特許異議申立
2024-700523
周波数選択反射板および通信中継システム
- 審判番号
- 2024-700523
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-005964
- 登録番号
- 7452772
- 請求日
- 2024年06月03日
- 審決日
- 2024年11月13日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】須田 元也
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 上田 翔太
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P1652.121-Y (H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7452772号発明「周波数選択反射板および通信中継システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7452772号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7452772号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和4年8月29日(優先権主張 令和3年8月27日、令和4年5月9日、令和4年6月27日)を国際出願日とする特願2023-544018号の一部を令和5年10月17日に新たな特許出願とした特願2023-178884号の一部を令和5年11月28日に新たな特許出願とした特願2023-200588号の一部を令和6年1月18日に新たな特許出願としたものであって、令和6年3月11日にその特許権の設定登録がされ、令和6年3月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~4に係る特許に対し、令和6年6月3日に特許異議申立人 須田 元也(以下「申立人」という。)により、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され特許異議の申立てがなされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、請求項1~4における符号1A~4Eは、発明特定事項の分説のために当審で付したものであり、以下、分説した発明特定事項を、それぞれ「発明特定事項1A」等のように参照する。
「【請求項1】
1A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
1B 前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
1C 前記複数の分割領域は、前記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、前記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、
1D 前記複数のサブ領域は前記メイン領域の周囲に配置されており、
1E 前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
1F 前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、
1G 周波数選択反射板。
【請求項2】
2A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
2B 前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
2C 前記複数の分割領域は、前記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、前記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、
2D 前記複数のサブ領域は前記メイン領域の周囲に配置されており、
2E 前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
2F 前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、
2G 周波数選択反射板。
【請求項3】
3A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
3B 前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
3C 前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
3D 前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる、
3E 周波数選択反射板。
【請求項4】
4A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
4B 前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
4C 前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
4D 前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる、
4E 周波数選択反射板。」
第3 申立ての理由の概要
申立書に記載された申立理由及び証拠方法は、次のとおりである。
1 申立理由
本件発明1~4は、甲第1号証(以下「甲1」という。)に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許法第113条第2号)
2 証拠方法
甲1:特開2021-48465号公報
第4 申立理由についての判断
申立理由(進歩性欠如)の有無を判断するために、まず、以下の1において甲1発明の認定を行う。次いで、以下の2において本件発明1と甲1発明との対比を行って相違点について判断し、以下の3に小括する。
1 甲1発明の認定
(1)甲1の記載
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した(以下同様。)。
ア 「【0002】
現在、商用分野にも第5世代、いわゆる5Gのモバイル通信規格が導入されている。本規格では高スループット、より多くのチャネル容量、および、低遅延でのパフォーマンスの改善が大いに求められている。
データ速度の面では、本規格では10Gbps以上のスループットが約束されている。この事実に対応するため、ある解決案では5Gモバイル通信は非常に高い周波数を用いて動作することが提案されている。
多くの国々で、26GHzから28GHzの周波数領域のミリ波帯域が導入され実証された。この非常に高い周波数により、モバイル通信システムで非常に高いスループットを達成する、より広い帯域幅で伝送ができる。
それにも関わらず、モバイル通信にはカバーエリアに問題がある。ミリ波周波数を用いることから、電磁波は波の伝搬において高い直進性を持つ。波の伝搬では、障害物を屈折により通過するのが難しい。そのため、通信システムはカバーエリアが小さい。
上述の事由から、電磁波の反射板の考えが用いられてきた。伝搬する波は、反射板により所望の方向に反射することができる。この解決法は非常に単純でコストも低い。しかしながら、通常の金属反射板を使うと、反射板は所望の反射方向の角度まで回される。それゆえ、これを実施sると、反射角度が大きい場合には体積が大きくなる。特に室内環境では、実際には向いていない。
近年、メタサーフェスと名付けられた電磁波の反射器が提案されている。メタサーフェスの反射特性は、反射面上の波長以下の共振器の配列で生まれる、表面のインピーダンスと反射位相に依存する。メタサーフェスは周期的に配列された共振器や非周期的に配列された共振器で構成される。共振器を最適化することにより、メタサーフェスはその平面形状を維持しながら所望の反射角度を実現できるため、現実の環境で実施するのに適している。…(略)…」(当審注:上記の「実施sる」は原文ママ)
イ 「【0009】
以下の実施例では、目的のメタサーフェス100の中心周波数は28GHzである。また、以下の説明では、メタサーフェス100は入射角が0度の入射波を70度の向きに反射するよう設計されている。
なお、本明細書ではメタサーフェス100に垂直に入射した電磁波が反射する方向のうち、最大の強度を示す反射方向を「主反射方向」と呼ぶことがある。同様に、反射波のメインとなるローブの向きとして「主ローブ方向」と呼ぶことがある。また、電磁波の反射板としてのメタサーフェス、つまり、メタサーフェスを備えた反射板を、単にメタサーフェスと呼ぶことがある。
以下に説明されるように、動作周波数、異常波反射における入射角と反射角は、十字型の共振器130の大きさや回折格子の周期の長さを調整することにより設計、変更できる。
ここで、異常波反射とは、例えば非特許文献1に記載のような、入射角が0度の入射波を70度などの向きに反射できるような反射を言う。」
ウ 「【0022】
図4は、図3での初期の反射位相を用いた、メタサーフェスでのバイスタティックレーダー反射断面の結果であり、15λ0mm四方の面積を有するメタサーフェス100での両偏波の、動作周波数における、xz平面でのバイスタティックレーダー反射断面(RCS)の結果を示す。この初期結果は、図3に示されるユニットセル(U1、U2、U3、U4)の個々の反射位相によって得られる。さらに、この結果は、波の反射のメインローブが目的の方向に向けられていることを示す。しかしながら、サイドローブが大きいためメタサーフェス100の反射性能としては低い。
【0023】
図5は、隣接するユニットセル間での結合を調整することで最適化した後のメタサーフェスでのバイスタティックレーダー反射断面の結果であり、lVとlHを最適化した後の、メタサーフェス100での両偏波の、xz平面でのバイスタティックレーダー反射断面(RCS)の結果を示す。隣接するユニットセル(U1、U2、U3、U4)間の結合を調整し適切なものにすることにより、高い反射効率を実現することが、最適化の目的である。
【0024】
以上のように設計されたメタサーフェス100では、金属共振器130を有するスーパーセルS1は、誘電体基板110の上面に形成され、入射波の垂直偏波および水平偏波を反射させ、所定周波数での電磁波を要求される位相で異常波反射させる回折格子の周期で配列されている。
本構成により、異常波反射を利用することで、0度で入射する電磁波を50度、60度、70度など大きな角度で反射させることが可能となる。」
エ 「【0027】
図6は、本発明の一実施例におけるメタサーフェスの構成を示す。メタサーフェス100を1種類のみから構成した場合、一方向に強い指向性を示す。これに対して、本実施例では、より広い範囲に電磁波を反射する。本実施例において、メタサーフェス100は複数のサブメタサーフェス(201、202、203)から構成される。本実施例では3つのサブメタサーフェス100から構成される。それぞれのサブメタサーフェス(201、202、203、204、205、206)の構造は、既述のメタサーフェス100と同様であり、本実施例では主ローブ方向が水平面内の所定の向きに調整されている。
複数のサブメタサーフェス(201、202、203)は、水平方向に配列されている。そして、それぞれの主ローブ方向は、水平面内の互いに異なる向きである。
本構成により、メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散することができる。
【0028】
水平方向に拡散する代わりに、垂直方向に拡散することもできる。
一実施例において、メタサーフェス100は複数のサブメタサーフェスから構成され、サブメタサーフェス100は垂直方向に配列される。それぞれのサブメタサーフェスの主ローブ方向は、垂直面内の互いに異なる向きである。
本構成により、メタサーフェス100で反射する電磁波を垂直方向に所望の範囲で拡散することができる。」
オ 「【図6】
[図:0001417655000001.jpg]
」
(2)甲1発明
前記(1)によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa~hに分説し、「構成a」などのようにして参照する。
<甲1発明>
「a 周期的に配列された共振器や非周期的に配列された共振器で構成されるメタサーフェスであって、(【0002】)
b メタサーフェス100では、金属共振器130を有するスーパーセルS1により所定周波数での電磁波を要求される位相で異常波反射させ、(【0024】)
c 異常波反射とは、入射角が0度の入射波を70度などの向きに反射できるような反射を言い、(【0009】)
d メタサーフェスは、共振器を最適化することにより、所望の反射角度を実現でき、(【0002】)
e メタサーフェス100での反射により、波の反射のメインローブが目的の方向に向けられ、(【0022】)
f メタサーフェス100は複数のサブメタサーフェス(201、202、203)から構成され、複数のサブメタサーフェス(201、202、203)は、水平方向に配列され、それぞれの主ローブ方向は、水平面内の互いに異なる向きであり、メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散することができ、(【0027】)
g 水平方向に拡散する代わりに、垂直方向に拡散することもでき、メタサーフェス100は複数のサブメタサーフェスから構成され、サブメタサーフェス100は垂直方向に配列され、それぞれのサブメタサーフェスの主ローブ方向は、垂直面内の互いに異なる向きであり、メタサーフェス100で反射する電磁波を垂直方向に所望の範囲で拡散することができる(【0028】)
h メタサーフェス。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)発明特定事項1A「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって」及び発明特定事項1G「周波数選択反射板」について
a 甲1発明における「メタサーフェス」について、甲1の【0009】における「また、電磁波の反射板としてのメタサーフェス、つまり、メタサーフェスを備えた反射板を、単にメタサーフェスと呼ぶことがある。」との記載及び文脈を踏まえると、甲1発明における「メタサーフェス」は、「メタサーフェスを備えた反射板」を意味するものと認められる。
そして、該「メタサーフェス」は、「所定周波数での電磁波を要求される位相で異常波反射させ」るものである(構成b)から、本件発明1の「特定の周波数帯の電磁波を」「反射する周波数選択反射板」に相当するといえる。
ここで、「異常波反射とは、入射角が0度の入射波を70度などの向きに反射できるような反射を言」う(構成c)ことから、甲1発明の「メタサーフェス」は、正反射方向とは異なる方向に反射するものであると認められる。
b 前記aより、本件発明1と甲1発明とは、「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板」である点で一致する。
(イ)発明特定事項1B「前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、」について
a 甲1発明の「メタサーフェス」は、「複数のサブメタサーフェス(201、202、203)から構成され」ている(構成f)。すなわち、甲1発明では、「周波数選択反射板」である「メタサーフェス」(前記(ア)a)の全面が、「複数のサブメタサーフェス(201、202、203)から構成され」ていると認められる。
このとき、各「サブメタサーフェス」がそれぞれ領域をなしており、「メタサーフェス」の全面が「複数のサブメタサーフェス(201、202、203)」によって分割されていることは図6から明らかであるから、甲1発明では、メタサーフェスの全面が、複数の領域であるサブメタサーフェスに分割されているといえる。したがって、甲1発明における「サブメタサーフェス」は、本件発明1における「分割領域」に相当する。
b 前記aより、本件発明1と甲1発明とは、「前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、」という点で一致する。
(ウ)発明特定事項1C「前記複数の分割領域は、前記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、前記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、」について
a 甲1発明の「メタサーフェス」は「周波数選択反射板」であって(前記(ア)a)、「水平方向に配列される」「複数のサブメタサーフェス(201、202、203)から構成され」ている(構成f)。
図6を参照すると、メタサーフェス100の左端にサブメタサーフェス201が配置され、その右隣にサブメタサーフェス202が配置され、その右隣である右端にサブメタサーフェス203が配置されていることから、サブメタサーフェス202は、メタサーフェス100の中央に位置するといえる。
前記(イ)aのとおり、サブメタサーフェス202は、「分割領域」であるから、サブメタサーフェス202は、中央に位置する分割領域である。
また、サブメタサーフェス201及び203は、中央に位置する分割領域以外の複数の分割領域である。
b 前記aより、本件発明1と甲1発明とは、「前記複数の分割領域は、前記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域と、前記中央に位置する分割領域以外の分割領域である複数の領域とを有し、」という点で共通するものの、本件発明1では、周波数選択反射板の中央に位置する分割領域を「メイン領域」とし、メイン領域以外の分割領域を「サブ領域」とするのに対し、甲1発明ではその点について特定されていない点で相違する。
(エ)発明特定事項1D「前記複数のサブ領域は前記メイン領域の周囲に配置されており、」について
a 甲1発明では、図6から、サブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203が、中央に位置する分割領域であるサブメタサーフェス202(前記(ウ)a)の周囲に配置されているとことは明らかである。
b 前記a及び(ウ)より、本件発明1と甲1発明とは、「前記複数の中央に位置する分割領域以外の領域は前記中央に位置する分割領域の周囲に配置されており、」という点で共通するものの、前記(ウ)bと同様に、本件発明1では、中央に位置する分割領域を「メイン領域」とし、メイン領域以外の分割領域を「サブ領域」とするのに対し、甲1発明ではその点について特定されていない点で相違する。
(オ)発明特定事項1E「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、」について
a 本件発明1における「反射方向ベクトル」について、発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「例えば図6に示すように、周波数選択反射板1を地面(XZ面)に垂直に立てた場合の電磁波反射側から見て、左隅を原点、水平方向をx軸、天地方向をy軸、反射側法線方向をz軸とし、電磁波の反射方向ベクトルdrの極角をθ、方位角をφと定義する。」(【0038】)
「図8(a)~(c)に、図1および図2に示す周波数選択反射板におけるメイン領域および各サブ領域の反射特性の例を示す。図8(a)に示すように、周波数選択反射板1は、特定の周波数帯の電磁波(入射波Wi)を正反射(鏡面反射)方向とは異なる方向に反射するものであり、例えばメイン領域A0では入射波Wiの入射角θiと、反射波Wrの反射角θrとは異なる。また、図2、図7、図8(b)に示すように、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φについて、サブ領域A32ではメイン領域A0に対して方位角φが小さく、サブ領域A12ではメイン領域A0に対して方位角φが大きく、サブ領域A32、メイン領域A0、サブ領域A12の順に、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加している。同様に、サブ領域A31、A21、A11の順に、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加し、サブ領域A33、A23、A13の順に、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加している。一方、図2、図7、図8(c)に示すように、電磁波の反射方向ベクトルの極角θについて、サブ領域A21ではメイン領域A0に対して極角θが小さく、サブ領域A23ではメイン領域A0に対して極角θが大きく、サブ領域A21、メイン領域A0、サブ領域A23の順に、電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加している。同様に、サブ領域A11、A12、A13の順に、電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加し、サブ領域A31、A32、A33の順に、電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加している。このように、x軸方向に沿って電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加し、また、y軸方向に沿って電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加するように、メイン領域A0および各サブ領域A11~A33での電磁波の反射方向ベクトルが設定されている。これにより、各サブ領域A11~A33での電磁波の反射方向ベクトルを、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定することができる。」(【0045】)
「
[図:0001417655000002.jpg]
」(【図8】)
「このような場合、所定の入射角θiで入射した電磁波(入射波Wi)を、メイン領域A0および各サブ領域A11~A33の反射特性(極角θ、方位角φ)に応じて反射させることで、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルを中心として広がりを持って反射させることができる。」(【0046】)
これらの記載を参酌すると、本件発明1における「反射方向ベクトル」は、各領域における反射特性と同義であり、各領域における反射波の方向を意味するものであると認められる。
b 甲1発明における「主ローブ方向」について、甲1には以下のような記載がある。
「以下の実施例では、目的のメタサーフェス100の中心周波数は28GHzである。また、以下の説明では、メタサーフェス100は入射角が0度の入射波を70度の向きに反射するよう設計されている。なお、本明細書ではメタサーフェス100に垂直に入射した電磁波が反射する方向のうち、最大の強度を示す反射方向を「主反射方向」と呼ぶことがある。同様に、反射波のメインとなるローブの向きとして「主ローブ方向」と呼ぶことがある。」(【0009】)
「図4は、図3での初期の反射位相を用いた、メタサーフェスでのバイスタティックレーダー反射断面の結果であり、15λ0mm四方の面積を有するメタサーフェス100での両偏波の、動作周波数における、xz平面でのバイスタティックレーダー反射断面(RCS)の結果を示す。この初期結果は、図3に示されるユニットセル(U1、U2、U3、U4)の個々の反射位相によって得られる。さらに、この結果は、波の反射のメインローブが目的の方向に向けられていることを示す。しかしながら、サイドローブが大きいためメタサーフェス100の反射性能としては低い。」(【0022】)
「【図4】
[図:0001417655000003.jpg]
」
「図6は、本発明の一実施例におけるメタサーフェスの構成を示す。メタサーフェス100を1種類のみから構成した場合、一方向に強い指向性を示す。これに対して、本実施例では、より広い範囲に電磁波を反射する。本実施例において、メタサーフェス100は複数のサブメタサーフェス(201、202、203)から構成される。本実施例では3つのサブメタサーフェス100から構成される。それぞれのサブメタサーフェス(201、202、203、204、205、206)の構造は、既述のメタサーフェス100と同様であり、本実施例では主ローブ方向が水平面内の所定の向きに調整されている。
複数のサブメタサーフェス(201、202、203)は、水平方向に配列されている。そして、それぞれの主ローブ方向は、水平面内の互いに異なる向きである。
本構成により、メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散することができる。」(「【0027】)
これらの記載を参酌すると、甲1発明における「主ローブ方向」は、1つのメタサーフェス(サブメタサーフェス)による反射波の方向を意味するものであると認められる。
c 前記a及びbより、本件発明1における「反射方向ベクトル」と、甲1発明における「主ローブ方向」は、共に、「周波数選択反射板」(前記(ア)a)の、所定の領域における反射波の方向を意味するものであるから、甲1発明における「主ローブ方向」は、本件発明1における「反射方向ベクトル」に相当する。
そして、甲1発明では、「分割領域」である「複数のサブメタサーフェス(201、202、203)」(前記(イ)a)の「それぞれの主ローブ方向は、水平面内の互いに異なる向きであ」る(構成f)から、本件発明1と甲1発明は、「各分割領域」における反射波の「反射方向ベクトル」が互いに異なる点で一致する。
d 前記a~cより、本件発明1と甲1発明とは、「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、」という点で一致する。
(カ)発明特定事項1F「前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」について
a 甲1発明は、「メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散する」(構成f)ものであるから、「周波数選択反射板」である「メタサーフェス」(前記(ア)a)全体として、反射する電磁波である反射波を水平方向に広げるものであると認められるが、各サブメタサーフェス201、202及203のそれぞれの反射波の具体的な方向が不明なため、サブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203の反射波が、サブメタサーフェス202の反射波を中心として外側に向かって広がるか否かは不明である。
b 前記a及び(ウ)より、本件発明1は、「前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点で相違する。
(キ)一致点及び相違点
前記(ア)~(カ)によれば、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
前記複数の分割領域は、前記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域と、前記中央に位置する分割領域以外の分割領域である複数の領域とを有し、
前記複数の中央に位置する分割領域以外の領域は前記中央に位置する分割領域の周囲に配置されており、
前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なる
周波数選択反射板。」
<相違点1>
本件発明1では、周波数選択反射板の中央に位置する分割領域を「メイン領域」とし、メイン領域以外の分割領域を「サブ領域」とするのに対し、甲1発明ではその点について特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点。
イ 本件発明1と甲1発明との相違点についての判断
事案に鑑み、前記ア(キ)で示した相違点2について、以下、検討する。
(ア)前記ア(カ)aのとおり、甲1発明では、「メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散する」(構成g)ことが特定されているものの、各サブメタサーフェス201、202及203のそれぞれの反射波の具体的な方向、すなわち「主ローブ方向」をどのように設定するかについて、記載も示唆もない。
そのため、中央に位置する分割領域以外の領域であるサブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203(前記ア(ウ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、中央に位置する分割領域であるサブメタサーフェス202(前記ア(ウ)a)での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がることについても、記載も示唆されていない。また、このように反射方向ベクトルを設定することは技術常識であるともいえない。
したがって、相違点2は、当業者といえども、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
(イ)申立人は、「甲1発明の複数のサブメタサーフェスのうちの中央のサブメタサーフェスの反射方向ベクトルを中心として周囲のサブメタサーフェスの反射方向ベクトルが、水平方向に外側に広がるように設定」することは「共通の作用原理を適用する上で創作性を有するものでなく当業者にとって任意の設計事項に過ぎない」旨主張している。
この点について、甲1発明において、中央に位置する分割領域以外の領域であるサブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203(前記ア(ウ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、中央に位置する分割領域であるサブメタサーフェス202(前記ア(ウ)a)での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる構成とするためには、サブメタサーフェス202における「反射方向ベクトル」を特定の方向ベクトルとして設定した後に、サブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203における「反射方向ベクトル」が、サブメタサーフェス202における反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定する必要があると認められる。
しかしながら、前記(ア)のとおり、そもそも甲1発明には、いずれの「サブメタサーフェス」についても「反射方向ベクトル」である「主ローブ方向」(前記ア(オ)c)をどのように設定するのか記載も示唆もないことから、上述のように構成することが設計事項であったとは認められない。
したがって、当該主張は採用できない。
(ウ)本件発明1と甲1発明との相違点についての小括
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明との相違点2は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。
ウ 本件発明1についての小括
前記イ(ウ)によれば、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2)本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)発明特定事項2A、2B、2C、2D、2E、2Gについて
発明特定事項2A、2B、2C、2D、2E、2Gは、それぞれ発明特定事項1A、1B、1C、1D、1E、1Gと同一であるから、前記(1)ア(ア)~(オ)より、本件発明2と甲1発明とは、これらの構成において、相違点1と同様の点について相違し、その余の点について一致する。
(イ)発明特定事項2F「前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」について
a 甲1発明は、電磁波を「水平方向に拡散する代わりに、垂直方向に拡散することもでき」るものであって、その場合には「サブメタサーフェス100は垂直方向に配列され」るものであるから(構成g)、「メタサーフェス100」を構成する「複数のサブメタサーフェス(201、202、203)」(構成f)が、「水平方向」ではなく「垂直方向」に配列され、「周波数選択反射板」である「メタサーフェス」(前記(ア)a)全体として、反射する電磁波である反射波を垂直方向に広げるものであると認められるが、各サブメタサーフェス201、202及203のそれぞれの反射波の具体的な方向が不明なため、サブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203の反射波が、サブメタサーフェス202の反射波を中心として外側に向かって広がるか否かは不明である。
b 前記aより、本件発明1は、「前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点で相違する。
(ウ)一致点及び相違点
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
前記複数の分割領域は、前記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域と、前記中央に位置する分割領域以外の分割領域である複数の領域とを有し、
前記複数の中央に位置する分割領域以外の領域は前記中央に位置する分割領域の周囲に配置されており、
前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なる
周波数選択反射板。」
<相違点3>
本件発明2では、周波数選択反射板の中央に位置する分割領域を「メイン領域」とし、メイン領域以外の分割領域を「サブ領域」とするのに対し、甲1発明ではその点について特定されていない点。
<相違点4>
本件発明2は、「前記各サブ領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記メイン領域での前記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点。
イ 本件発明2と甲1発明との相違点についての判断
事案に鑑み、前記ア(ウ)で示した相違点4について、以下、検討する。
(ア)前記ア(イ)aのとおり、甲1発明では、「メタサーフェス100で反射する電磁波を垂直方向に所望の範囲で拡散する」(構成h)ことが特定されているものの、各サブメタサーフェス201、202及203のそれぞれの反射波の具体的な方向である「主ローブ方向」をどのように設定するかについて、記載も示唆もない。
そのため、中央に位置する分割領域以外の領域であるサブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203(前記(1)ア(ウ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、中央に位置する分割領域であるサブメタサーフェス202(前記(1)ア(ウ)a)での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がることについても、記載も示唆されておらず、当該構成は技術常識であるともいえない。
したがって、相違点4は、当業者といえども、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
(イ)申立人は、「甲1発明の複数のサブメタサーフェスのうちの中央のサブメタサーフェスの反射方向ベクトルを中心として周囲のサブメタサーフェスの反射方向ベクトルが、垂直方向に外側に広がるように設定」することは「創作性を有するものでなく当業者にとって任意の設計事項に過ぎない」旨主張している。
この点について、甲1発明において、中央に位置する分割領域以外の領域であるサブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203(前記(1)ア(ウ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、中央に位置する分割領域であるサブメタサーフェス202(前記(1)ア(ウ)a)での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる構成とするためには、サブメタサーフェス202における「反射方向ベクトル」を特定の方向ベクトルとして設定した後に、サブメタサーフェス201及びサブメタサーフェス203における「反射方向ベクトル」が、サブメタサーフェス202における反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定する必要があると認められる。
しかしながら、前記(ア)のとおり、そもそも甲1発明には、いずれの「サブメタサーフェス」についても「反射方向ベクトル」である「主ローブ方向」(前記(1)ア(オ)c)をどのように設定するのか記載も示唆もないことから、上述のように構成することが設計事項であったとは認められない。
したがって、当該主張は採用できない。
(ウ)本件発明2と甲1発明との相違点についての小括
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明2と甲1発明との相違点4は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。
ウ 本件発明2についての小括
前記イ(ウ)によれば、本件発明2は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(3)本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)発明特定事項3A、3B、3C、3Eについて
発明特定事項3A、3B、3C、3Eは、それぞれ発明特定事項1A、1B、1E、1Gと同一であるから、前記(1)ア(ア)、(イ)及び(オ)より、本件発明3と甲1発明とは、これらの構成において一致する。
(イ)発明特定事項3D「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる、」について
a 甲1発明は、「メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散する」(構成f)ものであるから、「周波数選択反射板」である「メタサーフェス」(前記(1)ア(ア)a)全体として、反射する電磁波である反射波を水平方向に広げるものであると認められるが、各サブメタサーフェス201、202及203のそれぞれの反射波の具体的な方向が不明なため、各サブメタサーフェスの反射波が、各サブメタサーフェスの反射波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がるか否かは不明である。。
b 前記aより、本件発明3は、「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点で相違する。
(ウ)一致点及び相違点
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明3と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なる、
周波数選択反射板。」
<相違点5>
本件発明3は、「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点。
イ 本件発明1と甲1発明との相違点についての判断
前記ア(ウ)で示した相違点5について、以下、検討する。
(ア)前記ア(イ)aのとおり、甲1発明では、「メタサーフェス100で反射する電磁波を水平方向に所望の範囲で拡散する」(構成f)ことが特定されているものの、各サブメタサーフェスのそれぞれの反射波の具体的な方向である「主ローブ方向」をどのように設定するかについて、記載も示唆もない。
そのため、各「分割領域」である各「サブメタサーフェス」(前記(1)ア(イ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がることについても、記載も示唆されておらず、当該構成は技術常識であるともいえない。
したがって、相違点5は、当業者といえども、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
(イ)申立人は、「各サブメタサーフェスでの電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として水平方向に外側に向かって広がるよう各サブメタサーフェスの反射方向ベクトルを設定することは創作性を有するものでなく当業者にとって任意の設計事項に過ぎない」旨主張している。
この点について、甲1発明において、各「分割領域」である各「サブメタサーフェス」(前記(1)ア(イ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる構成とするためには、各「サブメタサーフェス」における「反射方向ベクトル」を設定し、それらの「反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトル」を求めた上で、各「サブメタサーフェス」における「反射方向ベクトル」が該「主反射方向ベクトル」を中心として外側に広がるように設定する必要があると認められる。
しかしながら、前記(ア)のとおり、そもそも甲1発明には各「サブメタサーフェス」の「反射方向ベクトル」である「主ローブ方向」(前記(1)ア(オ)c)をどのように設定するかについての記載も示唆もないことから、上述のように構成することが設計事項であったとは認められない。
したがって、当該主張は採用できない。
(ウ)本件発明3と甲1発明との相違点についての小括
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明3と甲1発明との相違点5は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。
ウ 本件発明3についての小括
前記イ(ウ)によれば、本件発明3は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(4)本件発明4について
ア 本件発明4と甲1発明との対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)発明特定事項4A、4B、4C、4Eについて
発明特定事項4A、4B、4C、4Eは、それぞれ発明特定事項1A、1B、1E、1Gと同一であるから、前記(1)ア(ア)、(イ)及び(オ)より、本件発明4と甲1発明とは、これらの構成において一致する。
(イ)発明特定事項4D「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる、」について
a 甲1発明は、電磁波を「水平方向に拡散する代わりに、垂直方向に拡散することもでき」るものであって(構成g)、「メタサーフェス100で反射する電磁波を垂直方向に所望の範囲で拡散する」(構成g)ものであるから、「周波数選択反射板」である「メタサーフェス」(前記(1)ア(ア)a)全体として、反射する電磁波である反射波を垂直方向に広げるものであると認められるが、各サブメタサーフェスのそれぞれの反射波の具体的な方向が不明なため、各サブメタサーフェスの反射波が、各サブメタサーフェスの反射波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がるか否かは不明である。
b 前記aより、本件発明4は、「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点で相違する。
(ウ)一致点及び相違点
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明4と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なる、
周波数選択反射板。」
<相違点6>
本件発明4は、「前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、前記各分割領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、その点について特定されていない点。
イ 本件発明4と甲1発明との相違点についての判断
前記ア(ウ)で示した相違点6について、以下、検討する。
(ア)前記ア(イ)aのとおり、甲1発明では、「メタサーフェス100で反射する電磁波を垂直方向に所望の範囲で拡散する」(構成g)ことが特定されているものの、各サブメタサーフェスのそれぞれの反射波の具体的な方向である「主ローブ方向」をどのように設定するかについて、記載も示唆もない。
そのため、各「分割領域」である各「サブメタサーフェス」(前記(1)ア(イ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がることについても、記載も示唆もされておらず、当該構成は技術常識であるともいえない。
したがって、相違点6は、当業者といえども、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
(イ)申立人は、「各サブメタサーフェスでの電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として垂直方向に外側に向かって広がるよう各サブメタサーフェスの反射方向ベクトルを設定することは創作性を有するものでなく当業者にとって任意の設計事項に過ぎない」旨主張している。
この点について、甲1発明において、各「分割領域」である各「サブメタサーフェス」(前記(1)ア(イ)a)での反射波である電磁波の「反射方向ベクトル」が、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、前記電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がる構成とするためには、各「サブメタサーフェス」における「反射方向ベクトル」を設定し、それらの「反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトル」を求めた上で、各「サブメタサーフェス」における「反射方向ベクトル」が該「主反射方向ベクトル」を中心として外側に広がるように設定する必要があると認められる。
しかしながら、前記(ア)のとおり、そもそも甲1発明には各「サブメタサーフェス」の「反射方向ベクトル」である「主ローブ方向」(前記(1)ア(オ)c)をどのように設定するかについての記載も示唆もないことから、上述のように構成することが設計事項であったとは認められない。
したがって、当該主張は採用できない。
(ウ)本件発明4と甲1発明との相違点についての小括
前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明4と甲1発明との相違点6は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。
ウ 本件発明4についての小括
前記イ(ウ)によれば、本件発明4は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
3 申立理由についての小括
前記2(1)~(4)のとおり、本件発明1~4は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、申立理由には理由がない。
第5 むすび
前記第4によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700523