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特許異議申立

2024-700551

蓄電デバイス用外装材

審判番号
2024-700551
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-202329
登録番号
7396343
請求日
2024年06月11日
審決日
2024年08月20日
公報発行日
2024年09月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】鈴木 史朗
  • 【権利者代理人】清水 雄一郎
  • 【権利者代理人】大槻 真紀子
  • 【異議申立人】田中 俊子
審判長/審判官
  • 審判長 馬場 慎
  • 審判官 稲葉 崇
  • 審判官 衣鳩 文彦
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7396343号発明「蓄電デバイス用外装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7396343号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7396343号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4の特許についての出願は、平成24年11月7日(優先権主張 平成23年11月7日、平成23年11月7日、平成23年11月7日、平成23年11月7日及び平成23年11月7日 いずれも日本国(JP))を国際出願日として出願した特願2013-543013号の一部を平成30年7月23日に新たな特許出願とした特願2018-137864号の一部を令和3年12月14日に新たな特許出願としたものであって、令和5年12月4日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年6月11日に特許異議申立人 田中 俊子(以下「申立人」という。)により特許異議申立書が提出され特許異議の申立てがされ、令和6年6月12日に手続補正書(方式)が提出された。 以下では、令和6年6月12日提出の手続補正書(方式)によって補正された令和6年6月11日提出の特許異議申立書を単に「申立書」という。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリアミドフィルムからなる基材層と、 アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層と、 前記基材層の第二面に積層された第1接着層と、 前記第1接着層上に積層された金属箔層と、 前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層と、 前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層と、 前記第2接着層上に積層されたシーラント層と、 を備え、 前記第1接着層は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有し、 前記ウレタン樹脂のガラス転位温度が5℃以上20℃以下である、 蓄電デバイス用外装材。 【請求項2】 前記第1接着層と前記金属箔層との間に形成された第2腐食防止処理層をさらに備える、 請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。 【請求項3】 前記基材保護層の厚さが1~10μmである、 請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。 【請求項4】 前記ウレタン樹脂において、前記アクリルポリオール又は前記ポリエステルポリオールが有する水酸基と、前記硬化剤が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH)が0.5~50である、 請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。」 第3 特許異議の申立ての理由について 申立人は、証拠方法として、以下の甲第1号証~甲第12号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲12」という。)を提出して、以下に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。 (証拠方法) 甲1:特開2000-123799号公報 甲2:特開2002-216715号公報 甲3:特開2004-160833号公報 甲4:特開2009-7472号公報 甲5:特開2002-226538号公報 甲6:特開昭61-130325号公報 甲7:「液状ポリウレタンの最新応用技術」 発行所:株式会社中日社、1989年2月1日第1版第1刷発行、3~7、240~245、274~281及び322頁 甲8:特開平9-267428号公報 甲9:「架橋剤ハンドブック」 発行所:株式会社大成社、1981年10月20日初版第1刷、368~377頁 甲10:「プラスチックフィルム・レジン材料総覧2001」 発行所:株式会社加工技術研究会、2000年6月26日発行、692~693頁 甲11:特開平6-64345号公報 甲12:特公平8-22588号公報 (申立理由の概要) 申立理由1(進歩性) 本件発明1~4は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲12に記載された技術事項に基づいて、その発明の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明1~4は、甲2に記載された発明、並びに甲1及び甲3~甲12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1~4に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由2(サポート要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件発明1~4が発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号) 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号) 第4 甲号証の記載事項 1 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下、同様)。また、以下では、円で囲われた数字を摘記する際に、「○」の次に囲われた数字を書く形で摘記する。例えば、「2」が円で囲われているものは、「○2」のように表記する。 (1)「【請求項1】 アルミニウム箔の片面の最も外側に、その表面側に塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液に対して耐久性のあるコーティング層を有する延伸フィルムをラミネートすると共に、ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-アクリレート共重合体またはアイオノマー樹脂のフィルムをアルミニウム箔の他の面の最も外側にラミネートした、包材総厚が150ミクロン以下である電池ケース用包材。 【請求項2】 塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液に対して耐久性のあるコーティング材として、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、セルロースエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれた少なくとも1種のコーティング層を有する延伸フィルムである請求項1に記載の電池ケース用包材。」 (2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、軽量、小型の高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池のような高性能二次蓄電池のケースに使用可能な電池ケース用包材、特に塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液が付着しても外観不良や腐食の恐れのない電池ケース用包材及び該電池ケースを使用した二次蓄電池に関する。」 (3)「【0013】 【発明の実施の形態】本発明の電池ケース用包材は、塩素またはフッ素を含有するリチウム塩含有電解液により白化(溶解)せず、張出し成形または深絞り成形などの冷間成形法により加工可能な性能を有する包材であり、包材総厚が薄いにもかかわらず強度が高く、張出し成形または深絞り成形等の冷間成形法(以下これらの成形法を「プレス成形」という。)においても成形時にアルミニウム箔のネッキングによる破断の発生が改善されたアルミニウム箔ラミネート材である。対象となる電池としては、炭酸エステルと塩素またはフッ素を含有するリチウム塩とからなる腐食性の高い電解液を使用し、かつ水分や酸素の侵入を極度に嫌うリチウム二次電池が最も適しているが、それ以外においてもシャープな形状、軽量、小型が要求される一次電池、二次電池においても、本電池ケース用包材を使用できることは当然である。 【0014】本発明の電池ケース用包材に使用するアルミニウム箔の材質としては、純アルミニウム系またはアルミニウム-鉄系合金のO材(軟質材)を使用する。厚さとしては加工性の確保及び酸素や水分のケース内への侵入を防止するために20~80μmが必要である。20μm未満の厚さにおいては、プレス成形時においてアルミニウム箔の破断が起きやすくなり、また破断しない時でもピンホール等が発生しやすいため酸素や水分の侵入の危険性が高くなる。一方80μmを超える厚さにおいては、成形時の破断の改善効果もまたピンホール発生防止効果も特に改善されるわけでないので単に包材総厚を厚くし、重量を増し、体積エネルギー密度を低下させるだけでしかないので避けることが望ましい。なおこのアルミニウム箔は、ラミネート性能を向上させる目的で、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のアンダーコート、あるいはコロナ放電処理等の前処理を行っておくことが好ましい。 【0015】本発明の電池ケース用包材では、白化を防止し、プレス成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止し、薄肉で、シャープな形状の成形を行うためには、アルミニウム箔の片面の最も外側に、そのラミネート表面に塩素またはフッ素を含有するリチウム塩を含む電解液に対して耐久性のあるコーティング層を有する延伸フィルムの1層をラミネートしておくことが必要である。なお上記延伸フィルムがアルミニウム箔に直接ラミネート(ドライラミネート接着剤使用)していない時は他の延伸フィルムをアルミニウム箔に直接ラミネートすることが必要である。延伸フィルムにコーティングする塩素またはフッ素を含有しリチウム塩を含む電解液に耐久性のある材料としては、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、セルロースエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれた樹脂を挙げることが出来る。該コーティング層の厚さは1~10ミクロン、好ましくは2~7ミクロン程度である。コーティングが1ミクロン未満の厚さではピンホールができやすく、また10ミクロンを超える厚さのコーティングをしても性能的に改良されることがなく単にコストアップを招くに過ぎない。 【0016】本発明に使用できるコーティング延伸フィルム(表面材)としては、破断までの引張強度が150N/mm2 以上、好ましくは200N/mm2 以上、引張伸びが80%以上、好ましくは100%以上あることが好ましく、この性能を有するフィルムであれば使用可能である。この性能を有する延伸フィルムとしてはポリアミド及びポリエステルの延伸フィルムがある。このフィルムの厚さとしては、9~50μmが必要である。9μm未満ではシャープな成形を行う時に、延伸フィルムの伸びが不足し、アルミニウム箔にネッキングを生じ、アルミニウム箔破断による成形不良を起こしやすい。一方50μmの厚さでは形状維持の強度は向上するとしても、特に破断防止やシャープな形状の成形性が向上するわけでなく体積エネルギー密度を低下させるだけである。なおコーティング延伸フィルムをアルミニウム箔に直接ラミネートしない時は、コーティング延伸フィルム以外の他の延伸フィルムをアルミニウム箔を直接ラミネートすることが必要である。これはアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止し、薄肉でシャープな形状の成形を行うためである。ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムは強度及び伸びが高く、方向性の少ないものが好ましい。 【0017】これらのコーティング延伸フィルムのうち、ポリアミドフィルムはポリエステルフィルムに比較して伸びが大きいので、より成形高さが深い形状の電池ケースをプレス成形する場合に有利である。 【0018】また電池ケース用包材に使用するポリプロピレン(PP)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(変性PP)、エチレン-アクリレート共重合体(EAA)またはアイオノマー樹脂の未延伸フィルム(以下前記4種の樹脂のフィルムを一括していう時は「未延伸フィルム」という。)は、腐食性の強い塩素またはフッ素含有リチウム塩を含むリチウム二次電池などに使用されている電解液に対する耐薬品性を向上させること及びヒートシール性を確保し、包材の加工性、ケースの密封性を維持するために使用するものである。該未延伸フィルムをコーティング延伸フィルムをラミネートした反対面の最も外側にラミネートすることが必要である。特に耐薬品性(耐電解液性)及びヒートシール性(高温でのシール安定性)のためにはポリプロピレンやEAAを用いると耐熱性があり、高温でのシール強度が比較的高い良好な接着性が得られる。 【0019】この未延伸フィルムの厚さとしては、9~50μmの厚さが必要である。9μm未満の厚さでは、ヒートシール性が不安定になる上、成形した後の厚さが薄く、ピンホールが発生しやすくなり、電池ケースの内装として電解液等に対する耐食性が低下する危険がある。一方50μmを超える厚さのフィルムを使用しても耐薬品性、ヒートシール性が向上するわけでないので単に体積エネルギーを低下するだけである。未延伸フィルムは、アルミニウム箔に直接積層する場合及び延伸フィルムの上に積層する場合等のケースがあってもよいが、該アルミニウム箔ラミネート材のコーティング延伸フィルム面の他の面の最も外側に設けるものであり、電池ケースとした時にケースの内側になり、ヒートシール性を確保し、ケースの耐薬品性を確保するために必ず積層されていなければならない。」 (4)「【0022】これらのアルミニウム箔及びフィルム等のラミネートの構成は、少なくともアルミニウム箔の片面に、表面側にコーティング層を外側にして塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液に対して耐久性あるコーティング層を有するポリアミド延伸フィルム(コーティング延伸フィルム)を積層することが延伸フィルムの白化を防止するために必要であるとともに、延伸フィルム(コーティング延伸フィルムも含む)を直接ラミネートしてアルミニウム箔のネッキングによる破断を避けるのに必要である。これらの積層において、延伸フィルムまたは他の延伸フィルムをラミネートする場合にはドライラミネート接着剤を使用してラミネートすることが必要であるが、未延伸フィルム(PP、変性PP、EAAまたはアイオノマー樹脂)のラミネートには、基材がアルミニウム箔の場合はドライラミネートまたはヒートラミネートが使用できる。特に電解液の種類によってはヒートラミネートを用いた方が良好な耐食性が得られることがある。 【0023】このような電池ケース用包材の具体的な構成としては、アルミニウム箔の片面の電池ケース表面側に塩素またはフッ素を含有するリチウム塩を含む電解液に対して耐久性あるコーティング層を有する延伸フィルムフィルムを、またアルミニウム箔の他の面の最も外側(電池ケースの内側)にポリプロピレンなどの未延伸フィルムをラミネートしたもので、全体の厚さが150ミクロン以下に構成されたものであれば特に制限はないが、好ましいものとしては以下のような構成がある。なお以下の記号を使用する。 コーティング層:CT、ポリアミドまたはポリエステル延伸フィルム:OF、アルミニウム箔:Al、未延伸フィルム:CF、(ドライラミネートは省略) CT/OF/Al/CF CT/OF/Al/OF/CF CT/OF/OF/Al/OF/CF CT/OF/OF/Al/CF 上記のような構成により、シャープな形状の成形ができた。」 (当審注:【0023】の「延伸フィルムフィルム」との記載は、「延伸フィルム」の誤記と認める。) (5)「【0025】 【実施例】(実施例1~3、比較例1~2) (電池ケース用包材)下記に示すコーティング延伸フィルム、延伸フィルム、未延伸フィルム及びアルミニウム-鉄系合金のアルミニウム箔(AA規格 8079)を用い、ドライラミネートとしてウレタン系ドライラミネート接着剤[東洋モートン株式会社製:AD502/CAT10]を用いて電池ケース用包材を作製した。 【0026】なお下記のような略号を使用する。 4方向引張強さ=0°、45°、90°及び135°の方向の破断強度 4方向伸び =0°、45°、90°及び135°の方向の破断伸び 延伸フィルム○1 :ポリアミドフィルム 4方向引張強さ=250N/mm2、265N/mm2、250N/mm2、245N/mm2。 4方向伸び =162%、140%、153%、155%。 延伸フィルム○2 :ポリアミドフィルム 4方向引張強さ=188N/mm2、235N/mm2、215N/mm2、195N/mm2。 4方向伸び =121%、86%、99%、89。 延伸フィルム○3 :ポリエステルフィルム 4方向引張強さ=220N/mm2、245N/mm2、265N/mm2、221N/mm2。 4方向伸び =122%、90%、105%、98%。 【0027】 CPP :未延伸ポリプロピレンフィルム EAA :エチレン-アクリレート共重合体 IO :アイオノマー樹脂 ドライ :ドライラミネート接着剤 PVDC:ポリ塩化ビニリデン VDC-VC:塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体 EP :エポキシ樹脂 AC :酢酸ビニル樹脂 【0028】(ラミネート材の構成) なお右肩の数字はそれぞれの厚さ(μm)を示す。 実施例1: PVDC3 /延伸フィルム○125/ドライ/Al40/ドライ/CPP30(包材総厚:103μm) 実施例2: VDC-VC3 /延伸フィルム○225/ドライ/Al40/ドライ/IO50(包材総厚:123μm) 実施例3: EP3 /延伸フィルム○316/ドライ/Al40/ドライ/延伸フィルム○316/ドライ/EAA40(包材総厚:123μm) 比較例1: 延伸フィルム○125/ドライ/Al40/ドライ/CPP30(包材総厚:100μm) 比較例2: AC3 /延伸フィルム○225/ドライ/Al40/ドライ/CPP30(包材総厚:103μm)」 (6)「【0033】 【発明の効果】本発明は電池ケース用包材として、少なくとも1層の延伸フィルム、少なくとも1層の未延伸フィルム及びアルミニウム箔からなる積層体であって、アルミニウム箔の片面の最も外側に、その表面側に塩素またはフッ素を含有するリチウム塩に対して耐久性のあるコーティング層を有する延伸フィルムをラミネートすると共に、未延伸フィルムをアルミニウム箔の他の面の最も外側にラミネートした、積層体総厚が150ミクロン以下である電池ケース用包材を開発した。この包材は張出し成形または深絞り成形などの冷間(常温)成形を行うため、延伸フィルムの熱収縮を考慮する必要はなく、接着性能の優れたウレタン系ドライラミネートが使用できる。そのため薄肉で軽量でシャープな形状の電池ケースを容易に生産できると共に密封にはヒートシールを使用できるので生産性の良い包材である。特に延伸フィルムの表面を塩素またはフッ素含有リチウム塩に対して耐久性のあるコーティングをしたため、腐食性の高い電解液が接着しても白化を起こさずきれいな外観を保持でき、外観不良によるオフスペックになることを防止でき、アルミニウム箔に延伸フィルムと未延伸フィルムを組み合わせたことにより、アルミニウム箔のネッキング破断を効果的に防止すると共に、機械的強度、耐薬品性、ヒートシール性に優れた電池ケースが容易に製造できる。このようにして製造した電池ケースは体積エネルギー密度が高く極めて効率の良い二次蓄電池とすることができる。」 (7)甲1に記載された発明 前記(1)~(6)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を1a~1lに分説し、「分説1a」などのようにして参照する。 「1a 塩素またはフッ素含有リチウム塩を含む電解液が付着しても外観不良や腐食の恐れのない電池ケース用包材であって、(【0001】) 1b 塩素またはフッ素を含有するリチウム塩含有電解液により白化(溶解)せず、張出し成形または深絞り成形などの冷間成形法により加工可能な性能を有する包材であり、包材総厚が薄いにもかかわらず強度が高く、張出し成形または深絞り成形等の冷間成形法においても成形時にアルミニウム箔のネッキングによる破断の発生が改善されたアルミニウム箔ラミネート材であり、(【0013】) 1c 白化を防止し、プレス成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止し、薄肉で、シャープな形状の成形を行うためには、アルミニウム箔の片面の最も外側に、そのラミネート表面に塩素またはフッ素を含有するリチウム塩を含む電解液に対して耐久性のあるコーティング層を有する延伸フィルムの1層をラミネートしておき、延伸フィルムにコーティングする塩素またはフッ素を含有しリチウム塩を含む電解液に耐久性のある材料としては、ウレタン樹脂を挙げることが出来、(【0015】) 1d コーティング延伸フィルム(表面材)としては、破断までの引張強度が150N/mm2 以上、引張伸びが80%以上あることが好ましく、この性能を有する延伸フィルムとしてはポリアミドの延伸フィルムがあり、このフィルムの厚さとしては、9~50μmが必要であり、9μm未満ではシャープな成形を行う時に、延伸フィルムの伸びが不足し、アルミニウム箔にネッキングを生じ、アルミニウム箔破断による成形不良を起こしやすく、一方50μmの厚さでは形状維持の強度は向上するとしても、特に破断防止やシャープな形状の成形性が向上するわけでなく体積エネルギー密度を低下させるだけであり、(【0016】) 1e 未延伸フィルムをコーティング延伸フィルムをラミネートした反対面の最も外側にラミネートし、(【0018】) 1f 未延伸フィルムは、アルミニウム箔に直接積層し、アルミニウム箔ラミネート材のコーティング延伸フィルム面の他の面の最も外側に設けるものであり、電池ケースとした時にケースの内側になり、ヒートシール性を確保し、ケースの耐薬品性を確保し、(【0019】) 1g 積層において、延伸フィルムをラミネートする場合にはドライラミネート接着剤を使用し、未延伸フィルムのラミネートには、ドライラミネートが使用でき、(【0022】) 1h1 電池ケース用包材の具体的な構成としては、アルミニウム箔の片面の電池ケース表面側に塩素またはフッ素を含有するリチウム塩を含む電解液に対して耐久性あるコーティング層を有する延伸フィルムを、またアルミニウム箔の他の面の最も外側(電池ケースの内側)にポリプロピレンなどの未延伸フィルムをラミネートしたものであり、(【0023】) 1h2 以下のような構成があり、 CT/OF/Al/CF 以下の記号を使用しており、 コーティング層:CT、ポリアミド延伸フィルム:OF、アルミニウム箔:Al、未延伸フィルム:CF、(ドライラミネートは省略)、(【0023】) 1i ドライラミネートとしてウレタン系ドライラミネート接着剤[東洋モートン株式会社製:AD502/CAT10]を用い、(【0025】) 1j 延伸フィルムとして、ポリアミドフィルムを用い、(【0026】) 1k 1層の延伸フィルム、1層の未延伸フィルム及びアルミニウム箔からなる積層体であって、アルミニウム箔の片面の最も外側に、その表面側に塩素またはフッ素を含有するリチウム塩に対して耐久性のあるコーティング層を有する延伸フィルムをラミネートすると共に、未延伸フィルムをアルミニウム箔の他の面の最も外側にラミネートした、(【0033】) 1l 電池ケース用包材。」 (8)甲1に記載された技術事項 前記(5)の記載によれば、甲1には、次の技術事項(以下「甲1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「ドライラミネートとしてウレタン系ドライラミネート接着剤[東洋モートン株式会社製:AD502/CAT10]を用いること。(【0025】)」 2 甲2の記載事項 甲2には、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】少なくとも基材層、接着層1、化成処理層1、アルミニウム、化成処理層2、接着層2、ヒートシール層からなる積層体であって、基材層表面にシロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜が形成されていることを特徴とするリチウムイオン電池用包装材料。」 (2)「【0005】 【発明の実施の形態】本発明は、防湿性、耐内容物性、耐表面汚染性に優れ、かつ、生産性の良いリチウムイオン電池用包装材料である。以下本発明の包装材料について、図等を利用してさらに詳細に説明する。図1は、本発明のリチウムイオン電池用包装材料における積層体の構成を積層方法別に示した断面図であり、(a)ドライラミネート法、(b)熱ラミネート法、(c)サンドイッチラミネート法により積層した場合である。図2は、リチウムイオン電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。図3は、エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2-X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。図4は、リチウムイオン電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。図5は、リチウムイオン電池用包装材料とタブとの接着における接着性フィルムの装着方法を説明する斜視図である。 【0006】リチウムイオン電池用包装材料はリチウムイオン電池本体を包装する外装体を形成するものであって、その外装体の形式によって、図2(a)、図2(b)または図2(c)に示すようなエンボスタイプと、図4に示すようなパウチタイプとがある。前記パウチタイプには、三方シール、四方シール等およびピロータイプ等の袋形式があるが、図4は、ピロータイプとして例示している。本発明のリチウムイオン電池用包装材料は、特に前記エンボスタイプの外装体に適した積層体である。エンボスタイプは、図2(a)および図2(d)示すように、片面に凹部7形成しても良いし、図2(b)に示すように、両面に凹部を形成してリチウムイオン電池本体を収納して周縁の四方をヒートシールして密封しても良い。また、図2(c)に示すような折り部をはさんで両側に凹部形成して、リチウムイオン電池を収納して3辺をヒートシールする形式もある。 【0007】リチウムイオン電池用包装材料が、例えばナイロン/接着層/アルミニウム/接着層/ヒートシール層からなり、前記ヒートシール層が従来の技術によるサンドイッチラミネート法、ドライラミネート法、共押出しラミネート法、熱ラミネート法等により形成されていると、リチウムイオン電池の外装体がエンボスタイプの場合、プレス成形において、側壁部においてアルミニウムと基材層との間が剥離するデラミネーションがおこることが多く、また、リチウムイオン電池本体を外装体に収納してその周縁をヒートシールする部分においてもデラミネーションの発生があった。また、電池の構成要素である電解質と水分との反応により生成するフッ化水素により、アルミニウムの内面側表面が侵され、デラミネーションを起こすことがあった。また、前記基材層として、延伸ナイロンフィルムを用いることが、リチウムイオン電池の保護性、エンボス成形性、ラミネート加工性等から好ましいが、ナイロンフィルムは滑り性に劣り、エンボス成形時のメス型との間でのすべりが悪くしわが発生することがあり安定した成形作業が難しかった。また、リチウムイオン電池の製造工程において、外装体の基材層であるナイロン樹脂層に電解液が付着すると付着部が変色し、また、基材層とバリア層との間でデラミネーションをおこすことがあった。 【0008】そこで、本発明者らは、エンボス成形性がよく、エンボス成形時またはヒートシール時において、基材層とバリア層とのデラミネーションの発生のない積層体であって、また、耐内容物性のあるリチウムイオン電池用の外装体として満足できる包装材料について鋭意研究の結果、以下に述べる各種のラミネート方法を用いて積層体とし、また、基材層表面にアクリル樹脂皮膜を形成することによって解決し得ることを見出した。前記ラミネートの第1の方法は、アルミニウムの両面に化成処理を施し、基材層とアルミニウム、アルミニウムとヒートシール層とを、2液硬化型の接着剤によりドライラミネートすることによってデラミネーションを避けることができることを見出した。前記2液硬化型の接着剤とは、例えば、主剤と硬化剤とからなり、主剤がセバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オクタンニ酸、ノナンニ酸、ウンデカンニ酸、パルミチン酸の少なくとも2種以上を含む酸成分と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを少なくとも1種含むアルコール成分からなるポリエステル系樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とのブレンド物であり、硬化剤がポリイソシアネート成分からなるものである。」 (3)「【0015】本発明のリチウムイオン電池用包装材料の層構成は、図1(a)、図1(b)または図1(c)に示すように、少なくともシロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜層18、基材層11、接着層17、化成処理層14(1)、アルミニウム12、化成処理層14(2)、ヒートシール層13、からなる積層体10であり、前記ヒートシール層13と化成処理層(2)との接着は、前述のようなドライラミネート法、熱ラミネート法、サンドイッチラミネート法等によって積層される。 【0016】リチウムイオン電池用包装材料をエンボスタイプとする場合、図3に示すように、積層された包装材料をプレス成形して凹部7を形成する。この際、プレス成形のメス型22と積層体10の基材層11との滑りが悪いと安定した成形品が得られないことがある。本発明者らは、前記滑りを良くして安定した成形とする方法について種々の研究の結果、前記基材層の表面にシロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜層18を設けることによって安定した成形が可能となることを見出した。基材層表面に構成される、シロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜層18は、主剤は、アクリル樹脂:ガラス転移温度30~80℃、分子量1万から20万の範囲であり、添加樹脂は、シロキサングラフトポリマーはシロキサンがアクリル側鎖に共重合した分子構成であり、分子量が20から300万程度のものである。これらを、イソシアネート系硬化剤でウレタン結合を形成させたいわゆる2液硬化型である。シロキサングラフトポリマーは重量比で2から20%含まれれば、効果が得られる。また、主剤であるアクリル樹脂は、ガラス転移温度が異なるものをブレンドすることも出来る。シロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜層18の厚さは0.5μmから5μm、好ましくは1.0μmから3μmである。 【0017】次に、本発明のリチウムイオン電池用包装材料である積層体の各層を構成する材料等について、図1(a)~図1(c)等を参照して説明する。本発明における前記基材層11は、延伸ポリエステルまたはナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしては、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。」 (4)「【0020】前記バリア層12は、外部からリチウムイオン電池の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホールをもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、又は、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、バリア層として好ましくは厚さが20~80μmのアルミニウムとする。ピンホールの発生をさらに改善し、リチウムイオン電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、エンボス成形におけるクラックなどの発生のないものとするために、本発明者らは、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3~9.0重量%、好ましくは0.7~2.0重量%とすることによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体を成形する時に側壁の形成も容易にできることを見出した。前記鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層体として製袋性が悪くなる。 【0021】また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。前記、アルミニウムの柔軟性・腰の強さ・硬さの度合い、すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、エンボス成形)に合わせ適宜選定すればよい。たとえば、エンボス成形時のしわやピンホールを防止するためには、成形の程度に応じた焼きなましされた軟質アルミニウムを用いることができる。 【0022】本発明の課題に対して、本発明者らは、鋭意研究の結果、リチウムイオン電池用包装材料のバリア層12であるアルミニウム表、裏面に化成処理を施すことによって、前記包装材料として満足できる積層体とすることができた。前記化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することによってエンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止と、リチウムイオン電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、エンボス成形時、ヒートシール時の基材層とアルミニウムとのデラミネーション防止、電解質と水分との反応により生成するフッ化水素によるアルミニウム内面側でのデラミネーション防止効果が得られた。各種の物質を用いて、アルミニウム面に化成処理を施し、その効果について研究した結果、前記耐酸性皮膜形成物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好であった。または、少なくともフェノール樹脂を含む樹脂成分に、モリブデン、チタン、ジルコン等の金属、または金属塩を含む化成処理剤が良好であった。」 (5)「【0026】本発明のリチウムイオン電池用包装材料における積層体10のヒートシール層13を形成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、すなわち、ランダムプロピレン、ホモプロピレン、ブロックプロピレン等の樹脂から製膜された単層フィルム、または、前記の樹脂をブレンドした樹脂から製膜された単層フィルム、これらの多層フィルムとして用いられる。ヒートシール層としてはランダムプロピレンが好適に用いられる。あるいは、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンの単層または多層、または、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンのブレンド樹脂からなる単層または多層からなるフィルムとしても使用できる。前記各タイプのポリプロピレン、すなわち、ランダムプロピレン、ホモプロピレン、ブロックプロピレンおよび、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンには、低結晶性のエチレンーブテン共重合体、低結晶性のプロピレンーブテン共重合体、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー、シリカ、ゼオライト、アクリル樹脂ビーズ等のアンチブロッキング剤(AB剤)、脂肪酸アマイド系のスリップ剤等を添加してもよい。またヒートシール層13及び接着樹脂層にはブテン成分、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー成分、密度が900kg/m3の低結晶のエチレンとブテンの共重合体、非晶性のエチレンとプロピレンの共重合体、プロピレンーα・オレフィン共重合体成分を添加することもできる。ヒートシール層13としては、前記のランダムポリプロピレンを用いることがのぞましく、それは、ランダムポリプロピレン同士でのヒートシール性がよいこと、防湿性、耐熱性等のリチウムイオン電池用包装材料のヒートシール層14としての要求される保護物性を有し、また、ラミネート加工性、エンボス成形性の良さ等による。ヒートシール層13に用いられるランダムポリプロピレンとしては、(1)密度0.90g/cm3以上、ビガット軟化点115℃以上、融点120℃以上のものが望ましい。また、ヒートシール層14に用いられる線状低密度ポリエチレンまたは中密度ポリエチレンとしては、(1)密度0.91g/cm3以上、ビガット軟化点70℃以上、融点110℃以上のものが望ましい。」 (6)「【0029】本発明のリチウムイオン電池用包装材料における基材11とバリア層12の化成処理面とは、ドライラミネート法によって貼り合わせることが望ましい。前記、基材11とアルミニウムのリン酸クロメート処理面とのドライラミネートに用いる接着剤としては、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリエーテル系、シアノアクリレート系、ウレタン系、有機チタン系、ポリエーテルウレタン系、エポキシ系、ポリエステルウレタン系、イミド系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、シリコーン系の各種接着剤を用いることができる。 【0030】 【実施例】本発明のリチウムイオン電池用包装材料について、実施例によりさらに具体的に説明する。化成処理は、いずれも、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液を、ロールコート法により、塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼き付けた。クロムの塗布量は、8mg/m2(乾燥重量)である。また、実施例においてアクリル樹脂皮膜の形成は、以下の方法を用いた。 塗布液:シロキサングラフトされたアクリル樹脂を《1》1%、《2》5%、《3》15%含むアクリル樹脂に、イソシアネート系硬化剤を添加した。 塗布方法:グラビア印刷機を用いたロールコート後、乾燥し、60℃で3日間エージングを行う。塗布量は2μm(dry)とした。以下の各実施例、比較例ともに、エンボスタイプの外装体で、いずれも片面エンボスタイプとし、成形型の凹部(キャビティ)の形状を30mm×50mm,深さ5.0mmとしてプレス成形して成形性の評価をした。なお、各例とも、リチウムイオン電池のタブのシール部には、接着性フィルムとして、ヒートシール部にポリプロピレン樹脂を用いる場合は厚さ50μmの不飽和カルボン酸グラフトポリプロピレンからなるフィルムをタブのシール部に巻き付けてヒートシールした。また、ヒートシール部にポリエチレン樹脂を用いる場合は厚さ50μmの不飽和カルボン酸グラフトポリエチレンからなるフィルムをタブのシール部に巻き付けてヒートシールした。 [実施例1]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、線状低密度ポリエチレンフィルム(30μm)をドライラミネートした後、前記ナイロンフィルム表面に、グラビア印刷法によりアクリル樹脂《1》、《2》、《3》をコーティングして検体実施例1を得た。 [実施例2]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、酸変性ポリエチレンのリバースロールコート法によりエマルジョン液を塗布乾燥し、190℃の温度で焼付け、中密度ポリエチレンフィルム50μmをヒートシール層として熱ラミネート法により積層した。得られた積層体の基材層表面(ナイロンフィルム表面)に、グラビア印刷法によりアクリル樹脂《1》、《2》、《3》をコーティングして検体実施例2を得た。 [実施例3]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、酸変性ポリプロピレンを接着樹脂として20μmの厚さに押出し、ヒートシール層としてランダムポリプロピレンフィルム(エチレン含有量4%、40μm厚さ)をサンドイッチラミネート法により積層し、得られた積層体を前記酸変性ポリプロピレンの軟化点以上に加熱した。さらに、該積層体の表面(ナイロンフィルム面)に、グラビア印刷法によりアクリル樹脂《1》、《2》、《3》をコーティングして検体実施例3を得た。 [実施例4]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、その表面温度を、酸変性ポリエチレンの軟化点以上に加熱した状態として、酸変性ポリエチレン20μmとヒートシール層としての線状低密度ポリエチレン40μmとを共押出しラミネート法により積層し、得られた積層体のナイロンフィルム面)に、グラビア印刷法によりアクリル樹脂《1》、《2》、《3》をコーティングして検体実施例4を得た。 [比較例1]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、線状低密度ポリエチレンフィルム(30μm)をドライラミネートして検体比較例1を得た。 [比較例2]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、酸変性ポリエチレンのリバースロールコート法によりエマルジョン液を塗布乾燥し、190℃の温度で焼付け、中密度ポリエチレンフィルム50μmをヒートシール層として熱ラミネート法により積層し検体比較例2を得た。 [比較例3]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、酸変性ポリプロピレンを接着樹脂として20μmの厚さに押出し、ヒートシール層としてランダムポリプロピレンフィルム(エチレン含有量4%、40μm厚さ)をサンドイッチラミネート法により積層して検体比較例3を得た。 [比較例4]アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理した他の面に、酸変性ポリエチレン20μmとヒートシール層としての線状低密度ポリエチレン40μmとを共押出しラミネート法により積層し検体比較例4を得た。」 (7)図1 [図:0001414232000001.jpg] 10は積層体、11は基材層、12はアルミニウム、13はヒートシール層、14(1)及び14(2)は化成処理層、18はアクリル樹脂被膜層を示す(【0015】)。 また、17は接着層を示す(【0015】)から、図1(a)の17(1)及び17(2)は接着層を示していると認められる。 したがって、図1(a)によれば、積層体10は、ヒートシール層13、接着層17(2)、化成処理層14(2)、アルミニウム12、化成処理層14(1)、接着層17(1)、基材層11及びアクリル樹脂被膜層18をこの順に備え、ヒートシール層13及びアクリル樹脂被膜層18は、積層体10の外部に面していることが見て取れる。 (8)甲2に記載された発明 前記(1)~(7)の記載によれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲2発明を2a~2kに分説し、「分説2a」などのようにして参照する。 「2a 防湿性、耐内容物性、耐表面汚染性に優れ、かつ、生産性の良いリチウムイオン電池用包装材料であって、(【0005】) 2b リチウムイオン電池用包装材料はリチウムイオン電池本体を包装する外装体を形成するものであって、エンボスタイプの外装体に適した積層体であり、凹部を形成してリチウムイオン電池本体を収納し、(【0006】) 2c 積層体10は、ヒートシール層13、接着層17(2)、化成処理層14(2)、アルミニウム12、化成処理層14(1)、接着層17(1)、基材層11及びアクリル樹脂被膜層18をこの順に備え、ヒートシール層13及びアクリル樹脂被膜層18は、積層体10の外部に面しており、(図1) 2d 基材層とアルミニウム、アルミニウムとヒートシール層とを、2液硬化型の接着剤によりドライラミネートし、2液硬化型の接着剤とは、主剤と硬化剤とからなり、主剤が酸成分と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを少なくとも1種含むアルコール成分からなるポリエステル系樹脂からなり、硬化剤がポリイソシアネート成分からなるものであり、(【0008】) 2e 基材層の表面にシロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜層18を設けることによって安定した成形が可能となり、基材層表面に構成される、シロキサングラフトポリマーが添加されたアクリル樹脂皮膜層18は、主剤は、アクリル樹脂:ガラス転移温度30~80℃、分子量1万から20万の範囲であり、添加樹脂は、シロキサングラフトポリマーはシロキサンがアクリル側鎖に共重合した分子構成であり、分子量が20から300万程度のものであり、これらを、イソシアネート系硬化剤でウレタン結合を形成させたいわゆる2液硬化型であり、主剤であるアクリル樹脂は、ガラス転移温度が異なるものをブレンドすることも出来、(【0016】) 2f 基材層11は、ナイロンフィルムからなり、ナイロンとしては、ポリアミド樹脂が挙げられ、(【0017】) 2g バリア層12は、外部からリチウムイオン電池の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、厚さが20~80μmのアルミニウムとし、(【0020】) 2h リチウムイオン電池用包装材料のバリア層12であるアルミニウム表、裏面に化成処理を施し、化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成し、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、(【0022】) 2i ヒートシール層13としては、ランダムポリプロピレンを用いることがのぞましく、それは、ランダムポリプロピレン同士でのヒートシール性がよいこと、防湿性、耐熱性等のリチウムイオン電池用包装材料のヒートシール層14としての要求される保護物性を有し、また、ラミネート加工性、エンボス成形性の良さ等により、(【0026】) 2j 基材11とアルミニウムのリン酸クロメート処理面とのドライラミネートに用いる接着剤としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエーテルウレタン系、ポリエステルウレタン系、イソシアネート系の各種接着剤を用いることができる、(【0029】) 2k リチウムイオン電池用包装材料。」 (9)甲2に記載された技術事項 前記(4)の記載によれば、甲2には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「リチウムイオン電池用包装材料のバリア層12であるアルミニウム表、裏面に化成処理を施し、化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成し、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させること。(【0022】)」 3 甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装に使用される包装材料に適用される加熱処理耐性を有するガスバリアフィルム積層体、特にボイル殺菌、レトルト殺菌等において高温加熱処理がなされてもそのガスバリア性が低下しないようにしたことを特徴とする加熱処理耐性を有するガスバリアフィルム積層体に関するものである。」 (2)「【0018】 【発明の実施の形態】 以下、本発明をその一実施形態を参照して説明する。図1は本発明の加熱殺菌耐性を有するガスバリアフィルム積層体の一実施形態を示す断面模式図である。図1における基材(1)はプラスチック材料からなるフィルム基材であり、その少なくとも片面上に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物及びシランカップリング剤とを含んでなる複合物からなるプライマー層(2)、無機酸化物からなる蒸着薄膜層(3)、ガスバリア性被膜層(4)、さらに二液硬化型ポリウレタン系接着剤からなる接着層(5)を順次積層してなる被膜層が少なくとも設けてある。」 (3)「【0040】 次に、二液硬化型ポリウレタン系接着剤からなる接着層(5)について詳しく説明する。この接着層(5)は、前記のような硬いガスバリア性被膜層(4)を持ったガスバリアフィルムと任意のフィルムとを貼り合わせて包装材料として使用する際、そこに加熱殺菌処理等により高温が加わった場合、そのガスバリア性被膜層(4)にクラック等が発生するのを防ぐ目的で、柔軟性のあるものを用いることが好ましい。 【0041】 接着剤に柔軟性を持たせるための方法としては、接着剤として二液硬化型ポリウレタン系接着剤を使用し、かつ硬化被膜におけるガラス転移温度を5~20℃の範囲にすることがより好ましい。ガラス転移温度をこの範囲にすることで、通常使用する室温領域では硬化後の接着剤の被膜はゴム状態をなし、柔軟性を保つことができ、加熱処理がなされて包装材料が膨張、変形した場合においてもこの被膜はこのような動きに容易に追随でき、延いてはガスバリア性被膜(4)にクラック等を生じさせることがなくなる。ガラス転移温度が20℃以上になると、通常使用する室温領域では接着剤の硬化膜は硬いガラス状態となっているために、加熱処理時に硬いガスバリア性被膜層と同様にクラックを発生する原因になるため好ましくない。また、5℃以下のガラス転移温度では、接着層の耐熱性が劣るため、好ましくない。 【0042】 上記のような観点から、本発明においては二液硬化型ポリウレタン系接着剤として、高分子末端に水酸基を有する主剤(ポリオール)と、イソシアネート基を有する硬化剤(ポリイソシアネート)からなり、水酸基とイソシアネート基の反応によりウレタン結合を形成して硬化するものがより好適に使用される。 【0043】 高分子末端に水酸基を有する主剤としては、ポリオールとジカルボン酸からなる末端水酸基のポリエステルポリオール、ポリエステルポリオールとジイソシアネートより得られるポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートから得られるポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの混合物とジイソシアネートから得られるポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらは何れも2官能または3官能のポリオールである。これらの中でも、加熱殺菌耐性のある主剤としてはポリエステル系のものを用いるのが好ましい。また、これらは酸無水物変性されていても構わない。 【0044】 また、イソシアネート硬化剤としては、トリメメチロールプロパンにジイソシアネートを付加して得られるアダクト体、ジイソシアネートに水を反応させて得られるビュレット体、ジイソシアネートの重合体で得られるイソシアヌレート等の結合形成を有する多官能ポリイソシアネートを、単独もしくは2種類以上混合して使用できる。また、ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネートのような脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。」 (4)「【0048】 以上、本発明の加熱処理耐性を有するガスバリアフィルム積層体の基本的な構成につき説明したが、包装材料として使用する場合には、二液硬化型接着剤からなる接着層(5)の上に印刷層、介在フィルム層、シーラント層等を必要に応じて適宜積層させて用いれば良い。図2には、図1に示す高温処理耐性を有するガスバリア積層体の接着層(5)の上にシーラント層(6)を更に設けてなる包装材料の一例が示してある。」 (5)図1 [図:0001414232000002.jpg] 図1は、ガスバリアフィルム積層体の断面模式図であり、1は基材、2はプライマー層、3は蒸着薄膜層、4はガスバリア性被膜層、5は接着層を示す(【0018】)から、図1によれば、ガスバリアフィルム積層体では、基材(1)、プライマー層(2)、蒸着薄膜層(3)、ガスバリア性被膜層(4)、接着層(5)がこの順に積層されている。 (6)図2 [図:0001414232000003.jpg] (7)甲3に記載された技術事項 前記(1)~(6)の記載によれば、甲3には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲3技術事項を3a~3iに分説し、「分説3a」などのようにして参照する。 「3a 食品や非食品及び医薬品等の包装に使用される包装材料に適用される加熱処理耐性を有するガスバリアフィルム積層体であって、(【0001】) 3b 基材(1)、プライマー層(2)、蒸着薄膜層(3)、ガスバリア性被膜層(4)、接着層(5)がこの順に積層されており、(図1) 3c 接着層(5)は、硬いガスバリア性被膜層(4)を持ったガスバリアフィルムと任意のフィルムとを貼り合わせて包装材料として使用する際、そこに加熱殺菌処理等により高温が加わった場合、そのガスバリア性被膜層(4)にクラック等が発生するのを防ぐ目的で、柔軟性のあるものを用いることが好ましく、(【0040】) 3d1 接着剤に柔軟性を持たせるための方法としては、接着剤として二液硬化型ポリウレタン系接着剤を使用し、かつ硬化被膜におけるガラス転移温度を5~20℃の範囲にすることがより好ましく、(【0041】) 3d2 ガラス転移温度をこの範囲にすることで、通常使用する室温領域では硬化後の接着剤の被膜はゴム状態をなし、柔軟性を保つことができ、加熱処理がなされて包装材料が膨張、変形した場合においてもこの被膜はこのような動きに容易に追随でき、延いてはガスバリア性被膜(4)にクラック等を生じさせることがなくなり、(【0041】) 3d3 ガラス転移温度が20℃以上になると、通常使用する室温領域では接着剤の硬化膜は硬いガラス状態となっているために、加熱処理時に硬いガスバリア性被膜層と同様にクラックを発生する原因になるため好ましくなく、また、5℃以下のガラス転移温度では、接着層の耐熱性が劣るため、好ましくなく、(【0041】) 3e 上記のような観点から、二液硬化型ポリウレタン系接着剤として、高分子末端に水酸基を有する主剤(ポリオール)と、イソシアネート基を有する硬化剤(ポリイソシアネート)からなり、水酸基とイソシアネート基の反応によりウレタン結合を形成して硬化するものがより好適に使用され、(【0042】) 3f 高分子末端に水酸基を有する主剤としては、ポリエステルポリオールが挙げられ、(【0043】) 3g イソシアネート硬化剤としては、トリメメチロールプロパンにジイソシアネートを付加して得られるアダクト体、ジイソシアネートに水を反応させて得られるビュレット体、ジイソシアネートの重合体で得られるイソシアヌレート等の結合形成を有する多官能ポリイソシアネートを、単独もしくは2種類以上混合して使用でき、また、ジイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられ、(【0044】) 3h 包装材料として使用する場合には、二液硬化型接着剤からなる接着層(5)の上に印刷層、介在フィルム層、シーラント層等を必要に応じて適宜積層させて用いる、(【0048】) 3i ガスバリアフィルム積層体。」 4 甲4の記載事項 甲4には、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 t-ブチルメタクリレート、炭素数6~18のアルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの共重合体からなるアクリルポリオール(A)と、 脂肪族ポリイソシアネートおよび炭素数8以上のアルキルモノオールをウレタン化およびアロファネート化させてなる脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート体(B)と、を含み、 前記アロファネート体(B)のイソシアネート基および前記アクリルポリオール(A)の水酸基のモル比が[NCO]/[OH]=0.8以上であることを特徴とする2液硬化型塗料用樹脂組成物。 【請求項2】 前記アルキルモノオールが、炭素数8~20のアルキルモノオールである請求項1記載の2液硬化型塗料用樹脂組成物。 【請求項3】 前記アルキルモノオールが、分岐鎖アルキルモノオールである請求項1または2記載の2液硬化型塗料用樹脂組成物。 【請求項4】 前記脂肪族ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1~3のいずれか1項記載の2液硬化型塗料用樹脂組成物。」 (2)甲4に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲4には、以下の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「アクリルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート体(B)と、を含み、前記脂肪族ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートである、2液硬化型塗料用樹脂組成物。」 5 甲5の記載事項 甲5には、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】脂肪族炭化水素の炭素に結合したイソシアネート基(脂環式炭化水素の脂環の炭素に結合したイソシアネート基も含む。以下、脂肪族イソシアネート基と略記する。)を2個以上有するポリイソシアネート(A)と、ポリオール(B)とを必須成分として、ウレトジオン化触媒の存在下に反応させて得られる脂肪族イソシアネート基含有ポリイソシアネートの混合物(以下、ポリイソシアネート混合物と略記する。)であって、その固形分の25℃での粘度が0.1~1300mPa・sであり、しかも、該ポリイソシアネート混合物中に含まれる全窒素原子数に対する、ウレトジオン基を構成する窒素原子数の割合が20~50%、イソシアヌレート基を構成する窒素原子数の割合が20%以下、ウレタン基とアロファネート基を構成する窒素原子数の合計の割合が0.1~40%で、かつ、ウレタン基とアロファネート基を構成する窒素原子数の合計に対するアロファネート基を構成する窒素原子数の割合が67~100%であるポリイソシアネート混合物からなることを特徴とする、ポリウレタン樹脂用硬化剤。 【請求項2】 ポリイソシアネート(A)が、イソシアネート基に結合した脂肪族炭化水素の炭素原子数が4~15の脂肪族ジイソシアネートである、請求項1記載のポリウレタン樹脂用硬化剤。 【請求項3】 ポリイソシアネート(A)が、ヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項1記載のポリウレタン樹脂用硬化剤。 【請求項4】 ポリオール(B)が、炭素原子数2~40の多価アルコールである、請求項1、2または3記載のポリウレタン樹脂用硬化剤。 【請求項5】 ポリオール(B)が、炭素原子数3~10の多価アルコールである、請求項1、2または3記載のポリウレタン樹脂用硬化剤。 【請求項6】 ポリイソシアネート混合物の固形分の25℃での粘度が10~1000mPa・sであり、しかも、該ポリイソシアネート混合物中に含まれる全窒素原子数に対する、ウレトジオン基を構成する窒素原子数の割合が20~40%、イソシアヌレート基を構成する窒素原子数の割合が10%以下、ウレタン基とアロファネート基を構成する窒素原子数の合計の割合が1~30%で、かつ、ウレタン基とアロファネート基を構成する窒素原子数の合計に対するアロファネート基を構成する窒素原子数の割合が85~100%である、請求項1~5のいずれか1項記載のポリウレタン樹脂用硬化剤。 【請求項7】 ポリイソシアネート混合物が、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを、イソシアネート基(a)と水酸基(b)のモル比(a/b)が4/1~100/1となる範囲で用いて、80~150℃でウレタン化とそれに続くアロファネート化を行い、その後、40~140℃でウレトジオン化触媒の存在下でウレトジオン化を開始し、ウレトジオン化反応停止後、未反応のポリイソシアネート(A)を除く方法、または、80~140℃で、ウレタン化とそれに続くアロファネート化を行うと同時もしくはその途中でウレトジオン化触媒の存在下でウレトジオン化を開始させ、ウレトジオン化反応停止後、未反応のポリイソシアネート(A)を除く、請求項1~6のいずれか1項記載の脂肪族イソシアネート基含有ポリイソシアネート混合物。 【請求項8】 請求項1~7のいずれか1項記載のポリウレタン樹脂用硬化剤(I)と、ポリオール(II)とを含有することを特徴とする、硬化性ポリウレタン樹脂組成物。 【請求項9】 ポリオール(II)が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオールである、請求項8記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物。」 (2)甲5に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲5には、以下の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「ポリイソシアネート(A)と、ポリオール(B)とを必須成分として、ウレトジオン化触媒の存在下に反応させて得られる脂肪族イソシアネート基含有ポリイソシアネートの混合物(ポリイソシアネート混合物)であって、ポリイソシアネート(A)が、ヘキサメチレンジイソシアネートである、ポリウレタン樹脂用硬化剤(I)と、 アクリルポリオール、ポリエステルポリオールから選ばれるポリオールであるポリオール(II)とを含有する、 硬化性ポリウレタン樹脂組成物。」 6 甲6の記載事項 甲6には、次の事項が記載されている。 (1)1頁左下欄4~10行 「2. 特許請求の範囲 i)α,α,α′,α′-テトラメチル-キシリレンジイソシアネート誘導体とヘキサメチレンジイソシアネート誘導体との固形分重量比が20/80~80/20であるポリイソシアネート成分と ii)アクリルポリオールとを含有してなるウレタン樹脂組成物」 (2)甲6に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲6には、以下の技術事項(以下「甲6技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「α,α,α′,α′-テトラメチル-キシリレンジイソシアネート誘導体とヘキサメチレンジイソシアネート誘導体との固形分重量比が20/80~80/20であるポリイソシアネート成分と、アクリルポリオールとを含有してなるウレタン樹脂組成物。」 7 甲7の記載事項 甲7には、次の事項が記載されている。 (1)5頁右欄18行~6頁左欄2行 「ポリウレタン系接着剤は、基本的にはポリ有機イソシアネートを架橋成分とし、水またはポリオール成分のヒドロキシル基との架橋反応によって重合硬化する機構をとっている。」 (2)6頁右欄1行~7頁左欄2行 「架橋剤としてのイソシアネートの種類は多く、15種類を超える各種イソシアネートが発表されているが、接着剤に使用されているイソシアネートとしては、芳香族系のTDIとMDIのプレポリマーがその反応性の大きさの故にもっとも多く使用されている。 近年になって、無黄変性の脂肪族イソシアネートとしてIPDI・HMDI・XDIなどが使用されるようになったが、その反応速度が遅く、使用するポリオールの分子構造の適切な選択とともに、反応促進剤の併用などが必要とされている。図4は、ドライラミネート接着剤に主に使用されている各種有機ジイソンアネートの反応性の比較である。」 (当審注:「各種有機ジイソンアネート」との記載は、「各種有機ジイソシアネート」の誤記と認める。) (3)6頁、図4 [図:0001414232000004.jpg] 図4は、ドライラミネート接着剤に主に使用されている各種有機ジイソシアネートの反応性の比較をしたものである(前記(2))から、図4によれば、ドライラミネート接着剤に主に使用されている各種有機ジイソシアネートには、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)が含まれる。 (4)275頁右欄22~23行 「現在、工業的に使用されているイソシアネートの種類を表2に示す。」 (5)278頁、表2 [図:0001414232000005.jpg] 表2は、工業的に使用されているイソシアネートの種類を示すものである(前記(4))から、表2によれば、1,6-Hexamethylene diisocyanate(HDI)が工業的に使用されている。 (6)甲7に記載された技術事項 前記(1)~(5)の記載によれば、甲7には、以下の技術事項(以下「甲7技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「ポリウレタン系接着剤は、基本的にはポリ有機イソシアネートを架橋成分とし、水またはポリオール成分のヒドロキシル基との架橋反応によって重合硬化する機構をとっており、 架橋剤としてのイソシアネートの種類は多く、 ドライラミネート接着剤に主に使用されている各種有機ジイソシアネートには、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)が含まれ、 1,6-Hexamethylene diisocyanate(HDI)が工業的に使用されていること。」 8 甲8の記載事項 甲8には、次の事項が記載されている。 (1)「【0006】 【課題を解決するための手段】発明者らは、上記課題を解決した、優れた性能を有する艶消しカラー鋼板を開発すべく鋭意検討した。その結果、艶消し剤として、塗膜よりも低いガラス転移点を有し、塗膜と相溶せず、塗膜の表面に露出する微細有機粒子と、前記粒子よりもサイズが相対的に大きく、かつ硬質な無機あるいは有機粒子を併用することにより、その目的を達成しうることを見いだし、本発明に至った。 【0007】すなわち、本発明の要旨構成は、下記のとおりである。鋼板あるいは表面処理鋼板の少なくとも一方の面に、ガラス転移点が10~50℃であるマトリックス樹脂中に下記の粒子Aおよび粒子Bを含有する、厚さ5~50μm の皮膜が形成され、この皮膜の外表面には粒子Aの一部が露出していることを特徴とする建材用艶消しカラー鋼板。 記 粒子A:前記マトリックス樹脂よりも低いガラス転移点を有し、このマトリックス樹脂とは非相溶性の有機粒子であって、平均粒子径が0.1 ~5μm の粒子 粒子B:無機粒子および前記マトリックス樹脂よりも高いガラス転移点を有する有機粒子のうちの1種または2種からなり、これら粒子の平均粒子径が0.5 ~80μm かつ粒子Aよりも大きい粒子 【0008】なお、上記粒子Aは、25℃未満のガラス転移点を有するものが好ましい。また、上記粒子Bにおける無機粒子は、平均粒子径が5~80μm の球状に近い形状の粒子と、平均粒子径が0.5 ~20μm でかつこの球状の粒子よりも小さい、不定形の粒子とから構成されるものが好ましい。 【0009】以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明において、被覆の対象となる鋼板あるいは表面処理鋼板は、次のごときものである。鋼板としては、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板などのすべての金属板が適用できる。また、これらの鋼板と塗膜との密着性を改善するために、公知の表面処理やプライマー処理を施した表面処理鋼板も対象となる。表面処理方法としては、リン酸塩系表面処理、クロム酸塩系表面処理、クロム酸系塗装剤などが挙げられる。また、プライマー処理方法としては、鋼板、表面処理、塗料の種類に応じて適宜選択されるが、特に、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、それらの変性樹脂のプライマーが好適に用いられる。鋼板あるいは表面処理鋼板の形状は、コイル(鋼帯)、シート状切板のいずれであってもよい。 【0010】本発明のマトリックス樹脂を形成する樹脂とは、通常のカラー鋼板に用いられる塗料バインダーであればいずれのものも使用可能である。ただし、本発明の艶消しカラー鋼板が屋根材などに使用されることを鑑みると、各種成形加工に耐えうるマトリックス樹脂を選択する必要がある。この観点から,マトリックス樹脂のガラス転移点(乾燥硬化後のガラス転移点)を10~50℃の範囲内に設定することが望まれる。ガラス転移点が余りに低いと、マトリックス樹脂が軟質なものとなり、耐傷つき性などの製品特性が不十分となることがある。一方、ガラス転移点が高すぎる場合には、マトリックス樹脂の可とう性が劣り、成形加工時に塗膜の割れなどを生じることがある。したがって、マトリックス樹脂のガラス転移点は10~50℃の範囲、好ましくは20~35℃の範囲とする。」 (2)甲8に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲8には、以下の技術事項(以下「甲8技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「鋼板あるいは表面処理鋼板の少なくとも一方の面に、ガラス転移点が10~50℃であるマトリックス樹脂中に粒子Aおよび粒子Bを含有する、厚さ5~50μmの皮膜が形成され、 粒子Aは、前記マトリックス樹脂よりも低いガラス転移点を有し、このマトリックス樹脂とは非相溶性の有機粒子であって、 粒子Bは、無機粒子および前記マトリックス樹脂よりも高いガラス転移点を有する有機粒子のうちの1種または2種からなり、 各種成形加工に耐えうるマトリックス樹脂を選択する必要があり、この観点から、マトリックス樹脂のガラス転移点(乾燥硬化後のガラス転移点)を10~50℃の範囲内に設定することが望まれ、ガラス転移点が余りに低いと、マトリックス樹脂が軟質なものとなり、耐傷つき性などの製品特性が不十分となることがあり、一方、ガラス転移点が高すぎる場合には、マトリックス樹脂の可とう性が劣り、成形加工時に塗膜の割れなどを生じることがあること。」 9 甲9の記載事項 甲9には、次の事項が記載されている。 (1)372頁左欄14行~373左欄1行 「c.ポリオール/ポリイソシアナート型 イソシアナートと活性水素化合物との反応のうち,接着剤として最も重要なものがポリオールとポリイソシアナートとの反応である。ポリイソシアナートとしては, TDI,MDI,TTIなどの低分子量ポリイソシアナートと,ポリオールとポリイソシアナートをあらかじめ反応させた末端イソシアナートのプレポリマーがある。プレポリマーに関しては次項にまとめるので,本項ではポリオールオリゴマー/ポリイソシアナート混合系について述べる。ポリオールとしては,ポリエステルポリオール,ポリエーテルポリオールなどがあり,ポリイソシアナートが架橋剤となる。 i. ポリエステルポリオール/ポリイソシアナート系 アジピン酸,フタル酸無水物,エチレングリコール,1,4-プタンジオール,トリメチロールプロパンなど,酸とポリオールとの重縮合によって得られる分子量2~3,000程度の水酸基末端の飽和ポリエステルにジあるいはトリイソシアナートを混合し2液型として使用するのが一般的で,種々の被着体によく接着する。 …(中略)… これらの系での硬化方法は,常温あるいは加熱硬化いずれも可能で,水酸基に対してイソシアネート基が当量,あるいは若干過剰になるように配合される。イソシアナート基が当量でしかも常温硬化であるような場合は水酸基とイソシアナート基との反応によるウレタン結合の生成が主たる架橋反応であり,イソシアナート基が過剰で,特に加熱硬化の場合にはウレタン結合とイソシアナート基によるアロファナート結合も架橋に関与することになる。また歯の接着158) でみられるように大過剰のイソシアナート基(NCO/OH=l0/1)が存在するような場合には,水分との反応による架橋あるいは鎖延長が重要である。」 (2)甲9に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲9には、以下の技術事項(以下「甲9技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「イソシアナートと活性水素化合物との反応のうち、接着剤として最も重要なものがポリオールとポリイソシアナートとの反応であり、 ポリオールとしては,ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどがあり、ポリイソシアナートが架橋剤となり、 ポリエステルポリオール/ポリイソシアナート系での硬化方法は、常温あるいは加熱硬化いずれも可能で、水酸基に対してイソシアネート基が当量、あるいは若干過剰になるように配合されること。」 10 甲10の記載事項 甲10には、次の事項が記載されている。 (1)692頁 [図:0001414232000006.jpg] 692頁によれば、ドライラミネート用接着剤について、東洋モートン(株)の製品名「AD-502」の製品は、タイプが二液溶剤型であり、主成分はポリエステルである。 (2)甲10に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲10には、以下の技術事項(以下「甲10技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「ドライラミネート用接着剤について、東洋モートン(株)の製品名「AD-502」の製品は、タイプが二液溶剤型であり、主成分はポリエステルであること。」 11 甲11の記載事項 甲11には、次の事項が記載されている。 (1)11頁1~2行 「AD502(東洋モートン社製、ポリエス 0.95重量部 テルポリオール)」 (2)甲11に記載された技術事項 前記(1)の記載は、「AD502(東洋モートン社製、ポリエステルポリオール)」が「0.95重量部」であることを意味するものと認められるから、前記(1)によれば、甲11には、以下の技術事項(以下「甲11技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「東洋モートン社製のAD502は、ポリエステルポリオールからなること。」 12 甲12の記載事項 甲12には、次の事項が記載されている。 (1)5頁左欄17~21行 「イソシアネート-ウレタン系化合物として東洋モートン(株)製AD-335A(ポリエステルポリオール系ポリマー)95重量%とCAT-10(トリレンジイソシアネート系化合物)5重量%よりなる配合物(IU-2)を用いて」 (2)甲12に記載された技術事項 前記(1)の記載によれば、甲12には、以下の技術事項(以下「甲12技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「東洋モートン(株)製のCAT-10は、トリレンジイソシアネート系化合物からなること。」 第5 申立理由1(進歩性)についての判断 後の参照の便宜のため、次に示すように、本件発明1を、A~Kに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 「【請求項1】 A ポリアミドフィルムからなる基材層と、 B アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層と、 C 前記基材層の第二面に積層された第1接着層と、 D 前記第1接着層上に積層された金属箔層と、 E 前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層と、 F 前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層と、 G 前記第2接着層上に積層されたシーラント層と、 H を備え、 I 前記第1接着層は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有し、 J 前記ウレタン樹脂のガラス転位温度が5℃以上20℃以下である、 K 蓄電デバイス用外装材。」 1 甲1を主引例とした進歩性について (1)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 発明特定事項A(「ポリアミドフィルムからなる基材層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲1発明の「延伸フィルム」は、所定の「引張強度」及び「引張伸び」が求められるものであり、その厚さが「形状維持の強度」や「成形性」に影響するものである(分説1d)から、甲1発明の「電池ケース用包材」(分説1l)の強度や成形性等の機械的特性を定めるものであると認められ、この意味で、「電池ケース用包材」の基材であるといえる。 さらに、甲1発明の「延伸フィルム」は、「積層体」の「1層」を構成するものである(分説1k)から、基材層であるといえる。 また、甲1発明の「延伸フィルム」は、「ポリアミドフィルム」からなる(分説1j)。 したがって、甲1発明の「延伸フィルム」は、本件発明1の「ポリアミドフィルムからなる基材層」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「ポリアミドフィルムからなる基材層」「を備え」る点で一致する。 イ 発明特定事項B(「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層と、」)及びH(「を備え、」)について (ア)甲1発明の「延伸フィルム」は、「コーティング層を有」している(分説1c)から、「コーティング層」が、「延伸フィルム」の一方の面に形成されている。 また、「コーティング層」は、「電解液に対して耐久性のある」ものである(分説lc)から、「延伸フィルム」を電解液から保護するものといえる。 したがって、甲1発明の「コーティング層」は、本件発明1の「前記基材層の第一面に形成された基材保護層」に相当する。 (イ)甲1発明では、「延伸フィルムにコーティングする」「材料」は、「ウレタン樹脂」である(分説1c)から、甲1発明の「コーティング層」は、「ウレタン樹脂」からなるものと認められる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「ウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層」「を備え」る点で共通する。 他方、本件発明1では、「基材保護層」を構成する「ウレタン樹脂」は、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成された」ものであるのに対して、甲1発明では、「コーティング層」を構成する「ウレタン樹脂」の材料については特定されていない。 ウ 発明特定事項C(「前記基材層の第二面に積層された第1接着層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲1発明では、「アルミニウム箔の片面」に「延伸フィルム」が「ラミネート」されており(分説1h1)、「ドライラミネート」が「ドライラミネート接着剤」により行われる(分説1i)から、「アルミニウム箔」と「延伸フィルム」の間に、ドライラミネート接着剤により構成される、「アルミニウム箔」と「延伸フィルム」の接着層(以下「第1の接着層」という。)を備えているものと認められる。 そして、甲1発明では、「コーティング層」、「ポリアミド延伸フィルム」、「アルミニウム箔」、「未延伸フィルム」が、この順に並ぶ構成である(分説lh2)から、「ポリアミド延伸フィルム」の一方の面に「コーティング層」が設けられ、「ポリアミド延伸フィルム」の他方の面に、「アルミニウム箔」との接着のために「第1の接着層」が積層されているものと認められる。 したがって、甲1発明の「第1の接着層」は、本件発明1の「前記基材層の第二面に積層された第1接着層」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「前記基材層の第二面に積層された第1接着層」「を備え」る点で一致する。 エ 発明特定事項D(「前記第1接着層上に積層された金属箔層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲1発明では、「アルミニウム箔」と「延伸フィルム」の間に、「第1の接着層」を備えている(前記ウ)から、「アルミニウム箔」は、「第1の接着層」上に積層されていると認められる。 したがって、甲1発明の「アルミニウム箔」は、本件発明1の「前記第1接着層上に積層された金属箔層」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1接着層上に積層された金属箔層」「を備え」る点で一致する。 オ 発明特定事項E(「前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層と、」)、F(「前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層と、」)、G(「前記第2接着層上に積層されたシーラント層と、」)及びH(「を備え、」)について (ア)甲1発明では、「コーティング層」、「ポリアミド延伸フィルム」、「アルミニウム箔」、「未延伸フィルム」が、この順に並ぶ構成であり(分説lh2)、「未延伸フィルム」は「ラミネート」される(分説1h1)から、「アルミニウム箔」の一方の面に、「未延伸フィルム」がラミネートされているものと認められる。 そして、引用発明では、「ドライラミネート」が「ドライラミネート接着剤」により行われる(分説1i)から、「アルミニウム箔」と「未延伸フィルム」の間に、ドライラミネート接着剤により構成される、「アルミニウム箔」と「未延伸フィルム」の接着層(以下「第2の接着層」という。)を備えているものと認められる。 したがって、甲1発明では、「アルミニウム箔」上に積層された「第2の接着層」と、「第2の接着層」上に積層された「未延伸フィルム」を備えているといえる。 (イ)甲1発明の「第2の接着層」は、本件発明1の「第2接着層」に相当する。 また、甲1発明の「未延伸フィルム」は、「積層体」の「1層」を構成するものであり(分説1k)、「ヒートシール性を確保」するためのものである(分説1f)から、本件発明1の「シーラント層」に相当する。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「第2接着層と、前記第2接着層上に積層されたシーラント層」「を備え」る点で共通する。 他方、本件発明1では、「金属箔層上に積層された腐食防止処理層」を備え、「第2接着層」は、「腐食防止処理層上に積層され」るのに対して、甲1発明では、「アルミニウム箔」上に「第2の接着層」を備えており、「アルミニウム箔」と「第2の接着層」の間に、腐食防止処理層を備える構成とはなっていない。 カ 発明特定事項I(「前記第1接着層は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有し、」)について (ア)甲1発明では、「第1の接着層」は、ドライラミネート接着剤により構成されるものであり(前記ウ)、ドライラミネート接着剤としては、「ウレタン系ドライラミネート接着剤[東洋モートン株式会社製:AD502/CAT10]」が用いられる(分説1i)。 そして、東洋モートン社製の製品「AD502」は、ポリエステルポリオールからなるものであり(甲11技術事項)、同じく東洋モートン社製の製品「CAT10」は、トリレンジイソシアネート系化合物からなるものであり(甲12技術事項)、また、トリレンジイソシアネートは、芳香族系のイソシアネートであるから、甲1発明の「ウレタン系ドライラミネート接着剤[東洋モートン株式会社製:AD502/CAT10]は、ポリエステルポリオールと芳香族系のイソシアネートから構成されるウレタン系接着剤であると認められる。 また、ウレタン系接着剤は、当然、ウレタン結合を有する高分子からなるものと認められ、ポリウレタン系接着剤であるといえる。 したがって、甲1発明の「第1の接着層」は、ポリエステルポリオールと芳香族系のイソシアネートから構成されるポリウレタン系接着剤を含有するものと認められる。 (イ)したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1接着層は、ポリエステルポリオールと芳香族系のイソシアネートから構成されるポリウレタン系接着剤を含有」する点で共通する。 他方、本件発明1では、「第1接着層」が含有する「ポリウレタン系接着剤」は、「ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型」のものであるのに対して、甲1発明では、「第1の接着層」が含有するポリウレタン系接着剤は、ポリエステルポリオールと芳香族系のイソシアネートから構成されるが、ポリエステルポリオールを主剤とし、芳香族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のものであることは特定されていない。 キ 発明特定事項J(「前記ウレタン樹脂のガラス転位温度が5℃以上20℃以下である、」)について 甲1発明では、「コーティング層」を構成する「ウレタン樹脂」(前記イ(イ))のガラス転移温度については、特定されていない。 ク 発明特定事項K(「蓄電デバイス用外装材。」)について 甲1発明の「電池ケース用包材」(分説1l)は、電池、すなわち蓄電デバイスに用いられる包材であるから、本件発明1の「蓄電デバイス用外装材」に相当する。 ケ 一致点及び相違点 前記ア~クによれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「 ポリアミドフィルムからなる基材層と、 ウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層と、 前記基材層の第二面に積層された第1接着層と、 前記第1接着層上に積層された金属箔層と、 第2接着層と、 前記第2接着層上に積層されたシーラント層と、 を備え、 前記第1接着層は、ポリエステルポリオールと芳香族系のイソシアネートから構成されるポリウレタン系接着剤を含有する、 蓄電デバイス用外装材。」 <相違点1> 本件発明1では、「基材保護層」を構成する「ウレタン樹脂」は、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成された」ものであり、また、当該「ウレタン樹脂」の「ガラス転位温度」が、「5℃以上20℃以下である」のに対して、甲1発明では、「コーティング層」を構成する「ウレタン樹脂」の材料やガラス転移温度については特定されていない点。 <相違点2> 本件発明1では、「金属箔層上に積層された腐食防止処理層」を備え、「第2接着層」は、「腐食防止処理層上に積層され」るのに対して、甲1発明では、「アルミニウム箔」上に「第2の接着層」を備えており、「アルミニウム箔」と「第2の接着層」の間に、腐食防止処理層を備える構成とはなっていない点。 <相違点3> 本件発明1では、「第1接着層」が含有する「ポリウレタン系接着剤」は、「ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型」のものであるのに対して、甲1発明では、「第1の接着層」が含有するポリウレタン系接着剤は、ポリエステルポリオールと芳香族系のイソシアネートから構成されるが、ポリエステルポリオールを主剤とし、芳香族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のものであることは特定されていない点。 (2)相違点についての判断 相違点1について検討する。 ア 甲1発明では、「コーティング層」を構成する「ウレタン樹脂」について、その材料やガラス転移温度については特定されておらず、甲1には、「コーティング層」を構成する「ウレタン樹脂」を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたものとすることや、ガラス転移温度を5℃以上20℃以下とすることについて、記載も示唆もない。 イ 他方、甲3技術事項では、「二液硬化型ポリウレタン系接着剤」として、「主剤(ポリオール)」と「硬化剤(ポリイソシアネート)」からなり、「ウレタン結合を形成して硬化するもの」が使用されており(分説3e)、「主剤」としては、「ポリエステルポリオール」(分説3f)、「イソシアネート硬化剤」としては、「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」を含むものが想定されている(分説3g)。 すなわち、甲3技術事項では、ポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤により構成される二液硬化型ウレタン系接着剤が用いられている。 また、甲3技術事項では、「接着剤の被膜」が「柔軟性を保」ち、「包装材料」の「膨張、変形」に「追随でき」る(分説3d2)ようにするために、「二液硬化型ポリウレタン系接着剤」による「硬化被膜」について、「ガラス転移温度を5~20℃の範囲」としている(分説3d1)。 したがって、甲3技術事項では、ポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤により構成される二液硬化型ウレタン系接着剤が用いられ、二液硬化型ポリウレタン系接着剤による硬化被膜のガラス転移温度は、5~20℃の範囲とされている。 ウ しかしながら、甲3技術事項の二液硬化型ポリウレタン系接着剤は、その名称のとおり接着剤であり、「ガスバリアフィルム積層体」における「接着層(5)」を形成するためのものであり(分説3b~3d1)、「接着層(5)」は、「ガスバリアフィルム積層体」を「包装材料として使用する場合」に、その上に他の層が「積層」されることが想定されるものである(分説3h及び3i)。 また、甲3技術事項の「ガスバリアフィルム積層体」は、「食品や非食品及び医薬品等の包装に使用される包装材料に適用される」ものである(分説3a)。 したがって、甲3技術事項において二液硬化型ポリウレタン系接着剤により形成されるのは、甲1発明のような包材の最も外側に設けられるコーティングではなく、他の層をさらに積層することを想定した接着層であり、さらに、甲3技術事項のガスバリアフィルム積層体は、甲1発明のような電池用の包材ではなく、食品等の包装に用いられるものであるから、甲1発明の「コーティング層」に、甲3技術事項の二液硬化型ポリウレタン系接着剤による接着層の構成を適用する動機付けは存在しない。 エ 甲8技術事項は、「鋼板」の「皮膜」を構成する「マトリックス樹脂」について、「ガラス転移点」を「10~50℃の範囲内に設定する」ものであるが、そもそも、甲8技術事項の「マトリックス樹脂」は、ウレタン樹脂であるか否かは不明であり、さらに、甲8技術事項の「被膜」は、甲1発明のような電池用の包材におけるものでもないから、甲1発明に甲8技術事項を適用する動機付けは存在しない。 オ ウレタン樹脂を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートにより構成することは、甲3技術事項だけでなく、甲4~甲7技術事項にも含まれており、周知技術であると認められるが、ウレタン樹脂の材料には当該構成以外にも、様々な組み合わせが存在し、材料によって性質も様々に異なるところ、甲1発明の電池用包材の「コーティング層」に用いられる「ウレタン樹脂」として、当該周知技術の構成を採用することについて、動機付けが存在しない。 特に、本件発明は、「基材保護層」を、「特定のポリオールと硬化剤で形成されたウレタン樹脂により形成」することで「優れた電解液耐性が得られる」ものであり(【0206】)、ポリオールとしては「ポリエステルポリオール」又は「アクリルポリオール」、硬化剤としては「脂肪族系イソシアネート硬化剤」を用いるものである(【0152】)。また、「脂肪族系イソシアネート硬化剤」を、「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」とすることで、「電解液耐性が向上する」ものである。このような構成により電解液耐性が向上することは、本件特許明細書の表3及び表4に示される実施例の評価結果により裏付けられており、特に、表4では、基材保護層の樹脂成分としてG-402を用いた比較例12~15や、当該樹脂成分としてG-403を用いた比較例16~19において電解液耐性が不良となっているところ、G-402は、硬化剤として、「芳香族系イソシアネート硬化剤」を用いるものであり、また、G-403は、ポリオールとして、「ポリエーテルポリオール」を用いるものであり(【0315】)、いずれも、ポリオールや硬化剤が、本件発明の構成とは異なっている。すなわち、本件発明は、基材保護層のウレタン樹脂について、上記のような特定の材料を用いることで、優れた電解液耐性という好適な効果を奏するものである。 そして、甲3~甲7には、本件発明で規定する特定の材料が一例として開示されているものの、それ以外の例についても同様に開示されており(例えば、甲3には、ポリオールとして、本件特許明細書に記載の比較例にあたる「ポリエーテルポリオール」も記載されており(【0043】)、硬化剤としても、同じく本件特許明細書の比較例にあたる「芳香族」系のものも記載されている(【0044】)。)、ウレタン樹脂として、当該特定の材料を、電解液耐性の観点から選択的に用いることは開示されていない。 したがって、甲1発明の電池用包材の「コーティング層」に用いられる「ウレタン樹脂」として、当該特定の材料を用いることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 また、以上の点に加えて、仮に、甲1発明において、当該特定の材料を用いることができたとしても、さらに、「コーティング層」の「ウレタン樹脂」のガラス転移温度を、5~20℃の範囲とすることは想到し得ない。 カ また、甲2及び甲9~甲12技術事項は、ウレタン樹脂を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートにより構成するものや、ガラス転移温度を5℃以上20℃以下とするものではないから、以上の点は、甲2及び甲9~甲12技術事項を参照しても左右されない。 キ 前記ア~カによれば、相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲12技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、申立書において、以下の(ア)、(イ)を主張している。 (ア)「ウレタン樹脂を形成するポリオールとイソシアネートとの組み合わせとして、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとの組み合わせは、甲第3号証乃至甲第7号証の記載(甲第3号証の【0042】-【0044】、甲第4号証の【請求項1】、【請求項4】、甲第5号証の【請求項1】、【請求項3】、【請求項8】、【請求項9】、甲第6号証の【特許請求の範囲】、甲第7号証の第6頁、第275頁、表2)からも、周知である。 よって、甲第1号証の実施例1において、ポリオールとイソシアネート化合物の当該組み合わせを採用することは容易であるし、これによって予想外の効果が奏されることもない。」(申立書38及び39頁) (イ)「甲第1号証の実施例1において、延伸フィルムに形成するコーティング層として、ポリ塩化ビニリデンの代わりにウレタン樹脂を使用する場合に、ウレタン樹脂のガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることは、当業者にとって単なる設計的事項に過ぎない。 例えば、甲第8号証には、物品の表面に形成される皮膜について、耐傷付き性、可とう性、成形加工時の塗膜の割れの観点から、皮膜を形成するマトリックス樹脂のガラス転移点は10~50℃の範囲内に設定することが望まれることが記載されている。(【0010】) また、例えば、甲3号証には、包装材料を形成する積層フィルムに関し、二液硬化型ポリウレタン系接着剤の硬化被膜について、ガラス転移温度を5~20℃の範囲にすることで、通常使用する室温領域では硬化後の接着剤の被膜はゴム状態をなし、柔軟性を保つことができ、加熱処理がなされて包装材料が膨張、変形した場合においてもこの被膜はこのような動きに容易に追随できることが記載されている。(【0041】) 以上の通り、物品の表面に形成されるウレタン樹脂皮膜の耐傷付き性、可とう性、成形加工時の塗膜の割れの観点から、ウレタン樹脂のガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることは周知技術であり、甲第1号証の実施例1に適用することは容易である。 さらに、本件の明細書には、当該ウレタン樹脂のガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることに基づく有利な効果も実証されていない。(本件特許明細書の【表3】、【0308】など)」(申立書39及び40頁) イ しかしながら、まず前記ア(イ)の主張について、前記(2)エのとおり、甲8技術事項の「マトリックス樹脂」は、ウレタン樹脂であるか否かは不明であり、甲8技術事項の「被膜」は、電池用の包材におけるものでもないから、甲1発明に甲8技術事項を適用する動機付けは存在しない。 また、前記(2)ウのとおり、甲3技術事項において二液硬化型ポリウレタン系接着剤により形成されるのは、甲1発明のようなコーティングではなく、接着層であり、さらに、甲3技術事項のガスバリアフィルム積層体は、甲1発明のような電池用の包材ではないから、甲1発明の「コーティング層」に、甲3技術事項の二液硬化型ポリウレタン系接着剤による接着層の構成を適用する動機付けは存在しない。 そして、ガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることの効果について、実証はされていないものの、本件特許明細書の【0160】には、「自己修復性により耐傷性が向上する」、「基材保護層317が硬くなることで脆くなることを抑制しやすい」ことが記載されている。 ウ また、前記ア(ア)の主張について、前記(2)オのとおり、ウレタン樹脂を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートにより構成することは、周知技術であると認められるが、甲1発明の電池用包材の「コーティング層」に用いられるウレタン樹脂として、当該周知技術の構成を採用することについて、動機付けが存在しない。また、前記(2)オのとおり、本件発明は、当該構成を用いることにより、優れた電解液耐性が得られるものであり、甲3~甲7には開示されていない予想外の効果を奏するものであるといえる。加えて、前記(2)オのとおり、仮に、甲1発明において周知技術の構成を採用することができたとしても、さらに、「コーティング層」のウレタン樹脂のガラス転移温度を、5~20℃の範囲とすることは想到し得ない。 エ したがって、申立人の主張は採用できない。 (4)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明2~4と甲1発明とは、少なくとも、前記(1)ケに示した相違点1において相違する。 そして、前記(2)に示したとおり、前記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2~4は、甲1発明及び甲2~甲12技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 2 甲2を主引例とした進歩性について (1)本件発明1と甲2発明との対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 発明特定事項A(「ポリアミドフィルムからなる基材層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲2発明では、「基材層11は、ナイロンフィルムからなり、ナイロンとしては、ポリアミド樹脂が挙げられる」(分説2f)から、「基材層11」は、ポリアミド樹脂のフィルムからなるものと認められる。 したがって、甲2発明の「基材層11」は、本件発明1の「ポリアミドフィルムからなる基材層」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「ポリアミドフィルムからなる基材層」「を備え」る点で一致する。 イ 発明特定事項B(「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層と、」)及びH(「を備え、」)について (ア)甲2発明の「アクリル樹脂皮膜層18」は、「基材層の表面」に「設け」られ(分説2e)、「積層体10の外部に面して」いる(分説2c)から、「基材層」(「基材層11」と同じものを指すと認める。)を「積層体10」の外部から保護する作用・効果を当然備えていると認められる。 したがって、甲2発明の「アクリル樹脂皮膜層18」は、本件発明1の「前記基材層の第一面に形成された基材保護層」に相当する。 (イ)甲2発明の「アクリル樹脂皮膜層18」は、「主剤は、アクリル樹脂」であり、「イソシアネート系硬化剤でウレタン結合を形成させたいわゆる2液硬化型」である(分説2e)から、アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤とでウレタン結合を形成させたものであると認められる。 そして、一般に、ウレタン結合を有する化合物はウレタン樹脂と呼ばれるから、甲2発明の「アクリル樹脂皮膜層18」は、アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなるものと認められる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、甲2発明と本件発明1とは、「イソシアネート系硬化剤により形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層」「を備え」る点で共通する。 他方、本件発明1では、「基材保護層」を構成する「ウレタン樹脂」は、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成された」ものであるのに対して、甲2発明では、「アクリル樹脂皮膜層18」を構成するウレタン樹脂は、アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤とで形成されたものであり、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールを用いることや、イソシアネート系硬化剤として、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するものを用いることは、特定されていない。 ウ 発明特定事項C(「前記基材層の第二面に積層された第1接着層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲2発明では、「積層体10」が、「接着層17(1)、基材層11及びアクリル樹脂被膜層18をこの順に備え」る(分説2c)から、「接着層17(1)」は、「基材層11」の「アクリル樹脂被膜層18」が形成された面とは反対側の面に、積層されているといえる。 したがって、甲2発明の「接着層17(1)」は、本件発明1の「前記基材層の第二面に積層された第1接着層」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「前記基材層の第二面に積層された第1接着層」「を備え」る点で一致する。 エ 発明特定事項D(「前記第1接着層上に積層された金属箔層と、」)及びH(「を備え、」)について (ア)甲2発明では、「バリア層12」(「アルミニウム12」と同じものを指すと認める。)は、「厚さが20~80μmのアルミニウム」である(分説2g)から、金属箔により構成される層であるといえる。 また、甲2発明では、「積層体10」が、「アルミニウム12、化成処理層14(1)、接着層17(1)」を「この順に備え」ており(分説2c)、「化成処理」は「アルミニウム表面の接着性」を「向上させ」るものである(分説2h)から、「アルミニウム12」の表面に「化成処理層14(1)」を設けて接着性を向上させて、「アルミニウム12」と「接着層17(1)」を積層していると見ることができる。 したがって、甲2発明の「アルミニウム12」は、本件発明1の「前記第1接着層上に積層された金属箔層」に相当する。 (イ)なお、本件特許の請求項1を引用する請求項2では、「前記第1接着層と前記金属箔層との間に形成された第2腐食防止処理層をさらに備える」ことが特定されているから、請求項1に係る発明は、「第1接着層」と「金属箔層」との間に何も層を備えない構成だけでなく、「第1接着層」と「金属箔層」との間に「第2腐食防止処理層」を備える構成も含んでいるものと認められる。 よって、本件発明1の発明特定事項Dは、「第1接着層」上に、何も層を介さずに「金属箔層」が「積層」されるものだけでなく、「第2腐食防止処理層」を介して「積層」されるものも含んでいるものと認められる。 そして、後述のオのとおり、甲2発明の「化成処理層」は、本件発明の「腐食防止処理層」に対応するものであるから、「接着層17(1)」上に、「化成処理層14(1)」を介して「アルミニウム12」が積層される甲2発明の構成は、発明特定事項Dに含まれるものと認められる。 (ウ)したがって、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1接着層上に積層された金属箔層」「を備え」る点で一致する。 オ 発明特定事項E(「前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲2発明では、「積層体」は、「化成処理層14(2)、アルミニウム12」を「この順に備え」(分説2c)ており、また、「化成処理」は、「耐酸性皮膜を形成」し、「アルミニウム表面」の「腐食」を「防止」するものである(分説2h)から、「化成処理層14(2)」は、腐食を防止するための処理により形成された層であるといえる。 したがって、甲2発明の「化成処理層14(2)」は、「前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層」「を備え」る点で一致する。 カ 発明特定事項F(「前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲2発明では、「積層体」は、「接着層17(2)、化成処理層14(2)」を「この順に備え」る(分説2c)から、「接着層17(2)」は、「化成処理層14(2)」上に積層されていると認められる。 したがって、甲2発明の「接着層17(2)」は、本件発明1の「前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層」「を備え」る点で一致する。 キ 発明特定事項G(「前記第2接着層上に積層されたシーラント層と、」)及びH(「を備え、」)について 甲2発明では、「積層体」は、「ヒートシール層13、接着層17(2)」を「この順に備え」る(分説2c)から、「ヒートシール層13」は、「接着層17(2)」上に積層されていると認められる。 また、甲2発明の「ヒートシール層13」を「ヒートシール性」を備えた層であり(分説2i)、シーラント層であるといえる。 したがって、甲2発明の「ヒートシール層13」は、本件発明1の「前記第2接着層上に積層されたシーラント層」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「前記第2接着層上に積層されたシーラント層」「を備え」る点で一致する。 ク 発明特定事項I(「前記第1接着層は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有し、」)について 甲2発明では、「基材層とアルミニウム」を、「2液硬化型の接着剤によりドライラミネートし、2液硬化型の接着剤とは、主剤と硬化剤とからなり、主剤が酸成分と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを少なくとも1種含むアルコール成分からなるポリエステル系樹脂からなり、硬化剤がポリイソシアネート成分からなるものであ」る(分説2d)から、接着層17(1)は、主剤が酸成分と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを少なくとも1種含むアルコール成分からなるポリエステル系樹脂からなり、硬化剤がポリイソシアネート成分からなる2液硬化型の接着剤から構成されるものと認められる。 そして、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを少なくとも1種含むアルコール成分からなるポリエステル系樹脂は、ポリエステルポリオールといえ、また、一般に、イソシアネートは芳香族系又は脂肪族系に大別されるから、甲2発明の接着層17(1)は、ポリエステルポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした2液硬化型の接着剤から構成されているといえる。 また、当該2液硬化型の接着剤は、ポリオールとイソシアネートによるウレタン結合を当然有するものと認められ、ポリウレタン系接着剤であるといえる。 したがって、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1接着層は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有」する点で一致する。 ケ 発明特定事項J(「前記ウレタン樹脂のガラス転位温度が5℃以上20℃以下である、」)について 甲2発明では、「アクリル樹脂皮膜層18」の「主剤」である「アクリル樹脂」は「ガラス転移温度30~80℃」であるが(分説2e)、「アクリル樹脂皮膜層18」を構成するウレタン樹脂(前記イ(イ))のガラス転移温度については、特定されていない。 コ 発明特定事項K(「蓄電デバイス用外装材。」)について 甲2発明の「リチウムイオン電池用包装材料」(分説2k)は、電池、すなわち蓄電デバイスに用いられる包装材料であるから、本件発明1の「蓄電デバイス用外装材」に相当する。 サ 一致点及び相違点 前記ア~コによれば、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「 ポリアミドフィルムからなる基材層と、 イソシアネート系硬化剤により形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層と、 前記基材層の第二面に積層された第1接着層と、 前記第1接着層上に積層された金属箔層と、 前記金属箔層上に積層された腐食防止処理層と、 前記腐食防止処理層上に積層された第2接着層と、 前記第2接着層上に積層されたシーラント層と、 を備え、 前記第1接着層は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有する 蓄電デバイス用外装材。」 <相違点> 本件発明1では、「基材保護層」を構成する「ウレタン樹脂」は、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成された」ものであり、また、当該「ウレタン樹脂」の「ガラス転位温度」が、「5℃以上20℃以下である」のに対して、甲2発明では、「アクリル樹脂皮膜層18」を構成するウレタン樹脂は、アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤とで形成されたものであり、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールを用いることや、イソシアネート系硬化剤として、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するものを用いることは特定されておらず、当該ウレタン樹脂のガラス転移温度についても特定されていない点。 (2)相違点についての判断 ア 甲2には、「アクリル樹脂皮膜層18」を構成するウレタン樹脂について、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたものとすることや、ガラス転移温度を5℃以上20℃以下とすることについて、記載も示唆もない。 イ 他方、甲3技術事項では、ポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤により構成される二液硬化型ウレタン系接着剤が用いられ、二液硬化型ポリウレタン系接着剤による硬化被膜のガラス転移温度は、5~20℃の範囲とされている(前記1(2)イ)が、甲3技術事項の二液硬化型ポリウレタン系接着剤は、その上に他の層が積層される接着層を形成するためのものであり、また、甲3技術事項のガスバリアフィルム積層体は、食品や非食品及び医薬品等の包装に使用される包装材料に適用されるものである(前記1(2)ウ)。 したがって、甲3技術事項において二液硬化型ポリウレタン系接着剤により形成されるのは、甲2発明のような包材の最も外側に設けられる被膜ではなく、他の層をさらに積層することを想定した接着層であり、さらに、甲3技術事項のガスバリアフィルム積層体は、甲2発明のような電池用の包材ではなく、食品等の包装に用いられるものであるから、甲2発明の「アクリル樹脂皮膜層18」に、甲3技術事項の二液硬化型ポリウレタン系接着剤による接着層の構成を適用する動機付けは存在しない。 ウ 甲8技術事項は、「鋼板」の「皮膜」を構成する「マトリックス樹脂」について、「ガラス転移点」を「10~50℃の範囲内に設定する」ものであるが、そもそも、甲8技術事項の「マトリックス樹脂」は、ウレタン樹脂であるか否かは不明であり、さらに、甲8技術事項の「被膜」は、甲2発明のような電池用の包材におけるものでもないから、甲2発明に甲8技術事項を適用する動機付けは存在しない。 エ ウレタン樹脂を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートにより構成することは、周知技術であると認められるが(前記1(2)オ)、ウレタン樹脂の材料には当該構成以外にも、様々な組み合わせが存在し、材料によって性質も様々に異なるところ、甲2発明の電池用包材の「アクリル樹脂皮膜層18」に用いられるウレタン樹脂として、当該周知技術の構成を採用することについて、動機付けが存在しない。 特に、前記1(2)オのとおり、本件発明は、基材保護層のウレタン樹脂について、特定の材料を用いることで、優れた電解液耐性という好適な効果を奏するものであるところ、甲3~甲7には、本件発明で規定する特定の材料が一例として開示されているものの、それ以外の例についても同様に開示されており、ウレタン樹脂として、当該特定の材料を、電解液耐性の観点から選択的に用いることは開示されていない。 したがって、甲2発明の電池用包材の「アクリル樹脂皮膜層18」に用いられるウレタン樹脂として、当該特定の材料を用いることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 加えて、仮に、甲2発明において、当該特定の材料を用いることができたとしても、さらに、「アクリル樹脂皮膜層18」のウレタン樹脂のガラス転移温度を、5~20℃の範囲とすることは想到し得ない。 オ また、甲1及び甲9~甲12技術事項は、ウレタン樹脂を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートにより構成するものや、ガラス転移温度を5℃以上20℃以下とするものではないから、以上の点は、甲1及び甲9~甲12技術事項を参照しても左右されない。 カ 前記ア~オによれば、相違点に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、甲2発明並びに甲1及び甲3~甲12技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、申立書において、以下の(ア)、(イ)を主張している。 (ア)「甲第2号証の実施例1において、基材保護層に相当するアクリル樹脂皮膜は、前記の通り、ウレタン樹脂を含む。 また、ウレタン樹脂を形成するポリオールとイソシアネートとの組み合わせとして、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとの組み合わせは、甲第3号証乃至甲第7号証の記載からも、周知であり、甲第2号証の実施例1において、当該組み合わせを採用することは容易であるし、これによって予想外の効果が奏されることもない。」(申立書43頁) (イ)「甲第2号証の実施例1において、アクリル樹脂皮膜の耐傷付き性、成形性等を考慮し、アクリル樹脂皮膜に含まれるウレタン樹脂のガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることは、当業者にとって単なる設計的事項に過ぎない。 例えば、甲第8号証には、前記の通り、物品の表面に形成される皮膜について、耐傷付き性、可とう性、成形加工時の塗膜の割れの観点から、皮膜を形成するマトリックス樹脂のガラス転移点は10~50℃の範囲内に設定することが望まれることが記載されている。(【0010】) また、例えば、甲3号証には、前記の通り、包装材料を形成する積層フィルムに関し、二液硬化型ポリウレタン系接着剤の硬化被膜について、ガラス転移温度を5~20℃の範囲にすることで、通常使用する室温領域では硬化後の接着剤の被膜はゴム状態をなし、柔軟性を保つことができ、加熱処理がなされて包装材料が膨張、変形した場合においてもこの被膜はこのような動きに容易に追随できることが記載されている。(【0041】) 以上の通り、物品の表面に形成されるウレタン樹脂皮膜の耐傷付き性、可とう性、成形加工時の塗膜の割れの観点から、ウレタン樹脂のガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることは周知技術であり、甲第2号証の実施例1に適用することは容易である。」(申立書43及び44頁) イ しかしながら、まず前記ア(イ)の主張について、前記(2)ウのとおり、甲8技術事項の「マトリックス樹脂」は、ウレタン樹脂であるか否かは不明であり、甲8技術事項の「被膜」は、電池用の包材におけるものでもないから、甲2発明に甲8技術事項を適用する動機付けは存在しない。 また、前記(2)イのとおり、甲3技術事項において二液硬化型ポリウレタン系接着剤により形成されるのは、甲2発明のような被膜ではなく、接着層であり、さらに、甲3技術事項のガスバリアフィルム積層体は、甲2発明のような電池用の包材ではないから、甲2発明の「アクリル樹脂皮膜層18」に、甲3技術事項の二液硬化型ポリウレタン系接着剤による接着層の構成を適用する動機付けは存在しない。 そして、ガラス転移温度を5℃以上20℃以下の範囲とすることについて、本件特許明細書の【0160】には、「自己修復性により耐傷性が向上する」、「基材保護層317が硬くなることで脆くなることを抑制しやすい」ことが記載されており、単なる設計事項であるとは認められない。 ウ また、前記ア(ア)の主張について、前記(2)エのとおり、ウレタン樹脂を、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートにより構成することは、周知技術であると認められるが、甲2発明の電池用包材の「アクリル樹脂皮膜層18」に用いられるウレタン樹脂として、当該周知技術の構成を採用することについて、動機付けが存在しない。また、前記(2)エのとおり、本件発明は、当該構成を用いることにより、優れた電解液耐性が得られるものであり、甲3~甲7には開示されていない予想外の効果を奏するものであるといえる。加えて、前記(2)エのとおり、仮に、甲2発明において周知技術の構成を採用することができたとしても、さらに、「アクリル樹脂皮膜層18」のウレタン樹脂のガラス転移温度を、5~20℃の範囲とすることは想到し得ない。 エ したがって、申立人の主張は採用できない。 (4)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明2~4と甲2発明とは、少なくとも、前記(1)サに示した相違点において相違する。 そして、前記(2)に示したとおり、前記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2~4は、甲2発明並びに甲1及び甲3~甲12技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 第6 申立理由2(サポート要件)についての判断 1 サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 2 サポート要件の判断 (1)本件特許明細書には、【発明が解決しようとする課題】として、「本発明は、信頼性の高い蓄電デバイス用外装材の提供を目的とする。」(【0012】)との記載が認められるから、本件発明の課題は、信頼性の高い蓄電デバイス用外装材を提供することであると認められる。 そして、本件特許明細書には、【背景技術】において、「蓄電デバイス」の「外装材」である「ラミネートフィルム」について、「基材層」には「ポリアミドフィルムが好適に使用される」(【0003】)が、「ポリアミドフィルムは、充分な電解液耐性を有していない」ため、「電解液によって基材層が溶解し、内側のアルミニウム箔層を腐食させるおそれがある」(【0006】)との、従来の蓄電デバイス用外装材における問題点が記載されており、また、本件特許明細書には、「高温耐性や湿度耐性、電解液耐性といった信頼性を高めることが可能となる」(下線は強調、【0069】)、「高温耐性や湿度耐性、電解液耐性といった信頼性を向上させることが可能となる」(下線は強調、【0206】)との記載が認められるから、本件発明の課題における、蓄電デバイス用外装材の「信頼性」には、電解液耐性が含まれるものと認められる。 (2)電解液耐性を高める構成について、本件特許明細書には、「基材層の外側の面に基材保護層」を「積層」することで、「外装材」は「優れた電解液耐性を有し」、「外装材の基材層側の表面に電解液が付着しても、基材層、及び金属箔層の基材層側が変質することを抑制できる」(【0206】)ことが記載されている。また、「基材保護層」を、「特定のポリオールと硬化剤で形成されたウレタン樹脂により形成」することで「優れた電解液耐性が得られ」(【0206】)、ポリオールとしては「ポリエステルポリオール」又は「アクリルポリオール」、硬化剤としては「脂肪族系イソシアネート硬化剤」が用いられる(【0152】)ことが記載されており、さらに、「脂肪族系イソシアネート硬化剤」としては、「電解液耐性が向上することから、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」「が好ましい」(【0158】)ことが記載されている。 このような構成により電解液耐性が向上することは、本件特許明細書の表3及び表4に示される実施例の評価結果により裏付けられており、特に、表4では、基材保護層の樹脂成分としてG-402を用いた比較例12~15や、当該樹脂成分としてG-403を用いた比較例16~19において電解液耐性が不良となっているところ、G-402は、硬化剤として、「芳香族系イソシアネート硬化剤」を用いるものであり、また、G-403は、ポリオールとして、「ポリエーテルポリオール」を用いるものであり(【0315】)、いずれも、ポリオールや硬化剤が、本件発明の構成とは異なっている。 すなわち、本件特許明細書には、基材層の外側の面に、アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートからなる硬化剤とで形成されたウレタン樹脂による基材保護層を備えることが、電解液耐性を高めるための、本件発明の課題解決手段として記載されていると認められる。 そして、本件発明1は、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなり、前記基材層の第一面に形成された基材保護層」(発明特定事項B)を備えることが特定されているから、当該課題解決手段を備えているといえる。 (3)したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められ、サポート要件を満たしている。 本件発明2~4についても同様である。 3 申立人の主張について (1)申立人は、申立書において、以下のア、イを主張している。 ア 「本件特許明細書の【0012】には、【発明が解決しようとする課題】に関し、「本発明は、信頼性の高い蓄電デバイス用外装材の提供を目的とする。」と記載されている。 一方、本件特許明細書の比較例8,9で製造された外装材は、それぞれ、実施例15,16と同じく、基材保護層317を形成する塗布液G-301(DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解した塗布液。)が使用されており、基材保護層を形成する樹脂のTgは20℃であり、本件発明1-4を満たしている。(【0301】,【0306】,【表3】) ところが、比較例8,9の外装材は、本件発明1-4を満たしているにも関わらず、信頼性の評価が「不良」であり、本件発明の前記課題を解決できない結果となっている。(【表3】) したがって、本件発明1-4は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、サポート要件を満たしていない。」(申立書45及び46頁) イ 「本件発明1には、基材保護層について、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂」からなり、「前記ウレタン樹脂のガラス転移温度が5℃以上20℃以下である」ことが規定されている。 これに対して、本件特許明細書において、基材保護層のガラス転移温度Tgが測定されている実施例及び比較例は、実施例15,16及び比較例8,9のみであり、いずれも、特定の塗布液G-301(DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解した塗布液。)のみが使用され、ガラス転移温度Tgは20℃の結果のみである。 本件特許明細書の実施例15,16及び比較例8,9の1種類の基材保護層の結果から、本件発明1-4に包含される広範な範囲について、信頼性の高い蓄電デバイス用外装材が提供されるとは到底認識することはできない。 そうすると、本件発明1-4の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、サポート要件を満たしていない。」(申立書46頁) (2)しかしながら、まず、前記(1)アの主張について、確かに、比較例8,9は信頼性の評価が「不良」となっている(表3)が、ここでの信頼性の評価は、「各条件のサンプルに対して、深絞り用金型にて5mm絞った後、温度85℃、湿度90%環境下にて1週間放置し、深絞り部の層間剥離を観察した」ものであり(【0305】)、「電解液耐性の評価」(【0303】)は別途行われており、比較例8,9ともに「優」となっている(表3)。 そして、前記2(1)のとおり、本件発明の課題における、蓄電デバイス用外装材の「信頼性」には、電解液耐性が含まれるものと認められるから、本件特許明細書に記載された比較例8,9は、アクリルポリオール(a2)と1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートからなる塗布液により形成された基材保護層317を備えることにより、本件発明の課題を解決するものといえる。 したがって、前記(1)アの主張は採用できない。 (3)また、前記(1)イの主張について、前記2(2)のとおり、本件発明の課題解決手段は、基材層の外側の面に、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを硬化剤として使用して形成されたウレタン樹脂による基材保護層を備えることであり、本件発明1は、発明特定事項Bにおいて当該課題解決手段を備えている(本件発明2~4についても同様。)。 そして、本件特許明細書の【0295】~【0308】に記載された「第四実施形態」の「実施例」では、1種類の基材保護層についての評価結果しか示されていないものの、前記2(2)のとおり、本件特許明細書には、「基材層の外側の面に基材保護層」を「積層」することで、「外装材」は「優れた電解液耐性を有し」、「外装材の基材層側の表面に電解液が付着しても、基材層、及び金属箔層の基材層側が変質することを抑制できる」(【0206】)こと、「基材保護層」を、「特定のポリオールと硬化剤で形成されたウレタン樹脂により形成」することで「優れた電解液耐性が得られ」(【0206】)、ポリオールとしては「ポリエステルポリオール」又は「アクリルポリオール」、硬化剤としては「脂肪族系イソシアネート硬化剤」が用いられる(【0152】)こと、「脂肪族系イソシアネート硬化剤」としては、「電解液耐性が向上することから、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」「が好ましい」(【0158】)ことが記載されているから、上記の課題解決手段により、電解液耐性を高めることができ、信頼性の高い蓄電デバイス用外装材を提供するという本件発明の課題を解決することができることを、当業者は認識できるものと認められる。 よって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められ、前記(1)イの主張は採用できない。 (4)したがって、申立人の主張は採用できない。 第7 申立理由3(実施可能要件)についての判断 1 実施可能要件の判断基準 前記第2のとおり、本件発明1~4は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 2 実施可能要件の判断 (1)本件発明1の「蓄電デバイス用外装材」は、「基材層」、「基材保護層」、「第1接着層」、「金属箔層」、「腐食防止処理層」、「第2接着層」及び「シーラント層」を備える(発明特定事項A~H)が、当該構成の蓄電デバイス用外装材については、本件特許明細書の第四実施形態(【0151】~【0207】)において、各層の材料等について詳細な説明がされている。 (2)そして、本件発明1では、「基材保護層」は、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂からなり」(発明特定事項B)、「第1接着層」は、「ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオールのいずれかからなるポリオールを主剤とし、芳香族系又は脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤を含有」する(発明特定事項I)が、いずれの構成についても、第四実施形態において具体的な材料の例とともに説明がされている(【0152】~【0158】を参照。)。 (3)また、本件発明1では、「前記ウレタン樹脂のガラス転位温度が5℃以上20℃以下」である(発明特定事項J)が、当該構成についても、【0160】において、ウレタン樹脂のガラス転位温度が意味するものや、当該温度範囲とすることによる効果の説明があるとともに、第四実施形態の実施例(【0295】~【0308】)において、「形成される樹脂のガラス転移温度Tgが所望の温度となるように」「ポリオールと硬化剤との比率」を「調整」すること(【0301】)が記載されており、例えば当該方法により、ウレタン樹脂のガラス転移温度Tgを所望の温度とすることができるものと理解される。 (4)したがって、本件発明1について、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるものと認められ、本件発明1は、実施可能要件を満たしている。 本件発明2~4についても同様である。 3 申立人の主張について (1)申立人は、申立書において、以下の主張をしている。 「本件発明1には、基材保護層について、「アクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成されたウレタン樹脂」からなり、「前記ウレタン樹脂のガラス転移温度が5℃以上20℃以下である」ことが規定されている。 これに対して、本件特許明細書において、基材保護層のガラス転移温度Tgが測定されている実施例及び比較例は、実施例15,16及び比較例8,9のみであり、いずれも、特定の塗布液G-301(DIC社製のアクリディック(アクリルポリオール(a2))と、脂肪族系イソシアネート硬化剤である1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを、モル比(NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解した塗布液。)のみが使用され、ガラス転移温度Tgは20℃の結果のみである。 本件特許明細書には、任意のアクリルポリオール又はポリエステルポリオールと、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する硬化剤とで形成された、広範なウレタン樹脂のガラス転移温度Tgを5~20℃の範囲に設定するための具体的な手法について記載されておらず、実施例15,16及び比較例8,9の1種類の基材保護層の結果から、本件発明1-4に包含される広範なウレタン樹脂について、Tgを5~20℃の範囲に設定することには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を要するといえる。 よって、本件特許明細書は、本件発明1-4を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、実施可能要件を満たしていない。」(申立書46及び47頁) (2)しかしながら、前記2(3)のとおり、第四実施形態の実施例には、「形成される樹脂のガラス転移温度Tgが所望の温度となるように」「ポリオールと硬化剤との比率」を「調整」すること(【0301】)が記載されており、例えば当該方法により、ウレタン樹脂のガラス転移温度Tgを所望の温度とすることができるものと理解されるから、本件発明1~4に含まれるウレタン樹脂について、ガラス転移温度Tgを5~20℃の範囲に設定することが、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を要するとまでは認められない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700551

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