が「|θ1-θ0|」の誤記であることは、当業者にとって明らかである。 したがって、訂正事項12に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。 (13) 訂正事項13 訂正事項13に係る訂正は、訂正前の明細書段落【0018】における「偏光子と画像表示セルの間に位相差フィルムが配置されている画像表示装置としては、液晶表示装置および有機EL表示装置が挙げられる」との記載において、脱落していた文末の句点を加筆する訂正である。 したがって、訂正事項13に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。 (14) 訂正事項14 訂正事項14に係る訂正は、訂正前の段落【0073】に「|θ1-θ2|」と記載されていたものを「|θ1-θ0|」に訂正するものである。 ここで、同段落には、当該「|θ1-θ2|」の前に「貼り合わせ前後の軸角度の変化量」と記載されているが、訂正前の段落【0051】に「軸角度の変化量は、粘着剤層39を介して偏光板36を画像表示セルに貼り合わせた状態における偏光子31の吸収軸方向と位相差フィルム35の遅相軸方向とのなす角度θ1と、貼り合わせ前における両者の角度θ0との差である」と記載されているところ、当該「貼り合わせ前後の軸角度の変化量」に相当する式として記載された「|θ1-θ2|」が「|θ1-θ0|」の誤記であることは、当業者にとって明らかである。 したがって、訂正事項14に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。 2 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無 (1) 訂正事項1 ア 訂正事項1-1 (ア) 訂正事項1-1において、「偏光子」が「偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え[る]」と訂正することは、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0027】(下線は合議体が付した。以下、同様)に基づくものであるから、訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 「【0027】 第一偏光板36では、偏光子31の両面に透明保護フィルム33,35が貼り合わせられている。第二偏光板56では、偏光子51の両面に透明保護フィルム53,55が貼り合わせられている。」 (イ) また、訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 イ 訂正事項1-2 (ア) 訂正事項1-2において、「位相差フィルム」が「前記粘着剤層に接して[いる]」と訂正することは、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0082】に基づくものであるから、訂正事項1-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 「【0082】 <偏光板の作製> 厚み18μmのポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に厚み40μmの二軸延伸アクリルフィルム、他方の面に上記の積層体の位相差フィルムA側の面を、紫外線硬化型の接着剤介して貼り合わせた。貼り合わせには、ロールラミネータを用い、紫外線を照射して接着剤を硬化させた。その後、支持体フィルムとして用いたポリプロピレンフィルムを剥離し、位相差フィルムA側に、上記で作成した粘着シートを積層して、偏光子の一方の面にアクリル系フィルム、他方の面に位相差フィルムAを備え、位相差フィルムA側の面に粘着剤層を備える粘着剤付き偏光板を得た。」 (イ) また、訂正事項1-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項1-3 (ア) 訂正事項1-3において、「偏光板」が「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられて[いる]」と訂正することは、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0029】及び【0042】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合る。 「【0029】 偏光子31,51と透明保護フィルム33、35,53,55とは、接着剤や粘着剤(不図示)を介して貼り合わせられる。偏光子と透明保護フィルムとの貼り合わせに用いられる接着剤や粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。」 「【0042】 [粘着剤付き偏光板] 偏光子31の一方の面の透明保護フィルム35として位相差フィルムを貼り合わせることにより、偏光板が得られる。偏光子31上に透明保護フィルム35として光学等方性フィルムを貼り合わせ、透明保護フィルム35に、適宜の接着剤または粘着剤を介して位相差フィルムを貼り合わせてもよい。偏光子31の他方の面には、透明保護フィルム33が貼り合わせられる。透明保護フィルム33は省略してもよい。透明保護フィルム33を省略する場合、偏光板36は、偏光子の片面のみに透明保護フィルム35を備える。」 (イ) また、訂正事項1-3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 エ 訂正事項1-4 (ア) 訂正事項1-4において、「偏光子」が「ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であ[る]」と訂正することは、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0025】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 「【0025】 中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。」 (イ) また、訂正事項1-4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 オ 訂正事項1-5 訂正事項1-5において、「粘着剤層」が「温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であ[る]」と訂正することは、訂正前の請求項7の記載及び次に摘記する本件特許の明細書の段落【0054】及び【0055】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 「【0054】 粘着剤層39の温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが大きいほど(粘着剤層が硬くて薄いほど)、粘着剤層を介して偏光板を画像表示セルに貼り合わせた状態における軸角度のズレ量が小さくなる傾向がある。粘着剤層39は、G’/Dが5.0kPa/μm以上であることが好ましく、5.2kPa/μm以上であることがより好ましい。G’/Dが過度に大きい場合は、接着保持力が低下し、貼り合わせ界面への気泡の混入等の貼り合わせ不良が生じる場合がある。そのため、粘着剤層39はG’/Dが28kPa/μm以下であることが好ましく、25kPa/μm以下であることがより好ましい。 【0055】 粘着剤層39の厚みDは、5~25μmが好ましく、7~20μmがより好ましい。粘着剤層39の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、50kPa以上が好ましく、60~250kPaがより好ましく、70~200kPaがさらに好ましい。」 (イ) また、訂正事項1-5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2 訂正事項2の訂正は、本件訂正前の請求項6を削除するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (3) 訂正事項3 訂正事項3の訂正は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (4) 訂正事項4 訂正事項4の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (5) 訂正事項5 ア 訂正事項5-1 (ア) 訂正事項5-1において、「偏光子」について「他方の面に接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して第一透明保護フィルムが貼り合わせられ」、かつ「位相差フィルム」と「粘着剤層」について「前記位相差フィルムに接して粘着剤層が付設された」ものであると訂正することは、本件特許の明細書の段落【0011】の記載、前記(1)アで摘記した本件特許の明細書の段落【0027】の記載、前記(1)イで摘記した本件特許の明細書の段落【0082】の記載及び前記(1)ウで摘記した段落【0029】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項5-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 「【0011】 偏光子の一方の面に、波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムが積層され、位相差フィルム上に粘着剤層が付設された粘着剤付き偏光板を、画像表示セルに貼り合わせることにより、画像表示装置が形成される。粘着剤付き偏光板において、位相差フィルムが粘着剤層に接していてもよい。」 (イ) また、訂正事項5-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 イ 訂正事項5-2 (ア) 訂正事項5-2において、「粘着剤付き偏光板」について「前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられて[いる]」と訂正することは、前記(3)で摘記した本件特許の明細書の段落【0029】及び【0042】の記載に基づくものであるから、訂正事項5-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (イ) また、訂正事項5-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項5-3 (ア) 訂正事項5-3において、「偏光子」が「ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニルアルコール系偏光子であ[る]」と訂正することは、前記(4)で摘記した段落【0025】の記載に基づくものであるから、訂正事項5-3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (イ) また、訂正事項5-3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 エ 訂正事項5-4 (ア) 訂正事項5-4において、「粘着剤層」が「温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kPa/μm以上であ[る]」と訂正することは、訂正前の請求項10の記載及び前記(5)で摘記した段落【0054】及び【0055】の記載に基づくものであるから、訂正事項5-4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (イ) また、訂正事項5-4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 オ 訂正事項5-5 (ア) 訂正事項5-5において、「偏光子」と「位相差フィルム」について「前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせる前の前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせた後の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ0|が、0.4°以下である」との訂正は、訂正前の請求項12の記載及び次に摘記する本件特許の明細書の段落【0015】の記載に基づくものであるから、訂正事項5-5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 「【0015】 画像表示セルと貼り合わせる前の粘着剤付き偏光板における、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、粘着剤付き偏光板を画像表示セルと貼り合わせた後の偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ2|は、0.4°以下であることが好ましい。また、画像表示セルから粘着剤付き偏光板を剥離した際の偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ2と、θ1との差の絶対値|θ1-θ2|は、0.4°以下であることが好ましい。θ1は0±0.4°または90±0.4°の範囲内であってもよい。」 (なお、下線を付した「|θ1-θ2|」が「|θ1-θ0|」の誤記であることは、前記1(12)で検討したとおりである。) (イ) また、訂正事項5-5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (6) 訂正事項6 訂正事項6の訂正は、本件訂正前の請求項10を削除するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (7) 訂正事項7 訂正事項7の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (8) 訂正事項8 訂正事項8の訂正は、本件訂正前の請求項12を削除するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (9) 訂正事項9 訂正事項9の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (10) 訂正事項10 訂正事項10の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (11) 訂正事項11 訂正事項11の訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正が特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。 (12) 訂正事項12 訂正事項12に係る明細書の段落【0015】についての訂正は、前記1(12)において検討したとおり本件特許明細書等の記載から当業者にとって明らかな誤記の訂正を目的とするものであって、本件特許明細書等は当初明細書等と同一であるから、当該訂正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項12に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (13) 訂正事項13 訂正事項13に係る明細書の段落【0018】についての訂正は、前記1(13)において検討したとおり、脱落していた文末の句点(「。」)を加筆するものであって、当業者にとって明らかな誤記の訂正を目的とするものであるから、当該訂正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項13に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 (14) 訂正事項14 訂正事項14に係る明細書の段落【0073】についての訂正は、前記1(14)において検討したとおり本件特許明細書等の記載から当業者にとって明らかな誤記の訂正を目的とするものであって、本件特許明細書等は当初明細書等と同一であるから、当該訂正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項14に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 3 独立特許要件 この特許異議の申立てにおいては、全請求項である請求項1~15について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後における請求項1~15に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 小括 前記1~3において検討したとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、2号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。 よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~15〕について訂正することを認める。 第4 取消理由(決定の予告)で通知した取消理由2の概要 本件特許について、当審において令和7年3月27日付けで、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)のうち、取消理由2の概要は、次のとおりである。 取消理由2(進歩性の欠如) 本件特許の請求項1~15に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 記 <主たる引用文献> 引用文献7 :特開2006-349998号公報 <副引用文献> 引用文献3 :特開2008-20231号公報 引用文献4 :特開2008-249996号公報 引用文献5 :特開2009-139658号公報 引用文献8 :特開2011-232493号公報 引用文献9 :特開2014-10207号公報 甲7号証 :特開2016-130747号公報 甲8号証 :特開2017-3906号公報 甲9号証 :特開2017-75998号公報 甲17号証 :特開2018-72689号公報 なお、甲7号証~甲9号証及び甲17号証は、特許異議申立人が提出した文献であり、引用文献3~5、7~9は、当審の職権調査により発見した文献である。 以下、各甲号証の文献を、単に「甲7」等という。 第5 当合議体の判断 1 本件訂正発明について ア 本件訂正発明の認定 前記第3のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~5、8、9、11、13~15に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」などという。またこれらを総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、それぞれ、前記第2の3に示した本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5、8、9、11、13~15に記載された事項により特定されるとおりのものである。 なお、後の参照の便宜のため、本件訂正発明1の構成を次のとおり、構成X及び構成A1~構成Cに分説する。なお、読みやすくするため、改行の位置を適宜加筆又は削除してある。また、本件訂正発明1の構成を理解しやすくする目的で、合議体により作成した参考図を掲載した。 <本件訂正発明1の分説> (構成X) 画像表示セル、および前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える画像表示装置であって、 (構成A1) 前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え、前 記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、 前記位相差フィルムが前記粘着層に接しており、 前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、 (構成A2) (構成A2a) 前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられているか、または (構成A2b) 前記偏光子と前記位相差フィルムの間に第二透明保護フィルムを備え、前記偏光子と前記第二透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられ、かつ前記第二透明保護フィルムと前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられており、 (構成A3) 前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニル系偏光子であり、 (構成B) 前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であり、 (構成D)前記粘着層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kpa/μm以上であり、 (構成C) 前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である、 (構成X) 画像表示装置。 <本件訂正発明1の参考図a(構成A2として構成A2aを選択したもの)> [図:0001434105000001.jpg] <本願発明の参考図a(構成A2として構成A2bを選択したもの)> [図:0001434105000002.jpg] イ 本件特許明細書における、本件訂正発明の課題、効果等に関する記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 (ア) 技術分野、背景技術、課題、効果等(【0001】~【0016】) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、画像表示セルの表面に、偏光子と位相差フィルムとが積層された偏光板を備える画像表示装置、およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル機器、カーナビゲーション装置等の車載装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。液晶表示装置は、その表示原理から、液晶セルの両面に偏光子が配置されている。液晶セルと偏光子の間には、コントラスト向上や視野角拡大等の光学補償を行う目的で、位相差フィルムが配置される場合がある。有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射されて鏡面のように視認されることを抑制するために、セルの視認側表面に円偏光板(偏光子と1/4波長のレターデーションを有する位相差フィルムとの積層体)が配置される場合がある。 【0003】 偏光板は、一般に、偏光子の片面または両面に透明保護フィルム(偏光子保護フィルム)が貼り合わせられた構成を有し、透明保護フィルムとして位相差フィルムが用いられる場合がある。また、偏光子の表面に透明保護フィルムが貼り合わせられ、その上に位相差フィルムが貼り合わせられる場合がある。偏光子と位相差フィルムとが積層された偏光板は、一般に粘着剤を介して画像表示セルの表面の基板に貼り合わせられる。 【0004】 偏光子と画像表示セルとの間に配置される位相差フィルムの光学特性が面内で不均一であると、表示画像にムラが生じるため、位相差フィルムには、膜厚や光学特性の均一性が要求される。例えば、特許文献1は、位相差フィルムの光学軸方向を均一化する技術を開示している。 【0005】 画像表示装置が高温高湿環境に曝されたり、急激な環境変化に晒されると、位相差フィルムの光学特性の変化や、偏光子の劣化等に起因して表示ムラが生じることが知られており、光学特性の変化が生じ難い偏光板を提供するために様々な手法が提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2016‐109924号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ディスプレイの軽量化や薄型化に対する要求が高まっており、従来よりも膜厚の小さい位相差フィルムが用いられるようになっている。位相差フィルムのレターデーションは、複屈折と厚みの積であるため、薄型化に対応するためには、高複屈折材料の使用や、延伸倍率を大きくすることにより、位相差フィルムの複屈折を大きくする必要がある。 【0008】 軽量化や薄型化に加えて、ディスプレイの高輝度化および高画質化が進んでおり、従来は視認されなかった微細な欠点やムラが品質課題として顕在化している。偏光子と複屈折の大きい位相差フィルムとが積層された偏光板を、粘着剤を介して画像表示セルに貼り合わせると、偏光板自体は高い光学均一性を有しているにも関わらず、画像表示装置の表示画像にムラが視認される場合がある。 【0009】 このような表示ムラは、光学特性の不均一性に起因するムラや、高温高湿環境等での経時変化または環境変化に起因するムラとは異なるものであり、その発生原因や解決指針等に関する知見が存在しない。上記に鑑み、本発明は、高複屈折の位相差フィルムと偏光子とを積層した偏光板を備え、表示画像のムラが低減された画像表示装置の提供を目的とする。 …(中略)… 【発明の効果】 【0016】 厚みが小さく複屈折が大きい位相差フィルムを用いた場合でも、表示ムラが生じ難く表示品質に優れる画像表示装置が得られる。」 (イ) 発明を実施するための形態(【0018】~【0076】)、図1 「【発明を実施するための形態】 【0018】 本発明の画像表示装置は、画像表示セルの表面に、粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える。偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムとを備え、位相差フィルムが、偏光子と画像表示セルの間に配置されている。偏光子と画像表示セルの間に位相差フィルムが配置されている画像表示装置としては、液晶表示装置および有機EL表示装置が挙げられる。 【0019】 [液晶表示装置の構成] 図1は、一実施形態の液晶表示装置の構成断面図である。液晶表示装置201は、液晶パネル100と光源105を含む。液晶パネル100は、液晶セル10の視認側表面に第一偏光板36を備え、液晶セル10の光源105側に第二偏光板56を備える。」 「【図1】 [図:0001434105000003.jpg] 」 「【0020】 液晶セル10は、2枚の基板13,15の間に液晶層11を備える。基板13,15はガラス基板またはプラスチック基板等の透明基板であり、一般的な構成では、一方の基板にカラーフィルター及びブラックマトリクスが設けられており、他方の基板に液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子等が設けられている。 …(中略)… 【0022】 液晶セル10の視認側基板13には、第一粘着剤層39を介して第一偏光板36が貼り合わせられている。液晶セル10の光源側基板15には、第二粘着剤層59を介して第二偏光板56が貼り合わせられている。 【0023】 偏光板36,56は、それぞれ偏光子31,51を含む。偏光子31,51は、吸収軸方向の振動光を吸収し、透過軸方向の振動光を直線偏光として透過(射出)する。第一偏光板36の偏光子31と、第二偏光板56の偏光子51は、両者の吸収軸方向が互いに直交するように配置されている。 【0024】 偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。 【0025】 中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。 【0026】 PVA系偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号パンフレット、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。このような薄型偏光子は、例えば、PVA系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸し、ヨウ素染色することにより得られる。 【0027】 第一偏光板36では、偏光子31の両面に透明保護フィルム33,35が貼り合わせられている。第二偏光板56では、偏光子51の両面に透明保護フィルム53,55が貼り合わせられている。 【0028】 透明保護フィルム33,35,53,55の厚みは、例えば5~200μm程度である。これらの保護フィルムを構成する樹脂材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性に優れるポリマーが好ましく用いられる。このようなポリマーの具体例としては、アセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびこれらの混合物あるいは共重合体等が挙げられる。 【0029】 偏光子31,51と透明保護フィルム33、35,53,55とは、接着剤や粘着剤(不図示)を介して貼り合わせられる。偏光子と透明保護フィルムとの貼り合わせに用いられる接着剤や粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。 …(中略)… 【0031】 粘着剤層39,59を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示すことから、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層39,59の厚みは、5~50μm程度である。 【0032】 液晶表示装置の形成においては、予め偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせて偏光板36,56を形成し、偏光板36,56の表面に粘着剤層39,59を付設して粘着剤付き偏光板を作製する。この粘着剤付き偏光板と液晶セル10とを、ロールラミネータ等の貼合機を用いて貼り合わせる。 【0033】 [位相差フィルム] 一実施形態の液晶表示装置では、第一偏光板36の透明保護フィルム35が位相差フィルムである。偏光子31と液晶セル10の間に配置される位相差フィルム35は、コントラスト向上や視野角拡大等の光学補償を実現し得る。例えば、IPS方式の液晶表示装置は、偏光子の吸収軸に対して45度の角度(方位角45度、135度、225度、315度)において斜め方向から視認した場合に、黒表示の光漏れが大きく、コントラストの低下やカラーシフトが生じ易い。液晶セルと偏光子との間に、面内レターデーションが波長λの1/2であり、Nz係数が0.5である位相差フィルムを配置することにより、斜め方向の黒輝度を低減し、コントラストを向上できる。 …(中略)… 【0040】 前述のように、小さな厚みで大きな面内レタデーション(例えば200nm以上)を実現するためには、位相差フィルムの面内複屈折Δn=(nx-ny)は、8×10-3以上が好ましい。位相差フィルムの面内複屈折Δnは、1.0×10-2以上、1.2×10-2以上、または1.3×10-2以上であってもよい。 【0041】 薄型化の観点から、位相差フィルムの厚みは35μm以下が好ましい。位相差フィルムの厚みは、30μm以下、25μm以下、または20μm以下であってもよい。位相差フィルムの厚みは、一般には1μm以上であり、3μm以上、5μm以上、または7μm以上であってもよい。前述のように、フィルム基材と一体で樹脂塗膜を延伸することにより、ハンドリング性を損なうことなく、厚みの小さい位相差フィルムを生産できる。 【0042】 [粘着剤付き偏光板] 偏光子31の一方の面の透明保護フィルム35として位相差フィルムを貼り合わせることにより、偏光板が得られる。偏光子31上に透明保護フィルム35として光学等方性フィルムを貼り合わせ、透明保護フィルム35に、適宜の接着剤または粘着剤を介して位相差フィルムを貼り合わせてもよい。偏光子31の他方の面には、透明保護フィルム33が貼り合わせられる。透明保護フィルム33は省略してもよい。透明保護フィルム33を省略する場合、偏光板36は、偏光子の片面のみに透明保護フィルム35を備える。 【0043】 IPS方式の液晶表示装置に用いられる偏光板では、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とが、平行となるように、または直交するように貼り合わせられる。光学軸の精度を高めるために、偏光子と位相差フィルムの貼り合わせは、ロールトゥーロール方式で実施することが好ましい。偏光子は一般に長手方向(延伸方向)に吸収軸を有している。そのため、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向が平行である場合は、長手方向に遅相軸を有する位相差フィルムを用いることが好ましく、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向が直交する場合は、幅方向に遅相軸を有する位相差フィルムを用いることが好ましい。 【0044】 位相差フィルム35の表面に粘着剤層39を貼り合わせることにより、偏光板36の表面に粘着剤層39が付設された粘着剤付き偏光板が得られる。粘着剤層の貼り合わせもロールトゥーロール方式で実施することが好ましい。 【0045】 偏光板を画像表示セルに貼り合わせるまでの間は、偏光板の表面に付設された粘着剤層39の露出面に離型フィルム(セパレータ)を仮着しておくことが好ましい。離型フィルムとしては、例えば、プラスチックフィルムの表面を剥離処理したものが用いられる。 【0046】 [粘着剤付き偏光板の画像表示セルへの貼り合わせ] 偏光子31と粘着剤層39の間に位相差フィルム35を有する粘着剤付き偏光板を、液晶セル10の基板13に貼り合わせることにより、液晶パネルが形成される。液晶セルの光源側の基板15には、偏光板56の表面に粘着剤層59が付設された粘着剤付き偏光板が貼り合わせられる。表裏の偏光板36,56は、液晶セル10に同時に貼り合わせてもよく、逐次貼り合わせてもよい。 【0047】 粘着剤層を用いた貼り合わせにおいては、貼り合わせ界面での密着性を高め、気泡の混入や剥がれを防止する観点から、加圧が行われる。加圧貼り合わせ方式としては、ローラー式やドラム式が挙げられる。 【0048】 後述の実施例に示すように、高複屈折の位相差フィルムは、張力(応力)によって光学軸の方向が変化しやすい。張力による位相差フィルムの光学軸方向の変化は、位相差フィルムを遅相軸方向に対して45°の角度で幅10mmの短冊状に切り出し、短冊状試料の長辺方向に張力を付与した状態で遅相軸方向を測定することにより求められる。横軸に張力、縦軸に遅相軸の角度(の変化量)をプロットし、最小二乗法により得られた直線の傾きが、張力に対する遅相軸の変化量(単位は°/N/10mm)である。 【0049】 面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムは、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上となる場合がある。厚みが小さく面内複屈折が大きい位相差フィルムほど、張力に対する遅相軸の変化量が大きい傾向があり、張力に対する光学軸の変化量は、0.2°/N/10mm以上または0.3°/N/10mm以上であり得る。 【0050】 このように、光学軸の方向が変化しやすい位相差フィルムを備える偏光板を、画像表示セルに貼り合わせると、偏光子と位相差フィルムの貼り合わせ角度にズレが生じ、表示画像の光学的なムラとして視認される場合がある。 【0051】 偏光子31の吸収軸方向と、位相差フィルム35の光学軸(遅相軸または進相軸)方向とのなす角度の変化量(ズレ)は、0.4°以下が好ましく、0.3°以下がより好ましい。軸角度の変化量は、粘着剤層39を介して偏光板36を画像表示セルに貼り合わせた状態における偏光子31の吸収軸方向と位相差フィルム35の遅相軸方向とのなす角度θ1と、貼り合わせ前における両者の角度θ0との差である。軸角度の変化量は、0.2°以下または0.1°以下であってもよい。軸角度のズレ量が0.4°以下であれば、位相差フィルム35の複屈折が大きい場合でも、光学的なムラの発生を抑制でき、ズレ量が小さいほど、ムラの発生が抑制される傾向がある。 【0052】 粘着剤層を介して偏光板を画像表示セルに貼り合わせた状態において、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの光学軸方向とのなす角度は、0.4°以下が好ましく、0.3°以下がより好ましく、0.2°以下がさらに好ましい。偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とが平行である場合、θ1は、0±0.4°の範囲内であることが好ましく、0±0.3°の範囲内であることがより好ましく、0±0.2°の範囲内であることがさらに好ましい。偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とが直交する場合、θ1は、90±0.4°の範囲内であることが好ましく、90±0.3°の範囲内であることがより好ましく、90±0.2°の範囲内であることがさらに好ましい。 【0053】 偏光板36(位相差フィルム35)と画像表示セル10との貼り合わせに用いる粘着剤層39の厚みが大きく粘着剤が柔らかいほど、偏光子31と位相差フィルム35の軸角度のズレ量が大きくなる傾向がある。常温(25℃)におけるせん断貯蔵弾性率G’を粘着剤の硬さの指標とすることができる。粘着剤は、G’が大きいほど硬く、G’が小さいほど柔らかい。 【0054】 粘着剤層39の温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが大きいほど(粘着剤層が硬くて薄いほど)、粘着剤層を介して偏光板を画像表示セルに貼り合わせた状態における軸角度のズレ量が小さくなる傾向がある。粘着剤層39は、G’/Dが5.0kPa/μm以上であることが好ましく、5.2kPa/μm以上であることがより好ましい。G’/Dが過度に大きい場合は、接着保持力が低下し、貼り合わせ界面への気泡の混入等の貼り合わせ不良が生じる場合がある。そのため、粘着剤層39はG’/Dが28kPa/μm以下であることが好ましく、25kPa/μm以下であることがより好ましい。 【0055】 粘着剤層39の厚みDは、5~25μmが好ましく、7~20μmがより好ましい。粘着剤層39の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、50kPa以上が好ましく、60~250kPaがより好ましく、70~200kPaがさらに好ましい。 【0056】 偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いる粘着剤の物性に加えて、画像表示セルに粘着剤付き偏光板を貼り合わせる際の貼り合わせ圧力(ラミネート圧)も、偏光子と位相差フィルムの軸角度のズレに影響を及ぼす場合があり、ラミネート圧が高いほど、偏光子と位相差フィルムの軸角度のズレ量が大きくなる傾向がある。複屈折が大きく張力に対する光学軸の変化量が大きい位相差フィルムを備える偏光板を画像表示セルに貼り合わせる場合、ラミネート圧は0.4MPa以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましい。一方、ラミネート圧が過度に小さいと、貼り合わせ界面への気泡の混入等の貼り合わせ不良が生じる場合がある。そのため、ラミネート圧は、0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましい。 【0057】 上記のように、位相差フィルムの複屈折が大きい場合は、貼り合わせによる軸角度の変化(ズレ)が生じやすく、これに起因して表示画像に光学的なムラが生じる場合があるが、粘着剤層の厚みおよび硬さ、ならびに/または貼り合わせ時のラミネート圧を調整することにより、ムラの発生を抑制できる。 【0058】 他方の面の偏光板56を液晶セル10に貼り合わせる際の粘着剤層59の物性およびラミネート圧は特に限定されない。粘着剤層59の厚みおよびせん断貯蔵弾性率は、粘着剤層39と同等でもよく、異なっていてもよい。偏光板56を貼り合わせる際のラミネート圧は、偏光板36を貼り合わせる際のラミネート圧力と同等もよく、異なっていてもよい。 【0059】 <ムラ発生と低減の推定メカニズム> 上記のように、表示ムラが発生している画像表示装置では、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度の、貼り合わせ前後での変化量|θ1-θ0|が大きい。表示ムラが発生している画像表示装置から偏光板を剥離(リワーク)して、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ2を測定すると、貼り合わせ前と略等しい値となる。すなわち、偏光板を画像表示セルと貼り合わせる前の偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、粘着剤付き偏光板を画像表示セルと貼り合わせ、リワークした後の偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ2は略等しい。また、リワーク後の偏光板を低ラミネート圧で画像表示セルに再度貼り合わせると、軸角度の変化が小さく、ムラは生じない。 【0060】 したがって、偏光板を画像表示セルに貼り合わせた際の軸角度の変化は可逆的な変化であるといえる。このような可逆的な軸角度の変化に起因する表示ムラは、偏光板を貼り合わせた際の圧力による歪の残留によるものと考えられる。例えば、高ラミネート圧で貼り合わせを行うと、フィルムに比べて弾性率の低い粘着剤層が変形し、弾性歪が生じる。ロールラミネータやドラムラミネータによる貼り合わせ時には、貼り合わせ面の法線方向以外からも圧力が付与されるため、粘着剤層には、様々な方向からの圧力による歪が蓄積していると考えられる。 【0061】 貼り合わせ後に圧力が解放されると、粘着剤層は元の形状に戻ろうとする。しかし、粘着剤層が画像表示セルの基板に貼り合わせられているために、貼り合わせ前に比べると変形の自由度が低下している。そのため、粘着剤層は完全に元の形状に戻ることはできず貼り合わせ時に様々な方向から付与された圧力による歪の一部は、粘着剤層の内部に残存する。この歪が粘着剤層に貼り合わせられた位相差フィルムとの貼り合わせ界面での歪を生じさせ、位相差フィルムの光学軸を変化させる要因になっていると考えられる。 【0062】 貼り合わせ時のラミネート圧を低くすれば、粘着剤層39に蓄積する歪が小さいため、貼り合わせ後の粘着剤層に残存する歪も小さく、位相差フィルムとの貼り合わせ界面における歪も小さくなる。また、粘着剤層39の厚みDが小さくせん断貯蔵弾性率G’が大きい場合は加圧による粘着剤層の変形量が小さいため、粘着剤層39に残存する歪が小さく、位相差フィルムとの貼り合わせ界面における歪も小さくなる。そのため、厚みが小さく硬い粘着剤を用い、低ラミネート圧で貼り合わせを行えば、位相差フィルムの光学軸方向を変化させる要因となる歪が蓄積し難く、光学軸の変化量|θ1-θ0|が小さいため、ムラの発生が抑制されると推定される。 (後略)」 (ウ) 実施例(【0075】~【0106】) 「【実施例】 【0075】 以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。 【0076】 [粘着シート] <粘着剤組成物の調製> (粘着剤組成物P) 反応容器に、モノマーとして、アクリル酸ブチル(BA):99重量部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA):1重量部、ならびに重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.3部を、酢酸エチルと共に投入し、窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた。その後、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。この溶液に、ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてジベンゾイルパーオキシド(日本油脂製「ナイパーBMT」):0.3重量部およびトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学製「タケネートD110N」):0.1重量部、ならびにシランカップリング剤(綜研化学製「A-100」)を配合して、粘着剤組成物Aを得た。 【0077】 (粘着剤組成物Q) 反応容器に、モノマーとして、BA:94.9重量部およびアクリル酸(AA):5重量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA):0.1重量部、ならびに重合開始剤としてAIBN:0.1重量部を、酢酸エチルと共に投入し、窒素ガス気流下、55℃で8時間反応させた。その後、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量210万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。この溶液に、ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー製「コロネートL」):0.6重量部、およびシランカップリング剤(信越化学工業製「X-41-1056」)0.2重量部を配合して、粘着剤組成物Bを得た。 【0078】 (粘着剤組成物R) 反応容器に、モノマーとして、BA:92重量部、N-アクリロイルモルフォリン(ACMO):5重量部、AA:2.9重量部、および2HEA:0.1重量部、ならびに重合開始剤としてAIBN:0.1重量部を、酢酸エチルと共に加え、窒素ガス気流下、55℃で8時間反応させた。その後、反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量178万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。この溶液に、ポリマー100重量部に対して、架橋剤として、ナイパーBMT:0.15重量部、およびコロネートL:0.6重量部を配合して、粘着剤組成物Cを得た。 【0079】 <粘着シートの作製> 上記の粘着剤組成物A~Cを、離型処理した厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル製「MRF38」)の離型処理面に塗布し、150℃で乾燥および架橋処理を行い、厚みが5μm、10μm、15μm、20μm、25μmの粘着シートを作製した。粘着剤組成物Pを用いて作製した粘着シートを粘着シートP1~P5、粘着剤組成物Qを用いて作製した粘着シートを粘着シートQ1~Q5、粘着剤組成物Rを用いて作製した粘着シートを粘着シートR1~R5とする。 【0080】 [実験例A1] <位相差フィルムAの作製> 攪拌装置を備えた反応容器中で、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン:54重量部、およびベンジルトリエチルアンモニウムクロライド:12重量部を、1M水酸化ナトリウム溶液に溶解させた。この溶液を撹拌しながら、テレフタル酸クロライド406重量部をクロロホルムに溶解させた溶液を一度に加え、室温で90分間攪拌した。その後、重合溶液を静置分離してポリマーを含んだクロロホルム溶液を分離し、ついで酢酸水で洗浄し、イオン交換水で洗浄した後、メタノールに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーを、蒸留水で2回及びメタノールで2回洗浄した後、減圧乾燥して、ポリアリレート樹脂を得た。得られたポリアリレート系樹脂を、シクロペンタノンに溶解して、固形分濃度20%の溶液を調製した。 【0081】 二軸延伸ポリプロピレンフィルムを支持体として、上記の溶液を、乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗布して、100℃で乾燥し、支持体フィルム上にポリアリレート樹脂層が積層された積層体を得た。この積層体を、ロール延伸機により、搬送方向に延伸しながら幅方向に収縮させた。支持体フィルムを剥離後の延伸ポリアリレート塗膜(位相差フィルムA)は、厚みが17μm、波長550nmにおける面内レターデーションが250nm、Nz係数が0.5であった。 【0082】 <偏光板の作製> 厚み18μmのポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に厚み40μmの二軸延伸アクリルフィルム、他方の面に上記の積層体の位相差フィルムA側の面を、紫外線硬化型の接着剤介して貼り合わせた。貼り合わせには、ロールラミネータを用い、紫外線を照射して接着剤を硬化させた。その後、支持体フィルムとして用いたポリプロピレンフィルムを剥離し、位相差フィルムA側に、上記で作成した粘着シートを積層して、偏光子の一方の面にアクリル系フィルム、他方の面に位相差フィルムAを備え、位相差フィルムA側の面に粘着剤層を備える粘着剤付き偏光板を得た。 【0083】 <ガラス板への貼り合わせ> 上記の粘着剤付き偏光板を、厚み0.7μmの無アルカリガラス板上に載置し、加圧ローラー式の枚葉貼り合わせ装置を用い、ラミネート圧0.3MPaで貼り合わせて、評価用試料を得た。 【0084】 [実験例B1] 位相差フィルムAに代えて、厚み132μm、面内レターデーションが250nm、Nz係数が0.5のノルボルネン系樹脂フィルム(位相差フィルムB)を用い、上記と同様に、粘着剤付き偏光板の作製およびガラス板への貼り合わせを行った。 【0085】 [実験例C1] 位相差フィルムAに代えて、厚み18μm、面内レターデーションが120nm、Nz係数が1.18の二軸延伸ノルボルネン系樹脂フィルム(位相差フィルムC)を用い、上記と同様に、粘着剤付き偏光板の作製およびガラス板への貼り合わせを行った。 【0086】 [評価] <粘着シートのせん断貯蔵弾性率> 粘着シートP3、Q3およびR3のそれぞれについて、粘着シートを100枚積層して試験用サンプルを作製した。このサンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートに挟み込み、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、25℃におけるせん断貯蔵弾性率を読み取った。 (測定条件) 変形モード:ねじり 測定周波数:1Hz 昇温速度:5℃/分 測定温度:-40~150℃ 【0087】 <位相差フィルムの張力に対する遅相軸角度の変化> 位相差フィルムを、遅相軸方向に対して45°の角度が長辺となるように、幅10mmの短冊状に切り出した。偏光・位相差測定システム(Axometrics製「AxoScan」)の測定ステージ上に、短冊状試料の一方の短辺を固定し、他方の短辺に錘をぶら下げて、試料の長手方向に張力を付与した状態で、面内レターデーションおよび遅相軸方向を測定した。錘の質量を変化させて、張力に対する遅相軸角度の変化量(張力0の場合の遅相軸角度基準)をプロットし、直線の傾きから、張力に対する軸角度の変化量(軸変化量/張力)を算出した。 【0088】 <偏光板の光学軸の変化量> 偏光・位相差測定システムにより、粘着剤付き光学フィルムにおける偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角θ0を測定した。ガラス板上に粘着剤付き光学フィルムを貼り合わせ後の試料について、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角θ1を測定し、貼り合わせ前後での角度差(θ1-θ0)の絶対値を求めた。 【0089】 <貼り合わせ状態> ガラス板と偏光板との貼り合わせ界面における気泡の有無を目視にて観察した。 【0090】 <光学ムラ> トレース台の上に、ポリビニルアルコール系偏光子の両面に透明保護フィルムとしてアクリル系フィルムが貼り合わせられた標準偏光板(日東電工製)を載置し、その上に、評価用試料のガラス板が下側となるように載置した。2枚の偏光板は、標準偏光板の吸収軸方向と、評価用試料の偏光板の吸収軸方向とが直交するように配置した(クロスニコル配置)。トレース台からの透過光を目視にて確認し、下記の基準によりムラのランク付けを行った。 〇;ムラが視認されないもの(図3A参照) △:わずかなムラが確認されたもの ×:著しいムラが確認されたもの(図3B参照) 【0091】 <評価結果> 位相差フィルムA~Cの厚みおよび光学特性、粘着シートの厚みDおよび25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’、ならびに貼り合わせ試料の評価結果を、表1に示す。 【0092】 【表1】 [図:0001434105000004.jpg] 【0093】 位相差フィルムB,Cは、いずれも張力に対する遅相軸方向の変化が0.01°/N/10mmであったのに対して、複屈折の大きい位相差フィルムAは、張力に対する遅相軸方向の変化率が大きいことが分かる。 【0094】 位相差フィルムAに偏光子を積層した偏光板は、ガラス板への貼り合わせ前は、位相差フィルムの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向が平行(θ0が0.1°以下)であったが、粘着剤付き偏光板をガラス板に貼り合わせた後は、軸ズレが生じており、粘着シートの厚みDが大きく、せん断貯蔵弾性率G’が小さいほど、軸ズレが大きくなる傾向がみられた。粘着シートR1を用いた試料では、ムラは確認されなかったが、ガラス板と粘着剤層との貼り合わせ界面に気泡の混入がみられた。 【0095】 位相差フィルムBと偏光子とを積層した偏光板は、厚みが大きく、せん断貯蔵弾性率G’が小さい粘着シートP4,P5,Q5を介してガラス板に貼り合わせた場合でも明確な軸ズレは確認されず、ムラは発生していなかった。位相差フィルムCを用いた場合も同様であった。 【0096】 [実験例A2] 偏光子の一方の面にアクリル系フィルム、他方の面に位相差フィルムAを備え、位相差フィルムA側の面に厚み15μmの粘着シートP3を積層した粘着剤付き偏光板を用いた。表2に示すように、ラミネート圧を0.01~1.0MPaの範囲で変更したこと以外は、実験例A1と同様にして、無アルカリガラス板に粘着剤付き偏光板を貼り合わせて評価用試料を得た。 【0097】 [実験例B2] 位相差フィルムB側の面に粘着シートP3を積層した粘着剤付き偏光板を用い、ラミネート圧を0.7Paまたは1.0MPaに変更したこと以外は、実験例B1と同様にしてガラス板への貼り合わせを行った。 【0098】 [実験例C2] 位相差フィルムC側の面に粘着シートP3を積層した粘着剤付き偏光板を用い、ラミネート圧を0.7Paまたは1.0MPaに変更したこと以外は、実験例C1と同様にしてガラス板への貼り合わせを行った。 【0099】 [評価] 実験例A2,B2,C2の各試料について、光学軸の変化量、貼り合わせ状態および光学ムラの評価を実施した。位相差フィルムA~Cの厚みおよび光学特性、ならびに、ガラス板への粘着剤付き偏光板の貼り合わせ条件(ラミネート圧)および評価結果を、表2に示す。 【0100】 【表2】 [図:0001434105000005.jpg] 【0101】 位相差フィルムAと偏光子を積層した粘着剤付き偏光板は、ガラス板への貼り合わせ時のラミネート圧が大きいほど軸ズレが大きくなる傾向がみられた。ラミネート圧0.5MPaで貼り合わせを行った場合は、光学ムラ検査においてムラが確認され、ラミネート圧をさらに高めると、ムラが顕著となっていた。ラミネート圧0.01MPaで貼り合わせを行った試料では、ムラは確認されなかったが、ガラス板と粘着剤層との貼り合わせ界面に気泡の混入がみられた。 【0102】 位相差フィルムBと偏光子とを積層した粘着剤付き偏光板は、ガラス板との貼り合わせ時のラミネート圧を1.0MPaまで高めた場合にも明確な軸ズレは確認されず、ムラは発生していなかった。位相差フィルムCを用いた場合も同様であった。 【0103】 上記のように、偏光子と位相差フィルムAとを積層した偏光板をガラス板に貼り合わせた試料では、粘着シートの厚みDが大きく、せん断貯蔵弾性率G’が小さい(すなわち、粘着シートが厚くて柔らかい)場合、および貼り合わせ時のラミネート圧が大きい場合に、位相差フィルムの光学軸のズレが大きくなり光学的なムラが発生していた。一方、偏光子と位相差フィルムBまたは位相差フィルムCとを積層した偏光板では、粘着シートの種類やラミネート圧を変更しても、光学的なムラは観察されなかった。 【0104】 これらの結果から、位相差フィルムを備える偏光板をガラス板(画像表示セルの基板)に貼り合わせた際の光学的なムラは、複屈折の大きい位相差フィルムに特有の課題であり、貼り合わせ時の粘着シートの変形に起因して、位相差フィルムの軸ズレが生じることが原因であることが分かる。厚みが小さく硬い粘着剤を用いた場合や、貼り合わせ時の圧力が小さい場合は、粘着シートの変形が小さいために、位相差フィルムの軸ズレが抑制されていると考えられる。 【0105】 実験例A2において顕著なムラがみられた試料(ラミネート圧0.7MPaの試料および1.0MPaの試料)について、ガラス板から粘着剤付き偏光板を剥離(リワーク)し、位相差フィルムの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向の角度差θ2を測定したところ、0.1°以内であり、軸ズレが解消していた。また、リワーク後の粘着剤付き偏光板を、ラミネート圧0.3MPaで再度ガラス板に貼り合わせて光学ムラの有無を確認したところ、ムラは確認されなかった。 【0106】 以上の結果から、位相差フィルムAと偏光子を含む偏光板を高ラミネート圧でガラス板に貼り合わせた試料の光学的なムラは、貼り合わせ時の圧力によって粘着シートが変形した際の歪が残留していることに起因するものであり、貼り合わせ時の圧力を小さくして歪を低減することにより、ムラの発生を抑制できると考えられる。また、厚みが小さくせん断貯蔵弾性率が小さい粘着シートを用いた場合も、粘着シートの変形によるひずみが小さいために、軸ズレが生じ難く、ムラの発生を抑制できると考えられる。」 2 引用文献等の記載事項及び引用発明等の認定 (周知技術の認定において、取消理由(決定の予告)における周知技術を示す番号と共通のものとするため、「周知技術5」は欠番としている。) (1) 引用文献7の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献7の記載事項 引用文献7(特開2006-349998号公報)には、次の記載がある。下線は合議体が付したもので、引用発明の認定に直接用いるところを示す。 【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶パネル及び液晶表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 液晶セル、偏光子及び基材フィルムとを備えた従来の液晶パネルにおいては、一般的に、液晶セルと偏光子との間に、基材フィルムや保護フィルムなどの光学的機能を目的としないフィルムが介在している。 【0003】 例えば、位相差板、偏光子及び基材フィルム(特許文献1では支持フィルムと記載)を備えた光学補償フィルムにおいて、位相差板、基材フィルム及び偏光子がこの順に積層されており、位相差板の下に粘着剤が配置され、該粘着剤がセパレータ上に添付されている構成が開示されている(特許文献1の図1参照)。該セパレータに添付された光学補償フィルムは、セパレータを剥離し、液晶セルの表面に貼り付けることによって、液晶パネルの態様で使用される。従って、液晶パネルの構成においては、液晶セルの表面上に粘着剤を介して位相差板、基材フィルム及び偏光子がこの順に積層されることになる。また、特許文献1には、位相差板、偏光子及び基材フィルムを備えた光学補償フィルムにおいて、基材フィルム、位相差板及び偏光子がこの順に積層されており、基材フィルムの下に粘着剤が配置され、該粘着剤がセパレータに添付された構成が開示されている(特許文献1の図2参照)。この光学補償フィルムも同様に、液晶パネルとして使用される場合には、液晶セルの表面上に粘着剤を介して基材フィルム、位相差板及び偏光子がこの順に積層されることになる。 【0004】 【特許文献1】特開2001-208912公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記従来の液晶パネルでは、何れにしても偏光子と液晶セルとの間に基材フィルムが介在している。よって、基材フィルムとして、位相差が可及的に小さいフィルムを用いる必要があるため、基材フィルムの材料が限定される。従って、例えば、高価な材料の基材フィルムを選択せざる得ない場合があり、ひいては液晶パネルのコスト高を招くという問題点がある。 【0006】 そこで、本発明は、低コスト化を実現することができる液晶パネルを提供することを課題とする。さらに、本発明は、この液晶パネル備える液晶表示装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、前記課題を解決するべく、液晶セルと、液晶セルの表面に粘着剤又は接着剤を介して接着された位相差板と、位相差板上に積層された偏光子と、偏光子上に積層された基材フィルムと、を有し、位相差板と偏光子が、直接に又は粘着剤若しくは接着剤を介して積層されており、偏光子が、二色性色素を含む液を塗布して得られたコーティング膜で構成されている液晶パネルを提供する。 【0008】 また、本発明は、上記液晶パネルを備える液晶表示装置を提供する。 【0009】 本発明に係る液晶パネル及び液晶表示装置によれば、液晶セルの表面に粘着剤又は接着剤を介して位相差板が接着され、この位相差板上に偏光子が直接に又は粘着剤若しくは接着剤を介して積層されており、従って、液晶セルと偏光子との間に基材フィルムが介在することがないので、基材フィルムの位相差の影響を考慮することがない。これにより、基材フィルムの材料が限定されることがないのである。従って、安価な材料の基材フィルムを選択することができ、それだけ低コストにすることができる。また、偏光子上には、基材フィルムが積層されているので、該基材フィルムによって偏光子を保護することができ、更に、偏光子は、二色性色素を含む液を塗布して得られたコーティング膜で構成されているので、薄型軽量化された液晶パネルを提供できる。 【発明の効果】 【0010】 以上説明したように、本発明によると、低コスト化を実現することができる液晶パネル及びこの液晶パネル備える液晶表示装置を提供することができる。」 「【0011】 図1に、本発明に係る液晶パネルを構成する位相差板及び偏光子の層構成の例を示す。 図1(a)及び(b)に於いて、1は、少なくとも位相差板4及び偏光子5が積層された光学フィルムを示す。7は基材フィルムを、5は偏光子を、6は粘着剤又は接着剤からなる接着層を、4は位相差板を、3は光学フィルム1を液晶セル8(後述する図2参照)に接着するために設けられた粘着剤又は接着剤からなる接着層を、2は離型紙をそれぞれ示す。尚、本明細書に於ける「フィルム」という用語は、一般に「シート」と言われるものも含む意味である。」 「【図1】 [図:0001434105000006.jpg] [図:0001434105000007.jpg] 」 「【0012】 図1(a)に示すように、位相差板4の上に粘着剤又は接着剤からなる接着層6を介して偏光子5が積層されており、更に、偏光子5の上に基材フィルム7が積層され、位相差板4の下には粘着剤又は接着剤からなる接着層3が配置され、該接着層3が離型紙2で覆われている。また、図1(b)に示すように、位相差板4の上に偏光子5が直接に積層されており、更に、偏光子5の上に粘着剤又は接着剤からなる接着層6を介して基材フィルム7が積層されていて、位相差板4の下には粘着剤又は接着剤からなる接着層3が配置され、該接着層3が離型紙2で覆われている。尚、位相差板4として、液晶モノマーなどのように配向フィルムが用いられる場合には、図1(b)に示す偏光子5と位相差板4の間に、極薄い配向膜を介装してもよい。 【0013】 図1(a)及び図1(b)の何れの層構成の光学フィルム1も、離型紙2を剥離することにより、接着層3を介して液晶セル8に接着される。即ち、図1(a)の層構成の光学フィルム1では、後述する図2(a)に示す液晶パネルの構成の如く、液晶セル8の表面上に接着層3を介して位相差板4、接着層6、偏光子5及び基材フィルム7がこの順に積層されることになる。また、図1(b)の層構成の光学フィルム1では、後述する図2(b)に示す液晶パネルの構成の如く、液晶セル8の表面上に接着層3を介して位相差板4、偏光子5、接着層6及び基材フィルム7がこの順に積層されることになる。尚、これら光学フィルム1は、液晶セル8の表面(表示画面側)及び裏面(背面側)に設けることもできる。 以下、具体的に説明する。 【0014】 (偏光子5について) 偏光子は、適宜な材料からなるものを用いることができ、例えば、合成樹脂フィルムからなるフィルム偏光子や、二色性色素を含む液を塗工して得られたコーティング膜からなるコーティング偏光子などを用いることができる。 フィルム偏光子としては、代表的には、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって得られたもの等が使用できる。二色性物質を吸着させるフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられる。 該フィルム偏光子は、例えば、PVA系フィルムを膨潤させ、ヨウ素やホウ酸などを含む液に浸漬し、延伸、乾燥することにより製造でき、PVA分子に吸着する二色性色素が配向し、これにより直線偏光が得られる。 【0015】 本発明では、偏光子は、比較的膜厚を薄く形成できることから、二色性色素を含む液を塗工して得られたコーティング偏光子を用いることが好ましい。二色性色素を含む液は、これを塗工によって膜状に形成でき且つ偏光を得ることができるものであれば特に限定されず、例えば、リオトロピック液晶性の二色性色素、二色性染料色素を含む液晶ポリマーなどを用いることができる。前者のリオトロピック液晶性の二色性色素としては、例えば、特許3492693号公報や特表2004-528603公報に開示されているようなLCポラライザー(OPTIVA社製) 等の材料が好適に利用できる。また後者の二色性染料色素を含む液晶ポリマーのコーティング膜からなる偏光子としては、例えば、特開平11-101964号公報に記載されているものが例示される。 中でも、耐熱性、耐光堅牢度に優れることから、リオトロピック液晶性の二色性色素として下記一般式(1)で表される有機色素を含む液を用いることが好ましい。 式(1):(クロモゲン)(SO3M)n(但し、Mは、カチオンを示す) 式(1)のMとしては、水素イオン、Li、Na、K、Csのような第一族金属のイオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。 【0016】 上記一般式(1)で表される有機色素は、溶液中に於いてアゾ化合物や多環式化合物構造などのクロモゲンが疎水性部位となり、且つスルホン酸及びその塩が親水性部位となり、両者のバランスによって疎水性部位同士及び親水性部位同士が集まり、全体としてリオトロピック液晶性を発現するものである。 …(中略)… 【0023】 二色性色素を含む液は、例えば、下記基材フィルムや下記位相差板に塗工される。そして、溶媒を揮発又は蒸発させて固化させることにより、基材フィルム又は位相差板の一面に、偏光機能を有するコーティング膜(即ち、本発明の偏光子)を形成することができる。 このように塗工によって形成された偏光子は、その厚みを20μm以下とすることができ、更に、好ましくは厚み0.1~10μm、特に厚み0.2~5μmとすることができる。 従って、ヨウ素吸着ポリビニルアルコール系の延伸フィルムからなる偏光子に比して、偏光子の膜厚を非常に薄く且つ軽量にすることができ、これにより薄型軽量性に優れる液晶パネルを得ることができる。 【0024】 (位相差板4について) 位相差板は、従来公知の何れの位相差板を採用してもよく、例えば、a)ノルボルネン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの樹脂を製膜し、一軸延伸、二軸延伸、Z 延伸等の適宜な方式で延伸処理してなる複屈折性合成樹脂フィルム、b)棒状、ディスク状等の適宜な液晶モノマー又は液晶ポリマーを塗布して配向させた配向フィルム、c)これらの積層体等を用いることができる。 【0025】 位相差板の複屈折性は、ポジティブAプレート、ネガティブAプレート、ポジティブCプレート、ネガティブCプレート、ポジティブOプレート、ネガティブOプレート、屈折率異方性nx,ny,nzがnx>nz>nyなどの何れのものでもよい。何れも一軸性の光学的異方性を有する層であり、Aプレートは光軸が面内方向に存在し、その屈折率異方性が下記式(I)を満たす場合はポジティブAプレート、下記式(II)を満たす場合にはネガティブAプレートと呼ばれる。 nx>ny=nz (I) nx<ny=nz (II) また、前記C プレートは光軸がその面内方向と垂直な厚み方向に存在し、その屈折率異方性が下記式(III)を満たす場合はポジティブCプレート、下記式(IV)を満たす場合はネガティブCプレートと呼ばれる。 nx=ny<nz (III) nx=ny>nz (IV) 【0026】 つまり、ポジティブ、ネガティブとは光軸方向の屈折率がその直交方向の屈折率より大きいか小さい場合であり、光軸方向の屈折率のほうが大きい場合はポジティブ、小さい場合はネガティブとなる。 上記式(I)~(IV)において、nx、ny及びnzは、前記層におけるX軸、Y軸及びZ軸方向の屈折率を示す。但し、前記X軸及びY軸のうち何れか一方は、層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、他方は、その軸に対して垂直な面内の軸方向である。Z軸は、前記X軸及びY軸に垂直である厚み方向を示す。 Oプレートは、光軸方向が面内方向及びZ軸方向(面内方向に垂直な厚み方向)から見て傾斜している。光軸方向の屈折率が光軸と直交方向の屈折率より大きいときはポジティブOプレート、小さいときはネガティブOプレートとなる。 【0027】 上記各種の複屈折性の位相差板は、それぞれの位相差板に適した形状を有し且つ液晶性を示すモノマー溶液を、所望の配向状態を得るための配向膜を介して塗工、乾燥して配向させることで得られる。尚、位相差板は、視認性の向上のために複数積層してもよく、その際、位相差板間に配向膜を形成してもよい。 【0028】 ポジティブAプレートは、水平配向膜に棒状液晶モノマーを、ネガティブAプレートは、垂直配向膜にディスク状液晶モノマーを、ポジティブCプレートは、垂直配向膜に棒状液晶モノマーを、ネガティブCプレートは、水平配向膜にディスク状液晶モノマー又は水平配向膜にコレステリック液晶相棒状液晶モノマーを、ポジティブOプレートは、傾斜配向膜に棒状液晶モノマーを、ネガティブOプレートは、傾斜配向膜にディスク状液晶モノマーを組み合わすことで製造できる。尚、液晶モノマーに代えて、液晶ポリマーを用いることもできる。 これら液晶モノマーは、公知の用法に従い、例えば、光開始剤を添加し、紫外線を照射することで製膜できる。 配向膜は、従来公知の材料が使用でき、例えば、カルコン系、シンナミル系などの光反応性ポリマーを塩化メチレンなどの溶媒に溶解させ、スピンコートなどの公知の塗工法で塗工することにより形成することができる。該配向膜は、例えば、上記偏光子の基材フィルムが積層されていない面側に形成することができ、この配向膜に上記液晶モノマー又は液晶ポリマーを公知の塗工法で塗工し、硬化させることで、位相差板を偏光子に積層することができる。 尚、位相差板は、その材料や厚みなどを調整することにより、波長λに対してλ/2やλ/4など適宜の位相差とすることができる。 【0029】 (基材フィルム7について) コーティング膜を形成するために用いられる上記基材フィルムとしては、適宜な透明ポリマーからなるフィルムを用いることができ、特に限定はない。その中でも、透明性や機械的強度、熱安定性、厚さの均一性に優れるものが好ましい。基材フィルムに使用されポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリオレフィン、シクロオレフィン系ポリマー、マレイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン、セルロース系樹脂、若しくはそれらの変性体、又はこれら2種以上の混合物などが例示される。また、基材フィルムは、2以上のフィルムで構成されていてもよい。 基材フィルムの厚みは強度等に応じて適宜に決定しうるが、一般的には薄型軽量化を目的に300μm以下、更に、5~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。 …(中略)… 【0031】 上記のようにして偏光子(コーティング膜)が形成された基材フィルムの偏光子面を、粘着剤又は接着剤を介して、上記位相差板の一面に接着することにより、図1(a)に示すような層構成を得ることができる。このように積層することにより、基材フィルムは、偏光子を保護する保護フィルムとしても機能する。 該粘着剤又は接着剤としては、透明性に優れたものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系など公知のものを用いることができる。 偏光子と位相差板の間に介在させる接着層は、出来るだけ薄くすることが好ましく、例えば、厚み10μm以下程度が好ましく、更に5μm以下程度がより好ましい。 【0032】 また、上記位相差板の一面に、二色性色素を含む液を塗工し、これを固化させることにより、位相差板の一面に、偏光機能を有するコーティング膜(偏光子)を形成することもできる。この場合、位相差板と偏光子は直接に接着される。この偏光子上には、粘着剤又は接着剤を介して、保護フィルムとして機能する基材フィルムを積層することにより、図1(b)に示すような層構成を得ることができる。 このように位相差板と偏光子を直接に接着する、すなわち、位相差板と偏光子の間に介在する層を有さずに接着しているので、該介在層による位相差が生じず、位相差板を通って位相差が付与された偏光をそのまま偏光子へと入射させることができる。 また、位相差板と偏光子に粘着剤又は接着剤を介在させて積層する場合には、気泡や異物などの封入に対して注意する必要があるが、位相差板と偏光子を直接に接着する場合には、その製造工程も簡素化できる。 【0033】 かかる位相差板に直接積層される偏光子も、基材フィルムに形成する場合と同様に、その厚みを20μm以下とすることができ、更に、好ましくは厚み0.1~10μm、特に厚み0.2~5μmとすることができる。 尚、位相差板と上記リオトロピック液晶性の二色性色素の密着性が悪い場合には、基材フィルム上にコーティング膜を形成する態様と同様に、位相差板の塗工面に、必要に応じて、密着性や濡れ性の向上させるため、適宜な表面処理あるいはオーバーコート層を施すことが好ましい。 【0034】 (接着層3について) 接着層としては、上記で例示した透明性に優れた粘着剤又は接着剤、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などの各種のものを例示できる。これらのなかではアクリル系粘着剤が好ましく、そのベースポリマーの重量平均分子量は、30万~250万程度のものが好ましい。 なお、アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系重合体に使用されるモノマーとしては、各種(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、以下にいう(メタ)と同様の意味である。)を使用できる。かかる(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル等を例示でき、これらを単独もしくは組み合わせて使用することができる。 また、得られるアクリル酸重合体に極性を付与するために前記(メタ)アクリル酸エステルの一部に代えて(メタ)アクリル酸を少量使用することもできる。さらに、架橋性単量体として(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等も併用しうる。さらに所望により、(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘着特性を損なわない程度において他の共重合可能な単量体、例えば、酢酸ビニル、スチレン等を併用しうる。 【0035】 ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン-ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン-イソプレン-スチレン系ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン系ゴムなどが挙げられる。シリコーン系粘着剤のべースポリマーとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。 また、前記粘着剤は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに前記粘着剤には必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜使用することもできる。 【0036】 接着層の形成方法は特に制限されず、位相差板の他面(偏光子が積層されていない面)に粘着剤又は接着剤を塗布し乾燥する方法、接着層を設けた離型シートにより転写する方法などが挙げられる。この接着層の厚さは、特に限定されないが、10~40μm程度とするのが好ましい。 【0037】 離型紙としては、厚み40μm以上のものを用いることが好ましく、その材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発砲シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体などが挙げられる。また、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来公知の適宜なものを用いることができる。これらの中でも、合成樹脂フィルムを用いることが剛性やハンドリングの点から好ましい。 【0038】 (液晶パネル10a,10b及び液晶表示装置について) 本発明に係る液晶パネルは、液晶表示装置の形成に好ましく用いられ、例えば、液晶セルの表面又は両面、特に、少なくとも表示画面側に、前記した層構成の位相差板、偏光子等が配置されていることが好ましい。本発明の液晶表示装置は、このような液晶パネルを備えていればよい。適用する液晶表示装置は、例えば、TN型、VA型、IPS型、OCB型など任意である。 【0039】 図2は本発明に係る液晶パネルの例を示す概略断面図であって、図2(a)は液晶セル8の表面(表示画面側)に粘着剤又は接着剤からなる接着層3を介して位相差板4が接着され、この位相差板4の上に、図1(a)の層構成のように、粘着剤又は接着剤からなる接着層6を介して偏光子5が積層されていて、更に、偏光子5の上に基材フィルム7が積層されている液晶パネル10aを示している。図2(b)は液晶セル8の表面に粘着剤又は接着剤からなる接着層3を介して位相差板4が接着され、この位相差板4の上に、図1(b)の層構成のように、偏光子5が直接に積層されていて、更に、偏光子5の上に粘着剤又は接着剤からなる接着層6を介して基材フィルム7が積層されている液晶パネル10bを示している。」 「【図2】 [図:0001434105000008.jpg] [図:0001434105000009.jpg] 」 「【0040】 かかる層構成の液晶パネル10a,10bは、何れにしても液晶セル8から見て偏光子5より外側に基材フィルム7が位置しているので(換言すれば、偏光子5と液晶セル8の間に基材フィルム7が介在していないので)、基材フィルム7に位相差がある場合でもそれによる光学特性には何ら影響することがない。よって、該基材フィルム7の位相差を考慮する必要がない。従って、基材フィルム7として、位相差の大きいフィルムも用いることができ、材料選択の幅が増え、安価な基材フィルムを選択することも可能となる。例えば、二軸延伸などを施して機械的強度、熱安定性、耐溶剤性を向上させたフィルムを好適に用いることができる。このように安価な基材フィルムを使用できることから低コスト化に寄与することができる。さらに、偏光子として、コーティング膜からなるものを用いることで、液晶表示装置の薄型軽量化に寄与することができる。」 イ 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献7の記載事項を総合すると、引用文献7には、【図1】(a)及び【図2】(a)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。参考図として、【図1】(a)及び【図2】(a)に部材名を記入したものを掲載した。 <引用発明> 「液晶パネル10aを備える液晶表示装置であって、(【0038】) 光学フィルム1が離型紙2を剥離することにより、接着層3を介して液晶セル8に接着されるものであり、(【0013】) 光学フィルム1は、位相差板4の上に接着剤からなる接着層6を介して偏光子5が積層されており、更に、偏光子5の上に基材フィルム7が積層され、位相差板4の下には粘着剤からなる接着層3が配置され、該接着層3が離型紙2で覆われているものであり、(【0012】) 基材フィルム7は、偏光子を保護する保護フィルムとしても機能するものであり、(【0031】) 液晶パネル10aは、液晶セル8の表面(表示画面側)に粘着剤からなる接着層3を介して位相差板4が接着され、この位相差板4の上に、接着剤からなる接着層6を介して偏光子5が積層されていて、更に、偏光子5の上に基材フィルム7が積層されているものであり、(【0039】) 偏光子として、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって得られたフィルム偏光子を使用した、(【0014】) 液晶表示装置」 <引用発明参考図1(【図1(a)】)> [図:0001434105000010.jpg] <引用発明参考図2(【図2(a)】)> [図:0001434105000011.jpg] (2) 技術常識等の認定 ア 引用文献3の記載事項及び自明の事項1の認定 (ア) 引用文献3の記載事項 引用文献3(特開2008-20231号公報)には、次の記載がある。なお、下線は合議体が付したもので、以下同様である。 「【0002】 液晶ディスプレイ装置の表示部となる液晶パネルは、位相差フィルムのような一定の方向に光学主軸を持つ光学フィルムを偏光板と貼着した光学積層体を有している。これら光学フィルムと偏光板は、光学フィルム光学主軸と偏光板透過軸が重なり合うように貼り合わされた状態にしてからパネルにセットされる。ところが、工程上の問題等から、光学主軸と透過軸が完全には重なり合わず、微小にずれることが起こり得る。このような不良個所を有する光学積層体を液晶パネルに使用すると、液晶パネルの黒状態のときに光がその不良個所から抜け出して出射され、その結果、パネルの隅部が薄く光る等の輝度ムラが発生してパネルの表示品質の低下を招くという問題を生じた。 【0003】 また、上記のような光学主軸と透過軸とのずれは、光学フィルムと偏光板との光学積層体の単体検査では検出されなくとも、液晶パネルセット後に光学フィルムへの応力負荷が起因して初めて現れる場合もある。光学フィルムは粘着剤で貼り合わされており、貼り合わせ加工後のパネルへの締め付けや温湿度等の環境条件によって、光学フィルムに応力がかかることがあり、光学主軸やリターデーション値に変動が生じる。液晶パネルにおいては、これに起因する輝度ムラも問題となっている。応力起因の光学特性変化は一般的に光学主軸方向のズレとして現れるので、フィルム各層の光学主軸分布を正確に検出することでその評価が可能となる。しかし、応力が起因する場合は、セットしたパネルを分解し、フィルムを液晶セルから剥がして単体に戻すと、応力緩和によりムラ要因が検出されなくなるため、液晶パネルにフィルムがセットされた状態のまま各フィルムの光学特性を測定する必要がある。そのため、測定環境に制約があるので、測定装置を簡素に構成する必要があった。そのような光学異方性を有する材料の光学特性を検査する手段はよく知られており、例えば、レターデーション値や光学主軸の方向等の複屈折特性を測定する手段が特許文献1に、偏光板+位相差フィルム形態のフィルム光学特性を測定する手段が、特許文献2に記載されている。」 (イ) 自明の事項1-1及び1-2の認定 前記(ア)に示した引用文献3の摘記事項に例示されているように、次の事項は、当業者にとって自明であったと認められる。(以下、それぞれ「自明の事項1-1」及び「自明の事項1-2」という。) [自明の事項1-1] 光学主軸と透過軸とのずれは、光学フィルムと偏光板との光学積層体の単体検査では検出されなくとも、液晶パネルセット後に光学フィルムへの応力負荷が起因して初めて現れる場合もあり、当該ずれが生じると、液晶パネルの黒状態のときに光がその不良個所から抜け出して出射され、その結果、パネルの隅部が薄く光る等の輝度ムラが発生すること。 [自明の事項1-2] 応力が起因する場合は、セットしたパネルを分解し、フィルムを液晶セルから剥がして単体に戻すと、応力緩和によりムラ要因が検出されなくなること。 イ 引用文献4の記載事項及び周知技術1~3の認定 (ア) 引用文献4の記載事項 引用文献4(特開2008-249996号公報)には、次の記載がある。 「【0041】 上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[590])は、好ましくは0.05~0.5であり、より好ましくは0.1~0.5であり、特に好ましくは0.15~0.4である。また、上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率(Δnxz[590])は、好ましくは0~0.5であり、より好ましくは0.001~0.3であり、特に好ましくは0.001~0.2である。かかる面内及び/又は厚み方向の複屈折率を有する複屈折性フィルムは、例えば、液晶表示装置に用いた場合に、表示特性の改善に有用なnx≧nz>nyを有しつつ、薄型に形成できる。 …(中略)… 【0074】 上記偏光板の、偏光子と複屈折性フィルムの貼着角度は、目的に応じて、適宜設定され得る。上記偏光板が、例えば、反射防止フィルムとして用いられる場合には、上記偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、好ましくは25°~65°、より好ましくは35°~55°となるように、偏光子と複屈折性フィルムとが貼着される。また、上記偏光板が、例えば、視野角拡大フィルムとして用いられる場合には、上記偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、実質的に平行又は実質的に直交となるように、偏光子と複屈折性フィルムとが貼着される。なお、「実質的に平行」とは、偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、0°±10°の範囲を含み、好ましくは0°±5°である。「実質的に直交」とは、偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、90°±10°の範囲を含み、好ましくは90°±5°である。」 (イ) 周知技術1~3の認定 前記(ア)に示した引用文献4の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下、それぞれ「周知技術1~3」という。) a [周知技術1] 液晶表示装置を薄型に形成するために、面内複屈折率の大きい(例えば、0.05~0.5)位相差フィルムを採用すること。 b [周知技術2] 液晶表示装置の表示特性の改善に有用な位相差フィルムとして、nx≧nz>nyの関係を満たす位相差フィルムを用いること。 c [周知技術3] 液晶表示装置の視野角拡大フィルムにおいて、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向の成す角度を平行又は直交とすること。 ウ 引用文献5の記載事項及び技術常識1の認定 (ア) 引用文献5の記載事項 引用文献5(特開2009-139658号公報)には、次の記載がある。 「【0131】 (位相差板) 位相差板としては、高分子素材を一軸又は二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶性ポリマーの配向フィルム、液晶性ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差板の厚さは特に制限されないが、20~150μm程度が一般的である。 (中略) 【0137】 一般に、光学補償偏光板における光学補償層として用いられる位相差板としては、加熱下や加湿下等の過酷な条件下における光学特性の変化や、表示のムラ(熱ムラ)の発生を抑止する観点から、光弾性係数の小さいものが好まれる。特に、テレビ等の大型の液晶表示装置の場合は、携帯電話等のモバイル用途と比較した場合に、加熱や加湿環境下における寸法変化が相対的に大きくなるため、光弾性複屈折に起因する位相差変化が大きくなる傾向があるため、光弾性係数の小さいものが好まれる。 【0138】 一方で、光弾性係数が小さいポリマーは三次元複屈折を制御することが困難であったり、位相差の波長分散のバリエーションに欠ける等、十分な光学補償能を発揮できる液晶セルの種類が制限される場合があった。また、モバイル用途においても、より耐久性の高いものが望まれる傾向があるため、光学補償層に光弾性係数が小さいポリマーが好ましく用いられるが、光弾性係数と配向複屈折は相関性が強く、一般に光弾性係数の小さいポリマーは、複屈折の発現性が小さい傾向がある。そのため、光弾性係数の小さいフィルムで所望の位相差を得ようとすると、光弾性係数の大きいフィルムと比較してフィルム厚みを大きくする必要が生じる場合があり、薄型化の要求が強いモバイル用途への使用が制限されることがあった。 【0139】 かかる観点から、光学補償層の光弾性係数の影響を受けずに、高耐久性を有する光学補償偏光板、あるいはそれを構成し得る積層光学フィルムが望まれている。本発明の積層光学フィルムによれば、光弾性係数が比較的大きい、例えば1.0×10-11m2/Nを超えるような位相差板を用いた場合でも、加熱下や加湿下等の過酷な条件下における光学特性の変化や、表示のムラ(熱ムラ)の発生が抑止されるという効果が見出された。 【0140】 このように、本発明の構成によって偏光板の耐久性が向上する原因は定かではないが、硬化層Hを設けることによって、第1保護フィルムF1の加熱・加湿による寸法変化が抑制され、それに伴って、偏光子P、第2保護フィルムF2の寸法変化も抑制されるために、第2保護フィルムF2と光学補償層Rの界面に生じる応力が小さくなり、結果として光学補償層(位相差板)Rの光弾性係数が大きい場合でも位相差値の変化が抑制されるものと考えられる。」 (イ) 技術常識1の認定 前記(ア)に示した引用文献5の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。) [技術常識1] 光弾性係数の小さいポリマーは複屈折の発現性が小さい傾向があるため、延伸処理してなる位相差フィルムを用いる場合、表示装置を薄型化するためには、光弾性係数の大きい(応力によって位相差特性が変化しやすい)位相差フィルムを採用する必要があること。 エ 甲7~9及び甲17の記載事項並びに周知技術4の認定 (ア) 甲7の記載事項 甲7(特開2016-130747号公報)には、次の記載がある。 「【0176】 <耐久性> 上記各例で得られた粘着剤層付き偏光フィルムの粘着剤層A(視認側)のセパレータ(剥離ライナー)を剥がし、カバーガラス:厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,1737)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで、15分間のオートクレーブ処理を行って、上記粘着剤層付偏光フィルムを完全に無アルカリガラスに密着させた。次いで、LANTECH社製の真空貼り合わせ装置を用いて0.2MPaの圧力、真空度30Paの条件にて真空貼り合わせを行った。これを、80℃の加熱オーブン(加熱)および60℃/90%RHの恒温恒湿機(加湿)の条件下にそれぞれ投入して、500時間後の偏光フィルムの剥がれの有無を、下記基準で評価した。 ◎:全く剥がれが認められなかった。 ○:目視では確認できない程度の剥がれが認められた。 △:目視で確認できる小さな剥がれが認められた。 ×:明らかな剥がれが認められた。 なお、実施例4~14、比較例1~3の粘着剤層Aについては、カバーガラスに貼り合わせ後、カバーガラス越しにUV照射(3000mJ/m2)し、粘着剤層Aの架橋度を向上させた後の粘着剤層A´について測定した。」 (イ) 甲8の記載事項 甲8(特開2017-3906号公報)には、次の記載がある。 「【0210】 <耐久性:剥がれ、発泡> 上記各例で得られた両面粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤BのセパレータSB(剥離ライナー)を剥がし、カバーガラス:厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,1737)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで、15分間のオートクレーブ処理を行って、上記両面粘着剤層付偏光フィルムを完全に無アルカリガラスに密着させた。次いで、セパレータSA(剥離ライナー)を剥がし、ガラス板(松浪硝子工業株式会社製、長さ100mm,幅50mm,厚さ0.7mm)に粘着剤層Aが接するように、真空貼り合せ装置を用いて真空度100Pa、面圧0.2MPaの貼り合せ圧力下で貼り合わせた。そして、ガラス/両面粘着剤層付偏光フィルム/ガラスの構成を有する評価用サンプルを得た。かかる処理の施されたサンプルに、85℃の雰囲気下で240時間処理を施した後(加熱試験)、また、60℃/95%RHの各雰囲気下で240時間処理を施した後(加湿試験)、また、85℃と-40℃の環境を1サイクル1時間で100サイクル施した後(ヒートショック試験:HS試験)を行った後に、片保護偏光フィルムとガラスの間の外観を下記基準で目視にて評価した。 (評価基準) ◎:20倍のルーペを用いて確認した結果、剥がれ、発泡による外観の低下がない。 ○:目視にて確認した結果、剥がれ、発泡による外観の低下がない ×:目視にて確認した結果、剥がれ、発泡による外観の低下がある。 なお、比較例2、3では粘着剤層Aを有していないため、評価結果はない。」 (ウ) 甲9の記載事項 甲9(特開2017-75998号公報)には、次の記載がある。 「【0094】 [評価用パネルの作製] 上記の両面粘着剤層付き偏光板A~Iのそれぞれを200mm×140mmのサイズにカットし、セル側粘着シート上のセパレータを剥離した後、ハンドローラを用いて、粘着シートの露出面をガラス板(280mm×180mm×0.7mm)上に貼り合わせた。その後、視認側粘着シート上のセパレータを剥離し、粘着シートの露出面にガラス板(280mm×180mm×0.7mm)を載置して、真空圧着装置で圧着して貼り合せを行った(装置内圧力:30Pa、貼り合わせ面圧:0.3MPa、貼り合わせ時間:5秒)。その後、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:0.5MPa、時間:15分)を行った。このようにして、偏光板の両面に、粘着シートを介してガラス板が貼り合せられた評価用パネルを得た。」 (エ) 甲17の記載事項 甲17(特開2018-72689号公報)には、次の記載がある。 「【0012】 本発明は、光学的表示装置を製造する方法を提供する。本方法において製造される光学的表示装置は、パネル部材の少なくとも後端部からシート状光学機能フィルムの一部が突出したものである。この光学的表示装置は、キャリアフィルムと、該キャリアフィルム上に形成された粘着剤層と、該粘着剤層を介してキャリアフィルム上に連続的に支持されたシート状光学機能フィルムとを含む帯状の光学フィルム積層体から、粘着剤層と共にシート状光学機能フィルムを剥離し、シート状光学機能フィルムを、該シート状光学機能フィルムの一部をパネル部材の少なくとも後端部から突出させた状態で、一対の貼合ローラによりパネル部材の貼合面に貼り合わせることによって、製造される。 【0013】 本方法は、キャリアフィルムを剥離体で折り返しながら搬送することにより、シート状光学機能フィルムを粘着剤層と共にキャリアフィルムから剥離し、シート状光学機能フィルムの先端部をパネル部材との貼合位置まで進める工程と、パネル部材を貼合位置まで進める工程と、貼合位置において、パネル部材の貼合面先端から貼合面後端まで、一対の貼合ローラによりパネル部材とシート状光学機能フィルムとを貼り合わせる工程とを含む。本方法においては、貼合面後端から貼合面前端側に向かって2mm以上の所定位置から、貼合面後端まで、100mm/秒未満の貼合速度で、パネル部材とシート状光学機能フィルム積層体とを貼り合わせる。 【0014】 一実施形態においては、所定位置から貼合面後端まで貼り合わせるときに一対の貼合ローラからパネル部材とシート状光学機能との積層体に負荷される押圧力が、0.3MPa~0.4MPaであることが好ましい。」 「【0019】 連続製造装置1の各部の動作は、制御部50の制御手段51によって制御することができ、各部において用いられるデータ等は、記憶手段52に記憶され、必要に応じて利用される。本発明において、シート状光学機能フィルムF1は、偏光フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム及び表面保護フィルムのいずれか又はこれらの組み合わせを含むものとすることができ、パネル部材Wは、液晶パネル、有機ELパネルなどとすることができる。」 「【0040】 一対の貼合ローラ23、24からパネル部材Wとシート状光学機能フィルムF1との積層体に負荷される押圧力は、少なくともパネル部材Wの所定位置PCから貼合面後端PBまでの部分(長さd2の部分)においては、貼合面後端PBからシート状光学機能フィルムF1の一部を突出させない通常の製造方法の場合に採用される押圧力より強いことが好ましく、0.3MPa~0.4MPaであることがより好ましい。このように、強い押圧力で貼り合わせることによって、パネル部材Wとシート状光学機能フィルムF1とがより強力に接着するため、シート状光学機能フィルムF1のパネル部材Wからの浮き上がりをより確実に防止することができる。押圧力は、発生する気泡が製品としての性能に支障を与えない程度であれば、0.3MPaより小さくてもよい。押圧力は、パネル部材Wが破損するおそれがあるため、0.4MPaより大きいことは好ましくない。」 (オ) 周知技術4の認定 前記(ア)~(エ)に示した甲7~9及び甲17の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術4」という。) [周知技術4] 粘着剤付き偏光板と画像表示セルを、ラミネート圧0.2~0.4MPa程度で貼り合わせること。 オ 引用文献8、9の記載事項及び周知技術6の認定 (ア) 引用文献8の記載事項 引用文献8(特開2011-232493号公報)には、次の記載がある。 「【0188】 水との接触角は、フィルムと水の親和性を表し、接触角の値が小さい方が水に濡れやすい。フィルムと偏光膜との接着には、一般的に接着剤としてポリビニルアルコール水溶液が使われるが、接触角の値が小さい方が、接着力が増すことが知られており、上記範囲内であることが好ましい。」 (イ) 引用文献9の記載事項 引用文献9(特開2014-10207号公報)には、次の記載がある。 【0068】 [偏光板] 図1を参照して、偏光フィルム12の一方の面に、ポリプロピレン系樹脂からなる保護フィルム11を、他方の面に二軸性位相差フィルム13を貼り合わせて偏光板15とするにあたり、これらの貼合は同時に行うのが有利である。偏光フィルム12への保護フィルム11と二軸性位相差フィルム13の貼合には通常、接着剤が用いられる。偏光フィルム12と保護フィルム11とを貼合するための接着剤、及び偏光フィルム12と二軸性位相差フィルム13とを貼合するための接着剤は、同種であっても異種であってもよいが、適度な接着力が得られるなら同種のものとするほうが、生産性の観点からは有利である。 【0069】 接着剤としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを接着剤成分とするものを用いることができる。好ましく用いられる接着剤の一つは、無溶剤型の接着剤である。無溶剤型の接着剤は、有意量の溶剤を含まず、加熱や活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線など)の照射により反応硬化する硬化性成分(モノマー又はオリゴマー)を含み、その硬化性成分の硬化により接着剤層を形成するものであり、典型的には、加熱や活性エネルギー線の照射により反応硬化する硬化性成分と、重合開始剤とを含む。」 (ウ) 周知技術6の認定 前記(ア)、(イ)に示した引用文献8、9の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術6」という。) [周知技術6] 偏光子と位相差フィルムを感圧接着剤以外の接着剤層を介して貼り合わせること。 カ 引用文献8、9の記載事項及び周知技術7の認定 (ア) 引用文献8の記載事項 前記引用文献8(特開2011-232493号公報)には、次の記載がある。 「【0304】 厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。 【0305】 次いで、下記工程1~5に従って偏光膜と前記第2の偏光板保護フィルム101、裏面側の第1の偏光板保護フィルムとして、コニカミノルタタックKC8UX-RHA(コニカミノルタオプト(株)製)を貼り合わせて偏光板を作製した。 【0306】 工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、鹸化されたセルロースエステルフィルムを得た。 【0307】 工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1~2秒浸漬した。 【0308】 工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて、更にKC8UX-RHAの反射防止層が外側になるように積層し、配置した。 【0309】 工程4:工程3で積層した偏光板保護フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルム試料を圧力20~30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。 【0310】 工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜とセルロースエステルフィルムと第2の偏光板保護フィルム101とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板101を作製した。」 (イ) 引用文献9の記載事項 前記引用文献9(特開2014-10207号公報)には、次の記載がある。 「【0068】 [偏光板] 図1を参照して、偏光フィルム12の一方の面に、ポリプロピレン系樹脂からなる保護フィルム11を、他方の面に二軸性位相差フィルム13を貼り合わせて偏光板15とするにあたり、これらの貼合は同時に行うのが有利である。偏光フィルム12への保護フィルム11と二軸性位相差フィルム13の貼合には通常、接着剤が用いられる。偏光フィルム12と保護フィルム11とを貼合するための接着剤、及び偏光フィルム12と二軸性位相差フィルム13とを貼合するための接着剤は、同種であっても異種であってもよいが、適度な接着力が得られるなら同種のものとするほうが、生産性の観点からは有利である。 【0069】 接着剤としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを接着剤成分とするものを用いることができる。好ましく用いられる接着剤の一つは、無溶剤型の接着剤である。無溶剤型の接着剤は、有意量の溶剤を含まず、加熱や活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線など)の照射により反応硬化する硬化性成分(モノマー又はオリゴマー)を含み、その硬化性成分の硬化により接着剤層を形成するものであり、典型的には、加熱や活性エネルギー線の照射により反応硬化する硬化性成分と、重合開始剤とを含む。 (ウ) 周知技術7の認定 前記(ア)、(イ)に示した引用文献8、9の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術7」という。) [周知技術7] 偏光板の画像表示セルと反対側の表面に、感圧接着剤以外の接着剤層を介して透明保護フィルムを貼り合わせること。 キ 引用文献8、10、11の記載事項及び周知技術8の認定 (ア) 引用文献8の記載事項 前記引用文献8(特開2011-232493号公報)には、次の記載がある。 「【0239】 《粘着層》 本発明の偏光板は、第1の偏光板保護フィルム、偏光膜、第2の偏光板保護フィルム、及び粘着層がこの順に備えられた偏光板であって、当該粘着層が、23℃において、0.2MPa以上の貯蔵弾性率G’を有しており、かつ2~20μmの範囲内の層厚を有していることを特徴とする。 …(中略)… 【0329】 《液晶セル、液晶表示装置の作製》 ITO透明電極が設けられたガラス基板の上に、ポリイミド配向膜を設け、ラビング処理を行った。4.3μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向き合うように重ねた。二枚の基板は、配向膜のラビング方向が直交するように配置した。基板の間隙に、棒状液晶性分子(ZLI-4792、メルク社製)を注入し、以上のように作製したTN液晶セルの両側に偏光板201の本発明に係る第2の偏光板保護フィルムが液晶セル側となるように粘着層を介して二枚貼り付けて、液晶表示装置101を作製した。液晶表示装置の液晶セルに、55Hzの矩形波電圧を印加し、白表示1.6V、黒表示4.8Vにおける白表示と黒表示との透過率をコントラスト比として、上下左右でコントラスト比10及び20が得られる視野角を測定した。なお、偏光板を貼り付ける側の基板のラビング軸と偏光板の吸収軸とが一致するように偏光板を液晶セルに貼合した。 …(中略)… 【0332】 作製した液晶表示装置101~110について以下の評価を行った。 【0333】 《評価》 〈視野角〉 視野角測定はELDIM製EZ-contrast160Rを用いて行った。 【0334】 TN視野角評価基準: ○:下記市販のTNと比較して左右それぞれ30°以上改善 △:下記市販のTNと比較して左右それぞれ10°以上改善 ×:下記市販のTNと比較して改善なし 市販のTN型液晶表示装置の視野角: 視野角 上 下 左右 反転左右 TN 27° 60° 45°×2 40° 〈額縁むら〉 作製した各液晶表示装置を1000時間点灯した後、黒表示での画面周辺の光漏れ(額縁むら)の有無を目視で確認した。 【0335】 ◎:画面周辺に光漏れなし ○:画面周辺に僅かに光漏れあり △:画面周辺に光漏れをハッキリ観察される ×:画面周辺に光漏れが全面的に観察され、液晶装置の中央付近まで発生 〈パネル硬度〉 JIS-S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS-K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆でハードコート層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。数字か高いほど、高硬度を示す。 【0336】 ○:鉛筆硬度が2H以上 ×:鉛筆硬度がH以下 液晶表示装置101~110の構成と評価結果を表4に示す。 【0337】 【表4】 [図:0001434105000012.jpg] 【0388】 表4から、本発明の構成の液晶表示装置は、額縁むら、パネル硬度が比較例に対して改善されることが明らかである。」 (イ) 引用文献10の記載事項 本決定において新たに引用する引用文献10(特開2019-20718号公報)には、次の記載がある。 「【0012】 <光学シート> 図1は、本発明の光学シートの一例を示す概略断面図である。図1に示す光学シート10は、表面保護フィルム2、偏光板1、および剥離フィルム3をこの順に有する積層フィルムである。光学シート10において、表面保護フィルム2、偏光板1、および剥離フィルム3は、この順に積層されていることが好ましい。光学シート10において、表面保護フィルム2および剥離フィルム3は、それぞれ光学シートの最表面を構成する部材であることが好ましい。」 「【図1】 [図:0001434105000013.jpg] 」 「【0019】 以下、光学シートが有する各部材について説明をする。 <偏光板> 偏光板1は、少なくとも偏光子を含む偏光素子であり、通常はその片面又は両面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムをさらに含む。熱可塑性樹脂フィルムは、偏光子を保護する保護フィルム、偏光子とは異なる光学機能を有する他の光学フィルム等であることができる。熱可塑性樹脂フィルムは、その表面に積層される樹脂層(例えばハードコート層、帯電防止層、防眩層、光拡散層、位相差層(1/4波長の位相差値を持つ位相差層等)、反射防止層、低屈折率層、防汚層等から選択される少なくとも一種の光学層)を備えていてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、接着剤層又は粘着剤層を介して偏光子に貼合することができる。表面保護フィルム2は、この樹脂層の表面に積層されてもよい。 …(中略)… 【0055】 (4)粘着剤層 偏光板1は、その最表面に粘着剤層を有することが好ましい。この粘着剤層は、偏光板1を表示素子(例えば液晶セル)や他の光学部材に貼合するために用いることができる。この粘着剤層上に、剥離フィルム3が積層されることが好ましい。また、粘着剤層は、偏光子と保護フィルムや輝度向上フィルムとを積層させるのに使用することもできる。粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。 …(中略)… 【0061】 粘着剤層の厚みは、通常1~40μmであるが、光学シートの薄膜化の観点、及び良好な加工性を保ちつつ偏光板1の寸法変化を抑制する観点から、3~25μm(例えば3~20μm、さらには3~15μm)とすることが好ましい。」 (ウ) 引用文献11の記載事項 本決定において新たに引用する引用文献11(特開2018-25792号公報)には、次の記載がある。 「【0013】 <積層フィルム> 図1は、本実施形態の積層フィルムの層構成の一例を示す断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の積層フィルム1は、偏光子層11と、樹脂層21と、偏光子層11と樹脂層21とを接着する接着剤層31と、を有する。別の実施形態において、偏光子層11における樹脂層21とは反対側には、さらに保護フィルムを積層してもよい。」 「【図1】 [図:0001434105000014.jpg] 」 「【0028】 樹脂層21は、偏光子層11の吸収軸に対して斜交する方向に遅相軸を有し、例えば遅相軸の角度は偏光子層11の吸収軸に対して45±10°または135±10°であることが好ましい。遅相軸の角度が上記範囲であることにより、進相軸方向における光の位相と遅相軸方向における光の位相との差がπ/2となる。進相軸と遅相軸との位相差がπ/2であることで、本実施形態の積層フィルム1を表示装置に適用したとき、積層フィルム1を通過した光を円偏光にすることができる。よって、偏光グラス越しに見た場合でも、視認性に優れた構成とすることができる。 …(中略)… 【0105】 [保護フィルム] 図2は、本実施形態の積層フィルムの層構成の変形例を示す断面模式図である。図2に示すように、積層フィルム2において、偏光子層11における樹脂層21が積層された側とは反対側には、さらに保護フィルム23を積層させることができる。保護フィルム23を形成する材料としては、上記樹脂層21を形成する材料と同様の樹脂を使用することができる。樹脂層21を形成する材料と保護フィルム23を形成する材料とは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。」 「【図2】 [図:0001434105000015.jpg] 」 「【0107】 偏光子層11における樹脂層21が積層された面とは反対側、または保護フィルムにおける偏光子層11が積層された面とは反対側には、粘着剤層(図示なし)を設けてもよい。粘着剤層を設けることにより、積層フィルム2を表示装置の液晶セルに貼合することができる。粘着剤層としては、アクリル系樹脂を含有する粘着剤が挙げられる。本発明の積層フィルムは、液晶セルの視認側に配置されることが好ましい。 …(中略)… 【実施例】 【0126】 以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例で使用する未延伸フィルムとは、延伸されていない状態のフィルムを指す。 …(中略)… 「【0170】 上記樹脂層の他方の面に、貯蔵弾性率約0.7MPaの粘着剤層(厚さ15μm)を形成した。この粘着剤層を介して、積層フィルムをガラス板の片面に貼合し、評価サンプルとした。得られた評価サンプルを、上記「積層フィルムの耐湿熱性の評価」と同じく、温度65℃、湿度90%RHの環境に250時間放置し、放置前後の視感度補正偏光度を比較した。」 (エ) 周知技術8の認定 前記(ア)~(ウ)に示した引用文献8、10、11の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者に周知であったと認められる。(以下「周知技術8」という。) [周知技術8] 光学フィルムを表示装置に貼り付けるための粘着剤層の厚みを15μm程度とすること。 ク 引用文献12、13の記載事項及び周知技術9の認定 (ア) 引用文献12の記載事項 本決定において新たに引用する引用文献12(国際公開第2017/216886号)には、次の記載がある。 「[0051] <偏光フィルム> 本発明の両面粘着剤層付偏光フィルムに用いる片保護偏光フィルムとしては、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを有するものが用いられる。 …(中略)… [0060] 前記透明保護フィルムとしては、位相差フィルムを用いることができる。 …(中略)… [0070] <粘着剤層> 以下に本発明の粘着剤層Aおよび粘着剤層Bについて説明する。 …(中略)… [0073] <粘着剤層の貯蔵弾性率、ゲル分率> …(中略)… [0077] 前記粘着剤層Bは、通常、活性エネルギー線硬化型粘着剤層は用いられない。前記粘着剤層Bは、23℃における貯蔵弾性率が0.01~1.0MPaであるのが好ましく、さらには0.05~0.7MPa、さらには0.07~0.5MPaであるのが加工性、保管性、耐久性を満足する上で好ましい。 …(中略)… [0204] <せん断貯蔵弾性率の測定> 23℃におけるせん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により求めた。上記測定サンプルの粘着剤層A、粘着剤層Bを、動的粘弾性測定装置(装置名「ARES」、(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、周波数1Hzの条件で、-20~100℃の温度範囲、昇温速度5℃/分で測定して、23℃におけるせん断貯蔵弾性率を算出した。」 (イ) 引用文献13の記載事項 本決定において新たに引用する引用文献13(特開2014-156552号公報)には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、粘着剤組成物及び該粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する光学用粘着シートに関する。より詳しくは、光学部材の貼り合わせや光学製品の製造等に用いられる光学用粘着シートが有する粘着剤層を形成するための材料として適した粘着剤組成物、及び上記光学用粘着シートに関する。また、本発明は、上記光学用粘着シートを有する光学フィルム及び表示装置に関する。 …(中略)… 【0074】 本発明の粘着剤層の、紫外線硬化前の動的粘弾性測定により測定される25℃におけるせん断貯蔵弾性率(「せん断貯蔵弾性率(25℃)」又は「G’(25℃)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、3.0×104~5.0×105Paが好ましく、より好ましくは5.0×104~4.0×105Pa、さらに好ましくは7.0×104~3.0×105Paである。せん断貯蔵弾性率(25℃)を3.0×104Pa以上とすることにより、粘着剤層が柔らかくなり過ぎることなく、例えば、「糊はみ出し」(貼り合わせた時に粘着剤層が変形して貼り合わせた部材の端部からはみ出す現象)などの不具合が低減される傾向がある。一方、せん断貯蔵弾性率(25℃)を5.0×105Pa以下とすることにより、段差吸収性(段差追従性)が向上し、貼り合わせ時の気泡や浮きの発生が低減される傾向がある。なお、「段差吸収性」とは、表面に微細な段差(例えば、印刷段差など)を有する被着体に貼付した際に、粘着剤層が上記段差に追従し、上記段差を埋めることができる性能をいう。上記のせん断貯蔵弾性率(25℃)は、上記のせん断貯蔵弾性率(85℃)と同様の方法により測定することができる。 …(中略)… 【0097】 本発明の粘着シートは、光学製品に用いられる光学部材を貼り合わせる用途等に好ましく使用することができる。上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であればよく、特に限定されないが、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「光学フィルム」と称する場合がある)などが挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」を含むものとする。例えば、本発明の粘着シートを用いて上記光学フィルムを貼り合わせることによって、あるいは、基材レスタイプの本発明の粘着シートを上記光学フィルムの少なくとも片面に貼付すること等によって、本発明の粘着シートを有する光学フィルムを得ることができる。」 (ウ) 周知技術9の認定 前記(ア)、(イ)に示した引用文献12、13の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者に周知であったと認められる。(以下「周知技術9」という。) [周知技術9] 光学フィルムを表示装置等に貼り付けるための粘着剤層の25℃近辺におけるせん断貯蔵弾性率を70~500KPa程度の値とすること。 3 取消理由2(進歩性の欠如)について (1) 本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1(構成A2aを選択したもの)と引用発明の対比 本件訂正発明1の構成A2は、構成A2aと構成A2bの和集合になっているところ、ここでは本件訂正発明1のうち構成A2について構成A2aを選択したものと引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(画像表示装置) a 構成Xは、「画像表示セル、および前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える画像表示装置」の発明であることを特定するものである。 b(a) 引用発明における、「液晶セル8」は、本件訂正発明1における「画像表示セル」に相当する。 (b) そして、引用発明における「粘着剤からなる接着層3」は、本件訂正発明1における「粘着剤層」に相当する。 (c) さらに、引用発明における「光学フィルム1」のうち、「粘着剤からなる接着層3」と接着層3を覆う「離型紙2」を除いたもの、すなわち「位相差板4」と、位相差板4の上に粘着剤からなる接着層6を介して積層された「偏光子5」と、偏光子5の上に積層された「基材フィルム7」は、全体として本件訂正発明1における「偏光板」に相当する。 c 上記bの相当関係を踏まえると、引用発明においては、「液晶パネル10aは、液晶セル8の表面(表示画面側)に粘着剤からなる接着層3を介して位相差板4が接着され[ている]」から、引用発明は、本件訂正発明1における「前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板」に相当する構成を備えているといえる。 d そうすると、「画像表示装置」の発明である本件訂正発明1と「液晶表示装置」の発明である引用発明は、次の点において一致する。 「画像表示セル、および前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える画像表示装置」の発明である点。 (イ) 構成A1~A3の観点(偏光板の積層構造) a 構成A1について(偏光子及び位相差フィルムの積層順) (a) 構成A1は、「前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え、前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、前記位相差フィルムが前記粘着層に接しており、前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わされて[いる]」ことである。 (b) 引用発明における「偏光子5」及び「位相差板4」は、それぞれ本件訂正発明1における「偏光子」及び「位相差フィルム」に相当する。 (c) また、引用発明においては、「基材フィルム7は、偏光子を保護する保護フィルムとしても機能するもの」であるから、引用発明における「基材フィルム7」は、本件訂正発明1における「第一透明保護フィルム」に相当する。 (d) そうすると、前記(ア)の検討結果も踏まえると、引用発明においては、「液晶パネル10aは、液晶セル8の表面(表示画面側)に粘着剤からなる接着層3を介して位相差板4が接着され、この位相差板4の上に、接着剤からなる接着層6を介して偏光子5が積層されていて、更に、偏光子5の上に基材フィルム7が積層されている」から、引用発明は、本件訂正発明1における次の構成を備えているといえる。 「前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムを備え、前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、前記位相差フィルムが前記粘着層に接して[いる]」こと。 (e) 一方、本件訂正発明1においては、「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わされて[いる]」のに対して、引用発明においては、「偏光子5の上に基材フィルム7が積層されている」点において相違する。 (d) 以上をまとめると、本件訂正発明1と引用発明の、構成A1の観点における一致点及び相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。 i 構成A1の観点における一致点 「前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え、前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、前記位相差フィルムが前記粘着層に接して[いる]」点。 ii 構成A1の観点における相違点(部分相違点A1) 「偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルム」について、 本件訂正発明1においては、「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わされて[いる]」のに対して、 引用発明においては、「偏光子5の上に基材フィルム7が積層されている」点。 b 構成A2aについて(偏光子及び位相差フィルムの接着方法) (a) 構成A2aは、「前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わせられている」ことである。 (b) 引用発明においては、「位相差板4の上に接着剤からなる接着層6を介して偏光子5が積層されて[いる]」から、本件訂正発明1における構成A2aと、「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層を介して貼り合わせられて[いる]」点において共通する。 (c) そうすると、本件訂正発明1と引用発明の、構成A2aの観点における一致点及び相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。 i 構成A2aの観点における一致点 「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層を介して貼り合わせられて[いる]」点。 ii 構成A2aの観点における相違点(部分相違点A2a) 「前記偏光子」と「前記第一透明保護フィルム」とを貼り合わせる接着材層について、 本件訂正発明1においては、「接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)」に限定されているのに対して、 引用発明においては、「接着剤からなる接着層6」であり、「感圧接着剤を除く」ものに限定されてはいない点。 c 構成A3について (a) 構成A3は、「前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニル系偏光子であ[る]」ことである。 (b) 引用発明は、偏光子として「ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって得られたフィルム偏光子」を使用するものであるところ、当該偏光子は、本件訂正発明1の「ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニル系偏光子」に相当する。 (c) したがって、本件訂正発明1と引用発明は、構成A3の観点である次の点において一致する。 「前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニル系偏光子であ[る]」点。 (ウ) 構成Bの観点(位相差フィルムの面内複屈折) a 構成Bは、「前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折が8×10-3以上であ[る]」ことである。 b 引用発明の「位相差板」の、波長550nmにおける面内複屈折については、限定が無い。 c したがって、本件訂正発明1と引用発明は、構成Bの観点である次の点において相違する。 <構成Bの観点における相違点(部分相違点B)> 位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折について、 本件訂正発明1においては、「8×10-3以上である」との限定があるのに対して、 引用発明においては、このような限定がない点。 (エ) 構成Cの観点(|θ1-θ2|) a 構成Cは、「前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である」ことである。 b 引用発明は、本件訂正発明1の構成Cに相当する構成を備える点について明示していないから、本件訂正発明1と引用発明は、次の点において相違する。 <構成Cの観点における相違点(部分相違点C)> 本件訂正発明1においては、「前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である」との限定があるのに対して、 引用発明においては、このような限定がない点。 (オ) 構成Dの点 a 構成Dは、「前記粘着層は、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kpa/μm以上であ[る]」ことである。 b 引用発明は、粘着剤のせん断貯蔵弾性率、厚み、及びせん断弾性貯蔵弾性率を厚みで割った値について特定されていない。 c したがって、本件訂正発明1と引用発明は、構成Dの観点である次の点において相違する。 <構成Dの観点における相違点(部分相違点D)> 「粘着層」について、 本件訂正発明1においては「温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kpa/μm以上であ[る]」のに対して、 引用発明は、このような限定がない点。 イ 一致点及び相違点の認定 前記アの対比の結果をまとめると、本件訂正発明1(構成A2のうちA2aを選択したもの)と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。 (ア) 一致点 「画像表示セル、および前記画像表示セルの表面に粘着剤層を介して貼り合わせられた偏光板を備える画像表示装置であって、 前記偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に配置された位相差フィルムと、偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルムとを備え、 前記位相差フィルムは、前記偏光子と前記画像表示セルの間に配置されており、 前記位相差フィルムが前記粘着層に接しており、 前記偏光子と前記位相差フィルムが接着剤層を介して貼り合わせられており、 前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性物質が吸着し所定方向に配向しているポリビニル系偏光子である、 画像表示装置」の発明である点。 (イ) 相違点 <部分相違点A1> 「偏光子の他方の面に配置された第一透明保護フィルム」について、 本件訂正発明1においては、「前記偏光子と前記第一透明保護フィルムが接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)を介して貼り合わされて[いる]」のに対して、 引用発明においては、「偏光子5の上に基材フィルム7が積層されている」点。 <部分相違点A2a> 「前記偏光子」と「前記第一透明保護フィルム」とを貼り合わせる接着材層について、 本件訂正発明1においては、「接着剤層(ただし、感圧接着剤を除く)」に限定されているのに対して、 引用発明においては、「接着剤からなる接着層6」であり、「感圧接着剤を除く」ものに限定されてはいない点。 <部分相違点B> 位相差フィルムの波長550nmにおける面内複屈折について、 本件訂正発明1においては、「8×10-3以上である」との限定があるのに対して、 引用発明においては、このような限定がない点。 <部分相違点C> 本件訂正発明1においては、「前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、0.4°以下である」との限定があるのに対して、 引用発明においては、このような限定がない点。 <部分相違点D> 「粘着層」について、 本件訂正発明1においては「温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kpa/μm以上であ[る]」のに対して、 引用発明は、このような限定がない点。 ウ 相違点についての判断 (ア) 部分相違点A1について 偏光子の画像表示セルと反対側の表面に、感圧接着剤以外の接着剤層を介して透明保護フィルムを貼り合わせることは、周知の技術であり(前記周知技術7参照)、当業者には自明の設計上の選択肢である。したがって、引用発明において、かかる周知技術7を採用して部分相違点A1に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、自明の設計上の事項にすぎず、かかる選択をしたことに進歩性は認められない。 (イ) 部分相違点A2aについて 偏光子と位相差フィルムを感圧接着剤以外の接着剤層を介して貼り合わせることは、周知の技術であり(前記周知技術6参照)、当業者には自明の設計上の選択肢である。したがって、引用発明において、かかる周知技術6を採用して部分相違点A2aに係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、自明の設計上の事項にすぎず、かかる選択をしたことに進歩性は認められない。 (ウ) 部分相違点Bについて 液晶表示装置の視野角補償や反射防止を目的として設けられる位相差フィルムにおいて、液晶表示装置を薄型に形成するために、面内複屈折率の大きい(例えば、0.05~0.5)位相差フィルムを採用することは、周知の技術であるから(前記周知技術1参照)、当業者には自明の設計上の選択肢である。したがって、引用発明において、かかる周知技術1を採用して「位相差板」の「波長550nmにおける面内複屈折」を「8×10-3以上」とすることは、当業者にとっては自明の設計上の事項にすぎず、かかる選択をしたことに進歩性は認められない。 (エ) 部分相違点Cについて a(a) 前記2(2)ア(イ)において認定したとおり、「光学主軸と透過軸とのずれは、光学フィルムと偏光板との光学積層体の単体検査では検出されなくとも、液晶パネルセット後に光学フィルムへの応力負荷が起因して初めて現れる場合もあり、当該ずれが生じると、液晶パネルの黒状態のときに光がその不良個所から抜け出して出射され、その結果、パネルの隅部が薄く光る等の輝度ムラが発生すること」は当業者には自明の事項であり(前記「自明の事項1-1」)、このようなムラが生じないようにすべきことは、当業者には自明のことである。 (b) したがって、「粘着剤付き偏光板において、前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0と、前記粘着剤付き偏光板を前記画像表示セルと貼り合わせた後の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1との差の絶対値|θ1-θ0|が、輝度ムラが視認できない程度に十分に小さい値となるべきこと、理想的にはゼロとなるべきことは、当業者には自明である。 b(a) そして、前記2(2)ア(イ)において認定したとおり、「応力が起因する場合は、セットしたパネルを分解し、フィルムを液晶セルから剥がして単体に戻すと、応力緩和によりムラ要因が検出されなくなること。」も当業者には自明である(前記「自明の事項1-2」)。 (b) そうすると、「粘着剤付き偏光板において、前記偏光子の吸収軸方向と前記位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度θ0」と「前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2」が同じ値にあることは当業者には自明である。 c 前記a及びbの検討結果をまとめると、「前記偏光板が前記画像表示セルに前記粘着剤層を介して貼り合わせられている状態における、前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ1と、前記偏光板を前記画像表示セルから剥離した際の前記位相差フィルムの遅相軸方向と前記偏光子の吸収軸方向とのなす角度θ2との差の絶対値|θ1-θ2|が、輝度ムラが視認できない程度に十分に小さい値となるべきこと、理想的にはゼロとなるべきことは、当業者には自明である。 したがって、部分相違点Cは格別のものではなく、部分相違点Cの点を限定したことをもって進歩性を認めることはできない。 <参考> 願望クレームの(結果で構成を特定する)発明の進歩性の判断 願望クレームの(結果で構成を特定する)発明の進歩性を判断するにあたっては、達成すべき結果(課題自体)に想到することが当業者にとって困難性があるというべきか否かという観点から検討すべきものである。 このような進歩性要件の判断手法を示す参考裁判例を挙げると、次のものがある。(「,」を「、」に改めた(後記の参考裁判例も同じ。)。また、審判システム上の制約から、丸数字(○の中に数字)を「○1」などと表記を改めた。) 裁判例1 (東京高等裁判所平成15年11月27日判決(平成12年(行ケ)第429号)) 「本件第1発明は、特定の種類の材料が少なくとも部分的に用いられており、全体が製造された状態において、上記部分が一定の物性を持つめがねフレーム、の発明である。その製造方法でも、ましてや上記材料自体ないしその製造方法でもない。本件で考案の対象とされる本件第1発明は、上記のようなめがねフレームそのものであって、上記製造方法、材料自体ないしその製造方法の容易想到性や、実現の困難性は,基本的に本件において問題になるものではない。 本件第1発明の進歩性を、上記の構成のめがねフレーム自体の容易想到性の有無の観点から判断することが許されることは、当然である。 (2) めがねフレームとして、○1剛性や弾性が大きすぎないこと(かけ心地を軟らかくするためである。)、並びに、○2少なくとも部分的に(例えばつる、テンプル等において)ある程度の弾性を持つこと(かけたとき容易にずれたり外れたりしないようにするためである。)、の二つの性質は、好ましいというより、むしろ当然備えるべきものであり、そのことは、当業者のみならず、単なる消費者であっても容易に思い付く、一般常識といってもよいことである。(中略) 本件第1発明は、前記のとおりのものであり、要するに、ニッケル-チタニウムベースの形状記憶合金を用いて、これに加工硬化と熱処理を加え、めがねのフレームとして具えていることが好ましい特性を、実用性の面からみて好ましい温度幅の全体にわたって維持するようにしてあるめがねフレーム、というものであり,それ以上のものではない。ニッケル-チタニウムベースの形状記憶合金及びそれに対する加工硬化と熱処理という周知技術の下で、これをみれば、つまるところ,これらの技術を用いて達成すべき課題をそのまま構成要件としただけのものであり、それ以上に具体的な要素は何ら有するものではない(このような課題を実現する具体的手段に想到することは困難であり得ても、このような課題に想到することには何らの困難もない。両者の区別は明確に認識されなければならない。)。」 裁判例2 (東京高等裁判所昭和37年6月26日判決(昭和34年(行ナ)第6号、審決取決訴訟判決集昭和36・37年269頁)) 「本件特許請求の範囲における数的限定は、従来知られたものを除外した範囲の。高い酸化鉄濃度と高い残留磁化とである、というにとどまるといわなければならないが、酸化鉄濃度と残留磁化(保磁力)との高いことが従来から要求されているととろであることは、前記のとおりである。原告が本件特許出願において特許を請求している事項は、上記の傾向に基き従来品を包含しない特性の優れた範囲に限定したものに相当し、当業技術者がそのように限定することに格別の工夫を必要とするものとは、とうてい考えることができない。 (中略) 本件特許出願明細書中発明の詳細なる説明の前記記載によれば、本願の発明者が発明した新しい技術として上記明細書に開示されているところのものは、むしろ、従来にない優秀な磁気記録材料の製造方法であって、製造されたその材料そのものではないといわなくてはならない。 (中略) 本願明細書に記載された製造方法が新規有用なものであって方法として特許さるべきであるかどうかは別論として、従前のものよりも優れた物というに異ならない本願の特許請求事項は、当業者の希望するところであつても、そのような希望を述べることに格別の発明能力を要するものとは考えられない。」 (オ) 部分相違点Dについて a(a) 前記2キ(エ)及びク(ウ)で示したように、光学フィルムを表示装置等に貼り付けるための粘着剤層の厚みを15μm程度とすること(周知技術8)や、25℃近辺におけるせん断貯蔵弾性率を70~500kPa程度の値とすること(周知技術9)は、いずれも周知技術であったものと認められる。 (b) 前記周知技術8と周知技術9を適用した場合、せん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dは約4.7~33.3kpa/μm程度となり、G’/Dが5.0kpa/μm以上であるとする部分相違点Dに係る本件訂正発明1の構成をほぼ満たすものとなるから、部分相違点Dは、そもそも、引用発明において周知技術8と周知技術9を採用した程度のものにすぎない数値限定である。 b(a) ここで、光学フィルムを表示装置に適用した際の液晶パネルセット後に光学フィルムへの応力負荷に起因して生じる表示ムラの課題は当業者に周知のものである(前記「自明の事項1-1」を参照)。 (b) そして、引用文献8の【0337】【表4】においても、画面周辺の光漏れ(いわゆる「額縁むら」)について検討されており、粘着層の貯蔵弾性率G’と層厚を好適化していること(さらには引用文献8の【0004】において「バックライトの熱による偏光膜収縮応力による額縁状の光漏れ(額縁むら)…(中略)…この解決として、…(中略)…、偏光板と液晶セル基板の貼合に用いる粘着層の貯蔵弾性率や粘着層の膜厚を最適化したりする手法が知られている。」と記載されていること。)にも鑑みれば、製造直後の表示ムラか、それとも劣化などの経時的な変化による表示ムラかの違いはあれど、位相フィルムの応力負荷に粘着層の貯蔵弾性率G’と層厚が影響を与えるかもしれないと考えることは、当業者にとっては素直な発想である。 (c) そうすると、当業者が前記周知技術8、9を踏まえて引用発明の「粘着剤からなる接着層3」を選択するにあたり、液晶パネルセット後に光学フィルムへの応力負荷に起因して生じる表示ムラへの影響をも考慮して、そのせん断貯蔵弾性率G’と厚みDを好適化することは、当業者にとっては、通常の創作能力の発揮にすぎないものと認められる。 (d) さらには、部分相違点Dに係る本件訂正発明1の構成である粘着剤層の厚みや貯蔵弾性率は、例えば引用文献8の段落【0377】【表4】の液晶表示装置101~103、108における粘着層が満たしているものでもある。 c 以上のとおりであるから、液晶パネルセット後に光学フィルムへの応力負荷に起因して生じる表示ムラが生じないという効果を考慮したとしても、せん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dとして5.0kpa/μm以上の値を選択することは、当業者にとっては格別困難性なく採用し得る設計上の事項というべきであって、部分相違点Dをもって本件訂正発明1の進歩性を肯定することはできない。 (カ) 総合評価 前記(ア)~(オ)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点全体を総合的に勘案しても、本件訂正発明1が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件訂正発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (キ) 特許権者の主張について 特許権者は、下記主張1~3の主張をしているので、以下検討する。 a 主張1について(偏光子の構成について) (a) 主張1の内容 引用発明は、実施例1~6に示されるように配向膜上で液晶材料を配向させたようなコーティング偏光子が用いられている。この偏光子をポリビニルアルコール系偏光子に置き換えた場合には、引用文献7の段落【0049】、【0050】に記載されるような、偏光子の厚みを薄くかつ軽量化するとの目的を達成することができなくなることから、このような改変には明白な阻害要因が存在する。 さらに、コーティング偏光子と位相差板の貼り合わせに感圧接着剤ではない接着剤を用いることが周知であるとは認められないし、また、コーティング偏光子を採用することを本質とする引用発明を起点として、偏光子の一方の面に接着剤層を介して位相差フィルムが貼り合わされ、かつ偏光子の他方の面に接着剤を介して透明保護フィルムが貼り合わせられている構成を導くことは不可能である。 (b) 主張1についての検討 前記第5の2(1)アで示したとおり、引用文献7の段落【0014】には、偏光子として「ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって得られたもの等が使用できる」ことが明記されているから、そもそもこの点は相違点ではない。 さらにいえば、引用発明が解決しようとする課題は、【0040】に記載されるように「偏光子と液晶セルとの間に基材フィルムが介在している」ことによって「基材フィルムの材料が限定され」、「液晶パネルのコスト高を招く」ことを解消することであり、偏光子をコーティング偏光子として薄型化することは、前記のコスト高に関する課題を解決するために必須のものではないことは明らかである。 コストという観点からは、高精度な成膜技術が必要なコーティング偏光子よりも、ロールツーロールで大量生産に向くフィルム偏光子の方が有利という面すらあるといえる。 したがって、特許権者の主張1は、採用することができない。 b 主張2について(構成に至ることの容易想到性) (a) 主張2の内容 引用発明には、「温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPaであり、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を厚みDで割った値G’/Dが、5.0kpa」であるような粘着剤層を採用する動機付けや必然性は存在しない。 さらに、本件訂正発明の内容を知らない当業者が、コーティング偏光子を採用することにより薄型軽量性に優れる液晶パネルを得ることを主旨とする引用発明を起点として、引用文献4に記載の面内複屈折の大きい位相差フィルムおよび引用文献3に記載の事項を順次採用する動機付けや合理性が存在するとは認められない。 (b) 主張2についての検討 前記a(b)で検討したように、引用文献7には「ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって得られたもの等が使用できる」ことが明記されている。そして、本件訂正発明1の構成に至ることが当業者にとって容易であることは、前記(ア)~(カ)で検討したとおりである。 したがって、特許権者の主張2は、採用することができない。 c 主張3について(本件訂正発明1が奏する効果について) (a) 主張3の内容 面内複屈折が8×10-3以上である位相差フィルムに接して設けられている粘着剤層が、温度25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が60~250kPa、G’を厚みDで割った値G’/Dが5.0kPa/μm以上を満たすことにより、|θ1-θ2|を0.4°以下とし、これにより画像表示装置におけるムラの発生が抑制されるとの本件訂正発明1に関わる効果は、いずれの引用文献からも想起し得るものではない (b) 主張3についての検討 本件訂正発明1で特定される粘着剤層の貯蔵弾性率や厚さは周知のものにすぎず、奏される表示ムラに関する効果について考慮しても、当該効果は当業者が当然に考慮すべきものであって、G’/Dが5.0kPa/μm以上であるという数値範囲は引用発明に基づき当業者が設計変更を行う中で自然に到達する値であるというべきことは、前記(オ)において検討したとおりである。 したがって、特許権者の主張3は、採用することができない。 (ク) 本件訂正発明1についてのまとめ 前記(ア)~(キ)において検討したとおりであるから、本件訂正発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2は、「遅相軸方向に対して45°方向に張力を付与した際の、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上である」位相差フィルムを特定しているが、上記特定の技術的意義としては、本件明細書等の段落【0048】~【0050】を参酌するに、応力によって位相差特性(光弾性係数等も含む)が変化しやすい位相差フィルムであることを特定したものと認められる。 イ(ア) ここで、前記2(3)イにおいて技術常識1として示したように、光弾性係数の小さいポリマーは複屈折の発現性が小さい傾向があるため、延伸処理してなる位相差フィルムを用いる場合、表示装置を薄型化するためには、光弾性係数の大きい(応力によって位相差特性が変化しやすい)位相差フィルムを採用する必要があることは技術常識である。 (イ) そして、光弾性係数の大きいほど、張力による光学軸方向の変化量も大きくなる傾向がある。 (ウ) そうすると、表示装置の薄型化のため、応力によって位相差特性(光弾性係数等も含む)が変化しやすい位相差フィルムを用いることは、自明のことである。 ウ そして、0.1°/N/10mmという値自体には、特段の技術上の意義が認められず、当業者が許容範囲の下限を設定しただけであるという評価しかできない。 エ そうすると、「遅相軸方向に対して45°方向に張力を付与した際の、張力に対する遅相軸の変化量が、0.1°/N/10mm以上である」という技術事項は、当該境界値に作用効果上の臨界的な意義はなく、応力によって位相差特性(光弾性係数等も含む)が変化しやすい位相差フィルムを用いるということ自体は自明のことであるところ、これを独自に設定したパラメータを用いて表現したにすぎないから、技術思想としての格別な相違点と認めることはできず、設計事項としてしか評価できない。 (3) 本件訂正発明3について 液晶表示装置の表示特性の改善に有用な位相差フィルムとして、nx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムを用いることは、引用文献7の段落【0025】に記載されているし、周知の技術でもあるから(前記周知技術2参照)、引用発明において、かかる構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (4) 本件訂正発明4について 液晶表示装置の視野角拡大フィルムにおいて、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向の成す角度を平行又は直交とすることは周知の技術であるから(前記周知技術3参照)、引用発明において、本件訂正発明4の「θ1が0±0.4°又は90±0.4°の範囲内である」という構成に相当する構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (5) 本件訂正発明5について 引用文献7には、「位相差板は、その材料や厚みなどを調整することにより、波長λに対してλ/2やλ/4など適宜の位相差とすることができる。」と記載されているところ、「1/2λ板」の場合に、面内レターデーションが200nm以上となることは当業者にとって自明である。 したがって、引用発明において、位相差板の面内レターデーションを200nm以上することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (6) 本件訂正発明8について 「光学フィルムを表示装置等に貼り付けるための粘着剤層の厚みを15μm程度とすること」は周知の技術である(前記周知技術8参照)。 したがって、本件訂正発明8は、当業者が容易に想到し得たことである。 (7) 本件訂正発明9について ア 本件訂正発明9と引用発明の対比 本件訂正発明9と引用発明は、前記(1)イ(イ)に示した部分相違点A~Dに加えて以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <部分相違点E> 本件訂正発明9においては、「粘着剤付き偏光板と画像表示セルとを、ラミネート圧0.05~0.4MPaで貼り合わせる」のに対して、 引用発明においては、このような限定がない点。 イ 判断 (ア) 部分相違点A~Dについて 前記(1)ウ(ア)~(カ)において説示したとおりであって、これら部分相違点に係る本件訂正発明9の構成は、当業者が容易に想到できたものである。 (イ) 部分相違点Eについて a 粘着剤付き偏光板と画像表示セルを、ラミネート圧0.2~0.4MPa程度で貼り合わせることは周知の技術である(前記周知技術4参照)。 b そうすると、引用発明において、かかる周知技術4を踏まえて、上記部分相違点Eに係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 c(a) 特許権者は、令和6年11月22日に提出した意見書及び令和7年5月30日に提出した意見書において、甲7、甲8及び甲9に記載されているのは、偏光板の一方の面に画像表示セルと貼り合わせるための粘着剤層を備え、偏光板の他方の面にカバーガラスと貼り合わせるための粘着剤層を備える両面粘着剤層付き偏光板の、視認側の粘着剤層とカバーガラスとを真空圧着により貼り合わせる際のラミネート圧力が0.2MPaまたは0.3MPaであるとの事項であり、粘着剤付き偏光板と画像表示セルとの貼り合わせについて言及するものではない旨主張している。 (b) しかしながら、貼り合わせ後の偏光フィルムの剥がれや発泡を評価する際に、実際に表示装置に適用する場合と同様の条件で貼り合わせたサンプルを用いて評価しなければ製品としての意味のある評価とならないことは当業者にとって自明であるから、甲7~9に記載されているのが「粘着剤付き偏光板」と「カバーガラス」を貼り合わせる際の条件であったとしても、当該条件は、「粘着剤付き偏光板」と「画像表示セル」を貼り合わせる際の条件におおよそ等しいものと認められる。 さらに、甲17に「偏光フィルム」と「液晶パネル」を「0.3MPa~0.4MPa」の押圧力で貼り合わせることが記載されていることも鑑みれば、前記2(2)エ(オ)に示したように、すなわち甲7~9及び甲17の摘記事項から明らかなように、「粘着剤付き偏光板と画像表示セルを、ラミネート圧0.2~0.4MPa程度で貼り合わせること」が周知技術であることに誤りはない。 したがって、特許権者の主張は採用できない。 (ウ) 総合判断 前記(ア)~(イ)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点(部分相違点A~E)に係る本件訂正発明9の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件訂正発明9が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件訂正発明9は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8) 本件訂正発明11について 前記(6)において説示したのと同様の理由により、本件訂正発明11は、当業者が容易に想到し得たものである。 (9) 本件訂正発明13について 前記(5)において説示したのと同様の理由により、本件訂正発明13は、当業者が容易に想到し得たものである。 (10) 本件訂正発明14について 前記(2)において説示したのと同様の理由により、本件訂正発明14は、当業者が容易に想到し得たものである。 (11) 本件訂正発明15について 前記(3)において説示したのと同様の理由により、本件訂正発明15は、当業者が容易に想到し得たものである。 第6 むすび 以上検討のとおり、請求項1~5、8、9、11、13~15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項6、7、10、12に係る特許についての異議申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700496

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決713件(寺澤 佳奈美、日東電工株式会社)
  • 2025-700566異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容粘着剤層付き光学積層フィルム及び画像表示装置
    同じ当事者: 寺澤 佳奈美、日東電工株式会社
  • 2024-700823異議申立 / 2024-12-03 / 維持位相差層付き偏光板および有機EL表示装置
    同じ当事者: 寺澤 佳奈美、日東電工株式会社
  • 2024-700824異議申立 / 2024-12-03 / 維持位相差層付き偏光板および有機EL表示装置
    同じ当事者: 寺澤 佳奈美、日東電工株式会社
  • 2023-700759異議申立 / 2024-05-07 / 訂正認容粘着剤層付光学フィルムおよび該粘着剤層付光学フィルムを含む画像表示装置
    同じ当事者: 寺澤 佳奈美、日東電工株式会社
  • 2023-700109異議申立 / 2024-04-01 / 訂正認容位相差層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置
    同じ当事者: 寺澤 佳奈美、日東電工株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,815件(121・G02B)
  • 2026-700009異議申立 / 2026-03-30 / 維持液晶回折素子、光学素子、画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステ…
    共通の審決分類: 121・G02B
  • 2025-700802異議申立 / 2026-03-30 / 訂正認容反射防止フィルム
    共通の審決分類: 121・G02B
  • 2025-700471異議申立 / 2026-03-24 / 訂正認容防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および…
    共通の審決分類: 121・G02B
  • 2025-700999異議申立 / 2026-02-16 / 維持光学フィルムおよび画像表示装置
    共通の審決分類: 121・G02B
  • 2025-700932異議申立 / 2026-01-27 / 維持光学素子および光偏向装置
    共通の審決分類: 121・G02B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存