審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700460

固形粉末化粧料の製造方法

審判番号
2024-700460
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-215400
登録番号
7382058
請求日
2024年05月15日
審決日
2024年07月22日
公報発行日
2024年08月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社トキワ
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】湯本 譲司
  • 【異議申立人】川原 園生
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 小石 真弓
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.121-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7382058号発明「固形粉末化粧料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7382058号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7382058号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2019-215400号)は、令和元年11月28日に出願され、令和5年11月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項に対し、令和6年5月15日に特許異議申立人 川原 園生(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 油性成分及び粉体成分を含有する化粧料基材と、揮発性の炭化水素系溶剤と、が含まれるスラリーを調製する工程と、 前記スラリーを圧縮成形する工程と、を備え、 前記油性成分が、前記炭化水素系溶剤に不溶な、水酸基価が40~85であるエステル油(A)を含み、 前記粉体成分が、板状粉体(B)を含み、 前記エステル油(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(水添ヒマシ油/セバシン酸)コポリマー、及びダイマージリノール酸水添ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも一種のエステル油を含み、 前記炭化水素系溶剤が、イソパラフィン及びイソドデカンのうちの少なくとも一種を含む、固形粉末化粧料の製造方法。 【請求項2】 前記化粧料基材における前記粉体成分の含有量が、化粧料基材全量を基準として、75~95質量%である、請求項1に記載の固形粉末化粧料の製造方法。 【請求項3】 前記板状粉体(B)が、金属酸化物で被覆された板状粉体を含む、請求項1又は2に記載の固形粉末化粧料の製造方法。 【請求項4】 前記化粧料基材における前記エステル油(A)の含有量が、化粧料基材全量を基準として、0.1~5質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記2に示す甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」などという。)を提出し、下記1の申立理由を主張している。 1 申立理由(進歩性欠如) 本件発明1~4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1及び甲2~4に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲1:特開2011-74023号公報 甲2:特開2010-163371号公報 甲3:特開2011-105605号公報 甲4:松下篤、「湿式充填を用いたパウダーファンデーションの開発」、 2006年6月、FRAGRANCE JOURNAL、 34~39ページ 第4 判断 当審合議体は、本件発明1~4に係る特許は、上記第3に示した申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、以下の下線は、原文に付されていたものに加えて、当審合議体で追加した。また、証拠の転記はすべて全角で表記する。本決定全体についても同様である。 1 甲各号証の記載事項 (1)甲1の記載事項 (甲1a)「【請求項5】 (a)疎水化処理粉末 10.0~95.0質量%、 (b)50℃で抱水させ常温に戻したとき、自重と等量以上の水を抱水することが可能な抱水性油剤 0.1~10.0質量%、 (c)多価アルコール 0.1~15.0質量%、 (d)HLB10以下の界面活性剤 0.01~5.0質量%、 及び水を含有するスラリー状組成物を容器に充填する工程(1)及び前記工程(1)に次いで行われる前記スラリー状組成物から水を除去する工程(2)を有する固形粉末化粧料の製造方法。」 (甲1b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、湿式製法によって製造され、使用性に優れた固形粉末化粧料に関する。さらに詳しくは、滑らかなタッチで、瑞々しい質感を有し、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れ、安全性及び環境に配慮した湿式製法の固形粉末化粧料及びその製造方法に関する。 ・・・ 【0003】 粉末及び油剤からなる化粧料基剤に揮発性溶媒を加え、混合してスラリー化して、該スラリーを容器に充填した後、上記揮発性溶媒を除去して製造する方法(以下、このような製造方法を「湿式製法」と記す)においては、粉末粒子の個々に油分が効率的に付着するので粉っぽさがなくなる、滑らかなタッチで、フィット感に優れたものが得られ易いとの可能性から、近年、盛んに開発が試みられている。・・・ ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 化粧品市場をみると、湿式製法による固形粉末化粧料の占める割合は、必ずしも多くない。その理由はいくつか挙げられ、具体的には下記のようである。まず、湿式製法は、製造工程が多岐に亘るので、生産効率が悪くなり、コスト高になる。しかし、それを補って余りあるほどに官能特性を向上させることは困難である。更に、製造工程でバルク表面にクラックが生じやすく、出荷後の耐衝撃性においても懸案を残すものが多い。このため、固形粉末化粧料の品質を制御しにくくなる。加えて、非特許文献1及び特許文献1において、揮発性溶媒は油剤の溶解性が強い低分子量のアルコール、ヘキサン、イソパラフィン等が好適であると記載されている。これらは、いずれも引火点の低い有機溶剤であることから、防爆対策や作業員の吸入による安全対策が必須であり、環境問題から溶剤の回収も必要となる。 【0007】 上記状況を踏まえ、滑らかなタッチで、瑞々しい質感を有し、フィット感等の官能特性に優れ、かつ耐衝撃性に優れ、安全性及び環境に配慮した湿式製法の固形粉末化粧料が望まれていた。」 (甲1c)「【0026】 本発明の固形粉末化粧料は、上記(a)~(d)及び水を含有するスラリー状組成物を調整し、これを容器に充填し次いで水を除去することによって得られたものである。本発明においては、製造工程において使用する揮発性溶媒として水を用いることから、溶媒の除去に特別な装置を用いる必要がない。また、水は化粧料基剤中の油剤成分と混和しないため、溶媒の除去により、成型品の表層と下層において油剤成分の濃度勾配を生じることがない。そのため、表層と下層における使用感が異ならず、また、ひび割れや収縮を起こさない点でも好ましい。 ・・・ 【0028】 本発明の固形粉末化粧料を製造するに際して、水に加えて揮発性溶媒としてメチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、フロン等の低沸点有機溶剤を用いることは、安全性及び環境問題の配慮から好ましいものではない。」 (甲1d)「【0040】 (パウダーファンデーションの製造方法;実施例1~5及び比較例1~5) A.油剤成分16~26を75℃に加熱溶解し、均一に分散する。 B.粉末成分1~15をヘンシェルミキサーで均一に分散する。 C.Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基剤を得る。 D.Cの化粧料基剤100質量部に対して、成分27の精製水75質量部を添加し、均一混合して、スラリー状とする。 E.Dを金皿に充填し、表面に吸水シートを置き、多孔質吸引ヘッドを用いて吸引圧縮成型する。 F.Eを70℃の恒温槽に一晩放置し、精製水を完全に除去して、パウダーファンデーションを得た。 ・・・ 【0046】 実施例8:アイシャドウ (1) メチルポリシロキサン2.0%処理タルク(*1) 40.0 (2) メチルポリシロキサン2.0%処理マイカ(*16) 残量 (3) メチルポリシロキサン2.0%処理ベンガラ 0.8 (4) メチルポリシロキサン2.0%処理赤色226 0.2 (5) メチルポリシロキサン2.0%処理黄酸化鉄 3.0 (6) メチルポリシロキサン2.0%処理黒酸化鉄 4.0 (7) メチルポリシロキサン2.0%処理ベンガラ被覆雲母チタン (*20) 20.0 (8) メチルポリシロキサン2.0%処理雲母チタン(*21) 8.0 (9) 球状シリカ 5.0 (10)ダイマージリノール酸水添ヒマシ油(*22) 1.0 (11)ジプロピレングリコール 2.0 (12)ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(*23) 0.5 (13)ミネラルオイル 2.0 (14)精製水 150質量部 *20 SA-クロイゾネゴールド(三好化成社) *21 SA-ティミロン スーパーグリーン(三好化成社) *22 リソカスタDA-L(高級アルコール工業社) (抱水力:>100%) *23 DISG-2(HLB 4)(日本エマルジョン社) (製法) A~Cは上記実施例1~5及び比較例1~5と同様の方法で行った。 D.Cの化粧料基剤100質量部に対して成分14の精製水150質量部を添加し、均一混合してスラリー状とする。 E.底面に充填孔を有する樹脂皿の開口部を吸水シートを介在して多孔質吸引ヘッドで閉ざし、前記充填孔よりバックインジェクションマシンを用いて加圧充填して成型する。 F.Eを70℃の恒温槽に一晩放置し、精製水を完全に除去して、アイシャドウを得た。 ・・・ 【0048】 実施例6~9の化粧料は、スラリーの分散性に優れ、また、滑らかなタッチ、瑞々しい質感、フィット感等の官能特性に優れ、かつ良好な耐衝撃性を有する化粧料であった。」 (2)甲2の記載事項 (甲2a)「【請求項1】 化粧料基材と揮発性溶剤とを混合し、容器に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料において、 (a)化粧品基材に対して50~90質量%の光輝性粉体 (b)化粧品基材に対して0.1~5質量%の脂肪酸アルミニウム塩 を必須配合成分とし、 (c)化粧品基材との混合に用いる揮発性溶剤として、軽質流動イソパラフィン及び/又はイソドデカン を用いることを特徴とする固形粉末化粧料。」 (甲2b)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところが、上記のいずれの方法によっても、耐衝撃性を十分に持たせることは困難であるばかりか、多量の光輝性粉体と固形油やワックス粉末を同時に配合した固形粉末化粧料では、使用時にケーキングを起こす可能性があり、多量の光輝性粉体と一定量以上のタルクを配合した場合には、塗布時ののびが悪くなるばかりでなく、塗布面がマットになり、多量配合しているパール剤の質感を生かすことはできなかった。したがって、パール剤やラメ剤を多量配合し、きらきらした光輝感のある仕上がりを持ちながら、ケーキング等の品質的問題を起こさず、また塗布時の延び広がりがよく、且つ耐衝撃性にも優れた固形粉末化粧料の開発が望まれていた。」 (甲2c)「【0014】 化粧料基材との混合に用いる成分(c)の揮発性溶剤としては、軽質流動イソパラフィン及び/又はイソドデカンが挙げられ、これらを用いることで得られる固形粉末化粧料に十分な耐衝撃性を与えることができる。」 (甲2d)「【0029】 実施例8:アイシャドウ (成分) (質量%) 1.メチルフェニルポリシロキサン*1 2.0 2.白色ワセリン 3.0 3.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン 5.0 4.マイカ 残 部 5.ステアリン酸アルミニウム 3.0 6.シリコーン粉末*9 2.0 7.赤色202号 1.0 8.ステアロイルグルタミン酸アルミニウム(4%)被覆 赤色226号 0.5 9.ベンガラ 3.0 10.シリカ被覆アルミニウム末*10 10.0 11.酸化鉄被覆ガラス末*11 10.0 12.酸化チタン被覆ガラス末*12 20.0 13.銀被覆ガラス末*13 10.0 14.ポリエチレンテレフタレート・ ポリウレタン-11・アルミニウム積層末*14 10.0 15.シリコーン(5%)処理雲母チタン 20.0 16.トコフェロール 0.1 17.メチルパラベン 0.2 18.デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1 ---------------------------------- 計 100.0 19.揮発性溶剤(軽質流動イソパラフィン*7) 50質量部 ・・・ 【0031】 実施例9:アイシャドウ (成分) (質量%) 1.メチルフェニルポリシロキサン*1 2.0 2.白色ワセリン 3.0 3.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン 5.0 4.マイカ 残 部 5.ステアリン酸アルミニウム 2.0 6.赤色202号 0.5 7.黄色4号アルミニウムレーキ 3.0 8.雲母チタン 30.0 9.シリカ被覆アルミニウム末*10 10.0 10.酸化チタン被覆ガラス末*12 20.0 11.銀被覆ガラス末*13 10.0 12.シリコーン(5%)処理雲母チタン 10.0 13.トコフェロール 0.1 14.メチルパラベン 0.2 15.デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1 ---------------------------------- 計 100.0 16.揮発性溶剤(イソドデカン*8) 50質量部」 (3)甲3の記載事項 (甲3a)「【請求項1】 下記工程1~3を有することを特徴とする固形粉末化粧料の製造方法。 工程1:粉末成分と、結合剤としての油性成分及び/又は多価アルコール成分を撹拌混合した後、粉砕機で解砕する工程 工程2:工程1で得た化粧料基剤100質量部に対して、沸点が200℃以下の揮発性溶媒20~100質量部を加えて、スラリー化する工程 工程3:工程2で得たスラリーを一軸偏心ネジポンプを用いて、容器に充填し、真空吸引しながらプレス成形した後、残存する揮発性溶媒を乾燥除去する工程」 (甲3b)「【0019】 本発明における工程2の沸点が200℃以下の揮発性溶媒は、常水、精製水、エタノール、炭化水素油、シリコーン油等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して用いることができる。好ましくは、防爆対策、安全性及び環境問題などの配慮から常水、精製水が用いられる。」 (甲3c)「【0033】 実施例1~4、及び比較例1-1~1-5:パウダーファンデーション ・・・ 【0034】 ・・・ D.Cの化粧料基剤100質量部に対して、成分18の精製水75質量部を添加し、・・・ ・・・ 【0041】 実施例5:固形白粉 【0042】 ・・・ (13)精製水(化粧料基剤100質量部に対して) 100.0 ・・・ 【0044】 実施例6:頬紅 【0045】 ・・・ (16)イソパラフィン系炭化水素溶剤(沸点<200℃) (化粧料基剤100質量部に対して) 20.0 ・・・ 【0047】 実施例7:アイシャドウ 【0048】 ・・・ (16)エタノール(化粧料基剤100質量部に対して) 10.0 (17)精製水(化粧料基剤100質量部に対して) 50.0」 (4)甲4の記載事項 (甲4a)「2-2.湿式充填方法 湿式充填方法は溶剤成分の乾燥に伴って発生する粉体の凝集力を利用して成型する充填方法である。・・・充填に用いられる溶剤成分は沸点が200℃未満の揮発性溶剤で,溶剤の回収のしやすさからエタノール,イソプロピルアルコール,水,揮発性炭化水素などがよく使われている。」(35ページ右欄18~30行) (甲4b)「3-2.油剤の存在状態の違い ・・・ (a)のイソパラフィンを溶剤成分に用いて成型したサンプルは(b)および(c)のサンプルに比べ明らかに凝集体が少なく,粉体が均一に分散していることが理解できる。このため,イソパラフィンを溶剤成分に用いて成型したサンプルを肌に塗布してみると,均一性があり,油感を強く感じる。このような凝集性に差異が生じた原因としては,湿式充填方法に特有な溶剤成分の連続層に覆われる状態が原因になっていると考えられる。」(38ページ左欄9~26行) 2 申立理由(進歩性欠如)について (1)甲1に記載された発明 甲1は、成分(a)疎水化処理粉末、(b)特定の抱水性油剤、(c)多価アルコール、(d)HLB10以下の界面活性剤及び水を含有するスラリー状組成物を容器に充填する工程(1)と、前記工程(1)に次いで行われる前記スラリー状組成物から水を除去する工程(2)を有する固形粉末化粧料の製造方法に関する技術的事項を開示するものであり(甲1a)、その具体例を示した実施例8のアイシャドウ及びその製法として(甲1d)、甲1には、次の「甲1発明」が記載されていると認める。 甲1発明: 「下記の(製法)による、次の成分からなるアイシャドウの製造方法。 (質量%) (1)メチルポリシロキサン2.0%処理タルク 40.0 (2)メチルポリシロキサン2.0%処理マイカ 残量 (3)メチルポリシロキサン2.0%処理ベンガラ 0.8 (4)メチルポリシロキサン2.0%処理赤色226 0.2 (5)メチルポリシロキサン2.0%処理黄酸化鉄 3.0 (6)メチルポリシロキサン2.0%処理黒酸化鉄 4.0 (7)メチルポリシロキサン2.0%処理ベンガラ被覆雲母チタン 20.0 (8)メチルポリシロキサン2.0%処理雲母チタン 8.0 (9)球状シリカ 5.0 (10)ダイマージリノール酸水添ヒマシ油 1.0 (11)ジプロピレングリコール 2.0 (12)ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 0.5 (13)ミネラルオイル 2.0 (14)精製水 150質量部 (製法) A.油剤成分(10)~(13)を75℃に加熱溶解し、均一に分散する。 B.粉末成分(1)~(9)をヘンシェルミキサーで均一に分散する。 C.Bをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基剤を得る。 D.Cの化粧料基剤100質量部に対して成分(14)の精製水150質量部を添加し、均一混合してスラリー状とする。 E.底面に充填孔を有する樹脂皿の開口部を吸水シートを介在して多孔質吸引ヘッドで閉ざし、前記充填孔よりバックインジェクションマシンを用いて加圧充填して成型する。 F.Eを70℃の恒温槽に一晩放置し、精製水を完全に除去して、アイシャドウを得る。」 (2)本件発明1について ア 対比 (ア)甲1発明の成分(1)~(9)について 甲1発明の成分(1)~(8)は、甲1における成分(a)の疎水化処理粉末であり、甲1発明の成分(9)は、球状粉体であることは自明である。 そして、本件発明1の「粉体成分」及び「板状粉体(B)」について、本件特許明細書には、次のように記載されている。 「【0041】 (粉体成分) 粉体成分としては、通常、化粧料に用いられる粉体であれば、特に限定なく用いることができ、例えば、体質粉体、白色顔料、着色顔料等が挙げられる。粉体の形状についても特に限定されず、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造を有していてもよい。 ・・・ 【0044】 これらの粉体成分は、発色、密着性の観点から、疎水性処理粉体が好ましい。疎水性処理としては、高級脂肪酸、金属石鹸、油脂、ロウ、シリコーン化合物、フッ素化合物、界面活性剤、デキストリン脂肪酸エステルが挙げられる。 ・・・ 【0047】 板状粉体としては、例えば、タルク、マイカ、合成マイカ、セリサイト、無水ケイ酸、カオリン、炭酸カルシウム、アルミナ、ガラスを用いることができる。板状粉体は、被覆処理されたものであってもよい。 【0048】 本実施形態の化粧料基材は、固形粉末化粧料の彩度や発色を良好にする観点から、金属酸化物で被覆された板状粉体を含むことができる。この場合、金属酸化物被覆による特性(例えば、パール感など)を固形粉末化粧料に付与することができる。金属酸化物で被覆された板状粉体としては、光輝性粉体、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆タルク、酸化亜鉛被覆雲母、酸化亜鉛被覆タルクなどが挙げられる。・・・」 したがって、本件発明1の「粉体成分」及び「板状粉体(B)」には、疎水性処理粉体など、被覆処理されたものが含まれるから、甲1発明の成分(1)~(9)は、いずれも、本件発明1の「粉体成分」に該当し、そのうちの、成分(1)、(2)、(7)及び(8)は、タルク、マイカ又は雲母チタンであり板状粉体に該当するといえるから、本件発明1の「前記粉体成分が、板状粉体(B)を含み」に該当する。 (イ)甲1発明の成分(10)及び(13)について 甲1発明の成分(10)は、「リソカスタDA-L(高級アルコール工業社)」であり(甲1d)、成分(13)のミネラルオイルは、流動パラフィンと同義である。 そして、本件発明1の「油性成分」及び「エステル油(A)」について、本件特許明細書には、次のように記載されている。 「【0020】 (油性成分) 油性成分としては、通常化粧品に使用されるものを配合することができ、例えば、固形油及び固形油以外の油剤などを用いることができる。・・・ 【0021】 固形油としては、・・・ 【0022】 固形油以外の油剤としては、ペースト状油、液状油を用いることができる。・・・ 【0023】 液状油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の不揮発性の炭化水素油、・・・ ・・・ 【0025】 本実施形態の化粧料基材は、油性成分として、スラリーに配合される揮発性の炭化水素系溶剤に不溶であり、水酸基価が40~85であるエステル油(A)(以下、エステル油(A)ともいう)を含むことができる。・・・ ・・・ 【0029】 エステル油(A)としては、固形粉末化粧料の発色及び使用感、プレス表面における色相、及び耐衝撃性のすべてをより良好にする観点から、水添ヒマシ油(硬化ヒマシ油)に由来する構成単位及び/又はダイマー酸に由来する構成単位を含むエステル油を用いることが好ましい。 ・・・ 【0034】 水添ヒマシ油に由来する構成単位と、ダイマー酸に由来する構成単位とを含むエステル油としては、水添ヒマシ油とダイマー酸のオリゴマーを用いることができる。 【0035】 水添ヒマシ油とダイマー酸のオリゴマーは、市販のダイマージリノール酸水添ヒマシ油を用いることができる。市販品としては、例えば、「リソカスタDA-L」、「リソカスタDA-H」(高級アルコール工業(株)製、商品名)等が挙げられる。」 したがって、甲1発明の成分(10)及び(13)は、本件発明1の「油性成分」に該当する。そして、そのうちの成分(10)は、「リソカスタDA-L(高級アルコール工業社)」であって、上記本件特許明細書の【0035】の記載からみて、「炭化水素系溶剤に不溶な、水酸基価が30~85であるエステル油(A)」である「ダイマージリノール酸水添ヒマシ油」であると解される。 よって、甲1発明の成分(10)及び(13)は、本件発明1の「油性成分」であって、「前記油性成分が、炭化水素系溶剤に不溶な、水酸基価が40~85であるエステル油(A)を含み、前記エステル油(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(水添ヒマシ油/セバシン酸)コポリマー、及びダイマージリノール酸水添ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも一種のエステル油を含み」に該当する。 (ウ)甲1発明の成分(11)及び(12)について 甲1発明の成分(11)は保湿剤であることが公知であり、成分(12)は界面活性剤であるところ、本件特許明細書の【0056】に「本実施形態の化粧料基材は、上記成分の他に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、キレート剤、消炎剤、界面活性剤などを含有することができる。」と記載されているから、甲1発明がこれらを含むことは、本件発明1との対比においては相違点とはならない。 (エ)甲1発明の成分(14)について 甲1発明の成分(14)の精製水は、成分(1)~(13)と混合してスラリー状とするものであるから、本件発明1の「揮発性の炭化水素系溶剤」と、「溶媒成分」である限りにおいて一致する。 (オ)甲1発明のアイシャドウについて 甲1発明のアイシャドウは、本件特許明細書の【0070】に「固形粉末化粧料は、ファンデーション、フェイスカラー、アイシャドウ、アイブロウ、チーク等のメイクアップ化粧料などとして好適である。」と記載されているから、本件発明1の「固形粉末化粧料」に該当する。 (カ)甲1発明の(製法)について 甲1発明は、工程A~Cで、それぞれ、本件発明1の「油性成分」に該当する成分と「粉体成分」に該当する成分を含有する「化粧料基材」を得ている。 そして、工程Dで、前記「化粧料基材」と、成分(14)の「精製水」を混合してスラリー状とし、工程Eで、加圧充填して成型し、工程Fで、精製水を除去して、「固形粉末化粧料」であるアイシャドウを得ている。加圧充填して成型することは、加圧の際に圧縮されるといえるので、圧縮成形に相当する。 したがって、甲1発明の(製法)によるアイシャドウの製造方法は、本件発明1の「油性成分及び粉体成分を含有する化粧料基材と、揮発性の炭化水素系溶剤と、が含まれるスラリーを調製する工程と、前記スラリーを圧縮成形する工程と、を備え」る「固形粉末化粧料の製造方法」と、「油性成分及び粉体成分を含有する化粧料基材と、溶媒成分と、が含まれるスラリーを調製する工程と、前記スラリーを圧縮成形する工程と、を備え」る「固形粉末化粧料の製造方法」である限りにおいて一致する。 (キ)よって、両発明は、次の一致点及び相違点を有する。 一致点: 「油性成分及び粉体成分を含有する化粧料基材と、溶媒成分と、が含まれるスラリーを調製する工程と、 前記スラリーを圧縮成形する工程と、を備え、 前記油性成分が、前記炭化水素系溶剤に不溶な、水酸基価が40~85であるエステル油(A)を含み、 前記粉体成分が、板状粉体(B)を含み、 前記エステル油(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(水添ヒマシ油/セバシン酸)コポリマー、及びダイマージリノール酸水添ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも一種のエステル油を含む、固形粉末化粧料の製造方法。」である点。 相違点: 「溶媒成分」について、 本件発明1は、「揮発性の炭化水素系溶剤」であって、「前記炭化水素系溶剤が、イソパラフィン及びイソドデカンのうちの少なくとも一種を含む」と特定しているのに対し、 甲1発明は、「精製水」である点。 イ 判断 (ア)甲1は、安全性及び環境に配慮した湿式製法の固形粉末化粧料の製造方法に関し、従来の粉末及び油剤からなる化粧料基剤に揮発性溶媒を加え、混合してスラリー化して、該スラリーを容器に充填した後、上記揮発性溶媒を除去する湿式製法は、揮発性溶媒であるイソパラフィンなどが引火点の低い有機溶剤であることから、防爆対策や作業員の吸入による安全対策が必須であり、環境問題から溶剤の回収も必要となるという状況を踏まえ、安全性及び環境に配慮した湿式製法の固形粉末化粧料の製造方法として、揮発性溶媒としてイソパラフィンなどではなく精製水を用いる方法を提供するものといえる(甲1b)。 そして、製造工程において使用する揮発性溶媒として、精製水を用いることで、溶媒の除去に特別な装置を用いる必要がないことや、固形粉末化粧料の成形品における表層と下層の使用感が異ならず、ひび割れや収縮を起こさないという効果を奏することが記載されていることに加え、水に加えて揮発性溶媒として低沸点有機溶剤を用いることは、安全性及び環境の問題の配慮から好ましくないことも記載されている(甲1c)。 そうすると、甲1発明について、精製水をイソパラフィン及びイソドデカンのうちの少なくとも一種を含む揮発性の炭化水素系溶剤にかえる動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 よって、上記相違点は、当業者が容易になし得たものではない。 (イ)甲2には、甲1発明と同様な湿式製法による固形粉末化粧料の製造方法において(甲2a)、耐衝撃性にも優れた固形粉末化粧料の開発が望まれていたこと(甲2b)、揮発性溶剤として、軽質流動イソパラフィン及び/又はイソドデカンを用いることで、得られる固形粉末化粧料に十分な耐衝撃性を与えることができることが記載され(甲2c)、アイシャドウの実施例で揮発性溶剤として軽質流動イソパラフィンを用いたことが記載されている(甲2d)。 甲3には、甲1発明と同様な湿式製法による固形粉末化粧料の製造方法において(甲3a)、揮発性溶媒として、常水、精製水とともに、炭化水素油が挙げられているが、好ましくは、防爆対策、安全性及び環境問題などの配慮から常水、精製水が用いられると記載され(甲3b)、実施例の多くは、精製水が用いられ、アイシャドウの実施例では、エタノールと精製水の混合溶媒が用いられている(甲3c)。 甲4には、甲1発明と同様な湿式製法には、揮発性溶剤として、水や揮発性炭化水素がよく使われていることや(甲4a)、イソパラフィンを用いると、均一性があり油感を強く感じることが記載されている(甲4b)。 しかしながら、甲2~4の上記記載を検討しても、湿式製法において、溶剤成分として、水とイソパラフィンやイソドデカンは、いずれもよく使用されているものであることが理解できるが、甲3には、水がより好ましいことが記載されているから、甲1発明において、精製水をイソパラフィン及びイソドデカンのうちの少なくとも一種を含む揮発性の炭化水素系溶剤にかえることが動機付けられるとはいえない。 また、甲1発明の精製水を用いて得られたアイシャドウは、既に官能性に優れ、かつ良好な耐衝撃性を有することが示されているから(甲1d)、耐衝撃性などを考慮しても、上記判断にかわりはない。 (ウ)そして、本件発明1は、揮発性の炭化水素系溶剤が、エステル油(A)と非相溶の関係にあるため、溶媒の粘度上昇に起因する溶媒の吸引不足及び圧縮成形不良を防止できること、エステル油(A)が溶媒の吸引時においても化粧料中に残存しやすく油性成分を高配合せずとも粉末同士の接合を充足させることができ、その結果、耐衝撃性を高めること、水酸基価が特定の範囲にあるエステル油(A)によって、顔料が溶剤に分散することが抑制され、プレス時における色抜けが低減されたことが説明され(【0050】)、実施例において、「耐衝撃性」、「色差」、「彩度(透明性)又は発色の良さ」及び「使用感(のびの良さ、フィット感)」に優れたことが確認されているとおり、甲1及び甲2~4からは、予測できない顕著な効果を奏するものである。 ウ 小括 よって、本件発明1は、甲1及び甲2~4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、それぞれ本件発明1を引用して、化粧料基材における成分やその含有量についてさらに限定するものである。 そうすると、本件発明1のすべての発明特定事項を含む本件発明2~4についても、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1及び甲2~4に記載された発明に基いて容易になし得たものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由(進歩性欠如)は理由がない。 第5 むすび したがって、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700460

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決8件(川原 園生、株式会社トキワ)
  • 2025-701052異議申立 / 2026-02-16 / 維持水中油型乳化化粧料
    同じ当事者: 株式会社トキワ
  • 2024-700830異議申立 / 2024-12-23 / 維持水系液状化粧料
    同じ当事者: 株式会社トキワ
  • 2021-900375異議申立 / 2022-05-10 / 維持ナンデモゴザレ
    同じ当事者: 株式会社トキワ
  • 2018-700875異議申立 / 2020-02-19 / 訂正認容濃縮治療用リン脂質組成物
    同じ当事者: 川原 園生
  • 2018-700479異議申立 / 2019-05-23 / 訂正認容リキッドインキ組成物
    同じ当事者: 川原 園生
同じ論点・分野の審決(審決分類)4,292件(121・A61K)
  • 2026-700269異議申立 / 2026-07-03 / 維持水型又は水中油型化粧料
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2024-701182異議申立 / 2026-06-19 / 訂正認容酸化染毛剤組成物
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2025-700392異議申立 / 2026-06-12 / 訂正認容エアゾール型の染毛、脱色・脱染のための酸化剤含有組成物
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2026-700210異議申立 / 2026-06-09 / 維持化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2024-700655異議申立 / 2026-05-20 / 訂正認容スガマデクス含有の液体製剤
    共通の審決分類: 121・A61K

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存