特許異議申立
2024-700002
冷凍サイクル装置
- 審判番号
- 2024-700002
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-524759
- 登録番号
- 7336595
- 請求日
- 2024年01月04日
- 審決日
- 2025年08月13日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【権利者】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
- 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 竹下 和志
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1652.121-YAA(F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7336595号発明「冷凍サイクル装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7336595号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6、10〕、7、〔8、9〕について訂正することを認める。
特許第7336595号の請求項1、2、5、6、10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7336595号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年5月20日に出願され、令和5年8月23日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 1月 4日 : 特許異議申立人 角田 朗(以下、単に「申立人」という。)による請求項1、2、5、6、10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 2月 5日 : 申立人による手続補正書(方式)の提出
令和6年 5月17日付け: 取消理由通知
令和6年 8月19日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 9月25日 : 申立人による意見書の提出
令和6年10月24日付け: 訂正拒絶理由通知
令和6年11月29日 : 特許権者による手続補正書の提出
令和7年 1月30日付け: 取消理由通知(決定の予告)
令和7年 5月 7日 : 特許権者による意見書の提出
令和7年 6月 9日付け: 申立人に対する審尋
令和7年 6月24日 : 申立人による回答書の提出
第2 訂正の適否
1 本件訂正の補正
令和6年11月29日に提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、令和6年8月19日に提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲について、特許請求の範囲の請求項3に「実行する記載の冷凍サイクル装置」と記載されているのを、「実行する冷凍サイクル装置」と変更するものである。
この手続補正は、訂正請求書の訂正事項と訂正特許請求の範囲の不整合を正す補正であって、補正の前後で請求の基礎である訂正請求を申し立てている事項の同一性や範囲を変更するものではないから、請求の要旨を変更する補正ではない。
したがって、本件補正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合する。
よって、本件補正を認める。
2 本件訂正の内容
本件補正により補正された令和6年8月19日に提出の訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、本件補正により補正された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~10について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものである。
本件訂正は、特許請求の範囲の請求項1~10を、訂正前に次の(2)のとおりであったものを、訂正後に次の(1)のとおり訂正するものであり、その訂正の内容は、次の(3)の訂正事項のとおりのものである(下線は、訂正箇所を示すために、当審で付したものである。)。
(1)訂正後の請求項1~10
「【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路(23)と、前記冷媒回路(23)から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサ(27)と、を備え、
前記漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備えている冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷媒回路(23)を制御する制御装置(29,39)をさらに備え、
前記制御装置(29,39)は、前記回収モードを実行する、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
冷媒を循環させる冷媒回路(23)と、前記冷媒回路(23)から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサ(27)と、を備え、
前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備え、
前記冷媒回路(23)を制御する制御装置(29,39)をさらに備え、
前記制御装置(29,39)は、前記回収モードを実行し、
前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)における冷媒の流れを停止させる停止モードを、運転モードとしてさらに備え、
前記制御装置(29,39)は、前記停止モードを実行する冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御装置(29,39)が、前記回収モード及び前記停止モードの中から前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識した場合に実行する運転モードの選択を受け付ける、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒回路(23)が、熱源熱交換器(31)、利用熱交換器(25)、圧縮機(30)、前記利用熱交換器(25)の液側端と前記熱源熱交換器(31)の液側端とを接続する液冷媒配管(40L)、前記利用熱交換器(25)のガス側端と前記圧縮機(30)の吸入管とを接続する第1ガス冷媒配管(40Ga)、前記熱源熱交換器(31)のガス側端と前記圧縮機(30)の吐出管とを接続する第2ガス冷媒配管(40Gb)、前記液冷媒配管(40L)に設けられた液制御弁(35)、及び、前記第1ガス冷媒配管(40Ga)に設けられたガス制御弁(38)を含み、
前記制御装置(29,39)は、前記回収モードによる運転開始の際に前記液制御弁(35)を閉じかつ前記圧縮機(30)を作動させ、前記回収モードによる運転終了の際に前記ガス制御弁(38)を閉じる、請求項3又は4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記異常が、前記漏洩センサ(27)の故障又は前記漏洩センサ(27)の寿命の到達である、請求項3又は4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
冷媒を循環させる冷媒回路(23)と、前記冷媒回路(23)から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサ(27)と、を備え、
前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備え、
前記異常が、前記漏洩センサ(27)の故障又は前記漏洩センサ(27)の寿命の到達であり、
報知部(43,44,45)をさらに備え、
前記冷凍サイクル装置は、前記漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで前記漏洩センサ(27)の寿命を認識し、
前記報知部(43,44,45)は、前記通電積算時間が前記第1閾値を超える場合と、
前記通電積算時間が前記第1閾値よりも短い所定の第2閾値を超える場合とで、互いに異なる報知を行う冷凍サイクル装置。
【請求項8】
冷媒を循環させる冷媒回路(23)と、前記冷媒回路(23)から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサ(27)と、を備え、
前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備え、
前記冷媒回路(23)によって冷媒が循環される室外機(22)と、
前記冷媒回路(23)によって冷媒が循環される第1室内機(21a)及び第2室内機(21b)と、を備え、
前記第1室内機(21a)が、第1漏洩センサ(27)と第1報知部(43,44,45)とを有し、
前記第2室内機(21b)が、第2漏洩センサ(27)と第2報知部(43,44,45)とを有し、
前記第1漏洩センサ(27)に異常が発生し、前記第2漏洩センサ(27)に異常が発生していない場合、前記第1報知部(43,44,45)と、前記第2報知部(43,44,45)とが互いに異なる報知を行う、冷凍サイクル装置。
【請求項9】
第1報知部(43,44,45)と、第2報知部(43,44,45)とは、光、音、及び表示を含む複数の手段のうち、互いに異なる手段による報知、複数の手段の互いに異なる組み合わせによる報知、又は、同一の手段の互いに異なる報知方法による報知を行う、請求項8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記制御装置(29,39)は、前記冷媒回路(23)を冷媒が循環している状態で前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識した場合に、前記冷媒の流れを継続させたまま前記回収モードを実行する、請求項2~5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。」
(2)訂正前の請求項1~10
「【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路(23)と、前記冷媒回路(23)から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサ(27)と、を備え、
前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備えている冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷媒回路(23)を制御する制御装置(29,39)をさらに備え、
前記制御装置(29,39)は、前記回収モードを実行する、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)における冷媒の流れを停止させる停止モードを、運転モードとしてさらに備え、
前記制御装置(29,39)は、前記停止モードを実行する、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御装置(29,39)が、前記回収モード及び前記停止モードの中から前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識した場合に実行する運転モードの選択を受け付ける、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒回路(23)が、熱源熱交換器(31)、利用熱交換器(25)、圧縮機(30)、前記利用熱交換器(25)の液側端と前記熱源熱交換器(31)の液側端とを接続する液冷媒配管(40L)、前記利用熱交換器(25)のガス側端と前記圧縮機(30)の吸入管とを接続する第1ガス冷媒配管(40Ga)、前記熱源熱交換器(31)のガス側端と前記圧縮機(30)の吐出管とを接続する第2ガス冷媒配管(40Gb)、前記液冷媒配管(40L)に設けられた液制御弁(35)、及び、前記第1ガス冷媒配管(40Ga)に設けられたガス制御弁(38)を含み、
前記制御装置(29,39)は、前記回収モードによる運転開始の際に前記液制御弁(35)を閉じかつ前記圧縮機(30)を作動させ、前記回収モードによる運転終了の際に前記ガス制御弁(38)を閉じる、請求項2~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記異常が、前記漏洩センサ(27)の故障又は前記漏洩センサ(27)の寿命の到達である、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
報知部(43,44,45)をさらに備え、
前記冷凍サイクル装置は、前記漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで前記漏洩センサ(27)の寿命を認識し、
前記報知部(43,44,45)は、前記通電積算時間が前記第1閾値を超える場合と、前記通電積算時間が前記第1閾値よりも短い所定の第2閾値を超える場合とで、互いに異なる報知を行う、請求項6のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記冷媒回路(23)によって冷媒が循環される室外機(22)と、
前記冷媒回路(23)によって冷媒が循環される第1室内機(21a)及び第2室内機(21b)と、を備え、
前記第1室内機(21a)が、第1漏洩センサ(27)と第1報知部(43,44,45)とを有し、
前記第2室内機(21b)が、第2漏洩センサ(27)と第2報知部(43,44,45)とを有し、
前記第1漏洩センサ(27)に異常が発生し、前記第2漏洩センサ(27)に異常が発生していない場合、前記第1報知部(43,44,45)と、前記第2報知部(43,44,45)とが互いに異なる報知を行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
第1報知部(43,44,45)と、第2報知部(43,44,45)とは、光、音、及び表示を含む複数の手段のうち、互いに異なる手段による報知、複数の手段の互いに異なる組み合わせによる報知、又は、同一の手段の互いに異なる報知方法による報知を行う、請求項8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記制御装置(29,39)は、前記冷媒回路(23)を冷媒が循環している状態で前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識した場合に、前記冷媒の流れを継続させたまま前記回収モードを実行する、請求項2~5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。」
(3)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モード」と記載されているのを、「前記漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モード」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、10も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を独立形式に改める訂正を行う。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項2~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。」と記載されているのを「請求項3又は4に記載の冷凍サイクル装置。」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。」と記載されているのを「請求項3又は4」に記載の冷凍サイクル装置。」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7のうち、請求項1及び請求項6を引用するものについて、独立形式に改める訂正を行う。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改める訂正を行う。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~10〕についてされたものである。
3 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「異常」であることについて、「漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで」認識されることに特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、発明特定事項を直列的に追加するものであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)における段落【0040】、【0044】、【0047】の記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項3を独立形式請求項へ改めたものであって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が「請求項2~4のいずれか1項」を引用する記載であったものを、「請求項3又は4」を引用する記載に訂正するものであって、択一的に引用する請求項の数が減少するから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項3は、択一的に引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項6が「請求項1~5のいずれか1項」を引用する記載であったものを、「請求項3又は4」を引用する記載に訂正するものであって択一的に引用する請求項の数が減少するから「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正事項4は、択一的に引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項7が請求項6を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用する請求項6を更に引用する請求項7について請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項5は、訂正前の請求項7を独立形式請求項へ改めたものであって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項8が「請求項1~7のいずれか1項」を引用する記載であったものを、請求項2~7を引用しないものとした上で、訂正前の請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
訂正事項6は、訂正前の請求項8を独立形式請求項へ改めたものであって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(7)独立特許要件について
一群の請求項1~10に対する訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものであるが、訂正前の請求項1、2、5、6及び10に係る特許に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件(独立特許要件)は、本件訂正後の請求項1、2、5、6及び10に係る発明に課されない。
また、訂正前の請求項3~4及び7~9に係る特許に対しては、特許異議の申立てがされていないが、請求項3に係る訂正事項2、請求項7に係る訂正事項5、請求項8に係る訂正事項6は、いずれも請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、独立特許要件は、本件訂正後の請求項3~4及び7~9に係る発明に課されない。
(8)別の訂正単位とする求めについて
本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~10〕についてされたものであるが、訂正後の請求項3~9について訂正が認められる場合には、一群の請求項〔1~10〕と別の訂正単位とする求めがなされている。
しかしながら、請求項10は請求項2~5のいずれか1項を引用しており、訂正事項1~訂正事項4のいずれも訂正後の請求項10に共通する点で区分けして扱うことはできず、訂正事項1~訂正事項4をそれぞれ別の訂正単位とする求めについては認められない。
一方、訂正事項5に係る訂正後の請求項7は、訂正によって、独立形式請求項に改められたものであるから、訂正事項1~訂正事項4とは別の訂正単位とすることを認める。
また、訂正事項6に係る訂正後の請求項8は、訂正によって、独立形式請求項に改められたものであり、訂正後の請求項9は、訂正後の請求項8を引用するものであるから、訂正事項1~訂正事項4とは別の訂正単位とすることを認める。
(9)小括
以上により、訂正事項1~6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6,10〕、7、〔8,9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、上記第2の2(1)に示した「訂正後の請求項1~10」により特定されるものと認められる。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審が令和7年1月30日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由(進歩性)
請求項1、2、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1、2、4に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、2、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献等一覧
1.特開平2-140574号公報(甲第1号証)
2.”Refrigerating systems and heat pumps - Safety and environmental requirements Part3: Installation site and personal protection”, BSI Standerds Limited(甲第2号証)
4.特許第6143977号公報(申立人が、令和6年9月25日に提出した意見書で添付した参考資料)
第5 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項及び図示事項(下線は、当審において付与した。以下同様。)。
(ア)「本発明は室外ユニットと室内ユニットとを配管接続した分離型の空気調和装置に関するものである。」(第1ページ右欄第9~11行)
(イ)「本発明の一実施例を第1図に基づいて説明すると、(1)は圧縮機(2)と四方弁(3)と室外熱交換器(4)と受液器(5)とを有する室外ユニット、(6)は室内熱交換器(7)と電気式膨張弁等の冷媒減圧器(8)とを有する室内ユニットで、この室内熱交換器(7)とユニット間配管(9)を介して接続されたガス管(10)に第1の弁(11)を、他のユニット間配管(12)を介して接続された液管(13)に第2の弁(14)を設けている。
(15)は室内ユニット(6)に設けられ、この室内ユニットの冷媒管から居住室内へ冷媒ガスが漏れると冷媒ガスを構成するハロゲン元素を検出するかもしくは酸欠を検出する冷媒漏れ検出手段、(16)はこの検出手段と連動して警報を発する警報器、(17)は室外ユニット(1)に設けられ、検出手段(15)からの信号で第2の弁(14)を閉塞させてポンプダウン運転させた後に第1の弁(11)を閉塞させる制御手段である。
本発明装置は以上の如く構成されており、冷房運転時は四方弁(3)を実線状態に設定すると共に第1の弁(11)と第2の弁(14)とを開くことにより圧縮機(2)から吐出された冷媒は四方弁(3)-室外熱交換器(4)-受液器(5)-第2の弁(14)-ユニット間配管(12)-冷媒減圧器(8)-室内熱交換器(7)-ユニット間配管(9)-第1の弁(11)-四方弁(3)-圧縮機(2)と循環し、室外熱交換器(4)が凝縮器として、室内熱交換器(7)が蒸発器として作用して居住室内が冷房される。
又、暖房運転時は四方弁(3)を破線状態に設定すると共に第1の弁(11)と第2の弁(14)とを開くことにより圧縮機(2)から吐出された冷媒は四方弁(3)-第1の弁(11)-ユニット間配管(9)-室内熱交換器(7)-冷媒減圧器(8)-ユニット間配管(12)-第2の弁(14)-受液器(5)-室外熱交換器(4)-四方弁(3)-圧縮機(2)と循環し、室内熱交換器(7)が凝縮器として、室外熱交換器(4)が蒸発器として作用して居住室内が暖房される。
かかる冷暖房運転中に室内ユニット(6)内の室内熱交換器(7)や冷媒減圧器(8)の冷媒管接続箇所等から冷媒ガスが漏れてこの室内ユニット(5a)が設置されている室内空間に放出されるとこれを冷媒漏れ検出手段(15)が検出して警報器(16)が作動し冷媒漏れを報知すると共に、この検出手段(15)からの信号を入力して制御手段(17)から発せられる信号により、冷房運転時には第2の弁(14)が閉じ、暖房運転時には四方弁(3)が実線状態に切り換わると共に第2の弁(14)が閉じ、ユニット間配管(12)と室内ユニット(6)内の配管とユニット間配管(9)内の冷媒を室外ユニット(1)内に回収して室外熱交換器(4)及び受液器(5)内に溜め込むポンプダウン運転が行なわれ、この冷媒回収が終了すると圧縮機(2)が停止すると共に第1の弁(11)が閉じて冷媒が室外ユニット(1)内に封じ込められる。この為、室内ユニット(6)が設置された居住室内へ漏出する冷媒量は僅かであり、人命に危険を及ぼす虞れはない。」(第2ページ右上欄第16行~第3ページ左上欄第11行)
(ウ)「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明の一実施例を示す空気調和装置の冷媒回路図、第2図は本発明の他実施例を示す空気調和装置の冷媒回路図である。」(第3ページ左下欄第10~13行)
(エ)「
[図:0001428983000001.jpg]
」
(第1図)
イ 上記アから認められる事項
(ア)記載事項(イ)における冷房運転時及び暖房運転時に関する記載から、引用文献1には、四方弁(3)、室外熱交換器(4)、受液器(5)、液管(13)、第2の弁(14)、ユニット間配管(12)、冷媒減圧器(8)、室内熱交換器(7)、ユニット間配管(9)、第1の弁(11)及びガス管(10)を含み、圧縮機(2)から吐出される冷媒を循環させる構成が認められる。
そして、この構成は、記載事項(ウ)並びに図示事項(エ)から、冷媒回路であるといえる。
そうすると、引用文献1に記載された空気調和装置は、圧縮機(2)から吐出される冷媒を循環させる冷媒回路を備えたものといえる。
(イ)記載事項(イ)における制御手段(17)に関する記載から、制御手段(17)は第1の弁(11)及び第2の弁(14)を制御しつつ、ポンプダウン運転を行っているから、引用文献1には、空気調和装置が、上記(ア)で認定した冷媒回路を制御する制御手段(17)を備えるものといえる。
(ウ)記載事項(イ)における制御手段(17)に関する記載から、冷媒ガスが漏れて、これを冷媒漏れ検出手段(15)が検出すると、制御手段(17)の制御により、ユニット間配管(12)と室内ユニット(6)内の配管とユニット間配管(9)内の冷媒を室外ユニット(1)内に回収して室外熱交換器(4)及び受液器(5)内に溜め込むポンプダウン運転が行なわれるものといえる。
ウ 引用発明
上記アの記載事項及び図示事項並びに上記イの認定事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明〕
「圧縮機(2)から吐出される冷媒を循環させる冷媒回路と、室内ユニット(6)に設けられ、この室内ユニットの冷媒管から居住室内へ冷媒ガスが漏れると冷媒ガスを構成するハロゲン元素を検出するかもしくは酸欠を検出する冷媒漏れ検出手段(15)と、冷媒回路を制御する制御手段(17)とを備え、
冷媒ガスが漏れてこれを冷媒漏れ検出手段(15)が検出すると、制御手段(17)の制御により、ユニット間配管(12)と室内ユニット(6)内の配管とユニット間配管(9)内の冷媒を室外ユニット(1)内に回収して室外熱交換器(4)及び受液器(5)内に溜め込むポンプダウン運転が行なわれる空気調和装置。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の公知日について
引用文献2の第3ページ第17~18行には、「This British Standard was published under the authority of the Standards Policy and Strategy Committee on 31 December 2016.」(当審訳:「この英国規格は、標準政策戦略委員会の権限の下で2016年12月31日に発行された。」)と記載されていることから、本件特許出願前の2016年12月31日に頒布されたものと認められる。
イ 引用文献2の記載事項及び図示事項
(ア)「EN 378 consists of the following parts under the general title “Refrigerating systems and heat pumps - Safety and environmental requirements”:
- Part 1: Basic requirements, definitions, classification and selection criteria;
- Part 2: Design, construction, testing, marking and documentation;
- Part 3: Installation site and personal protection;
- Part 4: Operation, maintenance, repair and recovery」
(当審訳:「EN378の一般タイトル「冷凍システム及びヒートポンプ-安全及び環境要件」は、次の4つのパートから構成される:
- パート1:基本要件、定義、分類、及び選択基準
- パート2:配置、構造、検査、マーキング、及び文書化
- パート3:設置場所、及び個人保護
- パート4:運転、メンテナンス、修理、及び復旧」(第9ページ(当審注:右下に「5」と表記のあるページ)第11~16行)
(イ)「9 Detectors
(当審注:中略)
9.3 Type and performance of detectors
9.3.1 General
Any suitable detector may be used and shall give an electrical signal at the pre-set value of the refrigerant or oxygen concentration (the pre-set value) that activates the shut-off valves, the alarm system, the mechanical ventilation or other emergency controls.
Detectors shall be continuously monitored for functioning. In the case of a detector failure, the emergency sequence should be activated as if refrigerant had been detected. 」
(当審訳:「9 検出器
(当審注:中略)
9.3 検出器の種類及び性能
9.3.1 一般
任意の適切な検出器を使用することができ、冷媒又は酸素濃度の事前設定値で電気信号を発して、遮断弁、警報システム、換気装置、又はその他の緊急制御を作動させなければならない。
検出器は機能しているか継続的に監視されなければならない。検出器故障(a detector failure)の場合は、冷媒が検出されたかのように緊急シーケンスを作動させる必要がある。」(第23ページ(当審注:右下に「19」と表記のあるページ)第1~22行)
ウ 引用文献2に記載された技術的事項
上記イから、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献2に記載された技術的事項〕
「冷凍システムにおける安全に関して、冷媒を検出する検出器については、事前設定値で電気信号を発して、遮断弁、警報システム、換気装置、又はその他の緊急制御を作動させるのみならず、検出器自体が機能しているか継続的に監視されなければならず、検出器故障(a detector failure)の場合は、冷媒が検出されたかのように緊急シーケンスを作動させる必要があること。」
(3)引用文献4
ア 引用文献4の記載事項及び図示事項
(ア)「【0011】
図1に示すように、空気調和機は、冷媒を循環させる冷媒回路40を有している。冷媒回路40は、圧縮機3、冷媒流路切替装置4、熱源側熱交換器5(例えば、室外熱交換器)、減圧装置6、及び負荷側熱交換器7(例えば、室内熱交換器)が冷媒配管を介して順次環状に接続された構成を有している。また、空気調和機は、熱源ユニットとして、例えば室外に設置される室外機2を有している。さらに、空気調和機は、負荷ユニットとして、例えば室内に設置される室内機1(熱交換器ユニットの一例)を有している。室内機1と室外機2との間は、冷媒配管の一部である延長配管10a、10bを介して接続されている。」
(イ)「【0019】
また、室内機1には、室内から吸い込まれる室内空気の温度を検出する吸込空気温度センサ91、負荷側熱交換器7の冷房運転時の入口部(暖房運転時の出口部)の冷媒温度を検出する熱交換器入口温度センサ92、負荷側熱交換器7の二相部の冷媒温度(蒸発温度又は凝縮温度)を検出する熱交換器温度センサ93等が設けられている。さらに、室内機1には、後述する冷媒検知手段99(例えば、半導体式ガスセンサ)が設けられている。これらのセンサ類は、室内機1又は空気調和機全体を制御する制御部30に検出信号を出力するようになっている。」
(ウ)「【0032】
空間115aの下方寄りの位置には、冷媒検知手段99が設けられている。冷媒検知手段99としては、半導体式ガスセンサ又は熱線型半導体式ガスセンサ等の通電式ガスセンサを含む通電式の冷媒検知手段が用いられる。冷媒検知手段99は、例えば、当該冷媒検知手段99の周囲の空気中における冷媒濃度を検知し、検知信号を制御部30に出力する。制御部30では、冷媒検知手段99からの検知信号に基づき、冷媒の漏洩の有無が判定される。」
(エ)「【0043】
上記の状態のうち冷媒検知手段99の寿命状態は、冷媒検知手段99への通電時間に基づき、冷媒検知手段99が寿命に達したと判断される状態である。冷媒検知手段99の寿命状態は、冷媒の漏洩が生じたときの漏洩の検知に遅れが生じる可能性がある状態である。このため、本実施の形態では、冷媒検知手段99の寿命状態は、正常状態ではなく異常状態の一種として扱われる。正常状態から冷媒検知手段99の寿命状態への状態遷移の判断に用いられる通電時間の閾値H1は、予め制御部30のROMに記憶されている。」
(オ)「【0048】
上記のような正常状態(例えば、正常状態A)において、冷媒検知手段99への積算通電時間が閾値H1以上になった場合には、制御部30は、例えば冷媒検知手段99が寿命に達したと判断し、空気調和機の状態を冷媒検知手段99の寿命状態に遷移させる。」
イ 引用文献4に記載された技術的事項
上記アから、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用文献4に記載された技術的事項〕
「空気調和機が有する室内機1に設けられた冷媒検知手段99からの検知信号に基づき、冷媒の漏洩の有無を判定するとともに、冷媒検知手段99への積算通電時間が閾値H1以上になった場合には、制御部30は、例えば冷媒検知手段99が冷媒の漏洩が生じたときの漏洩の検知に遅れが生じる可能性がある状態である寿命に達したと判断し、空気調和機の状態を正常状態ではなく異常状態の一種として扱うこと。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、引用発明とを対比する。
引用発明の「冷媒」及び「冷媒回路」は、本件発明1の「冷媒」及び「冷媒回路(23)」に相当する。
よって、引用発明の「圧縮機(2)から吐出される冷媒を循環させる冷媒回路」は、本件発明1の「冷媒を循環させる冷媒回路(23)」に相当する。
また、引用発明の「室内ユニット(6)に設けられ、この室内ユニットの冷媒管から居住室内へ冷媒ガスが漏れると冷媒ガスを構成するハロゲン元素を検出するかもしくは酸欠を検出する冷媒漏れ検出手段(15)」は、引用文献1の図示事項(エ)から「室内ユニットの冷媒管」が「冷媒回路」の一部を構成するといえるから、本件発明1の「前記冷媒回路(23)から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサ(27)」に相当する。
また、引用発明の「ユニット間配管(12)と室内ユニット(6)内の配管とユニット間配管(9)内の冷媒を室外ユニット(1)内に回収して室外熱交換器(4)及び受液器(5)内に溜め込む」こと及び「ポンプダウン運転が行なわれる」ことは、それぞれ、本件発明1の「冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する」こと及び「回収モードを、運転モードとして備えている」ことに相当する。
そして、引用発明の「冷媒ガスが漏れてこれを冷媒漏れ検出手段(15)が検出すると、制御手段(17)の制御により、ユニット間配管(12)と室内ユニット(6)内の配管とユニット間配管(9)内の冷媒を室外ユニット(1)内に回収して室外熱交換器(4)及び受液器(5)内に溜め込むポンプダウン運転が行なわれ」ることは、冷媒漏れ検出手段(15)に係る冷媒ガスの漏れを検出したという状態を契機としてなされる制御であるから、本件発明1の「前記漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備えている」ことと、「前記漏洩センサに係る所定の状態を契機として行う、冷媒回路中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備えている」ことの限りにおいて一致する。
また、引用発明の「空気調和装置」は、本件発明1の「冷凍サイクル装置」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「冷媒を循環させる冷媒回路と、前記冷媒回路から漏洩した冷媒を検出する漏洩センサと、を備え、
前記漏洩センサに係る所定の状態を契機として行う、冷媒回路中の所定箇所に冷媒を回収する回収モードを、運転モードとして備えている冷凍サイクル装置」
〔相違点1〕
「漏洩センサに係る所定の状態を契機として行う」回収モードについて、本件発明1では、「前記漏洩センサ(27)の通電積算時間が所定の第1閾値を超えることで前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して」行うものであるのに対して、引用発明では、「冷媒ガスが漏れてこれを冷媒漏れ検出手段(15)が検出することにより」行うものである点。
イ 判断
相違点1について検討する。
引用文献2には、記載事項(イ)から、検出器故障(a detector failure)の場合は、冷媒が検出されたかのように緊急シーケンスを作動させる必要があることが記載されている。そして、引用文献2は、「冷凍システム及びヒートポンプ-安全及び環境要件」に関する英国の規格であるから、冷凍システム及びヒートポンプに関する技術分野において、検出器故障(a detector failure)の場合は、冷媒が検出されたかのように緊急シーケンスを作動させる必要があることは、当業者にとって理解できる。
しかしながら、引用文献2は、同技術分野において、検出器の機能低下やそのおそれがある状態の場合においてまで、緊急シーケンスを作動させることが技術常識であることを裏付けるものではない。そして、かかる技術常識が存在しないことに照らすと、引用発明に接した当業者にとって、引用発明における冷媒漏れ検出手段(15)について、検出器の機能低下のおそれがある状態の場合に、冷媒が漏れた場合と同様の制御を行う動機付けが存在するとはいえない。
そうすると、たとえ引用文献4に記載された技術的事項が、冷媒検知手段99の積算通電時間が閾値H1以上となることで冷媒検知手段99の異常の発生を認識するものであるとしても、引用発明の冷媒漏れ検出手段(15)に関し、引用文献4に記載された技術的事項を適用する動機付けはなく、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。
また、申立人が提出した他の証拠の記載に照らしても、相違点1に係る本件発明1の構成を容易想到とすることはできない。
また、本件発明1は、【0005】の記載から、「漏洩センサに異常が生じた場合に冷媒回路から冷媒の漏洩を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供する」ことができるという効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年6月24日に提出した回答書において、以下の主張をしている。
・「なお、「failure」は、「an occasion when a machine stops working properly」、即ち「装置が正常に動作しなくなる場合」を意味する用語である(例えば、オンライン版ロングマン英英辞典)。」(第1ページ第22-24行)
・「しかし、上述したように、甲第2号証には検出器が備えるべき性能が記載されており、これらの性能を実現できなくなる場合が「failure」に相当すると解するのが妥当である。また、一般には、備えるべき性能を検出器が備えていれば「機能低下」とは言わず、検出器が、備えるべき性能を備えることができなくなると「機能が低下した」と言うのであるから、起案日令和7年1月30日付け取消理由通知書(以下、「当該取消理由通知書」という)にも記載されているように、甲第2号証に記載の「failure」に「機能の低下」が含まれることは明らかである。」(第3ページ第20-26行)
そこで、上記主張について検討する。
引用文献2における「検出器故障」(a detector failure)とは、原文に「failure」が用いられている。引用文献2が規格に関する文書であることを踏まえると、当該文書を参照した者によって規格の解釈が異なることがないよう、「検出器故障」(a detector failure)について、故障以外に、機能の低下やそのおそれがある状態等の異常が含まれると仮定した場合、どの程度の機能の低下を「検出器故障」の故障に含めるのかの具体的な基準が引用文献2に明記されるというべきである。この点、引用文献2には、単に、「検出器故障の場合は、冷媒が検出されたかのように緊急シーケンスを作動させる必要がある。」としか記載されておらず、「failure」の定義や、どの程度の機能の低下を「検出器故障」の故障に含めるのかの具体的な基準についての記載は認められないから、引用文献2における「detector failure」の文言に「機能低下」を含むことが明らかとはいえない。
よって、引用文献2に記載された検出器が備えるべき性能を実現できなくなる場合を、「failure」に相当するということはできないから、申立人の主張を採用することができない。
(2)本件発明2及び10について
本件発明2及び10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)本件発明5及び6について
本件発明5は、第2の2(3)のウで説示した訂正事項3によって、択一的に引用する請求項から「請求項2」を削除するものである。
また、本件発明6は、第2の2(3)のエで説示した訂正事項4によって、択一的に引用する請求項から「請求項1」、「請求項2」及び「請求項5」を削除するものである。
そして、本件発明5及び6が、本件発明3を直接又は間接的に引用するものとなったところ、本件発明3に含まれる「前記漏洩センサ(27)の異常の発生を認識して前記冷媒回路(23)における冷媒の流れを停止させる停止モードを、運転モードとしてさらに備え、前記制御装置(29,39)は、前記停止モードを実行する」点については、申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。
よって、本件発明5及び6は、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、2、5、6、10に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1、2、5、6、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700002