特許異議申立
2024-700566
空気調和機
- 審判番号
- 2024-700566
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-060706
- 登録番号
- 7401803
- 請求日
- 2024年06月13日
- 審決日
- 2024年08月26日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 槙原 進
- 審判官 飯星 潤耶
- 分類
- P1652.121-Y (F28F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7401803号発明「空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7401803号の請求項1、2、5、6及び8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7401803号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年3月31日に出願され、令和5年12月12日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月20日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年6月13日に請求項1、2、5、6及び8に係る特許に対し、角田 朗(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、2、5、6及び8に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1、2、5、6及び8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管(210)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第1フィン(220)と、
を有する第1熱交換器(200)を含む室外機(2)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第2伝熱管(310)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第2フィン(320)と、
を有する第2熱交換器(300)を含む室内機(3)と、
を備え、
前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ、
前記第1フィンは、亜鉛を含有し、
前記第1フィンの亜鉛含有率は、前記第2フィンの亜鉛含有率よりも多い、
空気調和機(1)。
【請求項2】
前記第1フィンの亜鉛含有率は、2質量%以上である、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第1フィンの電位は、前記第2フィンの電位よりも低い、
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記第2伝熱管の表面には、前記第2伝熱管の母材(311)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第2フィンよりも電位的に卑である第2犠牲層(312)が設けられている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項8】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管(210)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第1フィン(220)と、
を有する第1熱交換器(200)を含む室外機(2)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第2伝熱管(310)と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第2フィン(320)と、
を有する第2熱交換器を含む室内機(3)と、
を備え、
前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ、
前記第2フィンの伸びは、前記第1フィンの伸びよりも大きい、
空気調和機(1)。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第4号証を提出し、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概略次の特許異議申立理由を主張する。
本件発明1及び8は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲4に例示された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明2、5及び6は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項及び甲4に例示された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許の請求項1、2、5、6及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2016-99037号公報
甲第2号証:特開2018-100784号公報
甲第3号証:特開平7-90444号公報
甲第4号証:特開2016-205653号公報
なお、甲第1号証~甲第4号証を、以下、それぞれ「甲1」~「甲4」という。
第4 各甲号証について
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載事項及び図示事項がある。なお、下線は当審で付したものである(以下、同様。)。
「【0004】
その対策として、アルミニウム製の伝熱管表面に、アルミニウムより腐食傾向が大きい、すなわち腐食電位が低い(陽イオンとなり易い)亜鉛を含む犠牲防食層を形成する。或いは、フィン材自体に亜鉛などを添加することで犠牲防食効果を発現させて伝熱管の耐食性を向上させることが行われている。(特許文献1、非特許文献1参照)」
「【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、冷凍サイクルを用いた空気調和機などの冷凍サイクル装置に使用されるアルミニウム製伝熱管を有する熱交換器の構造に係るものである。
【0014】
<<実施形態1>>
図1は、本発明の実施形態1に係る冷凍サイクル装置の系統図である。
実施形態1の冷凍サイクル装置Rは、室外機1と室内機2とが、冷媒配管である液側接続配管3とガス側接続配管4により接続されている。
なお、冷媒配管とは冷媒が流れる配管をいう。
【0015】
室外機1には、アキュムレータ5、圧縮機6、四方弁7、室外側熱交換器8、第1の膨張弁9などが備えられている。また、室外機1には、液側接続配管3に接続される液阻止弁10と、ガス側接続配管4と接続されるガス阻止弁11とが備えられている。
室内機2には、利用側熱交換器12と第2の膨張弁13とが備えられている。」
「【0021】
<熱源側熱交換器8>
図2は、熱源側熱交換器に使用されるクロスフィンチューブ型熱交換器の要部斜視図である。
冷凍サイクル装置Rの熱源側熱交換器8は、クロスフィンチューブ型熱交換器を用いている。
クロスフィンチューブ型熱交換器の熱源側熱交換器8は、複数本の伝熱管30と、伝熱管30を通すための貫通孔20aが形成される複数枚のフィン20とを備えている。
【0022】
複数本の伝熱管30は、アルミニウム系材料(以下、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む)で構成されている。また、複数枚のフィン20はアルミニウム系材料(以下、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む)で構成されている。」
「【0025】
図3に示すように、複数本の伝熱管30と複数枚のフィン20とは、ろう材15によりろう付けされ結合されている。
ここで、折り曲げ部20bの先端20b1と伝熱管30の外面との距離h(図3参照)が大き過ぎる場合、隣接する2枚のフィン20と伝熱管30に囲まれた領域の体積が大きくなる。そのため、溶融したろう材15が凝固した際、当該領域を充填しきれず隙間(未充填空間)が残る。
【0026】
この隙間(未充填空間)に腐食を誘発する物質を含んだ水分が浸入すると、該水分が腐食電位が低いアルミニウム製の伝熱管30に直に触れることとなる。そのため、水分中の腐食を誘発する物質の働きで、アルミニウム製の伝熱管30のアルミニウム陽イオンが溶出し、腐食が早期に発生するおそれがある。」
「【0030】
まず、図4(a)に示すように、アルミニウム系材料で構成されている複数本の伝熱管30となる素材のパイプ30aと、アルミニウム系材料で構成された複数枚のフィン20を用意する。素材のパイプ30aは、完成時の伝熱管30の径より小さいの径のものを準備する。
フィン20には、アルミニウム系材料で構成された金属板の心材21の表面に、主成分がアルミニウムで心材21より融点が低いろう材層22を貼り合わせたブレージングシートを使用する。ブレージングシートを用いることで、ろう材層22の形成が容易となる。」
「【0037】
また、フィン20の腐食電位が伝熱管30の腐食電位よりも低くなるように、フィン20と伝熱管30を異なるアルミニウム合金で構成すれば、フィン20が先に腐食し、伝熱管30の腐食が抑制される。
従って、熱源側熱交換器8の長寿命化が図れ、信頼性が高い熱源側熱交換器8が得られる。
【0038】
さらに、熱源側熱交換器8の伝熱管30を、アルミニウム系材料で構成できるので、軽量化が可能である。加えて、アルミニウム系材料は、銅材よりも材料費が安価なので、熱源側熱交換器8の低コスト化を図れる。
以上のことから、アルミニウム製の伝熱管30の腐食が抑制され、信頼性が高く長寿命の熱交換器を有する冷凍サイクル装置Rを提供できる。」
「【0049】
実施形態3の熱源側熱交換器38では、伝熱管50をその周囲に亜鉛犠牲層52を形成したものである。これにより、亜鉛犠牲層52を腐食させることでの心材管51そのものの腐食を抑制している。
上記以外の構成は、実施形態1と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0050】
熱源側熱交換器38において、複数のフィン20には、伝熱管50を挿通する貫通孔20aが形成されている。そして、貫通孔20aに折り曲げ部25bが一方方向に突出して円筒状に形成されている。
【0051】
複数のフィン20の貫通孔20aには伝熱管50が貫通される。伝熱管50は、中央部の心材管51の周りに、亜鉛を含有したアルミニウムを主成分とする亜鉛犠牲層52が形成されている。亜鉛犠牲層52は、伝熱管50の心材管51より亜鉛濃度を高くすることで腐食傾向が大きく(腐食電位が低く)なるように設定されている。」
「【0059】
また、フィン20の腐食電位が伝熱管50の腐食電位よりも低くなるように、フィン20と伝熱管50を異なるアルミニウム合金で構成すれば、フィン20が先に腐食し、伝熱管50の腐食が抑制される。そのため、さらに熱源側熱交換器38の伝熱管50の腐食寿命を延ばすことができ、熱源側熱交換器38の長寿命化を図ることができる。
なお、実施形態3においても、実施形態1の作用効果は同様に奏する。」
「【0062】
3.前記実施形態1~3では、熱源側熱交換器28に、本発明を適用した例について説明したが、利用側熱交換器12に本発明を適用してもよい。」
「【図1】
[図:0001414233000001.jpg]
【図2】
[図:0001414233000002.jpg]
【図3】
[図:0001414233000003.jpg]
」
「【図6】
[図:0001414233000004.jpg]
」
(2)上記(1)から認められること
ア 段落【0013】及び【0014】並びに図1の記載によれば、甲1には、室外機1と、室外機2とを備えた冷凍サイクルを用いた空気調和機が認められる。
イ 段落【0014】、【0015】、【0021】及び【0049】並びに図1~図3及び、図6の記載によれば、室外機1は、熱源側熱交換器38を含むことが認められる。
ウ 段落【0021】、【0022】、【0030】及び【0049】並びに図2、図3及び図6の記載によれば、熱源側熱交換器38は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の伝熱管50を有することが認められる。
エ 段落【0022】、【0030】、【0037】及び【0049】並びに図2、図3及び図6の記載によれば、熱源側熱交換器38は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のフィン20を有することが認められる。
オ 段落【0062】の「実施形態1~3では、熱源側熱交換器28に、本発明を適用した例について説明したが、利用側熱交換器12に本発明を適用してもよい。」との記載及び図1の記載を、上記ア~エと合わせみると、室内機2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の伝熱管(以下、「利用側の伝熱管」という。)と、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のフィン(以下、「利用側のフィン」という。)と、を有する利用側熱交換器12を含むことが認められる。
カ 段落【0049】及び【0051】並びに図6の記載によれば、伝熱管50の表面には、伝熱管50の心材管51よりも腐食電位が低い亜鉛犠牲層52が設けられることが認められる。
キ 段落【0059】の記載によれば、フィン20の腐食電位が伝熱管50の腐食電位よりも低くなるようにしたことが認められる。
(3)甲1発明
上記(1)及び(2)を総合すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「アルミニウムまたはアルミニウム合金製の伝熱管50と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数のフィン20と、
を有する熱源側熱交換器38を含む室外機1と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の利用側の伝熱管と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の利用側のフィンと、
を有する利用側熱交換器12を含む室内機2と、
を備え、
前記伝熱管50の表面には、前記伝熱管50の心材管51よりも腐食電位が低い亜鉛犠牲層52が設けられ、
前記フィン20の腐食電位が前記伝熱管50の腐食電位よりも低くなるようにした、
冷凍サイクルを用いた空気調和機。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には、次の記載事項及び図示事項がある。
「【0021】
熱交換器16は、伝熱管16bが複数の板状のフィン16aを貫通して(接合して)一体に構成されている。伝熱管16は冷媒配管5(図1参照)に接続され、室外機1からの冷媒が通流している。フィン16aは、アルミニウムにより構成されている。また、このフィン16aの表面には、冷房や除湿運転時に発生する結露水を速やかに露受皿17に導くため、親水性と潤滑性と防食性とを奏させる被膜(表面処理剤を用いたプレコート)が形成されている。一方で、伝熱管16bも、アルミニウムで構成されている。ただし、伝熱管16bの表面にはこのような被膜は形成されておらず、亜鉛溶射による亜鉛防食層が形成されている。従って、伝熱管16bでは、金属が露出していることになる。」
「【図2】
[図:0001414233000005.jpg]
」
3 甲3について
(1)甲3の記載
甲3には、次の記載事項及び図示事項がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度を有する熱交換器用アルミニウム合金フィン材に関するものであり、さらに詳しくは、特にろう付法によって製造される自動車用熱交換器であるラジエーター、ヒーター、コンデンサー等のフィンとして使用されるアルミニウム合金フィン材に関するものである。」
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれに鑑み、ろう付後の強度が高く、ろう付性も良好なフィン材を開発するには、Si、Cu、Mn、ZnおよびNiの添加量を適正化して強度を向上させ、さらにMgの添加量を減らすか、もしくはMgを添加しないことにより、ろう付性を向上させれば、高強度と良好なろう付性を兼ね備えたフィン材を開発することができると考え、本発明に到った。即ち、本発明は、ろう付後の強度とろう付性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材を開発したものであり、請求項1記載の発明は、Si0.6~1.0wt%、Cu0.1~0.4wt%、Mn0.9~1.5wt%、Zn0.8~2.5wt%、Ni0.3~0.6wt%を含有し、残部Alと不可避的不純物とからなることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材であり、請求項2記載の発明は、Si0.6~1.0wt%、Cu0.1~0.4wt%、Mn0.9~1.5wt%、Zn0.8~2.5wt%、Ni0.3~0.6wt%を含有し、さらにMg0.008wt%以下、Cr0.03~0.3wt%、Zr0.03~0.3wt%、In0.005~0.1wt%、Sn0.005~0.1wt%のうちの1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避的不純物とからなることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材である。」
「【0008】Znは、その添加によりフィン材の電位を下げ、ろう付された相手部材に対して犠牲陽極効果を持たせることができる。Znが0.8wt%未満ではその効果が十分ではなく、2.5wt%を超えると材料の成形性が低下し、フィンのコルゲート成形ができにくくなる。従って、Znは0.8~2.5wt%とする。」
「【図1】
[図:0001414233000006.jpg]
【図2】
[図:0001414233000007.jpg]
」
4 甲4について
(1)甲4の記載
甲4には、次の記載事項及び図示事項がある。
「【0001】
本発明は空気調和機の室外機及びこれを用いた空気調和機に関する。」
「【0015】
ここで、室外機(1)は室外に設置されることから、室外熱交換器(6)は室内熱交換器(8)に比べて風雨や潮風により湿潤環境に置かれる頻度が高い。また、室外熱交換器(6)は暖房運転時に蒸発器となり、低温となるため、外部の水蒸気が凝縮して、露又は霜の形で室外熱交換器(6)に付着する。金属材料は、乾燥した状態に比べ水に濡れた環境の方が遥かに腐食が進行しやすい。本実施例の室外機(1)では、天板(10c)のネジ止め部、室外熱交換器(16)とベースの隙間部分、室外熱交換器(16)の下部(フィン間に水が溜まりやすい)、ベース(10a)の水抜き穴、ベース(10a)・正面板(10b)・天板(13)・右側面板(14)・左側面板(15)等の鋼板の隙間部分で腐食が進行しやすい。」
「【図2】
[図:0001414233000008.jpg]
【図3】
[図:0001414233000009.jpg]
」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者の「伝熱管50」は、前者の「第1伝熱管(210)」に相当し、同様に、「フィン20」は「第1フィン(220)」に、「熱源側熱交換器38」は「第1熱交換器(200)」に、「室外機1」は「室外機(2)」に、「利用側の伝熱管」は「第2伝熱管(310)」に、「利用側のフィン」は「第2フィン(320)」に、「利用側熱交換器12」は「第2熱交換器(300)」に、「室内機2」は「室内機(3)」に、「冷凍サイクルを用いた空気調和機」は「空気調和機(1)」に、それぞれ相当する。
イ 後者の「心材管50」は、前者の「母材(211)」に相当し、同様に、「腐食電位が低い」ことは、「電位的に卑であ」ることに、「亜鉛犠牲層52」は、「第1犠牲層(212)」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「前記伝熱管50の表面には、前記伝熱管50の心材管51よりも腐食電位が低い亜鉛犠牲層52が設けられ」たことと、
前者の「前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ」たこととは、
「前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられ」たという限りにおいて一致する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第1フィンと、
を有する第1熱交換器を含む室外機と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第2伝熱管と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第2フィンと、
を有する第2熱交換器を含む室内機と、
を備え、
前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられた、
空気調和機。」
[相違点1]
「前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられ」たことに関して、本件発明1では、「前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ」たものであるのに対して、甲1発明では、「前記伝熱管50の表面には、前記伝熱管50の心材管51よりも腐食電位が低い亜鉛犠牲層52が設けられ」たものである点。
[相違点2]
本件発明1では、「前記第1フィンは、亜鉛を含有し、前記第1フィンの亜鉛含有率は、前記第2フィンの亜鉛含有率よりも多い」のに対して、甲1発明では、そのような特定はされていない点。
(2)判断
ア 相違点1について
上記第4の2~4に摘記したとおり、空気調和機の熱交換器において、伝熱管の表面に設ける、伝熱管の母材よりも電位的に卑である犠牲層を、フィンよりも電位的に貴とすることは、甲2~甲4のいずれにも、記載も示唆もされておらず、本件特許の出願前に技術常識であるとも認められない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
イ 効果について
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、「第1犠牲層は、第1フィンよりも電位的に貴であるので、母材の腐食を抑制するための第1犠牲層の腐食を抑制することができる。」(段落【0005】)という所期の効果を奏するものである。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の11ページ22行~12ページ1行において、「甲1発明には、伝熱管50の中央部の心材管51の周りに、心材管51より腐食電位が低い亜鉛犠牲層52が形成されていることが記載されている(段落0049,0051)。また、甲1発明には、フィン20の腐食電位が伝熱管30,50(心材管51と亜鉛犠牲層52で構成される)の腐食電位よりも低くなるように構成することが記載されている(段落0037,0059)。従って、甲1発明には本件特許発明1の構成要件1Cの『前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ』が記載されている。」と主張する。
しかし、甲1発明において、腐食電位については、「前記伝熱管50の心材管51よりも腐食電位が低い亜鉛犠牲層52」という事項で、伝熱管50と亜鉛犠牲層52との腐食電位の関係が示され、「前記フィン20の腐食電位が前記伝熱管50の腐食電位よりも低くなるようにした」という事項で、伝熱管50とフィン20との腐食電位の関係が示されているものの、伝熱管50の表面の亜鉛犠牲層52とフィン20との腐食電位の関係についてまでは示されておらず、本件特許の出願前における技術常識を考慮しても、第1犠牲層が、第1フィンよりも電位的に貴であることまでは認めることができないから、申立人の上記主張は採用できない。
エ まとめ
したがって、本件発明1は、相違点2の検討を要するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
2 本件発明2、5及び6について
本件発明2、5及び6は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるから、上記1の検討を踏まえると、同様の理由により、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明8について
(1)対比
上記1(1)の対比を踏まえて、本件発明8と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1伝熱管と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第1フィンと、
を有する第1熱交換器を含む室外機と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第2伝熱管と、
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の複数の第2フィンと、
を有する第2熱交換器を含む室内機と、
を備え、
前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられた、
空気調和機。」
[相違点3]
「前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材よりも電位的に卑である第1犠牲層が設けられ」たことに関して、本件発明8では、「前記第1伝熱管の表面には、前記第1伝熱管の母材(211)よりも電位的に卑であり、かつ、前記第1フィンよりも電位的に貴である第1犠牲層(212)が設けられ」たものであるのに対して、甲1発明では、「前記伝熱管50の表面には、前記伝熱管50の心材管51よりも腐食電位が低い亜鉛犠牲層52が設けられ」たものである点。
[相違点4]
本件発明8では、「前記第2フィンの伸びは、前記第1フィンの伸びよりも大きい」のに対して、甲1発明では、そのような特定はされていない点。。
(2)判断
相違点3は、上記1(1)の対比における相違点1と同じである。
そうすると、上記1(2)の判断を踏まえると、同様の理由により、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明8の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明8は、相違点4の検討を要するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、5、6及び8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、5、6及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700566