特許異議申立
2024-700718
積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法
- 審判番号
- 2024-700718
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-191057
- 登録番号
- 7427909
- 請求日
- 2024年07月30日
- 審決日
- 2025年08月21日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 田口 傑
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7427909号発明「積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7427909号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、〔10~13〕について訂正することを認める。
特許第7427909号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7427909号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和元年10月18日の出願であって、令和6年1月29日にその特許権の設定登録がされ、令和6年2月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 7月30日 :特許異議申立人柏木香陽子(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和6年11月 1日付け:取消理由通知書
令和6年12月20日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和7年 1月31日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和7年 6月11日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和7年1月31日の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7427909号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である
積層フィルム。」とあるのを、
「前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物であり、
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物である
積層フィルム。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10に
「前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である
積層フィルムの製造方法。」とあるのを、
「前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物であり、
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物である
積層フィルムの製造方法。」に訂正する。
請求項10の記載を直接又は間接的に引用する請求項11~13も同様に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2
訂正事項1、2は、水性架橋剤をカルボジイミド化合物であると限定したものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明細書の【0059】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項2~9は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項11~13は、訂正前の請求項10を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~9〕、〔10~13〕について請求されたものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、〔10~13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層と、
熱可塑性樹脂層と、
前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する中間基材層と、
前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層との間に位置する第1無溶剤型接着層と、
前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する第2無溶剤型接着層と、
前記ガスバリアフィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置する水性インキ層と、を備え、
前記水性インキ層は、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含み、
各接着層を形成する接着剤は、部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤であり、
前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物であり、
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物である
積層フィルム。
【請求項2】
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物であり、
前記ポリオール成分が、ポリエステルポリオールであり、
前記脂肪族系ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
前記芳香族系ポリイソシアネートが、キシリレンジイソシアネートである
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記水性インキ層に残存するアルコール系溶媒量は、20mg/m2以下である
請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記水性インキ層に残存する水分量は、100mg/m2以下である
請求項2または3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層と、
前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、
前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備え、
前記バリア層を構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物、および、水酸基を有した水溶性高分子の塗工膜の乾燥物からなる群から選択されるいずれか1つを含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層と、
前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、
前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備え、
前記プライマー層は、トリアルコキシシランとトリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層であって、ポリカルボン酸系重合体を含む前記バリア層と、を備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層であって、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含む前記バリア層と、を備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋であって、
前記積層フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層フィルムである
包装袋。
【請求項10】
基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層、水性インキ層、第1無溶剤型接着層、中間基材層、第2無溶剤型接着層、および、熱可塑性樹脂層をこの順に配置する積層フィルムの製造方法であって、
インキを用いた印刷で前記ガスバリアフィルム層に水性インキ層を形成すること、
前記水性インキ層を備えた前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、および、
前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、を含み、
前記インキは、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含む水性インキであり、
前記二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤は、部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を含み、
前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物であり、
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物である
積層フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物であり、
前記ポリオール成分は、ポリエステルポリオールであり、
前記脂肪族系ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
前記芳香族系ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートである
請求項10に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工温度は、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上6000mPa・s以下となる温度である
請求項10または11に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項13】
積層フィルムを製造すること、および、
前記積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって包装袋を密封すること、を含む包装袋の製造方法であって、
前記積層フィルムを製造することが、請求項10から12のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法である
包装袋の製造方法。」
第4 取消理由通知の概要
訂正前の本件発明1~13に対して、当審において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(サポート要件)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の【0005】の記載から、本件特許の請求項1及び請求項10に係る発明が解決しようとする課題は「外観品質の劣化を抑制可能にした積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法を提供すること」であるが、本件特許の請求項1において、「水性架橋剤」がいかなるものであるのかについての特定はなされていない。
ここで、本件特許の【0059】には、水性架橋剤として「カルボジイミド化合物」について列挙され、「カルボジイミド系化合物がインキに含まれる構成であれば、水性インキ層12の水性化が容易でもある。そして、水性インキ層12のなかに残存するアルコール系溶媒量や水分量を低減させることが可能ともなるため、残留溶剤に起因した気泡の発生、および、臭気の生成を抑えることが可能ともなる。」と記載され、また、【0122】~【0132】に示された実施例1~3には、水性架橋剤として「カルボジイミド化合物」を用いた例のみについて記載されている。
したがって、「水性架橋剤」がいかなるものであるのかについての特定はなされていない本件特許の請求項1に係る発明が、本件特許の発明が解決しようとする課題を解決できるとは認識できないため、本件特許の請求項1の記載は、特許法36条6項1号の要件を満たしていない。
よって、請求項1及びこれを引用する請求項3~9に係る発明は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、同様の理由により、請求項10及びこれを引用する請求項12~13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2.(進歩性)本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2008-195409号公報(申立人の提示した甲第1号証)
甲第2号証:特開平8-113749号公報(同甲第2号証)
甲第3号証:特開2006-057089号公報(同甲第3号証)
甲第4号証:特開平7-053661号公報(同甲第4号証)
甲第5号証:特開2007-261020号公報(同甲第5号証)
甲第6号証:特開2018-126971号公報(同甲第6号証)
(以下、甲第1~6号証を、「甲1」等という。)
第5 当審の判断
1 理由1(サポート要件)について
本件訂正により、水性架橋剤がカルボジイミド化合物であると特定されたため、サポート要件に関する取消理由は解消した。
また、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合しているものである。
2 理由2(進歩性)について
(1)甲号証の記載、甲号証に記載された発明及び周知技術について
ア 甲1
(ア)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。(甲1にない下線は当審で付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)
a 「【請求項1】
樹脂フィルム又はこの樹脂フィルムとアルミニュウム箔とを無溶剤型接着剤を用いて複合し、この複合された樹脂フィルムを用いて製袋したことを特徴とする食品等の包装用袋。
【請求項2】
樹脂フィルム又はこの樹脂フィルムとアルミニュウム箔とを複合する際、この複合面に極性付与樹脂を介在させて複合し、この複合された樹脂フィルムを用いて製袋したことを特徴とする食品等の包装用袋。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の何れかの食品等の包装用袋において、印刷を行う場合には、この印刷には水性インキが用いられていることを特徴とする食品等の包装用袋。
【請求項4】
請求項1~3に記載の何れかの食品等の包装用袋において、複合される樹脂フィルムにガスバリアー性のあるものが選択されている場合には、少なくともこのガスバリアー性フィルムより内層に位置するフィルムは、無溶剤型接着剤又は極性付与樹脂を用いて複合されていることを特徴とする食品等の包装用袋。」
b 「【請求項6】
複数の樹脂フィルム又はこの樹脂フィルムとアルミニュウム箔を複合する際、接着剤には無溶剤型接着剤又は極性付与樹脂を用い、印刷を行う場合には水性インキを用いて製袋用の複合フィルムを調整し、この複合フィルムを用いて製袋を行う食品等の包装用袋の製造方法。」
c 「【0005】
具体的に説明すると、従来の包装用袋の構成としては、印刷基材フィルムに印刷を行い、強度材フィルムで強度を持たせ、バリアー材フィルムで酸素及び水蒸気の透過を防止して内容物の酸化防止、水分蒸発による内容物の減量を防ぐ。さらに、シーラントフィルムを積層して製袋を行い、包装用袋とする。」
d 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特にグラビアインキ及び接着剤に溶剤系を使用しないことで、溶剤の残留による食品への臭い、苦味等の影響をなくし、衛生的で商品価値が落ちず、環境にも優しい包装用袋及びその製造方法を提供することである。」
e 「【実施例1】
【0018】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
厚さ12μの2軸延伸ポリエステルフィルム(例えば東洋紡績株式会社製 E5100)を印刷基材フィルムとし、水性インキ(東洋インキ製造株式会社製 水性インキ JW250)を用いてグラビア印刷を行う。
これとは別に、強度材フィルムとして、厚さ15μの2軸延伸ナイロンフィルム(例えばユニチカ株式会社製 ONM-RT)、バリアー材フィルムとして、厚さ7μの圧延アルミ箔(例えば三菱アルミニウム株式会社製 アルミ箔)、そして、シーラント材フィルムとして、厚さ60μの未延伸ポリプロピレンフィルム(例えば東レフィルム加工株式会社製 ZK-93KM)を用意した。
加熱殺菌に耐えられるように、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤(例えば東洋モートン株式会社製 TSN4533)を用いて前記各フィルムを貼り合わせる。
2軸延伸ポリエステルフィルム 12μ
水性インキ
ポリエステル系ポリウレタン樹脂系無溶剤型接着剤
2軸延伸ナイロンフィルム 15μ
ポリエステル系ポリウレタン樹脂系無溶剤型接着剤
アルミ箔 7μ
酸素透過度 0.0[ml/m2・d・MPa](条件 20℃、湿度0%RH)
水蒸気透過度 0.0g[g/m2・d](条件 40℃、湿度90%RH)
ポリエステル系ポリウレタン樹脂系無溶剤型接着剤
未延伸ポリプロピレンフィルム 60μ」
f 「【実施例3】
【0020】
本実施例3では、透明包装用袋の実施例をあげる。
透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム 12μ
酸素透過度 3.0[ml/m2・d・MPa](条件 20℃、湿度0%RH)
水蒸気透過度 0.4[g/m2・d](条件 40℃、湿度90%RH)
水性インキ
無溶剤型接着剤
2軸延伸ナイロン 15μ
無溶剤型接着剤
未延伸ポリプロピレンフィルム 60μ」
g 「【表1】
[図:0001428997000001.jpg]
」
(イ)引用発明
a 甲1発明1
上記(ア)より、甲1には、特に、【実施例3】【0020】及び【表1】のサンプル4に着目すると、以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「以下の層構成からなる透明包装用袋用の複合フィルムであって、残留溶剤[mg/m2]がエタノール0.01mg/m2。
透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム
酸素透過度 3.0[ml/m2・d・MPa](条件 20℃、湿度0%RH)
水蒸気透過度 0.4[g/m2・d](条件 40℃、湿度90%RH)
水性インキ
無溶剤型接着剤
2軸延伸ナイロン
無溶剤型接着剤
未延伸ポリプロピレンフィルム」
b 甲1発明2
上記(ア)より、甲1には、特に、【実施例1】【0018】、【実施例3】【0020】に着目し、実施例1の製造方法を、実施例1に記載のアルミ箔を有しない態様の実施例3に適用した場合、以下の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明2]
「2軸延伸ポリエステルフィルムを印刷基材フィルムとし、水性インキ、水性インキと2軸延伸ナイロンの間のポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤、2軸延伸ナイロン、2軸延伸ナイロンと未延伸ポリプロピレンフィルムの間のポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤、および、未延伸ポリプロピレンフィルムをこの順に配置する複合フィルムの製造方法であって、
厚さ12μの2軸延伸ポリエステルフィルムを印刷基材フィルムとし、水性インキを用いてグラビア印刷を行い、
これとは別に、強度材フィルムとして、厚さ15μの2軸延伸ナイロンフィルム、そして、シーラント材フィルムとして、厚さ60μの未延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、
加熱殺菌に耐えられるように、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤を用いて前記各フィルムを貼り合わせる複合フィルムの製造方法。」
イ 甲2
甲2には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 着色剤、水性樹脂エマルジョンおよび分子内に少なくとも2つ以上のヒドラジン残基を有するヒドラジン系架橋剤を必須成分とし、下記の条件IおよびIIを満足するプラスチックフィルム用水性印刷インキ組成物。・・・」
(イ)「【0003】しかし、最近では環境問題、省資源、労働衛生及び防災安全などの多くの見地から、インキの利用分野を問わず、共に有機溶剤の使用を極力抑えた水性タイプの印刷インキの要望が強くなっている。特にその中でも、プラスチックフィルム用印刷インキは、印刷物が食品包装用途としてよく利用される事から、インキの残留溶剤の有害性が大きな問題となり、水性化の要望がひときわ強いものである。」
(ウ)「【0067】ヒドラジン系架橋剤
本発明で使用されるヒドラジン系架橋剤としては、ヒドラジン残基を2つ以上有し、好ましくは水溶性のポリヒドラジンまたはヒドラジド化合物であって、ヒドラジンおよび以下の一般式(1)で示されるアルキレンジヒドラジン、あるいは、飽和脂肪族二塩基酸、不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物等を挙げることができる。」
(エ)「【0070】任意成分
本発明の水性印刷インキ組成物は、その他の性能の向上を目的として、他の各種水性樹脂、例えばセルロース系樹脂、ケト基またはアルド基を含有しないアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、エチレン-アクリル酸系樹脂、ポリウレタン樹脂を添加する事もできる。特に顔料分散性を良好にするという観点から、顔料分散用樹脂として、アルカリ水溶液に可溶な樹脂を使用する事がより好ましい。」
ウ 甲3
甲3には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
(A)ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール成分と、
(B)イソホロンジイソシアネートと、ポリイソシアネート単量体から得られる末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート誘導体とを含むイソシアネート成分とを
含有することを特徴とする無溶剤型接着剤組成物。」
【請求項2】
前記(A)ポリオール成分が、ポリエステルポリオールとモノアルコール化合物および/またはモノカルボン酸化合物とを反応させて得られる変性ポリオール化合物であることを特徴とする請求項1記載の無溶剤型接着剤組成物。」
(イ)「【請求項6】
前記ポリイソシアネート単量体から得られる末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート誘導体は、脂環式ジイソシアネート化合物若しくは芳香族ジイソシアネート化合物から形成される3官能のイソシアネート化合物(B1)及び脂肪族ジイソシアネート化合物から形成される3官能のイソシアネート化合物(B2)からなるものであることを特徴とする請求項1記載の無溶剤型接着剤組成物。」
(ウ)「【0021】
ポリウレタンポリオールとしては、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであり、例えば、数平均分子量200~20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等と有機ポリイソシアネートとを、イソシアネート基/水酸基(当量比)が1未満、好ましくは0.9以下で反応させて得られる。用いる有機ポリイソシアネートとしては、例えば、・・・ヘキサメチレンジイソシアネート、・・・1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート・・・が挙げられる。」
エ 甲4
(ア)甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
a 「【0002】
【従来の技術】従来、塗料、印刷インキ、接着剤等においては、塗装・印刷等の加工時の適応性を確保するために有機溶剤等に樹脂分等を溶解せしめるのが普通であった。しかし、近年、労働作業環境、地球環境保全等の見地から、塗料、印刷インキ等の水性化が急務となっている。一方、ポリウレタン樹脂は、塗料、印刷インキ等を初めとして様々な分野において用いられていが、このような社会環境の中で水性ポリウレタン樹脂を塗料、インキ等に用いる試みも盛んに行なわれている。一般に、ポリウレタン樹脂を水性化する場合には、カルボキシル基や三級アミノ基等で代表されるイオン性基を樹脂分子内に導入し、それらを揮発性の塩基や酸により中和し塩とする事で親水性を付与している。この場合、樹脂内のイオン性基の濃度、中和度、樹脂骨格の親水性等により分散型若しくは溶解型の形態をとる。」
b 「【0018】本発明の水性ポリウレタンは、水分散化もしくは水溶化後そのまま使用することもできるが、通常は併用された各種有機溶剤を除去する目的で、加熱操作、減圧操作により、水と共に共沸除去する工程を採用するのが一般的である。本発明の水性ポリウレタンは、そのままでも木材、金属、ガラス、繊維、皮革、プラスチックフィルム、発泡体などの任意の基材に、印刷、塗工、含浸、噴霧などの慣用の方法にて樹脂皮膜を形成できる。また、本発明の水性ポリウレタンは、樹脂系あるいは水系重合反応の乳化剤や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、皮革などの接着剤としても使用できる。
【0019】さらに、本発明の水性ポリウレタンは、他の慣用の成分、例えば有機溶剤、着色顔料、染料、磁性粉、充填剤、乳化剤、消泡剤、界面活性剤、分散助剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、クレーター防止剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤などや、他の水分散性あるいは水溶性樹脂成分を添加し、水性樹脂組成物として、印刷インキ、塗料、接着剤、繊維処理剤、表面処理剤などに適用することができる。他の水分散性あるいは水溶性樹脂成分としては、水性ポリエステル、水性アクリル樹脂、水性エポキシ樹脂、水性メラミン樹脂、アクリル水性分散物、塩素化ポリプロピレン水性分散物、セルロース系樹脂の水性分散物などを挙げることができる。
【0020】また、通常の架橋剤を本発明の水性ポリウレタンと組み合わせることにより皮膜強度、耐薬品性に優れた硬化塗膜を形成することができる。例えば、本発明の水性ポリウレタンにカルボキシル基が導入されている場合には、ポリアジリジン化合物、ポリエポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、・・・が架橋剤として使用できる。」
c 「【0035】
【発明の効果】本発明の水性ポリウレタン及びそれを必須成分として含有してなる水性樹脂組成物は、貯蔵安定性、基材への密着性等に優れるため、従来のポリウレタン水性分散物では適用できなかった各種、広範囲の用途、すなわち印刷インキ、塗料、接着剤、繊維処理剤、表面処理剤、樹脂系あるいは水系重合反応の乳化剤などに使用することができる。」
(イ)甲4記載事項
上記(ア)より、甲4には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認める。
[甲4記載事項]
「印刷インキに適用することができる水性ポリウレタンであって、架橋剤を水性ポリウレタンと組み合わせることにより皮膜強度、耐薬品性に優れた硬化塗膜を形成することができ、水性ポリウレタンにカルボキシル基が導入されている場合には、ポリカルボジイミド化合物が架橋剤として使用できる点。」
オ 甲5
甲5には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
ポリアミドフィルムからなるフィルム基材の少なくとも一方の面に、アンカーコート層と、無機酸化物の蒸着薄膜層と、水溶性高分子と一種以上の金属アルコキシド及び/またはその加水分解物を主成分とするガスバリア性被覆液の乾燥薄膜からなるガスバリア性被膜層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるフィルム積層体であって、アンカーコート層がアクリルポリオール及び/またはポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物、及びイソシアネート基を持つシランカップリング剤とアミノ基を持つシランカップリング剤を主成分とするアンカーコート液の乾燥薄膜からなることを特徴とするポリアミド系フィルム積層体。」
(イ)「【請求項2】
前記イソシアネート基を持つシランカップリング剤が3-イソシアネートプロピルトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1記載のポリアミド系フィルム積層体。」
(ウ)「【技術分野】
【0001】
ポリアミドフィルムからなるフィルム基材をベースフィルムとして用いたガスバリア性のフィルム積層体、特に積層部分の密着性が優れると共に、物理的な強いストレスが加わってもデラミネーションが発生し難くなっており、包装用途に好適に用いることができる、ポリアミド系フィルム積層体に関する。」
(エ)「【0016】
一方、図2には、本発明のさらに他のポリアミド系フィルム積層体の概略の断面構成が示してある。このポリアミド系フィルム積層体20は、ポリアミドフィルムからなるフィルム基材21の一方の面に易接着剤層27が積層されていて、さらにその上に、アンカーコート層22と、無機酸化物の蒸着薄膜層23と、水溶性高分子と一種以上の金属アルコキシド及び/またはその加水分解物を主成分とするガスバリア性被覆液の乾燥薄膜からなるガスバリア性被膜層24と、接着剤層25と、シーラント層26とが順次積層されてなるものである。」
(オ)「【0023】
このアンカーコート層2、22は、アクリルポリオール及び/またはポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物、及びイソシアネート基を持つシランカップリング剤とアミノ基を持つシランカップリング剤を主成分とするアンカーコート液の乾燥薄膜からなるものである。」
(カ)「【0040】
上記ガスバリア性被覆溶液を構成する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAとする)を用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化PVAまでを含み、その種類な特に限定されない。」
カ 甲6
甲6には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
ガスバリアフィルム層、接着層及び熱可塑性樹脂層がこの順に積層され、
前記接着層が、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(A)を主成分とする層であり、
前記無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(A)が、融点が120℃以上の無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(A1)と、融点が100℃以下の無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(A2)を含み、
前記無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(A)中の無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(A2)の含有量が30質量%以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記ガスバリアフィルム層が、基材フィルム層の前記接着層側に、プライマー層と、酸化金属蒸着層と、ガスバリア皮膜層がこの順に積層された層であり、
前記プライマー層が、3官能オルガノシラン及びその加水分解物からなる群から選ばれる1種以上と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との複合物を含有する層である、請求項1に記載の積層フィルム。」
(イ)「【0018】
式(1)で表される3官能オルガノシランとしては、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、R1中にイソシアネート基を有するイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシ基を有するグリシドオキシトリメトキシシラン、エポキシ基を有するエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランが特に好ましい。」
(ウ)「【請求項4】
前記ガスバリアフィルム層が、基材フィルム層の前記接着層側に、ポリカルボン酸系重合体を含有するガスバリア皮膜層が積層された層である、請求項1に記載の積層フィルム。」
(エ)「【請求項5】
前記ガスバリアフィルム層が、基材フィルム層の前記接着層側に、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有するガスバリア皮膜層が積層された層である、請求項1に記載の積層フィルム。」
(オ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及びその製造方法、並びに包装容器及びその製造方法に関する。」
(カ)「【0093】
リン化合物は、例えばリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸及びそれらの誘導体のような、金属酸化物と反応可能な部位を1以上有するものである。反応可能な部位としては、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が挙げられる。これらハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことで、結合することができる。
【0094】
金属酸化物とリン化合物との反応物は、金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合された構造を有することができる。
具体的には、金属酸化物の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と、リン化合物における金属酸化と反応可能な部位(例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子)とが縮合反応(加水分解縮合反応)を起こし、結合する。」
(キ)「【0100】
[包装容器]
本発明の包装容器は、本発明の積層フィルムを製袋してなる包装容器である。本発明の包装容器は、本発明の積層フィルムを用いる以外は、公知の態様を採用することができる。本発明の包装容器としては、例えば、2枚の矩形の積層フィルムを熱可塑性樹脂層同士が接するように重ねてその四方をヒートシールした包装容器、矩形の積層フィルムを熱可塑性樹脂層同士が接するように二つ折りにしてその三方をヒートシールした包装容器等が挙げられる。また、矩形の積層フィルムを熱可塑性樹脂層が内側となるように筒状にし、両方の側端部の熱可塑性樹脂層同士を合わせてヒートシールして背貼り部を形成し、その上下をヒートシールして密封したピロー形状の包装容器としてもよい。」
キ 周知技術
上記イ(ア)~(ウ)における「水性印刷インキ組成物」は「水性インキ層」である。以下同様に、「水溶性のポリヒドラジンまたはヒドラジド化合物」は「水性架橋剤」、「ポリウレタン樹脂」は「ポリウレタン系樹脂」である。
また、上記エ(ア)a、bにおける「硬化塗膜」は「水性インキ層」である。
以下同様に、「水性ポリウレタン」は「ポリウレタン系樹脂」、「ポリカルボジイミド化合物」は「水性架橋剤」である。
以上より、以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認める。
[周知技術1]
「環境問題などから、プラスチックフィルムに使用するインキをポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含む水性インキとすること。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
(ア)甲1発明1の「透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム」が本件発明1の「基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層」に相当する。
(イ)甲1発明1の「未延伸ポリプロピレンフィルム」が本件発明1の「熱可塑性樹脂層」に、同様に「2軸延伸ナイロン」が「前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する中間基材層」に相当する。
(ウ)甲1発明1の「透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム」と「2軸延伸ナイロン」との間に位置する「無溶剤型接着剤」が本件発明1の「前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層との間に位置する第1無溶剤型接着層」に相当する。
(エ)甲1発明1の「2軸延伸ナイロン」と「未延伸ポリプロピレンフィルム」との間に位置する「無溶剤型接着剤」が本件発明1の「前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する第2無溶剤型接着層」に相当する。(オ)甲1発明1の「透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム」(上記(ア))と「「透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム」と「2軸延伸ナイロン」との間に位置する「無溶剤型接着剤」」(上記(ウ))の間に位置する「水性インキ」が本件発明1の「前記ガスバリアフィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置する水性インキ層」に相当する。
(カ)甲1発明1の「複合フィルム」が本件発明1の「積層フィルム」に相当する。
以上より、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層と、熱可塑性樹脂層と、前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する中間基材層と、前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層との間に位置する第1無溶剤型接着層と、前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する第2無溶剤型接着層と、前記ガスバリアフィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置する水性インキ層と、を備える、積層フィルム。」
<相違点1>
水性インキ層について、本件発明1が「ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含み、」「前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物である」のに対し、甲1発明1では、そのような構成を有しているか不明な点。
<相違点2>
各接着層を形成する接着剤について、本件発明1が「部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤であり、前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である」のに対して、甲1発明1では、そのような構成を有しているか不明な点。
イ 判断
相違点1について検討する。
本件発明1は、相違点1の構成を有することにより、水性インキ層に残存する水や水系溶媒と水性架橋剤であるカルボジイミド化合物を反応させて、水分量等を減少させることにより、ポリイソシアネート成分を含む接着層を形成する接着剤との副反応、ひいては、ガスバリアフィルム層と接着層との間での気泡の発生自体を抑制するものであるところ(【0008】、【0055】、【0059】、【0143】)、相違点1に係る本件発明1の構成について、甲1のみならず甲2~6のいずれにも記載も示唆もない。
一方、上記(1)キで周知技術1として示したとおり、環境問題などから、プラスチックフィルムに使用するインキをポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含む水性インキとすることは周知である。そして、甲1発明1の解決しようとしている課題として環境にも優しい包装用袋及びその製造方法を提供することも挙げられている(甲1【0009】)ものであるが、甲1発明1の水性インキ層に周知技術1を適用し得たとしても、水性架橋剤として、カルボジイミド化合物を選択することは当業者が容易に想到し得たことではない。
これに関し、上記(1)エ(イ)で示したとおり、架橋剤としてポリカルボジイミド化合物を用いることが甲4記載事項として示されているが、これは、水性ポリウレタンと組み合わせることにより「皮膜強度、耐薬品性に優れた硬化塗膜を形成することができる」(甲4の【0020】)ものであり、「貯蔵安定性、基材への密着性等に優れるため」「印刷インキ、塗料、接着剤、繊維処理剤、表面処理剤、樹脂系あるいは水系重合反応の乳化剤などに使用することができる」(甲4の【0035】)ものである。すなわち、溶剤の残留による食品への臭い、苦味等の影響をなくし、衛生的で商品価値が落ちず、環境にも優しい包装用袋及びその製造方法を提供する(甲1の【0009】)という課題を解決するものとして得られた甲1発明1に、甲4記載事項を適用する動機付けは存在しない。
よって、甲1発明1において相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、意見書(2頁)にて、甲4、特開2016-60885号公報(文献A)、特開2000-136336号公報(文献B)および特開2006-16556号公報(文献C)等に示されるように、プラスチックフィルムの分野において、水性インキに用いられる水性架橋剤としてカルボジイミド化合物を用いることは通常の選択の範囲である旨の主張をしている。
しかしながら、これらの文献のいずれにも、水性インキ層に残存する水や水系溶媒と水性架橋剤であるカルボジイミド化合物を反応させて、水分量等を減少させることにより、ポリイソシアネート成分を含む接着層を形成する接着剤との副反応、ひいては、ガスバリアフィルム層と接着層との間での気泡の発生自体を抑制するものである点について記載ないし示唆はされていない。そして、甲4、文献A、文献B及び文献Cに記載の技術事項はいずれも包装用袋に関するものではなく、甲1発明1の水性インキ層に対して、これらの文献から示される水性架橋剤であるカルボジイミド化合物を採用する動機付けはあるとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上によれば、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(2)で説示したのと同様の理由により、甲1発明1及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と甲1発明2を対比する。
甲1発明2の「2軸延伸ポリエステルフィルム」の「印刷基材フィルム」が本件発明10の「基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層」に相当する。以下同様に、「水性インキ」が「水性インキ層」に、「水性インキと2軸延伸ナイロンの間のポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤」が「第1無溶剤型接着層」に、「2軸延伸ナイロン」が「中間基材層」に、「2軸延伸ナイロンと未延伸ポリプロピレンフィルムの間のポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤」が「第2無溶剤型接着層」に、「シーラント材フィルムとして」の「未延伸ポリプロピレンフィルム」が「熱可塑性樹脂層」に、「複合フィルム」が「積層フィルム」に相当する。
また、甲1発明2は、「ポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤を用いて前記各フィルムを貼り合わせる」ものであるから、甲1発明2の「水性インキを用いてグラビア印刷を行」った「2軸延伸ポリエステルフィルムの印刷基材フィルム」と「2軸延伸ナイロンフィルム」を「ポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせる」ことが、本件発明10の「前記水性インキ層を備えた前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること」に相当し、同様に、「2軸延伸ナイロンフィルム」と「シーラント材フィルムとして」の「未延伸ポリプロピレンフィルム」を「ポリエステル系ポリウレタン樹脂を形成する無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせる」ことが、本件発明10の「前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること」に相当する。
以上より、本件発明10と甲1発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点2>
「基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層、水性インキ層、第1無溶剤型接着層、中間基材層、第2無溶剤型接着層、および、熱可塑性樹脂層をこの順に配置する積層フィルムの製造方法であって、
インキを用いた印刷で前記ガスバリアフィルム層に水性インキ層を形成すること、
前記水性インキ層を備えた前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、および、
前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、を含む、積層フィルムの製造方法。」
<相違点3>
インキについて、本件発明10が「ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含む水性インキであり、」「前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物である」のに対し、甲1発明2では、そのような構成を有しているか不明な点。
<相違点4>
各接着層の二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤について、本件発明10が「部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を含み、前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である」のに対して、甲1発明2では、そのような構成を有しているか不明な点。
イ 判断
各相違点について検討する。
相違点3は実質的に相違点1と同じであるところ、その判断は上記(2)イと同じである。
よって、甲1発明2において相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、意見書(2頁)にて、上記(2)ウと同じ主張をしているところ、その判断についても上記(2)ウと同じである。
エ 小括
以上によれば、相違点4を検討するまでもなく、本件発明10は、甲1発明2及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明11~13について
本件発明11~13は、本件発明10の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(4)で説示したのと同様の理由により、甲1発明2及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~13に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によって取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700718