特許異議申立
2024-700462
電気生理学的マッピングカテーテル用の単極基準電極
- 審判番号
- 2024-700462
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-142872
- 登録番号
- 7391562
- 請求日
- 2024年05月15日
- 審決日
- 2024年10月01日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
- 【権利者代理人】加藤 公延
- 【権利者代理人】押野 宏
- 【権利者代理人】永田 豊
- 【権利者代理人】大島 孝文
- 【権利者代理人】福川 晋矢
- 【権利者代理人】太田 司
- 【異議申立人】藤本 歩
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 渡▲辺▼ 純也
- 分類
- P1652.537-Y (A61B) / P1652.113-Y (A61B) / P1652.121-Y (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7391562号発明「電気生理学的マッピングカテーテル用の単極基準電極」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7391562号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7391562号の請求項1~22に係る特許についての出願は、令和元年(2019年)8月2日(パリ条約による優先権主張2018年8月3日、米国、2019年6月25日、米国)に出願され、令和5年11月27日にその特許権の設定登録がされ、同年12月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1、2に係る特許に対し、令和6年5月15日に特許異議申立人 藤本歩(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、2の記載は、次のとおりである。異議申立書5~6頁にて付された分説記号を踏まえ、当審にて各構成単位冒頭に「A」などの分説記号を付した。構成単位について分説記号を用い「構成要件A」又は「構成A」などということがある。
「 【請求項1】
A (a)シャフトと、
B (b)前記シャフトの遠位端にあるエンドエフェクタであって、遠位端と近位端とを有し、前記遠位端と前記近位端との間に長手方向中間点を有し、心臓血管系内の解剖学的経路に適合するようにサイズ決めされている、エンドエフェクタと、
AB を備える、装置であって、
B 前記エンドエフェクタは、
C (i)心臓血管組織に接触し、それによって電位を取得するように構成されている、少なくとも1つのセンサ電極と、
D (ii)接触している流体から電位を取得するように構成されており、前記エンドエフェクタの前記長手方向中間点に対して近位に位置している、基準電極と、
を備え、
E 前記エンドエフェクタは、前記基準電極が組織と接触することを防止するように構成されており、
F 前記エンドエフェクタが前記シャフトの遠位端から延在する円筒形部分を備え、前記基準電極が前記円筒形部分に包み込まれている、
AB 装置。
【請求項2】
G 前記エンドエフェクタは、前記長手方向中間点に対して近位の第1の部分と前記長手方向中間点に対して近位の第2の部分とを有する輪郭を画定し、
H 前記輪郭の前記第1の部分は、前記輪郭の前記第2の部分に対して近位にあり、前記エンドエフェクタの前記輪郭は、
I (A)前記エンドエフェクタの前記近位端に位置する近位面における第1の断面積であって、前記近位面は、前記輪郭の前記第1の部分の近位境界を画定する、第1の断面積と、
J (B)前記輪郭の前記第1の部分と前記第2の部分との間に境界を画定する中間面における第2の断面積であって、前記第2の断面積は、前記第1の断面積と実質的に等しい、第2の断面積と、
K (C)前記輪郭の前記第2の部分の遠位境界を画定する遠位面における第3の断面積と、
を有する、請求項1に記載の装置。」
第3 特許異議の申立について
1 申立理由の概要
申立人は、証拠として下記2に示す甲第1号証(以下「甲1」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1、2に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(明確性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でないから、請求項1、2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(新規性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(進歩性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2017/192480号
第4 甲1の記載等
1 甲1の記載
申立人が提出した甲1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。なお、甲1は英語文献のため、文章を摘記するにあたっては、原文を記載せずに、申立人にて提出された日本語翻訳文のみを記載する。
「【0055】
図21は、アブレーションシステムのカテーテルの遠位端部分の斜視図である。
【0056】
図22は、図21の断面E-Eに沿った図21のカテーテルの断面側面図である。」、
「【0069】
図1は、患者102に実施される心臓アブレーション治療中のアブレーションシステム100の略図である。アブレーションシステム100は、延長ケーブル106を介して、カテーテルインターフェースユニット108に接続されるカテーテル104を含む。カテーテルインターフェースユニット108は、処理ユニット109aと、非一過性のコンヒ°ュータ読み取り可能な記憶媒体109bと、グラフィカルユーザインターフェース110とを含むコンピューティングデバイスであることができる。処理ユニット109aは、1つ以上のプロセッサを含むコントローラであることができ、記憶媒体109bは、別様に示されない、または文脈から明白とならない限り、本明細書に説明される種々の方法の1つ以上の部分を処理ユニット109aの1つ以上のプロセッサに行わせるためのその上に記憶されるコンピュータ実行可能命令を有することができる。
【0070】
マッピングシステム112、記録システム111、潅注ポンプ114、および発生器116が、カテーテルインターフェースユニット108に接続されることができる。潅注ポンプ114は、流体ライン115を介して、アブレーションカテーテル104に取り外し可能かつ流動的に接続されることができる。発生器116も、または代わりに、ワイヤ117のうちの1つ以上のものを介して、患者102の皮膚に取り付けられる1つ以上のリターン電極118に接続されることができる。記録システム111は、アブレーション治療全体を通して、および治療前後に、使用されることができる。マッピングシステム112は、アブレーション治療に先立っておよび/またはその間、患者102の心臓組織をマッピングし、アブレーションを要求する心臓組織の領域または複数の領域を決定するために使用されることができる。
・・・
【0075】
さらに、拡張状態では、アブレーション電極124の変形可能部分142は、組織との十分な接触力に応じて変形可能であり、変形の形状および範囲は、少なくとも部分的に、アブレーション電極124の変形可能部分142上のセンサ126から受信された信号に基づいて検出されることができる。以下により詳細に説明されるように、センサ126は、1つ以上のパラメータ測定モードで使用されることができ、例えば、電極、サーミスタ、超音波変換器、および光ファイバーのうちの1つ以上のものを含むことができる。」、
「【0203】
別の例として、アブレーション電極の変形可能部分に沿ってセルを形成するための支柱のある配置が、説明されたが、他の構成も、加えて、または代替として、可能である。例えば、ここで図21および22を参照すると、カテーテル204は、複数のセル247を画定する支柱24 4bを有するアブレーション電極224を含むことができ、支柱244bは、アブレーション電極224の変形可能部分242の近位領域から遠位領域への方向に徐々に一緒にまとめられる。効率的かつ明確な説明のために、図21および22における200番台の要素番号によって指定される要素は、別様に明示的に示されない、または文脈から明白とならない限り、差異を示すこと、または図21および22を参照してより容易に理解される特徴を説明することを除き、本明細書に説明される100番台の要素番号(プライム付きおよび二重プライム付き要素番号を含む)に類似するか、またはそれと相互交換可能であり、したがって、100番台の要素番号を有する対応要素と別個に説明されない。したがって、例えば、図21および22におけるカテーテル204は、別様に明示的に示されない、または文脈から明白とならない限り、概して、カテーテル104(図1-4)に類似すると理解されるべきである。
・・・
【0209】
カテーテル204は、本明細書に説明される種々の異なる方法のうちの任意の1つ以上のものに従って、形成されることができる。例えば、アブレーション電極224は、本明細書に説明されるように、アブレーション電極224が2つの開放端部を有するように、平坦シートまたは管から形成されることができる。留め具241bは、本明細書に説明される種々の異なる方法のいずれかに従って、支柱244bの少なくともいくつかの端部を通して挿入され、支柱244bの端部を結合し、アブレーション電極224の2つの開放端部のうちの1つを閉鎖することができる。アブレーション電極224の開放端部(例えば、留め具241bと反対の端部)は、カテーテルシャフト222の遠位端部分232に結合され、カテーテル204を形成することができる。
・・・
【0216】
再び、図21および22を参照すると、潅注要素228は、変形可能部分242が潅注要素228の周りにエンクロージャを形成するように、アブレーション電極224の変形可能部分242によって包み込まれることができる。潅注要素228は、本明細書に説明される種々の異なる潅注要素のいずれかであることができ、カテーテルシャフト222と流体連通することができる。例えば、潅注要素228は、中心軸CL’-CL’に実質的に沿って配置されることができ、カテーテルシャフト222の遠位端部分232から遠位に延びることができ、さらにまたは代わりに、潅注要素228に沿って配置され複数の潅注孔234を画定し、潅注流体をアブレーション電極224の変形可能部分242に向かわせることができる。加えて、または代替として、中心電極235は、潅注要素228に沿って配置され、直接または間接的に、カテーテルシャフト222の遠位端部分232に結合されることができる。
【0217】
アブレーション電極224の変形可能部分242に加えられる力がないとき、中心電極235は、センサ226から間隔を置かれる。変形可能部分242が、変形可能部分242に加えられる力の適用を通して組織と接触させられるので、組織に対する変形可能部分242の向きと無関係に、変形可能部分242、したがって、センサ226は、中心電極235が組織と初期接触するより前に組織と初期接触することを理解されたい。ある実装では、中心電極235は、通常動作の下で、組織から間隔を置かれたままである。すなわち、アブレーション電極224の変形可能部分242は、通常範囲の接触力(約100g未満(例えば、約50g未満))の下で、組織から中心電極235の間隔を維持するために十分に剛体であることができる。
【0218】
中心電極235およびセンサ226(表面電極としての役割を果たす)によって検出された(例えば、受動的に検出される)電気活動は、中心電極235とセンサ226との各独特の対に関連付けられたそれぞれの電気記録図の基礎を形成することができる。例えば、6つのセンサ226が存在する実装では、中心電極235は、センサ226との6つの電極対を形成することができ、順に、6つのそれぞれの電気記録図のための基礎を形成する。」、
図1
「
[図:0001416493000001.jpg]
」、
図21
「
[図:0001416493000002.jpg]
」、
図22
「
[図:0001416493000003.jpg]
」
2 甲1に記載された発明
(1)看取事項1
図21及び図22から、アブレーション電極224の変形可能部分242は、実質的に球状に実装され、アブレーション電極224の変形可能部分242の近位領域は、略円筒形状であり、カテーテルシャフト222の遠位端部分232に結合されることが看て取れる。
(2)看取事項2
図21及び図22から、中心電極235は、実質的に球状に実装された変形可能部分242の中心位置に配置されていることが看て取れる。
(3)甲1発明
上記看取事項1及び2を含む上記1の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。当審にて各構成単位冒頭に「a」などの分説記号を付した。構成単位について分説記号を用い「構成要件a」又は「構成a」などということがある。
「a 患者に実施される心臓アブレーション治療中のアブレーションシステムが含むカテーテル204であって、(【0069】)
b カテーテル204は、複数のセル247を画定する支柱244bを有するアブレーション電極224を含むことができ、(【0203】)
c アブレーション電極224の変形可能部分242は、実質的に球状に実装され、アブレーション電極224の変形可能部分242の近位領域は、略円筒形状であり、カテーテルシャフト222の遠位端部分232に結合され、(看取事項1)
d 中心電極235は、実質的に球状に実装された変形可能部分242の中心位置に配置され、(看取事項2)
e アブレーション電極224の変形可能部分242に加えられる力がないとき、中心電極235は、アブレーション電極224の変形可能部分242上のセンサ226から間隔を置かれ、変形可能部分242上のセンサ226は、中心電極235が組織と初期接触するより前に組織と初期接触し、中心電極235は、通常動作の下で、組織から間隔を置かれたままであり、(【0075】、【0217】)
f 中心電極235およびセンサ226(表面電極としての役割を果たす)によって検出された(例えば、受動的に検出される)電気活動は、中心電極235とセンサ226との各独特の対に関連付けられたそれぞれの電気記録図の基礎を形成することができる、(【0218】)
g カテーテル204。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(明確性)
(1)申立人の主張
特許異議申立書において、申立人は、以下のように主張している。
「特許法第36条第6項第2号について(同法第113条第4号)
本件特許発明1は、構成要件Fの「円筒形部分」が不明確であるため、当業者が請求項の記載から発明を明確に把握できない。
本件特許発明2は、構成要素Gの「第1の部分」および「第2の部分」と、本件特許発明1の構成要素Fの「円筒形部分」との関係が不明確であり、また構成要件Jの「実質的に等しい」が不明確であるため、当業者が請求項の記載から発明を明確に把握できない。」(特許異議申立書19頁)
(2)申立人の主張について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。
上記の観点を踏まえて、以下、検討する。
ア 構成要件Fの「円筒形部分」について
(ア)請求項の記載
本件発明1は、構成要件Fにて「前記エンドエフェクタが前記シャフトの遠位端から延在する円筒形部分を備え、前記基準電極が前記円筒形部分に包み込まれている」ことを発明特定事項としている。
(イ)明細書の記載及び図面
上記(1)の申立人の主張に関連する事項について、明細書には、図面とともに次の記載がある(下線は当審によるもの)。
「【図面の簡単な説明】
・・・
【図5】エンドエフェクタアームが省略され、エンドエフェクタ輪郭の模式図が円筒形部分とベルマウス形状の切頭円錐形部分とを含んでいる、図1のカテーテルアセンブリの遠位端の端の斜視図を示す。
【図6】エンドエフェクタアームが省略され、エンドエフェクタ輪郭の模式図が円筒形部分と角錐形の切頭円錐形部分とを含んでいる、図1のカテーテルアセンブリの遠位端の端の斜視図を示す。
【図7】1つのアームが3セグメント構成であり、他のアームが省略されている、図3のエンドエフェクタの部分側面立面図を示す。
【図8】図1のカテーテルアセンブリに組み込むことが可能な例示的で代替的なエンドエフェクタの側面立面図を示す。
【図9】図8のエンドエフェクタの中央シャフトの一部分の拡大側面立面図を示す。」、
「【0026】
図5は、アーム(140)の少なくとも近位部分によって画定され得る例示的な三次元輪郭(160)を示す。アーム(140)は図5から省略されているが、アーム(140)の少なくとも近位部分は、概して、三次元輪郭(160)として示される境界の周りに配置されてもよいことを理解すべきである。いくつかの変更例では、アーム(140)は、アーム(140)の少なくとも近位部分が三次元輪郭(160)を画定するように弾性的に付勢される。本実施例の三次元輪郭(160)は、円筒形部分(162)と、ベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)とを含む。円筒形部分(162)は、近位面(166)によって近位に境界が定められ、中間面(164)によって遠位に境界が定められる。近位面(166)は、カテーテルシャフト(122)の遠位端(124)に位置する。ベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)は、中間面(164)によって近位に境界が定められ、遠位面(172)によって遠位に境界が定められる。
・・・
【0028】
図7に示されるように、アーム(140)は、第1のセグメント(141)と、第2のセグメント(143)と、第3のセグメント(145)とを含む。第1のセグメント(141)は、シャフト(122)の遠位端(124)から、近位面(166)から中間面(164)まで延在する。第1のセグメント(141)は、実質的に真っ直ぐであり、シャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)と平行である。したがって、アーム(140)の角度を付けて離間配置されたアレイの第1のセグメント(141)は、概して、図5の文脈において上述したとおり、三次元輪郭(160)の円筒形部分(162)を画定する。第2のセグメント(143)は、第1のセグメント(141)に対して遠位であり、中間面(164)から遠位面(172)まで延在する。第2のセグメント(143)は、曲線に沿って延在し、シャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)から離れる方向に屈曲している。したがって、アーム(140)の角度を付けて離間配置されたアレイの第2のセグメント(143)は、概して、図5の文脈において上述したとおり、三次元輪郭(160)のベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)を画定する。これに代えて、第2のセグメント(143)は、シャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)に対して斜めに配向されたそれぞれの直線経路に沿ってシャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)から離れる方向に延在してもよく、それによって概して、図6の文脈において上述したとおり、三次元輪郭(180)の角錐形の切頭円錐形部分(190)を画定する。第3のセグメント(145)は、第2のセグメント(143)に対して遠位にあり、遠位面(172)から遠位に延在する。第3のセグメント(145)は、シャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)に対して斜めに配向された直線経路に沿って延在する。第2のセグメント(143)が湾曲しておらず、真っ直ぐである変更例では、シャフト(122)の第3のセグメント(145)と長手方向中心軸(L-L)との間に画定される斜角は、シャフト(122)の第2のセグメント(143)と長手方向中心軸(L-L)との間に画定される斜角よりも大きくてもよい。
・・・
【0030】
本実施例では、中間面(164)は、アーム(140)は、概ね真っ直ぐであり、かつ互いに平行な状態から、それぞれの曲線に沿って互いから離れる方向に外向きに広がるように遷移する、長手方向位置を表す。三次元輪郭(160)の近位面(166)領域の断面積(Ap)は、三次元輪郭(160)の中間面(164)領域の断面積(Ai)にほぼ等しい。遠位面(172)領域の断面積(Ad)は、他の平面(164、166)の断面積よりも大きい。アーム(140)の構成が長手方向軸(L-L)に対して対称形であるため、断面積(Ap、Ai、Ad)は、例示的な図において、長手方向軸(L-L)に対して直交しているものとして示されているが、アーム(140)の広がりは、必ずしも長手方向軸(L-L)に関して対称である必要はなく、したがって、近位面、中間面及び遠位面のそれぞれの領域(Ap、Ai、Ad)は、互いに交差していてもよく、ないしは別の方法で長手方向軸(L-L)に対して非直交であってもよい。
【0031】
本実施例では、中央シャフト(150)及びリング電極(154)は、電極(154)の長手方向位置が三次元輪郭(160)の円筒形部分(162)に対応するように構成され、配置される。したがって、リング電極(154)は、中間面(164)に関連して近位に位置する。したがって、リング電極(154)は、エンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(160)の円筒形部分(162)によって包み込まれているとみなすことができる。いくつかの他の変更例では、中央シャフト(150)及びリング電極(154)は、リング電極(154)が遠位面(172)と中間面(164)との間に長手方向に配置されるように構成され、配置される。そのような変更例では、リング電極(154)は、エンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(160)のベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)によって包み込まれているとみなすことができる。
【0032】
ベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)又はエンドエフェクタ(130)の棘部分又はアーム(140)によって画定される三次元輪郭(160)の円筒形部分(162)によってリング電極(154)が包み込まれることによって、リング電極(154)の周囲の血流は、比較的円滑になることができ、これにより、リング電極(154)が比較的信頼性の高い方法で血液から電位を取得することを可能にし得る。換言すれば、リング電極(154)の周囲のアーム(140)の配置は、血流が、リング電極(154)が他の場所に配置されている場合の血流よりも乱流が少ないように、また、リング電極(154)による血液からの電位の取得が、リング電極(154)が他の場所に配置されている場合よりも信頼性が高くなるように、電極(154)の周囲の血液の流れに影響を及ぼし得る。リング電極(154)による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大は、特に、リング電極(154)が円筒形部分(164)(当審注:164は162の誤記と認める。)によって包み込まれているときに向上し得る。」、
「【0033】
図6は、アーム(140)の少なくとも近位部分によって画定され得る別の例示的な三次元輪郭(180)を示す。アーム(140)は図6から省略されているが、アーム(140)の少なくとも近位部分は、概して、三次元輪郭(180)として示される境界の周りに配置されてもよいことを理解すべきである。いくつかの変更例では、アーム(140)は、アーム(140)の少なくとも近位部分が三次元輪郭(180)を画定するように弾性的に付勢される。本実施例の三次元輪郭(180)は、円筒形部分(162)と、角錐形の切頭円錐形部分(190)とを含む。円筒形部分(162)は、近位面(166)によって近位に境界が定められ、中間面(164)によって遠位に境界が定められる。近位面(166)は、カテーテルシャフト(122)の遠位端(124)に位置する。角錐形の切頭円錐形部分(190)は、中間面(164)によって近位に境界が定められ、遠位面(192)によって遠位に境界が定められる。
・・・
【0036】
本実施例では、中央シャフト(150)及びリング電極(154)は、電極(154)の長手方向位置が三次元輪郭(180)の円筒形部分(162)に対応するように構成され、配置される。したがって、リング電極(154)は、中間面(164)に関連して近位に位置する。したがって、リング電極(154)は、エンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(180)の円筒形部分(162)によって包み込まれているとみなすことができる。いくつかの他の変更例では、中央シャフト(150)及びリング電極(154)は、リング電極(154)が遠位面(192)と中間面(164)との間に長手方向に配置されるように構成され、配置される。そのような変更例では、リング電極(154)は、エンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(180)の角錐形の切頭円錐形部分(190)によって包み込まれているとみなすことができる。
【0037】
角錐形の切頭円錐形部分(190)又はエンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(190)の円筒形部分(162)によってリング電極(154)が包み込まれることによって、リング電極(154)の周囲の血流は、比較的円滑にすることができ、これにより、リング電極(154)が比較的信頼性の高い方法で血液から電位を取得することを可能にし得る。換言すれば、リング電極(154)の周囲のアーム(140)の配置は、血流が、リング電極(154)が他の場所に配置されている場合の血流よりも乱流が少ないように、また、リング電極(154)による血液からの電位の取得が、リング電極(154)が他の場所に配置されている場合よりも信頼性が高くなるように、電極(154)の周囲の血液の流れに影響を及ぼし得る。リング電極(154)による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大は、特に、リング電極(154)が円筒形部分(162)によって包み込まれているときに向上し得る。」、
「【0041】
図8に示すように、エンドエフェクタ(200)の構成は、シャフト(210、250)の長手方向軸(L-L)に垂直である3つの平面(264、266、272)に関連して考慮されてもよい。近位面(266)は、シャフト(210)の遠位端及びエンドエフェクタ(200)の近位端に位置する。中間面(264)は、近位面(266)に対して遠位である。遠位面(272)は、中間面(264)に対して遠位である。平面(264、266)の間のエンドエフェクタ(200)の長手方向領域は、図5~図6に関連して上述した円筒形部分(162)とかなりよく似ており、円筒形の三次元輪郭を画定する円筒形部分(262)とみなすことができる。したがって、円筒形部分(262)に沿って延在するビーム(222)の部分は、シャフト(210、250)の長手方向軸(L-L)と平行なそれぞれの直線経路に沿って延在していてもよい。平面(264、272)の間のエンドエフェクタ(200)の長手方向領域は、図5に関連して上述したベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)とかなりよく似ており、ベルマウス形状の切頭円錐形の三次元輪郭を画定するベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)とみなすことができる。本実施例では、ベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)に沿って延在するビーム(222)の部分は、シャフト(210、250)の長手方向軸(L-L)から離れる方向に外向きに湾曲するそれぞれの曲線状経路に沿って延在する。遠位面(272)から遠位に延在するビーム(222)の部分は、シャフト(210、250)の長手方向軸(L-L)に向かって内向き後方に湾曲し、最終的にハブ部材(212)につながる。したがって、遠位面(272)は、ビーム(222)がそれぞれの曲線状経路に沿って外向きに延在するところから、それぞれの曲線状経路に沿って内向きに延在するところまでの遷移を表す。
【0042】
本実施例の内側シャフト(250)は、図9に示すように、内側シャフト(250)の周りに同軸状に配設されたリング電極(254)を含む。本実施例では、リング電極(254)の長手方向位置が円筒形部分(262)の長手方向位置に対応するように、かつ、リング電極(254)が円筒形部分(262)によって包み込まれるように、リング電極(254)は、平面(264、266)の間に長手方向に配置される。いくつかの他の変更例では、リング電極(254)の長手方向位置がベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)の長手方向位置に対応するように、また、リング電極(254)がベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)によって包み込まれるように、リング電極(254)は、平面(264、272)の間に長手方向に配置される。
・・・
【0044】
ベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)又はエンドエフェクタ(200)のビーム(222)によって画定される三次元輪郭の円筒形部分(262)によってリング電極(254)が包み込まれることによって、リング電極(254)の周囲の血流を比較的円滑にすることができ、これにより、リング電極(254)が比較的信頼性の高い方法で血液から電位を取得することを可能にし得る。換言すれば、リング電極(254)の周囲のビーム(222)の配置は、血流が、リング電極(254)が他の場所に配置されている場合の血流よりも乱流が少ないように、また、リング電極(254)による血液からの電位の取得が、リング電極(254)が他の場所に配置されている場合よりも信頼性が高くなるように、電極(254)の周囲の血液の流れに影響を及ぼし得る。リング電極(254)による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大は、特に、リング電極(254)が円筒形部分(262)によって包み込まれているときに向上し得る。」、
図5
「
[図:0001416493000004.jpg]
」、
図6
「
[図:0001416493000005.jpg]
」、
図7
「
[図:0001416493000006.jpg]
」、
図8
「
[図:0001416493000007.jpg]
」、
図9
「
[図:0001416493000008.jpg]
」
(ウ)明細書及び図面の整理
上記(イ)の記載によれば、以下の事項が整理される。
(図5、図7関連)
・エンドエフェクタの三次元輪郭(160)は、カテーテルシャフト(122)の遠位端(124)から延在する円筒形部分(162)と、円筒形部分(162)に続くベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)とを含むこと。(図5、【0026】)
・三次元輪郭(160)の円筒形部分(162)を画定する第1のセグメント(141)は、実質的に真っ直ぐであり、シャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)と平行であること。また、三次元輪郭(160)のベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)を画定する第2のセグメント(143)は、曲線に沿って延在し、シャフト(122)の長手方向中心軸(L-L)から離れる方向に屈曲していること。(図7、【0028】)
・本実施例では、リング電極(154)は、エンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(160)の円筒形部分(162)によって包み込まれていること。(図5、【0031】)
・変更例では、リング電極(154)は、エンドエフェクタ(130)のアーム(140)によって画定される三次元輪郭(160)のベルマウス形状の切頭円錐形部分(170)によって包み込まれていること。(【0031】)
・リング電極(154)による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大は、特に、リング電極(154)が円筒形部分(162)によって包み込まれているときに向上し得ること。(図5、【0032】)
(図6関連)
・エンドエフェクタの三次元輪郭(180)は、カテーテルシャフト(122)の遠位端(124)から延在する円筒形部分(162)と、円筒形部分(162)に続く角錐形の切頭円錐形部分(190)とを含むこと(図6、【0033】)
・本実施例では、リング電極(154)は、エンドエフェクタによって画定される三次元輪郭(180)の円筒形部分(162)によって包み込まれていること(図6、【0033】)
・変更例では、リング電極(154)は、エンドエフェクタによって画定される三次元輪郭(180)の角錐形の切頭円錐形部分(190)によって包み込まれていること。(【0036】)
・リング電極(154)による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大は、特に、リング電極(154)が円筒形部分(162)によって包み込まれているときに向上し得ること。(図6、【0037】)
(図8、図9関連)
・図8のエンドエフェクタ(200)の構成は、シャフト(210、250)の長手方向軸(L-L)に垂直である3つの平面(264、266、272)に関連して、
平面(264、266)の間のエンドエフェクタ(200)の長手方向領域は、円筒形部分(262)とみなすことができること、
平面(264、272)の間のエンドエフェクタ(200)の長手方向領域は、ベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)とみなすことができること。(図8、【0041】)
・リング電極(254)が円筒形部分(262)によって包み込まれるように、リング電極(254)は、平面(264、266)の間に長手方向に配置されること。(図9、【0042】)
・変更例では、リング電極(254)がベルマウス形状の切頭円錐形部分(270)によって包み込まれるように、リング電極(254)は、平面(264、272)の間に長手方向に配置されること。(【0042】)
(エ)明細書の記載及び図面の要点
上記(ウ)での整理から、以下の事項が要点として理解される。
「エンドエフェクタ輪郭は、シャフトの遠位端から延在する円筒形部分と、円筒形部分に続く切頭円錐形部分とを含んでおり、
円筒形部分と切頭円錐形部分との構造上の違いは、
円筒形部分を画定する第1のセグメントは、シャフトの長手方向中心軸と平行で、切頭円錐形部分を画定する第2のセグメントは、シャフトの長手方向中心軸から離れる方向に屈曲していることにあり、
本実施例として、リング電極を、円筒形部分によって包み込まれるように配置することも、変更例として、切頭円錐形部分によって包み込まれるように配置することもできるものの、
本実施例の配置のほうが、リング電極による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大が、変更例の配置よりも、特に向上し得るという効果を奏すること。」
(オ)判断
構成要件Fに係る発明特定事項の記載(上記(ア))は、それ自体、明確である。
そして、「円筒形」は、広義には、底面と上面とが異なる大きさの円を有する円筒(切頭円錐形)を含む、ことが一般常識であるとしても、明細書の記載及び図面では、上記(エ)での説示によれば、「円筒形部分」と「切頭円錐形部分」とを、構造面・効果面から明確に区別している(例えば、流体力学に関する技術常識を踏まえると、「円筒形部分」は、底面と上面とが実質的に同じ大きさの円を有する円筒であり、レイノルズ数が層流領域にあり、「切頭円錐形部分」は、底面と上面とが実質的に同じ大きさの円を有する円筒でなく、レイノルズ数が層流領域にない、など検証可能な状態となっている)ことから、構成要件Fの「円筒形部分」は、「切頭円錐形部分」と構造面・効果面から明確に区別できる「円筒形部分」に限られる、と解するのが相当といえる。
してみれば、構成要件Fの「円筒形部分」たる記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明1は不明確であるとはいえない。
(カ)申立人の具体的主張について
申立人は、「本件特許発明1における「円筒形部分」には、完全な円筒形状を有する部分だけではなく、アームが湾曲して外側に広がった形状を有する部分も含まれると解する。」(特許異議申立書13頁)、「「円筒状部分」と「切頭円錐形部分」とが互いにどのように区別されるのかが不明確であり、したがって、構成要件Fの「円筒形部分」が如何なる形状の部分を含むのか不明確である。」(特許異議申立書13頁)、「構成要件Fの「円筒形部分」が、アームが湾曲して外側に広がった部分も含む場合、アームの開き具合がどの程度までであれば特許権者が主張する格別な作用効果を奏することができるのか明確でない。」(特許異議申立書14頁)と主張するが、構成要件Fの「円筒形部分」については、上記(オ)での説示のとおり解するのが相当といえる。
よって、当該主張は採用できない。
イ 構成要素Gの「第1の部分」および「第2の部分」と、構成要素Fの「円筒形部分」との関係について
(ア)請求項の記載
本件発明1では、構成要件Fの「エンドエフェクタ」の「円筒形部分」について、
「前記シャフトの遠位端から延在する円筒形部分」と特定することで、「シャフトの遠位端」と、「エンドエフェクタ」の「円筒形部分」との位置関係を規定している。
一方、本件発明2では、構成要件Gの「前記エンドエフェクタ」の「第1の部分」と「第2の部分」について、
「H 前記輪郭の前記第1の部分は、前記輪郭の前記第2の部分に対して近位にあり、前記エンドエフェクタの前記輪郭は、
I (A)前記エンドエフェクタの前記近位端に位置する近位面における第1の断面積であって、前記近位面は、前記輪郭の前記第1の部分の近位境界を画定する、第1の断面積と、
J (B)前記輪郭の前記第1の部分と前記第2の部分との間に境界を画定する中間面における第2の断面積であって、前記第2の断面積は、前記第1の断面積と実質的に等しい、第2の断面積と、
・・・と、
を有する」と特定することで、「前記エンドエフェクタ」の「第1の部分」と「第2の部分」との位置関係を規定している。
(イ)明細書の記載及び図面
上記ア(エ)での説示によれば、「第1のセグメント」は「円筒形部分を画定」し、「第2のセグメント」は「切頭円錐形部分を画定する」から、明細書の記載及び図面の記載を踏まえると、構成要素Gの「第1の部分」は構成要素Fの「円筒形部分」であること、構成要素Gの「第2の部分」は構成要素Fの「切頭円錐形部分」であるといえる。
(ウ)判断
本件発明2では、構成要素Gの「第1の部分」及び「第2の部分」と、構成要素Fの「円筒形部分」との関係について特定されていないことは、申立人の主張するとおりである。また、明細書の記載及び図面には、上記(イ)での説示のとおり、構成要素Gの「第1の部分」が構成要素Fの「円筒形部分」であること、構成要素Gの「第2の部分」が構成要素Fの「切頭円錐形部分」である、という関係が記載されているといえる。
しかしながら、上記(ア)での説示によれば、本件発明1(構成要素F)では、「シャフトの遠位端」と、「エンドエフェクタ」の「円筒形部分」との位置関係を規定し、本件発明2では、「前記エンドエフェクタ」の「第1の部分」と「第2の部分」との位置関係を規定することにより、「エンドエフェクタ」の構造を各々異なる観点で規定しているにすぎず、その結果(「円筒形部分」と「第1の部分」・「第2の部分」との関係が判然としなくとも)、本件発明2は、その記載自体が不明確とはいえない。
してみれば、本件発明2は、構成要素Gの「第1の部分」及び「第2の部分」と、構成要素Fの「円筒形部分」との関係について特定されていないからといって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(エ)申立人の具体的主張について
申立人は、「本件特許発明2の構成要素Gにおける「第1の部分」および「第2の部分」と、本件特許発明1の構成要素Fにおける「円筒形部分」とは、互いの関係が特定されていないため、本件特許発明2は、発明が不明確である。」(特許異議申立書14頁)、「第2の部分は、構成要件Fの「円筒形部分」に含まれるか否かが全く不明である。」(特許異議申立書14~15頁)と主張するが、上記(ウ)での説示のとおりであるから、当該主張は採用できない。
ウ 構成要件Jの「実質的に等しい」について
(ア)請求項の記載
本件発明2では、構成要件Jの「実質的に等しい」について、
「前記輪郭の前記第1の部分と前記第2の部分との間に境界を画定する中間面における第2の断面積」は、「前記エンドエフェクタの前記近位端に位置する近位面における第1の断面積であって、前記近位面は、前記輪郭の前記第1の部分の近位境界を画定する、第1の断面積」と、「実質的に等しい」ことを特定している。
(イ)明細書の記載及び図面
明細書の記載及び図面において、上記ア(エ)での説示によれば、円筒形部分を画定する第1のセグメントと、切頭円錐形部分を画定する第2のセグメントは、構造面・効果面から明確に区別していることが理解される。
(ウ)判断
構成要件Jの「第1の断面積」と「第2の断面積」が「実質的に等しい」とは、カテーテル用の「エンドエフェクタ」の輪郭という、物品の構造を規定したものであるから、「断面積」が「等しい」といっても「実質的」に、第1と第2の断面積の間に誤差を含むことは、当然のことである。そして、その誤差の程度は、上記(イ)の説示を踏まえると、第1のセグメントと第2のセグメントとを構造面・効果面から明確に区別できる範囲に限られることも、当然のことである。
してみれば、構成要件Jの「実質的に等しい」たる記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明2は不明確であるとはいえない。
(エ)申立人の具体的主張について
申立人は、「構成要件Jの「実質的に等しい」は、第1の断面積と第2の断面積との差がどの程度まで含まれるのか不明確である。」(特許異議申立書15頁)と主張するが、上記(ウ)での説示のとおりであるから、当該主張は採用できない。
(3)申立理由1(明確性)のまとめ
上記(2)で検討したとおり、本件特許の請求項1、2に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でないとはいえないから、請求項1、2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであるとはいえない。
2 申立理由2(新規性)及び申立理由3(進歩性)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成A
甲1発明(構成c)の「カテーテルシャフト222」は、本件発明(構成A)の「(a)シャフト」に相当する。
(イ)構成B
構成bの「アブレーション電極224」は、構成Bの「エンドエフェクタ」に相当する。また、構成cにより、「アブレーション電極224」は、「カテーテルシャフト222の遠位端部分232」にあって、遠位領域と「近位領域」とを有し、前記遠位領域と前記「近位領域」との間に任意の位置を示す長手方向中間点を有することは、自明である。また、構成aにより、「アブレーション電極224」は、心臓血管系内の解剖学的経路に適合するようにサイズ決めされていることも、自明である。
よって、甲1発明(構成a、構成b、構成c)の「カテーテルシャフト222の遠位端部分232」にある「アブレーション電極224」であって、遠位領域と「近位領域」とを有し、前記遠位領域と前記「近位領域」との間に任意の位置を示す長手方向中間点を有し、心臓血管系内の解剖学的経路に適合するようにサイズ決めされている、「アブレーション電極224」は、本件発明1(構成B)の「(b)前記シャフトの遠位端にあるエンドエフェクタであって、遠位端と近位端とを有し、前記遠位端と前記近位端との間に長手方向中間点を有し、心臓血管系内の解剖学的経路に適合するようにサイズ決めされている、エンドエフェクタ」に相当する。
(ウ)構成AB
甲1発明(構成a)の「カテーテル204」は、本件発明1(構成B)の「装置」に相当する。
(エ)構成B-構成C
甲1発明(構成f)の「センサ226(表面電極としての役割を果たす)」は、本件発明1(構成C)の「少なくとも1つのセンサ電極」に相当する。また、甲1発明(構成e、構成f)の「アブレーション電極224の変形可能部分242上の」「センサ226(表面電極としての役割を果たす)」は、「電気記録図」を形成するために、心臓血管「組織」と「接触」し、それによって電位を取得するように構成されていることは自明である。
よって、甲1発明(構成e、構成f)の「アブレーション電極224」が、心臓血管「組織」と「接触」し、それによって電位を取得するように構成されている、「センサ226(表面電極としての役割を果たす)」を備えることは、本件発明1(構成B-構成C)の「前記エンドエフェクタ」が、「(i)心臓血管組織に接触し、それによって電位を取得するように構成されている、少なくとも1つのセンサ電極」「を備え」ることに相当する。
(オ)構成B-構成D
甲1発明(構成d)の「中心電極235」は、本件発明1(構成C)の「基準電極」に相当する。また、甲1発明(構成d、構成f)の「中心電極235」は、「電気記録図」を形成するために、接触している流体から電位を取得するように構成されていることは自明である。また、甲1発明(構成d、構成e)の「中心電極235」は、「実質的に球状に実装された変形可能部分242の中心位置に配置され」ているから、「アブレーション電極224」の任意の位置を示す長手方向中間点が遠位領域側にあると仮定した場合、「アブレーション電極224」の長手方向中間点に対して近位に位置しているといえる。
よって、甲1発明(構成d、構成e、構成f)の「アブレーション電極224」が、接触している流体から電位を取得するように構成されており、「アブレーション電極224」の長手方向中間点に対して近位に位置している、「中心電極235」を備えることは、本件発明1(構成B-構成D)の「前記エンドエフェクタ」が、「(ii)接触している流体から電位を取得するように構成されており、前記エンドエフェクタの前記長手方向中間点に対して近位に位置している、基準電極」「を備え」ることに相当する。
(カ)構成E
甲1発明(構成e)の「変形可能部分242上のセンサ226は、中心電極235が組織と初期接触するより前に組織と初期接触し、中心電極235は、通常動作の下で、組織から間隔を置かれたままであ」ることは、「アブレーション電極224」は、「中心電極235が組織と」「接触する」ことを防止するように構成されていることに他ならないから、本件発明1(構成E)の「前記エンドエフェクタは、前記基準電極が組織と接触することを防止するように構成されて」いることに相当する。
(キ)構成F
甲1発明(構成c)の「カテーテルシャフト222の遠位端部分232に結合され」る「アブレーション電極224の変形可能部分242の近位領域」が、「略円筒形状であ」ることは、構成Fの「前記エンドエフェクタが前記シャフトの遠位端から延在する円筒形部分を備え」ることに相当する。
イ 一致点・相違点
すると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「A (a)シャフトと、
B (b)前記シャフトの遠位端にあるエンドエフェクタであって、遠位端と近位端とを有し、前記遠位端と前記近位端との間に長手方向中間点を有し、心臓血管系内の解剖学的経路に適合するようにサイズ決めされている、エンドエフェクタと、
AB を備える、装置であって、
B 前記エンドエフェクタは、
C (i)心臓血管組織に接触し、それによって電位を取得するように構成されている、少なくとも1つのセンサ電極と、
D (ii)接触している流体から電位を取得するように構成されており、前記エンドエフェクタの前記長手方向中間点に対して近位に位置している、基準電極と、
を備え、
E 前記エンドエフェクタは、前記基準電極が組織と接触することを防止するように構成されており、
F’ 前記エンドエフェクタが前記シャフトの遠位端から延在する円筒形部分を備える、
AB 装置。」
(相違点1)構成F
本件発明1では、「前記基準電極が前記円筒形部分に包み込まれている」のに対し、甲1発明では、「中心電極235」が「実質的に球状に実装された変形可能部分242の中心位置に配置され」ている点。
ウ 判断
上記相違点1について検討する。
上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、引用発明でない。
また、上記相違点1に係る本件発明1の構成が、本件の最先の優先日前に周知技術といえる証拠もない。
そして、本件発明1は、構成Fを備えることで、「基準基電極による血流の乱流の減少及び検知信頼性の増大」(【0033】、【0044】)という特有な効果を奏する。
よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることではない。
エ 申立人の具体的主張について
請求人は、構成Fについて、以下のとおり主張する。
「F アブレーション電極(224)がシャフト(222)の遠位端から延在する円筒形部分(下図の仮想線Aと仮想線Bとの間の部分R)を備え、中心電極(235)が円筒形部分(R)に包み込まれている、カテーテル(204)」を看取することができる(以下に図22を転載する。仮想線および符号A,B,C,Rは申立人が付したものである)。
[図:0001416493000009.jpg]
アブレーション電極(224)における2つの仮想線(AおよびB)の間の部分(R)は、シャフト(222)の遠位端から(アブレーション電極(224)の近位端側部分を介して)延在しており、且つ円筒形状を有する。特に、項目3-4-2-1で述べたように、本件特許発明1の「円筒形部分」にはアームが湾曲した部分も含まれると解釈され得るため、上述した部分(R)が円筒形状部分に相当することは明らかである。」(特許異議申立書15~16頁)
しかし、上述した部分(R)を、申立人の言うとおり円筒形状部分とし、中心電極(235)が上述した部分(R)に包み込まれていることが看取できたとしても、「延在」とは延長して在るという意味合いであるところ、上述した部分(R)は、アブレーション電極(224)の近位端側部分を介しているから、シャフト(222)の遠位端から延在しているとはいえず、中心電極(235)が上述した部分(R)に包み込まれている構成は、本件発明1(構成F)の「前記基準電極が」「前記シャフトの遠位端から延在する」「円筒形部分に包み込まれている」構成とはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明でなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を減縮した発明であり、前記相違点1に係る本件発明1の構成を備えるものであるから、本件発明2は、本件発明1と同じ理由により、甲1発明でなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由2(新規性)及び申立理由3(進歩性)のまとめ
上記(1)及び(2)で検討したとおり、本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。また、本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700462