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特許異議申立

2024-700601

チーズ複合食品

審判番号
2024-700601
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-208250
登録番号
7405573
請求日
2024年06月25日
審決日
2025年07月16日
公報発行日
2025年10月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】森永乳業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人みなとみらい特許事務所
  • 【異議申立人】佐藤 一彦
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 淺野 美奈
  • 審判官 柴田 昌弘
分類
P1651.113-YAA(A23C) / P1651.121-YAA(A23C) / P1651.536-YAA(A23C) / P1651.537-YAA(A23C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7405573号発明「チーズ複合食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7405573号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕、〔3ないし7〕、8について訂正することを認める。 特許第7405573号の請求項3ないし8に係る特許を維持する。 特許第7405573号の請求項1及び2に係る特許に対する異議申立を却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7405573号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和1年11月18日を出願日とする出願であって、令和5年12月18日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和6年6月25日に特許異議申立人 佐藤 一彦(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし8)がされ、同年8月14日に手続補正書が提出され、同年10月28日付けで取消理由が通知され、同年12月26日に特許権者 森永乳業株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、令和7年1月20日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、これに対し特許異議申立人からは応答がなかったものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和6年12月26日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む、請求項2に記載の複合食品。」 と記載されているのを、 「 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、以下の条件を満たし、 前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む、複合食品。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g)」に訂正する。請求 項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4及び5も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「チーズ組成物Bの半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが低塩チーズである、請求項2または3に記載の複合食品。」 と記載されているのを、 「チーズ組成物Bの半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが低塩チーズである、請求項3に記載の複合食品。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「前記チーズ組成物Bが、さらに、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含み、前記チーズ組成物Bに含まれる軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが、チーズ組成物Aに含まれる主要な原料チーズと同一種類である、請求項2~4の何れか一項に記載の複合食品。」 と記載されているのを、 「前記チーズ組成物Bが、さらに、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含み、前記チーズ組成物Bに含まれる軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが、チーズ組成物Aに含まれる主要な原料チーズと同一種類である、請求項3又は4に記載の複合食品。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である、請求項1~5の何れか一項に記載の複合食品。」 とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、以下の条件を満たし、 前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である、複合食品。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g)」に訂正する。請求 項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に 「 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送し、一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含む、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合に、以下の条件を満たす、複合食品の製造方法。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g)」 とあるのを、 「 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送し、一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含む、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合に、以下の条件を満たし、 下記の(i)又は(ii)を満たす、複合食品の製造方法。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g) (i)前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む; (ii)前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である。」に訂正する。 (8)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1及び訂正事項2について 訂正事項1に係る請求項1の訂正及び訂正事項2に係る請求項2の訂正は、それぞれ、請求項1及び請求項2を削除するというものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正及び訂正事項2に係る請求項2の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (イ)訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項2を引用して記載していたのを、引用関係を解消して独立形式に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 そして、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 訂正事項3による、請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4及び5の訂正についても同様である。 (ウ)訂正事項4及び訂正事項5について 訂正事項4に係る請求項4の訂正及び訂正事項5に係る請求項5の訂正は、いずれも、請求項2が削除されたことに伴い、引用先の請求項から請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4に係る請求項4の訂正及び訂正事項5に係る請求項5の訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (エ)訂正事項6について 訂正事項6に係る請求項6の訂正は、請求項6が請求項1ないし5を引用して記載していたのを、引用する請求項から請求項2ないし5を除いて請求項1のみを引用するように訂正し、併せて、引用関係を解消して独立形式に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法同条同項ただし書第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 そして、訂正事項6に係る請求項6の訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 訂正事項6による、請求項6を直接引用する請求項7の訂正についても同様である。 (オ)訂正事項7について 訂正事項7に係る請求項8の訂正は、複合食品の製造方法において、使用されるチーズ組成物A及びチーズ組成物Bの種類や含有量を特定するものであり、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bの具体的態様を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項7に係る請求項8の訂正は、本件特許の明細書の【0031】~【0035】、【0044】~【0046】、【0049】~【0050】、【0068】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (2)独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし8に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、特許権者は、訂正が認められる場合には、請求項3ないし7について、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 よって、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕、〔3ないし7〕、8について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、以下の条件を満たし、 前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む、複合食品。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g) 【請求項4】 チーズ組成物Bの半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが低塩チーズである、請求項3に記載の複合食品。 【請求項5】 前記チーズ組成物Bが、さらに、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含み、前記チーズ組成物Bに含まれる軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが、チーズ組成物Aに含まれる主要な原料チーズと同一種類である、請求項3又は4に記載の複合食品。 【請求項6】 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、以下の条件を満たし、 前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である、複合食品。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g) 【請求項7】 前記チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類の原料チーズとして、低塩チェダーチーズまたは低塩ゴーダチーズを含む、請求項6に記載の複合食品。 【請求項8】 チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送し、一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含む、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合に、以下の条件を満たし、 下記の(i)又は(ii)を満たす、複合食品の製造方法。 <条件> -4<A1-B1<2 (質量%) -410<A2-B2<-15 (mg/100g) (i)前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む; (ii)前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である。」 第4 特許異議申立書等に記載した申立ての理由の概要 令和6年6月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立の理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1、4、5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、4、5、7及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし8は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第2号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1及び8は、甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由5(サポート要件)及び申立理由6(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)チーズ組成物の製造では、乳化剤としてリン酸ナトリウムなどのナトリウムを含むものを用いるが、乳化剤の種類や添加量がチーズの組織、硬さ、剥離性に影響することが知られている。本件特許発明1は、乳化剤や原料チーズを限定しておらず、そのすべての範囲において課題を解決することができると当業者は認識することができないし、発明の詳細な説明は、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (2)実施例の複合食品は、Na含有量が1000mg未満のチーズ組成物のみを含み、チーズ組成物Bは低塩チェダーを含んでいるのに対し、比較例の複合食品は、Na含有量が1000mg以上のチーズ組成物を含んでおり、本件特許発明1が、Na含有量や低塩チーズを含むか否かによらず、課題を解決することができると当業者は認識することができないし、発明の詳細な説明は、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (3)水分の移行スピードや移行する水分量は、チーズ組成物Aとチーズ組成物Bの接し方、各チーズ組成物の厚み、各チーズ組成物の量比など、すなわち複合食品の形状によって異なり、アルミ箔の剥離性に違いが出ると思われるが、アルミ箔で包装した場合の剥離性が示されているのは、マーブル模様を形成する複合食品のみであり、本件特許明細書の記載から、上記のような複合食品におけるチーズ組成物の形状等によらず、本件特許発明の課題を解決できることを当業者は認識することができないし、発明の詳細な説明は、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 4 証拠方法 甲第1号証:特開2002-84968号公報 甲第2号証:国際公開第2016/043311号 甲第3号証:文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂) (https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm)の目次、「13 乳類」の該当ページ 甲第4号証:一般社団法人日本乳業協会 乳の知識と情報 詳細資料>乳と乳製品のQ&A>チーズ>ナチュラルチーズにはどのような種類があるでしょうか?(https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_211_407/)の画面コピー 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 また、特許異議申立書の3(1)申立ての理由の要約の理由の要点の欄(7頁)及び同(3)申立ての根拠(7~8頁)並びに4-3異議理由1、異議理由2(13頁)には、本件特許発明1~8は、甲1発明から新規性が無く、仮に新規性があったとしても微差であるから当業者が容易に想到できた発明であり進歩性がない旨記載されているが、本件特許発明2、3及び6については、異議申立書の16~17頁に進歩性欠如に関してのみ具体的な理由が記載されているので、これらの請求項については進歩性欠如についてのみ主張されているものとして審理を行った。 第5 取消理由の概要 令和6年10月28日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲1を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであって、また、本件特許の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2(甲2を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであって、また、本件特許の請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1、2、4、5及び8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 当審は、取消理由1ないし3並びに申立理由1ないし6には、以下のとおり理由がないと判断する。なお、取消理由1及び2は、請求項1について、申立理由1ないし4と概ね同旨である。 1 取消理由1(甲1を主たる証拠とする新規性及び進歩性)及び取消理由2(甲2を主たる証拠とする新規性及び進歩性)について 取消理由1及び2は、どちらも本件訂正前の請求項1を対象とするものであるが、上記第3のとおり、本件訂正により請求項1が削除されたため、取消理由1及び2は解消した。 2 取消理由3(サポート要件)について 取消理由3は、本件訂正前の請求項1、2、4、5及び8を対象とするものである。 本件訂正により、訂正前の請求項1および2が削除され、訂正後の請求項4及び5は、取消理由3の対象ではない請求項3に従属するものとなった。また、本件訂正後の請求項8は、取消理由3の対象ではない訂正前の請求項3又は6の発明特定事項を必須の構成として含むこととなった。 以上のとおり、本件訂正後の請求項3ないし8に係る発明は全て、取消理由3の対象ではない訂正前の請求項3又は6の発明特定事項を必須の構成として含むこととなったので、取消理由3は解消した。 3 申立理由1及び2(甲1を主たる証拠とする新規性及び進歩性) (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「積層チーズ食品及びその包装体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様である。 ・「【請求項1】板状食品材料を積層して、少なくとも3層以上の多層構造にし、 その多層構造のうち、 外層となる2層には、チーズ類を含有しており、積み重ねた状態で隣接する積層チーズ食品との剥離性を備えた板状食品材料を配置し、 中間層には、外層の板状食品材料との結着性と、必要に応じて中間層の板状食品材料同士の結着性を備えた板状食品材料を配置することを特徴とする積層チーズ食品。 【請求項2】中間層の板状食品材料が、 外層の板状食品材料に含有されるチーズ類とは種類の異なるチーズ類か、外層の板状食品材料に含有されるチーズ類より熟度が高いか、水分または脂肪分が高くて軟らかいか、pHが低いチーズ類である請求項1に記載の積層チーズ食品。 ・・・ 【請求項5】請求項1ないし4に記載の積層チーズ食品を、少なくとも2つ以上積み重ねて包装したことを特徴とする積層チーズ食品包装体。」 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、積み重ねても1枚1枚を容易に剥離できる積層チーズ食品に関する。」 ・「【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの問題点を解消するために創出されたものであり、板状に成形したものを多層に積層して、風味や食感に優れた積層チーズ食品を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の積層チーズ食品は、少なくとも3層以上の多層構造にすることで、課題の解決を図った。すなわち、板状食品材料を積層して、少なくとも3層以上の多層構造にし、その多層構造のうち、外層となる2層には、チーズ類を含有しており、積み重ねた状態で隣接する積層チーズ食品との剥離性を備えた板状食品材料を配置し、中間層には、外層の板状食品材料との結着性と、必要に応じて中間層の板状食品材料同士の結着性を備えた板状食品材料を配置することを特徴とする。 【0007】ここで、中間層の板状食品材料を、外層の板状食品材料に含有されるチーズ類とは種類の異なるチーズ類か、外層の板状食品材料に含有されるチーズ類より熟度が高いか、水分または脂肪分が高くて軟らかいか、pHが低いチーズ類にして、味覚や美観等に寄与させてもよい。また、中間層の板状食品材料に、チーズ類以外の食品を、液状、ペースト状、粉末状、固形物状、または、ファイバー状で含有させて味覚や栄養性等に寄与させてもよい。外層と中間層のうち少なくとも一方の板状食品材料に、色調を調製する添加物または原材料を含有させて、外層と中間層の板状食品材料の色調を同一にすることで、積層チーズ食品が多層構造に見えないようにしてもよいし、色調を調製する添加物または原材料を含有させて、外層と中間層の板状食品材料の色調を異なるようにすることで、鮮やかなコントラストを呈し、見た目に美しい積層チーズ食品にしてもよい。 【0008】このような積層チーズ食品を、少なくとも2つ以上積み重ねて包装した積層チーズ食品包装体として提供することで、流通の利便に寄与させてもよい。 【0009】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態を図面の例に基づいて説明する。図1は、本発明による積層チーズ食品を示す斜視説明図である。1枚1枚の積層チーズ食品(t1)は、それぞれ、板状食品材料で構成されている。すなわち、1枚1枚の積層チーズ食品(t1)は、外層(A)(B)と中間層(C)から成る。この積層チーズ食品は、1枚1枚の積層チーズ食品(t1)(t2)(t3)……を、所定の枚数積み重ね、更に包装し、積層チーズ食品包装体(t)として提供される。」 ・「【0013】なお、本発明における剥離性とは、以下の方法で評価した特性を意味する。後述の実施例に基づくなどして得られた縦×横×厚さが55mm×35mm×5~10mmの積層チーズ食品を、10枚重ねてラップで包み、5℃で48時間保存後、10℃で3ケ月間保存した。その後、積層チーズ食品を1枚1枚手で剥がし、隣接する積層チーズ食品との結着が認められず正常に剥がすことができた積層チーズ食品の枚数を剥離良品枚数とした。そして、10枚重ねの積層チーズ食品を10組検査し、剥離良品枚数を全検査枚数の100枚で割り、100倍したものを剥離良品率(%)とした。本発明では、この剥離良品率が90%以上の場合、剥離性が良好であると定義する。この剥離性が良好な積層チーズ食品を、10枚など所望の枚数積み重ねることで、積層チーズ食品包装体に、本発明の目的の一つである剥離性を付与することができる。」 ・「【0014】図2に、3種類の流動性食品材料(a)(b)(c)を用いて、3層構造の積層チーズ食品(t1)を製造する工程を示す。その概要は次の通りである。供給タンク(1)(2)(3)に貯留される各流動性食品材料(a)(b)(c)は、それぞれ独立に調合され、加熱や加水等により流動状態になっている。これらに必要な条件は、板状に吐出できるレオロジー的物性と、冷却されるとゲル化や可塑化等により固化することである。流動性食品材料(a)(b)(c)は、それぞれ送液ポンプ(4)(5)(6)の流量を計測制御する流量制御装置の流量計(7)(8)(9)を介して、ノズル(10)(11)(12)へ圧送される。 【0015】ノズル(10)(11)から、それぞれ回転型冷却搬送装置(13)(14)の冷却搬送面上に吐出された流動性食品材料(a)(b)は、冷却搬送面側から冷却されて固化度を高めながら搬送されることで、一定の厚さの板状に成形されて接合部(19)へ移送される。接合部(19)は、所定の間隙をおいて設置され、食品材料の搬送方向に対して互いに内向きに回転する一対の回転型冷却搬送装置(13)(14)の両冷却搬送面が、近接して対向する部分であって、ここで、回転型冷却搬送装置(13)(14)の両冷却搬送面上で板状に形成された半固化食品材料の完全に冷却固化されていない表面同士の間に、ノズル(12)へ圧送された流動性食品材料(c)が連続的に定量供給され、3層が接合されて一体化する。なお、接合部(19)の前に、食品材料(d)を供給タンク(21)から供給する挿入部(22)を付設して、板状半固化食品材料の層間へ、流動性食品材料(c)と共に更に他の食品材料(d)を導入してもよい。 すると、中間層(C)として流動性食品材料(c)と共に、液状、ペースト状、粉末状、固形物状、または、ファイバー状等の幅広い食品を導入することができる。 【0016】接合部(19)で一体化した3層構造の板状食品材料は、スクレーパー(17)(17)により回転型冷却搬送装置(13)(14)から剥がされ、固化部(15)に乗り移り、更に冷却されて完全に固化される。冷却固化の完了した3層構造の食品材料は、スリッター等の切断装置(18)を介して切断成形され、ベルトコンベア等の排出装置(18)によって外部へ排出される。このようにして、流動性食品材料(a)(b)を外層(A)(B)とし、流動性食品材料(c)を中間層(C)とした3層構造の積層チーズ食品(t1)が得られる。本発明は、本装置にのみ特に限定されるものではなく、多層構造に積層可能な装置であれば使用することができる。」 ・「【0017】 【実施例】以下に本発明の実施例を4例示す。 実施例1 ・・・ 【0018】得られた外層(A)(B)となるゴーダチーズと、中間層(C)となるチェダーチーズを、図2に示す製造装置を用いて冷却しながら成形し、外層(A)(B)の厚さが共に1.5mm、中間層(C)の厚さが5mmであり、全体としての厚さが8mmである3層構造の積層チーズ食品(t1)を得た。 ・・・ 【0019】実施例2 1年間熟成させて粉砕したニュージーランド産チェダーチーズ7kg、粉砕した未熟成国産ゴーダチーズ3kg、溶融塩としてリン酸ナトリウム200g、アナトー色素10g、並びに仕上り後の製品pHが6.0となる量の重曹と、仕上り後の製品水分が42重量%となる量の水をバッチ式ケトル型乳化機に投入し、100rpmで90℃まで撹拌しながら加熱して乳化させ、外層(A)(B)となる混合チーズを得た。次に2年間熟成させた国産チェダーチーズ7kg、2年間熟成させたイタリア産パルメザンチーズ3kg、溶融塩としてリン酸ナトリウムを200g、アナトー色素10g、並びに仕上り後の製品pHが5.8となる量の重曹と、仕上り後の製品水分が43重量%となる量の水をバッチ式ケトル型乳化機に投入し、200rpmで90℃まで撹拌しながら加熱し、中間層(C)となる高熟度のチーズを得た。このような高熟度のチーズの場合、本発明を用いないで、すなわち高熟度のチーズを単独で冷却して板状に成形し積み重ねると、隣接するチーズ 等の接触面で結着が生じ、良好な剥離性を付与することはできない。なお、この外層(A)(B)及び中間層(C)もプロセスチーズに属する。 【0020】得られた外層(A)(B)となるチーズと、中間層(C)となる高熟度のチーズを、前記実施例と同様にして、外層(A)(B)の厚さが共に1.5mm、中間層(C)の厚さが5mmであり、全体としての厚さが8mmである3層構造の積層チーズ食品(t1)を得た。これを縦×横の寸法が55mm×35mmとなるよう切断し、前述した方法により剥離性の評価を行ったところ、剥離良品率は100%であり、剥離性が良好であると判断された。また、これを試食したところ、中間層(C)の高熟度のチーズ特有のこくの有るチーズらしい風味が感じられ、非常に好ましいものであった。更に、得られた積層チーズ食品は、外層及び中間層ともに、アナトー色素により、橙色となり、外観はあたかも単層のチーズ食品のようであった。」 ・「【図1】 [図:0001427943000001.jpg] 」 ・「【図2】 [図:0001427943000002.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に、実施例2について整理すると、甲1には、次の発明(以下、順に「甲1発明」及び「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「1年間熟成させて粉砕したニュージーランド産チェダーチーズ7kg、粉砕した未熟成国産ゴーダチーズ3kg、溶融塩としてリン酸ナトリウム200g、アナトー色素10g、並びに仕上り後の製品pHが6.0となる量の重曹と、仕上り後の製品水分が42重量%となる量の水をバッチ式ケトル型乳化機に投入し、100rpmで90℃まで撹拌しながら加熱して乳化させ、外層(A)(B)となる混合チーズ(以下、「混合チーズ(A)」という。)を得、次に2年間熟成させた国産チェダーチーズ7kg、2年間熟成させたイタリア産パルメザンチーズ3kg、溶融塩としてリン酸ナトリウムを200g、アナトー色素10g、並びに仕上り後の製品pHが5.8となる量の重曹と、仕上り後の製品水分が43重量%となる量の水をバッチ式ケトル型乳化機に投入し、200rpmで90℃まで撹拌しながら加熱し、中間層(C)となる高熟度のチーズ(以下、「高熟度チーズ(C)」という。)を得た後、図2(合議体注:図2は省略する(上記アを参照のこと)。以下同様。)に示す製造装置を用いて、混合チーズ(A)を供給タンク(1)(2)に、高熟度チーズ(C)を供給タンク(3)に、流動状態でそれぞれ貯留し、それぞれ送液ポンプ(4)(5)(6)の流量を計測制御する流量制御装置の流量計(7)(8)(9)を介して、ノズル(10)(11)(12)へ圧送され、ノズル(10)(11)から、それぞれ回転型冷却搬送装置(13)(14)の冷却搬送面上に吐出された混合チーズ(A)は、冷却搬送面側から冷却されて固化度を高めながら搬送されることで、一定の厚さの板状に成形されて接合部(19)へ移送され、接合部(19)は、所定の間隙をおいて設置され、チーズの搬送方向に対して互いに内向きに回転する一対の回転型冷却搬送装置(13)(14)の両冷却搬送面が、近接して対向する部分であって、ここで、回転型冷却搬送装置(13)(14)の両冷却搬送面上で板状に形成された半固化食品材料の完全に冷却固化されていない表面同士の間に、ノズル(12)へ圧送された高熟度チーズ(C)が連続的に定量供給され、3層が接合されて一体化し、接合部(19)で一体化した3層構造の積層チーズ食品を、スクレーパー(17)(17)により回転型冷却搬送装置(13)(14)から剥がし、固化部(15)に移し、更に冷却しながら成形し、外層(A)(B)の厚さが共に1.5mm、中間層(C)の厚さが5mmであり、全体としての厚さが8mmである3層構造の積層チーズ食品(t1)を得、これを縦×横が55mm×35mmとなるように切断して、10枚重ねた積層チーズ食品。」 <甲1製法発明> 「1年間熟成させて粉砕したニュージーランド産チェダーチーズ7kg、粉砕した未熟成国産ゴーダチーズ3kg、溶融塩としてリン酸ナトリウム200g、アナトー色素10g、並びに仕上り後の製品pHが6.0となる量の重曹と、仕上り後の製品水分が42重量%となる量の水をバッチ式ケトル型乳化機に投入し、100rpmで90℃まで撹拌しながら加熱して乳化させ、外層(A)(B)となる混合チーズ(以下、「混合チーズ(A)」という。)を得、次に2年間熟成させた国産チェダーチーズ7kg、2年間熟成させたイタリア産パルメザンチーズ3kg、溶融塩としてリン酸ナトリウムを200g、アナトー色素10g、並びに仕上り後の製品pHが5.8となる量の重曹と、仕上り後の製品水分が43重量%となる量の水をバッチ式ケトル型乳化機に投入し、200rpmで90℃まで撹拌しながら加熱し、中間層(C)となる高熟度のチーズ(以下、「高熟度チーズ(C)」という。)を得た後、図2に示す製造装置を用いて、混合チーズ(A)を供給タンク(1)(2)に、高熟度チーズ(C)を供給タンク(3)に、流動状態でそれぞれ貯留し、それぞれ送液ポンプ(4)(5)(6)の流量を計測制御する流量制御装置の流量計(7)(8)(9)を介して、ノズル(10)(11)(12)へ圧送され、ノズル(10)(11)から、それぞれ回転型冷却搬送装置(13)(14)の冷却搬送面上に吐出された混合チーズ(A)は、冷却搬送面側から冷却されて固化度を高めながら搬送されることで、一定の厚さの板状に成形されて接合部(19)へ移送され、接合部(19)は、所定の間隙をおいて設置され、チーズの搬送方向に対して互いに内向きに回転する一対の回転型冷却搬送装置(13)(14)の両冷却搬送面が、近接して対向する部分であって、ここで、回転型冷却搬送装置(13)(14)の両冷却搬送面上で板状に形成された半固化食品材料の完全に冷却固化されていない表面同士の間に、ノズル(12)へ圧送された高熟度チーズ(C)が連続的に定量供給され、3層が接合されて一体化し、接合部(19)で一体化した3層構造の積層チーズ食品を、スクレーパー(17)(17)により回転型冷却搬送装置(13)(14)から剥がし、固化部(15)に移し、更に冷却しながら成形し、外層(A)(B)の厚さが共に1.5mm、中間層(C)の厚さが5mmであり、全体としての厚さが8mmである3層構造の積層チーズ食品(t1)を得、これを縦×横が55mm×35mmとなるように切断して、10枚重ねる積層チーズ食品の製造方法。」 (2)本件特許発明3について ア 対比 甲1発明の「混合チーズ(A)」及び「高熟度チーズ(C)」は、本件特許発明3の「チーズ組成物A」及び「チーズ組成物B」にそれぞれ相当し、甲1発明の「3層構造の積層チーズ食品」は、本件特許発明3の「複合食品」に、甲1発明のチーズ組成物Bに含まれる「国産チェダーチーズ」は、本件特許発明3の「半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズ」に相当する。 甲1発明において、混合チーズ(A)からなる「外層(A)」及び「外層(B)」と高熟度チーズ(C)からなる「中間層(C)」は、積層されて3層構造のチーズ食品を形成しているので、甲1発明の複合食品は、異なる2種のチーズ組成物を隣接して含むものといえる。そして、チーズ組成物Bの原料チーズ全量は、10kg(国産チェダーチーズ7kg+イタリア産パルメザンチーズ3kg混合チーズ=10kg)であり、国産チェダーチーズの含有割合は70%(7kg/10kg×100=70質量%)であるから、甲1発明のチーズ組成物Bは「前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む」という本件特許発明3の発明特定事項を満たす。さらに、混合チーズ(A)の仕上り後の製品水分は42重量%であり、高熟度チーズ(C)の仕上り後の製品水分が43重量%であるから、両者の差は、42-43=-1(重量%)であり、本件特許発明3の条件のうち、-4<A1-B1<2(質量%)を満たす。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、チーズ組成物Aの水分含有率をA1とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1とした場合、以下の条件を満たし、前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む、複合食品。 <条件> -4<A1-B1<2(質量%)」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明3の複合食品は、さらに、「チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、条件-410<A2-B2<-15(mg/100g)を満たす」のに対し、甲1発明の積層チーズ食品は、そのような条件を満たすか否かが明確でない点。 <相違点1-2> 本件特許発明3の複合食品は「前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。 甲1発明のチーズ組成物Aは、原料チーズとしてニュージーランド産チェダーチーズ及び未熟成国産ゴーダチーズのみを含むものであるが、これらはいずれも半硬質チーズまたは硬質チーズであり、「軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズ」ではないから、相違点1-2は実質的な相違点である。 そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1発明において、本件特許発明3の2つの条件を満たすように維持しつつ、チーズ組成物Aとして軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類を採用し、前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含むようにする動機付けがない。 よって、甲1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明3の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書(16頁)において、甲1の実施例3には、チェダーチーズ(硬質チーズ)とパルメザンチーズ(超硬質チーズ)を原料とする外層(A)、(B)と、クリームチーズ(軟質チーズ)を中間層(C)とを積層したチーズ食品が開示されており、実施例2の中間層を実施例3の中間層に置き換えることは当業者が容易になしえることである、と主張している。 しかし、甲1発明において中間層として実施例3のクリームチーズを採用する際に、水分含有率の差及びNa含有量の差を所定の範囲に維持する動機付けは甲1及び他の証拠をみても見当たらない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記イの判断を左右するものではない。 (3)本件特許発明4及び5について 本件特許発明4及び5は、本件特許発明3の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明3は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明4及び5もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲1発明との間には、本件特許発明3と甲1発明の間と同様の相当関係があるといえるので、甲1発明の「混合チーズ(A)」及び「高熟度チーズ(C)」は、本件特許発明6の「チーズ組成物A」及び「チーズ組成物B」にそれぞれ相当し、甲1発明の「3層構造の積層チーズ食品」は、本件特許発明6の「複合食品」に相当する。 甲1発明の複合食品は、異なる2種のチーズ組成物を隣接して含むものといえ、本件特許発明6の条件のうち、-4<A1-B1<2(質量%)を満たすといえる。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、チーズ組成物Aの水分含有率をA1とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1とした場合、以下の条件を満たす複合食品。 <条件> -4<A1-B1<2(質量%)」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1-3> 本件特許発明6の複合食品は、さらに、「チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、条件-410<A2-B2<-15(mg/100g)を満たす」のに対し、甲1発明の積層チーズ食品は、そのような条件を満たすか否かが明確でない点。 <相違点1-4> 本件特許発明6の複合食品は「前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点1-4について検討する。 甲1発明のチーズ組成物Aは、原料チーズとしてニュージーランド産チェダーチーズ及び未熟成国産ゴーダチーズを含むものであり、クリームチーズ類ではないから、相違点1-4は実質的な相違点である。 そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1発明において、本件特許発明6の2つの条件を満たすように維持しつつ、チーズ組成物Aとしてクリームチーズ類を採用する動機付けがない。 よって、甲1発明において、相違点1-4に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書(16~17頁)において、甲1の実施例3には、チェダーチーズ(硬質チーズ)とパルメザンチーズ(超硬質チーズ)を原料とする外層(A)、(B)と、クリームチーズ(軟質チーズ)を中間層(C)とを積層したチーズ食品が開示されており、実施例2の中間層を実施例3の中間層に置き換えることは当業者が容易になしえることである、と主張している。 しかし、甲1発明において中間層として実施例3のクリームチーズを採用する際に、水分含有率の差及びNa含有量の差を所定の範囲に維持する動機付けは甲1及び他の証拠をみても見当たらない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は、上記イの判断を左右するものではない。 (5)本件特許発明7について 本件特許発明7は、本件特許発明6の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(4)のとおり、本件特許発明6は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明7もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲1製法発明との間には、本件特許発明3と甲1発明の間と同様の相当関係があるといえるので、甲1製法発明の「混合チーズ(A)」及び「高熟度チーズ(C)」は、本件特許発明8の「チーズ組成物A」及び「チーズ組成物B」にそれぞれ相当し、甲1製法発明の「3層構造の積層チーズ食品」は、本件特許発明8の「複合食品」に相当する。 甲1製法発明で得られる複合食品は、異なる2種のチーズ組成物を隣接して含むものといえ、本件特許発明8の条件のうち、-4<A1-B1<2(質量%)を満たすといえる。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送する工程を含む、 チーズ組成物Aの水分含有率をA1とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1とした場合に、以下の条件を満たす、複合食品の製造方法。 <条件> -4<A1-B1<2(質量%)」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1-5> 本件特許発明8は「一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含む」のに対し、甲1製法発明は、そのように特定されていない点。 <相違点1-6> 本件特許発明8の複合食品の製造方法は、「チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、条件-410<A2-B2<-15(mg/100g)を満たす」のに対し、甲1製法発明は、そのような条件を満たすか否かが明確でない点。 <相違点1-7> 本件特許発明8の複合食品の製造方法は、「下記の(i)又は(ii)を満たす (i)前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む; (ii)前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である。」のに対し、甲1製法発明は、そのような特定がなされていない点。 イ 判断 上記相違点1-5について検討する。 甲1製法発明は、チーズ組成物Aからなる外層(A)(B)と、チーズ組成物Bからなる中間層(C)の3層が接合されて一体化した積層チーズ食品の製造方法であり、製造過程においてチーズ組成物Aとチーズ組成物Bとを合流させ、混合する工程を含まないので、相違点1-5は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明8は、甲1製法発明ではない。 そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1製法発明において、ポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bと合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含むものとする動機付けがない。 よって、甲1製法発明において、相違点1-5に係る本件特許発明8の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書(17頁)において、本件特許発明8は、本件特許発明1の製造方法に関する発明であり、特徴となる発明特定事項は、本件特許発明1と同じであることから、甲1発明から新規性がなく、仮に新規性があったとしても微差であるから当業者が容易に想到できた発明であり進歩性がない、と主張している。 しかし、本件特許発明8は製造方法の発明であり、ポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bと合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含むものあるのに対し、甲1製法発明はこのような特定がなく、甲1及び他の証拠をみても、甲1製法発明においてこの様な構成を採用する動機付けがないことは、上記イで検討したとおりである。 よって、特許異議申立人の上記主張は、上記イの判断を左右するものではない。 (7)申立理由1及び2についてのむすび したがって、本件特許発明4、5、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明3ないし8は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、申立理由1及び2では、本件特許の請求項3ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3及び4(甲2を主たる証拠とする新規性及び進歩性)について (1)甲2に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項 甲2には、「包餡型ナチュラルチーズ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求の範囲] 1. 弾力性があるナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズを製造する方法であって、前記外層を20℃~100℃の温度で包餡する工程を含む、前記方法。 ・・・ 8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で製造した包餡型ナチュラルチーズ。 ・・・ 10.包餡された内容物が、外層となる弾力性があるナチュラルチーズと異なるチーズである、請求項8に記載の包餡型ナチュラルチーズ。」 ・「[0001] 本発明は、包餡型ナチュラルチーズおよびその製造方法に関する。」 ・「[0008] 本発明者らは、複数種のチーズや他の食材との組み合わせを楽しむことのできる包餡型チーズの作製を検討する中で、特許文献1において外層部に用いられているプロセスチーズやクリームチーズは、その特性から、それらを容易に包餡することができるのに対し、モッツァレラなどの弾力性(ストレッチ性)があるナチュラルチーズでは、結着状態を良好に維持しながら、包餡機などで包餡する(外層で内部を完全に覆い尽くすように包む)ことが困難であるとの新たな知見を得るに至った。 [0009] 一方、ナチュラルチーズには、風味や食感が異なる様々な種類が存在することから、とくに、食感では、独特の噛み応えがあり、弾力性があるナチュラルチーズを外層に用い、別のナチュラルチーズなどを内部(芯)に包餡することで、外層に噛み応えのある独特の食感が得られるとの期待から、上記の問題が解決できれば、従来にはない、独特の包餡型チーズを開発できると確信し、さらに研究を重ねた。すなわち、本発明の課題は、弾力性があるナチュラルチーズを外層に用いて包餡した、包餡型ナチュラルチーズおよびその製造方法を提供することにある。 [0010] 本発明者らは、前記の課題を解決すべくさらに研究を重ねる中で、弾力性があるナチュラルチーズを加温された状態で包餡させることにより、弾力性があるナチュラルチーズを外層に用いながら、包餡型ナチュラルチーズを製造できることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果、本発明を完成させた。」 ・「[0016] 本発明の弾力性があるナチュラルチーズとは、引っ張ることで、餅の如く伸長する性質があり、噛み応えがあるナチュラルチーズのことをいい、クリームチーズよりも弾力性のあるナチュラルチーズのことを意味し、例えば、パスタフィラータチーズ(モッツァレラチーズ、カチョカバロチーズ、スカモルツァチーズ、プロバローネチーズ、ストリングチーズなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明の弾力性があるナチュラルチーズとは、その製造中において、風味(例えば、熟成の風味など)や食感(例えば、クリーミーで、滑らかな食感など)を調節するために、弾力性がないナチュラルチーズを添加するチーズでもあり、これも含めて、本発明の弾力性があるナチュラルチーズという。なお、パスタフィラータチーズとは、その製造中において、パスタフィラータ(pasta filata)プロセスを必要とするチーズであり、パスタフィラータプロセスとは、適切なpHで、チーズカードを加熱しながら、大きな塊がなくなるまで捏ね上げて、物性が滑らかになるまで混練や展延することである。」 ・「[0036] [実施例1] 一般的なナチュラルチーズの製造方法に準じて、原料乳にレンネットと乳酸菌を添加して、pHが5.2になるまで発酵しながら凝乳させた後に、ホエイを排出して、チーズカードを得た。この加熱前のチーズカードの弾力性は1であった。そして、このチーズカードを85℃の温水で混練し、餅のような食感である、弾力性があるナチュラルチーズを得た。この加熱時のチーズ(外層)の弾力性は4であった。ここで得られた弾力性があるナチュラルチーズの温度は57℃であり、これを保温(57℃)しながら、包餡機(レオン社製(日本)、「火星人(登録商標)CN500」)の外層用ホッパーに投入した。一方、同時に、クリームチーズを保温(40℃)しながら、包餡機の内部用ホッパーに投入した。ここで、外層用ホッパーから包餡機には、モーノポンプを用いて、弾力性があるナチュラルチーズを供給し、内部用ホッパーから包餡機には、ベーンポンプを用いて、クリームチーズを供給した。このとき、外層と内部の重量比を、(外層):(内部)が2:1となるように供給し、合計で50gが供給されたところで、包餡型ナチュラルチーズの1個となるように、包餡機の操作条件を設定した。これらの操作条件で、包餡機を用いて、包餡型ナチュラルチーズを製造した。そして、内部をクリームチーズとし、外層を弾力性があるナチュラルチーズとした、内部と外層で食感が異なる、二層のチーズで構成された包餡物を得た。この包餡物の製造(完成)の直後に、外層の温度は35℃であった。 [0037] [実施例2] 弾力性があるナチュラルチーズとして、モッツァレラチーズを使用した以外は、実施例1と同様にして、包餡型ナチュラルチーズを製造した。この加熱時のチーズ(外層)の弾力性は4であった。そして、内部をクリームチーズとし、外層を弾力性があるナチュラルチーズとした、内部と外層で食感が異なる、二層のチーズで構成された包餡物を得た。この包餡物の製造(完成)の直後に、外層の温度は35℃であった。」 イ 甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を、特に実施例2について整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2製法発明> 「モッツァレラチーズを包餡機(レオン社製(日本)、「火星人(登録商標)CN500」)の外層用ホッパーに投入し、同時に、クリームチーズを保温(40℃)しながら、包餡機の内部用ホッパーに投入し、ここで、外層用ホッパーから包餡機には、モーノポンプを用いて、モッツァレラチーズを供給し、内部用ホッパーから包餡機には、ベーンポンプを用いて、クリームチーズを供給し、このとき、外層と内部の重量比を、(外層):(内部)が2:1となるように供給し、合計で50gが供給されたところで、包餡型ナチュラルチーズの1個となるように、包餡機の操作条件を設定する、実施例2に記載された外層がモッツァレラチーズで、内部がクリームチーズである包餡型ナチュラルチーズの製造方法。」 (2)本件特許発明8について ア 対比 甲2製法発明の「モッツァレラチーズ」及び「クリームチーズ」は、本件特許発明8の「チーズ組成物A」及び「チーズ組成物B」にそれぞれ相当し、甲2製法発明の「包餡型ナチュラルチーズ」は、本件特許発明8の「複合食品」に相当する。そして、甲2製法発明において、外層用のモッツァレラチーズはモーノポンプを用いて、内部用のクリームチーズはベーンポンプを用いて、それぞれ包餡機に供給されるので、これらは異なるポンプに充填して移送されているといえる。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送する工程を含む、複合食品の製造方法。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明8は「一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含む」のに対し、甲2製法発明は、そのように特定されていない点。 <相違点2-2> 「チーズ組成物A100gあたりの水分含有率をA1とし、チーズ組成物B100gあたりの水分含有率をB1とした場合、条件-4<A1-B1<2(質量%)を満たす」のに対し、甲2製法発明は、そのような条件を満たすか否かが明確でない点。 <相違点2-3> 本件特許発明8の複合食品の製造方法は、「チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、条件-410<A2-B2<-15(mg/100g)を満たす」のに対し、甲2製法発明は、そのような条件を満たすか否かが明確でない点。 <相違点2-4> 本件特許発明8の複合食品の製造方法は、「下記の(i)又は(ii)を満たす (i)前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、 前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、 前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む; (ii)前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である。」のに対し、甲2製法発明は、そのような特定がなされていない点。 イ 判断 上記相違点2-1について検討する。 甲2製法発明は、外層がチーズ組成物Aであり、内部がチーズ組成物Bである包餡型ナチュラルチーズの製造方法であり、製造過程においてチーズ組成物Aとチーズ組成物Bとを合流させ、混合する工程を含まないので、相違点2-1は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明8は、甲2製法発明ではない。 そして、甲2及び他の証拠をみても、甲2製法発明において、ポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bと合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含むものとする動機付けがない。 よって、甲2製法発明において、相違点2-1に係る本件特許発明8の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲2製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書(18頁)において、本件特許発明8は、本件特許発明1の製造方法に関する発明であり、特徴となる発明特定事項は、本件特許発明1と同じであることから、甲2製法発明から新規性がなく、仮に新規性があったとしても微差であるから当業者が容易に想到できた発明であり進歩性がない、と主張している。 しかし、本件特許発明8は製造方法の発明であり、ポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bと合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含むものあるのに対し、甲2製法発明はこのような特定がなく、甲2及び他の証拠をみても、甲2製法発明においてこの様な構成を採用する動機付けがないことは、上記イで検討したとおりである。 よって、特許異議申立人の上記主張は、上記イの判断を左右するものではない。 (3)申立理由3及び4についてのむすび したがって、本件特許発明8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、申立理由3及び4では、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由5(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許の明細書の【0006】並びに請求項3、6及び8の記載からみて、本件特許発明3ないし7が解決しようとする課題は、2種以上のチーズが隣接した複合食品において、水分移行が抑制された複合食品を提供することであり、請求項8が解決しようとする課題は、2種以上のチーズが隣接した複合食品の製造方法であって、水分移行が抑制された複合食品の製造方法を提供する技術を提供することであると認められる(以下、これらをまとめて「本発明の課題」という。)。 (4)サポート要件の判断 本件特許の明細書の【0008】~【0014】には、本件特許発明3ないし8に対応する記載がある。そして、同【0007】には、異なる2種のチーズ組成物における、水分含有率の差及びNa含有量の差を特定の範囲内に調節することで、チーズ組成物間の水分移行が抑制されることが記載されており、同【0025】には、水分含有率の差及びNa含有量の差について具体的な調整すべき範囲が記載されており、同【0033】にはチーズ組成物Aとして軟質チーズ及び半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量が50質量%以上であることが好ましいこと、同【0035】にはチーズ組成物Aとしてクリームチーズ類が好ましいことがそれぞれ記載され、同【0046】にはチーズ組成物Bとして半硬質チーズ、硬質チーズ及び超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量が50質量%以上であることが好ましいこと、同【0050】にはチーズ組成物Bとしてチェダーチーズ類、又はゴーダチーズ類が好ましいことがそれぞれ記載され、同【0079】~【0093】にはこれらの条件を満たす実施例1~8の複合食品が調整後30日以上経過した後においてもアルミ箔に付着せず、きれいに剥離できることが記載され、これらの条件を満たさない比較例1~4の複合食品では調整後6日後であってもアルミ箔に付着が生じることが記載されている。 そうすると、水分含有率の差及びNa含有量の差が【0025】に記載された条件を満たし、チーズ組成物Aが軟質チーズ及び半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量が50質量%以上であるか、チーズ組成物Aがクリームチーズ類であり、かつ、チーズ組成物Bが半硬質チーズ、硬質チーズ及び超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量が50質量%以上であるか、チーズ組成物Bがチェダーチーズ類、又はゴーダチーズ類であれば、チーズ組成物間の水分移行が抑制できると当業者は認識する。 そして、本件特許発明3、6及び8は、上記事項をすべて満たすものであるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件特許の明細書の上記記載並びに出願時の技術常識を踏まえれば、当業者であれば本件特許発明3、6及び8の構成を満たせば本発明の課題が解決できるものと理解する。本件特許発明3の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明4及び5並びに本件特許発明6の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明7についても同様である。 よって、本件特許発明3ないし8に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。 (5)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は特許異議申立書(18~21頁)において、上記第4 3(1)~(3)の主張をしているので、検討する。 特許異議申立人は、乳化剤の種類や添加量、Na含有量や低塩チーズを含むか否か、各チーズ組成物の接し方、厚み、量比などがチーズの剥離性等に影響することを主張するが、これらの主張は具体的な証拠に基づくものではないので、採用することができない。 よって、特許異議申立人の上記主張は、上記(4)の判断に影響するものではない。 (6)申立理由5についてのむすび 上記(4)及び(5)に記載したとおり、本件特許の請求項3ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由5によって取り消すことはできない。 6 申立理由6(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明3ないし7は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載を要する。 本件特許発明8は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、また、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載を要する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が2種以上のチーズ組成物が隣接した、複合食品及びその製造方法に関する(【0001】)ものであって、本件特許発明3ないし8の発明特定事項を満たすことによってチーズ組成物間の水分移行が抑制され、アルミ箔及びフィルム等の包装材の剥離性に優れる(【0008】~【0015】)ことが記載されている。 そして、【0017】~【0018】には、水分含有率及びNa含有量の測定方法が記載され、【0025】には水分含有率の差及びNa含有量の差について所定の範囲が記載され、【0031】~【0043】にはチーズ組成物Aについて、【0044】~【0061】にはチーズ組成物Bについて、それぞれ記載され、【0068】~【0078】には、複合食品の製造方法について記載され、【0079】~【0093】には、本件特許発明3ないし8の発明特定事項を満たす具体的な実施例が示されており、表5の実施例1ないし8のサンプルの評価結果から、複合食品について、チーズ組成物A及びBとして適切なものを選択し、水分含有率の差及びNa含有率の差を所定の範囲とすれば、アルミ箔の剥離性に優れることが示されており、また、その方法を使用することができることが記載されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明3ないし7を生産及び使用し、本件特許発明8により生産したものを使用することができる程度の記載があるといえるから、本件特許発明3ないし8に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書(18~21頁)において、上記第4 3(1)~(3)の主張をしているので、検討する。 特許異議申立人は、乳化剤の種類や添加量、Na含有量や低塩チーズを含むか否か、各チーズ組成物の接し方、厚み、量比などがチーズの剥離性等に影響することを主張するが、発明の詳細な説明には、上記(2)のとおり、チーズ組成物A及びBについて具体的に記載され、複合食品の製造方法も具体的に示され、本件特許発明3ないし8の発明特定事項を満たす実施例がアルミ箔の剥離性に優れることも示されているのに対し、特許異議申立人の主張は具体的な証拠に基づくものではないので、採用することができない。 よって、特許異議申立人の上記主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。 (4)申立理由6についてのむすび 上記(2)及び(3)に記載したとおり、本件特許の請求項3ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由6によって取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項3ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項3ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700601

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