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特許異議申立

2023-700428

樹脂成形体およびタブリード

審判番号
2023-700428
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-553729
登録番号
7160048
請求日
2023年04月25日
審決日
2023年06月30日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】住友電気工業株式会社
  • 【権利者代理人】北野 修平
  • 【権利者代理人】田中 勝也
  • 【異議申立人】尾崎 真実
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 瀧澤 佳世
  • 審判官 藤井 勲
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7160048号発明「樹脂成形体およびタブリード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7160048号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7160048号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、平成30年10月3日(優先権主張 平成29年11月17日 日本国)を国際出願日とする出願に係る特許であって、令和4年10月17日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年10月25日である。)。 その後、令和5年4月25日に、本件特許の請求項1ないし10に係る特許に対して、特許異議申立人である尾崎真美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 特許第7160048号の請求項1ないし10の特許に係る発明は、それぞれ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」といい、これらをあわせて「本件特許発明」という。)。 「【請求項1】 酸基含有ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂成分と、 粒径が5μm以下であり、マグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれか一方を含有する、前記樹脂成分100質量部当たり1質量部以上20質量部以下の受酸剤と、 を含有する樹脂組成物からなり、 前記樹脂成分が0.05質量%以上5質量%以下の酸基含有部位を含み、 電池の電源取り出し部封止用材料として使用される、樹脂成形体。 【請求項2】 フィルム状の形状を有する、請求項1に記載の樹脂成形体。 【請求項3】 前記酸基含有部位がカルボン酸基を含有する、請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形体。 【請求項4】 前記受酸剤が、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、および炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機化合物である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。 【請求項5】 前記酸基含有ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、およびポリプロピレンとエチレン-メタアクリル酸共重合体との組合せのうち少なくともいずれか一方を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。 【請求項6】 無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含有する樹脂成分と、 粒径が3μm以下の酸化マグネシウムを含有する、前記樹脂成分100質量部当たり1質量部以上20質量部以下の受酸剤と、 を含有する樹脂組成物からなり、 前記樹脂成分が0.5質量%以上3質量%以下の酸基含有部位を含む、請求項1に記載の樹脂成形体。 【請求項7】 帯状のリード導体と、 前記リード導体の長手方向の両端部を含む領域を除く、前記長手方向の一部の領域の外周側を覆うように配置された樹脂成形体からなる樹脂部と、を備え、 前記樹脂成形体は、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂成形体である、 タブリード。 【請求項8】 前記リード導体が、アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金、およびニッケル合金から選択される少なくとも1種からなる、請求項7記載のタブリード。 【請求項9】 前記リード導体が表面未処理アルミニウム導体である、請求項7又は請求項8に記載のタブリード。 【請求項10】 前記リード導体を構成する金属に前記樹脂部が直接接触するように前記樹脂部が配置された、請求項7~請求項9のいずれか1項に記載のタブリード。」 第3 特許異議申立理由 1 特許異議申立理由の要旨 申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 (1)申立理由1(進歩性) 本件特許発明1~10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし5号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~10に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(明確性) 請求項1~10に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきでものある。 2 証拠方法 申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。 甲第1号証:特開2014-120390号公報 甲第2号証:特開2002-198013号公報 甲第3号証:特開2005-174825号公報 甲第4号証:WO2014/200087号 甲第5号証:磯山永三ら、「アルミニウム材料の表面物性と接着機能について」 軽金属(1985) Vol.35、No.3 176-187頁) 各甲号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。 第4 当審の判断 当審は、申立人がした申立ての理由によっては、本件特許発明1ないし10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について (1)証拠等の記載等 ア 甲1の記載事項等 (ア)甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付与した。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 電池外包用ラミネートフィルムと電池本体のリード端子との接着を介在するリード端子接着用テープであって、該端子接着用テープは1層以上の熱可塑性合成樹脂からなり、その内の少なくとも1層がフッ化水素と反応する無機質充填材を含有したベース樹脂層からなることを特徴とするリード端子接着用テープ。 【請求項2】 上記のベース樹脂層は、フッ化水素と反応する無機質充填材を10~50重量%含有する請求項1に記載のリード端子接着用テープ。 【請求項3】 上記のフッ化水素と反応する無機質充填材は、平均粒径が0.1~15μmである請求項1または2に記載のリード端子接着用テープ。 【請求項4】 上記のフッ化水素と反応する無機質充填材は、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムから選ばれる1種以上である請求項1から3のいずれかに記載のリード端子接着用テープ。 【請求項5】 上記の炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムである請求項4に記載のリード端子接着用テープ。 【請求項6】 上記のリード端子接着用テープは、中間層がベース樹脂層の三層構成であり、ベース樹脂層の内外両側にポリオレフィン系樹脂からなる接着層を有する請求項1から5のいずれかに記載のリード端子接着用テープ。 【請求項7】 リード端子を有する電池本体を外包用ラミネートフィルムにより包装した電池包装体であって、該包装体の周縁熱接着部において該ラミネートフィルムの内層とリード端子との間に請求項1から6のいずれかに記載のリード端子接着用テープを介在させて熱接着した周縁熱接着部を有することを特徴とする電池包装体。」 「【0010】 本発明は、電池本体の電解質による封着部の接着強度が低下することを防止するとともに、侵入した水分により起こされる6フッ化リン酸リチウムが水分と反応してフッ化水素(フッ酸)が発生しこのフッ化水素がリード端子表面の劣化、またリード端子と端子接着用テープの間の接着力を低下させる問題点を解決するものであり、リード端子接着用のテープによって電池本体を包装した包装体での大きな問題点を簡便な手段によりに解決するものである。」 「【0014】 ・・・ リード端子接着用テープの少なくとも1層にフッ化水素と反応する無機質充填材を配合することにより、包装体内に侵入した水分と電解質の反応により生成したフッ化水素を無機充填材が反応し吸収することにより包装体の熱接着部の接着強度の低下が抑制される。 例えば、リード端子接着用テープを構成する1層に炭酸カルシウム(CaCO3)を配合すると、該炭酸カルシウムはフッ化水素(HF)と反応し、フッ化水素をフッ化カルシウム(CaF2)の形でリード端子接着用テープ内に閉じ込める。そのためフッ化水素による端子表面の劣化が抑制され、更には端子と端子接着用テープの間の接着力の低下が抑制される。炭酸カルシウムの中でも「重質炭酸カルシウム」が特にフッ酸をキャッチする性能に優れている。・・・」 「【0016】 炭酸カルシウムなどの無機充填剤を配するベース樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、リード端子接着テープを構成する少なくとも3層の熱可塑性合成樹脂の具体例としては、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、アイオノマーなどの熱接着性に優れた樹脂であることが好ましい。3層は同じ熱可塑性合成樹脂でもよいし、異なる熱可塑性合成樹脂でもよい。ただし、リード端子接着用テープが単層、あるいは2層であり、炭酸カルシウムなどの無機充填材を配する層が直接端子と接する場合は、ベース樹脂として金属との接着性が良好な酸変性ポリオレフィンを選択することが好ましい。 特に、リード端子接着用テープは三層構成であることが望ましい。炭酸カルシウムなどの無機充填材を配合するベース樹脂層の内側には、リード端子との接着性が良好な内層を、外側には、外包材との接着性が良好な外層を有していることが望ましい。このような層構成とする場合は炭酸カルシウムなどの無機充填材を含有するベース樹脂は、金属端子と接することがないため、酸で変性されていないポリオレフィンから成ることが好ましい。酸で変性されていると親水性が高まり耐水性が低下し密封性が悪化するおそれがある。特に、ベース樹脂層12はブロックポリプロピレンが好ましい。また内層13は金属との接着性に優れる酸変性ポリオレフィンからなることが望ましい。外層11は、外包材との接着性を考慮すると外包材37の熱接着層36と同一の樹脂から成ることが好ましいが、内層13と同じ樹脂から形成されていると、リード端子接着用テープに表裏がなくなる為、電池の成形が容易になる。」 「【実施例】 【0021】 本実施例では三層構成[変性PP/ブロックPP+無機充填材/変性PP]の端子接着用テープを製造した。まず、無機充填材とブロックPPとを1:1の割合で二軸混練機により混練してマスターバッチを作成した。その後、酸変性PPを一つの押出機に、マスターバッチとブロックPPを1:1で混ぜ合わせたもの(即ち、無機充填材の配合割合は25重量%となる。)をもう一つの押出機に供給し、酸変性PPが内外層、マスターバッチと熱可塑性樹脂の混合物が中間層になるように、一つのフラット状ダイス(Tダイ)から押出すことにより三層からなるフィルムを製膜した(所謂、Tダイ共押出法を採用した。)。その後、フィルムを15mmのテープ状に切断し、更に100mm幅に切断し、リード端子接着用テープとした。 なお、熱可塑性樹脂および無機充填材は以下に記載のものを選択し、表2に示した配合とした。 実施例1:重質炭酸カルシウム/平均粒径:1.8μm、粒形状:無定形 実施例2:合成炭酸カルシウム/平均粒径:2.0μm、粒形状:略立方体 比較例1:充填材添加無し 比較例2:硫酸バリウム/平均粒径0.5μm、粒形状:無定形 変性PP:無水マレイン酸変性ポリプロピレン ブロックPP:プロピレン系ブロック共重合体」 「【0023】 【表2】 [図:0001400516000001.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 甲1の実施例1の三層構成のリード端子接着用テープに着目すると、甲1には以下の発明が記載されているといえる。 「無機充填材(重質炭酸カルシウム/平均粒径:1.8μm)とブロックPP(プロピレン系ブロック共重合体)とを1:1の割合で二軸混練機により混練してマスターバッチを作成し、その後、酸変性PP(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)を一つの押出機に、マスターバッチとブロックPPを1:1で混ぜ合わせたもの(即ち、無機充填材の配合割合は25重量%となる。)をもう一つの押出機に供給し、酸変性PPが内外層、マスターバッチと熱可塑性樹脂の混合物が中間層になるように、一つのフラット状ダイスから押出すことにより三層からなるフィルムを製膜し、その後、フィルムを15mmのテープ状に切断し、更に100mm幅に切断することにより製造された、三層構成[変性PP/ブロックPP+無機充填材/変性PP]のリード端子接着用テープ。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0029】上記包材における変性オレフィン系樹脂層における変性オレフィン系樹脂としては、酸変性オレフィン系樹脂、特に酸無水物変性オレフィン系樹脂、中でも無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸、無水アクリル酸などの不飽和カルボン酸無水物を共重合あるいはグラフト重合して得られる酸無水物変性オレフィン系樹脂、例えばマレイン酸変性オレフィン系樹脂が用いられる。これらの酸による変性度、すなわち変性オレフィン系樹脂における酸の割合は0.001~10重量%程度である。変性オレフィン系樹脂におけるオレフィン系樹脂は、上記オレフィン系樹脂と同様なものが用いられる。従って、変性オレフィン系樹脂としては、例えば無水マレイン酸が0.001~10重量%程度重合されたポリプロピレンが代表的なものである。」 「【0041】変性オレフィン系樹脂層を、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(東洋モートン(株)製MP-78HB71)で構成した。尚、この変性オレフィン系樹脂層は受酸剤としてハイドロタルサイトを2.5wt%含有する。」 「【0049】 【実施例4】実施例1において、ハイドロタルサイトの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は同様に行った。」 ウ 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 正極および負極の各々に接続された金属端子を外側に突出した状態で挟持して周縁熱接着部で密封した内層に熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂と金属箔からなるバリアー層とを少なくとも備えた包装体の前記周縁熱接着部の前記内層と前記金属端子との間に介在させるリチウム電池金属端子部密封用接着性フィルムにおいて、該リチウム電池金属端子部密封用接着性フィルムは少なくとも前記金属端子と当接する層が酸変性ポリオレフィン層からなる単層ないし多層のポリオレフィンフィルムであって、該ポリオレフィンフィルムの少なくとも一つの層が充填剤を含有した充填剤含有層であることを特徴とするリチウム電池金属端子部密封用接着性フィルム。 【請求項2】 前記酸変性ポリオレフィン層が不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリエチレンないしポリプロピレンで形成されていることを特徴とする請求項1記載のリチウム電池金属端子部密封用接着性フィルム。」 エ 甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0029】 (リード12) リード12は、二次電池内部から電気を取り出す端子である。・・・例えば、リチウムイオン電池の場合では、正極の集電体にはアルミニウムが用いられているため、正極のリード12もアルミニウムを用いることが好ましい。また、リチウムイオン電池の場合、負極側の(負極に接続される)リード12は集電体に銅が用いられていること、および耐食性の観点から、リード12として、表面にニッケルめっきを施した銅、もしくはニッケルを用いたリードを用いることが好ましい。正極側の(正極に接続される)リード12には、リード12の電解液への耐食性の観点から1N30などのアルミニウム純度が97%以上であるアルミニウムを用いることが好ましい。また、タブ1と包装材3との熱融着部は屈曲させる場合もあるため、柔軟性を持たせる目的から焼鈍により調質したO材のアルミニウムを用いることがより好ましい。」 オ 甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 第180頁右欄第6~10行 「アルミニウム材料は多くの製造工程を経ることによって、その表面は焼鈍による高温酸化皮膜、圧延に使用される圧延油の残存層、材料中に含まれる微量金属不純物あるいは保管時などに形成される水和酸化膜、吸着水分などでおおわれる。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1の【0014】には、炭酸カルシウムがフッ化水素と反応し、リード端子表面の劣化、またリード端子と端子接着用テープの間の接着力低下を抑制することが記載されていること、また、本件特許明細書の【0042】には、「受酸剤」として炭酸カルシウムも例示されていることから、甲1発明の「中間層」の「無機充填材(重質炭酸カルシウム/平均粒径:1.8μm)」は、本件特許発明1の「粒径が5μm以下であり、マグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれか一方を含有する」「受酸剤」に相当する。 甲1発明の「内外層」の「酸変性PP(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)」は、本件特許発明1の「酸基含有ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂成分」に相当する。 甲1の請求項1には「電池外包用ラミネートフィルムと電池本体のリード端子との接着を介在するリード端子接着用テープ」と記載されており、甲1発明の「リード端子接着用テープ」は、「電池外包用ラミネートフィルム」と、電池の電源取り出し部である「電池本体のリード端子」とを接着して「電池外包用ラミネートフィルム」が密封されるものと解される。よって、甲1発明の「リード端子接着用テープ」は、「電池外包用ラミネートフィルムと電池本体のリード端子との接着」に用いるものであるから、本件特許発明1の「電池の電源取り出し部封止用材料として使用される」ことに相当する。 甲1発明の三層構成[酸変性PP/ブロックPP+無機充填材/酸変性PP]のリード端子接着用テープと本件発明1の「樹脂成形体」とは、「樹脂成形体」である限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 酸基含有ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂成分と、 粒径が5μm以下であり、マグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれか一方を含有する、受酸剤と、 を含有する、 電池の電源取り出し部封止用材料として使用される、樹脂成形体。 <相違点1> 「樹脂成形体」が、本件特許発明1では、「酸基含有ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂成分と、・・・受酸剤と、を含有する樹脂組成物からな」るのに対して、甲1発明では、「酸変性PP(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)」の内外層と、「ブロックPP(プロピレン系ブロック共重合体)」、「無機充填材」の中間層の三層構成からなる点 <相違点2> 本件特許発明1では、樹脂成分100質量部当たり1質量部以上20質量部以下の受酸剤を含有するのに対し、甲1発明では、三層構成の中間層に受酸剤が配合され、中間層がブロックPPと無機充填材を1:1で含有する点 <相違点3> 本件特許発明1は、「前記樹脂成分が0.05質量%以上5質量%以下の酸基含有部位を含」むのに対して、甲1発明ではそのような特定がされていない点 そこで、上記<相違点1>について検討する。 甲1発明の「リード端子接着用テープ」は、三層構成[酸変性PP(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)/ブロックPP(プロピレン系ブロック共重合体)+無機充填材/酸変性PP(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)]であることから、無機充填材とブロックPPとを含む中間層を、酸変性PPからなる内外層で挟む樹脂成形体となっている。そして、上記「接着用テープ」がTダイ共押出法により形成されており、中間層には酸変性PPが使用されておらず、内外層には無機充填材を含まないことから、いずれの層も酸変性樹脂+受酸剤の構成を採らない。 そして、甲1には、「特に、リード端子接着用テープは三層構成であることが望ましい。炭酸カルシウムなどの無機充填材を配合するベース樹脂層の内側には、リード端子との接着性が良好な内層を、外側には、外包材との接着性が良好な外層を有していることが望ましい。このような層構成とする場合は炭酸カルシウムなどの無機充填材を含有するベース樹脂は、金属端子と接することがないため、酸で変性されていないポリオレフィンから成ることが好ましい。酸で変性されていると親水性が高まり耐水性が低下し密封性が悪化するおそれがある。」(【0016】)と記載されており、中間層のブロックPPを酸変性PPに置き換えることについて否定的な記載が存在する。また、甲1には、他に、「リード端子接着用テープ」が、酸変性PPと無機充填材を含有する樹脂組成物からなることを動機付ける記載も示唆もない。そうすると、甲1発明において、酸基含有ポリオレフィン樹脂を含有する樹脂成分と、粒径が5μm以下であり、マグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれか一方を含有する、前記樹脂成分100質量部当たり1質量部以上20質量部以下の受酸剤とを含有する樹脂組成物からな」ることが動機付けられるとはいえない。 また、上記構成は、甲2~甲5の記載からも動機付けられない。 よって、甲1発明において、<相違点1>に係る事項を当業者は容易に導き出すことはできない。 そして、本件特許発明1は、「・・・腐食性を有する酸が存在する環境下にあっても、金属材料に対して充分な接着性を発揮する樹脂成形体を得ることができる。・・・金属材料に対する充分な接着性を維持しつつ、成形性の低下を抑制することができる。・・・受酸剤が樹脂組成物全体にわたって広く分散され、ムラなく酸捕捉機能が発揮される樹脂成形体を得ることができる。その結果、充分な酸捕捉機能を発揮するために必要な受酸剤の量を低減することができ、酸基含有部位と受酸剤との間の反応を充分に抑制することができる。」(段落【0011】)という効果を奏するものである。また、その効果は、実施例及び比較例の記載によって具体的に裏付けられているものであって、この効果は、甲1~甲5の記載から当業者といえども予測することができないものである。 したがって、本件特許発明1は、<相違点2>、<相違点3>を検討するまでもなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし10について 本件特許発明2ないし10は、本件特許発明1を引用するものであるから、上記アで検討したのと同様、本件特許発明2ないし10は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(明確性)について (1)本件特許発明1について 申立人は、本件特許発明1に規定された「酸基含有部位」の量について、本件特許明細書(【0038】)では、(i) NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)スペクトルの公知の分析方法に基づいて算出する方法、(ii) 「ポリオレフィン樹脂全体の量に対する、変性のために配合された酸の配合量から算出する方法、及び、(iii)FT-IRによりによるピーク強度測定による方法、と3つの方法が記載しているが、NMRスペクトル分析、ポリオレフィン樹脂全量に対する酸の配合量から算出する方法、及び、FT-IRによるピーク強度測定による方法では、得られる「酸基含有部位」の量が同じにはならないことは明らかであって、本件特許明細書の実施例でも酸含有量を如何にして算出したか明示されていないため、本件特許発明1に規定の「前記樹脂成分が0.05質量%以上5質量%以下の酸基含有部位を含み」の算出方法が明確でなく、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2~10もまた、明確でない旨主張する(申立書第19~20頁)ので、当該主張について以下検討する。 本件特許明細書の【0037】には、「酸基含有部位」がどのようなものであるのかについて示されており、同明細書の【0033】~【0035】には、具体的な酸基含有ポリオレフィンも例示されている。また、同明細書の【0038】には、「酸基含有部位」の量を測定する公知の方法が例示されており、これら公知の方法により、上記【0033】~【0035】に記載した酸基含有ポリオレフィンにおける、上記【0037】に記載の酸基含有部位の量を測定できると解される。 また、本件特許明細書の【0061】には、実施例で用いたMAH-PP1、MAH-PP2、EMAAの酸含有量(酸基含有部位の量)が示されており、この値は上記【0038】に示される公知の方法により測定されたものであると解される。 よって、本件特許発明1は明確である。 なお、申立人は、NMRスペクトル分析、ポリオレフィン樹脂全量に対する酸の配合量から算出する方法、及び、FT-IRによるピーク強度測定による方法では、得られる「酸基含有部位」の量が同じにはならないことは明らかであると単に主張するのみで、その具体的根拠も示されていないから、当該主張を採用することはできない。 (2)本件特許発明2~10について 本件特許発明2~10に係る特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定するものであるから、本件特許発明1について上記(1)で述べたのと同じ理由により、明確である。 (3)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700428

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    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L
  • 2025-700949異議申立 / 2026-05-29 / 訂正認容樹脂組成物およびパワーモジュール
    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L
  • 2025-700661異議申立 / 2026-04-30 / 訂正認容ポリプロピレンコーティング組成物
    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L
  • 2025-700469異議申立 / 2026-04-27 / 訂正認容樹脂組成物及び電子部品装置
    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L
  • 2025-700320異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容澱粉含有樹脂組成物、ペレット、フレーク、樹脂成形物、澱粉含有樹脂組成物の製造方法…
    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L

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