特許異議申立
2024-700818
乗客コンベア及び乗客コンベアの制御方法
- 審判番号
- 2024-700818
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-100867
- 登録番号
- 7485474
- 請求日
- 2024年08月29日
- 審決日
- 2026年01月09日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝エレベータ株式会社
- 【権利者代理人】柘 周作
- 【権利者代理人】富田 祥弘
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 岩瀬 昌治
- 分類
- P1652.121-YAA(B66B) / P1652.16 -YAA(B66B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7485474号発明「乗客コンベア及び乗客コンベアの制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7485474号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~8、10~21〕、9について訂正することを認める。
特許第7485474号の請求項1、2、4、5、8、9、18~21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 本件発明
特許第7485474号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和5年6月20日に出願され、令和6年5月8日に特許権の設定登録がされ、同年5月16日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人 金田綾香(以下「申立人」という。)により、請求項1、2、4、5、8、9に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、概略、次のとおりである。
令和6年 8月29日 申立人による特許異議の申立て
令和7年 2月28日付け 取消理由通知書
同 年 4月22日 特許権者からの訂正請求書及び意見書の受付
同 年 6月11日 特許権者からの訂正請求書を補正する手続補正書の受付
なお、令和7年6月30日付けで、申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 本件訂正の内容について
令和7年6月11日に提出された手続補正書により補正された同年4月22日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~21について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下の訂正事項を含むものである(下線部が訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、」の「進行方向」の後に「、位置及び移動速度」を追加する訂正をする。(請求項1の記載を引用する請求項2および請求項4についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3について、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」を追加し、「前記制御装置は、」の後に「前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と、」を追加し、「計算手段を更に含み、」を「計算手段とを含み、」とし、「請求項2に記載の乗客コンベア」を「乗客コンベア」とする訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5について、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」を追加し、「請求項1に記載の乗客コンベア」を「乗客コンベア」とする訂正をする。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項6について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、請求項6の文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」を追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」を「乗客コンベア。」とする訂正をする。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項6について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段を含み、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項10とする。
ウ 訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項6について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と」と「前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段を更に含み、前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させ、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項11とする。
エ 訂正事項4-4
特許請求の範囲の請求項6について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含み」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項12とする。
オ 訂正事項4-5
特許請求の範囲の請求項6について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含み」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項13とする。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項7について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をする。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項7について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段を含み、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項14とする。
ウ 訂正事項5-3
特許請求の範囲の請求項7について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と」と「前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段を更に含み、前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させ、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項15とする。
エ 訂正事項5-4
特許請求の範囲の請求項7について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含み」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項16とする。
オ 訂正事項5-5
特許請求の範囲の請求項7について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含み」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項17とする。
(6)訂正事項6
ア 訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項8について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をする。
イ 訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項8について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段を含み、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項18とする。
ウ 訂正事項6-3
特許請求の範囲の請求項8について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段とを含み、前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させ、」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項19とする。
エ 訂正事項6-4
特許請求の範囲の請求項8について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含み」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項20とする。
オ 訂正事項6-5
特許請求の範囲の請求項8について、「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア」とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、文頭に「無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置とを具備し、」と「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含み」とを追加し、末尾の「請求項1~5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。」との記載を「乗客コンベア。」とする訂正をし、新たに請求項21とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9について、「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、」の「進行方向」の後に「、位置及び移動速度」を追加する訂正をする。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、請求項1を直接または間接的に引用しているものであつて、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがつて、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8、10~21は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、「第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」との事項を、「第1検出情報に含まれる進行方向、位置及び移動速度に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」と訂正することにより、訂正前は、判定に用いる情報として「進行方向」を含めば十分であったものが、訂正により、「進行方向」に加えて「位置」及び「移動速度」も含まなければならないものへと限定された。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0043】には「ステップS2における対象人物が乗客であるか否かを判定する処理は、当該対象人物の速度及び位置を更に考慮して実行されてもよい。具体的には、対象人物の進行方向が踏段11に向かっている場合であっても、例えば対象人物の速度が極端に低い(つまり、エスカレータ10に乗り込む意思がないと推定される程度に低速である)場合には当該対象人物は乗客でないと判定されてもよいし、対象人物の位置が予め定められた領域内にない(つまり、乗り口から比較的遠い位置にいることにより、エスカレータ10に乗り込む意思があるか不明である)場合には当該対象人物は乗客でないと判定されてもよい。」との記載があるところ、訂正後の請求項1の「第1検出情報に含まれる進行方向、位置及び移動速度に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」という事項は、本件特許明細書等に記載されていたといえる。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用し、訂正前の請求項3が訂正前の請求項2を引用して記載されていたところ、訂正前の請求項3の記載に対して訂正前の請求項1及び2の記載を付加し、請求項3の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、単に、訂正前の請求項3の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
なお、訂正前の請求項3については特許異議の申立ての対象となっていないが、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は2号を目的とするものではないから、訂正後の請求項3には、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1を引用して記載されていたところ、訂正前の請求項5の記載に対して訂正前の請求項1の記載を付加し、請求項5の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項3は、単に、訂正前の請求項5の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項6は訂正前の請求項1~5のいずれか一項を引用するものである。そして、訂正前の請求項1~5の引用関係を踏まえれば、訂正前の請求項6は次を含んでいるといえる。
(ア) 訂正前の請求項1を引用する請求項6
(イ) 訂正前の請求項2が請求項1を引用し、その請求項2を引用する請求項6
(ウ) 訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用し、請求項3がその請求項2を引用し、その請求項3を引用する請求項6
(エ) 訂正前の請求項4が請求項1を引用し、その請求項4を引用する請求項6
(オ) 訂正前の請求項5が請求項1を引用し、その請求項5を引用する請求項6
そして、訂正事項4-1は、上記(ア)に係る請求項6について、訂正前の請求項6の記載に対し訂正前の請求項1の記載を付加し、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項6とするものである。
訂正事項4-2は、上記(イ)に係る請求項6について、訂正前の請求項6の記載に対して訂正前の請求項1及び2の記載を付加し、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項10とするものである。
訂正事項4-3は、上記(ウ)に係る請求項6について、訂正前の請求項6の記載に対して訂正前の請求項1、2及び3記載を付加し、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項11とするものである。
訂正事項4-4は、上記(エ)に係る請求項6について、訂正前の請求項6の記載に対して訂正前の請求項1及び4記載を付加し、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項12とするものである。
訂正事項4-5は、上記(オ)に係る請求項6について、訂正前の請求項6の記載に対して訂正前の請求項1及び5記載を付加し、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項13とするものである。
以上のとおり訂正事項4-1~訂正事項4-5は、訂正前の請求項6が含んでいる上記(ア)~(オ)に係る請求項6のそれぞれを、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載されたものするにものである。
そして、訂正事項4-1~訂正事項4-5を総合すると、訂正事項4は、訂正前の請求項6が含んでいたすべての請求項の引用関係を余すことなく網羅しつつ、訂正前の請求項6の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式に記載にするものであるから、特許請求項の範囲を減縮するものではない。
そうすると、訂正事項4-1~訂正事項4-5からなる訂正事項4は、単に、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項4は、訂正前の請求項6の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式に記載にするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、訂正事項4-1~訂正事項4-5を総合すると、訂正前の請求項6が含んでいたすべての請求項の引用関係を余すことなく網羅しつつ、訂正前の請求項6の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件
訂正前の請求項6については特許異議の申立ての対象となっていないが、訂正事項4は、上記アのとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は2号を目的とするものではないから、訂正後の請求項6、10~13については、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項7は訂正前の請求項1~5のいずれか一項を引用するものである。そして、訂正前の請求項1~5の他の請求項の引用関係を踏まえれば、訂正前の請求項7は次を含んでいるといえる。
(ア) 訂正前の請求項1を引用する請求項7
(イ) 訂正前の請求項2が請求項1を引用し、その請求項2を引用する請求項7
(ウ) 訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用し、請求項3がその請求項2を引用し、その請求項3を引用する請求項7
(エ) 訂正前の請求項4が請求項1を引用し、その請求項4を引用する請求項7
(オ) 訂正前の請求項5が請求項1を引用し、その請求項5を引用する請求項7
そして、訂正事項5-1~訂正事項5-5からなる訂正事項5は、訂正事項4と同様に、上記(ア)~(オ)に係る請求項7を、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項7、14~17とするものである。
よって、訂正事項5-1~訂正事項5-5を総合すると、訂正事項5は、訂正事項4と同様に、訂正前の請求項7が含んでいたすべての請求項の引用関係を余すことなく網羅しつつ、訂正前の請求項7の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、特許請求項の範囲を減縮するものではない。
そして。訂正事項5-1~訂正事項5-5からなる訂正事項5は、単に、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項5は、訂正前の請求項7の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、請求項5-1~訂正事項5-5を総合すると、訂正前の請求項7が含んでいたすべての請求項の引用関係を余すことなく網羅しつつ、訂正前の請求項7の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件
訂正前の請求項7については特許異議の申立ての対象となっていないが、訂正事項5は、上記アのとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は2号を目的とするものではないから、訂正後の請求項7、14~17については、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項8は訂正前の請求項1~5のいずれか一項を引用するものである。そして、訂正前の請求項1~5の他の請求項の引用関係を踏まえれば、訂正前の請求項8は次を含んでいるといえる。
(ア) 訂正前の請求項1を引用する請求項8
(イ) 訂正前の請求項2が請求項1を引用し、その請求項2を引用する請求項8
(ウ) 訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用し、請求項3がその請求項2を引用し、その請求項3を引用する請求項8
(エ) 訂正前の請求項4が請求項1を引用し、その請求項4を引用する請求項8
(オ) 訂正前の請求項5が請求項1を引用し、その請求項5を引用する請求項8
そして、訂正事項6-1~訂正事項6-5からなる訂正事項6は、訂正事項4と同様に、上記(ア)~(オ)に係る請求項8を、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載された訂正後の請求項8、18~21とするものである。
よって、訂正事項6-1~訂正事項6-5を総合的すると、訂正事項6は、訂正事項4と同様に、訂正前の請求項8が含んでいたすべての請求項の引用関係を余すことなく網羅しつつ、訂正前の請求項8の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、特許請求項の範囲を減縮するものではない。
そして。訂正事項6-1~訂正事項6-5からなる訂正事項6は、単に、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項6は、訂正前の請求項8の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、請求項6-1~訂正事項6-5を総合すると、訂正前の請求項8が含んでいたすべての請求項の引用関係を余すことなく網羅しつつ、訂正前の請求項8の記載を他の請求項の記載を引用しない独立形式の記載にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項9に係る発明において、「第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」と特定されていたものを、「第1検出情報に含まれる進行方向、位置及び移動速度に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」へと訂正するものであり、訂正事項1と同様に、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、訂正事項1と同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(8)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8、10~21〕、9について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~21に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明21」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置及び移動速度に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備する乗客コンベア。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段
を含む請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項3】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と、
前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段と
を含み、
前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させる
乗客コンベア。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項5】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含む乗客コンベア。
【請求項6】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の進行方向を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記乗客コンベアに乗り込むことができないことを通知する音声を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項7】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置と、
前記複数の踏段の両側面と対向する一対のスカートガードと、
前記スカートガードの上部に立設された欄干と、
前記欄干の周囲に装着され、前記複数の踏段の移動と同期して周回するハンドレールと、
前記スカートガードに設けられた前記ハンドレールの入り込み口であるインレットと
を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の位置を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる位置と前記インレットの位置との差分が閾値未満である場合に、警報を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項8】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記複数の踏段から降りた後に前記降り口から遠ざかる第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物が移動する速度を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項9】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアの制御方法であって、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力することと、
前記第1人物毎に出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置及び移動速度に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定することと、
前記出力された第1検出情報及び前記判定結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御することと
を具備する乗客コンベアの制御方法。
【請求項10】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段を含み、
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の進行方向を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記乗客コンベアに乗り込むことができないことを通知する音声を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項11】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と
前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段と
を含み、
前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させ、
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の進行方向を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記乗客コンベアに乗り込むことができないことを通知する音声を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項12】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含み
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の進行方向を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記乗客コンベアに乗り込むことができないことを通知する音声を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項13】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含み
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の進行方向を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記乗客コンベアに乗り込むことができないことを通知する音声を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項14】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段を含み、
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置と、
前記複数の踏段の両側面と対向する一対のスカートガードと、
前記スカートガードの上部に立設された欄干と、
前記欄干の周囲に装着され、前記複数の踏段の移動と同期して周回するハンドレールと、
前記スカートガードに設けられた前記ハンドレールの入り込み口であるインレットと
を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の位置を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる位置と前記インレットの位置との差分が閾値未満である場合に、警報を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項15】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と
前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段と
を含み、
前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させ、
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置と、
前記複数の踏段の両側面と対向する一対のスカートガードと、
前記スカートガードの上部に立設された欄干と、
前記欄干の周囲に装着され、前記複数の踏段の移動と同期して周回するハンドレールと、
前記スカートガードに設けられた前記ハンドレールの入り込み口であるインレットと
を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の位置を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる位置と前記インレットの位置との差分が閾値未満である場合に、警報を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項16】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含み
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置と、
前記複数の踏段の両側面と対向する一対のスカートガードと、
前記スカートガードの上部に立設された欄干と、
前記欄干の周囲に装着され、前記複数の踏段の移動と同期して周回するハンドレールと、
前記スカートガードに設けられた前記ハンドレールの入り込み口であるインレットと
を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の位置を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる位置と前記インレットの位置との差分が閾値未満である場合に、警報を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項17】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含み
前記降り口に接近する第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置と、
前記複数の踏段の両側面と対向する一対のスカートガードと、
前記スカートガードの上部に立設された欄干と、
前記欄干の周囲に装着され、前記複数の踏段の移動と同期して周回するハンドレールと、
前記スカートガードに設けられた前記ハンドレールの入り込み口であるインレットと
を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物の位置を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる位置と前記インレットの位置との差分が閾値未満である場合に、警報を出力する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項18】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段を含み、
前記複数の踏段から降りた後に前記降り口から遠ざかる第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物が移動する速度を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項19】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記第1人物が乗客であると判定された場合、前記乗客コンベアの運転を開始する制御手段と
前記第1検出情報に含まれる速度及び位置に基づいて、前記第1人物が前記乗客コンベアに乗り込むまでの時間を計算する計算手段と
を含み、
前記制御手段は、前記計算された時間に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を定格速度まで加速させ、
前記複数の踏段から降りた後に前記降り口から遠ざかる第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物が移動する速度を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項20】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含み
前記複数の踏段から降りた後に前記降り口から遠ざかる第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物が移動する速度を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む
乗客コンベア。
【請求項21】
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含み
前記複数の踏段から降りた後に前記降り口から遠ざかる第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、
前記第2検出情報は、前記第2人物が移動する速度を含み、
前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む
乗客コンベア。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4及び9に係る特許に対して、当審合議体が令和7年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
・理由(拡大先願)
本件特許の請求項1、2、4及び9に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開された下記の特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、その発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
記
・先願:特願2022-67940号(特開2023-157791号公報;甲第8号証)
・追加文献1:特開2013-202772号公報
・追加文献2:国際公開2012/144027号
(甲第8号証は、申立人が提出した証拠であり、以下、「甲8」という。追加文献1及び2は、当審合議体が職権で引用した証拠である。)
第5 取消理由に対する当審の判断
1 先願、追加文献について
(1)先願明細書等について
ア 先願明細書等の記載事項
先願明細書等(甲8を参照。)には図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審が付したもの。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り口にセンサーを配置し、センサーの検知結果に基づいて自動発停運転を行なう乗客コンベアの制御方法に関するものである。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乗客コンベアの自動発停止運転方法は、
踏み段とハンドレールを循環駆動させるモーターと、
乗り口に設置され、前記乗り口を含む検知エリアにおける人の位置を検知するセンサーと、を具え、
前記モーターを定格速度で運転する定格運転モードと、前記モーターを停止又は低速運転する省エネ運転モードとを切り替えて運転する乗客コンベアの自動発停止運転方法であって、
前記センサーにより、前記検知エリアの所定高さを平面スキャンし、前記乗り口に存する個々の人を検知する検知ステップと、
前記検知エリアで検知された人の内、乗客コンベアに向かう人が検知されると、前記乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する運転モード制御ステップ、
を含む。」
「【0012】
本発明の乗客コンベアの自動発停止運転方法によれば、検知エリアに侵入する人のうち、乗車意思有利用者、すなわち、乗客コンベアに向かって移動する利用者を検知して、定格運転モードへの移行又は継続を行なうことで、運転モードの切り替えから、検知エリアに侵入した乗車意思無通行者を排除できる。これにより、乗車意思無通行者によって、定格運転モードに移行又は継続することを防止でき、省エネを達成できる。」
「【0017】
本発明の一実施形態に係るエスカレーター10は、図1に示すように、昇降口となる下階側階床20と上階側階床21の間で踏み段11をハンドレール12と共に循環させて構成される。
【0018】
エスカレーター10の骨組みを形成するトラス13には、上下にスプロケット14,15を具え、これらスプロケット14,15間に踏み段11を多数連結して循環させるステップチェーン16が掛けられている。一方のスプロケット14は、モーター17に減速機18を介して動力伝達可能に連繋されている。また、トラス13には、図示しないレールが上下の階床間に配設されており、踏み段11は、ステップチェーン16に牽引されて図示しないレール上を走行する。
【0019】
本実施形態では、エスカレーター10は上り運転するものとし、乗り口20aを下階側階床20、降り口21aを上階側階床21として説明するが、下り運転であってもよく、この場合、下階側階床20が降り口になる。
【0020】
図1乃至図3に示すように、本発明の一実施形態に係るエスカレーター10は、乗り口20aの近傍にセンサー40を配備している。センサー40として、ToF(Time of Flight)センサーの如きエリア型センサーを例示できる。ToFセンサーは、レーザー光の投光部と受光部を回転させながら、投光部から発せられたレーザー光が物体(人50)に反射して受光部に戻ってくるまでの時間を計測し、回転角度毎に人50までの距離データを出力するセンサーである。なお、センサー40は、ToFセンサーに限定されるものではない。」
「【0024】
エスカレーター10は、制御装置31によって制御される。図4は、本発明に係る制御に関連する要部構成を示すエスカレーター10の制御システム30のブロック図である。制御システム30は、制御装置31を具え、センサー40R,40Lから受信するデータに基づいて、エスカレーター10の運転モードを定格運転モードと省エネ運転モードで切り替え、モーター17を駆動させる。
【0025】
ここで、省エネ運転モードとは、センサー40R,40Lが、最後の利用者を検知してから所定条件を満たしたときに、モーター17を停止又は低速運転することで、消費電力を低減する運転モードである。所定条件として、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)が経過することを例示できる。
【0026】
定格運転モードは、センサー40R,40Lが利用者(本発明では乗車意思のある利用者50A)を検知したときに、定格速度でモーター17を駆動する運転モードである。
【0027】
本発明では、制御装置31は、検知エリアαに侵入する人50のうち、エスカレーター10に乗車する意思のある利用者(乗車意思有利用者)50Aを識別する。乗車意思有利用者50Aとは、検知エリアα内で、エスカレーター10に向かう利用者である。そして、乗車意思有利用者50Aが存在する場合に、エスカレーター10の運転モードを定格運転モードに移行、或いは、定格運転モードに滞在している場合では定格運転モードを継続する。
【0028】
一方、検知エリアαに人50が存在していても、乗車意思有利用者50Aでない、すなわち、検知エリアαを通過するに過ぎない利用者は、乗車意思のない通行者(乗車意思無通行者)50Bとして識別する。そして、乗車意思無通行者50Bを運転モードの制御から排除することで、無駄に運転モードが変更されることを防止する。
【0029】
上記制御を行なうために、制御装置31は、センサー40R,40Lから検知結果を受信し、検知エリアαに存在する人50が、図3に示すように、乗車意思有利用者50Aであるか、乗車意思無通行者50Bであるかを判定する判定手段32を具える。また、図4に示すように、制御装置31には、判定手段32で判定された利用者情報に基づいて、エスカレーター10の運転モードを切り替えて、モーター17の速度指令を発する運転モード切替手段33と、当該速度指令に基づいてモーター17をインバーター制御するインバーター制御手段34を具える構成とすることができる。なお、モーター17の速度制御は、インバーター制御に限るものではない。
【0030】
判定手段32は、図4に示すように、データ取得部32a、特定部32b、重心移動算出部32c、判定部32dを具える。
【0031】
データ取得部32aは、センサー40R,40Lから距離データを取得する。
【0032】
特定部32bは、データ取得部32aから距離データを得て、検知エリアα内で塊となって検出される距離データを一人の人50とみなし、個々の人50の重心位置(座標)を算出する。図3は、検知エリアαで検知された人50とその重心位置51を示す。図を参照すると、検知エリアαには、3人の人50が検知されていることがわかる。
【0033】
重心移動算出部32cは、個々の人50の重心位置の移動方向を算出する。具体的には、算出された人50の重心位置と、所定時間t後の重心位置の差分から、移動方向を算出できる。なお、重心移動算出部32cは、重心位置の移動速度を算出し、移動速度から移動方向を抽出してもよい。図3は、検知エリアαで検知された人50の重心位置の移動方向と移動速度をベクトル(矢印v1、v2,v3)で示している。なお、測定誤差等の影響を抑えるために、重心位置の移動方向や移動速度は、たとえば、移動平均とすることで算出データの微小変化を平滑化することができる。
【0034】
判定部32dは、算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、エスカレーター10に向かう方向の人の有無を判定し、エスカレーター10に向かう人を乗車意思有利用者50A、それ以外を乗車意思無通行者50Bと判定する。たとえば、エスカレーター10に向かうとは、図3の検知エリアαの座標系におけるゼロ点に向かうと見なすことができる。図3を参照すると、検知エリアαで観測された3人利用者50のうち、符号50Aで示す人は移動方向がエスカレーター10に向かう乗車意思有利用者、符号50Bの2人は、エスカレーター10以外の方向に移動する乗車意思無通行者(単なる通過者)である。判定部32dは、乗車意思有利用者の有無を運転モード切替手段33に送信する。
【0035】
運転モード切替手段33は、判定部32dから乗車意思有利用者50Aがありとの情報を受信すると、モーター17を定格速度で駆動させるべく、モーター17への回転速度の指令値を生成する。そして、運転モード切替手段33により生成された速度指令に基づいて、省エネ運転モードから、インバーター制御手段34がモーター17を加速し、定格運転の回転速度となるように制御する。すでに定格運転モードに滞在している場合には、定格速度を維持する。これにより、乗車意思有利用者50Aが乗り口20aに到着したときに、定格速度で走行している踏み段11に乗車できる。なお、運転モード切替手段33は、判定部32dから乗車意思有利用者ありの情報を受信してから所定条件(たとえば、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)が経過)を満たしたときに、省エネ運転モードに移行するよう制御すればよい。」
「【0039】
なお、上記説明では、人の移動方向のみに基づいて、運転モードの切替えを行なっているが、さらに、省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際のモーター17の加速度を、乗車意思有利用者50Aの移動速度(歩行速度)に応じて変更するようにしてもい。乗車意思有利用者50Aの歩行速度が所定値以上の場合、モーター17の加速度を大きくして、歩行速度が速い乗車意思有利用者50Aが十分加速した状態の踏み段11に乗車できるようにすればよい。
【0040】
また、変形例として、歩行速度が遅い乗車意思有利用者50Aの場合、モーター17の回転速度を遅くして、歩行速度が遅い乗車意思有利用者50Aが無理なく踏み段11に乗車できるようにしてもよい。」
イ 先願明細書等に記載された発明
上記アから、次のことがいえる。
(ア)段落【0017】、【0018】及び図1から、エスカレーター10は、無端状に多数連結した踏み段11からなるステップチェーン16を乗り口20aと降り口21aとの間で循環させるよう構成されるものといえる。
(イ)検知エリアαは乗り口20aを含む(段落【0008】、図3)。投光部からレーザー光を発し、乗り口20aを含む検知エリアαに侵入する人50から反射して戻ってくるレーザー光を受光部で受光するセンサー40を用いて、当該人50までの距離データを出力している(段落【0020】)。また、センサー40が発するレーザー光は、“検知エリアαに侵入する個々の人50に対して”発されているといえる。
段落【0031】~【0033】及び図4から、特定部32b及び重心移動算出部32cが、人50の距離データを得て個々の人50の重心位置を算出し、当該重心位置から重心位置の移動方向と重心位置の移動速度を算出するといえる。
(ウ)段落【0027】、【0028】、【0033】及び【0034】から、判定部32dは、個々の人50の重心位置の移動方向に基づいて、検出エリアα内に侵入する前記個々の人50について、乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50Bかを識別し、乗車意思有利用者50Aの有無の情報を送信するといえる。
(エ)エスカレーター10は、制御装置31を具備する(段落【0029】)。制御装置31は、運転モード切替手段33が判定部32dからの乗車意思有利用者50Aありとの情報を受信した場合に、省エネ運転モードから、定格運転モードに切替える制御を実施するものである(段落【0029】、【0035】)。ここで、省エネ運転モードは、モーター17の停止又は低速運転により消費電力を低減するモードであり(段落【0025】)、定格運転モードとは、定格速度でモーター17を駆動するモードである(段落【0026】)。
また、段落【0039】及び【0040】の記載を踏まえれば、上記の運転モードの切替えに係る制御を実施するとともに、乗車意思有利用者50Aの移動速度に応じて省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際のモーター17の加速度を変更する制御を実施する制御装置31が記載されているといえる。
以上を総合すると、先願明細書等には、エスカレーターに係る以下の発明(以下「先願発明1」という。)と、エスカレーターの制御方法に係る以下の発明(以下「先願発明2」という。)とが記載されていると認められる。
[先願発明1]
無端状に多数連結した踏み段11からなるステップチェーン16を乗り口20aと降り口21aとの間で循環させるよう構成されたエスカレーター10において、
前記乗り口20aを含む検知エリアα内に侵入する個々の人50に対してレーザー光を発し、当該人50から反射して戻ってくるレーザー光を受光するセンサー40を用いて当該人50までの距離データを出力し、当該距離データを得て当該個々の人50の重心位置を算出し、当該重心位置から重心位置の移動方向と重心位置の移動速度を算出する特定部32b及び重心移動算出部32cと、
前記算出された個々の人50の重心位置の移動方向に基づいて、前記検出エリアα内に侵入する前記個々の人50について、乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50Bかを識別し、乗車意思有利用者50Aの有無の情報を送信する判定部32dを有し、
運転モード切替手段33が前記判定部32dからの乗車意思有利用者50Aありとの情報を受信した場合に、モーター17の停止又は低速運転により消費電力を低減する省エネ運転モードから、前記モーター17を定格速度で駆動する定格運転モードに切替える制御を実施するとともに、乗車意思有利用者50Aの移動速度に応じて、省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際の前記モーター17の加速度を変更する制御を実施する制御装置31と
を具備するエスカレーター10。
[先願発明2]
無端状に多数連結した踏み段11からなるステップチェーン16を乗り口20aと降り口21aとの間で循環させるよう構成されたエスカレーター10の制御方法であって、
前記乗り口20aを含む検知エリアα内に侵入する個々の人50に対してレーザー光を発し、当該人50から反射して戻ってくるレーザー光を受光するセンサー40を用いて当該人50までの距離データを出力し、特定部32b及び重心移動算出部32cが、当該距離データを得て当該個々の人50の重心位置を算出し、当該重心位置から重心位置の移動方向と重心位置の移動速度を算出し、
前記算出された個々の人50の重心位置の移動方向に基づいて、判定部32dが、前記検出エリアα内に侵入する前記個々の人50について、乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50Bかを識別し、乗車意思有利用者50Aの有無の情報を送信し、
運転モード切替手段33が前記判定部32dからの乗車意思有利用者50Aありとの情報を受信した場合に、制御装置31が、モーター17の停止又は低速運転により消費電力を低減する省エネ運転モードから、前記モーター17を定格速度で駆動する定格運転モードに切替える制御を実施するとともに、乗車意思有利用者50Aの移動速度に応じて、省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際の前記モーター17の加速度を変更する制御を実施する
エスカレーター10の制御方法。
(2)追加文献1について
追加文献1には、図面とともに次の記載がある(なお、下線は当審において付したもの。)
「【0024】
また、走行車20には、探査装置としてのレーザーレーダ27が搭載されている。レーザーレーダ27は、レーザー光(探査信号)をパルス状に出射するレーザーと、出射されたレーザー光の反射光を受光する受光器とから構成されている。このレーザーレーダ27は、レーザー光を図1に示すように所定の仰角γで斜め上向きに出射するように配設されている。なお、レーザー光を図1においてLで示した。」
「【0034】
走行車20の1周期走行において、制御装置12は、レーザーレーダ27の受光信号から物体の存在を検出すると、そのときの走行車20の位置と、レーザーレーダ27から物体までの距離とから、当該検出物体の位置をロボット座標のXY座標上の位置として計算する。そして、制御装置12は、走行車20の1周期走行において検出された全ての物体の位置データを含む物体検出結果を1周期位置データとしてRAM15に記憶させる(位置データ取得手段)。なお、走行車20の位置とレーザーレーダ27からの物体の距離とを記憶し、必要なときにXY座標上の位置として計算するようにしても良い。」
「【0050】
移動体の動作方向と速度は、今回の1周期位置データと前回の1周期位置データを比較して取得する。つまり、移動体の動作方向は、移動体の前回の位置と今回の位置とを結ぶ直線を求め、この直線上を前回の位置から今回の位置に向かう方向に動作するとする。また、移動体の速度は、前回の位置から今回の位置までの距離を求め、この距離を、前回の1周期位置データによって移動体が検出されてから今回の1周期位置データによって移動体が検出されたときまでの時間で除すことによって求めることができる。」
「【0071】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
探査装置はレーザーレーダ27に限られず、電波(探査信号)を発信しその反射波を測定することにより物体までの距離や方向を測定するレーダであっても良い。
ロボットアームは6軸型のものに限られず、また、水平多関節型のものに限られない。
移動体の駆動源はリニアモータであっても良い。
走行車20はベース2の周りを往復移動するものに限られず、一方向に移動するものであっても良い。
ロボットアーム3の動作範囲によっては、走行車20の移動範囲はベース2の周り360度未満であっても良い。
ステップA5で基本データと置き換える位置データは、今回の1周期位置データに限られず、前回の1周期位置データとしても良い。」
(3)追加文献2について
追加文献2には、図面とともに次の記載がある(なお、下線は当審において付したもの。)
「【0018】 [他車両検知]
他車両検知装置10は、例えば自車両の後部バンパー内部に取り付けられたミリ波レーダー装置である。他車両検知装置10は、樹脂等で形成されたバンパーを透過させて電磁波を車両後方に放射し、反射波を検出して車両後方の障害物の位置、進行方向、速度を検出する。図2及び図3は、ミリ波レーダー装置である他車両検知装置10の検知可能範囲Rdを例示した図である。図示するように、他車両検知装置10は、ミリ波レーダー装置10*を一個備えるものであってもよいし、複数個のミリ波レーダー装置10*、10**…を備えるものであってもよい。なお、これらの図で自車両の前進方向をFwと表記した。」
「【0020】 ミリ波レーダー装置は、まず、三角波を変調した変調信号を生成し、三角波の勾配に応じて周波数が増減するように変調された送信信号を出力し、受信信号に対して送信信号の一部をミキシングしたビート信号を生成する。そして、ミリ波レーダー装置は、変調サイクルのアップ区間とダウン区間のそれぞれのビート信号にFFT(Fast Fourier transform)処理等を施して周波数スペクトラムデータを生成し、周波数スペクトラムデータから受信波強度がピークを形成するピーク周波数を探索する。ミリ波レーダー装置は、発見されたアップ区間のピーク周波数をfb1、ダウン区間のピーク周波数をfb2とすると、次式(1)~(4)により、障害物との距離R、及び相対速度Vを得る。式中、fmは、送信用信号の元となる三角波の繰り返し周波数であり、ΔFは周波数偏移幅であり、f0は変調波の中心周波数である。」
「【0023】 こうして距離R、相対速度V、及び方位θが算出されると、ミリ波レーダー装置は、自車両の所定位置を基準とした障害物の位置、自車両の中心軸(すなわち進行方向)を基準とした障害物の移動方向、障害物の移動速度等を算出することができる。移動方向に関しては、微小期間における相対位置の差分を求めてもよいし、相対速度V、方位角θ、及び自車両の速度をパラメータとしてベクトル演算を行ってもよい。」
「【0025】 なお、他車両の位置等の情報を取得する手段としては、上記ミリ波レーダーの他、レーザーレーダー装置やステレオカメラ装置等が採用され得る。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と先願発明1とを対比する。
ア 先願発明1の「無端状に多数連結した踏み段11からなるステップチェーン16」は、本件発明1の「無端状に連結された複数の踏段」に相当する。先願発明1の「乗り口20a」及び「降り口21a」は、本件発明1の「乗り口」及び「降り口」に相当し、先願発明1の「循環させるよう構成された」という構成が、本件発明1の「循環移動するように構成された」という構成に相当する。先願発明1の「エスカレーター10」は、本件発明1の「乗客コンベア」に相当する。
イ 先願発明1の「前記乗り口20aを含む検知エリアα内に侵入する」、「個々の人50に対して」及び「当該人50から」は、本件発明1の「前記乗り口に接近する」、「第1人物毎に、当該第1人物に」及び「当該第1人物からの」に相当する。先願発明1の「レーザー光を発し」、「反射して戻ってくるレーザー光を受光する」ことは、本件発明1の「電波を照射し」、「反射波を受信する」こととの対比において、「電磁波を照射し」、「反射して戻ってくる電磁波を受信する」という限りにおいて一致する。
先願発明1の「当該個々の人50」の「重心位置の移動方向」、「重心位置」及び「重心位置の移動速度」はそれぞれ、本件発明1の「当該第1人物」の「進行方向」、「位置」及び「移動速度」に相当し、先願発明1の「当該個々の人50」の「重心位置の移動方向」、「重心位置」及び「重心位置の移動速度」の3つが、本件発明1の「第1検出情報」に相当する。先願発明1の「重心位置の移動方向」、「重心位置」及び「重心位置の移動速度」を「算出する」ことは、本件発明1の「第1検出情報」を「出力する」ことに相当する。
そして、先願発明1の「人50に向かうレーザー光を発し、当該人50に反射して戻ってくるレーザー光を受光するセンサー40」は、“レーダ”である。また、先願発明1の「センサー40」と「特定部32b及び重心移動算出部32c」との双方が機能することで、「前記乗り口20aを含む検知エリアα内に侵入する個々の人50に対してレーザー光を発し、当該人50から反射して戻ってくるレーザー光を受光する」ことによって、「当該個々の人50の重心位置、重心位置の移動方向、重心位置の移動速度を算出」している。そうすると、先願発明1の「センサー40」と「特定部32b及び重心移動算出部32c」とが、本件発明1の「第1レーダ装置」に相当するといえる。
ウ 先願発明1において、「重心位置の移動方向」は「重心位置から」「算出」するものであるから、先願発明1の「前記算出された個々の人50の重心位置の移動方向に基づいて」という事項は、本件発明1の「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向」「に基いて」という事項に相当すると同時に、「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる」「位置」「に基づいて」という事項に相当する。
先願発明1の「前記検出エリアα内に侵入する前記個々の人50」は、本件発明1の「前記第1人物の各々」に相当し、先願発明1の「乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50かを識別」することは、本件発明1の「前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」ことに相当する。
先願発明1の「判定部32d」は、本件発明1の「判定手段」に相当する。
エ 先願発明1の「乗車意思有利用者50Aの移動速度」は、本件発明1の「前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報」のうちの1つに相当するから、先願発明1の「乗車意思有利用者50Aの移動速度に応じて省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際の前記モーター17の加速度を変更する制御を実施する」ことは、本件発明1の「前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報」「に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する」ことに相当する。
また、先願発明1の「乗車意思有利用者50Aありとの情報」は、「判定手段32d」が行った「乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50かを識別し」た結果が反映された情報であるから、本件発明1の「前記判定手段の結果」に相当する。そうすると、先願発明1の「運転モード切替手段33が前記判定部32dからの乗車意思有利用者50Aありとの情報を受信した場合に、モーター17の停止又は低速運転により消費電力を低減する省エネ運転モードから、前記モーター17を定格速度で駆動する定格運転モードに切替える制御を実施する」ことは、本件発明1の「前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する」ことに相当する。
先願発明1の「制御装置31」は本件発明1の「制御装置」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と先願発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点1で相違する。
[一致点]
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電磁波を照射し、当該第1人物から反射して戻ってくる電磁波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置と、
前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、
前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報及び前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備する乗客コンベア。
[相違点1]
「電磁波を照射し」、「反射して戻ってくる電磁波を受信する」ことに関し、本件発明1は「電波を照射」し、その「反射波を受信する」のに対し、先願発明1は「レーザー光を発し」、「反射して戻ってくるレーザー光を受光する」点。
[相違点2]
本件発明1は、第1人物毎に出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置に加え「移動速度」に基づいて、第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定するのに対し、先願発明1は、検出エリアα内に侵入する個々の人50について、その人50が乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50Bかを識別する際に、重心の移動速度を用いるとの特定がない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
まず、上記相違点2は実質的なものであるから、本件発明1は先願発明1と同一でない。
次に、本件発明1が先願発明1と実質同一であるか否かについて検討する。
先願発明1では、エスカレーター10の検知エリアα内の人50の重心の移動速度を算出し、その移動速度を「省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際の前記モーター17の加速度を変更する制御」に用いてはいるものの、検出エリアα内に侵入する個々の人50について、その人50が乗車意思有利用者50Aか、それ以外の乗車意思無通行者50かを識別する際に、重心の移動速度を用いると特定されてはいない。
そして、エスカレーターの乗り口を含むエリアにいる人について、当該人がエスカレーターへの乗車意思を有するか否かを、当該人の移動速度に基づいて識別することが、周知技術であるといえる証拠は示されておらず、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項が、先願発明1において周知技術を付加、転換等したものということはできない。さらに、本件発明1においては、第1検出情報に含まれる「移動速度」をも用いて判定することにより、「対象人物の進行方向が踏段11に向かっている場合であっても、例えば対象人物の速度が極端に低い(つまり、エスカレータ10に乗り込む意思がないと推定される程度に低速である)場合には当該対象人物は乗客でないと判定」(【0043】)できるという新たな効果を奏する。
したがって、上記相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
よって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は先願発明1と同一でもないし、実質同一でもない。
3 本件発明2、4について
本件発明2、4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
よって、上記2と同様に、本件発明2、4は先願発明1と同一でもないし、実質同一でもない。
4 本件発明9について
本件発明9は、乗客コンベアという物に係る発明である本件発明1を乗客コンベアの制御方法に係る発明へとカテゴリーを変更したものであり、本件発明1とほぼ同様の発明特定事項を有している。そして、先願発明2も、先願発明1をカテゴリー変更したものであり、先願発明1とほぼ同様の発明特定事項を有している。
したがって、本件発明9と先願発明2とを対比すると、先願発明2の発明特定事項と本件発明9の発明特定事項との間には、上記2(1)ア~エと同様の相当関係がいえ、先願発明2の「エスカレーター10の制御方法」は、本件発明9の「乗客コンベアの制御方法」に相当する。
そして、本件発明9と先願発明2とは、上記相違点1、2で相違し、その余の点で一致する。
上記相違点2については、上記2(2)で論じたとおりである。
よって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明9は先願発明2と同一でもないし、実質同一でもない。
5 取消理由に対する当審合議体の判断のまとめ
以上のとおり、当審合議体が通知した取消理由により、本件特許の請求項1、2、4及び9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
当審合議体が令和7年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載された申立理由は、概要、以下のとおりであり、証拠方法として甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」~「甲7」という。)が特許異議申立書に添付されている。
(申立理由)甲1に記載された発明を主引例とした進歩性欠如
本件訂正前の請求項1、2、4、5、8、9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、及び甲2~7に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
証拠方法:
甲1:特許第7224516号公報
甲2:特開2014-129156号公報
甲3:特開2021-181361号公報
甲4:特開2022-108604号公報
甲5:特開2012-14302号公報
甲6:特開2009-107761号公報
甲7:特開2022-182725号公報
2 甲各号証について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアでは、乗り口において、第1時間の間、継続的に乗客が検出されると、その後、第2時間の間、踏段の循環速度が通常の循環速度よりも低くされる。従って、乗客が乗客コンベアに乗り込むことを躊躇していると、踏段の循環速度が低くされる(例えば、特許文献1)。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗客コンベアでは、乗客コンベアの混雑時において、乗り口の乗客が、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との距離を空けるために乗り口に待機している場合にも、踏段の循環速度が低くされることがあるという問題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために為されたものであり、乗り口における乗客の状態に応じて、搬送体の移動速度をより適切に制御することができる乗客コンベアの制御装置を得ることを目的とする。」
「【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベアの制御装置を乗客コンベアの要部とともに示す構成図である。乗客コンベアは、主枠1、搬送体2、及び一対の欄干3を有している。主枠1は、上下階の建築梁間に架設されている。
【0010】
搬送体2は、主枠1に支持されている。また、搬送体2は、循環移動することにより乗客を搬送する。また、搬送体2は、複数の踏段2aが無端状に連結されて構成されている。図1では、3つの踏段2aのみが示されている。図1において、矢印により示したように、乗客は下階から上階に搬送されるようになっている。このように、本実施の形態では、乗客コンベアは、上り方向に運転されるようになっている。」
「【0012】
主枠1の左右端部の上面は、乗客コンベアの乗降口となっている。2つの乗降口のうち、主枠1の下階部分における乗降口は乗り口5である。また、2つの乗降口のうち、主枠1の上階部分における乗降口は降り口6である。」
「【0016】
乗客センサ8は、透過式光電センサである。乗客センサ8は、投光器8aと受光器8bとを有している。投光器8aは、一方のスカートガード4に設けられており、受光器8bは、他方のスカートガード4に設けられている。
【0017】
投光器8a及び受光器8bは、図2に示すX軸と平行な方向において、搬送体2と乗り口5との境界位置から、200mm~300mm離れた位置に設けられている。また、投光器8a及び受光器8bは、高さ方向、即ち、Z軸と平行な方向において、床板9の表面から150mm~200mm上方に設けられている。また、投光器8a及び受光器8bは、受光器8bが投光器8aからの光を受光できるように、互いに対向している。なお、乗客センサ8が設けられる位置についての数値は、あくまで例示であり、これらの数値に限定されない。
【0018】
このように乗客センサ8が配置されることにより、乗客センサ8は、乗り口5の乗客を検出する。投光器8aから照射される光線の光軸10は、Y軸と平行である。図2に示したように、乗り口5に乗客がいない場合、受光器8bは、投光器8aからの光を受光することができる。この場合、乗客は検出されないので、乗客センサ8の状態は、「非検出状態」となる。
【0019】
一方、図3に示したように、乗り口5に乗客11がいる場合、投光器8aからの光は乗客11によって遮られる。そのため、受光器8bは、投光器8aからの光を受光できなくなる。この場合、乗客11が検出されるので、乗客センサ8の状態は、「検出状態」となる。」
「【0022】
図4に示したように、第1の例では、時刻t1~時刻t2の間の時間は、乗客センサ8による最初の検出時間Tdtである。検出時間Tdtは、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間である。最初の検出時間Tdtは、第2基準時間Ts2未満である。
【0023】
最初の検出時間Tdtの後の時刻t2~時刻t5の間の時間は、非検出時間Tndである。非検出時間Tndは、乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である。非検出時間Tndは、第1基準時間Ts1以上である。」
「【0029】
図5に示したように、第2の例では、最初の検出時間Tdtは、第2基準時間Ts2未満である。最初の検出時間Tdtの後の非検出時間Tndは、第1基準時間Ts1以上である。また、2番目の検出時間Tdtは第2基準時間Ts2以上である。
【0030】
制御装置本体7は、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となると、第2基準時間Ts2が経過した時刻t7において、移動速度を通常速度V1から低下させる。時刻t7から減速時間Tdecが経過した時刻t8において、移動速度は、補助速度V2に到達する。制御装置本体7は、時刻t8以降、移動速度を補助速度V2に維持させる。
【0031】
補助速度V2は、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを補助するための速度である。補助速度V2は、通常速度V1よりも低い速度に設定されている。例えば、補助速度V2は、20m/分に設定されている。時刻t8以降、制御装置本体7は、移動速度を補助速度V2に維持させる。
【0032】
このように、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上確保されており、且つ乗客11が第2基準時間Ts2以上乗り口5に留まっていると考えられる場合、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していることが想定される。そのため、制御装置本体7は、移動速度を通常速度V1から補助速度V2へ低下させる。」
「図1
[図:0001434118000001.jpg]
」
「図2
[図:0001434118000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アから、次のことがいえる。
(ア)乗客コンベアは、複数の踏段2aが無端状に連結されて構成され、乗り口5と降り口6との間を循環移動する搬送体2を有する(段落【0009】、【0010】、【0012】及び図1)。
(イ)乗り口5の乗客11を検出する乗客センサ8は、投光器8a及び受光器8bからなり、この投光器8aと受光器8bは、受光器8bが投光器8aからの光を受光できるように互いに対向して、搬送体2と乗り口5との境界位置から200mm~300mm離れた位置に設けられている(段落【0016】、【0017】、図2)。
乗客センサ8は、乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客を検出しない非検出状態となる(段落【0018】、【0019】)。
(ウ)制御装置本体7は、乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定し、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるとき、搬送体2の移動速度を通常速度V1から低下させるものである(段落【0022】、【0023】、【0030】、【0032】)。
以上を総合すると、甲1には、乗客コンベアに係る以下の発明(以下「甲1発明1」という。)と、乗客コンベアの制御方法に係る以下の発明(以下「甲1発明2」という。)とが記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「 複数の踏段2aが無端状に連結されて構成され、乗り口5と降り口6との間を循環移動する搬送体2を有する乗客コンベアにおいて、
前記乗り口5の乗客11を検出する、投光器8a及び受光器8bからなる乗客センサ8であって、前記投光器8aと前記受光器8bが互いに対向して、前記搬送体2と乗り口5との境界位置から200mm~300mm離れた位置に設けられており、前記乗り口5に乗客11がいる場合に、前記投光器8aから照射された光が前記乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、前記乗り口5に乗客11がいない場合に、前記投光器8aから照射された光を前記受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となる、乗客センサ8と、
前記乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、前記乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって、前記乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定し、前記乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるとき、前記搬送体2の移動速度を通常速度V1から低下させる制御装置本体7と
を具備する乗客コンベア。」
[甲1発明2]
「 複数の踏段2aが無端状に連結されて構成され、乗り口5と降り口6との間を循環移動する搬送体2を有する乗客コンベアの制御方法であって、
前記乗り口5の乗客11を検出する、投光器8a及び受光器8bからなる乗客センサ8であって、前記投光器8aと前記受光器8bが互いに対向して、前記搬送体2と乗り口5との境界位置から200mm~300mm離れた位置に設けられた乗客センサ8が、前記乗り口5に前記乗客11がいる場合に、前記投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、前記乗り口5に前記乗客11がいない場合に、前記投光器8aから照射された光を前記受光器8bが受光し、乗客を検出しない非検出状態となり、
制御装置本体7が、前記乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、前記乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって、前記乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定し、
前記乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるとき、前記搬送体2の移動速度を通常速度V1から低下させる
乗客コンベアの制御方法。」
(2)甲2について
甲2には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客がいない間は運転を停止し、エスカレータ乗場に進入する乗客を検出したときに起動する自動運転式のエスカレータを制御するエスカレータ制御装置において、
前記エスカレータに設置されたステレオカメラ装置によって撮影された、前記エスカレータ乗場の乗客検出対象範囲の映像情報を取得する映像情報取得部と、
前記エスカレータ乗場の乗客検出対象範囲を複数の部分範囲に分割し、前記複数の部分範囲ごとにエスカレータ乗客判定用の基準方向情報および基準大きさ情報を予め設定して記憶する設定情報記憶部と、
前記映像情報取得部で取得した映像情報をステレオ画像処理し、前記乗客検出対象範囲の移動体の位置情報、移動方向情報、前記映像情報内における占有範囲情報、および移動速度情報を取得する移動体情報取得部と、
前記移動体情報取得部で取得された移動体の位置情報に基づいて対応する部分範囲を特定し、当該特定した部分範囲の前記基準方向情報に該当し、且つ、当該移動体の映像情報内における占有範囲情報が当該部分範囲の基準大きさ情報に該当する場合に、当該移動体をエスカレータ乗客として検出する乗客検出部と、
前記乗客検出部においてエスカレータ乗客として検出された移動体について、前記移動体情報取得部で取得された移動速度に基づいて、エスカレータの運転を制御する運転制御部と
を備えることを特徴とするエスカレータ制御装置。」
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータ制御装置およびエスカレータ制御方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし赤外線センサ等により乗客の進入を検出する場合、検出範囲の設定によってはエスカレータの前を横切っただけで人が検出され、不要にエスカレータが起動されてしまうことがあるという不具合があった。
【0006】
また乗降口を撮影した画像を解析して乗客の進入を検出する場合、カメラ装置を天井等に設置することが一般的であり、設置工事に手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で乗場に進入するエスカレータ乗客を高い精度で検出し、効率良くエスカレータの自動運転を制御するエスカレータ制御装置およびエスカレータ制御方法を提供することを目的とする。」
「【0012】
第1カメラ装置3-1および第2カメラ装置3-2はそれぞれ、図1に示すようにエスカレータ乗場の範囲A1および範囲A2を撮影し、撮影した映像情報を乗客検出装置4に送信する。範囲A1および範囲A2はそれぞれ、撮影範囲に乗客検出対象範囲Xを含んでおり、これら2台のカメラ装置により乗客検出対象範囲Xをステレオ撮影するステレオカメラ装置が構成されている。
【0013】
乗客検出装置4は、設定情報記憶部41と、カテゴリ分類情報記憶部42と、映像情報取得部43と、移動体情報取得部44と、乗客検出部45と、カテゴリ判定部46と、集計結果記憶部47とを有する。
【0014】
設定情報記憶部41は、図1に示すような当該エスカレータ2の乗客の有無を検出するエスカレータ乗場内の乗降板手前の乗客検出対象範囲Xの位置情報、および図2に示すような乗客検出対象範囲Xを分割した複数の部分範囲x1~xnの位置情報が、予め設定され記憶されている。また、これら複数の部分範囲x1~xnごとにエスカレータ乗客判定用に予め設定された、基準方向情報および基準大きさ情報を記憶する。」
「【0017】
移動体情報取得部44は、映像情報取得部43で取得された範囲A1および範囲A2の映像情報を用いて、乗客検出対象範囲Xに関するステレオ画像処理を行い、当該乗客検出対象範囲X内の移動体の位置情報、移動方向情報、当該映像情報内における占有範囲情報、および移動速度情報を取得する。
【0018】
乗客検出部45は、移動体情報取得部44で取得された移動体の位置情報に基づいて対応する部分範囲(x1~xnのいずれか)を特定し、当該特定した部分範囲について設定情報記憶部41に記憶された基準方向情報に該当し、且つ、移動体の映像情報内における占有範囲情報が、当該部分範囲について記憶された基準大きさ情報に該当する場合に、当該移動体をエスカレータ乗客として検出する。」
「【0034】
例えば移動体が部分範囲x26内で検出された場合、ステップS3で取得された当該移動体の移動方向情報を示す角度情報が、設定情報記憶部41に部分範囲x26に関して記憶された基本方向(図3の部分範囲x26に矢印で示された左方向)を示す角度情報を含む所定範囲内にある場合には、「移動方向情報が基本方向情報に該当する」と判定される。また、ステップS3で取得された当該移動体の画像部分の長方向の長さ情報(占有範囲情報)が、設定情報記憶部41に部分範囲x26に関して基準大きさ情報として記憶された、人間の身長に該当する長さ情報の範囲内にある場合には、「占有範囲情報が基準大きさ情報に該当する」と判定される。
【0035】
判定の結果、移動体の移動方向情報が当該移動体の位置情報に対応する部分範囲の基本方向情報に該当し、且つ、移動体の映像情報内における占有範囲情報が当該部分範囲の基準大きさ情報に該当すると判定された場合(S4の「YES」)は、当該移動体がエスカレータ乗客として検出される(S5)。
【0036】
次にカテゴリ判定部46において、乗客検出部45でエスカレータ乗客として検出された移動体の移動速度に基づいて、当該エスカレータ乗客に該当するカテゴリが判定される(S6)。
【0037】
例えば、乗客として検出された移動体に関し、ステップS3において取得された移動速度が60m/minであった場合、図4に示すカテゴリ分類情報に基づいて当該移動体のカテゴリが「大人」として判定される。」
「【0039】
また、判定されたカテゴリの情報は制御装置5に出力され(S8)、運転制御部52で取得される。運転制御部52では、取得されたカテゴリに対応する運転制御情報が運転制御情報記憶部51から取得され、取得された運転制御情報に従ってエスカレータ2を起動させるように制御する。
【0040】
例えば、カテゴリ「大人」の情報が取得されたときには、図5に示す運転制御情報に基づいて起動タイミング情報「3秒」、および運転速度「30m/min」が取得され、乗客検出対象範囲X内の所定位置(例えば範囲x1~x4のいずれか)を乗客が通過したことを検知してから3秒後に運転速度30m/minに達するようにエスカレータ2の起動タイミングが制御される。」
「【0042】
以上の本実施形態によれば、カメラ装置を天井設置する等の煩雑な設備工事を行うことなく、エスカレータの左右インレットガード等に設置された2台のカメラ装置で撮影された映像情報をステレオ画像処理することにより、エスカレータ乗場を立体的に奥行き方向も考慮して監視することができ、高い精度でエスカレータ乗客を検知するとともに、検知した情報に基づいて自動運転方式のエスカレータを効率よく制御することができる。
【0043】
このとき、映像情報をステレオで画像処理するため、進入した移動体の移動方向や大きさ(画像内における占有範囲情報)も正確に把握することができ、当該移動体がエスカレータ乗客であるか否かをさらに高い精度で判定することができる。特に、移動方向を考慮することにより、乗客検出対象範囲を単に横切るのみでエスカレータを利用しない人を、エスカレータ乗客として誤検出することを避けることができる。
【0044】
また、映像情報をステレオ画像処理することにより、エスカレータ乗客の移動速度も正確に把握することができ、移動速度に基づいて分類した乗客のカテゴリごとにエスカレータの起動タイミングや運転速度を変えることでさらに高い精度で運転制御を行うことができる。
【0045】
また、映像情報をステレオ画像処理することにより、乗客検出対象範囲を、所望の形状に設定することが可能になる。例えば、固定された高い障害物や壁などがある場合、それらを避けて乗客検出対象範囲を設定するようにしてもよい。
【0045】
また、映像情報をステレオ画像処理することにより、乗客検出対象範囲に人間が完全に隠れない程度(例えば1m程度)の植木や看板等の障害物6がある場合にも、エスカレータ乗客の検出処理を行うことができる。」
「図1
[図:0001434118000003.jpg]
」
「図3
[図:0001434118000004.jpg]
」
上記記載から、甲2には、次の技術的事項が記載されているといえる。
[甲2記載の技術的事項]
乗客がいない間は運転を停止し、エスカレータ乗場に進入する乗客を検出したときに起動する自動運転式のエスカレータを制御するエスカレータ制御装置において、
前記エスカレータに設置されたステレオカメラ装置によって撮影された、前記エスカレータ乗場の乗客検出対象範囲の映像情報を取得する映像情報取得部と、
前記エスカレータ乗場の乗客検出対象範囲を複数の部分範囲に分割し、前記複数の部分範囲ごとにエスカレータ乗客判定用の基準方向情報および基準大きさ情報を予め設定して記憶する設定情報記憶部とを設け、
前記映像情報取得部で取得した映像情報をステレオ画像処理し、前記乗客検出対象範囲の移動体の位置情報、移動方向情報、前記映像情報内における占有範囲情報、および移動速度情報を取得し、
前記移動体情報取得部で取得された移動体の位置情報に基づいて対応する部分範囲を特定し、
前記移動体情報取得部で取得した移動体の移動方向情報が、当該特定した部分範囲の前記基準方向情報に該当し、且つ、前記移動体情報取得部で取得した移動体の前記映像情報内における占有範囲情報が、当該特定した部分範囲の基準大きさ情報に該当する場合に、当該移動体をエスカレータ乗客として検出し、
当該移動体をエスカレータ乗客として検出した後、
前記前記取得した移動体の移動速度情報に基づいて、当該移動体である乗客のカテゴリを判定し、
エスカレータ乗客として検出された移動体について、前記判定された乗客のカテゴリに対応する運転制御情報が従ってエスカレータを起動して、エスカレータの運転を制御すること。」
(3)甲3について
甲3には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアおよび乗客コンベアの運転方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、幅広タイプのエスカレーターにおいては、左側と右側にさまざまな乗客が乗り込む場合がある。従来の技術では、乗降口のどの位置に乗客が乗り込んだのかを区別していないため、検出された歩行速度に応じて一律に表示を行っている。このため、左右の一方側を高齢者などの乗客が利用しているときに、他方側を後方から新たな乗客が急ぎ駆け上がってきた場合などに、乗客どうしの接触が発生する可能性もある。
【0005】
本発明の目的は、左側の乗客と右側の乗客とを区別して、それぞれに適した報知により乗客どうしの接触が抑制できる乗客コンベアおよびその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段と、乗り込む乗客の歩行速度を検出するセンサと、前記センサで検出した歩行速度に基づいて前記乗客に表示または音声を出力する報知手段と、を備えた乗客コンベアにおいて、前記センサは、左側の乗客の歩行速度を検出する第1センサと、右側の乗客の歩行速度を検出する第2センサと、を有し、前記報知手段は、左側の乗客に表示または音声を出力する第1報知手段と、右側の乗客に表示または音声を出力する第2報知手段と、を有し、前記第1センサで検出した前記歩行速度に基づいて、前記第1報知手段で報知する表示内容または音声内容を変更し、前記第2センサで検出した前記歩行速度に基づいて、前記第2報知手段で報知する表示内容または音声内容を変更する。」
「【0011】
また、左右の欄干部の端部下方には、乗降口から踏段10に向けて乗り込む乗客の移動速度、位置、大きさなどを検出するセンサ40が配置されている。センサ40は、例えばミリ波レーダーなどであり、左側の乗客の歩行速度を検出する第1センサと、右側の乗客の歩行速度を検出する第2センサと、を有する。ここで、第1センサはエスカレーターの左側に配置され、第2センサは右側に配置される。ミリ波レーダーの検出範囲は40aに示すようになっており、エスカレーターに向かってくる人を補足するため、所定距離の範囲内で検出を可能としている。」
「【0015】
図2は、本実施形態に係るエスカレーターのブロック図である。センサ40は、エスカレーターの乗降口左右に設置され、速度や位置、大きさなどが検知可能なミリ波レーダーやTOFカメラなどが挙げられる。次に、制御部20は、センサ40からの情報に基づき、処理を決定する、主にマイコンで構成されるものである。この制御部20は、エスカレーターの運転制御だけでなく、プロジェクター41やスピーカー21との間で信号の送受信を行う。さらに、この制御部20は、プロジェクター41で表示する内容や、スピーカー21で音声アナウンスする内容のデータを記録する、フラッシュメモリなども備えている。なお、プロジェクター41やスピーカー21で出力されるデータなどは、通信部30を介して、遠隔端末装置31から受信できるようになっている。また、注意喚起表示や音声アナウンスの内容のほか、乗客のパターン分析を行う際の閾値についても、遠隔端末装置31を用いて遠隔で更新が可能となっている。さらに、遠隔端末装置31は、季節ごとや日替わりで変更する広告などのコンテンツを、ネットワークを用いてエスカレーター側へ送信し、プロジェクター41等から出力させることもできる。」
「【0018】
次に、センサ40が、エスカレーターの乗降口に近づく乗客の有無を判定する(ステップS3)。乗降口に近づく乗客がない場合、ステップS2の状態を保持・継続する。エスカレーターに近づく乗客を検出した場合には、その乗客のパターン分析を行う(ステップS4)。具体的には、エスカレーターの制御部20が、近づく乗客の歩行速度や歩行位置、乗客の大きさなどから、乗客の情報分析を行い、歩く速度が普通の乗客か、歩くのが速い乗客か、歩くのが遅い(高齢者や子ども連れ等の)乗客か、を判定する。例えば、一般的な歩行速度で乗客が乗降口の左側に近づく場合には、図5で示す出力パターンに従い、左側のプロジェクター41およびスピーカー21が、左側の乗客への適切な注意喚起表示と音声アナウンスなどを実施する(ステップS5)。」
上記記載から、甲3には、エスカレーターの乗降口の左右に、左側の乗客を検出するミリ波レーダーやTOFカメラからなる第1センサ、右側の乗客を検出するミリ波レーダーやTOFカメラからなる第2センサをそれぞれ設置し、これにより乗客の歩行速度、歩行位置、乗客の大きさの情報分析を行う点は記載されているといえる。
しかしながら、甲3には、人物の移動方向を検出すること、さらに、その検出した移動方向に基づいて、当該人物にエスカレータへ乗り込む意思があるか否かを判定することは記載されていない。
(4)甲4について
甲4には、次の記載がある。
「【0027】
また、乗客コンベア100は、乗車口に接近する乗客の状態を取得する検出器170を備える。検出器170は、乗客の歩行経路の妨げにならないように設置されている。検出器170は、乗車口における進行経路の側部であり、欄干部と同一平面上の空間(「乗車口の側部」と記す)に設けられる。例えば、図1に示すようにハンドレール130の出入り口付近に設けられる。なお、検出器170の一部または全部は、欄干部の内部または乗降板150の内部に設けられてもよい。また、検出器170は、図示を省略する建物側に設けられてもよい。
【0028】
検出器170としては、赤外測距センサ、超音波センサ、ミリ波センサ、距離画像カメラ、可視光カメラ等といった、光、電波、または、音を用いて、非接触でセンシングする方式のセンサを用いる。また、検出器170は、圧力分布センサであり、乗降板150の内部に圧力分布センサを有し、圧力分布に基づいて乗客の状態を判定する方式のセンサであってもよい。なお、後述するように、骨格情報を算出(推定)できると、より高精度に転倒リスクを算出できることから、検出器170としては、骨格情報を算出可能な距離画像カメラまたは可視光カメラを用いるとよく、対象物(例えば、乗客)との距離も計測可能な距離画像カメラを用いることが好ましい。」
「【0045】
算出部520は、検出器170で検出された乗客の検出情報511に基づいて、当該乗客の歩幅等のパラメータ513(転倒リスク)を算出する。検出器170が距離画像センサである場合には、算出部520は、検出情報511から骨格情報512を算出し、骨格情報512を用いてパラメータ513を算出する。」
「【0057】
続いて、検出器170により得られた検出情報511に基づいて乗客の転倒リスクを算出し、誘導対象であるか否かを判定する方法を図7~図11を用いて説明する。以下の想定では、算出部520によって転倒リスクを算出し、制御部530が誘導対象であるか否かを判定し、表示器180の表示内容を制御する想定で記載する。
【0058】
図7は、検出情報511に基づいて表示器180の表示内容を制御する処理の一例を示す図である。ここでは、一例として、検出器170に距離画像センサを用いた場合の方法を説明する。
【0059】
ステップS701では、記憶部510は、検出器170から距離画像(検出情報511の一例)を取得し、補助記憶装置603に記憶する。
【0060】
ステップS702では、算出部520は、距離画像に基づいて、パラメータ513(転倒リスク)を算出する。算出部520は、骨格情報512を算出することなくパラメータ513を算出してもよいし、骨格情報512を算出してパラメータ513を算出してもよい。
【0061】
例えば、算出部520は、検出器170の検出情報511に基づいて、乗客の歩行動態(歩幅、歩行速度、歩行周期等)、姿勢(腰の曲がり、顔の向き、身体の傾き等)、推定年齢、身長、所有物の有無、乗客コンベア100への乗車前の立ち止まり時間、等のパラメータ513(αi)を算出する。
【0060】
ステップS703では、制御部530は、誘導対象であるか否かを判定(転倒するリスクがあるか否か判定)する。制御部530は、誘導対象であると判定した場合、ステップS704に処理を移し、誘導対象でないと判定した場合、誘導表示処理を行うことなく、処理を終了する。より具体的には、制御部530は、誘導対象であるか否かを判定する際には、パラメータ513(αi)と閾値514(αi,h)との大小関係によって、つまり、パラメータ513が閾値514以上であるか否かを判定する。
【0063】
ステップS704では、制御部530は、誘導表示処理を行う。なお、誘導表示処理については、図8を用いて後述する。
【0064】
図8は、誘導表示処理の一例を示す図である。
【0065】
ステップS801では、制御部530は、各表示器180について、誘導表示を行う場所(表示場所)を決定する。例えば、図10に例示した表示態様1020,1030のように乗客が進行方向に対して左側に寄っていると検出器170により検出された場合、制御部530は、乗降板150の左側に踏み位置201を表示し、踏段110の左側に踏み位置201を表示し、左のハンドレール130に把持位置301を表示すると決定する。
【0066】
なお、表示場所の決定は、後述のステップS804、ステップS806の前に行われてもよい。例えば、右手をハンドレール130に伸ばす動きが検出器170により検出された場合、制御部530は、右側に寄っていると判定し、踏段110の右側に踏み位置201を表示すると決定する。また、例えば、視線を右のハンドレール130に向けることが検出器170により検出された場合、制御部530は、右側に寄っていると判定し、右のハンドレール130に把持位置301を表示すると決定する。このように、制御部530は、乗客の接近方向、乗客の腕の動かし方、および、乗客の視線のうちの少なくとも1つによって表示場所を決定し、個々の乗客の位置に適した誘導表示を行う。」
上記記載から、甲4には、次の技術的事項が記載されているといえる
[甲4記載の技術的事項]
「 乗客コンベア100の乗降口の進行経路の側部に距離画像センサからなる検出器170を設け、当該検出器170から距離画像に基づいて、乗客の歩行動態(歩幅、歩行速度、歩行周期等)、姿勢(腰の曲がり、顔の向き、身体の傾き等)を算出し、手を右側のハンドレール130に伸ばす動きが検出された場合、視線を右側のハンドレール130に向けることが検出された場合に、右側に寄っていると判定し、右のハンドレール130に把持位置301を表示すると決定するというように、乗客の接近方向によって乗客の位置に適した誘導表示を行うこと。」
(5)甲5について
甲5には、次の記載がある。
「【0010】
以上のことから、画像認識により滞留を検知する監視システムでは、滞留を検知するとともに、滞留時に監視エリア内にいるのが0人、1人、2人以上の区分で人数を推定することが望ましいことが判った。」
「【0014】
本発明は、このような従来の監視技術に鑑みて成されたもので、その主な目的とするところは、安全管理及びセキュリティの面から特に重要な人数である1人のみの状況を特定できるように人数を推定することで、監視エリア内を効果的に監視することのできる監視装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記人数が1人であることを精度よく推定するとともに、検知対象の人数を0人、1人、2人以上に区分して推定するに好適な装置等を提供することにあるが、それらの目的については以下述べる実施の態様で詳述する。」
「【0023】
図2において、101はエスカレータで、110はエスカレータの下部の乗り場のデッキ、103はデッキ110の後方からデッキ110の周囲を視野内にとらえたカメラ、104は画像処理装置、105はエスカレータ101の制御装置、106はエスカレータ101の乗客に向けてスピーカによる音声やライトの発光等により警報する警報装置、107は監視員に向けて画面出力や音声出力を行うモニタ、108はカメラ103の画像あるいは画像処理装置104の映像を遠隔に伝送する伝送装置、109はカメラ103の入力画像あるいは画像処理装置104の出力画像を連続的に記録する録画装置である。カメラ103は可視光の撮像装置に限らず、近赤外の撮像装置のように、デッキ110およびデッキ110付近の2次元的な像を取得する装置を適用することができる。」
「【0026】
また図1において、検知対象情報記憶部11及び地点情報記憶部12は、画像処理装置104に設けられた記憶部であって、画像取得部1、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、短期変化蓄積部5、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8等の各機能ブロックの信号処理に必要なデータが格納されている。検知対象情報記憶部11は検知対象の空間中における高さや幅といった大きさや、移動速度の情報を保持している。地点情報記憶部12はカメラ103の入力画像上における領域の情報(例えば、入力画像上のどの領域がデッキに対応し、どの領域がステップに対応し、どの領域を検知エリアとするかなどの情報)や、カメラ103の地点毎に合わせた画像処理に必要なしきい値や、カメラ103の入力画像上における検知対象の画像上における高さや幅や移動速度の情報を保持している。
【0027】
図1において、画像取得部1は、カメラ103から各フレームの入力画像を連続的に取得するように構成しているが、カメラ103の画像を記録したものを再生しても同等の機能を達成できる。また、画像取得部1からの取得画像は、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、及び短期変化蓄積部5で処理及び記憶されるが、これらの部分が監視エリア内における検知対象の滞留を検知する手段を構成している。
【0028】
以下、図1における各機能ブロックの処理内容について順次説明する。
【0029】
短期変化抽出部4は、短期の変化として、2時刻[T-ΔT、T]の入力画像の差分から、画像上で短期に変化した部分を抽出する。図4(a)および(b)は短期変化抽出部4の時刻T-ΔTおよび時刻Tの入力画像の例を示し、111はハンドレール、112はステップ、113は人物、矢印117は人物113の移動方向である。図4(a)から図4(b)の間に、人物113は、ステップ112に向けて歩行した分、入力画像内を下から上に少し移動している。短期変化抽出部4は、2時刻の画像から所定のしきい値以上に明度が変化した差分(短期の変化)を画素単位で抽出する。また、短期変化抽出部4は、前記短期の変化から、差分の連結領域を抽出する。
【0030】
図4(c)は、短期変化抽出部4の抽出結果の例として、図4(a)と図4(b)から差分を抽出した結果の一例を示しており、132はステップ112の移動による差分の連結領域であり、133は人物113の移動による差分の連結領域である。この連結領域133は、2時刻[T-ΔT、T]の間の人物113の画面上の移動の輪郭に相当する。図4(c)の例では人物113が入力画像において画面の下から上に移動するために、連結領域133は縦方向に移動量に相当した厚みを持っている。短期変化抽出部4は、図4(c)の例のように、短期の変化から、連結領域133を抽出し、連結領域133から、連結領域133の外接矩形135、外接矩形135の代表辺136、代表辺136の代表点137を抽出する。」
「【0043】
さらに、長期変化抽出部3は、以上述べた方法で抽出した外接矩形125が一つ以上抽出された時刻を保持しておく。また、一つ以上の外接矩形125の検出が同じ場所で継続する場合、滞留であると判断し、その滞留が発生している時期を示す情報を、滞留の時期の情報として保持しておく。尚、ここで滞留の時期の情報は、例えば、滞留の開始時刻と終了時刻、あるいは、滞留の開始時刻と継続時間の長さなど、滞留の発生している時刻と長さを特定できる情報を含む。また、長期変化抽出部3は、滞留が発生している場所の情報についても保持しておく。」
「【0046】
次に、人数推定部7は、図5に示す処理フローによって検知エリア120上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定する。以下、図5の処理ステップS1~S7、及び図6に示す人数推定時の時間関係を補足する図を適宜引用して、その処理内容を説明する。尚、図6(a)(b)(c)は、それぞれ、検知エリア内に0人、1人、2人以上がいる場合に対応する。
【0047】
S1では、人数推定部7は、長期変化抽出部3での背景差分の抽出結果または滞留の抽出結果に基づき、滞留の最低継続時間である時間τ以上に滞留が継続しているか否かを判定する。滞留が時間τ以上に継続していなければ(S1でno)、検知エリア120上に人物113の滞留はないとみなして0人と推定する(S5)。
【0048】
S1において、滞留が時間τ以上に継続している場合には、処理ステップS2に進む。このときの時間関係は図6(a)(b)(c)の何れかのようになっており、滞留の開始時刻を時刻T2、時刻T2から時間τだけ後を時刻T3とすると、時刻T2から時刻T3の間に滞留の継続期間201が存在する。
【0049】
S2では、人数推定部7は、時刻T2の直前に、S1の滞留箇所に向けて検知エリア120の外(検知エリア120の端)から移動する移動軌跡があるか否かを判定する。
【0050】
尚、S2における判定に用いられる移動軌跡の抽出は、軌跡抽出部6で行われる。検知エリア120の長さと、人物113の最低の移動速度から見積もった、人物113が検知エリア120を通過するのに最も長く要する最長通過時間を時間πとしたとき、時刻T2から時間πだけ遡った時刻T1と時刻T2との間において、軌跡抽出部6が前記移動軌跡を探索する。」
「【0052】
図7(a)から図7(b)の間、短期変化抽出部4は、動作周期ごとに短期の変化を抽出し、短期変化蓄積部5は、動作周期ごとの短期変化抽出部4の出力(代表点137)の時系列を蓄積している。軌跡抽出部6は、時刻T2から遡って短期変化蓄積部5に蓄積された代表点137の時系列から対応点を探索することで移動軌跡を抽出する。対応点の探索の方法には、隣接する2時刻の代表点137の最近傍点を探索し、最近傍の2つの代表点137の画像上の座標のずれが許容誤差の範囲内に収まる対応点同士を連結する方法が考えられるが、これに限らない。図7(c)は、軌跡抽出部6が、図7(a)から図7(b)の間の代表点137の移動軌跡153を抽出した例を示している。
【0053】
なお、以上の説明では軌跡抽出部6が代表点137の時系列から移動軌跡153を抽出する方法を述べたが、軌跡抽出部6は代表点137以外のデータから移動軌跡153を求めてもよい。一例としては、非特許文献1では、連結領域133のような2時刻[T-ΔT、T]の人物113の変化(例えば、フレーム間差分)を累積させて、所定の時間の間に物体が移動した領域を特定する方法が記されてあり、これを利用して移動軌跡153を求めることも可能であり、前記実施例に限られるものではない。この場合、短期変化蓄積部5は、代表点137の時系列を蓄積することに代えて、短期の変化(例えばフレーム間差分)の時系列を蓄積するようにしてもよい。」
「【0056】
人数推定部7はS2の判定がyesであれば、少なくとも1人以上の人物113が時刻T1から時刻T2の間にデッキ120内に進入し、時刻T2から時刻T3の間に滞留したものと考え、S3に進む。
【0057】
次に、S3では、人数推定部7は、時刻T1から時刻T2の間に、検知エリア120の外からいずれかの外接矩形125に伸びる移動軌跡153が2つ以上あるか否かを判定する。2つ以上あれば、時刻T1から時刻T2の間に2人以上の人物が進入して時刻T2から時刻T3の間に滞留したとみなして、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を2人以上と推定する(S7)。S3の判定がnoの場合、S4に進む。
【0058】
次に、S4では、人数推定部7は、時刻T2から時刻T3の間に移動軌跡(2人目の人物)が検知エリア120の外から検知エリア120に進入したか否かを判定する。図9(a)(b)は、時刻T2から時刻T3の間に2人目の人物114がデッキ110の外からデッキ110の中に進入した例を示している。S4において、軌跡抽出部6は、S2と同様に時刻T2から時刻T3の間の代表点137の時系列から移動軌跡を探索し、図9(c)のように検知エリア120の外から検知エリア120に進入する2人目の人物114の移動軌跡154が一つでも見つかればS4の判定はyesとなり、時刻T1から時刻T2の間に進入した人物113に加えて、時刻T2から時刻T3の期間に2人目の人物114あるいはそれ以上多くの人物が進入したとみなして、人数推定部7は人数を2人以上と推定する(S7)。この場合の時間関係は、例えば図6(c)のようになる。図6(c)において、203は人物113の移動軌跡153の発生期間で、204は人物114の移動軌跡154の発生期間に相当する。
【0059】
反対に、S4の判定がnoの場合、時刻T2から時刻T3の間に新たな人物114の進入はないと考えて、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を1人と推定する(S6)。」
上記記載から、甲5には、次の技術的事項が記載されているといえる
[甲5記載の技術的事項]
「 エスカレータ101のデッキ110の周囲を視野内にとらえたカメラ103の2時刻[T-ΔT、T]の入力画像の差分から、2時刻[T-ΔT、T]の間の人物113の画面上の移動の輪郭に相当する連結領域133を抽出し、
当該連結領域133から、連結領域133の外接矩形、外接矩形の代表辺136、代表辺136の代表点137を抽出し、
当該代表点137の時系列から対応点を探索するなどにより移動軌跡を抽出し、
一つ以上の前記外接矩形の検出が同じ場所で継続する場合、滞留であると判断し、
渋滞であると判断したときに、
渋滞の開始時刻T2から時間nだけ遡った時刻T1と時刻T2との間において、滞留箇所、すなわち前記外接矩形に向けて検知エリア120の外から移動する移動軌跡があるか否か、
前記時刻T1から前記時刻T2の間に、前記検知エリア120の外からいずれかの前記外接矩形に伸びる移動軌跡153が2つ以上あるか否か、
時刻T2から時刻T3の間に移動軌跡が前記検知エリア120の外から前記検知エリア120に進入したか否か、により
前記デッキ110内に滞留する人数が0人、1人、2人以上のいずれであるかを推定すること。」
(6)甲6について
甲6は、乗り口側の乗降口で多数の乗客Pが滞留していると判定した場合に、その状況に対応した音声メッセージを出力するという技術的事項(段落【0030】、【0040】)の証拠として提出されたものであり、人物の移動方向を検出することの記載はないところ、摘記は省略する。
(7)甲7について
甲7には、次の記載がある。
「【0024】
図1乃至図3に示すように、本発明の一実施形態に係るエスカレーター10は、降り口21aの近傍にセンサー40を配備している。センサー40として、ToF(Time of Flight)センサーの如きエリア型センサー(測域センサー)を例示できる。ToFセンサーは、レーザー光の投光部と受光部を回転させながら、投光部から発せられたレーザー光が物体に反射して受光部に戻ってくるまでの時間を計測し、回転角度毎に物体までの距離データを出力するセンサーである。なお、センサー40は、ToFセンサーに限定されるものではない。
【0025】
センサー40は、図2及び図3に示すように、デッキボード19の端縁を通常よりも長く形成し、突出したデッキボード19の下面にセンサー40を配置している。これにより、センサー40は、乗客の足元近傍の高さを平面スキャンすることができる。なお、センサー40の設置位置は、これに限定されるものではなく、スカートガードやニューエルカバーに設置、或いは、別途ポールを降り口21aに立設してセンサー40を装着することもできる。センサー40は、図4、図5等に示すように、左右の何れか一方に配置すれば足りるが、降り口21aの左右に1つずつ配置しても構わない。図示のセンサー設置位置は、進行方向右側のデッキボード19の先端であり、ハンドレール12が円弧状に折り返すハンドレール12の先端よりもやや後退した位置である。」
「【0033】
然して、センサー40により、第1領域αと第2領域βは、平面スキャンされ、センサー40は、これら領域に存する物体(乗客50)の距離データを次に説明する制御装置31に出力する。たとえば、センサー40は、所定時間毎、たとえば25msec毎に降り口21aを平面スキャンし、検出された物体の距離データをたとえば座標値として連続的に逐次検知し続ける構成とすることができる。
【0034】
図7は、ToFセンサーをセンサー40として採用し、第1領域αと第2領域βを平面スキャンした1スキャン分の2次元座標系の検知結果を示す距離データの一例を示している。たとえば、図5に示すように、第1領域αに2人の乗客50α、第2領域に1人の乗客50βがステップ11から降りて、進行方向に向けて歩行している状態では、乗客50α、50βに対し、図7に示すように、センサー40により検出された距離データ(図中黒丸印で示す)が得られる。図7を参照すると、第1領域αでは、乗客50αの足の輪郭を示す点の集合50a,50bが確認され、第2領域βでは、乗客50βの足の輪郭を示す点の集合50cを確認することができる。
【0035】
センサー40の距離データは、エスカレーター10の制御装置31に出力される。図8は、本発明に係る制御に関連する要部構成を示すエスカレーター10の制御システム30のブロック図である。制御システム30は、制御装置31を具え、センサー40から出力される距離データを受信し、降り口21aの第1領域αと第2領域βにおける乗客の状況を夫々判定し、当該判定結果に基づいてモーター17の回転速度を制御する。たとえば、制御装置31は、センサー40からの検知結果から降り口21aの乗客の状況を判定する状況判定手段32(後述する)と、状況判定手段32にて判定された状況に基づいて、モーター17の速度指令を発する速度指令生成手段33と、当該速度指令に基づいてモーター17をインバーター制御するインバーター制御手段34を具える構成とすることができる。なお、モーター17の回転速度制御は、インバーター制御に限るものではない。」
「【0036】
状況判定手段32は、センサー40から取得した距離データが何れの領域の距離データであるかを判別し、各領域α、βに存在する物体50の重心の移動速度を算出し、或いは、物体50の重心の移動速度と物体50の幅とを算出し、領域α、β毎の乗客の状況を判定する。以下の実施形態では、第1領域α、第2領域βの両方について、物体50の重心の移動速度と物体50の幅に基づいて乗客の状況を判定するが、一方又は両方の領域について、物体の重心の移動速度のみに基づいて乗客の状況を判定してもよい。また、幅に代えて物体の面積を算出して採用してもよい。」
「【0041】
重心算出部32bは、領域α、β毎に受信した距離データから、各領域α、βの乗客50α、50βの重心位置を算出する。重心算出部32bにより算出された重心位置を図7中、符号51α、51βで示す。重心算出部32bは、たとえば、受信した領域α、β毎の距離データのX軸方向成分、Y軸方向成分をそれぞれ加算し、距離データの数で除算することで重心位置51α、51βを算出できる。」
「【0043】
算出された各領域α、βの重心位置51α、51βは、重心移動速度算出部32cに送信される。そして、重心移動速度算出部32cは、順次受信する重心位置51α、βから、当該重心位置51α、βの移動速度を算出する。重心移動速度算出部32cは、たとえば、順次受信した重心位置51αの差分から第1領域α内の乗客50αの移動速度を算出できる。また、順次受信した重心位置51βの差分から第2領域β内の乗客50βの移動速度を算出できる。なお、重心位置51α、51βの移動速度の算出に際し、エスカレーター10の進行方向のみの速度を抽出するようにすることが望ましい。また、測定誤差等の影響を抑えるために、重心位置51α、51βの移動速度は、たとえば、移動平均とすることで算出データの微小変化を平滑化することができる。
【0044】
幅算出部32dは、第1領域αに存する乗客50αについて、領域判定部32aから得た距離データに基づいて、第1領域αに存在する物体50αの幅を算出する。物体50αの占める幅は、たとえば、物体50αを矩形と見做し、得られた距離データのX軸方向成分の最大値、最小値から算出できる。このように第1領域αについて、物体50αの幅を算出することで、乗客が通過できない程度の物体が第1領域αを占有しているのか、物体50αは存在するものの、乗客は通行可能であるのかを判断することができる。第2領域βについても同様に、物体50βの占める幅は、物体50βを矩形と見なし、得られた距離データのX軸方向成分の最大値、最小値から算出できる。
【0045】
そして、上記重心移動速度算出部32cにて算出された第1領域αの重心位置51αの移動速度と、第2領域βの重心位置51βの移動速度、さらに、幅算出部32dにて算出された物体50α、50βの幅は、状況判定部32eに送信される。状況判定部32eは、領域α、βについては、移動速度と幅に基づいて乗客の流れ、滞留などの状況を判定する。」
以上から、甲7には、エスカレーター10の降り口21aの近傍にToFセンサの如きエリア型センサー40を配備し、このセンサー40により乗客50の距離データを出力し、この距離データから乗客50の重心位置、重心の移動速度、乗客の幅を算出し、これらに基づいて、乗客の流れ、滞留などの状況を判定する点は記載されている。
しかしながら、甲7には、人物の移動方向を検出すること、さらに、その検出した移動方向に基づいて、人物にエスカレータへ乗り込む意思があるか否かを判定することは記載されていない。
3 申立理由に対する当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア)甲1発明1の「踏段2a」は本件発明1の「踏段」に相当する。甲1発明1の「複数の踏段2aが無端状に連結されて構成され」た「搬送体2」が本件発明1の「無端状に連結された複数の踏段」に相当する。
甲1発明1の「乗り口5」及び「降り口6」は、本件発明1の「乗り口」及び「降り口」に相当し、甲1発明1の「乗り口5と降り口6との間を循環移動する搬送体2を有する」という事項は、本件発明1の「複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された」という事項に相当する。
(イ)甲1発明1の「前記乗り口5の乗客11」と本件発明1の「前記乗り口に接近する第1人物」とは、「人物」である限りで一致する。
甲1発明1の「前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となる、乗客センサ8」と、本件発明1の「前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって」情報を出力する「第1レーダ装置」とは、「人物毎に、当該人物に電磁波を照射する」「検出装置」という限りで一致する。
甲1発明1において「乗客センサ8」が「前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となる」ことは、乗客11が乗り口5の投光器8aから照射された光を遮る場所にいるか、否かという乗客11の位置に係る情報を発しているといえるから、甲1発明1において、「前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となる」という事項と、本件発明1の「当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する」という事項とは、「当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する」という限りで一致する。
そうすると、甲1発明1の「前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となる、乗客センサ8」と本件発明1の「前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置」とは、「人物毎に、当該人物に電磁波を照射し、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する検出装置」である限りで一致する。
(ウ)甲1発明1において「前記乗客センサ8による前記乗客11の検出状態が継続した時間検出時間Tdt」と「前記乗客センサ8による前記乗客11の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tnd」とは、乗客11が乗り口5の投光器8aから照射された光を遮る場所にいるか、否かという、乗客センサ8が発する乗客11の位置に係る情報から計測される時間であるから、「乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって」判定することは、乗客センサ8が発する乗客11の位置に係る情報を利用した判定といえる。そうすると、甲1発明1の「乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって」という事項と、本件発明1の「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置、及び移動速度に基づいて」という事項とは、本件発明1の「前記人物毎に前記検出装置から出力された前記人物に係る前記所定情報に含まれる当該人物の位置に基づいて」という限りで一致する。
甲1発明1は、「乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定」するのであるから、かかる判定を行う機能を担う部分を有しているといえる。そして、甲1発明1の「乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定」を行う機能を担う部分と、本件発明1の「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段」とは、「前記人物が所定状態にあるか否かを判定する判定部」という限りで一致する。
甲1発明1の「乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定し、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるとき、搬送体2の移動速度を通常速度V1から低下させる」ことは、判定した結果を利用して搬送体2の移動速度を制御することであるから、本件発明1の「前記判定手段の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する」ことの対比において、「前記判定部の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する」という限りにおいて一致する。
そして、甲1発明1の「制御装置本体7」は本件発明1の「制御装置」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
無端状に連結されたと複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアにおいて、
人物毎に、当該人物に電波を照射し、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する検出装置と、
前記人物毎に前記検出装置から出力された前記人物に係る前記所定情報に含まれる当該人物の位置に基づいて、前記人物が所定の状態にあるか否かを判定する判定部を含み、前記判定部の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する制御装置と
を具備する乗客コンベア。
[相違点3]
「人物毎に、当該人物に電波を照射し、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する検出装置」に関し、本件発明1は、これが、「前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する第1レーダ装置」であるのに対し、甲1発明1は、「前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となる、乗客センサ8」である点。
[相違点4]
「前記人物毎に前記検出装置から出力された前記人物に係る前記所定情報に含まれる当該人物の位置に基づいて」、「人物が所定状態にあるか否かを判定する所定の判定部」に関し、本件発明1は、「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる」「位置」のみならず、「進行方向」、「及び移動速度」にも「基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段」であるのに対し、甲1発明1は、「乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定」するものである点。
[相違点5]
本件発明1は、制御手段が判定手段の結果に加え、「前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報」にも基づいて、乗客コンベアの運転を制御するのに対し、甲1発明1の「制御本体装置7」はそのような乗客コンベアの運転を制御するのか、明らかでない点。
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
上記相違点4に関し、本件発明1の「判定手段」は、第1検出情報に含まれる第1人物の位置のみならず、「進行方向」、「及び移動速度」にも基づいて、「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるか」を判定するものであるが、特に、本件発明1の「判定手段」が、第1人物の「進行方向」に基づいて、「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」という事項に着目して、上記相違点4について検討する。
(イ)甲2記載の技術的事項は、「前記エスカレータに設置されたステレオカメラ装置によって撮影された、前記エスカレータ乗場の乗客検出対象範囲の映像情報を取得する映像情報取得部」を設け、「前記映像情報取得部で取得した映像情報をステレオ画像処理し、前記乗客検出対象範囲の移動体の」「移動方向情報」「を取得し、」、この「前記移動体情報取得部で取得した移動体の移動方向情報」を用いて、「当該移動体をエスカレータ乗客として検出」するものである。そして、「当該移動体をエスカレータ乗客として検出」することは、人物も「移動体」に含まれるから、人物がエスカレータに乗ろうとしている人物か、エスカレータに乗ろうとしていない人物かを検出することといえる。よって、甲2記載の技術的事項の「前記移動体情報取得部で取得した移動体の移動方向情報」を用いて、「当該移動体をエスカレータ乗客として検出」することは、本件発明1の第1人物の「進行方向」に基づいて、「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」ことに相当する。
ここで、甲1発明1と甲2記載の技術的事項とは、人物の状態を判定し、その判定結果に基づいて乗客コンベアを制御する技術であるという点では共通している。しかしながら、甲1発明1は、「乗客が乗客コンベアに乗り込むことを躊躇していると、踏段の循環速度が低く」する際に(段落【0002】)、「乗り口の乗客が、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との距離を空けるために乗り口に待機している場合にも、踏段の循環速度が低くされることがある」(段落【0004】)という問題があることに鑑み、「搬送体2と乗り口5との境界位置から200mm~300mm離れた位置」という、まさに搬送体2に乗ろうとする位置の「乗客」を対象として(すなわち、その人物がエスカレータの「乗客」であることを前提として)、その「乗客」が「乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否か」を判定するものであるのに対し、甲2記載の技術的事項は、「簡易な構成で乗場に進入するエスカレータ乗客を高い精度で検出」するためのものであって、「乗客検出対象範囲」(図1参照)にいる人物を対象として、その対象範囲内の人物がエスカレータに乗ろうとしているか否か(すなわち、その人物がエスカレータの「乗客」たり得るか否か。)が不明であるために、当該人物がエスカレータの「乗客」であるか否かを判定するものあり、甲1発明1と甲2記載の技術的事項とは、課題、判定対象とする人物の状態、判定の内容が異なっており、甲1発明1における人物の所定状態の判定に、甲2記載の技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1発明1に甲2記載の技術的事項を適用し、第1人物の「進行方向」に基づいて、「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」という本件発明1の発明特定事項となすことが、当業者が容易になし得たことであるとは認められない。
(ウ)次に、甲4記載の技術的事項は、「乗客の接近方向」を検知するものであり、乗客の“移動方向”を検知するものということもできるが、甲4記載の技術的事項は、「手を右側のハンドレール130に伸ばす動きが検出された場合、視線を右側のハンドレール130に向けることが検出された場合に、右側に寄っていると判定し、右のハンドレール130に把持位置301を表示すると決定する」というように、乗客に対する表示を左右いずれに表示すべきかを決定するために、乗客が乗客コンベア100の乗降口の左右どちら側に接近しているかを判定するものにすぎず、本件発明1のように「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」ものではない。
(エ)また、甲5記載の技術的事項の「2時刻[T-ΔT、T]の間の人物113の画面上の移動の輪郭に相当する連結領域133」は、人物113の“移動方向”に係る情報といえる。そうすると、甲5記載の技術的事項において、その連結領域133から得られる「外接矩形」も人物113の“移動方向”に係る情報を利用して得たものであり、その「外接矩形」を利用した判定は、間接的に人物113の“移動方向”に係る情報を利用した判定といえる。また、「移動軌跡」を利用した判定も、人物の“移動方向”に係る情報を利用した判定である。
しかしながら、甲5記載の技術的事項における「外接矩形」や「移動軌跡」を用いた判定の内容は、デッキ110内に滞留があるか否か、滞留する人数が0人、1人、2人以上のいずれであるかであり、本件発明1のように「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」ものではない。
(オ)そして、甲3、甲6、甲7には、人物の移動方向を検出すること、さらには人物にエスカレータへ乗り込む意思があるか否かを判定することは記載されていない。
(カ)上記(イ)~(オ)から明らかなとおり、本件発明1の第1人物の「進行方向」に基づいて、「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」という発明特定事項は、甲1発明1に甲2~7記載の技術的事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
そうすると、第1検出情報に含まれる第1人物の位置のみならず、「進行方向」、「及び移動速度」にも基づいて、「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」という、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項についても、甲1発明1に甲2~7記載の技術的事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
(ケ)したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2、4について
訂正後の請求項2、4は、訂正後の請求項1を引用しており、本件発明2、4は、本件発明1発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、上記(1)と同様に、本件発明2、4は、甲1発明1、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5について
ア 対比
本件発明5は、訂正前の請求項1に記載された発明特定事項に、「前記制御装置は、前記第1検出情報に含まれる進行方向及び速度に基づいて、前記乗り口における乗客の滞留を通知する音声を出力する制御手段を含む」という訂正前の請求項5記載の発明特定事項を付加したものである。
そして、訂正前の請求項1に記載された発明特定事項と、訂正後の請求項1に記載された発明特定事とは、訂正前の請求項1に記載では「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み」と特定されているのに対し、訂正後の請求項1に記載では「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置、及び移動速度に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み」と特定されている点でのみ異なる(下線が異なる部分で、下線は当審合議体が付したもの。)。
したがって、本件発明5と甲1発明1とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
[相違点4’]
本件発明5は、「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」のに対し、甲1発明1は、「乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定」するものである点。
イ 判断
相違点4’について検討すると、上記(1)イ(イ)~(カ)と同様に、本件発明5の「前記第1人物毎に前記第1レーダ装置から出力された第1検出情報に含まれる進行方向に基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」という発明特定事項は、甲1発明1に甲2~甲7記載の技術的事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
したがって、本件発明5は、甲1発明1、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明8、18~21について
ア 本件発明8について
本件発明8は、訂正前の請求項1に記載された発明特定事項に、「前記複数の踏段から降りた後に前記降り口から遠ざかる第2人物に電波を照射し、当該第2人物からの反射波を受信することによって、当該第2人物に関する第2検出情報を出力する第2レーダ装置を更に具備し、前記第2検出情報は、前記第2人物が移動する速度を含み、前記制御装置は、前記第2検出情報に含まれる速度に基づいて、前記複数の踏段が移動する速度を制御する制御手段を含む」という訂正前の請求項8記載の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、上記(3)アと同様に、本件発明8と甲1発明1とを対比すると、少なくとも上記相違点4’で相違する。
そして、上記(3)イと同様に、本件発明8は、甲1発明1、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明18~21について
本件発明18~21はいずれも、訂正前の請求項1記載の発明特定事項と、訂正前の請求項8記載の発明特定事項とを全て含むものである。
したがって、上記アと同様に、本件発明18~21は、甲1発明1、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲1発明2とを対比する。
(ア)甲1発明2の「踏段2a」は本件発明2の「踏段」に相当する。甲1発明2の「複数の踏段2aが無端状に連結されて構成され」た「搬送体2」が本件発明9の「無端状に連結された複数の踏段」に相当する。
甲1発明2の「乗り口5」及び「降り口6」は、本件発明1の「乗り口」及び「降り口」に相当し、甲1発明2の「乗り口5と降り口6との間を循環移動する搬送体2を有する」という事項、本件発明9の「複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された」という事項に相当する。
(イ)甲1発明2の「前記乗り口5の乗客11」と本件発明9の「前記乗り口に接近する第1人物」とは、「人物」である限りで一致する。
甲1発明2の「乗客センサ8が、前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となり」という事項と、本件発明9の「前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する」という事項とは、「人物毎に、当該人物に電磁波を照射すし、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する」という限りで一致する。
そうすると、甲1発明2の「乗客センサ8が、前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態となり」るという事項と、本件発明9の「前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する」という事項とは、「人物毎に、当該人物に電磁波を照射し、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する」という限りで一致する。
(ウ)甲1発明2の「乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって」という事項と、本件発明9の「前記第1人物毎に出力された第1検出情報に含まれる進行方向、位置、及び移動速度に基づいて」という事項とは、「前記人物毎に出力された当該人物に係る前記所定情報に含まれる当該人物の位置に基づいて」という限りで一致する。
甲1発明2の「乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定」することと、本件発明1の「前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」こととは、「前記人物が所定状態にあるか否かを判定する」という限りで一致する。
甲1発明2の「乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定し、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるとき、搬送体2の移動速度を通常速度V1から低下させる」ことと、本件発明9の「前記判定結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する」ことは、「前記人物が前記所定状態にあるか否かの前記判定の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御する」という限りで一致する。
以上を総合すると、本件発明9と甲1発明2とは、次の一致点で一致し、次の相違点1で相違する。
[一致点]
無端状に連結された複数の踏段が乗り口と降り口との間で循環移動するように構成された乗客コンベアの制御方法であって、
人物毎に、当該人物に電磁波を照射し、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力することと、
前記人物毎に出力された前記人物に係る前記所定情報に含まれる当該人物の位置に基づいて、前記人物が所定状態にあるか否かを判定することと、
前記人物が前記所定状態にあるか否かの前記判定の結果に基づいて、前記乗客コンベアの運転を制御することと
を具備する乗客コンベアの制御方法。
[相違点6]
「人物毎に、当該人物に電波を照射し、当該人物の位置を含む当該人物に係る所定情報を出力する」ことに関し、本件発明9は、これが、「前記乗り口に接近する第1人物毎に、当該第1人物に電波を照射し、当該第1人物からの反射波を受信することによって、当該第1人物の進行方向、位置及び移動速度を含む第1検出情報を出力する」ことであるのに対し、甲1発明2は、「前記乗客センサ8が、前記乗り口5に乗客11がいる場合に、投光器8aから照射された光が乗客11により遮られ、乗客を検出した検出状態となり、乗り口5に乗客11がいない場合に、投光器8aから照射された光を受光器8bが受光し、乗客11を検出しない非検出状態とな」ることである点。
[相違点7]
「前記人物毎に出力された前記人物に係る所定情報に含まれる当該人物の位置に基づいて」、「前記人物が所定状態にあるか否かを判定する」ことに関し、本件発明9は、「前記第1人物毎に出力された第1検出情報に含まれる」「位置」のみならず、「進行方向」、「及び移動速度」にも「基づいて、前記第1人物の各々が前記乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する」のに対し、甲1発明2は、「乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となったか否かによって、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定されるか否かを判定」する点。
[相違点8]
本件発明9は、判定結果に加え、「前記出力された第1検出情報」にも基づいて、乗客コンベアの運転を制御するのに対し、甲1発明2は、そのよう乗客コンベアの運転を制御するのか、明らかでない点。
イ 判断
相違点7は、上記(1)アの相違点3と実質的に同じ相違点である。したがって、上記(1)イと同様に、相違点7に係る本件発明9の発明特定事項は、甲1発明2に甲2~7記載の技術的事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1発明2、甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立人の主張について
(1)申立人の主張の概要
申立人は、「甲1には、「乗客センサ8」が「乗客の進行方向、位置及び移動速度を検出する」ことが記載されていない点で、構成要件1Aと相違する(相違点A)」、「甲1には、制御装置本体7が、「人が乗客コンベアに乗り込む意思のある乗客であるかを判定する判定手段を含み、乗客センサからの情報及び判定手段の結果に基づいて、乗客コンベアの運転を制御する」ことが記載されていない点で構成要件1Cと相違する(相違点B)」としたうえで(異議申立書第24頁第3~12行)、概略、これらの相違点について、次のとおり主張する。
[相違点Aについて]
相違点Aは、甲2に記載されているものと認められ、甲1と甲2は、いずれも乗客を検出して乗客コンベアを適切に制御することを目的としており、乗り口における乗客の状態に応じて乗客コンベアを適切に制御するために、甲2記載事項を甲1発明に適用することに格別の困難性はない。
また、甲3~甲5のように、乗客コンベアにおいて乗客を検出する検出装置としてレーダ装置を用いること、検出装置によって乗客の進行方向、位置、移動速度等を検出することは、本件特許出願時点における周知技術である。(異議申立書第24頁第17行~第25頁第10行)
[相違点Bについて]
相違点Bは、甲2に記載されているものと認められ、甲1と甲2は、いずれも乗客を検出して乗客コンベアを適切に制御することを目的としたものであり、甲2記載事項を甲1発明に適用することに格別の困難性はない。(異議申立書第25頁第11~27行)
(2)当審の判断
上記申立人の主張について、検討する。
ア 相違点Aについて
(ア)申立人は、甲1と甲2は、いずれも乗客を検出して乗客コンベアを適切に制御することを目的としていることを理由に、甲2記載事項を甲1発明1に適用することに格別の困難性はないと主張するが、上記3(1)イ(イ)で述べたとおり、甲1発明1と甲2記載の技術的事項とは、甲1発明1と甲2記載の技術的事項とは、課題、判定対象とする人物の状態、判定の内容が異なっており、甲1発明1に甲2記載の技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。したがって、甲2記載事項を甲1発明に適用することに格別の困難性はないとはいえない。
(イ)また、仮に、甲2記載事項を甲1発明1に適用したとしても、甲2記載の技術的事項における検出装置は「ステレオカメラ装置」であって、本件発明1のような「レーダ装置」ではない。申立人が主張するようにレーダ装置が周知技術であったとしても、甲1発明1に甲2記載技術を適用し、「ステレオカメラ装置」で「乗客の進行方向、位置及び移動速度を検出する」ものを得た上で、その新たに得たものに対して重畳的に周知技術を適用し、「ステレオカメラ装置」を「レーダ装置」に換えることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(ウ)さらに、甲2記載の技術的事項は「赤外線センサ等により乗客の進入を検出する場合、検出範囲の設定によってはエスカレータの前を横切っただけで人が検出され、不要にエスカレータが起動されてしまうことがあるという不具合があった」(段落【0005】)、「乗降口を撮影した画像を解析して乗客の進入を検出する場合、カメラ装置を天井等に設置することが一般的であり、設置工事に手間がかかるという問題があった」(段落【0006】)という事情に鑑み、検知装置として、「ステレオカメラ装置」を採用することを必須としており、それにより「乗客検出対象範囲に人間が完全に隠れない程度(例えば1m程度)の植木や看板等の障害物6がある場合にも、エスカレータ乗客の検出処理を行うことができる」(段落【0045】)という有利な効果を奏するものであることに鑑みれば、レーダ装置が周知技術であるとしても、甲2記載に技術的事項の「ステレオカメラ装置」に換えてレーダ装置を採用することには阻害要因がある。
よって、出願人の主張は採用できない。
[相違点Bについて]
申立人は、甲1と甲2は、いずれも乗客を検出して乗客コンベアを適切に制御することを目的としたものであることを理由に、甲2記載事項を甲1発明1に適用することに格別の困難性はないと主張するが、上記ア(ア)で述べたとおりであり、出願人の主張は採用できない。
5 申立理由に対する当審合議体の判断のまとめ
以上のとおり、申立人が主張する申立理由により、本件特許の請求項1、2、4、5、8、9、18~21に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、2、4、5、8、9、18~21に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1、2、4、5、8、9、18~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700818