特許異議申立
2023-700352
エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
- 審判番号
- 2023-700352
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-097208
- 登録番号
- 7155342
- 請求日
- 2023年04月07日
- 審決日
- 2024年03月25日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝エレベータ株式会社
- 【権利者代理人】富田 祥弘
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 内田 博之
- 審判官 吉田 昌弘
- 分類
- P1651.113-YAA(B66B) / P1651.121-YAA(B66B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7155342号発明「エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7155342号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
特許第7155342号の請求項1、2、4~6に係る特許を維持する。
特許第7155342号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7155342号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和3年6月10日の出願であって、令和4年10月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 4 月7日 :特許異議申立人角田朗(以下、「異議申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和5年 6月28日付け:取消理由通知書
令和5年 8月30日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和5年10月 4日 :特許権者による訂正請求書に対する手続補正書の提出
令和5年11月17日 :異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者は、令和5年8月30日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めた(以下、「本件訂正」という。)。
本件訂正の内容は以下のとおりである。下線は当審で付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「トラクション能力が正常でないと診断するトラクション能力診断部と
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。」という記載を、
「トラクション能力が正常でないと診断するトラクション能力診断部と
を備え、
前記トラクション能力診断部は、前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する
ことを特徴とするエレベータ制御装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4の
「ことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。」という記載を、
「 ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ制御装置。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5の
「ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。」という記載を、
「 ことを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6の
「トラクション能力が正常でないと診断する
ことを特徴とするエレベータ制御方法。
」という記載を、
「トラクション能力が正常でないと診断する
エレベータ制御方法において、
前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する
ことを特徴とするエレベータ制御方法。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項〔1-5〕は、一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、「トラクション能力診断部」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)の、【請求項3】に「前記トラクション能力診断部は、前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間を走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する」と記載されており、また段落【0031】に「またその際に、加減速度を意図的に通常運転時よりも高くすることで、ロープ滑りが発生している場合にその滑り度合いが大きくなり、トラクション能力の低下をさらに早期に検知することができる。」と記載されているから、訂正事項1による訂正後の請求項1に係る構成は、明細書等に記載されているといえる。
したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、「トラクション能力診断部」の構成を限定するものであって、発明のカテゴリー又は対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、発明のカテゴリー又は対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(4)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、本件訂正前の請求項3の記載を引用する請求項4及び5を、訂正事項2によって存在しなくなる請求項3の記載を引用しないものとするための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、発明のカテゴリー又は対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、「前回の診断運転時の診断結果に基づいてトラクション能力の低下が予測される状態であるか否かを判断する」ための構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)の、【請求項3】に「前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間を走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する」と記載されており、また段落【0031】に「またその際に、加減速度を意図的に通常運転時よりも高くすることで、ロープ滑りが発生している場合にその滑り度合いが大きくなり、トラクション能力の低下をさらに早期に検知することができる。」と記載されているから、訂正事項5による訂正後の請求項6に係る構成は、明細書等に記載されているといえる。
したがって、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、「前回の診断運転時の診断結果に基づいてトラクション能力の低下が予測される状態であるか否かを判断する」ための構成を限定するものであって、発明のカテゴリー又は対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(6)小括
上記訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである
「【請求項1】
巻き上げ機のシーブにメインロープが掛け渡され、その両端にそれぞれ乗りかごと釣合い錘とが吊り下げられ、前記シーブの駆動軸の回転量に応じた数のパルスを生成するモータパルスジェネレータを有するエレベータを制御し、
前記エレベータのトラクション能力が正常な状態で前記乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶するパルスデータセット記憶部と、
所定の診断運転の実行タイミングが到来すると前記乗りかごを所定区間走行させることで診断運転を実行させる診断運転実行部と、
前記乗りかごの走行中に前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値を算出するパルス積算値算出部と、
前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて前記所定区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断するトラクション能力診断部と
を備え、
前記トラクション能力診断部は、前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する
ことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記パルスデータセット記憶部に記憶されるパルスデータセット内の値は、前記乗りかごに積載物がない状態で所定位置から各階の着床位置まで走行したときに生成されたパルス数の積算値であり、
前記診断運転実行部は、前記乗りかごに積載物がない状態で前記診断運転を実行させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記エレベータの状態を遠隔から監視する遠隔監視装置に接続され、
前記パルス積算値算出部は、前記遠隔監視装置からの指示に基づいて前記診断運転の実行タイミングが到来したか否かを判断し、
前記トラクション能力診断部は、前記診断の結果情報を、前記遠隔監視装置に送信する
ことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記診断運転は所定期間ごとに実行され、
前記トラクション能力診断部は、前記閾値である第1の閾値と、当該第1の閾値よりも低い第2の閾値とを設定し、前記差分が前記第2の閾値以上であり前記第1の閾値未満であることを検知したときに、前回の診断運転時の診断結果に基づいてトラクション能力の低下が予測される状態であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
巻き上げ機のシーブにメインロープが掛け渡され、その両端にそれぞれ乗りかごと釣合い錘とが吊り下げられ、前記シーブの駆動軸の回転量に応じた数のパルスを生成するモータパルスジェネレータを有するエレベータを制御し、
前記エレベータのトラクション能力が正常な状態で前記乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶するパルスデータセット記憶部と、
前記乗りかごの走行中に前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値を算出するパルス積算値算出部と、
を備えたエレベータ制御装置が、
所定の診断運転の実行タイミングが到来すると前記乗りかごを所定区間走行させることで診断運転を実行させ、
前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて前記所定区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する
エレベータ制御方法において、
前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する
ことを特徴とするエレベータ制御方法。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して、当審が令和5年6月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件訂正前の請求項1及び6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1、3及び4号証に記載された事項並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
甲第1号証:国際公開第2017/203561号
甲第2号証:特開2014-43291号公報
甲第3号証:特開2018-135197号公報
甲第4号証:特開2011-32075号公報
第5 当審の判断
1 各甲号証の記載等
(1)甲第1号証の記載事項
取消理由通知で引用された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
ア「[0010]実施の形態1.
図1から図4は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエレベーター装置の全体構成を模式的に示す図、図2はエレベーター装置が備えるかご位置検出器を示す図、図3はエレベーター装置が備えるトラクション判定部の構成を示すブロック図、図4はエレベーター装置の動作の一例を示すフロー図である。
[0011] 図1に示すように、エレベーターの昇降路内には、乗りかご1が設置されている。乗りかご1は、図示しないガイドレールに案内されて昇降路内を昇降する。乗りかご1の上端には主ロープ3の一端が連結されている。主ロープ3の他端は釣合い重り2の上端に連結されている。釣合い重り2は昇降路内に昇降自在に設置されている。
[0012] 主ロープ3の中間部は、昇降路の頂部に設置された巻上機5の綱車4に巻き掛けられている。また、主ロープ3の中間部は、昇降路の頂部に綱車4に隣接して設けられたそらせ車にも巻き掛けられている。このようにして、乗りかご1及び釣合い重り2は、主ロープ3によって昇降路内で互いに相反する方向に昇降するつるべ状に吊るされている。すなわち、この発明に係るエレベーターの診断装置が適用されるエレベーターは、いわゆるトラクション方式のエレベーターである。」
イ「[0015] 乗りかご1が停止可能な階のそれぞれには、乗場9が設けられている。乗場9は、エレベーターの利用者が乗りかご1に対して乗降するための場所である。巻上機5の綱車4には、綱車回転検出器11が取り付けられている。綱車回転検出器11は、例えばエンコーダからなる。このエンコーダは、綱車4の回転位相角度に応じて例えばパルス状の信号を出力する。このエンコーダから出力されたパルス状信号のパルス数を計数することにより、綱車4の回転量を検出することができる。」
ウ「[0020] 以上のように構成されたエレベーター装置の運転動作全般は、エレベーター制御部21により制御される。例えば、エレベーター制御部21は、綱車回転検出器11、かご位置検出器12及び秤装置13の検出結果等に基づいて、乗りかご1の走行を制御する。乗りかご1の走行制御は、エレベーター制御部21が巻上機5及びブレーキ6の動作を制御することに行われる。すなわち、巻上機5の動作は、エレベーター制御部21により制御される。したがって、エレベーター制御部21は、巻上機5の動作を制御することで乗りかご1を走行させる制御手段を構成している。」
エ「[0023] トラクション診断部30の構成について、図3を参照しながら説明する。この図3に示すように、トラクション診断部30は、区間特定部31、過去データ記憶部32、判定部33、基準値記憶部34及び基準値補正部35を備えている。」
オ「[0035] 過去データ記憶部32は、これまでに区間特定部31が特定した判定対象区間を乗りかご1が走行した際の綱車回転検出器11が検出した綱車4の回転量を記憶する。具体的に例えば、過去データ記憶部32は、乗りかご1の走行日時、判定対象区間の始点となる階及び判定対象区間の終点となる階(すなわち、乗りかご1の走行区間及び走行方向)、並びに、綱車回転検出器11が検出した綱車4の回転量を記憶する。
[0036] 判定部33は、区間特定部31が特定した判定対象区間を乗りかご1が走行した際の綱車回転検出器11が検出した綱車4の回転量に基づいて、綱車4のトラクション能力を判定する。判定部33は、例えば、予め設定された基準値を用いて、この判定を行う。基準値記憶部34は、判定部33が綱車4のトラクション能力の判定に用いる基準値を予め記憶している。この際における、基準値の設定方法及び基準値を用いた綱車4のトラクション能力の判定方法については、複数の方法が考えられる。以下に、基準値の設定方法及び基準値を用いた綱車4のトラクション能力の判定方法の複数の例について順に説明する。
[0037] 最初に説明する第1の例では、基準値記憶部34は、判定対象区間の距離毎に予め設定された基準値を予め記憶している。判定部33は、乗りかごが判定対象区間を走行した際の綱車回転検出器11が検出した綱車4の回転量と、基準値記憶部34に記憶されている当該判定対象区間の距離の基準値とを比較して綱車4のトラクション能力を判定する。そして、判定部33は、例えば、綱車4の回転量が基準値以上である場合に、綱車4のトラクション能力が低下していると判定する。
[0038] なお、前述したように、判定対象区間の始点及び終点をドアゾーン内にした場合、判定対象区間の距離は、2つの階間のドアゾーン内からドアゾーン内までの乗りかご1の移動距離になる。そこで、予め2つの階間のドアゾーン内からドアゾーン内まで乗りかご1を通常よりも遅い速度で走行させた際の移動距離を学習しておくことで、判定対象区間の距離を自動的に設定してもよい。このようにして、2つの階間のドアゾーン内からドアゾーン内までの乗りかご1の移動距離を定期的に学習して更新することで、主ロープ3の減径及び綱車4の摩耗による綱車4の回転量の経年変化を補正することができる。
[0039] 次に、第2の例では、基準値記憶部34は、判定対象区間毎に予め設定された基準値を予め記憶している。判定部33は、乗りかごが判定対象区間を走行した際の綱車回転検出器11が検出した綱車4の回転量と、基準値記憶部34に記憶されている当該判定対象区間の基準値とを比較して綱車4のトラクション能力を判定する。そして、判定部33は、例えば、綱車4の回転量が基準値以上である場合に、綱車4のトラクション能力が低下していると判定する。
[0040] また、第3の例では、基準値記憶部34は、判定対象区間と乗りかご1の走行方向との組み合わせ毎に予め設定された基準値を予め記憶している。判定部33は、乗りかごが判定対象区間を走行した際の綱車回転検出器11が検出した綱車の回転量と、基準値記憶部34に記憶されている当該判定対象区間と乗りかごの走行方向との組み合わせについて設定された基準値とを比較して綱車のトラクション能力を判定する。そして、判定部33は、例えば、綱車4の回転量が基準値以上である場合に、綱車4のトラクション能力が低下していると判定する。」
カ「[0055] 次に、以上のように構成されたエレベーター装置の動作の一例について、図4を参照しながら説明する。乗りかご1の走行が開始されると、まず、ステップS1において、トラクション診断部30の区間特定部31は、乗りかご1の当該走行の走行区間について、加速又は減速を含む区間であるか否かを確認する。そして、加速又は減速を含む区間でない場合には、一連の動作フローは終了する。一方、ステップS1において、乗りかご1の走行区間が加速又は減速を含む区間である場合には、ステップS2へと進む。
[0056] ステップS2においては、区間特定部31は、秤装置13の検出結果に基づいて、乗りかご1側の重量と釣合い重り2側の重量とがアンバランスである乗りかご1の積載重量であるか否かを確認する。そして、乗りかご1側の重量と釣合い重り2側の重量とがアンバランスである乗りかご1の積載重量でない場合には、一連の動作フローは終了する。一方、ステップS2において、乗りかご1側の重量と釣合い重り2側の重量とがアンバランスである乗りかご1の積載重量である場合には、ステップS3へと進む。
[0057] ステップS3においては、区間特定部31は、乗りかご1の加減速の方向が、乗りかご1側の主ロープ3にかかる張力と、釣合い重り2側の主ロープ3にかかる張力との比が高くなる方向であるか否かを確認する。すなわち、これは、乗りかご1側及び釣合い重り2側のうちの重量が大きい方の加速度ベクトルの方向が上昇方向になるか否かを確認するということである。」
キ「[0066] 以上のように構成されたエレベーター装置においては、綱車4に対する主ロープ3の滑り量が大きくなる判定実施条件が成立する乗りかご1の走行位置を含む判定対象区間を特定し、この判定対象区間における綱車4の回転量に基づいて綱車4のトラクション能力を診断する。すなわち、意図的に綱車4に対する主ロープ3の滑り量が大きくなりやすい走行条件下での綱車4の回転量に基づいて綱車4のトラクション能力を診断する。このため、綱車4のトラクション能力が低下し始めた初期における綱車4に対する主ロープ3の滑り量を、より大きなものとすることができ、トラクション能力低下の初期においても、一早くトラクション能力低下を検知することができる。
[0067] また、乗りかご1を往復させることなく1回の片道走行だけでもトラクション能力診断を実施することができる。さらに、診断対象となるエレベーターの乗りかご1によりサービスを提供している際の走行によってもトラクション能力診断を実施することができる。したがって、トラクション能力診断のためにサービス提供を停止する必要がない。」
ク「[0080] なお、特に乗りかご1が空である場合のデータをトラクション能力の診断に用いるようにすることで、乗りかご1内に利用者がいないことから、乗り心地等に配慮することなく、例えば、大きな加速度で走行させて、綱車4に対する主ロープ3の滑り量をより大きくなりやすくすることができる。」
ケ「[0089] 加えて、トラクション能力の判定において、綱車4の回転量を基準値と比較するのではなく、過去に保存した綱車4の回転量のデータを用いるため、基準値を設定する必要がない。また、基準値を設定する必要がないため、主ロープ3の減径及び綱車4の摩耗による綱車4の回転量の経年変化を考慮して基準値を補正する必要もなく、綱車4の回転量の経年変化の影響を受けにくくすることができる。」
コ[図1]
[図:0001411281000001.jpg]
(2)甲2号証の記載事項等について
ア 甲第2号証の記載事項
取消理由通知で引用された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
トラクション式のエレベータは、経年変化に伴って、鋼車とロープとの間のトラクション(摩擦)能力が低下し、ロープスリップが発生することがある。そして、このようなロープスリップを検出するロープスリップ検出装置が知られている(特許文献1)。」
(イ)「【0010】
図1は、エレベータシステム1の全体構成を示す。図1に示すトラクション式のエレベータシステム1は、例えば、乗りかご5と、釣り合い錘6と、ロープ3と、巻き上げ機2と、パルスエンコーダ7と、制御装置10とを備える。
【0011】
乗りかご5は、昇降路4内を昇降して、乗客を所定の階床に運搬する。乗りかご5と釣り合い錘6は、巻き上げ機2を介して、ロープ3で接続されている。
【0012】
巻き上げ機2は、モータを回転させてロープ3を巻き上げ、乗りかご5を昇降させる。例えば、図1に示すエレベータシステム1の場合、モータが右回転すると乗りかご5は上昇し、モータが左回転すると乗りかご5は下降する。」
(ウ)「【0014】
回転検出器の例としてのパルスエンコーダ7は、巻き上げ機2のモータの回転数を検出する。パルスエンコーダ7は、モータの回転数に合わせて所定のパルス信号51を出力する。したがって、このパルス信号51の数及び周期を解析することで、モータの回転数及び回転速度を算出することができる。」
(エ)「【0021】
例えば、図3に示すように、エレベータが設置された直後、又は保守点検が実施された直後において、乗りかご5が1階から2階まで移動したときのモータの回転数をH1とする。つまり、乗りかご5に設置された階床板検出器8が、1階の階床板9を検知してから2階の階床板9を検知するまでの間に発生したパルス信号51の数をH1とする。言い換えると、H1は、1階から2階までの高さと言うこともできる。このH1を1階から2階までの階高データ31という。エレベータが設置された直後、又は保守点検が実施された直後は、ロープスリップは発生しないと想定される。そこで、このエレベータが設置された直後、又は保守点検が実施された直後に算出された階高データ31を、基準階高データ31とする。
【0022】
次に、エレベータが設置されてから又は保守点検が実施されてから、所定期間が経過した後の1階から2階までの階高データ31をH1Aとする。このとき、経年変化によって鋼車とロープ3との間のトラクション能力が低下していると、乗りかご5の出発時等にロープスリップが発生してしまう虞がある。出発時にロープスリップが発生した場合、1階から2階まで乗りかご5を移動させたときのモータの回転数は、ロープスリップが発生しなかった場合よりも大きくなる。つまり、ロープスリップが発生した場合のH1Aは、ロープスリップが発生しなかった場合のH1よりも大きくなる(H1A>H1)。
【0023】
階高データ算出部21は、乗りかご5が、所定の基準階床(例えば1階)から、一方向(例えば上昇方向)に移動して、所定の階床(例えば2階)を通過したときに、その所定の階床(例えば2階)に対応する階高データ31(H1、H1A)を算出し、メモリ16に保持する。同様に、階高データ算出部21は、例えば、乗りかご5が3階を通過したときに、その3階に対応する階高データ31(H2、H2A)を算出し、メモリ16に保持する。
【0024】
次に、比較部22は、基準階高データ31(例えばH1)と、今回階高データ算出部21が算出した階高データ31(例えばH1A)とを比較する。例えば、比較部22は、H1とH1Aとの差分Dを算出し、その差分Dに基づいて以下のように乗りかご5の制御を変更する。
【0025】
(A)H1とH1Aとの差分Dがほぼ0の場合、比較部22は、乗りかご5の制御を特に変更しない。ここで、差分Dがほぼ0とは、例えば、差分Dと0との偏差が予め定められた所定値よりも小さく、トラクション制御において差分Dを実質的に0とみなせることを意味する。
【0026】
(B)H1とH1Aとの差分Dが、第1の判定値Th1よりも大きく、第2の判定値Th2以下の場合(Th1<D≦Th2)、比較部22は、その差分Dを乗りかご5の制御の補正に用いる。なぜなら、出発時にロープスリップが発生した場合、1階から2階まで乗りかご5を移動させるためにH1の示す値だけモータを回転させたとしても、乗りかご5は、2階の階床位置よりも差分Dの距離だけ下の位置までしか到達しないからである。そこで、当該条件に適合する場合は、差分Dを用いて基準階高データ31を補正する。
【0027】
(C)H1とH1Aとの差分Dが、所定の第2の判定値Th2よりも大きく、第3の判定値Th3以下の場合(Th2<D≦Th3)、比較部22は、乗りかご5の移動速度を通常の場合よりも遅くする。なぜなら、乗りかご5の移動速度を遅くすることにより、ロープスリップを小さくすることができるからである。
【0028】
(D)H1とH1Aとの差分Dが、所定の第3の判定値Th3よりも大きい場合(Th3<D)、比較部22は、乗りかご5を最寄りの階床に停止させて、エレベータの運行を中止する。つまり、大きなロープスリップが発生した場合は、安全性確保のためにエレベータの運行を終始する。以下、図2の説明に戻る。」
(オ)【図1】
[図:0001411281000002.jpg]
イ 甲2の認定事項
甲2の【図1】からは、両端に乗りかご5と釣合い錘6が接続されたロープ3が、巻き上げ機2の鋼車に掛けられた構成が見て取れる。
ウ 甲2発明
上記アの記載事項及び上記イの認定事項より、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
[甲2発明]
「巻き上げ機2の鋼車にロープ3が掛けられ、ロープ3の両端に乗りかご5と釣合い錘6が接続され、巻き上げ機2のモータの回転数に合わせて所定の数のパルス信号51を出力するパルスエンコーダ7を備えるエレベータシステム1を制御し、
ロープスリップは発生しないと想定されるエレベータが設置された直後、又は保守点検が実施された直後に、乗りかご5が所定の基準階床から、一方向に移動して所定の階床を通過するまででのパルス信号51の、各々の数H1、H2を基準階高データ31としてメモリ16に保持し、
エレベータが設置されてから又は保守点検が実施されてから、所定期間が経過した後、乗りかご5を所定の基準階床から、一方向に移動して所定の階床を通過させパルス信号51の各々の数H1A、H2Aを今回の階高データ31として算出する制御装置10内の構成と、
パルス信号51の数から各階床の階高データ31を算出する階高データ算出部21と、
メモリ16に保持した基準階高データ31と、所定期間が経過した後の今回の階高データ31との差分Dを算出し、
差分Dが、第1の判定値Th1よりも大きく第2の判定値Th2以下の場合(Th1<D≦Th2)に、比較部22は、その差分Dを乗りかご5の制御の補正に用い、
差分Dが、所定の第2の判定値Th2よりも大きく第3の判定値Th3以下の場合(Th2<D≦Th3)に、比較部22は、乗りかご5の移動速度を通常の場合よりも遅くし、
差分Dが所定の第3の判定値Th3より大きい場合、比較部22は、大きなロープスリップが発生した場合として、エレベータの運行を中止し、
通信ネットワークを介した別の場所に設置されるエレベータの保守管理会社が運用する保守管理サーバ14に、エレベータの状態及び保守点検に関する情報等を発報する、
エレベータシステム1の制御装置及び方法。」
(3)甲第3号証の記載事項
取消理由通知で引用された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【0022】
制御装置8では、診断運転の開始条件が成立したか否かが判定される。診断運転は、例えば定期的に行われる。制御装置8は、例えば特定の日時になり且つかご1に人が乗っていなければ、診断運転の開始条件が成立したと判定する。診断運転の開始条件として他の条件を採用しても良い。開始条件は、記憶部19に予め記憶される。制御装置8は、開始条件が成立すると診断運転を開始する(S101)。診断運転における各機器の動作は、動作制御部20によって制御される。」
(4)甲第4号証の記載事項
取消理由通知で引用された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0030】
本実施の形態におけるトラクション能力の低下を検出するための速度パターンでは、第一に、図4(b)に示すように、加減速度を通常運行サービス時の加減速度であるa1からそれよりも大きな値であるa2へと、大きくする変更をしている(a1<a2)。通常運行サービス時の加減速度a1は、設置場所や利用者の必要に応じて変更されるが、およそ0.1G程度とするのが通常である。また、一般的な通常のエレベータ装置においては、利用者の乗り心地を良くする観点から、システムの発揮しえる限界加速度による運行はしていないので、トラクション能力を確認するための走行時にのみ、加減速度を大きくする事は可能である。」
イ「【0050】
図8に遠隔診断装置22の動作フローを示す。
遠隔診断装置22は、保守センター等の遠隔地に設置された遠隔監視システムからの診断運転要求に対応して、本動作フローに入る。まずはじめに、エレベータ装置が、トラクション診断運転の開始準備をおこなう(STEP11)。準備としては、診断運転に必要なセンサや巻上機5が動作可能な状態であるかの判断や、乗客に診断を実施する旨を通知して乗りかご1内に乗客がいないことの確認を行う。乗りかご1内の乗客の有無は、乗りかご秤14による乗りかご1内の重量から判断してもよいし、乗りかご1内に、別途、人を検出するための検出センサを設けて検出してもよい。準備(STEP11)をした後には、トラクション診断運転が可能な状態か否かを判断し(STEP12)、診断運転が不可能であればその旨を保守センターの遠隔監視システム等に通知する(STEP13)。診断運転が可能な状態であれば、トラクション診断運転を実施し(STEP14)、滑り量を確認し(STEP15)、トラクションの判断をおこなう(STEP16)。(以下省略)」
ウ「【0052】 本実施の形態においては、遠隔地に設置された遠隔監視システムからの通信による診断運転要求をきっかけとして診断運転を実施するが、その場合に限らず、遠隔監視システムからの指示がない場合においても、遠隔診断装置22が、定期的に自己判断で診断運転を実施し、診断結果を遠隔監視システムに送信するようにしてもよい。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
後者の「巻き上げ機2」は前者の「巻き上げ機」に相当し、以下同様に、「鋼車」は「シーブ」に、「ロープ3」は「メインロープ」に、「掛けられ」ることは「掛け渡され」ることに、それぞれ相当する。
後者の「乗りかご5」は前者の「乗りかご」に、後者の「釣合い錘6」は前者の「釣合い錘」にそれぞれ相当する。また、前者の「その両端」とは「メインロープの両端」のことと認められるから、後者の「ロープ3の両端に乗りかご5と釣合い錘6が接続され」る構成は、前者の「その両端にそれぞれ乗りかごと釣合い錘とが吊り下げられ」る構成に相当する。
後者の「パルス信号51」は前者の「パルス」に、後者の「出力する」ことは前者の「生成する」ことに、それぞれ相当し、後者の「巻き上げ機2のモータの回転数に合わせて所定の数のパルス信号51を出力する」ことと、前者の「前記シーブの駆動軸の回転量に応じた数のパルスを生成する」こととは、「巻き上げ機の回転量に応じた数のパルスを生成する」限りにおいて共通する。そして、後者の「パルスエンコーダ7」は前者の「パルスジェネレータ」に、後者の「備える」ことは前者の「有する」ことに、後者の「エレベータシステム1を制御」することは前者の「エレベータを制御」することに、それぞれ相当する。
後者の「ロープスリップは発生しないと想定されるエレベータが設置された直後、又は保守点検が実施された直後」は前者の「エレベータのトラクション能力が正常な状態」に相当し、後者の「乗りかご5が所定の基準階床から、一方向に移動して所定の階床を通過するまででのパルス信号51の、各々の数H1、H2」は前者の「乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数」に相当し、後者の「基準階高データ31としてメモリ16に保持」することは前者の「積算値をパルスデータセットとして記憶する」ことに相当する。また後者の「メモリ16」のうち、「基準階高データ31」を保持する部分は、前者の「パルスデータセット記憶部」に相当する。
後者の「エレベータが設置されてから又は保守点検が実施されてから、所定期間が経過した後」は前者の「所定の診断運転の実行タイミングが到来する」ことに相当し、後者の「所定期間が経過した後、乗りかご5を所定の基準階床から、一方向に移動して所定の階床を通過させパルス信号51の各々の数H1A、H2Aを今回の階高データ31として算出する」ことは前者の「前記乗りかごを所定区間走行させることで診断運転を実行させる」ことに相当するから、後者の「エレベータが設置されてから又は保守点検が実施されてから、所定期間が経過した後、乗りかご5を所定の基準階床から、一方向に移動して所定の階床を通過させパルス信号51の各々の数H1A、H2Aを今回の階高データ31として算出する制御装置10内の構成」は前者の「所定の診断運転の実行タイミングが到来すると前記乗りかごを所定区間走行させることで診断運転を実行させる診断運転実行部」に相当する。
後者の「パルス信号51の数から各階床の階高データ31を算出する」ことは前者の「乗りかごの走行中に前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値を算出する」ことに相当し、後者の「階高データ算出部21」は前者の「パルス積算値算出部」に相当する。
後者の「メモリ16に保持した基準階高データ31」は前者の「パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて前記所定区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値」に相当し、後者の「メモリ16に保持した基準階高データ31と、所定期間が経過した後の今回の階高データ31との差分D」は、前者の「パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて前記所定区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分」に相当し、後者の「差分Dが所定の第3の判定値Th3より大きい場合」は、前者の「差分が所定の閾値以上」に相当する。そして、後者の「算出した差分Dが所定の第3の判定値Th3より大きい場合」であって「大きなロープスリップが発生した場合」は、前者の「トラクション能力が正常でない」状態に相当するから、後者の「大きなロープスリップが発生した場合として、エレベータの運行を中止」する「比較部22」は、前者の「トラクション能力が正常でないと診断するトラクション能力診断部」に相当する。
そして、後者の「エレベータシステム1の制御装置及び方法」は前者の「エレベータ制御装置」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
[一致点1]
「巻き上げ機のシーブにメインロープが掛け渡され、その両端にそれぞれ乗りかごと釣合い錘とが吊り下げられ、前記巻き上げ機の回転量に応じた数のパルスを生成するモータパルスジェネレータを有するエレベータを制御し、
前記エレベータのトラクション能力が正常な状態で前記乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶するパルスデータセット記憶部と、
所定の診断運転の実行タイミングが到来すると前記乗りかごを所定区間走行させることで診断運転を実行させる診断運転実行部と、
前記乗りかごの走行中に前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値を算出するパルス積算値算出部と、
前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて前記所定区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断するトラクション能力診断部と
を備えるエレベータ制御装置。」
[相違点1]
モータパルスジェネレータが生成する、「巻き上げ機の回転量」に応じた数のパルスに関し、本件発明1は、「前記シーブの駆動軸の回転量」に応じた数のパルスであるのに対し、甲2発明は「巻き上げ機2のモータの回転数」に応じた数のパルスである点。
[相違点2]
本件発明1の「トラクション能力診断部は、前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて、前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する」構成(以下、「本件発明1における相違点2に係る発明特定事項」という。)であるのに対し、甲2発明の比較部22は、このような構成を有しない点。
(2)判断
事案に鑑み、先に相違点2について検討する。
甲1には、加速又は減速を含む区間でトラクション診断をすること(段落[0055]参照。)が記載されているとともに、大きな加速度で走行させる技術手段(段落[0080])参照。)も記載されており、甲4にも、「トラクション能力の低下を検出する」際に「加減速度を通常運行サービス時の加減速度」よりも「大きくする変更」する技術手段(段落【0030】参照)が記載されている。但し、これらの大きな加速度で走行させる前提として、甲1の[0080]には、「特に乗りかご1が空である場合のデータをトラクション能力の診断に用いるようにすることで、乗りかご1内に利用者がいないことから、乗り心地等に配慮することなく、例えば、大きな加速度で走行させて、綱車4に対する主ロープ3の滑り量をより大きくなりやすくすることができる。」と記載されており、甲4の【0030】には「一般的な通常のエレベータ装置においては、利用者の乗り心地を良くする観点から、システムの発揮しえる限界加速度による運行はしていないので、トラクション能力を確認するための走行時にのみ、加減速度を大きくする事は可能である。」と記載されている。
一方、甲2発明は、「エレベータが設置された直後、又は保守点検が実施された直後」と「所定期間が経過した後」における階高データの「差分D」を、乗りかご5の制御の補正に用いたり、大きなロープスリップの発生を判定するために用いたりするものであって、甲2には、階高データを取得する際に利用者の有無について配慮が不要であることは何ら記載されていない。さらに、甲2発明の差分Dは「乗りかご5の制御の補正」に用いるものであるから、当該差分Dは通常の昇降時と条件を揃えて取得していると解するのが自然であり、通常の昇降時より大きなロープスリップが発生すると想定される「加速度を大きくする」状況での差分Dは、通常の昇降時における制御の補正には利用しにくいことを考慮すれば、甲2発明の、差分Dを得るための階高データに関し、甲1や甲4に記載されている、乗りかご内に利用者がいないことを前提として通常の昇降時より加速度を大きくして取得するという事項を採用する動機付けは無く、むしろ、阻害要因があるといえる。
そうすると、甲2発明に、甲1又は甲4に記載された事項を適用することで本件発明1における相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易になし得たこととは認められない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明並びに甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明2~5について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~5は、本件発明1における相違点2に係る発明特定事項を含む、本件発明1を特定するための事項を全て含み、本件発明1をさらに減縮したものである。したがって、その余の事項を検討するまでもなく、前記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2~5は、甲2発明並びに甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本件発明6について
本件発明6は、「エレベータ制御装置」についての本件発明1を、「エレベータ制御方法」に変更したものであって、実質的に、本件発明1における相違点2に係る発明特定事項と同様の事項を備えるものであるから、上記2で述べたと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明並びに甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 取消理由通知において採用しなかった異議申立人の主張について
1 特許異議申立書の主張
異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲1発明及び甲第1~4号証に記載され事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
そこで、甲第1号証に記載された発明について検討する。
(1)甲1の実施の形態1に係る発明について
甲第1号証の段落[0010]~[0067]には、次の実施の形態1に係る発明が記載されている。
[甲1の実施の形態1に係る発明](括弧内には、対応する本件発明1の構成を記載する。)
「巻上機5(巻き上げ機)の綱車4(シーブ)に主ロープ3(メインロープ)が巻き掛けられ(掛け渡され)、その両端にそれぞれ乗りかご1(乗りかご)と釣合い重り2(釣合い錘)とが連結され(吊り下げられ)、前記綱車4の回転位相(シーブの駆動軸の回転量)に応じた数のパルス状の信号を出力する(パルスを生成する)エンコーダ(モータパルスジェネレータ)を有するエレベーター(エレベータ)を制御し、
判定部33が綱車4のトラクション能力の判定に用いる基準値を、乗りかご1を通常よりも遅い速度で走行させた際の移動距離を定期的に学習して更新し、予め記憶する基準値記憶部34(パルスデータセットとして記憶するパルスデータセット記憶部)と、
走行区間が加減速を含み、乗りかご1側の重量と釣り合い重り2側の重量とがアンバランスである乗りかご1の積載重量であり、乗りかご1の加減速の方向が、主ロープ3にかかる張力の比が大きくなる方向である条件がそろう場合(所定の診断運転の実行タイミングが到来すると)、乗りかご1を判定対象区間を走行させることで綱車4のトラクション能力を判定する(所定区間走行させることで診断運転を実行させる)エレベータ制御部21及びトラクション診断部30(診断運転実行部)と、
前記乗りかご1の走行中にエンコーダから出力されたパルス状の信号のパルス数(前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値)を計数する(算出する)回転検出器(パルス積算値算出部)と、
基準値記憶部に予め記憶された基準値に基づいて判定対象区間に該当する基準値を取得し、取得した基準値と、前記条件がそろう場合(診断運転中)に前記回転検出器で計数されたパルス数が所定の基準値以上(差分が所定の閾値以上)であれば、トラクション能力が低下している(正常でない)と診断する判定部33(トラクション能力診断部)と
を備え、
判定部33は、基準値記憶部に予め記憶された基準値に基づいて、(前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて)、判定対象区間の基準値(前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値)を取得し、前記パルス数の積算値が取得した基準値以上(「パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセット」と、「計数されたパルス数」との「差分が所定の閾値以上」)であれば、トラクション能力が低下している(正常でない)と診断するエレベーター制御部21及びトラクション診断部30(エレベータ制御装置)。」
(2)本件発明1と甲1の実施の形態1に係る発明との対比
本件発明1と甲1の実施の形態1に係る発明とを対比すると、以下の相違点3及び4で相違し、その余の点で一致する。
[相違点3]
本件発明1はトラクション能力の低下を判断するための基準となる「パルスデータセット」を「前記エレベータのトラクション能力が正常な状態で前記乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶」する構成であるのに対し、甲1の実施の形態1に係る発明は、トラクション能力の低下を判断するための「基準値」を、「乗りかご1を通常よりも遅い速度で走行させた際の移動距離を定期的に学習して更新」する構成である点。
[相違点4]
本件発明1の「トラクション能力診断部」は「取得したパルス数の積算値」と「前記診断運転中に前記乗りかごが前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する」のに対し、甲1の実施の形態1に係る発明の「判定部33」は「基準値」と、通常運転時における加速度よりも高くして走行したときのパルス数の積算値とを比較する構成を有しない点。
(3)相違点4の検討
事案に鑑み相違点4について検討する。
甲1の実施の形態1に係る発明は、「診断対象となるエレベータの乗りかご1によりサービスを提供している際の走行によってもトラクション能力診断を実施することができる」(段落[0067]参照)発明である。また、乗りかご1の積載重量が最大積載重量の50%より多いか否かによって判定実施条件を場合分けしており(段落[0025]~[0030]参照)、積載重量が0%以外の時は乗客がいるということであるから、甲1の実施の形態1に係る発明は、乗りかご1に乗客がいてもトラクション能力診断を実施するものと理解されるので、上記第5 2(2)で検討したことと同様の理由により、本件発明1~6の「前記加減速区間における加速度を通常運転時における加速度よりも高くして走行したときに前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値」を得る構成とすることに阻害要因があると言える。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1の実施の形態1に係る発明及び甲第1~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)甲1の実施の形態2に係る発明について
甲第1号証には、実施の形態1に係る発明の他に、段落[0068]~[0089]に、次の実施の形態2に係る発明も記載されている。
[甲1の実施の形態2に係る発明](括弧内には、対応する本件発明1の構成を記載する。)
「巻上機5(巻き上げ機)の綱車4(シーブ)に主ロープ3(メインロープ)が巻き掛けられ(掛け渡され)、その両端にそれぞれ乗りかご1(乗りかご)と釣合い重り2(釣合い錘)とが連結され(吊り下げられ)、前記綱車4の回転位相(シーブの駆動軸の回転量)に応じた数のパルス状の信号を出力する(パルスを生成する)エンコーダ(モータパルスジェネレータ)を有するエレベーター(エレベータ)を制御し、
乗りかご1が空である場合に、乗りかご1の出発階、目的階及び走行方向毎に分類した綱車4の回転量のデータを、予め記憶する過去データ記憶部32(乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶するパルスデータセット記憶部)と、
乗りかご1が空である場合であって、出発階、目的階及び走行方向毎に分類した綱車4の回転量のデータが更新されるときに、乗りかご1を制御する、(所定の診断運転の実行タイミングが到来すると、所定区間走行させることで診断運転を実行させる)エレベータ制御部21及びトラクション診断部30(診断運転実行部)と、
前記乗りかご1の走行中にエンコーダから出力されたパルス状の信号のパルス数(前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値)を計数する(算出する)綱車回転検出器11(パルス積算値算出部)と、
前記トラクション診断部30の過去データ記憶部32に記憶されている上昇走行時の綱車4の回転量の平均値と、下降走行時の綱車4の回転量の平均値との差分が、予め設定された許容値以上である場合は、トラクション能力が低下している(正常でない)と診断する前記トラクション診断部30の判定部33(トラクション能力診断部)と
を備え、
前記判定部33(トラクション能力診断部)は、前記過去データ記憶部32から取得した綱車4の回転量(パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセット)に基づいて、乗りかご1が空である場合に大きな加速度で走行させた場合の、上昇走行時の綱車4の回転量の平均値と下降走行時の綱車4の回転量の平均値とを算出し(前記診断運転中に前記乗りかごが加速または減速する加減速区間に該当するパルス数の積算値を取得し)、上昇走行時の綱車4の回転量の平均値と下降走行時の綱車4の回転量の平均値との差分が予め設定された許容値以上(所定の閾値以上)であれば、トラクション能力が低下している(正常でない)と診断する
エレベーター制御部21及びトラクション能力診断部30(エレベータ制御装置)。」
(5)本件発明1と甲1の実施の形態2に係る発明との対比
本件発明1と甲1の実施の形態2に係る発明とを対比すると、以下の相違点5及び6で相違し、その余の点で一致する。
[相違点5]
本件発明1の「パルスデータセット記憶部」は「前記エレベータのトラクション能力が正常な状態で前記乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶する」構成であるのに対し、甲1の実施の形態2に係る発明の「過去データ記憶部32」は、トラクション能力が正常な状態か否かは問わず、「乗りかご1が空である場合」に綱車4の回転量のデータを記憶する点。
[相違点6]
本件発明1の「トラクション能力診断部」は、「前記パルスデータセット記憶部に記憶されたパルスデータセットに基づいて前記所定区間に該当するパルス数の積算値を取得し、取得したパルス数の積算値と、前記診断運転中に前記パルス積算値算出部で算出されたパルス数の積算値との差分」が所定の閾値以上であれば、トラクション能力が正常でないと診断する」のに対し、 甲1の実施の形態2に係る発明の「判定部33」は、「上昇走行時の綱車4の回転量の平均値と、下降走行時の綱車4の回転量の平均値との差分が、予め設定された許容値以上」である場合にトラクション能力が低下していると診断する点。
(6)相違点5の検討
相違点5について検討する。
甲1の実施の形態2に係る発明は、乗りかご1が空であれば、トラクション能力が正常な状態か否かを問わずに、綱車4の回転量のデータを記憶し、その記憶された上昇走行時の綱車4の回転量の平均値と、下降走行時の綱車4の回転量の平均値(図6によれば、上昇走行時も下降走行時も、最新のデータと過去1と過去2のデータの平均値)との差分によってトラクション能力の低下を判定するものであり、その結果、「綱車4の回転量を基準値と比較するのではなく、過去に保存した綱車4の回転量のデータを用いるため、基準値を設定する必要がない」(段落[0089]参照)という特有の効果を奏する発明であるため、甲2に「エレベータのトラクション能力が正常な状態で前記乗りかごが所定位置から各階の着床位置まで走行したときに、前記モータパルスジェネレータで生成されたパルス数の積算値をパルスデータセットとして記憶するパルスデータセット記憶部」を備え、当該トラクション能力が正常な状態のパルス数の積算値と、所定の診断タイミングでの積算値との差分によってトラクション能力を診断する構成が記載されていても、診断のための基準値を設定しないようにした甲1の実施の形態2に係る発明に、当該構成を適用することには阻害要因があると言える。
したがって、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1の実施の形態2に係る発明及び甲第1~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)小括
よって、異議申立人の上記の特許異議申立書の主張は採用できない。
2 令和5年11月17日付け意見書の主張
異議申立人は、令和5年11月17日付け意見書において、本件発明1及び6は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された事項を甲2発明に適用することで、本件発明2、4及び5は、甲2発明、甲第1~4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、甲第2号証を主引例とした場合については、上記第5 2(2)、3及び4において検討したとおりであるから、異議申立人の上記の意見書の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件の請求項1、2、4~6に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件の請求項1、2、4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件訂正請求により、請求項3は削除されたため、請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ての対象は存在しないこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。
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2023-700352