特許異議申立
2023-700255
PLCアダプタ及びこれを用いた電力線通信システム
- 審判番号
- 2023-700255
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-124376
- 登録番号
- 7138272
- 請求日
- 2023年03月07日
- 審決日
- 2023年06月19日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
- 【権利者代理人】鷲頭 光宏
- 【権利者代理人】緒方 和文
- 【権利者代理人】黒瀬 泰之
- 【異議申立人】藤本 歩
- 審判長/審判官
- 審判長 猪瀬 隆広
- 審判官 衣鳩 文彦
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.121-Y (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7138272号発明「PLCアダプタ及びこれを用いた電力線通信システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7138272号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7138272号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年6月29日に出願され、令和4年9月8日にその特許権の設定登録がされ、令和4年9月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年3月7日に特許異議申立人 藤本 歩は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7138272号の請求項1~6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
分電盤から延びる第1の電力線上に設けられた第1のコンセントに設置した第1のPLCモデムと前記分電盤から延びる第2の電力線上に設けられた第2のコンセントに設置した第2のPLCモデムとの間の電力線通信に用いるPLCアダプタであって、
前記第1のPLCモデムの電源プラグに接続可能な第1電源端子と、
前記第1のコンセントに接続可能な第2電源端子と、
前記第1電源端子と前記第2電源端子とを電気的に接続する一対の電源ライン上に設けられ、前記第1のPLCモデムから送出されたPLC信号を電源電力から分離すると共に、前記PLC信号の前記第1の電力線上への送出を阻止する信号分離回路と、
前記信号分離回路によって分離された前記PLC信号を出力する信号端子と、
前記信号端子に接続された通信線と、
前記通信線を前記第2の電力線と磁気結合するためのカプラ部とを備えることを特徴とするPLCアダプタ。
【請求項2】
前記信号分離回路は、
前記第1電源端子及び前記信号端子の一方から他方に向かう前記PLC信号の流れ及び前記第2電源端子から前記第1電源端子に向かう電源電力の流れを許容し、
前記第1電源端子又は前記信号端子から前記第2電源端子に向かうPLC信号の流れ及び前記第2電源端子から前記信号端子に向かう電源電力の流れを阻止する、請求項1に記載のPLCアダプタ。
【請求項3】
前記信号分離回路は、
前記一対の電源ライン上にそれぞれ設けられた第1及び第2のコイルと、
前記第1及び第2のコイルよりも前記第1電源端子側の前記一対の電源ラインの途中からそれぞれ引き出された一対の信号ラインと、
前記一対の信号ライン上にそれぞれ設けられた第1及び第2のコンデンサと、
前記第1及び第2のコイルよりも前記第2電源端子側の前記一対の電源ライン間を接続する第3のコンデンサとを含み、
前記第1及び第2のコイルは、商用周波数に対するインピーダンスが相対的に低く、前記PLC信号の周波数帯に対するインピーダンスが相対的に高く、
前記第1乃至第3のコンデンサは、商用周波数に対するインピーダンスが相対的に高く、前記PLC信号の周波数帯に対するインピーダンスが相対的に低い、請求項1又は2に記載のPLCアダプタ。
【請求項4】
前記一対の電源ライン上の少なくとも一方に設けられたヒューズをさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPLCアダプタ。
【請求項5】
前記信号分離回路と前記信号端子との間に設けられた絶縁トランスをさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のPLCアダプタ。
【請求項6】
分電盤と、
前記分電盤からそれぞれ延びる第1及び第2の電力線と、
前記第1の電力線上に設けられた第1のコンセントから電力供給を受けると共に、前記第1の電力線に向けてPLC信号を送出する第1のPLCモデムと、
前記第2の電力線上に設けられた第2のコンセントから電力供給を受けると共に、前記第2の電力線に向けてPLC信号を送出する第2のPLCモデムと、
前記第1のPLCモデムと前記第1のコンセントとの間に設けられた請求項1乃至5のいずれか一項に記載のPLCアダプタとを備えることを特徴とする電力線通信システム。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人 藤本 歩は、主たる証拠として特開2010-56633号公報(以下「文献1」という。)、従たる証拠として特開2008-124552号公報(以下「文献2」という。)、特開2007-267057号公報(以下「文献3」という。)、特開2005-64750号公報(以下「文献4」という。)、特開2008-236291号公報(以下「文献5」という。)、及び特開2007-81915号公報(以下「文献6」という。)を提出し、請求項1~6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
第4 文献の記載
1 文献1の記載、及び引用発明
(1)文献1には次の事項が記載されている。
「【0001】
本願発明は、電力線に通信信号を重畳して通信を行える電力線通信端末を接続可能な分波装置と、これを用いた集合建築物用の通信システムとに関するものである。」
「【0018】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1~図5)に基づいて説明する。
【0019】
(1).第1実施形態における集合建築物用の通信システム
まず、図1を参照しながら、第1実施形態における集合建築物用の通信システム(以下、システムと称する)について説明する。第1実施形態のシステムが採用された集合建築物は、複数の住戸2(室)と、各住戸2の居住者や来訪者が出入りする開閉扉5付きの共用玄関4(出入口)とを備えたマンション1である。共用玄関4は主(表)玄関以外に、通用玄関など複数個あってもよい。」
「【0021】
マンション1の電力供給系統は次のような構成になっている。すなわち、マンション1の近傍に立設された電柱6に、中圧配電線7と単相3線式の低圧配電線8とが装架されている。中圧配電線7と低圧配電線8とは、中圧配電線7からの中圧電圧を低圧電圧に変換する変圧器9(トランス)を介して接続されている。低圧配電線8から分岐して延びる電力引込線10は、電力量メータ11を介してマンション1に設置された分電盤12に接続されている。この場合、分電盤12には、低圧配電線8から例えば100Vの電源電圧が供給される。
【0022】
分電盤12からは、複数系統の電力線13がマンション1の各階に対応するように分岐して延びている。この点から明らかなように、分電盤12は複数系統に分岐した電力線13の根元部分になっている。なお、以下の説明及び図面では便宜上、各階に対応した電力線13に、下の階のものから順にアルファベットを付す場合がある(例えば1階の電力線の符号は13a、2階の電力線の符号は13b等)。
【0023】
また、マンション1の信号線系統は次のような構成になっている。すなわち、マンション1内には、前述の電力線13とは別に、複数系統の信号線14がマンション1の各階に対応するように分岐して延びている。第1実施形態の信号線14としては、例えば2芯のVCTFケーブル等が採用される。なお、以下の説明及び図面では、電力線13の場合と同様に、各階に対応した信号線14に、下の階のものから順にアルファベットを付す場合がある(例えば2階の信号線の符号は14b、3階の信号線の符号は14c等)。また、電力線13及び信号線14は一般に、既設のマンション1(集合建築物)に標準的に装備されているものである。
【0024】
共用玄関4の外側、マンション1の各住戸2、及び廊下や階段といった共用部3等には、分波装置としての電源コンセント16付きのデュプレクサ15が適宜配置されている。図1~図4に示すように、各デュプレクサ15は、各階に対応した電力線13と信号線14との両方に接続されている。
【0025】
第1実施形態では、共用玄関4の外側に集合インタホン装置21が配置されており、マンション1の各住戸2には室内インタホン装置22が配置されている。また、廊下や階段といった共用部3には非常警報装置23が配置されている。これら各装置21~23は、電力線13に高周波信号を重畳して通信を実行できる電力線通信端末としての電力線通信モデム25を介して、各デュプレクサ15に接続されている。
【0026】
詳細は省略するが、電力線通信モデム25は、電源コード26からの高周波信号をLAN信号に変換してから、LANケーブル24を介して各装置21~23に伝送したり、LANケーブル24からのLAN信号を高周波信号に変換してから、電源コード26を介して各デュプレクサ15に伝送したりするように構成されている。
【0027】
第1実施形態では、各装置21~23から外部に延びるLANケーブル24を電力線通信モデム25のLANポート(図示省略)に接続し、各電力線通信モデム25から外部に延びる電源コード26先端の電源プラグ27を各デュプレクサ15の電源コンセント16に差し込み接続することによって、各装置21~23は、電力線13から電力供給を受けると共に、信号線14を利用した通信ネットワークを構築している。なお、電力線通信モデム25の奏する機能を各装置21~23に持たせてもよい(各装置21~23を電力線通信モデム25内蔵型に構成してもよい)。」
「【0028】
(2).デュプレクサの詳細構造
次に、図2~図4を参照しながら、デュプレクサ15の詳細構造について説明する。
【0029】
デュプレクサ15は、一対の配線ライン17a,17bと、高周波信号を減衰させて遮断する高周波遮断部の一例としての一対のチョークコイルLa,Lbと、高周波信号のみを通過させる高周波通過部の一例としての一対のバイパスコンデンサCa,Cbとを備えている。
【0030】
両チョークコイルLa,Lbは、電力線13から電力線通信モデム25への電力供給を許容しながら、電力線通信モデム25や信号線14からの高周波信号が電力線13に伝送されるのを遮断するものである。両バイパスコンデンサCa,Cbは、高周波信号が電力線通信モデム25や信号線14に伝送されるのを許容しながら、電力線13から信号線14への電力供給を遮断するものである。
【0031】
両配線ライン17a,17bの一端はデュプレクサ15の電源コンセント16につながっている。両配線ライン17a,17bの他端は電力線13に接続されている。各配線ライン17a,17bの中途部にチョークコイルLa,Lbがそれぞれ設けられている。
【0032】
両配線ライン17a,17bのうち電源コンセント16とチョークコイルLa,Lbとの間にはそれぞれ、分岐ライン18a,18bの一端が接続されている。分岐ライン18a,18bの他端は信号線14に接続されている。各分岐ライン18a,18bの中途部にバイパスコンデンサCa,Cbがそれぞれ設けられている。両配線ライン17a,17bのうちチョークコイルLa,Lbと電力線13との間は、ノイズ防止用のコンデンサCcを介して接続されている。」
「【0041】
(4).システムの使用態様
次に、第1実施形態におけるシステムの使用態様の一例について説明する。
【0042】
マンション1のある住戸2に来訪する知人や親戚等の来訪者は、集合インタホン装置21のキー入力装置31にて、来訪先住戸2の住戸番号(例えば201等)を入力してから、キー入力装置31の呼び出しボタンを押す。ここで、液晶パネル32には、キー入力装置31にて入力された住戸番号が表示される。なお、入力内容の修正は、キー入力装置31の消去ボタンを押せばよい。
【0043】
そうすると、キー入力装置31の入力指令を受け取った集合インタホン制御回路30は、集合インタホン装置21に接続された電力線通信モデム25に、入力指令のLAN信号を伝送する。特定のLAN信号は、電力線通信モデム25にて高周波信号に変換され、電力線通信モデム25に接続されたデュプレクサ15に伝送される。
【0044】
デュプレクサ15に伝送された高周波信号は、両チョークコイルLa,Lbの作用にて電力線13に伝送されず、両分岐ライン18a,18bを介して信号線14に伝送される。このとき、電力線13から電力線通信モデム25への電力供給は、両チョークコイルLa,Lbの作用にて許容されているが、電力線13から信号線14への電力供給は、両バイパスコンデンサCa,Cbの作用にて遮断されている。
【0045】
信号線14を介して来訪先住戸2のデュプレクサ15に伝送された高周波信号は、両チョークコイルLa,Lbの作用にて電力線13に伝送されず、デュプレクサ15に接続された電力線通信モデム25に伝送される。そして、電力線通信モデム25にて入力指令のLAN信号に変換され、入力指令のLAN信号が来訪先住戸2における室内インタホン装置22の室内インタホン制御回路40に伝送される。室内インタホン制御回路40は、入力指令のLAN信号を識別して、スピーカ43から呼び出し音を鳴らす。
【0046】
呼び出された居住者が室内インタホン装置22の応答スイッチ41を押下すると、応答スイッチ41の入力指令を受け取った室内インタホン制御回路40が、集合インタホン装置21と室内インタホン装置22との通信(接続)を確立させ、集合インタホン装置21と室内インタホン装置22とが通話可能な状態になる。」
「【0050】
以上の構成によると、電力線13以外(信号線14及び電力線通信モデム25)に高周波信号を伝送するデュプレクサ15に、電力線通信モデム25を介して各インタホン装置21,22を接続しているので、電力線通信モデム25を用いながら、各インタホン装置21,22間の通信に、電力線13ではなく信号線14を利用することになる。このため、電力線13の場合に比べて伝送損失(信号減衰)を大幅に低減でき、伝送距離が長くなっても良好な通信状態が得られる。従って、高層マンションにも第1実施形態のシステムを採用できる。
【0051】
しかも、電力線通信モデム25を用いながら、各インタホン装置21,22間の通信に電力線13を使わないので、電力線搬送通信では常に懸念される周辺機器への電波障害の問題もなくなる。
【0052】
また、信号線14は既設のマンション1(集合建築物)に標準的に装備されていることが多いので、これを利用すれば、デュプレクサ15の設置工事は必要であるものの、各インタホン装置21,22間をつなぐ専用信号線を新たに敷設する必要がない。更に、各インタホン装置21,22に接続された電力線通信モデム25は、各デュプレクサ15の電源コンセント16に差し込み接続するだけで相互に通信可能になるから、各インタホン装置21,22の設置の手間は掛からない。従って、従来に比べてシステムの設置コストを低減でき、既存のマンション1でも簡単に後付けできる。
【0053】
その上、信号線14を利用した通信では伝送損失が少ないので、電力線通信モデム25の消費電力が通常使用の場合に比べて少なくて済むという利点もある。」
「【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態における集合建築物用の通信システムの概略説明図である。
【図2】集合インタホン装置とデュプレクサとの関係を示す機能ブロック図である。
【図3】室内インタホン装置とデュプレクサとの関係を示す機能ブロック図である。
【図4】非常警報装置とデュプレクサとの関係を示す機能ブロック図である。
【図5】第2実施形態における集合建築物用の通信システムの概略説明図である。」
「【図1】
[図:0001399409000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001399409000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001399409000003.jpg]
」
(2)前記記載事項によれば、次のことがいえる。
ア(ア)図2より、集合インタホン装置32は電力線通信モデム25と接続しており、電力線通信モデム25は、デュプレクサ15と接続されてデュプレクサ15を介して電力線13及び信号線14と接続していることが見てとれる(以下、集合インタホン装置32と接続する「電力線通信モデム25」を「集合インタホン装置の電力線通信モデム25」といい、該「集合インタホン装置の電力線通信モデム25」が接続している「デュプレクサ15」を「集合インタホン装置のデュプレクサ15」といい、「集合インタホン装置の電力線通信モデム25」がデュプレクサ15を介して接続している「電力線13」を「集合インタホン装置の電力線13」という。)。
(イ)図3より、室内インタホン装置22は電力線通信モデム25と接続しており、電力線通信モデム25は、デュプレクサ15と接続されて、デュプレクサ15を介して電力線13及び信号線14と接続していることが見てとれる(以下、室内インタホン装置22と接続している「電力線通信モデム25」を「室内インタホン装置の電力線通信モデム25」といい、該「室内インタホン装置の電力線通信モデム25」が接続している「デュプレクサ15」を「室内インタホン装置のデュプレクサ15」といい、「室内インタホン装置の電力線通信モデム25」がデュプレクサ15を介して接続している「電力線13」を「室内インタホン装置の電力線13」という。)。
(ウ)【0041】~【0046】の記載より、集合インタホン装置32と室内インタホン装置22との間においてLAN信号の伝送を行っており、LAN信号は、電力線通信モデム25において高周波信号に変換されて伝送される。
ここで、電力線通信モデム25は「電力線13に高周波信号を重畳して通信を実行できる電力線通信端末」(【0025】)であるから、集合インタホン装置の電力線通信モデム25と室内インタホン装置の電力線通信モデム25との間で、電力線通信が行われている。
そして、集合インタホン装置のデュプレクサ15は、集合インタホン装置の電力線通信モデム25と室内インタホン装置の電力線通信モデム25の間に位置することから、集合インタホン装置の電力線通信モデム25と室内インタホン装置の電力線通信モデム25との間の電力線通信に用いられているといえる。
(エ)電力線13について、「分電盤12からは、複数系統の電力線13がマンション1の各階に対応するように分岐して延びている」(【0022】)ものであり、図1、図2より、「集合インタホン装置の電力線13」は、分電盤12から延びていることが見てとれる。また、図1、図3より、「室内インタホン装置の電力線13」は、分電盤12から延びていることが見てとれる。
(オ)前記(ア)~(エ)より、集合インタホン装置のデュプレクサ15は、分電盤12から延びる集合インタホン装置の電力線13に接続された集合インタホン装置の電力線通信モデム25と、前記分電盤12から延びる室内インタホン装置の電力線13に接続された室内インタホン装置の電力線通信モデム25との間の電力線通信に用いられているといえる。
イ 集合インタホン装置のデュプレクサ15について、図2から、次の事項が見てとれる。
(ア)デュプレクサ15の枠の左下部分に長方形が示されているとおり、デュプレクサ15には、当該長方形で示される部(以下「長方形の部1」という。)が設けられていることが見てとれる。
(イ)一対の分岐ライン18a、18bは、「両配線ライン17a,17bのうち電源コンセント16とチョークコイルLa,Lbとの間にはそれぞれ、分岐ライン18a,18bの一端が接続され」、「他端は信号線14に接続され」(【0032】)ていることから、一対の分岐ライン18a、18bは、前記長方形の部1を介して、一端と他端を接続していることが見てとれる。
(ウ)バイパスコンデンサCa、Cbは、分岐ライン18a,18bの一端と長方形の部1との間に設けられていることが見てとれる。
(エ)そうすると、集合インタホン装置のデュプレクサ15には長方形の部1が設けられており、一対の分岐ライン18a、18bは、一端と長方形の部1との間にバイパスコンデンサCa、Cbが設けられ、長方形の部1を介して、他端において信号線14と接続されていることが見てとれる。
ウ 集合インタホン装置のデュプレクサ15について、図2から、次の事項が見てとれる。
(ア)デュプレクサ15の枠の右上部分に長方形が示されているとおり、デュプレクサ15には、当該長方形で示される部(以下「長方形の部2」という。)が設けられていることが見てとれる。
(イ)一対の配線ライン17a、17bは、「両配線ライン17a,17bの一端はデュプレクサ15の電源コンセント16につながって」いて、「他端は電力線13に接続されて」(【0031】)いることから、一対の配線ライン17a、17bは、前記長方形の部2を介して、一端と他端を接続していることが見てとれる。
(ウ)そうすると、集合インタホン装置のデュプレクサ15には長方形の部2が設けられており、一対の配線ライン18a、18bは、長方形の部2を介して、一端と他端を接続していることが見てとれる。
(3)引用発明
前記(1)、(2)より、文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「分電盤12から延びる集合インタホン装置の電力線13に接続された集合インタホン装置の電力線通信モデム25と、前記分電盤12から延びる室内インタホン装置の電力線13に接続された室内インタホン装置の電力線通信モデム25との間の電力線通信に用いられる集合インタホン装置のデュプレクサ15であって、((2)ア)
一対の配線ライン17a,17bと、高周波信号を減衰させて遮断する高周波遮断部としての一対のチョークコイルLa,Lbと、高周波信号のみを通過させる高周波通過部としての一対のバイパスコンデンサCa,Cbとを備え、(【0029】)
両チョークコイルLa,Lbは、電力線13から電力線通信モデム25への電力供給を許容しながら、電力線通信モデム25や信号線14からの高周波信号が電力線13に伝送されるのを遮断し、両バイパスコンデンサCa,Cbは、高周波信号が電力線通信モデム25や信号線14に伝送されるのを許容しながら、電力線13から信号線14への電力供給を遮断するものであり、(【0030】)
両配線ライン17a,17bの一端はデュプレクサ15の電源コンセント16につながっていて、両配線ライン17a,17bの他端は電力線13に接続され、各配線ライン17a,17bの中途部にチョークコイルLa,Lbがそれぞれ設けられ、(【0031】)
両配線ライン17a,17bのうち電源コンセント16とチョークコイルLa,Lbとの間にはそれぞれ、分岐ライン18a,18bの一端が接続され、分岐ライン18a,18bの他端は信号線14に接続され、各分岐ライン18a,18bの中途部にバイパスコンデンサCa,Cbがそれぞれ設けられており、(【0032】)
電力線通信モデム25から外部に延びる電源コード26先端の電源プラグ27をデュプレクサ15の電源コンセント16に差し込み接続し、(【0027】)
長方形の部1が設けられており、
一対の分岐ライン18a、18bは、一端と長方形の部1との間にバイパスコンデンサCa、Cbが設けられ、長方形の部1を介して、他端において信号線14と接続され、((2)イ)
長方形の部2が設けられており、
一対の配線ライン17a、17bは、長方形の部2を介して、一端と他端を接続している、((2)ウ)
集合インタホン装置のデュプレクサ」
2 文献2の記載
(1)文献2には次の事項が記載されている。
「【0021】
前記信号用結合部2aは、電力線Pに電磁誘導結合して、電力線Pに対する信号の注入及び取出を行う。このため、信号結合部2aは、図3(a)に示すように、複数(2本)の電力線P,Pそれぞれに装着される磁性体コア20a,20bと、複数の磁性体コア20a,20bとの間で電磁誘導を発生させるためのコイル21と、を備えている。
【0022】
電力線PにPLC信号(例えば、2M~30MHzの高周波信号)が流れている場合、PLC信号によって電力線P,Pの周囲に発生した磁界は、磁性体コア20a,20bに集中する。また、磁性体コア20a,20b内の磁界は、電力線P,Pを流れるPLC信号に応じて変化する。
PLC信号に応じて変化する磁界は、電磁誘導により、前記コイル21にPLC信号に応じた誘導起電力を発生させる。この結果、PLC信号が信号用結合部2aによって取り出され、中継装置1の信号処理部10へ与えられる。以上の様にして、電力線Pを流れるPLC信号を中継装置1が受信できる。
【0023】
また、信号処理部10が、PLC信号を送信した場合、PLC信号電流がコイル21を流れ、PLC信号に応じて変化する磁界がコイル21内に発生する。コイル21内に発生した磁界は、磁性体コア20a,20bによって電力線P,P周囲に分布する。電力線P,P周囲の磁界の変化は、電磁誘導により、電力線P,PへPLC信号に相当する誘導起電力を発生させる。以上により、PLC信号が中継装置1から電力線Pへ注入される。」
「【図3】
[図:0001399409000004.jpg]
」
(2)文献2記載事項
前記記載より、文献2には、「電力線Pに電磁誘導結合して、電力線Pに対する信号の注入及び取出を行う信号用結合部」が記載されている。
3 文献3
(1)文献3には次の事項が記載されている。
「【0031】
図2は、本発明の第2実施例の概略構成ブロック図を示す。電力線110のコンセント112には電源プラグ120が接続し、電源プラグ120は電力線122を介して本発明の第2実施例である電力線通信装置124に接続する。電力線通信装置124は他方で、通信線126を介してパーソナルコンピュータ等のデータ端末128に接続する。また、電力線110のコンセント114には電源プラグ130が接続し、電源プラグ130は電力線132を介してPLCモデム装置134に接続する。PLCモデム装置134は他方で、通信線136を介してデータ端末138に接続する。
【0032】
電力線通信装置124の構成を説明する。電源プラグ120から電力線通信装置124には、電力線122を介してAC電源電圧とPLC信号が入力する。このPLC信号は、例えば、PLCモデム装置134、又は電力線110に接続する図示しないPLCモデム装置から出力される。」
「【0037】
通信装置124はまた、電力線110との間でPLC信号を非接触式に結合可能なPLC信号結合器154を具備する。このような結合器154は例えば、フェライトコアやコイル等を用いる電磁結合器で実現できる。PLC信号結合器154は、DC/AC変換器148の出力とセレクタ140の端子Bとの間に接続する。
【0038】
データ端末128,138間の通信を例に、通信装置124の動作を説明する。PLCモデム装置134は、データ端末138からのデータ信号を変調して、PLC信号を生成する。このPLC信号は、電力線132、電源プラグ130、コンセント114、電力線110、コンセント112、電源プラグ120及び電力線122を介して、通信装置124に到達する。」
【0039】
コンセント112にAC電力が正常に供給されている場合、通信装置24は、以下のように動作する。このとき、電力検出器150は、電力線122上にAC電圧を検出し、制御回路152に検出結果を通知する。制御回路152は、検出器150の検出結果に従い、セレクタ140の共通端子Cを端子Aに接続する。AC/DC変換器142は、電力線122上のAC電圧をDC電圧に変換し、充電回路144は、AC/DC変換器142の出力DC電圧に従い、バッテリ146を充電する。これによりAC電源の供給が途絶えたときに備える。
【0040】
セレクタ140が端子Aに接続するので、PLCモデム装置156には、電力線122上のAC電圧とPLC信号が入力する。PLCモデム装置156は、このAC電圧を電源として動作し、当該PLC信号を復調し、得られるデータ信号を通信線126を介してデータ端末128に供給する。PLCモデム装置156はまた、データ端末128が出力されるデータ信号を変調してPLC信号を生成する。このPLC信号は、セレクタ140を介して電力線122上に出力され、電源プラグ120、電力線110、電源プラグ130及び電力線132を介してPLCモデム装置134に入力する。PLCモデム装置134は、電力線132からのPLC信号を復調し、得られるデータ信号をデータ端末138に供給する。
【0041】
次に、電力線10の切断、その他の理由により、コンセント112にのみAC電源電圧が供給されなくなったとする。勿論、コンセント114にはAC電源が供給されており、PLCモデム装置134及びデータ端末138は正常に動作している。データ端末128も、別電源により正常に動作している。
【0042】
この状態では、充電回路144によるバッテリ146の充電は行われない。電力検出器150は、電力線122上にAC電圧を検出しない。制御回路152は、検出器150の検出結果に従い、セレクタ140の共通端子Cを端子Bに接続する。この結果、DC/AC変換器148の出力AC電圧がPLCモデム装置156に供給され、PLCモデム装置156は、バッテリ146を電源として動作する。PLC信号の伝送にはPLC信号結合器154を使用するので、ユーザは、PLC信号結合器154を、PLC信号が伝搬している電力線110に近接して配置する。
【0043】
電力線110上のPLC信号は、PLC信号結合器154及びセレクタ140を介してPLCモデム装置156に入力する。PLCモデム装置156は、PLC信号結合器154からセレクタ140を介して入力するPLC信号を復調し、得られるデータ信号を通信線126を介してデータ端末128に供給する。他方、PLCモデム装置156は、データ端末128が出力されるデータ信号を変調してPLC信号を生成する。このPLC信号は、セレクタ140及びPLC信号結合器154を介して電力線110に結合する。PLC信号結合器154から電力線110に結合したPLC信号は、電力線110、電源プラグ130及び電力線132を介してPLCモデム装置134に入力する。PLCモデム装置134は、電力線132からのPLC信号を復調し、得られるデータ信号をデータ端末138に供給する。」
「【図2】
[図:0001399409000005.jpg]
」
(2)文献3記載事項
上記記載より、文献3には、「電力線との間でPLC信号を非接触式に結合可能な、フェライトコアやコイル等を用いる電磁結合器で実現できるPLC信号結合器」が記載されている。
第5 当審の判断
1 請求項1に係る発明について
(1)請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と引用発明とを対比する。
ア 「電力線通信」は「Power Line Communicaition」であるから「PLC」と呼称されるものであり、引用発明の「電力線通信モデム」は、本件発明の「PLCモデム」に相当する。また、「高周波信号」は、電力線通信で用いられる信号であるから、本件発明の「PLC信号」に相当する。
イ 「分電盤から延びる第1の電力線上に設けられた第1のコンセントに設置した第1のPLCモデムと前記分電盤から延びる第2の電力線上に設けられた第2のコンセントに設置した第2のPLCモデムとの間の電力線通信に用いるPLCアダプタ」について
イ-1 引用発明の「集合インタホン装置の電力線13」、「集合インタホン装置の電力線通信モデム25」を、それぞれ「第1の電力線」、「第1のPLCモデム」と称し、「室内インタホン装置の電力線13」、「室内インタホン装置の電力線通信モデム25」を、それぞれ「第2の電力線」、「第2のPLCモデム」と称することは適宜なし得ることである。
イ-2 引用発明において、集合インタホン装置の電力線通信モデム25は、集合インタホン装置のデュプレクサ15を介して集合インタホン装置の電力線13と接続されるもので、集合インタホン装置の電力線13上のコンセントは特定されていないから、集合インタホン装置の電力線通信モデム25は、集合インタホン装置の電力線13上に設けられた第1のコンセントに設置されるものではない。
また、室内インタホン装置の電力線通信モデム25は、室内インタホン装置のデュプレクサ15を介して室内インタホン装置の電力線13と接続されるもので、室内インタホン装置の電力線13上のコンセントは特定されていないから、室内インタホン装置の電力線通信モデム25は、室内インタホン装置の電力線13上に設けられた第2のコンセントに設置されるものではない。
イ-3 引用発明では、集合インタホン装置のデュプレクサ15を介して電力線通信が行われるから、集合インタホン装置のデュプレクサ15は、電力線通信を行うための装置であるといえる。そして、前記アを踏まえると、「電力線通信」は「PLC」と呼称されるものであるから、電力線通信を行うための装置は、PLC装置であるといえる。
よって、集合インタホン装置のデュプレクサ15と本件発明の「PLCアダプタ」とは、「PLC装置」である点で一致する。
以上より、本件発明と引用発明とは、「分電盤から延びる第1の電力線の第1のPLCモデムと前記分電盤から延びる第2の電力線の第2のPLCモデムとの間の電力線通信に用いるPLC装置」である点で一致する。
ウ 「前記第1のPLCモデムの電源プラグに接続可能な第1電源端子」について
引用発明の「両配線ライン17a,17bの一端」につながる「電源コンセント16」は、電力線通信モデムの電源プラグに接続されるから、前記ア、イを踏まえれば、本件発明の「第1のPLCモデムの電源プラグに接続可能な第1電源端子」に相当する。
エ 「前記第1のコンセントに接続可能な第2電源端子」について
引用発明では、「一対の配線ライン17a、17bは、長方形の部2を介して、一端と他端を接続している」から、デュプレクサ15に設けられる「長方形の部2」は、「一端」側の配線ライン17a、17bと「他端」側の配線ライン17a、17bを接続するものである。
そして、「両配線ライン17a,17bの他端」は電力線13に接続されるから、「長方形の部2」は、デュプレクサ15の電源端をなしているといえ、引用発明の「長方形の部2」と本件発明の「前記第1のコンセントに接続可能な第2電源端子」とは、「第2電源端」である点で一致する。
オ 「前記第1電源端子と前記第2電源端子とを電気的に接続する一対の電源ライン上に設けられ、前記第1のPLCモデムから送出されたPLC信号を電源電力から分離すると共に、前記PLC信号の前記第1の電力線上への送出を阻止する信号分離回路」について
引用発明の「配線ライン17a,17b」は、「一端」が電源コンセント16につながっており、長方形の部2を介して、「他端」が電力線13に接続されるから、前記ウ、エを踏まえれば、本件発明の「一対の電源ライン」に対応する。
そして、「高周波遮断部である一対のチョークコイルLa,Lb」は、「一対の配線ライン17a,17b」の中途部に設けられ、「高周波通過部である一対のバイパスコンデンサCa,Cb」は、「両配線ライン17a,17bのうち電源コンセント16とチョークコイルLa,Lbとの間に」一端が接続される「分岐ライン18a,18b」の中途部に設けられるから、「高周波遮断部」及び「高周波通過部」は、「配線ライン17a,17b」上に設けられているといえる。
また、「高周波遮断部」及び「高周波通過部」は、「電力線13から電力線通信モデム25への電力供給を許容しながら、電力線通信モデム25や信号線14からの高周波信号が電力線13に伝送されるのを遮断し」、「高周波信号が電力線通信モデム25や信号線14に伝送されるのを許容しながら、電力線13から信号線14への電力供給を遮断する」ものであるから、前記ア、イを踏まえれば、本件発明の「前記第1のPLCモデムから送出されたPLC信号を電源電力から分離すると共に、前記PLC信号の前記第1の電力線上への送出を阻止する信号分離回路」に相当する。
よって、前記ア~エを踏まえれば、本件発明と引用発明とは、「前記第1電源端子と前記第2電源端とを電気的に接続する一対の電源ライン上に設けられ、前記第1のPLCモデムから送出されたPLC信号を電源電力から分離すると共に、前記PLC信号の前記第1の電力線上への送出を阻止する信号分離回路」である点で一致する。
カ 「前記信号分離回路によって分離された前記PLC信号を出力する信号端子」について
引用発明において、「バイパスコンデンサCa、Cb」は、「高周波信号が電力線通信モデム25や信号線14に伝送されるのを許容しながら、電力線13から信号線14への電力供給を遮断するもの」であるから、分岐ライン18a、18bの「長方形の部1」と他端との間は、高周波信号が伝送されるものであり、デュプレクサに設けられた「長方形の部1」は、高周波信号を出力する出力部といえる。
そうすると、本件発明と引用発明とは、「前記信号分離回路によって分離された前記PLC信号を出力する出力部」で一致する。
キ 「前記信号端子に接続された通信線」について
前記カを踏まえると、引用発明の「長方形の部1」から「他端」までの「分岐ライン18a、18b」と、本件発明の「前記信号端子に接続された通信線」とは、出力部に接続された通信線である点で一致する。
ク 「前記通信線を前記第2の電力線と磁気結合するためのカプラ部」について
引用発明には、通信線を電力線と磁気結合する構成については特定されていない。
そうすると、本件発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
一致点
「分電盤から延びる第1の電力線の第1のPLCモデムと前記分電盤から延びる第2の電力線の第2のPLCモデムとの間の電力線通信に用いるPLC装置であって、
前記第1のPLCモデムの電源プラグに接続可能な第1電源端子と、
第2電源端と、
前記第1電源端子と前記第2電源端とを電気的に接続する一対の電源ライン上に設けられ、前記第1のPLCモデムから送出されたPLC信号を電源電力から分離すると共に、前記PLC信号の前記第1の電力線上への送出を阻止する信号分離回路と、
前記信号分離回路によって分離された前記PLC信号を出力する出力部と、
前記出力部に接続された通信線と、
を備えることを特徴とするPLC装置」
相違点
相違点1
第1のPLCモデムについて、本件発明は、第1の電力線上に設けられた第1のコンセントに設置されるのに対して、引用発明は、第1の電力線上に第1のコンセントが設けられておらず、したがって、第1のPLCモデムは、第1のコンセントに設置されるものではない点。
相違点2
第2のPLCモデムについて、本件発明は、第2の電力線上に設けられた第2のコンセントに設置されるのに対して、引用発明は、第2の電力線上に第2のコンセントが設けられておらず、したがって、第2のPLCモデムは、第2のコンセントに設置されるものではない点。
相違点3
相違点1と関連して、「第2電源端」について、本件発明は、第1のコンセントに接続可能な第2電源端子であるのに対して、引用発明は、「一端」側の配線ライン17a,17bと「他端」側の配線ライン17a,17bを接続する「長方形の部2」であって、端子の形状であり、第1のコンセントに接続可能とは特定されていない点。
相違点4
「出力部」について、本件発明は、「信号端子」であるのに対して、引用発明は、デュプレクサに設けられた長方形の部1であり、端子の形状であると特定されていない点。
相違点5
引用発明は、「前記通信線を前記第2の電力線と磁気結合するためのカプラ部」を備えていない点。
相違点6
「PLC装置」について、本件発明は「PLCアダプタ」であるのに対して、引用発明は「集合インタホン装置のデュプレクサ」である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
前記第4の2(2)の文献2記載事項、前記第4の3(2)の文献3記載事項より、「電力線と磁気結合するためのカプラ部」は周知技術であるといえる。
しかしながら、引用発明においては、「分岐ライン18a,18bの他端」が信号線14に接続され、高周波信号は、信号線14を伝送するものである。
そして、「信号線14を介して来訪先住戸2のデュプレクサ15に伝送された高周波信号は、両チョークコイルLa,Lbの作用にて電力線13に伝送されず、デュプレクサ15に接続された電力線通信モデム25に伝送され」、「電力線通信モデム25にて入力指令のLAN信号に変換され、入力指令のLAN信号が来訪先住戸2における室内インタホン装置22の室内インタホン制御回路40に伝送される」(【0045】)ことで、「電力線通信モデム25を用いながら、各インタホン装置21,22間の通信に電力線13を使わないので、電力線搬送通信では常に懸念される周辺機器への電波障害の問題もなくなる」(【0051】)ものであるから、引用発明において、高周波信号の伝送に電力線13を用いることは排除されている。
そして、前記周知技術である電力線と磁気結合するためのカプラ部は、高周波信号の伝送に電力線を用いるためのものである。
そうすると、引用発明において、分岐ライン18a,18bの他端に、高周波信号の伝送に電力線を用いるための、「室内インタホン装置の電力線13と磁気結合するためのカプラ部」を備えるようにすることには、阻害要因があるといえる。
したがって、「電力線と磁気結合するためのカプラ部」が周知(文献2及び文献3)であるとしても、引用発明において、電力線と磁気結合するためのカプラ部を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、文献4~6の記載を見ても、当該相違点5について、当業者が容易になし得たものとする理由はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明、文献2~6の記載事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、「相違点に係る「第1の電力線上に設けられた第1のコンセント」、「第2の電力線上に設けられた第2のコンセント」、「前記信号端子に接続された通信線」、「前記通信線を前記第2の電力線と磁気結合するためのカプラ部」は、甲4-1記載事項、甲2記載事項、甲3-1記載事項に開示されている。
第1の電力線13aと第1の電力線通信モデム25との間にデュプレクサ15を設置し、第2の電力線13bと第2の電力線通信モデム25との間にデュプレクサ15を設置しないシステム構成は、甲1-3記載事項、甲3-2記載事項、甲4-2記載事項に開示されている。また、第1の電力線通信モデム25と第2の電力線通信モデム25の通信において、通信経路の一部区間に電力線13を使用する場合、PLC信号が分電盤12を通過しない位置にPLC信号結合器を配置することは、当業者にとって自明な事項である。」旨主張する。
しかしながら、相違点5に関連する「前記通信線を前記第2の電力線と磁気結合するためのカプラ部」は、文献4(甲4)には、記載されていない。
そして、申立人の前記主張は、高周波信号の伝送に電力線を用いることに基づくものであり、前記(2)のとおり、引用発明では、高周波信号の伝送に電力線13を用いることは排除されているから、引用発明において、分岐ライン18a,18bの他端に接続される通信線を備え、通信線を室内インタホン装置の電力線13と磁気結合するためのカプラ部を備えるようにすることには阻害要因があり、前記のとおり、文献2(甲2)及び文献3(甲3)に示されるように電力線に磁気結合するカプラ部が周知であるとしても、文献2(甲2)及び文献3(甲3)の周知技術を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
2 請求項2~5に係る発明について
請求項2~5に係る発明は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明の発明特定事項を全て含むものである。
よって、前記1に示した理由と同様の理由により、請求項2~5に係る発明は、前記文献1に記載された発明及び文献2~6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。
3 請求項6に係る発明について
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載された「PLCアダプタ」を備えるものであるから、本件発明のPLCアダプタにおける発明特定事項を全て含むものであり、前記1に示した理由と同様の理由により、前記文献1に記載された発明及び文献2~6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。
4 まとめ
以上のとおり、請求項1~6に係る発明は、文献1に記載された発明及び文献2~6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700255