特許異議申立
2024-700542
周波数選択反射板および通信中継システム
- 審判番号
- 2024-700542
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-178884
- 登録番号
- 7396531
- 請求日
- 2024年06月07日
- 審決日
- 2025年11月21日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】飯田 進
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 松原 徳久
- 分類
- P1651.537-YAA(H01Q) / P1651.121-YAA(H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7396531号発明「周波数選択反射板および通信中継システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7396531号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7396531号の請求項1~3及び6に係る特許を維持する。
特許第7396531号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7396531号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)8月29日(優先権主張 令和3年8月27日、令和4年5月9日、令和4年6月27日)を国際出願日とする特願2023-544018号の一部を令和5年10月17日に新たな特許出願としたものであって、令和5年12月4日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月12日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対し、特許異議申立人 飯田 進(以下「申立人」という。)により全請求項(請求項1~6)を対象として特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立て以後の手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年 6月 7日 特許異議申立書
7月 5日 手続補正書(方式)
8月29日付け 取消理由通知書
11月 1日 訂正請求書
意見書(特許権者)
11月20日付け 手続補正指令書(方式)(特許権者宛て)
12月19日 手続補正書(方式)(特許権者)
令和7年 1月10日付け 訂正拒絶理由通知書 (特許権者宛て)
2月17日 意見書(特許権者)
3月12日付け 取消理由通知書(決定の予告)
5月19日 訂正請求書
意見書(特許権者)
6月27日 意見書(申立人)
7月16日付け 取消理由通知書(決定の予告)
9月18日 訂正請求書
意見書(特許権者)
10月31日 意見書(申立人)
令和7年9月18日の訂正請求書(以下、単に「訂正請求書」という。)により訂正の請求がされたので、特許法120条の5第7項の規定により、令和6年11月1日及び令和7年5月19日の訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
令和6年7月5日の手続補正書(方式)による補正は、特許異議申立書について、書面の副本に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係る承諾の欄を追加するものであり、要旨を変更するものではない。
以下では、令和6年7月5日の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を「申立書」といい、令和7年7月16日付けの取消理由通知書(決定の予告)を「決定の予告」といい、訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、同年10月31日の申立人による意見書を、2通目の意見書という意味で、「申立人意見書2」という。
第2 本件訂正の適否
本件訂正は、特許請求の範囲を訂正するものである。
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなる。なお、下線は訂正箇所を示す(以下同様)。
以下の(1)に本件訂正前の特許請求の範囲の記載を、以下の(2)に本件訂正後の特許請求の範囲の記載を示す。
〈訂正事項1〉
請求項1に、
「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」
と記載されているのを、
「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
〈訂正事項2〉
請求項2に、
「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束する、」
と記載されているのを、
「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束する、」
に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
〈訂正事項3〉
請求項3に、
「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、同じである、」
と記載されているのを、
「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、同じである、」
に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
〈訂正事項4〉
請求項4を削除する。
〈訂正事項5〉
請求項5を削除する。
(1)本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
【請求項1】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、周波数選択反射板。
【請求項2】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束する、周波数選択反射板。
【請求項3】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、同じである、周波数選択反射板。
【請求項4】
前記周波数選択反射板は、前記電磁波を反射する反射部材を有し、
前記反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されており、
前記境界部分は、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
【請求項5】
前記周波数選択反射板は、
前記電磁波を反射する反射部材と、
前記反射部材に対して前記電磁波の入射側に配置され、前記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、
前記誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されており、
前記境界部分は、前記誘電体層の稜線状部分である、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
【請求項6】
前記各セル領域での前記電磁波の入射方向ベクトルは、互いに異なる、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
(2)本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
【請求項1】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、周波数選択反射板。
【請求項2】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束する、周波数選択反射板。
【請求項3】
特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、同じである、周波数選択反射板。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記各セル領域での前記電磁波の入射方向ベクトルは、互いに異なる、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項4~6は、それぞれ請求項1を直接的に引用するものであるから、請求項1及び4~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
本件訂正前の請求項4~6は、それぞれ請求項2を直接的に引用するものであるから、請求項2及び4~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
本件訂正前の請求項4~6は、それぞれ請求項3を直接的に引用するものであるから、請求項3~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、上記3つの一群の請求項は、請求項1~3の一つを引用する関係が、当該関係に含まれる請求項4~6を介して請求項1~3の他の一つを引用する関係と一体として特許請求の範囲の全部を形成するように連関しているから、請求項1~6は、特許法120条の5第4項で委任される特許法施行規則45条の4に規定する一群の請求項である。
そして、本件訂正は、上記一群の請求項ごとに請求されており、特許法120条の5第4項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
本件の特許異議の申立ては全請求項にされているので、本件訂正には特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は適用されない。
4 訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正が特許法120条の5第2項に規定する要件、並びに、同条9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすかについて検討する。
(1)訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る発明を特定する事項である「セル領域」について、「前記各セル領域が格子状に配列されて」いること、及び、「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されて」いることを限定し、さらに、請求項1に係る発明を特定する事項である「境界部分」について、「徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である」と限定し、加えて、請求項1に係る発明を特定する事項である「反射方向ベクトル」について、「周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され」ることを限定するものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
(2)新規事項追加の有無
訂正事項1に係る訂正で限定される「前記各セル領域が格子状に配列されて」いることは、本件の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)に、「なお、図32(a)(b)においては、各セル領域が格子状に配列したマトリックスと考えられる。」(【0312】)と記載された事項である。
また、訂正事項1に係る訂正で限定される「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されて」いることは、本件明細書に、「1つの反射素子3が配置されている素子領域が1つのセル領域であり、」(【0310】)と記載された事項である。
また、訂正事項1に係る訂正で限定される「境界部分」が「徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である」ことは、本件明細書に、「徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に大きくなる反射素子のサイズが急に小さくなる部分となる。」(【0316】)と記載された事項である。
また、訂正事項1に係る訂正で限定される「反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され」ることは、本件明細書に、「一の仮想の分割領域における電磁波の反射方向ベクトルは、その一の仮想の分割領域の周囲に隣接する他の仮想の分割領域との関係性に基づき決定される。」(【0294】)と記載された事項である。
よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされており、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
前記(1)に示したように、訂正事項1に係る訂正は、発明特定事項に限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の拡張又は変更をするものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たす。
(4)訂正事項1に係る訂正についての小括
以上によれば、訂正事項1に係る訂正は、適法なものと認められる。
5 訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正と同様の訂正を、それぞれ請求項2及び3に対してするものであるから、前記4と同様である。
よって、訂正事項2及び3に係る訂正は、適法なものと認められる。
6 訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5に係る訂正は、いずれも、請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
訂正事項4及び5に係る訂正が、いずれも、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは明らかである。
よって、訂正事項4及び5に係る訂正は、適法なものと認められる。
7 本件訂正についての小括
以上によれば、本件訂正は適法なものと認められる。
よって、本件の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 申立ての一部却下
前記第2のとおり、本件訂正は認められたので、請求項4及び5は削除された。これにより、請求項4及び5についての特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
第4 本件発明の認定
本件の請求項1~3及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」及び「本件発明6」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、前記第2、1(2)に示した請求項1~3及び6の記載のとおりのものと認める。
後の参照の便宜のため、本件発明1~3に記号1A~3Fを付して以下のように分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。
【請求項1】
1A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
1B 前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
1C 前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
1D 前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
1E 前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、
1F 周波数選択反射板。
【請求項2】
2A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
2B 前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
2C 前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
2D 前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
2E 前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束する、
2F 周波数選択反射板。
【請求項3】
3A 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
3B 前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
3C 前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、
3D 前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、
3E 前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、同じである、
3F 周波数選択反射板。
第5 証拠方法
申立人は、申立書に添付して、以下の甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)を写しとして提出した。
甲1 特開2010-226695号公報
甲2 特開2021-48465号公報
第6 申立理由及び取消理由
申立書に記載された申立ての理由の概要は、前記第3で却下した申立てに関する理由を除くと、以下の申立理由1-1~2-2のとおりであり、決定の予告で通知された取消理由の概要は、以下の取消理由1のとおりである。
〈申立理由1-1〉
本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1は、特許法29条2項の規定に違反するものであり、取り消されるべきである。
(申立書19頁21~25行)
〈申立理由1-2〉
本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2は、特許法29条2項の規定に違反するものであり、取り消されるべきである。
(申立書20頁18~22行)
〈申立理由1-3〉
本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3は、特許法29条2項の規定に違反するものであり、取り消されるべきである。
(申立書21頁15~19行)
〈申立理由1-4〉
本件発明6は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6は、特許法29条2項の規定に違反するものであり、取り消されるべきである。
(申立書24頁1~5行)
〈申立理由2-1〉
本件発明1の発明特定事項1D及び1Eは、「反射ビームが照射されるエリアを制御する」という目的を達成するにあたり、周波数選択反射板からの反射波が満たす条件といえる。
しかしながら、本件発明1において、周波数選択反射板の具体的な構成は、発明特定事項1Bが特定されるのみであり、発明特定事項1D及び1Eを実現するための具体的な構成が特定されていない。
すなわち、本件発明1において、発明特定事項1D、1Eと、発明特定事項1Bとの間には、技術的な関連がない。
同様に、本件発明2において、発明特定事項2D、2Eと、発明特定事項2Bとの間には、技術的な関連がない。
同様に、本件発明3において、発明特定事項3D、3Eと、発明特定事項3Bとの間には、技術的な関連がない。
したがって、本件発明1~3には、周波数選択反射板の具体的な構成に関する発明特定事項と、周波数選択反射板からの反射波が満たす条件に関する発明特定事項との間の技術的な関連については何ら特定されていないから、本件発明1~3は不明確である。そして、本件発明1~3のいずれかを引用する本件発明6も同様に不明確である。
(申立書24頁20行~26頁6行)
〈申立理由2-2〉
本件発明1~3の「境界部分」は、電磁波の相対反射位相が「徐々に小さくなる」、「急に大きくなる」(発明特定事項1D、2D、3D)と規定されているが、「徐々に」、「急に」がどのような状態を意味するのかが不明確である。また、「反射位相の遅れ」(発明特定事項1D、2D、3D)とは、如何なる基準に対する反射位相の状態を遅れとするのかが不明確である。
本件発明1~3における「境界部分」は、反射素子のサイズが「徐々に大きくなる」、「急に小さくなる」(発明特定事項1D、2D、3D)と規定されているが、「徐々に」、「急に」がどのような状態を意味するのかが不明確である。
(申立書26頁7行~27頁2行)
〈取消理由1〉
本件発明1は、「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており」(発明特定事項1C)、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは」「外側に向かって広がる」(発明特定事項1E)と特定されている。
しかしながら、1つの反射素子が配置されたセル領域において、当該セル領域の反射方向ベクトルを決定することについては、本件の発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。すなわち、【0098】の記載によれば、反射方向ベクトルを決定するためには、「互いに寸法の異なる複数の反射素子」の存在を前提としており、本件発明1のように「1つの反射素子」において反射方向ベクトルを決定することは想定されていないと解される。
そうすると、「1つの反射素子」が配置されたセル領域の「反射方向ベクトル」を発明特定事項として有する本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められず、本件発明1に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことに該当するので、取り消されるべきものである。
本件発明2及び3も、「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されて」いること(発明特定事項2C、3C)と、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトル」(発明特定事項2E、3E)とを発明特定事項として含むため、本件発明1と同様である。
本件発明6は、本件発明1~3のいずれかの発明の発明特定事項を全て含むので、本件発明1~3と同様である。
(決定の予告、第5)
第7 取消理由1について
事案に鑑み、取消理由1についての理由の有無をまず検討する。
特許請求の範囲の記載が、いわゆるサポート要件を定めた特許法36条6項1号に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
1 本件発明の技術的意義
本件の発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明が属する技術分野は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板(【0001】)であり、本件発明が解決しようとする課題は、反射ビームが照射されるエリアを広げる又は絞る等、反射ビームが照射されるエリアを制御することが可能であり、球面波を平面波に変換することも可能な周波数選択反射板を提供すること(【0009】)にあると解される。
また、本件の発明の詳細な説明において、図31及び図45~49に示される実施例4~9(【0432】)は、9種類のセル領域が繰り返し配列されており(【0432】)、反射ビームを一定方向に反射するもの(【0433】)、あるいは、反射ビームを広げる又は絞るものであり(【0434】~【0438】)、実施例4~9のいずれにおいても、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線上である(【0439】)。これら実施例4~9によれば、前記課題を解決するための手段は、各セル領域での電磁波の相対反射位相について、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状となることであると解される。
2 本件発明1のサポート要件について
本件発明1は、「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており」(発明特定事項1B)、このことは、実施例4~9として記載されている。
また、本件発明1は、「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており」(発明特定事項1C)、このことは、実施例4~9として記載されているのに加え、「本態様において、「セル領域」とは、電磁波の相対反射位相が同じである領域であり、サイズが異なる複数の反射素子のうち、1つの反射素子が配置されている素子領域をいう。」(【0332】)との記載とも整合する。
また、本件発明1は、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され」(発明特定事項1E)、このことは、「なお、仮想の分割領域は、例えば、1つの電磁波の反射方向ベクトルを示す領域である。…(略)…仮想の分割領域のサイズを極限まで小さくすると、分割領域のサイズはセル領域のサイズまで小さくすることができる。仮想の分割領域のサイズをセル領域のサイズとした場合、一の仮想の分割領域における電磁波の反射方向ベクトルは、その一の仮想の分割領域の周囲に隣接する他の仮想の分割領域との関係性に基づき決定される。」(【0294】)と記載されているとおりであり、分割領域のサイズをセル領域のサイズとした場合のことである。
また、本件発明1は、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広が」り(発明特定事項1E)、このことは、実施例5~7及び9(【0434】~【0436】及び【0438】)に記載されている。
その余の発明特定事項についても、発明の詳細な説明に記載された事項である。
そして、本件発明1は、「前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相」について「徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であ」ると特定される(発明特定事項1D)から、前記1に示した課題を解決するための手段に照らし、課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
よって、本件発明1は、サポート要件を満たすと認められる。
3 本件発明2のサポート要件について
本件発明2は、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは」「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束」し(発明特定事項2E)、このことは、実施例8(【0437】)に記載されている。
その余の点は、本件発明1と同様である。
よって、本件発明2は、サポート要件を満たすと認められる。
4 本件発明3のサポート要件について
本件発明3は、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは」「同じであ」り(発明特定事項3E)、このことは、実施例4(【0433】)に記載されている。
その余の点は、本件発明1と同様である。
よって、本件発明3は、サポート要件を満たすと認められる。
5 本件発明6のサポート要件について
本件発明6は、本件発明1~3のいずれかの発明の発明特定事項を全て含むので、本件発明1~3と同様である。
よって、本件発明6は、サポート要件を満たすと認められる。
6 取消理由1についての小括
前記2~5のとおりであるから、本件発明1~3及び6は発明の詳細な説明に記載したものであると認められ、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件に適合するものである。
よって、取消理由1には理由がない。
第8 申立理由2-1について
次いで、申立理由2-1についての理由の有無を検討する。
1 本件発明1について
本件発明1についての申立理由2-1は、要するに、発明特定事項1D及び1Eと、発明特定事項1Bとの間に技術的な関連がないというものである。
(1)発明特定事項1Bはセル領域の配列について特定するものであり、発明特定事項1Dは、セル領域の境界部分の形状を特定するものであり、発明特定事項1Eは、セル領域での反射方向ベクトルの方向を特定するものであって、これらにより周波数選択反射板の反射特性が特定されるものであるから、これら発明特定事項は互いに技術的に関連するものである。
(2)前記(1)に関連して、申立人は、発明特定事項1D及び1Eが「反射ビームが照射されるエリアを制御する」という目的を達成するにあたり、周波数選択反射板からの反射波が満たす条件といえるが、周波数選択反射板の具体的な構成は、発明特定事項1Bが特定されるのみであり、発明特定事項1D及び1Eを実現するための具体的な構成が特定されていない旨、主張する。
しかしながら、発明特定事項1Dは、セル領域の相対反射位相及び反射素子のサイズによってセル領域の境界部分を定義し、該境界部分の形状を特定することにより、セル領域の配列を特定しているものであるから、発明特定事項1Dは、反射波が満たす条件を特定するだけではなく、セル領域の配列をも特定するものである。
さらに、発明特定事項1Eは、隣接するセル領域との関係性に基づいてセル領域の反射方向ベクトルが決定されることを前提に、各セル領域での電磁波の反射方向ベクトルの向きを規定するものであるから、これも、反射波が満たす条件を特定するだけではなく、隣接するセル領域との配列をも特定するものである。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)申立人は、発明特定事項1Eに関連して、「周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され」なる記載は、「周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性」がどのような関係性であるのかが全く不明確であり、発明の詳細な説明の【0294】には、「周囲に隣接する他の仮想の分割領域との関係性」との記載があるのみであると主張する。(申立人意見書2、5頁6~10行)
しかしながら、発明の詳細な説明の「仮想の分割領域のサイズをセル領域のサイズとした場合、一の仮想の分割領域における電磁波の反射方向ベクトルは、その一の仮想の分割領域の周囲に隣接する他の仮想の分割領域との関係性に基づき決定される。」(【0294】)との記載によれば、発明特定事項1Eは、仮想の分割領域のサイズをセル領域のサイズとした場合のことを特定していると明確に理解できる。
そして、上記の場合、一のセル領域で反射される反射波と、その周囲のセル領域で反射される反射波とが合波されることにより、当該一のセル領域に対応する反射波の反射方向ベクトルが得られることも、技術常識から明らかである。
そうすると、発明特定事項1Eにおける「周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性」は、明確である。
(4)前記(1)~(3)によれば、発明特定事項1B、1D及び1Eは、セル領域の配列を特定するために互いに技術的に関連するものであって、何ら不明確な点はない。
2 本件発明2、3及び6について
本件発明2の発明特定事項2B、2D及び2Eについても、本件発明1の発明特定事項1B、1D及び1Eと同様であり、本件発明3の発明特定事項3B、3D及び3Eについても、本件発明1の発明特定事項1B、1D及び1Eと同様であるから、これらについても不明確な点はない。
また、本件発明6は、本件発明1~3のいずれかの発明の発明特定事項を全て含むので、本件発明1~3と同様である。
3 前記1及び2によれば、申立理由2-1に理由はない。
第9 申立理由2-2について
次いで、申立理由2-2についての理由の有無を検討する。
本件発明は、いずれも、「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり」(発明特定事項1D、2D、3D)という発明特定事項を有するものであり、申立理由2-2は、当該発明特定事項の不明確性に関するものである。
発明特定事項1D、2D及び3D(以下、これらを総称して「発明特定事項D」という。)の明確性について、以下のとおり判断する。
1 本件の発明の詳細な説明の記載
発明特定事項Dに関連する本件の発明の詳細な説明の記載として、以下がある。
(1)「【0121】
なお、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、反射位相は、特に断りのない限り、-360度超360度未満の範囲内であり、-360度および+360度は0度に戻る。また、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、相対反射位相は、特に断りのない限り、-360度超0度以下の範囲内であり、-360度は0度に戻る。」
(2)「【0306】
また、本実施態様の周波数選択反射板において、「曲線状」とは、曲線はもちろんのこと、直線の連続であっても、全体としてみれば曲線のように見える状態や、一部に直線部分を含むが曲線に近似しているような状態も含む。」
(3)「【0309】
また、曲線状は、例えば、円弧状、ひょうたんのような曲線状、曲率が徐々に変化した曲線状が挙げられる。
【0310】
図32(a)は、本実施態様の周波数選択反射板におけるセル領域を例示する概略平面図である。図32(a)に示す周波数選択反射板は、図32(b)に示すように、互いに外径が異なる複数のリング状の反射素子3が配列された反射部材を有する。図32(b)は図32(a)の枠線F1の部分に相当し、図32(a)中の数字は、反射素子3のリングの外半径を示す。この周波数選択反射板においては、1つの反射素子3が配置されている素子領域が1つのセル領域であり、反射素子3のリングの外半径が大きくなるにつれて、各セル領域での電磁波の相対反射位相が小さくなる。
【0311】
図32(a)、(b)において、各セル領域での電磁波の相対反射位相は、ある方向に増減を繰り返している。図32(a)、(b)では、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に大きくなる反射素子のリングの外半径が急に小さくなる部分である。図32(a)において、この境界部分を太線F2で示す。境界部分は、分岐せず、連続した曲線状になっている。一方で、図32(a)において、最右列のセル領域では、それよりも右側の列が存在しないため、上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられるものの、最右列のセル領域とそれよりも右側の列との間に上記境界部分が存在するかは判断できない。そのため、枠線F4の部分では、上記境界部分が途切れているようにみえる。しかし、上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられ、破線F3も含めれば、上記境界部分は途切れのない曲線状、つまり連続した曲線状になる。よって、本実施態様の周波数選択反射板において、最外周のセル領域については、上記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状になっていなくてもよいこととする。
【0312】
なお、図32(a)(b)においては、各セル領域が格子状に配列したマトリックスと考えられる。電磁波の相対反射位相の面内レイアウトを表現する場合の最小分解能は、セル領域のサイズとなる。これは、画素の配置によって情報を表示するディスプレイと同様に考えることができる。例えば図32(a)において、左下を原点Oとして水平方向をx軸、上下方向をy軸とした場合のセル領域の配置マトリックスを模式的に図32(c)に示す。上記境界部分がy=xの右上がりの直線で存在する状況は、実線F11のように、セル領域1つ分のクランク状の曲がりが右上がりに連続することによって表現される。実線F11は、実質的に直線とみなすべきである。同様に、上記境界部分がy=x2の曲線に従って存在する状況は、破線F12のように、セル領域1つ分のクランク状の曲がりを含む右上がりのカーブで表現される。破線F12も、実質的に曲線とみなすべきである。したがって、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分を太線F2で表現する場合、セル領域1つ分のクランク状の曲がりは変曲点としてみなさず、スムーズな変化としてみなすことができる。」
(4)図32
[図:0001432027000001.jpg]
(5)図45
[図:0001432027000002.jpg]
2 「分岐せず、連続した曲線状」の解釈
発明特定事項Dの「前記境界部分が…(略)…分岐せず、連続した曲線状であり」の解釈は、以下のとおりである。
(1)発明の詳細な説明には、図32を参照して「上記境界部分がy=xの右上がりの直線で存在する状況は、実線F11のように、セル領域1つ分のクランク状の曲がりが右上がりに連続することによって表現される。実線F11は、実質的に直線とみなすべきである。同様に、上記境界部分がy=x2の曲線に従って存在する状況は、破線F12のように、セル領域1つ分のクランク状の曲がりを含む右上がりのカーブで表現される。破線F12も、実質的に曲線とみなすべきである。…(略)…セル領域1つ分のクランク状の曲がりは変曲点としてみなさず、スムーズな変化としてみなすことができる。」(【0312】)との記載がある。
当該記載によれば、「各セル領域が格子状に配列したマトリックス」(【0312】)である場合、境界部分が格子に沿った折れ線から構成されることをもって境界部分が「曲線状」であると解するのは適切ではなく、「セル領域1つ分のクランク状の曲がりは変曲点としてみなさず、スムーズな変化としてみなすことができる」(【0312】)ように「画素の配置によって情報を表示するディスプレイと同様に考え」て(【0312】)認識される境界部分、すなわち、格子に沿った折れ線が折れ線とは認識できない程度に巨視的な視点から見た境界部分が、曲線となることをもって、境界部分が「曲線状」であると解するべきである。
(2)前記(1)の解釈は、【0309】及び図45とも整合する。
発明の詳細な説明には、「曲線状は、例えば、円弧状、ひょうたんのような曲線状、曲率が徐々に変化した曲線状が挙げられる。」(【0309】)との例示があり、図45は、正に「円弧状」の例に該当すると解される。すなわち、図45に示される境界部分は、微視的には縦横の直線からなる折れ線であるが、巨視的には、図の下辺における左1/4よりも少し左の点を中心(以下「図45中心点」という。)とする円弧(正確には楕円弧)となっていることが看取される。
(3)前記(1)及び(2)のとおりであるから、発明特定事項Dの「曲線状」は、巨視的に曲線状であることを意味すると解される。
また、発明特定事項Dの「分岐せず」及び「連続した」についても同様に、巨視的な形状を意味すると解される。
3 「境界部分」の解釈
境界部分は巨視的な視点で認識する必要があることは以下の(1)及び(2)のとおりである。
(1)前記2に示したように、発明特定事項Dの「境界部分」が「分岐せず、連続した曲線状」であるとは、巨視的に、境界部分が分岐しない連続した曲線状であることを意味する。
そして、巨視的な形状として特定される「境界部分」は、発明特定事項Dにおいて「徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分」として定義されており、この定義においても、巨視的な視点が必要とされるのは、当然といえる。
(2)実際、以下に示すとおり、本件の発明の詳細な説明においても、境界部分の認識に巨視的な視点が導入されるべきことが示されている。
本件の発明の詳細な説明には、図32(a)について「図32(a)中の数字は、反射素子3のリングの外半径を示す。」(【0310】)との記載があり、また、図32(a)の破線F3について、「図32(a)において、最右列のセル領域では、それよりも右側の列が存在しないため、上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられるものの、最右列のセル領域とそれよりも右側の列との間に上記境界部分が存在するかは判断できない。…(略)…しかし、上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられ、…(略)…」(【0311】)との記載がある。
図32(a)には破線F3の右側が描かれていないために、微視的に破線F3が境界部分となるか否かは不明である点は、【0311】に「最右列のセル領域では、それよりも右側の列が存在しないため、」「最右列のセル領域とそれよりも右側の列との間に上記境界部分が存在するかは判断できない。」と記載されているとおりである。
ここで、例えば、図32(a)の上から3行目の12個のセル領域を左端から順に見ていくと、反射素子のリングの外半径すなわち反射素子のサイズは、5.6 6.6 10.0 5.4 6.0 10.0 5.2 6.0 10.0 5.2 6.0 10.0となっている。つまり、左端から3つのセル領域は、左から右へ行くにつれて反射素子のサイズが増加することを看取でき、このような増加は4個目から6個目のセル領域についても同様に看取でき、7個目から9個目でも同様であり、10個目から12個目でも同様である。そして、3個目と4個目の間では反射素子のサイズは減少しているため、前記増加が中断している。これは、6個目と7個目の間も、9個目と10個目との間も同様である。すなわち、左から右に、3個のセル領域にわたって反射素子のサイズの増加が続き、続くセル領域では1セル領域間に限り増加が中断して減少し、そのセル領域からはまた3個の反射素子にわたって反射素子のサイズの増加が続き、続くセル領域では1セル領域間に限り増加が中断して減少し、…という繰り返しを認識でき、1セル領域間に限り増加が中断して減少する部分が、太線F2で示された境界部分となっている。このような傾向、すなわち、複数セル領域間での反射素子のサイズの増加の後に1セル領域間のみの反射素子のサイズの減少が繰り返されるという傾向が、周波数選択反射板の全域において認識できるため、破線F3が描かれている右端のセル領域の次のセル領域では、1セル領域間に限り増加が中断して減少し、その先は複数セル領域間で反射素子のサイズが増加する傾向になると予想がされ、その予想が、【0311】において「上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられる」、「上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられ」という説明として現れていると理解される。
以上によれば、境界部分は、隣接するセル領域のみに着目する微視的な視点のみから認識されるものとはいえない。周波数選択反射板の全域から把握される反射素子のサイズ(又は相対反射位相)の増減の傾向をも考慮し、巨視的に複数セル領域にわたる反射素子のサイズの増加が繰り返される傾向下にあると認識されるセル領域において、1セル領域間に限り増加が中断して減少している部分が、境界領域と認識されるべきと解される。
4 「徐々に」及び「急に」の解釈
発明特定事項Dにおける「徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる部分」との記載及び「徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分」との記載における「徐々に」及び「急に」は、前記3(2)の解釈を踏まえれば、反射素子のサイズの増加(相対反射位相の減少)が複数セル領域にわたる様を「徐々に」との語で表し、1セル領域間に限り反射素子のサイズの減少(相対反射位相の増加)がある様を「急に」との語で表していると解される。
この解釈は、「急」の語が「進行や変化が速いこと。」(広辞苑)との語義を持つこととも整合する。すなわち、1セル領域という短い期間での反射素子のサイズの減少(相対反射位相の増加)を、変化が速いことを表現する「急に」との語で表していると解される。
また、「徐々に」の語義は、「ゆるやかに進むさま。少しずつ変化するさま。」(広辞苑)であり、「急に」の対義語と解される。本件についても、「徐々に」は「急に」の対義語として解釈されるべきであり、反射素子のサイズの増加(相対反射位相の減少)が、1セル領域間という短い期間での増加(減少)ではなく、複数セル領域にわたる長い期間での増加(減少)を意味すると解される。
5 「反射位相の遅れ」の解釈
発明特定事項Dには、反射位相について、「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相」と特定されている。
(1)本件の発明の詳細な説明には、「反射位相は、特に断りのない限り、-360度超360度未満の範囲内であり、」(【0121】)との記載があるため、発明特定事項Dにおける「前記電磁波の反射位相」は、同一の反射位相を正負2つの値で表現できる。
よって、各セル領域での反射位相の表現を恣意的に選択することにより、どのセル領域の反射位相であっても「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相」とすることができる曖昧さが発生し得る。
(2)しかしながら、発明特定事項Dには、「前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分」との特定がある。
上記特定があるため、「徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分」と「徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分」とが一致するように反射位相の表現を選択しなければならず、その結果、前記(1)に示したような曖昧さは発生し得ない。
(3)以上によれば、発明特定事項Dの「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相」は、明確である。
6 前記2~5によれば、発明特定事項Dに現れる「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相」、「徐々に」、「急に」、「境界部分」及び「分岐せず、連続した曲線状」の意味は明確である。
また、発明特定事項Dにおいて、その他不明確な表現は存在しない。
よって、申立理由2-2に理由はない。
第10 申立理由1-1について
本件発明1と甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)とを対比し、本件発明1の甲1発明に対する進歩性の有無を判断する。
1 甲1の記載
甲1には以下の記載がある。
(1)「【背景技術】
【0007】
非特許文献1に、従来のリフレクトアレイの例が示されている。かかるリフレクトアレイは、図1に示すように、マイクロストリップアンテナの形状をアレイ素子とし、地板を金属平板としている。かかるアレイ素子のサイズa及びbは、図2に示すように位相差によって決められている。
【0008】
しかし、図1及び図2に示すような従来のリフレクトアレイでは、裏面に金属平板が用いられているために、他の周波数の電波が透過することができず、TM波及びTE波の偏波を共用することができず、さらに、任意の方角から到来する電波を所望の方向に放射することができないという欠点があった。」
(2)「【0055】
(本発明の第1の実施形態)
図3乃至図5に、本発明の第1の実施形態に係る周波数選択型リフレクトアレイを示す。本実施形態に係る周波数選択型リフレクトアレイでは、誘電体基板上において、図3及び図5に示すように、表面にクロスダイポールのアレイ素子が配置されており、図4及び図5に示すように、裏面にループのアレイ素子が配置されている。
【0056】
ここで、図3乃至図5に示す周波数選択型リフレクトアレイでは、表面のクロスダイポールは、反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように長さを変えている。」
(3)「【0058】
まず、地板として動作させるために裏面に配置された方形ループの周波数選択性について説明する。図6及び図7は、方形ループの上面(Z軸の正の方向)から平面波を与えた場合の解析モデルについて示す図であり、図8は、反射係数及び透過係数の特性を表すグラフである。
【0059】
ここで、方形ループの構造は、周長12mm、基板の厚さは1.5mmt、方形ループ間のピッチD=7mmとした。解析には、周期境界条件を用いており、方形ループが無限周期となることを想定している。」
(4)「【0071】
この手法について説明するために、図11に、標準的なプリントアレーを素子としたリフレクトアレイの原理を示す。所望方向へ位相をそろえるためのアレイ開口分布条件を(式1)に示す。…(略)…」
(5)「【0078】
図3乃至図5に示す本実施形態に係るリフレクトアレイの例では、24GHzで、X軸の方向に35°傾けて散乱させるよう設計している。図10に対応させて求めた図3における#1から#15までのクロスダイポールの長さを図12に示す。」
(6)「【0080】
ここで、波源が、(θi,φi)=(20°,-90°)から来ると仮定しているが、本発明の場合は、40°以下でビームを曲げる場合は、波源は、どこからきても構わない。本発明の場合は、クロスダイポールを採用しているため、波源は、TM波でもTE波のどちらでも構わない。」
(7)図1
[図:0001432027000003.jpg]
(8)図2
[図:0001432027000004.jpg]
(9)図3
[図:0001432027000005.jpg]
図3によれば、15個のクロスダイポールのアレイ素子が3行5列に配列されていると解される。
(10)図4
[図:0001432027000006.jpg]
(11)図5
[図:0001432027000007.jpg]
(12)図10
[図:0001432027000008.jpg]
図10によれば、クロスダイポールの長さを長くする程、反射波の位相が小さくなると解される。
(13)図11
[図:0001432027000009.jpg]
図11及び【0071】の記載によれば、「所望方向へ位相を揃える」とは、各反射素子での反射波の方向を、所望方向へ揃えることと解される。
(14)図12
[図:0001432027000010.jpg]
2 甲1発明の認定
前記1の記載によれば、甲1には、第1の実施形態として、次に示す甲1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明に記号a~jを付して分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈甲1発明〉
a 誘電体基板上において、表面にクロスダイポールのアレイ素子が配置されており、裏面にループのアレイ素子が配置されている、周波数選択型リフレクトアレイであって、(【0055】)
b 表面のクロスダイポールは、反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように長さを変えており、(【0056】)
c 方形ループは、地板として動作させるために裏面に配置されたものであり、(【0058】)
d 方形ループ間のピッチD=7mmとし、(【0059】)
e リフレクトアレイは、24GHzで、X軸の方向に35°傾けて散乱させ、(【0078】)
f 波源が、(θi,φi)=(20°,-90°)から来るTM波であり、(【0080】)
g 15個のクロスダイポールのアレイ素子が3行5列に配列され、(図3)
h クロスダイポールの長さを長くする程、反射波の位相が小さくなり、(図10)
i 所望方向へ位相を揃えるとは、各反射素子での反射波の方向を、所望方向へ揃えることである、(図11)
j 周波数選択型リフレクトアレイ。
3 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(1)発明特定事項1A及び1Fについて
発明特定事項1Aは、「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、」というものであり、発明特定事項1Fは、「周波数選択反射板。」というものである。
ア 甲1発明の「周波数選択型リフレクトアレイ」は、「誘電体基板上に」アレイ素子を配置して「リフレクト」(反射)するもの(構成a)であるから、略誘電体基板の形状をした反射板であると解される。
また、甲1発明の「周波数選択型リフレクトアレイ」が反射する対象は、「波源」から来る「TM波」である(構成f)から、電磁波であると解される。
よって、甲1発明の「周波数選択型リフレクトアレイ」は、本件発明1の「周波数選択反射板」に相当する。
イ 甲1発明は、「(θi,φi)=(20°,-90°)から来るTM波」(構成f)を、「X軸の方向に35°傾けて散乱させ」る(構成e)から、電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。
よって、甲1発明の「周波数選択型リフレクトアレイ」は、本件発明1の「電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板」に相当する。
ウ 甲1発明の「周波数選択型リフレクトアレイ」が反射する電磁波は、「24GHz」(構成e)であり、甲1発明の「24GHz」の電磁波は、本件発明1の「特定の周波数帯の電磁波」に相当する。
エ 前記ア~ウによれば、本件発明1と甲1発明とは、「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であ」る点で一致する。
(2)発明特定事項1Bについて
発明特定事項1Bは、「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、」というものである。
ア 甲1発明では、「誘電体基板上において、表面にクロスダイポールのアレイ素子が配置されており、裏面にループのアレイ素子が配置されて」おり(構成a)、「方形ループは、地板として動作させるために裏面に配置されたものであ」る(構成c)とされる。構成cの「方形ループ」は、構成aの「ループのアレイ素子」を指していると解される。よって、甲1発明では、「誘電体基板」の「クロスダイポールのアレイ素子」が配置されている裏側には、地板としての「(方形)ループのアレイ素子」が配置されて、両者により「アレイ素子」を形成していると解される。
そして、甲1発明では、「方形ループ間のピッチD=7mmとし」ている(構成d)から、図3~図5も参照すると、「アレイ素子」は7mmの間隔で格子状に配列していると解される。
甲1発明において「アレイ素子」が配列された7mm四方の升目状の領域を「セル領域」と称することは任意である。
そして、甲1発明の「クロスダイポール」は、「反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように長さを変えて」いる(構成b)から、長さの異なる「クロスダイポールのアレイ素子」が配列された複数のセル領域の反射位相は、互いに異なると解される。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が」「配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されて」いる点で共通する。
イ 他方、甲1発明のセル領域の配列は、図3を参照すると、一際長いクロスダイポール(#6及び#9)のセル領域、一際短いクロスダイポール(#1及び#13)のセル領域及びそれ以外のセル領域が看取できるものの、図からは明確に配列の繰り返しがあると断定することはできないし、図3の配列が繰り返しになっているとの説明は甲1にはない。
よって、本件発明1では、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域の配列が「繰り返し」ているのに対し、甲1発明の電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域の配列は、繰り返しているとはいえない点で相違する。
(3)発明特定事項1Cについて
発明特定事項1Cは、「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、」というものである。
甲1発明の「クロスダイポールのアレイ素子」(構成a)は、「反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように長さを変えており」(構成b)、電磁波を反射する素子であると解されるから、本件発明1の「反射素子」に相当する。
そして、前記(2)アで触れたとおり、甲1発明において「アレイ素子」が配列された7mm四方の升目状の領域を「セル領域」と称することは任意である。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記セル領域は、1つの反射素子が配置されて」いる点で一致する。
(4)発明特定事項1Dについて
発明特定事項1Dは、「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であり、」というものである。
甲1発明の「15個のクロスダイポールのアレイ素子」(構成g)の具体的な反射位相は不明である。
そして、甲1発明の「15個のクロスダイポールのアレイ素子」のおおよその大きさは図3から看取できるものの、これらアレイ素子において「徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分」は看取できない。これは、前記第9、4に示したように、「徐々に」の語が複数セル領域にわたる長い期間での素子サイズの増加を意味すると解され、前記第9、3(2)に示したように境界領域の認識には、巨視的に複数セル領域にわたる素子サイズの増加が繰り返される傾向下にあることが認識される必要があるのに対し、甲1発明の「15個のクロスダイポールのアレイ素子」は、「3行5列」の配列であって、素子サイズの巨視的な繰り返し構造を認識できるほど素子数が多くないためである。
したがって、甲1発明においては本件発明1の「境界部分」を認識できないため、本件発明1と甲1発明とは、発明特定事項1Dにおいて相違する。
(5)発明特定事項1Eについて
発明特定事項1Eは、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され、前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」というものである。
甲1発明においては、「表面のクロスダイポールは、反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように長さを変えて」いる(構成b)から、各セル領域での電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他のセル領域との関係性に基づき決定されていると解される。
他方、甲1発明の「反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように」(構成b)は、「所望方向へ位相を揃える」(構成i)と同義と解され、要するに、「各反射素子での反射波の方向を、所望方向へ揃えること」(構成i)と解されるから、各セル領域での電磁波の反射方向ベクトルは、同じであると解される。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定され」る点で共通するものの、本件発明1の「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトル」は、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」のに対し、甲1発明の各セル領域での電磁波の反射方向ベクトルは、同じである点で相違する。
(6)一致点及び相違点
発明特定事項1Bにおける「複数のセル領域が繰り返し配列されて」いる点は、前記第9、3(2)に示したように境界領域の認識のために巨視的に複数セル領域にわたる素子サイズの増加が繰り返される傾向下にあることが認識される必要があることに鑑みれば、発明特定事項1Dと不可分な発明特定事項であると認められる。
以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
前記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が」「配列されており、かつ、前記各セル領域が格子状に配列されており、
前記セル領域は、1つの反射素子が配置されており、」
「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルは、周囲に隣接する他の前記セル領域との関係性に基づき決定される」「周波数選択反射板。」である点。
〈相違点1〉
本件発明1では、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域の配列が「繰り返し」ているのに対し、甲1発明の電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域の配列は、繰り返しているとはいえない点。(発明特定事項1B)
上記と関連して、本件発明1は「前記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい前記セル領域での前記電磁波の反射位相を基準として、前記各セル領域での前記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる前記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分であり、かつ、徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であ」るのに対して、甲1発明では境界部分を認識できない点。(発明特定事項1D)
〈相違点2〉
本件発明1の「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトル」は、「前記各セル領域での前記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がる、」のに対し、甲1発明の各セル領域での電磁波の反射方向ベクトルは、同じである点。(発明特定事項1E)
4 相違点1についての判断
相違点1に係る構成についての容易想到性について判断する。
(1)甲2には、以下の記載がある。
ア 「【0013】
(メタサーフェス100の説明)
図2は、本発明の一実施例における、十字型のセルを持つユニットセル(U1、U2、U3、U4)を含む、メタサーフェス100の構成の一部を示す。
図2に示されるように、メタサーフェス100ではアーム長の異なる十字型の共振器130のグループが繰り返し配列されている。以下、繰り返し配列される、アーム長の異なる十字型の共振器130のグループを、スーパーセルS1と呼ぶ。
言い換えると、メタサーフェス100は、誘電体基板110、誘電体基板110の底面に設けられ、全ての向きの偏波に対しメタサーフェス100を透過させない金属グラウンド層120、および、アーム長の異なる2種以上の十字型の金属共振器130を有する複数のスーパーセルS1を備える。スーパーセルS1は、3種以上の十字型の金属共振器130を有することが望ましい。」
イ 「【図2】
[図:0001432027000011.jpg]
」
(2)前記(1)に示した甲2の記載によれば、甲2には、ユニットセルU1、U2、U3及びU4からなるスーパーセルS1を繰り返し配列したメタサーフェスが記載されており、図2から、ユニットセルU1のアーム長とU2のアーム長は略同じと看取され、ユニットセルU3及びU4のアーム長は、ユニットセルU1及びU2のアーム長よりも短く、ユニットセルU3のアーム長は、ユニットセルU4のアーム長よりも短いと看取される。
そうすると、ユニットセルのアーム長は、U3<U4<U1≒U2となっており、スーパーセルS1の繰り返しで配列されたユニットセルを右にU3、U4、U1及びU2とたどると、アーム長がU3、U4、U1、U2の順に「徐々に大きくなる」傾向が巨視的に繰り返し認識されることにより、ユニットセルU2とU3との間が、本件発明1でいう「徐々に大きくなる前記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である前記境界部分」(発明特定事項1D)に対応するといえる。
しかしながら、甲2に記載されたスーパセルS1の繰り返し構造による「境界部分」は、図2のy軸方向に一直線となることが看取でき、これは、本件発明1において、境界部分が「曲線状であ」る(発明特定事項1D)点とは異なる。
そして、甲2のその他の記載を参照しても、境界部分を曲線状とすることについて、記載も示唆もない。
よって、発明特定事項1Dに係る構成は、当業者といえども、甲1発明及び甲2に記載された技術(以下「甲2技術」という。)から、容易に想到し得たとは認められない。
(3)前記(2)に関連し、申立人は、概略、以下の主張1~3を主張する。
〈主張1〉
甲2に記載された「メタサーフェス100」は、甲1発明の「クロスダイポールのアレイ素子の配置領域」に相当する。
甲1発明と甲2技術とは、いずれも電磁波の反射板に関するものであり、また、「反射波を所望方向に反射させる」という機能で共通している。
そうすると、甲1発明の誘電体基板の表面に、反射波の位相差が所望の放射方向に揃うように長さを変えて配置されたクロスダイポールのアレイ素子の配置領域を、甲2に記載されるように「繰り返し配列」するように構成することは、当業者が容易に想到できたものである。(申立書16頁16行~17頁1行)
〈主張2〉
甲1発明において、図3の配置を繰り返したリフレクトアレイに、図2に示される反射位相を対応づけた場合を想定する。
電磁波の反射位相の遅れが最も大きいアレイ素子での電磁波の反射位相を基準として、各アレイ素子での電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、隣り合うアレイ素子間で相対反射位相の差が190度以上の部分を「境界部分」とすると、図b-1に示すように、当該境界部分は、分岐せず、連続した線状になる。(申立書17頁6~13行)
【図b-1】
[図:0001432027000012.jpg]
ここで、本件の明細書の【0306】には、「「曲線状」とは、曲線はもちろんのこと、直線の連続であっても、全体としてみれば曲線のように見える状態や、一部に直線部分を含むが曲線に近似しているような状態も含む。」と記載されている。そうすると、境界部分は、直線の連続であっても、全体としてみれば曲線のように見える状態、又は一部に直線部分を含むが曲線に近似しているような状態である。(申立書18頁6~12行)
〈主張3〉
甲1において、図3の配置を繰り返したリフレクトアレイに、図10及び図12に示されるクロスダイポール長さと反射位相との関係を対応づけた場合を想定する。
電磁波の反射位相の遅れが最も大きいアレイ素子での電磁波の反射位相を基準として、各アレイ素子での電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、隣り合うアレイ素子間で相対反射位相の差が190度以上の部分を「境界部分」とすると、図b-2に示すように、当該境界部分は、分岐せず、連続した線状になる。(申立書17頁14行~18頁5行)
【図b-2】
[図:0001432027000013.jpg]
ここで、本件の明細書の【0306】には、「「曲線状」とは、曲線はもちろんのこと、直線の連続であっても、全体としてみれば曲線のように見える状態や、一部に直線部分を含むが曲線に近似しているような状態も含む。」と記載されている。そうすると、境界部分は、直線の連続であっても、全体としてみれば曲線のように見える状態、又は一部に直線部分を含むが曲線に近似しているような状態である。(申立書18頁6~12行)
ア 主張1について検討する。
甲2技術は、ユニットセルU1、U2、U3及びU4からなるスーパーセルS1を繰り返し配列したメタサーフェスであり、ユニットセルU1~U4を1つのスーパーセルS1とすることを前提としている。
これに対して、甲1発明は、甲2に記載されたスーパーセルS1に対応する構成を有していない。
したがって、スーパーセルS1を備えない甲1発明に対して、甲2に記載されたスーパーセルS1を繰り返し配列するという技術を適用することはできない。
よって、申立人の主張は採用できない。
イ 主張2について検討する。
前記アのとおり、甲1発明に甲2技術のスーパーセルS1を繰り返し配列するという技術を適用することができない以上、甲1発明の図3の配置を繰り返すことを前提とした主張は、前提において失当である。
また、甲1の図2は、「非特許文献1に、従来のリフレクトアレイの例が示されている。かかるリフレクトアレイは、図1に示すように、マイクロストリップアンテナの形状をアレイ素子とし、地板を金属平板としている。かかるアレイ素子のサイズa及びbは、図2に示すように位相差によって決められている。」(【0007】)と記載されているように、甲1の従来技術におけるマイクロストリップアンテナのサイズと位相を示すものであり、これを甲1の実施形態である図3に適用すること自体が不合理である。
したがって、申立人の主張は採用できない。
ウ 主張3について検討する。
前記アのとおり、甲1発明に甲2技術のスーパーセルS1を繰り返し配列するという技術を適用することができない以上、甲1発明の図3の配置を繰り返すことを前提とした主張は、前提において失当である。
また、申立人が示す図b-2は、甲1の図10及び図12と整合しない。図b-2において相対反射位相が0となっている(すなわち、反射位相の基準となっている)クロスダイポールは、#4であり、#4のクロスダイポール長は、図12によれば、1.947mmである。そして、甲1発明では「クロスダイポールの長さを長くする程、反射波の位相が小さくな」り(構成h、図10)、図12に示されるクロスダイポール長の範囲は、1.462mm(#1)~6.800mm(#9)であるから、クロスダイポール長が1.947mmのアレイ素子#4は、電磁波の反射位相の遅れが最も大きいアレイ素子として、反射位相の基準にはなり得ない。よって、申立人の示した図b-2は、甲1の図10及び図12と整合しない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
5 申立理由1-1についての小括
前記4のとおり、相違点1に係る構成は、当業者が甲1発明及び甲2技術から容易に想到し得たものではないから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲2技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、申立理由1-1には理由がない。
第11 申立理由1-2について
本件発明2の発明特定事項2A~2D及び2Fは、それぞれ、本件発明1の発明特定事項1A~1D及び1Fと同じである。
そうすると、本件発明2と甲1発明とを対比すれば、本件発明1の発明特定事項1B及び1Dに関する相違点1と同様の相違点が、少なくとも存在する。
当該相違点は、前記第10、4に示した相違点1についての判断と同様であり、容易に想到し得たものではないから、本件発明2は、当業者が甲1発明及び甲2技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、申立理由1-2には理由がない。
第12 申立理由1-3について
本件発明3の発明特定事項3A~3D及び3Fは、それぞれ、本件発明1の発明特定事項1A~1D及び1Fと同じである。
そうすると、本件発明3と甲1発明とを対比すれば、本件発明1の発明特定事項1B及び1Dに関する相違点1と同様の相違点が、少なくとも存在する。
当該相違点は、前記第10、4に示した相違点1についての判断と同様であり、容易に想到し得たものではないから、本件発明3は、当業者が甲1発明及び甲2技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、申立理由1-3には理由がない。
第13 申立理由1-4について
本件発明6は、本件発明1~3のいずれかの発明特定事項を全て有し、さらに他の発明特定事項を有するものであるから、甲1発明との間には、少なくとも、相違点1又はそれと同様の相違点が存在する。
よって、本件発明6は、当業者が甲1発明及び甲2技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、申立理由1-4には理由がない。
第14 むすび
前記第2のとおり、本件訂正を認める。
前記第3のとおり、本件特許の請求項4及び5についての特許異議の申立てを却下する。
前記第7~第13によれば、申立理由1-1~2-2及び取消理由1によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700542