審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-700774

蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置

審判番号
2023-700774
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-000974
登録番号
7213004
請求日
2023年07月25日
審決日
2023年11月15日
公報発行日
2023年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【権利者代理人】阿部 寛
  • 【権利者代理人】吉住 和之
  • 【異議申立人】田中 俊子
審判長/審判官
  • 審判長 山田 正文
  • 審判官 井上 信一
  • 審判官 小池 秀介
分類
P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7213004号発明「蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7213004号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7213004号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成29年1月6日に出願され、令和5年1月18日にその特許権の設定登録がなされ、同年1月26日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1ないし10に係る特許に対して、同年7月25日に特許異議申立人 田中 俊子により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 特許第7213004号の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも厚さ6~40μmの基材層、ポリウレタン系接着剤で構成された厚さ1~10μmの接着層、厚さ9~200μmの金属箔層、酸変性ポリオレフィン系樹脂で構成された厚さ2~50μmのシーラント接着層及びポリオレフィン系樹脂で構成された厚さ10~100μmのシーラント層がこの順で積層された構造を有し、 前記基材層は、突刺し強度が0.6N/μm以上0.77N/μm以下であるポリエステルフィルムからなる層であり、 前記突刺し強度は、JIS Z1707に規定される方法による測定値であって、直径1.0mmであり且つ先端半径0.5mmであるプローブを使用して速度50mm/分で測定した5点の平均値を、前記基材層の厚さで除した値である、蓄電装置用外装材。 【請求項2】 前記基材層は、160℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項3】 前記基材層は、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層である、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項4】 前記基材層と前記接着層との間に設けられた易接着処理層を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項5】 前記易接着処理層が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリルグラフトポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む層である、請求項4に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項6】 前記金属箔層の両面に設けられた腐食防止処理層を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項7】 前記腐食防止処理層が、希土類元素酸化物、及び、リン酸又はリン酸塩を含む、請求項6に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項8】 前記希土類元素酸化物が酸化セリウムである、請求項7に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項9】 前記シーラント層は、静摩擦係数が0.10~0.30である表面を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項10】 電極を含む電池要素と、前記電極から延在するリードと、前記リードを挟持し且つ前記電池要素を収容する容器とを備え、 前記容器は請求項1~9のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材から、前記シーラント層が内側となるように形成されている、蓄電装置。」 第3 申立理由の概要 1.申立理由1(新規性) 請求項1ないし10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2.申立理由2(進歩性) 請求項1ないし8、10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、 請求項9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項、及び甲第5号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3.申立理由3(実施可能要件) 本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし10に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4.申立理由4(サポート要件) 請求項1ないし10に係る発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 甲第1号証;特開2016-162622号公報 甲第2号証;特開2011-204674号公報 甲第3号証;特開2014-124947号公報 甲第4号証;特開2016-186927号公報 甲第5号証;特開2014-146603号公報 甲第6号証;国際公開第2015/156327号 甲第7号証;特開2005-56729号公報 第4 甲第1号証ないし甲第7号証の記載事項 1.甲第1号証 甲第1号証(特開2016-162622号公報)には、「蓄電装置用外装材」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【請求項1】 少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、 前記基材層が、95℃熱水収縮率が5%未満であり且つ180℃熱間収縮率が10~25%であるポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材。」 (2)「【0022】 [蓄電装置用外装材] 図1は、本発明の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた易接着処理層12と、該易接着処理層12の基材層11とは反対側に設けられた接着層13と、該接着層13の易接着処理層12とは反対側に設けられた、両面に腐食防止処理層15a,15bを有する金属箔層14と、該金属箔層14の接着層13とは反対側に設けられたシーラント接着層16と、該シーラント接着層16の金属箔層14とは反対側に設けられたシーラント層17と、が順次積層された積層体である。ここで、腐食防止処理層15aは金属箔層14の接着層13側の面に、腐食防止処理層15bは金属箔層14のシーラント接着層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10は、基材層11が最外層、シーラント層17が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層17を蓄電装置の内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。 【0023】 (基材層11) 基材層11は、蓄電装置を製造する際における後述する加圧熱融着工程における耐熱性及び他の蓄電装置から漏れ出した電解液に対する耐電解液性を外装材10に付与し、加工又は流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。また、基材層11は、95℃熱水収縮率が5%未満であり且つ180℃熱間収縮率が10~25%であるポリエステルフィルムからなる層である。」 (3)「【0032】 基材層11の厚さは、6~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、蓄電装置用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが40μmを超えると蓄電装置用外装材10の総厚が大きくなり、電池の電気容量を小さくしなければいけなくなる場合があるため望ましくない。」 (4)「【0051】 接着層13を構成する接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールよりなる主剤と、芳香族系、脂肪族系等のイソシアネートよりなる硬化剤と、を有する二液硬化型のポリウレタン系接着剤を用いることができる。上記接着剤において、主剤の水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(=NCO/OH)は、1~10が好ましく、2~5がより好ましい。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0053】 接着層13の厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、2~6μmがより好ましい。」 (5)「【0061】 金属箔層14の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び加工性の点から、9~200μmであることが好ましく、15~150μmであることがより好ましく、15~100μmであることが更に好ましい。金属箔層14の厚さが9μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。金属箔層14の厚さが200μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電装置の重量エネルギー密度低下を抑制することができる。」 (6)「【0096】 (シーラント接着層16) シーラント接着層16は、腐食防止処理層15bが形成された金属箔層14とシーラント層17を接着する層である。外装材10は、シーラント接着層16を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。 【0097】 熱ラミネート構成におけるシーラント接着層16を形成する接着成分は、ポリオレフィン系樹脂を酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で構成された場合のシーラント層17と、極性を有することが多い腐食防止処理層15bの両方に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、外装材10の電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生してもシーラント接着層16の劣化による密着力の低下を防止し易い。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0099】 熱ラミネート構成のシーラント接着層16は、上記接着成分を押出し装置で押し出すことで形成できる。熱ラミネート構成のシーラント接着層16の厚さは2~50μmであることが好ましい。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0103】 ドライラミネート構成のシーラント接着層16は、エステル基及びウレタン基等の加水分解性の高い結合部を有しているので、より高い信頼性が求められる用途には、シーラント接着層16として熱ラミネート構成の接着成分を用いることが好ましい。例えば酸変性ポリオレフィン樹脂を、トルエン、メチルシクロヘキサン(MCH)等の溶剤にて溶解、あるいは、分散させた塗液に上述した各種硬化剤を配合し、塗布、乾燥させることでシーラント接着層16を形成する。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0109】 シーラント接着層16の厚さは、熱ラミネート構成の場合には、8μm以上50μm以下であることが好ましく、20μm以上40μm以下であることがより好ましい。シーラント接着層16の厚さが8μm以上であることにより、金属箔層14とシーラント層17との十分な接着強度が得られ易く、50μm以下であることにより、外装材端面から内部の電池要素に浸入する水分量を低減し易くすることができる。また、シーラント接着層16の厚さは、ドライラミネート構成の場合には、1μm以上5μm以下であることが好ましい。シーラント接着層16の厚さが1μm以上であることにより、金属箔層14とシーラント層17との十分な接着強度が得られ易く、5μm以下であることにより、シーラント接着層16の割れの発生を抑制することができる。」 (7)「【0110】 (シーラント層17) シーラント層17は、外装材10に対し、ヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電装置の組み立て時に内側に配置されて熱融着される層である。シーラント層17としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。中でも、水蒸気のバリア性を向上させ、ヒートシールによって過度に潰れることなく蓄電装置の形態を構成可能なポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0120】 シーラント層17の厚さは、10~100μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。シーラント層17の厚さが20μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を得ることができ、90μm以下であることにより、外装材端部からの水蒸気の浸入量を低減することができる。」 (8)「【0142】 (基材層の用意) 基材層11として、同時二軸延伸法により製造された下記のポリエチレンテレフタレートフィルムA-1~A-2、B-1~B-7及びC-1~C-2を用意した。各ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さ、95℃熱水収縮率及び180℃熱間収縮率を以下に示す。 A-1:厚さ12μm、95℃熱水収縮率3.5%、180℃熱間収縮率18.7%。 A-2:厚さ12μm、95℃熱水収縮率2.5%、180℃熱間収縮率6.0%。B-1:厚さ25μm、95℃熱水収縮率2.8%、180℃熱間収縮率19.9%。 B-2:厚さ25μm、95℃熱水収縮率2.8%、180℃熱間収縮率19.9%。 B-3:厚さ25μm、95℃熱水収縮率3.3%、180℃熱間収縮率23.8%。 B-4:厚さ25μm、95℃熱水収縮率2.4%、180℃熱間収縮率11.2%。 B-5:厚さ25μm、95℃熱水収縮率2.6%、180℃熱間収縮率5.7%。 B-6:厚さ25μm、95℃熱水収縮率8.5%、180℃熱間収縮率19.0%。 B-7:厚さ25μm、95℃熱水収縮率6.0%、180℃熱間収縮率19.9%。 C-1:厚さ25μm、95℃熱水収縮率2.6%、180℃熱間収縮率18.4%。 C-2:厚さ25μm、95℃熱水収縮率3.1%、180℃熱間収縮率6.6%。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0144】 (実施例1) 実施例1では、以下の手法により、蓄電装置用外装材10を作製した。始めに、金属箔層14として、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム株式会社製)を準備した。次いで、金属箔層14の両面に、グラビアコートにより、溶媒として蒸留水を使用し、かつ固形分濃度10質量%に調整したポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル(腐食防止処理剤)を塗布した。このとき、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸は10質量部とした。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0146】 次いで、基材層11としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムA-1を用い、基材層11の片面をコロナ処理した。 【0147】 次いで、金属箔層14の腐食防止処理層15aの金属箔層14とは反対側の面に、接着層13として、ポリウレタン系接着剤を塗布した。次いで、ドライラミネート法により、接着層13を介して、金属箔層14と基材層11のコロナ処理された面とを接着させた。その後、基材層11、接着層13、腐食防止処理層15a、金属箔層14、及び腐食防止処理層15bからなる構造体を、温度が60℃の雰囲気中で6日間放置することで、エージング処理した。 【0148】 次いで、腐食防止処理層15bの金属箔層14とは反対側の面に、シーラント接着層16を形成した。このとき、シーラント接着層16は、シーラント接着層16の母材となる無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、商品名:アドマー)を押出すことで形成した。このとき、シーラント接着層16の厚さは20μmとした。次いで、サンドイッチラミネーション法により、シーラント接着層16を介して、腐食防止処理層15bに、シーラント層17となる厚さ60μmのポリオレフィンフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルムのシーラント接着層16側の面をコロナ処理したフィルム)を180℃で接着(加熱圧着)した。これにより、蓄電装置用外装材10を作製した。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0155】 (実施例2) 実施例2では、実施例1に対して以下の変更を行った。実施例2では、シーラント接着層16として、トルエン及びメチルシクロヘキサンの混合溶媒に溶解させた酸変性ポリオレフィンにポリイソシアネートを配合したポリウレタン系接着剤を塗布した。また、サンドイッチラミネーション法に代えてドライラミネート法により、シーラント接着層16を介して、シーラント層17となる厚さ40μmのポリオレフィンフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルムのシーラント接着層16側の面をコロナ処理したフィルム)と金属箔層14とを接着させた。その後、基材層11、接着層13、腐食防止処理層15a、金属箔層14、腐食防止処理層15b、シーラント接着層16、及びシーラント層17からなる構造体を、温度が40℃の雰囲気中で6日間放置することで、エージング処理した。実施例2では、上記の変更をした以外は実施例1と同様にして、蓄電装置用外装材10を作製した。 【0156】 <成型深度の評価> 実施例2で作製した蓄電装置用外装材10について、上述した実施例1等と同じ試験方法により、深絞り成型が可能な成型深度を評価した。結果を表2に示す。 ・・・・(中 略)・・・・ 【0158】 【表2】 [図:0001404831000001.jpg] 」 (9)「【図1】 [図:0001404831000002.jpg] 」 上記(1)ないし(9)から以下のことがいえる。 ・甲第1号証に記載の「蓄電装置用外装材」は、上記(1)、(2)の記載、及び(9)(図1)によれば、少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有し、基材層がポリエステルフィルムからなる層である蓄電装置用外装材である。 ・上記(3)の記載によれば、基材層の厚さは、6~40μmであることが好ましいものであり、上記(8)の記載によれば、実施例2では、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられてなるものである。 ・上記(4)の記載によれば、接着層としては、例えばポリウレタン系接着剤で構成され、その厚さは1~10μmが好ましいものであり、上記(8)の記載によれば、実施例2でも、実施例1と同様にポリウレタン系接着剤 が用いられてなるものである。ここで、実施例2における接着層の具体的な厚さについての記載はない。 ・上記(5)の記載によれば、金属箔層の厚さは、9~200μmであることが好ましいものであり、上記(8)の記載によれば、実施例2では、実施例1と同様に厚さ40μmの軟質アルミニウム箔が用いられてなるものである。 ・上記(6)の記載によれば、シーラント接着層としては、熱ラミネート構成におけるものとドライラミネート構成におけるものとに分けられるところ、ドライラミネート構成の場合、例えば酸変性ポリオレフィン樹脂を溶剤にて溶解、あるいは分散させた塗液に硬化剤を配合したものが用いられ、その厚さは、1μm以上5μm以下であることが好ましいものであり、上記(8)の記載によれば、実施例2でも、所定の溶媒に溶解された酸変性ポリオレフィンにポリイソシアネートを配合したポリウレタン系接着剤が用いられてなるものである。なお、実施例2におけるシーラント接着層の具体的な厚さについての記載はない。 ・上記(7)の記載によれば、シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、その厚さは、10~100μmであることが好ましいものであり、上記(8)の記載によれば、実施例2では、厚さ40μmのポリオレフィンフィルムが用いられてなるものである。 ・上記(8)の段落【0158】の表2によれば、実施例2で作製した蓄電装置用外装材の成型深度は、6.0mmである。 以上のことから、特に実施例2に係るものに着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有し、 前記基材層は、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムであり、 前記接着層は、ポリウレタン系接着剤で構成され、 前記金属箔層は、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔であり、 前記シーラント接着層は、所定の溶媒に溶解された酸変性ポリオレフィンにポリイソシアネートを配合したポリウレタン系接着剤が用いられ、 前記シーラント層は、厚さ40μmのポリオレフィンフィルムである、蓄電装置用外装材。」 2.甲第2号証 甲第2号証(特開2011-204674号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【請求項1】 25℃におけるフィルムの突き刺し荷重が5N~15Nかつ、突き刺し変位が2.5~7mmであり、フィルムの厚みが10~40μmである電池外装用ポリエステルフィルム。」 (2)「【0108】 【表1】 [図:0001404831000003.jpg] 」 (3)「【0114】 【表2】 [図:0001404831000004.jpg] 」 3.甲第3号証 甲第3号証(特開2014-124947号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【請求項1】 ナイロン6を原料として含む二軸延伸ナイロンフィルムであって、 当該フィルムの結晶化度が34%以上39%以下であり、かつ、突刺強度が17.0N/25μm以上である ことを特徴とする二軸延伸ナイロンフィルム。」 (2)「【0007】 前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、本発明者は、フィルムの結晶化度および突刺強度と、深絞り成型性との間には相関があることを見出し、本発明を完成させるに至った。」 4.甲第4号証 甲第4号証(特開2016-186927号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【請求項1】 少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、 前記基材層は、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上である、電池用包装材料。」 (2)「【0011】 本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体かなる電池用包装材料において、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)を、0.92N/μm以上に設定することにより、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えた電池用包装材料となることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。」 5.甲第5号証 甲第5号証(特開2014-146603号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【0296】 <第4実施形態> 以下、本発明の第4実施形態に係るリチウムイオン電池用外装材の一例を示して詳細に説明する。 本実施形態のリチウムイオン電池用外装材10c(以下、「外装材10c」という。)は、後述する基材層(SB)11cの第1面(一方の面側)に、後述する接着剤層(AD)12c、アルミニウム箔層(AL)13c、腐食防止処理層(CL)14c、熱可塑性樹脂層(TPR)15cが順次積層されており、これらの積層体を熱処理することで得られる外装材である。熱可塑性樹脂層(TPR)15cは、基材層(SB)11c側から、接着性樹脂層(AR)16cとシーラント層(SL)17cが積層されている。すなわち、外装材10cの最内層がシーラント層(SL)17cである。」 (2)「【0358】 その他の工程: 外装材10cの製造においては、外装材10cの成型性の向上には、深絞り成型を行う金型との滑り性も重要である。そのため、外装材10cの基材層(SB)11c側および熱可塑性樹脂層(TPR)15c側の表面の静摩擦係数をより小さくするために、この表面に、スリップ剤を塗工することが好ましい。スリップ剤としては、シリコーン、高分子ワックス、脂肪酸アミド等が挙げられる。・・(以下、略)」 6.甲第6号証 甲第6号証(国際公開第2015/156327号)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「[0011] 上記外装材の上記基材層側の表面及び上記シーラント層側の表面の少なくとも一方の静摩擦係数が0.1以上であることが好ましく、上記基材層側表面及び上記シーラント層側表面の静摩擦係数が0.4以下であることが好ましい。基材層側表面及びシーラント層側表面の静摩擦係数が0.4以下であることにより、成型加工時に外装材が凹部へ流れ込みやすくなり、外装材の伸びを抑制して、破断を抑制することが可能である。また、基材層側表面及び/又はシーラント層側表面の静摩擦係数が0.1以上であることにより、成型加工時の凹部以外の部分(蓋部又はブランク部)の押さえが容易となり、成型加工後のシワの発生をより抑制できる。」 7.甲第7号証 甲第7号証(特開2005-56729号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【請求項1】 電池の包装に用いられる電池包装用アルミラミネート材料であって、 内側表面から、厚さ10μm超え60μm以下の無延伸ポリプロピレン層、厚さ1~5μmの酸変性ポリプロピレン層、皮膜付着量が5~30mg/m2の第1化成皮膜層、および厚さ10~100μmのアルミニウム箔層を順次積層してなる内側積層部と、 上記アルミニウム箔層の外側に配設された、合成樹脂よりなる最外層を含む複数の層を積層してなる外側積層部とよりなることを特徴とする電池包装用アルミラミネート材料。 ・・・・(中 略)・・・・ 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項において、上記無延伸ポリプロピレン層は、静摩擦係数が0.35以下であり、かつ、上記最外層は、静摩擦係数が0.4以下であることを特徴とする電池包装用アルミラミネート材料。」 第5 当審の判断 1.申立理由1(新規性)について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)基材層について 甲1発明における「基材層」は、本件発明1でいう「基材層」に相当し、甲1発明におけ基材層の厚さは12μmであるから、本件発明1で特定する「6~40μm」の範囲に含まれる。 そして、甲1発明における「基材層」は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることから、本件発明1と甲1発明とは、「厚さ6~40μmの基材層」であり、「前記基材層は、ポリエステルフィルムからなる層」である点で共通するといえる。 ただし、本件発明1では「突刺し強度が0.6N/μm以上0.77N/μm以下」であり、「前記突刺し強度は、JIS Z1707に規定される方法による測定値であって、直径1.0mmであり且つ先端半径0.5mmであるプローブを使用して速度50mm/分で測定した5点の平均値を、前記基材層の厚さで除した値である」と特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点で相違する。 (イ)接着層について 甲1発明における「接着層」は、本件発明1でいう「接着層」に相当し、甲1発明における「接着層」は、ポリウレタン系接着剤で構成されてなるものであることから、本件発明1と甲1発明とは、「ポリウレタン系接着剤で構成された接着層」である点で共通する。 ただし、その厚さについて、本件発明1では「1~10μm」であることを特定するのに対し、甲1発明では具体的な値の特定がない点で相違する。 (ウ)金属箔層について 甲1発明における「金属箔層」は、本件発明1でいう「金属箔層」に相当し、甲1発明におけ金属箔層の厚さは40μmであるから、本件発明1で特定する「9~200μm」の範囲に含まれ、本件発明1と甲1発明とは、「厚さ9~200μmの金属箔層」である点で一致する。 (エ)シーラント接着層について 甲1発明における「シーラント接着層」は、本件発明1でいう「シーラント接着層」に相当する。 ただし、本件発明1では「酸変性ポリオレフィン系樹脂で構成された厚さ2~50μm」のものであることを特定するのに対し、甲1発明では所定の溶媒に溶解された酸変性ポリオレフィンにポリイソシアネートを配合したポリウレタン系接着剤が用いられ、具体的な厚さの値の特定がない点で相違する。 (オ)シーラント層について 甲1発明における「シーラント層」は、本件発明1でいう「シーラント層」に相当し、甲1発明におけシーラント層の厚さは40μmであるから、本件発明1で特定する「10~100μm」の範囲に含まれる。 そして、甲1発明における「シーラント層」は、ポリオレフィンフィルムであることから、本件発明1と甲1発明とは、「ポリオレフィン系樹脂で構成された厚さ10~100μmのシーラント層」である点で一致する。 (カ)蓄電装置用外装材の積層構造について 甲1発明における「蓄電装置用外装材」は、本件発明1と同様、少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及びシーラント層がこの順で積層された構造を有するものであり、本件発明1でいう「蓄電装置用外装材」に相当するものである。 よって上記(ア)ないし(カ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「少なくとも厚さ6~40μmの基材層、ポリウレタン系接着剤で構成された接着層、厚さ9~200μmの金属箔層、シーラント接着層及びポリオレフィン系樹脂で構成された厚さ10~100μmのシーラント層がこの順で積層された構造を有し、 前記基材層は、ポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] ポリエステルフィルムからなる層である基材層について、本件発明1では「突刺し強度が0.6N/μm以上0.77N/μm以下」であり、「前記突刺し強度は、JIS Z1707に規定される方法による測定値であって、直径1.0mmであり且つ先端半径0.5mmであるプローブを使用して速度50mm/分で測定した5点の平均値を、前記基材層の厚さで除した値である」と特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点。 [相違点2] 接着層に厚さについて、本件発明1では「1~10μm」であることを特定するのに対し、甲1発明では具体的な値の特定がない点。 [相違点3] シーラント接着層について、本件発明1では「酸変性ポリオレフィン系樹脂で構成された厚さ2~50μm」のものであることを特定するのに対し、甲1発明では所定の溶媒に溶解された酸変性ポリオレフィンにポリイソシアネートを配合したポリウレタン系接着剤が用いられ、具体的な厚さの値の特定がない点。 イ.判断 上記のとおり、相違点(特に相違点1、相違点3)があるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 (2)本件発明2ないし10について 請求項2ないし10は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点(特に相違点1、相違点3)に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様に、本件発明2ないし10は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。 2.申立理由2(進歩性)について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記「1.申立理由1(新規性)について」の「(1)ア.」に記載したとおり、上記相違点1ないし相違点3において相違し、その余の点で一致する。 イ.判断 そこで、まず相違点1について検討する。 上記相違点3に記載したように、シーラント接着層が、本件発明1では「酸変性ポリオレフィン樹脂」で構成され、その厚さは「2~50μm」であるのに対し、甲1発明では「ポリウレタン系接着剤」が用いられ、その厚さは具体的な値の特定がないが、甲1号証の段落【0109】の記載からみて「1μm以上5μm以下」の範囲の値であると解される(本件発明1の「シーラント接着層」は、本件明細書の段落【0098】、【0101】、【0111】の記載からみて熱ラミネート構成の場合を想定したものであるといえるのに対し、甲1発明の「シーラント接着層」は、甲第1号証の段落【0155】、【0159】等の記載からみてドライラミネート構成の場合のものである。)。したがって、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも「シーラント接着層」についてその材料、厚さが相違しており、たとえ甲1発明における成型深度が本件明細書に記載された例えば実施例1と同等であるとしてもそのことをもって甲1発明における基材層の突刺し強度が本件発明1で特定する範囲内であると推認することはできない。 そして、甲第2号証には、「フィルムの突き刺し荷重が5N~15N、フィルムの厚みが10~40μmである電池外装用ポリエステルフィルム」が記載されているが(上記「第4 2.」を参照)、突き刺し荷重とフィルムの厚みから算出される突刺し強度は「0.125N/μm~1.5N/μm」であって、非常に広い範囲が示されているにすぎない。唯一、実施例10の突刺し強度が0.65N/μmであり、本件発明1で特定する「0.6N/μm以上0.77N/μm」の範囲に含まれてはいるが、そもそもその値の測定方法は本件発明1で特定する「JIS Z1707に規定される方法による測定値であって、直径1.0mmであり且つ先端半径0.5mmであるプローブを使用して速度50mm/分で測定した5点の平均値を、前記基材層の厚さで除した値」とすることとは明らかに異なるものである。 また、甲第3号証には、「結晶化度が34%以上39%以下であり、かつ、突刺強度が17.0N/25μm以上である二軸延伸ナイロンフィルム」について記載され、また、「フィルムの結晶化度および突刺強度と、深絞り成型性との間には相関があること」も記載されている(上記「第4 3.」を参照)。同様に、甲第4号証には、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体かなる電池用包装材料において、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えたものとするために、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さを、0.92N/μm以上に設定すること」が記載されている(上記「第4 4.」を参照)。しかしながら、いずれもポリエステルフィルムではなくナイロンについての突刺し強度を特定したものにすぎず、甲第4号証にあっては、突き刺し強さが0.92N/μm以上とされ、本件発明1で特定する範囲外である。 以上のことを踏まえると、たとえ甲第2号証ないし甲第4号証の記載を参照したとしても、甲1発明において相違点1に係る構成を導き出すことはできない。 なお、甲第1号証の実施例1には、シーラント接着層を熱ラミネート構成した場合のものが記載されており(段落【0144】~【0148】、【0153】(表1))、仮に、甲1発明における「シーラント接着層」を、ドライラミネート構成の場合のものに代えて実施例1の熱ラミネート構成の場合のものを採用したとしても、段落【0153】の表1に示されるように実施例1では成型深度が4.5mmにすぎず、本件明細書に記載された例えば実施例1の6.0mmと同等とはいえないことは明らかであり、したがって、基材層の突刺し強度が本件発明1で特定する範囲内であると推認することもできない。 よって、他の相違点(相違点2、3)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2ないし8、10について 請求項2ないし8、10は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし8、10は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明9について 請求項9は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるところ、本件発明9に対して提示された甲第5号証ないし甲第7号証にはいずれも、外装材におけるシーラント層に相当する層の表面の静摩擦係数に関する記載があるにすぎず(上記「第4 5.」ないし「第4 7.」を参照)、これら甲第5号証ないし甲第7号証を参照しても、甲1発明において相違点1に係る構成を導き出すことはできないから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項、及び甲第5号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 3.申立理由3(実施可能要件)について (1)特許異議申立人は、概略次のような実施可能要件についての申立理由を主張している。 本件明細書には、基材層について、突刺し強度に関する特殊パラメータを満たすポリエステルフィルムをどのように入手または製造できるのかについて記載がなく、当業者が本件明細書の実施例を追試することは不可能であり、深絞り成型性に優れる蓄電装置用外装材を得るために、無数に存在するポリエステルフィルムの中から、本件発明1で特定された突刺し強度に関する特殊パラメータを満たすポリエステルフィルムを選定するに当たり、当業者が過度の施行錯誤を要する。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1ないし10を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されたものとはいえない。 (2)そこで、上記主張について検討する。 例えば本件明細書の段落【0022】に「ポリエステルフィルムの突刺し強度は、通常、ポリエステルの重合度(ポリマーの長さ)、ポリエステルフィルムの製造方法などに依存する。突刺し強度が高い傾向にあるポリエステルフィルムとして、例えば、チューブラー法などによって製造されたものが挙げられる。」と記載されているように、高い値の突刺し強度のポリエステルフィルムは、例えばチューブラー法(二軸延伸法)により製造することによって得られ、その値は延伸倍率などによって制御できることも当業者にとって周知といえる技術事項である(例えば甲第2号証の実施例10には、延伸倍率などを制御することによって突き刺し強度が0.65N/μmである二軸配向ポリエステルフィルムが記載されている。)。してみれば、たとえ本件明細書には実施例で用いたポリエステルフィルムA-1ないしA-8についてその具体的な入手または製造に関する記載がないとしても、突き刺し強度が本件発明1で特定する範囲を満たすポリエステルフィルムは、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく製造することは可能であるといえる。 (3)よって、特許異議申立人の実施可能要件についての申立理由に関する上記主張は採用することはできず、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 4.申立理由4(サポート要件)について (1)特許異議申立人は、概略次のようなサポート要件についての申立理由を主張している。 請求項1には、金属箔層の材料(例えば成型が困難な材料であってもよいのか?)、外装材の全体の厚み(例えば厚みが1cmあってもよいのか?)、他に含まれ得る層(例えば成型が困難な紙基材、セラミックス基材などが積層されていてもよいのか?)など、基材層の特性よりも外装材全体の深絞り成型性の良否に大きな影響を与える構成について特定されておらず、このような請求項1に係る蓄電装置用外装材が、発明の課題を解決できるとは考えられない。 したがって、本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものでない。 (2)そこで、上記主張について検討する。 本件明細書の段落【0007】~【0009】の記載、実施例・比較例の対比(特に表1及び表2を参照)によれば、発明の課題(十分な深絞り成型性を有する蓄電装置用外装材の提供)を解決するための手段は、特定の積層構造(少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層がこの順で積層された構造)を有し且つ基材層の突刺し強度を0.6N/μm以上とすることであると認められるところ、本件発明1にはかかる手段(構成)が反映されている。そして、発明の課題の解決に大きく影響が出るような、成型が困難な金属箔層の材料の選択、成型が困難となるような例えば1cmといった全体の厚み、さらには成型が困難となるような紙基材、セラミック基材などの他の層の追加など明らかに通常想定されない構成を含まないことは当然のことであるといえ、これらのことの特定がされていないからといって、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとまではいえない。 (3)よって、特許異議申立人のサポート要件についての申立理由に関する上記主張は採用することはできず、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし10に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700774

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決1件(出願 特願2017-000974)
  • 2021-015558拒絶査定不服審判 / 2022-12-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置
    同じ出願番号
同じ当事者の審決252件(TOPPANホールディングス株式会社、田中 俊子)
  • 2024-700551異議申立 / 2024-08-20 / 維持蓄電デバイス用外装材
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、田中 俊子
  • 2024-700438異議申立 / 2024-07-29 / 維持蓄電装置用外装材
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、田中 俊子
  • 2023-700938異議申立 / 2024-04-22 / 維持蓄電デバイス用外装材
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、田中 俊子
  • 2026-700350異議申立 / 2026-08-31
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社
  • 2026-700119異議申立 / 2026-06-30 / 維持ガスバリア性フィルム
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,910件(113・H01M、121・H01M、536・H01M ほか)
  • 2026-700111異議申立 / 2026-06-22 / 維持固体酸化物形電気化学セル及びその利用
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2026-700141異議申立 / 2026-05-27 / 維持電気化学装置
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2025-700124異議申立 / 2026-03-25 / 訂正認容アルカリ金属二次電池とその用途
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2025-700972異議申立 / 2025-12-04 / 維持蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2024-701017異議申立 / 2025-09-10 / 維持電気化学素子の金属支持体、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネル…
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存