特許異議申立
2024-700673
スキンパック包装体
- 審判番号
- 2024-700673
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-221032
- 登録番号
- 7419776
- 請求日
- 2024年07月18日
- 審決日
- 2025年08月21日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】日向 ヨシ子
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7419776号発明「スキンパック包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7419776号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7419776号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経過
特許第7419776号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年12月6日を出願日とするものであって、令和6年1月15日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和6年1月23日発行)がされたものである。
その後の手続の概要は、以下のとおり。
令和6年 7月18日 :特許異議申立人日向ヨシ子(以下「申立人」という。)による請求項1~6に対する特許異議の申立て
10月25日付け:取消理由の通知
12月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 2月10日 :特許権者による訂正請求書に対する手続補正書の提出
3月26日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
上記手続補正により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)は、「特許第7419776号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1から6について訂正することを求める。」ものであり、その訂正の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記ベース層は、前記スキン層とヒートシール可能な最内層と、バリア層と、紙層と、防水層と、を含む少なくとも4層の多層構成であることを特徴とするスキンパック包装体。」と記載されているのを、
「前記ベース層は、前記スキン層とヒートシール可能な最内層と、バリア層と、紙層と、防水層と、を含む少なくとも4層の多層構成であり、
前記ベース層の最内層は、ヒートシール可能な1つの層内に、前記内容物が載せられる載置領域と、前記載置領域の外周を取り囲み、前記スキン層の最内層とシールされる接合領域と、が設けられたものであることを特徴とするスキンパック包装体。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2から6も同様に訂正する。)
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項2~6は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項について
ア 本件訂正請求による上記訂正事項は、請求項1におけるベース層の最内層について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ また、願書に添付した明細書の【0021】には、ベース層の「最内層21には、内容物100が載せられる。最内層21はスキン層30の最内層31(図4参照)とヒートシール可能な樹脂を用いる。」と記載され、同【0036】には、「図5はスキンパック包装体10の平面視において、ベース層20の最内層21とスキン層30の最内層31とがシールされる範囲をハッチングで示している。スキンパック包装体10において、ベース層20の最内層21とスキン層30の最内層31とがシールされる範囲は、好ましくは、ベース材20の縁20Aを含む所定範囲、および、スキン層30の縁30Aを含む所定範囲と対応する範囲に設けられる。」と記載されており、さらに【図1】、【図2】、【図5】の記載から、ベース層20の最内層に、内容物100が載置された領域と、その外周を取り囲み、スキン層30が接合された領域が設けられていることが看取されることからすれば、この訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。
ウ さらに、この訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正請求による請求項〔1~6〕についての訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ベース層と、
前記ベース層に載置される内容物を覆うスキン層と、を有するスキンパック包装体であって、
前記スキン層は、最外層と、ガスバリア性樹脂からなる芯層と、最内層と、を含む少なくとも3層の多層フィルムとして前記ベース層から一体的に剥離できるように構成され、
前記ベース層は、前記スキン層とヒートシール可能な最内層と、バリア層と、紙層と、防水層と、を含む少なくとも4層の多層構成であり、
前記ベース層の最内層は、ヒートシール可能な1つの層内に、前記内容物が載せられる載置領域と、前記載置領域の外周を取り囲み、前記スキン層の最内層とシールされる接合領域と、が設けられたものであることを特徴とするスキンパック包装体。
【請求項2】
前記最外層は、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂またはエステル系樹脂のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載のスキンパック包装体。
【請求項3】
前記スキン層の最内層は、アイオノマー樹脂、またはエチレンとカルボン酸ビニルもしくは(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、から選択されたヒートシール性樹脂、または剥離強度0.5~5.0N/15mmのイージーピール性樹脂、またはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項1または2に記載のスキンパック包装体。
【請求項4】
前記紙層は、坪量が100g/m2以上1000g/m2以下のものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスキンパック包装体。
【請求項5】
前記バリア層は、バリア性を有するフィルム、または延伸フィルムにバリアコートを施したものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスキンパック包装体。
【請求項6】
前記防水層は、防水性を有する、フィルムもしくはコート層であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスキンパック包装体。」
第4 取消理由の要旨
令和6年10月25日付けの取消理由通知の理由は、次のとおりである。
(新規性)本件特許の請求項1、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(進歩性)本件発明1~6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<刊行物>
甲5:国際公開第2018/211431号(申立人が提出した甲第5号証)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載等
(1)甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。なお、「・・・」は記載を省略した箇所である。
ア パッケージ全体
「
[図:0001428994000001.jpg]
」
(第1ページ第5~第13行)
(当審訳:
「明細書
本発明の技術分野
本発明は、紙材料とプラスチック材料との適切な組み合わせにより、好ましい外観を示すことができる包装製品に関する。本発明はまた、梱包装置及びそのような包装製品の製造方法に関する。本発明の方法及び装置の目的は、例えば固形食品のスライス(チーズ、魚、肉)のような実質的に規則的な幾何学的構造を有する物品、特に食品の包装に適合する。」)
「
[図:0001428994000002.jpg]
」
(第3ページ第11~22行)
(当審訳:
「サマリー
本発明の態様を以下に説明する。第1の態様では、パッケージ(100) が提供され、これは場合により食品用であり、以下を含む:
>少なくとも1つのベースフィルム(1)と、
>少なくとも1つの閉鎖フィルム(10)と、
>ベースフィルム(1)と閉鎖フィルム(10)との間に介在する少なくとも1つの製品(P)、場合により食品、
前記製品(P) は、ベースフィルム(1)の当接領域(5) 上に配置され、閉鎖フィルム(10)は、当接領域(5) の周囲に閉ループとして延びる封止帯(4) でベースフィルムに強固に固定されている。
前記製品(P) は、閉鎖フィルム(10)とベースフィルム(1)との間に画成され、ベースフィルム(1)において前記封止帯(4)によって画成される包装シート(6)に収容される。」)
イ ベースフィルム1
「
[図:0001428994000003.jpg]
」
(第12ページ第13行~第13ページ第28行)
(当審訳:
「ベースフィルム
ベースフィルム1という用語は、製品Pを配置することができる上面を有するシート材料の支持体を意味する。ベースフィルム1は、任意の形状、例えば長方形、菱形、円形または楕円形であってもよい。ベースフィルム1は、包装プロセスとは異なる特定の製造プロセスによって形成することができ、または包装プロセスに沿って実施することができる。
ベースフィルム1は、紙材料の少なくとも1つの紙層2を含む。特に、ベースフィルムの紙層は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、リグニン誘導体の1つ以上を含む有機材料の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%を示す。対象の紙層は、前記紙層の厚さを規定する距離が2つの主な展開表面の間に延びる。
ベースフィルム1は、紙層2に重なって結合された少なくとも1つのプラスチック層3をさらに含む。プラスチック層3は、紙層の2つの主な展開表面の少なくとも1つの少なくとも一部を覆う。プラスチック層は、例えば、食品用のフィルムを含むことができる。特に、プラスチック層は、紙層を完全に覆い、パッケージの内面を画定するように構成される。プラスチック層は、水および/または湿度に対する一種のバリアを画定するためにも使用することができ、ベースフィルムの構造性の弱体化および損失を防止するのに有用であり、その結果、紙層の変形が抑制される。
・・・
プラスチック層は、例えば、PP、PE(HOPE、LOPE、MOPE、LLDPE)、EVA、ポリエステル(PETおよびPETgを含む)、PVDCの材料群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
ベースフィルム1は、紙およびプラスチック層に加えて、またはその代わりに、少なくとも部分的にプラスチック材料、特に単層および多層の熱可塑性材料の1つ以上の追加の層を含むことができる。好ましくは、ベースフィルム1はガスバリア特性を備えている。
・・・
ガスバリア層に使用できるガスバリア性ポリマーは、PVDC、EVOH、ポリアミド、ポリエステルおよびそれらの混合物である。
・・・
ベースフィルム1は、ベースフィルムヘのシーリングフィルム(コーティングフィルム)のシールを可能にするために、少なくとも1つのヒートシール可能な層を含むことができる。一般に、ヒートシール可能な層は、エチレンのホモまたは共重合体、プロピレンのホモまたは共重合体、エチレン/酢酸ビニルの共重合体、アイオノマーおよびホモまたはコポリエステル、例えば、PETG、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどのポリオレフィンから選択される。」)
ウ 閉鎖フィルム10
「
[図:0001428994000004.jpg]
」
(第14ページ第13行~第15ページ第10行)
(当審訳:
「閉鎖フィルム10
プラスチック材料、特にポリマー材料からなる閉鎖フィルム10をベースフィルム1に適用して、製品を収容する液密パッケージを形成する。真空パッケージを製造するために、ベースフィルム1に適用されるフィルムは、典型的には、以下を含む柔軟な多層材料である。
>ベースフィルム1、特にベースフィルムの内面に溶着することができる少なくとも1つの熱溶着可能な層;
>少なくとも1つの耐熱層;
>任意のガスバリア層。
・・・
熱溶着可能な外層は、ベースフィルムの内面に溶着可能な任意のポリマーを含むことができる。熱溶着可能な層に適したポリマーは、LDPE、エチレン/アルファオレフィン共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体またはエチレン/ビニルアセテート共重合体のようなエチレンおよびエチレン共重合体、アイオノマー、例えばPETGのコポリエステルであり得る。熱溶着可能な層のための好ましい材料は、LDPE、例えばLLDPEのエチレン/アルファオレフィン共重合体、アイオノマー、エチレン/ビニルアセテート共重合体およびそれらの混合物である。
・・・
包装される製品に応じて、閉鎖フィルム10はガスバリア層を含むことができる。ガスバリア層は、典型的には、PVDC、EVOH、ポリアミドおよびEVOHとポリアミドの混合物などの酸素不透過性樹脂を含む。
・・・
耐熱外側層のための一般的なポリマーは、例えば、エチレンホモポリマーまたはコポリマー、特にHDPE、エチレン共重合体およびエチレン/ノルボルネン共重合体のような環状オレフィンであり、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー、アイオノマー、ポリエステル、ポリアミドである。」)
エ ベースフィルム1と閉鎖フィルム10との関係等
「
[図:0001428994000005.jpg]
・・・
[図:0001428994000006.jpg]
」
(第16ページ第21~32行)
(当審訳:
「さらに、閉鎖フィルム 10に関連する本明細書に記載されるフィルムは、ベースフィルム 1との強固な溶着を提供するように、または前記ベースフィルム 1から剥離可能なように作ることができる。本明細書において「溶着力」と呼ばれる溶着の強度を測定する方法は、ASTMF88-00に記載されている。剥離可能な溶着を有するために許容される溶着力の値は、100g/25mmから850g/25mm、150g/25mmから800 g/25mm、200g/25mmから700 g/25mmの間である。
・・・
材料の仕様
「紙材料」という用語は、紙を意味する。特に、紙層を形成するために使用できるシート材料は、10から600g/m2間、特に40から500g/m2の間、さらに具体的には50から250g/m2の間の重量を有することができる。」)
「
[図:0001428994000007.jpg]
」
(第19ページ第15~23行)
(当審訳:
「ベースフィルム1は、閉鎖フィルム10と気密係合して製品Pの包装を画定するように構成され、特に、閉鎖フィルム10は、封止帯4でベースフィルム1のプラスチック層3に係合される。閉鎖フィルム10については、さらに詳細に説明する。
ベースフィルム1は、外側に、封止帯4を内側に含む周縁7を有し、これは、ベースフィルムのプラスチック層3上で、封止帯4の放射方向内側に延び、製品Pと接触する内部領域8を画定する。特に、プラスチック層3の領域8は、紙層2と閉鎖フィルム10との間に配置される(図1Aおよび図2Aを参照)。」)
オ 図面
「
[図:0001428994000008.jpg]
」
カ 各記載からの認定事項
上記記載ウの記載からみて、「閉鎖フィルム10」に設けられる「少なくとも1つの耐熱層」は、「耐熱外側層」であると認められる。
(2)甲5に記載された発明
上記(1)に照らすと、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも1つのベースフィルム1と、閉鎖フィルム10からなり、チーズ、魚、肉等の製品Pが閉鎖フィルム10とベースフィルム1との間に収容されている食品用のパッケージ100であって、
閉鎖フィルム10は、ベースフィルム1の内面に溶着可能な少なくとも1つの熱溶着層、少なくとも1つの耐熱外側層、酸素不透過性樹脂を含む任意のガスバリア層を有しており、ベースフィルム1から剥離可能とされており、
ベースフィルム1は、少なくとも1つの紙層2、紙層2に重なって結合され水および/または湿度に対する一種のバリアを画定するプラスチック層3、紙およびプラスチック層に加えて追加されるガスバリア層、を含み、
ベースフィルム1のプラスチック層3は、封止帯4で閉鎖フィルム10が固定されるものであり、封止帯4の内側で製品Pと接触する内部領域8が画定される、食品用のパッケージ100。」
2 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と甲5発明を対比する。
(ア)甲5発明の「ベースフィルム1」、「閉鎖フィルム10」は、それぞれ本件発明1の「ベース層」、「スキン層」に相当する。
また、甲5発明の「食品用のパッケージ100」は、「少なくとも1つのベースフィルム1と、閉鎖フィルム10からなり、チーズ、魚、肉等の製品Pが閉鎖フィルム10とベースフィルム1との間に収容されている」ものであるから、その態様からみて、本件発明1の「ベース層と、前記ベース層に載置される内容物を覆うスキン層と、を有するスキンパック包装体」に相当する。
(イ)甲5発明の「閉鎖フィルム10」は、「ベースフィルム1の内面に溶着可能な少なくとも1つの熱溶着層、少なくとも1つの耐熱外側層、酸素不透過性樹脂を含む任意のガスバリア層を有して」いるものであるところ、当該「熱融着層」は、「ベースフィルム1の内面に溶着可能」な層であるから、本件発明1の「最内層」に相当する。また、甲5発明の「樹脂製のガスバリア層」、「耐熱層」は、それぞれ本件発明1の「ガスバリア性樹脂からなる芯層」、「最外層」に相当する。
さらに、甲5発明の「閉鎖フィルム10」は、少なくともこれら3つの層を有しているから、本件発明1と同様に「少なくとも3層の多層フィルム」である。
また、甲5発明の「閉鎖フィルム10」は、「ベースフィルム1から剥離可能とされて」いるから、これは、本件発明1の「スキン層」が「前記ベース層から一体的に剥離できるように構成され」ている点との関係において、「前記ベース層から剥離できるように構成され」ている点に限り一致する。
(ウ)甲5発明の「ベースフィルム1」は、「少なくとも1つの紙層2、紙層2に重なって結合され水および/または湿度に対する一種のバリアを画定するプラスチック層3、紙およびプラスチック層に加えて追加されるガスバリア層、を含」むものであるところ、当該「ガスバリア層」、「紙層2」、「水および/または湿度に対する一種のバリアを画定するプラスチック層3」は、それぞれ本件発明1の「バリア層」、「紙層」、「防水層」に相当する。
(エ)甲5発明の「ベースフィルム1のプラスチック層3」は、「封止帯4で閉鎖フィルム10が固定されるものであり、封止帯4の内側で製品Pと接触する内部領域8に画定される」ものであるところ、その構造からみて、本件発明1における「前記ベース層の最内層は、ヒートシール可能な1つの層内に、前記内容物が載せられる載置領域と、前記載置領域の外周を取り囲み、前記スキン層の最内層とシールされる接合領域と、が設けられたものである」との関係において、「前記ベース層は、前記内容物が載せられる載置領域と、前記載置領域の外周を取り囲み、前記スキン層の最内層とシールされる接合領域と、が設けられたものである」点に限り一致する。
イ そうすると、本件発明1と甲5発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ベース層と、
前記ベース層に載置される内容物を覆うスキン層と、を有するスキンパック包装体であって、
前記スキン層は、最外層と、ガスバリア性樹脂からなる芯層と、最内層と、を含む少なくとも3層の多層フィルムとして前記ベース層から剥離できるように構成され、
前記ベース層は、、バリア層と、紙層と、防水層と、を含み、
前記ベース層は、前記内容物が載せられる載置領域と、前記載置領域の外周を取り囲み、前記スキン層の最内層とシールされる接合領域と、が設けられたものであることを特徴とするスキンパック包装体。」
<相違点1>
本件発明1の「スキン層」は、「少なくとも3層の多層フィルムとして前記ベース層から一体的に剥離できるように構成され」ているのに対して、甲5発明の「閉鎖フィルム10」は、少なくとも3層であり、「ベースフィルム1」から「剥離可能」とされているが、これらの層が「一体的に剥離」可能か不明である点。
<相違点2>
本件発明1の「ベース層」は、「前記スキン層とヒートシール可能な最内層と、バリア層と、紙層と、防水層と、を含む少なくとも4層の多層構成」とされ、また、「最内層は、ヒートシール可能な一つの層内に、前記内容物が載せられる載置領域と、前記載置領域の外周を取り囲み、前記スキン層の最内層とシールされる接合領域と、が設けられたものである」のに対し、甲5発明では、当該構成を有しない点。
(2)判断
事案により、相違点2から検討するに、甲5発明の「食品用パッケージ100」は、「閉鎖フィルム10」側に「熱融着層」、すなわちヒートシール層が設けられるものである。そして、甲5において、ヒートシール層を「ベースフィルム1」側に設けることは、記載も示唆もされていない。もっとも、甲5には、上記1(1)イのとおり、「ベースフィルム1は、ベースフィルムヘのシーリングフィルム(コーティングフィルム)のシールを可能にするために、少なくとも1つのヒートシール可能な層を含むことができる」と記載されている。しかし、甲5には、当該「シーリングフィルム(コーティングフィルム)」がどのようなものであるか記載がない一方、「閉鎖フィルム10」については一貫して同じ表現が用いられており、そうすると、当該「シーリングフィルム(コーティングフィルム)」は、「閉鎖フィルム10」とは別のものであると解釈され、結果、「ベースフィルム1」においてヒートシール層を設けることを記載ないし示唆したものではない。
そして、甲5発明の「プラスチック層3」は、その上に製品Pを載置するための層であり、そこに水や湿度に対するバリア性を付与したものである。そうすると、その上に改めてヒートシール層を積層することは、当業者にとって動機づけがない。
してみれば、甲5発明において当該相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を引用するものであるから、甲5発明と対比すると、上記2(1)イの相違点2を含むものである。
そして、当該相違点2に係る発明特定事項得ることが当業者にとって容易想到であるとはいえないことは、上記2(2)のとおりである。
よって、本件発明2~6は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
第6 取消理由で採用しなかった申立理由について
1 申立理由の概要
取消理由で採用しなかった申立の概要は、以下のとおりである。
(1)理由1(甲5を主引例とする新規性)
本件発明1~6は、甲5に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(甲1又は3を主引例とする進歩性)
本件発明1~6は、甲1又は3に記載の発明、及び甲5~7に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)理由3(甲4を主引例とする進歩性)
本件発明1~6は、甲4に記載の発明、及び甲5~8に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠方法>
甲1:「Austrian Meat Manufacturers Turn to FlatSkin(当審注:〇にRの登録商標マークが付記)System by SEALPAC」、[online]、FDBusiness.com、2018年12月10日、<https://www.fdbusiness.com/austrian-meat-manufacturers-turn-to-flatskin-system-by-sealpac/>
甲3:「PPS REPORT 148」、(株)東洋紡パッケージング・プラン・サービス、第1巻148号、18~33ページ、2018年10~11月
甲4:松本博、「バリア包材によるフードロス削減」、明日の食品産業、一般社団法人食品産業センター、通巻502号、13~19ページ、令和元年12月1日
甲5:国際公開第2018/211431号
甲6:特開平6-182946号公報
甲7:特開2016-84165号公報
甲8:特開2017-56997号公報
2 各申立理由に対する判断
(1)証拠に記載の事項等
ア 甲1について
(ア)甲1には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001428994000009.jpg]
・・・
[図:0001428994000010.jpg]
」
(第1ページ本文第1~第21行。ただし、空行を含まない。)
(当審訳:
[図:0001428994000011.jpg]
・・・
[図:0001428994000012.jpg]
[図:0001428994000013.jpg]
)
(ィ)してみれば、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「透明度の高いバリアスキンフィルムにより、ポリマー保護層でコーティングされた平坦な厚紙キャリアに製品を直接固定し、脂肪、水分、酸素に対する信頼性のあるバリアを形成したバキュームスキンパッケージ」
ィ 甲3について
(ア)甲3には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001428994000014.jpg]
[図:0001428994000015.jpg]
」
(第31ページ左欄本文第9行目~右欄第1行)
(ィ)してみれば、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。
「台紙、易剥離接着コート、PP、EVOH、PE、EMAAからなる多層フィルムの上に内容物を乗せ、真空包装用フィルムで覆ったイージーピールで容易に開封可能なパッケージ」
ウ 甲4について
(ア)甲4には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001428994000016.jpg]
」
(第18ページ左欄第4~第9行)
(ィ)してみれば、甲4には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認める。
「専用フィルムを熱で温めながら脱気して内容物の保護をするスキンパックであって、液体容器の技術を活用した紙製の台紙を使用したスキンパック」
エ 甲8について
(ア)甲8には、次の事項が記載されている。
「【0034】
図3は本発明に係る液体用紙容器を構成する、積層体の層構成を説明するための部分断面模式図である。
積層体(102)は、紙を基材としており紙基材層(10)を有し、容器内層側にシーラント層.(11)を有する。また紙基材層(10)の容器外層側には熱可塑性樹脂層(12)を設ける。容器最外層には印刷層(18)を設けることができる。
【0035】
ここに示した例は、紙基材とシーラント層との間に中間層としてガスバリア層(13)を設けた例である。紙基材層(10)は接着層(16)を介してガスバリア層(13)と貼りあわせてあり、ガスバリア層(13)はプラスチックフィルム層(14)と無機化合物層(15)とから構成される。積層体の容器内層側には接着層(17)を介してシーラント層(11)が設けられている。」
「【図1】
[図:0001428994000017.jpg]
」
「【図3】
[図:0001428994000018.jpg]
」
(ィ)してみれば、甲8には以下の事項が記載されているものと認める。
「液体紙容器の積層体(102)において、内層側からシーラント層(11)、ガスバリア層(13)、紙基材層(10)、熱可塑性樹脂層(12)を含む少なくとも4層の多層構成とすること」
(2)理由1(甲5を主引例とする新規性)について
本件発明1と甲5発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記第5の2(1)で抽出した相違点2において相違するものである。そして、当該相違点2は、実質的なものである。
また、本件発明2~6は、本件発明1を引用するものであるから、甲5発明と対比すると、同様に当該相違点2を含むものである。
そうすると、本件発明1~6は、甲5発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
よって、当該申立理由は理由がない。
(3)理由2(甲1又は3を主引例とする進歩性)について
ア 甲1を主引例とした場合について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記第5の2(1)で抽出した相違点2において相違するものである。
そして、同(2)で検討したとおり、甲5には当該点に関する記載も示唆もないし、他の証拠においても同様である。
また、本件発明2~6は、本件発明1を引用するものであるから、甲1発明と対比すると、同様に当該相違点2を含むものである。
そうすると、本件発明1~6は、甲1発明及び甲5~7に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に違反してされたものではない。
よって、当該申立理由は理由がない。
イ 甲3を主引例とした場合について
本件発明1と甲3発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記第5の2(1)で抽出した相違点2において相違するものであるところ、これに対する判断は、上記アのとおりである。
そうすると、本件発明1~6は、甲3発明及び甲5~7に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に違反してされたものではない。
よって、当該申立理由は理由がない。
(4)理由3(甲4を主引用例とする進歩性)について
本件発明1と甲4発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記第5の2(1)で抽出した相違点2において相違するものである。
そして、同(2)で検討したとおり、甲5には当該点に関する記載も示唆もないし、他の証拠においても同様である。
ここで、甲4には上記第5の2(5)アのとおり、スキンパック用紙台紙として、液体容器の技術を活用することが記載されているとともに、同(6)のとおり、甲8には液体容器に用いる基材として、内層側からシーラント層、ガスバリア層、紙基材層、熱可塑性樹脂層を含む少なくとも4層の多層構成のものとすることが記載されている。しかし、甲4には、概念的に液体容器の技術が活用できると記載されるにとどまり、具体的にどのような技術を活用するのか特段記載されておらず、また、スキンパックと液体容器の違いから、それぞれの基材に求められる強度、機能等もおのずと異なるものであり、スキンパックの台紙として液体容器の基材が直ちに適用できるものではない。
そうすると、甲4発明のスキンパックにおける台紙として、甲8に記載されている基材を採用することが当業者にとって容易想到であるということはできない
また、本件発明2~6は、本件発明1を引用するものであるから、甲4発明と対比すると、同様に当該相違点2を含むものである。
そうすると、本件発明1~6は、甲4発明及び甲5~8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に違反してされたものではない。
よって、当該申立理由は理由がない。
(5)小括
したがって、当該理由1~3は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700673