特許異議申立
2021-701198
包装材用積層フィルム、及び包装袋
- 審判番号
- 2021-701198
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-249337
- 登録番号
- 6896995
- 請求日
- 2021年12月16日
- 審決日
- 2023年08月22日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】結田 純次
- 【権利者代理人】竹林 則幸
- 【異議申立人】千野 肇
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.121-ZDA(B65D) / P1651.55 -ZDA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6896995号発明「包装材用積層フィルム、及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6896995号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、2について訂正することを認める。
特許第6896995号の請求項1、4に係る特許を取り消す。
特許第6896995号の請求項2に係る特許を維持する。
特許第6896995号の請求項3、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6896995号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成27年12月22日の出願であって、令和3年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年12月16日 :特許異議申立人千野肇(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 3月 4日付け:取消理由通知書
令和4年 5月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 7月22日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年 8月31日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和4年10月11日 :特許権者による手続補正書の提出
令和4年12月 9日 :申立人による意見書の提出
令和5年 1月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 3月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 4月 7日付け:訂正拒絶理由通知書
令和5年 5月17日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和5年 6月22日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
令和5年5月17日提出の手続補正書による補正後の訂正請求書により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物によるシーラントフィルムと」を、
「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物による単層構成のシーラントフィルムと」に訂正し(以下「訂正事項1-1」という。)、
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有し」を、
「前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有し」に訂正する(以下「訂正事項1-2」という。)。(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとする(以下「訂正事項2-1」という。)とともに、
当該請求項1に記載された
「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物によるシーラントフィルムと」を、
を、
「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成のシーラントフィルムと」に訂正し(以下「訂正事項2-2」という。)、
当該請求項1に記載された
「前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有し」を、
「前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有し」に訂正する(以下「訂正事項2-3」という。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に記載された
「前記シーラントフィルムと、前記基材フィルムとの間に更に中間層を備えることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の包装材用積層フィルム。」を、
「前記シーラントフィルムと、前記基材フィルムとの間に更に中間層を備えることを特徴とする
請求項1に記載の包装材用積層フィルム。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5を削除する。
2 一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項について請求されたものである。
(2)別の訂正単位とする求めについて
本件訂正後の請求項2に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1-1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1-1は、「樹脂組成物」の構成材料を限定するとともに、シーラントフィルムの層構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項1-1は、本件特許の明細書の【0044】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項1-2について
ア 訂正の目的について
炭素の放射性同位体である炭素14は、正しくは「14C」であって、「14C」ではないから、訂正事項1-2は、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項1-2は、本件特許の明細書の【0006】、【0036】~【0038】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項2-2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2-2は、「樹脂組成物」の構成材料を限定するとともに、シーラントフィルムの層構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2-2は、本件特許の明細書の【0044】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2-2は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項2-3について
訂正事項2-3は、訂正事項1-2と同様、誤記の訂正を目的とし、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項3、5について
訂正事項3、5は、それぞれ本件訂正前の請求項3、5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項4について
訂正事項4は、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項3によって削除された請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、2について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、2、4に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1、2、4を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、2、4の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
包装材用積層フィルムであって、
植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物による単層構成のシーラントフィルムと、
基材フィルムと
を有し、
前記基材フィルムは、石油由来のポリプロピレンフィルム、石油由来のナイロンフィルム、石油由来のポリエチレンテレフタラートフィルム、植物由来のエチレングリコールと石油由来のテレフタル酸との縮合重合にて得られた植物由来のポリエチレンテレフタラートフィルムのいずれかであり、
前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有し、
前記シーラントフィルムは、0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体を含まないこと、を特徴とする包装材用積層フィルム。
【請求項2】
包装材用積層フィルムであって、
植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成のシーラントフィルムと、
基材フィルムと
を有し、
前記基材フィルムは、石油由来のポリプロピレンフィルム、石油由来のナイロンフィルム、石油由来のポリエチレンテレフタラートフィルム、植物由来のエチレングリコールと石油由来のテレフタル酸との縮合重合にて得られた植物由来のポリエチレンテレフタラートフィルムのいずれかであり、
前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有し、
前記シーラントフィルムは、0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体を含まないこと、
前記植物由来の低密度ポリエチレン樹脂は、バイオマス度を10~100%有することを特徴とする
包装材用積層フィルム。
【請求項4】
前記シーラントフィルムと、前記基材フィルムとの間に更に中間層を備えることを特徴とする
請求項1に記載の包装材用積層フィルム。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和5年1月20日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
取消理由3(新規事項)
令和2年10月28日に提出された手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定を満たさない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2013-177531号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2014-46674号公報(当審が発見した文献)
引用文献3:特開2015-6923号公報(当審が発見した文献)
2 当審の判断
(1)引用文献等の記載及び引用発明
ア 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に積層して用いるシーラントフィルムであって、
1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルムであり、
基材層積層面を形成する最表層が、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層であり、
シーラントフィルム全体のバイオマス度が45~80%であることを特徴とする、上記シーラントフィルム。
・・・
【請求項4】
基材層と、請求項1~3のいずれか1項に記載のシーラントフィルムからなる層とを有することを特徴とする包装材。
【請求項5】
請求項4に記載の包装材を用いてなる包装袋。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決し、基材層と高いラミネート強度を示し、且つ、滑り性に優れ、且つ、フィルム全体として少なくとも45%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減されたシーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々研究の結果、植物由来ポリエチレン系樹脂の配合率が上がるにつれて起きるラミネート強度の低下が、植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物、例えばモノマー、オリゴマー等のフィルム表面上へのブリードアウト(析出)に起因していることを見出した。さらに、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むシーラントフィルムにおいて、その基材層積層面を、石油由来ポリエチレン系樹脂のみからなる層で覆うことにより、滑り性を低下させることなく、該低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ、基材層とのラミネート強度を高められることを見出した。」
「【0024】
そして、該シーラントフィルムにおいて、各層の厚さの比は、シーラントフィルム全体のバイオマス度が45~80%、より好ましくは50~80%となるように設定される。植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層の厚さの比が大きい程、高いバイオマス度が達成される。しかしながら、この層が、基材層積層面を形成する石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層〔1〕に比して厚過ぎて、バイオマス度が80%を超えると、低分子量化合物のフィルム表面へのブリードアウトを十分に防ぐことができず、基材層を積層した際に所望のラミネート強度が得られない。」
「【0026】
<II>植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層
本発明において、「植物由来」とは、植物を原料として得られるアルコールから製造される、植物原料に由来する炭素を含むことを意味する。
【0027】
本発明において、植物由来ポリエチレン系樹脂は、植物原料から得られたバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンの単独重合体、あるいは、該植物由来エチレンと他の少量のコモノマーとの共重合体である。
【0028】
具体的には、バイオエタノールから誘導されたエチレンを重合して得られる高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.940g/cm3以上)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度0.925以上0.940g/cm3未満)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.925g/cm3未満)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.910~0.925g/cm3、エチレンとα-オレフィンとの共重合体)、及びこれらの混合物を挙げることができる。」
「【0041】
<V>基材層
本発明のシーラントフィルムは、用途に応じて種々の基材層を積層した積層体として用いることができる。
本発明のシーラントフィルムに積層する基材としては、金属類、セラミックス類、木材類、紙類などであってもよいが、包装材料の分野では、熱可塑性樹脂で構成されたフィルム及び/又は紙である場合が多い。
【0042】
基材を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ハロゲン含有樹脂(塩化ビニル系樹脂など)、ビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、セルロースエステル類などが例示できる。
【0043】
さらに、バイオマス度を高めるため、基材フィルムも植物由来の樹脂フィルムであってもよい。このようなフィルムはポリ乳酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等で構成できる。これらのフィルムは単独の熱可塑性樹脂で形成してもよく、二種以上の熱可塑性樹脂で構成された複合体(アロイ系フィルム)又は積層体であってもよい。これらのフィルムのうち、通常、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリ乳酸系樹脂フィルムなどを用いる場合が多い。
これらの基材フィルムは無延伸であってもよく、一軸又は二軸延伸フィルムであってもよい。」
「【0049】
さらに、基材フィルム上に、本発明のシーラントフィルムを構成する樹脂を押出コーティングすることにより積層することもできる。
本発明の更なる態様において、基材フィルム上またはシーラントフィルムと基材フィルムとの間に、文字、図形、記号、絵柄等の印刷層を設けてもよい。
上記で使用する接着剤や印刷インキとして、植物由来樹脂を含むものを使用することにより、バイオマス度をさらに高めることもできる。」
「【0053】
<VIII>バイオマス度
「バイオマス度」とは、石油由来の原料と、植物由来の原料(バイオマス)との混合比率を表す指標であり、放射性炭素(C14)の濃度を測定することにより決定され、下記式で表される。
バイオマス度(%)=C14濃度(pMC)×0.935
このC14は、植物由来の原料中には一定濃度で含まれるが、地中に閉じ込められた石油中にはほとんど存在しない。したがって、C14の濃度を加速器質量分析により測定することにより、植物由来の原料の含有割合の指標とすることができる。
【0054】
本発明のシーラントフィルムは、優れた耐候性及び隣接する層との高いラミネート強度を示しながらも、植物由来樹脂を高い配合率で含み、45~80%、より好ましくは50~80%もの高いバイオマス度を示すことができる。バイオマス度が80%を超える程に植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層を厚くすると、フィルム表面へのブリードアウトを十分に防ぐことができず、基材層を積層した際に所望のラミネート強度が得られない。
【0055】
本発明において、フィルム中のC14の濃度の測定は、次のとおりに行う。すなわち、測定対象試料を燃焼して二酸化炭素を発生させ、真空ラインで精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを精製させる。そして、このグラファイトを、タンデム加速器をベースとしたC14-AMS専用装置(NEC社製)に装着して、C14の計数、C13の濃度(C13/C12)、C14の濃度(C14/C12)の測定を行い、この測定値から標準現代炭素に対する試料炭素のC14濃度の割合を算出する。標準試料としては、米国国立標準局(NIST)から提供されるシュウ酸(HOXII)を使用する。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
石油由来LLDPE((株)プライムポリマー製エボリューSP2020、密度0.916kg/m3、MFR=2.3g/10分)99質量%とスリップ剤(日本ユニカー(株)製M-3)1質量%とを十分に溶融混練し、第1の樹脂組成物を調製した。
また、植物由来LLDPE(ブラスケム社製C4-SLL118、密度0.916kg/m3、MFR=1.0g/10分、バイオマス度87%)99質量%とスリップ剤(日本ユニカー(株)製M-3)1質量%とを十分に溶融混練し、第2の樹脂組成物を調整した。
第1及び第2の樹脂組成物を用いて、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により製膜し、第1の樹脂組成物(基材層積層面、厚さ25μm)/第2の樹脂組成物(中間層、厚さ70μm)/第1の樹脂組成物(ヒートシール面、厚さ25μm)の3層からなる、本発明のシーラントフィルムを製造した。バイオマス度は50%であった。
【0057】
[実施例2]
石油由来LLDPE((株)プライムポリマー製エボリューSP2020、密度0.916kg/m3、MFR=2.3g/10分)70質量%、石油由来LDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製LDPE-F120N、密度0.920kg/m3、MFR=1.2g/10分)29質量%、及びスリップ剤(日本ユニカー(株)製M-3)1質量%を十分に溶融混練し、第1の樹脂組成物を調製した。
また、植物由来LLDPE(ブラスケム社製C4-SLL118、密度0.916kg/m3、MFR=1.0g/10分、バイオマス度87%)99質量%とスリップ剤(日本ユニカー(株)製M-3)1質量%とを十分に溶融混練し、第2の樹脂組成物を調整した。
【0058】
第1及び第2の樹脂組成物を用いて、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により製膜し、第1の樹脂組成物(基材層積層面、厚さ25μm)/第2の樹脂組成物(中間層、厚さ70μm)/第1の樹脂組成物(ヒートシール面、厚さ25μm)の3層からなる、本発明のシーラントフィルムを製造した。バイオマス度は50%であった。
【0059】
[実施例3]
石油由来LLDPE((株)プライムポリマー製エボリューSP2020、密度0.916kg/m3、MFR=2.3g/10分)99質量%とスリップ剤(日本ユニカー(株)製M-3)1質量%とを十分に溶融混練し、第1の樹脂組成物を調製した。
また、植物由来LLDPE(ブラスケム社製C4-SLL118、密度0.916kg/m3、MFR=1.0g/10分、バイオマス度87%)99質量%とスリップ剤(日本ユニカー(株)製M-3)1質量%とを十分に溶融混練し、第2の樹脂組成物を調整した。
第1及び第2の樹脂組成物を用いて、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により製膜し、第1の樹脂組成物(基材層積層面、厚さ10μm)/第2の樹脂組成物(ヒートシール面、厚さ120μm)の2層からなる、本発明のシーラントフィルムを製造した。バイオマス度は80%であった。」
(イ)引用文献2に記載された発明
引用文献2には、特に【0026】~【0028】の記載を参考にして、「植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層」の「植物由来ポリエチレン系樹脂」として「高圧法低密度ポリエチレン」を用いたものに着目すると、次の発明が記載されている。
「基材層と、
基材層に積層して用いるシーラントフィルムであって、
1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルムであり、
基材層積層面を形成する最表層が、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層であり、
シーラントフィルム全体のバイオマス度が45~80%であり、
植物由来ポリエチレン樹脂が、植物由来のエチレンを重合されて得られた高圧法低密度ポリエチレンであるシーラントフィルムからなる層と
を有する包装材。」(以下「引用発明1」という。)
イ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、
前記ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度80~100%を有する植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物による前記フィルムをヒートシール性フィルムとすることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。
【請求項2】
前記植物由来ポリエチレン系樹脂を5~90モル%と、石油由来ポリエチレン系樹脂を10~95モル%とを含む前記樹脂組成物を使用して、下記の(A)または(B)あるいは(C)で構成してなることを特徴とする、請求項1に記載の包装材用シーラントフィルム。
(A)前記樹脂組成物と、前記石油由来のポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成
(B)中間層を前記樹脂組成物とし、外層および内層を前記石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成
(C)中間層を前記樹脂組成物と、前記石油由来ポリエチレン系樹脂とを混合した層とし、外層および内層を前記石油由来ポリエチレン系樹脂とした多層構成
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルムを、基材フィルムと積層させたことを特徴とする包装材用積層フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような包装袋では、上述したように、包装袋を構成する樹脂組成物に石油由来原料以外の生分解性樹脂を含有させて石油由来原料の比率を下げているものの、石油系樹脂と比較して引裂強度やヒートシール強度などの加工適性が著しく劣り、生産性を向上させることができないという問題があった。
従って、この発明の目的は、再生可能資源である植物由来のポリエチレン系樹脂を原料に用いて、石油資源の節約を可能とするとともに、二酸化炭素の排出量削減による環境にやさしい包装材用シーラントフィルムおよび包装材用積層フィルム、ならびにこれらのフィルムを用いた加工適性に優れる包装袋を提供することにある。」
「【0022】
図1は、サトウキビ由来のポリエチレン製造の一例を示すフロー図、図2は本願発明のサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【0023】
この図1に示すように、畑より刈り取ったサトウキビをから取り出した糖液を加熱濃縮して結晶化させた粗糖と廃糖密とを遠心分離機で分離する。次いで、廃糖密を適切な濃度まで水で希釈し、酵母菌により発酵させてエタノールを生成する。そして、このバイオエタノールを加熱して触媒存在下で分子内脱水反応により得られたエチレンを、重合触媒により重合させてポリエチレンが得られる。なお、植物由来のエチレンおよびポリエチレンは、石油由来のエチレンおよびポリエチレンと品質同等性が確認されている。」
「【0026】
本願では、上記気相重合法にて得られたサトウキビ(サトウキビに限定されず、その他直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の製造原料となる植物であればよい)由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物1を用いて、図2に示すようなフィルムF1とすることができる。」
「【0029】
さらには、上記サトウキビ由来のポリエチレン系樹脂には、放射性炭素年代測定14Cによるバイオマス度が、80~100%を有する例えば、87%のバイオマス度を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂や、95%のバイオマス度を有する低密度ポリエチレン系樹脂が用いられる。
【0030】
ここで、植物(バイオマス)由来と石油由来の樹脂組成物は、分子量や機械的性質・熱的性質のような物性に差を生じない。そこで、これらを区別するためには、一般的にバイオマス度が用いられている。このバイオマス度では、石油由来の樹脂組成物の炭素には、14C(放射性炭素14、半減期5730年)が含まれていないことから、この14Cの濃度を加速器質量分析により測定し、樹脂組成物において、植物由来樹脂組成物の含有割合の指標にするものである。従って、植物由来の樹脂組成物を用いたフィルムであれば、そのフィルムのバイオマス度を測定すると、植物由来樹脂組成物の含有量に応じたバイオマス度が生じる。」
「【0037】
また、(B)のフィルムF3として、図4に示すように、中間層を樹脂組成物1とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂2とした多層構成にすることもできる。」
「【0041】
まず、積層フィルム3は、この図6に示すように、上記フィルムF1~F4のいずれかをシーラントフィルム4として、基材フィルム5と積層させる。
【0042】
なお、基材フィルム5としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種樹脂フィルムまたはシートを使用することができる。」
「【0048】
次に、本願発明の植物由来ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)を用いて構成したフィルムの実施例を説明する。
【実施例1】
【0049】
スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を成形することで、厚み50μmの安定して外観の優れる図1(当審注:図2の誤記である。)に示すフィルムF1を製膜することができ、そのバイオマス度を測定すると、約88%であった。なお、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に含まれるコモノマー種のブテン-1(C4)は石油由来のものであり、その含有量は1~15モル%(以下同様)である。
・・・
【実施例2】
【0053】
スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を50モル%と、石油由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂2である宇部丸善ポリエチレンLDPE-F120N(d=0.920、MFR=1.2g/10分)50モル%を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図3に示すフィルムF2に成形し、そのバイオマス度を測定すると、約44%であった。
【実施例3】
【0054】
第1層用および第3層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。同様に第2層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、第1層:第2層:第3層の層比は1:1:1とした。次いで、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図4に示すフィルムF3に成形し、そのバイオマス度を測定すると、約29%であった。
【実施例4】
【0055】
第1層用および第3層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。同様に第2層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)50重量部と、宇部丸善ポリエチレンLDPE-F120N(d=0.920、MFR=1.2g/10分)50重量部とを200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、第1層:第2層:第3層の層比は1:2:1とした。次いで、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図5に示すフィルムF4に成形し、このバイオマス度を測定すると、約22%であった。」
「【実施例8】
【0061】
実施例1同様に、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL318(d=0.918、MFR=2.7g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、Tダイキャスト製膜機により、押出し温度220℃、回転数45rpmの加工条件において樹脂組成物を成形することで、厚み120μm(1種3層)の安定して外観の優れるフィルムを製膜することができ、そのバイオマス度を測定すると、約88%であった。
【実施例9】
【0062】
実施例1同様に、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(樹脂組成物1)であるブラスケム社C4LL-LL318(d=0.918、MFR=2.7g/10分)と、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.918、MFR=3.8g/10分)とを7:3で200℃において混練溶融し、Tダイキャスト製膜機により、押出し温度220℃、回転数45rpmの加工条件において樹脂組成物を成形することで、厚み120μm(1種3層)の安定して外観の優れるフィルムを製膜することができ、そのバイオマス度を測定すると、約59%であった。
【0063】
以上詳述したように、この例のポリエチレン系樹脂からなるフィルムF1~F4は、気相重合法にて得られた直鎖状低密度の植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物1からなるものである。また、これらフィルムF1~F4をシーラントフィルムとし、基材フィルム5と積層させた積層フィルム3とするとともに、包装袋6は、この積層フィルム3からなるものである。」
「【図2】
[図:0001405771000001.jpg]
」
「【図6】
[図:0001405771000002.jpg]
」
(イ)引用文献3に記載された発明
引用文献3には、特に【0029】の記載を参考にして、「サトウキビ由来のポリエチレン系樹脂」として「低密度ポリエチレン系樹脂」を用いたものに着目し、シーラントフィルムの積層について【請求項1】、【請求項3】、【0041】、【図2】、【図6】の記載を参考にすると、次の発明が記載されている。
「ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって、
前記ポリエチレン系樹脂は、植物由来のエチレンを重合させて得られたものであって、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度95%を有する低密度ポリエチレン系樹脂である植物由来ポリエチレン系樹脂を用いた樹脂組成物であって、前記樹脂組成物による前記フィルムをヒートシール性フィルムとする包装材用シーラントフィルムを、
基材フィルムと積層させた包装材用積層フィルム。」(以下「引用発明2」という。)
(2)取消理由2(引用文献3を主引用文献とする進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「包装材用シーラントフィルム」は本件発明1の「シーラントフィルム」に相当し、以下同様に、「基材フィルム」は「基材フィルム」に、「包装材用積層フィルム」は「包装材用積層フィルム」に相当する。
引用発明2の「植物由来のエチレンを重合させて得られたものであって、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度95%を有する低密度ポリエチレン系樹脂である植物由来ポリエチレン系樹脂を用いた樹脂組成物」と本件発明1の「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物」とは、植物由来のエチレンを重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
包装材用積層フィルムであって、
植物由来のエチレンを重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物によるシーラントフィルムと、
基材フィルムと
を有する包装材用積層フィルム。
[相違点2-1]
植物由来のエチレンを重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物に関して、本件発明1は「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂で単独の樹脂組成物」であるのに対して、引用発明2は「植物由来のエチレンを重合させて得られたものであって、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度95%を有する低密度ポリエチレン系樹脂である植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物」である点。
[相違点2-2]
本件発明1の「シーラントフィルム」は「単層」であるのに対して、引用発明2の「包装材用シーラントフィルム」はそのようなものであるか不明である点。
[相違点2-3]
本件発明1は「前記基材フィルムは、石油由来のポリプロピレンフィルム、石油由来のナイロンフィルム、石油由来のポリエチレンテレフタラートフィルム、植物由来のエチレングリコールと石油由来のテレフタル酸との縮合重合にて得られた植物由来のポリエチレンテレフタラートフィルムのいずれかであ」るのに対して、引用発明2の「基材フィルム」はそのようなものであるか不明である点。
[相違点2-4]
本件発明1は「前記包装材用積層フィルムは、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度を少なくとも25%有」するのに対して、引用発明2はそのようなものであるか不明である点。
[相違点2-5]
本件発明1は「前記シーラントフィルムは、0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体を含まない」のに対して、引用発明2の「シーラントフィルム」はそのようなものであるか不明である点。
(イ)判断
a 相違点2-1について
低密度ポリエチレンを高圧法によって得ることは周知慣用の技術であるから、引用発明2における低密度ポリエチレンを一般的な高圧法にて得られるものとして、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
b 相違点2-2について
引用文献3の【0026】、【0041】、【0049】、【図2】、【図6】には、植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物によるフィルムをヒートシール性フィルムとする態様として、単層構成のものが記載されており、引用発明2における「包装材用シーラントフィルム」を単層構成のものとし、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
c 相違点2-3について
引用文献3の【0042】には、基材フィルムとして、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどが例示されている。
引用発明2における基材フィルムの材料としてどのようなものを用いるかは、当業者が適宜決め得ることであり、引用文献3の【0042】に例示されたものや周知の基材の材料を採用して、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
d 相違点2-4について
引用文献3の【0030】には、放射性炭素(14C)濃度からバイオマス度を算出することが記載され、また、引用文献3の【0004】には、「石油資源の節約を可能とするとともに、二酸化炭素の排出量削減による環境にやさしい・・・包装材用積層フィルム・・・を提供する」という課題が記載されている。
そして、引用発明2の包装材用積層フィルムのバイオマス度をどの程度とするかは当業者が適宜決め得る事項であり、上記課題に基づけば、より高いバイオマス度とすること、すなわち、少なくとも25%を超えるバイオマス度とすることに格別の創意を要するものではない。したがって、相違点2-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
e 相違点2-5について
引用文献3の実施例1~4、8、9(【0048】~【0055】、【0061】~【0063】)に記載されたシーラントフィルムには、いずれも0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体が含まれていないから、引用発明2のシーラントフィルムを、0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体を含まないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
f 総合検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件発明1の奏する作用効果は、引用発明2から予測される程度のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。
g 小括
したがって、本件発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2について
「シーラントフィルム」を、「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成」のものとすることは、引用文献3やその他の証拠には記載されておらず、引用文献3に記載された発明における「包装材用シーラントフィルム」を、「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成」のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明2は、引用文献3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明4について
本件発明4と引用発明2とは、相違点2-1~2-5に加えて、本件発明4は「前記シーラントフィルムと、前記基材フィルムとの間に更に中間層を備える」のに対して、引用発明2はそのようなものであるか不明である点(以下「相違点2-6」という。)においても相違する。
相違点2-1~2-5については、上記ア(イ)a~eで述べたとおりである。
相違点2-6について検討するに、包装材において、シーラントフィルムと基材層との間に中間層を備えることは、例示するまでもなく周知であるから、引用発明2における「包装材用シーラントフィルム」と「基材フィルム」との間に更に中間層を備える構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明4は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)取消理由1(引用文献2を主引用文献とする進歩性)について
本件発明2について検討する。
ア 対比
本件発明2と引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも、「シーラントフィルム」に関して、本件発明2は、「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成のシーラントフィルム」であるのに対して、引用発明1は、「1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルム」である点(以下「相違点1」という。)において相違する。
イ 判断
相違点1について検討する。
引用文献2には、「基材層と高いラミネート強度を示し、且つ、滑り性に優れ、且つ、フィルム全体として少なくとも45%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減されたシーラントフィルム」(【0008】)とするために、「植物由来ポリエチレン系樹脂を含むシーラントフィルムにおいて、その基材層積層面を、石油由来ポリエチレン系樹脂のみからなる層で覆うことにより、滑り性を低下させることなく、該低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ、基材層とのラミネート強度を高められることを見出し」(【0009】)、「シーラントフィルム」を「1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルム」(【請求項1】)としたものであることが記載されている。
そうすると、引用発明1における「シーラントフィルム」を、「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成」のものとすることに阻害要因がある。
したがって、本件発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)取消理由3(新規事項)について
令和2年10月28日に提出された手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1に付加された「前記シーラントフィルムは、0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体を含まないこと」という発明特定事項は、「シーラントフィルム」において、「0.2質量%以上のシリカ、5.0質量%以上の酸化チタン、アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体」を含むものを除外するものであって、当該除外によって本件発明の技術的課題に何らかの影響が及ぶものではないから、当初明細書等の全て記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、令和2年10月28日に提出された手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった本件発明2についての特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要(甲1を主引用文献とする進歩性)
請求項2に係る発明は、甲第1号証(上記引用文献1)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 当審の判断
(1)引用発明
引用文献1の【請求項1】、【請求項13】、【0001】、【0006】、【0015】~【0016】、【0023】、【0033】~【0045】、【0066】~【0085】、【0091】、【0094】、【0097】~【0098】、【0100】の記載からみて、特に、比較例1のシーラントフィルムにナイロンフィルムをドライラミネートしたものに着目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「包装材用積層フィルムであって、植物由来LLDPE58質量%、石油由来LLDPE41質量%及びスリップ剤1質量%からなり、EMAAを含まない樹脂組成物によるシーラントフィルムの基材層積層面に、ナイロンフィルム(厚さ15μm)をドライラミネートしたものであり、シーラントフィルムは、厚さ120μmで押出製膜することにより製造され、放射性炭素(C14)の濃度を測定することにより決定されるバイオマス度は約50%である、包装材用積層フィルム。」
(2)対比
本件発明2と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも、「シーラントフィルム」に関して、本件発明2は、「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成のシーラントフィルム」であるのに対して、甲1発明は、「植物由来LLDPE58質量%、石油由来LLDPE41質量%及びスリップ剤1質量%からなり、EMAAを含まない樹脂組成物によるシーラントフィルム」である点(以下「相違点3」という。)において相違する。
(3)判断
「シーラントフィルム」を、「植物由来のエチレンを高圧法にて重合されて得られた植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による単層構成」のものとすることは、引用文献1やその他の証拠には記載されておらず、甲1発明における「シーラントフィルム」を、「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と石油由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物による」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明2は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項2に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項3、5は、本件訂正により削除されたため、請求項3、5に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701198