特許異議申立
2025-700136
リフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法
- 審判番号
- 2025-700136
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-114298
- 登録番号
- 7525011
- 請求日
- 2025年01月30日
- 審決日
- 2025年10月21日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人第一国際特許事務所
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 丸山 高政
- 審判官 高野 洋
- 審判官 松原 徳久
- 分類
- P1651.113-YAA(H01Q) / P1651.121-YAA(H01Q) / P1651.537-YAA(H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7525011号発明「リフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7525011号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7525011号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7525011号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和5年7月12日の出願であって、令和6年7月22日にその特許権の設定登録がされ、同年7月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~7)に係る特許に対し、特許異議申立人 渡辺 陽子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
特許異議の申立てからの手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 7年 1月30日 特許異議申立書
3月25日付け 取消理由通知書
5月26日 訂正請求書
意見書(特許権者)
7月 7日 意見書(申立人)
8月13日付け 取消理由通知書(決定の予告)
9月19日 訂正請求書
意見書(特許権者)
なお、令和7年5月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、令和7年9月19日に提出された訂正請求書による訂正については、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断した場合に当たるから、特許法120条の5第5項ただし書に規定された「特別の事情があるとき」に該当し、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
以下、令和7年1月30日の特許異議申立書を、単に「申立書」といい、同年8月13日付け取消理由通知書(決定の予告)を「決定の予告」といい、同年9月19日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 訂正の適否
本件訂正が適法なものであるかについて、以下、判断する。
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項1及び2からなる。そして、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下の(1)に示すとおりであり、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下の(2)に示すとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すために特許権者が付したものである。
〈訂正事項1〉
請求項1の
「前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、」
との記載を
「前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであり、」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、7も同様に訂正する。)
〈訂正事項2〉
請求項6の
「前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たすように、」
との記載を
「前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであり、前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲であるように、」
に訂正する。
(請求項6の記載を直接的に引用する請求項7も同様に訂正する。)
(1)本件訂正前の特許請求の範囲
本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、
前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である、リフレクトアレイ。
【数1】
[図:0001431140000001.jpg]
【数2】
[図:0001431140000002.jpg]
【請求項2】
前記リフレクトアレイは誘電体層の片面に素子があり、誘電体層の素子とは反対側の面にグランド層を有している請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項3】
前記素子がクロスパッチである請求項2に記載のリフレクトアレイ。
【請求項4】
前記リフレクトアレイは3GHz~60GHzの電磁波を反射させる請求項1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイ。
【請求項5】
発信器から一次放射された電磁波が前記リフレクトアレイに入射し、前記リフレクトアレイから二次放射された電磁波を受信器が受信する電磁波反射システムであって、前記リフレクトアレイが請求項1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイである、電磁波反射システム。
【請求項6】
電磁波を反射させるリフレクトアレイの設置方法であって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、
前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たすように、前記リフレクトアレイを支持体に固定する、リフレクトアレイの設置方法。
【数3】
[図:0001431140000003.jpg]
【数4】
[図:0001431140000004.jpg]
【請求項7】
請求項6に記載の前記リフレクトアレイは、請求項1または2に記載のリフレクトアレイである、リフレクトアレイの設置方法。」
(2)本件訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであり、
前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である、リフレクトアレイ。
【数1】
[図:0001431140000005.jpg]
【数2】
[図:0001431140000006.jpg]
【請求項2】
前記リフレクトアレイは誘電体層の片面に素子があり、誘電体層の素子とは反対側の面にグランド層を有している請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項3】
前記素子がクロスパッチである請求項2に記載のリフレクトアレイ。
【請求項4】
前記リフレクトアレイは3GHz~60GHzの電磁波を反射させる請求項1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイ。
【請求項5】
発信器から一次放射された電磁波が前記リフレクトアレイに入射し、前記リフレクトアレイから二次放射された電磁波を受信器が受信する電磁波反射システムであって、前記リフレクトアレイが請求項1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイである、電磁波反射システム。
【請求項6】
電磁波を反射させるリフレクトアレイの設置方法であって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであり、
前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲であるように、前記リフレクトアレイを支持体に固定する、リフレクトアレイの設置方法。
【数3】
[図:0001431140000007.jpg]
【数4】
[図:0001431140000008.jpg]
【請求項7】
請求項6に記載の前記リフレクトアレイは、請求項1または2に記載のリフレクトアレイである、リフレクトアレイの設置方法。」
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~5、7は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~5、7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項をなす。また、本件訂正前の請求項7は、請求項6を引用するものであるから、請求項6及び7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項をなす。
そして、共通する請求項7を有するこれらの一群の請求項は、組み合わされて、一群の請求項となるから、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法120条の5第4項で委任される特許法施行規則45条の4に規定する一群の請求項である。
3 独立特許要件について
本件の特許異議の申立ては、全請求項(請求項1~7)に対するものであるから、本件訂正のうち、特許異議の申立てがされていない請求項に対するものはない。
したがって、本件訂正には、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の規定は適用されない。
4 訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「リフレクトアレイ」について、「長辺の長さが8Lであ」ることを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
また、「前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであ」ることは、本件特許の明細書の【0017】、【0020】等の記載に基づくものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
そして、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
請求項1を引用する請求項2~5、7についても同様である。
5 訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項6に係る発明を特定する事項である「リフレクトアレイ」について、「長辺の長さが8Lであ」ることを限定し、本件訂正前の請求項6に係る発明を特定する事項である「リフレクトアレイを支持体に固定する」条件について、「入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
また、「前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであ」ることは、本件特許の明細書の【0017】、【0020】等の記載に基づくものであり、「入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である」ことは、【0086】等の記載に基づくものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
そして、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
請求項6を引用する請求項7についても同様である。
6 本件訂正の適否
以上によれば、本件訂正は適法なものと認められる。
よって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載された事項により特定されるとおりのもの(前記第2、1(2))と認める。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1及び6を以下のように分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。
【請求項1】
1A 電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、
1B 前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
1C1 前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであり、
1D1 前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である、
1E リフレクトアレイ。
1C2 【数1】
[図:0001431140000009.jpg]
1D2 【数2】
[図:0001431140000010.jpg]
【請求項6】
6A 電磁波を反射させるリフレクトアレイの設置方法であって、
6B 前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
6C1 前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであり、
6D1 前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲であるように、前記リフレクトアレイを支持体に固定する、リフレクトアレイの設置方法。
6C2 【数3】
[図:0001431140000011.jpg]
6D2 【数4】
[図:0001431140000012.jpg]
第4 証拠方法及び申立理由
申立人及び特許権者が提出した証拠方法を以下の1に示す。
申立人が主張する申立理由を以下の2に示す。
1 証拠方法
申立人は、申立書に添付して甲第1号証~甲第9号証を提出した(以下では、甲第1号証を「甲1」のように略し、甲第3-1号証を「甲3-1」のように略す。他の甲号証についても同様。)。また、参考資料として、甲5の翻訳文に対応する特表2023-547598号公報を提出した。
甲1 特表2020-509687号公報
甲2 「フェーズド・アレイアンテナのパターン-【Part1】リニア・アレイのビーム特性とアレイ・ファクタ」 (https://www.analog.com/media/jp/analog-dialogue/volume-54/number-2/phased-array-antenna-patterns-part-1-linear-array-beam-characteristics-and-array-factor_jp.pdf)
甲3-1 「散乱共用フェーズドアレーアンテナの基礎検討」(http://www.sawaya.ecei.tohoku.ac.jp/common/item/pdf/densou/2016.10_denso_tsukada.pdf)
甲3-2 「東北大学 陳・今野研究室 研究業績 国内会議:伝送工学研究会」(http://www.sawaya.ecei.tohoku.ac.jp/announcement/densou.php)
甲4 特開2022-25914号公報
甲5 国際公開第2022/081897号
甲6 「知識の森 4群2編9章 アンテナの測定」(https://www.ieice-hbkb.org/files/ad_base/view_pdf.html?p=/files/04/04gun_02hen_09.pdf)
甲7 特開2011-19021号公報
甲8 特開2022-189533号公報
甲9 国際公開第2014/020969号
2 申立理由
申立理由の概要は、以下のとおりである。
〈申立理由1〉(新規性)
本件発明は、甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)と同一であるから、本件発明に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
〈申立理由2〉(進歩性)
本件発明は、当業者が甲1に記載された発明及び甲2~9に示された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
〈申立理由3〉(サポート要件)
本件発明は、以下の3-1及び3-2の点で発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
3-1 本件発明1~5及び7は、8個ではない個数の反射制御領域を1辺に並べたリフレクトアレイを含み、8個ではない個数のときの「入射許容角度範囲Δθi」は「5.5°より大きく16°以下の範囲」ではないため、発明の詳細な説明に記載された課題を解決することができない。
3-2 本件発明6は、「入射許容角度範囲Δθi」が特定されていないため、発明の詳細な説明に記載された課題を解決することができない。
〈申立理由4〉(明確性)
本件発明は、以下の4-1及び4-2の点で明確ではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
4-1 本件発明1~5及び7における「入射許容角度範囲Δθi」が「1辺の長さが8Lとなるように並べたリフレクトアレイの性能」に限定されないと解される場合には、その算出方法が特定されないために明確ではない。
4-2 本件発明5は、「電磁反射システム」に係る発明であるが、「発信器」及び「受信器」を含むか否かは明確ではない。
第5 決定の予告で通知した取消理由の概要
決定の予告で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
〈取消理由〉(サポート要件)
本件発明は、以下の点で発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
本件発明1~7は、8個ではない個数の反射制御領域を1辺に並べたリフレクトアレイを含むから、発明の詳細な説明に記載された課題を解決することができない。
第6 決定の予告の取消理由についての当審の判断
前記第2のとおり、本件訂正により、本件発明1~7では、「前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであ」ることが限定された。
そのため、本件訂正により、当審において決定の予告で通知した請求項1~7に係る発明についての特許に対する取消理由には、理由がない。
第7 申立理由1及び2についての判断
本件発明の甲1発明に対する新規性及び進歩性の有無(申立理由1及び2)について判断する。
1 甲1の記載
(1)甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、強調のために、当審で付した(以下同様)。
「【0025】
図1A~1Cは、本発明の第1の実施形態である中継装置100を示す。中継装置100は、位相シフト要素121及び122が交互に置かれた周期配列を備え、配列は、x軸などの少なくとも1つの軸において周期的である。この実施形態では、中継装置100は、位相シフト要素が交互に置かれた2次元配列を備え、位相シフト要素は、配列の各行に沿ってx軸方向に交互に置かれている。これらの2つの位相シフト要素は、第1の要素によって放射される電界の反射位相が、第2の位相シフト要素によって放射される電界の位相とは位相を異にするように(例えば、この場合は、180度又はπラジアンの位相シフト)選択することができる。
【0026】
中継装置100の一実施形態はマイクロ波通信で利用されるように設計されているが、中継装置の周波数範囲は、大気中で電磁放射が発生することのできる、どのような周波数であってもよい。したがって、この中継装置の様々な実施形態は、無線波(その一部がマイクロ波である)を含む周波数で動作するように設計することができるが、可視光周波数及びいくつかの赤外線周波数もまた含む。
【0027】
この場合、各位相シフト要素は、ここでは第1の2次元構造121及び第2の2次元構造122である、2次元幾何学構造を含んでおり、そのそれぞれが、x次元及びy次元などの少なくとも2つの次元で、ほぼ同様の特徴を有する。位相シフト要素は、誘電体基材130の第1の表面131上に配置された金属から形成される。誘電体基材130は、可撓性フィルム又は剛性基材から形成することができる。更に、第1及び第2の2次元幾何学構造はそれぞれ、同じ又は少なくともほぼ同様の形状(この実施形態では、円環の中央に形成されたプラス記号)を有するが、サイズが異なる。図1Aに示すように、第1の2次元幾何学構造121は、第2の2次元幾何学構造122とは異なる(より小さい)サイズを有する。この一対の構造は、中継装置100のサイズに応じて、x軸に沿って、ある回数(N)だけ繰り返す。小さい方の位相シフト要素121は、基準位相、すなわち0°を提供し、大きい方の位相シフト要素122は、180°の位相シフトを提供する。」
「【0037】
基本的な動作では、中継装置100は、入射波によって照射される。この波は、位相シフト要素上に電流を誘導する。各位相シフト要素は、設計された位相シフトを伴う二次波を再放射する。位相シフト要素のそれぞれから発する二次波は干渉して、所定の方向に建設的干渉を創り出す波面位相操作の特性に基づき、その中継器に設計された方向を指す一次ビームを作成する。
【0038】
この設計により、マイクロ波ネットワーク内で中継装置100を利用することができ、通信のためのアクセス及びバックホール用途に向けてマイクロ波信号の非鏡面反射を提供することができる。例えば、中継装置100は、鏡面反射角とは異なる角度でマイクロ波放射を反射する装置を提供することができる(換言すれば、中継装置が非鏡面反射体である)。更に、中継装置100は、スモールセルバックホールの設置中又は構築中に、反射ビームの方向を所望の角度に調整する能力を有することが望ましい用途に利用することができる。加えて、中継装置100は、顧客によって与えられる再配向角度が得られるように、製造後に中継装置をカスタマイズする能力を有することが望ましい用途にも利用することができる。本明細書で説明するように、中継装置100は、どのような数の特定の用途のためにもマイクロ波通信を可能にするように設計することができる。」
「【0041】
再び図1Bを参照すると、一例では、2次元構造122は、dx=2.5mm及びdy=2.5mm、すなわち60GHzの動作周波数における半波長の寸法を有する正方形を含むことができる。約100μmの幅を有する金属製トレースが、誘電体基材130の最上層131上に印刷されている。金属製トレースは、約5マイクロメートル~約35マイクロメートルの厚さを有することができる。誘電体基材は、Rogers Corporationから市販されている、RO3003又はRO5350などの、誘電定数が約3である材料を含むことができる。底部(反対側)層140は、中実の金属製接地面を備える。位相シフトの変化は、円環122aの内径であるサイズパラメータrを変化させることによって達成される。この例では、円環122aと十字122bの間の距離は、約50μm~約125μmである。」
「【0044】
以下の説明において、記号λは、中継装置に入射する波の波長を表す。波長は、光の速度を中継装置の波入射の周波数で除算したものにより得られることが知られている。…(後略)…」
「【0052】
更なる説明として、これらの例について、また単純化のために、再配向されたビームが図2Bに示すように入射面にある事例に限定することができ、よって、一般化された2次元の事例に限定することができる。この例での入射面250は、中継器装置260(本明細書では、「受動中継器」、「反射器」、「周期的反射器」、「マイクロ波中継器」、「中継器配列」、及び「周期配列」という用語は、「中継器装置」と互換的に使用される)への入射波ベクトル252及び法線253から形成される平面である。反射ビーム254が入射面内にあるとき、入射及び再配向の方向は、(θo,фo)=(θo,180)及び(θi,фi)=(θi,0)として与えられる。この場合、配列の要素はx方向にわたって変化し、y方向に沿っては同一のままである。図1Aの中継装置は次数(2,1)の周期配列であり、第1の位相シフト要素から第2の隣接する位相シフト要素へのx方向に沿った位相漸増分、又は位相変化、又は位相ステップは、β0=2π/2=πラジアンであり、y方向に沿っては、位相シフトは2π又は0ラジアンである。(p,1)の配列では、1つの要素から次の要素へのx方向に沿った位相変化は、β0=2π/pであり、EQ.7から次のようになる。
【数8】
[図:0001431140000013.jpg]
ここで、dx=dy=dである。
【0053】
EQ.8でβ0を2π/pで置換すると、次のとおりになる。
【数9】
[図:0001431140000014.jpg]
」
「【0057】
再び図1Aを参照すると、中継装置100は、交互に置かれた2つの位相シフト要素の2元配列を備える。これらの2つの位相シフト要素は、第1の要素によって放射される電界の反射位相が、第2の位相シフト要素によって放射される電界の位相と位相を異にするように(πラジアンの位相シフト)選択される。この2元中継装置では、位相シフト要素間の所定の距離dについて、2元中継装置が合成する入力角度と出力角度の族が存在する。再びEQ8.1を参照すると、この2元配列について、入力角度θiと出力角度θoは、以下の式を満たす。
【数10】
[図:0001431140000015.jpg]
」
「【図1A】
[図:0001431140000016.jpg]
」
「【図1B】
[図:0001431140000017.jpg]
」
(2)ア 【0027】の「図1Aに示すように、第1の2次元幾何学構造121は、第2の2次元幾何学構造122とは異なる(より小さい)サイズを有する。…(中略)…小さい方の位相シフト要素121は、基準位相、すなわち0°を提供し、大きい方の位相シフト要素122は、180°の位相シフトを提供する。」との記載を参照すると、甲1では、図1Aの121及び122の符号で示される構成について、「位相シフト要素」及び「2次元幾何学構造」の両方の表現を用いて記載しており、甲1における「第1の2次元幾何学構造121」及び「第2の2次元幾何学構造122」は、それぞれ「位相シフト要素121」及び「位相シフト要素122」と同じものを示していると解されるので、以下では、「第1の2次元幾何学構造121」及び「第2の2次元幾何学構造122」を、それぞれ「位相シフト要素121」及び「位相シフト要素122」と表記する。
イ 【0041】において、図1Bを参照して「2次元構造122」と記載された領域は、「正方形を含む」と記載され、dx及びdyの長さを有することから、前記アで示した「位相シフト要素122」と同じ符号が振られているものの、両者は異なるものであって、図1Aで示される正方形型の領域と解される。したがって、以下では、図1Aで示される正方形型の領域と、図1Bの「122」で示される領域を「正方形型領域」と表記する。
ウ 【0025】に記載された「2次元配列」と【0057】に記載された「2元配列」は、文脈上、同義と解されるので、以下では「2次元配列」と表記する。
2 甲1発明の認定
前記1によれば、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を符号a~jを付して分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈甲1発明〉
a 鏡面反射角とは異なる角度でマイクロ波放射を反射する中継装置100であって、(【0025】、【0038】)
b 中継装置100は、位相シフト要素121及び位相シフト要素122が交互に置かれた周期配列を備え、配列は、x軸などの少なくとも1つの軸において周期的であり、(【0025】)
c 中継装置100は、位相シフト要素が交互に置かれた2次元配列を備え、位相シフト要素は、配列の各行に沿ってx軸方向に交互に置かれ、(【0025】)
d これらの2つの位相シフト要素は、第1の要素によって放射される電界の反射位相が、第2の位相シフト要素によって放射される電界の位相とは位相を異にするように選択することができ、(【0025】)
e 第1の位相シフト要素121は、第2の位相シフト要素122とは異なるサイズを有し、この一対の構造は、中継装置100のサイズに応じて、x軸に沿って、ある回数(N)だけ繰り返し、(【0027】)
f 位相シフト要素のそれぞれから発する二次波は干渉して、中継器に設計された方向を指す一次ビームを作成し、この設計により、マイクロ波信号の非鏡面反射を提供し、(【0037】、【0038】)
g 正方形型領域は、dx=2.5mm及びdy=2.5mmの寸法を有する正方形を含むことができ、dx=dy=dであり、(【0041】、【0052】)
h 記号λは、中継装置に入射する波の波長を表し、(【0044】)
i 交互に置かれた2つの位相シフト要素の2次元配列について、入力角度θiと出力角度θoは、EQ.9を満たす、(【0057】)
[図:0001431140000018.jpg]
j 中継装置100。
3 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 発明特定事項1A及び1Eについて
甲1発明は、「鏡面反射角とは異なる角度でマイクロ波放射を反射する」(構成a)ものであって、「位相シフト要素121及び位相シフト要素122が交互に置かれた周期配列を備え」る(構成b)から、本件発明1の「電磁波を反射させるリフレクトアレイ」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「電磁波を反射させるリフレクトアレイ」である点で一致する。
イ 発明特定事項1Bについて
甲1発明は、「位相シフト要素121及び122が交互に置かれた周期配列を備え」(構成b)、「これらの2つの位相シフト要素」は、「第1の要素によって放射される電界の反射位相が、第2の位相シフト要素によって放射される電界の位相とは位相を異にするように選択することができ」る(構成d)から、位相を制御するといえる。
また、「第1の位相シフト要素121」及び「第2の位相シフト要素122」は「一対の構造」(構成e)であるから、図1Aにおいて、この「一対の構造」を備える2つの「正方形型領域」(前記1(2)イ)は、一対の領域であるといえる。
そして、「位相シフト要素のそれぞれから発する二次波」は、「マイクロ波信号の非鏡面反射を提供」する(構成f)から、上記一対の領域は、全体として「位相を制御する反射制御領域」であるといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有する」点で一致する。
ウ 発明特定事項1C1及び1C2について
(ア)甲1発明の「正方形型領域」は、「dx=2.5mm及びdy=2.5mmの寸法を有する正方形を含むことができ、dx=dy=dであ」る(構成g)から、図1Aに示された「一対の領域」(前記イ)では、x軸方向の長さが、2dとして長辺となることは明らかである。
(イ)本件発明1の「反射制御領域」は、「長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満た」す。
[図:0001431140000019.jpg]
他方、甲1発明の「反射制御領域」(前記イ)は、長辺の長さを2d(前記(ア))、「入射する波の波長」を「λ」、「入力角度」を「θi」、「出力角度」を「θo」とした時に、下記のEQ.9を満たす(構成h、構成i)が、数式の表現上、当該EQ.9は本件発明1の式(1)と相違する。
[図:0001431140000020.jpg]
また、甲1発明は、リフレクトアレイの長辺の長さが8Lではない。
エ 発明特定事項1D1及び1D2について
甲1発明には、入射許容角度範囲Δθiについて記載も示唆もない。それに付随して、甲1発明では、「前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である」という関係を満たすことについて、記載も示唆もされていない。
[図:0001431140000021.jpg]
オ 一致点及び相違点について
前記ア~エによれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有する、リフレクトアレイ。
〈相違点〉
(相違点1)
本件発明1では、反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであるのに対して、
[図:0001431140000022.jpg]
甲1発明では、反射制御領域は、長辺の長さを2d、入射する波の波長をλ、入力角度をθi、出力角度をθoとした時に、下記のEQ.9を満たし、リフレクトアレイの長辺の長さが8Lではない点。
[図:0001431140000023.jpg]
(相違点2)
本件発明1は、「前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である」という関係を満たすのに対して、甲1発明は、この関係を満たしていない点。
[図:0001431140000024.jpg]
(2)本件発明1と甲1発明との相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 本件発明1の甲1発明に対する新規性の有無について
相違点2における「入射許容角度範囲Δθi」について、前記(1)エのとおり、甲1発明には記載も示唆もないから、相違点2は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
イ 本件発明1の甲1発明に対する進歩性の判断について
相違点2における「入射許容角度範囲Δθi」について、甲1発明には記載も示唆もないから、「入射許容角度範囲Δθi」が「5.5°より大きく16°以下の範囲である」ことについても、記載も示唆もない。
また、その他の証拠(甲2~甲9)にも「入射許容角度範囲Δθi」について記載も示唆もない。
さらに、リフレクトアレイにおいて「入射許容角度範囲Δθi」を設定することは、技術常識であるともいえない。
したがって、相違点2は、当業者といえども、甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項から容易に想到し得たものとは認められない。
(3)申立人の主張について
申立人は、相違点2の「入射許容角度範囲Δθi」に関して、申立書「3(4)ウ 申立ての理由の説明」の(イ)a(f)i(i)において(申立書51~57頁)、甲1発明における「入射許容角度範囲Δθi」は、当業者の技術常識に基づいて算出できる旨を主張する。
すなわち、申立書に示された第1~第4の観点(申立書52~54頁)により、フェーズドアレイアンテナにおける電波特性とリフレクトアレイにおける電波特性とが同一であることが技術常識であることを根拠に、入射許容角度範囲を算出するための算出式として甲2計算式を利用できることが当業者における技術常識(申立書55頁)として、甲2計算式から「入射許容角度範囲Δθi」を算出できることが明らかと主張する。
しかしながら、該主張は、甲1発明において「入射許容角度範囲Δθi」が設定されたことを前提として、その算出方法について主張しているのみであり、甲1発明において「入射許容角度範囲Δθi」が設定される根拠は何ら示されていないから、申立人の主張は前提において失当である。
また、仮に、甲1発明において「入射許容角度範囲Δθi」が設定されるとして検討しても、請求人が主張する甲2計算式は、フェーズドアレイアンテナのアンテナ利得における半値幅の算出式であって、「入射許容角度範囲Δθi」を示す計算式ではない。
したがって、申立人による「入射許容角度範囲Δθi」についての主張は採用できない。
(4)本件発明1についての小括
前記(1)~(3)のとおり、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、かつ、当業者が甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明2~5及び7について
本件発明2~5及び7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明2~5及び7と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点2について相違する。
そうすると、本件発明1と同様に、本件発明2~5及び7は、甲1発明とは同一ではなく、かつ、当業者が甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
5 本件発明6について
本件発明6の発明特定事項6D1及び6D2は、本件発明1の発明特定事項1D1及び1D2と同様の構成であるから、本件発明6と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点2と同様の点で相違する。
そうすると、本件発明1と同様に、本件発明6は、甲1発明とは同一ではなく、かつ、当業者が甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
6 申立理由1及び2についての小括
前記1~5によれば、本件発明は、いずれも、甲1発明と同一ではなく、かつ、当業者が甲1発明及び甲2~甲9に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1及び2には、理由がない。
第8 申立理由3についての判断
1 本件発明のサポート要件について、申立人は、以下の3-1及び3-2(再掲)を主張する。
3-1 本件発明1~5及び7は、8個ではない個数の反射制御領域を1辺に並べたリフレクトアレイを含み、8個ではない個数のときの「入射許容角度範囲Δθi」は「5.5°より大きく16°以下の範囲」ではないため、発明の詳細な説明に記載された課題を解決することができない。
3-2 本件発明6は、「入射許容角度範囲Δθi」が特定されていないため、発明の詳細な説明に記載された課題を解決することができない。
2 前記第2のとおり、本件訂正により、本件発明1~5及び7では、「前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであ」ることが限定され、本件発明6では、「入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である」ことが限定された。
したがって、申立理由3には、理由がない。
第9 申立理由4についての判断
1 本件発明の明確性について、申立人は、以下の4-1及び4-2(再掲)を主張する。
そこで、以下の(1)及び(2)において、申立人の4-1及び4-2の主張について検討する。
4-1 本件発明1~5及び7における「入射許容角度範囲Δθi」が「1辺の長さが8Lとなるように並べたリフレクトアレイの性能に限定されないと解される場合」には、その算出方法が特定されないために明確ではない。
4-2 本件発明5は、「電磁反射システム」に係る発明であるが、「発信器」及び「受信器」を含むか否かは明確ではない。
(1)4-1について
前記第2のとおり、本件訂正により、本件発明1~5及び7では、「前記リフレクトアレイの長辺の長さが8Lであ」ることが限定され、申立人が主張する「1辺の長さが8Lとなるように並べたリフレクトアレイの性能に限定されないと解される場合」には該当しないから、4-1の主張は採用できない。
(2)4-2について
本件発明5では、「発信器から一次放射された電磁波が前記リフレクトアレイに入射し、前記リフレクトアレイから二次放射された電磁波を受信器が受信する電磁波反射システム」と記載され、「電磁波反射システム」を特定する構成として、「発信器」及び「受信器」が記載されているから、「電磁波反射システム」が「発信器」及び「受信器」を含むことは明確である。
これは、本件特許の明細書の【0018】に「本開示において、「電磁波反射システム」とは、発信器、リフレクトアレイ、受信器の3つで構成されている。」と定義されていることとも整合する。
2 前記1によれば、申立理由4には、理由がない。
第10 むすび
前記第2のとおり、本件訂正を認める。
また、前記第5~第9によれば、決定の予告に記載した取消理由及び申立書に記載された申立理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700136