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特許異議申立

2025-700706

情報処理システムおよびヒートポンプシステム

審判番号
2025-700706
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-164992
登録番号
7617368
請求日
2025年07月09日
審決日
2026年05月14日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】古部 次郎
  • 【異議申立人】角田 朗
審判長/審判官
  • 審判長 高野 洋
  • 審判官 玉木 宏治
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P1651.113-YAA(H02J) / P1651.121-YAA(H02J) / P1651.536-YAA(H02J) / P1651.537-YAA(H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7617368号発明「情報処理システムおよびヒートポンプシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7617368号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕及び13について訂正することを認める。 特許第7617368号の請求項2~9、12及び13に係る特許を維持する。 特許第7617368号の請求項1、10及び11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7617368号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年9月30日の出願であって、令和7年1月9日にその特許権の設定登録がされ、同年1月20日に特許掲載公報が発行された。 その後、その全請求項(請求項1~13)に係る特許に対し、特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 特許異議の申立てからの手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 7年 7月 9日 特許異議申立書 10月21日付け 取消理由通知書 12月26日 訂正請求書 意見書(特許権者) 令和 8年 1月14日付け 手続補正指令書(方式)(特許権者宛て) 2月13日 手続補正書(方式)(特許権者) 3月30日 意見書(申立人) 以下では、特許異議申立書を「申立書」といい、令和8年2月13日の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、令和8年3月30日の申立人による意見書を「申立人意見書」という。 第2 本件訂正の適否 本件訂正は、特許請求の範囲を訂正するものである。 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~7からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。 以下の(1)に本件訂正前の特許請求の範囲の記載を、以下の(2)に本件訂正後の特許請求の範囲の記載を示す。 〈訂正事項1〉 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 〈訂正事項2〉 特許請求の範囲の請求項2に「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理システム」と記載されているのを、独立形式に改め、「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段と、を備える情報処理システム」に訂正する。 〈訂正事項3〉 特許請求の範囲の請求項6に「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理システム」と記載されているのを、独立形式に改め、「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段と、を備える情報処理システム」に訂正する。 〈訂正事項4〉 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 〈訂正事項5〉 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 〈訂正事項6〉 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1記載の」と記載されているのを、「請求項2記載の」に訂正する。 〈訂正事項7〉 特許請求の範囲の請求項13に「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムであって、前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段と、を備えるヒートポンプシステム」と記載されているのを、「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムであって、前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段と、皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段と、を備えるヒートポンプシステム」に訂正する。 (1)本件訂正前の特許請求の範囲の記載 本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。 【請求項1】 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 を備える情報処理システム。 【請求項2】 前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。 【請求項3】 前記余裕に関する前記指標が当該余裕に関して定められた条件を満たす場合、前記ヒートポンプシステムに関する情報を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の情報処理システム。 【請求項4】 前記条件は、前記ヒートポンプシステムに関する寿命に基づいて定められることを特徴とする請求項3記載の情報処理システム。 【請求項5】 前記条件は、温度および/または湿度の調整のための前記ヒートポンプシステムの利用に基づいて定められることを特徴とする請求項3記載の情報処理システム。 【請求項6】 皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。 【請求項7】 前記条件は、前記指標が、皮相電力の調整の対象である前記電線を介して電力が受給された前記ヒートポンプシステムについて算出された指標であることを特徴とする請求項6記載の情報処理システム。 【請求項8】 前記条件は、皮相電力の調整の能力について定められることを特徴とする請求項6記載の情報処理システム。 【請求項9】 前記条件は、前記能力と、前記電線における皮相電力について必要な調整の程度との関係に基づいて定められることを特徴とする請求項8記載の情報処理システム。 【請求項10】 前記ヒートポンプシステムには、受電した電力を変換して温度および/または湿度の調整に用いられる負荷に変換後の電力を供給する変換部と、当該変換部の受電経路における皮相電力を調整する調整部とが設けられ、 前記変換部および前記調整部は、何れも、前記電線における皮相電力の調整が可能であり、 前記能力算出手段は、前記電線における皮相電力の前記変換部による調整の能力に関する指標、および、当該電線における皮相電力の前記調整部による調整の能力に関する指標を算出することを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。 【請求項11】 前記能力算出手段は、前記調整部について所定の能力に関する第1指標を算出し、前記変換部について当該調整部よりも低い当該能力に関する第2指標を算出することを特徴とする請求項10記載の情報処理システム。 【請求項12】 前記システム情報には、前記ヒートポンプシステムによる温度および/または湿度の調整が施される対象に関する対象情報が含まれることを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。 【請求項13】 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムであって、 前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段と、 を備えるヒートポンプシステム。 (2)本件訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段と、 を備える情報処理システム。 【請求項3】 前記余裕に関する前記指標が当該余裕に関して定められた条件を満たす場合、前記ヒートポンプシステムに関する情報を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の情報処理システム。 【請求項4】 前記条件は、前記ヒートポンプシステムに関する寿命に基づいて定められることを特徴とする請求項3記載の情報処理システム。 【請求項5】 前記条件は、温度および/または湿度の調整のための前記ヒートポンプシステムの利用に基づいて定められることを特徴とする請求項3記載の情報処理システム。 【請求項6】 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段と、 を備える情報処理システム。 【請求項7】 前記条件は、前記指標が、皮相電力の調整の対象である前記電線を介して電力が受給された前記ヒートポンプシステムについて算出された指標であることを特徴とする請求項6記載の情報処理システム。 【請求項8】 前記条件は、皮相電力の調整の能力について定められることを特徴とする請求項6記載の情報処理システム。 【請求項9】 前記条件は、前記能力と、前記電線における皮相電力について必要な調整の程度との関係に基づいて定められることを特徴とする請求項8記載の情報処理システム。 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 前記システム情報には、前記ヒートポンプシステムによる温度および/または湿度の調整が施される対象に関する対象情報が含まれることを特徴とする請求項2記載の情報処理システム。 【請求項13】 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムであって、 前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段と、 皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段と、 を備えるヒートポンプシステム。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~12は、それぞれ請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、請求項1~12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であると認める。 そして、本件訂正は、上記一群の請求項ごとに請求されており、特許法120条の5第4項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件について 本件の特許異議の申立ては全請求項にされているので、本件訂正には特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は適用されない。 4 訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。 そして、訂正事項1に係る訂正は、請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たす。 よって、訂正事項1に係る訂正は、適法なものと認められる。 5 訂正事項2について 本件訂正前において、請求項2は請求項1を引用する記載であったところ、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を独立形式に改めるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものと認められる。 そして、本件訂正の前後において、請求項2に記載された内容を変更するものではないから、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たす。 よって、訂正事項2に係る訂正は、適法なものと認められる。 6 訂正事項3について 本件訂正前において、請求項6は請求項1を引用する記載であったところ、訂正事項3は、本件訂正前の請求項6を独立形式に改めるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものと認められる。 そして、本件訂正の前後において、請求項6に記載された内容を変更するものではないから、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たす。 よって、訂正事項3に係る訂正は、適法なものと認められる。 7 訂正事項4及び5について 訂正事項4及び5に係る訂正は、請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。 そして、訂正事項4及び5に係る訂正は、請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たす。 よって、訂正事項4及び5に係る訂正は、適法なものと認められる。 8 訂正事項6について (1)訂正の目的 訂正事項6に係る訂正は、請求項12の「請求項1記載の」について、「請求項2記載の」としたものである。 ここで、本件訂正後の請求項2は、 「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段と、 を備える情報処理システム。」 であって、本件訂正前の請求項1において、「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段」を備えることを限定したものである。 そうすると、本件訂正後の請求項12に係る発明も、本件訂正前の請求項12において、「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段」を備えることを限定したものである。 したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。 (2)新規事項追加の有無 前記(1)に記載のとおり、「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段」を備えることは、本件訂正前の請求項2に係る発明に基づくものであるから、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。 (3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無 訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たす。 (4)小括 以上のとおりであるから、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、訂正事項6に係る訂正は、適法なものと認められる。 9 訂正事項7について (1)訂正の目的 訂正事項7は、訂正前の請求項13に「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」を追加するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。 (2)新規事項追加の有無 「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」を備えることは、本件訂正前の請求項6に係る発明に基づくものであるから、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。 (3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無 訂正事項7に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 したがって、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たす。 (4)小括 以上のとおりであるから、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、訂正事項7に係る訂正は、適法なものと認められる。 10 本件訂正についての小括 以上によれば、本件訂正は適法なものと認められる。 よって、本件の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕及び13について訂正することを認める。 第3 本件発明の認定 本件の請求項2~9、12及び13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」~「本件発明9」、「本件発明12」及び「本件発明13」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、前記第2、1(2)に示した請求項2~9、12及び13に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 後の参照の便宜のため、本件発明2、6、13に記号2A~13Eを付して以下のように分説し、「発明特定事項2A」のようにして参照する。 【請求項2】 2A 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 2B 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 2C 前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段と、 2D を備える情報処理システム。 【請求項6】 6A 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 6B 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 6C 皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段と、 6D を備える情報処理システム。 【請求項13】 13A 配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステムであって、 13B 前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 13C 前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段と、 13D 皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段と、 13E を備えるヒートポンプシステム。 第4 証拠方法及び申立理由 申立人が提出した証拠方法を以下の1に示す。 申立人が主張する申立理由を以下の2に示す。 1 証拠方法 申立人は、申立書に添付して甲第1号証~甲第3号証を提出した(以下では、甲第1号証を「甲1」と略す。他の甲号証についても同様。)。 甲1 特開2013-192345号公報 甲2 特開2017-46507号公報 甲3 特開2018-207771号公報 2 申立理由 申立理由の概要は、以下のとおりである。 〈申立理由1〉(新規性) 請求項1~3、12及び13に係る発明は、甲1に記載された発明と同一であるから、請求項1~3に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 〈申立理由2〉(進歩性) 請求項1~3、5~13に係る発明は、当業者が甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 〈申立理由3、4〉(実施可能要件、明確性) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 また、本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 請求項1に記載された「皮相電力の調整」に対して、本件特許の明細書の段落0022に「電力変換装置211およびAF212は、配電系統の電線における皮相電力を調整する。」と記載されている。しかし、当業者の技術常識ではアクティブフィルタ(AF212)は皮相電力を調整するものであるが、電力変換装置211は、単純にアクティブフィルタ(AF212)と組み合わせただけでは、皮相電力の調整ができないものである。・・・中略・・・しかし、電力変換装置211に電流波形を改善する手段(電流波形を改善することが可能なコンバータ)を備えた場合、電力変換装置211とアクティブフィルタ(AF212)のそれぞれが干渉してしまい、意図通りに調整できないという課題がある。すなわち、皮相電力を調整可能な電力変換装置211およびアクティブフィルタ(AF212)の両方が皮相電力を調整するという構成は、当業者から見て実施可能ではなく、また、上記構成の場合にどのように皮相電力を調整するのかは本件特許の明細書及び請求項には記載も示唆も無い。 仮に電流波形を改善することができないコンバータ(一般的な全波整流方式等)を備える場合、ダイオードを用いているため逆方向の電流、つまり電力変換装置211から電力系統10に向かう方向の電流を流すことができない。・・・中略・・・皮相電力の調整の一形態として、負荷の増減により主に有効電力を調整することが考えられるが、本件特許の明細書の段落0022に「電力変換装置211およびAF212は、何れも、電力系統10に電流を供給する。」と記載されており、電流波形を改善することができないコンバータを備える電力変換装置211は電力系統10に電流を供給することができず、どのように電流を供給するのか本件特許の明細書及び請求項には記載も示唆も無い。 請求項1に「皮相電力の調整」と記載されているが、ヒートポンプシステムがどのように皮相電力を調整するのか不明確である。請求項2~13も同様である。特に、請求項10に「前記変換部および前記調整部は、何れも、前記電線における皮相電力の調整が可能であり、」と記載されているが、請求項10及びそれに従属する請求項11に記載された「変換部」がどのように電線に電流を供給させ、どのように皮相電力を調整するのか不明確である。 よって、請求項1~13の記載は不明確である。また、本件特許の発明の詳細な説明(特に段落0022)は、請求項1~13に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (申立書36頁~38頁) 〈申立理由5〉(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件特許は、ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合において、配電系統の電線における皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現することを目的としている(本件特許の段落0004)。 本件特許発明1は取得手段と算出手段を有するが、皮相電力を調整する手段を有していないため、皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現するという課題を解決することができない。本件特許発明2~13についても同様である。 よって、本件特許発明1~13は発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、サポート要件(36条6項1号)に違反する。 (申立書38頁) 第5 申立ての一部却下 前記第2、10のとおり、本件訂正は認められたので、請求項1、10及び11は削除された。これにより、請求項1、10及び11についての特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 第6 申立理由1、2についての当審の判断 事案に鑑み、申立理由1、2についての理由の有無をまず検討する。 1 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、強調のために当審において付与した。(以下、同様。) 「【0001】 本発明は、発電設備と電気設備としての電力供給設備および電力消費設備とが接続された電力系統と、前記電力系統の電圧を所定の電圧範囲内に維持するために、前記発電設備の発電電力の増減を指令する中央調整指令部とが備えられた電圧制御システムに関する。」 「【0018】 本特徴構成によれば、設備群制御指令部は、無効電力調整設備から設備群に供給可能な無効電力を総設備電力として制御自在に構成されるので、設備群制御指令部は、設備群における有効電力の増減による電圧調整に加えて、無効電力の供給を調整することで設備群の電圧調整が可能となる。例えば、電力供給設備としての同期発電機、電力消費設備としてのエアコン、冷蔵庫等、および、蓄電設備としてのリチウムイオン電池は無効電力調整設備として稼動するので、これらの稼動状態を変化させることで有効電力を増減調整するとともに、無効電力を増減調整して設備群に供給することができる。 また、設備群制御指令部は、無効電力調整設備により調整可能な無効電力を総調整可能容量として管理するので、設備群において現在どれぐらいの無効電力の調整可能容量があるのかを正確に管理して、受信する総設備電力指令に対して迅速に総設備電力の増減調整を行うことができる。」 「【0034】 以下、本発明に係る電圧制御システムの実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る電圧制御システムの構成概略図である。 図1に示すように、本発明に係る電圧制御システムEは、発電設備Rと電気設備としての電力供給設備Faおよび電力消費設備Fbとが接続された電力系統1と、電力系統1の電圧を所定の電圧範囲内に維持するために、発電設備Rに発電電力の増減を指令する電圧調整指令L1を出力する中央調整指令部2とが備えられている。 また、電力供給設備Fa及び電力消費設備Fbの少なくとも一方を含んで複数の電気設備から構成された設備群Sを複数備えるとともに、設備群Sにおける総供給電力及び総消費電力の少なくとも一方である総設備電力を制御自在な設備群制御指令部3を複数備えている。従って、この設備群制御指令部3は、中央調整指令部2が統括する統括範囲より、小さい単位を制御対象とする。」 「【0036】 設備群Sは、電力供給設備Fa、電力消費設備Fbを含む複数の電気設備から構成されている。複数の電気設備は、設置場所が互いに隣接して構成されており、電力供給設備Fa、電力消費設備Fbとして稼動する蓄電設備Cおよび無効電力調整設備Fcが備えられている。 また、それぞれの設備群Sの電圧、有効電力および無効電力を計測する電力計測部5が備えられている。 【0037】 そして、電力供給設備Faは、例えば、燃料電池発電設備や小規模の火力および水力発電設備、発電能力が10kW~数千kW程度の小型発電設備、または、そのような小型発電設備を備えたコージェネレーション発電設備などで構成されている。このような電力供給設備Faの発電容量は発電設備Rよりも小さい発電容量とされている。また、電力供給設備Faは同期発電機を備えており、設備群Sを流れる電力の無効電力を自在に調整する無効電力調整設備Fcとして働くように構成されている。 一方、電力消費設備Fbとしては、例えば、電力を消費するエアコン、冷蔵庫、電気自動車、工場の機械、照明、および、空調などを挙げることができる。ここで、例えば、誘導性負荷としてのモーターを有するエアコン及び冷蔵庫等は無効電力調整設備Fcとして稼動して無効電力を調整することができる。」 「【0039】 そして、図1に示すように、設備群Sに属する複数の電気設備は、現在の発電電力または消費電力を監視する監視対象グループの監視設備F1と現在の電力を監視しない非監視対象グループの非監視設備F2とにグループ分けされている。監視設備F1には、現在の電力(有効電力、無効電力)の電力供給状態および電力消費状態を常時計測する計測部F1c(図2参照)が設けられており、その計測部F1cにて計測された計測値N3に係る情報が設備群制御指令部3に送信されている。」 「【0041】 電気設備の設置場所を表す設置場所情報に関係付けて電気設備が属する設備群Sが、例えば、設備群制御指令部3に記憶されており、その設置場所情報に基づいて設備群Sを構成する複数の電気設備が選択されるように構成されている。これにより、例えば、電力系統1のある場所において電圧が所定の電圧範囲外となる電圧異常が電力計測部5によって検出されると、その場所の周辺に位置する複数の電気設備を設置場所情報に基づいて選択されて、それらの電気設備を有する設備群Sが特定される。 そして、設備群制御指令部3は、その特定された設備群Sに総電力増減指令M1を生成して出力し、設備群Sの総設備電力を調整するように構成されている。 【0042】 また、設備群制御指令部3は、それぞれ割り当てられた担当の設備群Sにおける複数の電気設備の稼動状態を把握するとともに、設備群Sの電力供給設備Faおよび電力消費設備Fbにより調整可能な総設備電力である総調整可能容量を管理して、設備群Sの電圧を所定の電圧範囲内に維持するために、総調整可能容量内で設備群Sにおける総設備電力の増減を指令する総電力増減指令M1を生成して出力自在に構成されている。 そして、設備群Sにおける複数の電気設備は、総電力増減指令M1を受けると、総電力増減指令M1に基づいて、電気設備の供給電力及び消費電力の少なくとも一方である設備電力の増減を行うように構成されている。 【0043】 さらに、設備群制御指令部3は、蓄電設備Cに充電される充電電力、蓄電設備Cから設備群Sに放電する放電電力および無効電力調整設備Fcから設備群Sに供給される無効電力を総設備電力として制御自在に構成されるとともに、総調整可能容量として蓄電設備Cにより調整可能な充電電力、放電電力および無効電力調整設備Fcにより調整可能な無効電力を管理している。これにより、総設備電力を調整する総電力増減指令M1によって、設備群Sの電気設備によって有効電力および無効電力における電力調整をすることができる。 【0044】 また、総調整可能容量を管理するに当たり、監視設備F1については、計測部F1c(図2参照)にて計測される現在の計測値N3に基づいて稼動状態を把握して、監視設備F1により調整可能な電力である監視設備用総調整可能容量を求めて管理するように構成され、且つ、非監視設備F2については、設備電力について予め設定されている設定情報に基づいて稼動状態を把握して、非監視設備F2により調整可能な電力である非監視設備用総調整可能容量を求めるように構成されている。 【0045】 一方、設備群制御指令部3は、周波数調整指令L2を受けると、周波数調整指令L2に基づいて、総調整可能容量内で設備群Sの総設備電力の増減を指令する周波数用総電力増減指令M2を生成して出力自在に構成されている。なお、設備群制御指令部3は、電力会社によって運営されていてもよいし、電力会社以外の特定規模電気事業者(PPS)やエネルギーサービス事業者などが運営してもよい。」 「【0050】 また、設備群制御指令部3の設備情報保存部3cには、設備群Sの所定の電圧範囲が入力されて保存されている。また、設備情報保存部3cには、設備群Sに属する複数の電気設備に係る電力供給設備Faとしての定格発電電力および電力消費設備Fbとしての定格消費電力などの設備情報、蓄電設備Cに係る定格充電容量および定格放電電力などの設備情報、無効電力調整設備Fcよって発生する無効電力などの設備情報が保存されている。なお、これらの設備情報の入力は設備情報入力部3bから入力することができる。 【0051】 また、設備群制御指令部3には、監視設備F1の計測部F1cによって計測されている計測値N3が入力される監視部3fが設けられている。ここで、監視部3fに入力された情報は設備情報保存部3cで保存されている。さらに、設備群制御指令部3の指令演算部3dには、電力計測部5で計測された電力計測値N1が入力される。 そして、指令演算部3dは、所定の電圧範囲と電力計測値N1の電圧とを比較して、設備群Sの電圧調整が必要であるか判断する。電力計測値N1の電圧が所定の電圧範囲外である場合は、例えば、設備情報保存部3cに保存されている設置場所情報に基づいて、設備群Sを構成する複数の電気設備が選択されるとともに、電圧調整のために総電力増減指令M1が生成される。総電力増減指令M1を生成するにあたり、まず、電圧を調整するために必要となる調整電力値が演算される。次に、その調整電力値、監視部3fに入力される計測値N3、設備情報保存部3cに保存されている設備情報とに基づいて、現在の電気設備の調整可能容量が求められる。そして、その調整可能容量内で総電力増減指令M1を生成する。」 「【0053】 設備群Sに属する複数の電気設備は、広域通信手段7を介して設備群制御指令部3からの総電力増減指令M1および周波数用総電力増減指令M2を受信する指令受信部F1a、受信した総電力増減指令M1および周波数用総電力増減指令M2に応じて、電気設備の電力を調整する制御部F1bを備えて構成されている。さらに、監視設備F1については、監視設備F1の現在の電力を常時計測するために計測部F1cが設けられており、計測された計測値N3は、上述の如く、設備群制御指令部3の監視部3fに送信される。 【0054】 ここで、設備群制御指令部3の指令演算部3dにおいて、設置場所情報に基づいて選択された電気設備が属する設備群Sの電圧および周波数を調整するために、必要となる調整電力値の演算について説明する。 電圧を調整するための調整電力値の算出は、指令演算部3dによって、電力計測部5で計測された計測電圧値と、予め設定された所定の電圧範囲とを比較して、その計測電圧値が、所定の電圧範囲外である場合は、その計測電圧値を所定の電圧範囲に調整するために必要となる電圧増減値dvが求められる。 さらに、指令演算部3dは、この電圧増減値dvに基づいて、有効電力pの調整電力と無効電力qの調整電力値を算出する。この有効電力pおよび無効電力qの調整電力値の算出は、予め計測された電力調整対象となっている設備群Sの抵抗rおよびリアクタンスxを用いるとともに、電力計測部5によって計測された電圧をvとして、下記数式(1)によって求めることができる。 dv=(p・r+q・x)/v・・・・・・(1) このとき、設備群Sに供給可能な皮相電力sの値は、既存の送電設備等からの制約により一定値にする必要があるので、有効電力pおよび無効電力qの関係は、下記数式(2)を満たすことが必要である。 s=SQRT(p2+q2)・・・・・・・(2) この数式(1)および(2)の関係より、増減すべき有効電力pおよび無効電力qの調整電力値が算出される。 このようにして求められた調整電力値を、設置場所情報に基づいて選択された電気設備が属する設備群Sの各電気設備に割り当てて総電力増減指令M1を生成する。その際、無効電力調整設備Fcに対しては、有効電力pに加え無効電力qの調整を指令する総電力増減指令M1が生成される。また、調整電力値の各電気設備への割り当ての際は、予め定められた所定の電気設備の順番において、それぞれの電気設備の調整電力値が、後述する調整可能容量内となるように割り当てられる。」 「【0056】 各電気設備の調整可能容量の求め方について説明する。それぞれの電気設備において増減可能な設備電力の範囲である電力調整可能範囲Iが予め設備群制御指令部3によって管理され、この電力調整可能範囲Iの上限値又は下限値と現在の設備電力との差分を電気設備の調整可能容量として求めている。 まず、電気設備が監視設備F1である場合の調整可能容量について説明する。電力供給設備Faについては、図3に示すように電力調整可能範囲Iをあらかじめ設定し、現在の供給電力とあらかじめ設定した電力調整可能範囲Iとを比較して、現在の調整可能容量を求めることができる。つまり、図3では、計測部F1cから監視部3fに入力される計測値N3による供給電力の履歴が太実線で示されているが、時刻tにおける供給電力値から電力調整可能範囲Iの上限値との電力値の差が、時刻tにおける電力増加調整可能容量G1であり、一方で、その発電電力から電力調整可能範囲Iの下限値との電力値の差が、時刻tにおける電力減少調整可能容量G2となる。ここで、あらかじめ設定した電力調整可能範囲Iとは電気設備において発電電力または消費電力の増減が可能な範囲であり、例えば、監視設備F1がコージェネレーションシステムによる電力供給設備Faの場合では、総合エネルギー効率が高効率となる条件において、ある程度の範囲で発電出力を増減させることができるが、その発電出力を増減できる範囲を電力調整可能範囲Iとして設定される。したがって、調整可能な電力である調整可能容量は、そのように設定された電力調整可能範囲Iと現在の発電電力値とから算出される。」 「【0060】 次に、無効電力調整設備Fcの調整可能な無効電力について説明する。無効電力には遅れ無効電力と進み無効電力が存在する。遅れ無効電力が設備群Sに供給されると設備群Sの電圧が上昇し、一方、進み無効電力が設備群Sに供給されると電圧が低下する。例えば、無効電力調整設備Fcが同期発電機である場合は、励磁電流を強めると電機子から遅れ電流が発電される遅相運転となり遅れ無効電力を供給することができる。一方、励磁電流を弱めると電機子から進み電流が発電される進相運転となり進み無効電力を供給することができる。そして、同期発電機の性能より、図7に示すように、出力可能限界曲線Kが規定されている。同期発電機を連続運転させる場合には、この出力可能限界曲線Kの範囲内で運転させることが必要である。 そして、図7のように現在の同期発電機の運転状態が、有効電力p1として運転されているとき、電力調整可能範囲Iは、有効電力p1における出力可能限界曲線Kの範囲内の進相無効電力および遅相無効電力の範囲として管理されている。そして、この状態において、無効電力q1として運転されているとき、無効電力による電力増加調整可能容量G1および電力減少調整可能容量G2を求めることができる。」 【図1】 [図:0001438286000001.jpg] 【図2】 [図:0001438286000002.jpg] 【図7】 [図:0001438286000003.jpg] 2 甲1発明の認定 前記1の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、記号「a」等は、分説を示すために付したものであり、分説した構成を、それぞれ「構成a」などという。 a 発電設備Rと電気設備としての電力供給設備Faおよび電力消費設備Fbとが接続された電力系統1と、電力供給設備Fa及び電力消費設備Fbの少なくとも一方を含んで構成された設備群Sを備えるとともに、設備群Sにおける総設備電力を制御自在な設備群制御指令部3を備えている電圧制御システムEであって、(【0034】) b 電力消費設備Fbは、電力を消費するエアコンであり、誘導性負荷としてのモーターを有するエアコンは無効電力調整設備Fcとして稼動して無効電力を調整することができ、(【0037】) c 電気設備の設置場所を表す設置場所情報に関係付けて電気設備が属する設備群Sが、設備群制御指令部3に記憶され、(【0041】) d 電力系統1のある場所において電圧が所定の電圧範囲外となる電圧異常が電力計測部5によって検出されると、その場所の周辺に位置する複数の電気設備を設置場所情報に基づいて選択されて、それらの電気設備を有する設備群Sが特定され、(【0041】) e 設備群制御指令部3は、その特定された設備群Sに総電力増減指令M1を生成して出力し、設備群Sの総設備電力を調整するものであり、(【0041】) f 設備群Sにおける複数の電気設備は、総電力増減指令M1に基づいて、電気設備の設備電力の増減を行うように構成され、(【0042】) g 設備群制御指令部3は、総調整可能容量として無効電力調整設備Fcにより調整可能な無効電力を管理し、総設備電力を調整する総電力増減指令M1によって、設備群Sの電気設備によって有効電力および無効電力における電力調整をすることができ、(【0043】) h 設備群制御指令部3の設備情報保存部3cには、無効電力調整設備Fcよって発生する無効電力などの設備情報が保存されており、これらの設備情報の入力は設備情報入力部3bから入力することができ、(【0050】) i 設備群Sに属する複数の電気設備の監視設備F1には、現在の電力(有効電力、無効電力)の電力供給状態および電力消費状態を常時計測する計測部F1cが設けられており、その計測部F1cにて計測された計測値N3に係る情報が設備群制御指令部3に送信されており、(【0039】) j 設備群制御指令部3の指令演算部3dにおいて、設備情報保存部3cに保存されている設置場所情報に基づいて、設備群Sを構成する複数の電気設備が選択され、電圧を調整するために必要となる調整電力値が演算され、その調整電力値、監視部3fに入力される計測値N3、設備情報保存部3cに保存されている設備情報とに基づいて、現在の電気設備の調整可能容量が求められ、その調整可能容量内で総電力増減指令M1を生成するものであり、(【0051】) k 調整電力値の算出は、電力計測部5で計測された計測電圧値を所定の電圧範囲に調整するために必要となる電圧増減値dvが求められ、この電圧増減値dvに基づいて、有効電力pの調整電力と無効電力qの調整電力値を算出し、このとき、設備群Sに供給可能な皮相電力sの値は、既存の送電設備等からの制約により一定値にする必要があり、(【0054】) l 各電気設備の調整可能容量の求め方は、それぞれの電気設備において増減可能な設備電力の範囲である電力調整可能範囲Iが予め設備群制御指令部3によって管理され、この電力調整可能範囲Iの上限値又は下限値と現在の設備電力との差分を電気設備の調整可能容量として求めるものである(【0056】) m 電圧制御システムE(【0034】) 3 本件発明2について(申立理由1、2) (1)対比 本件発明2と甲1発明の「設備群制御指令部3」とを対比する。 ア 発明特定事項2Aについて (ア)甲1発明の「電力系統1」(構成a)は、本件発明2の「配電系統」に相当する。 また、電力系統が電線で構成されることは明らかである。 (イ)甲1発明の「エアコン」が温度および/または湿度の調整が可能な空調システムに含まれること、及び、本件発明2の「温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステム」が空調システムに含まれることはいずれも明らかであるから、甲1発明の「エアコン」(構成b)と、本件発明2の「温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステム」とは、「温度および/または湿度の調整が可能な空調システム」である点で共通する。 また、甲1発明の「設備群制御指令部3」(構成e)は、「電力系統1のある場所において電圧が所定の電圧範囲外となる電圧異常が」「検出され」(構成d)た場合に、「電気設備の設備電力の増減を行う」(構成f)ことにより、電圧を「所定の電圧範囲に調整する」(構成k)ものであり、このとき「皮相電力sの値」は「一定値にする」(構成k)から、甲1発明の「電気設備」は、皮相電力を一定値にするように調整されているといえる。 そして、甲1発明の「エアコン」は、「電力消費設備Fb」であり、「無効電力調整設備Fc」でもある「電気設備」(構成a、b)であるから、甲1発明の「エアコン」は、「皮相電力」を調整するものといえる。 よって、前記(ア)を踏まえれば、甲1発明の「エアコン」と、本件発明2の「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステム」とは、「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能な空調システム」である点で共通する。 (ウ)甲1発明は、「調整電力値、監視部3fに入力される計測値N3、設備情報保存部3cに保存されている設備情報とに基づいて、現在の電気設備の調整可能容量が求められ」(構成j)るものであり、また、「設備群制御指令部3によって管理され」ている「電力調整可能範囲I」の「上限値又は下限値」と「現在の設備電力」「との差分を電気設備の調整可能容量として求める」(構成l)ものである。 ここで、「監視部3fに入力される計測値N3」(構成j)は「電気設備の」「現在の電力(有効電力、無効電力)の電力供給状態および電力消費状態を常時計測」(構成i)したものであるから、「現在の設備電力」(構成l)に対応すると解され、また、「電力調整可能範囲I」は「設備群制御指令部3によって管理」(構成l)されているものであるから、「設備情報保存部3cに保存されている設備情報」(構成j)は「電力調整可能範囲I」(構成l)に対応すると解される。 そして、「計測値N3」は、「電気設備」の「現在の電力(有効電力、無効電力)の電力供給状態および電力消費状態を常時計測」(構成i)したものであるから、当該電気設備の情報であり、「電気設備」に関する「システム情報」ということができ、甲1発明の「設備群制御指令部3」が備える「計測値N3」を入力する「監視部3f」(構成j)は、「電気設備」に関する「システム情報」を「取得する取得手段」ということができる。 また、「電力調整可能範囲I」は、「それぞれの電気設備において増減可能な設備電力の範囲」(構成l)であるから、当該電気設備の情報であり、「電気設備」に関する「システム情報」ということができ、甲1発明の「設備群制御指令部3」が備える「設備情報」を「入力」する「設備情報入力部3b」(構成h)は、「電気設備」に関する「システム情報」を「取得する取得手段」ということができる。 さらに、甲1発明の「設備群制御指令部3」は、「電気設備の設置場所を表す設置場所情報に関係付けて電気設備が属する設備群S」を「記憶」(構成c)しており、「設備情報保存部3cに保存されている設置場所情報に基づいて、設備群Sを構成する複数の電気設備が選択」(構成j)されるものであるから、「設置場所情報」は、当該電気設備の情報であり、「電気設備」に関する「システム情報」ということができる。そして、「設備情報保存部3c」に「保存され」る「設備情報」は、「設備情報入力部3bから入力することができ」(構成h)るから、「設備情報保存部3cに保存され」る「設置場所情報」(構成j)も「設備情報入力部3bから入力することができ」るものと解され、「設備情報入力部3b」(構成h)は、「電気設備」に関する「システム情報」を「取得する取得手段」ということができる。 (エ)前記(ア)~(ウ)より、本件発明2と甲1発明の「設備群制御指令部3」とは、「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能な空調システムに関するシステム情報を取得する取得手段」を備えている点で共通する。 イ 発明特定事項2Bについて (ア)甲1発明の「調整可能容量」(構成j、l)は、「調整可能容量内で総電力増減指令M1を生成する」(構成j)から、皮相電力を調整する(前記ア(イ))際の、「調整」することができる「容量」であり、本件発明2の「電線における皮相電力の調整の能力に関する指標」に相当する。 (イ)甲1発明の「調整可能容量」は、「電力調整可能範囲Iの上限値又は下限値と現在の設備電力との差分」(構成l)である。 ここで、「現在の設備電力」は、「現在の電力」の「電力供給状態および電力消費状態を常時計測」した「計測値N3」に対応すると解される(前記ア(ウ))から、調整可能容量は、空調システムが温度および/または湿度を調整している場合におけるものと解される。 (ウ)甲1発明は、「設備群制御指令部3」の「指令演算部3d」において、「現在の電気設備の調整可能容量」を「求め」(構成j)るものであり、「電力調整可能範囲I」、及び「現在の設備電力」は、前記ア(ウ)のとおり、「システム情報」ということができる。 そうすると、甲1発明は、「設備群制御指令部3」の「指令演算部3d」において、システム情報に基づいて「調整可能容量」を算出しているから、「設備群制御指令部3」の「指令演算部3d」は、本件発明2の「能力算出手段」に相当する。 (エ)前記(ア)~(ウ)及び前記アを踏まえると、本件発明2と甲1発明の「設備群制御指令部3」とは、「前記空調システムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段」を備えている点で共通する。 ウ 発明特定事項2Cについて 甲1発明の「設備群制御指令部3」は、「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段」を備えていない。 エ 発明特定事項2Dについて 甲1発明の「設備群制御指令部3」は、「指令演算部3d」において、「調整電力値が演算され」、「調整可能容量が求められ」、「総電力増減指令M1を生成する」(構成j)から、情報処理を行うシステムということができる。 よって、本件発明2と甲1発明の「設備群制御指令部3」とは、「情報処理システム」である点で一致する。 オ 一致点、相違点 前記ア~エより、本件発明2と甲1発明の「設備群制御指令部3」とは、 「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能な空調システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記空調システムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 を備える情報処理システム。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点2-1 「空調システム」について、本件発明2は、「ヒートポンプシステム」であるのに対して、甲1発明は、「エアコン」であり、「ヒートポンプシステム」とは特定されていない点 相違点2-2 本件発明2は、「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する余裕算出手段」を備えるのに対し、甲1発明の「設備群制御指令部3」は、当該手段を備えていない点 (2)本件発明2と甲1発明との相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2-2について検討する。 ア 本件発明2の甲1発明に対する新規性の判断について 相違点2-2は実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲1発明の「設備群制御指令部3」と同一ではない。 イ 本件発明2の甲1発明に対する進歩性の判断について 相違点2-2について、前記(1)オのとおり、甲1発明の「設備群制御指令部3」は、本件発明2の「余裕算出手段」に相当する構成を備えていない。 また、その他の証拠(甲2及び甲3)にも、本件発明2の「余裕算出手段」の構成について記載も示唆もない。 さらに、本件発明2の「余裕算出手段」の構成が本件特許の出願時に技術常識であったとも認められない。 よって、本件発明2は、当業者といえども、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項から容易になし得たものとはいえない。 (3)申立人の主張について 相違点2-2について、申立人は申立書において、「甲1発明の「これらの稼動状態を変化させることで有効電力を増減調整するとともに、無効電力を増減調整して設備群に供給する」との記載は、本件特許発明2の「前記電線における皮相電力を調整している場合における」に相当する。また、甲1発明には、調整可能容量を計算する設備群制御指令部3が記載されている(段落0056、0058、0060、0062、図1、2、5、7)。甲1発明の「調整可能容量」は、本件特許発明2の「調整の能力の余裕に関する指標」に相当し、甲1発明の「設備群制御指令部3」は本件特許発明2の「余裕算出手段」に相当する。」と主張している(申立書26頁)。 しかしながら、本件発明2は、「前記ヒートポンプシステムが前記電線における皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する」というものであるところ、甲1には、エアコンの稼働状態を変化させることで有効電力や無効電力を調整している場合における調整可能容量を算出することまでは記載も示唆もされていない。 したがって、申立書の主張は採用できない。 (4)本件発明2についての小括 前記(1)~(3)のとおり、本件発明2は、甲1発明の「設備群制御指令部3」と同一ではなく、かつ、当業者が甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 本件発明3及び12について(申立理由1、2) 本件発明3及び12は、本件発明2の発明特定事項を全て備え、さらに、別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明3及び12と甲1発明の「設備群制御指令部3」とを対比すると、少なくとも前記3(1)オに記載した相違点2-2において相違する。 そうすると、本件発明2と同様に、本件発明3及び12は、甲1発明の「設備群制御指令部3」と同一ではなく、かつ、本件発明3及び12は、当業者が甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 5 本件発明5について(申立理由2) 本件発明5は、本件発明2の発明特定事項を全て備え、さらに、別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明3及び12と甲1発明の「設備群制御指令部3」とを対比すると、少なくとも前記3(1)オに記載した相違点2-2において相違する。 そうすると、本件発明2と同様に、本件発明5は、当業者が甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 6 本件発明6について(申立理由2) 本件発明6と甲1発明の「設備群制御指令部3」とを対比する。 (1)対比 ア 発明特定事項6A、6B及び6Dについて 発明特定事項6A、6B及び6Dは、発明特定事項2A、2B及び2Dと同一であるから、発明特定事項6A、6B及び6Dについては、前記3(1)ア、イ及びエで示したのと同様である。 イ 発明特定事項6Cについて 甲1発明の「設備群制御指令部3」は、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」を備えていない。 ウ 一致点、相違点 前記ア及びイより、本件発明6と甲1発明の「設備群制御指令部3」とは、 「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能な空調システムに関するシステム情報を取得する取得手段と、 前記空調システムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する能力算出手段と、 を備える情報処理システム。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点6-1 「空調システム」について、本件発明6は、「ヒートポンプシステム」であるのに対して、甲1発明は、「エアコン」であり、「ヒートポンプシステム」とは特定されていない点 相違点6-2 本件発明6は、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」を備えるのに対し、甲1発明の「設備群制御指令部3」は、当該手段を備えていない点 (2)本件発明6の甲1発明に対する進歩性の判断 事案に鑑み、相違点6-2について検討する。 相違点6-2について、前記(1)イのとおり、甲1発明の「設備群制御指令部3」は、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」に相当する構成を備えていない。 また、その他の証拠(甲2及び甲3)にも、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」の構成について記載も示唆もない。 さらに、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」の構成が本件特許の出願時に技術常識であったとも認められない。 よって、本件発明6は、当業者といえども、甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項から容易になし得たものとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は申立書において、「甲第2号証の「充放電指令出力I/F257」が本件特許発明6の「出力手段」に相当する。蓄電池の充放電指令が皮相電力を調整することは明らかであるため、甲第2号証の「充放電指令」が本件特許発明6の「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報」に相当する。」と主張している(申立書29頁)。 しかしながら、甲2には、充放電指令が、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報」であるとは記載も示唆もされていない。したがって、甲2の「充放電指令」が本件発明6の「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報」に相当するものとは認められず、甲2の「充放電指令出力」も本件発明6の「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」に相当するものとは認められない。 また、申立人は申立書において、「甲第3号証の「乗算部(72a~72d)」が本件特許発明6の「出力手段」に相当する。甲第3号証の「乗算部(72b,72a)の乗算結果(Irs1,Its1)」が本件特許発明6の「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報」に相当する。」と主張している(申立書29頁~30頁)。 しかしながら、甲3には、乗算結果が、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす指標に関する情報」であるとは記載も示唆もされていない。したがって、甲3の「乗算結果」が本件発明6の「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報」に相当するものとは認められず、甲3の「乗算部」も本件発明6の「出力手段」に相当するものとは認められない。 したがって、申立書の主張は採用できない。 (4)本件発明6についての小括 前記(1)~(3)のとおり、本件発明6は、当業者が甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 7 本件発明7~9について(申立理由2) 本件発明7~9は、本件発明6の発明特定事項を全て備え、さらに、別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明7~9と甲1発明の「設備群制御指令部3」とを対比すると、少なくとも相違点6-2について相違する。 そうすると、本件発明6と同様に、本件発明7~9は、当業者が甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 8 本件発明13について(申立理由1、2) (1)対比 本件発明13と甲1発明の「エアコン」とを対比する。 ア 発明特定事項13Aについて 前記3(1)ア(ア)、(イ)で示したとおり、甲1発明の「エアコン」と、本件発明13の「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能なヒートポンプシステム」とは、「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能な空調システム」である点で共通する。 他方、甲1発明の「エアコン」は、「ヒートポンプシステム」とは特定されていない。 イ 発明特定事項13Bについて 甲1発明の「エアコン」は、「前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段」を備えていない。 ウ 発明特定事項13Cについて 甲1発明の「エアコン」は、「前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段」を備えていない。 エ 発明特定事項13Dについて 甲1発明の「エアコン」は、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」を備えていない。 オ 一致点、相違点 前記ア~エより、本件発明13と甲1発明の「エアコン」とは、 「配電系統の電線における皮相電力の調整に用いられ温度および/または湿度の調整が可能な空調システム」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点13-1 「空調システム」について、本件発明13は、「ヒートポンプシステム」であるのに対して、甲1発明は、「エアコン」であり、「ヒートポンプシステム」とは特定されていない点 相違点13-2 本件発明13は、「前記ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する取得手段」を備えるのに対し、甲1発明の「エアコン」は、当該手段を備えていない点 相違点13-3 本件発明13は、「前記ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合の前記電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する算出手段」を備えるのに対し、甲1発明の「エアコン」は、当該手段を備えていない点 相違点13-4 本件発明13は、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」を備えるのに対し、甲1発明の「エアコン」は、当該手段を備えていない点 (2)本件発明13と甲1発明との相違点 についての判断 事案に鑑み、相違点13-4について検討する。 ア 本件発明13の甲1発明に対する新規性の判断 相違点13-4は実質的な相違点であるから、本件発明13は、甲1発明の「エアコン」と同一ではない。 イ 本件発明13の甲1発明に対する進歩性の判断 前記(1)エに記載したとおり、甲1発明の「エアコン」は、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」に相当する構成を備えていない。 また、その他の証拠(甲2及び甲3)にも「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」の構成について記載も示唆もない。 さらに、「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する出力手段」の構成が本件特許の出願時に技術常識であったとも認められない。 よって、本件発明13は、当業者といえども、甲1発明の「エアコン」並びに甲2及び甲3に記載された事項から容易になし得たものとはいえない。 (3)本件発明13についての小括 前記(1)及び(2)のとおり、本件発明13は、当業者が甲1発明の「エアコン」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 9 申立理由1及び申立理由2についての小括 以上のとおりであるから、本件発明2、3及び12はいずれも甲1発明の「設備群制御指令部3」と同一ではなく、かつ、本件発明2~9、12は当業者が甲1発明の「設備群制御指令部3」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明13は甲1発明の「エアコン」と同一ではなく、かつ、本件発明13は当業者が甲1発明の「エアコン」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、申立理由1及び申立理由2には理由がない。 第7 申立理由3についての当審の判断 「皮相電力の調整」に関して、発明の詳細な説明には以下の記載がある。 「【0021】 調整部の一例としてのAF212は、HPS21において電力変換装置211が受ける電力が通る経路に電流を供給することで、この経路における力率の改善や高調波の低減を図る。HPS21において電力変換装置211が受ける電力が通る経路を、以下では、受電経路と称することがある。 【0022】 また、本実施形態では、電力変換装置211およびAF212は、何れも、電力系統10に電流を供給する。電力変換装置211およびAF212は、HPS21の動作を制御するとともに、電力系統10における電線に電流を供給して、この電線における皮相電力に関する上記のパラメータを調整する。言い換えると、本実施形態の電力変換装置211およびAF212は、配電系統の電線における皮相電力を調整する。 【0023】 電線における皮相電力に関するパラメータのHPS21による調整の手法の一例を説明する。電線に高調波電流が生じている場合において、HPS21の電力変換装置211やAF212が、この高調波電流を打ち消す位相の電流を電線に供給することにより、電線における高調波電流を低減する。 電線における皮相電力に関するパラメータのHPS21による調整の手法の他の一例を説明する。電線に無効電力が生じている場合において、HPS21の電力変換装置211やAF212が電線に電流を供給することにより、電線における無効電力を低減する。・・・後略・・・」 以上のとおり、発明の詳細な説明には、電力変換装置やアクティブフィルタ(AF)の動作を制御することで電力系統に電流を供給し、これにより皮相電力の調整を行うことが記載されており、発明の詳細な説明の記載を見た当業者であれば、少なくとも、皮相電力の調整のために電力変換装置やアクティブフィルタ(AF)の動作を制御することは実施できるものと解され、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2~9、12及び13を実施できる程度に十分かつ明確に記載されているものと認められる。 よって、申立理由3には理由がない。 第8 申立理由4についての当審の判断 (1)本件発明2~5、12について 皮相電力の調整に関して、本件発明2は、「ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する」こと、「皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する」こと及び「皮相電力を調整している場合における当該調整の能力の余裕に関する指標を算出する」ことが、その記載から明確に理解できるものであり、皮相電力をどのように調整するかは前記理解を左右するものではない。 したがって、本件発明2は明確である。 本件発明3~5、12についても同様である。 (2)本件発明6~9について、 皮相電力の調整に関して、本件発明6は、「ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する」こと、「皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する」こと及び「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する」ことが、その記載から明確に理解できるものであり、皮相電力をどのように調整するかは前記理解を左右するものではない。 したがって、本件発明6は明確である。 本件発明7~9についても同様である。 (3)本件発明13について、 皮相電力の調整に関して、本件発明13は、「ヒートポンプシステムに関するシステム情報を取得する」こと、「皮相電力の調整の能力に関する指標を、前記システム情報に基づき算出する」こと及び「皮相電力の調整について定められた条件を満たす前記指標に関する情報を出力する」ことが、その記載から明確に理解できるものであり、皮相電力をどのように調整するかは前記理解を左右するものではない。 したがって、本件発明13は明確である。 (4)申立理由4についての小括 以上のとおりであるから、本件発明2~9、12及び13は明確である。 よって、申立理由4には理由がない。 第9 申立理由5についての当審の判断 1 申立人意見書における主張の採否 申立人は、申立人意見書において、概略、以下の主張をしている。 「イ サポート違反 ・・・中略・・・ 訂正後の本件特許の独立請求項2,6,13には「能力算出手段」が含まれており、特許権者は「能力算出手段」により「皮相電力の調整を実現する」という課題を解決することができると述べています。しかし、このような特許権者の主張は不当であると考えます。「能力算出手段」により課題を解決することができない理由を以下に詳細に説明します。 ・・・中略・・・ 以上説明したように、明細書の記載を参照すると「能力算出手段」は電流などの単一パラメータを算出しますが、そのような単一パラメータでは有効電力と無効電力を個別に調整することはできないため、皮相電力の調整を実現することができません。従って、本件発明は、皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現するという課題を解決することができません。」 (申立人意見書3頁~6頁) すなわち、申立理由5は、本件発明が、皮相電力を調整する手段を有していないため、皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現するという課題を解決することができない、というものであったのに対して、申立人意見書における主張は、本件発明の「能力算出手段」は、有効電力と無効電力を個別に調整することができないため、皮相電力の調整を実現できず、皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現するという課題を解決することができない、というものであるから、意見書における主張は、実質的に新たな理由を提示するものである。 そして、意見書における主張は、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由でもなければ、適切な取消理由を構成することが一見して明らかともいえないので、意見書における主張は採用しない。 2 申立理由5についての判断 本件特許の課題は、段落【0004】によれば、皮相電力の調整を実現することである。 そして、発明の詳細な説明には以下の記載がある。 「【0042】 能力算出手段の一例としての可能量算出部305は、HPS21の将来の調整可能量を算出する。」 「【0074】 以上の通り、本実施形態では、可能量算出部305は、HPS21が温度や湿度を調整している場合の電線における皮相電力の調整の能力に関する指標を、システム情報に基づき算出する。この指標は、例えば、調整可能量である。 この場合、指示サーバ40は、可能量算出部305に算出された調整可能量に基づいて、電力系統10の電線における皮相電力を調整するためにHPS21に供給させる電流値を決定することができる。また、HPS21は、指示サーバ40の指示にしたがって、指示サーバ40に決定された電流値を電線に供給する。そのため、HPS21が温度や湿度を調整している場合において、電力系統10の電線における皮相電力のHPS21による調整を実現することができる。」 以上のとおり、発明の詳細な説明には、能力算出手段の一例である可能量算出部において、電線における皮相電力の調整の能力に関する指標である調整可能量を算出し、前記調整可能量によって、皮相電力の調整を実現することが記載されている。 つまり、本件発明においては、「能力算出手段」によって算出された指標に基づいて「皮相電力の調整を実現する」という課題を解決することができるものである。 よって、申立理由5には理由がない。 第10 取消理由通知における取消理由 取消理由通知における取消理由の概要は、以下のとおりである。 〈取消理由1〉(進歩性) 請求項1、12及び13に係る発明は、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、12及び13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 〈取消理由2〉(実施可能要件) 本件特許の請求項10、11に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項10、11に係る特許は、同法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 〈取消理由3〉(サポート要件) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、特許請求の範囲の記載が以下の理由で特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件特許は、ヒートポンプシステムが温度および/または湿度を調整している場合において、配電系統の電線における皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現することを目的としている(【0004】)。 しかしながら、本件特許の請求項1~13に係る発明は、皮相電力を調整する手段を有していないため、皮相電力のヒートポンプシステムによる調整を実現するという課題を解決することができない。 よって、本件特許の請求項1~13に係る発明は発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。 第11 取消理由についての当審の判断 (1)取消理由1(進歩性)について 本件訂正により、本件特許の請求項1に係る発明は削除された。 本件発明12、13については、それぞれ前記第6、4及び8に記載した理由で、当業者といえども、甲1発明の「設備群制御指令部3」又は「エアコン」並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであるから、取消理由1には理由がない。 (2)取消理由2(実施可能要件)について 本件訂正により、本件特許の請求項10、11に係る発明は削除された。 よって、取消理由2には理由がない。 (3)取消理由3(サポート要件)について 取消理由3は、申立理由5と同じ理由であり、申立理由5については前記第9で検討したとおり理由がないから、取消理由3には理由がない。 第12 むすび 前記第2のとおり、本件訂正を認める。 また、前記第6~第9及び第11によれば、申立書に記載された申立理由及び取消理由通知に記載された取消理由によっては、本件発明2~9、12及び13に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件発明2~9、12及び13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項1、10及び11に係る特許は、前記第2のとおり削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、10及び11に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700706

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