特許異議申立
2024-701159
ガス回収設備、及びガス回収方法
- 審判番号
- 2024-701159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-083254
- 登録番号
- 7498463
- 請求日
- 2024年11月29日
- 審決日
- 2025年11月18日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社タクマ
- 【権利者代理人】沖中 仁
- 【権利者】国立研究開発法人産業技術総合研究所
- 【権利者代理人】沖中 仁
- 【異議申立人】徳田 久子
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 増山 淳子
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1652.113-YAA(B01D) / P1652.121-YAA(B01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7498463号発明「ガス回収設備、及びガス回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7498463号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~6〕、7について訂正することを認める。
特許第7498463号の請求項4~6に係る特許を維持する。
特許第7498463号の請求項1、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7498463号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年5月11日の特許出願であって、令和6年6月4日に特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1、4~7に係る特許に対し、令和6年11月29日に特許異議申立人である徳田久子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件における、以降の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和7年 5月13日付け:取消理由通知
同年 7月 1日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同年 同月10日 :訂正請求書の補正(特許権者)
なお、申立人に対し、令和7年7月1日の訂正の請求について、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
令和7年7月1日に特許権者より請求された訂正(以下「本件訂正」といい、この訂正の請求を「本件訂正請求」という。)は、適法になされたものと判断する。
以下、その理由につき詳述する。
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許請求の範囲を訂正することを求めるものであって、その内容は、次の訂正事項1~4からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記再生装置は、
処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、
前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、
を備える請求項1に記載のガス回収設備。」と記載されているのを、
「 二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、前記吸収装置において二酸化炭素を吸収し、吸収されている二酸化炭素の一部が放散された処理液を貯留する再生塔を備え、
前記ストリッピングは、前記再生塔に貯留されている処理液の内部に、前記再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ、
さらに、前記再生装置は、
処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、
前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、
を備えるガス回収設備。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれか一項に記載のガス回収装置」と記載されているのを、
「請求項2又は3に記載のガス回収装置」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、4について
訂正事項1、4は、それぞれ、本件訂正前の請求項1、7を削除するものであるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用していたところ、その引用関係を解消し、請求項1を引用する請求項2について書き下し、独立形式請求項へ改めるものである。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1の削除にともない、本件訂正前の請求項4において、引用する請求項から請求項1を削除するものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)独立特許要件について
本件訂正前の請求項1、4~7についての特許に対しては、特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。
本件訂正前の請求項2についての特許に対しては、訂正事項2によって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正がされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。
したがって、独立特許要件についての判断の必要はない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~6〕、7について訂正することを認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
上記第2のとおり本件訂正請求は適法になされたものであると認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項2~6に係る発明(以下、項番にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、前記吸収装置において二酸化炭素を吸収し、吸収されている二酸化炭素の一部が放散された処理液を貯留する再生塔を備え、
前記ストリッピングは、前記再生塔に貯留されている処理液の内部に、前記再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ、
さらに、前記再生装置は、処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、
前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、
を備えるガス回収設備。
【請求項3】
二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、
前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、
前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、
二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、
を備え、
前記ストリッピングは、前記処理液供給手段によって供給されて前記ストリッピング塔に貯留されている処理液の内部に、前記ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われるガス回収設備。
【請求項4】
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項2又は3に記載のガス回収設備。
【請求項5】
前記液温調節手段は、前記吸収装置における前記処理液を10~30℃に調節する低温処理と、前記再生装置における前記処理液を40~80℃に調節する高温処理とを行う請求項4に記載のガス回収設備。
【請求項6】
前記液温調節手段は、前記処理液に送り込まれる前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節する請求項4に記載のガス回収設備。
【請求項7】
(削除)」
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由について
1 特許異議申立の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証:特開2008-29976号公報
甲第2号証:特開2019-98226号公報
甲第3号証:特開2008-23438号公報
甲第4号証:特開2005-270814号公報
甲第5号証:欧州特許出願公開第1543874号明細書
甲第6号証:米国特許第3001373号明細書
以下、甲1号証等を「甲1」等という。
なお、主たる証拠は甲1、甲2であり、甲3、甲4は二酸化炭素を吸収した吸収液を減圧することで再生することについての周知技術が記載されたものであり、甲5、甲6は、ストリッピングガスの加熱についての周知技術が記載されたものである。
(1)申立理由1(甲1を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、4~7に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当する、又は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲2を主たる証拠とした進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、4~7に係る発明は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由の概要
取消理由(甲2を主たる証拠とした進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、4~7に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 当審の判断
1 各甲号証について
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、製油所の加熱炉、火力発電所のボイラ、ごみ焼却炉などの燃焼排ガスに含まれている二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法に関する。」
(イ)「【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10の概要を示した図である。
【0018】
この二酸化炭素回収システム10は、導入された排ガス103とリーン吸収液151を気液接触させる吸収塔100と、二酸化炭素を吸収したリッチ吸収液152からキャリアガス120中に二酸化炭素を放散させてリーン吸収液151を再生する再生塔110と、キャリアガス120を発生させるキャリアガス発生器122と、再生塔110から二酸化炭素およびキャリアガス120を吸引して再生塔110内を減圧する真空引き装置125と、二酸化炭素およびキャリアガス120の混合気を冷却してそれぞれを分離する分離器126と、吸収塔100の吸収液排出口101から排出されるリッチ吸収液152を再生塔110の吸収液導入口111に導くリッチ吸収液ライン130と、再生塔110の吸収液排出口112から排出されるリーン吸収液151を吸収塔100の吸収液導入口102に導くリーン吸収液ライン131と、各ポンプ、各機器などを制御する制御部140とから主に構成されている。ここで、リーン吸収液151とは、吸収塔100で二酸化炭素などを吸収する前の吸収液であり、例えば、再生塔110で二酸化炭素を放散して再生された吸収液も含まれる。また、リッチ吸収液152とは、吸収塔100で二酸化炭素などを吸収した、再生塔110で二酸化炭素を放散する前の状態の吸収液である。」
(ウ)「【0029】
・・・また、リーン吸収液151およびリッチ吸収液152の温度は、55~70℃に設定される。リーン吸収液151の温度をこの範囲に設定するのは、温度が70℃より高い場合には、吸収塔100内で十分な量の二酸化炭素を吸収しないからである。また、リッチ吸収液152の温度をこの範囲に設定するのは、温度が55℃よりも低い場合には、再生塔110内で二酸化炭素を容易に放散しないからである。換言すれば、リッチ吸収液152からリーン吸収液151への再生率はリッチ吸収液152の温度が高くなるにつれて増大するものの、温度が70℃より高い場合には、リーン吸収液151への二酸化炭素の吸収率が低下するからである。なお、リーン吸収液151およびリッチ吸収液152の温度をこの温度範囲に維持するために、例えば、リッチ吸収液ライン130やリーン吸収液ライン131などの吸収液の還流経路に、加熱器などを介在させて吸収液の温度調節を行ってもよい。」
(エ)「【0031】
また、再生塔110の下部には、水蒸気であるキャリアガス120を導入するためのキャリアガス導入口121が設けられている。キャリアガス導入口121には、加熱媒体と熱交換することによって水蒸気を発生させるキャリアガス発生器122が配管を介して連結されている。」
(オ)「【0038】
・・・すなわち、再生塔110内の減圧の効果によってリッチ吸収液152から二酸化炭素の放散を促進するとともに、リッチ吸収液152の周囲に放散された二酸化炭素をキャリアガス120によって流動し、リッチ吸収液152の周囲の二酸化炭素の分圧をさげることで、リッチ吸収液152からの二酸化炭素の放散を促進している。」
(カ)「【図1】
[図:0001432056000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、上記ア(ウ)によれば、リーン吸収液151及びリッチ吸収液152の温度を50~70℃に維持するために、リッチ吸収液ラインやリーン吸収液ラインなどの吸収液の環流経路に、加熱器などを介在させて吸収液の温度調節を行うこと、すなわち、リーン吸収液及びリッチ吸収液の環流経路に、加熱器などを介在させて吸収液の温度調節を行うことが記載されており、同(カ)の図1からは、再生塔110の底部にリーン吸収液151が貯留されていることが見て取れる。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。
「排ガスに含まれている二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムであって、導入された排ガスとリーン吸収液を気液接触させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収したリッチ吸収液からキャリアガス中に二酸化炭素を放散させてリーン吸収液を再生する再生塔と、再生塔内を減圧する真空引き装置と、を備えており、
再生塔内の減圧の効果によってリッチ吸収液から二酸化炭素の放散を促進するとともに、リッチ吸収液の周囲に放散された二酸化炭素をキャリアガスによって流動し、リッチ吸収液の周囲の二酸化炭素の分圧をさげることで、リッチ吸収液からの二酸化炭素の放散を促進し、
再生塔の下部に、キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入口が設けられており、
再生塔の底にリーン吸収液が貯留されており、
リーン吸収液及びリッチ吸収液の還流経路に、加熱器などを介在させて吸収液の温度調節を行う、二酸化炭素回収システム。」
(2)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
ア 甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、酸性化合物を含む被処理ガスと前記酸性化合物を吸収する処理液とを吸収器内で接触させる吸収工程と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を再生器に送り、前記処理液を加熱して当該処理液から酸性化合物を分離する再生工程と、を含み、前記再生工程において、前記処理液にほぼ溶解しないガスと前記処理液とを接触させる、ガス処理方法である。」
(イ)「【0014】
本発明は、酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物を吸収する処理液とを用い、前記被処理ガスから酸性化合物を分離するガス処理装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記吸収器において前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器と、前記吸収器に、前記処理液にほぼ溶解しないガスを供給するガス供給部と、を備えている、ガス処理装置である。」
(ウ)「【0023】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るガス処理装置10は、処理液を用いて酸性化合物を含む被処理ガスから酸性化合物を分離するために利用される。図1に示すように、ガス処理装置10は、吸収器12と、再生器14と、循環路16と、熱交換器18とを備えている。循環路16は、吸収器12から処理液を抜き出して再生器14に導入させる第1流路21と、再生器14から処理液を抜き出して吸収液に還流させる第2流路22とを含む。
・・・
【0028】
再生器14には、供給路30と加熱流路32とが接続されている。供給路30は、再生器14内で得られた酸性化合物を供給先に供給する。供給路30には、処理液から蒸発した酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を冷却するコンデンサ34が設けられている。混合気体は冷却されると、水蒸気が凝縮するので、水蒸気を分離することができる。分離された水蒸気は再生器14に還流される。コンデンサ34としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。
【0029】
加熱流路32は、一端部が第2流路22に接続されているが、再生器14の下端部又は下端部近傍に接続されていてもよい。加熱流路32の他端部は再生器14の下部に接続されている。加熱流路32には、再生器14に貯留される処理液を加熱するリボイラ36が設けられている。リボイラ36は、再生器14の内部で処理液を加熱するよう配設してもよいが、図示するように、再生器14から外部に抜き出された処理液を加熱するように構成してもよい。この場合、リボイラ36は、加熱後に再生器14に還流させる加熱流路32に配設することができる。なお、リボイラ36としては、例えば電気、蒸気、バーナー等任意の熱源により直接又は間接的に処理液を加熱するものを用いることができる。
・・・
【0031】
ガス処理装置10は、再生器14に、酸性化合物の分離を促進するためのガス(以下、分離促進ガスと称する)を供給するガス供給部42を備えている。ガス供給部42は、再生器14の下端部又は下端部近傍に接続されたガス路42aを備えている。ガス路42aは、例えば、分離促進ガスの供給源42bに接続されている。
【0032】
ガス供給部42によって再生器14に供給される分離促進ガスは、処理液にほぼ溶解しないガスである。分離促進ガスとして、水素ガス、酸素ガス、メタンガス等を挙げることができる。処理液にほぼ溶解しないガスを再生器14に供給することにより、再生器14における酸性化合物の分離を促進することができる。
・・・
【0033】
ガス処理装置10が分離する酸性化合物としては、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されないが、例えば塩化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素等が挙げられる。
・・・
【0046】 ・・・再生器14内に貯留された処理液は、第2流路22を流れて吸収器12に還流する。この途中、処理液は、熱交換器18において、第1流路21を流れる処理液を加熱するので、温度が下がる。」
イ 甲2に記載された発明
(ア)甲2には、「ガス処理装置」に関する記載がなされているところ、上記ア(イ)(【0014】)によれば、被処理ガスが酸性化合物を含むこと、処理液に前記被処理ガス、すなわち酸性化合物を含む被処理ガスを接触させる吸収器と、前記処理液から酸性化合物を分離させる再生器を備えるガス処理装置が記載されているといえる。
また、同(イ)(【0014】)には、「吸収器」に、処理液にほぼ溶解しないガスを供給するガス供給部を備えることが記載されているが、同(ア)(【0007】)には「再生工程において、前記処理液にほぼ溶解しないガスと前記処理液とを接触させる」と記載されるとおり、上記【0014】の記載は、「再生器」に、処理液にほぼ溶解しないガスを供給するガス供給部を備えること、の誤記と認められる。
そうすると、同(イ)(【0014】)には、「再生器」に、処理液にほぼ溶解しないガスを供給するガス供給部を備えることが記載されているといえる。
(イ)同(ア)(【0007】)によれば、酸性化合物を含む被処理ガスと前記酸性化合物を吸収する処理液とを吸収器内で接触させる吸収工程を有しているところ、この吸収工程では、前記酸性化合物を吸収した前記処理液が生成するのであるから、酸性化合物は処理液に吸収器内で吸収されるものであるといえる。
(ウ)同(ウ)(【0028】、【0029】)によれば、再生器に貯留される処理液を加熱するリボイラが設けられていることが記載されている。
(エ)同(ウ)(【0031】)には、再生器は、酸性化合物の分離を促進するためのガスである分離促進ガスを供給するガス供給部を備えることが記載されており、同(ウ)(【0032】)には、再生器に供給される分離促進ガスは、処理液にほぼ溶解しないガスであること、処理液にほぼ溶解しないガスを再生器に供給することにより再生器における酸性化合物の分離を促進することができることが記載されている。そうすると、処理液にほぼ溶解しないガスは、酸性化合物の分離を促進するガス、すなわち、分離促進ガスであることが記載されているといえる。
また、同(ウ)(【0031】)には、ガス供給部は再生器の下端部に接続されたガス路を備えていることが記載されている。
そうすると、同(ウ)には、再生器の下端部に接続されたガス路から分離促進ガスが供給されること、分離促進ガスによって酸性化合物の分離が促進されることが記載されているといえる。
(オ)同(ウ)(【0033】)によれば、ガス処理装置で分離する酸性化合物は、二酸化炭素であってもよいことが記載されている。
(カ)同(ウ)(【0046】)によれば、再生器において、処理液は「貯留」された状態となっていることが記載されている。
(キ)上記ア~カの「ガス処理装置」に関する、特に下線を付した事項をまとめると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。
「処理液に二酸化炭素を含む被処理ガスを接触させて処理液に吸収させる吸収器と、前記処理液から二酸化炭素を分離させる再生器と、前記再生器に分離促進ガスを供給するガス供給部を備えるガス処理装置であって、
再生器には処理液が貯留されており、再生器の下端部に接続されたガス路から分離促進ガスが供給されて二酸化炭素の分離が促進され、再生器には貯留される処理液を加熱するリボイラが設けられているガス処理装置。」
2 申立理由1について
(1)本件発明1、7について
上記第3に記載したとおり、本件訂正により請求項1、7は削除された。そうすると、請求項1、7に係る申立理由1は、対象となる請求項が存在しないものとなり、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下されるものであるから、申立理由1について判断する必要はない。
(2)本件発明4について
本件発明4は、「前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項2又は3に記載のガス回収設備。」であるところ、「・・・を備える請求項2に記載のガス回収設備。」の場合と、「・・・を備える請求項3に記載のガス回収設備。」についてそれぞれ検討する。
ア 「前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項2に記載のガス回収設備。」について
「前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項2に記載のガス回収設備。」を、請求項2を書き下した形で記載すると、
「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、前記吸収装置において二酸化炭素を吸収し、吸収されている二酸化炭素の一部が放散された処理液を貯留する再生塔を備え、
前記ストリッピングは、前記再生塔に貯留されている処理液の内部に、前記再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ、
さらに、前記再生装置は、処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、
前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、
を備え、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるガス回収設備。」となる(以下、「本件発明4-1」という。)。
(ア)対比
本件発明4-1と、甲1発明を対比する。
甲1発明の「排ガスに含まれている二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムであって」との記載からは、「排ガス」は「二酸化炭素含有ガス」であることが理解される。
甲1発明の「吸収液」は本件発明4-1の「処理液」に相当し、甲1発明の、二酸化炭素を吸収した「リッチ吸収液」、及び、リッチ吸収液から二酸化炭素を放散させて再生された「リーン吸収液」は、それぞれ、本件発明4-1の「二酸化炭素を吸収した処理液」、及び、「吸収装置において二酸化炭素を吸収し、吸収されている二酸化炭素が」「放散された処理液」に相当する。
甲1発明の「吸収塔」、「再生塔」、及び、「二酸化炭素回収システム」は、それぞれ、本件発明4-1の「吸収装置」、「再生装置」、及び、「ガス回収システム」に相当する。
甲1発明は「導入された排ガスとリーン吸収液を気液接触させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収したリッチ吸収液」を有するのであるから、甲1発明では、吸収塔で二酸化炭素を吸収したリッチ吸収液が作られる、すなわち、「吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液」が作られるといえるし、排ガスに含まれる二酸化炭素をリーン吸収液に吸収させる吸収塔を有する、すなわち、「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置」を有するといえる。
甲1発明の「再生塔内を減圧する真空引き装置」を備え、「再生塔内の減圧の効果によってリッチ吸収液から二酸化炭素の放散を促進」することは、本件発明4-1の「減圧」「により当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、を備える」ことに相当する。
甲1発明において「リッチ吸収液からキャリアガス中に二酸化炭素を放散させてリーン吸収液を再生する再生塔」を有し、再生塔において、「リッチ吸収液の周囲に放散された二酸化炭素をキャリアガスによって流動し、リッチ吸収液の周囲の二酸化炭素の分圧をさげることで、リッチ吸収液からの二酸化炭素の放散を促進し」ていることは、キャリアガスによって、リッチ吸収液からの二酸化炭素の放散が促進されることを意味するから、甲1発明の「キャリアガス」は本件発明4-1の「ストリッピングガス」に相当し、「二酸化炭素を吸収した処理液に対する」「ストリッピングガスを用いたストリッピング」「により処理液から二酸化炭素を放散させる」ことを意味する。
甲1発明において「再生塔の底にリーン吸収液が貯留されて」いることは、本件発明4-1の「前記吸収装置において二酸化炭素を吸収し、吸収されている二酸化炭素」「が放散された処理液を貯留する再生塔を備え」ることに相当する。
甲1発明の「リーン吸収液及びリッチ吸収液の還流経路に、加熱器などを介在させて吸収液の温度調節を行う」ことは、本件発明4-1の「処理液の温度を調節する液温調節手段を備える」ことに相当する。
そうすると、本件発明4-1と甲1発明は、
「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収装置であって、
前記再生装置は、前記吸収装置において二酸化炭素を吸収し、吸収されている二酸化炭素が放散された貯留液を貯留する再生塔を備え、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える、ガス回収設備。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明4-1では、再生塔に貯留される貯留液は、吸収されている二酸化炭素「の一部」が放散されたものであるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。
<相違点2>
本件発明4-1は、「前記ストリッピングは、前記再生塔に貯留されている処理液の内部に、前記再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ」るのに対し、甲1発明は「再生塔の下部に、キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入口が設けられて」いる点。
<相違点3>
本件発明4-1は、「前記再生装置は、処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、を備える」のに対し、甲1発明では、そのような特定はない点。
(イ)相違点について
事案に鑑み、相違点3について検討する。
上述のように、本件発明4-1は、本件発明2を引用する本件発明4であるところ、本件発明2は、訂正前の請求項1に係る発明を引用する請求項2に係る発明に対応するものである。
そして、訂正前の請求項2に係る発明に対しては特許異議申立てがなされておらず、訂正前の請求項2に係る発明における特徴的な構成である、上記相違点3に係る「再生装置」が「処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、を備える」ことについては特許異議申立てで何らの言及もなされていないし、対応する証拠も提出されていない。
そうすると、上記相違点3に係る本件発明4-1の構成は、甲1に記載も示唆もないものであるから、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件発明4-1は、相違点1、2について検討するまでもなく、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
イ 「前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項3に記載のガス回収設備。」について
「前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える請求項3に記載のガス回収設備。」を、請求項3を書き下した形とすると、
「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、
前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、
前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、
二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、
を備え、
前記ストリッピングは、前記処理液供給手段によって供給されて前記ストリッピング塔に貯留されている処理液の内部に、前記ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるガス回収設備。」となる(以下、「本件発明4-2」という。)。
(ア)対比
本件発明4-2と甲1発明を対比する。
甲1発明の「再生塔内を減圧する真空引き装置」を有し「再生塔内の減圧によってリッチ吸収液から二酸化炭素の放散を促進」することは、本件発明4-2の「再生装置は、前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔」を備えることに相当する。
そうすると、上記ア(ア)での検討をふまえると、本件発明4-2と甲1発明は、
「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対する減圧とストリッピングガスを用いたストリッピングとにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、
前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔を備え、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるガス回収設備。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明4-2は、「前記再生装置は、前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、を備え」るものであるのに対し、甲1発明では、キャリアガスの導入及び減圧は、単一の「再生塔」に対して行われるものである点。
<相違点5>
本件発明4-2では、「ストリッピングは、前記処理液供給手段によって供給されて前記ストリッピング塔に貯留されている処理液の内部に、前記ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ」るのに対し、甲1発明は、「再生塔の下部」に「キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入口が設けられて」いるものである点。
(イ)相違点について
相違点4について検討する。
上述のように、本件発明4-2は、本件発明3を引用する本件発明4であるところ、本件発明3は、訂正がなされておらず、設定登録時の請求項3に係る発明に対応するものである。
そして、設定登録時の請求項3に係る発明に対しては、特許異議申立てがなされておらず、設定登録時の請求項3に係る発明における特徴的な構成である、上記相違点4に係る「前記再生装置は、前記二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、を備え」ることについては、特許異議申立てで何らの言及もなされていないし、対応する証拠も提出されていない。
そうすると、上記相違点4に係る本件発明4-2の構成は、甲1に記載も示唆もないものであるから、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、相違点5について検討するまでもなく、本件発明4-2は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(3)本件発明5、6について
本件発明5、6は、本件発明4の特定事項を全て含むものであるから、前記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。
3 申立理由2及び取消理由について
(1)本件発明1、7について
上記第3に記載したとおり、本件訂正により請求項1は削除された。そうすると、請求項1に係る申立理由2及び取消理由は、対象となる請求項が存在しないものとなり、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下されるものであるから、申立理由2及び取消理由について判断する必要はない。
(2)本件発明4について
上記2(2)で記載したとおり、本件発明4は、引用する請求項である請求項2を書き下した本件発明4-1及び請求項3を書き下した本件発明4-2である場合に場合分けできるので、それぞれについて検討する。
ア 本件発明4-1について
(ア)対比
本件発明4-1と、甲2発明を対比する。
甲2発明の「吸収器」は、本件発明4-1の「吸収装置」に相当するから、甲2発明の「処理液に、二酸化炭素を含む被処理ガスを接触させて処理液に吸収させる吸収器」は、本件発明4-1の「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置」に相当するし、「吸収装置において二酸化炭素を吸収」した「処理液」が生成されているといえる。
甲2発明の「分離促進ガス」は、「再生器」に「供給されて、二酸化炭素の分離を促進」するものであるから、本件発明4-1の「ストリッピングガス」に相当するし、「分離促進ガス」を「供給」して「二酸化炭素の分離を促進」することは、本件発明4-1の「ストリッピング」を行うことに相当する。
また、甲2発明の「二酸化炭素」の「分離」は、本件発明4-1の「二酸化炭素」の「放散」に相当する。
そして、甲2発明の「再生器」は、「処理液から二酸化炭素を分離させる」ものであるから、本件発明4-1の「再生装置」及び「再生塔」に相当する。
そうすると、甲2発明の「分離促進ガスを供給」されて、「前記処理液から二酸化炭素を分離させる再生器」は、本件発明4-1の「ストリッピングガスを用いたストリッピング」「により当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置」に相当する。
甲2発明は、「処理液に二酸化炭素を接触させて処理液に吸収させる吸収器」と、「処理液から二酸化炭素を分離させる再生器」を備えるものであるから、これは、本件発明4-1の「ガス回収装置」に相当する。
甲2発明の「再生器には処理液が貯留されて」いることは、本件発明4-1の「再生装置は」「処理液を貯留する再生塔を備え」ることに相当するし、「再生塔に貯留されている処理液」が存在するといえる。
甲2発明の「再生器の下端部に接続されたガス路から分離促進ガスが供給され」は、本件発明4-1の「再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込む」ことに相当する。
そうすると、本件発明4-1と甲2発明は、
「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対するストリッピングガスを用いたストリッピングにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収装置であって、
前記再生装置は、前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液を貯留する再生塔を備え、
前記ストリッピングは、前記再生塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことによって行われ、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるガス回収設備」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点6>
本件発明4-1では、再生装置において、処理液から二酸化炭素を放散させるために減圧を用いるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
<相違点7>
本件発明4-1では、再生塔に貯留される処理液が「吸収されている二酸化炭素の一部が放散されたもの」であるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
<相違点8>
本件発明4-1では、再生塔に貯留されている処理液の内部に、ストリッピングガスを送り込むのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
<相違点9>
本件発明4-1では、「前記再生装置は、処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、を備える」のに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
(イ)相違点について
事案に鑑み、相違点9について検討する。
上述のように、本件発明4-1は、本件発明2を引用する本件発明4であるところ、本件発明2は、訂正前の請求項1に係る発明を引用する請求項2に係る発明に対応するものである。
そして、訂正前の請求項2に係る発明に対しては、特許異議申立てがなされておらず、訂正前の請求項2に係る発明における特徴的な構成である、前記相違点9に係る「再生装置」が、「処理液から放散させた二酸化炭素を外部に排出するための第一回収ガス排出管及び第二回収ガス排出管と、前記減圧により処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第一回収ガス排出管を通して外部に排出する状態と、前記ストリッピングにより処理液から放散させた二酸化炭素を、前記第二回収ガス排出管を通して外部に排出する状態とを切り替える切替手段と、を備える」ことについては、特許異議申立てで何らの言及もなされていないし、対応する証拠も提出されていない。
そうすると、上記相違点9に係る本件発明4-1の構成は、甲2、1、3~6に記載も示唆もされないものであるから、甲2発明、甲1、3~6に記載された事項又は周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、相違点6~8について検討するまでもなく、本件発明4-1は、甲2発明及び甲1、3~6に記載された事項又は周知技術から当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 本件発明4-2について
本件発明4-2と甲2発明を対比する。
上記ア(ア)での検討をふまえると、甲2発明の「再生器」は「分離促進ガスが供給されて二酸化炭素の分離が促進され」るものであるから、本件発明4-2の「ストリッピング塔」に相当し、甲2発明の「分離促進ガスが供給されて二酸化炭素の分離が促進され」る「再生器」は、本件発明4-2の「ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔」に相当するし、甲2発明の「再生器の下端部に接続されたガス路から分離促進ガスが供給されて二酸化炭素の分離が促進され」ることは、本件発明4-2の「ストリッピングは、ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介してストリッピングガスを送り込むことにより行われ」ることに相当する。
また、甲2発明の「再生器には処理液が貯留され」ていることは、本件発明4-2の「ストリッピング塔は貯留されている処理液を有」することに相当する。
そうすると、本件発明4-2と甲2発明は、
「二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を処理液に吸収させる吸収装置と、
前記吸収装置において二酸化炭素を吸収した処理液に対するストリッピングガスを用いたストリッピングにより当該処理液から二酸化炭素を放散させる再生装置と、
を備えるガス回収設備であって、
前記再生装置は、
前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔を備え、
前記ストリッピングは、ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介してストリッピングガスを送り込むことにより行われ、
ストリッピング塔は貯留されている処理液を有し、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるガス回収設備。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点10>
本件発明4-2は、「二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、を備え」るのに対し、甲2発明では、減圧を行うことは記載されておらず、減圧塔を設けることは記載されておらず、二酸化炭素が放散された処理液を減圧塔からストリッピング塔へ供給する処理液供給手段を有するとの特定はない点。
<相違点11>
本件発明4-2では、「ストリッピング塔に貯留されている処理液の内部に、前記ストリッピング塔に接続されたストリッピングガス導入管を介して前記ストリッピングガスを送り込むことにより行われ」るのに対し、甲2発明では「再生塔の下部」に「キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入口が設けられて」いる点。
(イ)相違点について
相違点10について検討する。
上述のように、本件発明4-2は、本件発明3を引用する本件発明4であるところ、本件発明3は訂正がなされておらず、設定登録時の請求項3に係る発明に対応するものである。
そして、設定登録時の請求項3に係る発明に対しては、特許異議申立てがなされておらず、設定登録時の請求項3に係る発明における特徴的な構成である、上記相違点10に係る「二酸化炭素を吸収した処理液を減圧して二酸化炭素を放散させる減圧塔と、前記減圧塔と並設され、前記ストリッピングガスが導入されるストリッピング塔と、二酸化炭素が放散された処理液を前記減圧塔から前記ストリッピング塔へと供給する処理液供給手段と、を備え」ることについては、特許異議申立てで何らの言及もなされていないし、対応する証拠も提出されていない。
そうすると、上記相違点10に係る本件発明4-2の構成は、甲2、1、3~6に記載も示唆もないものであるから、甲2発明、甲1、3~6に記載された事項又は周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件発明4-2は、相違点11について検討するまでもなく、甲2発明及び甲1、3~6に記載された事項又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(3)本件発明5、6について
本件発明5、6は、本件発明4の特定事項を全て含むものであるから、前記(2)で検討したのと同様の理由により、甲2発明及び甲1、3~6に記載された事項又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)取消理由及び申立理由2についてのまとめ
以上のとおり、取消理由及び申立理由2には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項4~6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1、7に係る発明は、訂正により削除された。これにより、請求項1、7に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701159