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特許異議申立

2024-700438

蓄電装置用外装材

審判番号
2024-700438
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-000466
登録番号
7377416
請求日
2024年05月09日
審決日
2024年07月29日
公報発行日
2024年08月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【異議申立人】田中 俊子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 ▲高▼橋 徳浩
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7377416号発明「蓄電装置用外装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7377416号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7377416号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年6月2日の出願である特願2016-111009号の一部を令和4年1月5日に新たな特許出願としたものであって、令和5年11月1日にその特許権の設定登録がなされ、令和5年11月10日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1ないし4に係る特許に対して、令和6年5月9日に特許異議申立人 田中 俊子により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 特許第7377416号の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及びシーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材であって、 前記シーラント層は、炭素数が500以上である分岐鎖を有するプロピレン系分岐ポリマーが含まれるプロピレン系分岐ポリマー含有層を含み、 前記シーラント層中の前記プロピレン系分岐ポリマーの含有量が、前記シーラント層の総質量に対して、1.0~50.0質量%であり、 前記シーラント層が、(A)プロピレン-エチレンランダム共重合体60~95質量%と、(B)ブテン-1をコモノマーとする融点150℃以下のポリオレフィン系エラストマー5~40質量%と、を含有する樹脂組成物を含む最内層を含み、 前記(B)ポリオレフィン系エラストマーは、(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、を含む、電解液を有する蓄電装置に用いられる蓄電装置用外装材。 【請求項2】 前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの少なくとも1層が前記プロピレン系分岐ポリマー含有層である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項3】 前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの前記金属箔層に最も近い層が、前記プロピレン系分岐ポリマー含有層である、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項4】 前記金属箔層と前記シーラント層との間に接着剤層を更に備え、 前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも一種の硬化剤と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。」 第3 申立理由の概要 1.申立理由1(進歩性) 請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第8号証に記載された技術事項に基いて、また、請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2.申立理由2(明確性) 請求項1ないし4に係る発明は、明確ではないから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 甲第1号証:国際公開第2015/152397号 甲第2号証:特開2013-222555号公報 甲第3号証:特開2013-222545号公報 甲第4号証:特開2015-98558号公報 甲第5号証:特開2022-99784号公報 甲第6号証:特開2010-234794号公報 甲第7号証:国際公開第2014/181862号 甲第8号証:国際公開第2018/030495号 第4 甲第1号証ないし甲第8号証の記載事項 1.甲第1号証 (1)甲第1号証(国際公開第2015/152397号)には、「リチウム電池用外装材10」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「[0003] リチウム電池は、電池内容物として、正極材、負極材と共に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの浸透力を有する非プロトン性の溶媒に、電解質としてリチウム塩を溶解した電解液、もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層を含んでいる。このような浸透力を有する溶媒がシーラントとなる熱融着性フィルム層を通過すると、アルミニウム箔層と熱融着性フィルム層との間のラミネート強度が低下し、アルミニウム箔層と熱融着性フィルム層との間の隙間から電解液が蒸発する(ドライアップ)といった問題があった。」 イ.「[0026] 先ず、本発明を適用した一実施形態に係るリチウム電池用外装材(リチウムイオン電池用外装材)について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態であるリチウム電池用外装材の構成を模式的に示す断面図である。 図1に示すように、本実施形態に係るリチウム電池用外装材(以下、単に「外装材」と称する)10は、基材層(SB)11、接着剤層(AD)12、アルミニウム箔層(AL)13、腐食防止処理層(CL)14、接着性樹脂層(AR)15、シーラント層(SL)16を備えて概略構成されている。より具体的には、リチウム電池用外装材10は、基材層(SB)11の一方の面上に、接着剤層(AD)12、アルミニウム箔層(AL)13、腐食防止処理層(CL)14、接着性樹脂層(AR)15、シーラント層(SL)16が順次積層されて構成されている。」 ウ.「[0090] なお、図1に示す外装材10では、腐食防止処理層(CL)14がアルミニウム箔層(AL)13の接着性樹脂層(AR)15に近い面(対向する面)に設けられた例について説明しているが、本発明はこの形態に限定されない。具体的には、例えば、アルミニウム箔層(AL)13の接着剤層(AD)12に近い面にも、同様な処理を施して腐食防止処理層(CL)14を設ける構成としてもよい。 [0091]<接着性樹脂層(AR)> 接着性樹脂層(AR)15は、主成分となる接着性樹脂組成物と添加剤成分とを含んで概略構成されている。 接着性樹脂組成物は、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分と、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分とを含有する。」 エ.「[0101] 変性ポリオレフィン樹脂(a)としては、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂が好ましく、例えば、三井化学社製の「アドマー」、三菱化学社製の「モディック」、日本ポリエチレン社製の「アドテックス」などが適している。 このような変性ポリオレフィン樹脂(a)成分は、各種金属や各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層(AR)15に密着性を付与することができ、耐電解液性を向上することができる。」 オ.「[0107](アタクチック構造のポリプロピレン又はプロピレン-αオレフィン共重合体(A)) 接着性樹脂層(AR)15は、添加剤成分として、アタクチック構造のポリプロピレン又はプロピレン-αオレフィン共重合体(以下、単に、「成分(A)」と称する)を含むことを特徴としている。ここで、成分(A)は、完全非晶性の樹脂成分である。」 カ.「[0117](アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(B)) 接着性樹脂層(AR)15は、添加剤成分として、上述した成分(A)に加えて、アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(以下、単に「成分(B)」と称する)をさらに含むことが好ましい。 ここで、成分(B)は、接着性樹脂層(AR)15の主成分である接着性樹脂成分において、変性ポリオレフィン樹脂(a)が特にポリプロピレン系の接着性樹脂の場合に相溶ゴム成分として作用し、当該変性ポリオレフィン樹脂(a)の結晶化を抑制する。」 キ.「[0121] 接着性樹脂層(AR)15は、接着性樹脂組成物(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分ならびにマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分)および添加剤成分(すなわち、成分(A)ならびに成分(B))の他に、必要に応じて各種添加剤、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤などを含有してもよい。 接着性樹脂層(AR)15の厚さは、特に限定されないが、応力緩和や水分・電解液透過の観点から、シーラント層と同じもしくはそれ以下であることが好ましい。 [0122]<シーラント層(SL)> シーラント層(SL)16には、外装材10のヒートシールによる封止性が求められ、一般的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、チレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体あるいはそのエステル化物あるいはイオン架橋物などが挙げられる。シーラント層(SL)16は、上述した1種あるいは2種以上のブレンドからなる材料の単層から構成されていてもよく、シーラントとして求められる他の要求性能に応じて多層構造を形成していてもよい。該多層構造には、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全ケン化物や、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全ケン化物といった、ガスバリア性を有する樹脂を介在させるということも含まれる。」 ク.「[0138]<接着性樹脂層(AR)> AR-[(a)+(b)]:非相容系ゴムとしてエチレン-プロピレンゴムを配合したランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物(三井化学社製)を用いた。 AR-(A):アタクチック構造のポリプロピレン又はプロピレン-αオレフィン共重合体(住友化学社製、「タフセレンH」)を用いた。 AR-(B):アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(三井化学社製、「タフマーXM」)を用いた。 [0139]<シーラント層(SL)> SL:60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いた。」 ケ.「[0142] なお、実施例1~6及び比較例1のリチウム電池用外装材は、接着性樹脂層(AR)の成分をそれぞれ変更して得られている(下記の表1を参照)。また、実施例1~6及び比較例1のリチウム電池用外装材において、腐食防止処理は、いずれも「CL1+CL2+CL4」の組み合わせで処理を行った。 一方、実施例7~11のリチウム電池用外装材は、腐食防止処理の組合せをそれぞれ変更して得られている(下記の表2を参照)。また、実施例7~11のリチウム電池用外装材において、接着性樹脂層(AR)の成分は、いずれも「(a)+(b)=60、(A)=20、(B)=20」の組成比とした。」 コ.「[0149] [表1] [図:0001413377000001.jpg] 」 サ.「[0151] 表1に示すように、比較例1では、接着性樹脂層(AR)が添加剤成分(A)を含まないため、電解液ラミネート強度が低下し、電解液ヒートシールのバースト幅が小さく、デガッシングヒートシール強度及び成型白化の評価項目で特性が不可となった。 これに対して、実施例1~6では、接着性樹脂層(AR)が添加剤成分(A)を含んでいるため、電解液ラミネート強度が良好であった。なお、添加剤成分(A)の含有量が2.5wt%である実施例2では、実施例1、2~6に比べて電解液ラミネート強度に劣るが、実用上では問題がない程度の電解液ラミネート強度を有する。さらに添加剤成分(A)に加えて添加剤成分(B)を添加した実施例2,4,6では、電解液ヒートシール強度、デガッシングヒートシール強度、屈曲絶縁および成形白化の評価項目がさらに良好な結果となった。」 (2)上記記載から、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.甲第1号証に記載の「リチウム電池用外装材10」は、上記「(1)イ.」の段落[0026]の記載によれば、基材層(SB)11の一方の面上に、接着剤層(AD)12、アルミニウム箔層(AL)13、腐食防止処理層(CL)14、接着性樹脂層(AR)15、シーラント層(SL)16が順次積層されて構成されてなるものである。 イ.上記「(1)ウ.」の段落[0090]の記載によれば、アルミニウム箔層(AL)13は、接着性樹脂層(AR)15に近い面に腐食防止処理層(CL)14が設けられたものであるか、または、接着剤層(AD)12に近い面にも腐食防止処理層(CL)14が設けられたものである。 ウ.上記「(1)エ.」の段落[0101]の記載によれば、接着性樹脂層(AR)15は、密着性及び耐電解液性を有するものである。 エ.上記「(1)ウ.」の段落[0091]、「(1)オ.」の段落[0107]、「(1)カ.」の段落[0117]、「(1)ク.」の段落[0138]の記載によれば、接着性樹脂層(AR)15は、接着性樹脂組成物及び添加剤成分を含み、接着性樹脂組成物として、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分及びマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分を含み、添加剤成分として、成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)として、アタクチック構造のポリプロピレンまたはプロピレン-αオレフィン共重合体(住友化学社製、「タフセレンH」)を用い、成分(B)として、アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(三井化学社製、「タフマーXM」)を用いたものである。 オ.上記「(1)キ.」の段落[0121]の記載によれば、接着性樹脂層(AR)15は、厚さがシーラント層(SL)16と同じもしくはそれ以下である。 カ.上記「(1)ウ.」の段落[0091]、「(1)オ.」の段落[0107]、「(1)カ.」の段落[0117]、「(1)ケ.」の段落[0142]、「(1)サ.」の段落[0151]の記載、及び、「(1)コ.」の段落[0149]の[表1]によれば、実施例4のリチウム電池用外装材10の接着性樹脂層(AR)15の成分は、[変性ポリオレフィン樹脂(a)成分及びマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分]:[成分(A)]:[成分(B)]=60wt%:20wt%:20wt%である。 キ.上記「(1)キ.」の段落[0122]の記載によれば、シーラント層(SL)16は、リチウム電池用外装材10のヒートシールによる封止性を有するものである。 ク.上記「(1)ク.」の段落[0139]の記載によれば、シーラント層(SL)16は、60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いたものである。 ケ.上記「(1)ア.」の段落[0003]、「(1)イ.」の段落[0026]の記載によれば、リチウム電池用外装材10は、電池内容物として電解液を含んでいるリチウム電池に用いられるものである。 (3)以上のことから、実施例4に着目し、上記記載を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「基材層(SB)11の一方の面上に、接着剤層(AD)12、アルミニウム箔層(AL)13、腐食防止処理層(CL)14、接着性樹脂層(AR)15、シーラント層(SL)16が順次積層されて構成されてなるリチウム電池用外装材10であって、 アルミニウム箔層(AL)13は、接着性樹脂層(AR)15に近い面に腐食防止処理層(CL)14が設けられたものであるか、または、接着剤層(AD)12に近い面にも腐食防止処理層(CL)14が設けられたものであり、 接着性樹脂層(AR)15は、密着性及び耐電解液性を有し、 接着性樹脂層(AR)15は、接着性樹脂組成物及び添加剤成分を含み、接着性樹脂組成物として、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分及びマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分を含み、添加剤成分として、成分(A)及び成分(B)を含み、成分(A)として、アタクチック構造のポリプロピレンまたはプロピレン-αオレフィン共重合体(住友化学社製、「タフセレンH」)を用い、成分(B)として、アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(三井化学社製、「タフマーXM」)を用いたものであり、 接着性樹脂層(AR)15は、厚さがシーラント層(SL)16と同じもしくはそれ以下であり、 リチウム電池用外装材10の接着性樹脂層(AR)15の成分は、[変性ポリオレフィン樹脂(a)成分及びマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分]:[成分(A)]:[成分(B)]=60wt%:20wt%:20wt%であり、 シーラント層(SL)16は、リチウム電池用外装材10のヒートシールによる封止性を有し、 シーラント層(SL)16は、60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いたものであり、 電池内容物として電解液を含んでいるリチウム電池に用いられる、 リチウム電池用外装材10。」 2.甲第2号証 (1)甲第2号証(特開2013-222555号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【0008】 本発明は、優れた耐薬品性、封止性及び成型性を兼ね備え、かつ接着樹脂層とシーラント層の厚さが均一で安定した特性が得られるリチウムイオン電池用外装材、及び該リチウムイオン電池用外装材の製造方法の提供を目的とする。」 イ.「【0030】 軟質樹脂を使用する場合、接着樹脂層15中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。 また、接着樹脂層15中の軟質樹脂の分散径は、1nm~20μmが好ましく、10nm~10μmがより好ましい。なお、本発明において、分散径とは、分散相を形成している楕円体の最長軸を意味する。 【0031】 軟質樹脂の市販品としては、例えば、旭化成社製のタフテック、クラレ社製のセプトン、三井化学社製のノティオ、タフマー、三菱化学社製のゼラス、サーモラン、住友化学社製のタフセレン、エクセレン、エスプレン、エスポレックス、日本ポリプロ社製のウェルネクス、ニューコン、プライムポリマー社製のプライムTPO、サンアロマー社製のキャタロイ、クオリア等が挙げられる。 【0032】 接着樹脂層15を形成する材料のメルトフローレート(MFR)は、温度230℃、荷重2.16kgfの条件において、3~30g/10分が好ましい。 接着樹脂層15の厚さは、2~50μmが好ましい。 【0033】 (シーラント層16) シーラント層16は、腐食防止処理層14上に接着樹脂層15を介して形成される。接着樹脂層15上にシーラント層16が積層されることで、2枚の外装材のシーラント層16同士を向かい合わせにし、シーラント層16の融解温度以上でヒートシールすることにより、リチウムイオン電池を封止できる。また、シーラント層16の結晶性を制御することで、ヒートシールした縁部分の側端面から電池内部に浸入してくる水分量を低減することができる。また、溶融粘度を調節することで、ヒートシール時に縁部分から押し出された樹脂の流動性を調節することができる。 【0034】 シーラント層16の材料としては、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、接着樹脂層15の酸変性ポリオレフィン樹脂の説明で挙げたポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 ポリオレフィン樹脂としては、耐熱性の点から、ポリエチレンよりもポリプロピレンの方が好ましい。 ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本ポリプロピレン社製のノバテックFL02A、プライムポリマー社製のプライムポリプロF329RA、サンアロマー社製のサンアロマーPH943B等がある。なかでも、成型性に優れ、冷間成型時にシーラント層16にクラックが生じ難い点から、プライムポリプロF329RAが好ましい。 【0035】 シーラント層16には、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 シーラント層16を形成する材料のMFRは、温度230℃、荷重2.16kgfの条件において、3~30g/10分が好ましい。 シーラント層16の厚さは、10~80μmが好ましい。 【0036】 シーラント層16には、接着樹脂層15と同様に、軟質樹脂を配合してもよい。これにより、冷間成型時のクラックによる延伸白化耐性が向上するうえ、濡れ性改善により密着力が向上し、異方性の低減により製膜性等の特性も向上する。該軟質樹脂は、均一に分散していることが好ましい。 シーラント層16に配合する軟質樹脂としては、例えば、接着樹脂層15で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。 【0037】 軟質樹脂を使用する場合、シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。 また、シーラント層16中の軟質樹脂の分散径は、1nm~20μmが好ましく、10nm~10μmがより好ましい。」 (2)上記記載から、甲第2号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.上記「(1)ア.」の段落【0008】の記載によれば、優れた耐薬品性、封止性及び成型性を兼ね備えるリチウムイオン電池用外装材の提供を目的とするものである。 イ.上記「(1)イ.」の段落【0030】、【0031】、【0034】~【0036】の記載によれば、シーラント層16は、ポリオレフィン樹脂及び軟質樹脂を含み、ポリオレフィン樹脂としては、プライムポリプロF329RAが好ましく、軟質樹脂としては、三井化学社製のタフマー、住友化学社製のエクセレン等が挙げられるものである。 ウ.上記「(1)イ.」の段落【0037】の記載によれば、シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましいものである。 (3)以上のことから、上記記載を総合勘案すると、甲第2号証には、次の技術事項が記載されている。 「優れた耐薬品性、封止性及び成型性を兼ね備えるリチウムイオン電池用外装材を提供するために、 シーラント層16は、ポリオレフィン樹脂及び軟質樹脂を含み、ポリオレフィン樹脂としては、プライムポリプロF329RAが好ましく、軟質樹脂としては、三井化学社製のタフマー、住友化学社製のエクセレン等が挙げられ、 シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましいこと。」 3.甲第3号証 (1)甲第3号証(特開2013-222545号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【0007】 本発明は、成型性に優れ、冷間成型によってもシーラント層にクラックが生じ難いリチウムイオン電池用外装材の提供を目的とする。」 イ.「【0030】 軟質樹脂を使用する場合、第2接着層15中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。 また、第2接着層15中の軟質樹脂の分散径は、1nm~20μmが好ましく、10nm~10μmがより好ましい。なお、本発明において、分散径とは、分散相を形成している楕円体の最長軸を意味する。 【0031】 軟質樹脂の市販品としては、例えば、旭化成社製のタフテック、クラレ社製のセプトン、三井化学社製のノティオ、タフマー、三菱化学社製のゼラス、サーモラン、住友化学社製のタフセレン、エクセレン、エスプレン、エスポレックス、日本ポリプロ社製のウェルネクス、ニューコン、プライムポリマー社製のプライムTPO、サンアロマー社製のキャタロイ、クオリア等が挙げられる。」 ウ.「【0035】 シーラント層16を形成する材料としては、メルトフローレート(MFR、温度230℃、荷重2.16kgf)が20~30g/10分、融解温度が135~140℃、引張弾性率が500~700MPa、荷重たわみ温度(0.45MPa)が70~80℃、ロックウェル硬さ(Rスケール)が60~70であるランダムポリプロピレン(以下、「ランダムポリプロピレン(A)」という。)が挙げられる。シーラント層16が柔軟な材質であるランダムポリプロピレン(A)を含有することで、優れた成型性が得られ、冷間成型においてシーラント層16にクラックが生じることが抑制される。そのため、冷間成型における延伸部分に白化が生じたり、クラックがリチウムイオンの移動路となって電池特性が低下したりすることが抑制される。 なお、本発明において、MFRはJIS K7210で規定される値である。融解温度は、示差走査熱量計により、20℃から200℃に10℃/分で昇温し、その後50℃/分で20℃まで冷却した後、再度200℃まで10℃/分で昇温したときのピーク温度として測定される値である。引張弾性率はJIS K7161で規定される値である。荷重たわみ温度(0.45MPa)は、JIS K7191で規定される値である。ロックウェル硬さ(Rスケール)は、JIS K7202で規定される値である。 【0036】 ランダムポリプロピレン(A)のMFRは、20~30g/10分であり、シーラント層16によりクラックが生じ難くなる点から、22~28g/10分が好ましい。 ランダムポリプロピレン(A)の引張弾性率は、500~700MPaであり、シーラント層16によりクラックが生じ難くなる点から、550~650MPaが好ましい。 ランダムポリプロピレン(A)の具体例としては、例えば、プライムポリマー社製のプライムポリプロF329RAが挙げられる。」 エ.「【0040】 シーラント層16には、第2接着層15と同様に、軟質樹脂を配合してもよい。これにより、冷間成型時のクラックによる延伸白化耐性が向上するうえ、濡れ性改善により密着力が向上し、異方性の低減により製膜性等の特性も向上する。該軟質樹脂は、均一に分散していることが好ましい。 シーラント層16に配合する軟質樹脂としては、例えば、第2接着層15で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。 【0041】 軟質樹脂を使用する場合、シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。 また、シーラント層16中の軟質樹脂の分散径は、1nm~20μmが好ましく、10nm~10μmがより好ましい。」 (2)上記記載から、甲第3号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.上記「(1)ア.」の段落【0007】の記載によれば、成型性に優れ、冷間成型によってもシーラント層にクラックが生じ難いリチウムイオン電池用外装材の提供を目的とするものである。 イ.上記「(1)イ.」の段落【0030】、【0031】、「(1)ウ.」の段落【0035】、【0036】、「(1)エ.」の段落【0040】の記載によれば、シーラント層16は、ランダムポリプロピレン(A)及び軟質樹脂を含み、ランダムポリプロピレン(A)としては、プライムポリプロF329RAが挙げられ、軟質樹脂としては、三井化学社製のタフマー、住友化学社製のエクセレン等が挙げられるものである。 ウ.上記「(1)エ.」の段落【0041】の記載によれば、シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましいものである。 (3)以上のことから、上記記載を総合勘案すると、甲第3号証には、次の技術事項が記載されている。 「成型性に優れ、冷間成型によってもシーラント層にクラックが生じ難いリチウムイオン電池用外装材を提供するために、 シーラント層16は、ランダムポリプロピレン(A)及び軟質樹脂を含み、ランダムポリプロピレン(A)としては、プライムポリプロF329RAが挙げられ、軟質樹脂としては、三井化学社製のタフマー、住友化学社製のエクセレン等が挙げられ、 シーラント層16中の軟質樹脂の含有量は、1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましいこと。」 4.甲第4号証 (1)甲第4号証(特開2015-98558号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【0024】 [伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)] 本発明のプロピレン系重合体(X)は、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)がそれ自体で1.1以上であるか、またはプロピレン-エチレンブロック共重合体(Y)との樹脂組成物として1.1以上であることが必要である。」 イ.「【0026】 一般的に、高い歪硬化度を示すには、分岐の長さとして、ポリプロピレンの絡みあい分子量である7,000以上が必要とされる。骨格炭素数に換算すると、約400以上に相当する。ここでいう骨格炭素とは、メチル炭素以外の全ての炭素原子を意味する。分岐長がより長くなると、溶融物性は、より向上すると考えられる。特により長い分岐鎖が導入されると、伸長粘度の測定において、より遅い歪速度領域においても、歪硬化が検出されようになると考えられている。 したがって、プロピレン系重合体(X)の分岐鎖長は、好ましくは骨格炭素数500(ポリプロピレン分子量換算:1.1万)以上であり、より好ましくは骨格炭素数1000(ポリプロピレン分子量換算:2.1万)以上であり、更に好ましくは骨格炭素数2000(ポリプロピレン分子量換算:4.2万)以上である。 ここでいうポリプロピレン分子量換算値は、厳密にはGPCで測定される分子量値とは異なるものであるが、GPCで測定される数平均分子量(Mn)に近似している。 したがって、プロピレン系重合体(X)の分岐鎖長は、GPCで測定される数平均分子量(Mn)で好ましくは1.1万以上、より好ましくは2.1万以上、さらに好ましくは4.2万以上と、置き換えて考えられる。」 (2)上記「(1)ア.」及び「(1)イ.」の記載を総合勘案すると、甲第4号証には、次の技術事項が記載されている。 「プロピレン系重合体(X)がそれ自体で、または、プロピレン-エチレンブロック共重合体(Y)との樹脂組成物として高い歪硬化度を示すために、プロピレン系重合体(X)の分岐鎖長は、骨格炭素数500以上であること。」 5.甲第5号証 (1)甲第5号証(特開2022-99784号公報)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0034】 (実施例) 基材層2として、厚さ16μmのポリエステルフィルム(フタムラ化学社製 FE2001)を準備した。基材層2の一方の面に、エステル主鎖の主剤(三井化学株式会社製A525)と硬化剤(三井化学株式会仕製A52)からなる接着剤を用いたドライラミネーションにより、厚さ50μmのアルミ箔(東洋アルミ株式会社製)を貼り合わせ、接着剤層6およびアルミ層3を形成した。イージーピール層4として、厚さ30μmのイージーピールシーラントフィルム(東レフィルム加工製 9501H)を使用し、押出ラミネーションによりアルミ層3上に接着層7およびイージーピール層4を形成した。接着層7として、変性PP(A)(融点ピーク:141℃、密度:0.90g/cm3、MFR:15g/10min)と、無変性ランダムポリプロピレンF329RA(融点ピーク:141℃、密度:0.91g/cm3、MFR:25g/10min)との2種の樹脂を用いた。各層の厚さは12μmとし、変性PPからなる層をアルミ層側に積層した。上記積層フィルムを140℃、15秒ヒーターロールに抱かせるように熱を加えて積層蓋材を作製した。変性PP(A)を用いた接着層7の重量平均分子量(Mw)は326,000だった。」 (2)上記(1)の記載を総合勘案すると、甲第5号証には、次の技術事項が記載されている。 「無変性ランダムポリプロピレンF329RAの融点ピークは141℃であること。」 6.甲第6号証 (1)甲第6号証(特開2010-234794号公報)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0055】 中間層材料として、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5510S融点219℃、以下「樹脂(E)」と称する)70質量部と、プロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RA、融点137℃、MFR25g/10min(230℃、2.16kg荷重時)、以下「樹脂(F)」と称する)30質量部を用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドした。樹脂(E)は、事前に熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥させたものを使用した。」 (2)上記(1)の記載を総合勘案すると、甲第6号証には、次の技術事項が記載されている。 「プロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂であるプライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RAの融点は137℃であること。」 7.甲第7号証 (1)甲第7号証(国際公開第2014/181862号)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 「[0099](接着剤層19) 接着剤層19は、接着性樹脂層16と同様に、腐食防止処理層15が形成されたアルミニウム箔層14とシーラント層17とを接着する層である。接着性樹脂層16によるアルミニウム箔層14とシーラント層17との貼り合せが主に熱ラミネートに適しているのに対し、接着剤層19による貼り合せはドライラミネートにも容易に適用できる。 接着剤層19を形成する接着剤としては、接着剤層12で挙げた接着剤と同様の接着剤が挙げられる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどのポリオールからなる主剤と、2官能以上のイソシアネート化合物からなる硬化剤とを含有するポリウレタン系接着剤が挙げられる。また、主剤としては上述したポリオール系だけでなく、酸変性ポリオレフィンを溶剤中に溶解あるいは分散させた溶液を用いることも可能である。この場合の硬化剤としては、上述したイソシアネート化合物やカルボジイミド化合物やエポキシ化合物を用いることが可能である。 接着剤層19を形成する接着剤の組成(例えば、ポリウレタン系接着剤における主剤やポリイソシアネート系硬化剤の種類やそれらの配合量)は、接着剤層12を形成する接着剤と同じであっても異なってもよい。」 (2)上記(1)の記載を総合勘案すると、甲第7号証には、次の技術事項が記載されている。 「接着剤層19は、腐食防止処理層15が形成されたアルミニウム箔層14とシーラント層17とを接着する層であり、接着剤層19を形成する接着剤としては、酸変性ポリオレフィンの溶液が主剤であり、イソシアネート化合物やカルボジイミド化合物やエポキシ化合物が硬化剤であるものを用いること。」 8.甲第8号証 (1)甲第8号証(国際公開第2018/030495号)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 「[0038] 本発明における長鎖分岐構造とは、ひずみ硬化性を発現する為に、分岐を構成する炭素骨格(分岐の主鎖)の炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言う。この長鎖分岐構造は、1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより形成される短鎖分岐とは区別される。」 (2)上記(1)の記載を総合勘案すると、甲第8号証には、次の技術事項が記載されている。 「1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより短鎖分岐が形成されること。」 9.甲第5号証及び甲第8号証について 甲第5号証(特開2022-99784号公報:令和4年7月5日公開)及び甲第8号証(国際公開第2018/030495号:2018年2月5日公開)は、いずれも、特許第7377416号の請求項1ないし4に係る特許についての出願の原出願である特願2016-111009号の出願日である平成28年6月2日より後に公開されたものであるから、請求項1ないし4に係る発明についての進歩性の判断にあっては、これらの甲第5号証及び甲第8号証に記載された技術事項は、他の刊行物等に記載された事項の事実関係等を明らかにするために参照されるに留まるべきものである。 第5 当審の判断 1.申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明における「基材層(SB)11」、「腐食防止処理層(CL)14」、「アルミニウム箔層(AL)13」、「シーラント層(SL)16」、「リチウム電池用外装材10」は、本件発明1でいう「基材層」、「腐食防止処理層」、「金属箔層」、「シーラント層」、「蓄電装置用外装材」に相当する。 そして、甲1発明における「リチウム電池用外装材10」は、「基材層(SB)11の一方の面上に」「アルミニウム箔層(AL)13」、「シーラント層(SL)16が順次積層されて構成されてなる」ものであり、本件発明1でいう「蓄電装置用外装材」が、「少なくとも基材層」、「金属箔層、及びシーラント層をこの順に備える」ことに相当する。また、甲1発明における「アルミニウム箔層(AL)13」は、「接着性樹脂層(AR)15に近い面に腐食防止処理層(CL)14が設けられたものであるか、または、接着剤層(AD)12に近い面にも腐食防止処理層(CL)14が設けられた」ものであり、本件発明1でいう「金属箔層」が、「一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた」ことに相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及びシーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材」である点で一致する。 (イ)本件発明1では、「シーラント層」が、「炭素数が500以上である分岐鎖を有するプロピレン系分岐ポリマーが含まれるプロピレン系分岐ポリマー含有層を含み、前記シーラント層中の前記プロピレン系分岐ポリマーの含有量が、前記シーラント層の総質量に対して、1.0~50.0質量%であ」ることを特定するのに対して、甲1発明では、「シーラント層(SL)16」が、「60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いたものであ」り、プロピレン系分岐ポリマーが含まれることの特定を有していない点で相違する。 (ウ)甲1発明における「シーラント層(SL)16」は、「60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いたものであ」るところ、甲1発明において、シーラント層(SL)16は他の層を含んでおらず、甲1発明における「シーラント層(SL)16」自体が最内層を構成するといえる。また、甲1発明における「60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂」は樹脂組成物である。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記シーラント層が」「樹脂組成物を含む最内層を含」む点で共通する。 しかしながら、本件発明1では、「樹脂組成物」が、「(A)プロピレン-エチレンランダム共重合体60~95質量%と、(B)ブテン-1をコモノマーとする融点150℃以下のポリオレフィン系エラストマー5~40質量%と、を含有」し、「前記(B)ポリオレフィン系エラストマーは、(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、を含む」ことを特定するのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点で相違する。 (エ)そして、甲1発明における「リチウム電池用外装材10」は、「電池内容物として電解液を含んでいるリチウム電池に用いられる」ものであり、本件発明1でいう「電解液を有する蓄電装置に用いられる蓄電装置用外装材」に相当するものである。 よって、上記(ア)ないし(エ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及びシーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材であって、 前記シーラント層が、樹脂組成物を含む最内層を含む、電解液を有する蓄電装置に用いられる蓄電装置用外装材。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本件発明1では、「シーラント層」が、「炭素数が500以上である分岐鎖を有するプロピレン系分岐ポリマーが含まれるプロピレン系分岐ポリマー含有層を含み、前記シーラント層中の前記プロピレン系分岐ポリマーの含有量が、前記シーラント層の総質量に対して、1.0~50.0質量%であ」ることを特定するのに対して、甲1発明では、「シーラント層(SL)16」が、「60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いたものであ」り、プロピレン系分岐ポリマーが含まれることの特定を有していない点。 [相違点2] 本件発明1では、「樹脂組成物」が、「(A)プロピレン-エチレンランダム共重合体60~95質量%と、(B)ブテン-1をコモノマーとする融点150℃以下のポリオレフィン系エラストマー5~40質量%と、を含有」し、「前記(B)ポリオレフィン系エラストマーは、(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、を含む」ことを特定するのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。 イ.判断 そこで、事案に鑑み、まず上記相違点1について検討する。 上記「ア.(イ)」に記載したように、甲1発明では、シーラント層(SL)16は、60μm-無延伸ポリプロピレン樹脂(フタムラ化学社製)を用いたものであるところ、甲第1号証には、段落[0122]に、シーラント層(SL)16は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、或いは、ランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、そのエステル化物、或いは、イオン架橋物等を用いたものであることも記載されている。しかしながら、そもそも、甲第1号証には、シーラント層(SL)16について、プロピレン系分岐ポリマーが含まれるプロピレン系分岐ポリマー含有層を含むこと、さらには、そのプロピレン系分岐ポリマーについて、炭素数が500以上である分岐鎖を有するものとすること自体の記載も示唆もない。そして、本件発明1では、本件特許明細書の段落【0090】に記載されているように、シーラント層に含まれるプロピレン系分岐ポリマー含有層に含まれるプロピレン系分岐ポリマーにおいて、特に、炭素数が500以上である分岐鎖を有することにより、デガッシングヒートシール時の絶縁低下を更に抑制させるという効果を奏することに鑑みれば、甲1発明において、相違点1に係る構成を導き出すことが、設計的事項であるとはいえない。また、甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第8号証にも、本件発明1におけるシーラント層に相当するものについて、炭素数が500以上である分岐鎖を有するプロピレン系分岐ポリマーが含まれるプロピレン系分岐ポリマー含有層を含むものとすること自体の記載も示唆もない。 したがって、甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第8号証を参照したとしても、甲1発明において、相違点1に係る構成を導き出すことはできない。 なお、甲第1号証に記載された事項について、特許異議申立人は特許異議申立書において、甲第1号証には、接着性樹脂層(AR)は、接着性樹脂組成物と成分(A)「アタクチック構造のポリプロピレン又はプロピレン-αオレフィン共重合体」を含み、さらに、成分(B)「アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体」を含む旨が好ましいことが記載されており(甲第1号証の[請求項2]、段落[0117])、実施例4の外装材の接着性樹脂層(AR)では、「AR-(B):アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体(三井化学社製、「タフマーXM」)が用いられており(甲第1号証の段落[0138])、アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体である三井化学社製の「タフマーXM」は、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体エラストマーであり(本件特許明細書の段落【0205】)、プロピレンにおいて、1-ブテンが共重合されることで短鎖分岐鎖が形成されることから(甲第8号証)、「分岐鎖を有するプロピレン系分岐ポリマー」であり、甲第1号証の実施例4の外装材において、接着性樹脂層(AR)及びシーラント層(SL)は、全体として「シーラント層」と解することができ、接着性樹脂層(AR)は、「プロピレン系分岐ポリマー含有層」に相当する旨を主張している(特許異議申立書の第37頁第21行~第38頁第12行)。 しかしながら、そもそも「シーラント層」は、蓄電装置用外装材にヒートシールによる封止性を付与する層であるところ、甲1発明において、リチウム電池用外装材10のヒートシールによる封止性を有する層は「シーラント層(SL)16」のみであり、「接着性樹脂層(AR)15」は密着性及び耐電解液性を有する層であるから、たとえ甲1発明における「接着性樹脂層(AR)15」に含まれる成分(B)が本件発明1における「シーラント層」に含まれるプロピレン系分岐ポリマーと類似していたとしても、そのことを根拠として、甲1発明における「接着性樹脂層(AR)15」が本件発明1における「シーラント層」の少なくとも一部を構成すると解することはできない。よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 また、上記相違点1に関して、特許異議申立人は特許異議申立書において、甲第4号証には、延展性が高いポリプロピレン系組成物に関する技術が開示されており(甲第4号証の段落【0001】)、段落【0026】に記載されている事項によれば、甲第4号証には、延展性の高い(すなわち柔軟性が高い)ポリプロピレン系樹脂組成物において、分岐鎖を有するポリプロピレン共重合体の溶融物性を向上する(すなわち柔軟性を高める)ためには、プロピレン系重合体(X)の分岐鎖長は、骨格炭素数500以上であることが好ましい旨が教示されており、本件特許明細書の段落【0012】に記載されている事項によれば、本件発明において、蓄電装置用外装材がデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持する機序は、プロピレン系分岐ポリマーによって溶融物性(溶融張力、歪み硬化性)が高められることにあり、そうすると、甲第1号証の成分(B):アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体による、ヒートシール時の応力を緩和し柔軟性(溶融物性)をより高めることを目的として、甲第4号証に開示されているように、プロピレン系分岐ポリマーである成分(B):アイソタクチック構造のプロピレン-αオレフィン共重合体の炭素数を500以上とすることによって、甲第1号証の成分(B)によるヒートシール強度(特に耐電解液)、デガスシール強度の向上が期待されるといえ、当業者が甲第1号証の成分(B)として、溶融物性に優れた炭素数が500以上のものを採用する動機付けは十分にあり、甲第1号証及び甲第4号証に接した当業者にとって、相違点1の克服は容易である旨を主張している(特許異議申立書の第39頁第17行~第41頁第1行)。 しかしながら、上記で述べたように、甲1発明における「接着性樹脂層(AR)15」が本件発明1における「シーラント層」の少なくとも一部を構成すると解することはできないのだから、その前提に基づいた上記の特許異議申立人の主張も採用できない。 以上のことを踏まえると、たとえ甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第8号証の記載を参照したとしても、甲1発明において相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、他の相違点(相違点2)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第8号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2及び3について 請求項2及び3は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第8号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明4について 請求項4は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるところ、本件発明4に対して提示された甲第7号証には、蓄電装置用外装材における接着剤層に相当する層の材料に関する記載があるに過ぎず(上記「第4 7.」を参照)、当該甲第7号証を参照しても、甲1発明において相違点1に係る構成を導き出すことはできないから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 2.申立理由2(明確性)について (1)特許異議申立人は、概略次のような明確性についての申立理由を主張している。 本件発明1には、「(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、を含む」との記載があり、本件特許明細書の【0107】には、分散相サイズに基づく2成分の相溶性についての定義が記載されているところ、2成分を分散させる際、温度、分散させるエラストマー濃度、押出機のスクリュー回転数、押出し量、押出し後の冷却温度などによって、分散相サイズは大きく変化する(すなわち、温度依存性、濃度依存性等を有する)ことは、化学的に明らかであり、本件発明1の「(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、を含む」との記載は、相溶性の定義として不十分であり、本件発明1ないし4の範囲が画一的に定まらず、当業者に不測の不利益を与える程度に不明確である(特許異議申立書の第45頁第4行~第46頁第13行)。 (2)そこで、上記主張について検討する。 本件発明1ないし4は、その発明を「蓄電装置用外装材」とするものであり、物の発明のカテゴリーに属する発明であることから、本件発明1ないし4を特定する発明特定事項は、最終的に得られる生成物である「蓄電装置用外装材」の構成を特定するものと解される。そして、本件特許明細書の段落【0107】には、相溶系及び非相溶系について、「(A)成分に対して相溶性を有する(相溶系)とは、(A)成分を構成するプロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、(A)成分を構成するプロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。」と記載されているところであり、本件発明1ないし4において、相溶系及び非相溶系の判断にあっては、温度や濃度の条件、経時変化等を考慮する必要はなく、最終的に得られた蓄電装置用外装材そのものから判断できるものといえる。 してみれば、本件発明1における、「(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、を含む」という発明特定事項にあっては、出願時の技術常識も考慮すれば、本件発明1の蓄電装置用外装材を構成するシーラント層に含まれる最内層において、(A)成分に対して相溶性を有する(B-1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーは、(A)成分を構成するプロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散しており、(A)成分に対して相溶性を有さない(B-2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーは、(A)成分を構成するプロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散しているものであると解することができるものであり、上記発明特定事項は、第三者に不測の不利益を与える程に不明確なものであるとはいえない。 (3)よって、特許異議申立人の明確性についての申立理由に関する上記主張は採用することができず、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし4に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。 また、他に本件発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700438

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