特許異議申立
2024-701027
エレベーター巻上機及びエレベーター装置
- 審判番号
- 2024-701027
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-565416
- 登録番号
- 7483157
- 請求日
- 2024年10月17日
- 審決日
- 2025年10月23日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人加藤国際特許事務所
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1652.113-YAA(B66B) / P1652.121-YAA(B66B) / P1652.161-YAA(B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7483157号発明「エレベーター巻上機及びエレベーター装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7483157号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5、6〕について訂正することを認める。
特許第7483157号の請求項1、3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7483157号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)7月4日を国際出願日とする出願であって、令和6年5月2日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年5月14日に特許掲載公報が発行されたものである。
そして、本件特許の請求項1、3に係る特許に対し、令和6年10月17日に特許異議申立人 金田綾香(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたところ、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和7年 1月31日付け:取消理由通知
同年 4月 4日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同年 5月 8日 :特許権者による手続補正書の提出
同年 6月20日付け:訂正請求があった旨の通知
なお、令和7年6月20日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、通知書で指定した期間内に申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年5月8日に提出された手続補正書により補正された同年4月4日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、5、6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、」と記載されているのを、
「前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、前記接続部の外形は直円錐状であり、前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項5に「前記接続部は、前記接続部の内側へ凸となるように湾曲している請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベーター巻上機。」と記載されているのを、「前記接続部は、前記接続部の内側へ凸となるように湾曲している請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベーター巻上機。」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1、5及び6に関し、訂正前の請求項5及び6は、訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1、5及び6に対応する訂正後の請求項1、5及び6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、本件訂正は、一群の請求項〔1、5、6〕について請求されたものである。
3 訂正の適否に関する当審における判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1、6に係る発明における「接続部」について、その「外形は直円錐状であ」るとして、「接続部」を限定するものである。よって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、「実施の形態1の接続部11bの外形は、直円錐から頂部を取り除いた形状である」(段落【0023】)、「接続部11bの外形は直円錐状であるため、ハウジング11に発生する応力をより効率的に分散し低減することができる」(段落【0041】)との記載があるところ、「前記接続部の外形は直円錐状であ」るという事項は、本件特許明細書等に記載されている事項といえる。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記のとおり、訂正前の請求項1、6に係る発明が有する発明特定事項を更に限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件
訂正事項1は、上記アのとおり特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、訂正前の請求項6には特許異議の申立てがされていないため、それに対応する訂正後の請求項6に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課される。
そこで、訂正後の請求項6に係る発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものか、以下検討する。
(ア)訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項6に係る発明
訂正後の請求項1に係る発明については、下記「第4」3(1)イのとおり、申立人が提出した甲第1号証に記載された発明でもないし、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、下記「第4」3(2)イのとおり、特願2022-176380号(以下「先願」という。;申立人が提出した甲第2号証は、この先願の公開公報。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一ではない。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項6に係る発明は、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項6に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(イ)訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項6に係る発明
訂正後の請求項2に係る発明については、「前記軸心を含む前記ハウジングの水平断面において、前記接続部の肉厚は、前記底板部の肉厚よりも薄い」という発明特定事項をする。
しかし、当該発明特定事項は、甲第1号証に記載も示唆もないし、その他当該発明特定事項が周知技術であるといえる証拠もない。したがって、訂正後の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でもないし、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、上記発明特定事項は、上記(ア)で挙げた先願明細書等に記載されておらず、訂正後の請求項2に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。
したがって、訂正後の請求項2に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項6に係る発明は、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項6に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(ウ)訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項6に係る発明
訂正後の請求項3に係る発明については、下記「第5」2(1)イのとおり、申立人が提出した甲第1号証に記載された発明ではない。また、下記「第5」2(1)アの相違点3に係る訂正後の請求項3に係る発明の発明特定事項については、甲第1号証に記載も示唆もないし、その他その発明特定事項が周知技術であるといえる証拠もないから、訂正後の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、下記「第5」2(2)イのとおり、上記(ア)で挙げた先願明細書等に記載された発明と同一ではない。
したがって、訂正後の請求項3に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項6に係る発明は、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項6に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(エ)訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項6に係る発明
訂正後の請求項4に係る発明については、「前記軸心を含む前記ハウジングの水平断面における前記底板部の肉厚は、前記主軸部の軸心を含む前記ハウジングの垂直断面における前記底板部の肉厚よりも薄い」という発明特定事項をする。
しかし、当該発明特定事項は、甲第1号証に記載も示唆もないし、その他当該発明特定事項が周知技術であるといえる証拠もない。したがって、訂正後の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でもないし、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、上記発明特定事項は、上記(ア)で挙げた先願明細書等に記載されておらず、訂正後の請求項4に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。
したがって、訂正後の請求項4に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項6に係る発明は、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項6に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(オ)訂正後の請求項6に係る発明の独立特許要件のまとめ
上記(ア)~(エ)から、訂正後の請求項6に係る発明は、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しないし、その他に訂正後の請求項6に係る発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由も発見しない。
したがって、訂正事項1による訂正後の請求項6は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正後に、仮に、請求項5が請求項1を引用したままであると、訂正事項1により付加された請求項1の「前記接続部の外形は直円錐状であ」るという事項と、請求項5の「前記接続部は、前記接続部の内側へ凸となるように湾曲している」という事項とが矛盾し、請求項5に係る発明が不明確となる。訂正事項2は、訂正事項1によって生じる矛盾に起因する請求項5に係る発明の不明確性を回避するために、請求項5が請求項1を引用しないものとなるよう訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項5が請求項1~4の記載を引用するものであったところ、これを請求項2~4のみを引用するものへと、引用する請求項数を削減するものであるから特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2は、請求項5が請求項1を引用しないように引用する請求項数を削減するものに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項5に係る不明確性を回避するために、引用する請求項数を削減するものに過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件
訂正事項2は、上記アのとおり特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもあり、訂正前の請求項5には特許異議の申立てがされていないため、それに対応する訂正後の請求項5に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課される。
そこで、訂正後の請求項5に係る発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものか、以下検討する。
(ア)訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5に係る発明
訂正後の請求項2に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項5に係る発明は、上記(1)エ(イ)と同様に、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(イ)訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項5に係る発明
訂正後の請求項3に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項5に係る発明は、上記(1)エ(ウ)と同様に、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項5に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(ウ)訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5に係る発明
訂正後の請求項4に係る発明の発明特定事項を全て含む、訂正後の請求項5に係る発明は、上記(1)エ(エ)と同様に、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
さらに、その他に訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
(エ)訂正後の請求項5に係る発明の独立特許要件のまとめ
上記(ア)~(ウ)から、訂正後の請求項5に係る発明は、申立人が提出した証拠を検討しても、特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しないし、その他に訂正後の請求項5に係る発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができなかったとする理由を発見しない。
したがって、訂正事項2による訂正後の請求項5は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5、6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」等といい、総称して「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、軸受を介して、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の外形は直円錐状であり、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、
前記モータ固定子は、前記固定子装着部の内周面に装着されており、
前記モータ固定子及び前記モータ回転子は、前記軸受に対して、前記主軸部の軸方向に離れて配置されており、
前記接続部は、前記モータ固定子及び前記モータ回転子の内側に位置しているエレベーター巻上機。
【請求項2】
ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、
前記軸心を含む前記ハウジングの水平断面において、前記接続部の肉厚は、前記底板部の肉厚よりも薄いエレベーター巻上機。
【請求項3】
ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、
前記軸心を含む前記ハウジングの垂直断面において、前記接続部の肉厚は、前記底板部へ向けて徐々に厚くなっているエレベーター巻上機。
【請求項4】
ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、
前記軸心を含む前記ハウジングの水平断面における前記底板部の肉厚は、前記主軸部の軸心を含む前記ハウジングの垂直断面における前記底板部の肉厚よりも薄いエレベーター巻上機。
【請求項5】
前記接続部は、前記接続部の内側へ凸となるように湾曲している請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベーター巻上機。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベーター巻上機
を備えているエレベーター装置。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審合議体が令和7年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
・理由1(新規性) 訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・理由2(進歩性) 訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・理由3(拡大先願) 訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願の出願後に特許公報が発行された以下の特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が他の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時に本件特許の出願人が他の特許出願の出願人と同一でもないので、当該請求項に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(刊行物)甲第1号証:特許第7256977号公報
(先 願)特願2022-176380号(特許第7376855号公報;甲第2号証)
なお、甲第1号証及び甲第2号証は、申立人が提出した証拠であり、以下、「甲1」及び「甲2」という。
2 甲号証等の記載
(1)甲1について
甲1には、次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)。
「【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータの巻上装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの巻上装置は、かごロープを介してかごや釣合錘を吊り下げる綱車を備えている。下記特許文献1において、綱車は、綱車と一体的に回転するブレーキディスクを制動部で挟むことで制動される。このとき、綱車を回転させるための軸受から漏れた潤滑剤(グリスや油)が、ブレーキディスクの表面に付着すると、制動部によって綱車を十分に制動することができなくなる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、軸受から漏れた潤滑剤がブレーキ作用部に付着することを防止できるエレベータの巻上装置及びエレベータを提供することである。」
「【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、エレベータの巻上装置及びエレベータにおける第1実施形態について、図1~図7を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。」
「【0015】
図2及び図3に示すように、巻上装置5は、例えば、かごロープ3が巻き掛けられる綱車10と、綱車10と一体的に回転するディスク11と、綱車10を制動するために、ディスク11の回転軸方向である第1横方向D1でディスク11を挟む制動部12とを備えていてもよい。なお、第1横方向D1のうち、第1側D11は、軸方向第1側D11ともいい、第2側D12は、軸方向第2側D12ともいう。
【0016】
綱車10の回転中心は、例えば、第1横方向D1視において、ディスク11の回転中心と同じになっていてもよい。また、ディスク11の外径は、例えば、綱車10の外径よりも大きくなっており、円環状で且つ板状に形成されていてもよい。
【0017】
また、図4に示すように、巻上装置5は、例えば、機械室X2に固定される本体13と、本体13から第1横方向D1に突出する軸部14と、軸部14を中心に回転する回転部材15とを備えていてもよい。また、巻上装置5は、軸部14の周囲に配置される軸受16を備えていてもよい。回転部材15は、軸受16を介して軸部14に回転自在に軸支されている。」
「【0021】
また、本体13は、フレーム部19の中央にハウジング部20を備えていてもよい。ハウジング部20は、円筒部20aと、円環状の底部20bとを備えていてもよい。底部20bは、円筒部20aの軸方向第2側D12の内周面から突出している。
【0022】
本体13は、ハウジング部20の円筒部20aの内周面に固定されたステータ17(図4を参照)を備えていてもよい。ステータ17は、周方向に間隔をあけて設けられた複数のコイル17aを備えている。ステータ17は、後述のロータ部15b(永久磁石15d)とともにモータを構成する。ハウジング部20の円筒部20aの外周面は、モータから生じる熱を効果的に放熱するため複数の突条を備えていてもよい。円筒部20aの下部は、脚部20cを介してベース部18と接続されている。
【0023】
また、本体13は、底部20bの内底面20eから第1横方向D1に突出する接続部21を備えていてもよい。接続部21は、内底面20eの内周縁から第1横方向D1の第1側D11に向かって突出している。接続部21の先端には、軸部14が接続される。接続部21は、筒状をしており、軸部14と同軸上に配置されていてもよい。接続部21は、本体13の軽量化のために中空に形成されているが、これに限定されない。接続部21は中実に形成されていてもよい。接続部21は、内底面20eに向かって裾拡がりの形状となっていてもよい。これにより、接続部21と底部20bの接続部での応力集中を抑制できる。」
「【0025】
軸部14は、図4に示すように、接続部21から第1横方向D1の第1側D11に向かって延びている。軸部14の周囲には軸受16が配置されている。軸受16は、第1横方向D1に沿って複数設けられてもよい。
【0026】
軸部14と本体13は、例えば、鋳造などによって一体成形されてもよい。なお、軸部14は、中心に貫通孔が形成されており、不図示のエンコーダが配置されてもよい。
【0027】
回転部材15は、軸受16に嵌合する軸受嵌合部15aと、モータを構成する円筒状のロータ部15bと、ディスク11を構成するディスク部15cとを備えていてもよい。
【0028】
回転部材15は、軸受16を介して軸部14に回転自在に軸支されている。また、綱車10は、軸受嵌合部15aの外周面に固定されており、回転部材15と一体として回転する。すなわち、綱車10は、軸部14に軸受16及び回転部材15を介して回転自在に軸支されている。」
「【図3】
[図:0001431127000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001431127000002.jpg]
」
「【図5】
[図:0001431127000003.jpg]
」
「【図6】
[図:0001431127000004.jpg]
」
以上の記載から、甲1には次の事項が記載されているといえる。
ア エレベータ巻上装置5は、ハウジング部20を備えている(段落【0021】、図3、4)。
イ エレベータ巻上装置5は、軸受嵌合部15aに綱車10が固定され、回転自在に軸支された回転部材15を備えている(段落【0028】、図4)。回転部材15は、ハウジング部20に対して回転自在であるといえる。
ウ エレベータ巻上装置5は、ハウジング部20に固定されたステータ17と、回転部材15に備えられた永久磁石15dとで構成されるモータを備えている(段落【0022】、【0027】、図4、図6)。
エ ハウジング部20は、円筒部20aと、底部20bとを備えており、円筒部20aは底部に接続されている(段落【0021】、図4、図6)。そして、図4、5及び6から、底部20bは、平板状である点が看て取れる
また、軸部14に接続部21が接続されており(段落【0025】、図4、図6)、その接続部21はハウジング部20の底部20bに接続されている(段落【0023】、図4、図6)。このように、軸部14と接続部21とがハウジング部20に接続されることにより、ハウジング部20と一体的な構造とされるから、ハウジング部20が、軸部14と、接続部21とを備えているということもできる。
オ 回転部材15は、2つの軸受を介して軸部14の軸心を中心として当該軸部14に回転自在に軸支されている(段落【0028】、図4、図6)。
カ 接続部21は「筒状」である(段落【0023】)。
キ 「綱車10と一体的に回転するディスク11と、綱車10を制動するために、ディスク11の回転軸方向である第1横方向D1」(段落【0015】)との記載があり、綱車10の回転軸は軸部14であるから、軸部14の軸心方向が第1横方向D1である。
そして、図4及び6から、軸部14が、第1横方向D1における第1側D11の端部と、前記第1横方向における第2側D12の端部とを有している点が看て取れる。
ク 図4及び6から、接続部21の第1横方向D1における第1側D11の端部が、軸部14の第1横方向D1における第2側D12の端部に接続されている点が看て取れる。
ケ 底部20bは「円環状」である(段落【0021】)。
コ 段落【0023】並びに図4及び6から、接続部21の第1横方向D1における第2側D12の端部は、底部20bの「内底面20eの内周縁」に接続されているといえる。
サ 図4及び6から、接続部21が、当該接続部21の径方向内側に向けて凸状に湾曲した形状をなす点が看て取れる。
シ 図4及び6から、接続部21の径は、軸部14から底部20bに行くにつれ大きくなっている点が看て取れる。
ス ステータ17は、円筒部20aの内周面に固定されている(段落【0022】、図4、図6)。
セ 図4及び6から、ステータ17及び永久磁石15dが、2つの軸受に対して、第1横方向D1に離れて配置されている点が看て取れる。
ソ 図4及び6から、接続部21は、ステータ17及び永久磁石15dよりも半径方向内側に位置している、点が看て取れる。
以上を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「 ハウジング部20、
軸受嵌合部15aに綱車10が固定され、前記ハウジング部20に対して回転自在に軸支された回転部材15、及び
前記ハウジング部20に固定されたステータ17と、前記回転部材15に備えられた永久磁石15dとで構成されるモータ
を備え、
前記ハウジング部20は、軸部14と、前記軸部14に接続される接続部21と、前記接続部21に接続される板状の底部20bと、前記底部20bに接続される円筒部20aをと備えており、
前記回転部材15は、2つの軸受を介して前記軸部14の軸心を中心として前記軸部14に回転自在に軸支されており、
前記接続部21は、筒状であり、
前記軸部14の軸心方向が第1横方向D1であり、
前記軸部14は、第1横方向D1における第1側D11の端部と、第1横方向における第2側D12の端部とを有しており、
前記接続部21の第1横方向D1における第1側D11の端部は、前記軸部14の第1横方向D1の第2側D12の前記端部に接続されており、
前記底部20bは円環状であり、
前記接続部21の第1横方向の第2側D12の端部は、前記底部20bの内底面20eの内周縁に接続されており、
前記接続部21は、当該接続部21の径方向内側に向けて凸状に湾曲した形状をなし、
前記接続部21の径は、前記軸部14から前記底部20bに行くにつれ大きくなっており、
前記ステータ17は、前記円筒部20aの内周面に固定されており、
前記ステータ17及び前記永久磁石15dは、前記2つの軸受に対して、第1横方向D1に離れて配置されており、
前記接続部21は、前記ステータ17及び前記永久磁石15dよりも半径方向内側に位置している、エレベータ巻上装置5。」
(2)先願明細書等について
先願明細書等には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータの巻上装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、巻上装置の薄型化のために、綱車を回転させるための軸部が本体と一体に成形されたエレベータが開示されている。
【0003】
綱車は、軸部によって片持ちで支持される。そのため、綱車にかかる荷重が大きくなると、軸部の変位量が大きくなり、綱車と一体で回転するブレーキディスクの傾きも大きくなる。ブレーキディスクは、ブレーキのパッドとの隙間がわずかとなるように調整されているため、傾きが大きいとブレーキディスクとパッドが擦れてしまう可能性がある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、綱車と一体で回転するブレーキ作用部の傾きを小さくすることができるエレベータの巻上装置及びエレベータを提供することである。」
「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、エレベータの巻上装置及びエレベータにおける一実施形態について、図1~図6を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。」
「【0015】
図2及び図3に示すように、巻上装置5は、例えば、かごロープ3が巻き掛けられる綱車10と、綱車10と一体的に回転するディスク11と、綱車10を制動するために、ディスク11の回転軸方向である第1横方向D1でディスク11を挟む制動部12とを備えていてもよい。なお、第1横方向D1のうち、第1側D11は、軸方向第1側D11ともいい、第2側D12は、軸方向第2側D12ともいう。
【0016】
綱車10の回転中心は、例えば、第1横方向D1視において、ディスク11の回転中心と同じになっていてもよい。また、ディスク11の外径は、例えば、綱車10の外径よりも大きくなっており、円環状で且つ板状に形成されていてもよい。
【0017】
また、図4に示すように、巻上装置5は、例えば、機械室X2に固定される本体13と、本体13から第1横方向D1に突出する軸部14と、軸部14を中心に回転する回転部材15とを備えていてもよい。
【0018】
回転部材15は、綱車10が嵌入された綱車嵌入部15aと、ディスク11を構成するディスク部15bと、モータを構成する円筒状のロータ部15cと、ロータ部15cの外周面に設けられた永久磁石15dとを備えていてもよい。回転部材15は、綱車嵌入部15aの内周側に配置された軸受16を介して軸部14に回転自在に軸支されている。また、綱車10は、綱車嵌入部15aの外周面に固定されており、回転部材15と一体として回転する。すなわち、綱車10は、軸部14に軸受16及び回転部材15を介して回転自在に軸支されている。」
「【0020】
巻上装置5は、ロータ部15cの外周側に、永久磁石15dと径方向に隙間をあけて、ステータ17を備えていてもよい。ステータ17は、本体13に固定されている。ステータ17は、周方向に間隔をあけて設けられた複数のコイルを備えている。」
「【0024】
また、本体13は、フレーム部19の中央に有底円筒状のハウジング部20を備えていてもよい。ハウジング部20は、円筒部と、円筒部の内周面から突出する円環状の底部とで構成されている。ステータ17は、ハウジング部20の円筒部の内周面に固定されている。ハウジング部20の円筒部の外周面は、モータから生じる熱を効果的に放熱するため複数の突条を備えていてもよい。ハウジング部20の下部は、脚部20aを介してベース部18と接続されている。脚部20aは、ベース部18から後述する筒状部21へ向かって延びて、ハウジング部20に接続されている。また、脚部20aは、ベース部18に近付くにつれて互いに離れるように配置されている。
【0025】
また、本体13は、ハウジング部20の底部から第1横方向D1に突出する筒状部21を備えていてもよい。筒状部21は、底部の内周縁から第1横方向D1の第1側D11に向かって突出している。筒状部21の先端には、軸部14が接続される。筒状部21は、軸部14と同軸上に配置されていてもよい。筒状部21は、本体13の軽量化のために中空に形成されている。筒状部21は、ハウジング部20の底部に向かって裾拡がりの形状となっていてもよい。これにより、筒状部21とハウジング部20の接続部での応力集中を抑制できる。
【0026】
軸部14は、図4に示すように、筒状部21から第1横方向D1の第1側D11に向かって延びている。軸部14の周囲には軸受16が配置されている。軸部14と本体13は、例えば、鋳造などによって一体成形されてもよい。なお、軸部14は、中心に貫通孔が形成されており、不図示のエンコーダが配置されてもよい。
【0027】
回転部材15は、軸受16を介して軸部14に回転自在に軸支されている。また、綱車10は、綱車嵌入部15aに固定されており、回転部材15と一体として回転する。すなわち、綱車10は、軸部14に軸受16及び回転部材15を介して回転自在に軸支されている。」
「【図3】
[図:0001431127000005.jpg]
」
「【図4】
[図:0001431127000006.jpg]
」
「【図5】
[図:0001431127000007.jpg]
」
上記記載から、先願明細書等には次の事項が記載されているといえる。
ア エレベータ巻上装置5は、ハウジング部20を備えている(段落【0024】、図3、4)。
イ エレベータ巻上装置5は、綱車嵌入部15aに綱車10が固定され、回転自在に軸支された回転部材15を備えている(段落【0027】、図4)。回転部材15は、ハウジング部20に対して回転自在であるといえる。
ウ エレベータ巻上装置5は、ハウジング部20に固定されたステータ17(段落【0024】、図4)と、回転部材15に設けられた永久磁石15d(段落【0018】、図4)を備えている。そして、ステータ17と永久磁石15dとでモータを構成しているといえる。
エ ハウジング部20は、円筒部と、底部とを備えており、円筒部は底部に接続されている(段落【0024】、図4)。そして、図4及び5から、底部は、平板状である点が看て取れる
また、軸部14に筒状部21が接続されており(段落【0025】、図4)、その筒状部21はハウジング部20の底部に接続されている(段落【0025】、図4)。そして、このように、軸部14と筒状部21とがハウジング部20に接続されることにより、ハウジング部20と一体的な構造とされることから、ハウジング部20が、軸部14と、筒状部21とを備えているということもできる。
オ 回転部材15は、2つの軸受を介して軸部14の軸心を中心として当該軸部14に回転自在に軸支されている(段落【0027】、図4)。
カ 「綱車10と一体的に回転するディスク11と、綱車10を制動するために、ディスク11の回転軸方向である第1横方向D1」(段落【0015】)との記載があり、綱車10の回転軸は軸部14であるから、軸部14の軸心方向が第1横方向D1である。
そして、図4から、軸部14が、第1横方向D1における第1側D11の端部と、前記第1横方向における第2側D12の端部とを有している点が看て取れる。
キ 図4から、筒状部21の第1横方向D1における第1側D11の端部が、軸部14の第1横方向D1における第2側D12の端部に接続されている点が看て取れる。
ク 底部は「円環状」である(段落【0024】)。
ケ 段落【0025】及び図4から、筒状部21の第1横方向D1における第2側D12の端部は、「底部の内周縁」に接続されているといえる。
コ 図4から、筒状部21が、当該筒状部21の径方向内側に向けて凸状に湾曲した形状をなす点が看て取れる。
サ 図4から、筒状部21の径は、軸部14から底部に行くにつれ大きくなっている点が看て取れる。
シ ステータ17は、円筒部の内周面に固定されている(段落【0024】、図4)。
ス 図4から、ステータ17及び永久磁石15dが、2つの軸受に対して、第1横方向D1に離れて配置されている点が看て取れる。
セ 図4から、筒状部21は、ステータ17及び永久磁石15dよりも半径方向内側に位置している、点が看て取れる。
以上を総合すると、先願明細書等には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
[先願発明]
「 ハウジング部20、
綱車嵌入部15aに綱車10が固定され、前記ハウジング部20に対して回転自在に軸支された回転部材15、及び
前記ハウジング部20に固定されたステータ17と、前記回転部材15に設けられた永久磁石15dとで構成されるモータ
を備え、
前記ハウジング部20は、軸部14と、前記軸部14に接続される筒状部21と、前記筒状部21に接続される平板状の底部と、前記底部に接続される円筒部をと備えており、
前記回転部材15は、2つの軸受を介して前記軸部14の軸心を中心として前記軸部14に回転自在に軸支されており、
前記軸部14の軸心方向が第1横方向D1であり、
前記軸部14は、第1横方向D1における第1側D11の端部と、第1横方向における第2側D12の端部とを有しており、
前記筒状部21の第1横方向D1における第1側D11の端部は、前記軸部14の第1横方向D1の第2側D12の前記端部に接続されており、
前記底部は円環状であり、
前記筒状部21の第1横方向の第2側D12の端部は、前記底部の内周縁に接続されており、
前記筒状部21は、当該筒状部21の径方向内側に向けて凸状に湾曲した形状をなし、
前記筒状部21の径は、前記軸部14から前記底部に行くにつれ大きくなっており、
前記ステータ17は、前記円筒部の内周面に固定されており、
前記ステータ17及び前記永久磁石15dは、前記2つの軸受に対して、第1横方向D1に離れて配置されており、
前記筒状部21は、前記ステータ17及び前記永久磁石15dよりも半径方向内側に位置している、エレベータ巻上装置5。
3 当審合議体の判断
(1)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア) 甲1発明の「ハウジング部20」は、本件発明1の「ハウジング」に相当する。
(イ) 甲1発明の「綱車10」は本件発明1の「可動シーブ」に相当する。甲1発明の「軸受嵌合部15aに綱車10が固定され」ること、及び「前記ハウジング部20に対して回転自在に軸支され」ることはそれぞれ、本件発明1の「駆動シーブを有」すること、及び「前記ハウジングに対して回転可能な」ことに相当し、甲1発明の「回転部材15」は本件発明1の「回転体」に相当する。
(ウ) 甲1発明の「前記ハウジング部20に固定され」ていることは、本件発明1の「前記ハウジングに装着されている」ことに相当し、甲1発明の「ステータ17」は、本件発明1の「モータ固定子」に相当する。甲1発明の「前記回転部材15に備えられ」ていることは本件発明1の「記回転体に装着されている」ことに相当し、甲1発明の「永久磁石15d」は本件発明1の「モータ回転子」に相当する。甲1発明のステータ17と永久磁石15d「とで構成される」ことは、本件発明1のモータ固定子とモータ回転子「とを有している」ことに相当し、甲1発明の「モータ」は本件発明1の「巻上機モータ」に相当する。
(エ) 甲1発明の「軸部14」は、本件発明1の「主軸部」に相当する。甲1発明の「前記軸部14に接続され」ることは、本件発明1の「前記主軸部に繋がっている」ことに相当し、甲1発明の「接続部21」は本件発明1の「接続部」に相当する。甲1発明の「前記接続部21に接続される」ことは、本件発明1の「前記接続部に繋がっている」ことに相当し、甲1発明の「底部20b」は本件発明1の「底板部」に相当する。甲1発明の「前記底部20bに接続される」ことは、本件発明1の「前記底板部に繋がっている」ことに相当し、甲1発明の「円筒部20a」は、その内周面にステータ17が固定されるものであるから、本件発明1の「筒状の固定子装着部」ないし「固定子装着部」に相当する。
甲1発明のハウジング部20が各部を「備えて」いることは、本件発明1のハウジングに各部が「形成されて」いることに相当する。
(オ) 甲1発明の「2つの軸受」は本件発明1の「軸受」に相当し、甲1発明の「前記回転部材15は、2つの軸受を介して前記軸部14の軸心を中心として前記軸部14に回転自在に軸支され」ることは、本件発明1の「前記回転体は、軸受を介して、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着され」ることに相当する。
(カ) 甲1発明の「前記接続部21は、筒状であ」ることは、本件発明1の「前記接続部は、筒状であ」ることに相当する。
(キ) 甲1発明において、「前記軸部14の軸心方向が第1横方向D1であ」るから、甲1発明の「軸部14」の「第1横方向D1における第1側D11の端部」及び「第1横方向における第2側D12の端部」はそれぞれ、本件発明1の「主軸部」の「前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端」及び「前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端」に相当する。
(ク) 甲1発明の「前記接続部21の第1横方向D1における第1側D11の端部」は、本件発明1の「前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端」に相当し、甲1発明の「前記軸部14の第1横方向D1の第2側D12の前記端部に接続され」ることは、本件発明1の「前記第2主軸端に直接繋がって」いることに相当する。
(ケ) 甲1発明において、「前記底部20bは円環状であ」る。円環状ということは、当然その中央部に開口を有する形状であり、それ故に、甲1発明の「前記底板20bの内底面20e」はその円環の中央部の開口に対応した「内周縁」を有している。そうすると、甲1発明の「前記底部20bは円環状であ」るという構成は、本件発明1の「前記底板部には、開口が設けられている」という構成に相当し、甲1発明の「前記底部20bの内底面20eの内周縁」は、本件発明1の「前記開口の縁部」に相当する。
そして、甲1発明の「前記接続部21の第1横方向の第2側D12の端部」は、本件発明1の「前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端」に相当し、甲1発明の「前記底板20bの内底面20eの内周縁に接続され」ることは、本件発明1の「前記開口の縁部に直接繋がって」いることに相当する。
(コ) 甲1発明の「前記接続部21の径は、前記軸部14から前記板状の底部20bに行くにつれ大きくなって」いることは、本件発明1の「前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなって」いることに相当する。
(サ) 甲1発明のステータ17が「固定され」ることは、本件発明1のモータ固定子が「装着され」ることに相当する。
(シ) 甲1発明の「前記接続部21は、前記ステータ17及び前記永久磁石15dよりも半径方向内側に位置している」ことは、本件発明1の「前記接続部は、前記モータ固定子及び前記モータ回転子の内側に位置している」ことに相当する。
(ス) 甲1発明の「エレベータ巻上装置5」は、本件発明1の「エレベーター巻上機」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点1で相違する。
[一致点]
「 ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、軸受を介して、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、
前記モータ固定子は、前記固定子装着部の内周面に装着されており、
前記モータ固定子及び前記モータ回転子は、前記軸受に対して、前記主軸部の軸方向に離れて配置されており、
前記接続部は、前記モータ固定子及び前記モータ回転子の内側に位置しているエレベーター巻上機。」
[相違点1]
本件発明1は、「前記接続部の外形は直円錐形状であ」るのに対し、甲1発明は、「前記接続部21は、当該接続部21の径方向内側に向けて凸状に湾曲した形状をな」す点。
イ 判断
上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
次に、上記相違点1について検討するに、甲1には、接続部21の外形を直円錐形状とすることに関する記載も示唆もない。そして、エレベーター巻上機において、ハウジングの主軸部と底板部とに繋がる接続部の外形を直円錐形状とすることが周知技術であるといえる証拠もない。
また、本件発明1は、接続部11bの外形が直円錐状であることにより、「ハウジング11に発生する応力をより効率的に分散し低減する」(本件特許明細書等段落【0041】)という格別な効果を奏するものである。
したがって、甲1発明から、相違点1に係る本件発明1の構成に想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のことから、理由1及び理由2により、訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
(2)理由3(拡大先願)について
ア 対比
本件発明1と先願発明とを対比する。
(ア) 先願発明の「ハウジング部20」は、本件発明1の「ハウジング」に相当する。
(イ) 先願発明の「綱車10」は本件発明1の「可動シーブ」に相当する。先願発明の「軸受嵌合部15aに綱車10が固定され」ること、及び「前記ハウジング部20に対して回転自在に軸支され」ることはそれぞれ、本件発明1の「駆動シーブを有」すること、及び「前記ハウジングに対して回転可能な」ことに相当し、先願発明の「回転部材15」は本件発明1の「回転体」に相当する。
(ウ) 先願発明の「前記ハウジング部20に固定され」ていることは、本件発明1の「前記ハウジングに装着されている」ことに相当し、先願発明の「ステータ17」は本件発明1の「モータ固定子」に相当する。先願発明の「前記回転部材15に備えられ」ていることは、本件発明1の「記回転体に装着されている」ことに相当し、先願発明の「永久磁石15d」は本件発明1の「モータ回転子」に相当する。先願発明のステータ17と永久磁石15d「とで構成される」ことは、本件発明1のモータ固定子とモータ回転子「とを有している」ことに相当し、先願発明の「モータ」は本件発明1の「巻上機モータ」に相当する。
先願発明のハウジング部20が各部を「備えて」いることは、本件発明1のハウジングに各部が「形成されて」いることに相当する。
(エ) 先願発明の「軸部14」は、本件発明1の「主軸部」に相当する。先願発明の「前記軸部14に接続され」ることは、本件発明1の「前記主軸部に繋がっている」ことに相当し、先願発明の「筒状部21」は本件発明1の「接続部」に相当する。先願発明の「前記筒状部21に接続される」ことは、本件発明1の「前記接続部に繋がっている」ことに相当し、先願発明の「底部」は本件発明1の「底板部」に相当する。先願発明の「前記底部に接続される」ことは、本件発明1の「前記底板部に繋がっている」ことに相当し、先願発明の「円筒部」は、その内周面にステータ17が固定されるものであるから、本件発明1の「筒状の固定子装着部」ないし「固定子装着部」に相当する。
(オ) 先願発明の「2つの軸受」は本件発明1の「軸受」に相当し、先願発明の「前記回転部材15は、2つの軸受を介して前記軸部14の軸心を中心として前記軸部14に回転自在に軸支され」ることは、本件発明1の「前記回転体は、軸受を介して、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着され」ることに相当する。
(カ) 先願発明の「筒状部21」の形状は当然に「筒状」である。先願発明の「筒状部21」の形形状が「筒状」であることは、本件発明1の「前記接続部は、筒状であ」ることに相当する。
(キ) 先願発明において、「前記軸部14の軸心方向が第1横方向D1であ」るから、先願発明の「軸部14」の「第1横方向D1における第1側D11の端部」及び「第1横方向における第2側D12の端部」はそれぞれ、本件発明1の「主軸部」の「前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端」及び「前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端」に相当する。
(ク) 先願発明の「前記筒状部21の第1横方向D1における第1側D11の端部」は、本件発明1の「前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端」に相当し、先願発明の「前記軸部14の第1横方向D1の第2側D12の前記端部に接続され」ることは、本件発明1の「前記第2主軸端に直接繋がって」いることに相当する。
(ケ) 先願発明において、「前記底部は円環状であ」る。円環状ということは、当然その中央部に開口を有する形状であり、それ故に、先願発明の「前記板状の底板」はその円環の中央部の開口に対応した「内周縁」を有している。そうすると、先願発明の「前記底部は円環状であ」るという構成は、本件発明1の「前記底板部には、開口が設けられている」という構成に相当し、先願発明の「前記底部の内周縁」は、本件発明1の「前記開口の縁部」に相当する。
先願発明の「前記筒状部21の第1横方向の第2側D12の端部」は、本件発明1の「前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端」に相当し、先願発明の「前記底板の内周縁に接続され」ることは、本件発明1の「前記開口の縁部に直接繋がって」いることに相当する。
(コ) 先願発明の「前記筒状部21の径は、前記軸部14から前記底部に行くにつれ大きくなって」いることは、本件発明1の「前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなって」いることに相当する。
(サ) 先願発明のステータ17が「固定され」ることは、本件発明1のモータ固定子が「装着され」ることに相当する。
(シ) 先願発明の「前記筒状部21は、前記ステータ17及び前記永久磁石15dよりも半径方向内側に位置している」ことは、本件発明1の「前記接続部は、前記モータ固定子及び前記モータ回転子の内側に位置している」ことに相当する。
(ス) 先願発明の「エレベータ巻上装置5」は、本件発明1の「エレベーター巻上機」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と先願発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点2で相違する。
[一致点]
「 ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、軸受を介して、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっており、
前記モータ固定子は、前記固定子装着部の内周面に装着されており、
前記モータ固定子及び前記モータ回転子は、前記軸受に対して、前記主軸部の軸方向に離れて配置されており、
前記接続部は、前記モータ固定子及び前記モータ回転子の内側に位置しているエレベーター巻上機。」
[相違点2]
本件発明1は、「前記接続部の外形は直円錐形状であ」るのに対し、先願発明は、「前記筒状部21は、当該筒状部21の径方向内側に向けて凸状に湾曲した形状をな」す点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
先願明細書等には、筒状部21の外形を直円錐形状とすることに関する記載も示唆もない。そして、エレベーター巻上機において、ハウジングの主軸部と底板部とに繋がる接続部の外形を直円錐形状とすることが周知技術であるといえる証拠もない。そうすると、上記相違点2が、周知技術の付加や転換に過ぎないということはできない。
さらに、本件発明1は、接続部11bの外形が直円錐状であることにより、「ハウジング11に発生する応力をより効率的に分散し低減する」(本件特許明細書等段落【0041】)という新たな効果を奏するものである。
したがって、上記相違点2は、先願発明において筒状部21を設ける際の具体化手段における微差とはいえないから、本件発明1と先願発明とが実質同一であるとはいえない。
よって、本件発明1は、先願発明と同一でない。
以上のことから、理由3により、訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 採用しなかった特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理の概要は、次のとおりである。
・申立理由1(新規性) 訂正前の請求項3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立理由2(拡大先願) 訂正前の請求項3に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願の出願後に特許公報が発行された以下の先願の先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が他の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時に本件特許の出願人が他の特許出願の出願人と同一でもないので、当該請求項に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(刊行物)甲1:特許第7256977号公報(再掲)
(先 願)特願2022-176380号(特許第7376855号公報;甲2)(再掲)
2 当審合議体の判断
(1)申立理由1(新規性)について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、本件発明3の発明特定事項と甲1発明の発明特定事項との間には、上記「第4」3(1)ア(ア)~(コ)、(ス)と同じ相当関係がいえ、本件発明3と甲1発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点3で相違する。
[一致点]
「 ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっている、
エレベーター巻上機。」
[相違点3]
本件発明3は、「前記軸心を含む前記ハウジングの垂直断面において、前記接続部の肉厚は、前記底板部へ向けて徐々に厚くなっている」るのに対し、甲1発明は、かかる構成を有さない点。
イ 判断
上記相違点3は、実質的な相違点であるから、本件発明3は、甲1発明ではない。
よって、申立理由1には理由がない。
ウ 申立人の主張
申立人は異議申立書において、「甲1の図6から、接続部21の肉厚は、底部20bに向かって徐々に厚くなっている構成が看取できる。従って、本件発明3と甲1発明とは、構成要件3Lにおいて一致する。」(異議申立書第22頁下から2行目~第23頁1行目)と主張する。
しかし、一般に、特許出願の願書に添付される図面は、発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、当該図面に表示された寸法について、必ずしも厳密な正確さが要求されるものではない。
そして、甲1には、「なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない」(段落【0009】)との記載があり、その他甲1における図6に関する記載をみても、「【図6】図4のVI領域拡大図」(段落【0008】)、「ロータ部15bは、軸受嵌合部15aの外周部から底部20bの内底面20eに向かって延びている。図6に示すように、ロータ部15bは、底部20bの内底面20eに近付くにつれて拡径するロータ内周面15eを有することが好ましい。」(段落【0029】)とあるのみであるから、甲1において図6が接続部21の肉厚の寸法を正確に表示しているということはできない。
したがって、図6を根拠として、甲1記載の発明が「接続部21の肉厚は、底部20bに向かって徐々に厚くなっている」との構成を有していると認定することはできない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)理由3(拡大先願)について
ア 対比
本件発明3と先願発明とを対比すると、本件発明3の発明特定事項と先願発明の発明特定事項との間には、上記「第4」3(2)ア(ア)~(コ)、(ス)と同じ相当関係がいえ、本件発明3と先願発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点4で相違する。
以上を総合すると、本件発明1と先願発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点2で相違する。
[一致点]
「 ハウジング、
駆動シーブを有しており、前記ハウジングに対して回転可能な回転体、及び
前記ハウジングに装着されているモータ固定子と、前記回転体に装着されているモータ回転子とを有している巻上機モータ
を備え、
前記ハウジングには、主軸部と、前記主軸部に繋がっている接続部と、前記接続部に繋がっている平板状の底板部と、前記底板部に繋がっている筒状の固定子装着部とが形成されており、
前記回転体は、前記主軸部の軸心を中心として回転可能に前記主軸部に装着されており、
前記接続部は、筒状であり、
前記主軸部は、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の一端である第1主軸端と、前記主軸部の軸方向における前記主軸部の他端である第2主軸端とを有しており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の一端は、前記第2主軸端に直接繋がっており、
前記底板部には、開口が設けられており、
前記主軸部の軸方向における前記接続部の他端は、前記開口の縁部に直接繋がっており、
前記接続部の径は、前記主軸部から前記底板部へ向けて連続して徐々に大きくなっている、
エレベーター巻上機。」
[相違点4]
本件発明3は、「前記軸心を含む前記ハウジングの垂直断面において、前記接続部の肉厚は、前記底板部へ向けて徐々に厚くなっている」るのに対し、先願発明は、かかる構成を有さない点。
イ 判断
上記相違点4について検討する。
先願明細書等には、筒状部21の肉厚をどのように設定するかについての記載も示唆もない。そして、エレベーター巻上機において、ハウジングの主軸部と底板部とに繋がる接続部の肉厚を底板部へ向けて徐々に厚くなるように設定することが周知技術であるといえる証拠もない。そうすると、上記相違点4が、周知技術の付加や転換に過ぎないものということはできない。
また、本件発明3は、垂直断面において、接続部の肉厚を底板部へ向けて徐々に厚くすることにより、「ハウジング11の強度を高めつつ、ハウジング11を軽量化することができる」(本件特許明細書等段落【0044】)という新たな効果を奏するものである。
したがって、上記相違点4は、先願発明において筒状部21を設ける際の具体化手段における微差とはいえないから、本件発明3と先願発明とが実質同一であるとはいえない。
よって、本件発明3発明は、先願発明と同一でない。
以上より、申立理由2には理由がない。
ウ 申立人の主張
申立人は異議申立書において、「甲2の図4から、筒状部21の肉厚は、ハウジング部20の底部に向かって徐々に厚くなっている構成が看取できる。従って、本件発明3と甲2発明とは、構成要件3Lにおいて一致する。」(異議申立書第26頁第16~18行目)と主張する。
しかし、一般に、特許出願の願書に添付される図面は、発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、当該図面に表示された寸法について、必ずしも厳密な正確さが要求されるものではない。
そして、先願明細書等には、「なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。」(段落【0009】)との記載があり、その他に甲1における図4に関する記載をみても、「【図4】図2のIV-IV線断面図」(段落【0008】)、「また、図4に示すように、巻上装置5は、例えば、機械室X2に固定される本体13と、本体13から第1横方向D1に突出する軸部14と、軸部14を中心に回転する回転部材15とを備えていてもよい。」(段落【0017】)、「軸部14は、図4に示すように、筒状部21から第1横方向D1の第1側D11に向かって延びている。」(段落【0026】)とあるのみであるから、先願明細書等において図4が筒状部21の肉厚の寸法を正確に表示しているということはできない。
したがって、図4を根拠として、先願明細書等に記載された発明が「筒状部21の肉厚は、ハウジング部20の底部に向かって徐々に厚くなっている」との構成を有していると認定することはできない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件特許の請求項1、3に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701027