特許異議申立
2024-700714
硬化性組成物、硬化膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置
- 審判番号
- 2024-700714
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-548774
- 登録番号
- 7423646
- 請求日
- 2024年07月29日
- 審決日
- 2025年04月11日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】伊東 秀明
- 【権利者代理人】三橋 史生
- 【異議申立人】小黒 平二
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 岡谷 祐哉
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7423646号発明「硬化性組成物、硬化膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7423646号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。
特許第7423646号の請求項1~17に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7423646号(以下、「本件特許」という。)は、2020年(令和2年)9月9日を国際出願日(優先権主張 2019年(令和1年)9月26日)とする特許出願(特願2021-548774号)に係るものであって、令和6年1月19日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和6年7月29日に特許異議申立人 小黒 平二(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~17に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以降の経緯は次のとおりである。
令和6年10月18日付け 取消理由通知
同年12月23日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和7年 1月16日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛)
同年 2月21日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年12月23日の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、」と記載されているのを、
「 色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂であり、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~12及び15~17についても同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項13に、
「 色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、」と記載されているのを、
「 色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂であり、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項14~17についても同様に訂正する)。
なお、訂正前の請求項1~12、15~17について、請求項2~12、15~17は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、訂正前の請求項13~17について、請求項14~17は請求項13を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項13に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項1~12、15~17と、訂正前の請求項13~17とは、請求項15~17が共通するから、訂正前の請求項1~17は「一群の請求項」となる。
よって、訂正事項1、2による訂正は、一群の請求項〔1-17〕についてするものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1、2による訂正は、訂正前の請求項1及び請求項13の「樹脂」について、「前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂であり」をいう限定を付すものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、上記訂正は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0100】に「樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂・・・などが挙げられる。」と記載され、【0119】に「分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂としては、グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。」と記載され、かつ、【0280】の【表7】の実施例BK3、BK4において、色材分散液Black-2が用いられ、そのBlack-2は色材としてカーボンブラックを含み、樹脂として「グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂」に相当する「B-5」を含んでいる(【0232】、【0242】)ことに基づいてなされたものであるから、新規事項を追加するものでもない。
3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明17」のようにいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂であり、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、
前記シリカ粒子の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、5~30質量%であり、
前記シリカ粒子が、シリカと、前記シリカを被覆する被覆層と、を含有する修飾シリカ粒子であり、
前記樹脂の重量平均分子量が3000以上であり、
前記重合性化合物の分子量が2500以下であり、
カラーフィルタ用、遮光部材用または反射防止部材用である、硬化性組成物。
【請求項2】
カラーフィルタ用または遮光部材用である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記被覆層が、ケイ素原子を含む基、フッ素原子を含む基、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する樹脂を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、酸価が10~100mgKOH/gであり、かつ、エチレン性不飽和結合当量が0.4~2.5mmol/gである樹脂を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記シリカ粒子の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、5質量%以上20質量%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、40質量%以上60質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記シリカ粒子の含有量に対する前記色材の含有量の質量比が、2~14である、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記色材が、カラーインデックス ピグメントレッド122、カラーインデックス ピグメントレッド177、カラーインデックス ピグメントレッド179、カラーインデックス ピグメントレッド254、カラーインデックス ピグメントレッド264、カラーインデックス ピグメントレッド269、カラーインデックス ピグメントレッド272、カラーインデックス ピグメントグリーン7、カラーインデックス ピグメントグリーン36、カラーインデックス ピグメントグリーン58、カラーインデックス ピグメントグリーン59、カラーインデックス ピグメントグリーン63、カラーインデックス ピグメントブルー15:4、カラーインデックス ピグメントブルー15:6、カラーインデックス ピグメントブルー16、カラーインデックス ピグメントイエロー138、カラーインデックス ピグメントイエロー139、カラーインデックス ピグメントイエロー150、カラーインデックス ピグメントイエロー185、カラーインデックス ピグメントバイオレット23、カーボンブラック、チタンブラック、スクアリリウム化合物、及び、ピロロピロール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いて形成された、硬化膜。
【請求項11】
反射率が5%以下である、請求項10に記載の硬化膜。
【請求項12】
前記硬化膜がパターン状であり、パターンの一辺のサイズが3μm以下である、請求項10又は11に記載の硬化膜。
【請求項13】
色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂であり、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、
前記シリカ粒子の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、5~30質量%であり、
前記樹脂の重量平均分子量が3000以上であり、
前記重合性化合物の分子量が2500以下であり、
カラーフィルタ用、遮光部材用又は反射防止部材用である硬化性組成物を用いて形成された硬化膜であって、
前記硬化膜がパターン状であり、パターンの一辺のサイズが3μm以下である、硬化膜。
【請求項14】
前記硬化性組成物が、カラーフィルタ用又は遮光部材用である、請求項13に記載の硬化膜。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の硬化膜を含有する、カラーフィルタ。
【請求項16】
請求項10~14のいずれか1項に記載の硬化膜を含有する、固体撮像素子。
【請求項17】
請求項10~14のいずれか1項に記載の硬化膜を含有する、画像表示装置。」
第4 特許異議申立理由、取消理由の概要及び証拠方法
1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和6年7月29日に申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由は次のとおりである。
申立理由1(甲第1号証による新規性欠如)
本件特許の請求項1~11、15~17に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由2(甲第1号証による進歩性欠如)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第8号証に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由3(サポート要件)
本件特許の訂正前の請求項1~17についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的な理由の概要は次のとおりである。
(1)本件発明1、13の「樹脂」はそれ以上の技術的事項は限定されていないが、本件明細書【0098】~【0126】からみれば、分散させる用途(分散剤)及びバインダーの用途(アルカリ可溶性樹脂)で配合されるものが対象とされている。
本件特許において、色分離性、パターン形状の精度、及び、透過率などに優れた硬化膜を製造するに際しては、色材として分散性を確保ないし向上させることが求められ、また、現像性を確保乃至向上させてパターン形状の精度を確保乃至向上させることが必要と解されることから、「樹脂」として分散剤及びアルカリ可溶性樹脂がそれぞれ好ましい特性と共に明確に特定されなければならない。
そのため、「樹脂」が分散剤のみからなる実施形態や、あるいは、「樹脂」がアルカリ可溶性樹脂のみからなる実施形態では、本件特許の課題を解決できない実施形態が包含されると解される。
(2)本件発明13は「シリカ粒子」が被覆層を含有する修飾シリカ粒子であることについて限定がなされていない。本件明細書を見る限り、シリカ粒子は硬化膜の表面に偏在して硬化膜を低反射化する結果、硬化膜の透過率を向上させることができるものであると解され、そのような課題を解決するためには、被覆層を含有することが好ましいとされている(【0018】、【0026】等)。ところが、被覆層を含有しないシリカ粒子15の分散液S-15を用いた実施例G15Aの場合は、シリカ粒子を含有しない比較例G1と対比した透過率の向上幅が「D」(1%以上2%未満)であって、比較例である比較例G6における評価結果と同様であって、本件特許における透過率の向上の課題を十分に解決できるものではない。
(3)本件発明11は、「反射率が5%以下」というものであり、色材がグリーンであるものは広範なシリカ粒子について検討がなされているが、グリーン以外の色材については通常はグリーンと全く同様の光学特性や反射率等を示すとはいえず、シリカ粒子1のみの実施例が示されているだけであって、それにより、表面処理の異なるシリカ粒子2~15を用いた場合において、反射率5%以下という効果を発現するところまで拡張一般化することはできないと考えられる。
また、特にグリーンの色材において透過率向上幅の評価結果がCやD等の低い評価になっている場合のシリカ粒子を用いた場合で、グリーン以外の色材の場合において、反射率5%以下という効果を達成できるかどうかについては、当業者であろうとも予測することが極めて困難である。
2 取消理由の概要
当審において令和6年10月18日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(甲第1号証による新規性欠如)
本件特許の請求項1~11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~11についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由2(甲第1号証による進歩性欠如)
本件特許の請求項1~17に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 証拠方法
(1)申立書に添付した証拠方法
甲第1号証:特開2015-161815号公報
甲第2号証:国際公開第2007/060884号
甲第3号証:特開2007-39323号公報
甲第4号証:特開平11-43319号公報
甲第5号証:国際公開第2012/161157号
甲第6号証:国際公開第2016/181997号
甲第7号証:特開2013-178548号公報
甲第8号証:特開2009-288705号公報
(2)申立人が令和7年2月21日に提出した意見書に添付した証拠方法
甲第9号証:国際公開第2017/141723号公報
以下、甲第1号証~甲第9号証を、それぞれ「甲1」~「甲9」のようにいう。
第5 当審の判断
当審は、取消理由1、2及び申立書に記載した申立理由1~3によっては、本件発明1~17に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 取消理由1(甲1による新規性欠如)、取消理由2(甲1による進歩性欠如)、申立理由1(甲1による新規性欠如)、申立理由2(甲1による進歩性欠如)について
申立理由1、2は、取消理由1、2とほぼ同旨であることから、まとめて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1には、
「【請求項1】
(A)カーボンブラックと、
(B)疎水性シリカ微粒子と、
(C)分散剤と、
(D)アルカリ可溶性樹脂と、
(E)重合性モノマーと、
(F)光開始剤と、
(G)溶剤と、を少なくとも含有する黒色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)カーボンブラックと前記(B)疎水性シリカ微粒子との重量比(A)/(B)が、1.5~9.0の範囲であるとともに、
前記(C)分散剤が、Sp値12.0以上及び分子量6,000以上のいずれか一方又は両方を満たすウレタン系分散剤であることを特徴とする黒色感光性樹脂組成物。」が記載されており(請求項1)、それを用いてブラックマトリックスを形成することも記載されている(請求項4)。
そして、上記黒色感光性樹脂組成物の具体例として、【0149】には黒色感光性樹脂組成物No.1の調製例が記載されている。
黒色感光性樹脂組成物No.1に着目すると、甲1には次の発明が記載されている。
「ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「V259-ME」固形分56.5%)5.08gに対し、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物(日本化薬社製「KAYARAD DPHA」)0.92g、光重合開始剤(ADEKA社製「NCI‐831」)0.40g、表面調整剤(ビッグケミー社製「BYK‐323」)の1%プロピレングリコールモノメチルアセテート溶液1.00g、下記黒色顔料分散液No.1の39.20g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート53.40gを加えて攪拌して得られた、固形分14.0%、固形分中のカーボンブラック重量濃度44.8%、同シリカ微粒子重量濃度11.2%のブラックマトリックス用である黒色感光性樹脂組成物No.1
<黒色顔料分散液No.1>
カーボンブラックA(樹脂被覆有、平均一次粒子径24nm、DBP吸油量57ml/100g、pH3.5、粉体抵抗10.6)を16重量部、疎水性シリカ(平均一次粒子径12nm、純度>99.9%、比表面積200m2/g)を4重量部、分散剤A(Sp値が8.6、ポリウレタン系高分子化合物、固形換算アミン価25mgKOH/g、重量平均分子量約7300)を5.0重量部(固形分換算)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを75.0重量部に添加し、ビーズミルを用いて混合撹拌して得られた、カーボンブラックと疎水性シリカを含有する、固形分25.0%、固形分中のカーボンブラック重量濃度64.0%、同シリカ微粒子重量濃度16.0%の黒色顔料分散液No.1」(以下、「甲1発明1」という。)
また、甲1には、ガラス基板上に、甲1発明1の黒色感光性樹脂組成物No.1の塗膜を形成し、所定のパターンを有するフォトマスクを介して紫外光を照射し、続いて炭酸ナトリウム水溶液で現像し、ブラックマトリックス基板1を作成したことが記載されている(【0159】)。
上記ブラックマトリックス基板は、ガラス基板上に、紫外光を照射して得られる甲1発明1の黒色感光性樹脂組成物の硬化膜がパターン状に形成されているものと認められる。
この硬化膜に着目すると、甲1には、次の発明も記載されているといえる。
「ブラックマトリックス基板のガラス基板上に設けられた、パターン状に形成された甲1発明1の黒色感光性樹脂組成物No.1の硬化膜」(以下、「甲1発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
甲1発明1の「カーボンブラックA」、「光重合開始剤」、「疎水性シリカ(平均一次粒子径12nm、純度>99.9%、比表面積200m2/g)」、「黒色感光性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1の「色材」、「重合開始剤」、「シリカ粒子」、「硬化性組成物」に相当する。
甲1発明1の「分散剤A(Sp値が8.6、ポリウレタン系高分子化合物、固形換算アミン価25mgKOH/g、重量平均分子量約7300)」は、「重量平均分子量が3000以上」である「樹脂」である限りにおいて、本件発明1の「樹脂」に相当する。
甲1発明1の「ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物」は、重合性のアクリレート基を有していることから、本件発明1の「重合性化合物」に相当する。
そして、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの分子量は524.5、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの分子量は578.6であるから、甲1発明1の「ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物」の分子量は578.6よりも小さくなるところ、このことは、本件発明1の「前記重合性化合物の分子量が2500以下」であることに相当する。
甲1発明1において、組成物の固形分中のカーボンブラック重量濃度は44.8%、同シリカ微粒子重量濃度は11.2%であり、このことは本件発明1の「前記色材の含有量が、前記硬化性組成物中の全固形分に対して、30~60質量%」、「前記シリカ粒子の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、5~30質量%」であることに相当する。
甲1発明1の「ブラックマトリックス用」は、本件発明1の「遮光部材用」に相当する。
そうすると、両者は
「色材、樹脂、重合性化合物、重合開始剤、及び、シリカ粒子を含有する硬化性組成物であって、
前記色材の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、30~60質量%であり、
前記シリカ粒子の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して、5~30質量%であり、
前記樹脂の重量平均分子量が3000以上であり、
前記重合性化合物の分子量が2500以下であり、
カラーフィルタ用、遮光部材用または反射防止部材用である、硬化性組成物。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「シリカ粒子」が、本件発明1では「シリカと、前記シリカを被覆する被覆層と、を含有する修飾シリカ粒子」であるのに対し、甲1発明1では「疎水性シリカ(平均一次粒子径12nm、純度>99.9%、比表面積200m2/g)」である点
<相違点2>
本件発明1では、「前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂である」のに対し、甲1発明1では、色材が「カーボンブラックA」であり、樹脂が「分散剤A(Sp値が8.6、ポリウレタン系高分子化合物、固形換算アミン価25mgKOH/g、重量平均分子量約7300)」である点
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1の【0061】には、「本実施形態の黒色感光性樹脂組成物では、分散剤としてウレタン系分散剤を用いることを特徴とする。」と記載され、【0093】には、「本願発明者らは、このような特定のウレタン系分散剤を用いることにより、はじめて、高遮光性と低反射率との両立が可能となることを見出し、本発明に到達したものである。実際、後述する比較例2では、アクリル系分散剤を用いているが、本発明の効果を得られていない。」と記載されている。
そうすると、甲1発明1においては、高遮光性と低反射率との両立を可能とするためにウレタン系分散剤を用いることが必須であり、それをアクリル系分散剤に置き換えた場合には発明の効果が得られなくなるのであるから、甲1発明1において、ウレタン系分散剤である分散剤Aを、アクリル系分散剤の一種である「グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂」に置き換えることには阻害要因があり、当業者が容易に想到することではない。
また、甲2~甲6には、本件明細書に記載されたシリカ粒子2の分散液S-2~シリカ粒子5の分散液S-5、シリカ粒子7の分散液S-7~シリカ粒子14の分散液S-14を調製する方法が記載されているにすぎず、甲7には、甲1発明1の「ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「V259-ME」固形分56.5%)」がフルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物であることが示されているにすぎず、甲8には、液晶ディスプレイや固体撮像素子のいずれにおいても、解像度向上を目的として微細な着色パターンとして、一辺が2μm以下といったサイズの画像を再現性よく形成することが求められることが課題となっており、固体撮像素子用として好適な露光機を用いて、1.4μm四方のIslandパターンを形成したことが開示されているにすぎず(甲2~甲8の記載内容については、申立書p23~p38を参照のこと)、これらの事項を参酌しても、甲1発明1において、相違点2の構成を採用することが動機付けられるものではない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年2月21日提出の意見書において、以下の3点を主張する。
<主張1>
本件発明1、13では、色材がカーボンブラックではない場合については何らの訂正もされておらず、色材がカーボンブラックである場合の樹脂だけを特定したとしても、他の色材や、カーボンブラックを少なくとも含有して他の色材を含むような場合については何らの訂正もなされておらず、(そのような発明については)取消理由1、2(新規性及び進歩性の欠如)を有する(意見書9~10頁、項目(3-4-1-1))。
<主張2>
新たに提示する甲9には、実施例23においてカーボンブラックと「グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂」を用いた例が記載されており、甲1発明1において、分散剤として甲9に記載されたものを用いることは容易である(意見書10~13頁、項目(3-4-1-2))。
<主張3>
新たに提示する甲9の実施例23等を主引用発明とすると、甲9にはフィラーを含んでもよいことが記載され(【0167】)、【0167】に記載された各文献には「シランカップリング剤で表面処理された球状のシリカ」や、「酸化ケイ素粉」、「体質顔料としてシリカ等の表面をポリマーで改質して使用すること」が示されている。甲9には被覆層を有するシリカを用いることは記載されていないが、甲1と甲9との課題や技術分野の共通性、或いは配合成分の共通性などの観点からしてみれば、甲1に記載された疎水性シリカを採用して、その含有量を調整しながら低反射に寄与させることは、当業者にとって何ら困難ではない(意見書13~14頁、項目3-4-2))。
そこで上記主張について検討する。
(ア)主張1について
甲1はその請求項1に記載されるように、カーボンブラックを必須成分とするものであるから、甲1発明1において必須成分であるカーボンブラックを他の色材に置き換える動機付けがあるものとはいえない。
また、甲1発明1は「ブラックマトリックス用」の組成物であり、甲1には甲1発明1の組成物にカーボンブラック以外の色材を配合することについて特に記載はないから、カーボンブラックに加えてその他の色材を併用することについても、当業者に動機付けられるとはいえない。仮に、甲1発明1の組成物にカーボンブラック以外の他の黒色色材を配合することができるとしても、その場合は、カーボンブラックを含む以上、本件発明1の「前記色材がカーボンブラックである場合」に相当するから、樹脂は「グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂」でなければならず、甲1発明1において樹脂をそのようなものに置き換える動機付けがないことは上記(2)イで述べたとおりである。
(イ)主張2について
上記(2)イで述べたように、甲1発明1において、樹脂を「グラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂」に置き換えることには阻害要因があるから、甲9の記載を考慮しても相違点2の構成を採用することは当業者が容易に想到することではない。
(ウ)主張3について
甲9は新たに提示された文献であり、これを主引用例とする主張3は時機に遅れた主張であって採用することはできない。
また、甲9の記載を検討しても、甲9には実施例23の組成物に「シリカと、前記シリカを被覆する被覆層と、を含有する修飾シリカ粒子」を配合することは記載されておらず、甲1にそのような修飾シリカ粒子が記載されていても、本件明細書の比較例G1~G4、B1~S1(これらは、いずれも修飾シリカ粒子を含まない)は、「パターン形状の精度」や「残渣」の評価において本件発明1の要件を満たす実施例よりも劣っており、このような効果は甲9の記載から当業者が予測できるものではない。
さらに、甲1には、「シリカ微粒子の表面特性が高遮光性と低反射率との両立に大きな影響があること、を見出した。」(【0046】)と記載されているものの、その後に「本願発明者らは、疎水性のシリカを用いさらに後述する特定の分散剤を用いることにより意外にも高遮光性と低反射率とを両立するブラックマトリックスを形成しうる樹脂組成物を得ることができることを見出し」(【0046】)と記載されるように、「高遮光性と低反射率との両立」という効果は、疎水性のシリカと特定の分散剤との組合せによって得られる効果であることが記載されているから、そこから疎水性のシリカだけを取り出して甲9の実施例23の組成物に配合することが当業者に容易であるとはいえない。また、甲9の【0046】の記載から、疎水性のシリカに高遮光性と低反射率との両立をもたらす働きがあることがいえるとしても、それだけでは本件明細書の比較例G1~G4、B1~S1と実施例との差(「パターン形状の精度」や「残渣」の評価に劣る)による効果が、当業者に予測できるとはいえない。
したがって、申立人の主張はいずれも採用することができない。
エ 本件発明1についてのまとめ
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとも、また甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、取消理由1、2及び申立理由1、2によっては、本件発明1についての特許を取り消すことはできない。
(3)本件発明2~12、15~17について
本件発明2~12、15~17は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1が甲1に記載された発明でも、また甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件発明2~12、15~17についても同様に判断される。
(4)本件発明13について
上記(2)アで検討した点もふまえて、本件発明13を甲1発明2と対比すると、両者は少なくとも下記の点で相違する。
<相違点3>
本件発明13では、「前記色材がカーボンブラックである場合、前記樹脂がグラフト鎖を有する繰り返し単位を有する(メタ)アクリル樹脂である」のに対し、甲1発明2では、色材が「カーボンブラックA」であり、樹脂が「分散剤A(Sp値が8.6、ポリウレタン系高分子化合物、固形換算アミン価25mgKOH/g、重量平均分子量約7300)」である点
そして、相違点3は上記(2)アで示した相違点2と同じであるから、上記(2)イで述べたのと同様の理由により、甲1発明2において相違点3の構成を採用することは当業者が容易に想到することではない。
そうすると、その他の点について検討するまでもなく、本件発明13は甲1に記載された発明であるとも、また甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件発明14~17について
本件発明14~17は本件発明13を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明13が甲1に記載された発明でも、また甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件発明14~17についても同様に判断される。
(6)取消理由1、2、申立理由1、2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~11、15~17は、甲1に記載された発明ではなく、また本件発明1~17は甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、取消理由1、2及び申立理由1、2によっては、本件発明1~17についての特許を取り消すことはできない。
2 申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。
(2)本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0005】の記載からみて、「色分離性、パターン形状の精度、及び、透過率に優れた硬化膜を製造できる硬化性組成物の提供、及びその硬化性組成物を用いて形成された硬化膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置の提供」であると認められる。
(3)サポート要件についての検討
本件明細書の【0018】には、次の記載がある。
「本発明の硬化性組成物によれば、色分離性、パターン形状の精度、及び、透過率に優れた硬化膜を製造できる。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
すなわち、硬化性組成物が所定量以上のシリカ粒子を含有することで、シリカ粒子が硬化膜の表面に偏在して、硬化膜の表面においてシリカ粒子による低屈折率の疑似的な層が形成されると考えられる。これにより、硬化膜が低反射化する結果、硬化膜の透過率が向上したと推測される。また、パターン形成時における現像液の浸透性が抑制でき、パターン形状の精度が向上したと推測される。
また、硬化性組成物が所定量以上の色材を含有することで、色分離性に優れた所望の色味の硬化膜を形成できたと推測される。
また、硬化性組成物中のシリカ粒子の含有量及び色材の含有量が所定量以下であることで、硬化性組成物のリソグラフィー性能が向上し、硬化膜のパターン形状の欠け等が抑制された推測される。」
すなわち、所定量のシリカ粒子及び色材を含有することで本件発明の課題を解決できることが記載されている。
そして、本件明細書には、実施例として、本件発明1の硬化性組成物又は本件発明13の硬化膜の原料となる硬化性組成物の要件を全て満たし、「シリカ粒子」の種類を変えた実施例G1~G15、「樹脂」、「重合性化合物」、「重合開始剤」の種類を変えた実施例G16~G20、G23、G25~G28、G30、G31、「色材分散液」の種類を変えた実施例B1~Y2、BK3~S2という様々な製造例が記載され、それらを用いて製造された硬化膜を有するカラーフィルタについて「透過率向上幅」、「色分離性」、「パターン形状の精度」、「残渣」、「耐湿試験後の剥がれ」、「欠陥」の評価がされ、少なくともいずれかは「A」の評価であり、また「パターン形状の精度」及び「残渣」のうち、少なくともいずれかは「C」以上の評価結果となったことが示されている(【表9】、【表10】)。ここで、「パターン形状の精度」、「残渣」、「耐湿試験後の剥がれ」の評価では、1.0μmのアイランドパターンを有するマスクを介して露光された硬化膜を有するカラーフィルタが用いられており(【0284】~【0286】)、その硬化膜は本件発明13の要件を満たす。
一方、「シリカ粒子」を含有しないか、わずかしか含有しない比較例G1~G5、G6A、B1~S1や、「シリカ粒子」を含んでいても、「色材」の含有量が25質量%と少ない比較例G6では、特に「パターン形状の精度」及び「残渣」の評価がいずれも「D」以下となることが示されている(【表11】)。
これらの記載からみて、所定量のシリカ粒子及び色材を含有し、本件発明1又は13の要件を満たすもの、及び本件発明1又は13を直接又は間接的に引用する本件発明2~12、14~17の要件を満たすものであれば、本件発明の課題を解決できることを当業者は認識できると認められる。
(4)申立人の主張について
上記第4の申立理由3で示した(1)~(3)の主張について個別に検討する。
ア 申立理由3の主張(1)について
本件発明1の硬化性組成物は「カラーフィルタ用、遮光部材用または反射防止部材用」という用途に用いられるものであるから、本件発明1でいう「樹脂」も、上記の用途に用いることが可能なものを意味するものと認められる。
そして、本件明細書には、「樹脂は、例えば、顔料などの粒子を硬化性組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。」と記載され、他の成分を組成物中に分散させる媒体として用いられるものであり、このような「樹脂」は上記の用途において通常配合される周知慣用の成分にすぎないものと認められる。
また、実施例においても、「樹脂」はB-1~B-6という6種類のものが用いられる(【0228】~【0234】、【0263】、【0264】)ところ、これらは、その構造も性質も様々なものであるところ、そのいずれを用いた場合でも本件発明の課題を解決できることが示されている。
そして、上記(3)で示したように、「シリカ粒子」と「色材」が所定量含まれていることが本件発明の課題を解決するために必要であると認められ、「樹脂」については、各成分を分散させ、又はバインダーとして働くような、「カラーフィルタ用、遮光部材用または反射防止部材用」の硬化性組成物において通常配合されるような任意の樹脂であればよいものと認められる。
イ 申立理由3の主張(2)について
被覆層を有さないシリカ粒子を用いた実施例G15Aは、「透過率向上幅」においては被覆層を有するシリカを用いた他の実施例に比べて劣るものの(【0289】の【表9】)、評価は「D」であり、【0282】において「A~Dの評価であれば実用上問題ないと判断した。」と記載されるように、実用上問題ない範囲のものである。
また、実施例G15Aは、「パターン形状の精度」及び「残渣」の評価がそれぞれ「B」評価となっており、全てが「D」以下の評価となっている比較例よりも優れているし、「色分離性」の評価は「A」という最高評価となっている。
これらのことからみて、被覆層を有さないシリカ粒子を包含する本件発明13であっても、本件発明の課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。
ウ 申立理由3の主張(3)について
本件発明11は「反射率が5%以下」というものであるから、本件発明10で特定される硬化膜のうち、「反射率が5%以下」という要件を満たすものである。
そして、【0293】に「実施例における硬化膜の反射率はいずれも5%以下であった。」と記載されるように、本件発明11の要件を満たす具体例も明らかである。
申立人が主張するように、仮にグリーン以外の色材において、「反射率が5%以下」を満たさないものが存在する可能性があるとしても、それは本件発明11の範囲外であるから、本件発明11の要件を満たすものが本件発明の課題を解決できないことを示すものではない。
したがって、申立人の主張はいずれも採用することができない。
(5)申立理由3(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~17に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、申立理由3によっては、本件発明1~17に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立理由1~3及び当審において通知した取消理由1、2によっては、本件発明1~17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700714