特許異議申立
2024-700830
水系液状化粧料
- 審判番号
- 2024-700830
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-181843
- 登録番号
- 7448987
- 請求日
- 2024年09月03日
- 審決日
- 2024年12月23日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社トキワ
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】湯本 譲司
- 【異議申立人】清水 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 小石 真弓
- 審判官 関 美祝
- 分類
- P1651.121-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第44条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7448987号発明「水系液状化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7448987号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7448987号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願(特願2022-181843号)は、平成30年10月31日を出願日とする特願2018-205743号の一部を特許法第44条第1項の規定により令和4年11月14日に新たな出願としたものであって、令和6年3月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項に対し、同年9月3日に特許異議申立人 清水 朋子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~3に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、
前記スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウムの含有量が化粧料全量基準で0.01~1質量%であり、
前記水溶性分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はアクリル酸アルキル共重合体を含み、
前記水溶性分散剤の含有量が、化粧料全量基準で0.5~5質量%であり、
前記皮膜形成性ポリマーエマルションがアクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、又はウレタンアクリル複合樹脂エマルションを含み、
前記皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量が、化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で1~20質量%であり、
前記無機着色顔料の含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であり、
前記無機着色顔料がカーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックの含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であり、
25℃における粘度が50mPa・s以下であり、
オートペンタイプの容器に収容して用いられる、水系液状化粧料。
【請求項2】
HLBが8以上のノニオン界面活性剤を含まない、又は、HLBが8以上のノニオン界面活性剤の含有量が化粧料全量基準で0.1質量%以下である、請求項1に記載の水系液状化粧料。
【請求項3】
水系液状化粧料を収容するための収容部、水系液状化粧料を塗布するための塗布部、及び、前記収容部内と前記塗布部とを結び、前記収容部内の水系液状化粧料を毛細管現象により前記塗布部に供給するための中継芯、を有するオートペンタイプの容器と、
前記収容部に収容された請求項1又は2に記載の水系液状化粧料と、
を備える、化粧品。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、下記4に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、甲号証の番号順に、「甲1」などという。)を提出し、下記1~3の申立理由を主張している。
1 申立理由1(進歩性欠如)
本件発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。
2 申立理由2(実施可能要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、「水溶性分散剤」及び「皮膜形成性ポリマーエマルション」を含む水系液状化粧料について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、本件発明1~3に係る特許は、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、「水溶性分散剤」及び「皮膜形成性ポリマーエマルション」を含む水系液状化粧料について、その発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているため、本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 証拠方法
甲1:特開2008-56607号公報
甲2:特開2016-124851号公報
甲3:国際公開第2013/129395号
甲4:特開2016-87094号公報
甲5:「コフレドール フレーミングリキッドアイライナー(BK-36
)」,[online],Cosmetic-Info.jp,[
令和6年8月16日検索],インターネット<URL:https
://www.cosmetic-info.jp/prod/d
etail.php?id=58407>
第4 判断
当審合議体は、本件発明1~3に係る特許は、上記第3に示した申立理由1~3によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の下線は、原文に付されていたものに加えて、当審合議体で追加した。また、証拠の転記は全て全角で表記する。本決定全体についても同様である。
1 甲各号証の記載事項
(1)甲1の記載事項
(甲1a)「【請求項1】
顔料、炭素数5~10の1,2-アルカンジオール、及びジアルキルスルホコハク酸塩を含有してなる水性メイクアップ化粧料。
【請求項2】
1,2-アルカンジオールが、1,2-ヘキサンジオール及び/又は1,2-オクタンジオールである請求項1に記載の水性メイクアップ化粧料。
【請求項3】
皮膜形成高分子化合物を含有してなる請求項1又は2に記載の水性メイクアップ化粧料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の水性メイクアップ化粧料からなる液状アイライナー又は液状アイブロー。」
(甲1b)「【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであって、使用性が良好で、耐水性、耐油性、化粧もちに優れ、使用後の化粧料のつっぱり感がなく柔軟な化粧皮膜が得られるうえ、付け筆タイプでもフェルトペンタイプでも使用可能な汎用性の高い水性メイクアップ化粧料を提供することを課題とする。」
(甲1c)「【0010】
用いられる顔料としては、有機顔料並びに無機顔料の何れをも用いることができる。有機顔料としては、・・・。具体的には、・・・赤色227号、・・・黄色4号、・・・青色1号、・・・などを例示することができる。
【0011】
また、無機顔料としては、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、酸化コバルト、カーボンブラック、アルミナなどを例示することができる。
【0012】
尚、上記した顔料は、1種を単独で、或いは2種以上を適宜混合して用いることができる。また、顔料の含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定はなく、化粧効果を発揮させる観点から、化粧料中、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.05重量%以上である。また、過剰な皮膚染着を避ける観点から、化粧料中、3重量%以下が好ましく、より好ましくは2重量%以下である。これらから、水性メイクアップ化粧料中の顔料の含有量は、0.01~3重量%が好ましく、0.05~2重量%がより好ましい。」
(甲1d)「【0016】
・・・特に、本発明においては、ジアルキルスルホコハク酸塩として、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩を用いることが好ましい。
・・・
【0018】
本発明に係る水性メイクアップ化粧料には、化粧もち効果を良好にする観点から皮膜形成高分子化合物を含有することができる。用い得る皮膜形成高分子化合物としては、化粧料に配合できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、ジメチルシロキサン・アクリル酸系共重合体等の(メタ)アクリル酸系樹脂;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ビニルピロリドン・スチレン共重合体等のビニルピロリドン系樹脂;ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系樹脂;トリメチルシロキシケイ酸、アクリル-シリコーン系グラフト共重合体等のシリコーン系樹脂;ロジン酸ペンタエリスリット等のテルペン系樹脂等を例示することができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸系樹脂を用いるのが好ましい。」
(甲1e)「【0042】
以下、本発明に係る水性メイクアップ化粧料の処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
(処方例1;液状アイブロー)
黄色4号 0.1
赤色227号 0.1
青色1号 0.2
カラギーナン 0.5
ベントナイト 0.2
1,2-オクタンジオール 0.5
スルホコハク酸ジオクチルナトリウム液 0.5
ポリビニルピロリドン 1.0
アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション 10.0
1,3-ブチレングリコール 3.0
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.3
精製水 残 余
合 計 100.0 」
(2)甲2の記載事項
(甲2a)「【請求項1】
皮膜形成剤、着色顔料及び水を含有する水系液状化粧料であって、
前記皮膜形成剤として、スルホン化ポリエステル(A)を化粧料全量基準で2~11質量%及び(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを構成単位として含む重合体(B)を化粧料全量基準で2~18質量%含むことを特徴とする水系液状化粧料。」
(甲2b)「【0004】
しかし、水系の液状化粧料は発色性や化粧効果の持続性を向上させることが難しい。着色剤として水への溶解性が高い水溶性染料を用いると耐水性に問題があり、黒酸化鉄やカーボンブラックなどの顔料を用いると、水系の液状化粧料中に均一分散させることが難しいために色むらが生じやすい。」
(甲2c)「【0008】
ところで、液状化粧料の製品形態は、容器に化粧料を直接充填するボトルタイプや化粧料を吐出するオートペンタイプなどが知られている。オートペンタイプは、化粧料を含浸した繊維収束体又は化粧料を充填した充填部及び塗布部を備えており、液状化粧料の表面張力と毛細管現象の作用によって化粧料が吐出される。・・・
・・・
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、皮膜形成剤、着色顔料及び水を含有する水系液状化粧料であって、皮膜形成剤として、スルホン化ポリエステル(A)を化粧料全量基準で2~11質量%及び(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを構成単位として含む重合体(B)を化粧料全量基準で2~18質量%含むことを特徴とする水系液状化粧料を提供する。
・・・
【0012】
本発明の水系液状化粧料によれば、上記構成を有することにより、オートペンタイプとした場合であっても十分な液吐出が可能であるとともに、描線濃度及び描き具合などの使用性に優れ、なおかつラスティング性及び洗浄性を両立する化粧膜を形成できる。」
(甲2d)「【0027】
本実施形態に係る水系液状化粧料には、本願発明の効果が損なわれない範囲において、上記(A)成分及び上記(B)成分以外の皮膜形成剤を更に配合することができる。このような皮膜形成剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー及びその塩、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る水系液状化粧料に配合される着色顔料としては、カーボンブラック、・・・、有機顔料(赤色228号、赤色226号、青色404号等)等が挙げられる。・・・
【0029】
本実施形態に係る水系液状化粧料における着色顔料の配合量は、化粧料全量基準で3質量%以上とすることができる。
【0030】
本実施形態に係る水系液状化粧料には、分散剤を更に配合することができる。分散剤としては、例えば、親水性ノニオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。・・・
【0031】
本実施形態に係る水系液状化粧料がカーボンブラックを含み、オートペンタイプのアイライナー化粧料として用いられる場合、親水性ノニオン界面活性剤を配合することが好ましく、HLBが11以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の親水性ノニオン界面活性剤を配合することがより好ましい。
・・・
【0036】
本実施形態に係る水系液状化粧料は、液吐出性、描線濃度などの使用性の観点から、25℃における粘度が2~50mPa・sであることが好ましく、5~30mPa・sであることがより好ましい。この範囲の粘度であると、本発明の効果が顕著に発揮され、更にはオートペンタイプで用いる際に最適な吐出性を得ることができる。・・・
・・・
【0038】
本実施形態に係る水系液状化粧料は、アイライナー、アイブロウ、マスカラなどのメイクアップ化粧料として用いることができる。
【0039】
本実施形態に係る水系液状化粧料は化粧品に使用される公知の製品形態で利用することができる。製品形態としては、例えば、オートペンタイプ、ボトルタイプ、ダイヤル式ペンやノック式ペンといった充填部に充填された化粧料をピストンなどにより押し出す、押し出し機構を備えたメカニカルペンなどが挙げられる。これらのうち、使用方法の簡便性、携帯性及び水系液状化粧料との相性の良さ等の観点から、オートペンタイプが好ましい。オートペンタイプは、化粧料を含浸した繊維収束体又は化粧料を充填した充填部及び塗布部を備えており、液状化粧料の表面張力と毛細管現象の作用によって化粧料が吐出される。」
(甲2e)「【実施例】
・・・
【0041】
<水系液状化粧料の製造>
(実施例1~16、比較例1~16)
表1~4に示される割合(質量部)で各成分を溶解し、均一に攪拌・混合することにより、水系液状化粧料をそれぞれ得た。
【0042】
なお、表1~4に示される各成分は、下記に示すものを使用した。
分散剤1:ベヘネス-30(日光ケミカルズ社製、商品名、NIKKOL BB-30)
分散剤2:ラウレス-4(日光ケミカルズ社製、商品名、NIKKOL BL-4.2)
分散剤3:ステアリン酸PEG-55(日光ケミカルズ社製、商品名、NIKKOL MYS-55V)
着色顔料1:カーボンブラック
着色顔料2:コンジョウ
皮膜形成剤A1:スルホン化ポリエステル(イーストマンケミカルジャパン社製、商品名Eastman AQ55S Polymer)
皮膜形成剤B1:アクリル酸アルキル共重合体エマルション(大東化成工業社製、商品名ダイトゾール 5000SJ、固形分50質量%)
皮膜形成剤B2:アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション(大東化成工業社製、商品名ダイトゾール 5000STY、固形分50質量%)
皮膜形成剤B3:アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション(大同化成工業社製、商品名ビニゾール 2140L、固形分45質量%)
皮膜形成剤B4:アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミド共重合体エマルション(互応化学工業社製、商品名プラスサイズ L-9540U、固形分40質量%)
皮膜形成剤C1:カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセルファインケム社製、商品名CMCダイセル)
皮膜形成剤C2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名メトローズ 60SH-4000)
皮膜形成剤C3:ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製、商品名PVP K-30)
【0043】
<水系液状化粧料の評価>
上記で得られた水系液状化粧料をオートタイプ容器に充填して充填品を作製した。
・・・
【0053】
【表1】
[図:0001420340000001.jpg]
【0054】
【表2】
[図:0001420340000002.jpg]
」
(3)甲3の記載事項
(甲3a)「請求の範囲
[請求項1] 塗布手段として筆穂又はペン芯を用いる液体化粧料塗布具に内蔵される液体化粧料であって、該液体化粧料は、少なくとも、カーボンブラックと、水と、皮膜形成性樹脂からなる分散剤0.5~5質量%と、皮膜形成剤2~15質量%(固形分換算)と、界面活性剤0.5質量%以下と、マット調の効果を発揮する原料として、キサンタンガム若しくはアクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNaコポリマーとを含有し、光沢度が6.5以下であり、かつ、EMD型粘度計による温度25℃、ずり速度76.8S-1での粘度が10~270mPa・sの範囲であることを特徴とする液体化粧料。
・・・
[請求項4] 液体化粧料は、アイライナー用又はアイブロウ用であることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の液体化粧料。」
(甲3b)「[0014] ・・・
このカーボンブラックの含有量は、液体化粧料全量に対して、1~20質量%が好ましく、更に好ましくは、5~15質量%である。
このカーボンブラックの含有量が1質量%未満では、発色が薄くて化粧料として不十分となり、一方、20質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎて、本発明の液体化粧料塗布具では液がスムーズに吐出されなくなり、好ましくない。
・・・
[0024] 本発明の液体化粧料は、粘度が10~270mPa・sの範囲とするものであり、好ましくは、20~250mPa・s、更に好ましくは、20~110mPa・sとすることが望ましい。
この粘度が10mPa・s未満では、落下等の衝撃が加わった時に、粘性が低いため液漏れを起こすことがあり、一方、粘度が270mPa・sを超えると、塗布性能が悪くなるため好ましくない。」
(甲3c)「[0027] ・・・
用いることができる液体化粧料塗布具としては、例えば、アイライナー用又はアイブロウ用である筆穂又はペン芯を備えた液体化粧料塗布具であれば、特に限定されない。
・・・
[0028] 具体的には、図1に示す、液押圧機構が回転式繰出タイプとなる使用性、簡便性、塗布性に優れる液体化粧料塗布具の使用が望ましい。
このタイプの液体化粧料塗布具は、図1に示すように、液押圧機構10により、液押圧機構10の前方に内蔵された本発明の液体化粧料(以下、単に「液体化粧料」という」)を吐出させる貯留部となる化粧料内蔵容器11の前方に具備された、筆穂(筆ペン)で形成した塗布部30を有するものである。
液押圧機構10は、軸本体12後端部に配設された繰り出し部材13を軸本体12に対して周方向に相対回転させることにより容器(貯留部)11内の液体化粧料を繰り出すことにより塗布部30に供給される構成となっている。
・・・
[0034]
・・・
この実施形態に係るノック式繰出タイプの塗布具は、図2に示すように、軸本体12後端部に配設されたノック部材50を軸方向前方に押圧することにより貯留部11内の液体化粧料を繰り出すことができるものであって、使用者のノック操作によるノック部材50の押圧の力をカム機構により回転の力に変換するノック機構部60と、軸本体12に固定したネジ体61と、ネジ体61に螺合させたネジ棒62とを有し、そのノック機構部60が変換した回転の力でネジ棒62を回転させることによってネジ体61を介して該ネジ棒62を前進させて前記液体化粧料を繰出すものである。」
(甲3d)「実施例
[0037] ・・・
[0038]〔実施例1~9及び比較例1~2〕
下記表1に示す配合処方の液体化粧料(配合単位:質量%、全量100質量%)を調製し、上述の測定方法により、各液体化粧料の粘度値と光沢度を測定すると共に、下記各評価方法により、マット感、塗布性能、内容液経時安定性、耐水性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
・・・
[0040](塗布性能の評価方法)
図1に準拠する筆ペンタイプの化粧料容器に各液体化粧料を充填し、手の甲に幅1~2mm、長さ約5cmの線を5本引き、塗布性能(描き具合、描線濃度)を下記評価基準で官能評価した。
・・・
[0042](耐水性の評価方法)
図1に準拠する筆ペンタイプの化粧料容器に各液体化粧料を充填し、手の甲に液体化粧料を塗布し、10分間乾燥させた後に、流水にあて、指のはらで擦過し、塗布物の落ち具合を目視にて下記評価基準で官能評価した。
・・・
[0043]
[表1]
[図:0001420340000003.jpg]
」
(甲3e)「[図1]
[図:0001420340000004.jpg]
」
(4)甲4の記載事項
(甲4a)「【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る容器を示す断面図・・・、本実施形態の容器100は、内容物Lを収容し使用者が必要に応じて適宜塗布体3により塗布するものである。
【0018】
内容物Lは、ここでは、アイライナーやリップライナー等の液状化粧料とされ、塗布体3は、ここでは、毛筆とされ、これらを備える容器100は、液状化粧料容器とされている。
【0019】
図1及び図2に示すように、液状化粧料容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を呈するものであり、円筒状の容器本体1と、容器本体1内に設けられ液状化粧料Lを収容する収容部2と、容器本体1の先端に装着され収容部2内の液状化粧料Lを塗布するための毛筆3と、容器本体1内に配置され収容部2内と毛筆3を結ぶ軸状の中継芯4と、中継芯4周りに装着された略円筒状のジャバラ部材5と、を概略備える。・・・
・・・
【0022】
・・・中継芯4は、その後端側の部分が収容部2内に進入すると共に、その先端側の部分が毛筆3に進入することで、収容部2内と毛筆3とを結んでいる。そして、中継芯4は、毛細管現象により収容部2内の液状化粧料Lを吸い上げ毛筆3へ供給するのを可能とする。」
(甲4b)「【図1】
[図:0001420340000005.jpg]
」
(5)甲5の記載事項
(甲5a)「
[図:0001420340000006.jpg]
」
2 申立理由1(進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された発明
甲1は、顔料、炭素数5~10の1,2-アルカンジオール、及びジアルキルスルホコハク酸塩を含有してなる、液状アイブローなどの水性メイクアップ化粧料に関し(甲1a)、その具体例を示した処方例1の液状アイブローからみて(甲1e)、甲1には、次の「甲1発明」が記載されていると認める。
甲1発明:
「下記の組成からなる液状アイブロー。
(重量%)
黄色4号 0.1
赤色227号 0.1
青色1号 0.2
カラギーナン 0.5
ベントナイト 0.2
1,2-オクタンジオール 0.5
スルホコハク酸ジオクチルナトリウム液 0.5
ポリビニルピロリドン 1.0
アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション 10.0
1,3-ブチレングリコール 3.0
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.3
精製水 残 余
合 計 100.0 」
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲1発明における「液状アイブロー」は精製水を含むところ、本件明細書【0021】に「なお、本明細書において水系とは、少なくとも水が含まれていることを意味する。」と記載され、同【0053】に「本実施形態に係る水系液状化粧料は、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラなどのメイクアップ化粧料として用いることができる。」と記載されていることから、本件発明1における「水系液状化粧料」に該当する。
(イ)甲1発明における「液状アイブロー」が「スルホコハク酸ジオクチルナトリウム液」を「0.5重量%」含有することは、本件発明1における「スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム・・・を含有する水系液状化粧料であって、前記スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウムの含有量が化粧料全量基準で0.01~1質量%であ」ることに該当する。
なお、「スルホコハク酸ジオクチルナトリウム液」と「スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム」は同義である(必要ならば、化粧品成分オンライン,“スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaの基本情報・配合目的・安全性”,https://cosmetic-ingredients.org/dispersing-agents/873/を参照。)。
また、本件発明の技術分野において、「質量%」と「重量%」とは、配合濃度を表す単位として同義である。
(ウ)甲1発明における「液状アイブロー」が「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」を合計で「0.4重量%」含有することは、「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」は「有機顔料」であるから(甲1c【0010】)、本件発明1における「無機着色顔料・・・を含有する水系液状化粧料であって、・・・前記無機着色顔料の含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であり、前記無機着色顔料がカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックの含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であ」ることと、「着色顔料を含有する水系液状化粧料」である限りにおいて一致する。
(エ)甲1発明における「液状アイブロー」が「ポリビニルピロリドン」を「1.0重量%」含有することは、本件発明1における「水溶性分散剤・・・を含有する水系液状化粧料であって、・・・前記水溶性分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はアクリル酸アルキル共重合体を含み、前記水溶性分散剤の含有量が、化粧料全量基準で0.5~5質量%であ」ることに該当する。
なお、本件発明1における「ポリビニルピロリドン」が「水溶性分散剤」であるとされていることは、ポリビニルピロリドンの添加の目的を「・・・剤」という表現で示しているにすぎず、化合物自体を区別する技術的な限定がされているのではないから、この点は、本件発明1との対比において相違点とはならない。
(オ)甲1発明における「液状アイブロー」が「アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション」を「10.0重量%」含有することは、本件発明1における「皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、・・・前記皮膜形成性ポリマーエマルションがアクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、又はウレタンアクリル複合樹脂エマルションを含み、前記皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量が、化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で1~20質量%であ」ることと、「皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、・・・前記皮膜形成性ポリマーエマルションがアクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、又はウレタンアクリル複合樹脂エマルションを含」む限りにおいて一致する。
なお、本件発明1における「アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション」が「皮膜形成性」であるとされていることは、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルションの性質を示しているにすぎず、エマルションに含まれる化合物自体を区別する技術的な限定がされているのではないから、この点は、本件発明1との対比において相違点とはならない。
加えて、甲1には、「アクリル酸アルキル・スチレン共重合体」が皮膜形成高分子化合物の具体例に記載されている点からも(甲1d)、本件発明1との対比において相違点とはならない。
(カ)甲1発明における「液状アイブロー」は、さらに「カラギーナン」、「ベントナイト」、「1,2-オクタンジオール」、「1,3-ブチレングリコール」、「クエン酸」、「クエン酸ナトリウム」、「パラヒドロキシ安息香酸メチル」及び「精製水」を含むが、本件明細書【0021】に「なお、本明細書において水系とは、少なくとも水が含まれていることを意味する。」と記載され、同【0051】に「本実施形態に係る水系液状化粧料には、上記の各成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。」と記載されているから、甲1発明がこれらを含むことは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
(キ)よって、両発明は、次の一致点及び相違点1~4を有すると認める。
一致点:
「スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、着色顔料、水溶性分散剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、
前記スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウムの含有量が化粧料全量基準で0.01~1質量%であり、
前記水溶性分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はアクリル酸アルキル共重合体を含み、
前記水溶性分散剤の含有量が、化粧料全量基準で0.5~5質量%であり、
前記皮膜形成性ポリマーエマルションがアクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、又はウレタンアクリル複合樹脂エマルションを含む、水系液状化粧料。」である点。
相違点1:
「着色顔料」について、
本件発明1は、「無機着色顔料」であって、「前記無機着色顔料の含有量が化粧料全量基準で4~15質量%であり、前記無機着色顔料がカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックの含有量が化粧料全量基準で4~15質量%」であると特定しているのに対し、
甲1発明は、有機顔料である「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」を、液状アイブロー中に合計で0.4重量%含有するものである点。
相違点2:
「皮膜形成性ポリマーエマルション」の含有量について、
本件発明1は、「化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で1~20質量%である」と特定しているのに対し、
甲1発明は、液状アイブロー中に「アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション」を「10.0重量%」含有するものであるが、固形分濃度換算か不明である点。
相違点3:
本件発明1は、「25℃における粘度が50mPa・s以下」であると特定しているのに対し、
甲1発明の粘度は不明である点。
相違点4:
本件発明1は、「オートペンタイプの容器に収容して用いられる」と特定しているのに対し、
甲1発明は、どのようにして用いられるものであるのか不明である点。
イ 判断
相違点1について検討する。
甲1には、「用いられる顔料としては、有機顔料並びに無機顔料の何れをも用いることができる。」と記載され(甲1c【0010】)、「無機顔料としては、・・・カーボンブラック・・・などを例示することができる。」と記載されているが(甲1c【0011】)、さらに、「顔料の含有量は、・・・化粧効果を発揮させる観点から、化粧料中、0.01重量%以上が好ましく、・・・過剰な皮膚染着を避ける観点から、化粧料中、3重量%以下が好ましく、・・・これらから、水性メイクアップ化粧料中の顔料の含有量は、・・・0.05~2重量%がより好ましい。」と記載されている(甲1c【0012】)。
そして、甲1発明においても、有機顔料である「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」の含有量は、合計で0.4重量%であって、上記より好ましい範囲内の量である。
そうすると、甲1発明において、有機顔料である「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」に変えて、或いは加えて、有機顔料と同様に使用できる顔料として例示されている無機顔料であるカーボンブラックを採用するとしても、その含有量を、より好ましい範囲を超える4~15質量%とする動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
よって、相違点2~4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明1は、相違点1~4に係る構成を採用することにより、本件明細書【0018】に記載の「油性化粧料が塗布された肌上であっても、十分な濃さと十分な耐水性及び耐摩擦性とを併せ持つ化粧膜の描線を、十分な均一性及び密着性で設けることができる水系液状化粧料を提供することができる。」という、甲1からは、予測できない顕著な効果を奏するものである。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用して、水系液状化粧料におけるHLBが8以上の界面活性剤の含有量を特定するものであるところ、甲1発明は、HLBが8以上の界面活性剤を含有していないから、両発明に新たに相違するところはない。
しかしながら、本件発明2は、本件発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、オートペンタイプの容器と本件発明1の水系液状化粧料とを備える化粧品に関するものである。
そうすると、本件発明1の全ての発明特定事項を含む本件発明3についても、上記(1)で検討したのと同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人主張の概要
申立人は、特許異議申立書21~26ページおいて、甲1に記載された発明として、当審合議体が認定した甲1発明と同様な発明を認定し、本件発明1との相違点1~4を示し、それらの相違点について主張しているところ、申立人の主張する相違点1及び2は、上記(2)(キ)の相違点1に対応している。
そして、申立人は、相違点1及び2(上記(2)(キ)の相違点1)について、甲1には、無機顔料であるカーボンブラックを0.01重量%以上用いることの示唆があり(甲1c【0012】)、本件発明1で規定する範囲と重複しているし、カーボンブラックの含有量は、用途に応じて適宜調整されるものであること、また、オートペンタイプを採用しようとした場合に、オートペンタイプに相応しい、描線の濃さと吐出性を考慮して、甲2又は甲3に記載のカーボンブラックの含有量(甲2e【0053】【表1】から6.00重量%、甲3b[0014]から5~15質量%)を採用することは容易であると主張する。
イ 申立人の主張の検討
甲2の水系液状化粧料は、皮膜形成剤として、スルホン化ポリエステル(A)と(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを構成単位として含む重合体(B)を所定量含むものであることによって、オートペンタイプとした場合であっても十分な液吐出が可能であるとともに、描線濃度及び描き具合などの使用性に優れ、なおかつラスティング性及び洗浄性を両立する化粧膜を形成できるというものである(甲2a、甲2c【0012】)。
そして、甲2には、カーボンブラックは水系液状化粧料中に均一分散させることが難しいために色むらが生じやすく(甲2b)、カーボンブラックを含む水系液状化粧料をオートペンタイプで用いられる場合は、HLBが11以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の親水性ノニオン界面活性剤を配合することが望ましいことも記載され(甲2d【0031】)、実施例では、着色顔料1としてカーボンブラックを6.00~12.0質量%含有するものについて、皮膜形成剤A1(スルホン化ポリエステル(A))と皮膜形成剤B1~B4の何れか((メタ)アクリル酸アルキルモノマーを構成単位として含む重合体(B))を含み、さらに分散剤1又は2(HLBが11以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の親水性ノニオン界面活性剤)を含有する水系液状化粧料を、オートペンタイプ容器に充填したことが記載されている(甲2e)。
そうすると、甲1に、付け筆タイプでもフェルトペンタイプでも使用可能な汎用性の高い水性メイクアップ化粧料を提供するものであることが記載され、甲2には、具体的に水系液状化粧料の製品形態としてオートペンタイプの容器に収容して用いることが記載されているとしても、甲1発明とは組成が全く異なる甲2に記載の水系液状組成物に関する技術的事項から、甲1発明について、オートペンタイプの容器に収容して用いるものとすることが動機付けられるとはいえない。
仮に、オートペンタイプの容器に収容して用いるとしても、甲1には、過剰な皮膚染着を避ける観点から、顔料の含有量は0.05~2重量%が好ましいと記載されているから(甲1c【0012】)、甲1発明の成分について、有機顔料である「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」に変えて、或いは加えて、有機顔料と同様に使用できる顔料として例示されている無機顔料であるカーボンブラックを採用するとともに、その含有量を、甲1において、より好ましいとされる範囲を超える4~15質量%とする動機付けがあるとはいえないことは、上記(2)イで述べたとおりである。
また、甲3には、塗布手段として筆穂又はペン芯を用いる液体化粧料塗布具に内蔵される液体化粧料が記載されているが(甲3a)、具体的に示されているものは、液押圧機構が回転式繰出タイプとなる塗布具やノック式繰出タイプの塗布具、すなわち液体化粧料に力を加えることにより塗布部に供給する機構を備えたメカニカルペンタイプの塗布具に関するものであって(甲3c、甲3e)、そのような塗布具における好適な粘度やカーボンブラックの含有量が示されているにすぎず、オートペンタイプに関する記載はないから、申立人の主張は前提において誤っている。
そして、甲3には、液体化粧料がカーボンブラックを含むものであり(甲3a)、その含有量は液体化粧料全量に対して、好ましくは5~15質量%であることが記載されているが(甲3b[0014])、甲1には、過剰な皮膚染着を避ける観点から、顔料の含有量は0.05~2重量%が好ましいと記載されているから(甲1c【0012】)、甲1発明について、有機顔料である「黄色4号」、「赤色227号」及び「青色1号」に変えて、或いは加えて、有機顔料と同様に使用できる顔料として例示されている無機顔料であるカーボンブラックを採用するとともに、その含有量を、甲1において、より好ましいとされる範囲を超える4~15質量%とする動機付けがあるとはいえないことは、上記(2)イで述べたとおりである。
よって、申立人の上記主張はいずれも採用しない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1(進歩性欠如)は理由がない。
3 申立理由2(実施可能要件違反)及び申立理由3(サポート要件違反)について
(1)本件発明の解決しようとする課題
本件明細書の記載、特に【0009】の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「油性化粧料が塗布された肌上であっても、十分な濃さと十分な耐水性及び耐摩擦性とを併せ持つ化粧膜の描線を、十分な均一性及び密着性で設けることができる水系液状化粧料」を提供することにあると認める。
(2)検討
ア 従来技術、解決課題とその解決手段及び効果に関する記載について
本件明細書【0002】~【0005】及び【0007】~【0011】には、メークアップ化粧料に用いられる水系液状化粧料、特にアイライナーでは目の印象を強くするために濃い描線が求められる傾向にあり、着色剤として無機着色顔料を用いることが多いが、無機着色顔料は比重が大きく、凝集や沈降を引き起こしやすいため、水系液状化粧料では分散が不十分になりやすく、描線にムラが生じやすいこと、水系化粧料は、油性化粧料や油中水型乳化化粧料と比較して肌への密着性に劣る傾向があり、均一な化粧膜を形成することが難しく、特に油系ファンデーションのような油性化粧料を塗布した肌には、はじかれやすい水系化粧料で均一な描線を設けることは難しいこと、水系化粧料は、油性化粧料や油中水型乳化化粧料と比較して化粧膜の耐水性や耐摩擦性が劣る傾向にあり、化粧持ちを高めることが難しい剤型であること、という課題があったところ、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤、及び皮膜形成性ポリマーエマルションを含有する水系液状化粧料であって、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウムの含有量が化粧料全量基準で0.01~1質量%であり、無機着色顔料の含有量が化粧料全量基準で3~20質量%であり、無機着色顔料がカーボンブラックを含む水系液状化粧料とすることにより、油性化粧料が塗布された肌上であっても、十分な濃さと十分な耐水性及び耐摩擦性とを併せ持つ化粧膜の描線を、十分な均一性及び密着性で設けることができる水系液状化粧料を提供でき、また、十分な吐出性を有することができるため、オートペンタイプであっても安定的に吐出することができることも記載されている。
イ 実施例以外の一般記載について
本件明細書【0026】~【0050】において、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、無機着色顔料、水溶性分散剤及び皮膜形成性ポリマーエマルションの具体例や入手方法が記載され、各成分の好ましい含有量について、肌上へのなじみ、オートペンタイプに適用した場合の吐出性、描線の濃さに優れた化粧膜の形成と分散性及び吐出性との両立、無機着色顔料の分散性、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性の確保とオートペンタイプにおける吐出性との両立、肌が突っ張ったような感覚になることを回避するなどと関連した好ましい範囲が記載され、同【0024】において、オートペンタイプでの吐出性と関連した好ましい粘度範囲とその測定方法が記載され、同【0051】~【0066】において、ほかに配合できる成分、水系液状化粧料の製造方法、用途や形態、オートペンタイプの容器の具体例について記載されている。
ウ 実施例の記載について
本件明細書【0067】~【0084】において、実施例1~14及び16として、オートペンタイプの容器に収容する水系液状化粧料の組成及び製造方法が具体的に記載されており、得られた水系液状化粧料について、吐出性、直接又は油性ファンデーションを塗布した肌上での塗布状態、耐摩擦性、耐水性の評価をした記載及び粘度の記載がある。
そして、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム配合の有無及びその含有量やほかのアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤の配合に変更したものや、無機着色顔料であるカーボンブラックの含有量などについて本件発明の条件を満たさない比較例1~8の水系液状化粧料に比べて、本件発明の発明特定事項を全て備えた実施例1~14及び16の水系液状化粧料が、優れた効果を奏することが具体的に示されている。
エ 申立理由2(実施可能要件違反)について
上記ア~ウの実施例を含めた本件明細書の発明の詳細な説明の記載全体を考慮すれば、本件発明の水系液状化粧料を製造し使用できることを当業者は理解できるといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
オ 申立理由3(サポート要件違反)について
上記ア~ウの実施例を含めた本件明細書の発明の詳細な説明の記載全体を考慮すれば、本件発明の水系液状化粧料とすることによって、上記(1)の本件発明の課題を解決できることを当業者は理解できるといえる。
したがって、本件発明1~3は、本件明細書の発明の詳細な説明において、その課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるから、本件特許の請求項1~3の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
カ 申立人の主張について
(ア)申立人主張の概要
申立人は、特許異議申立書29~32ページおいて、実施可能要件及びサポート要件を満たしていない理由として、概要、次のように主張する。
A 水溶性分散剤について
本件明細書の表1及び表2には、ポリビニルピロリドンを1質量%含む実施例と、水溶性ポリマー-1(アクリル酸アルキル共重合体、固形分濃度30質量%)を1.5~15質量%含む実施例が記載されているが、ポリビニルアルコールが一切用いられていない。
本件発明1~3は、水溶性分散剤の含有量を限定するものの、各成分の含有量を限定していないから、例えば、水系液状化粧料が、水溶性分散剤を0.5~5質量%含むものの、ポリビニルアルコールを0.000001質量%含み、ポリビニルピロリドン及びアクリル酸アルキル共重合体を一切含まないものも、本件発明1~3に含まれることとなる。
B 皮膜形成性ポリマーエマルションについて
本件明細書の表1及び表2には、ポリマーエマルション-1(「アクリル酸アルキル共重合体」)又はポリマーエマルション-2(「アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション」)を10質量%含む実施例のみが記載されており、皮膜形成性ポリマーエマルションとして、ウレタンアクリル複合樹脂エマルションが用いられた実施例は存在しない。
本件発明1~3について、例えば、水系液状化粧料が、皮膜形成性ポリマーエマルションとして、ウレタンアクリル複合樹脂エマルションを0.000001質量%含み、「アクリル酸アルキル共重合体」、及び「アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション」を一切含まないものも、本件発明1~3に含まれることとなる。
(イ)申立人の主張の検討
a 上記Aについて
本件明細書【0035】に「本実施形態において用いられる水溶性分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル系ポリマー等の水溶性ポリマー」と記載され、同【0038】に「上記のアクリル系ポリマーは、アクリル酸アルキル共重合体が好ましく」と記載され、実施例において、上記水溶性ポリマーの具体例であるポリビニルピロリドン及び/又はアクリル酸アルキル共重合体を用いた結果が示されている。
したがって、同様に水溶性ポリマーの具体例であるポリビニルアルコールについても、当業者であれば、水溶性分散剤としてポリビニルピロリドンやアクリル系ポリマーと同様に機能することを理解できるといえる。
また、本件明細書【0042】に「本実施形態の水系液状化粧料における水溶性分散剤の含有量は、化粧料全量基準で、0.5~5質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、1~4質量%であることが更に好ましく、1~3質量%であることが更により好ましい。水溶性分散剤の含有量が上記の範囲にあると、無機着色顔料の分散性を向上させやすくなる。」と記載されているので、当業者であれば、申立人の主張するような極端な場合を想定することなく、水溶性分散剤の含有量について理解できるといえる。
b 上記Bについて
皮膜形成性ポリマーエマルションの選択肢のうち、ウレタンアクリル複合樹脂エマルションは、実施例16の水系液状アイライナーの成分4として用いられている(【0082】)。
また、本件明細書【0050】に「本実施形態の水系液状化粧料における皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量は、化粧料全量を基準として、固形分濃度換算で1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、4~10質量%であることが更に好ましい。皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量が上記の範囲にあると、化粧膜の耐水性及び耐摩擦性の確保と、オートペンタイプにおける吐出性とを両立することが容易となる。また、皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量を上記上限値以下にすることで、化粧膜が強固になりすぎて肌が突っ張ったような感覚になることを回避しやすくなる。」と記載されているので、当業者であれば、申立人の主張するような極端な場合を想定することなく、皮膜形成性ポリマーエマルションの含有量について理解できるといえる。
キ 小括
本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の請求項1~3の記載が実施可能要件及びサポート要件を満たすことは、上記エ及びオで述べたとおりである。
よって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号又は同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものではないから、申立理由2(実施可能要件違反)及び申立理由3(サポート要件違反)は理由がない。
第5 むすび
したがって、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700830