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特許異議申立

2025-700650

タンパク質食品素材、及び代替成形肉

審判番号
2025-700650
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-061388
登録番号
7604699
請求日
2025年06月20日
審決日
2026年04月22日
公報発行日
2026年07月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】富士フイルム株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】掛樋 美佐保
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 植前 充司
  • 審判官 壷内 信吾
分類
P1651.113-YAA(A23J) / P1651.121-YAA(A23J) / P1651.536-YAA(A23J) / P1651.537-YAA(A23J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7604699号発明「タンパク質食品素材、及び代替成形肉」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7604699号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第7604699号の請求項1、2及び4ないし7に係る特許を維持する。 特許第7604699号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立を却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7604699号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和5年9月7日を出願日とする特願2023-145665号の一部を令和6年4月5日に新たな特許出願(特願2024-61388号)としたものであって、令和6年12月13日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和7年6月20日に特許異議申立人 掛樋 美佐保(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされ、同年7月24日に特許異議申立人より手続補正書(方式)が提出(以下、手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書のことを、単に「特許異議申立書」という。)され、同年11月14日付けで取消理由が通知され、令和8年1月15日に特許権者 富士フイルム株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるともに意見書が提出され、同年同月30日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったところ、同年3月3日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否について 1 訂正請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7604699号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 令和8年1月15日にされた訂正請求にいる訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合が」 とあるのを、 「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が」 と訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び4ないし7についても同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下である、タンパク質食品素材」 とあるのを、 「空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下であり、 前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対応する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上である、タンパク質食品素材」 と訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び4ないし7についても同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の適否についての判断 (1) 訂正事項1および訂正事項2について 訂正事項1及び訂正事項2に係る請求項1の訂正は、「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合」に関し、請求項1の記載と実施例における算出法(【0088】)との間の齟齬を改め、「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合」とするとともに、タンパク質食品素材が「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対応する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上」との事項を満たすことをさらに特定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1及び訂正事項2に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0088】、【0097】、【0256】及び訂正前の請求項3の記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び4ないし7についても同様である。 (2) 訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項3の訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 5 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」を総称し「本件特許発明」ということがある。)は、令和8年1月15日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 植物性タンパク質を含み、少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有するタンパク質食品素材であり、繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり、かつ、空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下であり、 前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対応する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上である、タンパク質食品素材。 【請求項2】 前記繊維方向に直交する方向に平行な断面において、断面積当たりの空隙の個数が0.5個/mm2以上である、請求項1に記載のタンパク質食品素材。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記繊維方向に平行な断面において、空隙同士の長軸の交わる角度の平均値が30°以下である、請求項1又は請求項2に記載のタンパク質食品素材。 【請求項5】 前記繊維状領域を偏光赤外全反射吸収測定法により測定して得た赤外吸収スペクトルにおいて、前記繊維状領域の繊維方向に対して平行に偏光を照射して測定されたアミドIIバンドのピーク強度に対するアミドIバンドのピーク強度の強度比をXAとし、前記繊維状領域の繊維方向に対して垂直に偏光を照射して測定されたアミドIIバンドのピーク強度に対するアミドIバンドのピーク強度の強度比をXBとしたとき、配向度XA/XBが1.005≦XA/XBを満たす、請求項1又は請求項2に記載のタンパク質食品素材。 【請求項6】 前記繊維方向に直交する方向に平行な断面における0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合について、前記繊維方向の長手方向に沿った30cmごとに10個所計測したときの値の標準偏差が20%以下であり、幅方向に沿った1.5cmごとに3箇所計測したときの値の標準偏差が20%以下である、請求項1又は請求項2に記載のタンパク質食品素材。 【請求項7】 請求項1又は請求項2に記載のタンパク質食品素材を含む、代替成形肉。」 第4 特許異議申立理由の要旨 特許異議申立人が特許異議申立書において申し立てた請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由1-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 5 申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 6 申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 7 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由3の具体的理由は、次のとおりである。 (1) 申立理由3-1(繊維方向について) 本件特許発明1の「繊維方向」に関し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0094】や【0238】の記載があるが、このようなタンパク質食品素材の端部を両手で持つ場合、引き裂ける方向は、食品素材においてどの端部を持つかにより大きく変化することが想定されるため、繊維方向は一義的に決定されないものであるし、このような不明確な繊維方向を基準の方向として行われた各試験方法が、当業者による再現性が高いという技術常識も存在しない。 本件特許発明2ないし7についても同様である。 (2) 申立理由3-2(「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」及び「全空隙の個数」について) 本件特許発明1の「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」及び「全空隙の個数」について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0240】には、測定・算出方法に関する記載があるが、当該測定・算出方法は、全ての空隙が独立して完全な形状であることを前提とするものであり、例えば、壁の一部のみにおいて融合しているもの、全体としては2つの形状にカウントすることができるような空隙をどのように処理しているのかについて、何ら指針とする記載がない。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、測定の際に用いられた断面写真が全く掲載されていないため、当業者が明細書全体の記載から、空隙の形状をどのように扱ったのか判断することもできない。 本件特許発明2ないし7についても同様である。 (3) 申立理由3-3(タンパク質含有混合物の温度について) 特許権者は令和6年8月26日付けで提出した意見書において、「審査官殿は、引用文献1の実施例に記載の『押し出し部出口温度(155℃)と冷却ダイ出口温度(105℃)、冷却ダイ長さ(350mm)』より、タンパク質混合物の温度、及び降温速度((155-105)/350=0.14℃/mm)を推測していますが、この計算式には、タンパク質混合物の吐出速度、冷却ダイ内部の通過速度、冷媒の温度、構成部材の熱容量の観点等が含まれておらず、構成部材の設定温度からタンパク質混合物の温度、及び降温速度を見積もることは到底できません。・・・本願明細書が記載するタンパク質混合物の温度、及び降温速度は、押し出し部出口温度(155℃)と冷却ダイ出口温度(105℃)、冷却ダイ長さ(350mm)から、一義的に算出できるものではありません。」と主張する。 この主張を参酌すると、タンパク質混合物の温度を制御するためには、タンパク質混合物の温度を制御するためには、タンパク質混合物の吐出速度、冷却ダイ内部の通過速度、冷媒の温度、構成部材の熱容量などの情報が必要であり、単にダイ出口の設定温度を制御するだけでは、タンパク質混合物の温度を制御することは不可能であるといえる。 一方、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、タンパク質混合物の温度の制御方法について、「押出機の出口部におけるタンパク質含有混合物の温度が、表1記載の温度となるよう、加圧及び加熱することで混練し」(【0222】)、「吐出ダイの出口部のタンパク質含有混合物の温度が110℃になるよう、吐出ダイの温度を制御する」(【0224】)との記載があるにとどまるから、当業者は、何を指標としてタンパク質混合物の温度を制御するのか分からない。 さらに、タンパク質含有混合物の温度についても、ダイから吐出されたタンパク質含有混合物は、室温に暴露することにより急速に冷却されるため、ダイ出口のどの地点で、どのように温度を所定の吐出速度で吐出された吐出物を測定しているか、測定条件についても何ら記載されていない。 特許権者は、0.07℃レベルでの降温条件を主張しているところ、そのような精密な温度制御が必要であるにもかかわらず、単にダイ出口の設定温度を制御するだけでは制御できないと明言し、上述したようにタンパク質混合物の吐出速度、冷却ダイ内部の通過速度、冷媒の温度、構成部材の熱容量などの情報が必要であるとも主張している。 一方、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、押出機の出口部および吐出ダイの出口部におけるタンパク質混合物の温度を測定する具体的な条件は何ら記載されていないため、当業者が、そもそも、タンパク質混合物の温度を測定することすらできず、過度の試行錯誤を要することになるため、実施することができない。 本件特許発明2ないし7についても同様である。 8 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由4の具体的理由は、次のとおりである。 (1) 申立理由4-1(「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」について) 本件特許発明1の「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」とは、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0240】においてノイズとして除去された0.01mm2以下の断面積を有する空隙を含むものである。 よって、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載に基づかない部分を有するものであるから、サポート要件を満足しない。 本件特許発明2ないし7についても同様である。 (2) 申立理由4-2(比較例6と本件特許発明の課題について) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0053】及び【0054】には、繊維化のメカニズムについて記載されている。 ここで、比較例6を参照すると、比較例6は、押出部の出口におけるタンパク質含有混合物の温度が180℃、降温速度を0.17℃/mm、吐出部の出口におけるタンパク質含有混合物の温度が105℃であり、押出部の出口部において「180℃未満」と条件に殆ど差がないため、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された繊維化のメカニズムにより繊維構造を形成する可能性が高いが、比較例6では空隙に関するデータを一切掲載していないため、特許権者の主張の適否を認めることができない。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0259】では、比較例6について「焦げが生じていた」ことを比較例とする理由にしている。 とすると、本件特許発明の課題は、「焦げが生じていない」ことが必要であると認められるところ、焦げについて何ら言及していない本件特許発明1ないし7は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているものとはいえない。 (3) 申立理由4-3(本件特許発明6について) 本件特許発明6は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0247】の記載からすると、長さ330cmに切断して得られたシート状サンプルであると考えられるところ、本件特許発明6には、シート状サンプルの形状が規定されていないため、測定することができない形状のタンパク質食品素材を含むものであるから、サポート要件を満足しない。 9 申立理由5(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由5の具体的理由は、次のとおりである。 (1) 申立理由5-1(繊維方向について) 上記7(1)で検討したとおり、本件特許発明1ないし7における「繊維方向」とはどの方向であるか、当業者が一義的に決めることができない。 よって、本件特許発明1ないし7は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (2) 申立理由5-2(0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数について) 上記7(2)で検討したとおり、本件特許発明1ないし7における「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」に関し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載では0.01mm2以下の断面積を有する空隙をノイズとして除去しているため、本件特許発明1ないし7における「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」とは、どの断面積の空隙の個数を意味しているのか不明確である。 (3) 申立理由5-3(全空隙の個数について) 上記(2)と同様の理由により、本件特許発明1ないし7における「全空隙の個数」とは、どの空隙を測定対象とし数えたものであるのか、その意味が不明である。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、空隙の形状の判断基準についても記載されていないため、例えば、次に掲げるFIG 13Bの丸で囲まれたような、壁の一部が書けた形状の空隙を1つの空隙としてカウントするのか、2つの空隙としてカウントするのか不明であり、結果として「全空隙の個数」とはどのような基準でカウントされたものであるか不明である。 [図:0001437383000001.jpg] (4) 申立理由5-4(「繊維方向に直交する方向に平行な断面」について) 上記(1)で述べたとおり、「繊維方向」が不明確であるため、本件特許発明2ないし7における「繊維方向に直交する方向に平行な断面」についても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (5) 申立理由5-5(「断面積あたりの空隙の個数が0.5個/mm2以上」について) 上記(3)で述べたとおり、空隙の測定対象及びカウント基準が不明確であるから、本件特許発明2ないし7における「断面積あたりの空隙の個数が0.5個/mm2以上」とはどの空隙を測定対象とし数えたものであるのか、その意味が不明である。 また、「0.5個/mm2以上」について、下限値のみを規定しているため、上限の範囲が定まらず、その範囲が不明確である。 (6) 申立理由5-6(「繊維方向に平行な断面」について) 上記(1)と同じ理由により、本件特許発明3及び4における「繊維方向に平行な断面」についても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (7) 申立理由5-7(「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値が2以上」について) 本件特許発明3における「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値が2以上」とは、下限値のみを規定しているため、上限の範囲が定まらず、範囲が不明確である。 (8) 申立理由5-8(「角度の平均値が30°以下」について) 本件特許発明4における「角度の平均値が30°以下」とは、上限値のみを規定しているため、加減の範囲が定まらず、範囲が不明確である。 (9) 申立理由5-9(「繊維方向に対して平行」及び「繊維方向に対して垂直」について) 上記(1)と同じ理由により、本件特許発明5における「繊維方向に対して平行」及び「繊維方向に対して垂直」についても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (10) 申立理由5-10(「配向度XA/XBが1.005≦XA/XB」について) 本件特許発明5における「配向度XA/XBが1.005≦XA/XB」とは、下限値のみを規定しているため、上限の範囲が定まらず、範囲が不明確である。 10 証拠方法 ・甲第1号証:S.GWIAZDA, A.NOGUCHI, K.SAIO, “MICROSTRUCTURAL STUDIES OF TEXTURIZED VEGETABLE PROTEIN PRODUCTS: EFFECTS OF OIL ADDITION AND TRANSFORMATION OF RAW MATERIALS IN VARIOUS SECTIONS OF A TWIN SCREW EXTRUDER”, FOOD MICROSTRUCTURE, Vol.6(1987), pp.57-61 ・甲第2号証:国際公開第2021/250252号 ・甲第3号証:国際公開第96/36242号 また、特許異議申立人は、令和8年3月3日提出の意見書において、参考資料1及び2を添付するとともに、さらに次の申立理由を主張している(なお、特許異議申立書において主張する申立理由と重複する部分は省略する。また、申立理由の付番は、根拠条文毎に共通の番号を付番する。)。 11 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由4に関し、新たに主張する具体的理由は次のとおりである。 ・申立理由4-4(配向度XA/XBの範囲について) 訂正後の請求項5は「前記繊維状領域の繊維方向に対して平行に偏光を照射して測定されたアミドIIバンドのピーク強度に対するアミドIバンドのピーク強度の強度比をXAとし、前記繊維状領域の繊維方向に対して垂直に偏光を照射して測定されたアミドIIバンドのピーク強度に対するアミドIバンドのピーク強度の強度比をXBとしたとき、配向度XA/XBが1.005≦XA/XBを満たす」ことを規定している。 しかしながら、訂正後の請求項1は実施例4に基づき「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上」と規定し、実施例4では、配向度XA/XBが1.027であることから、「1.005≦XA/XB」との範囲は、明細書にサポートされていない。 12 申立理由5(明確性要件) 本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由5に関し、新たに主張する具体的理由は次のとおりである。 (1) 申立理由5-11(「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上」について) 訂正請求で本件特許明細書の段落【0256】の表1に示されている実施例4に基づき訂正された短軸の長さに対する長軸の長さの比率(以下、アスペクト比と称する場合がある)の平均値「5.1」は、本件特許明細書【0245】の記載により算出された値である。本件特許明細書【0245】には「-20℃で冷凍保管していたタンパク質食品素材を、室温(23℃)、相対湿度20%RHの環境下に静置し、解凍させた。・・・繊維方向に平行な平面に含まれる1.5cm角の面積領域を拡大した断面像を取り出し、明部に囲まれた暗部を空隙として目視で検出した。10個の空隙を任意に選択したこの断面像に、10個の空隙が存在しない場合は、別の断面像を取り出した。・・・そして、10個の空隙についてのアスペクト比を平均して平均値を求めた。」と記載している。 なお本件特許明細書【0079】には「押出工程において押出された混合物(即ち、タンパク質食品素材)は、特段の加工を行わず、そのまま代替肉として用いることができる。すなわち、押出された混合物(タンパク質食品素材)は、加熱済みの代替肉として、そのまま用いることができる。押出された混合物の状態のまま、混合物を任意の調味料等で調理してもよい。」と記載しているため、実施例で得られたタンパク質食品素材は通常の肉程度の水分を含有している。 まず、この記載では、10個の空隙を任意に選択するための「任意」が恣意的な選択であるのか、ランダムな選択であるのか不明である。例えば、特許異議申立書の中で説明したように、甲第2号証の図4Eを見た場合、例えば、図の中心点からやや左下にある大きな空隙は、壁の一部が欠けているようにみえるため、3つの空隙か、1つの空隙か、または2つの空隙か、どのようにカウントするかによって、アスペクト比の値は大きく異なる。 さらに、参考資料1に記載されているように、「食品を冷凍すると,食品中の水分が凍結することにより氷結晶が生成され,食品の組織が変形,損傷を受け品質が低下する」(65頁)ため、水分を含むタンパク質食品素材は、氷結晶の形成が生じる冷凍条件に応じて空隙率が大きく異なる。そして、本件特許明細書には冷凍条件が記載されていないため、当業者は、タンパク質食品素材を測定するに当たり、どのような冷凍条件で冷凍すればよいのか理解できない。 例えば、参考資料1には、「凍結速度がただ速ければ品質保持ができるわけではなく、最適な凍結速度があることを見いだした」こと(65頁左欄下から6-8行)が記載され、「各速度で凍結して3週間,-20℃下で保存後,家庭用冷蔵庫の冷蔵室にて解凍した鶏ササミの横断面の状態をSEMを用いて20000倍の倍率で観察した」(65頁右欄下から17-19行)鶏ササミの解凍後の写真が第4図(A)および(B)に掲載されている。 第4図(B)は繊維方向に直交する方向に平行な断面であるため、アスペクト比に関する繊維方向に平行な断面ではないが、空隙は繊維方向に沿って形成されるため、後述する参考資料2の図4に示すように、アスペクト比にも大きな影響を与える。 そして、第4図(B)を参照すると、-20℃で保存された場合、凍結速度により解凍後の空隙率には大きな差が生じており、例えば0.1℃/min、0.5℃/min、1℃/min、5℃/min、12℃/min、400℃/minの間で、冷凍前の空隙率0.3%に対して空隙率は8%~32%の間で大きく変動することが分かる。 また、0.1℃/min、0.5℃/min、1℃/minというわずかな温度差であっても解凍後の空隙率は大きく異なる。したがって、冷凍する際の凍結速度が設定されなければ、アスペクト比の平均値が5.1以上という値について正確な値を算出することができない。 [図:0001437383000002.jpg] したがって、冷凍条件について何ら記載していない本件特許明細書を参酌しても、「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上」の規定では、どの冷凍条件で冷凍を行ったタンパク質食品の値であるか明確にすることができないため、訂正後の請求項1の記載は当業者において不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (2) 申立理由5-12(「5.1以上」との範囲について) 訂正後の「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上」とは、5.1以上の全ての値を含むものであり、発明の範囲を不明確にしている。 (3) 申立理由5-13(「空隙同士の長軸の交わる角度の平均値が30°以下」について) 訂正後の請求項4には、「空隙同士の長軸の交わる角度の平均値が30゜以下」を規定しており、特許明細書の段落 【0246】に「空隙のアスペクト比の平均値を算出する方法と同様に、 10個の空隙を任意に選択した」と記載している。そして、参考文献2にあるように、冷凍条件により空隙同士の形状は変化するため、空隙同士の長軸の交わる角度についても、冷凍条件について何ら記載していない本件明細書からは、どの冷凍条件で冷凍を行ったタンパク質食品の値であるか明確にすることができないため、当業者において不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 13 証拠方法 ・参考文献1:安信淑子、松山真衣、「おいしい「冷凍」や,調理時の時短・省手間を実現した家庭用冷蔵庫の開発」、Panasonic Technical Journal、第68巻第1号、2022年5月、第64頁ないし第68頁 ・参考文献2:Indira Perez-Bermudez et al., “Observation and Measurement of Ice Morphology in Foods: A Review”, Foods, 2023, 12, 3987 (全19頁)、2023年10月31日発行 第5 令和7年11月14日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨 令和7年11月14日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、取消理由には申立理由5-2、申立理由5-3の一部(申立理由5-2に起因する部分)、申立理由1-1及び申立理由2-1を包含する。 1 取消理由1(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、取消理由1の具体的理由は次のとおりである。 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0088】、【0105】、【0240】の記載によると、画像処理において、「一定面積以下(0.01mm2以下)の暗部領域をノイズと定義して除去」した上で、空隙のサイズを検出し、各空隙の断面積(mm2)を算出し、得られた断面積に基づき、切断面に存在する空隙の全個数に対する0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合(%)を算出している。 つまり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0088】、【0105】、【0240】の記載における「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」とは、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」から「0.01mm2以下の暗部領域」にあたるもの、即ち「0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数」を除いているものであるといえる。 してみると、本件特許発明1では「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」と特定するところ、本件特許の明細書の発明の詳細な説明においては、「0.01mm2以下の断面積を有するもの」が除かれた上で、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」の個数がカウントされるもの、即ち、「0.01mm2以下の断面積を有する空隙」の個数は無視されたものとなっている。 通常、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」とは、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」の個数であり、「0.01mm2以下の断面積を有する空隙」の個数も含まれるものと解されるものであることを考えると、結果として、本件特許発明1における「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」との特定事項の技術的意味が、当業者において不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると言わざるを得ない。 また、上記のとおり、本件特許発明1ないし7において特定するところの「空隙」について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明によると、「0.01mm2以下の断面積を有する空隙」を含まずに検討されたものであること、すなわち、本件特許発明1ないし7において特定されている「空隙」の通常の意味とは異なるものとして取り扱っていることから、本件特許発明1における「全空隙の個数」との特定事項(「個数」が異なることとなるため)、本件特許発明2における「断面積当たりの空隙の個数が0.5個/mm2以上」との特定事項(「個数」が異なることとなるため)についても、それぞれの特定事項の技術的意味が、当業者において不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると言わざるを得ない。 上記で取り上げた各特定事項を含むこととなる従属項においても同様に判断される。 2 取消理由2(甲第1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由3(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 当審は、取消理由及び申立理由のいずれの理由によっても、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 1 令和7年11月14日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由について (1) 取消理由1(明確性)について ア 取消理由1についての判断 上記第2及び第3のとおり、訂正により、本件特許発明1における「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」との特定事項は、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)」と訂正された。 これにより、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」は、「0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数」であって、「0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く」ものであることが明確となった。 また、当該訂正により、本件特許発明1における特定事項は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における記載と整合するものとなった。 よって、取消理由1は解消した。 イ 取消理由1についてのまとめ 上記アのとおりであるから、取消理由1では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 (2) 取消理由2及び取消理由3(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について ア 甲第1号証の記載事項等 (ア) 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「Microstructural Studies of Texturized Vegetable Protein Products:Effects of Oil Addition and Transformation of Raw Materials in Various Sections of a Twin Screw Extruder」に関し、次の記載がある。なお、甲第1号証は外国語文献であるから、抄訳のみ摘記する(他の文献についても同様である。)。 「押出調理技術は、多くの食品に繊維感を付与し、膨張した、繊維感のあるまたは繊維状の構造を生産するために使用されてきた。米国では、単軸押出機を使用したこのようなプロセスは、主に脱脂植物タンパク質から肉代替品を作製するために広く応用され、一方、ヨーロッパでは、二軸押出機が主に穀物の繊維化に用いられ、パン代替品の生産に活用されている。これらの技術は日本の食品産業にも導入され、日本市場で急速に開発・応用されてきた。過去数年間、二軸押出機は、圧縮、混合、反応、テクスチャリング、殺菌、酵素の不活化など多様な用途に対応可能な点から、日本の食品産業において特に注目されている。混合、練り、反応、繊維化、殺菌、酵素の不活化など、多様な用途に対応できるためである。マイクロ構造技術が繊維化製品の品質と変化を研究する有用なツールであることが証明されたため、多くの研究者が、単軸スクリュー押出機で製造された繊維化製品におけるタンパク質含有量、タンパク質溶解度、pH、イオン強度、添加物が繊維化製品に与える影響を調査してきた(Faubion and Hoseney, 1982a; 1982b; Neumann et al., 1984; Noguchi et al., 1981 ; Rhee et al., 1981; Simonsky and Stanley, 1982)。 しかし、脂質含有量の影響に関する報告はほとんどない(Faubion and Hoseney, 1982b)。これは、単軸スクリュー押出機の設計上、材料がバレルとスクリュー間の摩擦力によって輸送されるため、高脂質含有量を使用できないためである。したがって、私たちは大豆の押出物の微細構造に対する油添加の影響を調査し、その結果をここに報告する。」(第57頁右欄第2行ないし第38行) 「材料および方法 材料 粗タンパク質55%、水分10.5%、窒素溶解指数(NSI)31.1の脱脂大豆粕(ニッシンFT)に油を添加した際の、押出物の微細構造に与える影響を調査した。材料は5%、10%、または15%の大豆油とともにミキサーとチョッパーで混合された。 押出機内の材料の変容を調査するために使用された全脂大豆粉とデンプンの混合物は、全大豆を粉砕し、0.5mmに篩い分け、その後5%のジャガイモデンプンと混合して調製した。 押出調理条件 長い冷却ダイを備えるクレウソ・ロワール BC-45共回転二軸押出機を使用した。スクリュー速度は、15%の油を含む脱脂粉以外は60rpmで行われ、15%の油を含む脱脂粉は120rpmで押出した。フローレートは15kg/hrであった。通常運転時のバレル温度は180℃であった。図1に示すように、スクリューの幾何形状は、ダイ側から逆回転-正回転-逆回転-正回転-正回転の順であった。サンプル粉の水分含有量は60%であった。 顕微鏡標本の調製 初期の大豆粉は温かいアガー溶液と混合し凝固させた。アガーの小さな一片をリン酸緩衝液(pH7)中の1%オキシムテトラオキシドで固定し、エタノール系で脱水後、エポキシ樹脂に包埋した。樹脂を薄切し、ガラススライド上に配置し、タンパク質用にコームスィー・ブリリアント・ブルー(CBB)、炭水化物用にペルオキシ酸シフ試薬(PAS)で染色し、光顕微鏡で観察した。押出物は、アガーゲルヘの埋め込みを除き、初期の粉と同様に処理した。押出物を、押出方向に沿って長さ方向(押出方向と平行)および直交方向(押出方向と直交)に観察した。押出機中の内容物は、図1に示す位置A-Gで、押出機停止後5~7分に取り出された。押出物および押出機の内容物は、上記と同様に処理された。」(第58頁左欄第4行ないし第45行) 「押出調理後、長さ方向の断面において観察された押出物は、図4(A~D)に示すように、よく整列した繊維状の構造を示している。しかし、油分含量が増加するにつれ、繊維の長さ方向の整列度が低下し、フィブリルの厚さが増加し、空気細胞のサイズも増加した。繊維状タンパク質マトリックス中に観察された脂肪球は、初期の粉体中の油滴よりも小さく、より球形であった。これらの押出調理条件下では、添加された油はすべてこの状態で存在していた。 直交方向の断面における微細構造も、繊維状ネットワーク(図4E~H)を明確に示している。長さ方向断面と同様に、押出物の油含量が増加するにつれ、フィブリルの厚さが増加し、空気細胞のサイズも増加した。」(第58頁右欄第9行ないし第26行) 「 [図:0001437383000003.jpg] 図4 脱脂大豆粉に0~15%の大豆油を添加して製造した押出物の光顕微鏡写真。CBBで染色。 A、B、C、D:それぞれ0%、5%、10%、15%の大豆油を添加した押出物の長さ方向の断面。CBBで染色。E、F、GおよびH:大豆油を0%、5%、10%、15%添加した押出物の直交方向の断面切片で、CBBで染色。 O;油滴が繊維網全体に散在している。すべての図の拡大率はHに示す通り。」(第59頁第4図) (イ) 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の図4において、A~Dは押出調理後の長さ方向の断面における光顕微鏡写真であり、E~Hは直交方向の断面における光顕微鏡写真である。 そこで、図4のE~Hそれぞれの断面写真に基づいて、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0240】、【0242】の方法に従って「全空隙の個数に対する0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合」、「空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚み」、「断面積当たりの空隙の個数」を算出すると、次のようにまとめられる(なお、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0242】の手順に準じた際に取り上げた空隙を示す写真についても併せて示す。)。 [図:0001437383000004.jpg] [図:0001437383000005.jpg] また、「短軸の長さに対する長軸の長さの比率の平均値」及び「空隙同士の長軸の交わる角度の平均値」についても、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0245】、【0246】の方法に従って算出すると、次のようにまとめられる。 [図:0001437383000006.jpg] [図:0001437383000007.jpg] 以上の点を踏まえ、図4のA~Hに示されるタンパク質食品素材についてまとめると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。 「粗タンパク質55%、水分10.5%、窒素溶解指数(NSI)31.1の脱脂大豆粕を含み、 整列した繊維状の構造を示すとともに、多孔質構造を有するタンパク質食品素材であって、 繊維方向に直交する方向に平行な断面において、0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合が、断面積に存在する全空隙の個数に対して86.7~92.9%であり、 空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが91μm以下であり、 前記繊維方向に直交する方向に平行な断面において、断面積当たりの空隙の個数が0.5個/mm2以上であり、 前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対する長軸の長さの比率が3.5~4.3であり、 前記繊維方向に平行な断面において、空隙同士の長軸の交わる角度の平均値が3.9~4.8°である、 タンパク質食品素材。」(以下、「甲1発明」という。) イ 対比・判断 (ア) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「脱脂大豆粕」は粗タンパク質を55%含むものであるから、本件特許発明1の「植物性タンパク質」に相当する。 また、甲1発明のタンパク質食品素材は、「整列した繊維状の構造を示すとともに、多孔質構造を有する」ものであるから、本件特許発明1の「少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有する」との特定事項を満たす。 さらに、甲1発明のタンパク質食品素材は、「空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが91μm以下」であるから、本件特許発明1の「空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下」との特定事項を満たす。 してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「植物性タンパク質を含み、少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有するタンパク質食品素材であり、空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下である、タンパク質食品素材。」 (相違点) ・相違点1-1 本件特許発明1は「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 ・相違点1-2 本件特許発明1は「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙に、短軸の長さに対応する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上である」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。 甲1発明における「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対する長軸の長さの比率」は「3.5~4.3」であるから、相違点1-2は実質的にも相違点である。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明ではない。 また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対する長軸の長さの比率」の「平均値が5.1以上」となるようにする動機付けはない。 よって、甲1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (特許異議申立人の主張について) 特許異議申立人は、令和8年3月3日提出の意見書(以下、「意見書」という。)において、甲第4号証や参考資料2を参照しつつ、甲1発明においても、冷凍・解凍処理が行われれば、「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対する長軸の長さの比率」は「3.5~4.3」よりも大きくなる蓋然性が高いこと、本件特許明細書の図面における電子顕微鏡写真や実施例全体を通じた繊維感の評点などを挙げつつ、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことにより顕著な効果が認められないことなどを主張する(意見書第8頁ないし第10頁)。 しかしながら、全ての証拠を見ても、甲1発明において「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対する長軸の長さの比率」の「平均値が5.1以上」となることを具体的に示す証拠はないから、本件特許発明1は、甲1発明であるということはできない。 また、甲1発明において、「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対する長軸の長さの比率」の「平均値が5.1以上」となるようにする動機付けもないから、甲1発明を出発点として、本件特許発明1の発明特定事項を導くことはできない。 よって、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用できない。 (イ) 本件特許発明2及び4ないし7について 本件特許発明2及び4ないし7はいずれも、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4ないし7もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 取消理由2及び取消理由3についてのまとめ 上記イのとおりであるから、取消理由2及び取消理由3では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 2 令和7年11月14日付け取消理由通知において採用しなかった申立理由について (1) 申立理由1-2及び申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について ア 甲第2号証の記載事項等 (ア) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「A METHOD FOR IMPROVING THE PROTEINACEOUS FIBRE STRUCTURE OF A TEXTURED VEGETABLE PROTEIN PRODUCT, METHODS OF CONTROLLING THE MOUTHFEEL OF A TEXTURED PROTEIN, AND TEXTURED VEGETABLE PROTEIN PRODUCTS」に関し、次の記載がある。なお、記号については、システムの都合上置き換えた部分(横向きの三角印を矢印に置き換え)がある。 「繊維状植物性タンパク質製品のタンパク質性繊維構造を改善する方法において、低水分タンパク質繊維形成押出を行うように構成された押出機を用いて押出物が作製され、前記押出物は、タンパク質繊維間に気泡などの膨張に関連した空隙を有するタンパク質繊維構造を含み、押出後、押出物は、請求項1において特定された方法で、押出物のタンパク質繊維を実質的にそのまま残す方法で圧縮または圧密化される。圧縮または圧密化は、タンパク質繊維間の膨張関連空隙のサイズに不可逆的な減少を引き起こす期間にわたって持続され、好ましくはタンパク質繊維間の結合の増加も引き起こす。独立クレームには、繊維状植物性タンパク質製品および繊維状植物性タンパク質製品の口当たりを制御する方法も含まれる。」(Abstractの項) 「本発明の第2の目的は、口当たりを改善し、低水分押出し成形による食肉加工技術を用いて製造された食肉様植物性タンパク質製品の構造的完全性および調理耐性を改善することである。」(第2頁第7行ないし第10行) 「膨張関連空隙(好ましくは気泡)は、不可逆的なサイズ減少の後、繊維状植物性タンパク質製品の厚さおよび長さ方向の断面において、実質的な割合(例えば、22~96%)の膨張関連空隙が、0.03mm2未満の断面積を有するのが好ましい。本発明者らは、この厚さ方向および長さ方向の断面積の減少が、繊維状植物性タンパク質製品の、食感の改善、しっかりとした(高密度の)、筋肉のような噛み応え感(口当たり)の改善、スポンジ状感の低減、密度の増加(食肉製品の密度に近づく)、構造的完全性の改善、および調理耐性の改善に大きく寄与すると、想定している。 膨張関連空隙(好ましくは気泡)は、不可逆的なサイズ減少の後、幅対長さの比率が22%未満、好ましくは15%未満となる。本発明者らは、この幅対長さの比率の減少が、繊維状植物性タンパク質製品の、食感の改善、しっかりとした(高密度の)、噛み応え感 (口当たり)の改善、スポンジ状感の減少、密度の増加(食肉製品の密度に近づく)、構造的完全性の改善、および調理耐性の改善に大きく寄与すると想定している。」(第12頁第5行ないし第26行) 「実験1 衝撃圧縮された繊維状植物性タンパク質押出物の製造(レシピ1) 実験手順:乾燥減量の混合→低水分押出→圧縮→パッキングおよび評価 ステップ1:乾燥材料(タンパク質、必要に応じて小麦粉および/またはふすま)の混合:レシピ1.マメ科植物タンパク質粉ミックス(タンパク質単離物おおよびエンドウ豆およびインゲンマメのタンパク質濃縮物の混合物)65%、およびオートブラン35%。十分に混合する。 ステップ2:低水分押出条件:装置および設定は、例えば欧州特許第3361880号B1に開示されているように、当該技術分野において典型的な公知のものである。主な特徴:低水分押出用押出機ダイアセンブリを備えた二軸押出機、ダイアセンブリの長さは好ましくは10~20cm、ダイアセンブリの出口の直径は好ましくは5mm。 スクリュー速度300rpm、温度プロファイル60℃→180℃→130℃の6つの温度セクションを使用した押出。生産速度30~40kg/h。粉末原料は固体フィーダーからスクリューの始動口(温度セクション1)に供給される。水(水道水)は温度区間2で供給される。押出中の押出材料の含水率(粉末原料の水分と液体フィーダーの水分の合計)は、液体フィーダーの供給速度を設定することで、22~26%、好ましくは24%に近い値に制御された。 ステップ3:コンパクト化/圧縮:ダイ穴(直径=5mm)から出てきた押出物は、瞬時に直径9.5-10.5mmに膨張した。その後、サンプルを採取し、押出5秒後に手動製パン機で圧縮した。押出物に加えられた圧縮圧力および時間は、約86~115psiで5秒間であった。圧縮後、押出物の厚さは1.6~2.0mmに減少した(厚さ減少率80%~85%)。 押出後の時間による圧縮結果への影響を調査するために、同じ圧縮力で異なる押出後の時間(例えば、3秒、10秒、30秒、60秒、80秒)で圧縮工程を実施した。」(第36頁第3行ないし第37頁第8行) 「実験9 実験手順 乾燥原料の混合→低水分押出→圧縮→パッキングおよび評価 ステップ1:2種類の乾燥原料(ふすまおよび/または小麦粉と、タンパク質)の混合:レシピA.エンドウ豆タンパク質単離物6kg、オートブラン4kgを秤量し、十分に混合する。(実験3で最初に開示されたとおり);およびレシピB.エンドウ豆タンパク質25%、ヒヨコマメタンパク質25%、オートブラン20%、オートミール粉10%、オート麦タンパク質20%(実験6で最初に開示されたとおり)。 ステップ2:低水分押出条件:実験1と同じ。 ステップ3:圧縮:実験3と同様。ダイ穴(直径=5mm)から出てきた押出物は、瞬時に直径10-15mmに膨張した。 その後、サンプルを採取した。次に、押出後の時間を変えて、これらのサンプルを手動ドウプレス機を用いて1.6mmの薄さに圧縮した(圧縮後の押出物の厚さは、元の厚さの9%から12%の間)。押出物に加えられた圧縮圧力は、約86-115psi(5.93barから7.93bar)であった。押出後の時間による圧縮結果への影響を調査するために、同じ圧縮力で押出後の時間を10秒と60秒に変えて圧縮工程を実施した。また、比較のために、圧縮を行わない押出サンプルも採取した。 この実験で製造されたサンプルが表14に列挙されている。 [図:0001437383000008.jpg] サンプルは、X線マイクロトモグラフィー(マイクロ-CT)スキャンおよび光学顕微鏡を用いて分析した。 押出された澱粉の朝食シリアルの微細構造を特徴付けるためのX線マイクロトモグラフィー(マイクロ-CT)スキャンの使用法は、当業者にとって利用可能であり、例えばJ.M.R.Diazらの文献を参照することができる。 X線マイクロトモグラフィー(マイクロ-CT)スキャンで使用された設定は、スキャン画像の各ピクセルが0.01mmの物質長を表すというものであった。最適な解像度を得るために、ピクセルサイズが10μm(0.01mm)で、スキャンプロセス中にサンプルを合計180°回転させた。 図13A、13B;図14A、14B、14C;図15A、15B、15C;図16A、16B;図17A、17B、17Cに示すマイクロ-CTスキャンの結果は、画像処理パッケージであるオープンソースソフトウェアFijiを使用した再スライス技術により作成された。これらの図に示される写真は、代表的な図として選択されたものであり、スキャンされた製品のほぼ中央(すなわち、スキャンされた製品の表面ではない)でスキャンされた平面(層)である。これらの図における暗い色調は、固体材料(すなわち、タンパク質性材料)を示す。より明るい色調は気泡を示す。 実験9において、図12A、12B、12C、12D;図13A、13B;図14A、14B、14C;図15A、15B、15C;図16A、16B;図17A、17B、17C;および図18A、18Bでは、製品の3つの寸法は、「長さ」(B)、「厚さ」(T)、および「幅」(W)寸法として説明されている。 ・長さ寸法とは、押出機ダイから押し出される押出材料の移動方向(平行)に沿った寸法を指す; ・厚さ寸法とは、製品の最短寸法を指し、圧縮方向(圧縮サンプルの場合 )に垂直であるか、またはサンプルの直径と同じである(非圧縮サンプルの場合、長さ寸法に垂直); ・幅寸法とは、長さ寸法に垂直であり、同時に厚さ寸法aにも垂直であった。 図12Bおよび図12Dの比較で示されるように、押出物は圧縮後に明らかに薄くなっている。 X線マイクロトモグラフィー(マイクロ-CT)走査画像は、Fiji解析ソフトウェアを用いて定量的に解析した。我々は、Fiji解析ソフトウェア(バージョンImageJ 1.52i、2021年6月1日から11日の間にダウンロード、Wayne Rasband、米国国立衛生研究所、http://imagej.nih.gov/ij。Java 1.8.0_172(64ビット)。ImageJはパブリックドメインである)を使用した。 図13A、図14B、図15B、図16Aの気泡の長さおよび幅を、各サンプルについて少なくとも15の測定ポイントで測定した。(「厚さ×長さを含むビュー」)。最小値、平均値、最大値を算出した。測定は、Fiji解析ソフトウェアの長さ測定機能を使用して実施した。結果を表15に示す。 [図:0001437383000009.jpg] 図13A、図14B、図15B、図16Aの各気泡の幅と長さの比を算出した。(「厚さ×長さを含むビュー」)。測定は、Fiji解析ソフトウェアの粒子解析機能を用いて実施した。結果を表16に示す。 [図:0001437383000010.jpg] 図13A、14B、15B、16Aおよび表15および表16から分かるように、圧縮押出物の気泡は、非圧縮押出物の気泡よりも明らかに長さおよび幅が小さい。圧縮押出物の気泡は、より細長い、あるいは引き伸ばされたような、あるいは狭まった形状であることが明らかであり、各気泡の幅と長さの比率は、約22~39%(平均値、#PANおよび#BN、無圧縮)から12%(#AC60)に、さらに11%(#AC10および#BC10、押出後の短い時間で圧縮)に大幅に減少している。この結果は、低水分押出により製造された押出成形品を押出後に圧縮し、主に幅が0.5mm未満、好ましくは0.2mm未満、より好ましくは0.1mm未満の気泡を含むことを示している。これに代わる方法またはこれに加えて、押出成形品は、主に幅対長さの比が22%未満、好ましくは15%未満の気泡を含むと特徴付けることができる。」 (イ) 甲第2号証に記載された発明 上記(ア)の記載、特に実験9のレシピAを用いた名称「#AC60」に関する記載を中心に整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。 「エンドウ豆タンパク質単離物6kg、オートブラン4kgを秤量し、十分に混合し、低水分押出を行い、その後60秒間で圧縮を行って得られた圧縮押出物であって、 繊維方向における気泡の平均長さは1.76mm、平均幅は0.17mmである、 圧縮押出物。」(以下、「甲2発明」という。) なお、特許異議申立人は、特許異議申立書の第27頁ないし第28頁において甲第2号証に記載された発明の認定をしているが、当該認定にあたり、「繊維方向における断面の気泡」のデータから、仮定に基づき「繊維方向に直交する断面の気泡」に関する値を導出していることから、特許異議申立人が主張するような「甲2発明」を認定することはできない。 イ 対比・判断 (ア) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。 ・相違点2 本件特許発明1は「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり」と特定するのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。 上記相違点2について検討する。 甲第2号証および他の全ての証拠の記載を見ても、甲2発明において、「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上」であること、すなわち、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことを示すものはない。 よって、本件特許発明1は甲2発明ではない。 また、甲第2号証および他の全ての証拠の記載を見ても、甲2発明において、「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上」とすること、すなわち、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることの動機付けもない。 よって、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (特許異議申立人の主張について) 特許異議申立人は特許異議申立書において、繊維方向に直交する断面形状とは異なるものの、直交断面形状で共通する空隙の幅を基準に考え、換算すると、繊維方向に直交する方向に平行な断面における0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合は、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす蓋然性が高い旨主張する(特許異議申立書第24頁ないし第25頁)。 しかしながら、当該換算は、「直交断面形状で共通する空隙」の形状を仮定し、かつ、空隙の幅も同じである仮定し換算を試みるものであり、甲2発明においてそのような空隙を有していることを明らかにした上で換算を行うものではない。 してみれば、あくまで一つの推論にすぎないから、甲2発明において、繊維方向に直交する方向に平行な断面における0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合は、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす蓋然性が高いとする特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。 (イ) 本件特許発明2及び4ないし7について 本件特許発明2及び4ないし7はいずれも、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4ないし7もまた、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 申立理由1-2及び申立理由2-2についてのまとめ 上記イのとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 (2) 申立理由1-3及び申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について ア 甲第3号証の記載事項等 (ア) 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「IMPROVEMENTS IN AND RELATING TO TEXTURED WHEAT GLUTEN PROTEIN PRODUCTS」に関し、次の記載がある。 「繊維状小麦グルテンタンパク質に関する改良および関連」(発明の名称) 「繊維状食品の製造方法であって、 二軸スクリューコンベアに活性小麦グルテンを導入する工程; 前記コンベアに水を導入する工程であって、前記グルテンおよび水は、コンベアの上流端またはその近傍に導入される工程; 前記グルテンと水を混合して生地を形成すると同時に、 前記材料を押出出口に向けて搬送する工程; 前記材料が溶融する温度に達するようにし、その後、前記材料が押出出口から排出される前に前記材料を冷却する工程 を含む方法。」(請求項1) 「冷却ダイ2を構成するジャケットチューブ13の各内管14の内径は10mmとすることができる。内管14の数と長さは、それらが一緒になって全長900mmの連続した通路を形成するようにすることができる。」(第29頁第7行ないし第11行) 「乾燥原料と水の初期混合物は、上述の構成と機能を有する各種スクリューエレメント6aおよび6bの作用によってコンベア1に沿って搬送され、さらに混合されて生地を形成する。混合は、コンベア1の中空内部4の各ローブ内と、2つのローブ間の両方で行われる。 生地の温度は上昇し、約100℃に達すると膨張する傾向があり、もし自由に膨張させられたとしたら、通常は体積がかなり増加するだろう。しかし、温かい生地がコンベア1の内部4内に閉じ込められているため、このような膨張は起こるのを抑制する。生地が物理的に膨張するのを阻止されるだけでなく、閉じ込められた空間内で生地が膨張する傾向は圧力の上昇をもたらし、その一つとして水の沸点が上昇し、それ自体がさらなる膨張を遅らせる。 繊維形成の大部分は冷却ダイ2で起こると考えられている。さらに、水蒸気圧は冷却ダイ2を出る際に繊維構造が破壊されるのを防ぐ程度に十分に低下する。このようにして得られた製品は、微視的スケールでも巨視的スケールでも繊維状の性質を示す。したがって、光学顕微鏡で観察すると、製品は実質的に平行に並んだ繊維のみで構成され、大部分が束になって存在しているのが観察されてもよく、そして、肉眼で検査すると、個々の巨視的「繊維」(それぞれが微視的繊維の束に対応すると考えられる)を識別できる。」(第30頁第1行ないし第31頁第5行) 「実施例 この実施例では、パーセンテージの記載は重量パーセンテージの記載であると理解される。 使用した押出機は、添付図面の図1~5を参照して上記で説明したベーカー・パーキンス社製MPF50共回転二軸スクリュー押出機であった。特に、コンベアシャフト上の各種スクリューおよびパドル要素の配置は上記と同様であった。2つのシャフト5aおよび5bはそれぞれ150rpmの一定速度で駆動された。 乾燥原料は、乾燥原料の総重量に基づいて、活性小麦グルテン83.8%、小麦粉11.5%、香料4.7%で構成された。これらは、ホバートミキサーを用いて15kgバッチで予備混合され、得られた乾燥混合物は、乾燥原料フィーダーを用いて、第1入ロポート8からコンベア1の内部4に一定速度13.8kg/hで導入された。 押出機内では、乾燥原料は混合部4bに搬送され、そこでピストンポンプを用いて第2入ロポート9からコンベア1の内部4に一定速度10kg/hで水が導入された。その結果、押出機への全体のマスフローレートは23.8kg/hであった。 押出機の混合部4bでは、乾燥原料が水和されて均質で粘弾性のある生地が形成され、生地の重量に基づく総水分含有量は約48%であった。その水分含有量は、添加された水42%と乾燥原料の初期水分含有量の6%で構成され、これら2つのパーセンテージはいずれも生地の全重量に基づいている。 押出機の混合部4bにおいて、6枚の送りパドル10は、生地の送り出しを促進するだけでなく、生地に高いせん断力を与える役割も担っていた。このせん断力は、生地の均質性を確保するとともに、生地がパドルに及ぼす粘性抵抗を克服するために必要な機械的仕事量を入力することで、生地を加熱する役割も担っていた。 ゾーンS1からS9の温度コントローラに設定された温度が表2に示され、ゾーンS7、S8/9、S9におけるT1、T2、T3で熱電対によって記録された温度がそれぞれ示されている。 なお、コンベア1の供給部4aにある2つのゾーンS1とS2の温度制御装置は、それぞれ100℃未満に設定されており、実際の設定温度はそれぞれ40℃と70℃であった。このように比較的低い温度設定にしたのは、添加した水分がすべて生地に混ざり込む前に蒸気が発生するのを避けるためである。 コンベアの供給部4aに蒸気が存在すると、乾燥原料の粒子が凝集しやすくなり、架橋が発生して、その結果、コンベアに沿った材料の流れが中断される可能性がある。コンベア1の加熱部4cでは、生地の温度は約150℃から約160℃の範囲にまで上昇した。コンベア1の加熱部4cにおける生地の温度上昇は、一部は機械的な力の作用と、一部は当該部の電気加熱素子の熱出力によって部分的に生じたものである。 高温の生地はブレーカープレート11を通過し、冷却ダイ2へと搬送された。ブレーカープレート11の下流近く(したがって材料が冷却ダイ2に入る前)の圧力トランスデューサから得られた圧力読み取り値は、圧力は、実行中変動したが、700から1000psi(48×105~60×105Pa)の範囲内に留まった。冷却ダイ2から出てくる前に、生地は100℃未満の温度に冷却され、冷却ダイから出るときに押し出された生地は、周囲の空気圧のみに暴露して繊維構造が破壊されるのを防止した。 冷却水は、冷却ダイ2の下流0.45mを構成するジャケット付きチューブ13のジャケット15を通して、混合物の流れと反対方向に循環した。ジャケット15に入る前に、水は7℃~8℃の温度に冷却された。ジャケット15を通る水の循環速度、したがって冷却の度合いは、調整弁によって制御された。冷却ダイ8の上流0.45mを構成するジャケットチューブ13のジャケット15は外気に開放されていた。冷却ダイ2を出た直後の製品温度は85℃から99℃の範囲で変動した。冷却ダイ2を出た押出物は、自重の影響で長さ方向に破断した。 乾燥原料が供給部4aに導入されてから加工された生地が冷却ダイ2から出るまでの原料の平均滞留時間は、染料トレーサーを使用して6分であることが分かった。 製品がダイ2から出て、室温まで冷却されたところ、直径が1.5~10ミクロンの繊維でできた、実質的に均ーな繊維構造であることが観察された。繊維構造は、倍率(倍率は、対物レンズによって生じる主倍率と接眼レンズの倍率の積)が100倍~200倍の光学顕微鏡を使用して簡便に観察できた。繊維は、典型的には、単独でも束になっても存在し、繊維および束はさまざまな長さであり、全体的に、材料が冷却ダイ2を流れた方向と実質的に平行に配向されて配置されていた。製品の肉眼での外観も、全体的に繊維形状であり、繊維がほぼ共通の方向に揃っている点で肉または鶏肉に類似していた。製品は、水分補給後、ベジタリアン向けの肉代替品として使用するのに適していた。」(第32頁第14行ないし第36頁第18行) (イ) 甲第3号証に記載された発明 上記(ア)の記載、特に実施例の記載を中心に整理すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。 「原料の総重量に基づいて、活性小麦グルテン83.8%、小麦粉11.5%、香料4.7%で構成された乾燥原料を、ホバートミキサーを用いて予備混合し、乾燥混合物を得、 得られた乾燥混合物を、水とともに押出機を用いて均質で粘弾性のある生地を形成するとともに、生地に高いせん断力を与えつつ、温度制御しながら加熱後冷却することにより得られた製品であって、 前記製品は、直径が1.5~10ミクロンの繊維でできた、実質的に均ーな繊維構造であり、繊維は、典型的には、単独でも束になっても存在し、繊維および束はさまざまな長さであり、全体的に、材料が冷却ダイを流れた方向と実質的に平行に配向されて配置されており、繊維がほぼ共通の方向に揃っている点で肉または鶏肉に類似している、ベジタリアン向けの肉代替品として使用するのに適した製品。」(以下、「甲3発明」という。) なお、特許異議申立人は、甲第3号証の実施例におけるダイにおける温度条件や降温速度等を計算すると、製造条件として一致する部分もあることから、甲第3号証の実施例においても本件特許発明1のタンパク質食品素材と同等のものである蓋然性が高いとした上で、特許異議申立書の第30頁ないし第31頁において甲第3号証に記載された発明の認定をしているが、ダイにおける温度条件や降温速度等について、その条件の全てが本件特許の明細書の実施例等と一致するものではないから、同等のものであるとの推認はできず、特許異議申立人が主張するような「甲3発明」を認定することはできない。 イ 対比・判断 (ア) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。 ・相違点3 本件特許発明1は「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり」と特定するのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。 上記相違点3について検討する。 甲第3号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲3発明において「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合」を導出できる記載はないから、相違点3は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は甲3発明ではない。 また、甲第3号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲3発明において「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合」を調整する動機付けはないから、甲3発明において、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (特許異議申立人の主張について) 特許異議申立人は特許異議申立書及び意見書において、甲第3号証の実施例におけるダイにおける温度条件や降温速度等を計算すると、製造条件として一致する部分もあることから、甲第3号証の実施例においても本件特許発明1のタンパク質食品素材と同等のものである蓋然性が高い旨主張するが、上記ア(イ)においても言及したとおり、本件特許発明1と甲3発明はその製造条件が一致するものではない(特許異議申立書においても、一部の条件が異なることは自認している(特許異議申立書第30頁))から、当該推認は成立しない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (イ) 本件特許発明2及び4ないし7について 本件特許発明2及び4ないし7はいずれも、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4ないし7もまた、甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 申立理由1-3及び申立理由2-3についてのまとめ 上記イのとおりであるから、申立理由1-3及び申立理由2-3では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 (3) 申立理由3(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断基準 本件特許発明1、2及び4ないし7は、上記第3のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。 イ 実施可能要件についての判断 本件特許発明1、2及び4ないし7に関し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本開示は、タンパク質食品素材の製造方法、タンパク質食品素材、及び代替成形肉に関する」(【0001】)との記載、「解決しようとする課題は、畜肉を模した繊維感と歯ごたえのある食感とを有するタンパク質食品素材の製造方法、タンパク質食品素材、及び代替成形肉を提供すること」(【0007】)との記載がある。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における発明を実施するための形態の項には、「本開示に係るタンパク質食品素材の製造方法(以下、単に「本開示に係る製造方法」とも称する。)は、植物性タンパク質と、水と、を含むタンパク質含有混合物を、二軸押出機の押出部内において加圧及び加熱して混練した後、押出部の出口部における温度が150℃以上180℃未満である混練後のタンパク質含有混合物を、押出部の押出方向下流側末端に装着された吐出ダイの内部で膨化させながら押し出す工程(以下、「押出工程」とも称する。)を有する」(【0019】)との記載、「本発明者らは、押出工程において所定の温度範囲に調整したタンパク質含有混合物を吐出ダイ内部で膨化させることにより、畜肉の筋繊維のような繊維状構造を有し、かつ多数の微小空隙が繊維方向に配向したタンパク質食品素材を得ることが可能となることを見出した。より具体的には、押出部の出口部におけるタンパク質含有混合物の温度を150℃以上180℃未満とし、吐出ダイ内部のタンパク質含有混合物の降温プロファイルを制御(即ち、徐冷)して、吐出ダイ内の圧力を飽和水蒸気圧以下にし、タンパク質含有混合物内部の水を水蒸気化することにより、タンパク質含有混合物を吐出ダイ内部で膨化させる」(【0023】)との記載、「本開示に係る製造方法においては、タンパク質含有混合物は、吐出ダイの出口部から吐出する際に膨化するのではなく、吐出ダイ内部の閉鎖空間内において、タンパク質含有混合物(好ましくは、比較的高粘度のタンパク質含有混合物)を連続的に膨化させ続ける。これにより、タンパク質含有混合物の膨化により形成される空隙の微小化が可能となる」(【0024】)との記載、「吐出ダイ内部における連続的な膨化により空隙の微小化が可能となる理由は明確でないが、高温(好ましくは、150℃以上)で十分に軟化させ、均一な混合物としたタンパク質含有混合物が、吐出ダイ内部において押し出されながら、徐冷されることにより、タンパク質含有混合物が、徐々に固形化・熱収縮し、局所的な圧力の低下と膨化とが繰り返されるためと考えられる。徐冷は、吐出ダイの出口部におけるタンパク質含有混合物の温度が95℃~130℃、降温速度:0.2℃/mm以下の条件下で行われることが好ましい。これにより、タンパク質含有混合物には、断面視において、微細かつ異方性を有る空隙が形成されるものと推測される」(【0025】)との記載、タンパク質含有混合物を吐出ダイ内部で膨化させる際の制御に関する記載(【0027】ないし【0028】)、押出工程(制御条件についても含む)に関する記載(【0033】ないし【0067】)、植物性タンパク質に関する記載(【0069】ないし【0072】)、成形工程に関する記載(【0080】ないし【0081】)、タンパク質食品素材及びその性状に関する記載(【0083】ないし【0125】)、タンパク質食品素材の用途に関する記載(【0126】ないし【0127】)、代替成形肉に関する記載(【0144】ないし【0156】)、代替成形肉の製造方法に関する記載(【0211】ないし【0218】)があり、具体的な実施例の記載もある。 これらの記載に接した当業者であれば、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る発明の物を生産することができるものといえるから、本件特許発明1、2及びい4ないし7に関し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、その物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができる程度に記載されているといえ、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているといえる。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記「第4 7」に挙げるような主張をする。 しかしながら、繊維の方向に起因する申立理由(申立理由3-1)について、本件特許発明1、2及び4ないし7は繊維状物から構成される以上、引き裂き片を見れば当業者であれば繊維方向(繊維方向と直交する方向)を決定できることも明らかである。 「空隙の個数」の算出法に起因する申立理由(申立理由3-2)については、訂正後の本件特許発明1の特定事項から見て、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における【0240】に記載の装置、ソフトウェアおよび検出条件により行うであろうことは、当業者であれば理解できる。 また、タンパク質含有混合物の温度に関する点(申立理由3-3)については、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、工程及び制御に関し、温度制御の方向性など記載されており、かつ、具体的な実施例の記載もあることから、当業者が実施にあたり過度の試行錯誤を要するものであるともいえない。 さらに、特許異議申立人は、具体的に本件特許発明1、2及び4ないし7に係る発明について、実施し得ないとする具体的な証拠を提示するものでもない。 よって、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用できない。 エ 申立理由3についてのまとめ 上記イ及びウのとおりであるから、申立理由3では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 (4) 申立理由4(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 特許請求の範囲の記載 上記第3のとおりである。 ウ サポート要件についての判断 本件特許発明1、2及び4ないし7の発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「畜肉を模した繊維感と歯ごたえのある食感とを有するタンパク質食品素材の製造方法、タンパク質食品素材、及び代替成形肉を提供すること」(【0007】)である。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における発明を実施するための形態の項には、 「本発明者らは、押出工程において所定の温度範囲に調整したタンパク質含有混合物を吐出ダイ内部で膨化させることにより、畜肉の筋繊維のような繊維状構造を有し、かつ多数の微小空隙が繊維方向に配向したタンパク質食品素材を得ることが可能となることを見出した。より具体的には、押出部の出口部におけるタンパク質含有混合物の温度を150℃以上180℃未満とし、吐出ダイ内部のタンパク質含有混合物の降温プロファイルを制御(即ち、徐冷)して、吐出ダイ内の圧力を飽和水蒸気圧以下にし、タンパク質含有混合物内部の水を水蒸気化することにより、タンパク質含有混合物を吐出ダイ内部で膨化させる」(【0023】)と記載されるとともに、「本開示に係るタンパク質食品素材は、少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有し、繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり、かつ、空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下である」(【0083】)との記載、「本開示に係るタンパク質食品素材は、繊維方向と直交する方向に平行な断面において、0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合(空隙の個数割合)が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。空隙の個数割合の上限値は、特に限定されないが、成形肉のジューシー感の観点から、90%であることが好ましい。空隙の個数割合が50%以上であると、成形肉断面の繊維感に優れる」(【0085】)、空隙の個数割合の算出法に関する記載(【0086】ないし【0090】)、「本開示に係るタンパク質食品素材は、空隙と空隙を隔てる壁の平均厚みが200μm以下であり、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。空隙と空隙を隔てる壁の平均厚みの下限値は、特に限定されないが、繊維の弾力感の観点から、30μm以上であることが好ましい。空隙と空隙を隔てる壁の平均厚みが200μm以下であると、肉様の弾力と噛み切りやすさとを両立できる」(【0091】)、空隙と空隙を隔てる壁の平均厚みの算出法に関する記載(【0092】)があり、具体的な実施例を通じた検討に関する記載もある。 これらの記載に接した当業者であれば、代替成形肉に用いることができるタンパク質食品素材に関し、「少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有し、繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり、かつ、空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下である」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1、2及び4ないし7はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、当業者は当然に発明の課題を解決できると認識できる。 よって、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満足するものといえる。 エ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記「第4 8」及び「第4 11」に挙げるような主張をしている。 「0.1mm2以下の断面積を有する空隙」に起因する申立理由(申立理由4-1)については、訂正により解消している。 比較例6との対比に関する申立理由(申立理由4-2)について、発明の課題は上記ウで検討したとおりであり、「焦げが生じていない」か否かは発明の課題ではない。また、比較例6は実施例と条件は近接しているとしても、同じではないため、空隙の性状が同じであるということもできない。 他、サンプルの形状(申立理由4-3)、配向度XA/XBの範囲と実施例の関係(申立理由4-4)についても主張する。しかしながら、上記ウにおける検討のとおり、本件特許発明1、2及び4ないし7はいずれも「少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有し、繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり、かつ、空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下である」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できるものであり、特許異議申立人の主張は、具体的に本件特許発明1、2及び4ないし7に係る発明が発明の課題を解決できないとする具体的な証拠を示すものでもないから、いずれの主張も採用することができない。 オ 申立理由4についてのまとめ 上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由4では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 (5) 申立理由5(明確性要件)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 イ 特許請求の範囲の記載 上記第3のとおりである。 ウ 明確性要件についての判断 本件特許発明1は請求項1に記載されるとおりであるところ、請求項1には、「植物性タンパク質を含み、少なくとも一部に繊維状領域を有し、かつ多孔質構造を有するタンパク質食品素材であり、」「繊維方向に直交する方向に平行な断面において0.1mm2以下の断面積を有する空隙の個数(0.01mm2以下の断面積を有する空隙の個数を除く)の割合が、断面に存在する全空隙の個数に対して50%以上であり、」かつ、「空隙と空隙とを隔てる壁の平均厚みが200μm以下であり、」「前記タンパク質食品素材の前記繊維方向に平行な断面に存在する空隙の、短軸の長さに対応する長軸の長さの比率の平均値が5.1以上である、」「タンパク質食品素材。」と記載されている。そして、その記載は明確であり、本願特許の明細書の発明の詳細な説明における記載とも整合するものである。 してみると、本件特許発明1である請求項1の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 本件特許発明2及び4ないし7に関する請求項2及び4ないし7の記載についても、その記載は明確であり、本願特許の明細書の発明の詳細な説明における記載とも整合するものであり、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 エ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記「第4 9」及び「第4 12」に挙げるような主張をしている。 「空隙の個数」の算出法に起因する申立理由(申立理由5-2、5-3、5-5)については、訂正後の本件特許発明1の特定事項から見て、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における【0240】に記載の装置、ソフトウェアおよび検出条件により行うであろうことは、当業者であれば理解できる。 また、繊維の方向に起因する申立理由(申立理由5-1、5-4、5-6、5-9)についても、本件特許発明1、2及び4ないし7は繊維状物から構成される以上、引き裂き片を見れば当業者であれば繊維方向(繊維方向と直交する方向)を決定できることも明らかである。 また、数値範囲において下限のみ規定している点(申立理由5-5、5-7、5-8、5-10、5-12)についても不明確である旨主張するが、いずれも下限値を特定したものである点で明確であり、第三者の利益が不当に害されるものとはいえない。 最後に、冷凍条件が不明であることに起因する申立理由(申立理由5-11、5-13)について、本件特許発明1、2及び4ないし7はいずれも「物」の発明であるから、対象となる「物」を測定すれば明らかであって、特許異議申立人の主張は明確性要件の判断には影響しない。 オ 申立理由5についてのまとめ 上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由5では、本件特許発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700650

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