特許異議申立
2025-700809
エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法
- 審判番号
- 2025-700809
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-087632
- 登録番号
- 7631414
- 請求日
- 2025年08月08日
- 審決日
- 2026年06月12日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝エレベータ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三好内外国特許事務所
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者代理人】原 裕子
- 【権利者代理人】森 太士
- 【異議申立人】松岡 直之
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 尾形 元
- 分類
- P1651.121-YAA(B66B) / P1651.537-YAA(B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7631414号発明「エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7631414号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1、2、5について訂正することを認める。
特許第7631414号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7631414号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年5月29日に出願され、令和7年2月7日に特許権の設定登録がされ、同年2月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人 松岡直之(以下「申立人」という。)により、請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、概略、次のとおりである。
令和7年 8月 8日 申立人による特許異議の申立て
同 年12月 3日付け 取消理由通知
令和8年 2月 9日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同 年 4月 3日 申立人による意見書の提出
第2 本件訂正による訂正の適否
1 本件訂正の内容について
令和8年2月9日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「 エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、」とあるのを、
「 エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体であり、
前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置であって、」に訂正する。(下線は訂正箇所。以下、同様。)
(2)訂正事項2
請求項2に「 請求項1に記載のエレベータ制御装置に通信可能に接続され、」とあるのを、
「 エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得するかご内情報取得部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報および前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置に通信可能に接続され、」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項5に「 エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置が、」とあるのを、
「 エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体であり、
前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置が実行する移動体の制御方法であって、」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1、2について、請求項2は、本件訂正により訂正される請求項1を直接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1、2に対応する訂正後の請求項1、2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、特許権者は、訂正後の請求項1、2について、請求項2に係る訂正が認められる場合には、当該請求項2に係る訂正を、その他の一群の請求項に係る訂正とは別の訂正単位とすることを求めている。
3 訂正の適否に関する当審合議体の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1記載の「移動体と通信可能に接続され」たエレベータ制御装置に関し、当該エレベータ制御装置が接続される「移動体」に対し、「前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように移動機構を制御する動作制御部と、を備える」という発明特定事項を直列的に付加し、エレベータ制御装置が通信接続される「移動体」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
次に、訂正前の請求項2に「前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体」という記載があるところ、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
そして、訂正事項1は、上述のとおり「移動体」を限定するにとどまり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2について、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項の記載に改めるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項の記載に改めるものに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5記載のエレベータ制御装置が行うエレベータを利用する移動体の制御方法に関し、当該エレベータ制御装置が接続される「移動体」に対し、「前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように移動機構を制御する動作制御部と、を備える」という発明特定事項を直列的に付加し、エレベータ制御装置が通信接続される「移動体」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
次に、訂正前の請求項2に「前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体」という記載があるところ、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
そして、訂正事項3は、上述のとおり「移動体」を限定するにとどまり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(4)別の訂正単位とすることの求めについて
以上のとおり、訂正後の請求項1、2についての訂正は、訂正の要件に適合するため、訂正後の請求項1に係る訂正と請求項2に係る訂正とは、それぞれ別の訂正単位とすることを認める。
4 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項1、2、5について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」等といい、総称して「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体であり、
前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置であって、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得するかご内情報取得部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報および前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置。
【請求項2】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得するかご内情報取得部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報および前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
移動機構と、
前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体。
【請求項3】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
移動機構と、
前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、
所定範囲内にあるオブジェクトを検知する近接センサと、
音声を出力するスピーカ部と、を備え、
前記動作制御部は、前記近接センサにより前記移動経路上にオブジェクトがあることが検知されると、導線確保のための報知情報を前記スピーカ部から出力させるか、前記移動経路決定部により決定される迂回経路を新たな移動経路とするか、または、前記移動経路決定部により決定される新たな乗り込み候補位置までの移動経路を新たな移動経路とする、移動体。
【請求項4】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
移動機構と、
前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、
所定範囲内にあるオブジェクトを検知する近接センサと、
自位置情報を取得する位置センサと、を備え、
前記動作制御部は、前記近接センサにより前記乗り込み候補位置にオブジェクトがあることが検知されたときに、前記位置センサにより取得された自位置情報が前記乗り込み候補位置から所定範囲内にある場合には、前記乗り込み候補位置への移動が完了したと判定する、移動体。
【請求項5】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体であり、
前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置が実行する移動体の制御方法であって、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶し、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得し、
記憶した適正度マップ情報、および前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定し、
決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する、エレベータを利用する移動体の制御方法。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載された理由の概要
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1~7号証に記載された発明又は技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(証拠方法)
甲第1号証:国際公開第2022/225134号
甲第2号証:Danilo Gallo,Shreepriya Gonzalez-Jimenez,Maria Antonietta Grasso,Cecile Boulard,Tommaso Colombino,“Exploring Machine-like Behaviors for Socially Acceptable Robot Navigation in Elevators”,HRI 2022,March 7-10,2022,Sapporo,Hokkaido,Japan
甲第3号証:山岡史享、神田崇行、石黒浩、萩田紀博、「情報提示ロボットのための立ち位置モデル」、日本ロボット学会誌Vol27、No.2、pp230~238、2009年3月
甲第4号証:再公表特許第2021/106113号
甲第5号証:特開2021-175407号公報
甲第6号証:国際公開第2022/249218号
甲第7号証:特開平8-76849号公報
※ 以下、甲第1号証~甲第7号証をそれぞれ、「甲1」~「甲7」という。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1~5は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性)
本件発明1~5は、明確でないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和7年12月3日付けで当審合議体が通知した取消理由の概要は次のとおりである。
・取消理由(進歩性)
本件発明1、5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 甲各号証等の記載について
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある(なお、( )内の日本語は申立人が提出した甲第1号証訳文であり、( )内の段落番号は甲第1号証訳文の段落番号。下線は当審合議体が付したものである。)
「
[図:0001439214000001.jpg]
」
(【技術分野】
【0001】
本発明は、移動手段を用いるロボットを遠隔で制御する方法及びシステムに関する。)
「
[図:0001439214000002.jpg]
」
(【0007】
一方、このように移動手段にロボットを搭乗させる場合、移動手段の収容空間をいかに効率的に運用するかについて、ロボット及び空間の面から様々な検討が必要である。)
「
[図:0001439214000003.jpg]
」
(【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ロボット遠隔制御方法及びシステムを提供する。より具体的には、本発明は、移動手段に搭乗するロボットをより効率的に制御する方法及びシステムを提供する。
【0010】
また、本発明は、ロボットのエネルギー及び時間の面から、移動手段内におけるロボットの待機及び移動を効率的に制御する方法及びシステムを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、移動手段の収容空間をより効率的に運用できるロボット遠隔制御方法及びシステムを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、人とロボットが移動手段内において安全に共存できるロボット遠隔制御方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるロボット遠隔制御方法は、移動手段への搭乗イベントが発生したターゲットロボットを特定するステップと、前記ターゲットロボットが位置する特定区域に前記移動手段が停車したことに応答して、前記ターゲットロボットが前記移動手段に搭乗するように、前記ターゲットロボットの走行を制御するステップと、前記移動手段に備えられた収容空間の占有状態に基づいて、前記収容空間における前記ターゲットロボットのターゲット占有位置を決定するステップと、前記ターゲット占有位置に前記ターゲットロボットが移動するように、前記ターゲット占有位置に関する制御命令を前記ターゲットロボットに送信するステップとを含むものであってもよい。)
「
[図:0001439214000004.jpg]
」
(【0028】
図1に示すように、技術が発展するにつれて、ロボットの活用度が次第に高くなってきている。従来、ロボットは特殊な産業分野(例えば、産業自動化関連分野)において活用されていたが、次第に、人間や設備のために有用な作業を行うことのできるサービスロボットに変貌してきている。
【0029】
このように様々なサービスを提供するロボットは、与えられた任務を遂行するために、図1に示すような空間10を走行するように構成されてもよい。ロボットが走行する空間の種類はいかなるものでもよく、必要に応じて、室内空間及び室外空間の少なくとも1つを走行するように構成されてもよい。例えば、室内空間としては、デパート、空港、ホテル、学校、ビル、地下鉄駅、鉄道駅、書店などの様々な空間が挙げられる。ロボットは、このように、様々な空間に配置されて人間に有用なサービスを提供するように構成されてもよい。
【0030】
一方、このような空間を走行するロボットは、必要に応じて、空間に備えられた移動手段への乗降車により、階(floor)間を移動しなければならないこともあり、遠隔地に移動しなければならないこともある。
【0031】
このような移動手段は、エレベータ(elevator)、エスカレータ、電車、自動車、カートなど、非常に多様であり得る。例えば、ロボットは、エレベータへの搭乗により、現在位置している特定の階から他の階に移動することができる。)
「
[図:0001439214000005.jpg]
」
(【0040】
以下、本発明によるロボット遠隔システムについてより具体的に説明する。図2に示すように、本発明によるロボット遠隔制御システム300は、通信部110、保存部120、ディスプレイ部130、入力部140及び制御部150の少なくとも1つを含んでもよい。
【0041】
通信部110は、空間10に配置された様々なデバイスと有線又は無線で通信を行うように構成されてもよい。通信部110は、同図に示すように、ロボットRと通信を行うことができる。通信部110は、ロボットRとの通信により、ロボットRに備えられたセンサ(例えば、カメラ、ライダーセンサなど)から様々な検知情報(例えば、撮影された映像)を受信するように構成されてもよい。)
「
[図:0001439214000006.jpg]
」
(【0048】
次に、保存部120には、空間10の地図(又は地図情報)(map)が保存されるようにしてもよい。ここで、地図は、2次元地図及び3次元地図の少なくとも1つで構成されてもよい。空間10の地図とは、ロボットRの現在位置の把握や、ロボットの走行経路の設定に活用することのできる地図を意味することができる。)
「
[図:0001439214000007.jpg]
」
(【0072】
一方、上記では、本発明において、移動手段制御システム400a、400bとロボット遠隔制御システム300を別個の構成として説明した。しかし、本発明はそれに限定されるものではなく、移動手段制御システム400a、400bとロボット遠隔制御システム300は、1つの統合されたシステムで構成されてもよい。
【0073】
一方、本発明において、制御部150は、空間10内でロボットRの移動経路又は走行経路を制御することができる。すなわち、制御部150は、ロボットRの走行に関する制御命令を生成し、それをロボットRに送信することができる。
【0074】
ロボットRは、制御部150の制御下で、空間10を移動するように構成されてもよい。また、ロボットRは、制御部150の制御下で、移動手段に乗降車し、移動手段内において待機又は移動するように構成されてもよい。)
「
[図:0001439214000008.jpg]
」
(【0075】
そのために、制御部150は、空間10及び移動手段400におけるロボットRの状態を継続的にモニタする必要がある。ロボットRのモニタのための方法は非常に多様であるが、ロボットRのモニタのためには、モニタの対象となるロボットRの識別が先行されなければならない。制御部150は、制御対象のロボットRを正確に識別し、制御対象のロボットRに正確な制御命令を送信することにより、空間10を安全かつ効率的に運用することができる。)
「
[図:0001439214000009.jpg]
」
(【0084】
一方、図4の(a)及び(b)に示すように、少なくとも1つのロボット(R1~R6など)は、必要に応じて移動手段500に乗車(又は搭乗)、待機、降車することができる。
【0085】
ここで、移動手段500は、ロボット又は人を収容するように構成される収容空間510を備えてもよい。このような収容空間510は、「移動手段500の内部(又は内部空間)」などともいえる。)
「
[図:0001439214000010.jpg]
」
(【0089】
その場合、収容空間510は、グリッド(grid)状に区分された複数の領域501~516で構成されてもよい。制御部150は、複数の領域の少なくとも一部にロボットが位置するようにロボットを制御することができる。また、制御部150は、複数の領域間を移動するようにロボットの移動経路を制御することができる。)
「
[図:0001439214000011.jpg]
」
(【0109】
一方、このように、様々な経路で搭乗イベントが発生すると、制御部150は、搭乗イベントが発生したターゲットロボットを特定することができる。
【0110】
ターゲットロボットとは、空間を走行する様々なロボットのうち、移動手段への搭乗のために制御の対象となるロボットを意味することができる。
【0111】
このように、ターゲットロボットが特定されると、本発明においては、ターゲットロボットが移動手段に搭乗するように、ターゲットロボットの走行を制御するステップを行うことができる(S520)。
【0112】
制御部150は、ターゲットロボットを移動手段に搭乗させる制御命令をターゲットロボットに送信することができる。ターゲットロボットは、制御命令に基づいて、移動手段に搭乗することができる。
【0113】
一方、本発明においては、移動手段に備えられた収容空間の占有状態に基づいて、収容空間におけるターゲットロボットのターゲット占有位置を決定するステップを行うことができる(S530)。)
「
[図:0001439214000012.jpg]
」
(【0113】
一方、本発明においては、移動手段に備えられた収容空間の占有状態に基づいて、収容空間におけるターゲットロボットのターゲット占有位置を決定するステップを行うことができる(S530)。
【0114】
ここで、ターゲット占有位置は、図6の(a)、(b)、(c)及び(d)に示すように、移動手段の収容空間をターゲットロボットR1、R2が占める領域に相当する位置であってもよい。
【0115】
また、ターゲット占有位置は、移動手段500に搭乗したターゲットロボットが移動手段500で移動する間、移動手段500において待機する待機位置であると理解することができる。
【0116】
本発明において、ターゲット占有位置という用語は、「待機位置」、「占有位置」などと同様の意味を有するものと混用することができる。)
「
[図:0001439214000013.jpg]
」
(【0119】
制御部150は、i)収容空間の占有状態、ii)移動手段に先に搭乗している他のロボット又は人の目的地情報、iii)ターゲットロボットに割り当てられた任務を完了しなければならない時間、iv)ターゲットロボットのエネルギー状態(例えば、バッテリ充電状態)、v)収容空間に関して予め決定されている空間運用基準などの様々な基準の少なくとも1つに基づいて、ターゲットロボットのターゲット占有位置を決定することができる。
【0120】
一例として、制御部150は、移動手段500の収容空間の占有状態、及び収容空間に関して予め決定されている空間運用基準に基づいて、ターゲットロボットの占有位置を決定することができる。
【0121】
収容空間には、ロボットが占有することのできる占有可能空間が予め設定されて存在してもよい。制御部150は、占有可能空間にターゲットロボットが位置するように、ターゲットロボットの占有位置を設定することができる。
【0122】
このような占有可能空間は非常に多様に設定することができるが、例えば、図6の(a)に示すように、移動手段500の出入領域(又は出入口)に隣接する領域610を占有可能空間として特定することができる。その場合、制御部150は、占有可能空間610にターゲットロボットが配置されるように、占有可能空間610の少なくとも一領域をターゲット占有位置として設定することができる。
【0123】
保存部120には、移動手段500の収容空間の地図(マップ)が含まれ、当該地図には、占有可能空間に関する情報が含まれてもよい。
【0124】
制御部150は、このような地図を参照して移動手段の占有可能空間を抽出し、抽出した占有可能空間610の少なくとも一領域をターゲット占有位置として設定することができる。)
「
[図:0001439214000014.jpg]
」
(【0129】
一方、制御部150は、移動手段500の収容空間の少なくとも一部がロボットの占有可能空間として設定されている場合でも、占有可能空間のどの領域にターゲットロボットを配置するかを判断及び決定することができる。
【0130】
これは、占有可能空間に既に他のロボット又は人が位置していることがあるからである。そのために、制御部150は、移動手段又はロボットに備えられた少なくとも1つのセンサにより検知される検知情報を用いて、前記収容空間を占有するオブジェクトが存在するか否かを確認することができる。ここで、オブジェクトは、人又はロボットであってもよい。また、制御部150は、前記収容空間を占有するオブジェクトが存在するか否かに基づいて、収容空間の占有状態を特定することができる。
【0131】
本発明における「占有状態」とは、i)収容空間がロボット又は人(又は動物)によりどれほど占められているか、ii)収容空間のどの領域をロボット又は人が占めているか、iii)収容空間のどの領域が空いているかなどの状態を意味することができる。このような占有状態は、ロボット又は移動手段内に備えられたセンサ(例えば、カメラなど)により検知される情報により定義することができる。)
「
[図:0001439214000015.jpg]
」
(【0136】
一例として、制御部150は、移動手段の占有状態に基づいて、ターゲットロボットが占有することのできる占有可能領域(又は空いた領域)の少なくとも一部をターゲット占有位置として設定することができる。ここで、図7の(a)に示すように、制御部150は、出入領域から最も近い特定領域701をターゲット占有位置として設定することができる。また、制御部150は、図7の(b)に示すように、ターゲットロボットR3がターゲット占有位置701に位置するようにターゲットロボットR3を制御することができる。すなわち、制御部150は、ターゲットロボットが占有することのできる領域のうち、出入領域(又は出入口)から最も近くに位置する領域をターゲット占有位置として設定することができる。こうすることにより、ターゲットロボットは、移動手段から乗降車する時間を最小限に抑えることができる。これは、ターゲットロボットの時間効率を考慮してターゲット占有位置を決定するものであって、こうすることにより、ターゲットロボットは、移動手段を用いるのに要する時間を節約することができる。)
「
[図:0001439214000016.jpg]
」
(【0169】
このように、本発明においては、移動手段に搭乗したオブジェクト及びロボットの周囲の様々な状況を考慮して、ターゲットロボットの占有位置を決定することができる。また、本発明においては、ターゲット占有位置が決定されると、ターゲット占有位置に関する制御命令をターゲットロボットに送信するステップを行うことができる(S540)。
【0170】
ターゲットロボットは、ターゲット占有位置に関する制御命令を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように移動手段500内における移動を行うことができる。)
「図2
[図:0001439214000017.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
上記(1)から次のことがいえる(甲1に関しては、( )内の段落番号は、甲第1号証訳文の段落番号である。)。
ア 移動手段制御システム400とロボット遠隔制御システム300は1つの統合されたシステム(【0072】:この統合されたシステムを以下「統合システム」という。)として構成される。
ロボットは、人間や設備のために有用な作業を行うことのできるサービスロボットであって、様々な空間を走行可能なものである(【0028】、【0029】、【0030】)。
イ ロボットは、エレベータである移動手段500により移動する(【0030】、【0031】、【0084】)。ロボット遠隔制御システム300は、ロボットと通信を行う(【0040】、【0041】)。
ウ ロボット遠隔制御システム300は制御部150を有し(【0040】)、この制御部150は、空間10内でロボットの移動経路又は走行経路を制御し(【0073】)、移動手段500の収容空間の複数の領域間を移動するようにロボットの移動経路を制御し(【0089】)、空間10及び移動手段におけるロボットの状態を継続的にモニタし、制御対象のロボットを正確に識別し、制御対象のロボットに正確な制御命令を送信し、空間10を安全かつ効率的に運用する(【0075】)。
ロボットは、ロボット遠隔制御システム300の制御部150の制御下で、空間10を移動し、移動手段500に乗降車し、移動手段500内において待機又は移動するように構成される(【0074】)。
エ ロボット遠隔制御システム300は保存部120を有する(【0040】)。移動手段500の収容空間には、ロボットが占有することのできる占有可能空間が予め設定されており、当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図(マップ)が保存部120に保存されている(【0121】、【0123】)。
オ 「制御部150は、移動手段又はロボットに備えられた少なくとも1つのセンサにより検知される検知情報を用いて、前記収容空間を占有するオブジェクトが存在するか否かを確認することができる」ところ(【0130】)、ロボット遠隔制御システム300の制御部150は、移動手段500又はロボットに備えられたセンサの検知情報を取得する機能を担う部分(以下「検知情報取得部」という。)を有するといえる。
この検知情報は、移動手段の収容空間のどの領域をロボット又は人が占めているか、を意味する占有状態を定義することができる情報である(【0131】)。
カ 「制御部150は」「ターゲットロボットのターゲット占有位置を決定することができる」(【0119】)ものであるところ、ロボット遠隔制御システム300の制御部150は、ターゲットロボットのターゲット占有位置を決定する機能を担う部分(以下「ターゲット占有位置決定部」という。)を有するといえる。制御部150によるターゲット占有位置の決定に関し、「制御部150は、移動手段の占有状態に基づいて、ターゲットロボットが占有することのできる占有可能領域(又は空いた領域)の少なくとも一部をターゲット占有位置として設定することができる。」(【0136】)との記載があり、制御部150は、上記ウの地図を参照して移動手段の占有可能空間を抽出することができる(【0124】)ところ、ターゲット占有位置決定部は、移動手段500の占有状態に基づいて、地図を参照して抽出した占有可能空間の少なくとも一部をターゲット占有位置として設定するものであるといえる。
「ターゲット占有位置」は、移動手段500に搭乗したターゲットロボットが移動手段500で移動する間、移動手段500において待機する待機位置である(【0115】)。
キ 搭乗イベントが発生すると、制御部150は、搭乗イベントが発生したターゲットロボットを特定し(【0110】、S510)、制御部150はターゲットロボットが移動手段に搭乗するように、ターゲットロボットの走行を制御するステップを行って、ターゲットロボットを移動手段500に搭乗させる制御命令をターゲットロボットに送信し(【0111】、【0112】、S520)、制御部150は、移動手段500の収容空間におけるターゲットロボットのターゲット占有位置を決定するステップを行い、ターゲットロボットの占有位置を決定し(【0113】、S530、【0169】)、制御部150は、ターゲット占有位置が決定されると、ターゲット占有位置に関する制御命令をターゲットロボットに送信するステップを行い(【0169】、S540)、ターゲットロボットは、ターゲット占有位置に関する制御命令を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように移動手段500内における移動を行う(【0170】)。
なお、【0169】には、ターゲット占有位置に関する制御命令をターゲットロボットに送信する主体についての明記はないが、他の制御命令の送信が制御部150で行われることや、上記ウを踏まえれば、ターゲット占有位置に関する制御命令をターゲットロボットに送信する主体が制御部150であること甲1に記載されているに等しいといえる。
上記ア~キから、甲1には「移動手段制御システムとロボット遠隔制御システム300とが一つの統合されたシステムとされた統合システム」に係る次の発明(以下「甲1発明1」という。)、「統合システムに接続されたロボット」に係る発明(以下「甲1発明2」という。)、「統合システムにより実行される移動体500に搭乗するロボットの制御方法」に係る発明(以下「甲1発明3」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「 移動手段制御システムとロボット遠隔制御システム300とが一つに統合された統合システムであって、
ロボットは、人間や設備のために有用な作業を行うことのできるサービスロボットであって、様々な空間10を走行可能であり、
前記ロボット遠隔制御システム300が、エレベータである移動手段500により移動する走行可能なロボットと通信を行い、
前記ロボット遠隔制御システム300は制御部150を有し、当該制御部150は、空間10内でロボットの移動経路又は走行経路を制御し、移動手段500の収容空間の複数の領域間を移動するようにロボットの移動経路を制御し、空間10及び移動手段500におけるロボットの状態を継続的にモニタし、制御対象のロボットを正確に識別し、制御対象のロボットに正確な制御命令を送信することにより、空間10を安全かつ効率的に運用し、
ロボットは、前記制御部150の制御下で、空間10を移動し、前記移動手段500に乗降車し、移動手段500内において待機又は移動するように構成され、
前記ロボット遠隔制御装置300が前記部120を有し、前記移動手段500の収容空間にはロボットが占有することのできる占有可能空間が予め設定され、当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図が保存部120に保存されており、
前記制御部150は、前記移動手段500又はロボットに備えられたセンサの検知情報を取得する検知情報取得部を有し、当該検知情報は、前記移動手段500の収容空間のどの領域をロボット又は人が占めているかを意味する占有状態を定義することができる情報であり、
前記制御部150は、前記移動手段500の占有状態に基づいて、前記地図を参照して抽出した前記占有可能空間の少なくとも一部をターゲット占有位置として設定するターゲット占有位置決定部を有し、当該ターケット占有位置は、前記移動手段500に搭乗した前記ターゲットロボットが前記移動手段500で移動する間、前記移動手段500において待機する待機位置であり、
搭乗イベントが発生すると、前記制御部150は、搭乗イベントが発生したターゲットロボットを特定し、前記ターゲットロボットが移動手段500に搭乗するように、前記ターゲットロボットの走行を制御するステップを行って、前記ターゲットロボットを前記移動手段500に搭乗させる制御命令をターゲットロボットに送信し、
前記制御部150は、前記ターゲットロボットのターゲット占有位置を決定するステップを行って、前記ターゲットロボットの占有位置を決定し、
前記制御部150は、ターゲット占有位置が決定されると、ターゲット占有位置に関する制御命令を前記ターゲットロボットに送信するステップを行って、前記ターゲットロボットは、ターゲット占有位置に関する制御命令を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように前記移動手段500内における移動を行う
前記統合されたシステム。」
[甲1発明2]
「 甲1発明1の統合システムに接続されたロボット。」
[甲1発明3]
「 移動手段制御システムとロボット遠隔制御システム300とが一つに統合された統合システムであって、
ロボットは、人間や設備のために有用な作業を行うことのできるサービスロボットであって、様々な空間10を走行可能であり、
前記ロボット遠隔制御システム300が、エレベータである移動手段500により移動する走行可能なロボットと通信を行う、統合システムが実行する移動手段500に搭乗するロボットの制御方法であって、
前記ロボット遠隔制御システム300の制御部150は、空間10内でロボットの移動経路又は走行経路を制御し、移動手段550の収容空間の複数の領域間を移動するようにロボットの移動経路を制御し、空間10及び移動手段400におけるロボットの状態を継続的にモニタし、制御対象のロボットを正確に識別し、制御対象のロボットに正確な制御命令を送信し、空間10を安全かつ効率的に運用し、
ロボットは、前記制御部150の制御下で、空間10を移動し、移動手段500に乗降車し、移動手段500内において待機又は移動するように構成され、
前記ロボット遠隔制御装置300の前記記憶部120は、前記移動手段500の収容空間にはロボットが占有することのできる占有可能空間が予め設定され、当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図が保存部120に保存されており、
前記制御部150は、前記移動手段500又はロボットに備えられたセンサの検知情報を取得し、当該検知情報は、前記移動手段500の収容空間のどの領域をロボット又は人が占めているかを意味する占有状態を定義することができる情報であり、
前記制御部150は、前記移動手段500の占有状態に基づいて、前記地図を参照して抽出した前記占有可能空間の少なくとも一部をターゲット占有位置として設定し、当該ターケット占有位置は、前記移動手段500に搭乗した前記ターゲットロボットが前記移動手段500で移動する間、前記移動手段500において待機する待機位置であり、
搭乗イベントが発生すると、前記制御部150は、搭乗イベントが発生したターゲットロボットを特定し、前記ターゲットロボットが移動手段500に搭乗するように、前記ターゲットロボットの走行を制御するステップを行って、前記ターゲットロボットを前記移動手段500に搭乗させる制御命令をターゲットロボットに送信し、
前記制御部150は、前記ターゲットロボットのターゲット占有位置を決定するステップを行って、前記ターゲットロボットの占有位置を決定し、
前記制御部150は、ターゲット占有位置が設定されると、ターゲット占有位置に関する制御命令を前記ターゲットロボットに送信するステップを行って、前記ターゲットロボットは、ターゲット占有位置に関する制御命令を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように前記移動手段500内における移動を行う、
統合システムが実行する移動手段500に搭乗するロボットの制御方法。」
2 甲2について
甲2には、次の記載がある(( )内の日本語は申立人が提出した訳文。下線は当審合議体が付したものである。)
「
[図:0001439214000018.jpg]
」
(第136頁右欄下から9~18行)
(A.機械のような行動への影響
ボディストーミングとアンケート調査の結果は、ロボットと人間にとって社会的に許容されるものに対する参加者の期待を明確に区別しています。しかしながら、どちらのアプローチにも長所と短所があると考えられてきました。そのため、機械のようなロボットの振る舞いは実行可能なアプローチであると考えていますが、統合を成功させるにはその限界を慎重に検討し、対処する必要があります。本研究は、共有エレベータなどの環境における機械のようなロボットの振る舞いを設計するための示唆を概説するのに役立ち、以下にその仕様を詳述します。)
「
[図:0001439214000019.jpg]
」
(第137左欄上から6~11行)
(配置に関しては、予想どおり、ロボットはドアやポタンヘのアクセス、つまり、頻繁にやり取りや移動が行われる場所をできるだけ妨げないようにする必要があります。同時に、たとえ狭い制約空間であっても、人との距離は可能な限り尊重し、最大化する必要があります。)
以上から、甲2には次の技術的事項が記載されている。
[甲2記載の技術的事項]
「 共有エレベータにおけるロボットの振る舞いとして、ロボットは、ドアやボタンヘのアクセス、つまり、頻繁にやり取りや移動が行われる場所をできるだけ妨げないように配置されること。」
3 甲3について
甲3には、次の記載がある。
「近年の技術革新に伴い,将来ロボットが博物館,店舗内などの日常生活において活躍することが現実的に期待されるようになってきた[1][2].このような身体を持つロボットの活躍が期待される理由として,人のような身体性コミュニケーションを行うことができるという点が挙げられる.」(108頁左欄の1~5行)
「Kendonは,人々が物を介した相互作用を行う際,O-spaceと呼ばれる空間が形成されると述べている.0-spaceとは,人の下半身から前に投影する空間が2以上の参与者によって重なり合う空間であり,参与者たちが興味を持つ対象について話したり,見たりすることができる空間である.」(108頁左欄の13~18行)
「0-spaceを形成するためには,説明者は説明する物や聞き手の位置に関する様々な制約に基づいて立ち位置を決定していると考えられる.例えば,説明者は聞き手および物との距離を考慮して立ち位置を決定していると考えられる.同時に,説明者は,聞き手が物と説明者自身を見ることができているか,説明者自身が聞き手と物を見ることができているかどうかといった,聞き手および説明者自身の視野を考慮していることが考えられる.このような考えから,我々は説明者が物の説明を行うための立ち位置を決定するためには,以下の四つの制約を満たす必要があるのではないかと考えた.」(109頁左欄の「2.1 0-spaceを形成するための制約」の5~14行目)
「我々は提案する立ち位置モデルの有効性を検証するために,実際に人型ロボットヘ立ち位置モデルを実装した.」(112頁左欄の「3.立ち位置調整モデルの実装」の1~2行目)
「本稿では,Fig.8(a)のように,聞き手と説明物を囲むエリアを最低な立ち位置を探索する範囲とした.この設定した探索範囲内は,lO[cm]×lO[cm]のグリッドに分割され,それぞれのグリッドの価値が提案モデルに基づき算出される.この設定された範囲内で最も価値の高いグリッドが,最適な立ち位置となる.」(112頁右欄の「3.2.3 立ち位置制御部(Position controller)」の12~17行目)
「これらの結果から,予測「O-space条件のロボットは,他の条件のロボットよりも“やすさ”,“聞きやすさ”,“好感”に関してより高い評価を得る」は支持された.」(115頁左欄の6~8行目)
「観察実験の結果から,我々は式(9)の立ち位置モデルを立てた.このモデルに従うと,ロボットは聞き手との距離,物との距離,聞き手の視野,説明者の視野という四つの制約を考慮しなければならない.」(115頁左欄の「説明者の立ち位置モデル」の1~4行目)
4 甲4について
甲4には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの点検システム、エレベーターの点検装置、および自律移動体に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、敷居の状態を診断するときの自律移動体の移動方法を開示しない。ここで、エレベーターのドアの敷居は、かごの出入口の一端から他端にわたる。このため、敷居の全体を点検するために自律移動体がかごの出入口を横切る場合に、閑散時にエレベーターを利用する利用者の乗降が妨げられる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされた。本発明の目的は、利用者の乗降をより妨げにくいエレベーターの点検システム、エレベーターの点検装置、および自律移動体を提供することである。」
「【0028】
図4は、自律移動体16の機能を示すブロック図である。
自律移動体16は、通信部20と、記憶部21と、制御部22と、を備える。」
「【0040】
制御部22は、記憶部21が記憶している点検結果に基づいて、例えば次のように自律移動体16に移動させる移動経路を算出する。
【0041】
制御部22は、記憶部21が記憶している点検結果を読み出す。制御部22は、点検結果が記憶されていない敷居の部分を、未点検の部分として抽出する。
【0042】
未点検の部分がある場合に、制御部22は、未点検の部分の上を通過する経路を移動経路として算出する。例えば現在階床の乗場ドア敷居7に未点検の部分がある場合に、制御部22は、当該未点検の部分の上を通過してかご10に乗り込む移動経路を算出する。例えば現在階床の他の階床の乗場ドア敷居7に未点検の部分がある場合に、制御部22は、当該他の階床を目的階床とし、当該未点検の部分の上を通過してかご10から降りる移動経路を算出する。
【0043】
未点検の部分が複数ある場合に、制御部22は、例えば複数の未点検の部分のうちからランダムに選択された部分の上を通過する移動経路を算出する。あるいは、制御部22は、例えば複数の未点検の部分のうち現在階床に近い階床にある部分を優先して通過する移動経路を算出してもよい。あるいは、制御部22は、未点検の部分が多く含まれる階床を優先して目的階床に設定してもよい。あるいは、制御部22は、その他の情報に基づいて複数の未点検の部分に優先順位をつけて移動経路を算出してもよい。その他の情報は、例えば距離検出部19が検出する距離情報、未点検の部分がある階床に停止する呼びの有無、当該階床を乗降する利用者の数、または最後に点検した時期からの経過時間、などであってもよい。また、かごドア敷居15および乗場ドア敷居7の両方に未点検の部分があるときに、制御部22は、乗場ドア敷居7の未点検の部分を優先して通過する移動経路を算出してもよい。」
「【0047】
図6AのステップS101において、制御部22は、自律移動体16を現在階床の乗場ドア6の前に移動させる。その後、点検システム1の動作は、ステップS102に進む。
【0048】
ステップS102において、制御部22は、記憶部21が記憶している点検結果に基づいて、敷居の未点検の部分を抽出する。制御部22は、抽出した情報に基づいて、自律移動体16に移動させる移動経路を算出する。つまり、制御部22は、抽出した情報に基づいて、自律移動体16を移動させるために、未点検の部分を通過する移動経路を算出する。その後、点検システム1の動作は、ステップS103に進む。
【0049】
ステップS103において、制御部22は、通信部20を通じて制御盤13に乗車要求を送信する。その後、点検システム1の動作は、ステップS104に進む。
【0050】
ステップS104において、現在階床にかご10が停止したときに、制御部22は、通信部20を通じて制御盤13から受信した情報に基づいて、エレベーター2の状態が待機状態であるかを判定する。判定結果がNoの場合に、点検システム1の動作は、ステップS200aに進む。判定結果がYesの場合に、点検システム1の動作は、ステップS300aに進む。」
以上の記載から、甲4には次の技術的事項が記載されているといえる(以下「甲4記載の技術的事項」という。)
[甲4記載の技術的事項]
「 エレベータのドアの敷居を点検する自律移動体16において、自律移動体16が備える記憶部21が記憶している点検結果に基づいて、敷居の未点検の部分を抽出し、抽出した情報に基づいて、自律移動体16を移動させるために、敷居の未点検の部分を通過する移動経路を算出すること。」
5 甲5について
甲5には、次の記載がある(下線は当審合議体が付したものである。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の自動走行を可能にする自動走行方法に関する。」
「【0009】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを、葡萄園又は林檎園などの果樹園にて複数列に並ぶ状態で植えられた葡萄又は林檎などの果樹や果樹列間の土壌などを作業対象とする果樹園用の作業車両に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。」
「【0035】
図2に示すように、車体1には、測位ユニット5からの測位情報などに基づいて車体1を果樹園の目標経路P(図9参照)に従って自動走行させる自動走行制御部40、エンジン12に関する制御を行うエンジン制御部41、各HST30に関する制御を行うHST制御部42、及び、散布装置4などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部43、などが搭載されている。各制御部40~43は、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニットや、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の情報や制御プログラムなどによって構築されている。不揮発性メモリに記憶された各種の情報には、事前に作業対象の果樹園に応じて生成された目標経路Pなどが含まれている。」
「【0039】
尚、図9に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路Pは、車体1に備える作業装置の種類や作業形態などの車両情報、及び、果樹園ごとに異なる果樹Zの配列状態や列数などの作業地情報、などに応じて種々の変更が可能である。」
「【0111】
つまり、衝突回避モジュール40Aは、作業車両Vが作業経路Pw上に位置する場合に、作業経路Pwに隣接する果樹列Zrの果樹Zなどが左右の前ライダーセンサ6A,6Bにて障害物として検出されたときには、左右の前ライダーセンサ6A,6Bの検出に基づいて、制御目標位置pvを作業経路Pwから外れた衝突回避用の走行基準線Ls上に設定変更することができる。」
以上の記載から、甲5には次の技術的事項が記載されているといえる(以下「甲5記載の技術的事項」という。)
[甲5記載の技術的事項]
「 果樹園にて果樹や果樹列間の土壌などを作業対象とする作業車両に関し、事前に作業対象の果樹園に応じて目標経路を生成し、車体に備える作業装置の種類や作業形態などの車両情報、及び、果樹園ごとに異なる果樹の配列状態や列数などの作業地情報などに応じて、目標経路を変更すること。」
6 甲6について
甲6には、次の記載がある(下線は当審合議体が付したものである。)。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、軌道計画装置に関し、特に、車両等の自動運転を実現するための動作を計画する軌道計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転および搬送台車などの自律移動システムの開発が進んでいる。自律移動システムでは、移動体が走行すべき軌跡と速度で構成される軌道を生成し、生成された軌道に沿って移動体が走行するように制御される。軌道計画は、多くのシーンにおいて道路の中央および磁気マーカーなどの誘導体に沿うような軌道計画が立てられる。しかし場合によっては、道路の白線が無い料金所付近、未舗装路での走行シーンおよび誘導体を使用しない自律搬送台車が目的地へ移動するシーンにおいては、このような情報は使用できない。このようなシーンでは、走行すべき目印情報の無い空間上を、障害物を回避しつつ目的地へ到達することができる軌道が必要であり、例えば、特許文献1に開示されるように走行すべき目印情報が無くとも軌道計画を実現する技術が開発されている。」
「【0004】
特許文献1においては、障害物の存在しない走行可能領域に内接する複数の円の中心点を通る線で構成される道なり方向に基づいて、走行経路を生成する方法が採られている。この場合、例えば空港のような非常に広い走行可能領域では、内接する円を決定できないため、走行経路を生成できず目的地へ到達できない。また、料金所付近のような、複雑な形状で横幅の変化が大きい走行可能領域では、正しい道なり方向を演算できず目的地へ到達できない。
【0005】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、空港および料金所付近などのように走行可能領域が複雑な場合においても、走行可能領域を通って目的地へ到達することができる軌道計画装置を提供することを目的とする。
【0006】
本開示に係る軌道計画装置は、移動体の軌道を計画する軌道計画装置であって、前記移動体の周辺情報に基づいて、前記移動体の走行可能領域を演算する走行可能領域演算部と、少なくとも前記移動体の目標位置を含む目標状態量を演算する目標状態演算部と、少なくとも前記移動体の現在の状態量および前記移動体の現在位置と前記目標位置との間の1つ以上の位置における前記移動体の状態量を予測することで、1つ以上の軌道候補を生成する状態予測部と、前記目標状態量と前記走行可能領域とに基づいて、前記1つ以上の軌道候補を評価して評価結果を出力する予測状態評価部と、前記評価結果に基づいて、前記1つ以上の軌道候補から前記軌道を生成し、前記軌道に基づいて前記移動体を制御する運動制御部に対し、前記軌道を出力する軌道生成部と、を備えている。」
「【0031】
まず、軌道計画装置200の入力情報として、目標値取得部110より目標位置、目標速度、目標方位角等の目標値を取得し、自己状態取得部120より移動体の位置、速度、方位角等の自己状態を取得し、周辺環境取得部130より、走行可能領域の各頂点座標、移動障害物の位置、速度等の周辺環境情報を取得する(ステップS101)。このときの入力情報の概念図を図7に示す。」
7 甲7について
甲7には、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば電子部品を基板上に自動的に実装する電子部品実装装置に用いて好適な、電子部品などの被移動体を所定位置に搬送移動させる際の位置決めに用いる制御装置に関する。」
「【0005】制御部10の完了幅判定回路12は、位置決めが完了したか否かを判定し、終了した場合には、位置決め完了信号Sを出力する判定回路である。すなわち、位置制御回路11より入力された目標位置pが最終目標位置Pに到達後、その目標位置p(すなわち、最終目標位置P)と位置制御回路11より入力された現在位置qの差が、予め定めた位置決め完了幅θ内であるか否かを判定し、その位置決め完了幅θ内であった場合に、位置決めが完了したと判定する。」
第6 取消理由通知に記載した取消理由について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 後者の「エレベータである移動手段500」又は「移動手段500」は前者の「エレベータ」に相当し、後者の「エレベータである移動手段500により移動する」ことは前者の「エレベータを利用して移動する」ことに、後者の「ロボット」又は「ターゲットロボット」は前者の「移動体」にそれぞれ相当する。
後者の「前記移動手段500に搭乗した前記ターゲットロボットが前記移動手段500で移動する間、前記移動手段500において待機する待機位置」である「ターゲット占有位置」は、前者の「前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置」又は「所定の乗り込み候補位置」に相当する。後者の搭乗イベントが発生したときの「ターゲット占有位置に関する制御命令」と、後者「所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」とは、「所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報」という限りで一致し、後者のターゲットロボットがその情報を「受信する」ことは、前者の移動体がその情報を「取得する」ことに相当する。後者のターゲットロボットが「前記移動手段500内における移動を行う」ことは、前者の移動体が「移動機構を制御する動作制御部と、を備える」ことに相当する。
後者の「ロボットと通信を行」うことが前者の「移動体と通信可能に接続され」ることに相当し、後者の「移動手段制御システムとロボット遠隔制御システム300とが一つに統合された統合システム」又は「統合システム」が、前者の「エレベータ制御装置」に相当する。
イ 後者の「当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図」と、前者の「前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報」とは「マップ情報」である限りで一致する。
後者の当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図が「保存され」た「保存部」と、前者の適正度マップ情報を「記憶する適正度マップ記憶部」とは、マップ情報を「記憶するマップ記憶部」である限りで一致する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300が保存部120を「有」することは、前者において、エレベータ制御装置が適正度マップ記憶部を「備え」ることに相当する。
ウ 後者の「前記移動手段500の収容空間のどの領域をロボット又は人が占めているかを意味する占有状態を定義することができる情報」である「検知情報」は前者の「前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報」に相当する。
後者の制御部150が有する「前記移動手段500又はロボットに備えられたセンサの検知情報を取得する検知情報取得部」ないし「検知情報取得部」は前者の「かご内情報取得部」に相当する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の制御部150が検知情報取得を「有」することは、前者において、エレベータ制御装置がかご内情報取得部を「備え」ることに相当する。
エ 上記アで検討した「所定の乗り込み候補位置」と同様に、後者の「前記移動手段500に搭乗した前記ターゲットロボットが前記移動手段500で移動する間、前記移動手段500において待機する待機位置」である「ターゲット占有位置」は、前者の「前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置」又は「乗り込み候補位置」に相当する。
後者の「前記地図を参照して抽出した」という事項と、前者の「前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報」「に基づいて」という事項とは、「前記マップ記憶部に記憶したマップ情報」「に基づいて」という限りで一致する。
また、後者の「前記移動手段500の占有状態に基づいて」という事項は、前者の「前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて」という事項に相当し、後者の「占有可能空間の少なくとも一部をターゲット占有位置として設定する」こと、及び「ターゲット占有位置決定部」はそれぞれ、前者の「前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する」こと、及び「乗り込み候補位置決定部」に相当する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の制御部150がターゲット占有位置決定部を「有」することは、前者において、エレベータ制御装置が乗り込み候補位置決定部を「備え」ることに相当する。
オ 後者の「前記制御部150」が「設定」したターゲット占有位置は、前者の「前記乗りこみ候補位置決定部が決定した」前記乗り込み候補位置に相当する。
後者のターゲット占有位置を設定したときの、「ターゲット占有位置に関する制御命令」と、前者の「前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」とは、「前記乗り込み候補位置に関連した指示情報」である限りで一致する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の制御部150が「制御命令を前記ターゲットロボットに送信するステップを行」うようになっているという構成は、前者において、エレベータ制御装置が「指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備え」るという構成に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明1とは次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「 エレベータを利用して移動する移動体であり、
前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報を取得すると、移動機構を制御する動作制御部、を備える移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置であって、
マップ情報を記憶するマップ記憶部と、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得するかご内情報取得部と、
前記マップ記憶部に記憶したマップ情報および前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置に関連した指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、
を備えたエレベータ制御装置。」
[相違点1-1]
本件発明1は、移動体が「自律走行可能な」ものであるのに対し、甲1発明1は、ロボットが「走行可能」ではあるが、「自律走行可能」であるか、明らかでない点。
[相違点1-2]
「マップ情報」及びそれを記憶する「マップ記憶部」に関し、本件発明1は、それらが、「前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報」及びそれを記憶する「適正度マップ記憶部」であるのに対し、甲1発明1は、「当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図」及びそれを保存する「保存部120」である点。
[相違点1-3]
「所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報」及び「前記乗り込み候補位置に関連した指示情報」に関し、本件発明1は、その情報が「所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」及び「前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」であり、移動体が、その情報を取得すると「前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部」を備え、「前記移動経路を移動するように」移動機構を制御するものであるのに対し、甲1発明1は、その情報が「ターゲット占有位置に関する制御命令」であり、ターゲットロボットは、その情報を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように移動手段500内における移動を行うものである点。
(2)判断
事案に鑑み上記相違点1-3について検討する。
上記相違点1-3に係る「所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報」及び「前記乗り込み候補位置に関連した指示情報」に関し、本件発明1の「前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」は、移動体の「移動経路決定部」がその情報を取得して「前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する」ものであるから、その情報は、“乗り込み候補位置までの移動経路を決定することを可能とする情報”ということができる。
これに対し、甲1発明1は、ターゲットロボットが「移動経路決定部」を備えるものか明らかでなく、ターゲットロボット側で移動経路を作成することを前提としているといえないから、甲1発明1の「ターゲット占有位置に関する制御命令」が、“ターゲット占有位置までの移動経路を決定することを可能とする情報”であるか明らかでない。
これを踏まえて申立人が提出した証拠をみるに、甲4記載の技術的事項は、エレベータのドアの敷居を点検する自律移動体16の移動経路を自律移動体16側で決定するものであるが、その移動経路は、敷居の未点検の部分を通過する移動経路であって、自律移動体16がエレベータ内の特定位置に乗り込むための移動経路ではない。よって、甲4記載の技術的事項は、エレベータ内の特定位置まで移動する移動経路を決定することを可能とする情報を自律移動体16に与えるという構成は備えていない。
甲5記載の技術的事項は、果樹園内に定められた特定位置に移動することを目的したものではなく、その目標経路は、果樹園内の果樹や土壌に対して作業するための目標経路であり、果樹園内に定められた特定位置に移動するための目標経路ではない。よって、甲5記載の技術的事項も特定位置まで移動するための移動経路を決定することを可能とする情報を作業車両に与えるという構成は備えていない。
甲6には、目標位置を取得し軌道計画を作成するという技術的事項が記載されているが、甲6記載の技術は、道路の中央及び磁気マーカなどが軌道計画を作成するために利用できないような、空港のような非常に広い走行可能領域や、料金所付近のような複雑な形状で横幅の変化が大きい走行可能領域での軌道計画の作成に関するものであり、甲1発明1とは技術分野が異なり、甲6記載の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けはない。
さらに、甲2、甲3、甲7も、移動体が移動経路を決定することを前提とし、特定位置まで移動するための移動経路を決定することを可能とする情報を移動体に与えるという構成を開示するものではない。
よって、甲1発明1において、甲2~7に記載された技術的事項から、ターゲット占有位置までの移動経路を決定することを可能とする情報を生成して、ターゲットロボットに送信するという構成に到達することは、当業者にとって容易とはいえない。
また、甲1発明1は、「制御部150」が「空間10内でロボットの移動経路又は走行経路を制御し、移動手段500の収容空間の複数の領域間を移動するようにロボットの移動経路を制御し、空間10及び移動手段500におけるロボットの状態を継続的にモニタし、制御対象のロボットを正確に識別し、制御対象のロボットに正確な制御命令を送信することにより、空間10を安全かつ効率的に運用し」、「ロボットは、前記制御部150の制御下で、空間10を移動し、移動手段500に乗降車し、移動手段500内において待機又は移動するように構成さ」れるものである。このようにロボットの制御をその外部にある遠隔制御システム300の制御部150により行おうとするものにおいて、制御部150が担っているターゲットロボット制御に係る多くの制御内容の中から、ターゲット占有位置までターゲットロボットが移動するための移動経路の決定に着目し、ターゲット占有位置の決定と、そのターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定という相互に関連する制御内容を敢えて別々の制御部で行うようにすること、すなわち、ターゲット占有位置の決定機能を制御部150に残し、ターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定をターゲットロボット側に移すことが、設計的事項であるといえる証拠はない。そうすると、ターゲットロボット側でターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定することを前提として、その移動経路を決定することを可能とする情報を生成し、ターゲットロボットに送信することが、設計的事項ということもできない。
したがって、甲1発明1、甲2~7記載の技術的事項から、上記相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項をなすことは、当業者が容易になし得たことでない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでない。
2 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲1発明3とを対比する。
ア 後者の「エレベータである移動手段500」又は「移動手段500」は前者の「エレベータ」に相当し、後者の「エレベータである移動手段500により移動する」ことは前者の「エレベータを利用して移動する」ことに、後者の「ロボット」又は「ターゲットロボット」は前者の「移動体」にそれぞれ相当する。
後者の「前記移動手段500に搭乗した前記ターゲットロボットが前記移動手段500で移動する間、前記移動手段500において待機する待機位置」である「ターゲット占有位置」は、前者の「前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置」又は「所定の乗り込み候補位置」に相当する。後者の搭乗イベントが発生したときの「ターゲット占有位置に関する制御命令」と、後者「所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」とは、「所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報」という限りで一致し、後者のターゲットロボットがそれを「受信する」ことは、前者の移動体がそれを「取得する」ことに相当する。後者のターゲットロボットが「前記移動手段500内における移動を行う」ことは、前者の移動体が「移動機構を制御する動作制御部と、を備える」ことに相当する。
後者の「ロボットと通信を行」うことが前者の「移動体と通信可能に接続され」ることに相当し、後者の「移動手段制御システムとロボット遠隔制御システム300とが一つに統合された統合システム」又は「統合システム」が、前者の「エレベータ制御装置」に相当する。
後者の「統合システムが実行する移動手段500に搭乗するロボットの制御方法」が前者の「エレベータ制御装置が実行する移動体の制御方法」又は「エレベータを利用する移動体の制御方法」に相当する。
イ 後者の「当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図」と、前者の「前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報」とは「マップ情報」である限りで一致する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の「保存部120に保存され」ることは、前者において、エレベータ制御装置が「記憶する」ことに相当する。
ウ 後者の「前記移動手段500の収容空間のどの領域をロボット又は人が占めているかを意味する占有状態を定義することができる情報」である「検知情報」は前者の「前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報」に相当する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の制御部150が「前記移動手段500又はロボットに備えられたセンサの検知情報を取得」することは、前者において、エレベータ制御装置が「前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得」することに相当する。
エ 上記アで検討した「所定の乗り込み候補位置」と同様に、後者の「前記移動手段500に搭乗した前記ターゲットロボットが前記移動手段500で移動する間、前記移動手段500において待機する待機位置」である「ターゲット占有位置」は、前者の「前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置」又は「乗り込み候補位置」に相当する。
後者の「前記地図を参照して抽出した」という事項と、前者の「記憶した適正度マップ情報」「に基づいて」という事項とは、「記憶したマップ情報」「に基づいて」という限りで一致する。
また、後者の「前記移動手段500の占有状態に基づいて」という事項は、前者の「前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて」という事項に相当する。
後者の、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の制御部150が占有可能空間の少なくとも一部をターゲット占有位置として「設定」することは、前者の、エレベータ制御装置が乗り込み候補位置を「決定」することに相当する。
オ 後者の「設定」されたターゲット占有位置は、前者の「決定した」前記乗り込み候補位置に相当する。
後者のターゲット占有位置を設定したときの、「ターゲット占有位置に関する制御命令」と、前者の「前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」とは、「前記乗り込み候補位置に関連した指示情報」である限りで一致する。
後者において、統合システムの一部であるロボット遠隔制御システム300の制御部150が制御命令を「前記ターゲットロボットに送信する」ことは、前者において、エレベータ制御装置が指示情報を「生成して前記移動体に送信する」ことに相当する。
以上のことから、本件発明5と甲1発明3とは次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「 エレベータを利用して移動する移動体であり、
前記エレベータの乗りかご内における所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報を取得すると、移動機構を制御する動作制御部、を備える移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置が実行する移動体の制御方法であって、
マップ情報を記憶し、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得し、
記憶憶したマップ情報、および前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定し、
決定した前記乗り込み候補位置に関連した指示情報を生成して前記移動体に送信する、エレベータを利用する移動体の制御方法。
[相違点5-1]
本件発明5は、移動体が「自律走行可能な」ものであるのに対し、甲1発明3は、ロボットが「走行可能」ではあるが、「自律走行可能」であるか、明らかでない点。
[相違点5-2]
「マップ情報」に関し、本件発明5は、それらが、「前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報」であるのに対し、甲1発明3は、「当該占有可能空間に関する情報が含まれるエレベータの収容空間の地図」である点。
[相違点5-3]
「所定の乗り込み候補位置に関連した指示情報」及び「前記乗り込み候補位置に関連した指示情報」に関し、本件発明5は、その情報が「所定の乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」及び「前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」であり、移動体は、その情報を取得すると「前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部」を備え、「前記移動経路を移動するように」移動機構を制御するものであるのに対し、甲1発明3は、その情報が「ターゲット占有位置に関する制御命令」であり、ターゲットロボットは、その情報を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように前記移動手段500内における移動を行うものである点。
(2)判断
上記相違点5-3は、上記相違点1-3と同じである。したがって、上記1(2)と同様の理由で、甲1発明3、甲2~7記載の技術的事項から、上記相違点5-3に係る本件発明5の発明特定事項をなすことは、当業者が容易になし得たことでない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明3、甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでない。
3 申立人の主張
申立人は、令和8年4月3日にて移出した意見書において、甲4記載事項Aを甲1装置発明Aに適用する動機付けがあるとし、甲第4号証における、通信部20を通じてエレベーター2の制御盤13と通信可能である自律移動体16の制御部22が、エレベーター2の制御盤13から送信された乗り込み指示情報に対応する情報(移動経路の目的地に関する情報)を取得し、当該情報に基づいて移動経路を算出して当該移動経路に移動させるように、甲4記載事項Aを甲1装置発明Aに適用することは、当業者が容易に想到し得ると主張する(第6頁第3~17行。下線は当審合議体が付したもの。)。
しかしながら、第5の4のとおり、甲4の自律移動体16は、「自律移動体16が備える記憶部21が記憶している点検結果に基づいて」、「敷居の未点検の部分を通過する移動経路」を算出しているのであって、エレベーターの制御盤13から送信された情報に基づき移動経路を算出するものでもなければ、エレベーター内の特定位置まで自律移動体16を移動させることを目的とした移動経路を算出するのでもない。
また、申立人は、同意見書において、乗り込み候補位置を決定することと経路を決定することとの役割分担において、システムの通信負荷または移動体の処理能力などを考慮して当業者が適宜選択し得る設計事項である(第6頁最終行~第7頁第2行)と主張する。
しかし、上記1(2)で述べたように、ロボットの制御をその外部にある遠隔制御システム300の制御部150により行おうとするものにおいて、制御部150が担っているターゲットロボット制御に係る多くの制御内容の中から、ターゲット占有位置までターゲットロボットが移動するための移動経路の決定に着目し、ターゲット占有位置の決定と、そのターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定という相互に関連する制御内容を敢えて別々の制御部で行うようにすること、すなわち、ターゲット占有位置の決定機能を制御部150に残し、ターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定をターゲットロボット側に移すことが、設計的事項であるといえる証拠はない。
したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
4 取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ
以上とおり、本件発明1、5は、甲1発明1、又は甲1発明3、及び甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでもないから、取消理由通知に記載した取消理由により、その発明に係る特許を取消すことはできない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明2とを対比する。
本件発明2の発明特定事項のうち、「エレベータ制御装置」の発明特定事項は、本件発明1と同じであるから、本件発明2の発明特定事項と甲1発明2の発明特定事項との間には、上記第6の1(1)とほぼ同様の相当関係がいえ、その相当関係に加えて、次の相当関係がいえる。
後者の「前記統合システムに接続された、」ロボットが、前者の「エレベータ制御装置に通信可能に接続され」た移動体に相当する。
後者のターゲットロボットが「ターゲット占有位置に位置するように前記移動手段500内における移動を行う」ことは、前者の移動体が「移動機構」「を備える」こと、及び「前記移動機構を制御する動作制御部」「を備える」ことに相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明2とは、次の点で一致し、上記相違点1-1、相違点1-2に加え、相違点2-1、相違点2-2で相違する。
[相違点2-1]
「前記乗り込み候補位置に関連した指示情報」に関し、本件発明2は、その情報が「前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報」であるのに対し、甲1発明2は、「ターゲット占有位置に関する制御命令」である点。
[相違点2-2]
本件発明2は、「前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部」を備え、「前記移動経路を移動するように」制御される移動体であるのに対し、甲1発明2は、移動経路決定部を有するターゲットロボットであるか明らかでなく、ターゲット占有位置に関する制御命令を受信すると、それに基づいて、ターゲット占有位置に位置するように移動手段500内における移動をおこなうターゲットロボットである点。
イ 判断
事案に鑑み上記相違点2-2について検討する。
甲4記載の技術的事項は、エレベータのドアの敷居を点検する自律移動体16の移動経路を自律移動体16側で決定するものであるが、エレベータ内の特定位置に乗り込む指示を受け、その特定位置までの移動経路を自律移動体が作成するものではない。
甲5記載の技術的事項の目標経路は、甲5記載の技術的事項は、果樹園内に定められた特定位置に移動することを目的したものではなく、その目標経路は、果樹園内の果樹や土壌に対して作業するための目標経路である。よって、甲5記載の技術的事項は、果樹園内に定められた特定位置に移動するよう指示を受け、その特定位置に移動するための目標経路を作業車両が作成するものではない。
甲6には、目標位置を取得し、軌道計画を作成するという技術的事項が記載されているが、甲6記載の技術は、軌道計画を立てる際に道路の中央及び磁気マーカが軌道計画を作成するために利用できない、空港のような非常に広い走行可能領域や、料金所付近のような複雑な形状で横幅の変化が大きい走行可能領域での軌道計画の作成に関するものであり、甲1発明2とは技術分野が異なり、甲6記載の技術的事項を甲1発明2に適用する動機付けはない。
さらに、甲2、甲3、甲7も、特定位置に移動するよう指示を受け、その特定位置まで移動する移動経路を移動体が決定するという技術的事項を開示するものではない。
よって、甲1発明2において、甲2~7に記載された技術的事項から、ターゲット占有位置まで移動するよう指示を受け、ターゲット占有位置までの移動経路をターゲットロボット側で決定するという構成に到達することは、当業者にとって容易とはいえない。
また、上記第6の1(2)で述べたとおり、ロボットの制御をその外部にある遠隔制御システム300の制御部150により行おうとするものにおいて、制御部150が担っているターゲットロボット制御に係る多くの制御内容の中から、ターゲット占有位置までターゲットロボットが移動するための移動経路の決定に着目し、ターゲット占有位置の決定と、そのターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定という相互に関連する制御内容を敢えて別々の制御部で行うようにすること、すなわち、ターゲット占有位置の決定機能を制御部150に残し、ターゲット占有位置まで移動するための移動経路の決定をターゲットロボット側に移すことが、設計的事項であるといえる証拠はない。
したがって、甲1発明2、甲2~7記載の技術的事項から、上記相違点2-2に係る本件発明2の発明特定事項をなすことは、当業者が容易になし得たことでない。
そうすると、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明2、甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでない。
(2)本件発明3について
本件発明3は、「移動体」に係る発明であり、本件発明2と同じく、「移動機構と、前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、」「を備え」るという発明特定事項を有している。
したがって、本件発明3と甲1発明2とを対比すると、少なくとも上記相違点2-2で相違する
そうすると、上記(1)と同様の理由で、本件発明3は、甲1発明2、甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでない。
(3)本件発明4について
本件発明4も、「移動体」に係る発明であり、本件発明2と同じく、「移動機構と、前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、」「を備え」るという発明特定事項を有している。
したがって、本件発明4と甲1発明2とを対比すると、少なくとも上記相違点2-2で相違する。
そうすると、上記(1)と同様の理由で、本件発明4は、甲1発明1、甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでない。
2 申立理由2(サポート要件)について
・本件発明1~5
本件発明1~5が解決しようとする課題は、「移動体の乗り込み位置を決定する際に」、「利用者の意思に関わらず、乗りかご内で空いているエリアを移動体の乗り込み位置として選択する」と、「利用者が敢えて乗り込みを避けたエリアを空きエリアとして認識し、移動体の乗り込み位置として選択してしまい、利用者の利便性が低下する場合があるという問題があった」ことに鑑み(本件特許明細書等【0008】)、「エレベータの利用者の利便性を低下させないようにしつつ、利用者と自律走行可能な移動体とが安全に乗りかごに同乗できるようにする、エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法の提供」すること(【0009】)である。
当該課題を解決する手段として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載されているものは、「エレベータ10の乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、移動体30の乗り込み位置としての適正度(以降、「乗り込み適正度」と称する)が低い位置とすることで、乗りかご13内の位置ごとの乗り込み適正度を示した情報」である「適正度マップ情報」(【0032】)に基づいて「乗り込み候補位置」を決定するもの、又は、このようにして決定した乗り込み候補位置への乗り込みを指示する「乗り込み指示情報」を取得すると、乗り込み候補位置までの移動経路を決定するものである(【0048】)。
そして、本件発明1~5は、これらの発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されたものとなっているから、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人は特許異議申立書において、請求項1等には、「移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とする」という記載があるが、当該文言には当該位置の適正度がゼロである場合(すなわち、乗り込み禁上である場合)も含まれ、そのような事項は本願明細書には開示されていないと主張する(第46頁)。
しかしながら、本件特許明細書等には、移動体の乗り込み位置としての適正度がゼロを含む点の明記はないが、乗り込み位置とすべきでない位置も場合によって存在し得ることは容易に予測できるし、仮に、そのような位置の適正度をゼロと設定したからといって、本件発明1~5が上記課題を解決できなくなるとも認められない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
3 申立理由3(明確性)について
・本件発明1~5
本件発明1~5には、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点はなく、本件発明1~5は明確である。
申立人は特許異議申立書において、請求項1等には、「利用者が乗り込む頻度が低い」という記載があるが、その「低い」という程度が不明確であり、また何に基づいて「低い」とするのかが不明確であると主張する。
しかし、本件発明1~5に関し、「利用者が乗り込む頻度」が高いとか低いという評価は、エレベータの「乗りかごの中」という限られた空間内の各位置間の相対的な評価でよいことは明らかである。よって、何に基づいて「低い」とするのかが不明確であるとの指摘や、「低い」という程度が不明確という指摘、絶対的な基準に基づいた評価を前提とした指摘であり、本件発明1~5の「利用者が乗り込む頻度」の評価には当たらない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
4 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由についてのまとめ
以上とおり、申立理由1~3にはいずれも理由がない。
よって、本件発明1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700809