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特許異議申立

2024-700825

ガス回収装置、及びガス回収方法

審判番号
2024-700825
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-083253
登録番号
7442137
請求日
2024年09月02日
審決日
2024年12月24日
公報発行日
2025年02月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社タクマ
  • 【権利者代理人】沖中 仁
  • 【権利者】国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 【権利者代理人】沖中 仁
  • 【異議申立人】▲徳▼田 久子
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.536-Y (B01D) / P1651.537-Y (B01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7442137号発明「ガス回収装置、及びガス回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7442137号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7442137号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年5月11日に出願され、令和6年2月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~7に係る特許に対し、令和6年9月2日に特許異議申立人徳田久子(以下「申立人」という。「徳」は旧字体である。)により特許異議の申立てがなされた。 第2 本件発明 特許第7442137号の請求項1~7の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置であって、 前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔と、 前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入する導入管と、 前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する排出管と、を備え、 前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理塔内での前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われるガス回収装置。 【請求項2】 少なくとも2つの前記ガス処理塔が、前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように並列配置されている請求項1に記載のガス回収装置。 【請求項3】 前記ガス処理塔内を減圧する減圧手段を備える請求項1又は2に記載のガス回収装置。 【請求項4】 前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項1~3の何れか一項に記載のガス回収装置。 【請求項5】 前記液温調節手段は、前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込まれる前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節する請求項4に記載のガス回収装置。 【請求項6】 処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法であって、 同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程と、 前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程と、 前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程と、 を包含するガス回収方法。 【請求項7】 少なくとも2つの前記ガス処理塔が並列配置され、 並列配置された前記ガス処理塔の前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように切り替える切替工程を包含する請求項6に記載のガス回収方法。」 第3 申立理由の概要 1 申立理由1(実施可能要件違反) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(サポート要件違反) 本件発明1~7は発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件発明1~7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号で規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(明確性要件違反) 本件発明1~7は明確でないから、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号で規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 本件明細書及び図面について 願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細書」及び「図面」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付与した(以下同様)。 1 課題について 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1に開示された二酸化炭素回収装置では、吸収塔の吸収液出口と再生塔の吸収液入口とが配管で接続され、当該配管の途中に設けられたポンプで圧送することにより、二酸化炭素を吸収した吸収液が吸収塔から再生塔へと輸送される。 【0007】 二酸化炭素を吸収した吸収液を吸収塔から再生塔へと輸送する際、吸収液に吸収された二酸化炭素の一部が気泡化することがある。この場合、気泡化した二酸化炭素を含む吸収液をポンプで圧送することになり、ポンプに供給した動力が吸収液の輸送に要する圧力エネルギーに変換される効率(ポンプ効率)が悪化し、動力損失が増大することになる。 【0008】 また、吸収液をポンプで圧送すると、吸収液に吸収された二酸化炭素の溶解状態が不安定となり、安定性に欠いた吸収液が再生塔に供給されることになる。このため、再生塔において、二酸化炭素を放散させて二酸化炭素を回収する工程を安定的に実施することができない虞がある。 【0009】 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、吸収液(処理液)を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する技術において、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、これによって、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができるガス回収装置、及びガス回収方法を提供することを目的とする。」 2 課題を解決するための手段について 「【課題を解決するための手段】 【0010】 上記課題を解決するための本発明に係るガス回収装置の特徴構成は、 処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置であって、 前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔を備え、 前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理塔内での前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われることにある。 【0011】 本構成のガス回収装置によれば、処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔を備え、二酸化炭素の回収は、ガス処理塔内での処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われる。すなわち、同一のガス処理塔の内部において、処理液と二酸化炭素含有ガスとが接触し、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散により、二酸化炭素を分離することができる。従って、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる。」 「【0024】 次に、上記課題を解決するための本発明に係るガス回収方法の特徴構成は、 処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法であって、 同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させるガス処理工程を包含し、 前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理工程において、前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われることにある。 【0025】 本構成のガス回収方法によれば、同一のガス処理塔の内部において、処理液と二酸化炭素含有ガスとが接触し、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散により、二酸化炭素を分離することができる。従って、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる。」 3 発明を実施するための形態について 「【発明を実施するための形態】 【0029】 以下、本発明について、図1~図20を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。 【0030】 〔第一実施形態〕 <ガス回収装置の概略構成> 図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。図1に示すガス回収装置1Aは、処理液(吸収液)を介して、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するものである。ガス回収装置1Aでは、処理液中のアルカリ性化合物と二酸化炭素を反応させることにより、処理液中に二酸化炭素を吸収させる化学吸収法を採用している。」 「【0032】 ガス回収装置1Aは、処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔2を備え、ガス処理塔2内での処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用することにより、二酸化炭素を回収するように構成されている。 【0033】 <ガス処理塔> ガス処理塔2は、塔本体3を備えている。塔本体3は、断面円環状で鉛直方向に延び、上端側及び下端側がそれぞれ閉鎖された縦長容器状に形成されている。 【0034】 塔本体3の下部には、被処理ガス導入口4が設けられている。塔本体3の底部近傍には、ストリッピングガス導入口5が設けられている。塔本体3の頂部には、被処理ガス排出口6及び回収ガス排出口7がそれぞれ設けられている。塔本体3の上部には、処理液導入口8が設けられている。塔本体3の底部には、処理液排出口9が設けられている。 【0035】 ガス処理塔2は、充填材10をさらに備えている。充填材10は、塔本体3の上下方向中間に位置するように塔本体3の内部に配設されている。充填材10は、気液接触の効率を高めるために設けられる。充填材10としては、金属製、樹脂製の何れであってもよく、気液接触面積を大きくするために、例えば、ラシヒリング、ベルルサドル、ポールリング等の不規則充填物が用いられ、その他、多孔構造やハニカム構造を有するものであってもよい。 【0036】 ガス処理塔2は、噴霧器11をさらに備えている。噴霧器11は、充填材10の上方に位置するように塔本体3の内部に配設されている。噴霧器11は、塔本体3の処理液導入口8を通して供給された処理液を充填材10に向けて噴霧することができるように構成されている。なお、ガス処理塔2としては、大量の処理液を循環しながら被処理ガス中の二酸化炭素を吸収するようにした洗浄塔(スクラバー)のような構造であってもよく、充填材10を備えていない、例えば、スプレー塔やプレート塔等であっても適用可能である。 【0037】 [ガス導入管/ガス排出管] 塔本体3に設けられた被処理ガス導入口4及びストリッピングガス導入口5には、それぞれ被処理ガス導入管15及びストリッピングガス導入管16が接続されている。また、塔本体3に設けられた被処理ガス排出口6及び回収ガス排出口7には、それぞれ被処理ガス排出管17及び回収ガス排出管18が接続されている。 【0038】 [連結管/処理液供給管] ガス回収装置1Aは、サブタンク20をさらに備えている。サブタンク20は、二酸化炭素を放散した後の処理液をガス処理塔2の外部において一時的に貯留するために設けられる。塔本体3に設けられた処理液排出口9とサブタンク20の頂部に設けられた処理液導入口21とは、連結管23によって接続されている。また、塔本体3に設けられた処理液導入口8とサブタンク20の底部に設けられた処理液排出口22とは、処理液供給管24によって接続されている。 【0039】 [導入弁/排出弁/供給弁] 被処理ガス導入管15には、被処理ガス導入弁31が介設されている。ストリッピングガス導入管16には、ストリッピングガス導入弁32が介設されている。被処理ガス排出管17には、被処理ガス排出弁33が介設されている。回収ガス排出管18には、回収ガス排出弁34が介設されている。連結管23には、処理液導入弁35が介設されている。処理液供給管24には、処理液供給弁36が介設されている。 【0040】 [送風機、ポンプ] 被処理ガス導入管15には、被処理ガス導入弁31の上流側に位置するように送風機41が介設されている。ストリッピングガス導入管16には、ストリッピングガス導入弁32の上流側に位置するようにポンプ42が介設されている。被処理ガス排出管17には、被処理ガス排出弁33の下流側に位置するようにポンプ43が介設されている。回収ガス排出管18には、回収ガス排出弁34の下流側に位置するようにポンプ44が介設されている。処理液供給管24には、処理液供給弁36の上流側に位置するようにポンプ45が介設されている。」 「【0043】 以上に述べたように構成されるガス回収装置1Aの作動について、図1~図4を用いて説明する。なお、図1~図4において、太線で示した管路は、ガス又は液が通流中であることを意味し、管路に付した矢印は、ガス又は液の通流方向を示す(後述する図5~図20においても同様とする。)。 【0044】 ガス回収装置1Aにおいては、以下に述べる吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程がこの記載順に繰り返し行われる。また、これらの工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~36の開閉操作により実施され、各種弁31~36は、それらの工程の切替手段として機能する。 【0045】 <吸収工程> 図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。図1に示すように、吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を開いた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO2含有ガス)は、送風機41により被処理ガス導入管15を介してガス処理塔2の内部に送り込まれる。一方、サブタンク20に貯留されている処理液は、ポンプ45により処理液供給管24を介して噴霧器11に供給される。 【0046】 ガス処理塔2の内部に送り込まれた被処理ガスは、充填材10を通過するように上昇し、噴霧器11から噴霧される処理液と気液接触する。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に効率良く吸収される。二酸化炭素を吸収した処理液は、ガス処理塔2の下部に貯留される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。なお、「二酸化炭素が除去された被処理ガス」とは、「含まれている二酸化炭素の全部が取り除かれた被処理ガス」と、「含まれている二酸化炭素部の一部が取り除かれた被処理ガス」との両方を包含するものである。」 「【図1】 [図:0001419368000001.jpg] 」 「【0047】 <減圧工程> 図2は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、減圧工程を実施している状態を示す模式図である。図2に示すように、減圧工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じ有効利用される。本例では、減圧手段であるポンプ44の作動によってガス処理塔2内を減圧する減圧工程を実施するようにしている。こうすることにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を回収することができる。その後、後段のガス処理塔2の内部にストリッピングガスを導入するストリッピング工程を実施することにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を回収することができる。」 「【図2】 [図:0001419368000002.jpg] 」 「【0048】 <ストリッピング工程> 図3は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、ストリッピング工程を実施している状態を示す模式図である。図3に示すように、ストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。また、減圧工程とストリッピング工程とを順次実施することで、高濃度の二酸化炭素とストリッピングガスで希釈された低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収でき、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。」 「【図3】 [図:0001419368000003.jpg] 」 第5 当審の判断 1 申立理由1について (1)判断手法 ア 装置(物)の発明について 物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が上記の実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきであるので、この観点に立って検討する。 イ 方法の発明について 方法の発明における発明の実施とは、その方法を使用する行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、発明の詳細な説明の記載が上記の実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきであるので、この観点に立って検討する。 (2)本件発明1について ア 判断 (ア)製造について 上記第4の3で摘記した本件明細書の【0033】~【0036】に「処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔」について、また、【0034】及び【0037】に「処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスをガス処理塔の下部に貯留されている処理液の内部に導入する導入管」について、そして、同じく【0034】及び【0037】に「処理液から放散した二酸化炭素をガス処理塔の外部に排出する排出管」が記載されており、これらでガス回収装置を構成することにより【0030】及び【0032】に「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置であって」「二酸化炭素の回収は、ガス処理塔内での処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われるガス回収装置」となることが記載されており、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1の「ガス回収装置」を製造することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (イ)使用について 上記第4の3で摘記した本件明細書の【0044】~【0048】に、処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するために、本件発明1の「ガス回収装置」を使用することが記載されていることから、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1の「ガス回収装置」を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (ウ)小括 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件発明1の実施可能要件について、特許異議申立書(以下「申立書」という。)で、以下の主張をしている。 「1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが同時に行われるものまで包含しているため、どのようにして二酸化炭素を回収できるのか、請求項1の記載からは把握することはできない。 すなわち、ガス処理塔内には、二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス(CO2除去ガス)も存在するはずであるため、ストリッピングガスが処理液の内部に導入されて処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻るはずである。したがって、1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われることが特定されているものの、どのようにして二酸化炭素が回収されるのか、請求項1の記載から把握することはできない。 また、処理液から放散した二酸化炭素をガス処理塔の外部に排出する排出管(構成要件1D) を備えることを特定しているが、ガス処理塔内にはCO2除去ガスも存在するにもかかわらず、ガス処理塔内からどのようにしてニ酸化炭素のみを抽出して排出するのか、請求項1の記載からは把握できない。 一方、発明を実施する形態においては、(i)吸収工程において、CO2含有ガスがガス処理塔2内の処理液の内部に送り込まれ、二酸化炭素を処理液に吸収させ、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)がガス処理塔2の外部に排出されること、(ii)その後の減圧工程において、ポンプ44を作動させることによってガス処理塔2内を減圧させて、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を放散させるとともに、放散された二酸化炭素をポンプ44によって回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出させること、(iii)その後のストリッピング工程により、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を放散させて、放散された二酸化炭素をストリッピングガスと共に回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出させること、が説明されている。 しかし、これら工程を順次実行することなく、特許発明1において特定された構成要件1A~1Eのみで二酸化炭素を回収することができるガス処理装置については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない。」(7頁9行~8頁9行) (イ)申立人の主張に対する当審の判断 a 上記第4の3で摘記した本件明細書の【0044】~【0048】に記載されているように、「吸収工程」は、「図1に示すように、吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を開いた状態とする。この状態において」行われ、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され」、「減圧工程」は、「図2に示すように、減圧工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において」行われ、「放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出され」、そして、「ストリッピング工程」は、「図3に示すように、ストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において」行われ、「放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される」ものである。ここで、「吸収工程」から「減圧工程」及び「ストリッピング工程」における弁の切り替えは、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」と「放散された二酸化炭素」とが混合することがないように、まず「被処理ガス導入弁31を閉じ」、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」が「ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され」た後に、「被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開」いて「放散された二酸化炭素」を「回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出され」るものと理解できる。 b そうすると、申立人の「ガス処理塔内には、二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス(CO2除去ガス)も存在するはずであるため、ストリッピングガスが処理液の内部に導入されて処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻るはずである。」との主張において、「ガス処理塔内には、二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス(CO2除去ガス)も存在するはずである」時に「二酸化炭素が放散」されることはなく、「ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻る」ことはないから、上記申立人の主張は受け入れられない。そして、申立人は「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか、請求項1の記載から把握することはできない。」と主張しているが、そもそも、実施可能要件は、上記(1)アで記載したように「発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて」判断するものであり、「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか」を、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて理解できる以上、実施可能要件違反とはならない。 c さらに、申立人は「(i)吸収工程」「(ii)その後の減圧工程」「(iii)その後のストリッピング工程」を「順次実行することなく」「二酸化炭素を回収することができるガス処理装置については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない。」とも主張するが、本件発明1の「ガス回収装置」は、「(i)吸収工程」「(ii)その後の減圧工程」「(iii)その後のストリッピング工程」を「順次実行する」ことができるものであるから、上記(1)アに記載した実施可能要件の判断手法に照らせば、これらの工程を「順次実行することなく」「二酸化炭素を回収することができるガス処理装置については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない」ことをもってして、実施可能要件違反とはならない。 d 以上のとおり、申立人の主張によって、上記ア(ウ)の「小括」の結論が変わることはない。 (3)本件発明2~5について ア 判断 本件発明2~5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明2では「少なくとも2つの前記ガス処理塔が、前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように並列配置されている」(以下「事項2」という。)こと、本件発明3では「前記ガス処理塔内を減圧する減圧手段を備える」(以下「事項3」という。)こと、本件発明4は「前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える」(以下「事項4」という。)こと、本件発明5は「前記液温調節手段は、前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込まれる前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節する」(以下「事項5」という。)ことを、さらに特定した発明である。 ここで、本件明細書及び図面の摘記は略するが、事項2については本件明細書の【0071】~【0089】及び【図9】~【図16】に、事項3については本件明細書の【0047】及び【0106】の「44 ポンプ(減圧手段)」として、事項4及び事項5については【0041】及び【0042】に、それぞれ、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、製造し、使用することができることが記載されているといえることから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2~5を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明2~5の実施可能要件について、申立書で、 「イ 特許発明2について ・・・各ガス処理塔内での二酸化炭素の回収については、特許発明1と同じことが特定されているに過ぎない。よって、特許発明2について、発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない・・・ ウ 特許発明3について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明3について、発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない・・・ 工 特許発明4について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明4について、発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない・・・ オ 特許発明5について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明5について、発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない・・・」(8頁13行~9頁16行) と、本件発明1に対するのと同じ点を主張するのみであり、本件発明1は、上記(2)ア及びイで判断したとおり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであることから、上記申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (4)本件発明6について ア 判断 処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法として、上記第4の3で摘記した本件明細書の【0045】及び【0046】に「同一のガス処理塔の内部において、処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程」、【0047】に「ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程」、そして、【0048】に「処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスをガス処理塔の下部に貯留されている処理液の内部に送り込むストリッピング工程」を包含することが記載されていることから、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明6の「ガス回収方法」を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件発明6の実施可能要件について、申立書で、以下の主張をしている。 「減圧工程では、ガス処理塔の内部を減圧することのみが特定されているため、CO2除去ガス(二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)がガス処理塔内に存在していることになる。したがって、ストリッピング工程(構成要件6D) において、処理液から放散された二酸化炭素は、処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻ることになる。したがって、ストリッピング工程を包含しているとしても、二酸化炭素がどのように回収されるかについては、請求項6の記載から発明を把握することはできない。 一方、発明を実施する形態においては、(i)吸収工程において、CO2含有ガスがガス処理塔2内の処理液の内部に送り込まれ、二酸化炭素を処理液に吸収させ、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)がポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出されること、(ii)その後の減圧工程において、ポンプ44を作動させることによってガス処理塔2内を減圧させて、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を放散させるとともに、放散された二酸化炭素をポンプ44によって回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出させること、(iii)その後のストリッピング工程により、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を放散させて、放散された二酸化炭素をストリッピングガスと共に回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出させること、が説明されている。しかし、特許発明6のように、吸収工程において、処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させることだけを実行し、減圧工程において、ガス処理塔の内部を減圧することだけを実行することで、二酸化炭素を回収することができるガス処理方法については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない。」(9頁22行~10頁20行) (イ)申立人の主張に対する当審の判断 a 上記(2)イ(イ)で既に述べたが、本件明細書の【0044】~【0048】に記載されているように、「吸収工程」は、「図1に示すように、吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を開いた状態とする。この状態において」行われ、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され」、「減圧工程」は、「図2に示すように、減圧工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において」行われ、「放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出され」、そして、「ストリッピング工程」は、「図3に示すように、ストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において」行われ、「放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される」ものであり、ここで、「吸収工程」から「減圧工程」及び「ストリッピング工程」における弁の切り替えは、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」と「放散された二酸化炭素」とが混合することがないように、まず「被処理ガス導入弁31を閉じ」、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」が「ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され」た後に、「被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開」いて「放散された二酸化炭素」を「回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出され」るものと理解できる。 b そうすると、申立人の「CO2除去ガス(二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)がガス処理塔内に存在していることになる。したがって、ストリッピング工程(構成要件6D) において、処理液から放散された二酸化炭素は、処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻ることになる。」との主張において、「CO2除去ガス(二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)がガス処理塔内に存在していることになる」時に「二酸化炭素が放散」されることはなく、「ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻る」ことはないから、上記申立人の主張は受け入れられない。そして、申立人は「二酸化炭素がどのように回収されるかについては、請求項6の記載から発明を把握することはできない。」と主張しているが、そもそも、実施可能要件は、上記(1)アで記載したように「発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて」判断するものであり、「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか」を、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて理解できる以上、実施可能要件違反とはならないことは、上記(2)イ(イ)で既に述べたとおりである。 c さらに、申立人は「特許発明6のように、吸収工程において、処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させることだけを実行し、減圧工程において、ガス処理塔の内部を減圧することだけを実行することで、二酸化炭素を回収することができるガス処理方法については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない。」とも主張するが、本件発明6は、上記第2で記載したように「・・・同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程と、前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程と、前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程と、を包含するガス回収方法」であり、「・・・処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させることだけを実行し、・・・ガス処理塔の内部を減圧することだけを実行する」方法ではないし、そもそも実施可能要件の判断は、上記(1)イに記載した手法によって判断されるべきもので、その判断は、上記アに記載されたとおりであるから、上記申立人の主張は、受け入れられない。 d 以上のとおり、申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (5)本件発明7について ア 判断 本件発明7は、本件発明6を引用するものであり、「少なくとも2つの前記ガス処理塔が並列配置され、並列配置された前記ガス処理塔の前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように切り替える切替工程を包含する」(以下「事項7」という。)ことを、さらに特定した発明である。 ここで、本件明細書及び図面の摘記は略するが、事項7について、本件明細書の【0071】~【0089】及び【図9】~【図16】に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、使用することができることが記載されているといえることから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明7の実施可能要件について、申立書で、 「キ 特許発明7について ・・・各ガス処理塔内での二酸化炭素の回収については、特許発明6と同じことが特定されているに過ぎない。よって、特許発明7について、発明の詳細な説明は、特許発明2と同様に、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない・・・」(10頁24行~11頁2行)と、本件発明6に対するのと同じ点を主張するのみであり、本件発明6は、上記(4)ア及びイ並びに(3)アで判断したとおり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであることから、上記申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (6)申立理由1のまとめ 発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件発明1~7に係る特許は、申立理由1によって、取り消すことはできない。 2 申立理由2について (1)判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、この観点に立って検討する。 (2)本件発明の課題について 本件発明の課題は、上記第4の1で摘記した【0009】に記載されているとおり、「吸収液(処理液)を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する技術において、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、これによって、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができるガス回収装置、及びガス回収方法を提供すること」であるといえる。 (3)本件発明1について ア 判断 本件発明1の「ガス回収装置」は、「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置であって、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔と、前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入する導入管と、前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する排出管と、を備え、前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理塔内での前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われるガス回収装置。」と特定され、ここで「処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔」と「処理液から放散した二酸化炭素を」「外部に排出する排出管」「備える」「前記ガス処理塔」とは、同じガス処理塔であり、そして、同じガス処理塔である「前記ガス処理塔内で」「処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して」「ガス回収」は「行われる」ことから、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができているといえる。すなわち、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができることから、動力損失を抑えることができるといえる。そして、本件発明1の構成を備えた「ガス回収装置」は、上記第4の1で摘記した【0010】及び【0011】の記載によれば、「二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる」ものである。 そうすると、本件発明1は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるといえることから、発明の詳細な説明に記載したものである。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件発明1のサポート要件について、申立書で、以下の主張をしている。 「特許発明1は、処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔(構成要件1B) を備えること、処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスをガス処理塔の下部に貯留されている処理液の内部に導入する導入管(構成要件1C) を備えること、及び、処理液から放散した二酸化炭素をガス処理塔の外部に排出する排出管(構成要件1D) を備えることを特定しているのみであるため、構成要件1Eとして、二酸化炭素の回収が、ガス処理塔内での処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われることが特定されているとしても、1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが同時に行われることまでも含む構成となっている。 しかし、このようなガス回収装置は発明を実施する形態には開示されておらず、また、二酸化炭素を回収することができるという本発明の目的にも反することなる。したがって、発明の詳細な説明に開示された内容を特許発明1の範囲まで拡張ないし一般化できない。」(12頁25行~13頁2行) (イ)申立人の主張に対する当審の判断 本件発明1は「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置」の「装置」の発明である。そして、その装置を構成する部材として「前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔」、「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入する導入管」、「前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する排出管」を備えるものとして記載されているところ、これらの「前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われる」ことと、「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入」し、「前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する」こととが同時に行われるものと解されるかどうかについて検討する。 まず、「前記処理液から二酸化炭素を放散させる」及び「前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する」ことにおける「処理液」は「前記」されたものであるから、「二酸化炭素含有ガスとの接触が行われ」た前の工程からの「処理液」であるとの解釈が成り立つ。そして、本件明細書には、「前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われ」た後に「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入」し、「前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する」形態のみが記載されており、申立人の主張するとおり、本件明細書には、1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが同時に行われるガス回収装置は、発明を実施する形態には開示されていない。 この点、本件特許の出願時の技術常識を踏まえても、同じ処理液に対し、二酸化炭素が吸収されることと二酸化炭素が放散されることを同時に行うことが当業者において想定されるものではない。 そうすると、本件発明1において、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが同時に行われるものと解することが正当なものとはいえないことから、申立人の「1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが同時に行われる」ことを前提として、「このようなガス回収装置は発明を実施する形態には開示されておらず、また、二酸化炭素を回収することができるという本発明の目的にも反することなる。したがって、発明の詳細な説明に開示された内容を特許発明1の範囲まで拡張ないし一般化できない」と主張することは、その前提において誤りであると言わざるを得ない。 よって、申立人の主張を踏まえても、上記アの判断が変わることはない。 (4)本件発明2~5について ア 判断 本件発明2~5は、上記1(3)で述べたように、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明2では事項2、本件発明3では事項3、本件発明4では事項4、本件発明5では事項5によってさらに限定した発明であるところ、本件発明1は、上記(3)で述べたとおり、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるから、本件発明2~5についても同様に、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるといえ、発明の詳細な説明に記載したものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明2~5のサポート要件について、申立書で、 「イ 特許発明2について ・・・各ガス処理塔内での二酸化炭素の回収については、特許発明1と同じことが特定されているに過ぎない。よって、特許発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない・・・ ウ 特許発明3について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない・・・ 工 特許発明4について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない・・・ オ 特許発明5について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明5は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない・・・」(13頁5行~14頁6行) と、本件発明1に対するのと同じ点を主張するのみであり、本件発明1は、上記(3)ア及びイで判断したとおり、発明の詳細な説明に記載したものであることから、上記申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (5)本件発明6について ア 判断 本件発明1の「ガス回収方法」は、「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法であって、同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程と、前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程と、前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程と、を包含するガス回収方法」と特定され、ここで「内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程」を行う「ガス処理塔」と、「内部を減圧する減圧工程」及び「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを」「下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程」を行う「ガス処理塔」は、同じガス処理塔であり、そして、同じガス処理塔で「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する」ことから、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができているといえる。すなわち、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができることから、動力損失を抑えることができるといえる。そして、本件発明6の工程を包含した「ガス回収方法」は、上記第4の1で摘記した【0024】及び【0025】の記載によれば、「二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる」ものである。 そうすると、本件発明6は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるといえることから、発明の詳細な説明に記載したものである。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件発明6のサポート要件について、申立書で、以下の主張をしている。 「特許発明6では、減圧工程において、ガス処理塔の内部を減圧することが特定されている(構成要件6C) 。しかし、ガス処理塔の内部を減圧するのみでは、CO2除去ガス(二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)がガス処理塔内に存在することになり、また、ストリッピング工程(構成要件6D) において、ストリッピングガスを処理液の内部に送り込むことによって処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻ることになる。このため、二酸化炭素を回収することができるという本発明の目的に反することなるため、発明の詳細な説明に開示された内容を特許発明6の範囲まで拡張ないし一般化できない。また、吸収工程において、処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させることだけを実行し、減圧工程において、ガス処理塔の内部を減圧することだけを実行し、さらにストリッピング工程を行って二酸化炭素を回収するというガス処理方法については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない。」(14頁27行~15頁12行) (イ)申立人の主張に対する当審の判断 まず、本件発明6は、「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法であって」、「同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程」と、「前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程」と、「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程」とを包含するものであるところ、これらの工程が各々個別の工程として特定されていることから、これらの工程が同時に行われるとは解されない。 さらに、「吸収工程」から「減圧工程」に移行する際には、上記1(4)イ(イ)で述べたとおり、上記第4の3で摘記した本件明細書の【0044】~【0048】の記載を踏まえると、「前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させ」二酸化炭素が除去された被処理ガスと「前記処理液から」「放散させ」た「二酸化炭素」とが混合することがないように、まず、被処理ガス導入弁31を閉じ、二酸化炭素が除去された被処理ガスが、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出された後に、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いて「前記処理液から」「放散させ」た「二酸化炭素」を回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出されるものと理解できる。 そうすると、本件発明6において、「CO2除去ガス(二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)がガス処理塔内に存在することになり、また、ストリッピング工程において、ストリッピングガスを処理液の内部に送り込むことによって処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻る」ことが生じるものといえず、これをもとに「二酸化炭素を回収することができるという本発明の目的に反することなるため、発明の詳細な説明に開示された内容を特許発明6の範囲まで拡張ないし一般化できない。」とする主張は受け入れられない。 また、申立人は、「吸収工程において、処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させることだけを実行し、減圧工程において、ガス処理塔の内部を減圧することだけを実行し、さらにストリッピング工程を行って二酸化炭素を回収するというガス処理方法については、発明の詳細な説明に何ら記載されていない」とも主張しているが、本件発明6は、「・・・同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程と、前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程と、前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程と、を包含するガス回収方法」であり、「・・・処理液と二酸化炭素含有ガスとを接触させることだけを実行し、・・・ガス処理塔の内部を減圧することだけを実行する」方法ではないし、そもそもサポート要件の判断は、上記(1)に記載した手法によって判断されるべきもので、その判断は、上記アに記載されたとおりであるから、上記申立人の主張は、受け入れられない。 よって、申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (6)本件発明7について ア 判断 本件発明7は、上記1(5)で述べたように、本件発明6を引用するものであり、事項7によってさらに特定した発明であるところ、本件発明6は、上記(5)で述べたとおり、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるから、本件発明7についても同様に、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるといえ、発明の詳細な説明に記載したものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明7のサポート要件について、申立書で、 「キ 特許発明5について ・・・各ガス処理塔内での二酸化炭素の回収については、特許発明6と同じことが特定されているに過ぎない。よって、特許発明7は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない・・・」(15頁15~20行)と、本件発明6に対するのと同じ点を主張するのみであり、本件発明6は、上記(5)ア及びイで判断したとおり、発明の詳細な説明に記載したものであることから、上記申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (7)まとめ 本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件発明1~7に係る特許は、申立理由2によって、取り消すことはできない。 3 申立理由3について (1)判断手法 特許請求の範囲の記載が、明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるから、この観点に立って検討する。 (2)本件発明1について ア 判断 本件発明1の「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置」は、「前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔」と、「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入する導入管」と、「前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する排出管」とを備え、「前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理塔内での前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われる」ものであり、装置の発明として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である事項はないことから、発明として明確なものである。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件発明1の明確性要件について、申立書で、以下の主張をしている。 「特許発明1は、処理液から放散した二酸化炭素をガス処理塔の外部に排出する排出管(構成要件1D)を備えることを特定しているが、処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔(構成要件1B)を備えること、及び、処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスをガス処理塔の下部に貯留されている処理液の内部に導入する導入管(構成要件1C)を備えることも特定しているため、ストリッピングガスが処理液の内部に導入されて処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガス(ガス処理塔内には二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)は、再び、二酸化炭素含有ガスに戻るため、1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われることが特定されているものの、どのようにして二酸化炭素が回収されるのか、技術的意味を理解できない。また、ガス処理塔内にCO2除去ガスも存在するにもかかわらず、ガス処理塔内からどのようにして二酸化炭素のみを抽出して排出するのか、技術的意味を理解できない。」 (イ)申立人の主張に対する当審の判断 a まず、申立人の「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか、技術的意味を理解できない。また、ガス処理塔内にCO2除去ガスも存在するにもかかわらず、ガス処理塔内からどのようにして二酸化炭素のみを抽出して排出するのか、技術的意味を理解できない」との主張における「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか」及び「どのようにして二酸化炭素のみを抽出して排出するのか」は、実施可能要件に関する事項であり、仮に発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たさないとしても、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たさないことが、即座に発明が不明確であるとはいえないことから、上記実施可能要件を満たさないことで「技術的意味を理解できない」との主張は受け入れられない。 次に、「ストリッピングガスが処理液の内部に導入されて処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガス(ガス処理塔内には二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス)は、再び、二酸化炭素含有ガスに戻るため、1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われることが特定されているものの、どのようにして二酸化炭素が回収されるのか、」「また、ガス処理塔内にCO2除去ガスも存在するにもかかわらず、ガス処理塔内からどのようにして二酸化炭素のみを抽出して排出するのか」について検討するに、すでに上記1(2)イ(イ)で述べたように、上記第4の3で摘記した本件明細書の【0044】~【0048】の記載から、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」と「放散された二酸化炭素」とが混合することがないように、まず、被処理ガス導入弁31を閉じ、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」がポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出された後に、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いて「放散された二酸化炭素」を回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出されるものと理解でき、申立人の「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか」及び「どのようにして二酸化炭素のみを抽出して排出するのか」は、本件明細書を参照すれば理解できることであるから、これを基に「技術的意味を理解できない」と主張することは受け入れれない。 よって、申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (3)本件発明2~5 ア 判断 本件発明2~5は、上記1(3)で述べたように、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明2では事項2、本件発明3では事項3、本件発明4では事項4、本件発明5では事項5によってさらに限定した発明であるところ、上記1(3)で記載した事項2~5は、いずれも第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である事項はないことから、本件発明2~5は、発明として明確なものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明2~5の明確性要件について、申立書で、 「イ 特許発明2について ・・・各ガス処理塔内での二酸化炭素の回収については、特許発明1と同じことが特定されているに過ぎない。よって、特許発明2もやはり明確でない・・・ ウ 特許発明3について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明3もやはり明確でない・・・ 工 特許発明4について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明4もやはり明確でない・・・ オ 特許発明5について ・・・1つのガス処理塔の中で、処理液に二酸化炭素が吸収されることと処理液から二酸化炭素が放散されることが行われる点については、特許発明1と同じである。よって、特許発明5もやはり明確でない・・・」(16頁18行~17頁18行) と、本件発明1に対するのと同じ点を主張するのみであり、本件発明1は、上記(3)ア及びイで判断したとおり、明確であることから、上記申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (4)本件発明6について 本件発明6の「処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法」は、「同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる吸収工程」と、「前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程」と、「前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程」と「を包含するガス回収方法」であり、方法の発明として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である事項はないことから、発明として明確なものである。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件発明6の明確性要件について、申立書で、以下の主張をしている。 「特許発明6では、減圧工程において、ガス処理塔の内部を減圧することが特定されている(構成要件6C) 。しかし、ガス処理塔の内部を減圧するのみでは、二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス(CO2除去ガス)がガス処理塔内に存在することになり、また、ストリッピング工程(構成要件6D)において、処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスをガス処理塔内の処理液の内部に送り込むことによって処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻ることになる。このため、ガス処理塔からどのようにして二酸化炭素が回収されるのか、技術的意味を理解できない。」 (イ)申立人の主張に対する当審の判断 a まず、申立人の「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか、技術的意味を理解できない」との主張における「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか」は、上記(1)イ(イ)で述べたように、実施可能要件に関する事項であり、仮に発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たさないとしても、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たさないことが、即座に発明が不明確であるとはいえないことから、上記実施可能要件を満たさないことで「技術的意味を理解できない」との主張は受け入れられない。 次に、「ガス処理塔の内部を減圧するのみでは、二酸化炭素が処理液に吸収された後のガス(CO2除去ガス)がガス処理塔内に存在することになり、また、ストリッピング工程(構成要件6D)において、処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスをガス処理塔内の処理液の内部に送り込むことによって処理液から二酸化炭素が放散されれば、ガス処理塔内のCO2除去ガスは、再び、二酸化炭素含有ガスに戻ることになる。このため、ガス処理塔からどのようにして二酸化炭素が回収されるのか」について検討するに、すでに上記1(2)イ(イ)で述べたように、上記第4の3で摘記した本件明細書の【0044】~【0048】の記載から、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」と「放散された二酸化炭素」とが混合することがないように、まず、被処理ガス導入弁31を閉じ、「二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)」がポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出された後に、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いて「放散された二酸化炭素」を回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出されるものと理解でき、申立人の「どのようにして二酸化炭素が回収されるのか」は、本件明細書を参照すれば理解できることであるから、これを基に「技術的意味を理解できない」と主張することは受け入れれない。 よって、申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (5)本件発明7について ア 判断 本件発明7は、上記1(5)で述べたように、本件発明6を引用するものであり、事項7によってさらに特定した発明であるところ、上記1(5)で記載した事項7は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である事項はないことから、本件発明7は、発明として明確なものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明7の明確性要件について、申立書で、 「キ 特許発明7について ・・・各ガス処理塔内での二酸化炭素の回収については、特許発明6と同じことが特定されているに過ぎない。よって、特許発明7は明確でない・・・」(18頁5~10行)と、本件発明6に対するのと同じ点を主張するのみであり、本件発明6は、上記(5)ア及びイで判断したとおり、明確であることから、上記申立人の主張によって、上記アの判断が変わることはない。 (6)まとめ 本件発明1~7は明確であるから、本件発明1~7に係る特許は、申立理由3によって、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~7係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700825

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