特許異議申立
2025-700461
高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の調製方法
- 審判番号
- 2025-700461
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-573715
- 登録番号
- 7576637
- 請求日
- 2025年04月24日
- 審決日
- 2025年07月15日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】江蘇聯瑞新材料股▲ふん▼有限公司
- 【権利者代理人】新保 斉
- 【異議申立人】伊藤 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 塩谷 領大
- 分類
- P1651.121-Y (C01B) / P1651.537-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7576637号発明「高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の調製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7576637号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7576637号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)8月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2021年12月2日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月23日にその特許権の設定登録がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~9に係る特許に対し、令和7年4月24日に特許異議申立人伊藤幸子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
第2 本件発明及び本件明細書
1 本件発明について
特許第7576637号の請求項1~9の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の調製方法であって、
不活性ガスの保護下で、原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷し、1mm以下の砂原料に粉砕し、沈殿乾燥させて、次に、焼成-粉砕-沈殿乾燥のステップを繰り返して、砂原料が得られ、前記原料は純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料であるステップ(1)と、
砂と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーが得られるステップ(2)と、
フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比を1~300:1に従って、粉末スラリーに等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、同時に、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%の過酸化水素を加えて、浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収し、30~60℃で撹拌して粉末スラリーが得られるステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた、粉末スラリーを加圧ろ過、洗浄及び乾燥して、ウラン含有量が1.0ppb以下の粉末が得られるステップ(4)と、
火炎球状化法を用いて、キャリアガス、可燃性ガス及び助燃剤を導入して着火し、ステップ(4)で得られた粉末を1800~2400℃の高温で球状化し、サブミクロン球状シリカ微粉末を回収するステップ(5)と
を含む
ことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
ステップ(2)では、湿式ボールミルの時間が5~30時間である
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ(2)では、フッ酸溶液の質量濃度が1.5%である
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(3)では、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比が1~3:1である
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(3)では、塩酸溶液の質量濃度が0.005%~1.5%である
請求項1または4に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(3)では、攪拌時間が12~72時間である
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(5)では、キャリアガスが酸素、空気、窒素、またはアルゴンである
請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(5)では、可燃性ガスは、天然ガス、液化石油ガスまたはH2である
請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ(5)では、助燃剤が空気または酸素である
請求項1に記載の調製方法。」
2 本件明細書について
願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付与した(以下同様)。
(本ア)「【背景技術】
【0003】
電子機器の小型化及び薄型化の進展に伴い、半導体パッケージ用フィラーの粒径はますます小さくなっている。同時に、半導体パッケージングにおけるフィラーの充填量や流動性を向上させるためには、真球度の高いサブミクロン(一般的に0.1μm~1μmとされる)フィラーを添加する必要がある。しかし、超大規模集積回路の集積度の継続的な改善に伴い、配線間隔がどんどん狭くなり、パッケージ材料中のアルファ線が強いと信号の伝送にソフトエラーが発生するようになった。そのため、超大規模集積回路やメモリーチップのパッケージ材料では、アルファ線に対する要求が厳しくなっている。天然鉱石中のウラン(U)は、アルファ線に影響を与える最も重要な要因である。そのため、ウラン元素の含有量、さらにα線の強度をコントロールする必要がある。」
「【0007】
以上をまとめると、既存の低ウラン球状シリコン微粉末の製造方法には、高純度の有機ケイ素源と溶媒を選択して、化学合成により高純度の低ウラン製品が得られるが、このような方法は環境問題をもたらす;約1ppmの低ウラン天然石英のみを選択すると、ミクロンスケールの製品しか得られないと同時に、原料への要求が比較的高く、ウラン含有量が0.5ppb以下の製品の実現が困難である;厳密に選別された原料Siを選択し、単純酸処理後、得られた製品のU含有量は不安定であるという問題がある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の調製方法を提供することを目的とする。」
(本イ)「【0022】
実施例1
(1)アルゴンの保護下で、10kgの粒径が80mmの単体シリコン(純度が99.6%、ウラン含有量が15ppb)を1250℃の高温炉内で15時間焼成する。焼成終了後、水で急冷し、1mm以下の砂原料に粉砕し、沈殿乾燥させた。次に、焼成-粉砕-沈殿乾燥のステップを1回繰り返した。乾燥した砂原料を数回集めて準備した。
【0023】
(2)250kgの乾燥した砂原料を秤量して取り、230kgの水に加え、0.05kgの質量濃度が1.5%のフッ化水素酸溶液を加え、湿式ボールミル粉砕後、粉末の平均粒径が35μmである粉末スラリーを得た。
【0024】
(3)粉末スラリーを反応釜に移し、質量濃度が1.5%のHF溶液15kgと質量濃度が0.5%のHCl溶液15kgを加え、同時に酸混合物溶液の質量に対して0.1%となる過酸化水素を加え、浮選剤と補収剤を加えてウラン元素を回収し、60℃で24時間攪拌し、粉末スラリーを得た。
【0025】
(4)粉末スラリーを加圧ろ過、洗浄、乾燥して、ウラン含有量が1.0ppb以下の粉末を得た。
【0026】
(5)粉末を2000℃の高温、酸素富化の条件下での高温球状化し、得られた高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の粒径が0.3μm、U含有量が0.2ppb、SiO2の純度が99.95%である。」
「【0037】
実施例4
本実施例は、実施例1と基本的に同じであるが、唯一の違いは焼成温度が700℃であることである。得られた高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の粒径が0.3μm、U含有量が0.9ppb、SiO2の純度が99.90%である。
【0038】
実施例5
本実施例は、実施例1と基本的に同じであるが、唯一の違いは焼成温度が1400℃であることである。得られた高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の粒径が0.3μm、U含有量が0.2ppb、SiO2の純度が99.96%である。
【0039】
実施例6
本実施例は、実施例1と基本的に同じであるが、唯一の違いは、HF溶液の質量濃度が1.5%、HCl溶液の質量濃度が1.5%であることである。得られた高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の粒径が0.3μm、U含有量が0.3ppb、SiO2の純度が99.95%である。
【0040】
実施例7
本実施例は、実施例1と基本的に同じであるが、唯一の違いは、HF溶液の質量濃度が1.5%、HCl溶液の質量濃度が 0.005%であることである。得られた高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の粒径が0.3μm、U含有量が0.8ppb、SiO2の純度が99.88%である。」
第3 特許異議申立書における申立理由の概要
申立人が、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において主張している申立理由は、概略、以下の申立理由1及び2である。
1 申立理由1
本件発明1~9は、甲第1号証~甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ここで、申立書10頁の理由の要点として、
「(1)特許法第29条第2項(進歩性欠如)
・請求項1
甲第1号証記載の発明、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、加えて周知技術の「甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証」から容易想到。」」((1)は丸囲い数字である)と記載され、また、(4)具体的理由のウの「本件特許発明と証拠に記載された発明との対比」(申立書27頁1行~35頁8行)において、
「(ア)本件特許発明1と甲第1号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(イ)本件特許発明2と甲第1号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(ウ)本件特許発明3と甲第1号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(エ)本件特許発明4と甲第1号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(オ)本件特許発明5と甲第1号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(カ)本件特許発明6と甲第1号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(キ)本件特許発明7と甲第3号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(ク)本件特許発明8と甲第2号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
「(ケ)本件特許発明9と甲第2号証等とを対比する(特許法第29条第2項)。」
と記載され、ここで本件発明7~9については甲第2号証等又は甲第3号証等と記載されているものの、上記第2の1で記載したとおり、本件発明7~9はいずれも本件発明1を直接的に引用する発明であることを考慮すると、上記申立理由1は、本件発明1~9に対して、いずれも甲第1号証に記載された発明を主発明として、当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張しているといえる。
しかしながら、一応、下記の第5の1(3)において、他の甲号証に記載された発明を主発明とした場合についても検討を加えることとする。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2012-188332号公報
甲第2号証:特開2001-97712号公報
甲第3号証:特開2015-117149号公報
甲第4号証:特開2008-247723号公報
甲第5号証:特開2005-119884号公報
甲第6号証:特開2008-169079号公報
甲第7号証:特開昭60-195016号公報
甲第8号証:特開2008-50180号公報
(以下「甲第○号証」は「甲○」という。)
2 申立理由2
本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
具体的には、本件発明1に「・・・原料を・・・砂原料に粉砕し、・・・砂原料が得られ、前記原料は・・・」と「砂と水の・・・」との記載であるが、表記の揺れがあり、一意に請求項に記載の文言を解することができないことから明確性を欠くものであることを主張している。
第4 甲号証の記載
1 甲1について
(1)記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。
(甲1ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒界に沿ってケイ石原料を粉砕する工程と、
フッ酸を含有する酸溶液にて前記粉砕物を洗浄する洗浄工程と、を有することを特徴とする高純度シリカ原料の製造方法。」
「【請求項3】
前記ケイ石原料はウラン含有量が20ppb以下である請求項1又は2に記載の高純度シリカ原料の製造方法。」
「【請求項5】
請求項1~4のいずれかの製造方法にて製造された高純度シリカ原料を所望の粒径に粉砕し、火炎中に投入し溶融・球状化する溶融球状化工程を有する球状シリカ微粒子の製造方法。」
(甲1イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、天然のケイ石から高純度のシリカが得られる高純度シリカ原料の製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、必要とする純度の天然ケイ石を確保することは困難であり、ある程度の不純物を含む天然ケイ石を原料として純度が高いシリカ原料を製造することが望まれる。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成されたものであり、原料となるケイ石よりも高純度のシリカ原料が製造できる高純度シリカ原料の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する目的で本発明者らが鋭意研究を行った結果、天然ケイ石中における不純物は天然ケイ石の結晶粒界に集中しており、天然ケイ石を結晶粒界が現れる程度に粉砕した後に結晶粒界を酸によって溶解除去することで純度が高いシリカ原料が得られることを発見し以下の発明を完成させた。」
(甲1ウ)「【0016】
ケイ石原料は無水ケイ酸を主成分とする鉱石であって特に限定されない。例えば、白ケイ石、青白ケイ石、赤白ケイ石、軟ケイ石、ケイ砂などが挙げられ、最終的に必要な不純物濃度、入手性、価格などから適正に選択する。特に、不純物としてのウランを除去することが望まれる場合にはウラン濃度が20ppb以下であるケイ石原料が望ましい。」
(甲1エ)「【実施例】
【0025】
ウラン量20ppmの天然ケイ石(ケイ石原料に相当)100kgを電気炉中で1000℃に加熱した。その後、イオン交換水(冷却液に相当)中に投入して急冷した(熱処理工程)。
【0026】
水中から回収したケイ石をジョークラッシャーにて粒径5mmから10mm程度に粉砕した。更にロールクラッシャーにて平均粒径1mmから2mm程度に粉砕した(粉砕工程)。ウラン含有量を測定したところ20ppbであった。
【0027】
5%フッ酸水溶液と20%塩酸水溶液とを1:1で混合した混合酸水溶液(酸溶液に相当)をシリカ質量10kg当たり、2~3L加えて一度撹拌した後、3日間放置することで洗浄した(洗浄工程)。
【0028】
その後、pHが2になるまで、イオン交換水を加えて上澄みを溢れ出させながら撹拌した。その後、pHが5~9になるまでアンモニア水を加えて中和し、更にイオン交換水を加えて上澄みを溢れ出させながら撹拌することにより洗浄した。
【0029】
固形分をろ取、洗浄した後、乾燥した。95kgのシリカ破砕物が得られた。得られたシリカ破砕物についてウラン含有量を測定したところ0.3ppbであった。
【0030】
このシリカ破砕物をアルミナ製のボール(ウラン含有量0.1ppb)を用いたボールミルにて粉砕し、平均粒径30μmのシリカ微粉末を得た。このシリカ微粉末のウラン含有量は0.4ppbであった。
【0031】
このシリカ微粉末を耐火材で内張りした炉を用いて火炎溶融法にて球状シリカ微粒子を製造した。得られた球状シリカ微粒子の体積平均粒径は35μmであった。得られた球状シリカ微粒子はウラン含有量が0.7ppbであった。」
(2)甲1発明
(甲1ウ)の【0025】に「ウラン量20ppmの天然ケイ石(ケイ石原料に相当)」と記載されているが、当該「20ppm」は、(甲1ア)及び(甲1イ)の記載を踏まえると、「20ppb」の誤記であることから、以下の甲1発明の認定においては、「ウラン量20ppbの天然ケイ石(ケイ石原料に相当)」と記載する。
そこで、上記(甲1ア)の実施例に着目して、甲1に記載された発明を認定すると、以下のとおりである。
「球状シリカ微粒子の製造方法であって、
ウラン量20ppbの天然ケイ石(ケイ石原料に相当)100kgを電気炉中で1000℃に加熱し、その後、イオン交換水(冷却液に相当)中に投入して急冷し(熱処理工程)、
水中から回収したケイ石をジョークラッシャーにて粒径5mmから10mm程度に粉砕し、更にロールクラッシャーにて平均粒径1mmから2mm程度に粉砕し(粉砕工程)、
5%フッ酸水溶液と20%塩酸水溶液とを1:1で混合した混合酸水溶液(酸溶液に相当)をシリカ質量10kg当たり、2~3L加えて一度撹拌した後、3日間放置することで洗浄し(洗浄工程)、
その後、pHが2になるまで、イオン交換水を加えて上澄みを溢れ出させながら撹拌し、その後、pHが5~9になるまでアンモニア水を加えて中和し、更にイオン交換水を加えて上澄みを溢れ出させながら撹拌することにより洗浄し、
固形分をろ取、洗浄した後、乾燥し、95kgのシリカ破砕物が得られ、このシリカ破砕物をアルミナ製のボール(ウラン含有量0.1ppb)を用いたボールミルにて粉砕し、平均粒径30μmのシリカ微粉末を得て、ここでのシリカ微粉末のウラン含有量は0.4ppbであり、
このシリカ微粉末を耐火材で内張りした炉を用いて火炎溶融法にて、体積平均粒径が35μmであり、かつウラン含有量が0.7ppbである、球状シリカ微粒子を製造する方法。」(以下「甲1発明」という。)
2 ウランについて言及のある甲号証
上記第2の2の(本ア)に記載されている本件発明の主要な課題の一つである低ウランについて言及のある甲号証を以下にまとめて摘記する。
(1)甲6について
甲6には、以下の事項が記載されている。
(甲6ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、工業的に且つ安価に生産可能で、しかも含有ウラン濃度を極めて有利に低減せしめることの出来る金属シリコンの有利な精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、かかる課題の解決のために、不純物を含む金属シリコンを細かく粉砕した後、その粉砕物から5μmより小さな粒径の微粒子を分級除去することにより、5μm以上の粒径の金属シリコン粒子を採取し、次いでこの微粒子の除去された金属シリコン粒子を希薄フッ化水素酸中に浸漬する一方、該希薄フッ化水素酸に過酸化水素を添加せしめて、酸洗浄処理を実施し、更にその後、水洗して、乾燥することを特徴とする金属シリコンの精製方法を、その要旨とするものである。」
(甲6イ)「【0045】
-実施例1-
内面が樹脂コーティングされた、容量:50Lの撹拌機付き円筒容器内に、1wt%のフッ化水素濃度を有する酸洗浄液の36L及びノニオン系消泡剤(株式会社ADEKA製、アデカノールLG-145)の50mLを順に投入し、撹拌混合を行った。そして、その撹拌混合を続けながら、そこに、上述のようにして得た5~40μmの粒径を有する金属シリコン粒子の12kgを投入した。次いで、室温で15時間、投入された金属シリコン粒子が容器の底に沈降しない程度の速度で撹拌を続けて、浸漬洗浄処理を行う一方、この浸漬処理開始から8時間経過後、終濃度1wt%となるように、5時間かけて、過酸化水素水溶液の連続的添加を行うことにより、金属シリコン粒子に対する酸洗浄を施した。
【0046】
その後、かかる酸洗浄処理の終了した金属シリコンスラリーを、遠心分離機(タナベウィルテック株式会社製O-15型自動堅型遠心分離機)を用いて遠心脱水を行い、金属シリコン粒子のケーキを得た。
【0047】
次いで、上記のようにして得られた、前記バスケット内の金属シリコン粒子のケーキに対して、純水を供給した後、純水の供給を止めて、再び脱水運転(ろ過操作)を行い、そしてそれを、それぞれ交互に数回繰り返すことによって、水洗を実施した。
【0048】
最後に、上記した水洗工程の終了後に得られた金属シリコン粒子のケーキを取り出し、振動真空乾燥機(中央化工機株式会社製VU-5型振動乾燥機)を用いて、130℃の温度、40Torrの圧力下にて乾燥を行い、目的とする金属シリコン粒子を得た。この金属シリコン粒子の精製に要した延べ時間、得られた金属シリコン粒子の収量及び収率を、下記表1に示す。」
「【0050】
-実施例2~7、比較例1-
それぞれ、下記表1に示す粒径を有する金属シリコン粒子(粉砕物)に対して、下記表1に示すフッ化水素濃度、無機強酸濃度、過酸化水素終濃度及びその添加時期に従って酸洗浄処理を行った以外は、実施例1と同様の手順で、金属シリコン粒子の精製を行った。金属シリコン粒子の精製に要した延べ時間、得られた金属シリコン粒子の収量及び収率を、下記表1に示す。また、得られた金属シリコン粒子中の不純物について、実施例1と同様にして、その含有率を調べた。それらの結果を、下記表1に併せて示す。
【0051】
【表1】
[図:0001425817000001.jpg]
【0052】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従って、希薄フッ化水素酸及び過酸化水素による酸洗浄処理を行った実施例1~7にあっては、金属シリコン粒子の精製を、工業的に実施しつつ、得られた金属シリコン粒子中の不純物の含有量を、希薄フッ化水素酸のみの酸洗浄処理を行った比較例1に比して、高度に低減することが出来、特にウラン濃度を、1.0ppb以下とすることが出来た。また、それら実施例の中でも、希薄フッ化水素酸に無機強酸を加えたものにおいては、更にその洗浄乃至は精製効果が向上することが認められるのである。一方、希薄フッ化水素酸のみの酸洗浄処理を行った比較例1にあっては、実施例1~7に比して、不純物を充分に取り除くことが出来ず、ウランについては、2.0ppb程度の精製に止まった。」
(2)甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)「【0006】
本発明は上記実情に鑑み為されたものであり、高純度の金属ケイ素粉末を簡単に製造可能な製造方法を提供することを解決すべき課題とする。そして、その製造方法にて製造された金属ケイ素粉末から高純度の球状シリカ粉末を製造する製造方法を提供することも解決すべき課題とする。更に、その製造方法にて製造された球状シリカ粉末から樹脂組成物を製造する製造方法を提供することも解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
(1)本発明の金属ケイ素粉末の製造方法にて製造される金属ケイ素粉末は火炎中で酸素と反応させて球状シリカ粉末を製造するときに用いる金属ケイ素粉末を製造する方法である。
【0008】
本発明者らは上記課題を解決する目的で鋭意検討を行い、以下の発明を完成した。すなわち、本発明の金属ケイ素粉末の製造方法は、金属ケイ素原料を溶融した後、凝固して凝固物を得る溶融凝固工程と、
前記凝固物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、
少なくともフッ酸を含む無機酸に前記粉砕物を所定時間浸漬処理した後、洗浄して被処理物を得る除去洗浄工程と、
を有する精製工程を2回以上繰り返すことで、当初の純度が90%以上の金属ケイ素原料を精製して前記金属ケイ素粉末を得ることを特徴とする。」
(甲4イ)「【0030】
(2)本実施形態の球状シリカ粉末の製造方法は、(1)にて説明した製造方法にて製造した金属ケイ素粉末を用いていわゆるVMC法にて球状シリカ粉末を製造する方法である。VMC(Vaperized Metal Combustion)法は、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に金属ケイ素粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物粒子を得る方法である。具体的には、(1)の製造方法にて製造された金属ケイ素粉末をキャリヤガスと共に酸素過剰の酸化炎中に投入することで球状シリカ粉末を得る方法である。」
(甲4ウ)「【実施例1】
【0040】
金属ケイ素を1480℃で10時間溶解し(溶融工程)、その後、冷却して凝固させた(凝固工程、併せて溶融凝固工程)。得られた金属ケイ素の凝固物を体積平均粒径が2mm以下になるまで粉砕して粉砕物を得た(粉砕工程)。
【0041】
得られた粉砕物を2質量%フッ酸水溶液に浸漬し、15時間撹拌した(除去工程)。そして、粉砕物をろ別した後、純水にて洗浄した(洗浄工程、併せて除去洗浄工程)。その後、乾燥した(乾燥工程)。
【0042】
この溶融凝固工程と除去洗浄工程と乾燥工程とからなる精製工程をもう一度繰り返し行い本実施例の金属ケイ素粉末とした。」
「【0048】
(球状シリカ粉末の製造)
実施例1及び比較例の金属ケイ素粉末を用いてVMC法にて球状シリカ粉末を製造した。
【0049】
本発明の球状シリカ粉末及び樹脂組成物について実施例に基づき、更に詳細に説明を行う。各実施例及び比較例の球状シリカ粒子爆発燃焼装置中に原料粉末を投入することで製造した。
【0050】
具体的には、キャリアガスとしての酸素と、可燃ガスとしてのプロパンガスとをそれぞれ反応容器内に導入した後、バーナで着火して火炎を形成して反応容器内を充分に乾燥させた。キャリアガスは20Nm3/時間、可燃ガスは1.0Nm3/時間の流速で反応容器内に導入した。
【0051】
次いで、金属ケイ素粉末をキャリアガスにより10kg/時間の供給速度で、バーナを通じて反応容器内に導入し火炎中に噴出させることで酸化させた。原料の金属ケイ素粉末は酸化により球状シリカ粉末を形成した。得られた球状シリカ粉末のウラン含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
[図:0001425817000002.jpg]
」
(3)甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5ア)「【0078】
実施例1
1>球状シリカゲル粒子の調製
1-1)エマルションの調製
・・・
【0079】
1-2)球状シリカゲル粒子の凝固・不純物抽出・洗浄処理
28%硫酸水溶液を575g調製し、室温で攪拌しながら、これに前述の乳化液を添加した。
【0080】
添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続けた。次いで攪拌下で62%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌下で100℃に加熱し、30分間保持した。この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離した。
【0081】
オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗浄した。洗浄は0.01 %硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水を用い、洗液のpHが4以上になるまで繰り返した。ヌッチェを用いて、脱水し、球状含水シリカ粒子を得た。
【0082】
2>球状含水シリカ粒子の乾燥・解砕・焼成工程
得られた含水シリカ粒子を温度120℃で20時間乾燥し、100gのシリカ粒子を得た。この乾燥シリカ粒子をポリエステル製目開き33μm篩で解砕し、石英製ビーカー(1リットル)に充填し、650℃で8時間焼成した。次いで、1050℃で8時間焼成した。
【0083】
焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na、K、Liなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属及びCr、Fe、Cu等遷移金属の各元素の濃度は1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は0.1ppb以下であった。」
(4)甲8について
甲8には、以下の事項が記載されている。
(甲8ア)「【請求項1】
純度が99.5%以上の金属シリコンを150μm以下に粉砕した後、その粉砕物から5μmより小さな粒径の微粒子を分級除去することにより、5~150μmの粒径の金属シリコン粒子を採取し、次いでこの微粒子の除去された金属シリコン粒子を希薄フッ化水素酸中において10時間以上浸漬処理することによって、酸洗浄を施し、更にその後、水洗して、乾燥することを特徴とする金属シリコンの精製方法。
【請求項2】
前記水洗によって、含有ウラン濃度が2.0ppb以下とされた金属シリコン粒子が、取り出されることを特徴とする請求項1に記載の金属シリコンの精製方法。」
(甲8イ)「【0036】
-実施例1-
先ず、純度:99.5%以上の化学工業用の金属シリコンブロック(株式会社アドマテックス製)を、ジョークラッシャーやボールミル等を用いて、機械的に粉砕する一方、その得られた粉砕物を100メッシュの篩いに掛けることにより、150μm以下の粒径を有する金属シリコン粒子を取り出した。また、篩上の150μmよりも大なる粒径の金属シリコン粒子については、ボールミルに戻して、再度の粉砕を行った。
【0037】
次いで、上記のようにして取り出した150μm以下の金属シリコン粒子から、風力分級機(日本ニューマチック工業株式会社製DS-2型高精度気流分級機)を用いて、5μmより小さな粒径の微粒子を分級除去することにより、5~150μmの粒径を有する金属シリコン粒子(粉砕物)を採取した。
【0038】
一方、内面が樹脂コーティングされた、容量:50Lの撹拌機付き円筒容器内に、1wt%のフッ化水素濃度を有する希薄フッ化水素酸の20L及びノニオン系消泡剤の35mLを順に投入し、撹拌混合を行った。そして、その撹拌混合を続けながら、そこに、前記5~150μmの粒径を有する金属シリコン粒子の7kgを投入した。次いで、室温で15時間、投入された金属シリコン粒子が容器の底に沈降しない程度の速度で撹拌を続けて、浸漬処理を行うことにより、金属シリコン粒子に対する酸洗浄を施した。」
3 ウランについて言及のない甲号証
ウランについて何ら言及されていない甲号証を以下にまとめ摘記する。
(1)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)「【請求項1】ヒュームドシリカスラリーを乾燥させて得られる固体状シリカを粉砕してシリカ粉末を得た後、該シリカ粉末をバーナーの火炎中で溶融球状化させることを特徴とする微小球状シリカの製造方法。
【請求項2】シリカ粉末が平均粒子径8μm未満の粒子径を有する請求項1記載の微小球状シリカの製造方法。」
(甲2イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微小球状シリカの製造方法に関する。詳しくは、高純度で平均粒子径が8μm未満、特に0.1~5μmの範囲にある球状シリカの新規な製造方法を提供するものである。」
(甲2ウ)「【0047】続いて、上端に三重管バーナーを設置した円筒形焼成炉において、該バーナーの中心管及び外周管に燃焼ガスとして水素を導入すると共に、円周管に上記シリカ粉末を支燃ガスである酸素の気流中に同伴させて導入しながら、火炎を形成させて該シリカ粉末の溶融処理を行った。なおこのときの製造条件は、水素流量8m3/h、酸素流量4m3/h、シリカ粉末の供給速度1kg/hであった。この場合、バーナーノズル先端におけるシリカ粉末の噴射速度は、50m/秒であった。」
(2)甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3ア)「【0054】
球状化処理の条件は、高周波周波数5MHz、高周波出力90kW、アルゴンガス流量55L/min、酸素流量70L/minとした。具体的には、先ず、装置30のガス供給管38から作動ガスのアルゴンを導入して、高周波をプラズマトーチ31に印加させ、プラズマを発生させた。プラズマが安定した後に、酸素を徐々に導入して、アルゴン-酸素プラズマを発生させた。上記得られたシリカ粉末を、原料供給管37からアルゴン-酸素プラズマ中に投入して、シリカ粉末を溶融させ、融体となった粒子を落下させて、落下した粒子を回収部33で回収することにより、体積基準の45μm以下の粒子の累積頻度が0.9%、体積基準の粒度分布の累積頻度10%の粒径DV10が98μm、体積基準の粒度分布の累積頻度50%の粒径DV50が226μm、体積基準の粒度分布の累積頻度90%の粒径DV90が361μm、かさ密度1.38g/cm3の合成非晶質シリカ粉末を得た。」
(3)甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
(甲7ア)「2.特許請求の範囲
1.Si純度98重量%以上の金属けい素をまず溶融再結晶しついで酸処理により精製するにあたり、
溶融金属けい素の凝固点付近における冷却速度の制御にて結晶粒の粒子径の大きさを5mm以上とした凝固物を得ること、ついで該凝固物を破砕したのちふつ酸又はふつ酸と塩酸との混酸により処理して不純物を除去することの結合を特徴とする金属けい素の精製法。」(91頁左欄)
(甲7イ)「(発明の効果)
本発明によればSi純度98%以上の金属けい素を再溶融-再結晶化を行ない、これを塩酸とふっ酸との混酸で処理することによって、Fe≒50ppm以下、Al≒200ppm以下の高純度精製金属けい素を製造することができる。」
第5 当審の判断
1 申立理由1について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)ステップ(1)について
a 天然ケイ石とは、一般に二酸化ケイ素 (SiO2) を主成分とする鉱物や岩石のことであり、シリコン(Si)とは異なる物質であるところ、両者は「ケイ素」を含む点で共通するものである。そうすると、甲1発明の「ウラン量20ppbの天然ケイ石(ケイ石原料に相当)」と、本件発明1の「純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料」とは、「ケイ素を含む塊原料」という点で共通する。
b 甲1発明の「天然ケイ石(ケイ石原料に相当)100kgを電気炉中で11000℃に加熱し、その後、イオン交換水(冷却液に相当)中に投入して急冷」することは、本件発明1の「原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷」することに相当する。
c したがって、甲1発明の「ウラン量20ppbの天然ケイ石(ケイ石原料に相当)100kgを電気炉中で1000℃に加熱し、その後、イオン交換水(冷却液に相当)中に投入して急冷し(熱処理工程)」と、
本件発明1の「不活性ガスの保護下で、原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷し、1mm以下の砂原料に粉砕し、沈殿乾燥させて、次に、焼成-粉砕-沈殿乾燥のステップを繰り返して、砂原料が得られ、前記原料は純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料であるステップ(1)」とは、
「原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷し、前記原料がケイ素を含む塊原料であるステップ(1)」の点で共通する。
(イ)ステップ(2)について
甲1発明の「水中から回収したケイ石をジョークラッシャーにて粒径5mmから10mm程度に粉砕し、更にロールクラッシャーにて平均粒径1mmから2mm程度に粉砕し(粉砕工程)」はいわゆる乾式粉砕であり、本件発明1の「湿式ボールミル」を使う湿式粉砕とは異なることから、甲1発明の「水中から回収したケイ石をジョークラッシャーにて粒径5mmから10mm程度に粉砕し、更にロールクラッシャーにて平均粒径1mmから2mm程度に粉砕し(粉砕工程)」と、本件発明1の「砂と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーが得られるステップ(2)」とは、上位概念として「粉砕するステップ(2)」という点で共通する。
(ウ)ステップ(3)について
甲1発明の「5%フッ酸水溶液と20%塩酸水溶液とを1:1で混合した混合酸水溶液(酸溶液に相当)をシリカ質量10kg当たり、2~3L加え」ることは、本件発明1の「フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比を1~300:1に従って、粉末スラリーに等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え」ることとは、「粉末に等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え」る点で共通する。
そうすると、甲1発明の「5%フッ酸水溶液と20%塩酸水溶液とを1:1で混合した混合酸水溶液(酸溶液に相当)をシリカ質量10kg当たり、2~3L加えて一度撹拌した後、3日間放置することで洗浄し(洗浄工程)、その後、pHが2になるまで、イオン交換水を加えて上澄みを溢れ出させながら撹拌し、その後、pHが5~9になるまでアンモニア水を加えて中和し、更にイオン交換水を加えて上澄みを溢れ出させながら撹拌することにより洗浄」することと、
本件発明1の「フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比を1~300:1に従って、粉末スラリーに等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、同時に、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%の過酸化水素を加えて、浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収し、30~60℃で撹拌して粉末スラリーが得られるステップ(3)」とは、
「粉末に等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、撹拌して粉末スラリーが得られるステップ(3)」の点で共通する。
(エ)ステップ(4)について
甲1発明の「固形分をろ取、洗浄した後、乾燥し」「ボールミルにて粉砕し、平均粒径30μmのシリカ微粉末を得て、ここでのシリカ微粉末のウラン含有量は0.4ppbであ」ることと、本件発明1の「ステップ(3)で得られた、粉末スラリーを加圧ろ過、洗浄及び乾燥して、ウラン含有量が1.0ppb以下の粉末が得られるステップ(4)」とは、「ステップ(3)で得られた、粉末スラリーをろ過、洗浄及び乾燥して、ウラン含有量が1.0ppb以下の粉末が得られるステップ(4)」の点で共通する。
(オ)ステップ(5)について
本件発明1の「サブミクロン」とは、上記第2の2(本イ)に「得られた高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の粒径が0.3μm」と記載されているとおり、1ミクロン未満のことであり、体積平均粒径が35μmのものは「サブミクロン」とはいえない。
しかしながら、甲1発明の「火炎溶融法にて」「球状シリカ微粒子を製造する」ことは、火炎で球状化したシリカ微粒子を得て回収しているといえる。
そうすると、甲1発明の「このシリカ微粉末を耐火材で内張りした炉を用いて火炎溶融法にて、体積平均粒径が35μmであり、かつウラン含有量が0.7ppbである、球状シリカ微粒子を製造する」ことと、本件発明1の「火炎球状化法を用いて、キャリアガス、可燃性ガス及び助燃剤を導入して着火し、ステップ(4)で得られた粉末を1800~2400℃の高温で球状化し、サブミクロン球状シリカ微粉末を回収するステップ(5)」とは、「火炎球状化法を用いて」「ステップ(4)で得られた粉末を」「球状化し」「球状シリカ微粉末を回収するステップ(5)」の点で共通するといえる。
(カ)甲1発明の「ウラン含有量が0.7ppbである球状シリカ微粒子」は、高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末といえることから、甲1発明の「球状シリカ微粒子の製造方法」と本家発明1の「高純度低ウランサブミクロン球状シリカ微粉末の調製方法」とは、「高純度低ウラン球状シリカ微粉末の調製方法」の点で共通する。
(キ)一致点・相違点
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下のaで述べる点で一致し、以下のbで述べる点で相違する。
a 一致点
「高純度低ウラン球状シリカ微粉末の調製方法であって、
原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷し、前記原料がケイ素を含む塊原料であるステップ(1)と、
粉砕するステップ(2)と、
粉末に等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、撹拌して粉末スラリーが得られるステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた、粉末スラリーをろ過、洗浄及び乾燥して、ウラン含有量が1.0ppb以下の粉末が得られるステップ(4)と、
火炎球状化法を用いてステップ(4)で得られた粉末を球状化し、球状シリカ微粉末を回収するステップ(5)とを含む
調製方法。」
b 相違点
(a)ステップ(1)における相違点
(相違点1a)
ケイ素を含む塊原料が、本件発明1では、「純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコン」であるのに対し、甲1発明では、「天然ケイ石(ケイ石原料に相当)」である点。
(相違点1b)
焼成、急冷について、本件発明1では、「不活性ガスの保護下で10~20時間」焼成し、そして焼成、急冷後に「1mm以下の砂原料に粉砕し、沈殿乾燥させて、次に、焼成-粉砕-沈殿乾燥のステップを繰り返」すのに対して、甲1発明では、そのような態様であるのか不明である点。
(b)ステップ(2)における相違点
(相違点2)
粉砕するステップ(2)が、本件発明1は、「砂と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーが得られる」ものであるのに対し、甲1発明は、そもそも乾式粉砕である点。
(c)ステップ(3)における相違点
(相違点3)
フッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、撹拌する際に、本件発明1では、「フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比を1~300:1に従って、スラリーに」フッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、「同時に、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%の過酸化水素を加えて、浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収し、30~60℃で」撹拌するのに対して、甲1発明では、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比は不明であり、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%の過酸化水素を加えておらず、浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収しておらず、さらに、30~60℃で撹拌もしていない点。
(d)ステップ(4)における相違点
(相違点4)
ろ過が、本件発明1では、「加圧」ろ過であるのに対し、甲1発明では、どのようなろ過か不明である点。
(e)ステップ(5)における相違点
(相違点5)
球状化したシリカ微粉末を回収する際に、本件発明1では「キャリアガス、可燃性ガス及び助燃剤を導入して着火し」「1800~2400℃」の高温で球状化し、「サブミクロン」球状シリカ微粉末を回収しているのに対し、甲1発明では、火炎溶融法の具体的な方法は不明であり、得られた球状シリカ微粉末は「サブミクロン」のものではない点。
(f)調製する球状シリカ微粉末についての相違点
(相違点6)
調製する球状シリカ微粉末について、本件発明1では「サブミクロン」であるのに対し、甲1発明では「体積平均粒径が35μm」であり、サブミクロンでない点。
イ 相違点の判断
事案に鑑み、特に、相違点1a、相違点2、相違点3について判断する。
(ア)相違点1aについて
まず、甲1発明は、(甲1イ)に記載されているとおり、その技術分野は「天然のケイ石から高純度のシリカが得られる高純度シリカ原料の製造方法に関する」ものであり、解決しようとする課題は「ある程度の不純物を含む天然ケイ石を原料として純度が高いシリカ原料を製造する」ことであるから、甲1発明の「天然ケイ石(ケイ石原料に相当)」を「単体シリコン」に変えることは、そもそも甲1発明の前提を変えることになることから、甲1発明において阻害要因になり得ることである。
また、上記甲2~甲8の記載を参照しても、低ウランのシリカ微粒子を製造するための焼成(加熱)後急冷する原料として「純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料」を用いることが記載されているものはない。
そうすると、上記相違点1aは、甲1~甲8の記載から当業者が容易になし得たこととはいえない。
(イ)相違点2について
まず、甲1発明の「水中から回収したケイ石をジョークラッシャーにて粒径5mmから10mm程度に粉砕し、更にロールクラッシャーにて平均粒径1mmから2mm程度に粉砕し(粉砕工程)」という乾式粉砕を、「原料である粉末(砂)と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーを得る」という湿式粉砕に変える動機はない。
また、そもそも、上記甲1~甲8の記載を参照しても、低ウランのシリカ微粒子を得る際に、洗浄する(ウランを除去、洗浄する)工程の前に行う粉砕として、「原料である粉末(砂)と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーを得る」ことについて記載されたものはない。
そうすると、上記相違点2は、甲1~甲8の記載から当業者が容易になし得たこととはいえない。
(ウ)相違点3について
相違点3を判断するにあたり、最も近い技術を開示しているのは上記甲6であることから、甲6についてまず検討する。
甲6の(甲6イ)【表1】の実施例3を参照すると、金属シリコン粒子を、フッ化水素酸濃度が1wt%と塩酸濃度が1wt%濃度の無機強酸溶液に最終濃度が1wt%となるように過酸化水素水溶液を添加したもので洗浄することにより、ウラン濃度が0.4ppbの金属シリコン粒子が得られることが記載されている。しかしながら、甲6には、上記相違点3に係る「フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比を1:1に従ってフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、同時に、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計に対して過酸化水素を加えること」は示されているものの、その過酸化水素を加える量が「フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%」となる量であること、「浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収」すること、攪拌する温度が「30~60℃」であることは示されていない。
そうすると、甲6には、相違点3に係る構成が記載されていないのであるから、甲1発明にいかに甲6を組み合わせても、相違点3は導出できない。
また、甲1~甲5、甲7及び甲8には、低ウランのシリカ微粒子を得る際の洗浄工程(ウランを除去、洗浄する)として、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液との酸混合溶液に過酸化水素を加えた溶液で洗浄することすら記載されていないのであるから、相違点3の構成をさらに導出されるものではない。
よって、上記相違点3は、甲1~甲8の記載から当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 相違点1a、2及び3についての申立人の主張について
(ア)申立人の主張
申立人は、相違点1a、2及び3に係る本件発明1の構成を
「B 不活性ガスの保護下で、原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷し、1mm以下の砂原料に粉砕し、沈殿乾燥させて、次に、焼成-粉砕-沈殿乾燥のステップを繰り返して、砂原料が得られ、前記原料は純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料であるステップ(1)と、
C 砂と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーが得られるステップ(2)と、
D フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の濃度比を1~300:1に従って、粉末スラリーに等質量のフッ化水素酸溶液と塩酸溶液を加え、同時に、フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%の過酸化水素を加えて、浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収し、30~60℃で撹拌して粉末スラリーが得られるステップ(3)」(申立書13頁)のB~Dの構成に分け、それぞれB~Dの構成について、
「それゆえ、構成Bは本件特許の出願前に公知であり、構成Bは当業者から見て公知ないし周知技術の寄せ集めであり、特段の困難性は無く想到容易な事項にすぎない。」(28頁4~6行)、
「それゆえ、構成Cは本件特許の出願前に公知であり、構成Cは当業者から見て公知ないし周知技術の寄せ集めであり、特段の困難性は無く想到容易な事項にすぎない。」(同頁19~21行)、
「それゆえ、構成Dは本件特許の出願前に公知であり、構成Dは当業者から見て公知ないし周知技術の寄せ集めであり、特段の困難性は無く想到容易な事項にすぎない。」(29頁6~8行)と主張している。
(イ)申立人の主張に対する当審の判断
上記ア(キ)b(a)~(c)で述べたとおり、構成B(ステップ(1))については少なくとも相違点1a、構成C(ステップ(2))については相違点2、構成D(ステップ(3))については相違点3があり、それらについては、上記イ(ア)~(ウ)で述べたとおり、甲1~甲8の記載から導出されるものではないから、申立人の構成B~Dのいずれについても、単に「当業者から見て公知ないし周知技術の寄せ集めであり、特段の困難性は無く想到容易な事項にすぎない」とする主張を受け入れることはできない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、相違点1b、4及び5について検討するまでもなく、甲1発明及び甲1~8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、上記第2に記載したとおり、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲1~8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲1以外の甲号証を主とした場合について
甲1以外の甲2~8のいずれの甲号証に記載の発明を主発明とした場合においても、結局のところ、
・低ウランのシリカ微粒子を製造するための焼成(加熱)後急冷する原料として、「純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料」を用いること、
・低ウランのシリカ微粒子を得る際に、洗浄する(ウランを除去、洗浄する)工程の前に行う粉砕として、「原料である粉末(砂)と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーを得る」こと、
・低ウランのシリカ微粒子を得る際の洗浄工程において、過酸化水素を加える量が「フッ化水素酸溶液と塩酸溶液の合計質量に対して0.1%~0.5%」となる量であり、「浮選剤と補収剤を追加してウラン元素を回収」し、攪拌する温度が「30~60℃」であること、
について甲1~8のいずれにも記載されていないのであるから、甲2~8のいずれかの甲号証に記載の発明を主発明として、甲1~8に記載されている事項をいかに組み合わせても、本件発明1には至らない。
そうすると、本件発明1は、甲2~甲8に記載されたいずれかの発明、及び甲1~8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明2~9についても同様に、甲2~甲8に記載されたいずれかの発明、及び甲1~8の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~9は、甲1~甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとする申立理由1によって、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2について
本件発明1は、上記第2の1で摘記したとおり、
「・・・、不活性ガスの保護下で、原料を700~1400℃の高温炉内で10~20時間焼成し、焼成終了後、水で急冷し、1mm以下の砂原料に粉砕し、沈殿乾燥させて、次に、焼成-粉砕-沈殿乾燥のステップを繰り返して、砂原料が得られ、前記原料は純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料であるステップ(1)と、
砂と水の質量比を1~3:2~5とし、且つ水の質量に対する0.1‰~0.5‰のHF溶液を添加し、湿式ボールミルにより粉末の平均粒径が5~40μmである粉末スラリーが得られるステップ(2)と、・・・」と記載され、
ステップ(1)で「前記原料は」と記載されている「純度99.5%以上、ウラン含有量が5~15ppb、粒径が30~100mmである単体シリコンの塊原料」が原料であり、この塊原料を「粉砕し」て「得られ」たものが「砂原料」となり、そして、ステップ(2)はステップ(1)の次に行われるものであることを踏まえると、ステップ(2)の「砂」とはステップ(1)で得られた「砂原料」のことであると解するのが相当であり、この点、上記第2の2(本イ)で摘記した【0023】に「(2)250kgの乾燥した砂原料を秤量して取り、230kgの水に加え、・・・」(ここで(2)とはステップ(2)のことである)と記載していることからも、上記解釈が正解であることを裏付けている。
そうすると、本件発明1における「原料」、「砂原料」及び「砂」について、第三者に不測の不利益を及ぼすほど表記の揺れがあり、一意に文言を解することができないとはいえない。
したがって、本件発明1は明確であり、申立理由2によって、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700461