特許異議申立
2024-700478
電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体
- 審判番号
- 2024-700478
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-112770
- 登録番号
- 7383910
- 請求日
- 2024年05月20日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】千野 肇
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 秋山 誠
- 分類
- P1651.537-Y (B65D) / P1651.536-Y (B65D) / P1651.121-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7383910号発明「電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7383910号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7383910号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和元年6月18日(優先権主張 平成30年6月29日)に出願され、令和5年11月13日にその特許権の設定登録がされ、同年11月21日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年5月20日に、特許異議申立人 千野 肇(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立てが行われた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る特許(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
開口部にフランジを有し、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体を密封する蓋体とを備えた電子レンジ加熱用蓋付容器であって、
前記蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなり、
前記開口部は、前記フランジと前記シーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域により密封されてなり、
前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との23℃における剥離強度1が10N/15mm以上であり、
前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度2が8N/15mm以下である、電子レンジ加熱用蓋付容器。
【請求項2】
前記積層体は、前記基材層と前記シーラント層との間に、導電剤を含む発熱印刷層を有する発熱領域と、発熱印刷層を有さない非発熱領域とを有し、
前記蓋付容器の平面方向において、前記ヒートシール領域内の一部に前記発熱領域が配置されてなる、請求項1に記載の蓋付容器。
【請求項3】
前記ヒートシール領域の一部が、容器本体の中央に向かって突出してなる突出部を有する、請求項1又は2に記載の蓋付容器。
【請求項4】
前記剥離強度1が10N/15mm以上20N/15mm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の蓋付容器。
【請求項5】
前記剥離強度2が0.1N/15mm以上8N/15mm以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の蓋付容器。
【請求項6】
前記内容物として冷凍食品が収容されてなる、請求項1~5の何れか1項に記載の蓋付容器。
【請求項7】
少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなる蓋体であって、下記条件1を満たす、電子レンジ加熱容器用の蓋体。
<条件1>
ポリプロピレンからなる被着体に前記積層体の前記シーラント層を165℃で1.5秒間でヒートシールしてなる積層体を作製する。該積層体の前記被着体と前記シーラント層との23℃における剥離強度1が10N/15mm以上であり、かつ、該積層体の前記被着体と前記シーラント層との60℃における剥離強度2が8N/15mm以下である。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 申立ての理由
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由1
本件発明1~7は、甲第1号証に示すように、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
(2)申立理由2
本件発明1~7について、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
(3)申立理由3
本件発明1~7は、甲第2号証~甲第5号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2 証拠方法
申立人は、特許異議申立書に添付して甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」~「甲5」という。)を提出した。
甲1:特開2014-97845号公報
甲2:特開2008-50013号公報
甲3:特開2002-104474号公報
甲4:特開2005-88966号公報
甲5:特開2004-115056号公報
第4 当審の判断
1 申立理由1(特許法36条6項1号)について
(1)申立人の主張
本件特許の課題は、簡易な手段によって、電子レンジでの加熱過程で上昇した内圧を逃がすことができ、密封容器の破裂や変形を抑制することができる電子レンジ加熱用蓋付容器を提供することである(【0009】)。
本件発明1は、容器本体及び蓋体の材料が特定されておらず、さらに、フランジとシーラント層とをヒートシールする際の温度及び時間等(以下「ヒートシール条件」)が特定されていないから、容器本体及び蓋体にすべての材料を用いることができる「蓋付容器」及びすべての「ヒートシール条件」を含むと解する。
本件特許明細書には、ヒートシール条件として具体的に開示されているのは「160~170℃、圧力1.8~2.2MPaで1.3~1.7秒間」(【0075】)だけである。
しかし、甲1には、本件発明と同様の電子レンジ加熱用蓋付容器が記載されており、「実施例5/比較例4/比較例5」におけるシール強度は「15N/25N/3N」であり、落下試験及び輸送試験が「〇及び〇/〇及び〇/×及び×」、500W、1000W、1800Wの電子レンジ加熱が「すべて〇/すべて××/すべて〇」であることが開示されている。
ここで、実施例5は、シール強度(本件特許の剥離強度1に相当する)が「15N」であり、電子レンジ加熱が「すべて〇」であるから、本件発明1を満たす蓋然性が高いが、ヒートシール温度は185℃である。
比較例5は、ヒートシール温度が160℃で、本件特許明細書に記載されたヒートシール温度160~170℃の範囲に含まれるが、シール強度が3Nで、本件発明1を満たさず、落下試験及び輸送試験「×及び×」であるから、本件特許の課題を解決することもできない。
さらに、実施例5、比較例4及び比較例5の表2におけるデータを比較すると、同一材料の容器本体及び蓋体を用いたとしてもヒートシール温度が異なることに起因して、室温及び高温におけるシール強度がそれぞれ異なることが記載されているから、ヒートシール温度を含む「ヒートシール条件」によって「23℃における剥離強度1」及び「60℃における剥離強度2」がそれぞれ変動することは明らかである。
しかし、本件特許明細書には、容器本体及び蓋体にすべての材料を用いた場合の「蓋付容器」について、「23℃の剥離強度1」及び「60℃の剥離強度2」を特定の数値範囲とするための「ヒートシール条件」は記載も示唆もされていない。
そうすると、容器本体及び蓋体にすべての材料を用いることができる「蓋付容器」及びすべての「ヒートシール条件」を含む本件発明1のすべてが、本件特許の課題を解決できるのか不明であり、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1の範囲まで、明細書に記載された内容を拡張又は一般化できるとはいえない。本件発明2~6も同様であり、本件発明7も材料が特定されていないから同様である。
(2)検討
ア 発明の詳細な説明及び図面の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4の技術は、容器と蓋材とを貼り合わせたヒートシール領域を特殊な形状として、密封容器の内圧に基づく負荷をヒートシール領域の特定の箇所に集中させ、該箇所の密封状態を解消して、内圧を逃がすものである。加熱時に密封容器の密封状態を自動的に解消し、内圧を逃がす技術は「自動蒸通」といわれている。
しかし、特許文献1~4の技術を採用した包装食品であっても、電子レンジ加熱時に自動蒸通されず、密封容器が破裂したり、密封容器が変形したりする場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、容器内に収納する食品が冷凍食品である場合には、電子レンジ加熱時の水分の蒸発量が徐々に上昇するのではなく加速度的に上昇し、自動蒸通が間に合わないことが上記問題の原因であることを見出し、本発明を完成するに至った。」
「【発明の効果】
【0009】
本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器によれば、簡易な手段によって、電子レンジでの加熱過程で上昇した内圧を逃がすことができ、密封容器の破裂や変形を抑制することができる。」
「【0014】
<剥離強度>
本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器は、ヒートシール領域におけるフランジとシーラント層との23℃における剥離強度1が10N/15mm以上であり、ヒートシール領域におけるフランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度2が8N/15mm以下であることを要する。
【0015】
剥離強度1が10N/15mm未満の場合、電子レンジでの加熱が十分に進んでいない時に自動蒸通したり、流通過程で意図せず蓋材が剥離したりすることを抑制できない。
また、剥離強度2が8N/15mmを超える場合、内容物が冷凍食品の際に電子レンジ加熱時に自動蒸通されず、密封容器が破裂したり、密封容器が変形したりすることを抑制できない。一方、内容物が液状の場合、剥離強度2が8N/15mm以下では、加熱の初期段階で発生する水蒸気に基づく内圧に耐えられずに、短時間で自動蒸通してしまう。このため、内容物が冷凍食品の際に剥離強度2を8N/15mm以下とすることが好ましい。
図9は、電子レンジ加熱時間と、水蒸気の発生量との関係のイメージ図である。横軸が電子レンジでの加熱時間(t)、縦軸が水蒸気の累積発生量(w)である。また、実線が冷凍食品、点線が液状食品である。図9に示すように、冷凍食品を電子レンジ加熱した場合、水分の蒸発量が徐々に上昇するのではなく加速度的に上昇するため、通常の設計では自動蒸通が間に合わずに密封容器が破裂したり変形したりしてしまう。本発明では、剥離強度2を8N/15mm以下としたことにより、水分が加速度的に上昇する前に自動蒸通することを可能として、密封容器が破裂したり変形したりすることを抑制している。
【0016】
剥離強度1は10N/15mm以上20N/15mm以下であることが好ましく、12N/15mm以上18N/15mm以下であることがより好ましい。剥離強度1を20N/15mm以下とすることにより、剥離強度2を8.0N/15mm以下にしやすくできる。また、剥離強度1を20N/15mm以下とすることにより、電子レンジ加熱後に容器本体から蓋材を剥がしやすくすることができる。以下、容器本体から蓋材が剥がしやすい性能のことを「イージーピール性」と称する場合がある。
【0017】
剥離強度2は0.1N/15mm以上8.0N/15mm以下であることが好ましく、2.0N/15mm以上7.5N/15mm以下であることがより好ましく、5.0N/15mm以上7.0N/15mm以下であることがさらに好ましい。剥離強度2を0.1N/15mm以上とすることにより、電子レンジ加熱時に複数の箇所で自動蒸通し、内容物から発生した蒸気が必要以上に外部に放出されることを抑制できる。」
「【図9】
[図:0001420329000001.jpg]
」
イ 本件発明の発明が解決しようする課題及びその解決手段について
上記発明の詳細な説明及び図面の記載によれば、本件発明は、従来、加熱時に密封容器の密封状態を自動的に解消し、内圧を逃がす「自動蒸通」といわれる技術があるが、そのような技術を採用しても、電子レンジ加熱時に自動蒸通されず、密封容器が破裂したり、密封容器が変形したりする場合があったことを解決しようとする課題(【0006】)とするものと認められる。
そして、当該課題に対し、冷凍食品を電子レンジ加熱した場合、電子レンジ加熱時の水分の蒸発量が徐々に上昇するのではなく加速度的に上昇し、自動蒸通が間に合わないことが原因であることを見出し(【0007】、【0015】、図9)、図9に示すように、冷凍食品を電子レンジ加熱した場合、通常の設計では自動蒸通が間に合わずに密封容器が破裂したり変形したりしてしまうため、剥離強度2を8N/15mm以下としたことにより、水分が加速度的に上昇する前に自動蒸通することを可能として、密封容器が破裂したり変形したりすることを抑制する(【0015】)とともに、剥離強度1が10N/15mm未満の場合、電子レンジでの加熱が十分に進んでいない時に自動蒸通したり、流通過程で意図せず蓋材が剥離したりすることを抑制できないことから、剥離強度1を10N/15mm以上とした(【0014】、【0015】)ことで、上記課題を解決したものと認められる。
そして、本件発明1~6及び本件発明7には、上記課題を解決するための剥離強度1及び剥離強度2の条件が特定されているから、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 申立人の主張について
申立人は、本件発明1は、すべての材料及びすべてのヒートシール条件を含む一方、甲1の実施例5は、本件発明1の剥離強度1に相当するシール強度が「15N」であり落下試験及び電子レンジ加熱が「すべて〇」であって本件発明1を満たす蓋然性が高いが、実施例5のヒートシール温度は185℃で本件特許明細書に記載されたヒートシール温度(160℃~170℃)から外れること、比較例5は、ヒートシール温度が160℃で、本件特許明細書に記載されたヒートシール温度(160℃~170℃)の範囲に含まれるが、シール強度が「3N」であり、本件特許の課題を解決することができないこと、を根拠に挙げつつ、容器本体及び蓋体にすべての材料を用いることができる「蓋付容器」及びすべての「ヒートシール条件」を含む本件発明1が、本件特許の課題を解決できるのか不明であると主張する。
しかしながら、甲1の実施例5のシール強度は測定温度が特定されておらず本件発明1の剥離強度1に相当するか明らかでないこともさることながら、剥離強度2に関連する数値は、全く記載も示唆もないから、甲1の実施例5が本件発明1を満たす蓋然性が高いという前提において申立人の主張を採用することはできない。その上、本件特許の課題を解決する手段は、上記イで説示したとおりヒートシール温度を特定の範囲とするものではない点からも、申立人の主張を採用することはできない。
なお、本件発明7では、ヒートシール温度の特定が含まれているものの、剥離強度1及び剥離強度2についても特定しており、ヒートシール温度を特定すること自体を課題解決手段としたものでないことは明らかである。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)小括
以上によれば、本件発明1~7は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に適合する。
2 申立理由2(特許法36条4項1号)について
(1)申立人の主張
実施例1の蓋体のシーラント層におけるシール層において、第2の樹脂(B)には、ポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)を用いたことが記載されている(【0080】)が、具体的にポリエチレン(B1)として、記載された「LLDPE、LDPE、MDPE、HDPE」(【0043】)のいずれを用いたのか、また、オレフィン系エラストマー(B2)として、記載された「SEBS、SEPS、HSBR、E-P、E-B、E-P-B」(【0046】;略記は異議申立書10ページの記載による)のいずれを用いたのかが記載されておらず不明である。
シーラント層におけるシール層は、本件発明1における「剥離強度1」及び「剥離強度2」を特定の数値範囲とするための最も重要な層であり、ポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)として挙げられた上記材料が、それぞれ同一の物理的特性を有するものでないことは当業者における技術常識である。
そうすると、本件発明1の「剥離強度1」及び「剥離強度2」を特定の数値範囲するために最も重要な層について、どのようなポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)を用いたのか不明であることから、「剥離強度1」及び「剥離強度2」を特定の範囲とするための検討について、当業者に過度の負担を強いるものであることは明らかであり、実施例1は、当業者が明細書の記載に基づいて発明を実施できるとはいえない。
(2)検討
ア 発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0022】
剥離強度1及び剥離強度2は、シーラント層25を構成する熱可塑性樹脂の組成、シーラント層の厚み、ヒートシールの条件(温度、時間)により調整することができる。」
「【0075】
上述したように、剥離強度1及び剥離強度2は、ヒートシールの条件(温度、時間)によっても変動する。
ヒートシールの条件は、フランジを構成する樹脂、シーラント層を構成する樹脂によって異なるため一概には言えないが、フランジを構成する樹脂がプロピレン単独重合体であり、シーラント層を構成する樹脂が、上述した第1の樹脂であるポリプロピレン(A)と、第2の樹脂(B)との混合樹脂である場合には、160~170℃、圧力1.8~2.2MPaで1.3~1.7秒間とすることが好ましい。ヒートシール時の温度及び圧力を上げたり、ヒートシールの時間を増やしたりすると、剥離強度が上昇する傾向にある。
また、ヒートシールする際の室内環境は、23±5℃、湿度40~65%であることが好ましい。」
イ 発明の実施可能性及び申立人の主張について
上記発明の詳細な記載によれば、剥離強度1及び剥離強度2は、シーラント層を構成する熱可塑性樹脂の組成、シーラント層の厚み、ヒートシールの条件(温度、時間)により調整することができるものであって、ヒートシールの条件は一概にはいえないものの、ヒートシール時の温度及び圧力を上げたり、ヒートシールの時間を増やしたりすると、剥離強度が上昇する傾向にあるものと理解できる。
そうすると、剥離強度1及び剥離強度2が所定の値にするために、シーラント層の組成や、厚み、ヒートシールの温度や時間、圧力を調整することが教示されているのであり、当業者であれば、これらの教示に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、剥離強度1及び剥離強度2を所定の値になるよう調整することができるものといえる。
申立人は、実施例1では、どのようなポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)を用いたのか不明であることから、「剥離強度1」及び「剥離強度2」を特定の範囲とするための検討について、当業者に過度の負担を強いると主張するが、上記教示によれば、ヒートシール層にどのような組成物を用いるかを含めて、ヒートシール層の厚みや、ヒートシールの温度、時間、圧力を調整することが示されているのであって、当業者に過度の負担を強いるものであるとはいえず、申立人の主張は採用できない。
(3)小括
以上によれば、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであって、特許法36条4項1号に適合する。
3 申立理由3(特許法29条2項)について
3-1 甲号証の記載事項等
(1)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
「【請求項1】
開口部にフランジ部を有する有底状容器本体と、該有底状容器本体の前記開口部を摘み部を有する蓋体によりフランジ部に設けた帯状熱接着部で密封した電子レンジ加熱用密封容器であって、前記帯状熱接着部の少なくとも1箇所が容器の内側方向に突出形成された突出熱接着部を有し、該突出熱接着部を少なくとも覆う大きさの導電性発熱層が前記蓋体に形成されていることを特徴とする電子レンジ加熱用密封容器。」
「【0010】
図1は本発明にかかる電子レンジ加熱用密封容器の一実施例を示す(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図であって、電子レンジ加熱用密封容器1は食品等の内容物を収納するための円形状開口部にフランジ部11を有する有底状容器本体10および該有底状容器本体10の前記円形状開口部を覆うための摘み部21を備えた蓋体20から構成され、有底状容器本体10の前記フランジ部11に設けた帯状熱接着部3(図2参照)で蓋体20が熱接着されて密封されたものである。」
「【0012】
また、前記蓋体20としては、基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体からなるものであって、基材層としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなど、特に、これらの二軸方向に延伸したフィルムが好適である。また、前記熱接着性樹脂層としては、前記有底状容器本体10の内面を構成する樹脂と熱圧により接着する樹脂であれば特に制限はなく、前記有底状容器本体10の内面を構成する樹脂により適宜選択して用いればよいものである。特に、前記有底状容本体10がポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体からなる場合には前記蓋体20を構成する前記熱接着性樹脂層として、たとえば、東セロ(株)製:TAF-650C,CMPS022C、あるいは、東レフィルム加工(株)製:7601A、あるいは、ジェイフィルム(株)製:VMXXB15FTなどのイージーピール性を有するシーラントフィルムを用いることにより易剥離性が得られるために好ましいものである。」
「【図2】
[図:0001420329000002.jpg]
」
イ 甲2発明
段落【0012】には、蓋体は、基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体であること、熱接着性樹脂層としては、有底状容器本体の内面を構成する樹脂と熱圧により接着するものであることが記載されているから、有底状容器本体のフランジに設けた帯状熱接着部には蓋体の熱接着性樹脂層が熱接着されるものと認められる。
そうすると、甲2には、電子レンジ加熱用密封容器に係る次の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。
「開口部にフランジ部を有し、食品等の内容物を収納する有底状容器本体と、
該有底状容器本体の前記開口部を摘み部を有する蓋体によりフランジ部に設けた帯状熱接着部で密封した電子レンジ加熱用密封容器であって、
蓋体としては、基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体からなり、
フランジ部に設けた帯状熱接着部で蓋体の熱接着性樹脂層が熱接着されて密封された
電子レンジ加熱用密封容器。」
また、甲2には、電子レンジ加熱用密封容器用の蓋体に係る次の発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。
「基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体からなる蓋体であって、
ポリプロピレンからなる有底状容器本体の開口部のフランジ部に設けた帯状熱接着部で蓋体の熱接着性樹脂層が熱接着されて密封された
電子レンジ加熱用密封容器用の蓋体。」
(2)甲3~甲5
甲3~甲5には、それぞれ以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。また、「・・・」は摘記の省略を示す。
ア 甲3の記載事項
「【請求項1】ポリプロピレン樹脂もしくはポリプロピレン系樹脂をベースとした樹脂組成物からなるシーラント層上にポリオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン系共重合体層を設けた積層体を基本構造とした蓋材および軟包装体において、該蓋材でシールした容器あるいは該軟包装体中に内容物を充填し、加温により発生した各種ガス成分を、ガス発生に伴う内圧上昇により前記シーラント層を破断し、該シーラント層および前記ポリオレフィン系樹脂層もしくはポリオレフィン系共重合体層の層間からガスを解放するガス抜き機構を附与したことを特徴とする蓋材および軟包装体。
・・・
【請求項4】前記シーラント層とポリオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン系共重合体層との室温におけるラミネート強度が、5~20N/15mmであり、70℃雰囲気下におけるおけるラミネート強度が0.1~5N/15mmの範囲であることを特徴とする請求項1、2または3記載の蓋材および軟包装体。」
「【0018】本発明の蓋材(1)および軟包装体(2)は、例えば図1(b)に示すように、電子レンジによって加温され内圧が上昇した際に、蓋材(1)では、被着体である容器本体(5)のフランジ部(55)に、図2(b)に示すように、軟包装体(2)では、その積層体の内面の面々シール部(22)に内圧が集中する。この時、シーラント層(10)は、加温により機械的強度が若干低下しているため、容易にポリプロピレン樹脂もしくはポリプロピレン系樹脂をベースとした樹脂組成物でなるシーラント層(10)を破断する。その結果、図1(c)および図2(c)に示すように、層間剥離型の剥離面であるシーラント層(10)とポリオレフィン系樹脂あるいはポリオレフィン系共重合体層(20)間でガスが抜ける事が可能になり、結果的にガス抜き機構を附与することが可能になる。
【0019】上述したガス抜きのポイントとしては、以下の内容が挙げられる。すなわち加温によるシーラント層となるシーラント層(10)の機械強度の低下と、シーラント層(10)とポリオレフィン系樹脂あるいはポリオレフィン系共重合体層(20)間でのガス抜きである。特に後者については、両層(10、20)のラミネート強度が大きなポイントとなり、電子レンジで加温している時でもラミネート強度が強ければ、この両層(10、20)間でのガス抜きが困難になってしまうため、電子レンジによる加温で、この両層(10、20)間のラミネート強度が極端に低下させる必要がある。
【0020】また、イージーピール性と言う意味では、室温において5~20N/15mmの範囲のラミネート強度が好ましいが、加温時、特に70℃雰囲気下におけるラミネート強度が0.1~5N/15mmの範囲まで低下することができないと、ガス抜き機構を発現させることが困難である。このように、このポリオレフィン系樹脂あるいはポリオレフィン系共重合体層(20)としては加温による両層(10、20)間のラミネート強度を低下させることが可能な樹脂を用いる必要があり、その様な意味で0.850~0.925g/cm3の範囲で、105℃以下に少なくとも一つ融点を有し、その融解熱量が10~70J/gの範囲であるものが好ましい。」
「【図1】
[図:0001420329000003.jpg]
」
イ 甲4の記載事項
「【請求項1】
電子レンジにより加熱するための袋であって、少なくとも耐熱性基材層とシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて側部と先端辺部とをシールしたウィング部を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封する包装袋において、当該ウィング部の先端辺部の少なくとも一領域に、耐熱性基材層とシーラント層の間に室温以下の温度環境では所定の強度を有するが、高温の温度環境では前記所定の強度が低下する樹脂層を内側から外側に向かって横断するように形成し、かつ、少なくとも、下部材を構成するシーラント層が、アンチブロッキング剤を0.01重量%~3.0重量%含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなることを特徴とする電子レンジ用包装袋。」
「【0056】
形成された樹脂層14は、電子レンジで加熱等されて包装袋1内の空気の膨張や内容物に含まれる水蒸気によって内圧が上昇したとき、シール部近傍のシーラント層16の任意の個所を起点として、強度が低下した樹脂層14が破壊される
その結果、シール部のシーラント層16と耐熱性基材層12との間に、包装袋1の内側から外側に向かって樹脂層14の破壊による比較的小さい大きさの空気抜けが生じるので、包装袋1内の蒸気等が逃げ、その内圧を低下させることができる。」
「【0062】
積層体10は、後述するシーラント層16を向かい合うように重ね合わせてシールした時に、樹脂層14を設けた領域のシール強度が、室温以下の温度領域では15N/15mm以上であり、80℃以上の高温の温度領域では10N/15mm以下であることが好ましく、1N/15mm~6N/15mmの範囲にあることがより好ましい。
【0063】
樹脂層14を設けた領域のシール強度が、室温以下の温度領域では15N/15mm以上であるので、室温時又は冷凍時の取扱、輸送、保管等によってはシール部が剥がれて開くことがない。
【0064】
また、80℃以上の高温の温度領域では10N/15mm以下であるので、電子レンジで加熱した際に、樹脂層14とシーラント層16の一部が部分的に破壊する程度の強度まで低下する。
【0065】
このような特性を有する包装材料によって作製された包装袋は、その範囲でシール強度を調整できるので、電子レンジで加熱されて内圧がある程度まで上昇したときに初めて部分的に破壊させるように調整するという利点を有する。」
「【0109】
図8、図9に示すように、本発明の電子レンジ用包装袋が電子レンジで加熱された際に発生した蒸気の熱と圧力によって、前記の樹脂層14が、選択的に破壊され、胴部と底部のシール部の下端から剥離が始まり、上端に向かって広がり、上端部に到達し、開口部が形成され、開口部から蒸気が放散して包装袋の内圧は、常圧に戻る。」
「【図8】 【図9】
[図:0001420329000004.jpg]
」
ウ 甲5の記載事項
「【請求項1】
耐熱性基材層とシーラント層の間に、室温以下の温度環境では所定の強度を有するが、高温の温度環境では前記所定の強度が低下する樹脂層を、少なくとも一領域設けた包装材料であって、前記のシーラント層が、フィルム流れ方向の引裂き強度とフィルム流れ方向に対して直角方向の引裂き強度が異なり、かつ、両者の比(引裂き強度の強い方向/弱い方向)を1.5以上10000以下とし、かつ、引裂き強度の弱い方向の引張り強度を10MPa以上40MPa以下とすることを特徴とする電子レンジ用包装材料。
・・・
【請求項4】
前記の電子レンジ用包装材料を、前記のシーラント層同士を対向させてシールし、前記の樹脂層を設けた領域内におけるシーラント層のフィルムの流れ方向のシール強度が、室温以下の温度領域では10(N/15mm)以上となり、90℃以上の高温の温度領域では5(N/15mm)以下となることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の電子レンジ用包装材料。」
「【0023】
図2は、本発明の包装材料1によって作製された包装袋のシール部分の一例を示す拡大断面図である。
図2に示すように、形成された樹脂層4は、電子レンジで加熱等されて包装袋21内の空気の膨張や内容物に含まれる水蒸気によって内圧が上昇したとき、シール部22近傍のシーラント層6の任意の個所23を起点として、強度が低下した樹脂層4が破壊される(符号24は、破壊する仮想線を示す。)。
その結果、シール部22のシーラント層6と耐熱性基材層2との間に、包装袋21の内側から外側に向かって樹脂層4の破壊による比較的小さい大きさの空気抜けが生じるので、包装袋21内の水蒸気等が逃げ、その内圧を低下させることができる。
本発明では、破壊が部分的に起こるので、比較的小さい大きさの空気抜けが生じ、包装袋21の内圧が一気に低下することがなく、内容物の飛散が起こらない。
【0024】
包装材料1は、後述するシーラント層6を向かい合うように重ね合わせてシールした時に、前記の樹脂層4を設けた領域内におけるシール強度が、室温以下の温度領域では10(N/15mm)以上であり、80℃以上の高温の温度領域では5(N/15mm)以下であることが好ましい。
樹脂層4を設けた領域のシール強度が、室温以下の温度領域では10(N/15mm)以上であるので、室温時又は冷凍時の取扱、輸送、保管等によってはシール部が剥がれて開くことがなく、好ましいものである。
また、80℃以上の高温の温度領域では、5(N/15mm)以下であるので、電子レンジで加熱した際に、樹脂層4とシーラント層6の一部が部分的に破壊し、空気抜けの発生する程度の強度まで低下する。
このような特性を有する包装材料によって作製された包装袋は、その範囲でシール強度を調整できるので、電子レンジで加熱されて内圧がある程度まで上昇したときに初めて部分的に破壊させるように調整することもできる。」
「【0034】
図10は、本発明の電子レンジ用包装容器10の一例を示す斜視図である。
本発明の電子レンジ用包装容器10は、図10に示すように、容器本体(トレー)11と上述の包装材料1を用いた容器蓋体12から構成されるものである。而して、当該容器蓋体14が、容器本体(トレー)11の縁(フランジ)にヒートシールされる領域の少なくとも一部に樹脂層4を蓋体の内側から外側に向かって形成し、かつ蓋体14のTD方向で容器本体(トレー)11の縁(フランジ)にシールするものである。
図示しないが、樹脂層4を容器本体(トレー)11の縁(フランジ)側に設けて、TD方向で蓋体14にシールしてもよい。
上述の包装材料1を用いた容器蓋材14をヒートシールした容器は、上記と同様の作用によって部分的な破壊が起こって、破裂音を生じることなく、容器の内圧が一気に低下することがなく、内容物の飛散が起こらないため、好ましいものである。」
「【図2】
[図:0001420329000005.jpg]
」
3-2 進歩性についての検討
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
後者の「開口部」は前者の「開口部」に相当し、以下同様に、「フランジ部」は「フランジ」に、「内容物」は「内容物」に、「収納」は「収容」に、「有底状容器本体」は「容器本体」にそれぞれ相当する。そうすると、後者の「開口部にフランジ部を有し、食品等の内容物を収納する有底状容器本体」は、前者の「開口部にフランジを有し、内容物を収容する容器本体」に相当する。
後者の「密封」は前者の「密封」に相当し、同様に「蓋体」は「蓋体」に相当する。そうすると、後者の「該有底状容器本体の前記開口部を摘み部を有する蓋体によりフランジ部に設けた帯状熱接着部で密封した」構成における「蓋体」は、前者の「前記容器本体を密封する蓋体」に相当する。
後者の「電子レンジ加熱用密封容器」は、前者の「電子レンジ加熱用蓋付容器」に相当する。
後者の「基材層」は前者の「基材層」に相当し、同様に「熱接着性樹脂層」は「シーラント層」に、「積層体」は「積層体」にそれぞれ相当する。そうすると、後者の「蓋体としては、基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体からな」ることは、前者の「前記蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてな」ることに相当する。
後者の「熱接着」は前者の「ヒートシール」に相当し、同様に「帯状熱接着部」は「ヒートシール領域」に相当する。そうすると、後者の「フランジ部に設けた帯状熱接着部で蓋体の熱接着性樹脂層が熱接着されて密封された」構成は、前者の「前記開口部は、前記フランジと前記シーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域により密封されてな」る構成に相当する。
以上をまとめると、本件発明1と甲2発明1は、次の点で一致する。
「開口部にフランジを有し、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体を密封する蓋体とを備えた電子レンジ加熱用蓋付容器であって、
前記蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなり、
前記開口部は、前記フランジと前記シーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域により密封されてなる
電子レンジ加熱用蓋付容器。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との23℃における剥離強度1が10N/15mm以上であり、前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度2が8N/15mm以下である」のに対し、甲2発明1における有底状容器本体の開口部のフランジ部と熱接着性樹脂層の剥離強度は不明である点。
イ 判断
以下、甲3~甲5に、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項が開示又は示唆されているか検討する。
(ア)甲3について
甲3には、前記シーラント層とポリオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン系共重合体層との室温におけるラミネート強度が、5~20N/15mmであり、70℃雰囲気下におけるラミネート強度が0.1~5N/15mmの範囲であることが記載されている(請求項4参照)。
しかしながら、甲3におけるシーラント層とポリオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン系共重合体層とは、蓋材を構成する(請求項1参照)ものであって、容器本体のフランジとシーラント層の間のラミネート強度を開示するものではない。そして、段落【0018】、【0019】、図1を参照するに、甲3には、シーラント層が破断することによってガス抜き機構を実現することが記載され、このようなガス抜き機構を実現するために、シーラント層とポリオレフィン系樹脂あるいはポリオレフィン系共重合体層との間のラミネート強度を特定したものといえる。
そうすると、甲3は、相違点1に係る容器本体のフランジとシーラント層との剥離強度について開示するものではない。
また、温度についてみても、甲3に記載されたラミネート強度は、70℃雰囲気下のものであって、60℃における剥離強度ではないし、60℃における剥離強度を如何にすべきかを教示するものでもない。
以上のことから、甲3は、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではない。
(イ)甲4について
甲4には、シール強度が、室温以下の温度領域では15N/15mm以上であり、80℃以上の高温の温度領域では10N/15mm以下であることが記載されている(【0062】参照)。
しかしながら、甲4に記載されたものは、電子レンジにより加熱するための包装袋であって容器については記載されていないから、甲4は、容器本体のフランジとシーラント層の間のシール強度を開示するものとはいえない。
また、甲4の包装体は、特に図8、図9に示されるように、シールした際に、耐熱性基材層12、樹脂層14、シーラント層16、シーラント層16、耐熱性基材層12という構成となるものであるが、これらの複数の層のうち、甲4に記載されたシール強度がどの層とどの層の間のシール強度であるかは不明であり、少なくとも容器本体のフランジとシーラント層との間のシール強度を開示するものではない。また、甲4は、段落【0056】、【0109】の記載及び図8、9から、シール部近傍のシーラント層16の任意の個所を起点として、強度が低下した樹脂層14が破壊される結果、空気抜きを実現したものであるところ、シーラント層16とシーラント層16の間が剥離することを前提としたものではないから、この点からも、甲4は、容器本体のフランジとシーラント層の間の剥離強度について開示するものとはいえない。
また、温度についてみても、甲4に記載されたシール強度は、80℃以上の高温の温度領域のものであって、60℃における剥離強度ではないし、60℃における剥離強度を如何にすべきかを教示するものでもない。
以上のことから、甲4は、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではない。
(ウ)甲5について
甲5には、シール強度が、室温以下の温度領域では10(N/15mm)以上となり、90℃以上の高温の温度領域では5(N/15mm)以下となることが記載されている(請求項4参照)。
しかしながら、甲5は、特に図2に示されるように、シールした際に、耐熱性基材層2、樹脂層4、シーラント層6、シーラント層6、樹脂層4、耐熱性基材層2という構成となるものであるが、それらの複数の層のうち、甲5のシール強度がどの層とどの層のシール強度であるかも不明であり、甲5には容器本体のフランジに蓋体をヒートシールすることが記載されている(【0034】)としても、特に、容器のフランジとシーラント層との間の剥離強度に着目して、その強度を開示するものとはいえない。また、甲5は、段落【0023】の記載及び図2から、シール部近傍のシーラント層6の任意の個所23を起点として、樹脂層4が破壊される結果、空気抜きを実現したものであるところ、シーラント層6とシーラント層6の間が剥離することを前提としたものではなく、上記のとおり、容器本体のフランジに蓋体をヒートシールすることが記載されているとしても、容器本体のフランジと蓋体のシーラント層6の間の剥離強度について開示するものともいえない。
また、温度についてみても、甲5に記載されたシール強度は、90℃以上の高温の温度領域のものであって、60℃における剥離強度ではないし、60℃における剥離強度を如何にすべきかを教示するものでもない。
以上のことから、甲5は、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることを開示又は示唆するものではない。
(エ)申立人の主張について
申立人は、甲3~甲5を例示して、包装食品の技術分野における電子レンジ加熱用の密封容器または密封袋において、常温時に特定の剥離強度を有すると共に、高温時に常温時より低い剥離強度を有するシーラント層を形成することにより、高温時に所定の内圧に達した際、自動で密閉容器等を部分的に開封させて内圧を逃がすと共に内容物の吹き出しや容器の破裂、変形のない密封容器等とすることは当業者における周知の技術であって、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないと主張する。
しかしながら、本件発明1は、単に高温時に常温時より低い剥離強度を有するシーラント層を形成することを特定したものではなく、ヒートシール領域における容器本体のフランジと蓋体のシーラント層との60℃における剥離強度2を8N/15mm以下とすることを特定したものであり、上記(ア)~(ウ)で検討したように、甲3~甲5には、そのような剥離強度について開示又は示唆するものではなく、また、本件発明1は、上記のように特定することで、上記第4の1で検討したような課題を解決したものであるから、申立人の主張は採用できない。
(オ)結論
したがって、甲2発明1において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、甲3~甲5のいずれにも開示も示唆もない。
よって、本件発明1は、甲2発明1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に違反するものとはいえない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものである。
そうすると、上記(1)で検討したように、本件発明1が、甲2発明1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~6についても、甲2発明1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に違反するものとはいえない。
(3)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲2発明2を対比する。
上記(1)アでの検討も踏まえると、後者の「基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体からなる蓋体」は、前者の「少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなる蓋体」に相当する。
後者の「電子レンジ加熱用密封容器用の蓋体」は、前者の「電子レンジ加熱容器用の蓋体」に相当する。
後者の「ポリプロピレンからなる有底状容器本体の開口部のフランジ部」は、前者の「ポリプロピレンからなる被着体」に相当する。そして、後者の「ポリプロピレンからなる有底状容器本体の開口部のフランジ部に設けた帯状熱接着部で蓋体の熱接着性樹脂層が熱接着されて密封され」ることは、前者の「<条件1>ポリプロピレンからなる被着体に前記積層体の前記シーラント層を165℃で1.5秒間でヒートシールしてなる積層体を作製する」ことと「<条件1>ポリプロピレンからなる被着体に前記積層体の前記シーラント層をヒートシールしてなる積層体を作製する」ことで共通する。
以上をまとめると、本件発明7と甲2発明2は、次の点で一致する。
「少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなる蓋体であって、下記条件1を満たす、電子レンジ加熱容器用の蓋体。
<条件1>
ポリプロピレンからなる被着体に前記積層体の前記シーラント層をヒートシールしてなる積層体を作製する。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2>
ヒートヒールについて、本件発明7は「165℃で1.5秒間で」行うのに対し、甲2発明2は、そのような特定がない点。
<相違点3>
本件発明7は「該積層体の前記被着体と前記シーラント層との23℃における剥離強度1が10N/15mm以上であり、かつ、該積層体の前記被着体と前記シーラント層との60℃における剥離強度2が8N/15mm以下である」のに対し、甲2発明2における有底状容器本体の開口部のフランジ部と熱接着性樹脂層の剥離強度は不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討すると、相違点3は相違点1と実質的に同じであるから、相違点1で検討したのと同様に、甲2発明2において、相違点3に係る本件発明7の発明特定事項とすることは、甲3~甲5のいずれにも開示も示唆もない。
そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明2及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に違反するものとはいえない。
3-3 小括
以上によれば、本件発明1~7は、甲2~甲5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法29条2項の規定に違反するものとはいえない。
第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立書に記載した理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700478