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特許異議申立

2022-701081

無機繊維製品用バインダー及びその製造方法、無機繊維製品の製造方法、繊維製品用バインダー

審判番号
2022-701081
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-065146
登録番号
7082893
請求日
2022年11月04日
審決日
2023年08月04日
公報発行日
2023年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】群栄化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】川越 雄一郎
  • 【権利者代理人】柳井 則子
  • 【異議申立人】金山 愼一
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 森本 哲也
  • 審判官 井上 茂夫
分類
P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7082893号発明「無機繊維製品用バインダー及びその製造方法、無機繊維製品の製造方法、繊維製品用バインダー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7082893号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。 特許第7082893号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7082893号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年3月29日に出願され、令和4年6月1日にその特許権の設定登録がされ、令和4年6月9日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。 令和4年11月 4日 :特許異議申立人金山愼一(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て 令和5年 2月21日付け:取消理由通知書 令和5年 4月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年 6月 8日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年4月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、訂正自体を、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。 なお、訂正事項1は、一群の請求項〔1~3〕に対して請求された訂正であり、訂正事項2は、請求項4に対して請求された訂正ものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記モノアミンの含有量が、前記液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、0.5~40質量部である無機繊維製品用バインダー」と記載されているのを、「前記モノアミンの含有量が、前記液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、5~40質量部であり、 JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上である、無機繊維製品用バインダー」に訂正する。 (請求項1を引用する請求項2及び3も、同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「前記モノアミンの添加量が、前記液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、0.5~40質量部である、無機繊維製品用バインダーの製造方法」と記載されているのを、「前記モノアミンの添加量が、前記液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、5~40質量部である、無機繊維製品用バインダーの製造方法であり、 JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した、前記無機繊維製品用バインダーの混和性が4000%以上である、製造方法」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に記載の「モノアミンの含有量」の数値範囲の下限値を更に限定するとともに、「無機繊維製品用バインダー」について、「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上である」との限定を付加するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、本件特許明細書の段落【0025】、【0060】、【0067】及び【0078】の記載に基づく訂正であり、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。 また、訂正事項1は、上記のとおり特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、請求項4に記載の「モノアミンの添加量」の数値範囲の下限値を更に限定するとともに、「無機繊維製品用バインダーの製造方法」について、「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した、前記無機繊維製品用バインダーの混和性が4000%以上である」との限定を付加するものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4、本件特許明細書の段落【0041】、【0060】、【0067】及び【0078】の記載に基づく訂正であり、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。 また、訂正事項2は、上記のとおり特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、他の各請求項に係る発明についても同様とする。)は、本件訂正請求の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 液状レゾール型フェノール樹脂と、モノアミンとを含み、 前記モノアミンの含有量が、前記液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、5~40質量部であり、 JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上である、無機繊維製品用バインダー。 【請求項2】 pHが7.0~13.0である、請求項1に記載の無機繊維製品用バインダー。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の無機繊維製品用バインダーを無機繊維に付着させ、前記無機繊維を成形して無機繊維製品を得る、無機繊維製品の製造方法。 【請求項4】 50℃未満で液状レゾール型フェノール樹脂にモノアミンを添加し、前記モノアミンの添加量が、前記液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、5~40質量部である、無機繊維製品用バインダーの製造方法であり、 JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した、前記無機繊維製品用バインダーの混和性が4000%以上である、製造方法。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和5年2月21日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 1(サポート要件) 本件特許の訂正前の請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。よって、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2(新規性) 本件特許の訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 3(進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 <申立人が提出した証拠> 甲第1号証:特表2013-545829号公報 甲第2号証:特開2009-29644号公報 甲第3号証:特開2011-241267号公報 (以下、甲第1号証を「甲1」といい、他の甲各号証についても同様とする。) 第5 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(サポート要件)について 本件特許明細書の段落【0009】には、【発明が解決しようとする課題】について「特許文献2~4のように、未反応のホルムアルデヒド及びフェノールにアミンを反応させて縮合物を形成させると、無機繊維製品用バインダーの水希釈性が悪くなる。」と記載されており、段落【0010】には、「本発明は、水希釈性に優れ、かつホルムアルデヒド放散量が低減され、強度を充分に有し、外観に優れた無機繊維製品を製造できる無機繊維製品用バインダー、前記無機繊維製品用バインダーの製造方法、及び前記無機繊維製品用バインダーを用いた無機繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。」と記載されている。 そして、段落【0060】には「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じて、水に対する混和性(質量分率%)を測定し、水希釈性を評価した。・・・試料の樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上であれば、無機繊維製品用バインダーとして問題なく使用できる。」と記載されている。また、段落【0067】の【表1】及び段落【0078】の【表3】には、水希釈性が4000%以上の例として実施例1~7の無機繊維製品用バインダーA-1~A-7及び実施例8の無機繊維製品用バインダーC-1が記載されており、段落【0080】には、水希釈性が4000%に満たない比較例7~9に対し、「比較例7~9の無機繊維製品用バインダーC-4、C-5、C-6は、水希釈性が著しく劣っていた。」と記載されている。 そうしてみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、水希釈性として、「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じ」た混和性の測定において、「樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上」の「無機繊維製品用バインダー」が水希釈性に優れたものとして記載されているといえる。 一方、本件訂正前の請求項1~4には、「液状レゾール型フェノール樹脂」との記載はあるものの、「水希釈性」(混和性)に関する記載は無く、上述した「無機繊維製品用バインダー」が水希釈性として「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じ」た混和性の測定において、「樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上」である点が特定されていないものであった。 しかしながら、本件訂正により、本件訂正後の請求項1~4には、JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した」「混和性が4000%以上である」点が特定された。 よって、本件訂正後の本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでない。 2 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について (1) 甲各号証に記載された事項、発明 ア 甲1 甲1に記載されている事項(特に、【請求項11】、段落【0037】~【0038】、【0042】の記載を参照されたい。)を総合し、特に実施例2の態様に着目すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「1000gのフェノール(10.626モル)、および水酸化ナトリウムの50%水溶液40gを、撹拌器および加熱/冷却ユニットを備えているリアクタに入れ、混合物を60℃に加熱し、ホルムアルデヒドの51%水溶液1250g(21.228モル)を、撹拌しながら1.5時間にわたって連続的に加え、ホルムアルデヒドの添加が完了した後に、23℃における3:1(ml水/g樹脂)の水許容性まで、約2時間にわたって80℃において樹脂を濃縮させ、 3:1(ml水/g樹脂)の水許容性に達すると、樹脂を30℃まで冷却し、サンプルを取り、遊離ホルムアルデヒドの含量を、ISO 9397にしたがって測定し、求められた値が2.02%であり、46.26gの遊離ホルムアルデヒド(1.54モル)の、樹脂溶液における総量に相当し、等モル量のヒドロキシルアミン101.64g(1.54モル)の50%水溶液を加え、真空下の蒸留を始め、樹脂を最終粘度まで蒸留させた、樹脂におけるヒドロキシルアミンの量が、水性樹脂溶液の2.42重量%である、 水性樹脂組成物。」 イ 甲2 甲2に記載されている事項(特に、【請求項1】、【請求項3】、【請求項9】、【請求項11】、【請求項12】、段落【0089】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲2には、以下の事項が記載されていると認められる。 「レゾール型のクロロフェノール-レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液とビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンを含有し、メチルアミン、エチルアミン、t-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンから選ばれるアミン化合物(I)を加えたガラス繊維被覆用塗布液で、クロロフェノール-レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物(A)の質量を100%基準とする質量百分率で表して、I/A=20%以上、500%以下であるガラス繊維被覆用塗布液。」 ウ 甲3 甲3に記載されている事項(特に、【請求項1】、【請求項2】、【請求項4】、【請求項9】、【請求項10】、段落【0018】、【0039】、【0047】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲3には、以下の事項が記載されていると認められる。 「ガラスフィラー表面の少なくとも一部が樹脂組成物により被覆処理されてなる界面強化処理ガラスフィラーであって、前記樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)、アミン系シランカップリング剤(B)、及び、窒素含有化合物(C)を含有し、窒素含有化合物(C)としてトリブチルアミンがレゾール型フェノール樹脂0.1重量部当たり0.005重量部配合されている界面強化処理ガラスフィラー。」 (2) 本件発明1について ア 対比 甲1発明は、「1000gのフェノール(10.626モル)、および水酸化ナトリウムの50%水溶液40gを」「混合物を60℃に加熱し、ホルムアルデヒドの51%水溶液1250g(21.228モル)を、」「撹拌しながら1.5時間にわたって連続的に加え、ホルムアルデヒドの添加が完了した後に、23℃における3:1(ml水/g樹脂)の水許容性まで、約2時間にわたって80℃において樹脂を濃縮させ」ていることから、「液状レゾール型フェノール樹脂」を含むことが分かる。 また、甲1発明の「ヒドロキシルアミン」は、示性式がNH2OHであるから、本件発明1の「モノアミン」に相当する。 さらに、甲1発明の「水性樹脂組成物」は、本件発明1の「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上である、無機繊維製品用バインダー」と、「水性樹脂組成物」である点で一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点1> 「液状レゾール型フェノール樹脂と、モノアミンとを含む、 水性樹脂組成物。」 <相違点1> 「モノアミン」「を含む」ことについて、本件発明1は、「液状レゾール型フェノール樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、5~40質量部」であるのに対して、甲1発明は、「樹脂におけるヒドロキシルアミンの量が、水性樹脂溶液の2.42重量%である」ものの、本件発明1の構成に相当するか不明な点。 <相違点2> 「水性樹脂組成物」について、本件発明1は、「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上である、無機繊維製品用バインダー」であるのに対して、甲1発明は、混和性が不明であるとともに、「無機繊維製品用バインダー」に相当するか不明な点。 イ 判断 まず、相違点2について検討する。 甲1の【請求項13】の「請求項11に記載の樹脂から得られる結合物質」という記載、段落【0002】の「主な結合剤は、フェノール樹脂、尿素樹脂であり」という記載、段落【0027】の「上記樹脂から得られた結合剤」、段落【0031】の「上記樹脂組成物は、フェノールホルムアルデヒド樹脂の結合剤の他に」という記載を踏まえれば、甲1発明の「水性樹脂組成物」は、本件発明1の「バインダー」に相当することが分かる。 また、甲1の段落【0027】には、「本発明に係る上記水性樹脂組成物の使用は、・・・不織の繊維製品、ミネラルウール製品、グラスウール製品およびストーンウール製品・・・の製造に含める。」と記載されていることから、甲1発明の「水性樹脂組成物」を無機繊維製品用とすることができることも分かる。 一方、混和性について、甲1の段落【0042】には、実施例2の水許容性が「3.9ml水/g樹脂」である点が記載されている。実施例2の固形分が77.4%であることを勘案して本件発明1でいう混和性に換算すると、3.9/(77.4/100)×100≒504%となる。 したがって、甲1発明の「水性樹脂組成物」の混和性は、本件発明1の「4000%以上」とはいえず、大きく異なるものである。 そして、甲1には、「水性樹脂組成物」の水許容性(混和性)を高める点について、記載も示唆もない。 また、甲2及び3にも、混和性を高める点について記載も示唆もない。 そうしてみれば、甲1発明を「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した混和性が4000%以上」とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 以上のとおりであるから、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 本件発明2~3について 本件発明2~3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)イで検討したのと同様に、本件発明2~3は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 本件発明4について 本件発明4と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明4は、「JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した、前記無機繊維製品用バインダーの混和性が4000%以上である」のに対して、甲1発明は、「水性樹脂組成物」が「無機繊維製品用バインダー」に相当するか不明であり、混和性が不明である点。 そして、当該相違点3は、上記相違点2と実質的に同一であり、上記説示したとおりである。 したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人は、特許異議申立書において、 「よって、本件特許発明の「液状レゾール型フェノール樹脂」は、「水希釈性」を具備していないものも包含するものとして解釈されるべきである。 そうすると、本件の特許請求の範囲に記載された「液状レゾール型フェノール樹脂」は、「水希釈性」を具備していないものまでを包含するという意味においてサポート要件を満たしていない。 また、特許製球の範囲では、「液状レゾール型フェノール樹脂」が、モノアミンを添加しなくても既に「水希釈性」を具備している態様のものである旨の特定はされていないから、仮に、当該「液状レゾール型フェノール樹脂」が「水希釈性」を具備している態様のものであるとすれば、本件特許発明はその特許を受けようとする発明が明確ではない。」 「さらに、本件特許明細番の段落0039~0040等には、本件特許発明に係る無機繊維製品用バインダーは、フェノール類とアルデヒド類を50℃以上の反応温度で反応させた後、レゾール型フェノール樹脂の温度を50℃未満まで降温させてからモノアミンを添加することにより、水希釈性に優れたものとなる旨の記載があるところ、請求項1~3の記載では、「液状レゾール型フェノール樹脂」が「フェノール類とアルデヒド類を50℃以上の反応温度で反応させ」て得られたものであるのかが明らかではなく、モノアミンの添加が「50℃未満」で行われたものであるのかも明らかではない。 また、請求項4には「50℃未満で液状レゾール型フェノール樹脂にモノアミンを添加」なる記載はあるものの、「液状レゾール型フェノール樹脂」が「フェノール類とアルデヒド類を50℃以上の反応温度で反応させ」て得られたものであるのかが明らかではない。」 「以上の次第であるから本件特許発明1~4は、特許法第36条第6項第1号ないし同法同条同項第2号に規定される要件を満たしていないため、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。」 と主張する。(特許異議申立書28~29ページ) 2 申立人が主張する上記1の点を検討する。 まず、明確性要件に関し、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は文言上明確であり、不明確とするところもない。 したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。 次に、サポート要件に関して検討する。本件特許発明における発明の課題は、「水希釈性に優れ、かつホルムアルデヒド放散量が低減され、強度を充分に有し、外観に優れた無機繊維製品を製造できる無機繊維製品用バインダー、前記無機繊維製品用バインダーの製造方法、及び前記無機繊維製品用バインダーを用いた無機繊維製品の製造方法を提供すること」である(段落【0010】)。 水希釈性については、上記第5の1に記載したように、本件訂正により、本件訂正後の請求項1~4には、JIS K6910:2007の5.5の規定に準じた混和性の測定において、樹脂固形分の質量を用いて算出した」「混和性が4000%以上である」点が特定された。このように、本件訂正後の請求項1~4では、水希釈性に優れた点が特定されている。 また、反応温度については、本件特許明細書の段落【0038】に、「フェノール類とアルデヒド類の反応の反応温度は、50~90℃が好ましく、60~80℃がより好ましい。反応温度が前記範囲の下限値以上であれば、充分な反応速度が得られる。反応温度が前記範囲の上限値以下であれば、反応の制御が容易である。」と記載されているように、フェノール類とアルデヒド類との反応温度の大小に応じて反応速度が変化することが分かる。そうしてみると、当該反応温度を50℃以上と特定せずとも、発明の課題を解決できることは、当業者にとって明らかである。 また、本件特許明細書の段落【0039】には、「フェノール類とアルデヒド類を前記範囲のような50℃以上の反応温度で反応させた後、レゾール型フェノール樹脂の温度を50℃未満まで降温させてからモノアミンを添加する。50℃未満でモノアミンを添加することで、レゾール型フェノール樹脂中に含まれる遊離のフェノール及び遊離のホルムアルデヒドとモノアミンが反応して縮合物が形成されることを抑制できる。これにより、得られる本バインダーの水希釈性が低下することが抑制される。」と、段落【0040】には、「モノアミンを添加する際のレゾール型フェノール樹脂の温度は、50℃未満であり、10~40℃が好ましく、20~35℃がより好ましい。モノアミン添加時のレゾール型フェノール樹脂の温度が前記範囲の上限値以下であれば、水希釈性に優れた本バインダーが得られやすい。」と記載されている(下線は、理解の便のため、当審で付与した。)。 そして、上述したように、本件訂正後の請求項1~4では、水希釈性に優れた点が特定されているから、モノアミンの添加する温度を50℃未満と特定せずとも、発明の課題を解決できることは、当業者にとって明らかである。 したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合する。 よって、申立人の上記1に係る主張は、採用することができない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が提出した特許異議の申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701081

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