特許異議申立
2024-700703
エレベータ遠隔制御システム
- 審判番号
- 2024-700703
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-114116
- 登録番号
- 7423704
- 請求日
- 2024年07月25日
- 審決日
- 2026年01月26日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝エレベータ株式会社
- 【権利者代理人】柘 周作
- 【権利者代理人】富田 祥弘
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 中屋 裕一郎
- 審判官 石井 孝明
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1651.161-YAA(B66B) / P1651.121-YAA(B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7423704号発明「エレベータ遠隔制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許7423704号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕について訂正することを認める。
特許7423704号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯の概略
1 手続の経緯
特許第7423704号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
令和4年 7月15日 出願
令和6年 1月19日 特許権の設定登録
令和6年 1月29日 特許掲載公報
令和6年 7月25日 特許異議申立人角田朗(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和6年 9月27日付け 取消理由通知書
令和6年11月25日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年12月12日 訂正請求書を補正する手続補正書の提出
令和7年 4月22日 申立人による意見書の提出
令和7年 6月30日付け 訂正拒絶理由通知書
令和7年 8月 1日 特許権者による意見書及び訂正請求書を補正する手続補正書の提出
令和7年 8月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和7年10月20日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年10月28日 訂正請求書を補正する手続補正書の提出
令和7年12月 3日 申立人による意見書の提出
以下、令和7年10月28日提出の手続補正書による補正後の令和7年10月20日提出の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。なお、令和6年11月25日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。
また、以下、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「本件明細書等」という。
2 証拠
特許異議申立書に記載されている証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2022/259404号
甲第2号証:特開2006-321607号公報
甲第3号証:特開2009-062118号公報
甲第4号証:特開2019-104593号公報
甲第5号証:国際公開第2022/107305号
甲第6号証:特開2012-056698号公報
甲第7号証:特開2022-077065号公報
甲第8号証:国際公開第2022/079884号
甲第9号証:特許第6010185号公報
以下、甲第1号証~甲第9号証を、それぞれ「甲1」~「甲9」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、特許第7423704号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、4について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1について、「前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、」の後に「通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、」を追加し、「前記未実施の原因を通信エラーと判定し、」の後に「解析による判定結果を」を追加する。(請求項1の記載を引用する請求項4についても同様に訂正する。)
2 本件訂正の適否について
(1)本件訂正の目的について
本件訂正は、訂正前の請求項1において特定されていた「センターシステム」についてさらに限定をするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項追加について
ア 本件明細書等には「センターシステム100は、携帯端末1000(スマートフォンやタブレット等の端末装置)と無線通信可能である。センターシステム100は、携帯端末1000からエレベータの乗りかごの呼び要求(昇降機の呼び要求ともいう)を受付け可能である。」(【0010】)、「図2のS103の処理で携帯端末1000とセンターシステム100の間の通信状況(第1通信状態)が良好でない場合(S103のNo)、例えば、携帯端末の通信会社の回線混雑や回線不具合等でセンターシステム100に対する通信が不安定な場合や通信不能な場合である。また、S105の処理で、センターシステム100と遠隔監視装置10の間の通信状況(第2通信状態)が良好でない場合(S105のNo)、例えば、複数の利用者が携帯端末1000を介して同時に乗りかごの呼び登録(要求)を行った結果、センターシステム100と遠隔監視装置10との間の通信が混雑し、通信状態が不安定になったり、通信不能になったりする場合がある。このような場合、図4のフローチャートに移行する。つまり、センターシステム100の通信状況判定部103は、通信状況が悪い箇所を解析し、原因が携帯端末1000とセンターシステム100との間であるか、センターシステム100と遠隔監視装置10との間であるかを判定し、判定結果を不動作判定通信部101に返す(S113)。」(【0027】)と記載されている。
これらの記載から、端末装置の一例である携帯端末1000と無線通信可能で、前記携帯端末1000からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステム100の通信状況判定部103が、前記センターシステム100と前記携帯端末1000との間の第1通信状態と、前記センターシステム100と前記遠隔監視装置10との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記携帯端末1000と前記センターシステム100との間であるか、前記センターシステム100と前記遠隔監視装置10との間であるか、を解析することが開示されていると理解できる。
してみると、本件明細書等には、前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、「通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析」するという事項が記載されていると認められる。
イ 本件明細書等には「センターシステム100は、不動作判定通信部101、指令部102、通信状況判定部103等の詳細モジュールを備える。」(【0018】)、「図2のS103の処理で携帯端末1000とセンターシステム100の間の通信状況(第1通信状態)が良好でない場合(S103のNo)、例えば、携帯端末の通信会社の回線混雑や回線不具合等でセンターシステム100に対する通信が不安定な場合や通信不能な場合である。また、S105の処理で、センターシステム100と遠隔監視装置10の間の通信状況(第2通信状態)が良好でない場合(S105のNo)、例えば、複数の利用者が携帯端末1000を介して同時に乗りかごの呼び登録(要求)を行った結果、センターシステム100と遠隔監視装置10との間の通信が混雑し、通信状態が不安定になったり、通信不能になったりする場合がある。このような場合、図4のフローチャートに移行する。つまり、センターシステム100の通信状況判定部103は、通信状況が悪い箇所を解析し、原因が携帯端末1000とセンターシステム100との間であるか、センターシステム100と遠隔監視装置10との間であるかを判定し、判定結果を不動作判定通信部101に返す(S113)。続いて、不動作判定通信部101は、携帯端末1000の通信部1002に昇降機呼び要求部1001が要求した昇降機の呼び登録に失敗した旨を示す情報を返す(S114)。そして、判定結果表示部1003は、通信部1002が受け取った呼び登録に失敗した旨を示す情報を画面に表示し(S115)、一旦このフローを終了する。」(【0027】)、「通信状況判定部103が、例えば、今回の通信エラーが、携帯端末1000とセンターシステム100の間の通信状況の不良であると判定した場合、判定結果表示部1003には、「携帯端末の通信状態が良くないため、呼び登録に失敗しました。」や「携帯端末の通信状態が良くないため、呼び登録に失敗しました。しばらくたってからやり直してください。」、「携帯端末の通信状態が良くないため、呼び登録に失敗しました。直接、乗り場の乗り場ボタンを操作してください。」等の報知を行う。なお、この報知は音声で行ってもよい。」(【0028】)と記載されている。
さらに、本件明細書等には
「
[図:0001435159000001.jpg]
」(【図4】)と記載されている。
【0027】~【0028】の記載によると、センターシステム100の通信状況判定部103は、通信状況が悪い箇所を解析し、原因が携帯端末1000とセンターシステム100との間であるか、センターシステム100と遠隔監視装置10との間であるかを判定し、「判定結果」をセンターシステム100の不動作判定通信部101に返し、センターシステム100の不動作判定通信部101は、携帯端末1000の通信部1002に呼び登録に失敗した旨を示す情報を返し、携帯端末1000は通信部1002が受け取った呼び登録に失敗した旨を示す情報を、例えば「携帯端末の通信状態が良くないため、呼び登録に失敗しました。」のように画面に表示するものである。そして、画面の表示例には「携帯端末の通信状態が良くないため、」という通信状況が悪い箇所に関する記述があり、また、【図4】では携帯端末は「判定結果」を画面に表示することが記載されているから、センターシステム100の不動作判定通信部101が携帯端末1000の通信部1002に返す呼び登録に失敗した旨を示す情報には、「判定結果」が含まれていると理解できる。
してみると、本件明細書等には、前記センターシステムは「解析による判定結果を」前記端末装置に通知することが記載されていると認められる。
ウ そうすると、本件訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更について
本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(4)独立特許要件について
本件において、訂正前の全ての請求項1~4について特許異議申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(5)一群の請求項について
本件訂正前の請求項4は本件訂正前の請求項1を引用する関係であり、本件訂正前の請求項2~3は本件訂正前の請求項1を引用しない関係であるから、本件訂正前の請求項1、4は、一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。
(6)まとめ
以上のとおりであるので、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、
前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、前記未実施の原因を通信エラーと判定し、解析による判定結果を前記端末装置に通知する、エレベータ遠隔制御システム。
【請求項2】
端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、
前記エレベータ制御盤は、前記乗りかごが運行停止状態か否かを判定するエレベータ停止判定部を備え、
前記遠隔監視装置は、前記運行制御に制御エラーが存在しない場合で、前記乗りかごが運行停止状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの故障と判定し、前記端末装置に通知する、エレベータ遠隔制御システム。
【請求項3】
端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、
前記エレベータ制御盤は、前記エレベータが点検状態か否か判定する点検モード判定部を備え、
前記遠隔監視装置は、前記点検状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの点検と判定し、前記端末装置に通知する、エレベータ遠隔制御システム。
【請求項4】
前記遠隔監視装置は、前記運行制御に制御エラーが存在する場合、前記未実施の原因を制御エラーと判定し、前記端末装置に通知する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレベータ遠隔制御システム。」
第4 取消理由通知の概要
本件訂正前の特許に対して、令和7年8月29日付けで通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
令和7年8月1日提出の手続補正書による令和6年12月12日に提出された訂正請求書の補正は認めず、令和6年12月12日に提出された訂正請求書による訂正は認めない。
そして、請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明と同一であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第5 取消理由について
1 甲1に記載された発明
甲1の[0017]~[0021]、[0023]、[0025]~[0027]、[0030]~[0058]及び[図1]の記載より、甲1には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。
[先願発明]
「通信網13に無線通信により接続される携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する、呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21と、休止情報システム16に備えられた休止情報サーバ17と、を配置した、情報センター15と、
前記エレベーター2の動作を制御する制御盤9と、
前記制御盤9に接続される、エレベーター2の状態の情報を収集する遠隔監視装置14と、を含むエレベーターシステム1であって、
前記呼び登録サーバ21は通信網13に接続されており、
前記遠隔監視装置14が収集したエレベーター2の状態の情報は、前記通信網13を通じて情報センター15に送信されるものであり、
前記呼び登録サーバ21は、前記携帯端末12から受け付けた利用要求による呼び登録が、前記呼び登録システム19から前記遠隔監視装置14までの通信経路を要因とする前記遠隔監視装置14からの信号の受信タイムアウトによって失敗したと判定されたとき、呼び登録の失敗を表す情報を前記携帯端末12に提示し、当該失敗の情報を休止情報システム16に通知するものであり、
前記携帯端末12は、登録の失敗を表示し、
前記休止情報システム16に集約された失敗の情報は、前記携帯端末12の自主的な操作によって利用者が取得可能である、
エレベーターシステム1。」
2 甲2の記載事項
甲2には図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0030】
まず、図10を用いて可搬型無線装置4の状態遷移を説明する。これらの状態遷移は、マイクロコントローラ31内のプログラムを実行する事で実現される。
【0031】
電源が投入されると可搬型無線装置4内部回路の初期化を行い(100)、アップ/ダウンスイッチからの入力待ち状態(101)になる。スイッチが押されると呼び登録要求の電文を無線通信機5から設置型無線装置7に向けて送信して(102)、設置型無線装置7からの応答を待ち状態(103)に遷移する。ここで電文には、アップ/ダウン方向情報やID回路によって指示される可搬型無線装置の識別情報および中継に必要な情報が含まれる。
【0032】
設置型無線装置7から応答があると(110)、応答電文に含まれるエレベーター乗りかご位置情報と運転方向情報を表示器21,23,24に表示して(104)、再び入力待ち状態(101)に遷移する。但し、エレベーターの運転休止や呼びの利用回数オーバーによって呼び登録に失敗した場合には、エラーを表示器28に表示して(107)、再び入力待ち状態(101)に遷移する。一方、規定時間内に応答が無い場合(111)、通信異常が発生したと判断してエラーを表示器28に表示し(107)、再び入力待ち状態(101)に遷移する。
【0033】
入力待ち状態(101)で規定時間内に入力が無い場合(108)には、電波伝播状態を計測するためのダミー電文を設置型無線装置7に向けて送信して(105)、設置型無線装置7からの応答を待ち状態(106)に遷移する。設置型無線装置7から応答があると(112)、再び入力待ち状態(101)に遷移する。設置型無線装置7から応答が無い場合(111)は、通信異常が発生したとエラーを表示器28に表示して(107)、再び入力待ち状態(101)に遷移する。」
3 甲3の記載事項
甲3には図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用して、安価及び簡単な構成でエレベータを地震時管制運転に移行させることができ、且つ、緊急地震速報受信時に行われる動作の確認を、必要な時に容易に実施することができるエレベータの地震時管制システム、及びその地震時管制システムで使用されるシステム制御用の外部端末を提供することである。」
「【0039】
携帯電話端末18では、先ず、試験要求の要否が判断される(S101)。即ち、試験要求(エレベータの動作確認)が必要である場合には、操作者(例えば、エレベータ保守員)によって送信要求を出力するための所定の操作が行われる。したがって、携帯電話端末18では、常時その所定の操作が行われたか否かを判断する。S101において上記所定の操作が行われると、携帯電話端末18は、センター17と接続して操作者にログイン入力させ、ログインを試みる(S102乃至S105)。なお、センター17との接続やログイン方法は一般的なものと同様である。
【0040】
S105においてログインが成功すると、携帯電話端末18は、試験要求を送信するビルのビル番号を操作者に入力させる(S106)。また、ビル番号が入力されると、次に、送信要求を出力するための所定の操作が行われたか否かを判断する(S107)。そして、S107において送信要求を出力するための所定の操作が行われると、S106で入力されたビル番号と、GPS受信部33によって取得された位置情報とを送信要求に添付して、それらの情報をセンター17に対して送信する(S108及びS109)。
【0041】
送信要求をセンター17に対して送信した後、携帯電話端末18は、センター17からの応答を確認する(S110)。そして、送信要求の送信に何らかのエラーが生じた場合には、送信要求の送信が失敗した理由を携帯電話端末18の画面に表示する(S111及びS112)。また、エラーが生じなかった場合には、送信要求の送信成功を携帯電話端末18の画面に表示する(S111及びS113)。」
4 甲4の記載事項
甲4には図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0002】
従来、エレベータの制御盤の設置場所、乗り場、ピット内等で回路の確認や測定、ネジの増し締め等の保守点検作業を行う場合、感電防止の観点から制御回路電源を遮断する必要がある。そのため、例えば、エレベータの上部に機械室がないタイプのエレベータの場合、エレベータの制御回路電源遮断用の電磁接触器を動作させるスイッチを、昇降路の一部に設置される制御盤や制御盤外、乗り場等に設けている。しかしながら、補助装置や部品が追加設置されているような場合には、保守点検作業時に遮断用のスイッチに手が届かない位置に乗りかごを停止させる場合があったり、追加された補助装置や部品に遮られてスイッチの操作がし難かったりする場合があった。そのため、補助装置や部品が追加される度に、遮断用のスイッチも追加設置する必要があった。そこで、乗りかごの停止位置に依存することなく制御回路電源の遮断を有線や無線で操作可能な遠隔操作部を備えるシステムが提案されている。」
「【0004】
しかしながら、従来技術の場合、遠隔操作によって制御回路電源の遮断が行えるものの、遠隔操作による動作保証はなく、実際に制御回路電源が遮断されたか否かの確認が必要であったり、作業員の安全が確保されているか否かの確認が必要であったりする。したがって、制御回路電源の遮断を遠隔操作で行いつつも、上述のような遠隔動作の動作保証が容易にできるシステムが提供できれば、保守点検作業のスムーズな実施が図れて有意義である。」
「【0033】
また、S110において、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常でない場合(S110のNo)、つまり、無線通信判定部42の判定が否定の場合、第2無線通信装置46は無線通信リモコン16の無線通信確認表示灯54bを消灯するとともに消灯状態を維持する(S138)。なお、通信異常を明示するために、第2無線通信装置46は無線通信確認表示灯54bを例えば赤色で点滅させてもよい。第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常でない場合に、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に切り替えられた場合(S140のYes)、第2無線通信装置46は、制御電源遮断スイッチ52の操作を受け付けない(S142)。つまり、第2無線通信装置46による切替信号の送信の保留や制御部40による切替制御の保留を実施する。その結果、制御部40は仮に第1無線通信装置18が何らかの信号を受信した場合でも切替制御は実行せず、電磁接触器38の現状の状態を維持する。つまり、電磁接触器38が接続状態であれば接続状態を維持する。その結果、無線通信リモコン16により電磁接触器38の遠隔操作が行われている場合でも、作業者14の意図しない切り替えが発生したり、乗りかご22が急に停止したりする等の誤動作を回避することができる。そして、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に戻された場合(S144のYes)、S110に移行して、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、無線通信の正常性が回復した場合には(S110のYes)、S112以降の処理を実行する。また、正常性が回復しない場合は(S110のNo)、S138に移行して以降の処理を繰り返す。なお、S144において、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に戻されない場合(S144のNo)S142に戻り、制御電源遮断スイッチ52の操作受付拒否を継続する。つまり、第2無線通信装置46による切替信号の送信の保留や制御部40による切替制御の保留を継続する。」
「【0080】
また、S208において、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常でない場合(S208のNo)、つまり、携帯電話端末64の電波状態が不安定な場合、携帯電話端末64は表示部78に表示している無線通信確認表示灯78aを消灯するとともに消灯状態を維持する(S242)。なお、通信異常を明示するために、無線通信確認表示灯78aを例えば赤色で点滅させてもよい。携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常でない場合に、制御電源遮断スイッチ78bが「CUT」に切り替えられる操作が行われた場合(S244のYes)、表示部78に通信状態を示すメッセージを表示する(S246)。つまり、図12の左図に示すような制御電源遮断スイッチ78bの画像を上方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78に、「通信状態が不安定なため操作できません。」等が表示される。つまり、通信部74は、切替信号の送信を行わない。その結果、制御部72は仮に遠隔監視サーバ70が何らかの信号を受信した場合でも切替制御は実行せず、電磁接触器38の現状の状態を維持する。つまり、電磁接触器38が接続状態であれば接続状態を維持する。その結果、携帯電話端末64により電磁接触器38の遠隔操作が行われている場合でも、作業者14の意図しない切り替えが発生したり、乗りかご22が急に停止したりする等の誤動作を回避することができる。この間に、制御電源遮断スイッチ78bの画面を「ON」に戻すような操作が行われた場合(S248のYes)、S208に移行して、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、無線通信の正常性が回復した場合には(S208のYes)、S210以降の処理を実行する。また、正常性が回復しない場合は(S208のNo)、S242に移行して以降の処理を繰り返す。なお、S248において、制御電源遮断スイッチ78bが「ON」に戻されない場合は(S248のNo)、S246に戻り、通信状態を示すメッセージの表示を継続する。つまり、通信部74による切替信号の送信の保留や制御部72による切替制御の保留を継続する。」
5 甲5の記載事項
甲5には図面と共に以下の事項が記載されている。
「[0026]
保守ノード17は、保守機器9に接続する。保守ノード17は、保守機器9が操作されるときに当該操作の情報を取得する。保守機器9の操作の情報は、各々のかご5の運行情報の例である。保守ノード17は、少なくともいずれかのかご5の運行情報を取得するノードの例である。保守ノード17は、ネットワーク10に接続する。なお、エレベーター1において複数の保守機器9が設けられる場合に、各々の保守機器9に対応する複数の保守ノード17が設けられてもよい。」
「[0047]
安全制御装置13aの処理部24は、入力部21および通信部22を通じて取得したかご5aの運行情報を用いて、安全制御処理としてかご5aの自己安全制御を行う。ここで、安全制御装置13aにおける自己安全制御は、安全制御装置13a自身が対応するかご5aの安全制御である。かご5aの安全制御は、出力部23によるかご5aを停止させる停止信号の出力の制御を含む。かご5aの安全制御において、例えばかご5aが他のかご5に近接する場合、かご5aが過速度状態にある場合、またはかご5aのドアまたは乗場ドア6が開いたままかご5aが走行した場合などにかご5aの停止信号が出力される。また、かご5aの安全制御は、かご5aの走行禁止区間の設定を含んでもよい。かご5aの走行禁止区間は、昇降路2においてかご5aを走行させない区間である。あるいは、保守機器9が操作された場合は、安全制御装置13aは、出力部23によって全てのかご5を停止させる信号を出力し、全区間の自動での走行を禁止し、その後、保守員によるかご5の手動操作でのみ該当かご5の運転を許可する。
[0048]
安全制御装置13bの処理部24は、入力部21および通信部22を通じて取得したかご5bの運行情報を用いて、安全制御処理としてかご5bの自己安全制御を行う。ここで、安全制御装置13bにおける自己安全制御は、安全制御装置13b自身が対応するかご5bの安全制御である。かご5bの安全制御は、出力部23によるかご5bを停止させる停止信号の出力の制御を含む。かご5bの安全制御において、例えばかご5bが他のかご5に近接する場合、かご5bが過速度状態にある場合、またはかご5bのドアまたは乗場ドア6が開いたままかご5bが走行した場合などにかご5bの停止信号が出力される。また、かご5bの安全制御は、かご5bの走行禁止区間の設定を含んでもよい。かご5bの走行禁止区間は、昇降路2においてかご5bを走行させない区間である。あるいは、保守機器9が操作された場合は、安全制御装置13bは、出力部23によって全てのかご5を停止させる信号を出力し、全区間の自動での走行を禁止し、その後、保守員によるかご5の手動操作でのみ該当かご5の運転を許可する。」
「[0120]
また、複数のノードは、保守ノード17を含む。保守ノード17は、保守機器9に接続する。保守機器9は、保守点検の作業を行うときに操作される。各々の安全制御装置13は、保守機器9が操作されたときに、昇降路2の全区間を対応するかご5の自動での走行禁止区間とする。
[0121]
このような構成によって、保守点検が行われるときに、かご5の運行が停止される。これにより、保守点検を行う保守員の昇降路2などにおける作業の安全性が高まる。」
6 甲6の記載事項
甲6には図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0047】
また、ロープ変位δがD2≦δ<D3であれば(ステップS14のYes)、制御装置21はレベル2に相当するものと判定し、乗りかご14を最寄階まで移動させた後、乗客を降ろして運転休止とする(ステップS17)。これは、コンペンロープ16の中の張力が低下したロープが他のロープに当たるような状態である。このような状態では、安全のためにエレベータを運転休止して、その間に保守員を呼んで点検を行う必要がある。」
7 対比、判断
本件発明1と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「エレベーター2」は、本件発明1の「エレベータ」に相当する。
先願発明の「情報センター15」は、「携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する、呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21」を「配置」するものであり、エレベーターの乗りかごの呼び要求を受付可能な構成といえるから、本件発明1の「センターシステム」に相当する。
先願発明の「携帯端末12」は、本件発明1の「端末装置」に相当する。また、先願発明の「携帯端末12」は、「通信網13に無線通信により接続され」る一方で、情報センター15に配置された呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21は、通信網13に接続されているから、先願発明の「情報センター15」は、「携帯端末12」と無線通信可能であるといえる。
先願発明の「携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する」ことは、本件発明1の「前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け」ることに相当する。
したがって、先願発明の「通信網13に無線通信により接続される携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する、呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21と」、「を配置した、情報センター15と」、「を含」み、「前記呼び登録サーバ21は通信網13に接続されて」いることは、本件発明1の「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと」、「を備え」ることに相当する。
(2)先願発明の「エレベーター2の状態の情報を収集する遠隔監視装置14」又は「遠隔監視装置14」は、本件発明1の「遠隔監視装置」に相当する。
先願発明の「前記遠隔監視装置14が収集したエレベーター2の状態の情報は、前記通信網13を通じて情報センター15に送信される」ことは、本件発明1の「遠隔監視装置」が「前記センターシステムと通信可能」であることに相当する。
先願発明の「制御盤9」は、「前記エレベーター2の動作を制御する」ものであり、エレベーター2の乗りかごの運行制御を行うものであるといえ、先願発明の「制御盤9」と「遠隔監視装置14」は「接続され」ているから、先願発明の「制御盤9」と「遠隔監視装置14」とを合わせたものは、本件発明1の「エレベータ制御盤」に相当する。
したがって、先願発明の「前記エレベーター2の動作を制御する制御盤9と、前記制御盤9に接続される、エレベーター2の状態の情報を収集する遠隔監視装置14と、を含」み、「前記遠隔監視装置14が収集したエレベーター2の状態の情報は、前記通信網13を通じて情報センター15に送信される」ことは、本件発明1の「前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、を備え」ることに相当する。
(3)先願発明の「前記携帯端末12から受け付けた利用要求による呼び登録が」、「失敗したと判定されたとき」とは、携帯端末12からの利用要求に対して呼び登録が未実施となる場合のことをいうから、本件発明1の「前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合」に相当する。
先願発明の「前記呼び登録システム19から前記遠隔監視装置14までの通信経路を要因とする前記遠隔監視装置14からの信号の受信タイムアウトによって失敗したと判定」することは、呼び登録システム19と遠隔監視装置14との間の通信状態が通信不良、すなわち、通信エラーであることが未実施の原因であると判定することをいうから、本件発明1の「当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、前記未実施の原因を通信エラーと判定」することに相当する。
先願発明の「呼び登録の失敗を表す情報を前記携帯端末12に提示し、当該失敗の情報を休止情報システム16に通知」し、「前記携帯端末12は、登録の失敗を表示し」、「前記休止情報システム16に集約された失敗の情報は、前記携帯端末12の自主的な操作によって利用者が取得可能である」ということは、結局、休止情報システム16に集約された登録の失敗の情報、すなわち、呼び登録の未実施の原因を(携帯端末12の自主的な操作によってではあるものの)、携帯端末12に通知することに他ならないから、本件発明1の「前記未実施の原因を前記端末装置に通知する」ことに相当する。
そして、先願発明の「呼び登録サーバ21」は、「情報センター15」に配置された「呼び登録システム19に備えられ」ているものである。
したがって、先願発明の「前記呼び登録サーバ21は、前記携帯端末12から受け付けた利用要求による呼び登録が、前記呼び登録システム19から前記遠隔監視装置14までの通信経路を要因とする前記遠隔監視装置14からの信号の受信タイムアウトによって失敗したと判定されたとき、呼び登録の失敗を表す情報を前記携帯端末12に提示し、当該失敗の情報を休止情報システム16に通知するものであり、前記携帯端末12は、登録の失敗を表示し、前記休止情報システム16に集約された失敗の情報は、前記携帯端末12の自主的な操作によって利用者が取得可能である」ことは、本件発明1の「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、前記未実施の原因を通信エラーと判定し、解析による判定結果を前記端末装置に通知する」という事項との対比において、「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、前記未実施の原因を通信エラーと判定」するという事項で共通する。
(4)先願発明の「エレベーターシステム1」は、本件発明1の「エレベータ遠隔制御システム」に相当する。
そうすると、本件発明1と先願発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、
前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、前記未実施の原因を通信エラーと判定する、エレベータ遠隔制御システム。」
<相違点1>
本件発明1のセンターシステムは、「当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合」、「通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して」、「解析による判定結果を前記端末装置に通知する」のに対し、先願発明の情報センター15は、当該情報センター15と携帯端末12との間の第1通信状態と、前記情報センター15と遠隔監視装置14との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記携帯端末12と前記情報センター15との間であるか、前記情報センター15と前記遠隔監視装置14との間であるか、を解析せず、解析による判定結果を前記携帯端末12に通知しない点。
上記相違点1について検討する。
センターシステムと遠隔監視装置の少なくとも一方が、端末装置からの呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものにおいて、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、「通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して」、「解析による判定結果を前記端末装置に通知する」ことは、周知技術を示す証拠として挙げられた甲2~6のいずれにも記載されておらず、他に、相違点1が課題解決のための具体化手段における微差であると認めるに足る証拠はない。
よって、本件発明1と先願発明とは同一でない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立の理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立の理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立の理由は、概ね、次のとおりである。
(1)本件発明3は、甲1に記載された発明と同一であるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)本件発明1は、甲7に記載された発明、甲3に記載の事項、及び甲2~甲4に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)本件発明2は、甲7に記載された発明、甲3、8に記載の事項、及び甲2~甲4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)本件発明3は、甲7に記載された発明、甲3、5、8に記載の事項、及び甲2~甲4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(5)本件発明4は、甲7に記載された発明、甲3、5、8、9に記載の事項、及び甲2~甲4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 本件発明3の拡大先願について
(1)甲1に記載された発明
甲1の[0017]~[0021]、[0023]、[0025]~[0027]、[0030]~[0058]及び[図1]の記載より、甲1には、次の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されているといえる。
[先願発明2]
「通信網13に無線通信により接続される携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する、呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21と、休止情報システム16に備えられた休止情報サーバ17と、を配置した、情報センター15と、
前記エレベーター2の動作を制御する制御盤9と、
前記制御盤9に接続される、エレベーター2の状態の情報を収集する遠隔監視装置14と、を含むエレベーターシステム1であって、
前記呼び登録サーバ21は通信網13に接続されており、
前記遠隔監視装置14が収集したエレベーター2の状態の情報は、前記通信網13を通じて情報センター15に送信されるものであり、
前記呼び登録サーバ21は、前記携帯端末12から受け付けた利用要求による呼び登録が失敗した場合、前記利用要求を出力した前記エレベーター2の休止情報を、前記休止情報サーバ17から取得し、前記休止情報が取得できた場合には、前記呼び登録サーバ21の提示部26は、登録の失敗を表す情報及び前記エレベーター2の前記休止情報を前記携帯端末12に提示し、
前記休止情報は、前記エレベーター2の休止の理由、および休止の期間などの情報を含む、
エレベーターシステム1。」
(2)対比、判断
本件発明3と先願発明2とを対比する。
ア 先願発明2の「エレベーター2」は、本件発明3の「エレベータ」に相当する。
先願発明2の「情報センター15」は、「携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する、呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21」を「配置」するものであり、エレベーターの乗りかごの呼び要求を受付可能な構成といえるから、本件発明3の「センターシステム」に相当する。
先願発明2の「携帯端末12」は、本件発明3の「端末装置」に相当する。また、先願発明2の「携帯端末12」は、「通信網13に無線通信により接続され」る一方で、情報センター15に配置された呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21は、通信網13に接続されているから、先願発明2の「情報センター15」は、「携帯端末12」と無線通信可能であるといえる。
先願発明2の「携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する」ことは、本件発明3の「前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け」ることに相当する。
したがって、先願発明2の「通信網13に無線通信により接続される携帯端末12が生成するエレベーター2の利用要求を受信する、呼び登録システム19に備えられた呼び登録サーバ21と」、「を配置した、情報センター15と」、「を含」み、「前記呼び登録サーバ21は通信網13に接続されて」いることは、本件発明3の「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと」、「を備え」ることに相当する。
イ 先願発明2の「エレベーター2の状態の情報を収集する遠隔監視装置14」又は「遠隔監視装置14」は、本件発明3の「遠隔監視装置」に相当する。
先願発明2の「前記遠隔監視装置14が収集したエレベーター2の状態の情報は、前記通信網13を通じて情報センター15に送信される」ことは、本件発明3の「遠隔監視装置」が「前記センターシステムと通信可能」であることに相当する。
先願発明2の「制御盤9」は、「前記エレベーター2の動作を制御する」ものであり、エレベーター2の乗りかごの運行制御を行うものであるといえ、先願発明2の「制御盤9」と「遠隔監視装置14」は「接続され」ているから、先願発明2の「制御盤9」と「遠隔監視装置14」とを合わせたものは、本件発明3の「エレベータ制御盤」に相当する。
したがって、先願発明2の「前記エレベーター2の動作を制御する制御盤9と、前記制御盤9に接続される、エレベーター2の状態の情報を収集する遠隔監視装置14と、を含」み、「前記遠隔監視装置14が収集したエレベーター2の状態の情報は、前記通信網13を通じて情報センター15に送信される」ことは、本件発明3の「前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、を備え」ることに相当する。
ウ 先願発明2の「前記携帯端末12から受け付けた利用要求による呼び登録が失敗した場合」は、本件発明3の「前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合」に相当する。
また、先願発明2の「前記エレベーター2の休止情報」は本件発明3の「未実施の原因」に相当する。
そして、先願発明2の「呼び登録サーバ21」は、「情報センター15」に配置された「呼び登録システム19に備えられ」ているものである。
したがって、先願発明2の「前記呼び登録サーバ21は、前記携帯端末12から受け付けた利用要求による呼び登録が失敗した場合、前記利用要求を出力した前記エレベーター2の休止情報を、前記休止情報サーバ17から取得し、前記休止情報が取得できた場合には、前記呼び登録サーバ21の提示部26は、登録の失敗を表す情報及び前記エレベーター2の前記休止情報を前記携帯端末12に提示」するという事項は、本件発明3の「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであ」るという事項に相当する。
エ 先願発明2の「エレベーターシステム1」は、本件発明3の「エレベータ遠隔制御システム」に相当する。
そうすると、本件発明3と先願発明2とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点2>
「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものである、エレベータ遠隔制御システム。」
<相違点2>
本件発明3のエレベーター遠隔制御システムは、「前記エレベータ制御盤は、前記エレベータが点検状態か否か判定する点検モード判定部を備え、前記遠隔監視装置は、前記点検状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの点検と判定し、前記端末装置に通知する」のに対し、先願発明2のエレベーターシステム1は、エレベーター2の休止の理由、および休止の期間などの情報を含む休止情報を携帯端末12に通知するものの、休止の理由に点検状態が含まれるか不明であり、制御盤9や遠隔監視装置14にエレベーター2が点検状態か否か判定する点検モード判定部を備えているか不明である点。
上記相違点2について検討する。
センターシステムと遠隔監視装置の少なくとも一方が、端末装置からの呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものにおいて、「前記エレベータ制御盤は、前記エレベータが点検状態か否か判定する点検モード判定部を備え、前記遠隔監視装置は、前記点検状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの点検と判定し、前記端末装置に通知する」ことは、周知技術を示す証拠として挙げられた甲2~6のいずれにも記載されておらず、他に、相違点2が課題解決のための具体化手段における微差であると認めるに足る証拠はない。
よって、本件発明3と先願発明2とは同一でない。
3 甲7に記載された発明
甲7の【0001】~【0007】、【0009】~【0027】、【図1】~【図6】の記載より、甲7には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されているといえる。
[甲7発明]
「携帯端末8と一般通信回線網4を介して接続され、前記携帯端末8より送信された呼び情報を受信する監視サーバ5と、
エレベーター1を制御する制御装置2と、
前記制御装置2に接続されており、前記一般通信回線網4を介して前記監視サーバ5と接続されている監視装置3と、
を備え、
前記監視サーバ5は、記憶部502に前記エレベーター1について点検または工事の作業予定が格納されている場合、作業予定の曜日または時間帯に過去、利用者7が前記エレベーター1を利用したことがある場合には、当該利用者7の前記携帯端末8に作業予定の通知を行い、
前記携帯端末8は、呼び情報などを入力するための操作部としての機能と、呼び登録の結果や前記監視サーバ5から通知される作業予定などを出力するための表示部としての機能を備える
エレベーター呼び登録システム。」
4 甲8の記載事項
甲8には図面と共に以下の事項が記載されている。
「[0007]
本開示に係る休止情報提供システムであれば、現時点の予定などのエレベーターの現在の休止の状況の情報を提供できる。」
「[0015]
また、制御盤7は、エレベーター2において故障を検知する機能を搭載する。制御盤7は、例えば、図示されないエレベーター2のセンサーおよびスイッチなどが検出する検出信号に基づいて故障の検知を行う。制御盤7は、故障を検知するときに、エレベーター2を休止させる。」
「[0021]
エレベーターシステム1は、作業管理システム15を含む。作業管理システム15は、エレベーター2に適用される。作業管理システム15は、エレベーター2において行われる保守作業などの作業を管理するシステムである。作業管理システム15は、作業管理サーバ16と、保守端末17と、を備える。
[0022]
作業管理サーバ16は、保守作業の実績および予定などを管理するサーバ装置である。作業管理サーバ16は、通信網11に接続される。作業管理サーバ16は、例えば作業管理システム15において保守作業などの作業が管理されるエレベーター2の遠隔地に設けられる。
[0023]
作業管理サーバ16は、通信網11を通じて作業届の提出を受け付ける機能を搭載する。作業届は、保守員が作業現場において保守作業を開始するときに作業管理サーバ16に送信される情報である。作業届が作業管理サーバ16に提出されるときに、保守員によって、エレベーター2は休止される。このとき、作業管理サーバ16は、外部の装置に作業届の受理を通知してもよい。作業届は、休止の終了予定時刻の情報を含んでいてもよい。作業管理サーバ16は、通信網11を通じて作業完了届の提出を受け付ける機能を搭載する。作業完了届は、保守員が作業現場において保守作業を終了するときに作業管理サーバ16に送信される情報である。作業完了届が作業管理サーバ16に提出されるときに、保守員によって、エレベーター2は復旧される。
[0024]
また、作業管理サーバ16は、通信網11を通じて作業予定の入力を受け付ける機能を搭載してもよい。作業予定が入力されたときに、作業管理サーバ16は、外部の装置に作業予定の更新を通知してもよい。作業予定は、保守作業の内容、および休止時間の情報を含む。休止時間は、開始予定時刻から終了予定時刻までの期間である。休止の開始予定時刻は、現在または将来の時点である。休止の終了予定時刻は、始期より後の将来の時点である。」
「[0033]
収集部22は、例えば作業管理サーバ16を情報源として休止情報を収集する。作業管理サーバ16は、計画された休止の休止情報を提供する情報源の例である。例えば、収集部22は、予め設定された周期で作業管理サーバ16から作業予定の情報を休止情報として収集する。あるいは、収集部22は、作業管理サーバ16から作業届の受理の通知を受けたときに、作業管理サーバ16から作業届の情報を休止情報として収集する。あるいは、収集部22は、作業管理サーバ16から作業予定の更新の通知を受けたときに、作業管理サーバ16から作業予定の情報を休止情報として収集する。
[0034]
収集部22は、例えば監視サーバ13を情報源として休止情報を収集する。監視サーバ13は、計画された休止の休止情報を提供する情報源の例である。例えば、収集部22は、予め設定された周期で監視サーバ13から指定された休止時間の情報を休止情報として収集する。あるいは、収集部22は、監視サーバ13から休止時間の指定の更新の通知を受けたときに、指定された休止時間の情報を休止情報として監視サーバ13から収集する。
[0035]
収集部22は、例えば遠隔監視装置12を情報源として休止情報を収集する。遠隔監視装置12は、計画外の休止情報を提供する情報源の例である。例えば、収集部22は、地震感知器6の作動によって休止したエレベーター2の状況を休止情報として遠隔監視装置12を通じて取得する。また、例えば、収集部22は、故障の検知によって休止したエレベーター2の状況を休止情報として遠隔監視装置12を通じて取得する。」
「[0061]
図4は、XビルY号館を含む地域において災害が発生していると災害判定部26が特定していない場合の携帯端末18の表示の例である。
[0062]
応答情報による携帯端末18の表示は、建物表示29と、エレベーター2ごとの休止表示30と、コンテンツ表示31と、を含む。
[0063]
建物表示29は、特定されたエレベーター2が設けられる建物を示す表示である。この例において、建物表示29として建物名「XビルY号館」が表示される。
[0064]
休止表示30は、A号機、B号機、C号機、およびD号機のエレベーター2についての情報を表す表示である。
[0065]
この例において、A号機のエレベーター2は、遠隔監視システム10における指定によって休止している。このとき、収集部22は、A号機のエレベーター2の休止情報を監視サーバ13から収集している。休止表示30は、A号機のエレベーター2が休止していることを表す。また、休止表示30は、休止の理由として「運用による休止」を含む。休止表示30は、休止の開始予定時刻および終了予定時刻の情報を含む。休止表示30における時刻の表示は、表示形式設定に従っている。なお、指定された開始予定時刻の前に生成部24が応答情報を生成する場合に、生成部24は、例えば休止表示30を「運用によって休止予定です」などのように休止の予定として生成してもよい。
[0066]
この例において、B号機のエレベーター2は、休止していない。このとき、収集部22は、いずれの情報源からもB号機のエレベーター2の休止情報を収集していない。休止表示30は、B号機のエレベーター2が休止していないことを表す。
[0067]
この例において、C号機のエレベーター2は、故障によって休止している。このとき、収集部22は、C号機のエレベーター2の休止情報を遠隔監視装置12から収集している。休止表示30は、C号機のエレベーター2が休止していることを表す。また、休止表示30は、休止の理由として「故障のため休止」を含む。また、休止表示30は、エレベーター2の休止への対応の有無を含んでもよい。例えば、保守会社による対応が既に行われている場合に、休止表示30は休止への対応済みを表す「保守会社にて対応中です」などを含む。また、休止表示30は、エレベーター2の保守会社などへの遠隔監視装置12などからの通報の有無を含んでもよい。例えば、保守会社への通報が既に行われており、かつ、保守会社による対応がまだ行われていない場合に、休止表示30は休止への通報済みを表す「保守会社に通報済みです」などを含む。
[0068]
この例において、D号機のエレベーター2は、保守作業によって休止している。このとき、収集部22は、D号機のエレベーター2の休止情報を作業管理サーバ16から収集している。休止表示30は、D号機のエレベーター2が休止していることを表す。また、休止表示30は、休止の理由として「保守作業による休止」を含む。なお、作業予定の開始予定時刻の前に生成部24が応答情報を生成する場合に、生成部24は、例えば休止表示30を「保守作業によって休止予定です」などのように休止の予定として生成してもよい。このとき、休止表示30は、休止の開始予定時刻および終了予定時刻の情報を含む。また、保守作業が既に開始している場合に、休止表示30は、休止の開始予定時刻を含まずに休止の終了予定時刻の情報を含んでもよい。」
5 甲9の記載事項
甲9には図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0004】
他国に設置されたエレベータを遠隔監視する場合に現地時刻との時間的なずれ、つまり、時差を考慮しなければならない。すなわち、一般的に、エレベータの動作状態を監視するために必要な端末装置(遠隔監視装置とも呼ぶ)は、契約使用である。端末装置の契約が切れると、回収されて他の物件のエレベータに最利用される。その際、端末装置を他国で使用すると、監視センタ側では、端末装置からエラー発報があった場合に現地との時差を考慮して解析する必要があり、非常に効率が悪い。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、他国に設置されたエレベータの動作状態を現地時刻で監視でき、何らかのエラーが発生した場合に現地時刻を基準にして適切に対応することのできるエレベータの遠隔監視システムを提供することである。」
「【0014】
エレベータ11には、エレベータ制御装置21、遠隔監視装置22が設けられている。具体的には、エレベータ11が設置されたビルの機械室などにエレベータ制御装置21と遠隔監視装置22が設置されている。」
「【0018】
監視センタ13内には、監視対象とするエレベータ11の動作状態を通信ネットワーク12を介して遠隔監視するための制御装置23が設置されている。本実施形態において、この制御装置23には、グローバル時刻テーブル31、設置地域判定部32、現地時刻送信部33、エラー表示部34が備えられている。」
「【0020】
エラー表示部34は、エレベータ11の遠隔監視装置22から送られて来たエラー情報を当該エラー情報に付された第1の時刻(現地時刻)と共に表示する。
【0021】
一方、監視対象であるエレベータ11には、エレベータ制御装置21と遠隔監視装置22が設置されている。上述したように、エレベータ制御装置21は、エレベータ11の運転制御を行う。このエレベータ制御装置21には、設置番号記録部51とエラー検出部52が備えられている。
【0022】
設置番号記録部51には、エレベータ11に付された設置番号が記録されている。エラー検出部52は、エレベータ11の動作中に発生したエラー情報を検出する。
【0023】
遠隔監視装置22は、エレベータ11の設置国の通信規格に従って監視センタ13と通信するための通信機能を備えている。この遠隔監視装置22には、設置番号取得部41、設置番号送信部42、現地時刻更新部43、端末時計44、エラー受信部45、エラー発報部46が備えられている。
【0024】
設置番号取得部41は、監視センタ13からの要求に従ってエレベータ制御装置21の設置番号記録部51に記録されたエレベータ11の設置番号を取得する。設置番号送信部42は、設置番号取得部41によって得られたエレベータ11の設置番号を監視センタ13に送信する。
【0025】
現地時刻更新部43は、監視センタ13から送られて来た現地時刻に端末時計44の時刻を合わせる。端末時計44は、遠隔監視装置22に設けられた第1の内部時計であり、現地時刻を計時するために用いられる。
【0026】
エラー受信部45は、エレベータ制御装置21のエラー検出部52によって検出されたエラー情報を受信する。エラー発報部46は、エラー受信部45で受信されたエラー情報を発報するときに、端末時計44を用いてエラー発生時の第1の時刻(現地時刻)を監視センタ13に送信する。」
6 本件発明1の進歩性について
本件発明1と甲7発明とを対比する。
(1)甲7発明の「携帯端末8」は本件発明1の「端末装置」に相当し、同様に、「携帯端末8と一般通信回線網4を介して接続され」ることは「端末装置と無線通信可能で」あることに、「前記携帯端末8より送信された呼び情報を受信する」ことは「前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能」であることに、「監視サーバ5」は「センターシステム」に、それぞれ相当する。
したがって、甲7発明の「携帯端末8と一般通信回線網4を介して接続され、前記携帯端末8より送信された呼び情報を受信する監視サーバ5と、」「を備え」ることは本件発明1の「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、」「を備え」ることに相当する。
(2)甲7発明の「前記一般通信回線網4を介して前記監視サーバ5と接続されている」「監視装置3」は本件発明1の「前記センターシステムと通信可能な」「遠隔監視装置」に相当する。
甲7発明の「制御装置2」は「エレベーター1を制御する」ものであり、エレベーター1の乗りかごの運行制御を行うものであるといえ、甲7発明の「制御装置2」と「監視装置3」は「接続されている」から、甲7発明の「制御装置2」と「監視装置3」とを合わせたものは本件発明1の「エレベータ制御盤」に相当する。
したがって、甲7発明の「エレベーター1を制御する制御装置2と、前記制御装置2に接続されており、前記一般通信回線網4を介して前記監視サーバ5と接続されている監視装置3と、を備え」ることは本件発明1の「前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、を備え」ることに相当する。
(3)甲7発明の「前記携帯端末8は、」「呼び登録の結果」「を出力するための表示部としての機能を備える」ことから、呼び登録の結果が携帯端末8に通知されていることは自明である。
したがって、甲7発明の「前記携帯端末8は、呼び情報などを入力するための操作部としての機能と、呼び登録の結果や前記監視サーバ5から通知される作業予定などを出力するための表示部としての機能を備える」ことは本件発明1の「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、前記未実施の原因を通信エラーと判定し、解析による判定結果を前記端末装置に通知する」こととの対比において、前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が「前記端末装置に通知」される点で共通する。
(4)甲7発明の「エレベーター呼び登録システム」は本件発明1の「エレベータ遠隔制御システム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲7発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点3>
「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が前記端末装置に通知される、エレベータ遠隔制御システム。」
<相違点3>
「前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が前記端末装置に通知される」ことについて、本件発明1は「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、前記センターシステムは、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、前記未実施の原因を通信エラーと判定し、解析による判定結果を前記端末装置に通知する」のに対し、甲7発明は「前記携帯端末8は、呼び情報などを入力するための操作部としての機能と、呼び登録の結果や前記監視サーバ5から通知される作業予定などを出力するための表示部としての機能を備える」点。
上記相違点3について検討する。
センターシステムと遠隔監視装置の少なくとも一方が、端末装置からの呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであって、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、前記未実施の原因を通信エラーと判定し、解析による判定結果を前記端末装置に通知するものは、甲2~4のいずれにも記載されておらず、その他に、当該構成が本願出願時において周知技術又は当業者の技術常識であったと認めるに足る証拠はない。
したがって、甲7発明、甲3の記載事項、及び甲2~4に記載された周知技術に基いて、上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲7発明、甲3の記載事項、及び甲2~4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
7 本件発明2の進歩性について
上記6(1)~(4)を踏まえると、本件発明2と甲7発明は、以下の点で一致し、相違する。
<一致点4>
「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が前記端末装置に通知される、エレベータ遠隔制御システム。」
<相違点4>
「前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が前記端末装置に通知される」ことについて、本件発明2は「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、前記エレベータ制御盤は、前記乗りかごが運行停止状態か否かを判定するエレベータ停止判定部を備え、前記遠隔監視装置は、前記運行制御に制御エラーが存在しない場合で、前記乗りかごが運行停止状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの故障と判定し、前記端末装置に通知する」のに対し、甲7発明は「前記携帯端末8は、呼び情報などを入力するための操作部としての機能と、呼び登録の結果や前記監視サーバ5から通知される作業予定などを出力するための表示部としての機能を備える」点。
上記相違点4について検討する。
センターシステムと遠隔監視装置の少なくとも一方が、端末装置からの呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであって、エレベータ制御盤は、乗りかごが運行停止状態か否かを判定するエレベータ停止判定部を備え、前記遠隔監視装置は、運行制御に制御エラーが存在しない場合で、前記乗りかごが運行停止状態の場合、前記未実施の原因をエレベータの故障と判定し、前記端末装置に通知するものは、甲2~4、8のいずれにも記載されておらず、その他に、当該構成が本願出願時において周知技術又は当業者の技術常識であったと認めるに足る証拠はない。
したがって、甲7発明、甲3の記載事項、甲8の記載事項及び甲2~4に記載された周知技術に基いて、上記相違点4に係る本件発明2の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明2は、甲7発明、甲3の記載事項、甲8の記載事項及び甲2~4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
8 本件発明3の進歩性について
上記6(1)~(4)を踏まえると、本件発明3と甲7発明は、以下の点で一致し、相違する。
<一致点5>
「端末装置と無線通信可能で、前記端末装置からエレベータの乗りかごの呼び要求を受付け可能なセンターシステムと、
前記センターシステムと通信可能な遠隔監視装置を含み、前記乗りかごの運行制御を行うエレベータ制御盤と、
を備え、
前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が前記端末装置に通知される、エレベータ遠隔制御システム。」
<相違点5>
「前記端末装置からの前記呼び要求に関する情報が前記端末装置に通知される」ことについて、本件発明3は「前記センターシステムと前記遠隔監視装置の少なくとも一方は、前記端末装置からの前記呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであり、前記エレベータ制御盤は、前記エレベータが点検状態か否か判定する点検モード判定部を備え、前記遠隔監視装置は、前記点検状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの点検と判定し、前記端末装置に通知する」のに対し、甲7発明は「前記携帯端末8は、呼び情報などを入力するための操作部としての機能と、呼び登録の結果や前記監視サーバ5から通知される作業予定などを出力するための表示部としての機能を備える」点。
上記相違点5について検討する。
センターシステムと遠隔監視装置の少なくとも一方が、端末装置からの呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものであって、エレベータ制御盤は、エレベータが点検状態か否か判定する点検モード判定部を備え、前記遠隔監視装置は、前記点検状態の場合、前記未実施の原因を前記エレベータの点検と判定し、前記端末装置に通知するものは、甲2~5、8のいずれにも記載されておらず、その他に、当該構成が本願出願時において周知技術又は当業者の技術常識であったと認めるに足る証拠はない。
したがって、甲7発明、甲3の記載事項、甲5の記載事項、甲8の記載事項及び甲2~4に記載された周知技術に基いて、上記相違点5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明3は、甲7発明、甲3の記載事項、甲5の記載事項、甲8の記載事項及び甲2~4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
9 本件発明4の進歩性について
本件発明4は、本件発明1~本件発明3のいずれかにさらに限定を付加したものであるから、上記6~8と同じ理由により、本件発明1~本件発明3のいずれかを引用する本件発明4も、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 申立人の主張について
1 令和7年4月22日に提出の意見書での主張について
申立人は、令和7年4月22日に提出の意見書で、周知技術を示す文献として参考資料1(特開2018-182695号公報)及び参考資料2(特開2013-170080号公報)を挙げた上で、追加変更点1「通信不良が前記携帯端末と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析」すること及び追加変更点2「解析による判定結果を」前記端末装置に通知することは、周知技術の付加、転換等であって、新たな効果を奏するものではなく、すなわち、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎず、実質的な相違点とはいえないから、本件発明1は甲1発明と同一である旨、主張する。
しかし、参考資料1も参考資料2も、センターシステムと遠隔監視装置の少なくとも一方が、端末装置からの呼び要求に対して前記呼び要求が未実施となる場合、前記未実施の原因を前記端末装置に通知するものにおいて、当該センターシステムと前記端末装置との間の第1通信状態と、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間の第2通信状態と、の少なくとも一方が通信不良の場合、通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、解析による判定結果を前記端末装置に通知するものではないから、参考資料1及び参考資料2は、追加変更点1及び追加変更点2が周知技術の付加、転換等であることを示す証拠であるとはいえない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
2 令和7年12月3日に提出の意見書での主張について
申立人は、令和7年12月3日に提出の意見書で、令和7年8月29日起案の取消理由通知書において「携帯端末」と「端末装置」が同義とは認められないと摘示されたとおり、「携帯端末」と「端末装置」が同義とは認められず、さらに、携帯可能か否かを区別しない端末装置全般が「携帯端末」の例であると解することはできないから、本件明細書の段落[0010]以降に記載された「携帯端末」が「端末装置」を意味するものであるとするのは、その解釈を不当に拡大するものであって、「通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、」前記未実施の原因を通信エラーと判定することとする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされていない旨、主張する。
しかし、令和7年8月29日起案の取消理由通知書は、通信不良が「端末装置」とは異なる「携帯端末」と「前記センターシステム」との間であるかを解析するものとする令和6年12月12日に提出された訂正請求書において、「携帯端末」という記載を「端末装置」という記載に補正することが、軽微な瑕疵の補正とは認めらないことを示しているものであり、「携帯端末1000」が「端末装置」の一例であることを否定するものではない。そして、本件明細書に記載された「携帯端末1000」は「端末装置」の一例であると認められるから、「通信不良が前記端末装置と前記センターシステムとの間であるか、前記センターシステムと前記遠隔監視装置との間であるか、を解析して、」前記未実施の原因を通信エラーと判定することとする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであると認められる。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1~4に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700703