特許異議申立
2024-701149
電磁波反射板および電磁波反射装置
- 審判番号
- 2024-701149
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-146645
- 登録番号
- 7492072
- 請求日
- 2024年11月27日
- 審決日
- 2025年09月25日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人第一国際特許事務所
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 衣鳩 文彦
- 審判官 松原 徳久
- 分類
- P1651.113-YAA(H01Q) / P1651.121-YAA(H01Q) / P1651.536-YAA(H01Q) / P1651.537-YAA(H01Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7492072号発明「電磁波反射板および電磁波反射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7492072号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
特許第7492072号の請求項2~15に係る特許を維持する。
特許第7492072号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7492072号の請求項1~15に係る特許についての出願は、令和5年9月11日に出願され、令和6年5月20日にその特許権の設定登録がされ、令和6年5月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年11月27日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下「異議申立人」という。)により、請求項1~15に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和7年3月13日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和7年5月14日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行い、異議申立人は、その訂正の請求に対して、令和7年7月7日に意見書を提出した。
第2 本件訂正請求による訂正について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、特許権者が付与したとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする電磁波反射板。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3、7~15も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含むことを特徴とする電磁波反射板。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項7~15も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前記素子パターンの平面形状における前記丸角部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの平面形状における前記丸隅部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R2が基準長Pの3倍以下の長さの曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする、請求項4に記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含み、前記素子パターンの平面形状における前記丸角部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの平面形状における前記丸隅部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R2が基準長Pの3倍以下の長さの曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする電磁波反射板。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6~15も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「前記素子パターンが2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含む、請求項1~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「前記素子パターンが2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含む、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「前記素子パターンがクロスパッチおよび、その周りを囲む円環からなる、請求項1~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「前記素子パターンがクロスパッチおよび、その周りを囲む円環からなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「前記素子パターンがエルサレムクロス形状からなる、請求項1~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「前記素子パターンがエルサレムクロス形状からなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「前記素子パターンを覆うように配置された機能層を含む、請求項1~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「前記素子パターンを覆うように配置された機能層を含む、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11~13も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項14に「接着剤またはモルタルの接合材を層状に配置してなる、請求項1~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」と記載されているのを、「接着剤またはモルタルの接合材を層状に配置してなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項15に「支持体に、請求項1~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板を設けた電磁波反射装置。」と記載されているのを、「支持体に、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板を設けた電磁波反射装置。」に訂正する。
(11)一群の請求項について
訂正前の請求項1~15について、請求項2~15は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~15に対応する訂正後の請求項1~15は一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。
2 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項1~15についてされているので、本件訂正において、特許異議の申立てがされていない請求項に対する訂正事項はない。したがって、本件訂正には、独立特許要件は課されない。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であり、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2について、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(3)訂正事項3
訂正事項3のうち、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
また、訂正事項3のうち、訂正前の請求項1の素子パターンの断面形状における「丸角部の丸み」および「丸隅部の丸み」について、それぞれその下位概念である「曲率半径R3が素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む」および「曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む」ものへと限定する訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であり、また、訂正前の請求項2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1の記載を引用する請求項4を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(5)訂正事項5~10
訂正事項5~10は、それぞれ訂正前の請求項7~10、14及び15について、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項1を引用するままとすると不明瞭な記載となるのを避ける目的で請求項1を引用から外したものと解されるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、引用する請求項の数を減少させるものなので、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正請求による訂正は適法なものであり、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明15」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、
前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、
前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、
前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする電磁波反射板。
【請求項3】
前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率中心が基準交点uxから基準直線U上を前記誘電体層の表面方向に向かってd/6×√2以上の範囲内に位置する前記曲率円の円弧を含み、
前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率中心が基準交点vxから基準直線V上を素子パターンの表面方向に向かってd/6以上の範囲内に位置する前記曲率円の円弧を含む、
ことを特徴とする、請求項2に記載の電磁波反射板。
【請求項4】
誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、
前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、
前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、
前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、
前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含むことを特徴とする電磁波反射板。
【請求項5】
誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、
前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、
前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含み、
前記素子パターンの平面形状における前記丸角部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含み、
前記素子パターンの平面形状における前記丸隅部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R2が基準長Pの3倍以下の長さの曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする電磁波反射板。
【請求項6】
前記素子パターンの平面形状における前記丸角部の丸みは、平面視したとき、曲率中心が基準交点sxから基準直線S上を素子の内側方向に向かってP/2×√2以下の範囲内に位置する前記曲率円の円弧を含み、
前記素子パターンの平面形状における前記丸隅部の丸みは、平面視したとき、曲率中心が基準交点txから基準直線T上を素子の外側方向に向かって3P×√2以下の範囲内に位置する前記曲率円の円弧を含む、ことを特徴とする、請求項5に記載の電磁波反射板。
【請求項7】
前記素子パターンが2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含む、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。
【請求項8】
前記素子パターンがクロスパッチおよび、その周りを囲む円環からなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。
【請求項9】
前記素子パターンがエルサレムクロス形状からなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。
【請求項10】
前記素子パターンを覆うように配置された機能層を含む、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。
【請求項11】
前記機能層が多孔質構造を有する、請求項10に記載の電磁波反射板。
【請求項12】
前記機能層の表面ヘイズが70%以上である、請求項10に記載の電磁波反射板。
【請求項13】
前記機能層は、電波が伝搬する空気層とインピーダンス整合がとられるように形成されることを特徴とする、請求項10に記載の電磁波反射板。
【請求項14】
接着剤またはモルタルの接合材を層状に配置してなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。
【請求項15】
支持体に、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板を設けた電磁波反射装置。」
第4 特許異議申立ての理由及び証拠方法
1 申立人は、後記2の申立理由を主張し、その証拠方法として、後記3の甲第1号証~甲第12号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲12」という。)を提出し、また、令和7年7月7日に提出した意見書に添付して、後記4の参考資料1を提出した。
2 申立ての理由の概要
(1)申立理由1(甲2を主とする新規性)
本件訂正前の請求項1~4、10、14、15に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲1を主とする進歩性)
本件訂正前の請求項1~15に係る発明は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲2を主とする進歩性)
本件訂正前の請求項1~15に係る発明は、甲2に記載された発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(明確性要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由6(実施可能要件)
本件特許に係る出願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
甲1:特開2021-48465号公報
甲2:特開2022-119212号公報
甲3:国際公開第2022/107637号
甲4:特開2018-81518号公報
甲5:再公表特許第2019/107476号
甲6:特開2021-27468号公報
甲7:特表2020-509687号公報
甲8:特開2013-175800号公報
甲9:特表2023-512699号公報
甲10:「EVONIK」と題されたWebページ(URL https://performance-foams.evonik.com/en/products-and-solutions/rohacell)
甲11:特開2022-25624号公報
甲12:国際公開第2023/140243号
4 参考資料
参考資料1:特開2012-203602号公報
第5 甲号証の記載
以下、甲1~甲6について、摘記する。
1 甲1
(1)甲1には、次の記載がある。なお、下線は、強調のため当審で付与したものである(以下、同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、メタサーフェス技術を用いた平面薄型の反射板に関し、特に、ワイアレス通信システムなどにおける電磁波反射板用の、反射周波数選択性表面を有するメタサーフェス反射板および該メタサーフェスを備えた信号機に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、垂直方向に向いたストリップラインの共振器で構成されるメタサーフェスを有する。10個の共振器がグループ化され、回折格子の周期でスーパーセルとして配列されている。そして、その周期は、入射波が望む角度で反射されるような設計目標に基づいて定められている。
非特許文献1では、メタサーフェスは8GHzの動作周波数での0度の入射波を70度で反射できる。しかしながら、垂直方向のストリップ共振器を用いているため、電場がストリップ共振器の縦方向に平行な、入射波のうち1つの偏波のみしか対応できない。例えば非特許文献の図10や図12などを見ても、2偏波に対応するように変形することは難しいと考えられる。
また、特許文献1に記載の十字型の素子は、そもそもマッシュルーム型であって誘電体基板上に形成されたものでないため、設計上素子同士を密集させることが難しく、性能に限界がある。
本発明は、上記の問題を考慮して発明されたものである。本発明は、ミリ波周波数帯域の2偏波に対応できるメタサーフェスを提供する。さらに、2偏波に対するメタサーフェスの特性は、個別に最適化し修正することができる。
なお、本説明では、メタサーフェス反射板を単にメタサーフェスと呼ぶことがある。」
「【0011】
図1に示されるように、メタサーフェス100のユニットセル(U1、U2、U3、U4)は、金属グラウンド層120、誘電体基板110、および、十字型の共振器130を有する。ユニットセル(U1、U2、U3、U4)の領域は、周期Pの正方形である。
金属グラウンド層120は、メタサーフェス100を通過する波を消すために利用される。また、誘電体基板110の層を支持するのに利用される。」
「【0013】
(メタサーフェス100の説明)
図2は、本発明の一実施例における、十字型のセルを持つユニットセル(U1、U2、U3、U4)を含む、メタサーフェス100の構成の一部を示す。
図2に示されるように、メタサーフェス100ではアーム長の異なる十字型の共振器130のグループが繰り返し配列されている。以下、繰り返し配列される、アーム長の異なる十字型の共振器130のグループを、スーパーセルS1と呼ぶ。
言い換えると、メタサーフェス100は、誘電体基板110、誘電体基板110の底面に設けられ、全ての向きの偏波に対しメタサーフェス100を透過させない金属グラウンド層120、および、アーム長の異なる2種以上の十字型の金属共振器130を有する複数のスーパーセルS1を備える。スーパーセルS1は、3種以上の十字型の金属共振器130を有することが望ましい。」
「【0023】
図5は、隣接するユニットセル間での結合を調整することで最適化した後のメタサーフェスでのバイスタティックレーダー反射断面の結果であり、lVとlHを最適化した後の、メタサーフェス100での両偏波の、xz平面でのバイスタティックレーダー反射断面(RCS)の結果を示す。隣接するユニットセル(U1、U2、U3、U4)間の結合を調整し適切なものにすることにより、高い反射効率を実現することが、最適化の目的である。」
「【0031】
図8は本発明の一実施例におけるメタサーフェス100の利用例を示す。
無線通信を行う携帯電話の基地局200から出た、5G用の3.6GHz以上の無線通信用の電磁波は、メタサーフェス100に入射し反射する際に所定角度曲がり、携帯電話などの移動端末300の利用者301に向かう。
5Gで利用される3.6GHz以上の電磁波は直進性が強いが、本発明におけるメタサーフェス100を用いると、電磁波を所望の方向に向け、さらに所望の範囲で拡散させることが容易となる。
【0032】
図9、図10は本発明の一実施例における信号機400の構成を示す。
信号機400は道路の上に設置されており、外面にメタサーフェス100を備えている。本実施例では信号機400の下面にメタサーフェス100が設置されている。
外部の基地局200から発信される、自動車通信周波数の電磁波は、信号機400の下面に設置されたメタサーフェス100で反射される。本発明におけるメタサーフェス100は、所望の角度に電磁波を反射できるため、かつ、必要に応じて、所望の範囲に電磁波を拡散できるため、本実施例では、反射波の主ローブ方向は、信号機400の対象とする移動体410の移動方向である、信号機400の下の道路方向に設定されている。」
「【図1】
[図:0001431134000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001431134000002.jpg]
」
「【図5】
[図:0001431134000003.jpg]
」
「【図8】
[図:0001431134000004.jpg]
」
「【図9】
[図:0001431134000005.jpg]
」
(2)甲1発明
前記(1)より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明を1a~1dに分説し、「構成1a」のようにして、以下参照する。
「1a 十字型のセルを持つユニットセル(U1、U2、U3、U4)を含み、アーム長の異なる十字型の共振器130のグループが繰り返し配列され、(【0013】)
1b ユニットセル(U1、U2、U3、U4)は、金属グラウンド層120、誘電体基板110、および、十字型の共振器130を有し、(【0011】)
1c 隣接するユニットセル(U1、U2、U3、U4)間の結合を調整し適切なものにすることにより、高い反射効率を実現する(【0023】)
1d メタサーフェス100(【0013】)」
2 甲2
(1)甲2には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、アンテナ及び通信装置に関する。」
「【0006】
本開示の実施形態は、このような点を考慮してなされたものであり、外観を調整可能なアンテナを提供することを目的とする。」
「【0043】
図2Aは、通信装置120の一例を示す図である。通信装置120は、表面122を含む構造体121と、表面122に取り付けられているアンテナ10と、を備える。構造体121にアンテナ10を取り付けることにより、構造体121が通信の機能を有することができる。」
「【0047】
人が視認可能な場所にアンテナ10が設置される場合、アンテナ10の外観が調整可能であることが好ましい。例えば、アンテナ10が、周囲の環境に調和した外観を有することが好ましい。本実施の形態においては、第1カバー層60を用いてアンテナ10の外観を調整することを提案する。具体的には、図2Aに示すように、アンテナ10は、パッチ30とパッチ30を覆う第1カバー層60と、を備える。パッチ30は、電波を送信又は受信する。パッチ30は、パッチ素子とも称される。第1カバー層60は、模様を有する。例えば、第1カバー層60は、通信装置120の表面122と同様の模様を有する。これにより、構造体121の外観がアンテナ10によって損なわれることを抑制できる。
【0048】
図2Aに示すように、通信装置120は、複数のパッチ30を備えていてもよい。図2Aに示すように、1つの第1カバー層60が複数のパッチ30を覆っていてもよい。」
「【0054】
アンテナ10は、基材20、パッチ30及び第1カバー層60を備える。アンテナ10は、グランド40を備えていてもよい。図5に示すように、基材20は、第1面21、第2面22及び側面23を含む。第2面22は、第1面21の反対側に位置する。側面23は、第1面21から第2面22まで広がっている。パッチ30は、第1面21側に位置する。第1カバー層60は、第1面21側においてパッチ30を覆う。図示はしないが、第1カバー層60は、基材20の側面23を覆っていてもよい。第1カバー層60は、側面23の一部を覆っていてもよく、側面23の全部を覆っていてもよい。グランド40は、第2面22側に位置する。基材20及び第1カバー層60は、絶縁性を有する。パッチ30及びグランド40は、導電性を有する。基材20、パッチ30及びグランド40は、コンデンサ型のアンテナを構成している。第1カバー層60は、アンテナ10の特性に影響を及ぼす。アンテナ10の特性は、共振周波数、利得、放射効率、放射分布などである。」
「【0056】
図5に示すように、アンテナ10は、基材20とパッチ30との間に位置する第1接着層36を備えていてもよい。また、アンテナ10は、基材20とグランド40との間に位置する第2接着層46を備えていてもよい。」
「【0060】
基材20は、低い比誘電率を有する樹脂材料を含む。基材20の比誘電率は、4.0以下であってもよく、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよい。これにより、アンテナ10の放射効率及び利得を高めることができる。基材20の比誘電率は、1.0以上であってもよく、1.5以上であってもよい。」
「【0068】
図4において、符号L1は、第1方向D1におけるパッチ30の寸法を表す。符号W1は、第2方向D2におけるパッチ30の寸法を表す。寸法L1、W1は、例えば50mm以下であり、20mm以下であってもよく、10mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。寸法L1、W1は、例えば0.2mm以上であってもよい。
寸法L1又は寸法W1は、アンテナ10が送信又は受信する電波の周波数に基づいて定められてもよい。図4に示すアンテナ10においては、配線37が、第2方向D2に延びるパッチ30の外縁に接続されている。この場合、パッチ30は、第1方向D1に共振するアンテナとして機能できる。この場合、第1方向D1におけるパッチ30の寸法である寸法L1が、アンテナ10が送信又は受信する電波の周波数に基づいて定められていることが好ましい。・・・(後略)・・・」
「【0071】
図5に示すように、パッチ30は、基材20の第1面21側に位置する第1導電体層31を含む。第1導電体層31は、第3面32、第4面33及び第1側面34を含む。第3面32は、基材20の第1面21に対向する。第4面33は、第3面32の反対側に位置する。第1側面34は、第3面32と第4面33の間に位置する。第1側面34は、平面視におけるパッチ30の第1外縁30Yを構成する。」
「【0082】
本実施の形態によれば、第1側面34の形状を工夫することにより、第1側面34と第1カバー層60との間に隙間が生じることを抑制できる。これにより、アンテナ10の特性を安定化できる。例えば、環境温度の変化に応じてアンテナ10の共振周波数及び放射効率が変化することを抑制できる。」
「【0099】
(第1カバー層)
図5及び図6に示すように、第1カバー層60は、第1導電体層31の第4面33及び第1側面34を覆っている。第1カバー層60は、第4面33及び第1側面34に隙間なく接することが好ましい。第1カバー層60は、第4面33及び第1側面34の全域に接していてもよい。
【0100】
第1カバー層60は、何らかの色を呈するよう構成されている。すなわち、第1カバー層60は、無色透明の層ではない。第1カバー層60を設けることにより、第1導電体層31が視認されることを抑制できる。このため、第1導電体層31によって構造体121の外観が損なわれることを抑制できる。無色透明とは、色彩がなく、かつ、波長150nm~400nmの光線の透過率が95%以上であることを意味する。」
「【0136】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述の実施の形態と同様に構成され得る部分について、第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述の実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。」
「【0145】
(第3変形例)
図14は、第3変形例に係るアンテナ10の第1導電体層31を示す断面図である。図14に示すように、第1側面34は、第1接続部343において接続される第11側面34a及び第12側面34bを含んでいてもよい。第11側面34aは、第3面32と第1接続部343の間に位置する。第11側面34aは、第1端341から第1接続部343まで広がっていてもよい。第12側面34bは、第4面33と第1接続部343の間に位置する。第12側面34bは、第4面33から第1接続部343まで広がっていてもよい。」
「【0152】
(第7変形例)
図18は、第7変形例に係るアンテナ10の第1導電体層31を示す断面図である。図18に示すように、第11側面34aが内側湾曲面であり、第12側面34bが外側湾曲面であってもよい。図示はしないが、第11側面34aが外側湾曲面であり、第12側面34bが内側湾曲面であってもよい。」
「【0209】
(第20変形例)
上述の実施の形態においては、平面視においてパッチ30の第1外縁30Yが第1方向D1及び第1方向D1に直交する第2方向D2に延びる例を示した。すなわち、平面視におけるパッチ30の形状が長方形又は正方形である例を示した。しかしながら、平面視におけるパッチ30の形状は特には限定されない。図37は、平面視におけるパッチ30の形状の例を示す図である。
【0210】
図37において符号30Aで示すように、パッチ30は円形であってもよい。符号30Bで示すように、パッチ30は楕円形であってもよい。符号30Cで示すように、パッチ30はリングの形状であってもよい。符号30Dで示すように、パッチ30は、円周方向におけるリングの一部分の形状であってもよい。符号30Eで示すように、パッチ30は三角形であってもよい。図示はしないが、パッチ30は、五角形、六角形などのその他の多角形であってもよい。符号30Fで示すように、パッチ30は弧の形状であってもよい。
【0211】
(第21変形例)
平面視においてパッチ30の形状が多角形である場合、図38に示すように、パッチ30の角部が湾曲していてもよい。角部の曲率半径R1は、例えば1mm以上であり、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。」
「【0220】
上述した複数の変形例を適宜組み合わせて上述の実施の形態に適用してもよい。」
「【図2A】
[図:0001431134000006.jpg]
」
「【図4】
[図:0001431134000007.jpg]
」
「【図5】
[図:0001431134000008.jpg]
」
「【図6】
[図:0001431134000009.jpg]
」
「【図18】
[図:0001431134000010.jpg]
」
「【図37】
[図:0001431134000011.jpg]
」
「【図38】
[図:0001431134000012.jpg]
」
(2)甲2発明
ア 甲2は、「1つの第1カバー層60が複数のパッチ30を覆っていてもよい」(【0048】)ことが記載され、「アンテナ10は、基材20、パッチ30及び第1カバー層60を備える」(【0054】)と記載されていることから、「アンテナ10」は、「基材20、複数のパッチ30及び第1カバー層60を備える」ものである。
第7変形例における「第11側面34a」及び「第12側面34b」(【0152】)は、第3変形例における「第11側面34a」、「第12側面34b」(【0145】)で用いられているものであり、同じ意味であると解されるから、第7変形例における「第11側面34a」は、「第3面32と第1接続部343の間に位置する」(【0145】)ものであり、「第12側面34b」は、「第4面33と第1接続部343の間に位置する」(【0145】)ものであり、また、第7変形例においても、「第11側面34a及び第12側面34b」は、「第1側面34」に「含」まれる(【0145】)ものと解される。
イ そうすると、前記(1)、前記アより、甲2には、第7変形例に関して、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲2発明を2a~2jに分説し、「構成2a」のようにして、以下参照する。
「2a 基材20、複数のパッチ30及び第1カバー層60を備えるアンテナ10であって、(【0054】、前記ア)
2b 基材20とパッチ30との間に位置する第1接着層36と、基材20とグランド40との間に位置する第2接着層46を備え、(【0056】)
2c 基材20は、低い比誘電率を有する樹脂材料を含み、(【0060】)
2d パッチ30は、共振するアンテナとして機能し、(【0068】)
2e パッチ30は、基材20の第1面21側に位置する第1導電体層31を含み、第1導電体層31は、第3面32、第4面33及び第1側面34を含み、第3面32は、基材20の第1面21に対向し、第4面33は、第3面32の反対側に位置し、第1側面34は、第3面32と第4面33の間に位置するものであり、(【0071】)
2f 第1側面34と第1カバー層60との間に隙間が生じることを抑制でき、(【0082】)
2g 第1導電体層31を示す断面において、第11側面34aが内側湾曲面であり、第12側面34bが外側湾曲面であり、(【0152】)
2h 第11側面34aは、第3面32と第1接続部343の間に位置し、第12側面34bは、第4面33と第1接続部343の間に位置し、第11側面34a及び第12側面34bは、第1側面34に含まれるものであり、(前記ア)
2i 第1カバー層60を設けることにより、第1導電体層31が視認されることを抑制できる(【0100】)
2j アンテナ」
3 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
「[0001] 本発明の実施形態は、入射波を捕捉し、反射波を減衰することが可能な電磁波減衰フィルムに関する。」
「[0025] 誘電体基材10は、相対的に前面が低い第一領域121と、相対的に前面が高い第二領域122を有してもよい。第一領域121の平面視形状は、正方形、六角形、十字、その他の多角形、円形、楕円とできる。この正方形、六角形、十字、その他の多角形の角は丸い形状とできる。
第一領域121は、離散して配置されている。第一領域121は、所定のピッチで二次元マトリクス状に配置されている。第二領域122は、電磁波減衰フィルム1の平面視において第一領域121を取り囲んでいる。第一領域121上の薄膜導電層30に金属プレートを含む。つまり、第一領域121上に金属プレートを備える。言い換えると、金属プレートは、第一領域121上に位置する。金属プレートの平面視形状は、正方形、六角形、十字、その他の多角形、円形、楕円とできる。この正方形、六角形、十字、その他の多角形の角は丸い形状とできる。第二領域122は、第一領域121の上述した態様により、平面視において網目状や格子状に形成されている。
第一領域121および第二領域122の薄膜導電層30と接する面は、概ね背面と平行である。さらに、一部または全面に粗面を有してもよい。後述するが、第一領域121および第二領域122の薄膜導電層30と接する面を一部または全面を粗面とすることで、薄膜導電層30の電気抵抗を調整できる。」
「[0052] 金属プレートは、複数の金属セグメントに分割されていてもよい。言い換えると、金属プレートは、複数の金属セグメントからなっていてもよい。金属プレート内の複数の金属セグメントは、導通していてもよい。複数の金属セグメントは、配線で導通してもよい。配線は、インピーダンスを有してもよい。このインピーダンスは、金属セグメントと整合していてもよい。配線および金属プレート内の複数の金属セグメントは、一体として機能してもよい。複数の金属セグメントは、単独で存在している場合と異なる性質を有してもよい。具体的には、共振する周波数や、減衰性が単独で存在している場合と、金属プレート内を構成している場合で異なってもよい。また、金属プレートの断面形状は、平面形状、多面体形状または曲面形状とできる。多面体または曲面の場合、その底部と頂部との距離、すなわち高さは、50μm以下とできる。またその高さと金属プレートの対向する辺の間の距離との比は、1:100以上、1:10以下とできる。」
「[0115] 本発明において、金属プレートの形状は正方形に限られず、円形(楕円を含む)、正方形以外の多角形、角部が丸められた各種多角形、不定形など、さまざまに設定できる。
前面の投影面積に占める金属プレートの総面積は、20%以上であることが好ましい。
このようにすると、効率良く電磁波を減衰することができる。」
「[図1]
[図:0001431134000013.jpg]
」
「[図3]
[図:0001431134000014.jpg]
」
「[図20]
[図:0001431134000015.jpg]
」
4 甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、透明膜を形成した際に気泡の残留防止効果等に優れた透明電極に関するものである。」
「【0015】
本発明の透明電極は、透明基材と、上記透明基材の一方の面に配置された金属線が組み合わされてなる金属線電極と、を備え、上記金属線電極は、上記透明基材に接する面である下面、上記下面とは反対側に配置され上記下面と平行に形成され、上記下面より幅が狭い上面、及び、上記下面と上記上面とを結ぶ側面、を備え、上記上面と上記側面とが形成する出隅部分には湾曲部を有していることを特徴とするものである。」
「【0030】
また、金属線電極を構成する金属線の断面形状、すなわち、金属線においてその延在方向(長手方向)と直交する面で切断した断面(以下、主切断面とも言う)の形状は、透明基材に接する面である下面、上記下面とは反対側に配置され上記下面と平行に形成され、上記下面より幅が狭い上面、及び、上記下面と上記上面とを結ぶ側面、を備え、上記上面と上記側面とが形成する出隅部分には湾曲部を有している。
ここで、本態様においては、下面、上面、及び側面は、既に説明した図3に破線で示したように、次に説明する出隅部分の湾曲部14a及び入隅部分の湾曲部13aを考慮しない形態において、上面14の幅(Wu)は、下面13の幅(Wb)に比べて短く形成されるとともに、側面15が下面13と成す角θbは鋭角、すなわち90°より小さくなるように構成されている。
すなわち、上記金属線電極は、断面形状がテーパー角度θbの順テーパー形状であり、かつ、出隅部分が湾曲部である金属線により形成されるものである。
なお、出隅部分とは、上記上面および上記側面が交わる角部のみを含むものではなく、金属線の断面形状において、上記上面および上記側面により形成され、金属線から外側に向かって凸状に形成された角部の周辺部位も含むものである。」
「【0033】
上面と側面とにより形成される出隅部分では、側面角度が、下面側から上面まで、漸減する湾曲部が設けられている。
ここで、側面角度とは、主切断面で側面上の任意の点が、傾斜が一定で直線とみなせる直線部上である場合には、その直線の延長線と、下面とのなす角度をいい、主切断面で側面上の任意の点が、曲線上である場合には、その曲線上の点における接線の延長線と、下面とのなす角度をいうものである。
上記湾曲部としては、必ずしも主切断面形状が円弧で近似できる形状とされなくてもよく、例えば、既に説明した図3、図4(a)および(b)に例示するように、側面角度が下面側から上面まで連続的に減少する円弧状の曲線により形成された曲線部、図4(c)~(f)に例示するように、側面が下面側から上面まで、側面角度が段階的に減少する直線の組み合わせにより形成された多段テーパー形状を有する場合の、下面側から2段目以降の順テーパー部により形成されたテーパー部とすることができる。
また、上記湾曲部の厚み方向の形成箇所については、例えば、既に説明した図3、図4(a)、(e)に例示するように、厚み方向の中央より上面側から上面までの間であってもよく、図4(c)、(d)に例示するように、厚み方向の中央から上面までの間であってもよく、図4(b)、(f)に例示するように、厚み方向の中央より下面側から上面までの間であってよい。なお、図4(b)は、上記形成箇所が下面から上面までの間である例を示すものである。
すなわち、上記湾曲部の厚み方向の下面側端部は、図3、図4(a)、(c)、(d)、(e)、(f)のように、下面および上面の間であってもよく、図4(b)のように下面であってもよい。
【0034】
上記湾曲部が曲線部である場合、この出隅部分の湾曲部の曲率半径Ruは、透明導電膜を形成した際の断線防止効果、金属線に要求される導電性、金属線製造の製造容易性等を勘案して決めればよい。
上記曲率半径Ruの大きさは、0.1μm以上とすることができ、0.5μm以上であることが好ましく、特に、1.0μm以上であることが好ましい。上記曲率半径Ruが上述の範囲内であることで、金属線電極は、透明導電膜の断線防止効果等に優れたものとなるからである。
上記曲率半径Ruの上限は特に限定は無く、透明導電膜を形成した際の断線防止効果、金属線に要求される導電性、金属線製造の製造容易性等を勘案して決めればよいが、通常10μm程度以下とすることができる。」
「【0036】
また、透明基材と側面とにより形成される入隅部分には、必須では無いが、湾曲部が設けられることが好ましい。該湾曲部は必ずしも主切断面形状が円弧で近似できる形状とされ無くても良く、製造加工条件如何で様様な主切断面形状とすることができる。該主切断面形状が円弧で近似できる場合は、この入隅部分の曲率半径Rbの大きさは例えば、0.1μm以上、好ましくは1μm以上とすることができる。該曲率半径Rbの上限は特に限定は無く、透明膜としての透明絶縁層中の気泡の残留防止効果、金属線の要求される導電性、金属線製造の製造容易性等を勘案して決めればよいが、通常50μm程度以下とされる。
【0037】
上記金属線の厚さとしては、10μm以下とすることができる。上記厚さであることにより、エッチングで金属線電極を作製する場合であっても気泡の残留を防止することが可能である。
なお、金属線の厚さHの下限値は、透明電極の用途及び金属線に使用する金属の種類に応じて、所望の導電性を発現するに足る厚みを設定すればよい。
また、上記厚さHの上限値は、所望の線幅及びエッチング加工時の線幅のバラツキ、所望の金属線の不可視性等をして設定すればよい。
上記厚さは、好ましくは0.1μm~10μmの範囲内、より好ましくは0.1μm~5μmの範囲内とすることができる。
なお、上記厚さは、具体的には、既に説明した図3中の下面13と上面14との距離Hである。」
「【図3】
[図:0001431134000016.jpg]
」
「【図4】
[図:0001431134000017.jpg]
」
5 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本開示の実施形態は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。」
「【0106】
[配線基板の構成]
図7は、本変形例に係る配線基板の一例を示す上面図である。図7は、図1の領域Cにおける拡大上面図である。図8は、本変形例に係る配線基板の一例を示す断面図である。図8(A)は、図7の鎖線D-D’における拡大断面図である。図8(B)は、図7の鎖線E-E’における拡大断面図である。
【0107】
図7に示すように、配線基板10eは、基板100eと、第1の配線200eと、第2の配線300eとを備える。本変形例において、第1の配線200eと、第2の配線300eとは直交する。しかしながらこれに限定されず、第1の配線200eおよび第2の配線300eの平面形状は、交差又は連結すればよい。図7および図8に示すように、基板100eの上面と、第1の配線200eの裏面(第1面)201eと隣接する側面と、第2の配線300eの裏面(第3面)303eと隣接する側面とは平面視で4つの角部を形成する。本変形例においては、基板100eの上面と、第1の配線200eの他方の側面(第10面)210eと、第2の配線300eの他方の側面(第6面)306eとが形成する角部において、それらの面を連続する湾曲面eを含む。すなわち湾曲面eは、第1の配線200eの他方の側面210eと、第2の配線300eの他方の側面306eとを連続的に接続している。この湾曲面eは、第1の配線200eの方向に垂直な断面、第2の配線300eの方向に垂直な断面のいずれにおいても、内側に湾曲した形状をもつ。しかしながらこれに限定されず、湾曲面eは、基板100eの上面と、第1の配線200eの裏面201eと隣接する側面と、第2の配線300eの裏面303eと隣接する側面とが形成する平面視で4つの角部のうちの1つ以上に配置されればよい。すなわち、湾曲面eを含む角部の第1の配線200eの方向と垂直に交わる断面において、第1の配線200eはその長手方向(D2方向)を中心として非対称である。湾曲面eを含む角部の第2の配線300eの方向と垂直に交わる断面において、第2の配線300eはその長手方向(D3方向)非対称である。第2の配線300eの方向に垂直な断面において、湾曲面eの曲率半径は、第2の配線300eの高さの20%以上であることが好ましい。
【0108】
基板100eの上面と、第1の配線200eの裏面201eと隣接する側面と、第2の配線300eの裏面303eと隣接する側面とが形成する角部において湾曲面eを有することで、裏面201eおよび裏面303eの線幅が大きくなり、基板100eと第1の配線200e、および基板100eと第2の配線300eとの密着性を向上することができる。さらに第1の配線200eおよび第2の配線300eの、それぞれの配線が延長する方向と垂直に交わる断面積が増加することによって、D1方向に平面視したときの第1の配線200eの表面(第2面)202eおよび第2の配線300eの表面(第4面)304eの視認性を抑制しつつ、配線抵抗を抑制することができる。このため配線基板10eの透明性、信頼性、導電性を向上することができる。」
「【図7】
[図:0001431134000018.jpg]
」
「【図8】
[図:0001431134000019.jpg]
」
6 甲6
甲6には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、ポストを有するメタサーフェスアンテナ、特に、低姿勢アンテナに関する。」
「【0007】
図1は、本発明の一実施例における、ポスト付きメタサーフェスアンテナ1を示す。ポスト付きメタサーフェスアンテナ1は、反射板2、および、反射板2上に設けられた素子部100を有する。
反射板2は略平面状であり、メタサーフェス3を備える。
素子部100は、素子110、中心部101、および、素子側ポスト171を有する。
なお、本明細書では、素子側ポスト等をポストと略すことがある。」
「【0023】
図22は、本発明の一実施例における、ポスト付きメタサーフェスアンテナ1のメタサーフェス3を示す。
メタサーフェス3は、略正方形であり、略正方形を構成する各辺に対して切り込み4を有する。
本構成により、メタサーフェス3の効果により、通常のアンテナと比較して、低姿勢化できる。
【0024】
本実施例において、メタサーフェス3は、角部において面取り部6を有する。
面取り部6はなくてもよい。この場合、メタサーフェス3の製造が容易となる。
面取り部6を有する場合、面取りされた分だけスペースができ、配線を設けるなど、スペースを有効に活用できる。」
「【図22】
[図:0001431134000020.jpg]
」
第6 取消理由通知で通知した取消理由について
1 当審において令和7年3月13日付け取消理由通知で通知した取消理由は、本件訂正前の請求項1、4及び7~15に係る発明に対して、前記第4の2(2)の理由を通知したものであり、その概要は、以下のとおりである。
(進歩性)本件訂正前の請求項1、4、7、12~15に係る発明は、甲1発明及び甲2発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項8に係る発明は、甲1発明、甲2発明及び甲7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項9に係る発明は、甲1発明、甲2発明及び甲8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項10に係る発明は、甲1発明及び甲2発明、又は甲1発明、甲2発明及び甲9に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項11に係る発明は、甲1発明、甲2発明及び甲9に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 取消理由についての当審の判断
請求項1は、本件訂正により削除されたことにより、請求項1に対する取消理由は存在しないものとなった。
また、請求項4は、本件訂正により、取消理由を通知していない訂正前の請求項2の発明特定事項を全て含むものとされたことにより、請求項4に対する取消理由は解消した。
また、請求項7~15は、本件訂正により、取消理由を通知していない訂正前の請求項2、3、5及び6、並びに上記のとおり取消理由が解消した請求項4のいずれかを引用するものであるから、請求項7~15に対する取消理由は解消した。
したがって、取消理由通知で通知した取消理由は解消した。
第7 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
以下、次のように独立項に係る発明である本件発明2、4、5について、請求項の番号と英字からなる符号を付して、それぞれ「発明特定事項2A」などのようにして参照する。なお、英字について、類似する発明特定事項に同じ英字を用いる。
「【請求項2】
2A 誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、
2B 前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、
2C 前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、
2D 前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む、
2E ことを特徴とする電磁波反射板。」
「【請求項4】
4A 誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、
4B 前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、
4C 前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、
4D 前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、
4F 前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含む
4E ことを特徴とする電磁波反射板。」
「【請求項5】
5A 誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含み、
5B 前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含み、
5F 前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含み、
5G 前記素子パターンの平面形状における前記丸角部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含み、
5H 前記素子パターンの平面形状における前記丸隅部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R2が基準長Pの3倍以下の長さの曲率円の円弧を含む、
5E ことを特徴とする電磁波反射板。」
1 申立理由1(甲2を主とする新規性)、及び申立理由3(甲2を主とする進歩性)
(1)本件発明2
ア 本件発明2と甲2発明とを対比する。
(ア)発明特定事項2Aについて
甲2発明の「基材20」は、「低い比誘電率を有する樹脂材料を含」(構成2c)むから、「誘電体層」ということができ、「パッチ30」は、「素子パターン」ということができる。
そして、甲2発明において、「基材20」と「複数のパッチ30」とからなる部分を領域と称することは任意である。
そうすると、本件発明2と甲2発明とは、「誘電体層と複数の素子パターンよりなる領域を含」む点で一致する。
他方、「領域」について、甲2発明では「反射制御領域」であることは特定されていない。
(イ)発明特定事項2Bについて
a 本件特許の明細書の記載によると、「角部」は「断面形状である方形において、誘電体層の表面と接しない側の頂部を指し」、「隅部」は「誘電体層の表面と接する側の頂部を指す」(【0054】)ものであり、「丸角部」、「丸隅部」は、「角部」と「隅部」「に相当する部分に丸みを与えた」(【0055】)ものである。
b 甲2発明において、「パッチ30」は、「第1導電体層31」を「含」(構成2e)む。
また、「第1導電体層31」の「第11側面34a」は、「第1導電体層31」の「第3面32と第1接続部343の間に位置」する(構成2h)ものであり、「第3面32は、基材20の第1面21に対向」(構成2e)するから、「第11側面34a」は、「第1導電体層31」の「基材20」の表面と接する側に位置しているといえる。
そして、「第1導電体層31」の「断面」において、「第11側面34a」は、「内側湾曲面」(構成2g)であるところ、「湾曲面」は、弓なりに曲がった面であるから、「第11側面34a」は、丸みを与えた形状を有しているといえる。
そうすると、前記aを踏まえると、甲2発明の「第11側面34a」は、本件発明2の「丸隅部」に相当する。
c 甲2発明において、「第1導電体層31」の「第12側面34b」は、「第1導電体層31」の「第4面33と第1接続部343の間に位置」する(構成2h)ものであり、「第1導電体層31」の「第4面33は、第3面32の反対側に位置」(構成2e)しているから、「第12側面34b」は、「第1導電体層31」における「基材20」の反対側、すなわち、基材20の表面と接しない側に位置しているといえる。
そして、「第1導電体層31」の「断面」において、「第12側面34b」は、「外側湾曲面」(構成2g)であるところ、「湾曲面」は、弓なりに曲がった面であるから、「第12側面34b」は、丸みを与えた形状を有しているといえる。
そうすると、前記aを踏まえると、甲2発明の「第12側面34b」は、本件発明2の「丸角部」に相当する。
d 前記(ア)及び前記a~cより、本件発明2と甲2発明とは、「前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含」む点で一致する。
(ウ)発明特定事項2C、2Dについて
甲2発明には、「第11側面34a」及び「第12側面34b」について、当該事項は特定されていない。
(エ)発明特定事項2Eについて
本件発明の「電磁波反射板」と、甲2発明の「アンテナ」とは、いずれも「構造体」である点で共通する。
(オ)一致点、相違点
前記(ア)~(エ)をまとめると、本件発明2と甲2発明とは、
「誘電体層と複数の素子パターンよりなる領域を含み、
前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含む
構造体」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
相違点1 「領域」について、本件発明2は「反射制御領域」であるのに対して、甲2発明は当該事項を特定していない点
相違点2 本件発明2は「前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む、」ことを特定しているのに対して、甲2発明は当該事項を特定していない点
相違点3 「構造体」について、本件発明2は「電磁波反射板」であるのに対して、甲2発明は「アンテナ」である点
イ 判断
本件発明2と甲2発明とは、前記相違点1~3の点で相違するものであり、同一ではない。
また、相違点1について検討すると、甲2発明は「アンテナ」であり、「パッチ30は、電波を送信又は受信する」(【0047】)ものであって、電波を反射するものではないから、甲2発明の「基材20」と「複数のパッチ30」よりなる部分は、「反射制御領域」とはいえない。
そして、アンテナを構成する「基材20」と「電波を送信又は受信する」「パッチ30」よりなる部分が「反射制御領域」を形成していることは、提出された全ての証拠にも記載されておらず、当業者に自明なこととも認められない。
仮に、「基材20」と「パッチ30」よりなる部分が「反射制御領域」として形成されることが周知であるとしても、甲2発明は、「パッチ30」により「電波を送信又は受信する」アンテナであるから、甲2発明において、当該部分を、「反射制御領域」とすることの動機付けがあるともいえない。
よって、相違点1は、当業者が容易になし得たものではない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 異議申立人の主張について
(ア)異議申立人は、相違点1に関連して、「甲2は、基板20及び複数のパッチ30を含む構造体がアンテナに用いられているが、当該パッチ30は共振体であり(段落68)、他方で、電磁波反射板の導電対も共振体であり(例えば、甲1の十字型共振器130)、当該構造体は、アンテナ及び電磁波反射体に互換的に用いられるものである。
すなわち、甲2の上記構造体は反射体に相当し、甲2の共振制御領域は構成要件Aにおける「反射制御領域」に相当する。」(特許異議申立書38頁)と主張する。
しかしながら、甲2はアンテナであって、「パッチ30」により「電波を送信又は受信する」ものであるから、電波を反射するものではなく、構造体として同じ構造としていても反射を制御するものではない。
よって、甲2の基板20及び複数のパッチ30よりなる部分は、反射制御領域に相当するとはいえない。
(イ)また、異議申立人は、「基板及び導電体を備える構造体は共振体として電磁波反射体にもアンテナにも用いられており、電磁波反射体に用いるかアンテナに用いるかは当業者が目的に応じて選択し得る設計的事項である。」(異議申立書39頁)と主張する。
しかしながら、構造体として同じ構造としていても、アンテナに用いるものにおいて当該構造体を反射制御領域とすることは、アンテナとして用いることと相反するものであるから、容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)よって、異議申立人の当該主張は採用できない。
(2)本件発明3
本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも、前記(1)ア(オ)の相違点1~3の点で、甲2発明とは相違する。
そうすると、本件発明3と甲2発明とは、同一ではなく、また、前記(1)イのとおり、相違点1については、当業者が容易になし得たものとはいえないから、本件発明3は、甲2発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。
(3)本件発明4
本件発明4は、本件発明2の発明特定事項2Aと同様の発明特定事項4Aを有するものであるから、少なくとも、前記(1)ア(オ)の相違点1と同様の点で、甲2発明とは相違するものであり、当該相違点は、前記(1)イと同様に、当業者が容易になし得たものではない。
そうすると、本件発明4と甲2発明とは、同一ではなく、また、本件発明4は、甲2発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明5
本件発明5は、本件発明2の発明特定事項2Aと同様の発明特定事項5Aを有するものであるから、少なくとも、前記(1)ア(オ)の相違点1と同様の点で、甲2発明とは相違するものであり、当該相違点は、前記(1)イと同様に、当業者が容易になし得たものではない。
そうすると、本件発明5は、甲2発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明6
本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも、前記(4)と同様に、前記(1)ア(オ)の相違点1と同様の点で、甲2発明とは相違するものであり、当該相違点は、当業者が容易になし得たものではない。
そうすると、本件発明6は、甲2発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(6)本件発明7~15
前記(1)~(5)のとおり、本件発明2~6は、少なくとも、前記(1)ア(オ)の相違点1の点で相違するものであり、当該相違点は、当業者が容易になし得たものでないから、本件発明2~6のいずれかの発明の発明特定事項を全て含む本件発明7~15は、甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明、及び甲1、甲3~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)申立理由1及び3のまとめ
以上のとおり、申立理由1及び3は理由がない。
2 申立理由2(甲1を主とする進歩性)
(1)本件発明2
ア 本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項2Aについて
a 甲1発明の「誘電体基板110」(構成1b)、「十字型の共振器130」(構成1b)は、それぞれ本件発明2の「誘電体層」、「素子パターン」に相当する。
b 甲1発明は、「隣接するユニットセル(U1、U2、U3、U4)間の結合を調整し適切なものにすることにより、高い反射効率を実現する」(構成1c)ものであり、ユニットセル(U1、U2、U3、U4)は、「金属グラウンド層120、誘電体基板110、および、十字型の共振器130」を有する(構成1b)から、「隣接するユニットセル」のそれぞれの「金属グラウンド層120、誘電体基板110、および、十字型の共振器130」間の結合の調整により反射が制御されているといえる。
そうすると、複数のユニットセルが有する、複数の「十字型の共振器130」、及び複数の「十字型の共振器130」が配置される誘電体基板110の部分は、反射を制御する領域といえる。
c 前記a、bより、本件発明2と甲1発明とは、「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含」む点で一致する。
(イ)発明特定事項2Bについて
甲1発明は、当該事項を特定していない。
(ウ)発明特定事項2C、2Dについて
甲1発明は、当該事項を特定していない。
(エ)発明特定事項2Eについて
甲1発明の「メタサーフェス100」(構成1d)は、「電磁波反射板用の」「メタサーフェス反射板」(【0001】、【0005】)であるから、本件発明2の「電磁波反射板」に相当する。
(オ)一致点、相違点
前記(ア)~(エ)をまとめると、本件発明2と甲1発明とは、
「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含む
電磁波反射板」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
相違点4 「素子パターン」について、本件発明2は、「前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含」むのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
相違点5 相違点4に関連して、本件発明2は、「前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの断面形状における前記丸隅部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む」ことを特定しているのに対して、甲1発明は当該事項を特定していない点
イ 判断
相違点5は、相違点4に係る構成を前提とするものであるから、事案に鑑み、相違点4及び5について検討する。
(ア)前記1(1)ア(イ)のとおり、甲2発明の「第11側面34a」、「第12側面34b」は、それぞれ、本件発明2の「丸隅部」、「丸角部」に相当する。
(イ)甲1発明の「十字型の共振器130」は、誘電体基板110の上に形成される共振器である。
また、甲2発明の「基材20」は、「低い比誘電率を有する樹脂材料を含」むから、誘電体であり、「第1導電体層31」を含む「パッチ30」は、誘電体の上に形成され、共振するものである。
そうすると、甲1発明の「十字型の共振器130」と、甲2発明の「パッチ30」は、いずれも誘電体の上に形成される、「共振」する素子である点で共通するものである。
(ウ)前記(ア)、(イ)を踏まえると、甲1発明の「十字型の共振器」に、甲2発明の「パッチ30」の断面形状の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であり、甲1発明の「十字型の共振器」の断面形状を「丸角部および丸隅部を含」むものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。(相違点4)
(エ)しかしながら、甲2発明は、「内側湾曲面」である「第11側面34a」と、「外側湾曲面」である「第12側面34b」とを有することに止まり、相違点5に係る構成は記載されていない。
また、「丸角部」及び「丸隅部」について、「丸角部の丸み」に関して、「曲率半径R3」を「素子パターンの厚さd」との関係で特定し、「曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含」むようにすること、及び、「丸隅部の丸み」に関して、「曲率半径R4」を「素子パターンの厚さd」との関係で特定し、「曲率半径R4が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含む」ようにすることは、提出された全ての証拠においても記載されていない。
すなわち、甲2の図18からは、内側湾曲面である第11側面34a、外側湾曲面である第12側面34bについて、曲率円の円弧を含んでおり、その曲率円の曲率半径R3及びR4が素子パターンの厚さdの1/6以上の長さであることより特定されるものであるか、明らかであるとはいえない。
また、甲4(【0034】、【0036】、【0037】、図3)は、「出隅部分」(本件発明2の「丸角部」)及び「入隅部分」(本件発明2の「丸隅部」)を金属線電極に構成することが記載されているところ、曲率半径R3及びR4を「素子パターンの厚さd」との関係で特定することは記載されていない。
さらに、甲5(【0001】、【0107】、図7、図8)は、配線基板であり、第1の配線200eと、第2の配線300eとにより形成される角部に含まれる湾曲面e(本件発明2の「丸隅部」)の曲率半径について、第2の配線300eの高さ(本件発明2の「厚さd」)の20%以上であることが好ましいことが記載されているが、丸角部に対応する部分を形成するものではない。
(オ)以上より、相違点5に係る本件発明2の構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、本件発明2は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3
本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも、前記(1)ア(オ)の相違点4、5の点で、甲1発明とは相違する。
そして、前記(1)イのとおり、相違点5については、当業者が容易になし得たものとはいえないから、本件発明3は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。
(3)本件発明4
本件発明4は、本件発明2の発明特定事項2B、2C、2Dと同様の発明特定事項4B、4C、4Dを有するものであるから、少なくとも、前記(1)ア(オ)の相違点4、5と同様の点で、甲1発明とは相違するものであり、相違点5は、前記(1)イと同様に、当業者が容易になし得たものではない。
そうすると、本件発明4は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明5
ア 本件発明5と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項5Aについて
前記(1)ア(ア)のとおりであり、本件発明5と甲1発明とは、「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含」む点で一致する。
(イ)発明特定事項5Bについて
甲1発明は、当該事項を特定していない。
(ウ)発明特定事項5Fについて
甲1発明は、当該事項を特定していない。
(エ)発明特定事項5G、5Hについて
甲1発明は、当該事項を特定していない。
(オ)発明特定事項5Eについて
前記(1)ア(エ)のとおりであり、甲1発明の「メタサーフェス100」(構成1d)は、本件発明5の「電磁波反射板」に相当する。
(カ)一致点、相違点
前記(ア)~(オ)をまとめると、本件発明5と甲1発明とは、
「誘電体層と複数の素子パターンよりなる反射制御領域を含む
電磁波反射板」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
相違点6 「素子パターン」について、本件発明5は、「前記素子パターンの断面形状は丸角部および丸隅部を含」むのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
相違点7 「素子パターン」について、本件発明5は、「前記素子パターンの平面形状は丸角部または丸隅部を含」むのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
相違点8 相違点7に関連して、本件発明5は、「前記素子パターンの平面形状における前記丸角部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含み、前記素子パターンの平面形状における前記丸隅部の丸みは、平面視したとき、曲率半径R2が基準長Pの3倍以下の長さの曲率円の円弧を含む」ことを特定しているのに対して、甲1発明は当該事項を特定していない点
イ 判断
相違点8は、相違点7に係る構成を前提とするものであるから、事案に鑑み、相違点7及び8について検討する。
(ア)甲2には、「平面視においてパッチ30の形状が多角形である場合、図38に示すように、パッチ30の角部が湾曲していてもよい。角部の曲率半径R1は、例えば1mm以上であり、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。」(【0211】)ことが記載されており、「パッチ30の角部が湾曲してい」る部分は、本件発明5の「前記素子パターンの平面形状は丸角部」を「含」むことに相当する。
(イ)そして、甲1発明の「十字型の共振器」に、甲2に記載される「パッチ30」の平面形状の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であり、甲1発明の「十字型の共振器」の平面形状を「丸角部」を「含」むものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。(相違点7)
(ウ)しかしながら、甲2は、平面視において、「角部が湾曲していてもよい」ことが記載されるに止まり、相違点8に係る構成は記載されていない。
また、「平面形状における」「丸角部」または「丸隅部」について、「丸角部の丸み」に関して、「曲率半径R1」を「基準長P」との関係で特定し、「曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含」むようにすること、「丸隅部の丸み」に関して、「曲率半径R2」を「基準長P」との関係で特定し、「曲率半径R2が基準長Pの3倍以下の長さの曲率円の円弧を含む」ようにすることは、提出された全ての証拠においても記載されていない。
すなわち、甲2の【0211】、図38からは、「角部が湾曲してい」る部分、すなわち「丸角部」について、曲率半径R1が基準長Pの1/2以下の長さの曲率円の円弧を含むものか、明らかであるとはいえない。
また、甲3([0025])、甲5(【0107】、【0108】、図7)、甲6(【0024】、図22)をみても、相違点8に係る構成が記載されているとは認められない。
(エ)以上より、相違点8に係る本件発明5の構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、本件発明5は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明6
本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも、前記(4)ア(カ)の相違点6~8の点で、甲1発明とは相違する。
そして、前記(4)イのとおり、相違点8については、当業者が容易になし得たものとはいえないから、本件発明6は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(6)本件発明7~15
前記(1)~(5)のとおり、本件発明2~6は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものでないから、本件発明2~6のいずれかの発明の発明特定事項を全て含む本件発明7~15は、甲1発明、及び甲2~甲12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)申立理由2のまとめ
以上のとおり、申立理由2は理由がない。
3 申立理由4(サポート要件)
(1)申立理由4(サポート要件)の具体的な主張(特許異議申立書46~47頁)
ア 本件発明は、「断面形状は丸角部および丸隅部を含む」と特定しているが、素子パターンの丸角部、丸隅部が凸部を形成する場合、素子パターンの割れ、欠け等の破損、寸法誤差を助長するものと考えられ、発明の課題を解決しえない態様を包含している。
イ 本件発明4~15は、「平面形状は丸角部または丸隅部を含む」と特定しているが、素子パターンの丸角部、丸隅部が凸部を形成する場合、素子パターンの割れ、欠け等の破損、寸法誤差を助長するものと考えられ、発明の課題を解決しえない態様を包含している。
(2)当審の判断
ア 本件特許の明細書には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波反射板および電磁波反射装置に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁波反射板は、その原理上、比較的大きい面積の建装材として建造物の内面や外面に取り付けることで、不感地帯を効率よく解消することが期待できる。しかしながら、特許文献1に記載されているような十字型(以下、「クロスパッチ」とも称する。)形状を含む素子パターンを備えるリフレクトアレイを、安定した特性と高い良品率で作製するにあたっては課題もある。
すなわち電磁波反射板は、上述したように形状の異なる複数の素子パターンで構成されるため、素子パターンをエッチング法などによって除去加工を行う場合、製造条件のバラつきなどによって電磁波反射板を構成する素子パターンの端部にRがついたり(丸みを帯びた状態になったり)、オーバーエッチングの発生などが起こり、想定より局所的に素子パターンがやせたり、残ってしまうことで素子パターンの形状や寸法に誤差が生じることがある。また、素子パターンの端部が欠けたり破損することで素子形状に異常が起きたりする。このように電磁波反射板の素子形成プロセスにおいて、素子パターンの形状や寸法に誤差が生じることは避けられず、特許文献1の電磁波反射板では、設計パラメータ(この場合素子パターン形状に相当)に寸法誤差が生じた場合、十字型素子パターンを有する各反射単位における反射位相が設計値から大きく変化し、結果として所望方向の反射強度が低下する。
上記事情を踏まえ、本発明は、素子パターンの割れや欠け、脱落、剥がれなどの破損もしくは寸法誤差に対する耐久性の高い電磁波反射板を提供することを目的とする。」
「【0048】
<平面視>
図4は、素子パターンを平面視した場合の形状の一例を示す図である。素子パターン14は、例えば図4(a)に示すようにxy平面においてx軸方向の幅である素子幅wxとy軸方向の長さである素子長lyを有する方形パッチと、y軸方向の幅である素子幅wyとx軸方向の長さである素子長lxを有する方形パッチの2つの方形パッチが交差したクロスパッチである。またクロスパッチは角部Aと隅部Bを有する。ここで、角部とは素子パターンを形成する各方形パッチの頂部を指し、隅部とは各方形パッチの各辺が交差する交差部を指す。
【0049】
図4(b)は本実施形態に係るクロスパッチの素子パターン形状を示すもので、図4(a)の角部Aと隅部Bに相当する部分に丸みを与えた角部(以下、「丸角部」と称する。)Arと隅部(以下、「丸隅部」と称する。)Brを有する。図では曲率半径R1、R2の円弧による丸みの例が示されている。
図4に示したクロスパッチでは角部、丸角部は各々全部で8箇所あり、隅部、丸隅部は各々全部で4箇所あるが、本開示では図4において丸点線で囲んだ箇所の角部・丸角部、隅部・丸隅部に関し主に説明し、他の箇所における同様の説明は省略する。」
「【0054】
[第2実施形態]
<断面視>
図7は、素子パターンを断面視した場合の形状の一例を示す図である。図7(a)に示すように、素子パターンの一例であるクロスパッチは角部Cと隅部Dを有する。ここで、角部とは断面形状である方形において、誘電体層の表面と接しない側の頂部を指し、隅部とは誘電体層の表面と接する側の頂部を指す。
【0055】
図7(b)は本実施形態に係るクロスパッチの素子パターン形状を示すもので、図7(a)の角部Aと隅部Bに相当する部分に丸みを与えた丸角部Crと丸隅部Drを有する。図では曲率半径R3、R4の円弧による丸みの例が示されている。
図7に示したクロスパッチでは角部、丸角部は各々全部で2箇所あり、隅部、丸隅部は各々全部で2箇所あるが、本開示では図7において丸点線で囲んだ箇所の角部・丸角部、隅部・丸隅部に関し主に説明し、他の箇所における同様の説明は省略する。」
イ 前記(1)アについて
本件発明2の断面形状で含む「丸角部」、「丸隅部」は、それぞれ、丸い「角部」、丸い「隅部」と把握することができ、上記本件特許の明細書の「角部」、「隅部」「に相当する部分に丸みを与えた」「角部」と「隅部」であるとの記載(【0055】)とも整合する。
そして、角部に相当する部分に丸みを与えた形状が、凸部のように突出した形状となることは想定できないから、丸角部に凸部を形成するような態様が含まれるとはいえない。
また、「丸隅部」についても同様である。
したがって、本件発明2の断面形状で含む「丸角部」、「丸隅部」は、凸部を形成する場合を包含するとはいえないから、当該主張は採用できない。
この点は、本件発明3~15についても同様である。
ウ 前記(1)イについて
本件発明4の平面形状で含む「丸角部」、「丸隅部」は、それぞれ、丸い「角部」、丸い「隅部」と把握することができ、上記本件特許の明細書の「角部」、「隅部」「に相当する部分に丸みを与えた」「角部」と「隅部」であるとの記載(【0049】)とも整合する。
そして、角部に相当する部分に丸みを与えた形状が、凸部のように突出した形状となることは想定できないから、丸角部に凸部を形成するような態様が含まれるとはいえない。
また、「丸隅部」についても、同様である。
したがって、本件発明4の平面形状で含む「丸角部」、「丸隅部」は、凸部を形成する場合を包含するとはいえないから、当該主張は採用できない。
この点は、本件発明5~15についても同様である。
(3)申立理由4のまとめ
以上のとおり、申立理由4は理由がない。
4 申立理由5(明確性要件)について
(1)申立理由5(明確性要件)の具体的な主張(特許異議申立書47~48頁)
ア 本件発明において、どのような「断面形状」の素子パターンに対して、どこの部分が「丸角部」「丸隅部」なのか不明確である。
イ 本件発明2、3、及び7~15において、「曲率半径R3が」が「長さ」、「曲率円」、「円弧」のいずれに掛かるのか不明確である。「曲率半径R4が」についても同様である。
ウ 本件発明4~15において、どのような「平面形状」の素子パターンに対して、どこの部分が「丸角部」「丸隅部」であるのか不明確である。
エ 本件発明3の「基準交点ux」「基準直線U」「基準交点vx」「基準直線V」が、それぞれ何を意味しているのか不明確である。
本件発明5の「基準長P」が、何を意味しているのか不明確である。
本件発明6の「基準交点sx」「基準直線S」「基準交点tx」「基準直線T」が、それぞれ何を意味しているのか不明確である。
本件発明7~15についても同様である。
オ 本件発明10~13の「機能層」が、どのような機能を有するのか、その技術的意味が不明瞭である。
カ 本件発明13の「機能層は、電波が伝搬する空気層とインピーダンス整合がとられる」について、どの程度のインピーダンス整合を意味しているのか範囲が不明確である。
キ 本件発明14の「接着剤またはモルタルの接合材を層状に配置してなる」について、どの構成要素を特定しているのか不明確である。
(2)当審の判断
ア 前記(1)アについて
本件特許の明細書には、「角部とは断面形状である方形において、誘電体層の表面と接しない側の頂部を指し、隅部とは誘電体層の表面と接する側の頂部を指す」(前記3の(2)ア 【0054】)と記載され、「角部Aと隅部Bに相当する部分に丸みを与えた丸角部Crと丸隅部Drを有する」(同【0055】)と記載されている。
よって、本件特許の明細書の記載を考慮すると、「断面形状」は方形であり、「丸角部」は「丸みを与えた」「誘電体層の表面と接しない側の頂部」であり、「丸隅部」は「丸みを与えた」「誘電体層の表面と接する側の頂部」として、本件発明を明確に把握できる。
よって、当該主張は採用できない。
イ 前記(1)イについて
本件発明2には、「前記素子パターンの断面形状における前記丸角部の丸みは、断面視したとき、曲率半径R3が前記素子パターンの厚さdの1/6以上の長さの曲率円の円弧を含み、」と記載されている。
そうすると、「丸角部の丸み」について、「曲率半径R3」が「素子パターンの厚さdの1/6以上の長さ」である「曲率円」の「円弧」を含むことを意味するものであり、「曲率半径R3が」は「長さ」に掛かることは、当業者が当然理解できる。
曲率半径R4についても、同様である。
よって、当該主張は採用できない
ウ 前記(1)ウについて
本件特許の明細書には、「角部とは素子パターンを形成する各方形パッチの頂部を指し、隅部とは各方形パッチの各辺が交差する交差部を指す」(前記3の(2)ア 【0048】)と記載され、「角部Aと隅部Bに相当する部分に丸みを与えた角部(以下、「丸角部」と称する。)Arと隅部(以下、「丸隅部」と称する。)Brを有する」(同【0049】)と記載されている。
よって、本件特許の明細書の記載を考慮すると、「丸角部」は「丸みを与えた」「素子パターンを形成する各方形パッチの頂部」であり、「丸隅部」は「丸みを与えた」「各方形パッチの各辺が交差する交差部」として、本件発明を明確に把握できる。
よって、当該主張は採用できない。
エ 前記(1)エについて
本件特許の明細書には、【0056】に「素子パターン断面において誘電体層の表面と垂直な辺と、誘電体層の表面と接しない側の前記表面と平行な辺が丸角部Cr方向で交わる交点を基準交点uxとし、uxを通り交角の半分の方向(図8では断面のx軸方向またはz軸方向に平行な辺に対して45°の傾きを有する方向)に伸びる直線を基準直線Uとする。」と記載され、【0058】に「素子パターン断面において誘電体層の表面と素子パターン側面端部の交わる交点を基準交点vxとし、vxを通る誘電体層の表面の法線を基準直線Vとする。」と記載されており、「基準交点ux」、「基準直線U」、「基準交点vx」、「基準直線V」は、本件特許の明細書に定義されている。
また、【0050】に「このように所定のアーム部16における素子幅と中心線の長さを比較した場合に同じか短い方の長さPを基準長Pと称する。」と記載され、「基準長P」は、本件特許の明細書に定義されている。
また、【0050】に「さらにアーム部16のx軸方向またはy軸方向に平行なそれぞれの辺が丸角部Ar方向で交わる交点を基準交点sxとし、sxを通り交角の半分の方向(図5ではアーム部16のx軸方向またはy軸方向に平行な辺に対して45°の傾きを有する方向)に伸びる直線を基準直線Sとする。」と記載され、【0052】に「隣り合うアーム部16のx軸方向およびy軸方向に平行なそれぞれの辺が丸隅部Br方向で交わる交点を基準交点txとし、txを通り交角の半分の方向(図6ではアーム部16のx軸方向またはy軸方向に平行な辺に対して45°の傾きを有する方向)に伸びる直線を基準直線Tとする。」と記載されており、「基準交点sx」、「基準直線S」、「基準交点tx」、「基準直線T」は、本件特許の明細書に定義されている。
そして、当該定義を考慮して請求項に記載された用語を解釈することにより、請求項の記載は明確に把握できると認められる。
よって、当該主張は採用できない。
オ 前記(1)オについて
「機能層」は、文言上、機能を有する層を意味するものとして明確に把握できる。
また、本件特許の明細書には、
「【0033】
(機能層)
(機能の付加)
リフレクトアレイは、必要に応じて機能を付加することができる。付加される機能として、例えば、劣化防止性、意匠性、保護・耐擦傷性、防水性、ガス・水蒸気バリア性、難燃性、不燃性、自己消火性、耐候性、防汚、抗菌・抗ウィルス、耐薬品、消臭性、粘着・接着性などが挙げられる。これらの機能を1つ付加させてもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0034】
機能を付加する方法としては、リフレクトアレイに、後述する機能を有する層である機能層を加えてもよいし、誘電体層12を形成する際に機能を生じさせる材料を混合させてもよい。また、リフレクトアレイに機能を有する材料を用いてコーティング加工等を施すこともできる。」
と記載されており、機能層の有する具体的な機能として、「劣化防止性、意匠性、保護・耐擦傷性、防水性、ガス・水蒸気バリア性、難燃性、不燃性、自己消火性、耐候性、防汚、抗菌・抗ウィルス、耐薬品、消臭性、粘着・接着性」の機能を有することを理解できる。
したがって、本件発明10~13の「機能層」が不明確であるとはいえない。
よって、当該主張は採用できない。
カ 前記(1)カについて
本件発明13は「電波が伝搬する空気層とインピーダンス整合がとられる」ことを特定している。そして、「インピーダンス整合がとられる」とは、「インピーダンス」が「整合」するようにすることを意味するものとして明確な記載であり、具体的なインピーダンス整合の程度を特定していないからといって、本件発明13が不明確であるとはいえない。
よって、当該主張は採用できない。
キ 前記(1)キについて
本件発明14は、「接着剤またはモルタルの接合材を層状に配置してなる、請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板。」というものであり、「接着剤またはモルタルの接合材を層状に配置してなる」は、「請求項2~6のいずれか一つに記載の電磁波反射板」を特定するものとして、明確に把握できる。
よって、当該主張は採用できない。
(3)申立理由5のまとめ
以上のとおり、申立理由5は理由がない。
5 申立理由6(実施可能要件)について
(1)申立理由6(実施可能要件)の具体的な主張(特許異議申立書48~49頁)
ア 本件発明は、「断面形状は丸角部および丸隅部を含む」と特定しているが、当該特定事項によれば、素子パターンの割れ、欠け等の破損、寸法誤差を助長するものと考えられ、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に説明されているとはいえない。
イ 本件発明4~15は、「平面形状は丸角部または丸隅部を含む」と特定しているが、当該特定事項によれば、素子パターンの割れ、欠け等の破損、寸法誤差を助長するものと考えられ、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に説明されているとはいえない。
(2)当審の判断
ア 前記(1)アについて
当該主張は、「断面形状は丸角部および丸隅部を含む」との特定に、凸部を形成する態様が含まれる(前記3(1)ア)ことを前提とするものと解される。
しかしながら、前記3(2)イのとおり、本件発明2の断面形状で含む「丸角部」、「丸隅部」は、凸部を形成する場合を包含するとはいえないから、当該主張は採用できない。
イ 前記(1)イについて
当該主張は、「平面形状は丸角部または丸隅部を含む」との特定に、凸部を形成する態様が含まれる(前記3(1)イ)ことを前提とするものと解される。
しかしながら、前記3(2)ウのとおり、本件発明4の平面形状で含む「丸角部」、「丸隅部」は、凸部を形成する場合を包含するとはいえないから、当該主張は採用できない。
(3)申立理由6のまとめ
以上のとおり、申立理由6は理由がない。
6 異議申立人の提出した意見書(以下「意見書」という。)の主張について
ア 新規性・進歩性に関する主張について
(ア)本件発明2の発明特定事項2C、2D、及び本件発明4の発明特定事項4C、4Dに関連して、「誘電体層、素子パターンの材料、厚み、形状、寸法、特性、製法等を何ら特定しておらず、上記発明の課題はこれらの材料等に依存することから、」「何らかの技術的意味及び臨界的意義が存在するとは考えられない」旨主張する。(意見書6~7頁、9頁)
しかしながら、本件発明2の発明特定事項2C、2D、及び本件発明4の発明特定事項4C、4Dは、訂正前の請求項2に記載されていた事項であり、実質的に新たな理由を提示するものであって、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由とも、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合であるともいえないから、採用しない。
さらに、上記「これらの材料等に依存する」について具体的な証拠を示していないことからも、採用できない。
そして、発明特定事項2C、2Dに係る相違点である相違点5(前記2(1)ア(オ))は、甲2、甲4、甲5の記載をみても、当業者が容易になし得たものとはいえないことは、前記2(1)イのとおりである。
(イ)本件発明5の発明特定事項5G、5Hに関連して、「誘電体層、素子パターンの材料、厚み、形状、寸法、特性、製法等を何ら特定しておらず、上記発明の課題はこれらの材料等に依存することから、何らかの技術的意味及び臨界的意義が存在するとは考えられない」旨主張する。(意見書9~10頁)
しかしながら、本件発明5の発明特定事項5G、5Hは、訂正前の請求項5に記載されていた事項であり、実質的に新たな理由を提示するものであって、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由とも、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合であるともいえないから、採用しない。さらに、上記「これらの材料等に依存する」について具体的な証拠を示していないことからも、採用できない。
イ 記載要件違反に関する主張について
異議申立人は、意見書において、参考資料1を添付して、本件発明2~15は、「明確性要件、サポート要件及び実施可能要件に違反している。」旨、主張する。(意見書12~24頁)
しかしながら、これらの主張は、発明特定事項2C及び2D、並びに発明特定事項4C及び4Dにおいて、曲率半径R3及びR4の上限が特定されていないこと(意見書12~18頁)、発明特定事項5G及び5Hにおいて、曲率半径R1及びR2の下限が特定されていないこと(意見書18~22頁)、本件発明6において、基準交点の定義について不明確であること、丸角部の丸み及び丸隅部の丸みについて曲率中心の下限が特定されていないこと、課題を解決しえない無数の態様を包含していること(意見書22~24頁)を根拠とするものであり、実質的に新たな理由を提示するものであって、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由とも、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合であるともいえないから、採用しない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701149