特許異議申立
2022-701237
撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
- 審判番号
- 2022-701237
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-244124
- 登録番号
- 7085829
- 請求日
- 2022年12月13日
- 審決日
- 2024年03月06日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日華化学株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】酒巻 順一郎
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第126条第6項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7085829号発明「撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7085829号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7085829号の請求項1についての特許異議の申立てを却下する。
特許第7085829号の請求項2ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許(特許第7085829号)に係る出願は、平成29年12月20日の出願であって、令和4年6月9日に特許権の設定登録がされ、同年6月17日に特許掲載公報が発行された。その後、令和4年12月14日に特許異議申立人である竹口美穂(以下、「申立人」ともいう。)によって、請求項1~9(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後、当審は、令和5年5月17日付けで取消理由を通知し(発送は同年同月19日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年7月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。なお、当審は、同年8月2日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知(発送は同年同月7日)したが、この通知に対し、申立人は、意見書を提出しなかった。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和5年7月13日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」ともいう。)の請求の趣旨は、「特許第7085829号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項からなるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「一般式(I-1)で表される前記多官能化合物が、下記一般式(I-2)で表される多官能化合物、下記一般式(I-3)で表される多官能化合物及び下記一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の撥水剤組成物。」とあるのを、「少なくとも下記一般式(I-1)で表される多官能化合物と、下記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物と、の反応生成物である疎水性化合物[但し、下記一般式(11)で表される化合物及び下記一般式(12)で表される化合物を除く]を含み、
一般式(I-1)で表される前記多官能化合物が、下記一般式(I-2)で表される多官能化合物、下記一般式(I-3)で表される多官能化合物及び下記一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、撥水剤組成物。
R31[-Wl-R32]d[-Vl]e (I-1)
[式(I-1)中、dは1以上の整数を表し、eは2以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、R31は(d+e)価の有機基を表しW1はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R32は円素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、V1はヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、e個のV1のうちの2つ以上がヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
R33[-NCO]f (II)
[式(II)中、R33はf価の有機基を表し、fは2~7の整数を表す。]
R11[-Wl-R12]d[-V-R13(-Zl)g]e (11)
[式(11)中、dは2以上の整数を表し、eは1以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、gは1以上の整数を表し、R11は(d+e)価の有機基を表し、W1はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R12は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Vはウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R13は(1+g)価の有機基を表しZ1はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。]
R21[-W2-R22][-W3-R23] (12)
[式(12)中、R21は下記一般式(13)で表される2価の基を表し、W2及びW3はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R22は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、R23は、炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基、又は下記一般式(14)で表される1価の基を表す。ただし、W3がエステル基又はアミド基である場合、R23は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。
【化1】
[図:0001411259000001.jpg]
{式(13)中、qは1~4の整数を表し、R24及びR26はそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基を表し、Jはカルボニル基又はアミド基である2価の基を表し、R25は、炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基又は、下記一般式(15)で表される1価の基を表す。ただし、Jがカルボニル基である場合、当該カルボニル基に結合するR25は炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基である。
-R28(-Z3)k (15)
(式(15)中、kは1以上の整数を表し、R28は(1+k)価の有機基を表し、Z3はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。)}
-R27(-Z2)h (14)
{式(14)中、hは1以上の整数を表し、R27は(1+h)価の有機基を表し、Z2はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。}]」と訂正して独立形式とし、
「gは0又は1の整数であり、」とあるのを、「gは1の整数であり、」に訂正する。(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~9も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項3に「請求項1又は2に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2に記載の撥水剤組成物」に訂正する。(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~9も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2又は3に記載の撥水剤組成物」に訂正する。(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~9も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2~4のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」に訂正する。(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~9も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」に訂正する。(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~9も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2~6のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」に訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項8~9も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2~7のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正事項1において、特許請求の範囲の請求項1を削除したことに伴い、請求項9に「請求項1~7のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」とあるのを、「請求項2~7のいずれか一項に記載の撥水剤組成物」に訂正する。
3 訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~9について、請求項2~9はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~9に対応する本件訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項2が、請求項1を引用する形式で記載されていたものを、引用しない形式で記載する訂正、及び、訂正前の「gは0又は1の整数であり、」という記載を「gは1の整数であり、」に訂正して、「g」の選択肢から「0」を削除する訂正からなるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載引用しないものとすること、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項2が、請求項1を引用する形式で記載されていたものを、引用しない形式で記載するとともに、訂正前の「gは0又は1の整数であり、」という記載における「g」の選択肢から「0」を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
また、訂正事項2は、請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上その特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項3~9について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3~9は、請求項3~9が、それぞれ、それよりも前の請求項を引用する形式で記載されていたものを、訂正事項1によって請求項1が削除されることにともない、その引用する請求項から請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3~9は、請求項3~9が、それぞれ、それよりも前の請求項を引用する形式で記載されていたものを、その引用する請求項から請求項1を削除するものであるから、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
また、訂正事項3~9は、いずれも、請求項3~9に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上その特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(5)独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~9に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
(6)本件訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項により準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。
第3 本件発明等
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~9に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下のとおりのものである(請求項1~9に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
少なくとも下記一般式(I-1)で表される多官能化合物と、下記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物と、の反応生成物である疎水性化合物[但し、下記一般式(11)で表される化合物及び下記一般式(12)で表される化合物を除く]を含み、
一般式(I-1)で表される前記多官能化合物が、下記一般式(I-2)で表される多官能化合物、下記一般式(I-3)で表される多官能化合物及び下記一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、撥水剤組成物。
R31[-Wl-R32]d[-Vl]e (I-1)
[式(I-1)中、dは1以上の整数を表し、eは2以上の整数を表し、(d+e)は3~6でありR31は(d+e)価の有機基を表し、W1はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R32は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、V1はヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、e個のV1のうちの2つ以上がヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
R33[-NCO]f (II)
[式(II)中、R33はf価の有機基を表し、fは2~7の整数を表す。]
R11[-W1-R12]d[-V-R13(-Z1)g]e (11)
[式(11)中、dは2以上の整数を表し、eは1以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、gは1以上の整数を表し、R11は(d+e)価の有機基を表しW1はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表しR12は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Vはウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R13は(1+g)価の有機基を表し、Z1はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す]
R21[-W2-R22][-W3-R23] (12)
[式(12)中、R21は下記一般式(13)で表される2価の基を表し、W2及びW3はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R22は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、R23は、炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基、又は、下記一般式(14)で表される1価の基を表す。ただし、W3がエステル基又はアミド基である場合、R23は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。
【化1】
[図:0001411259000002.jpg]
{式(13)中、qは1~4の整数を表し、R24及びR26はそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基を表し、Jはカルボニル基又はアミド基である2価の基を表し、R25は、炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基、又は、下記一般式(15)で表される1価の基を表す。ただし、Jがカルボニル基である場合、当該カルボニル基に結合するR25は炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭に水素基である。
-R28(-Z3)k (15)
(式(15)中、kは1以上の整数を表し、R28は(1+k)価の有機基を表し、Z3はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す)}
-R27(-Z2)h (14)
{式(14)中、hは1以上の整数を表し、R27は(1+h)価の有機基を表し、Z2はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。}]
C[-R41]g[-R42-V2]h[-R43-W2-R44]i (I-2)
[式(I-2)中、gは1の整数であり、hは2又は3の整数であり、iは1又は2の整数であり、(g+h+i)は4であり、R41は炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R42は炭素数1~2の2価のアルキレン基を表し、R43は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R44は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、W2はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、V2はヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、2つ以上のV2はヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
【化2】
[図:0001411259000003.jpg]
[式(I-3)中、R51及びR52はそれぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R54及びR55はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R53、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される1価の基を示す。
-R59-V3 (1)
{R59は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、V3はヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。}
-R60-W3-R61 (2)
{R60は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R61は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、W3はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表す。}
ただし、R53、R56、R57及びR58のうち少なくとも2つは、V3がヒドロキシ基又はアミノ基である、前記一般式(1)で表される基である。]
【化3】
[図:0001411259000004.jpg]
[式(I-4)中、jは1~4の整数を表し、R71及びR73はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R72及びR74はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アミノ基又は下記一般式(3)で表される1価の基を表し、R75は水素、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される1価の基を表す。
-W4-R76 (3)
{式(3)中、W4はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R76は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
-R77-OH (4)
{式(4)中、R77は炭素数2~3のアルキレン基を表す。}
-R78-W5-R79 (5)
{式(5)中、R78は炭素数2~3のアルキレン基を表し、R79は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、W5はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を示す。}
-W6-R80 (6)
{式(6)中、W6はカルボニル基又はアミド基を表し、R80は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
ただし、R72、R74及びj個のR75のうち少なくとも2つはヒドロキシ基、アミノ基、水素又は前記一般式(4)で表される1価の基であり、R72及びR74はヒドロキシ基又はアミノ基、R75は水素又は前記一般式(4)で表される1価の基である。]
【請求項3】
前記疎水性化合物が、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を有する、請求項2に記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)に由来する構造単位を含有する非フッ素系ポリマーを更に含む、請求項2又は3に記載の撥水剤組成物。
【化4】
[図:0001411259000005.jpg]
[式(A-1)中、Rlは水素又はメチル基を表し、R2は置換基を有していてもよい炭化水素12以上の1価の炭化水素基を表す。]
【請求項5】
前記疎水性化合物の重量平均分子量が、2,000~100,000である、請求項2~4のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項6】
前記疎水性化合物が、下記一般式(III-1)、一般式(III-2)又は一般式(III-3)で表される部分構造を有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【化5】
[図:0001411259000006.jpg]
[式(III-1)中、n1は、2以上の整数を表し、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【化6】
[図:0001411259000007.jpg]
[式(III-2)中、n2は、2以上の整数を表し、n3は、1以上の整数を表し、R13は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【化7】
[図:0001411259000008.jpg]
[式(III-3)中、n4は、2以上の整数を表し、R14は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【請求項7】
繊維用である、請求項2~6のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項8】
繊維を、請求項2~7のいずれか一項に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【請求項9】
繊維と、前記繊維上に付着した請求項2~7のいずれか一項に記載の撥水剤組成物と、を備える、撥水性繊維製品。」
2 本件特許明細書の記載
「【0020】
本発明によれば、被処理物に、優れた撥水性及び耐久撥水性を付与することができる撥水剤組成物、及びそれを用いて得られる撥水性繊維製品を提供することができる。
【0021】
本発明の撥水剤組成物は、フッ素化合物を含まない撥水剤組成物でありながらもフッ素化合物を含む撥水剤と同等の優れた撥水性及び耐久撥水性を付与できることから、フッ素系撥水剤に代わるものとしての利用が可能であり、また、長鎖フルオロアルキル化合物を含まないため、環境等への影響懸念を解消することができる。
【0022】
フッ素系撥水剤を繊維製品に付着させた場合は通常高温での熱処理が施されるが、本発明の撥水剤組成物はフルオロアルキル基を有する単量体を用いていない
ため、130℃以下の温和な条件で熱処理した場合であっても高い撥水性を発揮させることができる。また、130℃を超える高温で熱処理した場合には、熱処理時間をフッ素系撥水剤の場合よりも短くすることができる。したがって、本発明の撥水剤組成物は、被処理物の熱による変質を抑えることができ、また熱処理にかかる熱量を削減できる等のコスト面でも優れている。」
「【0093】
本実施形態に係る撥水剤組成物は、非フッ素系ポリマーを更に含んでよい。
【0094】
非フッ素系ポリマーとしては、特に制限されないが、上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)が挙げられる。上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は、置換基を有していてもよい炭素数が12以上の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12以上の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、R2は無置換の炭化水素基であることが好ましい。」
「【0194】
<疎水性化合物の合成>
表1に示される化合物(表中、数値はモル比を示す。)を含む混合液を、以下に示す手順により重合して、疎水性化合物を得た。・・・
【0195】
(合成例1)
1000mlフラスコにジトリメチロールプロパン206.74g、ステアリン酸469.87g、p-トルエンスルホン酸、3.4gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0196】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を101.12gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート23.78g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒(ネオスタンU-600:日東化成株式会社製)0.125gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応は、NCO%が0.64%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを2.36g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(HLC-8320GPC(TOSOHCORPORATION))を用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、11700であった。
【0197】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、W1がエステル基、R32がヘプタデシル基、V1がヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させ、その後、反応せずに残っているイソシアネート基を、3,5-ジメチルピラゾールでブロックし、得られた化合物である。
【0198】
(合成例2)
1000mlフラスコにトリメチロールプロパン255.88g、ステアリン酸542.51g、p-トルエンスルホン酸、1.6gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0199】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を87.83gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート37.11g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒0.125gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応はNCO%が0.69%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを2.37g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、17500であった。
【0200】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がトリメチロールプロパンから3つのヒドロキシ基を除いた残基、dが1、eが2、W1がエステル基、R32がヘプタデシル基、V1がヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させ、その後、反応せずに残っているイソシアネート基を、3,5-ジメチルピラゾールでブロックし、得られた化合物である。
【0201】
(合成例3)
1000mlフラスコにジトリメチロールプロパン206.74g、ステアリン酸469.87g、p-トルエンスルホン酸、3.4gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0202】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を114.33gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート22.25g、メチルエチルケトン27g、ビスマス系触媒0.3gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応はNCO%が0%になるまで行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、12900であった。
【0203】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、W1がエステル基、R32がヘプタデシル基、V1がヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させて得られた化合物である。
【0204】
(合成例4)
300mlフラスコにジトリメチロールプロパン28.52g、ステアリルイソシアネート67.32g、メチルエチルケトン23.4g、ビスマス系触媒0.06gを入れ、80℃まで昇温し5時間反応を行なった。
【0205】
次に、ヘキサメチレンジイソシアネート21.1gを入れ、さらに80℃で5時間反応を行なった。反応はNCO%が0.43%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを1.6g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、17500であった。
【0206】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、W1がウレタン基、R32がヘプタデシル基、V1がヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させて得られた化合物である。
【0207】
(合成例5)
1000mlフラスコにジトリメチロールプロパン250.34g、ラウリン酸400.6g、p-トルエンスルホン酸、3.3gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0208】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を93.94gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート28.27g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒0.125gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応はNCO%が0.63%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを2.79g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、13500であった。
【0209】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、W1がエステル基、R32がウンデシル基、V1がヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させ、その後未反応のイソシアネート基を3,5-ジメチルピラゾールでブロックして得られた化合物である。・・・」
「【0225】
【表1】
[図:0001411259000009.jpg]
」
第4 異議申立の概要及び証拠の一覧
1 異議申立の概要
申立人が申し立てた特許異議申立の理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1
本件発明1、2、5~9は、先願である甲1に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であるから、同法第113条第2号の規定により、本件発明1、2、5~9に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)申立理由2
本件発明1、3、4、7~9は、甲2に記載された発明であり、また、本件発明1、3、7~9は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない発明であるから、同法第113条第2号の規定により、本件発明1、3、4、7~9に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)申立理由3
本件発明1、3~5、7~9は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件発明1、3、5、7~9は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件発明4は、甲2~4(甲2または3が主たる証拠)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1、3~5、7~9に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4
本件発明1~9に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないから、本件発明1~9に係る特許は、同法113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。
2 証拠の一覧
申立人が提示した証拠は、次のとおりである。申立人が提示した甲第1号証を、以下「甲1」などという。
甲1:特願2016-202198号(特開2018-62720号公報)
甲2:特表2016-522330号公報
甲3:特表2017-533976号公報
甲4:特表2017-521518号公報
3 甲号証の記載事項
(1)甲1には次の記載がある。なお、甲1は公開公報であるが、甲1の出願時から補正はされていない(職権)から、出願時の特許請求の範囲及び明細書と同一であると解される。
「【請求項1】
有機ポリイソシアネート化合物(A)に由来する構成単位(a)と活性水素基含有化合物(B)に由来する構成単位(b)を有するウレタン化合物を含み、
前記構成単位(b)が、分子内に炭素数12以上の炭化水素基を少なくとも1つ有するポリオール(B1)に由来する構成単位(b1)及びカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B2)に由来する構成単位(b2)を含む、
撥水剤組成物。
【請求項2】
前記構成単位(a)と前記構成単位(b)とのモル比(a:b)が1:8~2:1である、請求項1に記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
前記構成単位(b)全体に占める、前記構成単位(b1)の割合が60~99.9モル%であり、前記構成単位(b2)の割合が0.1~40モル%である、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(B1)が、分子内に活性水素基を2~5個有し、炭素数12以上の炭化水素基を1~5個有する化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の撥水剤組成物。
【請求項5】
前記活性水素基含有化合物(B2)が、2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載の撥水剤組成物。
【請求項6】
前記ウレタン化合物が、水に、溶解、乳化又は分散してなる、請求項1~5のいずれかに記載の撥水剤組成物。
【請求項7】
繊維材料に、請求項1~6のいずれかに記載の撥水剤組成物を処理してなる、撥水性繊維製品。
【請求項8】
繊維材料を、請求項1~6のいずれかに記載の撥水剤組成物を含む処理液で処理する工程を含む、撥水性繊維製品の製造方法。」
「【0006】
本発明の目的は、繊維材料に付着させた場合に十分な撥水性を発揮し、さらには経日変化による撥水性低下を抑制できる撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法を提供することである。」
「【0018】
(有機ポリイソシアネート化合物(A))
有機ポリイソシアネート化合物(A)は、ウレタン化合物の必須構成成分であり、分子内に2個以上のイソシアネート基を含有するものである。分子内のイソシアネート基の数は、好ましくは2~4個、さらに好ましくは2~3個である。有機ポリイソシアネート化合物(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。ここで、有機ポリイソシアネート化合物(A)に由来する構成単位とは、有機ポリイソシアネート化合物(A)を原料として構成された単位をいい、ウレタン結合のうちの「-NHC(=O)-」の構造までを含む。
【0019】
有機ポリイソシアネート化合物(A)としては、炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート(A1)、炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネート(A2)、炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネート(A3)、炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(A4)及びこれらのポリイソシアネートの変性物(A5)等が挙げられる。」
「【0028】
(分子内に炭素数12以上の炭化水素基を少なくとも1つ有するポリオール(B1))
ポリオール(B1)は、分子内に炭素数12以上の炭化水素基を少なくとも1つ有し、かつ活性水素基を少なくとも1つ有する化合物である。ポリオール(B1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
分子内の当該炭化水素基の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、さらに好ましくは1~3個である。分子内の活性水基の数は、好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個、さらに好ましくは2~3個である。
【0029】
ポリオール(B1)の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。炭化水素基は、直鎖構造であっても分岐構造をあってもよく、また飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素基の炭素数は、12以上であり、好ましくは12~26、より好ましくは14~22、さらに好ましくは18~22である。炭素数が12未満の場合、撥水性不良の場合がある。
【0030】
ポリオール(B1)は、上記条件を満足するものであれば特に限定はないが、本発明の効果をより発揮させる点から、以下の化合物(B1-1)であると好ましい。つまり、構成単位(b1)は、化合物(B1-1)に由来する構成単位(b1-1)であることが好ましい。
【0031】
炭素数12以上の脂肪酸と3価以上の多価アルコールとがエステル結合した構造を持つエステルであって、分子内に2以上の水酸基を有する化合物(B1-1)
脂肪酸は、直鎖構造であっても分岐構造をあってもよく、また飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪酸の炭素数は、好ましくは12~26、より好ましくは14~22、さらに好ましくは18~22である。
【0032】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸が好ましく、ステアリン酸、ベヘニン酸がさらに好ましい。
【0033】
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、上記以外のアルジトール、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ショ糖、ヒマシ油、硬化ヒマシ油及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトールが好ましく、ソルビトール、ペンタエリスリトールがさらに好ましい。
【0034】
化合物(B1-1)のエステル結合の数は、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2~3である。化合物(B1-1)の分子内の活性水基の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは2~4個、さらに好ましくは2~3個である。
【0035】
化合物(B1-1)としては、例えば、ソルビタントリステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジベネネート、ジステアリルエリスリトール等が挙げられる。これらの中でも、ソルビタントリステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノステアレート、ジステアリルエリスリトールが好ましく、ソルビタントリステアレート、ソルビタンジステアレート、ジステアリルエリスリトールがより好ましく、ソルビタンジステアレート、ジステアリルエリスリトールがさらに好ましい。
化合物(B1-1)の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【0036】
好ましい化合物(B1)としては、下記一般式(1)で示すソルビトール型ポリオール、下記一般式(2)で示されるエリスリトール型ポリオールが挙げられる。
【0037】
【化1】
[図:0001411259000010.jpg]
【0038】
式(1)中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数12以上の有機基であって、かつR1、R2、R3、R4のうち、少なくとも2つが水素原子であり、少なくとも1つが炭素数12以上の有機基である。R1、R2、R3、R4のうち、2つが水素原子、2つが炭素数12以上の有機基であることが好ましい。
【0039】
【化2】
[図:0001411259000011.jpg]
【0040】
式(2)において、中、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数12以上の有機基であって、かつR5、R6、R7、R8のうち、少なくとも2つが水素原子であり、少なくとも1つが炭素数12以上の有機基である。R5、R6、R7、R8のうち、2つが水素原子、2つが炭素数12以上の有機基であることが好ましい。
【0041】
炭素数12以上の有機基としては、炭素数12以上の炭化水素基、炭素数12以上のアシル基が挙げられ、炭素数12以上のアシル基が好ましい。炭化水素基は、直鎖構造であっても分岐構造をあってもよく、また飽和であっても不飽和であってもよい。アシル基は、前述の炭素数12以上の脂肪酸からOH基を除いた残基となる。脂肪酸の好ましい範囲等は前述と同じである。炭化水素基及びアシル基の炭素数は、好ましくは14~22、さらに好ましくは18~22である。」
「【0065】
ウレタン化合物の重量平均分子量は、好ましくは4,000~2,000,000、より好ましくは6,000~1,000,000、さらに好ましくは8,000~500,000である。該分子量が4,000未満の場合、十分な撥水性が発現しないことがある。一方、該分子量が2,000,000超の場合、乳化物安定性の低下を招き、経日変化による撥水性低下を引き起こすことがある。
【0066】
ウレタン化合物の重合度は、好ましくは4~2,000、より好ましくは6~1,000、さらに好ましくは8~500である。重合度が4未満の場合、十分な撥水性が発現しないことがある。一方、重合度が2,000超の場合、乳化物安定性の低下を招き、経日変化による撥水性低下を引き起こすことがある。」
「【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」とあるのは、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0091】
(実施例1)
撹拌機、温度計及び還流管を備えた4つ口フラスコに、500重量部のメチルエチルケトン中に、分子内に炭素数12以上の炭化水素基を少なくとも1つ有するポリオール(B1)としてソルビタンジステアレートを400重量部、ポリイソシアネート化合物(A)としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を72重量部、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物(B2)としてジメチロールプロパン酸を2重量部加え、90~100℃で60分間反応させ、その後メチルエチルケトン(MEK)を脱溶剤することにより、ウレタン化合物(X-1)を得た。
【0092】
次いで、耐圧式オートクレーブに得られたウレタン化合物(X-1)を100重量部、ポリオキシエチレン(10モル付加)アルキルエーテルを10重量部、13.6重量%のアンモニア水を5部、水を385重量部加え、100~110℃で60分間、十分に攪拌および分散させ、水分散体(Y-1)を得た。得られた水分散体(Y-1)の粒子径はメジアン値(中央値)で0.98μmであった。なお粒子径は、水分散体(Y-1)を1gに対しイオン交換水100gで希釈し、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA LA-920)により測定した。
【0093】
得られた水分散体を作成直後に下記の条件で試料に加工し、撥水加工試料を作成した。撥水加工試料の撥水性を評価したところ、5級であった。
また、水分散体(Y-1)を40℃×1ヶ月の環境で放置した後、上記と同様に試料に加工し、撥水加工試料を作成した。撥水加工試料の撥水性を評価したところ、5級であった。
これらの結果を表1に示す。」
「【0096】
(実施例2~33、比較例1~9)
実施例2~33、比較例1~9は、実施例1のポリウレタン反応組成物を表1~4に示すものに変更し、処理液のウレタン化合物量を表1~4に示す重量%に変更した以外は、実施例1と同様に評価した。その結果を表1~4に示す。
【0097】
【表1】
[図:0001411259000012.jpg]
【0098】
【表2】
[図:0001411259000013.jpg]
【0099】
【表3】
[図:0001411259000014.jpg]
【0100】
【表4】
[図:0001411259000015.jpg]
【0101】
表1~4にあるように、本発明の撥水剤組成物は、繊維材料に付着させた場合に、撥水性に優れ、また経日変化による撥水性低下を抑制できることがわかる。一方、比較例では、経日変化による撥水性低下を抑制できない、または撥水性が低いことがわかる。」
(2)甲2には次の記載がある。
「【請求項1】
i)表面効果を提供する試剤と、ii)ポリマーエクステンダー組成物とを含む組成物に、基材を接触させることを含む、基材の処理方法であって、前記ポリマーエクステンダー組成物が、
(i)(a)イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種のイソシアネート基含有化合物と、(b)式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)から選択される、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物
【化1】
[図:0001411259000016.jpg]
[図:0001411259000017.jpg]
(式中、各Rは独立して、-H、-R1、-C(O)R1、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、又は-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、
各nは、独立して0~20であり、
各mは、独立して0~20であり、
m+nは、0より大きく、
各R1は、独立して、少なくとも1つの不飽和結合を任意選択的に含む、5~29個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、
各R2は、独立して、-H、又は少なくとも1つの不飽和結合を任意選択的に含む、6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である)、
又はそれらの混合物と、の反応により調製される化合物を含み、
ただし、前記化合物が式(Ia)の場合、R又はR2のうち、少なくとも1つは-Hであり、
各R3は独立して、-H、-R1、-C(O)R1、-(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'R2、又は-(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、
各R4は独立して、-H、少なくとも1つの不飽和結合を任意選択的に含む、6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、又はそれらの組み合わせ、-(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'R2、又は-(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、
各n’は、独立して0~20であり、
各m’は、独立して0~20であり、
m’+n’は、0より大きく、
ただし、前記化合物が式(Ib)の場合は、少なくとも1つのR2、R3、又はR4は-Hであり、
各R19は、-H、-C(O)R1、又は-CH2C[CH2OR]3であり、
ただし、前記化合物が式(IC)の場合は、少なくとも1つのR19又はRは-Hである、方法。」
「【請求項3】
前記ジイソシアネート又はポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマー、3-イソシアネートメチル-3、4,4-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ビス-(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン、並びに式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)のジイソシアネート三量体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【化2】
[図:0001411259000018.jpg]
[図:0001411259000019.jpg]
[図:0001411259000020.jpg]
[図:0001411259000021.jpg]
【請求項4】
工程(i)が、(c)水、式(IIIa)である少なくとも1種の有機化合物、
R5-X (IIIa)
式(IIIb)である少なくとも1種の有機化合物、
R15-(OCH2CH(OR16)CH2)z-OR17 (IIIb)
又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の第2の化合物を反応させることを更に含み、式中、
R5は、少なくとも1つの不飽和基を任意選択的に含む-C1~C30の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、C1~C30の直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ官能性アルキル、C1~C30の直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ官能性ポリエーテル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ官能性ポリエステル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ若しくはアミン官能性オルガノシロキサン、C1~C30の直鎖若しくは分枝鎖のチオール官能性アルキル、C1~C30の直鎖若しくは分枝鎖のアミン官能性アルキル、
【化3】
[図:0001411259000022.jpg]
から選択され、
式中、
R7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、-H、-C1~C6アルキル、又はそれらの組み合わせであり、
R10は、炭素数1~20のニ価のアルキル基であり、
Xは、-OH、-C(O)OH、-SH、-NH(R12)、-O-(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t-H、又は-[C(O)]-O-(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t-Hから選択されるイソシアネート反応性基であり、
R12は、-H又はC1~C6の一価のアルキル基であり、
R15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、-H、-R18、-C(O)R18(ただし、少なくとも1つのR15、R16、又はR17は-Hである)であり、
R18は、独立して、少なくとも1つの不飽和結合を任意選択的に含む、5~29個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、
zは1~15であり、
Yは-Clであり、
sは0~50の整数であり、
tは0~50の整数であり、
s+tは0より大きい、請求項1に記載の方法。」
「【請求項9】
前記表面効果が、ノーアイロン性、アイロンの掛け易さ、収縮抑制、防しわ性、パーマネントプレス、調湿性、柔軟性、強度、滑り防止、帯電防止、かぎ裂き防止、抗毛玉性、耐しみ性、しみ落ち性、防汚性、汚れ落ち性、撥水性、撥油性、防臭、抗菌性、又は日焼け防止から選択され、かつ
前記試剤が、非フッ素化カチオン性アクリルポリマー、非フッ素化アニオン性アクリルポリマー、非フッ素化非イオン性アクリルポリマー、部分フッ素化ウレタン、部分フッ素化カチオン性アクリルポリマー又はコポリマー、部分フッ素化非イオン性アクリルポリマー又はコポリマー、部分フッ素化アクリルアミドポリマー又はコポリマー、シリコーン、及びパラフィンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エクステンダー組成物対前記試剤の比が、約1:10~約10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、ブロックイソシアネートを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基材が、繊維、織物、布地、混紡布地、紙、不織布、皮革、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1の方法により処理される基材。」
「【0012】
本明細書で商標は大文字で示す。」
「【0014】
繊維状基材への塗布前に、本発明のエクステンダー組成物を表面処理剤に添加することによって、低黄変及び良好な耐久性という所望の特性に加え、優れた耐久性のある表面特性が繊維状基材に付与される。これらの組み合わせブレンドは、他の処理化学薬品の塗布前、塗布後又は塗布中のいずれかに、水又は他の溶媒中の分散体の形態で繊維状基材に塗布される。
【0015】
そのように塗布されたとき、処理剤と組み合わされた本発明の有用なエクステンダー組成物は、洗濯後の繊維状基材において、表面特性、特に撥油性及び撥水性の耐久性を具体的に50%も向上させることがわかった。他の既知のエクステンダー組成物と比較して、撥性の耐久性が改善されている。更に、本発明のエクステンダー組成物の使用は、より低レベルのフッ素化ポリマーの使用を可能にすることによってフッ素化処理剤のフッ素効率を高める。
【0016】
エクステンダー組成物分散体を処理剤分散体と混合することにより作製される水性分散体ブレンドは、既知の方法によって繊維状基材の表面に塗布されて、撥油性、防汚性及び撥水性並びに他の表面効果を付与する。本発明の処理剤-エクステンダー組成物の効果のうち際立った特徴は、基材上の表面仕上げの高耐久性である。」
「【0027】
本発明のポリマーエクステンダー化合物を作製するには、式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)の化合物、又はそれらの混合物を、イソシアネート基含有イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物と反応させる。イソシアネート基含有化合物は、ポリマーの分岐性を増加させる。用語「ポリイソシアネート」は、ジイソシアネート及びそれ以上の高官能性イソシアネートと定義され、この用語はオリゴマーを包含する。主に2つ以上のイソシアネート基を有する任意のモノイソシアネート若しくはポリイソシアネート、又は主に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートの任意のイソシアネート前駆体が、本発明で用いるのに好適である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマーが、本明細書で用いるのに好適であり、これは市販されている。少量のジイソシアネートが、複数のイソシアネート基を有する生成物中に残留し得ることが認識されている。その一例は、残存する少量のヘキサメチレンジイソシアネートを含有するビウレットである。
【0028】
炭化水素ジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート三量体もまた、ポリイソシアネート反応物として使用するのに適している。好ましくはDESMODUR N-100(Bayer Corporation、Pittsburgh,PA)から市販されているヘキサメチレンジイソシアネートベース)である。本発明の目的に有用な他のトリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートの3モルを反応させることによって得られるものである。メタン-トリス-(フェニルイソシアネート)と同様に、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体及び3-イソシアネートメチル-3,4,4-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート三量体は、本発明の目的に有用なトリイソシアネートの他の例である。ジイソシアネートなどのポリイソシアネートの前駆体もまた、本発明においてポリイソシアネートに対する基材として使用するのに適している。Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)のDESMODUR N-3300、DESMODUR N-3600、DESMODUR Z-4470、DESMODUR H、DESMODUR N3790、及びDESMODUR XP 2410、並びにビス-(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタンもまた、本発明に適している。」
「【0038】
イソシアネート反応性基Xが-OHの場合、式(IIIa)の例としては、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール、又はステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール(R5は、少なくとも1つの不飽和結合を任意選択的に含む、C1~C30の直鎖又は分枝鎖のアルキル);エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、又はヘキサンジオールなどのアルキルジオール又はポリオール(R5は、C1~C30の直鎖又は分枝鎖のヒドロキシ官能性アルキル);トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(テトラヒドロフラン)、又はPEG、PPG、若しくはTHF単位の混合物を有するグリコールエーテルなどのアルキレングリコールエーテル(R5は、C1~C30の直鎖又は分枝鎖のヒドロキシ官能性ポリエーテル);ポリエステルポリオール(R5は、直鎖又は分枝鎖のヒドロキシ官能性ポリエステル);シリコーンプレポリマーポリオール(R5は、直鎖又は分枝鎖のヒドロキシ官能性オルガノシロキサン);N,N-ジメチルアミノエタノール(R5は、C1~C30の直鎖又は分枝鎖のアミン官能性アルキル);コリンクロリド又はベタイン塩酸(R5がY-(R7)(R8)(R9)N+R10-));ブタノンオキシム(R5が(R7)(R8)C=N-)が挙げられるが、これらに限定されない。・・・」
「【0046】
次いで、上記のエクステンダー組成物を、繊維状基材用の種々の既知の処理剤と、好ましくは約1:10~約10:1、より好ましくは約1:8~5:1、最も好ましくは約1:6~10:3のエクステンダー対処理剤の重量比でブレンドする。例として、ノーアイロン性、アイロンの掛け易さ、収縮抑制、防しわ性、パーマネントプレス、調湿性、柔軟性、強度、滑り防止、帯電防止、かぎ裂き防止、抗毛玉性、耐しみ性、しみ落ち性、防汚性、汚れ落ち性、撥水性、撥油性、防臭、抗菌性、日焼け防止、及び類似の効果が挙げられる。好適な処理剤は、繊維状基材上に撥水性又は撥油性を生み出すために使用される任意のものである。このような材料は、非フッ素化カチオン性アクリルポリマー、非フッ素化アニオン性アクリルポリマー、非フッ素化非イオン性アクリルポリマー、部分フッ素化ウレタン、部分フッ素化カチオン性アクリルポリマー若しくはコポリマー、部分フッ素化非イオン性アクリルポリマー若しくはコポリマー、部分フッ素化アクリルアミドポリマー若しくはコポリマー、シリコーン、又はパラフィンの形態を取り得る。」
「【0049】
繊維状基材に塗布される、処理剤と本発明のエクステンダー組成物とを含むブレンド組成物は、任意選択的に、共重合後に(すなわち、ブレンドされたイソシアネートとして)添加された、耐久性を高めるためのブロックイソシアネートを更に含む。好適なブロックイソシアネートの例は、Huntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手可能なPHOBOL XANである。・・・」
「【実施例】
【0066】
組成物の調製
表1、4、7、10に示す成分を使用して、配合物を作製した。成分をガラスびんに入れ、5分間攪拌し、十分な混合を確保した。
【0067】
ウレタン系エクステンダー1
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、ディーンスターク/冷却管を装備した四口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(116.0g、水酸基価=77.2mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を50℃に加熱して、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、80℃になるまで1時間超、溶液を加熱した。
【0068】
ウレタン系エクステンダー2
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、ディーンスターク/冷却管を装備した四口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(116.0g、水酸基価=77.2mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を1時間還流させて、残留した湿気を除去した。1時間後、溶液を50℃まで冷却させ、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、80℃になるまで1時間超、溶液を加熱した。
【0069】
ウレタン系エクステンダー3
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、ディーンスターク/冷却管を装備した四口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(125.4g、水酸基価=69.5mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を1時間還流させて、残留した湿気を除去した。1時間後、溶液を50℃まで冷却させ、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、80℃になるまで1時間超、溶液を加熱した。
【0070】
ウレタン系エクステンダー4
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、ディーンスターク/冷却管を装備した四口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(127.5g、水酸基価=69.0mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を1時間還流させて、残留した湿気を除去した。1時間後、溶液を50℃まで冷却させ、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、80℃になるまで1時間超、溶液を加熱した。
【0071】
ウレタン系エクステンダー5
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、ディーンスターク/冷却管を装備した四口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(120.5g、水酸基価=70.5mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を1時間還流させて、残留した湿気を除去した。1時間後、溶液を50℃まで冷却させ、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、80℃になるまで1時間超、溶液を加熱した。
【0072】
ウレタン系エクステンダー6
オーバーヘッド撹拌器、熱電対、ディーンスターク/冷却管を装備した四口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(126.4gの混合ソルビタンステアレートエステル、水酸基価=69.2mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を1時間還流させて、残留した湿気を除去した。1時間後、溶液を50℃まで冷却させ、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、80℃になるまで1時間超、溶液を加熱した。
【0073】
ウレタン系エクステンダー分散体
上記のウレタン系エクステンダー1~6の水性分散液を調製した。水(300g)、ARMEEN DM-18D(5.6g)、TERGITOL TMN-10(2.8g)、及び酢酸(3.4g)をビーカーに加えて撹拌し、界面活性剤溶液を作製した。溶液を60℃に加熱した。上記(ウレタン系エクステンダー1~6)で調製したソルビタンウレタン/MIBK溶液を60℃に冷却し、界面活性剤溶液をゆっくりと添加して白濁したエマルジョンを作製した。41.37MPa(6000psi)で均質化した後、エマルジョンを減圧下にて蒸留して溶媒を除去し、固形分25%の不燃性ウレタン分散液を得た。
【0074】
(実施例1~5)
ウレタン系エクステンダー1の分散液をカチオン分散性部分フッ素化(メタ)アクリレート/塩化ビニリデン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー(撥水剤)に、表1に示す種々の比率で添加することによって、実施例1~5を調製した。ブロックイソシアネートも分散液に添加した。実施例をカーキ色の綿及びポリエステルの基材に塗布し、上記のような試験方法にしたがって試験した。結果を表2及び3に示す。」
「【0078】
【表1】
[図:0001411259000023.jpg]
a比較例Bでは、パッド浴に10g/LのPHOBOL XANを添加」
(3)甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも1つの式Iの結合を有する少なくとも1つの疎水性化合物を含む水性組成物であって、
-NHC(O)-X- (I)
式中、
Xは、少なくとも1つの-R1;-C(O)R1;-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2;-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1;又はこれらの混合物で置換されている環式又は非環式の糖アルコールの残基であり、
前記環式又は非環式の糖アルコールが、単糖類、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択される場合は、式中、
各nは、独立して、0~20であり、
各mは、独立して、0~20であり、
m+nは、0よりも大きく、
各R1は、独立して、任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
各R2は、独立して、-H、任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、
又はこれらの混合物である、水性組成物。
【請求項2】
Xが、100%生物系由来である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
Xが、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc):
【化1】
[図:0001411259000024.jpg]
[図:0001411259000025.jpg]
[図:0001411259000026.jpg]
から選択され、式中、各Rは、独立して、式IのNHC(O)への直接結合、-H、-R1、-C(O)R1、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、又は-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、
各nは、独立して、0~20であり、
各mは、独立して、0~20であり、
m+nは、0よりも大きく、
rは、1~3であり、
aは、0又は1であり、
pは、独立して、0~2であるが、
ただし、rが3であるとき、aは0であり、
各R1は、独立して、任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
各R2は、独立して、-H、又は任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、
あるいはこれらの混合物であるが、
ただし、Xが式(IIa)であるとき、少なくとも1つのRは、式1のNHC(O)への直接結合であり、少なくとも1つのRは、-R1、-C(O)R1、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、又は-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、
各R4は、独立して、式IのNHC(O)への直接結合、-H、任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む6~30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、あるいは-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であるが、
ただし、Xが式(IIb)であるとき、少なくとも1つのR又はR4は、式1のNHC(O)への直接結合であり、少なくとも1つのR又はR4は、任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、あるいは-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、
各R19は、式IのNHC(O)への直接結合、-H、-C(O)R1、又は-CH2C[CH2OR]3であるが、
ただし、Xが式(IIc)であるとき、少なくとも1つのR19又はRは、式IのNHC(O)への直接結合であり、少なくとも1つのR19又はRは、-C(O)R1、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、又は-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1である、請求項1に記載の水性組成物。」
「【請求項6】
前記疎水性化合物が、式(IVa)、(IVb)、(IVc):
R6-D (IVa)、
R15-(OCH2CH(OR16)CH2)z-OR17 (IVb)、
-NH-C(O)-NH-X (IVc)
、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つの結合を更に含み、
式中、Dは、-N(R12)-C(O)-NH-、-OC(O)NH-、-C(O)NH-、-SC(O)NH-、-O-(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t-C(O)NH-、又は-[C(O)]-O-(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t-C(O)NH-から選択され、
Xは、上に定義した通りであり、
R6は、任意に少なくとも1つの不飽和基を含む-C1~C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ若しくはウレタン官能性C1~C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ若しくはウレタン官能性直鎖又は分岐鎖C1~C30ポリエーテル、ポリエステルポリマー骨格を有するヒドロキシ若しくはウレタン官能性直鎖又は分岐鎖ポリエステル、ヒドロキシ若しくはウレタン官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサン、アミン若しくはウレア官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサン、チオール若しくはチオカーボネート官能性C1~C30直鎖又は分岐鎖アルキル、アミン若しくはウレア官能性C1~C30直鎖又は分岐鎖アルキル、
【化3】
[図:0001411259000027.jpg]
から選択され、
式中、
R7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、-H、-C1~C6アルキル、又はこれらの組み合わせであり、
R10は、1~20個の炭素を有する二価アルキル基であり、
R12は、-H又は一価C1~C6アルキル基であり、
R15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、-H、-C(O)NH-、-R18、-C(O)R18であるが、ただし、少なくとも1つのR15、R16、又はR17は、-C(O)NH-であり、
R18は、独立して、任意に少なくとも1つの不飽和結合を含む5~29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
zは、1~15であり、
Yは、Clであり、
sは、0~50の整数であり、
tは、0~50の整数であり、
s+tは、0よりも大きい、請求項1に記載の水性組成物。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性のある撥水性及び場合により汚れ放出性を布地に付与するのに有用な疎水性有機ウレタン化合物であって、糖アルコールから誘導される化合物を含む水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な組成物が、撥水性及び場合により汚れ放出性を布地基材に提供するための処理剤として有用であることが知られている。多くのこのような処理剤は、フッ素化ポリマー及びコポリマー、又は非フッ素化ポリマー及びコポリマーである。非フッ素化合物は、主に、ポリアクリレート系又はウレタン系のコポリマーである。
【0003】
フッ素化コポリマーは、良好な撥水性及び撥油性を提供する。非フッ素化撥水剤を作製する様々な試みがなされてきた。非フッ素化コポリマーは、撥水性及び場合により汚れ放出性を布地に提供することが知られているが、フッ素化対応物よりも効果が弱い。」
「【0014】
前記環式又は非環式の糖アルコールは、単糖類、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、・・・このような糖アルコール(b’)の例としては、テトロース、ペントース、ヘキソース、及びヘプトースから誘導される化合物等のアルドース及びケトースが挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、グルコース、グリセルアルデヒド、エリトロース、アラビノース、リボース、アラビノース、アロース、アルトロース、マンノース、キシロース、リキソース、グロース、ガラクトース、タロース、フルクトース、リブロース、マンノヘプツロース、セドヘプツロース(sedohelptulose)、トレオース、エリスリトール、スレイトール、グルコピラノース、マンノピラノース、タロピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、イドピラノース、グロピラノース、グルシトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ボレミトール、グルコン酸、グリセリン酸、キシロン酸、ガラクタル酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸ラクトン、グリセリン酸ラクトン、キシロン酸ラクトン、グルコサミン、ガラクトサミン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
前記環式又は非環式の糖アルコールは、少なくとも1つの-R1、-C(O)R1、-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mR2、又は-(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1で置換されているが、それは、脂肪酸でエステル化してヒドロキシ官能性置換糖アルコールを形成することを含む任意の好適な方法による。・・・好適な脂肪酸(b")としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミステリン酸(mysteric acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸(lineolic acid)、オレイン酸、エルカ酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。」
「【0031】
[図:0001411259000028.jpg]
[図:0001411259000029.jpg]
[図:0001411259000030.jpg]
[図:0001411259000031.jpg]
[図:0001411259000032.jpg]
【0032】
ジイソシアネートトリマー(Va~e)は、例えば、それぞれ、DESMODUR Z4470、DESMODUR IL、DESMODUR N-3300、DESMODUR XP2410、及びDESMODUR N100としてBayer Corporationから入手可能である。1つの実施態様では、Qは、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、又は(IIIe)から選択される:」
「【0037】
好ましくは、最終化合物は、0%~約1%の反応性イソシアネート基を含有する。1つの実施形態では、疎水性化合物の分子量は、少なくとも10,000g/モルである。・・・」
「【実施例】
【0093】
(実施例1)
オーバーヘッドスターラー、熱電対、ディーン-スターク/凝縮器を備える四つ口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(116.0g、ヒドロキシ価=77.2mgKOH/g)及び4-メチル-2-ペンタノン(MIBK、150g)を加えた。溶液を1時間還流させて、残留水分を全て除去した。その後、溶液を50℃まで冷却し、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、溶液を1時間かけて80℃に加熱した。
【0094】
(実施例2)
化合物の水性分散液を、実施例1に記載の通り調製した。水(300g)、ARMEEN DM-18D(5.6g)、TERGITOL TMN-10(2.8g)、及び酢酸(3.4g)をビーカーに加え、撹拌して、界面活性剤溶液を形成(from)した。溶液を60℃まで加熱した。実施例1で調製したソルビタンウレタン/MIBK溶液を、よう60℃まで冷却し、界面活性剤溶液をゆっくりと添加して、乳白色のエマルションを生成した。混合物を、41MPa(6000psi)でホモジナイズし、得られたエマルションを減圧下で蒸留して溶媒を除去し、25%固形分の不燃性ウレタン分散体を得た。このウレタン分散体を織物に塗布し、上記試験方法に従って試験した。
【0095】
(実施例3~23)
実施例3~23は、イソシアネート(DESMODUR N100)と、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノステアレート、及びこれらの混合物等の1つ以上の異なる式(Ia)の化合物と、を用いて実施例1(化合物)及び実施例2(分散体)に記載の通り調製した、本発明の様々な化合物を示す。1つを超えるソルビタンエステル試薬を使用した場合、第2のソルビタン試薬を添加し、反応混合物を、80℃で更に4時間加熱した。実施例3~23を、分散体として60g/Lで織物に塗布し、上記試験方法に従って試験した。」
「【0098】
【表2】
[図:0001411259000033.jpg]
」
「【0100】
(実施例24~31)
実施例24~31は、表4に記載されている通、様々なイソシアネート及び1~2つの異なる式(Ia)の化合物を使用して、実施例1(化合物)及び実施例2(分散体)の手順に従う。1つを超える式(Ia)の化合物を使用した場合、第2の化合物を添加し、反応混合物を、80℃で更に4時間加熱した。実施例24~31を、分散体として60g/Lで織物に塗布し、上記試験方法に従って試験した。
【0101】
【表4】
[図:0001411259000034.jpg]
」
「【0106】
(実施例37~54)
実施例37~54は、表8に記載されている通り、イソシアネート、1~2つの異なる式(Ia)の化合物、及びMPEG 750を使用して、実施例1(化合物)及び実施例2(分散体)の手順に従う。式(Ia)の初期化合物とイソシアネートとを1時間反応させた後、MPEG 750及び任意の追加の式(Ia)の化合物を反応に添加し、反応混合物を80℃で更に4時間加熱した。実施例37~54を、分散体として60g/Lで織物に塗布し、上記試験方法に従って試験した。
【0107】
【表8】
[図:0001411259000035.jpg]
」
「【0109】
(実施例55~62)
実施例55~62は、表10に記載されている通り、DESMODUR N-100イソシアネート、ソルビタントリステアレート、グリコール又はアルコキシル化モノマー、及び最大1つの追加の試薬を使用して、実施例1(化合物)及び実施例2(分散体)の手順に従う。式(Ia)の初期化合物とイソシアネートとを1時間反応させた後、グリコール又はアルコキシル化モノマー、及び追加の試薬を反応に添加し、反応混合物を80℃で更に4時間加熱した。実施例55~62を、分散体として60g/Lで織物に塗布し、上記試験方法に従って試験した。
【0110】
【表10】
[図:0001411259000036.jpg]
」
「【0121】
(実施例96~102及び実施例108~110)
実施例96~102及び実施例108~110は、表16に記載されている通り、DESMODUR N-100イソシアネート、1つ以上の式(Ia)又は式(Ib)の化合物、及び少なくとも1つの追加の試薬を使用して、実施例1(化合物)及び実施例2(分散体)の手順に従う。式(Ia)及び式(Ib)の初期化合物とイソシアネートとを1時間反応させた後、追加の試薬を反応に添加し、反応混合物を80℃で更に4時間加熱した。実施例96~102及び実施例108~110を、分散体として60g/Lで織物に塗布し、上記試験方法に従って試験した。
【0122】
(実施例103~107)
実施例103~107は、表16に記載されている通り、DESMODUR N-100イソシアネート、1つ以上の式(Ia)又は式(Ib)の化合物、及び少なくとも1つの追加の試薬を使用して、実施例65の手順に従う。式(Ia)及び式(Ib)の初期化合物とイソシアネートとを6時間反応させた後、追加の試薬を反応に添加し、反応混合物を80℃で一晩加熱した。実施例105では、イソシアネートを添加する前に、炭酸ナトリウム(0.07g)を、ソルビタントリステアレート及びソルビタンシトレートと合わせた。実施例103~104及び実施例106~107を、分散体として60g/Lで織物に塗布し(実施例105は100g/Lで塗布した)、上記試験方法に従って試験した。
【0123】
【表16】
[図:0001411259000037.jpg]
」
「【0140】
(実施例133~142)
ホットプレート/スターラー上に置かれた、窒素管及び撹拌棒を備えた40mLのシンチレーションバイアルに、表26の量に従った置換糖アルコール、炭酸ナトリウム(0.05g)、及びMIBK(8.5g)を添加した。溶液を撹拌し、窒素下で10分間かけて55℃まで加熱した。DESMODUR N-100(1.5g)を添加し、反応温度を80℃まで昇温した。0.5重量%の塩化鉄(III)溶液(MIBK中)を調製し、0.1gを添加した。反応温度を95℃に昇温した。4時間以上経った後、n-ブタノール(0.1g)を添加し、反応温度を80℃に低下させて、一晩撹拌した。一旦反応混合物が活性イソシアネート陰性になったら、MIBKで10重量%に希釈し、上記試験方法に従って試験した。
【0141】
【表26】
[図:0001411259000038.jpg]
」
(4)甲4には次の記載がある。
「【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を少なくとも含み、場合により、以下の成分(C)~(E)の少なくとも1つを含む組成物:
(A)以下のモノマーの重合で得られるポリアクリレート
(M1)CH2=CR3COO-R1
(M2)CH2=CR3COO-R2、及び場合により、
(M3)CH2=CR3-X-R4;
(B)ワックス;
(C)ブロック化イソシアネート;
(D)有機ポリシロキサン;
(E)メラミン樹脂;
[ここで、
R1は、1~8個の炭素原子を含む、モノマー(M1)におけるアルコール部位であり;
R2は、9~40個の炭素原子を含む、モノマー(M2)におけるアルコール部位であり;
R3は、H、CH3、又はC2H5であり;
Xは、COO又はCONHであり;
R4はグリシジル又はCH2(CH2)n-OR5であり、ここでnは1~10の整数であり、そしてR5はH又は1~6個の炭素原子を含む残基である]
であって、水及び/又は有機溶媒に基づき、そしてフッ素非含有である、組成物。」
「【0002】
織物(wovens)、編み物(knits)などの布地(fabrics)、或いは不織布(nonwovens)に所望の特性を付与するために、これらを水性分散液で処理することが知られている。
【0003】
そのような所望の特性は、例えば撥水効果、換言すれば疎水性効果である。テキスタイル (textile)で撥水性効果を得るために、フッ素含有物の水性分散液が頻繁に使用される。しかし、かかるフッ素含有分散液は、環境に悪影響を伴い得る。
【0004】
そのような環境に有害な物質の使用を避けるために、基材、例えばテキスタイルに疎水性特性を提供するためにフッ素非含有組成物を使用することが提案されている。
・・・
【0011】
発明の目的
テキスタイルのような基材に対して耐久性ある撥水性特性を付与する組成物を提供する
ことが、本発明の目的である。」
「【0155】
実施例#1~#9:本発明による組成物の調製
【0156】
メタクリル酸t-ブチル5g、及びアクリル酸ステアリル15gを、4.8gのGenapol ID 100(エトキシ化脂肪族アルコール(クラリアント社))、及び塩化セチルトリメチルアンモニウム0.4g、及びジプロピレングリコール10g、及び約80℃の水120gの熱い混合物に添加し、撹拌により分散させる。別の容器において、40gのパラフィンワックス(融点範囲68~74℃)を溶解した。上述のモノマーの分散液を、溶解したパラフィンワックスに添加した。2分間の更なる分散の後、前記混合物をManton-Gaulin装置(400バール85℃において)により、安定なエマルジョンが得られるまで、結果として2回均質化した。温度は75-80℃に保たれ、1.8gの水に希釈された2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩開始剤(和光V-50)0.2gを添加し、前記混合物を、ジャケット付き還流凝縮器で窒素雰囲気下75℃にて6時間処理した。これにより約33重量%の活性含有量の生成物約200gが得られた(120℃、2時間の乾燥後に測定)
【0157】
実施例#1記載の工程と同様に、他のモノマーの組み合わせ及び異なるパラフィンワックスの種類を用い、安定な分散液を作成した。詳細を表1に示す。
【0158】
【表1】
[図:0001411259000039.jpg]
」
第5 取消理由について
1 取消理由の概要
当審が、令和5年5月17日付けで通知した取消理由は、以下のとおりである。なお、「本件発明」という記載の意味は、上記第3の1で定義したとおりであるから、これと区別するため、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された発明を、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明9」といい、まとめて「本件特許発明」ともいうこととする。
取消理由1(拡大先願):本件特許発明1、2、5~9は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条の2の規定により特許をうけることができない発明であり、その特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2(新規性・進歩性):本件特許発明1~9は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。したがって、本件特許発明1~9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由3(新規性・進歩性):本件特許発明1~5、7~9は、甲3に記載された発明であるか、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。したがって、本件特許発明1~5、7~9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由1(拡大先願)について
(1)取消理由1の要点
取消理由1の要点は、下記のとおりである。
ア 甲1の段落【0091】の実施例1及び請求項1から次の発明(以下「先願発明1」という。)を認定でき、また、甲1の段落【0096】、【0098】【表2】の実施例17から次の発明(以下「先願発明17」という。)を認定でき、また、甲1の段落【0098】【表2】及び【0099】【表3】に記載された実施例20~24から次の発明(以下、それぞれその実施例の番号により「先願発明20」等という。)を認定できる。
<先願発明1>
「ソルビタンジステアレートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを72重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
<先願発明17>
「ペンタエリスリトールジステアレートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを72重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
<先願発明20>
「ペンタエリスリトールジラウレートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを90重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
<先願発明21>
「ペンタエリスリトールジオレートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを72重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
<先願発明22>
「ペンタエリスリトールジパルミテートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを80重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
<先願発明23>
「ペンタエリスリトールジベヘネートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを65重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
<先願発明24>
「ペンタエリスリトールモノステアレートを400重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートを72重量部、ジメチロールプロパン酸を2重量部加えて、反応させて得られたウレタン化合物を含む撥水剤組成物。」
イ また、先願発明1、17、20~24の「ソルビタンジステアレート」、「ペンタエリスリトールジステアレート」、「ペンタエリスリトールジラウレート」、「ペンタエリスリトールジオレート」、「ペンタエリスリトールジパルミテート」、「ペンタエリスリトールジベヘネート」、「ペンタエリスリトールモノステアレート」は、いずれも、本件特許発明1の一般式(I-1)を満たすものであり、また、先願発明1、及び、先願発明7、20~24の「ヘキサメチレンジイソシアネート」は、本件特許発明1の一般式(II)を満たすものであるから、先願発明1、17、20~24(以下、まとめて「先願発明」ともいう。)は、いずれも、本件特許発明1を充足する発明である。
ウ また、上記ア、イを踏まえると、先願発明は、本件特許発明2、5~9を充足する発明である。
(2)検討
ア 本件発明2(上記第3の1を参照。)と先願発明1を対比すると、先願発明1の「ソルビタンジステアレート」は、アルキル基(一般式(I-2)の-R41に相当する基)、ヒドロキシル基等を有するアルキル基(一般式(I-2)の-R42-V2に相当する基)、及び、エステル結合を含むアルキル基(一般式(I-2)の-R43-W2-R44に相当する基)を同時に備えている炭素を含んでいない物質なので、本件発明2の一般式(I-2)で表される多官能化合物に該当しない。
イ また、先願発明1の「ソルビタンジステアレート」は、直鎖状エーテル結合(-R54-O-R55-に相当する部分)を含んでいない物質なので、本件発明2の一般式(I-3)で表される多官能化合物に該当しない。
ウ また、先願発明1の「ソルビタンジステアレート」は、窒素原子を含んでいない物質なので、本件発明2の一般式(I-4)で表される多官能化合物に該当しない。
エ 同様に、先願発明17、20~24の「ペンタエリスリトールジステアレート」、「ペンタエリスリトールジラウレート」、「ペンタエリスリトールジオレート」、「ペンタエリスリトールジパルミテート」、「ペンタエリスリトールジベヘネート」、「ペンタエリスリトールモノステアレート」も、いずれも前記ア~ウと同様の理由により、本件発明2の一般式(I-2)で表される多官能化合物、一般式(I-3)で表される多官能化合物、及び、一般式(I-4)で表される多官能化合物のいずれにも該当しない。
オ そうすると、さらに検討するまでもなく、先願発明は、いずれも、本件発明2を充足しないから、取消理由1によって、本件発明2の特許を取り消すべきものとすることはできない。また、同様の理由により、本件発明5~9の特許を取り消すべきものとすることはできない。
3 取消理由2(新規性・進歩性)について
(1)取消理由2の要点
取消理由2の要点は、下記のとおりである。
ア 甲2の段落【0067】のウレタン系エクステンダー1から次の発明(以下「甲2発明1」という。)を認定でき、また、甲2の段落【0078】【表2】の実施例1から次の発明(以下「甲2発明2」という。)を認定できる。
<甲2発明1>
「116.0gのソルビタントリステアレートと30gのDESMODUR N-100を混合し、触媒を加えて反応させて得られたポリウレタンを含む組成物」
<甲2発明2>
「フッ素系コポリマー50重量%、116.0gのソルビタントリステアレートと30gのDESMODUR N-100を混合し、触媒を加えて反応させて得られたポリウレタン30重量%、ブロックイソシアネートであるPHOBOL XAN5.0重量%、水15.0重量%からなる撥水剤組成物」
イ 本件特許発明1と甲2発明1を対比すると、本件特許発明1は、「撥水剤組成物」であるのに対して、甲2発明1は、その用途が特定されていない点(相違点2-1)で相違するが、相違点2-1は、実質的な相違点ではないし、仮に実質的な相違点であるとしても、甲3を参照すれば、甲2発明1の用途を撥水性組成物とすることは、当業者が容易になし得ることであるから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
ウ また、上記ア、イを踏まえると、本件特許発明2~9は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(2)検討
ア 事案に鑑み、本件発明2と甲2発明2を対比すると、上記2(2)ア~ウと同様の理由で、甲2発明2の「ソルビタントリステアレート」は、一般式(I-2)、一般式(I-3)、及び、一般式(I-4)で表される多官能化合物のいずれにも該当しないし、甲2には、甲2発明2の「ソルビタントリステアレート」を、本件発明2の一般式(I-2)、一般式(I-3)、及び、一般式(I-4)で表される多官能化合物のいずれかに変更することを動機づけるような記載も示唆もない。
イ そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、取消理由2によって、本件発明2の特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、同様の理由により、本件発明3~9の特許を取り消すべきものとすることはできない。
4 取消理由3(新規性・進歩性)について
(1)取消理由3の要点
取消理由3の要点は、下記のとおりである。
ア 甲3の段落【0098】【表2】の実施例8から次の発明(以下「甲3発明1」という。)が認定でき、また、甲3の段落【0141】【表26】の実施例133から、甲3の段落【0140】を参照すると、次の発明(以下「甲3発明2」という。)が認定できる。
<甲3発明1>
「ソルビタントリオレエート102.5g及びソルビタンモノステアレート11.2gを溶媒であるMIBKに溶解させ、DESMODUR N-100(30g)、続いて触媒を添加し、溶液を1時間かけて80℃に加熱することにより得られたポリウレタンを含む撥水剤組成物」
<甲3発明2>
「ミオイノシトールラウレート6.6g、炭酸ナトリウム0.05gを溶媒であるMIBKに溶解させ、DESMODUR N-100を1.5g加えた後、0.5重量%の塩化鉄(III)溶液(MIBK中)を0.1gを添加し、4時間以上経った後、n-ブタノール(0.1g)を添加した撥水剤組成物。」
イ 本件特許発明1と甲3発明1または甲3発明2を対比すると、相違点がないので、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当する。
ウ また、上記ア、イを踏まえると、本件特許発明1~5、7~9は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(2)検討
ア 本件発明2と甲3発明1または甲3発明2を対比すると、上記2(2)ア~ウと同様の理由で、甲3発明1の「ソルビタントリオレエート」、及び、「ソルビタンモノステアレート」、及び、甲3発明2の「ミオイノシトールラウレート」は、いずれも、一般式(I-2)、一般式(I-3)、及び、一般式(I-4)で表される多官能化合物のいずれにも該当しないし、甲3には、甲3発明1の「ソルビタントリオレエート」、「ソルビタンモノステアレート」、または、甲3発明2の「ミオイノシトールラウレート」を、本件発明2の一般式(I-2)、一般式(I-3)、及び、一般式(I-4)で表される多官能化合物のいずれかに変更することを動機づけるような記載も示唆もない。
イ そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、取消理由3によって、本件発明2の特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、同様の理由により、本件発明3~5、7~9の特許を取り消すべきものとすることはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった申立理由について
申立理由のうち、取消理由通知で採用しなかったものは、申立理由4(サポート要件)である。
1 申立理由4の概要
異議申立書の42~44頁の「(4-5)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)」の項によれば、申立理由4の概要は、以下のとおりである。
請求項1の疎水性化合物は、一般式(I-1)で表される多官能化合物と一般式(II)で表されるイソシアネート化合物との反応生成物であるが、その一般式に含まれているR31の具体的な構造が特定されていないなど、広範な化合物を包含するものであるのに対し、実施例によって具体的にその課題を解決することができることを裏付けられているものは、一般式(I-1)で表される多官能化合物がジトリメチロールプロパン又はトリメチロールプロパンと反応性炭化水素化合物との反応物であり、一般式(II)で表されるイソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートである場合に限られており、かつ、これらの疎水性化合物とは異なる化合物の場合については、そのR31等の具体的な構造がいかなるものであっても、その課題を解決できることについて合理的な説明がなされていない。
そうすると、本件特許発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決することができると認識することができる範囲を超えているといえるから、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
2 検討
上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許発明1は削除されている。また、本件発明2~9においては、一般式(I-1)で表される多官能化合物が、一般式(I-2)、一般式(I-3)、及び、一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(一般式とその説明の記載を省略)に限定されているので、これを原料として得られる疎水性化合物も、その化学構造式に、一般式(I-2)等で表される多官能化合物等に由来する共通の化学構造を備えているものに限定されている。
したがって、本件発明の疎水性化合物は、その化学構造が特定されていない部分を含むような「広範な化合物を包含するものである」とはいえない。また、本件発明は、実施例で用いている疎水性化合物と共通の化学構造を備えている疎水性化合物を用いる態様に限定されているといえるから、本件発明に含まれている具体的な態様は、いずれも、実施例と同様にその課題を解決することができるものであるといえる。
一方、申立人の主張は、本件発明の範囲内にその課題を解決することができない態様が含まれていることを具体的に立証するような理論的な根拠や具体的な証拠に基づくものではない。
そうすると、本件発明がその課題を解決することができない態様を含んでいるとまではいえないから、申立理由4で本件発明に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項1に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701237