特許異議申立
2024-700579
球状シリカ粉末充填剤の調製方法、これによって得られた粉末充填剤およびその使用
- 審判番号
- 2024-700579
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-549424
- 登録番号
- 7401943
- 請求日
- 2024年06月18日
- 審決日
- 2024年11月26日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】浙江三時紀新材科技有限公司
- 【権利者代理人】弁理士法人後藤特許事務所
- 【異議申立人】伊藤 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 増山 淳子
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.121-Y (C01B)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7401943号発明「球状シリカ粉末充填剤の調製方法、これによって得られた粉末充填剤およびその使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7401943号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7401943号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)4月26日(優先権主張 外国庁受理 2020年2月17日 中国(CN))を国際出願日とする出願であって、令和5年12月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~7に係る特許に対して、令和6年6月18日に特許異議申立人伊藤幸子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
本件特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明は、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
球状シリカ粉末充填剤の調製方法であって、
当該調製方法は、
R1SiX3の加水分解凝縮反応によって、T単位を含む球状ポリシロキサン(polysiloxane)を提供し、ここで、R1は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは、加水分解性基であり、T単位は、R1SiO3-である段階S1と、および
乾燥酸化ガス雰囲気条件下で球状ポリシロキサンをか焼し、か焼温度は、850度~1200度の間であり、低ヒドロキシル基含有量の球状シリカ粉末充填剤を得、当該球状シリカ粉末充填剤は、Q1単位、Q2単位、Q3単位およびQ4単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q1単位は、Si(OH)3O-であり、Q2単位は、Si(OH)2O2-であり、Q3単位は、SiOHO3-であり、Q4単位は、SiO4-であり、Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである段階S2とを含むことを特徴とする、調製方法。
【請求項2】
加水分解性基は、アルコキシ基(alkoxy group)またはハロゲン(halogen)原子であることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
酸化ガスには酸素ガスが含まれて、ポリシロキサン中の有機物を完全に酸化させることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
電気加熱またはガス間接加熱によって、球状ポリシロキサンのか焼を達成することを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
か焼温度は、850度~1100度の間であり、か焼時間は、6時間~12時間の間であることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
当該球状ポリシロキサンは、Q単位、D単位、および/またはM単位をさらに含み、ここで、Q単位=SiO4-であり、D単位=R2R3SiO2-であり、M単位=R4R5R6SiO-であり、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基であることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
当該調製方法は、処理剤を加えて球状シリカ粉末充填剤に対して表面処理を実行する段階をさらに含み、当該処理剤は、シランカップリング剤(Silane coupling agent)および/またはジシラザン(Disilazane)を含み、当該シランカップリング剤は、(R7)a(R8)bSi(M)4-a-bであり、R7およびR8は、炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換された炭素原子が1乃至18である炭化水素基であり、当該官能基は、ビニル基(vinyl group)、アリル基(allyl group)、スチリル基(styryl group)、エポキシ基(epoxy group)、脂肪族アミノ基(aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(acryloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(ureidopropyl group)、クロロプロピル基(chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアナートプロピル基(isocyanate propyl group)のような有機官能基からなる群から少なくとも一つが選択され、Mは、炭素原子が1乃至18であるアルコキシ基またはハロゲン原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3であり、当該ジシラザンは、(R9R10R11)SiNHSi(R12R13R14)であり、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基または水素原子であることを特徴とする
請求項1に記載の調製方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件発明1、3~5、7は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、5~9、11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証:特開2012-227448号公報
甲第2号証:特開2012-227449号公報
甲第3号証:国際公開第2019/098257号
甲第4号証:国際公開第2010/150861号
甲第5号証:特開2008-88430号公報
甲第6号証:特開2010-42984号公報
甲第7号証:特開2001-302227号公報
甲第8号証:特開2002-80598号公報
甲第9号証:特開2011-202181号公報
甲第10号証:特開2013-151581号公報
甲第11号証:特開2016-52953号公報
以下、甲第1号証等を「甲1」等という。
なお、主たる証拠は甲1、甲2であり、甲3は、研磨材として用いられるシリカ粒子の物性について、甲4、5は、加水分解によってポリシロキサン化合物を製造するためのケイ素化合物の加水分解性基がアルコキシ基であることについて、甲6~8は、酸化ガスとして酸素を含有する雰囲気で有機物を酸化させて、ポリオルガノシラン粒子からシリカ粒子を製造することについて、甲9は焼成温度について、甲10はR1nSiX14-nを29Si-NMRによって構造解析することについて、甲11は、焼成シリカ粒子をシランカップリング剤等によって表面処理することについて記載されたものである。
第4 各証拠について
1 甲1について
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル材等の半導体用封止材に好適に用いることができる非晶質シリカ粒子に関するものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した加水分解法で得られたシリカ粒子を硬化性樹脂組成物に用いると、硬化時にエポキシ樹脂の重合度が低下しガスが発生し、そのためボイドが生じることがあった。また硬化性樹脂組成物が経時的に増粘し、例えばアンダーフィル材としての使用が困難になることもあった。
【0006】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、硬化性樹脂に添加して半導体用封止材とした際に、ボイドの発生や経時的な増粘を抑制することができる非晶質シリカ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ボイドの発生や増粘の原因は、シリカ粒子原料中のアルコキシドのアルコキシ基の一部がそのまま、又は加水分解した後縮合することなく、相当量残存していることにあることが解った。このような未反応の縮合性基(アルコキシ基、ヒドロキシル基等)が残存していると、エポキシ樹脂に添加して硬化性樹脂組成物とした際、硬化時にエポキシ樹脂の重合度が低下しガスが発生してボイドが生じたり、縮合性基がエポキシ樹脂と反応して硬化性樹脂組成物が経時的に増粘することとなった。そこで、この縮合性基量を一定量以下に抑制すれば、すなわち固体NMRスペクトルにおける縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積と、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積との比率が特定値より小さい非晶質シリカ粒子を用いれば、硬化性樹脂に添加しても、硬化時にボイドの発生や経時的な増粘を抑制することができることを見出し、本発明を完成した。」
(2)「【0014】
また本発明の非晶質シリカ粒子において、上述したピーク面積A(縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積)、ピーク面積B(縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積)およびピーク面積C(縮合性基が1個結合したケイ素原子のピーク面積)の合計に対するピーク面積Aの比率([A/(A+B+C)]×100)は、80%以上であることが好ましい。より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%である。」
(3)「【0018】
本発明の非晶質シリカ粒子は、例えば加水分解法によって製造可能である。加水分解法によれば、粒度分布を狭小化できる。しかも本発明では、後述する湿式加熱処理を施す。この湿式加熱処理を行うことで、得られる非晶質シリカ粒子は、上記固体NMRスペクトルにおける所定のピーク面積比が前記範囲に制御されたものとなる。具体的には、例えば、シリコンアルコキシドを加水分解縮合反応させてシリカ粒子を生じさせる工程と、前記反応で生じた粒子を液体媒体中で60℃以上の温度にて湿式加熱処理する工程と、前記湿式加熱処理後の粒子を乾燥する工程と、前記乾燥後の粒子を800℃以上1200℃以下の温度で焼成する工程とを含む。以下、この好ましい非晶質シリカ粒子の製造方法の一例を、製造工程順に説明する。
【0019】
(シリコンアルコキシドの加水分解縮合工程)
本発明の非晶質シリカ粒子を得るには、まず、シリコンアルコキシドの加水分解縮合反応を行い、シリカ粒子を生じさせる。加水分解縮合は、水単独もしくは水と有機溶剤とからなる溶媒の中で、必要に応じて触媒(例えば、アンモニア、尿素、アミン類等)を存在させながらシリコンアルコキシドを撹拌することで進行する。この結果、球状のシリカ粒子を液体媒体(溶媒)中に分散した状態(分散液)で得ることができる。
【0020】
前記シリコンアルコキシドは、1分子中に少なくとも2個以上(好ましくは3個以上、特に4個)のアルコキシ基(特にC1-4アルコキシ基)を有する多官能アルコキシシランであればよい。ただし、シリコンアルコキシドは、アルコキシ基以外の基として、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;などの非反応性基を有していてもよい。このようなシリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン・・・等の公知のアルコキシシランが挙げられる。
・・・
【0026】
(湿式加熱処理工程)
前記加水分解縮合反応で生じたシリカ粒子には、次いで液体媒体中で60℃以上の温度にて加熱する湿式加熱処理が施される。
・・・
【0032】
(乾燥工程)
前記湿式加熱処理後の分散液は、次いで乾燥に供される。乾燥の方法は、特に限定されるものではなく、自然乾燥、常圧加熱乾燥、真空乾燥等のいずれをも採用しうるが、乾燥工程におけるシリカ粒子の二次凝集を抑制するには真空乾燥が好ましく、特に後述する構成を備えた真空瞬間乾燥装置を用いた真空乾燥が好ましい。
・・・
【0035】
(焼成工程)
前記乾燥工程を経て粉体状となった乾燥後のシリカ粒子には、通常、800℃以上1200℃以下の温度で焼成が施される。かかる焼成を施すことにより、シリカ粒子が有する親水性のシラノール基やアルコキシシリル基が縮合してシロキサン結合が形成されるとともに、細孔が塞がれて、吸湿性が低いシリカ粒子が得られる。焼成温度が800℃未満であると、シラノール基が残存し、シリカ粒子表面には微細な細孔が多数生成する傾向があり、それにより、得られるシリカ粒子が比較的大きな吸湿性を有するものとなる虞がある。一方、焼成温度が1200℃を超えると、シリカ粒子同士の融着が起こって粉砕機でも粉砕不可能な二次凝集物が生じる虞がある。焼成温度は、より好ましくは900℃以上、さらに好ましくは950℃以上、一層好ましくは1000℃以上である。なお、焼成温度の上限は、通常は1150℃以下、好ましくは1140℃以下、さらに好ましくは1130℃以下である。焼成時間は、焼成温度やシリカ粒子の粒子径等に応じて適宜設定すればよいが、通常1時間程度で充分である。焼成時の雰囲気についても特に制限はないが、酸化性雰囲気、たとえば空気雰囲気が好ましい。」
(4)「【0071】
【表1】
[図:0001418255000001.jpg]
」
2 甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、アンダーフィル材等の半導体用封止材に好適に用いることができる非晶質シリカ粒子に関するものである。
・・・
【0005】
しかしながら、上述した加水分解法で得られたシリカ粒子をエポキシ樹脂等の樹脂成分に添加して硬化性樹脂組成物とした場合、樹脂成分への分散が不充分になりやすく、そのため流動性が低下して、高密度実装などのアンダーフィル実装に用いた際に充填しにくくなることがあった。さらに上述した加水分解法で得られたシリカ粒子を用いると、硬化時にエポキシ樹脂の重合度が低下してガスを発生しやすく、そのためボイドが生じ、硬化物の耐久性を低下させることもあった。しかも、このような流動性の低下やボイドの発生といった不良の発生率が製造ロットによって異なり、より確実に不良を防止することが求められる。
【0006】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、硬化性樹脂に添加して半導体用封止材とした際に流動性の低下やボイドの発生を確実に抑制でき、製造ロットに拘らず好適に半導体用封止材に用いることができる非晶質シリカ粒子と、これを用いた半導体用封止材とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、流動性の低下やボイドの発生に影響を及ぼす要因として、シラノール基の量が関与していることが解った。詳しくは、シラノール基が多すぎると、該シラノール基が硬化時にエポキシ樹脂の重合を阻害し、その結果ガスが副生してボイドの原因となり、一方、シラノール基が少なすぎると、シリカ粒子の樹脂成分への分散性が悪くなり、その結果、流動性を損なうことになるのである。そこで、シリカ粒子の単位表面積あたりのシラノール基量を特定の範囲に制御すれば、硬化性樹脂に添加して半導体用封止材とする際に、流動性の低下やボイドの発生を抑制できることを見出した。さらに、前記シラノール基の中でも、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基が上記現象に大きな影響を与えており、この表面のシラノール基を特定して制御することで、流動性の低下やボイドの発生を確実に抑制し、ロット間のぶれも抑制できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成したものである。」
(2)「【0011】
本発明に係る非晶質シリカ粒子は、粒子表面のシラノール基濃度(mmol/g)を粒子の比表面積(m2/g)で除することで求められる単位表面積あたりのシラノール基量が、0.010mmol/m2以上、0.065mmol/m2以下であることを特徴とする。シラノール基は、シリカ粒子を半導体用封止材に用いた際の流動性やボイドの発生に影響を及ぼすものであり、特にシリカ粒子表面に存在するシラノール基が大きな影響を及ぼす。本発明では、この表面のシラノール基量を0.010mmol/m2以上にすることにより、シリカ粒子の樹脂成分への分散性を高め、充分な流動性を発現させることができる。また表面のシラノール基量を0.065mmol/m2以下とすることにより、硬化時にガスが副生するのを回避し、ボイドの発生を抑制することができる。単位表面積あたりのシラノール基量は、好ましくは0.020mmol/m2以上、より好ましくは0.025mmol/m2以上であり、好ましくは0.060mmol/m2以下、より好ましくは0.055mmol/m2以下、より好ましくは0.050mmol/m2以下である。」
(3)「【0018】
本発明の非晶質シリカ粒子は、例えば加水分解法によって製造可能である。加水分解法によれば、粒度分布を狭小化できる。しかも本発明では、後述する湿式加熱処理を施すとともに、特定の条件(8kPa以下、150℃以上)で乾燥し、特定温度(900~1100℃)で焼成する。これにより、得られる非晶質シリカ粒子は、単位表面積あたりのシラノール基量が前記範囲に制御されたものとなる。具体的には、例えば、シリコンアルコキシドを加水分解縮合反応させてシリカ粒子を生じさせる工程と、前記反応で生じた粒子を液体媒体中で60℃以上の温度にて湿式加熱処理する工程と、前記湿式加熱処理後の粒子を150℃以上、8kPa以下の低圧条件下で乾燥する工程と、前記乾燥後の粒子を900℃以上1100℃以下の温度で焼成する工程とを含む。以下、この好ましい非晶質シリカ粒子の製造方法の一例を、製造工程順に説明する。
【0019】
(シリコンアルコキシドの加水分解縮合工程)
本発明の非晶質シリカ粒子を得るには、まず、シリコンアルコキシドの加水分解縮合反応を行い、シリカ粒子を生じさせる。加水分解縮合は、水単独もしくは水と有機溶剤とからなる溶媒の中で、必要に応じて触媒(例えば、アンモニア、尿素、アミン類等)を存在させながらシリコンアルコキシドを撹拌することで進行する。この結果、球状のシリカ粒子を液体媒体(溶媒)中に分散した状態(分散液)で得ることができる。
【0020】
前記シリコンアルコキシドは、1分子中に少なくとも2個以上(好ましくは3個以上、特に4個)のアルコキシ基(特にC1-4アルコキシ基)を有する多官能アルコキシシランであればよい。ただし、シリコンアルコキシドは、アルコキシ基以外の基として、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;などの非反応性基を有していてもよい。このようなシリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン・・・等の公知のアルコキシシランが挙げられる。
・・・
【0026】
(湿式加熱処理工程)
前記加水分解縮合反応で生じたシリカ粒子には、次いで液体媒体中で60℃以上の温度にて加熱する湿式加熱処理が施される。後述する特定条件での乾燥および特定温度での焼成とともに該湿式加熱処理を施すことにより、得られる非晶質シリカ粒子の単位表面積あたりのシラノール基量を前記範囲に制御することができる。この湿式加熱処理は、通常、前記加水分解縮合反応で得られた反応液(シリカ粒子が液体媒体(溶媒)中に分散した分散液)を加熱することにより行われるが、これに限定されるものではなく、例えば、前記加水分解縮合反応で生じたシリカ粒子を乾燥や焼成を経て一旦単離した後、再び適当な液体媒体(溶媒)に分散させて加熱するようにしてもよい。ただし、反応液をそのまま加熱するか、あるいは反応液から分離したシリカ粒子を乾燥することなく湿式加熱処理に供する方が、シリカ粒子の反応活性が高く、湿式加熱処理による縮合性基の低減効率が高まるので好ましい。
・・・
【0032】
(乾燥工程)
前記湿式加熱処理後の分散液は、次いで乾燥に供される。乾燥の方法は、特に限定されるものではないが、得られる非晶質シリカ粒子の単位表面積あたりのシラノール基量を前記範囲に制御するうえでは、圧力(後述する真空瞬間乾燥装置の場合には、加熱管内部の圧力)8kPa以下、加熱温度(後述する真空瞬間乾燥装置の場合には、加熱管の温度)150℃以上の条件で行う真空乾燥が好ましい。焼成に先立ちかかる特定条件での乾燥を施すことにより、シラノール基の残留/生成要因となる水分やアルコールを低減させることができ、得られる非晶質シリカ粒子の単位表面積あたりのシラノール基量を前記範囲に制御することができる。特に、後述する構成を備えた真空瞬間乾燥装置を用いた真空乾燥がより好ましい。
・・・
【0036】
(焼成工程)
前記乾燥工程を経て粉体状となった乾燥後のシリカ粒子には、通常、900℃以上1100℃以下の温度で焼成が施される。上述した湿式加熱処理および特定条件での乾燥ともに当該焼成を施すことにより、得られる非晶質シリカ粒子の単位表面積あたりのシラノール基量を前記範囲に制御することができる。焼成温度が900℃未満であると、表面のシラノール基が残存しやすくなり、その結果ボイドの発生を招く虞がある。一方、焼成温度が1100℃を超えると、逆に表面のシラノール基が減りすぎて、樹脂成分への分散性を損なう虞がある。焼成温度は、好ましくは950℃以上、さらに好ましくは1000℃以上であり、好ましくは1090℃以下、さらに好ましくは1050℃以下である。焼成時間は、焼成温度やシリカ粒子の粒子径等に応じて適宜設定すればよいが、通常1時間程度で充分である。焼成時の雰囲気についても特に制限はないが、酸化性雰囲気、たとえば空気雰囲気が好ましい。」
(4)「【0069】
[図:0001418255000002.jpg]
」
3 甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
「[0010]
本発明によれば、(1)緻密化された高純度シリカ粒子を(2)高濃度で含む、(3)粒子が凝集していない低粘度のシリカ粒子分散液を提供することができる。このシリカ粒子分散液を研磨材(研磨組成物)として使用した場合、十分な研磨速度を得ることができる。特に適度に緻密化された高純度シリカを用いた場合には、研磨速度に加えて、平滑な研磨面を得ることができる。
・・・
[0029]
シリカ粒子中の珪素原子は、29Si-NMR解析において、珪素原子のまわりの酸素を共有する珪素の数により、Q0、Q1、Q2、Q3、Q4の5種類に分けられる。具体的には、29Si-NMR解析において、Q0構造のケミカルシフトは-73.0~-73.5ppm、Q1構造のケミカルシフトは-73.5~-78.0ppm、Q2構造のケミカルシフトは-78.0~-82.0ppm、Q3構造のケミカルシフトは-82.0~-100.0ppm、Q4構造のケミカルシフトは-100.0~-120.0ppmに、各々現れる。
[0030]
シリカ粒子は、29Si-NMR解析によるQ4構造(すなわち、ケミカルシフトが-100.0~-120.0ppmに現れるピークの面積)が、Q0~Q4構造(すなわち、ケミカルシフトが-73.0~-120.0ppmに現れるピークの面積)に対して、70%以上存在することが好ましい。
ここで、Q4構造の存在比(面積比)がこの範囲にあると、不安定なOH基が少なく、珪素同士の結合割合が多くなるため、粒子密度が大きく、緻密性及び安定性の高いシリカ粒子となる。このため、これを研磨材として用いた場合、研磨速度の向上が図れる。
もし、Q0~Q2構造の割合が高いと、これらはQ3構造及びQ4構造に比べてOH基の数が多い(シロキサン結合が少ない)ため、これを研磨材として用いた場合、望むべく研磨速度が得られないおそれがある。このため、Q0~Q2構造のQ0~Q4構造に対する存在比は、Q0~Q2構造の合計で10%未満が好ましく、5%未満がより好ましい。なお、Q3構造の存在比は、Q4構造とQ0~Q2構造の残部である。このQ4構造の存在比は75%以上がより好ましく、78%以上が更に好ましい。
ところで、シリカ粒子の粒子密度が緻密すぎると、用途によっては、スクラッチが発生し、平滑な研磨面が得られない問題が生じる場合がある。このため、Q4構造の存在比の上限は、上述の粒子密度の範囲を越えなければ特に制限されないが、例えば90%であることが好ましい。」
第5 当審の判断
1 申立理由1について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、上記第4の1(3)によれば、シリカ粒子の製造方法として、テトラメトキシシラン等のシリコンアルコキシドの加水分解縮合反応を行い、シリカ粒子を生じさせ、湿式加熱処理、乾燥処理をした後、空気雰囲気などの酸化性雰囲気で、800~1200℃で焼成する方法が記載されており、同(1)によれば、得られたシリカ粒子は硬化性樹脂に添加して半導体用封止材として用いられること、同(1)及び同(2)によれば、得られるシリカは、固体NMRスペクトルにおいて、縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積をA、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積をB、縮合性基が1個結合したケイ素原子のピーク面積をCとしたときに、([A/(A+B+C)]×100)は、80%以上であることが記載されている。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。
「硬化性樹脂に添加して半導体用封止材として用いられるシリカ粒子の製造方法であって、
テトラメトキシシランの加水分解縮合反応によってシリカ粒子を得て、湿式加熱処理、乾燥処理を行い、空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気下で、800~1200℃で焼成することによってシリカ粒子を得る方法であって、得られたシリカ粒子は、固体NMRスペクトルにおいて、縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積をA、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積をB、縮合性基が1個結合したケイ素原子のピーク面積をCとしたときに、([A/(A+B+C)]×100)が、80%以上である方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「硬化性樹脂に添加して半導体用封止材として用いられるシリカ粒子」は「硬化性樹脂に添加」する「シリカ粒子」であるから、本件発明1の「シリカ粉末充填剤」に相当する。
(イ)甲1発明の「テトラメトキシシラン」について、メトキシ基は炭素原子が1の有機基であり、加水分解性基でもあるので、本件発明1の「R1SiX3」「ここでR1は水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは加水分解性基であり」に相当する。
(ウ)甲1発明の「製造方法」は、本件発明1の「調製方法」に相当し、甲1発明の「加水分解縮合反応」を行う段階は、本件発明1の「加水分解凝縮反応」を行う「段階S1」に相当する。
(エ)甲1発明の「焼成」は、本件発明1の「か焼」に相当する。
また、本件明細書には、か焼において用いる酸化ガスとして空気が好ましいことが記載されており(【0007】)、してみれば、甲1発明の「空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気下」は、本件発明1の「乾燥酸化ガス雰囲気条件下」に相当する。そして、甲1発明の「空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気下で」「焼成する」段階は、本件発明1の「乾燥酸化ガス雰囲気条件下で」「か焼」する「段階S2」に相当する。
そうすると、両者は、
「シリカ粉末充填剤の調製方法であって、
当該調製方法は、
R1SiX3の加水分解縮合反応を行う、ここで、R1は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは、加水分解性基である段階S1と、および
乾燥酸化ガス雰囲気下でか焼してシリカ粉末充填剤を得る段階S2とを含む、調製方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「球状」シリカ粉末充填剤の調製方法であるのに対し、甲1発明では、得られるシリカの形状が「球状」であるか不明である点。
<相違点2>
本件発明1では、加水分解凝縮反応によって、「T単位を含む球状ポリシロキサン(polysiloxane)を提供し」、「T単位は、R1SiO3-である」のに対し、甲1発明では、加水分解縮合反応によって「シリカ」を得る点。
<相違点3>
本件発明1では、か焼温度が850度~1200度の間であるのに対し、甲1発明では、焼成温度が800~1200℃である点。
<相違点4>
本件発明1では、か焼によって「低ヒドロキシル基含有量」の「シリカ粉末充填剤を得」、「シリカ粉末充填剤は、Q1単位、Q2単位、Q3単位およびQ4単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q1単位は、Si(OH)3O-であり、Q2単位は、Si(OH)2O2-であり、Q3単位は、SiOHO3-であり、Q4単位は、SiO4-であり、Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」のに対し、甲1発明では、「得られるシリカ粒子は、固体NMRスペクトルにおいて、縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積をA、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積をB、縮合性基が1個結合したケイ素原子のピーク面積をCとしたときに、([A/(A+B+C)]×100)が、80%以上である」点。
イ 相違点について
事案に鑑み、相違点4について検討する。
(ア)まず、相違点4のうち、「シリカ粉末充填剤は、Q1単位、Q2単位、Q3単位およびQ4単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q1単位は、Si(OH)3O-であり、Q2単位は、Si(OH)2O2-であり、Q3単位は、SiOHO3-であり、Q4単位は、SiO4-であり」について検討する。
a シリカとは、Si同士がOを介して結合し、他のSiと結合していない末端部分はOH基などが結合しているものであることは技術常識である。
そうすると、甲1発明の「シリカ」も、Siが、OH基を有さず、他のSiと結合するO4個と結合したQ4単位、O3個とOH基1個に結合したQ3単位、O2個とOH基2個に結合したQ2単位、O1個とOH基3個に結合したQ1単位から選択される一つから構成される、すなわち、「Q1単位、Q2単位、Q3単位、Q4単位から選択される少なくとも一つから構成され」ることは明らかである。
b してみれば、甲1発明のシリカも「Q1単位、Q2単位、Q3単位およびQ4単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q1単位は、Si(OH)3O-であり、Q2単位は、Si(OH)2O2-であり、Q3単位は、SiOHO3-であり、Q4単位は、SiO4-であ」るといえ、この点において、本件発明1と甲1発明は相違しない。
(イ)次に、相違点4のうち、「低ヒドロキシル基含有量の」「シリカ粉末充填剤を得、・・・Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」について検討する。
a 「Q1単位」、「Q2単位」、「Q3単位」はヒドロキシル基を含有し、「Q4単位」はヒドロキシル基を含有しないものであるから、本件発明1の、「低ヒドロキシル基含有量」であることは、「Q1単位」、「Q2単位」、「Q3単位」の含有量が少なく、「Q4単位」の含有量が多いこと、すなわち、「Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」ことを意味していると理解される。
b 甲1発明の「縮合性基が結合していないケイ素原子」、「縮合性基が2個結合したケイ素原子」、「縮合性基が1個結合したケイ素原子」は、上記(ア)a、bで述べたとおり、それぞれ、本件発明1の「Q4単位」、「Q2単位」、「Q3単位」に相当し、また、甲1発明において、「縮合性基が3個結合したケイ素原子」が存在すれば、それは、本件発明1の「Q1単位」に相当する。
c そして、甲1発明では、縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積をA、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積をB、縮合性基が1個結合したケイ素原子のピーク面積をCとしたときに、([A/(A+B+C)]×100)を80%以上とすることが記載されており、上記第4の1(4)によれば、その値が、実施例1では83.0%、実施例2では86.8%となったことが記載されている。
そうすると、甲1の、「([A/(A+B+C)]×100)が、80%以上」とは、せいぜい86.8%近傍程度までを意味しており、95%以上であることまでが、実質的に記載されているとはいえない。
d ここで、縮合性基が3個結合したケイ素原子のピーク面積をDとすると、本件発明1の「Q4単位の含有量」は([A/(A+B+C+D)]×100)で表される。
そして、D≧0であるから、([A/(A+B+C)]×100)≧([A/(A+B+C+D)]×100)となる。
甲1には、([A/(A+B+C)]×100)が95%以上であることが記載されていないのであるから、([A/(A+B+C+D)]×100)が95%以上であることも記載されているとはいえない。
また、甲1発明は、上記第4の1(1)によれば、「アンダーフィル材」として用いたときに、未反応の縮合性基(アルコキシ基、ヒドロキシル基等)による「ボイドの発生や経時的な変化を抑制すること」を課題としているところ、([A/(A+B+C)]×100)を、80%以上、或いは、83.0%又は86.3%とする程度で上記課題が解決されているものであるといえる。一方、本件発明1は、「回路基板」を構成するために有機ポリマーに充填して用いられるシリカ粉末充填剤に関し、回路基板を構成するために用いたときに、「低誘電損失および誘電率」となるために、ヒドロキシル基含有量の少ないシリカ粉末を得ることを課題としているところ、この課題を解決するためには(A/(A+B+C+D)]×100)が95%以上となるようにA単位の割合を極めて高くしなければならないといえる。そうすると、甲1発明の課題が本件発明1の課題と異なることに起因して、甲1発明には、(A/(A+B+C+D)]×100)を、95%以上とする動機付けがあるとはいえない。
また、仮に動機付けがあったとしても、本件発明1の球状シリカ粉末充填剤を得るために本件明細書に記載された実施例で採用されている、メチルトリメトキシシランやプロピルトリメトキシシランを原料とすること、酸で加水分解すること等の、具体的な実験条件を、甲1発明では採用しておらず、また、甲1発明では、本件発明1では採用されていない「湿式加熱処理」を必須の工程としていることなど、甲1発明の上記1(1)で記載されるシリカ粒子の製造方法を多少改変したとしても(A/(A+B+C+D)]×100)を95%以上にすることができるとはいえない。
e 甲3には、シリカ粒子の29Si-NMR解析により構造決定し得ること、研磨材として用いられるシリカ粒子において、Q4構造は75~90%であることが好ましいことが記載されてはいるが、甲3に記載されているのは研磨材として用いられるシリカ粒子に関することであり、甲1発明とは用途が異なり、甲3に記載される事項を、甲1発明にそのままあてはめることはできない。したがって、甲3の、上記記載事項によって、甲1発明において、Q4単位の含有量を95%以上に増加させる動機付けが生じるとはいえない。
f してみれば、甲1発明において、「Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(ウ)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2~7は、甲1発明及び甲2~11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由1には理由がない。
2 申立理由2について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、上記第4の2(3)によれば、シリカ粒子の製造方法として、テトラメトキシシラン等のシリコンアルコキシドの加水分解縮合反応を行い、シリカ粒子を生じさせ、湿式加熱処理、乾燥処理をした後、空気雰囲気などの酸化性雰囲気で、900~1200℃で焼成する方法が記載されており、同(1)によれば、得られたシリカ粒子は硬化性樹脂に添加して半導体用封止材として用いられる非晶質シリカ粒子であること、同(1)及び同(2)によれば、得られるシリカは、粒子表面のシラノール基濃度(mmol/g)を粒子の比表面積(m2/g)で除することで求められる単位表面積あたりのシラノール基量が、0.010mmol/m2以上、0.065mmol/m2以下であることが記載されている。
そうすると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。
「硬化性樹脂に添加して半導体用封止材として用いられるシリカ粒子の製造方法であって、
テトラメトキシシランの加水分解縮合反応によってシリカ粒子を得て、湿式加熱処理、乾燥処理を行い、空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気下で、900~1200℃で焼成することによってシリカ粒子を得るものであって、得られたシリカ粒子は、粒子表面のシラノール基濃度(mmol/g)を粒子の比表面積(m2/g)で除することで求められる単位表面積あたりのシラノール基量が、0.010mmol/m2以上、0.065mmol/m2以下である方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「硬化性樹脂に添加して半導体用封止材として用いられるシリカ粒子」は「硬化性樹脂に添加」する「シリカ粒子」であるから、本件発明1の「シリカ粉末充填剤」に相当する。
(イ)甲2発明の「テトラメトキシシラン」について、メトキシ基は炭素原子が1の有機基であり、加水分解性基でもあるので、本件発明1の「R1SiX3」「ここでR1は水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは加水分解性基であり」に相当する。
(ウ)甲2発明の「製造方法」は本件発明1の「調製方法」に相当し、甲2発明の「加水分解縮合反応」を行う段階は、本件発明1の「加水分解凝縮反応」を行う「段階S1」に相当する。
(エ)甲2発明の「900~1200℃」での「焼成」は、本件発明1の「850度~1200度」での「か焼」に相当する。
また、本件発明1では、か焼において用いる酸化ガスとして空気が好ましいことが記載されており(【0007】)、してみれば、甲2発明の「空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気下」は、本件発明1の「乾燥酸化ガス雰囲気条件下」に相当する。そして、甲2発明の「空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気下で」「焼成することによってシリカ粒子を得る」は、本件発明2の「乾燥酸化ガス雰囲気条件下で」「か焼」する「段階S2」に相当する。
そうすると、両者は、
「シリカ粉末充填剤の調製方法であって、
当該調製方法は、
R1SiX3の加水分解凝縮反応を行う、ここでR1は水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは加水分解性基である段階S1と、および
乾燥酸化ガス雰囲気下でか焼し、か焼温度は、850度~1200度である、段階S2とを含む、調製方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5>
本件発明1は、「球状」シリカ粉末充填剤の調製方法であるのに対し、甲2発明ではシリカの形状が「球状」であるか不明である点。
<相違点6>
本件発明1では加水分解凝縮反応によって、「T単位を含む球状ポリシロキサン(polysiloxane)」「T単位は、R1SiO3-である」を提供するのに対し、甲2発明では加水分解縮合反応によって「シリカ粒子」が得られる点。
<相違点7>
本件発明1では、か焼によって「低ヒドロキシル基含有量の」「シリカ粉末充填剤を得」、「シリカ粉末充填剤は、Q1単位、Q2単位、Q3単位およびQ4単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q1単位は、Si(OH)3O-であり、Q2単位は、Si(OH)2O2-であり、Q3単位は、SiOHO3-であり、Q4単位は、SiO4-であり、Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」のに対し、甲2発明では、「得られるシリカ粒子は、粒子表面のシラノール基濃度(mmol/g)を粒子の比表面積(m2/g)で除することで求められる単位表面積あたりのシラノール基量が、0.010mmol/m2以上、0.065mmol/m2以下である」点。
イ 相違点について
事案に鑑み、相違点7について検討する。
(ア)まず、「シリカ粉末充填剤は、Q1単位、Q2単位、Q3単位およびQ4単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q1単位は、Si(OH)3O-であり、Q2単位は、Si(OH)2O2-であり、Q3単位は、SiOHO3-であり、Q4単位は、SiO4-であり」について検討すると、上記1(2)イ(ア)と事情は同じであり、この点において本件発明1と甲2発明は相違しない。
(イ)次に、「低ヒドロキシル基含有量の」「シリカ粉末充填剤を得」「Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」について検討する。
a 本件発明1の「Q4単位の含有量」は、OH基が結合していないSiO4-の含有量であるから、甲2発明の「粒子表面のシラノール基濃度(mmol/g)を粒子の比表面積(m2/g)で除することで求められる単位表面積あたりのシラノール基量」とは測定対象が異なっており、両者を直接的に比較することはできない。
そして、甲2発明は、アンダーフィルなどの半導体用封止材に用いる際に、「シラノール基が多すぎると、該シラノール基が硬化時にエポキシ樹脂の重合を阻害し、その結果ガスが副生してボイドの原因となり、一方、シラノール基が少なすぎると、シリカ粒子の樹脂成分への分散性が悪くなり、その結果、流動性を損なう」との知見に基づき、「粒子表面のシラノール基濃度(mmol/g)を粒子の比表面積(m2/g)で除することで求められる単位表面積あたりのシラノール基量が、0.010mmol/m2以上、0.065mmol/m2以下」とするものである。
つまり、甲2発明においては、粒子表面のシラノール基は多すぎず、少なすぎず、適切な範囲の量を含有していることが必要である。
そうすると、一定量以上のシラノール基を必要としている甲2発明において、「OH基が結合していないSiO4-の含有量」である「Q4単位の含有量」を95%より大きいか同じとする(シラノール基が結合している状態のSiを5%未満とする)動機付けはない。
b また、甲3には、シリカ粒子の29Si-NMR解析により構造決定し得ること、研磨材として用いられるシリカ粒子において、Q4構造は75~90%であることが好ましいことが記載されてはいるが、甲3に記載されているのは研磨材として用いられるシリカ粒子に関することであり、甲2発明とは用途が異なり、甲3に記載される事項を、甲2発明にそのままあてはめることはできない。したがって、甲3の、上記記載事項によって、甲2発明において、Q4単位の含有量を95%以上に増加させる動機付けが生じるとはいえない。
そして、甲1に、Q4単位の含有量を95%以上に増加させる動機付けがないことは、上記1(1)dに記載したとおりである。
c してみれば、甲2発明において、「Q4単位の含有量は、95%より大きいか同じである」とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(ウ)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
(3)本件発明3~5、7について
本件発明3~5、7は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記(2)で検討したのと同様の理由により、甲2発明及び甲1、3、5~9、11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700579