特許異議申立
2023-700219
静電チャック
- 審判番号
- 2023-700219
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-195093
- 登録番号
- 7133764
- 請求日
- 2023年02月27日
- 審決日
- 2024年04月26日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】日向寺 雅彦
- 【異議申立人】清水 朋子
- 【異議申立人】鈴木 啓子
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.536-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第44条第1項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7133764号発明「静電チャック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7133764号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7133764号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年3月23日(優先権主張 平成31年3月28日)に出願された特許出願(特願2020-51446号、以下、「原出願」という。)の一部を、令和2年11月25日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2020-195093号)としたものであって、令和4年9月1日にその特許権の設定登録がされ、令和4年9月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年 2月27日 : 特許異議申立人清水朋子による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 5年 3月 9日 : 特許異議申立人鈴木啓子による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 5年 6月16日付け: 取消理由通知書
令和 5年 8月18日 : 特許権者による意見書(以下、「意見書A」という。)の提出
令和 5年11月29日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和 6年 2月 1日 : 特許権者による意見書(以下、「意見書B」という。)の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
セラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持する金属製のベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板と前記ベースプレートとの間に設けられ、樹脂材料を含む接合層と、
を備え、
前記樹脂材料は、シリコーンを含み、
前記シリコーンは、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有し、
25℃における前記接合層の伸び率α2に対する-60℃における前記接合層の伸び率α1の比α1/α2は、0.80以上であり、
前記伸び率α1は、120%以上であり、
前記伸び率α2は、150%以上であることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記シリコーンは、シロキサン骨格にフェニル基が結合した分子構造を有する、請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
-60℃における前記接合層の弾性率γ1は、0.1MPa以上10MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
25℃における前記接合層の弾性率γ2に対する-60℃における前記接合層の弾性率γ1の比γ1/γ2は、0.6以上30以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化イットリウムのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項5記載の静電チャック。」
第3 取消理由の概要
請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和5年11月29日付けの取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 (実施可能要件)本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明には、本件発明1~6について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
よって、請求項1~6に係る特許は、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)本件発明1について
ア 判断手法
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明及び本件特許に係る願書に添付した図面(以下、単に「図面」ともいう。)の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、その物を作れるように、かつ、使用できるように、具体的に記載されていることが必要であると解される。
イ 本件発明1は、「樹脂材料を含む接合層」を備え、「前記樹脂材料は、シリコーンを含み、前記シリコーンは、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」するものであるところ、その他の組成等については特定されておらず、「25℃における前記接合層の伸び率α2に対する-60℃における前記接合層の伸び率α1の比α1/α2は、0.80以上であり」、「前記伸び率α1は、120%以上であり」、「前記伸び率α2は、150%以上である」という3つの特性(パラメータ)により特定されている。
ウ 本件発明1が備える「接合層」の組成について、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ともいう。)には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【0035】
接合層60は、樹脂材料を含む。実施形態において、接合層60は、極低温下において柔軟性を保つことが可能に構成される。例えば、接合層60は、シリコーン系、アクリル系、変性シリコーン系、あるいはエポキシ系の高分子材料であって炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、ケイ素(Si)、及び酸素(O)の少なくとも1つを主成分とする高分子材料を含む。
ここで、本願明細書において、「極低温」とは、-60℃以下の低温環境をいう。具体的には、-60℃~-120℃をいう。
【0036】
接合層60は、シリコーンを含むことが好ましい。接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むことで、極低温の環境下において、接合層60の柔軟性が維持されやすい。これにより、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れをより確実に抑制できる。
【0037】
接合層60において、シリコーンとして、シロキサン骨格に種々の官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いることができる。より具体的には、シロキサン骨格に結合した官能基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。接合層60にこのような官能基を含むシリコーンを用いることで、極低温の環境下において、接合層60の耐寒性、強度、伸び率等を高めることができる。」
エ 上記【0035】~【0037】には、「接合層」における樹脂材料については、シリコーンを含むことが好ましいこと、接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むことで、極低温の環境下において、接合層60の柔軟性が維持されやすいこと、さらに、シリコーンとして、シロキサン骨格に種々の官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いることができること、より具体的には、シロキサン骨格に結合した官能基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つを含むことが好ましいこと、接合層60にこのような官能基を含むシリコーンを用いることで、極低温の環境下において、接合層60の耐寒性、強度、伸び率等を高めることができることが記載されている。
そうすると、発明の詳細な説明には、接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むことで、極低温の環境下において、接合層60の柔軟性が維持されやすいこと、また、接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いることで、極低温の環境下において、接合層60の耐寒性、強度、伸び率等を高めることができることは、一応記載されているといえる。
しかし、上記【0035】~【0037】には、「接合層」としての「シリコーン」について、その具体的な組成、製造方法及び製造条件、分子量、シロキサン骨格に結合する官能基の含有量は全く記載されていない。
また、上記【0035】~【0037】には、「接合層」としての「シリコーン」のシロキサン骨格に結合する官能基の種類が、「-60℃における前記接合層の伸び率α1」(以下、「伸び率α1」ともいう。)、「25℃における前記接合層の伸び率α2」(以下、「伸び率α2」ともいう。)、及び「25℃における前記接合層の伸び率α2に対する-60℃における前記接合層の伸び率α1の比α1/α2」(以下、「伸び率の比α1/α2」ともいう。)にどのように寄与するのかについては何ら記載も示唆もされていない。
さらに、上記【0035】~【0037】には、「接合層」としての「シリコーン」の組成、製造方法及び製造条件、分子量、シロキサン骨格に結合する官能基の含有量が、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」にどのように寄与するかについても何ら記載も示唆もされていない。
オ 次に、本件発明1の「接合層」の「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」について、発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。
「【0086】
図5及び図6は、実施形態に係る静電チャックの接合層の一例の物性を表すグラフである。
図6は、図5のA部を拡大したグラフである。
図7は、実施形態に係る静電チャックの接合層の一例の物性を表す表である。
実施例1は、実施形態に係る静電チャック110の一例である。参考例1は、実施例1とは物性が異なる接合層60を有する静電チャックの一例である。
【0087】
図2(a)~図2(c)及び図3に示した測定・算出方法で測定・算出した実施例1及び参考例1の接合層60の伸び率α、接合強度β、及び弾性率γを図5~図7に示す。
【0088】
また、実施例1及び参考例1に対して、剥離/割れ試験を行った結果を図7に示す。剥離/割れ試験では、セラミック誘電体基板11とベースプレート50とを接合層60で接合したサンプルを作製し、サンプルを-60℃に少なくとも3000時間放置した後、室温に戻し、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離の有無、及び、セラミック誘電体基板11の割れの有無を評価した。接合層60の剥離の有無は、接合層60の断面を顕微鏡で観察しクラックなどの有無を評価する直接観察と、超音波を当てて接合層60の内部のクラックなどの有無を評価する超音波探傷と、で行った。直接観察及び超音波探傷の少なくともいずれかでクラックが見られたものを剥離「あり」、直接観察及び超音波探傷の両方でクラックが見られなかったものを剥離「なし」と評価した。また、セラミック誘電体基板11の割れの有無は、セラミック誘電体基板11を目視で観察し、割れが見られたものを割れ「あり」、割れが見られなかったものを割れ「なし」と評価した。
【0089】
図5~図7に表したように、参考例1において、伸び率α1は107%、伸び率α2は195%、伸び率αの比α1/α2は0.5である。参考例1においては、接合層60がこのような伸び率α(伸び率比)を有するため、室温(25℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していないものの、極低温(-60℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生している。
【0090】
これに対し、実施例1において、伸び率α1は225%、伸び率α2は190%、伸び率αの比α1/α2は1.2である。実施例1においては、接合層60がこのような伸び率α(伸び率比)を有するため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していない。
【0091】
このように、接合層60の伸び率α1を120%以上、または、伸び率αの比α1/α2を0.60以上にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができる。
【0092】
また、図5~図7に表したように、参考例1において、接合強度β1は29.8MPa、接合強度β2は0.56MPa、接合強度βの比β1/β2は53.2である。参考例1においては、接合層60がこのような接合強度β(接合強度比)を有するため、室温(25℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していないものの、極低温(-60℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生している。
【0093】
これに対し、実施例1において、接合強度β1は1.42MPa、接合強度β2は0.83MPa、接合強度βの比β1/β2は1.7である。実施例1においては、接合層60がこのような接合強度β(接合強度比)を有するため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していない。
【0094】
このように、接合層60の接合強度β1を0.4MPa以上10MPa以下にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができる。
【0095】
また、図5~図7に表したように、参考例1において、弾性率γ1は28MPa、弾性率γ2は0.29MPa、弾性率γの比γ1/γ2は96.6である。参考例1においては、接合層60がこのような弾性率γ(弾性率比)を有するため、室温(25℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していないものの、極低温(-60℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生している。
【0096】
これに対し、実施例1において、弾性率γ1は0.63MPa、弾性率γ2は0.44MPa、弾性率γの比γ1/γ2は1.4である。実施例1においては、接合層60がこのような弾性率γ(弾性率比)を有するため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していない。
【0097】
このように、接合層60の弾性率γ1を0.1MPa以上10MPa以下、または、弾性率γの比γ1/γ2を0.6以上30以下にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができる。
【0098】
図8は、実施形態に係る静電チャックの接合層の一例の物性を表す表である。
実施例2~14は、実施形態に係る静電チャック110の一例である。
実施例1及び参考例1と同様にして測定・算出した実施例2~14の接合層60の伸び率α、接合強度β、及び弾性率γを図8に示す。また、実施例1及び参考例1と同様にして剥離/割れ試験を行った結果を図8に示す。
【0099】
図8に表したように、実施例2~14において、伸び率α1は175%以上247%以下、伸び率α2は150%以上280%以下、伸び率αの比α1/α2は0.80以上1.17以下である。実施例2~14においては、接合層60がこのような伸び率α(伸び率比)を有するため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していない。
【0100】
このように、接合層60の伸び率α1を120%以上、または、伸び率αの比α1/α2を0.60以上にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができる。
【0101】
図8に表したように、実施例2~14において、接合強度β1は0.70MPa以上1.90MPa以下、接合強度β2は0.51MPa以上1.60MPa以下、接合強度βの比β1/β2は0.8以上1.9以下である。実施例2~14においては、接合層60がこのような接合強度β(接合強度比)を有するため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していない。
【0102】
このように、接合層60の接合強度β1を0.4MPa以上10MPa以下にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができる。
【0103】
図8に表したように、実施例2~14において、弾性率γ1は0.34MPa以上1.02MPa以下、弾性率γ2は0.19MPa以上0.81MPa以下、弾性率γの比γ1/γ2は0.9以上2.1以下である。実施例2~14においては、接合層60がこのような弾性率γ(弾性率比)を有するため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していない。
【0104】
このように、接合層60の弾性率γ1を0.1MPa以上10MPa以下、または、弾性率γの比γ1/γ2を0.6以上30以下にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができる。」
「【図5】
[図:0001412280000001.jpg]
【図6】
[図:0001412280000002.jpg]
【図7】
[図:0001412280000003.jpg]
【図8】
[図:0001412280000004.jpg]
」
カ 上記【0086】~【0104】及び【図5】~【図8】には、参考例1では、伸び率α1は107%、伸び率α2は195%、伸び率αの比α1/α2は0.5であるため、室温(25℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していないものの、極低温(-60℃)の環境下では、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生している(【0089】、【図7】)のに対し、実施例1では、伸び率α1は225%、伸び率α2は190%、伸び率αの比α1/α2は1.2であるため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していないこと(【0090】、【図7】)、実施例2~14では、伸び率α1は175%以上247%以下、伸び率α2は150%以上280%以下、伸び率αの比α1/α2は0.80以上1.17以下であるため、室温(25℃)の環境下及び極低温(-60℃)の環境下のいずれでも、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れが発生していないこと(【0099】、【図8】)、接合層60の伸び率α1を120%以上、または、伸び率αの比α1/α2を0.60以上にすることで、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制することができること(【0100】、【図8】)が記載されている。
しかし、上記【0086】~【0104】及び【図5】~【図8】には、参考例1及び実施例1~14の「接合層」の具体的な組成、「接合層」の製造方法及び製造条件は全く記載されていないし、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」をどのようにして調整したのかについても全く記載されていない。
また、上記【0086】~【0104】及び【図5】~【図8】には、上記のとおり、「接合層」の具体的な組成が記載されていないのであるから、参考例1及び実施例1~14の「接合層」における樹脂材料が、シリコーンを含むものであること、当該シリコーンとして、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有するものであることも記載されていない。
そうすると、上記エにおいて、発明の詳細な説明(上記【0035】~【0037】)に一応記載されているとした、「接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むことで、極低温の環境下において、接合層60の柔軟性が維持されやすいこと」、及び、「接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いることで、極低温の環境下において、接合層60の耐寒性、強度、伸び率等を高めることができること」は、いずれも上記実施例1~14において裏付けられているとはいえない。
また、「接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むこと」、又は、「接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いること」で、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」である「接合層」が得られることは、いずれも上記実施例1~14において裏付けられているとはいえない。
キ 以上によれば、発明の詳細な説明及び図面には、「接合層」における好ましい樹脂材料としての「シリコーン」、及び「接合層」が「シリコーン」である場合のシロキサン骨格に結合する好ましい官能基の種類は例示されているものの、その具体的な組成、製造方法及び製造条件、分子量、シロキサン骨格に結合する官能基の含有量は全く記載されておらず、それらが、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」にどのように寄与するのかについて、また、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」をどのように調整するかについては何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、発明の詳細な説明及び図面には、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」する「シリコーンを含み」、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」である「接合層」を製造できるように、具体的に記載されているとはいえない。
そして、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」する「シリコーンを含み」、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」である「接合層」を製造する方法が、本件特許に係る原出願の出願時において、技術常識であったとはいえない。
ク 意見書A・意見書Bにおける特許権者の主張
(ア)意見書Aにおける特許権者の主張
a 「乙1号証(実験成績証明書)に記載したように、追試験において、トーレシリコーン社製の「SE955U」の-60℃における伸び率を測定したところ、「SE955U」の-60℃における伸び率は「356%」でした。」(意見書A3ページ15~18行)
「流動点を調整して-60℃における伸び率α1を所定値とすることができれば、流動点以上である25℃の伸び率α2は所定の範囲に定まることになります。」(意見書A4ページ下から12行目~10行目。下線は合議体が付与した。以下、同じ。)
「乙1号証に示した通り、伸び率α1が356%のシリコーンが本件特許の出願日より前に実在していました。したがって、伸び率の比α1/α2が0.8以上であるシリコーン接着剤が入手可能であったといえます。」(意見書A4ページ下から9行目~7行目)
b 「また、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有するシリコーンを用いて、本件特許の請求項に記載した物性値を満たす接合層を得られることは、乙6~乙10号証などに記載されているように、本件特許の出願当時の技術常識です。
・・・
このように、フェニル基の含有量を変化させることでシリコーンの低温特性を適宜調節することは、本件特許の出願当時の技術常識であり、当業者であれば、技術常識に基づいてカタログなどから所望の特性を有するシリコーンを適宜選択することができます。つまり、当業者であれば、本件特許の明細書の記載と、本件特許の出願当時の技術常識と、に基づいて、例えばシリコーンに含まれるフェニル基の含有量を変化させることで、本件特許の請求項に記載した物性値を満たす接合層を得ることができます。
フェニル基に加え、メチル基についても、以下が知られています。
・・・
低温下のシリコーンに柔軟性を与え、耐寒性を高めるための官能基として、上述のように・・・分子量がおよそその間であるエチル基、プロピル基、ブチル基、またはヘキシル基についても、同様に低温特性が改善されえることが本件特許の出願当時の技術常識です。これは、乙9号証、乙10号証からも明らかです。
・・・
つまり、材料に特定のレジン構造を含むオルガノポリシロキサンが使用されていれば、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、・・・分子構造を有するシリコーンにおいても低温特性が改善されることは,本件特許の出願当時の技術常識です。
以上説明したように、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有するシリコーンを用いて、低温特性に優れた(すなわち、本件特許の請求項に記載した物性値を満たす)接合層を得られることは、本件特許の出願当時の技術常識であり」(意見書A4ページ下から2行目~7ページ下から13行目)
(イ)意見書Bにおける特許権者の主張
「取消理由通知書では、本件特許の請求項1にかかる発明について、以下のようなご判事を賜りました。
「b(a)しかしながら、上記のトーレシリコーン社製の「SE955U」は、乙第2号証の6ページ左下欄5~14行の記載によれば、本件特許に係る原出願の出願時において市販されていたものであり、かつ、シリコーンゴムであるところ、上記の市販のシリコーンゴム「SE955U」は具体的な成分が不明であるから、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層(以下、「当該接合層」という。)であるとはいえない。
したがって、乙第1号証は、「当該接合層」における「伸び率α1」が「356%」であることを示すものではない。
(b)そうすると、「乙1号証に示した通り、伸び率α1が356%のシリコーンが本件特許の出願日より前に実在して」おり、かつ、仮に、「流動点を調整して-60℃における伸び率α1を所定値とすることができれば、流動点以上である25℃における伸び率α2は所定の範囲に定まることになる」としても、本件特許に係る原出願の出願時において、「伸び率の比α1/α2」が「0.8以上」である「当該接合層」を入手可能であったとはいえない。」
乙13号証(特開平10-213971号公報)には、「SE955U」が「メチルフェニルシリコーンエラストマー」であることが記載されています。つまり、「SE955U」は、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料に相当します。すなわち、「SE955U」を含む接合層は、「当該接合層」に相当します。
そして、乙1号証には、「SE955U」の「伸び率α1」が「356%」であることが記載されています。
このことから、乙1号証は、「当該接合層」の「伸び率α1」が「356%」であることを示すものであるといえます。
また、乙14号証(実験成績証明書)に記載したように、追試験において、トーレシリコーン社製の「SE955U」の25℃における伸び率α2、及び25℃における伸び率α2に対する-60℃における伸び率α1の比α1/α2を測定したところ、「SE955U」の伸び率α2は「403%」であり、伸び率の比α1/α2は「0.88」でした。
このことから、本件特許に係る原出願の出願時において、「伸び率α1」が「120%以上」であり、「伸び率α2」が「150%以上」であり、「比α1/α2」が「0.80以上」である接合層を入手可能であったといえます。
したがって、本件特許の明細書の記載と、乙1~乙14号証などの本件特許に係る原出願の出願時の技術常識と、に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をすることなく、本件特許の請求項1に記載した物性値を満たす接合層を備えた静電チャックを製造することができると思料いたします。」(意見書B2ページ24行~3ページ16行)
ケ 意見書A・意見書Bにおける特許権者の主張について
(ア)a 乙第14号証には、乙第13号証に記載されている「SE955U」の「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であることが示されている。
そして、乙第13号証の【0016】の「以上の条件に該当するシリコーン系ゴムの例としては、・・・、メチルフェニルシリコーンエラストマー(たとえば、東レシリコーン社製商品名;SE955U)」との記載によれば、東レシリコーン社製の「SE955U」は、本件特許に係る原出願の出願時において市販されていたものであり、かつ、メチルフェニルシリコーンエラストマーであるから、乙第14号証には、メチルフェニルシリコーンエラストマー、すなわち、「シロキサン骨格にメチル基及びフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンについて、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であることが記載されているといえるものの、それ以外の「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層の「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であることが記載されているとはいえない。
b そうすると、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層の、全ての分子構造を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層(以下、「全ての分子構造を有する当該接合層」ともいう。)について、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であるとはいえない。
c さらに、「全ての分子構造を有する当該接合層」の「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であることが、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であるということもできない。
d したがって、本件特許に係る原出願の出願時において、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」である「全ての分子構造を有する当該接合層」を入手可能であったとはいえない。
e また、上記aを参酌すると、乙第14号証等の記載から、本件特許に係る原出願の出願時において、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」である「シロキサン骨格にメチル基及びフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンは、入手可能であったといえるものの、乙第14号証には、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」の全ての範囲を満たす「全ての分子構造を有する当該接合層」については記載されていない。
そして、図面の【図7】、【図8】に記載されている実施例1~14の測定結果から、シリコーンにおいて、「伸び率の比α1/α2」と「伸び率α1」と「伸び率α2」との間に特定の相関関係があるとはいえない。
また、シリコーンにおいて、「伸び率の比α1/α2」と「伸び率α1」と「伸び率α2」との間に特定の相関関係があることは、乙第1号証~乙第14号証には記載も示唆もされていないし、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、本件特許に係る原出願の出願時において、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」の全ての範囲を満たす「全ての分子構造を有する当該接合層」を有するシリコーンは、入手可能であったとはいえない。
(イ)以上によれば、本件特許に係る原出願の出願時において、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」である「シロキサン骨格にメチル基及びフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンが入手可能であり、かつ、上記ク(ア)a及びbにおいて特許権者が主張するように、「流動点を調整して-60℃における伸び率α1を所定値とすることができれば、流動点以上である25℃における伸び率α2は所定の範囲に定まることになる」ものであり、さらに、「フェニル基の含有量を変化させることでシリコーンの低温特性を適宜調節すること」、及び、「材料に特定のレジン構造を含むオルガノポリシロキサンが使用されていれば、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、・・・分子構造を有するシリコーンにおいても低温特性が改善されること」が、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であったとしても、「全ての分子構造を有する当該接合層」であって、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」の全ての範囲を満たす接合層を得られることが、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であるとはいえない。
(ウ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をすることなく、「全ての分子構造を有する当該接合層」であって、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」の全ての範囲を満たす接合層を備えた静電チャックを製造できるとはいえない。
よって、特許権者の上記主張を採用することはできない。
コ 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1について、当業者が明細書及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、その物を作れるように、かつ、使用できるように、具体的に記載されているとはいえない。
(2)本件発明2について
請求項2は、請求項1の記載を引用するとともに、「前記シリコーンは、シロキサン骨格にフェニル基が結合した分子構造を有する」との構成を更に限定するものであるから、本件発明2の「接合層」は、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有し、かつ、「シロキサン骨格にフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層である。
一方、上記(1)ケ(ア)aを参酌すると、乙第14号証には、「シロキサン骨格にメチル基及びフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンについて、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であることが記載されているといえるものの、それ以外の「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有し、かつ、「シロキサン骨格にフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層の「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」であることが記載されているとはいえない。
また、「前記シリコーンは、シロキサン骨格にフェニル基が結合した分子構造を有する」との構成を更に限定することによって、「接合層」の「伸び率の比α1/α2」を「0.80以上」、「伸び率α1」を「120%以上」、「伸び率α2」を「150%以上」に調整することができるとはいえないし、また、そのような技術常識もない。
そうすると、上記(1)で検討したのと同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明2について、当業者が明細書及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、その物を作れるように、かつ、使用できるように、具体的に記載されているとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 請求項3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するとともに、「-60℃における前記接合層の弾性率γ1は、0.1MPa以上10MPa以下である」との構成を更に限定するものである。
イ 本件発明3の「接合層」の「弾性率γ1」について、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0066】
実施形態において、-60℃における接合層60の弾性率γ1は、例えば、0.1MPa以上10MPa以下、好ましくは0.1MPa以上3MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上1MPa以下である。また、弾性率γ1は、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上である。
【0067】
弾性率γ1が0.1MPa以上であれば、極低温の環境下において、接合層60が十分な復元性を有するため、セラミック誘電体基板11とベースプレート50との間に応力が生じた際にも、セラミック誘電体基板11の反りを抑制しやすい。これにより、極低温の環境下における、対象物Wの面内温度均一性の悪化を抑制できる。
【0068】
弾性率γ1が10MPa以下であれば、極低温の環境下において、接合層60が硬くなり過ぎることを抑制できる。これにより、極低温の環境下において、セラミック誘電体基板11にかかる応力を抑制し、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制できる。」
ウ しかしながら、上記(1)カで検討したように、発明の詳細な説明の【0086】~【0104】及び図面の【図5】~【図8】には、参考例1及び実施例1~14の「接合層」の具体的な組成、「接合層」の製造方法及び製造条件は全く記載されていないし、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」をどのようにして調整したのかについても全く記載されていないものであり、また、更に、同【0086】~【0104】及び同【図7】、【図8】には、参考例1及び実施例1~14の「接合層」の「弾性率γ1」をどのようにして調整したのかについても全く記載されていない。
そして、発明の詳細な説明の【0036】の「接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むことで、極低温の環境下において、接合層60の柔軟性が維持されやすい。これにより、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れをより確実に抑制できる。」との記載、及び同【0037】の「接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いることで、極低温の環境下において、接合層60の耐寒性、強度、伸び率等を高めることができる。」との記載は、いずれも上記実施例1~14において裏付けられているとはいえない。
また、「接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むこと」又は、「接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いること」で、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」であり、更に、「-60℃における」「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」である「接合層」が得られることは、いずれも上記実施例1~14において裏付けられているとはいえない。
エ 以上によれば、発明の詳細な説明及び図面には、「接合層」における好ましい樹脂材料としての「シリコーン」、及び「接合層」が「シリコーン」である場合のシロキサン骨格に結合する好ましい官能基の種類は例示されているものの、その具体的な組成、製造方法及び製造条件、分子量、シロキサン骨格に結合する官能基の含有量は全く記載されておらず、それらが、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」並びに「弾性率γ1」にどのように寄与するのかについて、また、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」並びに「弾性率γ1」をどのように調整するかについては何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、発明の詳細な説明及び図面には、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」する「シリコーンを含み」、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」であり、更に、「-60℃における」「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」である「接合層」を製造できるように、具体的に記載されているとはいえない。
そして、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」する「シリコーンを含み」、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」であり、更に、「-60℃における」「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」である「接合層」を製造する方法が、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であるとはいえない。
オ 意見書A・意見書Bにおける特許権者の主張
(ア)意見書Aにおける特許権者の主張
「「請求項1について」で述べた通り、本件特許の出願日以前に弾性率γ1が0.1MPaのシリコーンが実在していたため、当業者であれば請求項3に係る静電チャックを製造することができます。」(意見書A8ページ17~19行)
(イ)意見書Bにおける特許権者の主張
「そして、乙1号証には、「SE955U」の「弾性率γ1」が「0.1MPa」であることが記載されています。
このことから、乙1号証は、「当該接合層」の「弾性率γ1」が「0.1MPa」であることを示すものであるといえます。
したがって、本件特許の明細書の記載と、乙1~乙14号証などの本件特許に係る原出願の出願時の技術常識と、に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をすることなく、本件特許の請求項3に記載した物性値を満たす接合層を備えた静電チャックを製造することができると思料いたします。」(意見書B3ページ下から6行目~4ページ2行目)
カ 意見書A・意見書Bにおける特許権者の主張について
(ア)上記(1)ケ(ア)aを参酌すると、乙第14号証には、「シロキサン骨格にメチル基及びフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンについて、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」、「弾性率γ1」が「0.1MPa」であることが記載されているといえるものの、それ以外の「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層の「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」、「弾性率γ1」が「0.1MPa」であることが記載されているとはいえない。
(イ)そうすると、上記(1)ケで検討したのと同様に、「全ての分子構造を有する当該接合層」であって、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」、「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」の全ての範囲を満たす接合層を得られることが、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であるとはいえない。
(ウ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をすることなく、「全ての分子構造を有する当該接合層」であって、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」、「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」の全ての範囲を満たす接合層を備えた静電チャックを製造できるとはいえない。
よって、特許権者の上記主張を採用することはできない。
キ 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明3について、当業者が明細書及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、その物を作れるように、かつ、使用できるように、具体的に記載されているとはいえない。
(4)本件発明4について
ア 請求項4は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するとともに、「25℃における前記接合層の弾性率γ2に対する-60℃における前記接合層の弾性率γ1の比γ1/γ2は、0.6以上30以下である」との構成を更に限定するものである。
イ 本件発明4の「接合層」の弾性率γ2に対する弾性率γ1の「比γ1/γ2」(以下、「弾性率の比γ1/γ2」ともいう。)について、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0072】
弾性率γ2に対する弾性率γ1の比γ1/γ2は、例えば、0.6以上30以下、好ましくは0.6以上10以下、より好ましくは0.6以上3以下である。また、比γ1/γ2は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上である。また、比γ1/γ2は、好ましくは2.1以下である。
【0073】
弾性率γの比γ1/γ2が0.6以上であれば、室温でも極低温の環境下でも、接合層60が十分な復元性を維持するため、セラミック誘電体基板11とベースプレート50との間に応力が生じた際にも、セラミック誘電体基板11の反りを抑制しやすい。これにより、室温から極低温の環境下においた際に、対象物Wの面内温度均一性の悪化を抑制できる。
【0074】
弾性率γの比γ1/γ2が30以下であれば、室温でも極低温の環境下でも、接合層60が硬くなり過ぎることを抑制できる。これにより、室温から極低温の環境下においた際に、セラミック誘電体基板11にかかる応力を抑制し、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れを抑制できる。」
ウ しかしながら、上記(1)カで検討したように、発明の詳細な説明の【0086】~【0104】及び図面の【図5】~【図8】には、参考例1及び実施例1~14の「接合層」の具体的な組成、「接合層」の製造方法及び製造条件は全く記載されていないし、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」をどのようにして調整したのかについても全く記載されていないものであり、また、更に、同【0086】~【0104】及び同【図7】、【図8】には、参考例1及び実施例1~14の「接合層」における「弾性率の比γ1/γ2」の分子である「弾性率γ1」をどのようにして調整したのかについても全く記載されていない。
そして、発明の詳細な説明の【0036】の「接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むことで、極低温の環境下において、接合層60の柔軟性が維持されやすい。これにより、極低温の環境下における、セラミック誘電体基板11のベースプレート50からの剥離や、セラミック誘電体基板11の割れをより確実に抑制できる。」との記載、及び同【0037】の「接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いることで、極低温の環境下において、接合層60の耐寒性、強度、伸び率等を高めることができる。」との記載は、いずれも上記実施例1~14において裏付けられているとはいえない。
また、「接合層60が柔軟性に優れたシリコーンを含むこと」又は、「接合層60に、シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つの官能基が結合した分子構造を有するシリコーンを用いること」で、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率α1の比α1/α2」が「0.80以上」であり、更に、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」である「接合層」が得られることは、いずれも上記実施例1~14において裏付けられているとはいえない。
エ 以上によれば、発明の詳細な説明及び図面には、「接合層」における好ましい樹脂材料としての「シリコーン」、及び「接合層」が「シリコーン」である場合のシロキサン骨格に結合する好ましい官能基の種類は例示されているものの、その具体的な組成、製造方法及び製造条件、分子量、シロキサン骨格に結合する官能基の含有量は全く記載されておらず、それらが、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」並びに「弾性率γ1」及び「弾性率の比γ1/γ2」にどのように寄与するのかについて、また、「伸び率α1」、「伸び率α2」及び「伸び率の比α1/α2」並びに「弾性率γ1」及び「弾性率の比γ1/γ2」をどのように調整するかについては何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、発明の詳細な説明及び図面には、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」する「シリコーンを含み」、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」であり、更に、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」である「接合層」を製造できるように、具体的に記載されているとはいえない。
そして、「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造を有」する「シリコーンを含み」、「-60℃における」「伸び率α1」が「120%以上」であり、「25℃における」「伸び率α2」が「150%以上」であり、かつ、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」であり、更に、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」である「接合層」を製造する方法が、本件特許に係る原出願の出願時において、技術常識であるとはいえない。
オ 意見書A・意見書Bにおける特許権者の主張
(ア)意見書Aにおける特許権者の主張
「乙11号証(日本ゴム協会誌第62巻第12号「最近のミラブル型シリコーンゴム」)の図6には、・・・つまり、シリコーンでは、流動点以上の温度において、弾性率の変化が少ないことは、本件出願当時の技術常識といえます。
・・・
また、乙12号証(特開2000-258163号公報)には、シロキサン骨格にフェニル基やメチル基などの官能基が結合したシリコーンの流動点と弾性率との間に特定の相関関係があることが示されています。
・・・
つまり、乙12号証には、シロキサン骨格にフェニル基などの官能基が結合したシリコーンの流動点と弾性率との間に特定の相関関係があり、フェニル基の含有量を調整して流動点を調整することで低温環境における弾性率を調整できることが示されています。
以上述べた通り、乙3号証、乙11号証及び乙12号証には、流動点(ガラス転移点)を境に弾性率が大きく変わること、及び、シリコーンでは流動点以上において弾性率が大きく変化しないことが記載されています。つまり、シリコーンにおいて、弾性率の調整に重要なのは流動点であって、流動点を調整して-60℃における弾性率γ1を所定値とすることができれば、流動点以上である25℃の弾性率γ2は所定の範囲に定まることになります。
乙1号証に記載の通り、弾性率γ1が0.1MPaのシリコーンが本件特許の出願日より前に実在していました。したがって、本件特許出願以前に、弾性率の比γ1/γ2が0.6以上30以下であるシリコーン接着剤が入手可能であったといえます。」(意見書A9ページ1行~10ページ下から10行目)
(イ)意見書Bにおける特許権者の主張
「また、乙14号証(実験成績証明書)に記載したように、追試験において、トーレシリコーン社製の「SE955U」の25℃における弾性率γ2に対する-60℃における弾性率γ1の比γ1/γ2を測定したところ、「SE955U」の弾性率の比γ1/γ2は「3.3」でした。
このことから、本件特許に係る原出願の出願時において、「比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」である接合層を入手可能であったといえます。 したがって、本件特許の明細書の記載と、乙1~乙14号証などの本件特許に係る原出願の出願時の技術常識と、に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をすることなく、本件特許の請求項4に記載した物性値を満たす接合層を備えた静電チャックを製造することができると思料いたします。」(意見書B4ページ下から13行目~4行目)
カ 意見書A・意見書Bにおける特許権者の主張について
(ア)上記(1)ケ(ア)aを参酌すると、乙第14号証には、「シロキサン骨格にメチル基及びフェニル基が結合した分子構造」を有するシリコーンについて、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」、「弾性率γ1」が「0.1MPa」、「弾性率の比γ1/γ2」が「3.3」であることが記載されているといえるものの、それ以外の「シロキサン骨格にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びヘキシル基のうち少なくとも1つが結合した分子構造」を有するシリコーンを含む樹脂材料を含む接合層について、「伸び率の比α1/α2」が「0.88」、「伸び率α1」が「356%」、「伸び率α2」が「403%」、「弾性率γ1」が「0.1MPa」、「弾性率の比γ1/γ2」が「3.3」であることが記載されているとはいえない。
(イ)そうすると、上記(1)ケ及び上記(3)カで検討したのと同様に、「全ての分子構造を有する当該接合層」であって、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」、又は、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」、「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」の全ての範囲を満たす接合層を得られることが、本件特許に係る原出願の出願時の技術常識であるとはいえない。
(ウ)したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をすることなく、「全ての分子構造を有する当該接合層」であって、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」、又は、「伸び率の比α1/α2」が「0.80以上」、「伸び率α1」が「120%以上」、「伸び率α2」が「150%以上」、「弾性率γ1」が「0.1MPa以上10MPa以下」、「弾性率の比γ1/γ2」が「0.6以上30以下」の全ての範囲を満たす接合層を備えた静電チャックを製造できるとはいえない。
よって、特許権者の上記主張を採用することはできない。
キ 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明4について、当業者が明細書及び図面の記載並びに本件特許に係る原出願の出願時の技術常識に基づいて、その物を作れるように、かつ、使用できるように、具体的に記載されているとはいえない。
(5)本件発明5、6について
請求項5は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するとともに、「前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化イットリウムのうち少なくとも1つを含む」との構成を更に限定するものであり、請求項6は、請求項5の記載を引用するものである。
したがって、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明5、6について、当業者が発明の詳細な説明の記載並びに本件特許に係る原出願の出願当時の技術常識に基づいて、その物を作れるように、かつ、使用できるように、具体的に記載されているとはいえない。
(6)まとめ
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~6について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700219