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特許異議申立

2024-700662

燃料電池用セパレータ及びその製造方法

審判番号
2024-700662
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-133312
登録番号
7415839
請求日
2024年07月16日
審決日
2024年11月21日
公報発行日
2024年12月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】トヨタ自動車株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】鶴田 準一
  • 【権利者代理人】伊藤 公一
  • 【権利者代理人】関根 宣夫
  • 【権利者代理人】河野 努
  • 【権利者代理人】松田 淳浩
  • 【異議申立人】宮前 尚祐
審判長/審判官
  • 審判長 岩間 直純
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 渡辺 努
分類
P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
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特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
データ出所
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特許第7415839号発明「燃料電池用セパレータ及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7415839号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7415839号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和2年8月5日に出願され、令和6年1月9日にその特許権が設定登録され、令和6年1月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年7月16日に特許異議申立人宮前 尚祐(以下、「異議申立人」という。)により、請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7415839号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 繊維シートにカーボン粒子及び熱硬化性樹脂を含侵して、前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂を前記繊維シートに適用した原料シートを提供すること、並びに 前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように前記原料シートをプレスして、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること、 を含み、 前記繊維シートが、1~100μmの繊維径及び1~30mmの繊維長を有する炭素繊維及び樹脂繊維の少なくともいずれかを含み、 前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂が担持され、かつ、 前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする、 燃料電池用セパレータの製造方法。 【請求項2】 繊維シートにカーボン粒子を含侵し、前記カーボン粒子を適用した前記繊維シートの両面を、カーボン粒子と熱可塑性樹脂の混合物をシート状に成形した熱可塑性樹脂シートで挟み、原料シートを提供すること、並びに 前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように前記原料シートをプレスして、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること、 を含み、 前記繊維シートが、1~100μmの繊維径及び1~30mmの繊維長を有する炭素繊維及び樹脂繊維の少なくともいずれかを含み、 前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び前記熱可塑性樹脂が担持され、かつ、 前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする、 燃料電池用セパレータの製造方法。 【請求項3】 燃料電池用セパレータであって、 繊維シート、並びに前記繊維シート中に分散しているカーボン粒子及び樹脂を有し、かつ前記カーボン粒子及び前記樹脂が分散している前記繊維シートの両側の表面に、ガス流通用流路を形成している凹凸形状を備え、前記凹凸形状が、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを有しており、 前記凹凸形状の両側の頂部の厚さが、前記頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄く、 前記頂部の厚さが、前記竪壁部の少なくとも一部の厚さの0.50~0.90倍であり、 前記繊維シートが、1~100μmの繊維径及び1~30mmの繊維長を有する炭素繊維及び樹脂繊維の少なくともいずれかを含み、 前記樹脂が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含み、かつ、 前記竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高い、 燃料電池用セパレータ。」 (当審注:【請求項1】の「含侵して」及び【請求項2】の「含侵し」は、本件特許明細書の段落【0052】、【0053】の記載から、「含浸して」及び「含浸し」の誤記と認める。) 第3 申立理由の概要 1 異議申立人の申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1 特許法第36条第6項第2号(明確性要件) 請求項1ないし3に係る発明は、明確でない。 よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件) 発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 よって、請求項1及び2に係る発明の特許は、発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件) 請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4 特許法第29条第1項第3号(新規性) 請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。 よって、請求項1及び3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (5)申立理由5 特許法第29条第2項(進歩性) 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 よって、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 提出された証拠 異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開2007-59349号公報 甲第2号証:特開2007-122884号公報 甲第3号証:特開2009-93938号公報 甲第4号証:特開2002-25572号公報 第4 申立理由についての当審の判断 1 申立理由1(明確性)について (1)異議申立人の主張 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張する。 ア 請求項1及び2における「頂部の圧下率」及び「竪壁部(移行部)の圧下率」、並びに、請求項3における「頂部の厚さ」及び「竪壁部(移行部)の厚さ」について (ア)下記図A(甲1の図1bに矢印、厚みの数値、破線、引出線、線の名称等を追加した図面(i))に示すように、「外側屈曲線の始まりと内側屈曲線の始まりとを繋いだ境界線A及び境界線B(図Aの破線)」が「頂部と竪壁部(移行部)との境界」であると仮定でき、また、下記図B (甲1の図1b矢印、厚みの数値、破線、引出線、線の名称等を追加した図面(ii))に示すように、「外側屈曲線の始まり及び内側屈曲線の始まりのいずれか頂部に近いほうから引かれた垂線である境界線C及び境界線D(図Bの破線)」が「頂部と竪壁部(移行部)との境界」であると仮定することもできるところ、対象特許の燃料電池用セパレータも、甲1の図1bの燃料電池用セパレータと同様に「外側屈曲線の始まり及び内側屈曲線の始まり」が存在することから、甲1の図1bの燃料電池用セパレータと同様に「頂部と竪壁部(移行部)との境界」を一義的に定めることができない。(17頁11行ないし19頁3行) 「[図A] [図:0001417662000001.jpg] 」 「[図B] [図:0001417662000002.jpg] 」 (イ)「頂部と竪壁部(移行部)との境界」が「境界線A及び境界線B(図Aの破線)」であると仮定した場合、「頂部」は「図Aにおける境界線Aよりも右側の領域(図Aにおける厚さ1.00~1.30の領域)」又は「図Aにおける境界線Bよりも左側の領域(図Aにおける厚さ1/03~1.28の領域)」となり、「頂部の厚さ(厚さ1.00~1.30)」を略一定であると解することができず、ひいては、「頂部の圧下率」を略一定であると解することもできないことから、対象特許の燃料電池用セパレータも、「頂部の厚さ」を略一定であると解することができず、ひいては、「頂部の圧下率」を略一定であると解することもできない。 そして、「頂部と竪壁部(移行部)との境界」が「境界線C及び境界線D(図Bの破線)」であると仮定した場合、「竪壁部(移行部)」は「図Bにおける境界線Cよりも左側であって、図Bにおける境界線Dよりも右側の領域(図Bにおける厚さ1.00~1.45の領域)」となり、「竪壁部(移行部)の厚さ」を略一定と解することができず、ひいては、「竪壁部(移行部)の圧下率」を略一定と解することもできない。 また、「頂部と竪壁部(移行部)との境界」が「境界線A及び境界線B(図Aの破線)」であると仮定した場合、「竪壁部(移行部)」は「図Aにおける境界線Aよりも左側であって、図Aにおける境界線Bよりも右側の領域(図Aにおける厚さ1.28~1.45の領域)」となり、「竪壁部(移行部)の厚さ」を略一定であると解することができず、ひいては、「竪壁部(移行部)の圧下率」を略一定であると解することもできない。 さらに、対象特許の燃料電池用セパレータにも、「竪壁部(移行部)の厚さ」を略一定であると解することができず、ひいては、「竪壁部(移行部)の圧下率」を略一定であると解することもできない。 以上より、「頂部の圧下率」、「頂部の厚さ」、「竪壁部(移行部)の圧下率」及び「竪壁部(移行部)の厚さ」が一義的であると解することができない。(19頁15行ないし20頁25行) (ウ)したがって、当業者は、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、本件特許の「頂部の圧下率」、「竪壁部(移行部)の圧下率」、「頂部の厚さ」、及び「竪壁部(移行部)の厚さ」に関する規定を満たすか否かを判断することができない。そして、「頂部の圧下率」、「竪壁部(移行部)の圧下率」、「頂部の厚さ」、及び「竪壁部(移行部)の厚さ」に関する規定は、「導電性を向上する」という本件発明の課題の解決にかかる重要な構成要件であるところ、その測定方法が不明確である本件特許の請求項1~3に係る発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (20頁下から4行ないし21頁4行) イ 請求項1及び2における「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」との規定の解釈について 本件特許明細書の段落0042~0045には、「竪壁部(移行部)50」には、「屈曲部52」及び「中間部54」が含まれることが記載されている。 従来の燃料電池用セパレータを示す本件特許の図4Bには、「竪壁部(移行部)」のうちの「中間部54」の厚さ(本件特許の図4B:0.17)が記載されているものの、「竪壁部(移行部)50」のうちの「屈曲部52」の厚さは記載されていない。しかしながら、本件特許の図4Bを見れば、「頂部の厚さ(本件特許の図4B:0.26)」が「屈曲部52の厚さ(図C(本件特許の図4Bに矢印、厚みの数値、破線等を追加した図面):0.27)」よりも薄いことは自明である。なお、図示は省略するが、本件特許の図4Cについても、 「頂部の厚さ」が「屈曲部52の厚さ」よりも薄いことは自明である。 本件特許明細書の段落0045における「頂部40の厚さは、移行部50の少なくとも一部の厚さよりも蒲ければよく」との記載に基づけば、本件特許の図4B及び図4Cは、「本件特許発明ではない従来の燃料電池用セパレータを示す図面」ではなく、「本件特許発明の燃料電池用セパレータを示す図面」となる。 よって、請求項1及び2における「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」との規定を、例えば、本件特許の図4B及び図4Cに基づいて解釈しようとしても、本件特許明細書の段落0045に記載の「竪壁部(移行部)の厚さ」の取り方によっては、頂部の圧下率が竪壁部(移行部)の少なくとも一部の圧下率よりも高くなるようにすれば上記規定を満たすこととなるのか、それとも、頂部の圧下率が竪壁部(移行部)の少なくとも一部の圧下率よりも高くなるようにしても上記規定を満たさない場合があるのかを判断することができない。(21頁5行ないし22頁12行) 「[図C] [図:0001417662000003.jpg] 」 ウ 本件特許明細書の段落0019の「頂部のカーボン粒子の多くが、そのまま頂部に残留する。その結果、頂部のカーボン粒子の含有割合を高め」、同段落0020の「原料シート中に、繊維質、カーボン粒子、及び樹脂が、単純に分散しているだけであると繊維質、カーボン粒子、及び樹脂それぞれの含有割合を変化させることはできない」との記載について 本件特許明細書の段落0019、段落0020の記載より、本件特許発明の効果を奏するためには、(i)繊維同士が拘束されて流動しないこと、(ii)頂部においてカーボン粒子が繊維に拘束されて流動しないことが必要であり、上記(i)及び(ii)を満たすか否かは、燃料電池用セパレータ全体に対する(本件特許の請求項1及び2では、「原料シート全体に対する」)繊維シートの含有割合、及び、繊維シートが燃料電池用セパレータの表層近くまで含まれるか否か、が重要な要素であると考えられるところ、請求項1-3において、燃料電池用セパレータにおける繊維シートの含有量、及び、繊維シートが燃料電池用セパレータの表層近くまで含まれるか否かが規定されていない。 よって、請求項1-3に係る発明が、「導電性を向上する」という本件発明の課題を解決できるか否かが不明である。(22頁13行ないし23頁9行) (2)当審の判断 ア 主張アについて (ア)異議申立人は、甲第1号証の図1bに基づいて、甲第1号証の図1bの燃料電池セパレータと同様に本件発明においても「頂部と竪壁部(移行部)との境界」、「頂部の圧下率」、「頂部の厚さ」、「堅壁部(移行部)の圧下率」及び「堅壁部(移行部)の厚さ」を一義的に定めることができない旨主張する。 しかし、甲第1号証には、燃料電池セパレータの厚みが「0.3mm以下」であることが記載されているものの(【請求項9】、【0051】、【0066】)、本件発明でいう「頂部」及び「堅壁部」の厚さの関係、及び 「圧下率」については何等記載されていない。 (イ)また、甲第1号証の【0061】の「例えば図1に示すような複数個の凸部2が形成されている燃料電池セパレータ1」、同【0069】の「燃料電池セパレータ1を図1に示すように波板状の形状に形成すること」、【0069】の「図1に示す燃料電池背セパレータは、全体的に平板状に形成されていると共にその内側の所定領域において、一面に複数個のリブ状の凸部2が形成されると共に隣り合う凸部2間に溝状の凹部3が形成され、この凹部3にて燃料である水素ガス又は酸化剤である酸素ガスの流路であるガス供給排出用溝が形成されている。」、同【0072】の「図1に示す波板形状を有する」、【0088】の「【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり」の各記載からすれば、図1は、複数個の凹凸部が形成され、波板形状である燃料電池セパレータを示す概念図に過ぎず、図面上の寸法・形状等に必ずしも厳密な正確さが要求されるものではない。 そして、甲第1号証の図1bに示された燃料電池用セパレータが、本件特許発明に係る燃料電池セパレータと同様の構成であることを裏付ける根拠も見当たらない。 してみると、甲第1号証の図1bに異議申立人が厚みの数値等を追加した図A、図Bに基づく異議申立人の主張は、その前提において誤りである。 (ウ)本件特許明細書によれば、従来よりも導電性が向上する(段落【0009】、【0010】を参照)という課題を解決するために、移行部の圧下率よりも頂部の圧下率が高くなるように原料シートをプレスすること(段落【0016】、【0018】、【0019】、【0061】を参照)、及び、移行部の少なくとも一部におけるカーボン粒子の面積含有割合よりも頂部の少なくとも一部におけるカーボン粒子の面積含有割合を高めること(【0016】、【0019】、【0040】、【0042】、【0043】、を参照)が記載されており、このような発明特定事項を有することにより、強度を維持しつつ、従来よりも導電性が向上した燃料電池用セパレータ及びその製造方法を提供することができるという顕著な効果(段落【0012】を参照)を奏するものである。(なお、本願特許明細書の段落【0016】によれば、「移行部」は、本件発明の「堅壁部」に相当する) そして、本件発明1、2では「頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」ことが特定され、本件発明3では「竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高い」ことが特定されていることから、本件発明1ないし3が「導電性を向上する」という課題を解決し得ることは当業者が十分認識し得るものと認められる。 してみると、本件発明1ないし3が、「頂部の圧下率」、「頂部の厚さ」、「竪壁部(移行部)の圧下率」及び「竪壁部(移行部)の厚さ」が一義的でないとしても、第三者に不足の不利益を与えるほどに明確ではないとはいえない。 イ 主張イについて (ア)異議申立人は、特許異議申立書の図C及び本件特許明細書の段落0045によれば、本件特許図4B、Cは「本件特許発明の燃料電池用セパレータを示す図面」である旨主張する。 ここで、本件特許明細書の段落【0046】に「従来の燃料電池用セパレータは、図4A~図4Dに示すように、両面の頂部40の厚さが、移行部50の少なくとも一部の厚さよりも薄くなっておらず、本開示の燃料電池用セパレータ100の効果が得られない。・・・。図4Bは、従来の燃料電池用セパレータの第二例の一部を示す断面模式図である。図4Cは、従来の燃料電池用セパレータの第三例の一部を示す断面模式図である。」と、同段落【0047】に「図4Bに示した第二例では、すべての頂部40の厚さが、移行部50の厚さよりも厚い。図4Cに示した第三例では、片面の頂部40(図4Cに示した頂部40のうち、上側に凸の頂部40)の厚さが、移行部50の厚さよりも厚く、両面の頂部40(上側に凸の頂部40と下側に凸の頂部40)の厚さが、移行部50の厚さよりも薄くなっていない。」と記載されているように、図4B、Cは、「両面の頂部40の厚さが、移行部50の少なくとも一部の厚さよりも薄くなって」いない燃料電池用セパレータの従来例を示し、「頂部40の厚さ」が「屈曲部52の厚さ」より薄いことを示すものではない。 また、上記段落【0046】にも記載されているように、図4B、Cはあくまでも断面模式図にすぎず、上記ア(ア)で述べたように、図4B、Cに示される数値(例えば、図4Bの頂部40の厚さ「0.26」、移行部50の厚さ「0.17」)以外については、その寸法・形状等に必ずしも厳密な正確さが要求されるものではないといえる。 してみれば、本件特許の図4Bに異議申立人が屈曲部の厚さの数値0.27を追加した図Cに基づいて、本件特許図4B、Cが「本件特許発明の燃料電池用セパレータを示す図面」であるとする異議申立人の主張はその前提において誤りである。 (イ)また、本件特許明細書の段落【0045】に「頂部40の厚さは、移行部50の少なくとも一部の厚さよりも薄ければよく、例えば、頂部40の厚さは、移行部50の少なくとも一部の厚さの0.50倍以上又は0.55倍以上であってよく、0.90倍以下、0.80倍以下、0.70倍以下、0.65倍以下、又は0.60倍以下であってよい。」と記載されているところ、当該記載は、本件発明に係る一実施形態を示しているに過ぎない。 そして、上記ア(ウ)で述べたように、本件発明1、2の燃料電池用セパレータの製造方法では、「頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスす」れば足り、それにより「導電性を向上する」という課題を解決し得るものである。 してみると、本件発明1、2を解釈する上で、同段落【0045】の「頂部40の厚さは、移行部50の少なくとも一部の厚さよりも薄ければよく」との記載を必ずしも考慮する必要性はない。 よって、「本件特許明細書の段落0045に記載の「竪壁部(移行部)の厚さ」の取り方によっては、頂部の圧下率が竪壁部(移行部)の少なくとも一部の圧下率よりも高くなるようにすれば上記規定を満たすこととなるのか、それとも、頂部の圧下率が竪壁部(移行部)の少なくとも一部の圧下率よりも高くなるようにしても上記規定を満たさない場合があるのかを判断することができない」との異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)以上から、(ア)、(イ)によれば異議申立人の主張イは採用できない。 ウ 主張ウについて 上記ア(ウ)で述べたように、本件発明1、2では「頂部の圧下率が、前記 竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」ことが特定され、本件発明3では「竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高い」ことが特定されていることから、本件発明1ないし3が「導電性を向上する」という課題を解決し得ることは明らかである。 してみれば、本件発明1ないし本件発明3が、燃料電池用セパレータにおける繊維シートの含有量、及び、繊維シートが燃料電池用セパレータの表層近くまで含まれるか否かが規定されていないからといって、「導電性を向上する」という課題を解決できないとはいえない。 よって、異議申立人の主張ウは採用できない。 (3)小括 以上から、本件発明1ないし3は不明確であるとはいえず、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 2 申立理由2(実施可能要件)について (1)異議申立人の主張 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張する。 「頂部」及び「竪壁部(移行部)」を一義的に定めることができず、また、「頂部の圧下率」及び「頂部の厚さ」が一義的であると解することはできず、さらに、「竪壁部(移行部)の圧下率」及び「竪壁部(移行部)の厚さ」が一義的であると解することはできない。そのため、当業者は、どのように「頂部の圧下率」及び「竪壁部(移行部)の圧下率」を決定するのか理解できず、本件発明1及び2の燃料電池用セパレータの製造方法を使用することができない。したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1及び2について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。(24頁3ないし10行) (2)当審の判断 ア 本件発明1及び2の「プレス」に関し、本件特許明細書には以下の記載がある。 「【0061】 〈プレス工程〉 プレス工程では、原料シート70を、ガス流通用流路を形成するようにプレスして、頂部40及び移行部50を得る。原料シート70のプレスにおいては、頂部40の圧下率が、移行部50の圧下率よりも高くなるように、原料シート70をプレスする。これにより、頂部40の樹脂30の多くが移行部50に流動する一方で、頂部40のカーボン粒子20の多くが繊維シート10に補足され、そのまま頂部40に残留する。その結果、頂部40でのカーボン粒子20の含有割合を高め、移行部50での樹脂30の含有割合を高めることができる。 ・・・(中略)・・・。 【0065】 これまで説明したような圧下率で原料シートをプレスすることができれば、プレスの方法に特に制限はない。典型的には、燃料電池用セパレータの形状のキャビティを有する成形型を用いて、原料シートを熱間プレスする方法が挙げられる。」 イ また、本件特許明細書には実施例に関し、以下の記載がある。 「【0072】 〈実施例1〉 繊維シートとして、カーボンファイバーの不織布を準備した。不織布中の繊維の繊維径は7μm、繊維長は3mmであった。カーボン粒子と、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂とを準備し、これらに溶媒を加え、その混合物を不織布に塗布して含浸した。そして、溶媒を乾燥させて、原料シートを得た。・・・(中略)・・・。 【0073】 原料シートを190℃に加熱したプレス成形機に装入し、図3Aに示したキャビティ形状を有する成形型で90秒間プレスした。プレス完了後、金型から燃料電池用セパレータを取り出し、これを実施例1の試料とした。 ・・・(中略)・・・。 【0075】 〈実施例3〉 ・・・(中略)・・・。 【0076】 ポリプロピレンとカーボン粒子の混合物をシート状に成形し、これを第一シートとした。カーボン粒子に溶媒(バインダ)を添加し、その混合物を不織布に塗布して含浸し、これを第二シートとした。第二シートを第一シートで挟み、これを原料シートとした。 【0077】 原料シートを190℃に加熱したプレス成形機に装入し、図3Aに示したキャビティ形状を有する成形型で90秒間プレスし、冷却した。その後、金型から燃料電池用セパレータを取り出し、これを実施例3の試料とした。」 ウ そして、図3Aについて、以下の記載がある。 「【0041】 図3Aは、本開示の燃料電池用セパレータに係る頂部及び移行部の一例を示す断面模式図である。図3Bは、本開示の燃料電池用セパレータに係る頂部及び移行部の別の例を示す断面模式図である。頂部40の厚さは、移行部50の少なくとも一部の厚さよりも薄ければよく、図3A及び図3Bに示した例に限られない。・・・(中略)・・・。 【0042】 図3Aは、本開示の燃料電池用セパレータ100の頂部40及び移行部50の典型例を示す断面模式図である。移行部50は、頂部40と移行部50が連結している屈曲部52、及び互いに隣り合う屈曲部52を連結する中間部54を有する。図3Bについても、同様に、屈曲部52及び中間部54を有する。図3Aに示した例では、屈曲部52及び中間部54のいずれの厚さよりも、頂部40の厚さが薄い。」 「図3A [図:0001417662000004.jpg] 」 エ これらの記載からすれば、図3Aに示されている、頂部40と移行部50を有し、移行部50は、頂部40と移行部50が連結している屈曲部52、及び互いに隣り合う屈曲部52を連結する中間部54を有し、屈曲部52及び中間部54のいずれの厚さよりも、頂部40の厚さが薄い燃料電池用セパレータ100と同形状のキャビティを有する成形型でプレスする方法が記載されているといえ、段落【0063】の「頂部40の圧下率が、移行部50の圧下率よりも高くなるように、原料シート70をプレスするため、プレス後の燃料電池用セパレータ100では、頂部40の厚さが、移行部の厚さよりも薄くなる」との記載からすれば、該方法では、頂部40の圧下率が、移行部50の圧下率よりも高くなるようにプレスされていることは明らかである。 してみれば、「頂部」及び「竪壁部(移行部)」を一義的に定めることができない、また、「頂部の圧下率」、「頂部の厚さ」、「竪壁部(移行部)の圧下率」及び「竪壁部(移行部)の厚さ」が一義的であると解することができないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1及び2の燃料電池用セパレータの製造方法について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (3)小括 以上から、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1、2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえず、請求項1、2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1)異議申立人の主張 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張する。 本件特許の請求項1~2に記載の「圧下率」及び本件特許の請求項3に記載の「面積含有割合」については、本件特許明細書における実施例に測定方法及び測定値が全く記載されておらず、実際に測定されていない。よって、本件特許の実施例1~3が、本件特許の請求項1~3に記載の発明の必須要件を全て満たす「実施例」に相当するものであるのか、それとも、本件特許の請求項1~3に記載の発明の必須要件を満たさない「比較例」に相当するものであるのかについて、本件特許明細書における実施例の記載から判断することができない。(24頁15ないし21行) (2)当審の判断 ア 上記1(2)ア(ウ)で述べたように、本件発明1、2は「頂部の圧下率が、前記 竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」ことにより、又、本件発明3は「竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高」くすることにより、「導電性を向上する」という課題を解決し得ることは当業者が十分認識し得るものと認められる。 してみると、本件発明1ないし3は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。 イ また、上記2(2)によれば、本件特許明細書の段落【0072】ないし【0077】に記載された実施例1ないし3は、頂部40と移行部50を有し、移行部50は、頂部40と移行部50が連結している屈曲部52、及び互いに隣り合う屈曲部52を連結する中間部54を有し、屈曲部52及び中間部54のいずれの厚さよりも、頂部40の厚さが薄い燃料電池用セパレータ100と同形状のキャビティを有する成形型で原料シートをプレスしたものであるといえる。 ここで、本件特許明細書には、実施例に「圧下率」及び「カーボン粒子の面積含有割合」について測定方法及び測定値は記載されていないものの、同段落【0061】ないし【0063】によれば、実施例1ないし3においても、頂部40の圧下率が、移行部50の圧下率よりも高く、移行部50の少なくとも一部よりも、頂部の少なくとも一部においてカーボン粒子の面積含有割合が高いことは明らかであり、実施例1ないし3において導電性が向上していること(同段落【0079】ないし【0081】を参照)もこれを裏付けているといえる。 してみれば、実施例1ないし3が、本件発明1ないし3の実施例に相当するのか、それとも「比較例」に相当するのか判断できないとの異議申立人の主張は採用できない。 (3)小括 以上から、請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないといえず、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 4 申立理由4(新規性)について (1)甲第1号証の記載事項、甲1発明 ア 甲第1号証(特開2007-59349号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【請求項1】 平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂、及びワックスを含有する樹脂組成物を導電性基材に含浸・半硬化して成ることを特徴とする燃料電池セパレータ用プリプレグ。」 「【0001】 本発明は、燃料電池セパレータ用プリプレグ、燃料電池セパレータの製造方法及び燃料電池セパレータに関するものである。」 「【0026】 燃料電池セパレータ用プリプレグは、黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物と、導電性基材とで形成される。」 「【0050】 一方、導電性基材としては、導電性を有する材質にて形成された適宜の多孔質のシート状のものを用いることができる。このとき導電性基材としては、燃料電池セパレータ1の良好な導電性を確保するために、その体積抵抗率が102Ωcm以下の範囲であることが好ましい。かかる導電性基材として、好ましくは炭素繊維にて形成される織布やペーパーを挙げることができる。炭素繊維としてはパン系やピッチ系等があるがいずれであっても良い。特に炭素繊維ペーパー(カーボンペーパー)は、樹脂組成物の含浸性に優れ、また耐硫酸性、耐薬品性、耐メタノール性にも優れたものとなる。このような炭素繊維ペーパーを用いる場合、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲であることが好ましい。この平均長さが3mmより短くなると導電性基材に十分な強度が得られないおそれがあり、また15mmを超えると導電性基材への樹脂組成物の含浸性が十分に得られなくなるおそれがある。」 「【0054】 燃料電池セパレータ用プリプレグは上記のような導電性基材に樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態することで、プリプレグとして得られるものである。」 「【0061】 この加熱圧縮成形にあたっては、例えば図1に示すような複数個の凸部2が形成されている燃料電池セパレータ1を得るためには、上型と下型にそれぞれ凹部を設けた成形金型が用いられる。この下型の上に、所定枚数を積層して被圧体とした燃料電池セパレータ用プリプレグを載置し、次いで上型をセットし、型締めして加熱圧縮する。」 「【0069】 このようにして燃料電池セパレータ1を形成するにあたっては、燃料電池セパレータ1を図1に示すように波板状の形状に形成することで、燃料電池セパレータ1の薄型軽量化を図ると共に、このような薄型の燃料電池セパレータ1であっても、燃料電池セパレータ1に必要とされるガス流路等を形成することができるものである。図1に示す燃料電池背セパレータは、全体的に平板状に形成されていると共にその内側の所定領域において、一面に複数個のリブ状の凸部2が形成されると共に隣り合う凸部2間に溝状の凹部3が形成され、この凹部3にて燃料である水素ガス又は酸化剤である酸素ガスの流路であるガス供給排出用溝が形成されている。また、この燃料電池セパレータ1の他面には、前記一面の凸部2の裏側に凹部3が、前記一面の凹部3の裏側に凸部2がそれぞれ形成され、この凹部3にてガス供給排出用溝が形成され、或いは冷却水が流通する冷却水流路が形成される。このようにすると、燃料電池セパレータ1における凸部2の形成位置の厚みが厚くなることがないことから、燃料電池セパレータ1の薄型軽量化をはかることができるものである。尚、図示の例では、全ての凹部3についてその両側に凸部2が形成されるようにするために、前記凸部2及び凹部3が形成されている領域の縁部では両面に凸部2が設けられているが、この部位を除き、全体として薄型化されているため、十分に薄型軽量化が図られるものである。」 (当審注:甲第1号証の段落【0069】の「燃料電池背セパレータ」は、「燃料電池セパレータ」の誤記と認める。) イ 上記アの記載事項より、次のことがいえる。 (ア)段落【0001】によれば、甲第1号証には、燃料電池セパレータの製造方法が記載されている。 また、段落【0069】によれば、燃料電池セパレータは、一面に複数個のリブ状の凸部2が形成されると共に隣り合う凸部2間に溝状の凹部3が形成され、この凹部3にて燃料である水素ガス又は酸化剤である酸素ガスの流路であるガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部2の裏側に凹部3が、前記一面の凹部3の裏側に凸部2がそれぞれ形成され、この凹部3にてガス供給排出用溝が形成され、或いは冷却水が流通する冷却水流路が形成される。 (イ)段落【0054】によれば、導電性基材に樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態することで、燃料電池セパレータ用プリプレグを得ることが記載されている。 そして、【請求項1】、段落【0026】によれば、樹脂組成物は、平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する。 (ウ)段落【0061】によれば、複数個の凸部2が形成されている燃料電池セパレータ1を得るために、上型と下型にそれぞれ凹部を設けた成形金型を用い、この下型の上に、所定枚数を積層して被圧体とした燃料電池セパレータ用プリプレグを載置し、次いで上型をセットし、型締めして加熱圧縮成形することが記載されている。 (エ)段落【0050】によれば、導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である。 ウ よって、上記イによれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。 「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて燃料である水素ガス又は酸化剤である酸素ガスの流路であるガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され、或いは冷却水が流通する冷却水流路が形成される燃料電池セパレータの製造方法であって、 導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態することで、燃料電池セパレータ用プリプレグを得ること、 複数個の凸部が形成されている燃料電池セパレータを得るために、上型と下型にそれぞれ凹部を設けた成形金型を用い、この下型の上に、所定枚数を積層して被圧体とした燃料電池セパレータ用プリプレグを載置し、次いで上型をセットし、型締めして加熱圧縮成形することを含み、 導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である、 燃料電池セパレータの製造方法。」 エ また、上記アの記載事項より、次のこともいえる。 (ア)段落【0001】によれば、甲第1号証には、燃料電池セパレータが記載されている。 (イ)段落【0061】によれば、燃料電池セパレータは、燃料電池セパレータ用プリプレグを所定枚数積層し、凹部を設けた成型金型を用いて加熱圧縮して得られる。 そして、【請求項1】、段落【0026】によれば、燃料電池セパレータ用プリプレグは、平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物と、導電性基材とで形成され、段落【0054】によれば、導電性基材は樹脂組成物に含浸される。 よって、甲第1号証に記載された燃料電池セパレータは、平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物と、該樹脂組成物に含浸される導電性基材とで形成される燃料電池セパレータ用プリプレグを所定枚数積層し、凹部を設けた成型金型を用いて加熱圧縮して得られるといえる。 (ウ)段落【0069】によれば、燃料電池セパレータは、全体的に平板状に形成されていると共にその内側の所定領域において、一面に複数個のリブ状の凸部2が形成されると共に隣り合う凸部2間に溝状の凹部3が形成され、この凹部3にて燃料である水素ガス又は酸化剤である酸素ガスの流路であるガス供給排出用溝が形成され、また、この燃料電池セパレータ1の他面には、前記一面の凸部2の裏側に凹部3が、前記一面の凹部3の裏側に凸部2がそれぞれ形成され、この凹部3にてガス供給排出用溝が形成され、或いは冷却水が流通する冷却水流路が形成される。 (エ)段落【0050】によれば、導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である。 オ よって、上記エによれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。 「平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物と、該樹脂組成物に含浸される導電性基材とで形成される燃料電池セパレータ用プリプレグを所定枚数積層し、凹部を設けた成型金型を用いて加熱圧縮して得られる燃料電池セパレータであって、 全体的に平板状に形成されていると共にその内側の所定領域において、一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて燃料である水素ガス又は酸化剤である酸素ガスの流路であるガス供給排出用溝が形成され、また、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され、或いは冷却水が流通する冷却水流路が形成され、 導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である、 燃料電池セパレータ。」 (2)当審の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 a 甲1発明1の「炭素繊維ペーパー」が用いられる「導電性基材」、「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」は、本件発明1の「繊維シート」、「カーボン粒子」及び「熱硬化性樹脂」に相当する。 また、甲1発明1の「燃料電池セパレータ用プリプレグ」は、「燃料電池セパレータ」の原料となるシートといえるから、本件発明1の「原料シート」に相当する。 そして、甲1発明1では、「燃料電池セパレータ用プリプレグを得る」際に、「導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させ」ているから、甲1発明1においても、「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」を「導電性基材に適用し」ているといえる。 してみると、甲1発明1において、「炭素繊維ペーパー」が用いられる「導電性基材に黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させ」、「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」を「導電性基材に適用し」た「燃料電池セパレータ用プリプレグを得ること」は、本件発明1の「繊維シートにカーボン粒子及び熱硬化性樹脂を含侵して、前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂を前記繊維シートに適用した原料シートを提供すること」に相当する。 b 甲1発明1の「燃料電池セパレータ」は「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」るところ、「複数個の凸部が形成されている燃料電池セパレータを得るために」「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」のであるから、甲1発明1においても、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」の「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」ように「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」といえる。 また、甲1発明1では「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」ることから、該「複数個のリブ状の凸部」側に頂上部分を有し、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が存在することは明らかである。してみると、甲1発明1においても「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」ことにより、複数の頂上部分と、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が得られるといえる。 そして、本件特許明細書の段落【0016】の「凹凸形状の頂部同士を連結する移行部(竪壁部)」の記載も参酌すれば、甲1発明1において、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」の「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」ように「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」ことにより、複数の頂上部分と、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が得られることは、本件発明1の「前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように 前記原料シートをプレスして、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること」に相当するといえる。 c 甲1発明1の「炭素繊維の平均長さ」である「3~15mm」は、本件発明1の「繊維長」の「1~30mm」の範囲に含まれる。 してみると、甲1発明1の「導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である」ことと本件発明1とは、「繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含」むことで共通する。 ただし、繊維シートに関し、本件発明1は「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点で相違する。 d 甲1発明1では、「導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態することで、燃料電池セパレータ用プリプレグを得」て、「複数個の凸部が形成されている燃料電池セパレータを得るために、上型と下型にそれぞれ凹部を設けた成形金型を用い、この下型の上に、所定枚数を積層して被圧体とした燃料電池セパレータ用プリプレグを載置し、次いで上型をセットし、型締めして加熱圧縮成形する」ことから、甲1発明1においても、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」が「加熱圧縮成形」された後は、「炭素繊維ペーパ-」が用いられる「導電性基材」に「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」が担持されると解される。 よって、甲1発明1において、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」が「加熱圧縮成形」された後、「炭素繊維ペーパ-」が用いられる「導電性基材」に「黒鉛粒子」及び熱硬化性樹脂」が担持されることは、本件発明1の「前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂が担持され」ることに相当する。 e 本件発明1は「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」のに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点で相違する。 f 甲1発明1の「燃料電池セパレータの製造方法」は、本件発明1の「燃料電池用セパレータの製造方法」に相当する。 上記aないしfにより、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「繊維シートにカーボン粒子及び熱硬化性樹脂を含侵して、前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂を前記繊維シートに適用した原料シートを提供すること、並びに 前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように前記原料シートをプレスして、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること、 を含み、 前記繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含み、 前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂が担持される、 燃料電池用セパレータの製造方法。」 (相違点1) 繊維シートに関し、本件発明1は「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 (相違点2) 本件発明1は「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」のに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 よって、上記のとおり、本件発明1と甲1発明1とは相違点を有するものであるから、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。 (イ)異議申立人の主張について a 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張する。 (a)繊維シートの「繊維長」について 甲1に記載された「導電性基材として、体積抵抗率10-2Ωcm以下、平均長さ3~15mmの炭素繊維が好適に挙げられること(甲1の段落0050)」は、本件特許発明1の「繊維シートが、1~100μmの繊維径及び1~30mmの繊維長を有する炭素繊維及び樹脂繊維の少なくともいずれかを含むこと(発明特定事項A3)」に相当する。(29頁下から2行ないし30頁3行) (b)「圧下率」について 甲1に記載された「燃料電池セパレータ用プリプレグの加熱圧縮において、凸部の厚み(1.00~1.03(上記図B参照))が凸部と凹部との連結部の厚み(1.10~1.45(上記図B参照))より薄くなるように、燃料電池セパレータ用プリプレグを加熱圧縮すること(甲1の段落0061(図1(b))」は、本件特許発明1の「原料シートのプレスにおいて、頂部の圧下率が、竪壁部の圧下率よりも高くなるように、原料シートをプレスすること(発明特定事項A5)」に相当する。 なお、甲1の実施例及び対象特許明細書の実施例では、金型を用いて原料シート(プリプレグ)を屈曲させている(本件特許明細書の段落0073、甲1の段落0072)。ここで、小さいRを有する金型を製造する困難性等の観点から、上記図Aの境界線Aが紙面上下方向に対して斜めに描かれているとおり、原料シートの外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを早くする(外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを図Aにおける右側にする)ことが通常であり、技術常識といえる。その場合、当然のことながら、上記図Bにおける境界線Cの右側(頂部)の厚さ(1.00)が境界線Cの左側(竪壁部)の厚さ(1.10)よりも薄くなり、したがって「頂部の圧下率が、竪壁部の少なくとも一部の圧下率よりも高くなる」ことも技術常識といえる。 上記「小さいRを有する金型を製造する困難性」について詳述すると、内側屈曲線のRを小さくすると、(i)成形に不具合が生じたり、(ii)原料組成物の充填性が低下したり、(iii)クラックが入りやすくなったりする。 さらに、上記「技術常識」について詳述する。竪壁部(移行部)の厚みを頂部の厚みと等しくするためには、外側屈曲線と内側屈曲線は同心円状に配置しなければならず、外側屈曲線のRを竪壁部(移行部)の厚みよりも大きくする必要がある。よって、外側屈曲線と内側屈曲線とを同心円状にしようとはしない。さらに、竪壁郁(移行部)の厚みを頂部の厚みより薄くするためには、外側屈曲線のRを同心円状に配置したときよりも更に大きくする必要があるため、当業者であれば、そのような設計は実施しない。また、外側屈曲線のRを大きく、内側屈曲線のRを小さくしようとすると、(i)カソードセパレータとアノードセパレータとの接触面積(接地面面積)が小さくなって導電性が低下したり、(ii)竪壁部(移行部)の板厚が減少して強度が弱くなったり、(iii)内側屈曲線のRが小さくなりクラックが入りやすくなったり、(iv)原料組成物の充填性が低下する等の多数の不具合がある。よって、当業者であれば、外側屈曲線のRを大きく、内側屈曲線のRを小さくしようとはしない。以上より、原料シートの外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを早くすることが通常であり、その場合、当然のことながら、凸形状の両側の頂部の厚さが、頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄いことが技術常識となる。 逆の視点から述べるとすれば、外側屈曲線のRを内側屈曲線のRより小さくして、(i)カソードセパレータとアノードセパレータとの接触面積(接地面面積)を大きくして導電性を向上したり、(ii)堅壁部(移行部)の板厚を頂部の板厚より厚くして強度を強くしたり、(iii)内側屈曲線のRを大きくしてクラックを防止したり、(iv)原料組成物の充填性が向上するようにすることは、当業者であれば、通常行うことであり、本件特許請求項1~3における上記(i)から(iv)にかかる事項は、いずれも当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。(30頁10行ないし31頁下から6行) b 上記各主張について検討する。 (a)繊維シートの「繊維径」について 甲第1号証の段落【0050】には「導電性基材」として「炭素繊維ペーパーを用いる場合、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲であることが好ましい。」ことは記載されているものの、その繊維径は何等記載されていない。 また、同段落【0050】に「導電性基材」の「体積抵抗率が10-2Ωcm以下の範囲であることが好ましい」ことも記載されているが、「体積抵抗率が10-2Ωcm以下」であり「平均長さは3~15mm」である炭素繊維の「繊維径」が「1~100μm」の範囲内である理由も見当たらない。 よって、異議申立人の「繊維径」に係る主張は採用できない。 (b)「圧下率」について (b-1)甲第1号証には、「頂部の圧下率」及び「堅壁部の圧下率」について何等記載されていない。 また、上記1(2)ア(ア)で述べたように、甲第1号証には、本件発明でいう「頂部」及び「堅壁部」の厚さの関係については何等記載されておらず、また、上記1(2)ア(イ)で述べたように、甲第1号証の図1bに厚みの数値等を追加した図A、図Bに基づく異議申立人の主張は、その前提において誤りである。 (b-2)ここで、異議申立書の30頁17行ないし31頁16行に記載された主張は、要するに、竪壁部(移行部)の厚みを頂部の厚みと等しくするためには、外側屈曲線と内側屈曲線は同心円状に配置しなければならず、外側屈曲線のRを竪壁部(移行部)の厚みよりも大きくする必要があり、竪壁郁(移行部)の厚みを頂部の厚みより薄くするためには、外側屈曲線のRを同心円状に配置したときよりも更に大きくする必要があるため、このような設計は当業者は実施しない。また、外側屈曲線のRを大きく、内側屈曲線のRを小さくしようとすると、(i)カソードセパレータとアノードセパレータとの接触面積(接地面面積)が小さくなって導電性が低下したり、(ii)竪壁部(移行部)の板厚が減少して強度が弱くなったり、(iii)内側屈曲線のRが小さくなりクラックが入りやすくなったり、(iv)原料組成物の充填性が低下する等の多数の不具合があるため、当業者であれば、外側屈曲線のRを大きく、内側屈曲線のRを小さくしようとはしない。以上から、原料シートの外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを早くすることが通常であり、その場合、凸形状の両側の頂部の厚さが、頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄いことが技術常識となるというものである。 しかしながら、上記(i)~(iv)で挙げている不具合は、外側屈曲線及び内側屈曲線のRの設定のみで生じるものとはいえず、原料シートの材料や製造工程の条件等も関係することは当然のことであるし、また、燃料電池セパレータを作製する際に、外側屈曲線のRを大きくするような設計を当業者であれば必ず実施しないことを裏付ける客観的な証拠もない。 してみると、異議申立人が主張する「原料シートの外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを早くすることが通常であり、その場合、凸形状の両側の頂部の厚さが、頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄い」ということが技術常識であると認めることはできない。 まして、甲第1号証には、成形金型を用いて燃料電池セパレータ用プリプレグを加熱圧縮して、波板状の形状に形成する(段落【0061】、【0069】)際に、該プリプレグの屈曲部分における外側屈曲線や内側屈曲線のRについて考慮することは何等記載されていない。 (b-3)以上から、異議申立人の「圧下率」に係る主張は採用できない。 イ 本件発明3について (ア)対比 本件発明3と甲1発明2とを対比する。 a 甲1発明2の「炭素繊維ペーパー」が用いられる「導電性基材」、「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」は、本件発明3の「繊維シート」、「カーボン粒子」及び「樹脂」に相当する。また、「導電性基材」は、「黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物」「に含浸される」ことから、「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」は「導電性基材」に分散していると解される。 そして、甲1発明2の「燃料電池セパレータは、」「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」るところ、「燃料電池セパレータ」は「平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物と、該樹脂組成物に含浸される導電性基材とで形成される燃料電池セパレータ用プリプレグを所定枚数積層し、凹部を設けた成型金型を用いて加熱圧縮して得られる」ことから、「燃料電池セパレータ」を構成する「導電性基材」にも「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」るといえる。 さらに、甲1発明2では「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」ることから、該「複数個のリブ状の凸部」側に頂上部分を有し、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が存在することは明らかである。 してみると、本件特許明細書の段落【0016】の「凹凸形状の頂部同士を連結する移行部(竪壁部)」の記載も参酌すれば、甲1発明2において、「炭素繊維ペーパー」が用いられる「導電性基材」、並びに、「導電性基材」に分散している「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」を有し、「導電性基材」は「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」、該「複数個のリブ状の凸部」側に頂上部分を有し、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が存在することは、本件発明3の「繊維シート、並びに前記繊維シート中に分散しているカーボン粒子及び樹脂を有し、かつ前記カーボン粒子及び前記樹脂が分散している前記繊維シートの両側の表面に、ガス流通用流路を形成している凹凸形状を備え、前記凹凸形状が、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを有して」いることに相当する。 b 本件発明3は「前記凹凸形状の両側の頂部の厚さが、前記頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄」く、「前記頂部の厚さが、前記竪壁部の少なくとも一部の厚さの0.50~0.90倍であ」るのに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点で相違する。 c 甲1発明2における「炭素繊維の平均長さ」「3~15mm」は、本件発明3の「繊維長」の「1~30mm」の範囲内である。 してみると、甲1発明2において「導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である」ことと本件発明3とは、「繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含」む点で共通する。 ただし、本件発明3は「炭素繊維」が「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点で相違する。 d 甲1発明2の「熱硬化性樹脂」は、本件発明3の「前記樹脂」に含まれる「熱硬化性樹脂」に相当する。 e 本件発明3は「前記竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高い」のに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点で相違する。 f 甲1発明2の「燃料電池セパレータ」は、本件発明3の「燃料電池用セパレータ」に相当する。 上記aないしfにより、本件発明3と甲1発明2とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「燃料電池用セパレータであって、 繊維シート、並びに前記繊維シート中に分散しているカーボン粒子及び樹脂を有し、かつ前記カーボン粒子及び前記樹脂が分散している前記繊維シートの両側の表面に、ガス流通用流路を形成している凹凸形状を備え、前記凹凸形状が、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを有しており、 前記繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含み、 前記樹脂が、熱硬化性樹脂を含む、 燃料電池用セパレータ。」 (相違点3) 本件発明3は「前記凹凸形状の両側の頂部の厚さが、前記頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄」く、「前記頂部の厚さが、前記竪壁部の少なくとも一部の厚さの0.50~0.90倍であ」るのに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点。 (相違点4) 本件発明3は「炭素繊維」が「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点。 (相違点5) 本件発明3は「前記竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高い」のに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点。 よって、上記のとおり、本件発明3と甲1発明2とは相違点を有するものであるから、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。 (イ)異議申立人の主張について a 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張する。 (a)「頂部の厚さ」について 甲1に記載された「凸部の厚み(1.00~1.03(上記図B参照))が凸部と凹部との連結部の厚み(1.10~1.45(上記図B参照))より薄いこと(甲1の段落0061(図1(b)))」は、本件特許発明3の「凹凸形状の両側の頂部の厚さが、頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄いこと(発明特定事項C5)」に相当する。 なお、甲1の実施例及び対象特許明細書の実施例では、金型を用いて原料シート(プリプレグ)を屈曲させている(本件特許明細書の段落0073、甲1の段落0072)。ここで、小さいRを有する金型を製造する困難性等の観点から、上記図Aの境界線Aが紙面上下方向に対して斜めに描かれているとおり、原料シートの外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを早くする(外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを図Aにおける右側にする)ことが通常であり、技術常識といえる。その場合、当然のことながら、上記図Bにおける境界線Cの右側(頂部)の厚さ(1.00)が境界線Cの左側(竪壁部)の厚さ(1.10)よりも薄くなり、したがって「凸形状の両側の頂部の厚さが、頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄いこと」ことも技術常識といえる。 上記「小さいRを有する金型を製造する困難性」及び上記「技術常識」については、上述した通りである。 また、甲1に記載された「凸部の厚み(1.00~1.03(上記図B参照))が、凸部と凹部との連結部の厚み(1.10~1.45(上記図B参照))の0.69~0.94倍であること(甲1の段落0061(図1(b)))」は、本件特許発明3の「頂部の厚さが、竪壁部の少なくとも一部の厚さの0.50~0.90倍であること(発明特定事項C6)」に相当する。(33頁下から5行ないし34頁17行) (b)「繊維シートの繊維径」について 甲1に記載された「導電性基材として、体積抵抗率10-2Ωcm以下以下、平均長さ3~15mmの炭素繊維が好適に挙げられること(甲1の段落0050)」は、本件特許発明3の「繊維シートが、1~100μmの繊維径及び1~30mmの繊維長を有する炭素繊維及び樹脂繊維の少なくともいずれかを含むこと(発明特定事項C7)」に相当する。 (34頁18ないし22行) (c)「カーボン粒子の面積含有割合」について 甲1に記載された「凸部の厚み(1.00~1.03(上記図B参照))が凸部と凹部との連結部の厚み(1.10~1.45(上記図B参照))より薄いこと(甲1の段落0061(図1(b)))」は、本件特許発明3の「竪壁部の少なくとも一部においてよりも、頂部の少なくとも一部において、カーボン粒子の面積含有割合が高いこと」に相当する(発明特定事項C9)。(34頁下から3行ないし35頁2行) b 上記各主張について検討する。 (a)「頂部の厚さ」について 上記1(2)ア(ア)で述べたように、甲第1号証には、本件発明でいう「頂部」及び「堅壁部」の厚さの関係については何等記載されておらず、また、上記1(2)ア(イ)で述べたように、甲第1号証の図1bに厚みの数値等を追加した図A、図Bに基づく異議申立人の主張は、その前提において誤りである。 また、上記ア(イ)b(b)(b-2)で述べたように、異議申立人が主張する「原料シートの外側屈曲線の始まりよりも内側屈曲線の始まりを早くすることが通常であり、その場合、凸形状の両側の頂部の厚さが、頂部間の竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄い」ということが技術常識であると認めることはできず、まして、甲第1号証には、プリプレグの屈曲部分における外側屈曲線や内側屈曲線のRについて何等記載されていない。 よって、異議申立人の「頂部の厚さ」に係る主張(a)は採用できない。 (b)「繊維シートの繊維径」について 上記ア(イ)b(a)で述べたように、甲第1号証には「炭素繊維ペーパー」の繊維径は何等記載されておらず、また、甲第1号証の段落【0050】に記載された「体積抵抗率が10-2Ωcm以下」であり「平均長さは3~15mm」である炭素繊維の「繊維径」が「1~100μm」の範囲内である理由も見当たらない。 よって、異議申立人の「繊維シートの繊維径」に係る主張(b)は採用できない。 (c)「カーボン粒子の面積含有割合」について 甲第1号証には、「黒鉛粒子」の面積含有割合について何等記載されておらず、上記1(2)ア(イ)で述べたように、甲第1号証の図1bに厚みの数値等を追加した図A、図Bに基づく異議申立人の主張は、その前提において誤りである。 よって、異議申立人の「カーボン粒子の面積含有割合」に係る主張(c)は採用できない。 (3)まとめ 以上のとおり、請求項1、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるということはできないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 したがって、請求項1、3に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 5 申立理由5(進歩性)について (1)甲各号証の記載事項 ア 甲第1号証 甲第1号証の記載事項及び甲1発明は、上記4(1)で述べたとおりである。 イ 甲第2号証 (ア)甲第2号証(特開2007-122884号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【0012】 そこで、本発明は、導電性、強度及び表面外観に優れた導電性シートおよび燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。」 「【0026】 [導電性繊維] 本発明で用いられる導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素質繊維、ステンレス繊維、チタン繊維などの各種金属繊維、ガラス繊維、鉱物繊維などの無機繊維やポリエステル繊維、アラミド繊維などの有機繊維に金属を蒸着またはメッキした繊維などを単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、燃料電池の作動環境下で腐食し難い炭素質繊維を用いることが好ましく、炭素質繊維の中でも入手が容易なPAN系炭素繊維、または、ピッチ系炭素繊維を用いることがもっとも好ましい。 【0027】 ここで用いられる導電性繊維の平均繊維長は特に制限されないが、好ましくは2mm超、より好ましくは2mm超100mm以下、更に好ましくは、3mm以上50mm以下の範囲のものである。この範囲よりも繊維長が長いと、加圧成形時に溝が成形しにくくなり、この範囲よりも繊維長が短いと強度が低下する場合がある。 【0028】 また、前記導電性繊維の平均直径は、特に制限はないが補強効果と導電性粉末との接触面積を確保するという観点から、導電性粉末の粒径よりも小さいことが好ましく、50μm以下とすること、さらに好ましくは30μm以下とすることが好ましい。より好ましくは3~30μmである。平均直径が小さい場合、使用する繊維本数が多くなるため流動性が低下するおそれがある。」 「【0037】 また、本発明に係る導電性シートおよび燃料電池用セパレータは、一旦、マトリックスとしての樹脂に導電性繊維及び導電性粉末が含有された層と、マトリックスとしての樹脂に導電性粉末が含有され導電性繊維を含まない層とからなる2層構造のシートを抄造成形により製造する。そして、この2層シート2枚を、導電性繊維を含有する層が重なる様に積層して、加熱し、加圧成形することでも製造可能である。なお、本発明に係る導電性シートおよび燃料電池用セパレータとしては2層構造のままで、つまり、前記2層構造のシートを重ねずに、そのまま加熱し、加圧成形することでも製造可能である」 (イ)甲第2号証の上記記載によれば、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「マトリックスとしての樹脂に導電性繊維及び導電性粉末が含有された層と、マトリックスとしての樹脂に導電性粉末が含有され導電性繊維を含まない層とからなる2層構造のシートを抄造成形により製造し、この2層シート2枚を、導電性繊維を含有する層が重なる様に積層して、加熱し、加圧成形、又は、前記2層構造のシートを重ねずに、そのまま加熱し、加圧成形して製造される燃料電池用セパレータにおいて、導電性繊維は、炭素質繊維を用い、導電性繊維の平均繊維長は3mm以上50mm以下であり、導電性繊維の平均直径は3~30μmであること。」 ウ 甲第3号証 (ア)甲第3号証(特開2009-93938号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【請求項1】 板状に形成された予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成される燃料電池セパレータであって、 前記予備成形体が、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いての抄造によって得られる第1シートが、黒鉛に熱可塑性樹脂を塗して成る第2シートの一対の間に介装されるサンドイッチ構造に構成されている燃料電池セパレータ。 【請求項2】 前記第1シートは、前記抄造後において含浸される熱可塑性樹脂を有している請求項1に記載の燃料電池セパレータ。」 「【0020】 両セパレータ4は、図2に示すように、その周辺部に、水素を含有する燃料ガス孔6,7と酸素を含有する酸化ガス孔8,9と冷却水孔10とが形成されており、前記単セル5の複数組を積層した時、各セパレータ4の各孔6,7、8,9、10がそれぞれ燃料電池E内部をその長手方向に貫通して燃料ガス供給マニホールド、燃料ガス排出マニホールド、酸化ガス供給マニホールド、酸化ガス排出マニホールド、冷却水路を形成するようになされている。各セパレータ4は、基本の断面形状が角波型となるように表裏に凸条(リブ)11が形成されており、アノード2と各凸条11とが当接することによる燃料ガス流路12、及びカソード3と各凸条11とが当接することによる酸化ガス流路13が形成されている。また、電解質膜1の存在側を内とした場合において、各セパレータ4,4における外向き凸条11の裏側(内側)部分が隣合わされることにより、独立した冷却水通路10に形成することができる。 ・・・(中略)・・・。 【0023】 尚、セルの構造としては、図4に示す構造のものでも良い。即ち、図4のセルは、各セパレータ4を、その表面が縦横に点状のリブ(所定形状のリブ)11の多数が均等間隔毎に並べられて成るものとして、それらリブ11とアノード2の表面との間に縦横の燃料ガス流路12が形成されるとともに、リブ11とカソード3の表面との間に縦横の酸化ガス流路13が形成される構造のものに構成してある。二次成形S2において、中間層で成形性の良い第2シート14Bが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できることから、機械的、電気的特性を向上させるべく両端に厚み変化が不得意な第1シート14Aを設ける構成としながらも、従来では困難であったリブ11等の凹凸を有する(厚み分布のある)タイプのセパレータ4の実現を可能としている。 【0024】 次に、セパレータ4についてその作り方(製造方法)の例も交えて説明する。セパレータ4の製造方法は、板状に形成された予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成するものであり、図5に示すように、セパレータの形に近似した板状の予備成形体14を作成する一次成形工程S1と、その予備成形体14を成形金型15で加圧して最終形状のセパレータ4を形成する二次成形工程S2とから成る。ここで、セパレータ4の目標とする特性は、接触抵抗が30mΩ・cm2以下、固有抵抗が30mΩ・cm以下、曲げ強度が60MPa以上、曲げ歪が1%以上、ガス透過係数が2×10-9mol・m/m2・s・MPa以下、厚さ0.15mm以下である。」 「【図4】 [図:0001417662000005.jpg] 」 図4によれば、セパレータは、片面に点状のリブに多数が均等間隔毎に並べられて成ることが見て取れる。 (イ)甲第3号証の上記記載によれば、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いて抄造され、抄造後熱可塑性樹脂が含浸され得られる第1シートが、黒鉛に熱可塑性樹脂を塗して成る第2シートの一対の間に介装されるサンドイッチ構造に構成されている予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成される燃料電池セパレータであって、セパレータは、その片面の表面が縦横に点状のリブ(所定形状のリブ)の多数が均等間隔毎に並べられて成るものであり、予備成形体を成形金型で加圧して最終形状のセパレータを形成する二次成形において、中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できることから、機械的、電気的特性を向上させるべく両端に厚み変化が不得意な第1シートを設ける構成としながらも、従来では困難であったリブ等の凹凸を有する(厚み分布のある)タイプのセパレータの実現を可能としていること。」 エ 甲第4号証 (ア)甲第4号証(特開2002-25572号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【請求項1】 黒鉛粉末65~80重量%、熱硬化性樹脂15~30重量%および炭素繊維5~15重量%からなる混合物の、概ねシート状の圧縮一体成型体であり、その片面ないし両面に溝を有し、体積抵抗率が10mΩ・cm以下である固体高分子型燃料電池用溝付セパレータ。 【請求項2】 成型体の見掛け密度が1.4~2.1dl/gであり、溝部と複数の溝間のリブ部とで密度差を有する請求項1の溝付セパレータ。 ・・・(中略)・・・。 【請求項6】 炭素繊維が、それぞれ平均繊維直径が30μm以下、平均繊維長が1mm未満である、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維およびポリアクリロニトリル系炭素繊維の少なくとも一種の炭素繊維からなり、80℃における熱膨張率が50×10-6K-1以下である請求項1~4のいずれかの溝付セパレータ。」 「【0022】圧縮成型にあたっては、これら上型1と下型3間に上記黒鉛粉末、熱硬化性樹脂および炭素繊維を含む混合原料を配置して、上型1と下型3により圧縮成型すればよい。図3に示すように、混合原料を一旦予備成型して、ほぼ平坦な予備成型シート2を形成し、これを更に溝部に相当する凸部型状を有する上型1と下型3間に配置して圧縮成型する二段成型工程を採用することが好ましい。これら積層体を型枠(図示せず)中に配置して圧縮成型を行う。」 「【0030】図4(b)および図5(b)に示すように、セパレータの両面に付す溝は、概ね円弧形状であることが好ましい。前述したように、本発明のセパレータの好ましい製造態様によれば、概ね平坦なシート状成型体への予備圧縮成型と、溝付型(またはローラ)を用いた溝付け圧縮成型の二段成形工程を採ることが好ましい。これにより、セパレータ成形体の溝部Gと隣接するリブ部Rとの間には、成形体の密度差が生じ、使用条件下での熱変形応力が集中しがちな溝部Gがより高密度化して強靭となり、セパレータ全体の強度が増大する。これに対し、平坦なシート状成形体に切削加工により溝を付与した場合、あるいは一段圧縮成型で溝付セパレータ成形体を得た場合には、溝部Gと隣接するリブ部Rとの間に溝部への応力集中に対して好ましい抵抗力を与える密度差が生ぜず、また溝部Gでの強度確保のために全成形体の高密度化を図れば、不要なリブ部Rでの密度上昇もあるため、セパレータ全体としての重量増加が起り、軽量な固体高分子型燃料電池の製造には不都合となる。このような好ましい溝部Gとリブ部Rとの間の密度差は、従来から用いられている、矩形断面の溝を有するセパレータ成形体を二段圧縮成型により形成することによっても得られるが、円弧状断面を有する溝の形成に際しては、より好ましいリブ部Rから溝Gの底部へ向けての密度勾配付きの密度差が形成され、より溝部への応力集中に対する耐久強度が増大するほか、局所的応力集中個所として作用する溝の角部が除かれ、全体としての軽量性を維持しつつ一層の強度向上が図られる。このような好ましい効果を得るためには、溝部の断面形状は、概ね円弧状であればよく、真円弧状以外でも、例えば変形した楕円弧状であってもよい。なお、二段圧縮成型における溝部での密度増大は、予備圧縮成型体の厚さから、溝付け圧縮成型後の溝部での低減した厚さと逆比例して起ると解され、上述の例では概ねリブ部に対して5/(5-0.6)≒1.1倍の密度への増大が期待される。」 「【図4】(b) [図:0001417662000006.jpg] 」 「【図5】b [図:0001417662000007.jpg] 」 (イ)甲第4号証の上記記載によれば、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「黒鉛粉末65~80重量%、熱硬化性樹脂15~30重量%および平均繊維直径が30μm以下、平均繊維長が1mm未満である炭素繊維5~15重量%からなる混合物の、概ねシート状の圧縮一体成型体であり、その両面に溝を有し、溝部と複数の溝間のリブ部とで密度差を有する燃料電池用溝付セパレータであって、黒鉛粉末、熱硬化性樹脂および炭素繊維を含む混合原料を一旦予備成型して、ほぼ平坦な予備成型シートを形成する予備圧縮成型と、予備成型シートを更に溝部に相当する凸部型状を有する上型と下型間に配置して圧縮成型する溝付け圧縮成型の二段成型工程を採用することにより、セパレータ成形体の溝部と隣接するリブ部との間には、成形体の密度差が生じ、使用条件下での熱変形応力が集中しがちな溝部Gがより高密度化して強靭となり、セパレータ全体の強度が増大すること。」 (2)当審の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 上記4(2)ア(ア)で述べたように、本件発明1と甲1発明1とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「繊維シートにカーボン粒子及び熱硬化性樹脂を含侵して、前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂を前記繊維シートに適用した原料シートを提供すること、並びに 前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように前記原料シートをプレスして、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること、 を含み、 前記繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含み、 前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び前記熱硬化性樹脂が担持される、 燃料電池用セパレータの製造方法。」 (相違点1) 繊維シートに関し、本件発明1は「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 (相違点2) 本件発明1は「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」のに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 (イ)相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点2について判断する。 a 上記(1)ウ(イ)によれば、甲第3号証には「甲第3号証に記載された技術」が記載されているところ、甲第3号証に記載された技術における「セパレータは、その片面の表面が縦横に点状のリブ(所定形状のリブ)の多数が均等間隔毎に並べられて成るものであ」るのに対し、甲1発明1の「燃料電池セパレータ」は「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され」、「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」るものであって、リブの配置が異なるものである。 また、甲第3号証に記載された技術において、「プレス成形」される「予備成形体」は、「膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いて抄造され、抄造後熱可塑性樹脂が含浸され得られる第1シートが、黒鉛に熱可塑性樹脂を塗して成る第2シートの一対の間に介装されるサンドイッチ構造に構成されている」ものであるのに対し、甲1発明1の「加熱圧縮成形」される「燃料電池セパレータ用プリプレグ」は「導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態」したものであって、シートの層構造も異なるものである。 そして、甲第3号証に記載された技術は、「膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いて抄造され、抄造後熱可塑性樹脂が含浸され得られる第1シートが、黒鉛に熱可塑性樹脂を塗して成る第2シートの一対の間に介装されるサンドイッチ構造に構成されている予備成形体を、」「成形金型で加圧」することにより「中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できる」ものである。一方、甲第1号証には、シート成形を可能として燃料電池セパレータの薄型化、軽量化を可能とすることができ、且つ、得られる燃料電池セパレータの良好な導電性及び機械的強度を確保することができる燃料電池セパレータ用プリプレグを用いた燃料電池セパレータの製造方法を提供するという課題(段落【0013】)を解決するために、平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂、及びワックスを含有する樹脂組成物を導電性基材に含浸・半硬化して燃料電池セパレータ用プリプレグを得て、該燃料電池セパレータ用プリプレグを成形硬化して燃料電池セパレータを形成することが記載されている(段落【0014】)。 してみると、甲1発明1における上記課題を解決するために必須の発明特定事項である「燃料電池セパレータ用プリプレグ」に代えて、甲第3号証に記載された技術における「予備成形体」をあえて採用する理由は見当たらず、また、それを裏付ける証拠も提出されていない。 したがって、甲1発明1に甲第3号証に記載された技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ないことである。 b 上記(1)エ(イ)によれば、甲第4号証には「甲第4号証に記載された技術」が記載されているところ、「凸部型状を有する上型と下型間に配置して圧縮成型」される「予備成型シート」は「黒鉛粉末、熱硬化性樹脂および炭素繊維を含む混合原料を一旦予備成型して、ほぼ平坦に」形成されるのに対し、甲1発明1における「凹部を設けた成形金型を用い」「加熱圧縮成形」される「燃料電池セパレータ用プリプレグ」は、「炭素繊維ペーパーを用い」た「導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態することで」得られるものであって、燃料電池セパレータを形成するためのシートの製造工程が異なるものである。 また、甲1発明1の「導電性基材」に用いられる「炭素繊維ペーパー」「を構成する炭素繊維の平均長さは3~15mm」であるところ、甲第4号証に記載された技術の「炭素繊維」は「平均繊維直径が30μm以下、平均繊維長が1mm未満」であり、甲第4号証の段落【0017】に「平均繊維長が1mm以上であると原材料の混合の際に、繊維が絡み易くなり、成型体の内部組成が不均一となることで気体透過量が増大してセパレータとして必要な気体不透過性が確保できなくなるおそれがある。」と記載されている。 そして、甲第4号証に記載された「両面に溝を有」する「燃料電池用溝付セパレータ」は、甲1発明1の「燃料電池セパレータ」のような「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され」、「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」る構造であることを裏付ける記載や示唆はない。 さらに、上記aで述べた上記課題を解決するために必須の発明特定事項である「導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させた後」「半硬化状態することで、燃料電池セパレータ用プリプレグを得る」ことに代えて、甲第4号証に記載された技術の「黒鉛粉末、熱硬化性樹脂および炭素繊維を含む混合原料を上型と下型により圧縮成形して、ほぼ平坦な予備成型シートを形成する予備圧縮成型」をあえて採用する理由も見当たらず、また、それを裏付ける証拠も提出されていない。 したがって、甲1発明1に甲第4号証に記載された技術を採用することは当業者が容易に想到し得ないことである。 c また、甲第1号証の段落【0014】の「この燃料電池セパレータ1は導電性基材により高い機械的強度が付与されると共に優れた導電性を維持し、且つ黒鉛粒子が均一に分散すると共にこの黒鉛粒子により燃料電池セパレータ1内に安定した導電パスが形成される。」、同段落【0022】の「得られる燃料電池セパレータ1は導電性基材により高い機械的強度が付与されると共に優れた導電性を維持し、且つ黒鉛粒子が均一に分散すると共にこの黒鉛粒子により燃料電池セパレータ1内に安定した導電パスが形成されるものである。」、同段落【0027】の「このような黒鉛粒子の・・・平均粒径が35μmを超えると樹脂組成物中で黒鉛粒子の沈降が生じやすくなり、樹脂組成物の不均一化を招くおそれがあって、この樹脂組成物にて形成されるプリプレグ(燃料電池セパレータ用プリプレグ)も不均一化してその導電性が不安定となるおそれがある。」の各記載(下線は、当審が付与。)から、甲第1号証には、黒鉛粒子が均一に分散しつつ、樹脂組成物及びプルプレグの不均一化を抑制することが示唆されているといえる。 してみると、「予備成形体を」「成形金型で加圧」「する二次成形において、中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できる」甲第3号証に記載された技術や、「セパレータ成形体の溝部と隣接するリブ部との間には、成形体の密度差が生じ」る甲第4号証に記載された技術を、甲1発明1に採用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 d そして、甲第3号証及び甲第4号証には、「圧下率」に係る記載や示唆は見当たらないことから、仮に、甲1発明1に甲第3号証に記載された技術及び甲第4号証に記載された技術を採用する動機があり、甲1発明1に甲第3号証に記載された技術及び甲第4号証に記載された技術を採用したとしても、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。 さらに、上記(1)イ(イ)によれば、甲第2号証には、「甲第2号証に記載された技術」が記載されているものの、「圧下率」に係る記載や示唆は見当たらないことから、甲1発明1に甲2号証に記載された技術を採用したとしても、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。 e よって、相違点2に係る構成は、甲1発明1、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)異議申立人の主張 a 異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 (a)甲3には、仮の相違点2について「二次成形において、中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できることから、従来では困難であったリブ等の凹凸を有する(厚み分布のある)タイプのセパレータの実現を可能としている(甲3の段落0023)」こと、すなわち、「圧下率の異なる部位が存在し、圧下率の高い部分から圧下率の低い部分に樹脂成分を流動させていること」が記載されている。 ここで、甲1発明と甲3発明とを組み合わせる動機づけについて検討すると、下記(i)から(iii)の点で、甲1発明と甲3発明とを組み合わせる動機づけはあるといえる。 (i)甲1及び甲3の技術分野は、いずれも、「燃料電池セパレータ(甲1の段落0001、甲3の段落0001)」である点で共通している(技術分野の関連性)。 (ii)甲1及び甲3の課題は、いずれも、「軽量化及び機械的強度改善(甲1の段落0013、甲3の段落0006)」である点で共通している(課題の共通性)。 (iii)甲1及び甲3は、いずれも、「軽量化及び機械的強度改善(甲1の段落0013、甲3の段落0006)」という課題を解決するために「黒鉛、樹脂、及び繊維(甲1の段落0026、甲1の段落0050、甲3の請求項1、甲3の段落0015)」を用いていることから、作用及び機能も同一であると解される(作用、機能の同一性)。(42頁1ないし20行) (b)甲4には、仮の相違点2について「密度差を有する(甲4の請求項2)」こと、すなわち、 『「樹脂の少ない高密度の溝部(「頂部」に相当)」と「樹脂の多い低密度のリブ部(「竪壁部(移行部)」に相当)」という圧下率の異なる部位が存在し、圧下率の高い部分から圧下率の低い部分に樹脂成分を流動させていること』が記載されている。 ここで、甲1発明と甲4発明とを組み合わせる動機づけについて検討すると、下記(i)~(iii)の点で、甲1発明と甲4発明とを組み合わせる動機づけはあるといえる。 (i)甲1及び甲4の技術分野は、いずれも、「燃料電池セパレータ(甲1の段落0001、甲4の段落0011)」である点で共通している(技術分野の関連性)。 (ii)甲1及び甲4の課題は、いずれも、「軽量化、導電性向上、及び機械的強度改善(甲1の段落0013、甲4の段落0011)」である点で共通している(課題の共通性)。 (iii)甲1及び甲4は、いずれも、「軽量化、導電性向上、及び機械的強度改善(甲1の段落0013、甲4の段落0011)」という課題を解決するために「黒鉛、樹脂、及び繊維(甲1の段落0026、甲1の段落0050、甲4の請求項1)」を用いていることから、作用及び機能も同一であると解される(作用、機能の同一性)。(42頁下から9行ないし43頁10行) b 異議申立人の上記主張について判断する。 (a)上記(イ)a、bで述べたように、甲1発明1に甲第3号証に記載された技術又は甲第4号証に記載された技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ないことであり、また、上記(イ)cで述べたように、甲第3号証に記載された技術及び甲第4号証に記載された技術を甲1発明1に採用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 (b)また、甲第3号証に記載された技術及び甲第4号証に記載された技術には、燃料電池セパレータが「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」た構造である場合において、圧下率が異なる部分を形成する記載や示唆ない。 (c)以上から、異議申立人の主張は採用できない。 (エ)小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と甲1発明1とを対比する。 a 甲1発明1の「炭素繊維ペーパー」が用いられる「導電性基材」、「黒鉛粒子」は、本件発明2の「繊維シート」、「カーボン粒子」に相当する。 また、甲1発明1の「燃料電池セパレータ用プリプレグ」は、「燃料電池セパレータ」の原料になるシートといえるから、本件発明2の「原料シート」に相当する。 してみると、甲1発明1の「炭素繊維ペーパー」が用いられる「導電性基材に」「黒鉛粒子」「を含浸させた」「燃料電池セパレータ用プリプレグを得ること」と本件発明2とは、「繊維シートにカーボン粒子を含侵させた原料シートを提供する」点で共通する。 ただし、原料シートに関し、本件発明2は「カーボン粒子を適用した前記繊維シートの両面を、カーボン粒子と熱可塑性樹脂の混合物をシート状に成形した熱可塑性樹脂シートで挟」んだものであるのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点で相違する。 b 甲1発明1の「燃料電池セパレータ」は「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」るところ、「複数個の凸部が形成されている燃料電池セパレータを得るために」「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」のであるから、甲1発明1においても、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」の「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」ように「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」といえる。 また、甲1発明1では「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、」「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」ることから、該「複数個のリブ状の凸部」側に頂上部分を有し、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が存在することは明らかである。してみると、甲1発明1においても「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」ことにより、複数の頂上部分と、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が得られるといえる。 そして、本件特許明細書の段落【0016】の「凹凸形状の頂部同士を連結する移行部(竪壁部)」の記載も参酌すれば、甲1発明1において、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」の「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され、この凹部にて」「ガス供給排出用溝が形成され、他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され、この凹部にてガス供給排出用溝が形成され」ように「燃料電池セパレータ用プリプレグを」「加熱圧縮成形する」ことにより、複数の頂上部分と、隣り合う頂上部分を連結する移行部分が得られることは、本件発明2の「前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように前記原料シートをプレスして、 複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること」に相当する。 c 甲1発明1の「炭素繊維の平均長さ」である「3~15mm」は、本件発明2の「繊維長」の「1~30mm」の範囲に含まれる。 してみると、甲1発明1の「導電性基材として炭素繊維ペーパーを用い、これを構成する炭素繊維の平均長さは3~15mmの範囲である」ことと本件発明2とは、「繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含」む点で共通する。 ただし、繊維シートに関し、本件発明2は「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点で相違する。 d 甲1発明1では、「導電性基材に平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物を含浸させた後、加熱により樹脂組成物を半硬化状態することで、燃料電池セパレータ用プリプレグを得」て、「複数個の凸部が形成されている燃料電池セパレータを得るために、上型と下型にそれぞれ凹部を設けた成形金型を用い、この下型の上に、所定枚数を積層して被圧体とした燃料電池セパレータ用プリプレグを載置し、次いで上型をセットし、型締めして加熱圧縮成形する」ことから、甲1発明1においても、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」が「加熱圧縮成形」された後は、「炭素繊維ペーパ-」が用いられる「導電性基材」に「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」が担持されると解される。 よって、甲1発明1において、「燃料電池セパレータ用プリプレグ」が「加熱圧縮成形」された後、「炭素繊維ペーパ-」が用いられる「導電性基材」に「黒鉛粒子」及び「熱硬化性樹脂」が担持されることと本件発明2とは、「前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び樹脂が担持され」る点で共通する。 ただし、樹脂に関し、本件発明2は「熱可塑性樹脂」であるのに対し、甲1発明1は「熱硬化性樹脂」である点で相違する。 e 本件発明2は「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記 竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」のに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点で相違する。 f 甲1発明1の「燃料電池セパレータの製造方法」は、本件発明2の「燃料電池用セパレータの製造方法」に相当する。 上記aないしfにより、本件発明2と甲1発明1とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。 (一致点) 「繊維シートにカーボン粒子を含侵させた原料シートを提供すること、並びに 前記原料シートの両側の表面に、ガス流通用の流路を形成する凹凸形状を備えるように前記原料シートをプレスして、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを得ること、 を含み、 前記繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含み、 前記プレス工程で前記原料シートをプレスした後、前記繊維シートに前記カーボン粒子及び樹脂が担持される、 燃料電池用セパレータの製造方法。」 (相違点6) 原料シートに関し、本件発明2は「カーボン粒子を適用した前記繊維シートの両面を、カーボン粒子と熱可塑性樹脂の混合物をシート状に成形した熱可塑性樹脂シートで挟」んだものであるのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 (相違点7) 繊維シートに関し、本件発明2は「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 (相違点8) 樹脂に関し、本件発明2は「熱可塑性樹脂」であるのに対し、甲1発明1は「熱硬化性樹脂」である点。 (相違点9) 本件発明2は「前記原料シートのプレスにおいて、前記頂部の圧下率が、前記 竪壁部の圧下率よりも高くなるように、前記原料シートをプレスする」のに対し、甲1発明1はその旨特定されていない点。 (イ)相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点9について判断する。 相違点9は相違点2と同じであるから、相違点2に対する判断と同様な理由により、相違点9に係る構成は、甲1発明1、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)異議申立人の主張について a 異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 (a)甲3には、「二次成形において、中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できることから、従来では困難であったリブ等の凹凸を有する(厚み分布のある)タイプのセパレータの実現を可能としている(甲3の段落0023)」こと、すなわち、「圧下率の異なる部位が存在し、圧下率の高い部分から圧下率の低い部分に樹脂成分を流動させていること」が記載されている。 ここで、甲1発明と甲3発明とを組み合わせる動機づけについて検討すると、上述したように、甲1発明と甲3発明とを組み合わせる動機づけはあるといえる。(46頁下から4行ないし47頁5行) (b)甲4には、「密度差を有する(甲4の請求項2)」こと、すなわち、『「樹脂の少ない高密度の溝部(「頂部」に相当)」と「樹脂の多い低密度のリブ部(「竪壁部(移行部)」に相当)」という圧下率の異なる部位が存在し、圧下率の高い部分から圧下率の低い部分に樹脂成分を流動させていること』が記載されている。 ここで、甲1発明と甲4発明とを組み合わせる動機づけについて検討すると、上述したように、甲1発明と甲4発明とを組み合わせる動機づけはあるといえる。(47頁12ないし19行) b 異議申立人の上記主張について判断する。 異議申立人の上記主張は、上記ア(ウ)aで挙げた相違点2に対する異議申立人の主張と同じであるから、上記ア(ウ)bで述べた判断と同じ理由により、異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 本件発明3について (ア)対比 上記4(2)イ(ア)で述べたように、本件発明3と甲1発明2とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「燃料電池用セパレータであって、 繊維シート、並びに前記繊維シート中に分散しているカーボン粒子及び樹脂を有し、かつ前記カーボン粒子及び前記樹脂が分散している前記繊維シートの両側の表面に、ガス流通用流路を形成している凹凸形状を備え、前記凹凸形状が、複数の頂部と、相互に隣り合う前記頂部の間を連結する竪壁部とを有しており、 前記繊維シートが、1~30mmの繊維長を有する炭素繊維を含み、 前記樹脂が、熱硬化性樹脂を含む、 燃料電池用セパレータ。」 (相違点3) 本件発明3は「前記凹凸形状の両側の頂部の厚さが、前記頂部間の 竪壁部の少なくとも一部の厚さよりも薄」く、「前記頂部の厚さが、前記 竪壁部の少なくとも一部の厚さの0.50~0.90倍であ」るのに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点。 (相違点4) 本件発明3は「炭素繊維」が「1~100μmの繊維径」を有するのに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点。 (相違点5) 本件発明3は「前記竪壁部の少なくとも一部においてよりも、前記頂部の少なくとも一部において、前記カーボン粒子の面積含有割合が高い」のに対し、甲1発明2はその旨特定されていない点。 (イ)相違点に対する判断 事案に鑑み相違点5について判断する。 a 上記(1)ウ(イ)によれば、甲第3号証には「甲第3号証に記載された技術」が記載されているところ、甲第3号証に記載された技術における「セパレータは、その片面の表面が縦横に点状のリブ(所定形状のリブ)の多数が均等間隔毎に並べられて成るものであ」るのに対し、甲1発明2の「燃料電池セパレータ」は「一面に複数個のリブ状の凸部が形成されると共に隣り合う凸部間に溝状の凹部が形成され」、「他面には、前記一面の凸部の裏側に凹部が、前記一面の凹部の裏側に凸部がそれぞれ形成され」るものであって、リブの配置が異なるものである。 また、甲第3号証に記載された技術において、「燃料電池セパレータ」は「膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いて抄造され、抄造後熱可塑性樹脂が含浸され得られる第1シートが、黒鉛に熱可塑性樹脂を塗して成る第2シートの一対の間に介装されるサンドイッチ構造に構成されている予備成形体を」「プレス成形」して作成されるものであるのに対し、甲1発明2の「燃料電池セパレータ」は「平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂及びワックスを含有する樹脂組成物と、該樹脂組成物に含浸される導電性基材とで形成される燃料電池セパレータ用プリプレグを所定枚数積層し」「加熱圧縮して得られる」ものであって、シートの層構造も異なるものである。 そして、甲第3号証に記載された技術は、「膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いて抄造され、抄造後熱可塑性樹脂が含浸され得られる第1シートが、黒鉛に熱可塑性樹脂を塗して成る第2シートの一対の間に介装されるサンドイッチ構造に構成されている予備成形体を、」「成形金型で加圧」することにより「中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できる」ものである。一方、甲第1号証には、シート成形を可能として燃料電池セパレータの薄型化、軽量化を可能とすることができ、且つ、得られる燃料電池セパレータの良好な導電性及び機械的強度を確保することができる燃料電池セパレータ用プリプレグを用いて形成される燃料電池セパレータを提供するという課題(段落【0013】)を解決するために、「平均粒径5~35μmの黒鉛粒子、熱硬化性樹脂、及びワックスを含有する樹脂組成物を導電性基材に含浸・半硬化して成る」「燃料電池セパレータ用プリプレグを成形硬化して燃料電池セパレータを形成することが記載されている(段落【0014】)。 してみると、甲1発明2において上記課題を解決するために必須の発明特定事項である「燃料電池セパレータ用プリプレグ」に代えて、甲第3号証に記載された技術におけるシートの層構造の異なる「予備成形体」をあえて採用する理由は見当たらず、また、それを裏付ける証拠も提出されていない。 したがって、甲1発明2に甲第3号証に記載された技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ないことである。 b また、甲第1号証の段落【0014】の「この燃料電池セパレータ1は導電性基材により高い機械的強度が付与されると共に優れた導電性を維持し、且つ黒鉛粒子が均一に分散すると共にこの黒鉛粒子により燃料電池セパレータ1内に安定した導電パスが形成される。」、同段落【0022】の「得られる燃料電池セパレータ1は導電性基材により高い機械的強度が付与されると共に優れた導電性を維持し、且つ黒鉛粒子が均一に分散すると共にこの黒鉛粒子により燃料電池セパレータ1内に安定した導電パスが形成されるものである。」、同段落【0027】の「このような黒鉛粒子の・・・平均粒径が35μmを超えると樹脂組成物中で黒鉛粒子の沈降が生じやすくなり、樹脂組成物の不均一化を招くおそれがあって、この樹脂組成物にて形成されるプリプレグ(燃料電池セパレータ用プリプレグ)も不均一化してその導電性が不安定となるおそれがある。」の各記載(下線は、当審が付与。)から、甲第1号証には、黒鉛粒子が均一に分散しつつ、樹脂組成物及びプリプレグの不均一化を抑制することが示唆されているといえる。 してみると、「予備成形体を」「成形金型で加圧」「する二次成形において、中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できる」甲第3号証に記載された技術を、甲1発明2に採用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。 d そして、甲第3号証には、「カーボン粒子の面積含有割合」に係る記載や示唆は見当たらないことから、仮に、甲1発明2に甲第3号証に記載された技術を採用する動機があり、甲1発明2に甲第3号証に記載された技術を採用したとしても、相違点5に係る構成を導き出すことはできない。 さらに、上記(1)イ(イ)によれば、甲第2号証には、「甲第2号証に記載された技術」が記載されているものの、「カーボン粒子の面積含有割合」に係る記載や示唆は見当たらないことから、甲1発明2に甲2号証に記載された技術を採用したとしても、相違点5に係る構成を導き出すことはできない。 e よって、相違点5に係る構成は、甲1発明2、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)異議申立人の主張 a 異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 甲3には、「二次成形において、中間層で成形性の良い第2シートが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できることから、従来では困難であったリブ等の凹凸を有する(厚み分布のある)タイプのセパレータの実現を可能としている(甲3の段落0023)」こと、すなわち、「カーボン粒子(樹脂)の面積含有割合の異なる部位が存在し、樹脂の面積含有割合の高い部分(カーボン粒子の面積含有割合の低い部分)から樹脂の面積含有割合の低い部分(カーボン粒子の面積含有割合の高い部分)に樹脂成分を流動させていること」が記載されている。 ここで、甲1発明と甲3発明とを組み合わせる動機づけについて検討すると、上述したように、甲1発明と甲 3発明とを組み合わせる動機づけはあるといえる。(48頁下から2行ないし49頁9行) b 異議申立人の上記主張について判断する。 異議申立人の上記主張は、上記ア(ウ)aで挙げた相違点2に対する異議申立人の主張と同じであるから、上記ア(ウ)bで述べた判断と同じ理由により、異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (2)まとめ 以上のとおり、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 また、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術、甲第3号証に記載された技術及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 そして、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 よって、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700662

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