特許異議申立
2024-700420
ホルダの取付け方法及びこのホルダを備えたカウンタ
- 審判番号
- 2024-700420
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-202350
- 登録番号
- 7366696
- 請求日
- 2024年04月22日
- 審決日
- 2025年03月11日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】弁理士法人グランダム特許事務所
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人iX
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 蔵野 いづみ
- 審判官 ▲高▼橋 祐介
- 分類
- P1651.121-YAA(A47K) / P1651.537-YAA(A47K) / P1651.851-YAA(A47K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7366696号発明「ホルダの取付け方法及びこのホルダを備えたカウンタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7366696号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。
特許第7366696号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。
特許第7366696号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7366696号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和元年11月7日に特許出願されたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 6月 6日付け:拒絶理由通知
令和 5年 8月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 5年 9月 5日付け:特許査定
令和 5年10月13日 :特許権の設定登録
令和 5年10月23日 :特許掲載公報発行
令和 6年 4月22日 :特許異議申立人TOTO株式会社(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~4に対する特許異議の申立て
令和 6年 6月26日付け:取消理由通知
令和 6年 8月30日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 6年 9月10日付け:手続補正指令書(方式)
令和 6年10月 4日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和 7年 1月14日付け:特許権者に対する審尋
令和 7年 2月 6日 :特許権者による審尋に対する回答書の提出
また、当審合議体は、令和6年10月24日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。
第2 本件訂正請求について
1 本件訂正の内容
令和6年10月4日に提出された手続補正書(方式)により補正された令和6年8月30日提出の訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める、というものである。
ここにおいて、訂正後の請求項1と請求項4の記載に関して、上記訂正請求書の「7.請求の理由」における記載と、訂正特許請求の範囲の記載とが整合しない箇所が存在したため、令和7年1月14日付けで特許権者に対して審尋を行い、訂正特許請求の範囲の記載と上記訂正請求書の「7.請求の理由」における記載のうち、どちらの記載へと訂正することを求めるものであるのか、回答を求めたところ、令和7年2月6日に提出された回答書において、いずれも、訂正特許請求の範囲の記載へと訂正することを求めるものである旨の回答がなされたことから、訂正特許請求の範囲の記載に基づいて、訂正箇所の認定を行う。
本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ホルダ」と記載されているのを、「紙巻器」に訂正するとともに、請求項1の「前記壁面側に位置し」の後に「、前記紙巻器は、前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、を備え」を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「ホルダ」と記載されているのを、「紙巻器」に訂正するとともに、請求項4「前記壁面側に位置し」の後に「、前記紙巻器は、前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、を備え」を追加する訂正をする。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「ホルダ」と記載されているのを、「紙巻器」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~3について、請求項2及び請求項3は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の適否
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「ホルダ」を、本件特許の明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0011】の記載に基づいて「紙巻器」に訂正して限定し、さらに、本件特許明細書等の【0015】、図2~5に基づいて、「前記紙巻器は、前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、を備えている」点を特定し、「紙巻器」の構成をより具体的に特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した範囲内の訂正であり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項1は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2) 訂正事項2
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、当該訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(3) 訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項4の「ホルダ」を、本件特許明細書等の【0011】の記載に基づいて「紙巻器」に訂正して限定し、さらに、本件特許明細書等の【0015】、図2~5に基づいて、「前記紙巻器は、前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、を備えている」点を特定し、「紙巻器」の構成をより具体的に特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した範囲内の訂正であり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項3は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4) 訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の請求項2の「ホルダ」を、本件特許明細書等の【0011】の記載に基づいて「紙巻器」に訂正して限定するものである。
してみると、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項4は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(5) 独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の請求項1~4が特許異議の申立ての対象とされているので、上記(1)~(4)のとおり請求項1~4について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1~4に係る発明には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6) 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1から4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正請求に係る訂正を認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、1A等の記号は、分説するために当審合議体が付与した。
【請求項1】
1A 壁面に設置するように設計された紙巻器を、前記壁面に取り付けた部材に対して、前記壁面から離れた位置に接続部材を介して取り付けること、
を含み、
1B 前記接続部材は、
1B1 前記部材の底面に固定される第1接続部と、
1B2 前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部と、
を備えており、
1B3 前記第2接続部は、前記壁面から離間し、且つ前記壁面から離れた側の前記部材の端面よりも前記壁面側に位置し、
1C 前記紙巻器は、
1C1 前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、
1C2 前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、
を備えている
1D 紙巻器の取付け方法。
【請求項2】
2A 前記部材は、カウンタ本体である
2B 請求項1に記載の紙巻器の取付け方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
4A 壁面に取り付けられるカウンタ本体と、
4B 前記カウンタ本体に取り付けられる接続部材と、
4C 前記壁面に設置するように設計され、前記接続部材に取り付けられることによって、前記壁面から離れて配置された紙巻器と、
を備え、
4D 前記接続部材は、
4D1 前記カウンタ本体の底面に固定される第1接続部と、
4D2 前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部と、
を備えており、
4D3 前記第2接続部は、前記壁面から離間し、且つ前記壁面から離れた側の前記カウンタ本体の端面よりも前記壁面側に位置し、
4E 前記紙巻器は、
4E1 前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、
4E2 前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、
を備えている
4F カウンタ。
第4 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
(1) 申立理由の概要及び証拠方法
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証を提出し、以下の申立理由1~3を主張している。
甲第1号証:特開平9-220177号公報(以下「甲1」という。)
ア 申立理由1(進歩性)
本件訂正前の請求項1~4に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由2(サポート要件)
(ア) 申立理由2の1
本件特許発明1には、「前記接続部材は、前記部材の底面に固定される第1接続部と、前記第1接続部の一端から垂下して、前記ホルダが取り付けられる第2接続部と、を備えており、」との特定があり、本件特許発明4には、「前記接続部材は、前記カウンタ本体の底面に固定される第1接続部と、前記第1接続部の一端から垂下して、前記ホルダが取り付けられる第2接続部と、を備えており、」との特定があるが、第1接続部の一端が第1接続部のどの部分をさすものであるか特定されていないことから、本件特許発明1、4及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び3は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。
よって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~4に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(イ) 申立理由2の2
本件特許明細書等の【0004】に基づくと、本件特許発明1~4の課題は、トイレットペーパホルダを壁面に取り付ける際に用いる連結部を、壁面以外の面(例えば、下を向いた面等)に取り付けてしまうと、連結部に取り付けたトイレットペーパーホルダが、使用できない姿勢になってしまうことであるが、上記課題を解決するためには、本件特許発明1~4では、連結部に相当する接続部材が、下を向いた面等にも取り付けることができ、さらに壁面に設置するように設計されたホルダ自体が、下を向いた面等に取り付けられた接続部材を介して取り付けることができるものであることが特定される必要がある。
しかしながら、本件特許発明1~4では、接続部材及びホルダがそのようには特定されていないことから、本件特許発明1~4は、本件特許明細書等に記載された課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。
よって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~4に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
ウ 申立理由3(明確性)
本件特許発明1及び4には、「ホルダ」について「壁面に設置するように設計され」との特定があるが、壁面に設置するように設計されたホルダと、壁面に設置するように設計されていないホルダとの違いが不明確である。
本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び3についても同様である。
よって、本件特許発明1~4は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~4に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
2 令和6年6月26日付け取消理由の概要
本件特許発明1~4に係る特許に対して、当審合議体が令和6年6月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(取消理由)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に対する特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲1:特開平9-220177号公報
3 令和6年8月30日付け意見書(特許権者)の概要
特許権者は、令和6年8月30日付け意見書において、以下の主張を行っている。
本件訂正発明1及び4は、壁面に設置される用途で設計された紙巻器を壁面以外の部材(カウンタ本体)に良好に取り付けることができる紙巻器の取付け方法及びカウンタを提供することを目的にしている。
このため、本件訂正発明1の紙巻器の取付け方法及び本件訂正発明4のカウンタは、紙巻器が接続部材の第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び壁面から離れる方向である前方に向けて取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部を備えている。これによって、延出部が中央から延びた取付部を利用して、基部を第2接続部の前面にしっかりと安定して取り付けることができる。また、紙巻器の基部は、支持アームを連結する延出部が取付部の中央のみから延びた簡易な構造であるため、第2接続部の前面に取り付けしやすい。このように、本件訂正発明1及び4は、壁面に設置される用途で設計された紙巻器を壁面以外の部材(カウンタ本体)に良好に取り付けることができる。
甲1に記載された紙巻器の取付け方法、及びカウンタ周辺の構成における紙巻器は、逆L字型のブラケットに取り付けられる部分が不明である。このため、甲1には、紙巻器が接続部材の第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び壁面から離れる方向である前方に向けて取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部を備えることによって、紙巻器の基部を接続部材の第2接続部の前面にしっかりと安定して取り付けしやすくすることができ、壁面に設置される用途で設計された紙巻器を壁面以外の部材(カウンタ本体)に良好に取り付けることができるという本件訂正発明1及び4の技術思想の開示も示唆も全くない。
したがって、本件訂正発明1及び4は、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明2は本件訂正発明1を引用しているため、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 当審合議体の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトイレブースに設置する収納箱の取付構造に関する。」
「【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図1は本発明の第1実施例の収納箱取付構造を適用したトイレブースの斜視図であり、トイレブース1は、四面の壁パネル2A、2B(他の2面は不図示)…で囲み、出入り用の図示せぬドアを取付けて設け、壁パネル2Aに面してロータンク3を設置し、ロータンク3の手前に腰掛便器4を設置し、腰掛便器4の側方の壁パネル2Bに沿ってロータンク3と略同じ高さの本発明の収納箱5を設けたものである。
【0012】図2は本発明の収納箱の分解斜視図であり、収納箱5のパーツを示す。収納箱5は、第1収納箱6と、第2収納箱7とからなる。第1収納箱6、及び第2収納箱7は、樹脂等のインジェクション成型法にて製造した、例えば620mm×350mm×134mm(両収納箱セット状態)程度の大きさの縦長の直方体状の箱であり、外形を互いに左右対称形としたものである。
【0013】8は第1収納箱6、及び第2収納箱7の上方に水平に設けるカウンタであり、例えば、1200~1600mm×140mm程度の大きさに形成する。カウンタ8は、木、マーブライト(人工大理石)、ガラス等で形成する。
【0014】9はカウンタ8の下面に設けるレールであり、カウンタ8の長手方向に平行にカウンタ8よりも短く形成する。レール9は、アルミ等の金属板で下方が開放したチャンネル状に形成し、ビス10でカウンタ8の下面に固定する。11は第1収納箱6、及び第2収納箱7の上面に固定したローラである。
【0015】12は逆L字型のブラケットであり、レール9の右側のカウンタ8下面にビス13で固定する。15はトイレットペーパー14を2つ備えた紙巻器15であり、ビスでブラケット12に固定する。
【0016】16、17、及び18は、前記カウンタ8を壁パネル2A、及び2Bに固定する逆L字型のブラケットである。ブラケット16は、第1収納箱6のストッパ16aを備え、同様にブラケット17は、第2収納箱7のストッパ17aを備える。以上に説明したパーツの組立て施工手順を図3~図5で説明する。
【0017】図3~図5は収納箱の施工手順を示す図である。図3において、予めカウンタ8の下面にレール9をビスで固定しておく。次いでブラケット16をビス19でカウンタ8の左端部に固定し、カウンタ8の右端部にブラケット18をビス20で固定する。そしてブラケット16をビス19で壁パネル2Aに固定し、ブラケット18をビス20で壁パネル2Bに固定して、カウンタ8を水平にする。
【0018】図4において、予め組立てておいた第1収納箱6の図示せぬローラ11(図2参照)をレール9に嵌合させ、次いで第2収納箱7の図示せぬローラ11をレール9に嵌合させる。
【0019】図5において、ブラケット17をビス39で壁パネル2Bに固定する。次いで図示せぬブラケット12(図2参照)をカウンタ8にビスで固定し、ブラケット12に、トイレットペーパー14の紙巻器15をビス40で固定する。」
「【図1】
[図:0001424577000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001424577000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001424577000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001424577000004.jpg]
」
イ 甲1に記載された事項より認定できる事項
(ア) 認定事項ア
図1~3及び図5の記載を参照すると、トイレブース1に対して、トイレットペーパー14の紙巻器15を取り付けるための手順が記載されていると認められるから、甲1には、「トイレットペーパー14の紙巻器15の取り付け方法」の発明(以下「認定事項ア」という。)が記載されていると認められる。
(イ) 認定事項イ
図1及び図2の記載を参照すると、甲1には、「逆L字型のブラケット12が、直交する2つの長方形状の面を有し、該2つの長方形状の面のうち、一方の面が、壁パネル2Bに直交する水平面をなし、他方の面が、該一方の面の壁パネル2B側の辺より垂下し、壁パネル2Bに平行な垂直面となるように、該一方の面がカウンタ8に固定される点」(以下「認定事項イ」という。)が記載されていると認められる。
(ウ) 認定事項ウ
図2の記載を参照すると、「トイレットペーパー14の紙巻器15は、逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面に固定される点」(以下「認定事項ウ」という。)が記載されていると認められる。
(エ) 認定事項エ
図1及び図2を参照すると、「逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面」の位置が「カウンタ8の壁パネル2Bから離れた端面」より「壁パネル2B側」に位置していること(以下「認定事項エ」という。)が看取できる。
(オ) 認定事項オ
図1及び図2の記載を参照すると、甲1には、カウンタ8周辺の、ブラケット12及びトイレットペーパー14の紙巻器15を含む、カウンタ8周辺の構成が記載されているから、甲1には、「カウンタ8周辺の構成」の発明(以下「認定事項オ」という。)が記載されていると認められる。
ウ 甲1に記載された発明
上記ア及びイより、甲1には、方法の発明として、以下の発明が記載されていると認められる。
「トイレブース1の壁パネル2Bに(【0011】)カウンタ8を水平に設け(【0013】)、
カウンタ8下面に、直交する2つの長方形状の面を有する逆L字型のブラケット12を、該2つの長方形状の面のうち、一方の面が、壁パネル2Bに直交する水平面をなし、他方の面が、該一方の面の壁パネル2B側の辺より垂下し、壁パネル2Bに平行な垂直面となるように、該一方の面をビス13で固定し(【0015】、認定事項イ)、
逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面に、トイレットペーパー14の紙巻器15をビス40で固定し(【0019】、認定事項ウ)、
逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面の位置がカウンタ8の壁パネル2Bから離れた端面より壁パネル2B側に位置している(認定事項エ)、
トイレットペーパー14の紙巻器15の取り付け方法(認定事項ア)。」
(以下「甲1発明1」という。)
また、甲1には、物品の発明として、以下の発明が記載されていると認められる。
「トイレブース1の壁パネル2Bに設けられるカウンタ8と(【0011】、【0013】)、
カウンタ8下面にビス13で固定される、直交する2つの長方形状の面を有する逆L字型のブラケット12と(【0015】、認定事項イ)、
逆L字型のブラケット12に固定されるトイレットペーパー14の紙巻器15(認定事項ウ)からなり、
逆L字型のブラケット12の該2つの長方形状の面のうち、一方の面が、壁パネル2Bに直交する水平面をなし、他方の面が、該一方の面の壁パネル2B側の辺より垂下し、壁パネル2Bに平行な垂直面となるように、該一方の面がカウンタ8に固定され(認定事項イ)、
逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面に、トイレットペーパー14の紙巻器15がビス40で固定され(【0019】、認定事項ウ)、
逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面の位置がカウンタ8の壁パネル2Bから離れた端面より壁パネル2B側に位置している(認定事項エ)
カウンタ8周辺の構成(認定事項オ)。」
(以下「甲1発明2」という。)
(2) 本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア) 甲1発明1における「トイレブース1の壁パネル2B」、「トイレットペーパー14の紙巻器15」、「カウンタ8」及び「逆L字型のブラケット12」は、それぞれ、本件訂正発明1の構成1Aにおける「壁面」、「紙巻器」、「壁面に取り付けた部材」及び「接続部材」に相当する。
また、甲1発明1における「トイレットペーパー14の紙巻器15」は「垂直面をなす」「面に、」「ビス40で固定」されるものであり、トイレブース1の壁パネル2Bが一般的に垂直面であることは当業者の技術常識であるから、甲1発明1における「トイレットペーパー14の紙巻器15」もトイレブース1の壁パネル2Bに固定可能であるといえ、本件訂正発明1と同様に「壁面に設置するように設計された」ものであるといえる。
そして、甲1発明1において、「トイレットペーパー14の紙巻器15」は「逆L字型のブラケット12の垂直面をなす」「面に、」「ビス40で固定」されることにより「カウンタ8」に「固定」されるものであるから、本件訂正発明1と「壁面に設置するように設計された紙巻器を、前記壁面に取り付けた部材に対して、」「接続部材を介して取り付けること、」「を含」む点で一致する。
よって、本件訂正発明1と甲1発明1の構成1Aとは、「壁面に設置するように設計された紙巻器を、前記壁面に取り付けた部材に対して、」「接続部材を介して取り付けること、」「を含」む点で一致する。
(イ) 甲1発明1における「カウンタ8下面に、」「ビス13で固定」される「逆L字型のブラケット12」の「一方の面」は、本件訂正発明1の構成1B及び1B1における「接続部材」が「備え」る「前記部材の底面に固定される第1接続部」に相当し、甲1発明1における「該一方の面の壁パネル2B側の辺より垂下し、」「壁パネル2Bに平行な垂直面」となり「トイレットペーパー14の紙巻器15」が「ビス40で固定」される「他方の面」は、本件訂正発明1の構成1B2における「接続部材」が「備え」る「前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部」に相当する。
してみると、甲1発明1は、本件訂正発明1の構成1B、1B1及び構成1B2に相当する構成を有する。
(ウ) 甲1発明1における「逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面の位置がカウンタ8の壁パネル2Bから離れた端面より壁パネル2B側に位置している」ことは、本件訂正発明1の構成1B3における「前記第2接続部は、」「前記壁面から離れた側の前記部材の端面よりも前記壁面側に位置している」ことに相当する。
してみると、本件訂正発明1と甲1発明1の構成1B3とは、「前記第2接続部は、」「前記壁面から離れた側の前記部材の端面よりも前記壁面側に位置している」点で一致する。
(エ) 甲1発明1における「トイレットペーパー14の紙巻器15の取り付け方法」は、本件訂正発明1の構成1Dにおける「紙巻器の取付け方法」に相当する。
よって、甲1発明1は、本件訂正発明1の構成1Dに相当する構成を有する。
(オ) 上記(ア)~(エ)より、本件訂正発明1と甲1発明1は、以下の点で一致する。
<一致点>
1A’壁面に設置するように設計された紙巻器を、前記壁面に取り付けた部材に対して、接続部材を介して取り付けること、
を含み、
1B 前記接続部材は、
1B1 前記部材の底面に固定される第1接続部と、
1B2 前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部と、
を備えており、
1B3’前記第2接続部は、前記壁面から離れた側の前記部材の端面よりも前記壁面側に位置している
1D 紙巻器の取付け方法。
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>(構成1A、1B3に関して)
本件訂正発明1は、「紙巻器」を「壁面から離れた位置」に取り付けるものであり、「紙巻器が取り付けられる第2接続部」が、「前記壁面から離間」して位置するものであるのに対して、甲1発明1における「トイレットペーパー14の紙巻器15」を固定する「逆L字型のブラケット12の他方の面」は、「壁パネル2B」から離れて位置するか否かが不明である点。
<相違点2>(構成1C、1C1、1C2に関して)
本件訂正発明1は、「紙巻器」が「前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、」「前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、」「を備えている」ものであるのに対して、甲1発明1における「トイレットペーパー14の紙巻器15」は、そのような構成を有さない点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲1発明1は、「紙巻器」が、本件訂正発明1の「取付部」、「延出部を有する基部」及び「支持アーム部」に相当する構成を有していない。そして、これらの構成は、本件特許明細書等の【0004】及び【0005】を参照すると、「連結部を壁面以外の面(上下方向に拡がっていない面、例えば、下を向いた面等)に取り付けてしまうと、連結部に取り付けたトイレットペーパーホルダの姿勢は使用できない姿勢になってしまう」という課題に対する解決手段としての「壁面に設置される用途で設計されたホルダを壁面以外の部材に良好に取り付ける」ための構成であって、これらの構成は、本件特許の出願前における周知技術であるとも、技術的意義のない単なる設計事項であるとも認められない。
そして、上記第4の3において、特許権者が主張するように、相違点2に係る本件訂正発明1の構成により、「延出部が中央から延びた取付部を利用して、基部を第2接続部の前面にしっかりと安定して取り付けることができる。また、紙巻器の基部は、支持アームを連結する延出部が取付部の中央のみから延びた簡易な構造であるため、第2接続部の前面に取り付けしやすい。」とした作用効果を奏するものであると認められる。
してみると、相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。
ウ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は本件訂正発明1を引用するものであり、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えるものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4) 本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4と甲1発明2とを対比する。
(ア) 甲1発明2における「トイレブース1の壁パネル2Bに設けられるカウンタ8」は、本件訂正発明4の構成4Aにおける「壁面に取り付けられるカウンタ本体」に相当する。
よって、甲1発明2は、本件訂正発明4の構成4Aに相当する構成を有する。
(イ) 甲1発明2における「カウンタ8」「にビス13で固定される」「逆L字型のブラケット12」は、本件訂正発明4の構成4Bにおける「前記カウンタ本体に取り付けられる接続部材」に相当する。
よって、甲1発明2は、本件訂正発明4の構成4Bに相当する構成を有する。
(ウ) 甲1発明2における「逆L字型のブラケット12に固定されるトイレットペーパー14の紙巻器15」と、本件訂正発明4の構成4Cにおける「前記壁面に設置するように設計され、前記接続部材に取り付けられることによって、前記壁面から離れて配置された紙巻器」とは、「前記壁面に設置するように設計され、前記接続部材に取り付けられる」「紙巻器」である点で一致する。
(エ) 甲1発明2における「逆L字型のブラケット12」が「直交する2つの長方形状の面を有」し、「該2つの長方形状の面のうち、一方の面が、」「カウンタ8下面にビス13で固定され」ることは、本件訂正発明4の構成4D及び4D1における「前記接続部材は、」「前記カウンタ本体の底面に固定される第1接続部」「を備え」ることに相当する。
よって、甲1発明2は、本件訂正発明4の構成4D及び4D1に相当する構成を有する。
(オ) 甲1発明2における「逆L字型のブラケット12」が「直交する2つの長方形状の面を有」し、「該2つの長方形状の面のうち、」「該一方の面の壁パネル2B側の辺より垂下」する「他方の面」に「トイレットペーパー14の紙巻器15がビス40で固定され」ることは、本件訂正発明4の構成4D及び4D2における「前記接続部材は、」「前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部」「を備え」ることに相当する。
よって、甲1発明2は、本件訂正発明4の構成4D及び4D2に相当する構成を有する。
(カ) 甲1発明2における「逆L字型のブラケット12の垂直面をなす他方の面の位置がカウンタ8の壁パネル2Bから離れた端面より壁パネル2B側に位置している」ことは、本件訂正発明4の構成4D3における「前記第2接続部は、」「前記壁面から離れた側の前記カウンタ本体の端面よりも前記壁面側に位置し」ていることに相当する。
してみると、本件訂正発明4と甲1発明2の構成4D3とは、「前記第2接続部は、」「前記壁面から離れた側の前記部材の端面よりも前記壁面側に位置し」ている点で一致する。
(キ) 甲1発明2における「カウンタ8周辺の構成」は、本件訂正発明4の構成4Fにおける「カウンタ」に相当する。
よって、甲1発明2は、本件訂正発明4の構成4Fに相当する構成を有する。
(ク) 上記(ア)~(キ)より、本件訂正発明4と甲1発明2は、以下の点で一致する。
<一致点>
4A 壁面に取り付けられるカウンタ本体と、
4B 前記カウンタ本体に取り付けられる接続部材と、
4C’前記壁面に設置するように設計され、前記接続部材に取り付けられる紙巻器と、
を備え、
4D 前記接続部材は、
4D1 前記カウンタ本体の底面に固定される第1接続部と、
4D2 前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部と、
を備えており、
4D3’前記第2接続部は、前記壁面から離れた側の前記カウンタ本体の端面よりも前記壁面側に位置している
4F カウンタ。
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点3>(構成4C、4D3に関して)
本件訂正発明4は、「紙巻器が取り付けられる第2接続部」が「壁面から離間」しており、「紙巻器」が「前記壁面から離れて配置」されるのに対して、甲1発明2における「トイレットペーパー14の紙巻器15」を固定する「逆L字型のブラケット12の他方の面」は、「壁パネル2B」から離れて位置するか否かが不明である点。
<相違点4>(構成4E、4E1、4E2に関して)
本件訂正発明4は、「紙巻器」が「前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、」「前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、」「を備えている」ものであるのに対して、甲1発明2における「トイレットペーパー14の紙巻器15」は、そのような構成を有さない点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み相違点4から検討する。
本件訂正発明4と甲1発明2との相違点である相違点4は、本件訂正発明1と甲1発明1との相違点である相違点2と実質的に同じであるところ、上記2(2)イに示した相違点2についての判断と同じ理由から、相違点4に係る本件訂正発明4の構成は、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。
ウ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5) 取消理由通知で通知した取消理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由によっては、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由について
(1) 取消理由通知に採用した申立理由について
取消理由は申立理由1を採用したものである。
そして、取消理由についての判断は、上記1において検討したとおりである。
よって、申立理由1によっては、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 取消理由通知に採用しなかった申立理由について
ア 申立理由2について
(ア) 申立理由2の1について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そこで、本件特許明細書等を参照すると、本件特許明細書等の【0004】には「連結部を壁面以外の面(上下方向に拡がっていない面、例えば、下を向いた面等)に取り付けてしまうと、連結部に取り付けたトイレットペーパーホルダの姿勢は使用できない姿勢になってしまうと考えられる。」と記載され、同【0005】には「壁面に設置される用途で設計されたホルダを壁面以外の部材に良好に取り付けることができるホルダの取付け方法、及びこのホルダを備えたカウンタを提供することを解決すべき課題としている。」と記載されていることから、本件訂正発明1、2及び4が解決しようとする課題は、「連結部を壁面以外の面(上下方向に拡がっていない面、例えば、下を向いた面等)に取り付けてしまうと、連結部に取り付けたトイレットペーパーホルダの姿勢は使用できない姿勢になってしまう」ことである。そして、その解決手段は「壁面に設置される用途で設計されたホルダを壁面以外の部材に良好に取り付ける」ことができる「接続部材」を用いることであると認められる。
そして、本件訂正発明1の「接続部材」に関し、構成1B2における「第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部」が、「第1接続部」のどちらの端から垂下するものであっても、第2接続部はホルダを取り付けるための面をなすものであって、取り付けたトイレットペーパーホルダは、使用できる姿勢となるものと認められる。同様に、本件訂正発明4の「接続部材」に関し、構成4D2における「前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部」が、「第1接続部」のどちらの端から垂下するものであっても、第2接続部はホルダを取り付けるための面をなすものであって、取り付けたトイレットペーパーホルダは、使用できる姿勢となるものと認められる。そのため、本件訂正発明1及び本件訂正発明4は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されており、上記の課題を解決できると認められる。本件訂正発明2についても同様である。
よって、申立理由2の1によっては、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
(イ) 申立理由2の2について
本件訂正発明1の構成1A、1B、1B1及び1B2には、「壁面に設置するように設計された紙巻器を、前記壁面に取り付けた部材に対して、前記壁面から離れた位置に接続部材を介して取り付けること、を含み、前記接続部材は、前記部材の底面に固定される第1接続部と、前記第1接続部の一端から垂下して、前記紙巻器が取り付けられる第2接続部と、を備えており、」と特定され、同構成1C、1C1及び1C2において「前記紙巻器は、前記第2接続部の前面に取り付けられる取付部、及び前記壁面から離れる方向である前方に向けて前記取付部の中央のみから延びた延出部を有する基部と、前記延出部の前方側に連結された支持アーム部と、を備えている」ことが特定されていることから、本件訂正発明1は、「壁面に設置される用途で設計されたホルダを壁面以外の部材に良好に取り付ける」ことが実現可能であると認められる。
してみると、本件訂正発明1は、上記の課題を解決できるものと認められ、本件訂正発明1が、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとまではいえない。
同様のことは、本件訂正発明4においてもいえる。また、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2についても同様である。
したがって、本件訂正発明1、2及び4が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
よって、申立理由2の2によっては、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
イ 申立理由3について
本件訂正発明1及び本件訂正発明4には「壁面に設置するように設計され」た「紙巻器」が有する「基部」及び「支持アーム部」の具体的な構成、及び、「紙巻器」が取り付けられる「接続部材」の具体的な構成が、いずれも特定されているから、「紙巻器」が「壁面に設置するように設計され」ていることに関し、本件訂正発明1及び本件訂正発明4の構成が不明確となるような事情はない。
本件訂正発明2についても同様である。
よって、申立理由3によっては、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3は、本件訂正により削除された。これにより、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700420