特許異議申立
2024-700920
便器装置および便座装置
- 審判番号
- 2024-700920
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-173369外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7454788
- 請求日
- 2024年09月24日
- 審決日
- 2025年09月04日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】協明国際弁理士法人
- 【異議申立人】村田 幸雄
- 分類
- P1652.121-YAA(E03D) / P1652.537-YAA(E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7454788号発明「便器装置および便座装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7454788号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、10〕、〔5-9、11〕について訂正することを認める。
特許第7454788号の請求項4、8、10及び11に係る特許を維持する。
特許第7454788号の請求項1、2、5、6及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7454788号の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年8月5日に出願した特願2020-132880号の一部を令和5年10月5日に新たな特許出願としたものであって、令和6年3月14日にその特許権の設定登録がされ、同月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1、2、4、5、6、8及び9に係る特許に対し、令和6年9月24日付けで特許異議申立人 村田 幸雄(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後、その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和7年1月31日付け:取消理由通知書
令和7年4月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、以下に示すとおり、令和7年4月4日付け訂正請求は、実質的に請求項の削除のみを行う訂正であるため、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年4月4日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第7454788号の特許請求の範囲を、本件訂正請求の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その内容は、次の訂正事項からなるものである(下線は訂正箇所を示す)。
なお、訂正事項は、本件訂正請求書に記載された全趣旨から、訂正後の訂正事項2-2及び訂正事項6-2について整理した上で、次のものとする。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2において、計時部をさらに備え、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間が経過する前に前記便蓋の閉止を検知した場合にはそのタイミングで前記便器洗浄部に洗浄を開始させる一方、前記所定時間の経過時に前記便蓋の閉止を検知しなかった場合にはそのタイミングで前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。」と記載されているのを、請求項1の記載を引用するものについて、独立形式に改め、「ボウルと、該ボウルヘ洗浄水を供給し該ボウル内を洗浄する便器洗浄部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、前記便器洗浄部に対する洗浄指示を出力する洗浄指示手段と、制御部と、を備えた便器装置であって、前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされており、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させ、計時部をさらに備え、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間が経過する前に前記便蓋の閉止を検知した場合にはそのタイミングで前記便器洗浄部に洗浄を開始させる一方、前記所定時間の経過時に前記便蓋の閉止を検知しなかった場合にはそのタイミングで前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。」に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1または2において、計時部をさらに備え、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、請求項1の記載を引用するものに限定した上で独立形式に改め、「ボウルと、該ボウルヘ洗浄水を供給し該ボウル内を洗浄する便器洗浄部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、前記便器洗浄部に対する洗浄指示を出力する洗浄指示手段と、制御部と、を備えた便器装置であって、前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされており、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させ、計時部をさらに備え、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。」に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6) 訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項5または6において、計時部をさらに備え、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間が経過する前に前記便蓋の閉止を検知した場合にはそのタイミングで前記便器本体に対し洗浄指示を出力する一方、前記所定時間の経過時に前記便蓋の閉止を検知しなかった場合にはそのタイミングで前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。」と記載されているのを、請求項5の記載を引用するものに限定した上で独立形式に改め、「便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉る便座駆動部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段と、便座側制御部と、を備え、前記便器本体に取りつけられる便座装置であって、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされており、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器本体に対し洗浄指示を出力し、計時部をさらに備え、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間が経過する前に前記便蓋の閉止を検知した場合にはそのタイミングで前記便器本体に対し洗浄指示を出力する一方、前記所定時間の経過時に前記便蓋の閉止を検知しなかった場合にはそのタイミングで前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。」に訂正する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項5または6において、計時部をさらに備え、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。」と記載されているのを、請求項5の記載を引用するものについて、独立形式に改め、「便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、便蓋と該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段と便座側制御部と、を備え、前記便器本体に取りつけられる便座装置であって、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされており、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器本体に対し洗浄指示を出力し、計時部をさらに備え、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。」に訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(10) 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項3は、請求項1又は2の記載を引用するものであり、請求項4は、請求項1又は2の記載を引用するものであり、請求項2は、請求項1の記載を引用するものであるところ、
請求項3のうち、請求項2の記載を引用するものと、請求項4のうち、請求項2の記載を引用するものについて、「請求項3または4において、報知部をさらに備え、前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、その旨を前記報知部により報知させ、その後に前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。」と記載し、新たに請求項10とする。
(11) 訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項7は、請求項5又は6の記載を引用するものであり、請求項8は、請求項5又は6の記載を引用するものであり、請求項6は、請求項5の記載を引用するものであるところ、
請求項7のうち、請求項6の記載を引用するものと、請求項8のうち、請求項6の記載を引用するものについて、「請求項7または8において、報知部をさらに備え、前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたとき、その旨を前記報知部により報知させ、その後に前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。」と記載し、新たに請求項11とする。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1、2-1、5、6-1及び9
訂正事項1、2-1、5、6-1及び9のそれぞれは、請求項1、2、5、6及び9を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2-1、5、6-1及び9のそれぞれは、請求項1、2、5、6及び9を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」といい、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(2) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する訂正である。
そして、訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(3) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項1の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する訂正である。
そして、訂正事項4は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(4) 訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項7が請求項5又は6の記載を引用する記載であるところ、請求項5の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する訂正である。
そして、訂正事項7は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(5) 訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項8が請求項5又は6の記載を引用する記載であるところ、請求項5の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する訂正である。
そして、訂正事項8は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(6) 訂正事項2-2
訂正事項2-2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用するものについて、訂正事項3により訂正された請求項3の記載を引用するものとし、訂正前の請求項4が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用するものについて、訂正事項4により訂正された請求項4の記載を引用するものとして新たな請求項とする訂正であるから、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する訂正である。
そして、訂正事項2-2は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(7) 訂正事項6-2
訂正事項6-2は、訂正前の請求項7が請求項5又は6の記載を引用する記載であるところ、請求項6を引用するものについて、訂正事項7により訂正された請求項7の記載を引用するものとし、訂正前の請求項8が請求項5又は6の記載を引用する記載であるところ、請求項6を引用するものについて、訂正事項8により訂正された請求項8の記載を引用するものとして新たな請求項とする訂正であるから、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当する訂正である。
そして、訂正事項6-2は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接・間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
そして、訂正前の請求項5~9は、請求項6~9が、訂正の請求の対象である請求項5の記載を直接・間接的に引用する関係にあるから、訂正事項5によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~4に対応する本件訂正後の請求項〔1-4、10〕、及び本件訂正前の請求項5~9に対応する本件訂正後の請求項〔5-9、11〕のそれぞれは、特許法120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
4 独立特許要件について
本件訂正により、本件訂正後の請求項1、2、5、6及び9に係る発明は、特許請求の範囲の減縮が行われているものであるが、本件特許異議申立事件において、請求項1、2、4、5、6、8及び9が申立の対象とされているため、本件訂正後の請求項1、2、5、6及び9に係る発明について、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の独立特許要件は適用されない。
5 小括
以上のとおり、訂正事項1~9(枝番号を含む)による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号及び4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、10〕及び〔5-9、11〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり本件訂正は認めることができるので、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下「本件訂正発明1」等といい、全体を「本件訂正発明」という。)は、令和7年4月4日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
ボウルと、該ボウルヘ洗浄水を供給し該ボウル内を洗浄する便器洗浄部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、前記便器洗浄部に対する洗浄指示を出力する洗浄指示手段と、制御部と、を備えた便器装置であって、
前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされており、
前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させ、
計時部をさらに備え、
前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間が経過する前に前記便蓋の閉止を検知した場合にはそのタイミングで前記便器洗浄部に洗浄を開始させる一方、前記所定時間の経過時に前記便蓋の閉止を検知しなかった場合にはそのタイミングで前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。
【請求項4】
ボウルと、該ボウルヘ洗浄水を供給し該ボウル内を洗浄する便器洗浄部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、前記便器洗浄部に対する洗浄指示を出力する洗浄指示手段と、制御部と、を備えた便器装置であって、
前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされており、
前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させ、
計時部をさらに備え、
前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段と、便座側制御部と、を備え、前記便器本体に取りつけられる便座装置であって、
前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされており、
前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器本体に対し洗浄指示を出力し、
計時部をさらに備え、
前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間が経過する前に前記便蓋の閉止を検知した場合にはそのタイミングで前記便器本体に対し洗浄指示を出力する一方、前記所定時間の経過時に前記便蓋の閉止を検知しなかった場合にはそのタイミングで前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。
【請求項8】
便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段と、便座側制御部と、を備え、前記便器本体に取りつけられる便座装置であって、
前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされており、
前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器本体に対し洗浄指示を出力し、
計時部をさらに備え、
前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項3または4において、
報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、その旨を前記報知部により報知させ、その後に前記便器洗浄部に洗浄を開始させることを特徴とする便器装置。
【請求項11】
請求項7または8において、
報知部をさらに備え、
前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたとき、その旨を前記報知部により報知させ、その後に前記便器本体に対し洗浄指示を出力することを特徴とする便座装置。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び、取消理由通知書に記載した取消理由の概要
1 証拠方法
(1) 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開平7-158142号公報
甲第2号証:特開2002-339430号公報
甲第3号証:特開2006-177064号公報
甲第4号証:特開2009-7845号公報
甲第5号証:ウォシュレット○R(合議体注:○の中にR) ネオレスト ハ イブリッドシリーズ AH1・AH2・AH3 品番:CES9784型・CE S9794型, TOTO株式会社, 2011年2月1日発行、表表紙, 裏表紙, p.2-83
甲第6号証:特開2007-321440号公報
甲第7号証:特開2010-101034号公報
甲第8号証:特開2006-112163号公報
以下では、甲第1号証~甲第8号証のそれぞれを、甲1~甲8ということがある。
2 異議申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1) 進歩性の欠如1
本件特許の請求項1、2、4、5、6、8及び9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 進歩性の欠如2
本件特許の請求項1、2、4、5、6、8及び9に係る発明は、甲1に記載された発明、甲3~6に記載された技術事項、甲2、7及び甲8に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和7年1月31日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、5、6、及び9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないため、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 異議申立理由について
本件訂正により、本件特許の請求項1、2、5、6、及び9が削除されたため、以下では、異議申立理由の進歩性欠如のうち、本件訂正発明4、8、10及び11について検討する。
なお、本件訂正発明10において異議申立の対象でない本件訂正発明3を引用するもの、及び本件訂正発明11において異議申立の対象でない本件訂正発明7を引用するものを除いて検討する。
1 引用文献について
(1) 甲1について
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。
(ア) 段落【0008】~【0021】
「【0008】
【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。図1において10は洋風便器における便器本体で、12,14はそれぞれ開閉可能な便座,便蓋、16は便器洗浄水を貯える洗浄水タンクである。
【0009】18はノズル20から人体局部に向けて局部洗浄水を噴出する人体局部洗浄装置22の本体ケーシングで、この本体ケーシング18に人体検知センサ24及び着座センサ26が設けられている。
【0010】人体検知センサ24は、便器の前方に人が近付いたときこれを検知するものであり、また着座センサ26は便座12に人が着座したときにこれを検知するもので、いずれも赤外線センサから成っている。
【0011】28はリモコン操作部であって、所定の操作部を操作すると発光部30よりコード化された光信号を発光する。尚このリモコン操作部28には、便器洗浄のための操作スイッチである洗浄スイッチ32が設けられている。
【0012】上記便蓋14は、図2に示しているように軸36と一体回転するようになっており、そしてこの軸36に対して便蓋駆動モータ34が連結されている。即ちこれら軸36と便蓋駆動モータ34とはギヤ38,40,42を介して連結されており、便蓋駆動モータ34の回転によって便蓋14が開閉運動させられるようになっている。
【0013】前記本体ケーシング18の前面には、図3に示しているように便蓋開閉センサ46が設けられている。この便蓋開閉センサ46は、便蓋14のアーム44への当接又は離間によって便蓋14が閉位置にあるか開位置にあるかを検知するリミットスイッチから成るもので、図4に示しているようにこの便蓋開閉センサ46は、人体局部洗浄装置22及び便器洗浄装置における共通の制御部48に対し電気的に接続されている。」
【0014】制御部48にはまた、上記人体検知センサ24,着座センサ26,リモコン操作部28の発光部30からの発光信号を受光する受光部49が接続されており、更に制御対象としての各種機器、即ち人体局部洗浄装置22におけるノズル20に洗浄水を供給・遮断するためのノズル用バルブ50,局部洗浄水を温水化する温水ヒータ52,温水をノズル20に向けて送出するポンプ54が接続されている。
【0015】また更に、便器洗浄装置における便蓋駆動モータ34,洗浄水タンク16内の便器洗浄水を便器本体10に向けて放出する流路の開閉を行う放出バルブ58が制御部48に接続されている。
【0016】制御部48は、リモコン操作部28からの発光信号に基づいてノズル用バルブ50,温水ヒータ52,ポンプ54を作動させ、ノズル20から温水化された局部洗浄水を人体局部に向けて噴出させる。
【0017】また制御部48は、人体検知センサ24からの信号により、即ち使用者が便器に接近すると人体検知センサ24からの信号により便蓋駆動モータ34を作動させ、閉じた状態にある便蓋14を自動的に開動作させる。
【0018】而して使用者が便座12に着座して用を足した後、リモコン操作部28の洗浄スイッチ32を操作すると、その洗浄スイッチ32からの洗浄信号に基づいて先ず便蓋駆動モータ34を作動させ、便蓋14を閉動作させた上で放出バルブ58を開動作させ、便器本体10内に洗浄水を放出させ、便器洗浄を行わせる。
【0019】図5は便器洗浄に際しての制御部48の具体的な制御内容を示したもので、図示のように本例では洗浄スイッチ32が操作されて制御部48に洗浄信号が供給されると、便蓋開閉センサ46からの信号に基づいて便蓋14が閉じているか開いているかを判断する(ステップS10,S12)。
【0020】そしてこのとき便蓋14が閉じられていればそのまま洗浄水バルブ58を開動作させて便器本体10内に便器洗浄水を放出させる。即ち便器洗浄を行わせる。
【0021】一方このとき便蓋14が開いていると判断されたときには、次に着座センサ26からの信号に基づいて着座の有無を判断し(ステップS14)、そして着座状態であればそのまま放出バルブ58を開動作させる。」
(イ) 段落【0026】
「【0026】更に上例では洗浄スイッチ32の操作信号を受けて制御部48が便器洗浄装置における便蓋駆動モータ34,放出バルブ58等を作動させるようにしているが、人が便器から立ち去ったことを人体検知センサ24にて検知し、その人体検知センサ24からの信号を洗浄信号として便蓋14を閉動作させ、続いて便器洗浄を行わせるように成すことも可能である。」
(ウ) 【図5】
「
[図:0001429996000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
前記アを総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、前記(ア)の段落【0020】に「洗浄水バルブ58」と記載されているが、番号「58」及び明細書全体の記載内容からみて「放出バルブ58」を表すものと認められるため、以下では「洗浄水バルブ58」を「放出バルブ58」と表記する。
<甲1発明>
「便器本体10、開閉可能な便座12及び便蓋14、便座12に人が着座したときにこれを検知する着座センサ26、便蓋14のアーム44への当接又は離間によって便蓋14が閉位置にあるか開位置にあるかを検知するリミットスイッチから成る便蓋開閉センサ46、便器洗浄のための操作スイッチである洗浄スイッチ32が設けられているリモコン操作部28、及び、制御部48を備え、便蓋駆動モータ34の回転によって便蓋14が開閉運動させられるようになっている洋風便器において、(段落【0008】、【0010】~【0013】)
洗浄スイッチ32が操作されて制御部48に洗浄信号が供給されると、便蓋開閉センサ46からの信号に基づいて便蓋14が閉じているか開いているかを判断し、便蓋14が閉じられていればそのまま放出バルブ58を開動作させて便器本体10内に便器洗浄水を放出させ、便器洗浄を行わせ、便蓋14が開いていると判断されたときには、次に着座センサ26からの信号に基づいて着座の有無を判断し、着座状態であればそのまま放出バルブ58を開動作させ、(段落【0019】~【0021】)
洗浄スイッチ32の操作信号を受けて制御部48が便器洗浄装置における便蓋駆動モータ34、放出バルブ58等を作動させるようにしているが、人が便器から立ち去ったことを人体検知センサ24にて検知し、その人体検知センサ24からの信号を洗浄信号として便蓋14を閉動作させ、続いて便器洗浄を行わせるように成すことも可能である、(段落【0026】)
洋風便器。」
(2) 甲2について
ア 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア) 段落【0002】~【0012】
「【0002】
【従来の技術】従来、図7及び図8に示すように、陶磁器製の洋風便器本体90に便器洗浄装置91を一体にした洋風水洗式便器が知られている。この洋風水洗式便器では、便座92が洋風便器本体90上で開閉可能に設けられており、便座92上には便蓋93も開閉可能に設けられている。これら便座92及び便蓋93は洋風便器本体90に固定された便器洗浄装置91に設けられている。
【0007】その使用者が男性であり、立ったまま小用する場合、その使用者はリモコン94の便座開閉スイッチを入力する。これによりリモコン94は便座開閉信号をコントローラに送信し、図8に示すように、コントローラは便座開閉機構を作動させることにより便座92を自動的に洋風便器本体90から上げる。こうして、使用者は腰を屈める必要なく、小用を行うことができる。
・・・(略)・・・
【0008】この際、図9に示すように、コントローラは、ステップS81において、便蓋93及び便座92が上がっていることにより剥き出しとなった第2人体検知センサ91cにより、その使用者がその状態の洋風便器本体90前に存在するか否かを検知する。また、ステップS82において、リモコン94からの各信号を受信し続ける。
【0009】そして、ステップS83において、第2人体検知センサ91cによる検知時間がA以上であるか否かが判断される。検知時間がA以上である場合には、男性が小用したと考えられるため、ステップS84において、リモコン94からの便器小洗浄信号の入力がないことを条件とし、ステップS85において、第1人体検知センサ91bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後、ステップS86で便器小洗浄モードを実行する。こうして、洗浄水供給弁により洋風便器本体90に少量の洗浄水が自動的に供給される。この後、メインルーチンにリターンする。
【0010】一方、ステップS83において、検知時間がA未満である場合には、男性が小用もしていないと考えられるため、ステップS87において、第1人体検知センサ91bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後、メインルーチンにリターンする。
【0011】また、ステップS84において、リモコン94からの便器小洗浄信号の入力があれば、ステップS86に進み、便器小洗浄信号を優先し、便器小洗浄モードを実行する。
【0012】そして、その使用者がリモコン94の便座開閉スイッチを再度入力すれば、コントローラは便座開閉機構を作動させることにより便座92を自動的に洋風便器本体90上に降ろす。手動により便座92を洋風便器本体90上に降ろすことも可能である。この後、使用者が洋風水洗式便器の前から去れば、第1人体検知センサ91bがその使用者を検知しなくなり、便蓋開閉機構により便蓋93が自動的に便座92上に降ろされる。手動により便蓋93を便座92上に降ろすことも可能である。」
(イ) 段落【0035】~【0037】
「【0035】便蓋開閉機構1gと便座開閉機構1hとは単一のモータと複数個のギア等により構成されている。便座開閉機構1hを構成するギアには光センサ等からなる便座開閉検知センサ1jが組み込まれ、この便座開閉検知センサ1jは洋風便器本体90上から便座2が上げられているか否かを検知可能になっている。
【0036】さらに、図3にも示すように、ケース1a外には、コントローラ1eを遠隔操作可能なコードレスのリモコン4が設けられている。リモコン4は、洋風便器本体90に少量の洗浄水を供給可能な小洗浄スイッチ4aと、洋風便器本体90に大量の洗浄水を供給可能な大洗浄スイッチ4bと、局部洗浄機構1iを作動させるための局部洗浄機構使用スイッチ4cと、洋風便器本体90上で便座2を開閉する便座開閉スイッチ4dとを有している。
【0037】図2に示すように、第1人体検知センサ1b、第2人体検知センサ1c、着座センサ1f及び便座開閉検知センサ1jはコントローラ1eに接続され、コントローラ1eは洗浄水供給弁1d、局部洗浄機構1i、便座開閉機構1h及び便蓋開閉機構1gに接続されている。また、小洗浄スイッチ4aの入力によるリモコン4の便器小洗浄信号と、大洗浄スイッチ4bの入力によるリモコン4の便器大洗浄信号と、局部洗浄機構使用スイッチ4cの入力によるリモコン94の局部洗浄機構使用信号と、便座開閉スイッチ4dの入力によるリモコン4の便座開閉信号とは、第1人体検知センサ1bと同位置に設けられたコントローラ1eの受信部に受信されるようになっている。
・・・(略)・・・
【0039】その使用者が男性であり、立ったまま小用する場合、その使用者はリモコン4の便座開閉スイッチ4dを入力する。これによりリモコン4は便座開閉信号をコントローラ1eに送信し、図1に示すように、コントローラ1eは便座開閉機構1hを作動させることにより便座3を自動的に洋風便器本体90から上げる。こうして、使用者は腰を屈める必要なく、小用を行うことができる。
【0040】この際、図4に示すように、コントローラ1eは、ステップS1において、便蓋3及び便座2が上がっていることにより剥き出しとなった第2人体検知センサ1cにより、その使用者がその状態の洋風便器本体90前に存在するか否かを検知する。また、ステップS2において、リモコン4からの各信号を受信し続ける。さらに、ステップS3において、便座開閉検知センサ1jからの便座状態信号を受信し続ける。
【0041】そして、ステップS4において、第2人体検知センサ1cによる検知時間がA以上であるか否かが判断される。この検知時間がA以上である場合には、男性が小用したと考えられるため、ステップS5に進む。
【0042】一方、ステップS4において、検知時間がA未満である場合には、使用者が立って小用もしていないと考えられるため、ステップS6に進む。ステップS6では、第1人体検知センサ1bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後、メインルーチンにリターンする。
【0043】ステップS5においては、リモコン4からの便器小洗浄信号の入力がないことを条件とし、ステップS7に進む。ステップS7では、便座開閉検知センサ1jからの便座状態信号が便座2が閉じていることを示す便座閉信号であるか否か判断する。
【0044】ステップS7において、便座状態信号が便座閉信号でない場合、つまり洋風便器本体90から便座2が上がった状態において、男性が立ったまま小用し、便座2をそのままの状態にしている場合、ステップS8において、第1人体検知センサ1bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後、ステップS9で便器小洗浄モードを実行する。こうして使用者の退室時、洗浄水供給弁1dにより洋風便器本体90に少量の洗浄水が自動的に供給される。この後、メインルーチンにリターンする。
【0045】そして、その使用者がリモコン4の便座開閉スイッチ4dを再度入力すれば、コントローラ1eは便座開閉機構1hを作動させることにより便座2を自動的に洋風便器本体90上に降ろす。手動により便座2を洋風便器本体90上に降ろすことも可能である。この後、使用者が洋風水洗式便器の前から去れば、第1人体検知センサ1bがその使用者を検知しなくなり、便蓋開閉機構1gにより便蓋3が自動的に便座2上に降ろされる。手動により便蓋3を便座2上に降ろすことも可能である。
【0046】ステップS5において、リモコン4からの便器小洗浄信号の入力があれば、ステップS9に進み、便器小洗浄信号を優先し、便器小洗浄モードを実行する。
【0047】ステップS7において、便座状態信号が便座閉信号である場合、つまり洋風便器本体90から便座2が上がった状態において、男性が立ったまま小用した後、リモコン4の小洗浄スイッチ4aの入力を行うことなく、かつリモコン4の便座開閉スイッチ4dを再度入力する等により、便座2を洋風便器本体90上に降ろしてしまった場合、ステップS10に進む。」
(ウ) 【図4】
「
[図:0001429996000002.jpg]
」
(エ) 【図8】
「
[図:0001429996000003.jpg]
」
(オ) 【図9】
「
[図:0001429996000004.jpg]
」
イ 甲2記載技術
甲2には、次の2つの技術的事項(以下、それぞれを「甲2記載技術1」「甲2記載技術2」という。)が記載されている。
<甲2記載技術1>
「使用者が男性であり、立ったまま小用する場合、その使用者はリモコン94の便座開閉スイッチを入力し、これによりリモコン94は便座開閉信号をコントローラに送信し、コントローラは便座開閉機構を作動させることにより便座92を自動的に洋風便器本体90から上げ、(段落【0007】)
リモコン94からの便器小洗浄信号の入力があれば、便器小洗浄信号を優先し、便器小洗浄モードを実行し、(段落【0011】)
その使用者がリモコン94の便座開閉スイッチを再度入力すれば、コントローラは便座開閉機構を作動させることにより便座92を自動的に洋風便器本体90上に降ろすこと。(段落【0012】)」
<甲2記載技術2>
「使用者が男性であり、立ったまま小用する場合において、(段落【0039】)
リモコン4からの便器小洗浄信号の入力がないことを条件とし、便座開閉検知センサ1jからの便座状態信号が便座2が閉じていることを示す便座閉信号であるか否か判断し、(段落【0043】)
便座状態信号が便座閉信号でない場合、つまり洋風便器本体90から便座2が上がった状態において、第1人体検知センサ1bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後、便器小洗浄モードを実行することで、使用者の退室時、洗浄水供給弁1dにより洋風便器本体90に少量の洗浄水が自動的に供給すること。(段落【0043】及び【0044】)」
(3) 甲4について
ア 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア) 段落【0016】
「【0016】
図1及び図2に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置された便蓋6と、便蓋を開閉する電動開閉装置7と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、人体を検知する人体検知手段9と、を備えている。本実施形態においては、人体検知手段9として、便器本体2の前に立つ人体の有無を検知する人体検知センサ、または便座4に着座した人の有無を検知する着座センサのいずれかを用いることができる。さらに、便器本体2の後方には、便器本体2に洗浄水を供給する給水装置10と制御部62が配置されており、この給水装置10はサイドパネル10aにより覆われている。また、制御部62は、電動開閉装置7、局部洗浄装置8、人体検知手段9、給水装置10および便器洗浄スイッチを有するリモコン11との間で制御信号の受信又は送信を行う。」
(イ) 段落【0023】
「【0023】
次に、図4を参照して、この第一の実施形態による水洗大便器のオート便器洗浄機能の動作について説明する。
まず、便器本体2の前から人体が去ると、人体検知手段9の人体検知信号が消失して人体非検知の状態になる(t1)。時刻t1からT1時間経過すると、電動開閉装置7が便蓋6の閉止動作を開始する(t2)。そして、便蓋6を閉じ始めてからT2時間経過すると便蓋6が閉じきる前に給水装置10が給水動作を開始する。すなわち、電磁開閉弁34が開き、給水路切替弁36は給水先をリム吐水口18に切替えてリム吐水を行う(t3)。電動開閉装置7は、便蓋閉止動作を開始してから時間T2よりも長い時間(T2+T3)経過した後に便蓋6の閉止を完了する(t4)。便蓋6を閉止してからT4時間経過後に、給水先をリム吐水口18からジェット吐水口16に切替えて加圧ポンプ22を作動させてジェット吐水を行う(t5)。このジェット吐水は大流量であるから排水トラップ管路14を負圧状態にしてサイホン現象を発生させ(t6)、ボウル部12に溜まった溜水を排水トラップ管路14に一気に流し込む。サイホン現象の消滅後は、再び給水先をリム吐水口18に切替えて(t7)ボウル部12に洗浄水を流し込んで封水を形成し、一連の洗浄動作を終了する(t8)。」
(ウ) 【図4】
「
[図:0001429996000005.jpg]
」
イ 甲4記載技術
甲4には、次の技術的事項(以下、「甲4記載技術」という。)が記載されている。
<甲4記載技術>
「便器本体2、便座4、便蓋6、便蓋を開閉する電動開閉装置7、人体を検知する人体検知手段9とを備えた、水洗大便器1において、(段落【0016】)
便器本体2の前から人体が去ると、人体検知手段9の人体検知信号が消失して人体非検知の状態になり、時刻t1からT1時間経過すると、電動開閉装置7が便蓋6の閉止動作を開始し、便蓋6を閉じ始めてからT2時間経過すると便蓋6が閉じきる前に給水装置10が給水動作を開始すること。(段落【0023】」
(4) 甲6について
ア 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。
(ア) 段落【0057】~【0062】
「【0057】
図12は、男性の立位での小用に際する便蓋のオート開閉に本変型例を適用した場合の動作を例示する模式図である。本具体例においても、接近検知センサ500、人体検知センサ420、着座センサ422は、いずれも衛生洗浄装置100の本体部400に設けられている。
【0058】
本具体例においても、図12(a)に表したように、待機状態においては、便蓋開閉ユニット(第1の付加機能部)は便蓋300を閉じた状態(第1の状態)にしている。そして、使用者10が接近すると、まず接近検知センサ500が使用者10を検知する。すると、便蓋開閉ユニットは便蓋を開けた状態(第2の状態)にする(オート開動作)。
【0059】
そして、図12(b)に表したように使用者10がトイレの前に立った状態で、手動またはリモコン操作により便座200を上げる。この時、図12(c)に表したように、人体検知センサ420が使用者10を検知している。
【0060】
その後、図12(d)に表したように使用者10が便器800から例えば30センチメートルほど離れると、人体検知センサ420が非検知となる。すると、図12(e)に表したように、便器洗浄ユニット(第2の付加機能部)が動作して便器800に洗浄水を流す(オート洗浄)。
【0061】
なおここでも、図12(d)に表したように人体検知センサ420が非検知となってから直ぐではなく、所定時間(例えば、3秒)の経過後に図12(e)に表したように洗浄水を流すようにしてもよい。また、本具体例においても、流す洗浄水の水量を最適にできる。すなわち、本具体例においては、着座センサ422が検知状態にならず、人体検知センサ420のみが検知状態となるので、このような場合には、例えば、制御部640(図1)は、男性の小用であると判断し、流量が4.5リッターとなるように便器洗浄ユニット(第2の付加機能部)730を制御して洗浄水を流すようにすることができる。なお、図11(d)に関して前述した「小」の場合の5リッターよりも流量が少ないのは、図11(d)の場合には着座状態での小用であるのでトイレットペーパーが使用される可能性が高いが、図12(e)の場合には、男性の立位での小用であるので通常はトイレットペーパーが使用されていないからである。こうすると、男性の立位での小用の場合の洗浄水の水量を必要且つ十分な範囲で節約でき、省資源化にさらに資することができる。
【0062】
その後、便座200と便蓋300が閉じた状態(第1の状態)になる(オート閉)。なお、本具体例においても、図12(d)に表したように人体検知センサ420が非検知となってから直ぐではなく、所定時間(例えば、90秒)の経過後に便座200と便蓋300をオート閉動作させるようにしてもよい。
便蓋300を閉じた後は、再び図12(a)に表したように、接近検知センサ500により使用者の接近をモニタしながら待機する。」
(イ) 【図12】
「
[図:0001429996000006.jpg]
」
イ 甲6記載技術
甲6には、次の技術的事項(以下、「甲6記載技術」という。)が記載されている。
<甲6記載技術>
「接近検知センサ500、人体検知センサ420、着座センサ422を、衛生洗浄装置100の本体部400に設けた衛生洗浄装置100において、(段落【0057】)
使用者10が便器800から例えば30センチメートルほど離れると、人体検知センサ420が非検知となり、便器洗浄ユニットが動作して便器800に洗浄水を流し、(段落【0060】)
その後、便座200と便蓋300が閉じた状態になること。(段落【0062】)」
2 本件訂正発明4について
(1) 対比
本件訂正発明4と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「放出バルブ58」は、「開動作させて便器本体10内に便器洗浄水を放出させ、便器洗浄を行わせ」るものであり、便器洗浄水を放出させるのは、「洋風便器」が当然に有するボウルであることは明らかである。
よって、甲1発明の「放出バルブ58」は、本件訂正発明4の「該ボウルヘ洗浄水を供給し該ボウル内を洗浄する便器洗浄部」に相当する。
イ 甲1発明の「便蓋14」、「便座12」、「制御部48」、及び「洋風便器」のそれぞれは、本件訂正発明4の「便蓋」、「便座」、「制御部」、及び「便器装置」に相当する。
ウ 甲1発明の「便蓋開閉センサ46」は、「便蓋14のアーム44への当接又は離間によって便蓋14が閉位置にあるか開位置にあるかを検知するリミットスイッチから成る」から、本件訂正発明4の「該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部」に相当する。
エ 甲1発明の「便蓋駆動モータ34」は、その「回転によって便蓋14が開閉運動させられるようになっている」から、本件訂正発明4の「前記便蓋を開閉する便蓋駆動部」に相当する。
オ 甲1発明の「洗浄スイッチ32」は、「便器洗浄のための操作スイッチであ」って、「洗浄スイッチ32の操作信号を受けて制御部48が便器洗浄装置における便蓋駆動モータ34、放出バルブ58等を作動させるようにしている」から、本件訂正発明4の「前記便器洗浄部に対する洗浄指示を出力する洗浄指示手段」に相当する。
カ 本件訂正発明4の「前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされて」いることと、甲1発明の「制御部48」において、「洗浄スイッチ32が操作されて制御部48に洗浄信号が供給されると、便蓋開閉センサ46からの信号に基づいて便蓋14が閉じているか開いているかを判断し、便蓋14が閉じられていればそのまま放出バルブ58を開動作させて便器本体10内に便器洗浄水を放出させ、便器洗浄を行わせ」ることは、
「前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされて」いる点で一致する。
キ 以上を総合すると、本件訂正発明4と甲1発明とは、次の一致点Aで一致し、相違点1A~3Aにおいて相違する。
<一致点A>
「ボウルと、該ボウルヘ洗浄水を供給し該ボウル内を洗浄する便器洗浄部と、便蓋と、該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便座と、前記便器洗浄部に対する洗浄指示を出力する洗浄指示手段と、制御部と、を備えた便器装置であって、
前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄が実行される構成とされている、
便器装置。」
<相違点1A>
本件訂正発明4は、「該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部」を備えるのに対し、甲1発明は、そのようなものが特定されておらず、「便座12に人が着座したときにこれを検知する着座センサ26」を有する点。
<相違点2A>
本件訂正発明4は、「前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する」のに対し、甲1発明は、そのようなことが特定されていない点。
<相違点3A>
本件訂正発明4は、「前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させ、
計時部をさらに備え、
前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器洗浄部に洗浄を開始させる」のに対し、甲1発明は、そのようなことが特定されていない点。
(2) 検討・判断
ア 相違点1A及び相違点2Aについて
相違点1Aと相違点2Aは相互に関連しているのでまとめて検討する。
(ア) 本件訂正発明4と甲1発明の相違点の概要について
相違点1A及び相違点2Aに関し、本件訂正発明4は、「便蓋開閉検知部」と、「便座の開閉を検知する便座開閉検知部」を備え、「前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに」、「便蓋」と「便座」の両方の開閉状態をもとに、「便蓋駆動部」と「便座洗浄部」の動作を決定する構成を有するものであるのに対し、甲1発明は、「便蓋開閉センサ46」、「便座12に人が着座したときにこれを検知する着座センサ26」を備え、「洗浄スイッチ32が操作されて制御部48に洗浄信号が供給されると、便蓋開閉センサ46からの信号に基づいて便蓋14が閉じているか開いているかを判断し」、「便蓋14が閉じられていればそのまま放出バルブ58を開動作させて便器本体10内に便器洗浄水を放出させ、便器洗浄を行わせ」、「便蓋14が開いていると判断されたときには、次に着座センサ26からの信号に基づいて着座の有無を判断し、着座状態であればそのまま放出バルブ58を開動作させ」るものである。
(イ) 甲1発明に対する甲2記載技術1の適用について
甲2には、「男性の小用」の際に用いるものであって、「リモコン94の便座開閉スイッチを入力し」、「便座開閉機構を作動させることにより便座92を自動的に洋風便器本体90から上げ」、「リモコン94からの便器小洗浄信号の入力があれば、便器小洗浄信号を優先し、便器小洗浄モードを実行する」甲2記載技術1(前記1(2)イを参照。)が記載されているが、便座の開閉を検知しておらず、リモコン操作により便座を開状態にした後に、リモコンからの便器小洗浄信号により洗浄するものに留まる。
そのため、甲1発明と、便座の開閉状態を検知しない甲2記載技術1に基づいて、「便蓋」と「便座」の両方の開閉状態をもとに、「便蓋駆動部」と「便座洗浄部」の動作を決定することを想起する動機がなく、相違点1A及び相違点2Aに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ) 甲1発明に対する甲2記載技術2の適用について
甲2には、「使用者が男性であり、立ったまま小用する場合において」、「便座状態信号が便座閉信号でない場合、つまり洋風便器本体90から便座2が上がった状態において、第1人体検知センサ1bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後、便器小洗浄モードを実行することで、使用者の退室時、洗浄水供給弁1dにより洋風便器本体90に少量の洗浄水が自動的に供給する」甲2記載技術2(前記1(2)イを参照。)が記載されているが、便座が開状態であるときに、「第1人体検知センサ1bにより使用者が洋風便器本体90前に存在しないことが検知された後」に洗浄するものである。
そのため、甲1発明と、便座の開状態のときの動作に係る甲2記載技術2に基づいて、相違点2Aに係る本件訂正発明4の「前記洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器洗浄部による洗浄の前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する」こと、特に「前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じて」いるときの動作を想起する動機がなく、相違点2Aに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ) 甲1発明に対する甲6記載技術の適用について
甲6には、「接近検知センサ500、人体検知センサ420、着座センサ422を、衛生洗浄装置100の本体部400に設けた衛生洗浄装置100において、使用者10が便器800から例えば30センチメートルほど離れると、人体検知センサ420が非検知となり、便器洗浄ユニットが動作して便器800に洗浄水を流し、その後、便座200と便蓋300が閉じた状態になる」甲6記載技術(前記1(4)イを参照。)が記載されているが、便座の開閉を検知しておらず、使用者が便器から離れることを人体検知センサが(非)検知して、洗浄するものに留まる。
そのため、甲1発明と、便座の開閉を検知しない甲6記載技術に基づいて、「便蓋」と「便座」の両方の開閉状態をもとに、「便蓋駆動部」と「便座洗浄部」の動作を決定することを想起する動機がなく、相違点1A及び相違点2Aに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(オ) 甲1発明に対する他の甲号証に記載された技術の適用について
報知部を有する便器装置に係る甲3(段落【0025】~【0028】を参照。)、「便蓋を開閉する電動開閉装置7、人体を検知する人体検知手段9とを備えた、水洗大便器1において、便器本体2の前から人体が去ると、人体検知手段9の人体検知信号が消失して人体非検知の状態になり、時刻t1からT1時間経過すると、電動開閉装置7が便蓋6の閉止動作を開始し、便蓋6を閉じ始めてからT2時間経過すると便蓋6が閉じきる前に給水装置10が給水動作を開始する」甲4記載技術(前記1(3)イ参照。)、並びに、自動で便座、便ふたが閉まった後、約10秒後に自動で便器洗浄する甲5(54頁参照。)、便座の開閉を検知する技術に係る甲7(段落【0026】を参照。)及び甲8(段落【0032】を参照。)のそれぞれと甲1発明に基づいても、甲1発明「便蓋」と「便座」の両方の開閉状態をもとに、「便蓋駆動部」と「便座洗浄部」の動作を決定することを想起する動機がなく、相違点1A及び相違点2Aに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
イ 申立人の主張について
(ア) 主張の概要
申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概ね次の主張をしている。
a 主張1(申立書28頁20~最終行)
「すなわち、甲第2号証には、「G便座開閉検知部」に相当する便座開閉検知センサ1jと、「H便座駆動部」に相当する便座開閉機構1hと、が開示されている。また、甲第2号証には、便座92が開いている状態で、リモコン94からの便器小洗浄信号の入力があれば、便座92を自動的に降ろさずに便器小洗浄モードを実行する、すなわち、「N前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させる」点が記載されている。
甲第1号証に記載の引用発明1および甲第2号証に記載の発明は、ともに、便器装置に関するものであり、技術分野を一にし、さらに、便器の洗浄に関することを共通の課題とすることから、甲第1号証の記載事項を引用発明2に適用することは、容易に想到し得るものである。」
b 主張2(申立書35頁下から8行~36頁19行)
「すなわち、甲第6号証には、「H便座駆動部」に相当する便座開閉ユニット780が開示されている。また、甲第6号証では、オート洗浄後に便座200および便蓋300を閉じている。このため、甲第6号証には、便座200が開いていれば便座200と便蓋300を閉じずに、便器洗浄ユニット(第2の付加機能部)が動作して便器800に洗浄水を流すこと、すなわち、「N前記制御部は、前記洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器洗浄部に洗浄を開始させる」点が記載されている。
さらに、「G便座開閉検知部」に関して、甲第2号証には、「G便座開閉検知部」に相当する便座開閉検知センサ1jが開示され、甲第7号証(特開2010-101034号公報)には、「ダンパ装置には便座2の回動位置により状態が変化するリミットスイッチ(図示せず)が取り付けられており、便座2を開状態にすることでリミットスイッチがONされるように取り付けられている。」(甲第7号証の【0020】)および「使用者がトイレ空間に入室し、便蓋2と便座3を開状態にすると、ダンパ装置に配置したリミットスイッチがONし、制御部7に便座2と便座3が開状態である情報が伝達される。」(甲第7号証の【0026】)に説明されており、甲第8号証(特開2006-112163号公報)には、「温水洗浄便座2は、人体検知センサ3によるエリアAでの人体の検知に加えて、便座21が開放状態にあるのか、閉止状態にあるのかを検知する便座開閉検知センサ210を有している。」(甲第8号証の【0032】)に説明されており、周知の技術である。
甲第1号証に記載の引用発明1および甲第2号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証に記載の発明は、ともに、便器装置に関するものであり、技術分野をーにし、さらに、便器の洗浄に関することを共通の課題とすることから、甲第6号証の記載事項および甲第2号証、甲第7号証、甲第8号証において明らかな周知の技術を引用発明1に適用することは、容易に想到し得るものである。」
(イ) 主張についての見解
a 主張1について
前記ア(イ)に示したとおり、甲1発明と、便座の開閉状態を検知しない甲2記載技術1に基づいて、「便蓋」と「便座」の両方の開閉状態をもとに、「便蓋駆動部」と「便座洗浄部」の動作を決定することを想起する動機がなく、相違点1A及び相違点2Aに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、前記ア(ウ)に示したとおり、甲2に記載された甲2記載技術2を検討しても同様である。
よって、主張1は前記アの判断を左右するものはなく採用できない。
a 主張2について
前記ア(エ)に示したとおり、甲1発明と、便座の開閉を検知しない甲6記載技術に基づいて、「便蓋」と「便座」の両方の開閉状態をもとに、「便蓋駆動部」と「便座洗浄部」の動作を決定することを想起する動機がなく、相違点1A及び相違点2Aに係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、主張2は前記アの判断を左右するものはなく採用できない。
(3) 本件訂正発明4の進歩性についての小括
したがって、相違点3Aについて検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1発明、及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
そして、相違点1A~3Aに係る本件訂正発明4の構成により、「洗浄指示により事項される便蓋の閉動作が適正に実行されなかった場合でもボウルの洗浄が行われる」という格別の効果を有するものである。
3 本件訂正発明8について
(1) 対比
前記2(1)を踏まえ、本件訂正発明8と甲1発明を対比する。
ア 本件訂正発明8の「便座側制御部」と甲1発明の「制御部48」は「制御部」という点で一致する。
イ 甲1発明の「洗浄スイッチ32」は、「便器洗浄のための操作スイッチであ」って、「洗浄スイッチ32の操作信号を受けて制御部48が便器洗浄装置における便蓋駆動モータ34、放出バルブ58等を作動させるようにして」おり、洗浄は「洋風便器」の「便器本体10」が当然有するボウルに対して行われることは明らかであるから、本件訂正発明8の「便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段」に相当する。
ウ 本件訂正発明8の「前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する一方、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされて」いることと、甲1発明の「制御部48」において、「洗浄スイッチ32が操作されて制御部48に洗浄信号が供給されると、便蓋開閉センサ46からの信号に基づいて便蓋14が閉じているか開いているかを判断し、便蓋14が閉じられていればそのまま放出バルブ58を開動作させて便器本体10内に便器洗浄水を放出させ、便器洗浄を行わせ」ることは、「前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされて」いる点で一致する。
エ 本件訂正発明8の「便座装置」と、甲1発明の「洋風便器」は、装置という点で一致する。
オ 以上を総合すると、本件訂正発明8と甲1発明とは、次の一致点Bで一致し、相違点1B~4Bにおいて相違する。
<一致点B>
「便座と、便蓋と該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段と制御部と、を備えた便座装置であって、
前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する構成とされている、
装置。」
<相違点1B>
本件訂正発明8は、「該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部」を備えるのに対し、甲1発明は、そのようなものが特定されておらず、「便座12に人が着座したときにこれを検知する着座センサ26」を有する点。
<相違点2B>
本件訂正発明8は、「前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示があったときに、前記便蓋が開いており、かつ前記便座が閉じていれば、前記便器本体に対し洗浄指示を出力する前に、前記便蓋駆動部による前記便蓋の閉動作が開始する」のに対し、甲1発明は、そのようなことが特定されていない点。
<相違点3B>
本件訂正発明8は、「前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便座が開いていれば、前記便座、前記便蓋を閉じずに前記便器本体に対し洗浄指示を出力し、
計時部をさらに備え、
前記便座側制御部は、前記ボウル洗浄指示手段による洗浄指示を受けつけたときに、前記便蓋が開いていれば、所定時間のタイマーを起動し、該所定時間経過時に前記便器本体に対し洗浄指示を出力する」のに対し、甲1発明はそのようなことが特定されていない点。
<相違点4B>
本件訂正発明8は、「便座と、該便座の開閉を検知する便座開閉検知部と、前記便座を開閉する便座駆動部と、便蓋と該便蓋の開閉を検知する便蓋開閉検知部と、前記便蓋を開閉する便蓋駆動部と、便器本体に対する洗浄指示を受けつけるボウル洗浄指示手段と便座側制御部と、を備え」るものが、「前記便器本体に取りつけられる便座装置」であるのに対し、甲1発明は、「開閉可能な便座12及び便蓋14」、「便蓋開閉センサ46」、「便器洗浄のための操作スイッチである洗浄スイッチ32が設けられているリモコン操作部28、及び、制御部48を備え、便蓋駆動モータ34の回転によって便蓋14が開閉運動させられるようになっている洋風便器」である点。
(2) 検討・判断
ア 相違点1B及び相違点2Bについて
相違点1B及び相違点2Bのそれぞれは、相違点1A及び相違点2Aに対応するものである。
そうすると、前記2(2)アに示したのと同様に、甲1発明と甲2~甲8に記載された技術に基づいても、相違点1B及び相違点2Bに係る本件訂正発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、相違点3B及び相違点4Bについて検討するまでもなく、本件訂正発明8は、甲1発明、及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
そして、相違点1B~4Bに係る本件訂正発明8の構成により、「洗浄指示により事項される便蓋の閉動作が適正に実行されなかった場合でもボウルの洗浄が行われる」という格別の効果を有するものである。
4 本件訂正発明10について
本件訂正発明10、本件訂正発明4の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記2で対比・判断したとおり、本件訂正発明4は、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件訂正発明10において付加された構成について検討するまでもなく、本件訂正発明10は、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
5 本件訂正発明11について
本件訂正発明11は、本件訂正発明8の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記3で対比・判断したとおり、本件訂正発明11は、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件訂正発明11において付加された構成について検討するまでもなく、本件訂正発明11は、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第6 取消理由について
本件訂正により、本件特許の請求項1、2、5、6、及び9が削除されたため、前記第4の3に示した取消理由によって取り消すことができない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明4、8、10及び11に係る特許は、特許異議申立理由、及び先の取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正発明4、8、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1、2、5、6及び9に対する本件特許異議の申立ては、申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700920