特許異議申立
2023-700755
エレベータシステム及び呼び登録方法
- 審判番号
- 2023-700755
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-000105
- 登録番号
- 7268209
- 請求日
- 2023年07月21日
- 審決日
- 2024年06月28日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝エレベータ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人スズエ国際特許事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1652.537-YAA(B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7268209号発明「エレベータシステム及び呼び登録方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7268209号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正することを認める。
特許第7268209号の請求項1、3~8、10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7268209号の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和4年1月4日に出願され、令和5年4月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年5月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年7月21日に特許異議申立人角田朗(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、取消理由を令和5年12月27日付けで通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年3月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行った。その訂正の請求に対する特許異議申立人からの意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は次のとおりである(下線は、訂正個所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示することを特徴とするエレベータシステム。」
と記載されているのを、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とするエレベータシステム。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示することを特徴とする呼び登録方法。」
と記載されているのを、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする呼び登録方法。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0007】に、
「 一実施形態に係るエレベータシステムは、呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、エレベータの物件データを管理するサーバを備え、上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示することを特徴とする。」と記載されているのを、
「 一実施形態に係るエレベータシステムは、呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、エレベータの物件データを管理するサーバを備え、上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする。」
に訂正する。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであるから、訂正事項1は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。また、訂正前の請求項8~10について、請求項9及び10は請求項8の記載を直接的に引用しているものであるから、訂正事項2は、一群の請求項〔8~10〕に対して請求されたものである。さらに、明細書に係る訂正である訂正事項3は、一群の請求項〔1~7〕及び〔8~10〕に対してされたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明においては、「呼び登録に関わる機能を制限する」とし、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれていたのを、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と訂正することにより、呼び登録の機能を全て制限するものを排除することとしたものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項1に関する説明として、明細書の段落【0062】には、「保守契約物件である物件Aに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」,「手動呼び登録」のすべてが可能である。」と記載され、段落【0063】には、「一方、非保守契約物件である物件Bに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」は不可であり、「手動呼び登録」のみが可能である。」と記載され、さらに、段落【0072】には、「このように本実施形態によれば、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリ26の機能を制限することで、呼び登録を行うことができる。」と記載されているから、呼び登録に関する機能の全てではなく、一部を制限しつつも、保守契約の有無に関係なく呼び登録を可能とするという技術的事項は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項であるといえる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、訂正前の請求項1の技術的範囲に含まれていなかったものが、訂正後に含まれることとなるということはなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明においては、「呼び登録に関わる機能を制限する」とし、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれていたのを、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と訂正することにより、呼び登録の機能を全て制限するものを排除することとしたものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項2に関する説明として、明細書の段落【0062】には、「保守契約物件である物件Aに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」,「手動呼び登録」のすべてが可能である。」と記載され、段落【0063】には、「一方、非保守契約物件である物件Bに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」は不可であり、「手動呼び登録」のみが可能である。」と記載され、さらに、段落【0072】には、「このように本実施形態によれば、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリ26の機能を制限することで、呼び登録を行うことができる。」と記載されているから、呼び登録に関する機能の全てではなく、一部を制限しつつも、保守契約の有無に関係なく呼び登録を可能とするという技術的事項は願書に添付した明細書等に記載した事項であるといえる。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、訂正前の請求項2の技術的範囲に含まれていなかったものが、訂正後に含まれることとなるということはなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正にともなう、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正にともなう、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるところ、訂正事項1及び2は、上記(1)イ及び(2)イで述べたように、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることから、訂正事項3も願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正にともなう、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるところ、訂正事項3によって、訂正前の請求項1及び2の技術的範囲に含まれていなかったものが、訂正後に含まれることとなるということはなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件発明1]
「呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行うエレベータシステムにおいて、
エレベータの物件データを管理するサーバを備え、
上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、
上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とするエレベータシステム。」
[本件発明2]
「上記呼び登録に関わる機能として、上記アプリケーションソフトに予め設定済みの利用者の出発階と行先階を上記エレベータに登録する自動呼び登録機能と、上記アプリケーションソフトを起動して、利用者の出発階と行先階を手動操作により上記エレベータに登録する手動呼び登録機能を含み、
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、上記自動呼び登録機能を制限し、上記手動呼び登録機能で呼び登録させることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。」
[本件発明3]
「上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、保守契約物件よりも上記広告情報の表示範囲を広く、情報量を多くすることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。」
[本件発明4]
「上記非保守契約物件では、広告配信業者から一方的に提供される情報が上記広告情報として表示されることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。」
[本件発明5]
「上記保守契約物件では、上記保守契約物件の周辺情報が上記広告情報として表示されることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。」
[本件発明6]
「上記保守契約物件では、上記広告情報の表示/非表示が切り替えられることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。」
[本件発明7]
「上記携帯端末が上記サーバから保守契約物件に関する物件データを取得する場合にパスワードが要求されることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。」
[本件発明8]
「呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行うための呼び登録方法において、
エレベータの物件データをクラウド上のサーバで管理し、
上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、
上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする呼び登録方法。」
[本件発明9]
「上記呼び登録に関わる機能として、上記アプリケーションソフトに予め設定済みの出発階と行先階を上記エレベータに登録する自動呼び登録機能と、上記アプリケーションソフトを起動して出発階と行先階を手動操作により上記エレベータに登録する手動呼び登録機能を含み、
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、上記自動呼び登録機能を制限し、上記手動呼び登録機能で呼び登録させることを特徴とする請求項8記載の呼び登録方法。」
[本件発明10]
「上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、保守契約物件よりも上記広告情報の表示範囲を広く、情報量を多くすることを特徴とする請求項8記載の呼び登録方法」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、3~8、10に係る特許に対して、当審が通知した令和5年12月27日付け取消理由の概要は次のとおりである。
本件の特許請求の範囲の請求項1には、「保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限する」という発明特定事項を備えた発明が記載されている。かかる発明特定事項からすれば、請求項1に係る発明には、保守契約が無い(非保守契約物件である)場合に、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれる。しかし、本件の発明の詳細な説明には、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリの機能を制限することで呼び登録を行うことができるもの(非保守契約物件である場合、呼び登録アプリの機能を制限しつつも呼び登録は行うことができるもの)が記載されているのみであり、呼び登録に関わる機能を全て制限するものまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。したがって、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、という特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足しない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~7の記載についても上記と同様に、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、という特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足しない。本件の請求項8は、請求項1に係る発明を方法の発明として記載したものであるから、上記請求項1についてのサポート要件違反の理由が同様に該当する。したがって、請求項8及び請求項8の記載を引用する請求項10の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、という特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足しない。
2 当審の判断
発明の詳細な説明には、本件の課題は、エレベータの呼び登録機能はエレベータ製造メーカが管理する物件データが必要であるが、製造メーカとの保守契約がなされていない物件であっても利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行えるようにすること(【0005】参照)であり、当該課題を解決するための手段として、エレベータ制御装置13にはクラウドサーバ29が接続されており、クラウドサーバ29はエレベータの物件データを管理する管理用サーバとして用いられること(【0020】【0022】参照)、携帯端末25の制御部43は、物件データの管理サーバとして用いられるクラウドサーバ29から物件データを取得する機能、この物件データを用いて利用者の出発階-行先階を設定して、エレベータ11に呼び登録する機能などを備えること(【0029】【0031】参照)が記載されている。
一方、本件訂正請求の訂正事項1により、訂正前の請求項1に係る発明においては、「呼び登録に関わる機能を制限する」とされ、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれていたのを、訂正後の請求項1において、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と訂正することにより、訂正後の請求項1に係る発明において、呼び登録の機能を全て制限するものが排除され、請求項1には、「エレベータの物件データを管理するサーバを備え、」「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に」「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」ことが記載されることとなった。
特許請求の範囲の請求項1における記載と発明の詳細な説明の記載とを対比すると、請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足するものとなったといえる。
請求項8の記載についても、請求項1と同様の理由により、特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足するものとなったといえる。
また、請求項3~7は直接的又は間接的に請求項1を引用しており、請求項10は請求項8を引用しているから、これらの請求項の記載についても、請求項1と同様の理由により、特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足するものとなったといえる。
第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立人の主張について
サポート要件違反について特許異議申立人は、概略次のように主張する。
「本件特許の請求項1に、「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限する」と記載されている。ここで、「保守契約の有無に応じて呼び登録に関わる機能を制限する」場合には、・・・(α)保守契約がある場合に呼び登録に関わる機能を制限せず、保守契約がない場合に呼び登録に関わる機能を制限する場合と、(β)保守契約がある場合に呼び登録に関わる機能を制限し、保守契約がない場合に呼び登録に関わる機能を制限しない場合とが含まれ得る。・・・一方で、発明の詳細な説明には、・・・上記(β)の場合については一切説明がなされていない。したがって、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。・・・本件特許発明8・・・についても同様である。」(異議申立書第4頁第19行~第5頁第10行)
しかしながら、本件の課題及び課題解決手段は上記「第4」2で述べたとおりであり、そして、訂正事項1及び2により、請求項1及び8について「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と特定することにより、訂正後の請求項1及び8に係る発明においては、呼び登録の機能を全て制限するものが排除され、「エレベータの物件データを管理するサーバを備え、」「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に」「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」ことが記載されることとなった。
すなわち、仮に(β)の場合が含まれるとしても、請求項1及び8に係る発明は、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」という構成を備えることで、本件の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
そうすると、出願時の技術常識に照らせば、請求項1及び8に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、サポート要件違反について、次のようにも主張する。
「本件発明が解決する課題は、本件明細書の0006段落に記載されているように「保守契約されていない物件であっても、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うことができるようにする」ことである。一方、本件特許の請求項1には「保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限する」と記載されているが、「機能を制限する」という表現には、当該機能の全てを利用できなくすることが含まれ得る。・・・、本件特許発明1には、保守契約がない場合に携帯端末を利用した呼び登録を行うことができなくなるものが含まれ得る。そして、かかる場合は、上記課題を解決することができない。したがって、本件特許発明1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求するものである。また、・・・本件特許発明8・・・についても同様である。」(異議申立書第5頁第11行~第6頁第8行)。
しかしながら、訂正事項1及び2により、訂正後の請求項1及び8に係る発明において、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」とすることにより、請求項1及び8に係る発明において、呼び登録の機能を全て制限するものを排除しつつ、保守契約の有無に関係なく呼び登録が可能とすることにより、「保守契約されていない物件であっても、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うことができるようにする」という本件発明が解決しようとする課題が達成できるといえる。
したがって、請求項1及び8には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が特定されているといえる。
よって、特許異議申立人の上記主張も採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、3~8、10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3~8、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700755