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特許異議申立

2023-701306

アンテナ及び通信装置

審判番号
2023-701306
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-015191
登録番号
7304009
請求日
2023年12月11日
審決日
2024年03月06日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】宮嶋 学
  • 【権利者代理人】堀田 幸裕
  • 【権利者代理人】岡村 和郎
  • 【権利者代理人】高田 泰彦
  • 【権利者代理人】柏 延之
  • 【権利者代理人】中村 行孝
  • 【異議申立人】須田 元也
審判長/審判官
  • 審判長 高野 洋
  • 審判官 稲葉 崇
  • 審判官 衣鳩 文彦
分類
P1651.121-Y (H01Q) / P1651.536-Y (H01Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7304009号発明「アンテナ及び通信装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7304009号の請求項1~27に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7304009号(以下「本件特許」という。)は、令和4年2月2日に出願され、令和5年6月28日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~27に係る特許に対し、令和5年12月11日に特許異議申立人 須田元也(以下「申立人」という。)により、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され特許異議の申立てがなされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~27の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明27」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~27に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも内側に位置する内側湾曲面を含む、アンテナ。 【請求項2】 前記第1側面は、前記第1端において前記第3面に対して第1角度を成し、 前記第1側面は、前記第2端において前記第4面に対して第2角度を成し、 前記第1角度と前記第2角度の和が90°超175°未満である、請求項1に記載のアンテナ。 【請求項3】 前記第2角度は、135°以下である、請求項2に記載のアンテナ。 【請求項4】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも外側に位置する外側湾曲面を含む、アンテナ。 【請求項5】 前記第1側面は、前記第1端において前記第3面に対して第1角度を成し、 前記第1側面は、前記第2端において前記第4面に対して第2角度を成し、 前記第1角度と前記第2角度の和が185°超270°未満である、請求項4に記載のアンテナ。 【請求項6】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1側面は、平坦面を含む、アンテナ。 【請求項7】 前記第1側面は、前記第1端において前記第3面に対して第1角度を成し、 前記第1側面は、前記第2端において前記第4面に対して第2角度を成し、 前記第1角度と前記第2角度の和が175°以上185°以下である、請求項6に記載のアンテナ。 【請求項8】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1側面は、第11側面と、第1接続部において前記第11側面に接続され、前記第1接続部と前記第4面との間に位置する第12側面と、を含む、アンテナ。 【請求項9】 前記第11側面又は前記第12側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも内側に位置する内側湾曲面を含む、請求項8に記載のアンテナ。 【請求項10】 前記第11側面又は前記第12側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも外側に位置する外側湾曲面を含む、請求項8又は9に記載のアンテナ。 【請求項11】 前記第11側面又は前記第12側面は、平坦面を含む、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のアンテナ。 【請求項12】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1カバー層は、前記第1面に平行な上面を含む、アンテナ。 【請求項13】 前記第1着色層は、前記第1面に平行な下面を含む、請求項12に記載のアンテナ。 【請求項14】 前記第1カバー層は、前記第1側面に接し、平面視において前記第1側面に重なる段差が現れる上面を含む層を備える、請求項12に記載のアンテナ。 【請求項15】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1カバー層は、平面視において前記第1側面に重なる段差が現れる上面を含む、アンテナ。 【請求項16】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1着色層は、前記第4面及び前記第1側面に接している、アンテナ。 【請求項17】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1カバー層は、前記第1導電体層と前記第1着色層との間に位置し、前記第4面及び前記第1側面に接している第1粘着層を含む、アンテナ。 【請求項18】 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 前記第1カバー層は、着色剤を含む第2着色層を備える、アンテナ。 【請求項19】 前記第1カバー層は、第1着色層と前記第2着色層の間に位置する第2粘着層を備える、請求項18に記載のアンテナ。 【請求項20】 前記第1カバー層は、前記第1着色層と前記第2着色層の間に位置する第1透明層を備える、請求項18に記載のアンテナ。 【請求項21】 前記第2面側に位置する第2導電体層を含み、平面視において前記第1側面よりも外側に位置する第2外縁を備えるグランドを備える、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のアンテナ。 【請求項22】 前記第1導電体層は、パッチと、前記パッチに接続された配線と、を備え、 前記パッチと前記配線との間にスリットが形成されている、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のアンテナ。 【請求項23】 前記パッチは、300MHz以上の周波数を有する電波の送信又は受信に対応するよう構成されている、請求項22に記載のアンテナ。 【請求項24】 前記第1導電体層の前記第4面に対向する第3導電体層を備える、請求項1乃至23のいずれか一項に記載のアンテナ。 【請求項25】 前記第3導電体層を覆う第3カバー層を備え、 前記第3カバー層は、着色剤を含む、請求項24に記載のアンテナ。 【請求項26】 表面を有する構造体と、 前記表面に取り付けられている、請求項1乃至25のいずれか一項に記載のアンテナと、を備える、通信装置。 【請求項27】 前記構造体の前記表面は、湾曲面を含み、 前記アンテナは、湾曲面に取り付けられている、請求項26に記載の通信装置。」 第3 特許異議の申立ての理由について 申立人は、証拠方法として、以下の甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出して、以下に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。 (証拠方法) 甲1:特開2018-81518号公報 甲2:実願昭62-115315号(実開昭64-21512号)のマイクロフィルム 甲3:国際公開第2019/116718号 甲4:特開2006-179946号公報 甲5:特開2018-82224号公報 (申立理由の概要) 申立理由1(進歩性) 本件発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲5に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項についての特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。(同法113条2号) 申立理由2(実施可能要件) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件発明4、5、8~11、及び21~27を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、当該請求項についての特許は特許法36条4項1号の規定に違反してなされたものである。(同法113条4号) 第4 甲号証の記載事項 1 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下、同様)。 (1)「【0001】 本発明は、透明膜を形成した際に気泡の残留防止効果等に優れた透明電極に関するものである。」 (2)「【0017】 A.第1実施態様 本発明の透明電極の第1実施態様は、上述の透明電極であって、金属線電極が透明膜である透明絶縁層により覆われて、センサ電極として用いられるものである。 【0018】 このような本態様の透明電極について図を参照して説明する。ただし、本態様はこれら形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさのため説明上不要な部分の図示や繰り返しとなる符号は省略することがある。 図1は、本態様の透明電極10の一例を表す斜視図であり、図2は図1のII-II線断面図である。また、図3は、図2の断面図のうち、1つの金属線12aに注目して表した拡大図である。 図1~図3に示すように、本態様の透明電極10は、透明基材11と、上記透明基材11の一方の面に配置された金属線12aが組み合わされてなる金属線電極12と、を備え、上記金属線電極12は、上記透明基材11に接する面である下面13、上記下面13とは反対側に配置され上記下面13と平行に形成され、上記下面13より幅が狭い上面14、及び、上記下面13と上記上面14とを結ぶ側面15、を備え、上記上面14と上記側面15とが形成する出隅部分には湾曲部14aを有するものである。 なお、図1~図3は、透明電極10が、透明膜20を有する例を示すものである。 【0019】 本態様によれば、上記形状の金属線電極を用いること、すなわち、金属線電極を構成する金属線の断面形状がテーパー角度θbの順テーパー形状であり、かつ、出隅部分が湾曲部であることにより、本態様の透明電極は、例えば、透明膜として透明絶縁層を形成した際の気泡の残留防止効果に優れたものとなる。 また、金属線電極が出隅部分に湾曲部を有することにより、出隅部分がエッジ部である場合と比較して、本態様の透明電極は、金属線電極の出隅部分に電荷が集中することによる不具合の少ないものとなる。 【0020】 ここで、上記形状とすることで、気泡の残留防止効果を発揮できる理由については以下のように推察される。 すなわち、例えば、透明絶縁層の形成方法として、予めシート状に加工された透明絶縁層を金属線電極表面に貼合する方法を用いる場合、一般的に、金属線電極表面に、シート状透明絶縁層を配置した状態でローラー等を押し当てながら、一方向(横側)から貼合する。 このため、例えば、金属線の断面形状が、その側面が90°等の切立った断面形状および逆テーパー形状の場合には、貼合した際に空気が抜けない部分が発生し、気泡となる。 また、透明絶縁層の形成方法として、透明絶縁層を形成可能な塗工液を塗布して形成する方法である場合も、シート状透明絶縁層の形成時と同様に、塗布された塗工液が金属線電極表面を覆うように広がる際に金属線の断面形状がその側面が90°等の切立った断面形状および逆テーパー形の場合には、空気が抜けない部分が発生し、気泡となる。 これに対して、金属線の断面形状が順テーパー形状であること、さらには、出隅部分が湾曲部であり、出隅部分において見かけ上さらに側面のテーパー角度を小さいものとすることで、シート状透明絶縁層を押し当てる際または塗工液が金属線電極表面を覆うように広がる際に、空気が逃げやすくなる。その結果、上記形状であることにより、本態様の透明電極は気泡発生を抑制できると推察される。」 (3)図1 [図:0001409171000001.jpg] (4)図2 [図:0001409171000002.jpg] (5)図3 [図:0001409171000003.jpg] 図3によれば、金属線12aの側面は、湾曲部13a、側面15、及び湾曲部14aにより構成され、湾曲部13aは下面13との接続点を有し、湾曲部14aは上面14との接続点を有している。また、湾曲部13aは内側に向かって凸となる湾曲面となっており、断面図において、湾曲部13aの下面13との接続点と、湾曲部14aの上面14との接続点とを通る仮想的な直線より、湾曲部13aの一部は内側に位置していると認められる。 (6)「【0030】 また、金属線電極を構成する金属線の断面形状、すなわち、金属線においてその延在方向(長手方向)と直交する面で切断した断面(以下、主切断面とも言う)の形状は、透明基材に接する面である下面、上記下面とは反対側に配置され上記下面と平行に形成され、上記下面より幅が狭い上面、及び、上記下面と上記上面とを結ぶ側面、を備え、上記上面と上記側面とが形成する出隅部分には湾曲部を有している。 ここで、本態様においては、下面、上面、及び側面は、既に説明した図3に破線で示したように、次に説明する出隅部分の湾曲部14a及び入隅部分の湾曲部13aを考慮しない形態において、上面14の幅(Wu)は、下面13の幅(Wb)に比べて短く形成されるとともに、側面15が下面13と成す角θbは鋭角、すなわち90°より小さくなるように構成されている。 すなわち、上記金属線電極は、断面形状がテーパー角度θbの順テーパー形状であり、かつ、出隅部分が湾曲部である金属線により形成されるものである。 なお、出隅部分とは、上記上面および上記側面が交わる角部のみを含むものではなく、金属線の断面形状において、上記上面および上記側面により形成され、金属線から外側に向かって凸状に形成された角部の周辺部位も含むものである。 【0031】 上記上面の幅(Wu)は、例えば、0.5μm~18μmの範囲内とすることができ、0.5μm~7μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5μm~5μmの範囲内であることが好ましい。 また、上記下面の幅(Wb)は1μm~20μmの範囲内とすることができ、1μm~10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1μm~7μmの範囲内であることが好ましい。上記幅WuおよびWbが上述の範囲内であることにより、本態様の透明電極は、透明性に優れたセンサ電極として使用可能となるからである。 上記テーパー角度(θb)は、金属線に要求される幅や厚み等の仕様に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、80°以下とすることができ、45°以下であることが好ましく、なかでも、30°以下であることが好ましい。上記角θbが上述の範囲内であることで、本態様の透明電極は、透明性に優れたセンサ電極として使用可能となるからである。また、上記透明電極は、気泡の残留防止効果に優れたものとなるからである。 なお、上記テーパー角度(θb)の下限については、気泡の残留防止の観点からは低いほど好ましいが、例えば、10°以上とすることができる。 【0032】 尚、側面が下面と成す角θbは、以下の(1)~(3)の何れかにより求める。 (1)主切断面において側面をなす線に、厚み方向の中央付近に傾斜が一定で直線と見做せる部分が有る場合は、該直線部分の延長線と下面とのなす角度を以ってθbとする。 (2)該主切断面の側面をなす線に、厚み方向中央付近に直線と見做せる部分が無い場合で、且つ側面をなす線に変曲点と見做せる部分が有る場合は、該変曲点における接線の延長線と下面とのなす角度を以ってθbとする。 (3)該主切断面の側面をなす線に、厚み方向中央付近に直線と見做せる部分が無い場合で、且つ側面に変曲点と見做せる部分が無い場合は、該側面をなす線の下面との接点と上面との接点との間を最小二乗法等により該線の各部分の傾斜角を平均化した平均傾斜角を持つ仮想的直線を求め、該直線と下面とのなす角度を以ってθbとする。 本態様においては、上記(1)~(3)における、中央付近の直線部の延長線、変曲点の延長線、或いは平均傾斜角仮想的直線の何れかの直線に対して、下面近傍において側面(をなす線)が該直線よりも金属線に対して外側に突出する部分から入隅部分の湾曲部が構成される。 【0033】 上面と側面とにより形成される出隅部分では、側面角度が、下面側から上面まで、漸減する湾曲部が設けられている。 ここで、側面角度とは、主切断面で側面上の任意の点が、傾斜が一定で直線とみなせる直線部上である場合には、その直線の延長線と、下面とのなす角度をいい、主切断面で側面上の任意の点が、曲線上である場合には、その曲線上の点における接線の延長線と、下面とのなす角度をいうものである。 上記湾曲部としては、必ずしも主切断面形状が円弧で近似できる形状とされなくてもよく、例えば、既に説明した図3、図4(a)および(b)に例示するように、側面角度が下面側から上面まで連続的に減少する円弧状の曲線により形成された曲線部、図4(c)~(f)に例示するように、側面が下面側から上面まで、側面角度が段階的に減少する直線の組み合わせにより形成された多段テーパー形状を有する場合の、下面側から2段目以降の順テーパー部により形成されたテーパー部とすることができる。 また、上記湾曲部の厚み方向の形成箇所については、例えば、既に説明した図3、図4(a)、(e)に例示するように、厚み方向の中央より上面側から上面までの間であってもよく、図4(c)、(d)に例示するように、厚み方向の中央から上面までの間であってもよく、図4(b)、(f)に例示するように、厚み方向の中央より下面側から上面までの間であってよい。なお、図4(b)は、上記形成箇所が下面から上面までの間である例を示すものである。 すなわち、上記湾曲部の厚み方向の下面側端部は、図3、図4(a)、(c)、(d)、(e)、(f)のように、下面および上面の間であってもよく、図4(b)のように下面であってもよい。 【0034】 上記湾曲部が曲線部である場合、この出隅部分の湾曲部の曲率半径Ruは、透明導電膜を形成した際の断線防止効果、金属線に要求される導電性、金属線製造の製造容易性等を勘案して決めればよい。 上記曲率半径Ruの大きさは、0.1μm以上とすることができ、0.5μm以上であることが好ましく、特に、1.0μm以上であることが好ましい。上記曲率半径Ruが上述の範囲内であることで、金属線電極は、透明導電膜の断線防止効果等に優れたものとなるからである。 上記曲率半径Ruの上限は特に限定は無く、透明導電膜を形成した際の断線防止効果、金属線に要求される導電性、金属線製造の製造容易性等を勘案して決めればよいが、通常10μm程度以下とすることができる。 【0035】 上記湾曲部がテーパー部である場合、湾曲部の段数としては、1段以上であればよい。すなわち、湾曲部としてテーパー部が形成される場合、側面は、2段以上の多段テーパー形状であればよい。 なお、テーパー部を構成する各段の順テーパー部の直線の長さとしては、0.1μm以上とすることができ、0.2μm~10μmの範囲内であることが好ましい。上記各段の直線の長さが上記範囲内であることにより、金属線電極を覆うように形成される透明導電膜を形成した際の気泡の残留防止効果等が優れたものとなるからである。 また、本発明における湾曲部の段数としては、多いほど好ましいため、特に限定されるものではないが、例えば、1段~10段の範囲内とすることができる。 なお、図4(c)、(e)は、湾曲部が1段のテーパー部であり、図4(d)は、湾曲部が2段のテーパー部であり、図4(f)は、湾曲部が3段のテーパー部である例を示すものである。 また、各段の順テーパー部の直線の長さとしては、具体的には、図4(c)および(d)中のdで示される平面視上の長さとすることができる。 【0036】 また、透明基材と側面とにより形成される入隅部分には、必須では無いが、湾曲部が設けられることが好ましい。該湾曲部は必ずしも主切断面形状が円弧で近似できる形状とされ無くても良く、製造加工条件如何で様様な主切断面形状とすることができる。該主切断面形状が円弧で近似できる場合は、この入隅部分の曲率半径Rbの大きさは例えば、0.1μm以上、好ましくは1μm以上とすることができる。該曲率半径Rbの上限は特に限定は無く、透明膜としての透明絶縁層中の気泡の残留防止効果、金属線の要求される導電性、金属線製造の製造容易性等を勘案して決めればよいが、通常50μm程度以下とされる。」 (7)図4 [図:0001409171000004.jpg] (8)「【0038】 上記金属線電極は、必要に応じて、金属線電極表面における日光、照明光等の反射を抑制する為に、金属線電極を構成する金属線の外表面である下面、上面、及び側面のうちの何れか1面、2面、或いは3面の表面に可視光線反射率の低い暗色の外観を呈する暗色層(図示は略)を形成してもよい。暗色層の色調としては黒色、濃灰色のような無彩色の他、褐色、紺色、臙脂色、深緑、濃紫色等の低彩度有彩色としてもよい。 これら暗色層の材料としては、酸化銅(II)〔CuO〕、窒化銅(Cu3N)、銅-コバルト合金等公知の物の中から選択することができる。 暗色層の厚みは、所望の反射抑制効果を奏する範囲内であれば特に制限は無いが、通常、0.01μm~2μm程度とすることができる。 【0039】 なお、本態様の透明電極は、変形形態として、金属線電極の周辺部、或いは金属線電極の内部の一部に、所定の外輪郭形状を有し内部は格子形状に区画され無い金属層(開口部の無いベタ部)を有していもよい。或いは別の変形形態として、金属線電極自体が全て、所定の外輪郭形状を有し内部は格子形状に区画され無い金属層から形成されていてもよい。本態様においては、このような変形形態における所定の外輪郭形状を有し内部が格子形状に区画され無い金属層の外輪郭部分において、その周囲の外輪郭部の側面の主切断面形状が図3の如く、出隅部分の湾曲部14a及び入隅部分の湾曲部13aを有し、上面14の幅(Wu)が下面13の幅(Wb)に比べて短く形成されるとともに、側面15が下面13と成す角θbが鋭角をなすように構成することもできる。 【0040】 上記金属線電極は、上記透明基材の少なくとも一方の面に配置されるものであればよく、例えば、既に説明した図1および図2に例示するように、透明基材11の一方の面のみに配置されるものであってもよく、図5に例示するように、透明基材11の両面に配置されるものであってもよい。 なお、図5は、透明電極10が、透明基材11の両面に配置された金属線電極12を覆うように、透明基材11の両面に配置された透明膜20を有する例を示すものである。 【0041】 3.透明膜 本態様の透明電極は、透明基材および金属線電極を有するものであるが、必要に応じて、上記金属線電極の上記透明基材とは反対側の面を覆うように積層される透明膜として、透明絶縁層を有するものとすることができる。 上記透明膜として透明絶縁層を有することにより、本態様の透明電極は、センサ電極として容易使用可能となるからである。 【0042】 上記透明絶縁層は、金属線電極を覆うように形成される層であり、透明性を有する材料により構成されている。 透明絶縁層の具体的な材料としては、透明電極が適用される機器により適宜選択することができるが、これには例えば粘着剤を挙げることができる。 上記粘着剤としては、いわゆる光学透明粘着剤(OCA)として用いられるものを使用することができ、より具体的には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、桂皮酸エステル系樹脂、スチレン系樹脂、ゴム系樹脂、ビニル樹脂等の樹脂材料が挙げられる。 これらの材料は、透明絶縁層とした際に可視光線透過率が80%以上となるものが好ましく、90%以上となるものがより好ましい。 これらの材料の中から、本態様の透明電極の用途、要求物性(透明絶縁層表面の耐擦傷性等)に応じて適宜材料を選択する。 【0043】 透明絶縁層の厚さは、透明電極が適用される機器により適宜選択することができる。 また、透明絶縁層は金属線電極に接する側とは反対側の面は平坦に形成されているが、これに限らず、透明絶縁層も金属線電極の凹凸に合わせて凹凸を有して形成されてもよい。」 (9)「【0058】 5.用途 本態様の透明電極の用途としては、金属線電極が透明膜として透明絶縁層により覆われて、センサ電極として用いられるものであればよく、画像表示装置の画面上に設置するタッチパネル用電極および電磁波遮蔽層の用途、画像表示裝置、色素増感太陽電池等に用いられる透明電極の用途、自動車の窓、建築物の窓等に設置する各種電波の送受信用の透明アンテナの用途、自動車の窓、建築物の窓等に設置する霜取りまたは防曇用透明加熱電極の用途等を挙げることができる。」 (10)甲1に記載された発明 前記(1)~(9)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa~oに分説し、「分説a」などのようにして参照する。 「a 透明膜を形成した際に気泡の残留防止効果等に優れた透明電極であって、(【0001】) b 透明電極10は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に配置された金属線12aが組み合わされてなる金属線電極12と、を備え、金属線電極12は、透明基材11に接する面である下面13、下面13とは反対側に配置され下面13と平行に形成され、下面13より幅が狭い上面14、及び、下面13と上面14とを結ぶ側面15、を備え、上面14と側面15とが形成する出隅部分には湾曲部14aを有するものであり、(【0018】) c 金属線電極を構成する金属線の断面形状がテーパー角度θbの順テーパー形状であり、かつ、出隅部分が湾曲部であることにより、透明膜として透明絶縁層を形成した際の気泡の残留防止効果に優れたものとなり、(【0019】) d 金属線の断面形状が順テーパー形状であること、出隅部分が湾曲部であり、出隅部分において見かけ上さらに側面のテーパー角度を小さいものとすることで、シート状透明絶縁層を押し当てる際または塗工液が金属線電極表面を覆うように広がる際に、空気が逃げやすくなり、その結果、気泡発生を抑制でき、(【0020】) e1 金属線12aの側面は、湾曲部13a、側面15、及び湾曲部14aにより構成され、湾曲部13aは下面13との接続点を有し、湾曲部14aは上面14との接続点を有しており、(図3) e2 湾曲部13aは内側に向かって凸となる湾曲面となっており、断面図において、湾曲部13aの下面13との接続点と、湾曲部14aの上面14との接続点とを通る仮想的な直線より、湾曲部13aの一部は内側に位置しており、(図3) f1 主切断面において側面をなす線に、厚み方向の中央付近に傾斜が一定で直線と見做せる部分が有る場合は、該直線部分の延長線と下面とのなす角度を以ってθbとし、(【0032】) f2 該主切断面の側面をなす線に、厚み方向中央付近に直線と見做せる部分が無い場合で、且つ側面をなす線に変曲点と見做せる部分が有る場合は、該変曲点における接線の延長線と下面とのなす角度を以ってθbとし、(【0032】) f3 該主切断面の側面をなす線に、厚み方向中央付近に直線と見做せる部分が無い場合で、且つ側面に変曲点と見做せる部分が無い場合は、該側面をなす線の下面との接点と上面との接点との間を最小二乗法等により該線の各部分の傾斜角を平均化した平均傾斜角を持つ仮想的直線を求め、該直線と下面とのなす角度を以ってθbとし、(【0032】) f4 中央付近の直線部の延長線、変曲点の延長線、或いは平均傾斜角仮想的直線の何れかの直線に対して、下面近傍において側面(をなす線)が該直線よりも金属線に対して外側に突出する部分から入隅部分の湾曲部が構成され、(【0032】) g1 上面と側面とにより形成される出隅部分では、側面角度が、下面側から上面まで、漸減する湾曲部が設けられており、(【0033】) g2 湾曲部としては、必ずしも主切断面形状が円弧で近似できる形状とされなくてもよく、 g2a 側面角度が下面側から上面まで連続的に減少する円弧状の曲線により形成された曲線部、 g2b 側面が下面側から上面まで、側面角度が段階的に減少する直線の組み合わせにより形成された多段テーパー形状を有する場合の、下面側から2段目以降の順テーパー部により形成されたテーパー部 g2 とすることができ、(【0033】) g3 湾曲部の厚み方向の形成箇所については、厚み方向の中央より上面側から上面までの間であってもよく、厚み方向の中央から上面までの間であってもよく、厚み方向の中央より下面側から上面までの間であってよく、(【0033】) h 湾曲部としてテーパー部が形成される場合、側面は、2段以上の多段テーパー形状であればよく、(【0035】) i 透明基材と側面とにより形成される入隅部分には、湾曲部が設けられ、(【0036】) j 金属線電極は、金属線電極表面における日光、照明光等の反射を抑制する為に、金属線電極を構成する金属線の外表面である下面、上面、及び側面の3面の表面に可視光線反射率の低い暗色の外観を呈する暗色層を形成してもよく、暗色層の色調としては黒色、濃灰色のような無彩色の他、褐色、紺色、臙脂色、深緑、濃紫色等の低彩度有彩色としてもよく、これら暗色層の材料としては、酸化銅(II)〔CuO〕、窒化銅(Cu3N)、銅-コバルト合金等公知の物の中から選択することができ、(【0038】) k 透明電極10が、透明基材11の両面に配置された金属線電極12を覆うように、透明基材11の両面に配置された透明膜20を有し、(【0040】) l 金属線電極の透明基材とは反対側の面を覆うように積層される透明膜として、透明絶縁層を有し、(【0041】) m 透明絶縁層は金属線電極に接する側とは反対側の面は平坦に形成されているが、これに限らず、透明絶縁層も金属線電極の凹凸に合わせて凹凸を有して形成されてもよく、(【0043】) n 透明電極の用途は、自動車の窓、建築物の窓等に設置する各種電波の送受信用の透明アンテナである、(【0058】) o 透明電極。」 2 甲2の記載事項 甲2には、次の事項が記載されている。 (1)1頁10行~2頁19行 「(考案の技術分野) この考案は、電波(SHF,UHF,VHF,FM,AM等)の送受信用室内装飾アンテナに使用されるフイルムアンテナに関する。 (技術的背景と解決すべき問題点) 近年、電波(SHF,UHF,VHF,FM,AM等)の送受信用室内アンテナとしてプラスチックフイルムを使用したフイルムアンテナが出現している。 第2図(A)は上記フイルムアンテナ10の外観を示し、同図(B)はそのX-X断面外観を、同図(C)はその電波受信用低抵抗回路パターン3の様子を示している。 このフイルムアンテナ10は電気絶縁性支持体2上に金属膜を形成し、この金属膜にエッチング加工を施して電波受信用低抵抗回路パターン3を形成した後、回路パターン3の保護として上部に電気絶縁性樹脂の絶縁コート4を施している。更に、意匠性効果を持たせるため表面に絵柄インキ7で絵柄(ここでは花の絵)が描かれた紙類,フイルム類,布類等で成る絵柄支持体6を接着層5で上記絶縁コート4上に接着するようにしている。しかし、このようなフイルムアンテナ10は絵柄支持体6の貼合せコストがかかる欠点がある。その上、上述のような構造では湿度,気温等の変化の際、伸縮が発生し上記回路パターン3にも影響を及ぼしてしまいアンテナとしての電気的機能を損なう原因となっていた。」 (2)4頁1行~5頁20行 「(考案の実施例) 第1図(A)はこの考案の一実施例であるフイルムアナテナ1の外観を示し、同図(B)はそのX-X断面概略を示している。同図において、第3図(A)~(C)と同部材について同一符号を付して説明する。 このフイルムアンテナ1には表面抵抗が1012Ω以上のプラスチックフイルム,ガラス,合成紙等が電気絶縁性支持体2として使用され、この表面に金属箔のラミネート,金属蒸着,スパッタ,メッキ等により金属薄膜層を形成させた後、エッチング方法で形成させた電波受信用低抵抗回路パターン3が設けられている。そして、回路パターン3の表面には回路パターン3の保護及び意匠性効果を付与するため、塗布後熱乾燥,UV乾燥を施した後表面電気抵抗が1012Ω以上のを絵柄インキ層8を形成する。この絵柄インキ層8は隠ペイ性を出すため厚さ5μ以上として、スミインキにはグラファイト,カーボン系を除くものを使用する。このように回路パターン3上に直接絶縁コートを兼用した絵柄インキ層8で絵柄を描くことで絵柄支持体が不要となる。 次にフイルムアンテナ1の製法について説明する。 まず、電気絶縁性支持体2としてポリエステルフイルム(例えば、東レ(株)製ルミラーS(厚さ100μ)にウレタン系接着剤(例えば武田薬品工業(株)製A515/A-3)を6g/m2dryの条件で塗布し、この上に軟質アルミ箔(例えば東洋アルミ(株)製(厚さ15μ))をドライラミネートする。このように処理された軟質アルミ箔の上にUV型レジストインキ(例えば東洋紡(株)製ER110N)を使用してアンテナパターンをレジストコートした後、UV露光,現像をし、40ボーメFeCl3水溶液中でエッチングを施し、水洗して更に3%NaOH溶液でレジストインキを剥膜させて回路パターン3を形成する。その後回路パターン3の上に絵柄インキとしてセリコールSG及びスミインキは例えばセリコールSGDNPウェルダー用(帝国インキ(株)製)を使用して絵柄インキ層8を形成しフイルムアンテナ1を得る。」 (3)甲2に記載された技術事項 前記(1)及び(2)の記載によれば、甲2には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「電波の送受信用室内装飾アンテナに使用されるフイルムアンテナに関して、 フイルムアンテナ1には、プラスチックフイルム、ガラス、合成紙等が電気絶縁性支持体2として使用され、この表面に電波受信用低抵抗回路パターン3が設けられており、 回路パターン3の表面には回路パターン3の保護及び意匠性効果を付与するため、絵柄インキ層8を形成し、 絵柄インキ層8は隠ペイ性を出すため厚さ5μ以上として、スミインキにはグラファイト、カーボン系を除くものを使用し、 このように回路パターン3上に直接絶縁コートを兼用した絵柄インキ層8で絵柄を描くことで絵柄支持体が不要となること。」 3 甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 (1)「[0054] (第2実施形態) 本発明の第2実施形態においては、上部アンテナ素子が逆テーパー形状を有する。 [0055] 図2は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ付き基板の一例を模式的に示す断面図である。 図2には全体的な構成が示されていないが、アンテナ付き基板2は、基板層10と、基板層10に配置された下部アンテナ素子20と、基板層10の上面に積層されたアンテナ保持層30と、アンテナ保持層30に配置された上部アンテナ素子41と、を備える。上部アンテナ素子41は、下部アンテナ素子20の上面に対向して設けられている。 [0056] 図2に示すように、アンテナ保持層30は、上部アンテナ素子41の上面を覆う第1のアンテナ保持層31と、上部アンテナ素子41の下面を覆う第2のアンテナ保持層32と、を含むことが好ましい。第1のアンテナ保持層31は、第2のアンテナ保持層32と同じ材料から構成される。 [0057] 図2に示すアンテナ付き基板2では、上部アンテナ素子41は、上面の面積が下面の面積よりも小さい逆テーパー形状を有している。 上部アンテナ素子が逆テーパー形状を有していると、楔効果によって、上部アンテナ素子の上方への抜けを抑制することができる。そのため、アンテナ特性及び信頼性がさらに向上する。 [0058] 図2に示すアンテナ付き基板2は、上部アンテナ素子41が逆テーパー形状を有することを除いて、図1に示すアンテナ付き基板1と共通の構成を有している。 [0059] 本発明の第1実施形態で説明したように、上部アンテナ素子は、例えば、フォトリソグラフィによって形成される。この場合、銅箔をエッチングする際に、逆テーパー形状を有する上部アンテナ素子を容易に形成することができる。 [0060] また、上部アンテナ素子が逆テーパー形状を有していると、上部アンテナ素子を形成した後に誘電フィルム(アンテナ保持層)を積層する際、エア噛みが生じにくくなる。そのため、安価な設備であっても積層可能となり、製造コストを削減することができる。 [0061] 本発明の第2実施形態に係るアンテナ付き基板では、上部アンテナ素子の上面の面積が下面の面積よりも小さい限り、上部アンテナ素子の形状は特に限定されない。例えば、上部アンテナ素子の上面の面積は、下面の面積の70%以上、90%以下であることが好ましい。 [0062] 本発明の第2実施形態に係るアンテナ付き基板では、下部アンテナ素子及び上部アンテナ素子がそれぞれ複数のパターンから構成されていてもよいし、1つのパターンから構成されていてもよい。いずれの場合においても、下部アンテナ素子と上部アンテナ素子とは、厚み方向から見て重なるように配置されることが好ましい。下部アンテナ素子及び上部アンテナ素子がそれぞれ複数のパターンから構成されている場合、全ての上部アンテナ素子が逆テーパー形状を有することが好ましい。上部アンテナ素子の形状は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。 [0063] 本発明の第2実施形態に係るアンテナ付き基板において、上部アンテナ素子は、上面の表面粗さが下面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。」 (2)図2 [図:0001409171000005.jpg] (3)甲3に記載された技術事項 前記(1)及び(2)の記載によれば、甲3には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「アンテナ付き基板2は、基板層10と、基板層10に配置された下部アンテナ素子20と、基板層10の上面に積層されたアンテナ保持層30と、アンテナ保持層30に配置された上部アンテナ素子41と、を備え、 アンテナ保持層30は、上部アンテナ素子41の上面を覆う第1のアンテナ保持層31と、上部アンテナ素子41の下面を覆う第2のアンテナ保持層32と、を含み、 上部アンテナ素子41は、上面の面積が下面の面積よりも小さい逆テーパー形状を有しており、上部アンテナ素子が逆テーパー形状を有していると、楔効果によって、上部アンテナ素子の上方への抜けを抑制することができ、そのため、アンテナ特性及び信頼性がさらに向上し、 上部アンテナ素子が逆テーパー形状を有していると、上部アンテナ素子を形成した後に誘電フィルム(アンテナ保持層)を積層する際、エア噛みが生じにくくなり、そのため、安価な設備であっても積層可能となり、製造コストを削減することができること。」 4 甲4の記載事項 甲4には、次の事項が記載されている。 (1)「【0030】 図5には、本発明の電磁波シールド基材を光学フィルタに適用した第1の実施形態が示されている。図5に示された第1の実施形態は、透明基材1の片方の面に、粘着剤7によりPET(Polyethylene terephthalate )フィルムが張り付けられたPETフィルム層6が形成され、PETフィルム層6の上面には接着剤4によりパターン化された銅箔が接着された銅パターン層8が形成され、銅パターン層8の上面には粘着剤7によりアンチグレア、または反射防止及びアンチグレアの機能を有する透明フィルムが張り付けられた透明フィルム層9が形成されている。また、透明基材1のもう片方の面には粘着剤4により反射防止、または反射防止及びアンチグレアの機能を有する透明フィルムが張り付けられた透明フィルム層10が形成されている。」 (2)図5 [図:0001409171000006.jpg] (3)甲4に記載された技術事項 前記(1)及び(2)の記載によれば、甲4には、以下の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「電磁波シールド基材を適用した光学フィルタにおいて、 透明基材1の片方の面に、粘着剤7によりPETフィルムが張り付けられたPETフィルム層6が形成され、PETフィルム層6の上面には接着剤4によりパターン化された銅箔が接着された銅パターン層8が形成され、銅パターン層8の上面には粘着剤7により透明フィルム層9が形成されていること。」 5 甲5の記載事項 甲5には、次の事項が記載されている。 (1)「【0016】 <実施例1> 図1は、実施例1に係るアンテナ装置1を概略的に示した図である。本実施例に係るアンテナ装置1は、第1誘電体基板11と第2誘電体基板12と第3誘電体基板13と第4誘電体基板14と第1パッチ電極15と第2パッチ電極16とグランド電極17とを備える。アンテナ装置1が備える各構成要素は、例えば、それぞれ、略平行に配置されている。また、第3誘電体基板13とグランド電極17との間には、空気層Gが設けられている。以下に、アンテナ装置1が含む各構成要素について図2を参照しながら説明する。 【0017】 図2は、アンテナ装置1が含む各構成要素を分解して示した図である。第1誘電体基板11は、厚みがt1であり、上面11a及び下面11bを有する方形の板状部材である。第2誘電体基板12は、厚みがt2であり、上面12a及び下面12bを有する方形の板状部材である。第3誘電体基板13は、厚みがt3であり、上面13a及び下面13bを有する方形の板状部材である。第4誘電体基板14は、上面14a及び下面14bを有する方形の板状部材である。 【0018】 第1誘電体基板11、第2誘電体基板12、第3誘電体基板13及び第4誘電体基板14の材料は、FR4、アクリル、テフロン(登録商標)等である。各基板には、好適には、ガラスエポキシ樹脂を材料としたプリント基板が用いられるが、アクリル板、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを重合させて形成される樹脂)、ガラス板等の誘電体を用いてもよい。 【0019】 各基板の寸法LSは、グランド電極17の寸法Lより若干大きく、アンテナ装置1の使用周波数において十分な大きさを取る必要がある。換言すると、各基板の寸法LSは、第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16の寸法よりも十分広い。各基板の寸法LSは、理想的にはパッチ電極の寸法の2倍以上の大きさとすることが望ましい。ただし、アンテナ装置1の小型化を重視する場合はさらに小さくしてもよい。各基板の寸法LSは、例えば、使用周波数が1GHz程度の場合、100~300mm程度が好適である。 【0020】 第1誘電体基板11と第2誘電体基板12と第3誘電体基板13と第4誘電体基板14とのそれぞれは、大きさが異なる構成にすることも可能である。この場合、グランド電極17を配置する第4誘電体基板14の寸法を上記の例に従ってパッチ電極の寸法の2倍を目安に設定し、第1誘電体基板11、第2誘電体基板12及び第3誘電体基板13は、第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16を配置できる寸法であればそれよりも小さくしてもよい。 【0021】 第1パッチ電極15は、上面15a及び下面15bを有する円形の薄い板状部材又は薄膜で構成される。第2パッチ電極16は、上面16a及び下面16bを有する円形の薄い板状部材又は薄膜で構成される。第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16の外径L1及びL2は、通常のパッチアンテナと同様、無線システムの搬送波周波数によって決定される。一般に、パッチ電極の一辺の長さは、搬送波周波数の1/2波長の長さに基づいて設定されることが多い。 【0022】 自由空間での波長に基づけば、パッチ電極の一辺の長さは、例えば920MHz帯の場合で140mm程度であり、1.6GHz帯の場合で78mm程度である。ただし、アンテナ装置1は、各電極を支持する誘電体基板の誘電率の影響による波長短縮を受けるため、実際のパッチ電極の寸法は、上述の自由空間での波長に基づいた寸法よりも数%~数十%程度小さくなる。 【0023】 本実施例において、第1パッチ電極15の外径L1は第2パッチ電極16の外径L2よりも小さい。換言すると、第1パッチ電極15が受信又は放射する電磁波の波長は、第2パッチ電極16が受信又は放射する電磁波の波長よりも短い。或いは、第1パッチ電極15が受信又は放射する電磁波の周波数は、第2パッチ電極16が受信又は放射する電磁波の周波数よりも高い。 【0024】 第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16の形状は、所望の特性が得られるのであれば、円形以外の形状でもよい。第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16の形状は、例えば、正n角形(nは4以上)でもよい。第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16は、銅、アルミニウム、金等の板状部材又は薄膜として形成される。 【0025】 グランド電極17は、上面17a及び下面17bを有する方形の薄い板状部材又は薄膜である。グランド電極17は、銅、アルミニウム、金等の板状部材又は薄膜として形成される。グランド電極17は、第4誘電体基板14の上面14aの略全面に形成される。従って、グランド電極17の平面視の大きさは、第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16の平面視の大きさに比べて大きい。空気層Gは厚さがdgであり、例えばアンテナ装置の4隅にポールを設けて第3誘電体基板13とグランド電極17を離間することによって設けられる。誘電体層の実効誘電率は、空気層Gを設けることによって調節することができる。 【0026】 図3は、アンテナ装置1のyz平面と平行な面における断面図である。図3に示すように、第1誘電体基板11の下面11bと第2誘電体基板12の上面12aとは接しており、第1パッチ電極15は第1誘電体基板11と第2誘電体基板12との間に挟まれている。第2誘電体基板12の下面12bと第3誘電体基板13の上面13aとは接しており、第2パッチ電極16は第2誘電体基板12と第3誘電体基板13との間に挟まれている。 【0027】 グランド電極17は、空気層Gを介して第3誘電体基板13の下面13bと対向する。グランド電極17は、第4誘電体基板の上面14aを覆うように配置されている。本実施例では、グランド電極17は、第4誘電体基板の上面14aと接しているが、グランド電極17は第4誘電体基板の上面14aと離間していてもよい。」 (2)図1 [図:0001409171000007.jpg] (3)図3 [図:0001409171000008.jpg] (4)甲5に記載された技術事項 前記(1)~(3)の記載によれば、甲5には、以下の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「アンテナ装置1は、第1誘電体基板11と第2誘電体基板12と第3誘電体基板13と第4誘電体基板14と第1パッチ電極15と第2パッチ電極16とグランド電極17とを備え、 グランド電極17の平面視の大きさは、第1パッチ電極15及び第2パッチ電極16の平面視の大きさに比べて大きいこと。」 第5 申立理由1(進歩性)についての判断 1 本件発明1について 後の参照の便宜のため、次に示すように、本件発明1を、1A~1Gに分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。 「【請求項1】 1A: 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 1B: 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 1C: 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 1D: 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 1E: 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 1F: 前記第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え、 1G: 前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも内側に位置する内側湾曲面を含む、アンテナ。」 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 発明特定事項1Aについて 甲1発明の「透明基材11」及び「透明基材11の一方の面」(分説b)は、それぞれ本件発明1の「基材」及び「第1面」に相当する。 また、甲1発明の「透明基材11」が、「透明基材11の一方の面」とは反対側に他方の面を有することは明らかであり、甲1発明の「透明基材11」の他方の面は、本件発明1の「第2面」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材」を備える点で一致する。 イ 発明特定事項1Bについて (ア)甲1発明の「金属線電極12」(分説b)は、金属により構成される電極であるから、導電性を有する。そして、「金属線電極12」は、「透明基材11の一方の面に配置された金属線12aが組み合わされてなる」ものである(分説b)から、「金属線電極12」は「透明基材11の一方の面」に配置されており、「透明基材11」上に形成された導電体の層であるといえる。 したがって、甲1発明の「金属線電極12」は、本件発明1の「第1導電体層」に相当する。 (イ)甲1発明の「金属線電極12」が備える「下面13」及び「上面14」(分説b)は、それぞれ本件発明1の「第3面」及び「第4面」に相当する。 また、甲1発明では、「金属線電極12」は「透明基材11の一方の面」に配置されており(前記(ア))、「金属線電極12」の「下面13」は「透明基材11に接する面である」(分説b)から、甲1発明の「下面13」は「透明基材11の一方の面」に対向している。また、「上面14」は「下面13とは反対側に配置」される(分説b)から、「下面13」の反対側に位置している。 (ウ)甲1発明では、「金属線12aの側面は、湾曲部13a、側面15、及び湾曲部14aにより構成」される(分説e1)から、甲1発明の「湾曲部13a」、「側面15」、及び「湾曲部14a」は、本件発明1の「第1側面」に相当する。 また、甲1発明では、「金属線電極12」は「金属線12a」からなる(分説b)から、「金属線12a」の側面である「湾曲部13a」、「側面15」、及び「湾曲部14a」は、「金属線電極12」の側面であり、「金属線電極12」の「下面13」と「上面14」の間に位置しているといえる。 (エ)前記(イ)及び(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層」を備える点で一致する。 ウ 発明特定事項1Cについて (ア)甲1発明では、「透明膜20」が「金属線電極12を覆うように、透明基材11の両面に配置」され(分説k)、また、「透明膜として、透明絶縁層を有」する(分説l)から、甲1発明の「透明膜20」は、「金属線電極12」や「透明基材11」の面をカバーする層であるといえる。 したがって、甲1発明の「透明膜20」は、本件発明1の「第1カバー層」に相当する。 (イ)甲1発明の「透明膜20」は、「金属線電極12を覆うように、透明基材11の両面に配置」される(分説k)から、「金属線電極12」の「上面14」及び「側面15」を覆っていると認められる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層」を備える点で一致する。 エ 発明特定事項1Dについて 甲1発明の「湾曲部13a」が有する「下面13との接続点」(分説e1)は、本件発明1の「第3面に接続されている第1端」に相当する。また、甲1発明の「湾曲部14a」が有する「上面14との接続点」(分説e1)は、本件発明1の「第4面に接続されている第2端」に相当する。 また、前記イ(ウ)のとおり、甲1発明の「湾曲部13a」、「側面15」、及び「湾曲部14a」は、本件発明1の「第1側面」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含」む点で一致する。 オ 発明特定事項1Eについて 甲1発明では、「上面14」は「下面13より幅が狭」く(分説b)、「金属線電極を構成する金属線の断面形状」は「順テーパー形状」である(分説c)、すなわち、「上面14」から「下面13」に向かって外側に広がる断面形状となっているから、「湾曲部13a」の「下面13」との接続点は、平面視において、「湾曲部14a」の「上面14」との接続点よりも外側に位置していると認められる。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置して」いる点で一致する。 カ 発明特定事項1Fについて 甲1発明では、「金属線電極を構成する金属線の外表面である下面、上面、及び側面の3面の表面に可視光線反射率の低い暗色の外観を呈する暗色層を形成」する(分説j)から、「金属線電極12」の表面に「暗色層」が形成されると認められるが、「透明膜20」が着色剤を含む着色層を備えることは特定されていない。 キ 発明特定事項1Gについて (ア)甲1発明では、「湾曲部13aは内側に向かって凸となる湾曲面となっており、断面図において、湾曲部13aの下面13との接続点と、湾曲部14aの上面14との接続点とを通る仮想的な直線より、湾曲部13aの一部は内側に位置」している(分説e2)。 したがって、甲1発明の「湾曲部13aの一部」は、本件発明1の「内側湾曲面」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも内側に位置する内側湾曲面」を含む点で一致する。 (イ)甲1発明では、「透明電極の用途は、自動車の窓、建築物の窓等に設置する各種電波の送受信用の透明アンテナ」(分説n)である。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも内側に位置する内側湾曲面を含む、アンテナ」である点で一致する。 ク 一致点及び相違点 前記ア~キによれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材と、 前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面と、前記第3面と前記第4面の間に位置する第1側面と、を含む第1導電体層と、 前記第4面及び前記第1側面を覆う第1カバー層と、を備え、 前記第1側面は、前記第3面に接続されている第1端と、前記第4面に接続されている第2端と、を含み、 前記第1端は、平面視において前記第2端よりも外側に位置しており、 前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも内側に位置する内側湾曲面を含む、アンテナ。」 <相違点> 本件発明1では、「第1カバー層は、着色剤を含む第1着色層を備え」るのに対して、甲1発明では、「金属線電極12」の表面に「暗色層」が形成されるが、「透明膜20」が着色剤を含む着色層を備えることは特定されていない点。 (2)相違点についての判断 ア 甲1発明は「透明電極」(分説a)であり、その「用途は、自動車の窓、建築物の窓等に設置する各種電波の送受信用の透明アンテナ」である(分説n)から、「透明膜20」は、その名称のとおり透明で、窓に設置しても支障のないものが想定されていると認められる。 また、甲1全体を参照しても、「透明膜20」が着色剤を含む着色層を備えることについて記載も示唆もない。 イ 他方、甲2技術事項では、「フイルムアンテナ1」において、「電気絶縁性支持体2」の表面に「電波受信用低抵抗回路パターン3」が設けられ、「回路パターン3」の表面には「回路パターン3」の保護及び意匠性効果を付与するため、「絵柄インキ層8」が形成されており(前記第4、2(3))、導体層(「電波受信用低抵抗回路パターン3」)上に形成される層(「絵柄インキ層8」)が、着色剤を含む着色層となっている。 しかしながら、前記アのとおり、甲1発明では、「透明膜20」に着色層を備えることは想定されておらず、甲1発明の「透明膜20」に、甲2技術事項の構成を適用する動機付けは存在しない。 ウ また、その他の証拠を参照しても、透明膜に着色層を備えることを開示するものはないし、このことは技術常識ともいえない。 エ よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲5に示される技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、以下の主張をしている。 「 本件特許発明1においてアンテナの外観を調整するという課題(本件特許明細書【0005】【0006】【0047】参照)は、甲1発明において所望の反射抑制効果を奏するよう色調を調整した暗色層を設ける際の課題(甲第1号証【0038】参照)と同じであり、そもそもこうした課題は甲第2号証にも開示されているように周知に過ぎない(甲第2号証明細書第2頁第10行目(「・・意匠性効果を持たせるため・・」、第4頁第14、15行目(「・・保護及び意匠性効果を付与するため・・」参照)。 そして外観調整の手段として保護層と着色層を別体として設けることも、保護層にインキ等の着色剤を混入して一体として設けることも周知技術であって当業者の適宜設計する事項でしかない(甲第2号証の第1図(B)および絵柄インキ層8に関する説明と第2図(B)および絶縁コート4、絵柄インキ7に関する説明参照)。 したがって甲1発明において透明膜と暗色層(着色層)を別体として形成するか、透明膜に着色剤を含んだ着色層として形成するかという点は格別の相違とはいえない。」(申立書21頁) イ しかしながら、甲1発明の「暗色層」は、「金属線電極表面における日光、照明光等の反射を抑制する為」のものであり(分説j)、「金属線電極12」の表面における反射を抑制するという機能的な目的から設けられているものと認められる。 したがって、甲1発明において「暗色層」を設ける際の課題は、アンテナの外観を調整するという本件発明1における課題と同じであるとはいえない。また、同様に、甲1発明において「暗色層」を設ける際の課題は、意匠性効果を付与するという甲2に開示されている課題と同じであるとはいえない。 ウ そして、前記(2)アのとおり、甲1発明の「透明膜20」は、その名称のとおり透明で、窓に設置しても支障のないものが想定されていると認められるから、甲1発明において、「金属線電極12」の表面に「暗色層」が形成されることは、「透明膜20」に着色層を備えることの動機付けとなるものとは認められない。 エ したがって、申立人の主張は採用できない。 2 本件発明2~27について 本件発明2~27は、本件発明1の発明特定事項1Fと同一の発明特定事項を含んでいる。 前記1(1)に示した相違点は、本件発明1の発明特定事項1Fに係る相違点であるから、本件発明2~27と甲1発明とは、少なくとも、前記1(1)に示した相違点において相違する。 そして、前記1(2)に示したとおり、前記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明2~27は、甲1発明及び甲2~甲5に示される技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 申立理由2(実施可能要件)についての判断 1 実施可能要件の判断基準 前記第2のとおり、本件発明4、5、8~11、及び21~27は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 2 実施可能要件の検討 (1)請求項4及び5、並びに請求項4、5のいずれかを引用する請求項21~27に係る発明について ア 本件発明4は、「前記第1側面は、断面図において前記第1端と前記第2端とを通る仮想的な直線よりも外側に位置する外側湾曲面を含む」という事項を含むから、本件特許明細書の【0142】~【0144】、及び図13に記載された「第2変形例」に対応するものであると認められる。 イ 本件特許明細書の【0142】~【0144】、及び図13には、「第2変形例」として、アンテナ10において、第1導電体層31の第1側面34を、外側に向かって凸となる外側湾曲面を含む構成とすることが記載されているが、当該構成の第1側面34を有するアンテナ10の製造方法は記載されていない。 したがって、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が、当該構成の第1側面34を有するアンテナ10を製造することができるかについて、以下、検討する。 ウ 本件特許明細書の【0124】~【0130】、及び図8~11には、「実施の形態」のアンテナ10の製造方法の一例が記載されており、第1導電体層31がエッチング液155によってエッチングされることで、第1側面34が形成されることが記載されている。「実施の形態」のアンテナ10の第1側面34は、内側に向かって凸となる内側湾曲面を含む構成である(【0080】~【0083】、図6等)から、上記の製造方法は当該構成の第1側面34を形成する方法を記載したものと認められる。 エ 本件特許明細書の【0137】~【0140】、及び図12には、「第1変形例」として、第1側面34が平坦面を含む構成が記載されており、平坦面を含む第1側面34は、例えば、ドライエッチングによって第1導電体層31を加工することによって得られることや、ドライエッチングは、例えばプラズマエッチング、サンドブラストなどであることが記載されている。 オ 本件特許明細書の【0145】~【0148】、及び図14には、「第3変形例」として、第1側面34が第11側面34aと第12側面34bを含む構成が記載されており、第11側面34a及び第12側面34bは、例えば、互いに異なる条件のドライエッチングによって第1導電体層31を加工することによって形成されることが記載されている。 カ 前記イのとおり、本件特許明細書には、「第2変形例」について製造方法は記載されていないものの、前記ウ~オのとおり、第1側面34の形状が「第2変形例」とは異なる実施の形態や変形例について、エッチング液によりエッチングや、各種のドライエッチングにより第1側面34を形成することが例示されており、「第2変形例」についても、同様の手法や、その他の既知の手法により、適宜、第1側面34を所望の形状に形成することが想定されていると理解することができる。 キ そして、導体層を所望の形状とするための各種手法は広く知られており、例えば、甲1では、図3のとおり、金属線の断面形状は外側に向かって凸となる湾曲部を含むものとなっており、その製造方法について記載した【0055】や【0057】には、金属線に要求されるテーパー角度や湾曲部の曲率半径等に応じて、エッチング液の硝酸または塩酸の含有量を調整することや、ドライエッチング処理により、あるいはメッキ処理の繰り返しにより金属薄膜を堆積することにより、金属線電極を形成することが記載されている。 ク したがって、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、第1側面34を、外側に向かって凸となる外側湾曲面を含む形状に形成することができるものと認められ、当該形状の第1側面34を有するアンテナ10を製造することが可能である。 ケ また、本件発明4には、他に、本件発明4に係るアンテナを生産し、使用することを妨げるような事項は認められない。 コ 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明4に係るアンテナを生産し、使用することができる程度の記載があると認められ、本件発明4は実施可能要件を満たす。 キ 本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものであり、本件発明5について、他に実施可能要件に適合しない事項があるとも認められないから、本件発明5についても同様に実施可能要件を満たすと認められる。 また、請求項4、5のいずれかを引用する請求項21~27に係る発明についても、同様である。 (2)請求項8~11、及び請求項8~11のいずれかを引用する請求項21~27について ア 本件発明8は、「前記第1側面は、第11側面と、第1接続部において前記第11側面に接続され、前記第1接続部と前記第4面との間に位置する第12側面と、を含む」という事項を含むから、本件特許明細書の【0145】~【0153】、及び図14~18に記載された「第3変形例」~「第7変形例」に対応するものであると認められる。 イ 「第3変形例」について (ア)「第3変形例」(【0145】~【0148】、及び図14)では、第1側面34は互いに接続された第11側面34a及び第12側面34bからなり、第11側面34a及び第12側面34bは平坦面である。そして、【0147】には、第11側面34a及び第12側面34bは、例えば、互いに異なる条件のドライエッチングによって第1導電体層31を加工することによって形成されることが記載されている。 (イ)そして、ドライエッチングの条件を変えることで異なる傾斜の面が形成されることはよく知られている(例えば、特開平7-66185号公報の【0007】~【0009】、図1及び図4を参照。)から、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、異なる条件のドライエッチングを順に行い、「第3変形例」に係る構成の第11側面34a及び第12側面34bを形成することが可能であると認められる。 ウ 「第4変形例」について 「第4変形例」(【0149】、及び図15)については、第11側面34a及び第12側面34bの形成方法は記載されていないものの、「第4変形例」では、「第3変形例」と同じく、第11側面34a及び第12側面34bは平坦面であるから、「第3変形例」と同様の方法で形成することが可能であると認められる。 エ 「第5変形例」~「第7変形例」について 「第5変形例」~「第7変形例」(【0150】~【0153】、及び図16~18)は、第11側面34a及び第12側面34bについて、内側湾曲面、外側湾局面、及び平坦面の内の2つを組み合わせた構成である。 「第5変形例」~「第7変形例」について、第11側面34a及び第12側面34bの形成方法は記載されていないものの、内側湾曲面、及び平坦面については本件特許明細書に形成方法が記載されており(前記2(1)ウ、及び前記イ)、外側湾曲面についても形成可能であると認められる(前記2(1))から、当業者であれば、これらを組み合わせて、第11側面34a及び第12側面34bを形成することができるものと認められる。 オ 以上のとおり、「第3変形例」~「第7変形例」のいずれについても、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、第11側面34a及び第12側面34bを形成することが可能であると認められる。 カ また、本件発明8には、他に、本件発明8に係るアンテナを生産し、使用することを妨げるような事項は認められない。 キ したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明8に係るアンテナを生産し、使用することができる程度の記載があると認められ、本件発明8は実施可能要件を満たす。 ク 本件発明9~11は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものであり、本件発明9~11について、他に実施可能要件に適合しない事項があるとも認められないから、本件発明9~11についても同様に実施可能要件を満たすと認められる。 また、請求項8~11のいずれかを引用する請求項21~27に係る発明についても、同様である。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、本件特許は、アンテナの第1導電体の第1側面形状が「内側湾曲面」の場合の具体的製造方法に関する記載はあるものの(【0124】~【0130】、図8~11)、「外側湾曲面」(本件発明4及び5)、または「互いに接続する第11側面と第12側面」(本件発明8~11)を含む第1側面を形成する具体的方法に関し何ら記載されておらず、これら側面形状の形成方法が技術常識であるということもできないことから、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張している。また、【0147】に「第11側面34a及び第12側面34bは、互いに異なる条件のドライエッチングによって第1導電体層31を加工することによって形成される。」という程度の記載では過度の負担なく側面を複数領域に分けて形成することは困難である、と主張している。(申立書36頁) イ しかしながら、本件発明4及び5については、前記(1)のとおり、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、第1側面34を、外側に向かって凸となる外側湾曲面を含む形状に形成することができるものと認められる ウ また、本件発明8~11については、前記(2)イ(イ)のとおり、ドライエッチングの条件を変えることで異なる傾斜の面が形成されることはよく知られているから、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、異なる条件のドライエッチングを順に行い、互いに接続する第11側面34a及び第12側面34bを形成することが可能であると認められる。 エ したがって、申立人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~27に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701306

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