特許異議申立
2024-700453
ゼオライトおよびその製造方法
- 審判番号
- 2024-700453
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-559098
- 登録番号
- 7380987
- 請求日
- 2024年05月14日
- 審決日
- 2025年05月13日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】国立大学法人 東京大学
- 【権利者代理人】横田 修孝
- 【権利者代理人】榎 保孝
- 【権利者代理人】大森 未知子
- 【権利者代理人】赤羽 桃子
- 【権利者代理人】内山 尚和
- 【異議申立人】岩部 英臣
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 増山 淳子
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7380987号発明「ゼオライトおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7380987号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項〔1、5~9、15、16〕、〔10、12、14〕、〔11、13〕について訂正することを認める。
特許第7380987号の請求項1~5、7~16に係る特許を維持する。
特許第7380987号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7380987号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)11月27日(優先権主張 平成30年12月13日 令和元年6月18日)を国際出願日とする出願であって、令和5年11月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年5月14日に、請求項1~14に係る特許について、特許異議申立人 岩部 英臣(以下、「申立人」という。)により、甲第1~22号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年7月9日付で当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月9日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年10月16日に申立人より甲第23~26号証を添付して意見書が提出され、同年12月10日付で当審より取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和7年2月10日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年3月24日に申立人より甲第27~28号証を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。
なお、令和7年2月10日に特許権者より訂正の請求がされたので、令和6年9月9日にされた訂正の請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正の内容及び一群の請求項について
令和7年2月10日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を、「特許第7380987号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、5~16について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、
水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、
温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である、ゼオライト。」
と記載されているのを、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、
前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかであり、
水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、
前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が3.0重量%以下であり、
前記ゼオライトが*BEA型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である、ゼオライト。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~14も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMOR型のゼオライトであって、
水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上である、ゼオライト。」
と記載されているのを、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMOR型のゼオライトであって、
水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、
前記加熱前の前記ゼオライトのミクロ孔容積に対する前記加熱後の前記ゼオライトのミクロ孔容積の割合であるミクロ孔容積維持率(900℃)が90%以上である、ゼオライト。」
に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15、16も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(4) 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「請求項4ないし6のいずれか一項に記載のゼオライト。」
と記載されているのを、
「請求項4に記載のゼオライト。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~14も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1ないし7のいずれか一項に記載のゼオライト。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし4、7のいずれか一項に記載のゼオライト。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的に引用する請求項9~14も同様に訂正する。)。
(6) 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1ないし8のいずれか一項に記載のゼオライト。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし4、7、8のいずれか一項に記載のゼオライト。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的に引用する請求項10~14も同様に訂正する。)。
(7) 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
フッ化物イオンを含む溶液に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトと前記フッ化物イオンを含む溶液の接触が、有機構造規定剤の存在下で行われる、ゼオライトの製造方法。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された、骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
フッ化物イオンを含む溶液に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトと前記フッ化物イオンを含む溶液の接触が、有機構造規定剤の存在下で行われる、ゼオライトの製造方法。」
に訂正する(請求項10の記載を直接的に引用する請求項12、14も同様に訂正する。)。
(8) 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
50℃以上250℃以下の熱水に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトを前記熱水に接触させる工程が、1時間~24時間行われる、ゼオライトの製造方法。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された、骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
50℃以上250℃以下の熱水(ただし、硝酸アンモニウム水溶液を除く)に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトを前記熱水に接触させる工程が、1時間~24時間行われる、ゼオライトの製造方法。」
に訂正する(請求項11の記載を直接的に引用する請求項13も同様に訂正する。)。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15に
「前記ゼオライトが、細孔中にフッ素を含む、請求項5に記載のゼオライト。」
を追加する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項16に
「前記ゼオライトが、細孔中に有機構造規程剤を含む、請求項5または15に記載のゼオライト。」
を追加する。
(11) 一群の請求項について
訂正前の請求項1、2、4及び5はいずれも独立請求項であり、訂正前の請求項3は訂正前の請求項2を引用し、訂正前の請求項6は訂正前の請求項5を引用し、訂正前の請求項7は訂正前の請求項4~6を引用し、更に、訂正前の請求項8は訂正前の請求項1~7を引用し、訂正前の請求項9は訂正前の請求項1~8を引用するものであるところ、訂正前の請求項6、7は、訂正前の請求項5の訂正に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項8、9は、訂正前の請求項1、5の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、5~9は組み合わされて一群の請求項となるので、訂正事項1~6、9及び10による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1、5~9について請求されたものである。
また、訂正前の請求項10は独立請求項であり、訂正前の請求項12及び14はいずれも訂正前の請求項10を引用するものであって、訂正前の請求項10の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項10、12及び14は一群の請求項であり、訂正事項7による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項10、12及び14について請求されたものである。
更に、訂正前の請求項11は独立請求項であり、訂正前の請求項13は訂正前の請求項11を引用するものであって、訂正前の請求項11の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項11及び13は一群の請求項であり、訂正事項8による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項11及び13について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、本件特許明細書の段落【0025】、【0028】の記載(下記第6の2(2)ア(ウ))の記載に基づいて、請求項1に係る「ゼオライト」を「MFI型のゼオライト及び*BEA型のゼオライトのいずれか」に限定し、更に、「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率」を、「前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである場合」、「3.0重量%以下」に限定し、「前記ゼオライトが*BEA型のゼオライトである場合」、「6.0重量%以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、本件特許明細書の段落【0041】の記載(下記第6の2(2)ア(ウ))の記載に基づいて、請求項5に係る「MOR型のゼオライト」を、「前記加熱前の前記ゼオライトのミクロ孔容積に対する前記加熱後の前記ゼオライトのミクロ孔容積の割合であるミクロ孔容積維持率(900℃)が90%以上である」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4) 訂正事項4~6について
訂正事項4~6による訂正は、請求項7~9における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(5) 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、請求項10に係る「ゼオライトの製造方法」により製造される「ゼオライト」を、「請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された」「ゼオライト」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(6) 訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、請求項11に係る「ゼオライトの製造方法」により製造される「ゼオライト」を、「請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された」「ゼオライト」に限定するとともに、「熱水」を、令和6年7月9日付けの取消理由通知の甲第2号証に記載された「硝酸アンモニウム水溶液」を除くものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(7) 訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、請求項8において請求項5を引用するものを新たな請求項15とするものであって、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9による訂正は、訂正事項6~8による訂正により、請求項9~14において請求項5を引用しなくなったことに伴って、請求項8において請求項5を引用するものを新たな請求項15として請求項の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
そして、訂正事項9による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(8) 訂正事項10について
訂正事項10による訂正は、請求項9において請求項5又は8を引用するものを新たな請求項16とするものであって、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10よる訂正は、訂正事項6~8による訂正により、請求項9~14において請求項5を引用しなくなったことと、訂正事項9による訂正により、請求項8において請求項5を引用するものを新たな請求項15としたことに伴って、請求項9において請求項5又は8を引用するものを新たな請求項16として請求項の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
そして、訂正事項10による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(9) 独立特許要件について
本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項1~14に係る発明の特許に対して特許異議の申立がされているので、訂正後の請求項1、5~16に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、5~9、15、16〕、〔10、12、14〕、〔11、13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件特許の請求項1~5、7~16に係る発明は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5、7~16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、
前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかであり、
水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、
前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が3.0重量%以下であり、
前記ゼオライトが*BEA型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である、ゼオライト。
【請求項2】
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMFI型のゼオライトであって、
水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1050℃)が20%以上であり、
温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である、ゼオライト。
【請求項3】
水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1150℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1150℃)が10%以上である、請求項2に記載のゼオライト。
【請求項4】
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である*BEA型のゼオライト(ただし、β型鉄シリケートを除く)であって、
水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1100℃)が20%以上である、ゼオライト。
【請求項5】
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMOR型のゼオライトであって、
水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、
前記加熱前の前記ゼオライトのミクロ孔容積に対する前記加熱後の前記ゼオライトのミクロ孔容積の割合であるミクロ孔容積維持率(900℃)が90%以上である、ゼオライト。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である、請求項4に記載のゼオライト。
【請求項8】
前記ゼオライトが、細孔中にフッ素を含む、請求項1ないし4、7のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項9】
前記ゼオライトが、細孔中に有機構造規定剤を含む、請求項1ないし4、7、8のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項10】
請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された、骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
フッ化物イオンを含む溶液に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトと前記フッ化物イオンを含む溶液の接触が、有機構造規定剤の存在下で行われる、ゼオライトの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された、骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
50℃以上250℃以下の熱水(ただし、硝酸アンモニウム水溶液を除く)に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトを前記熱水に接触させる工程が、1時間~24時間行われる、ゼオライトの製造方法。
【請求項12】
前記フッ化物イオンを含む溶液に前記原料ゼオライトを接触させる前に、前記原料ゼオライトを粉砕する工程をさらに備える、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記熱水に前記原料ゼオライトを接触させる前に、前記原料ゼオライトを粉砕する工程をさらに備える、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記溶液における前記フッ化物イオンの濃度が、0.001質量%以上である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ゼオライトが、細孔中にフッ素を含む、請求項5に記載のゼオライト。
【請求項16】
前記ゼオライトが、細孔中に有機構造規程剤を含む、請求項5または15に記載のゼオライト。」
第4 特許異議申立理由の概要
1 特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)について
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、前記請求項1~7に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項4及び11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、前記請求項4及び11に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
(3) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~3及び11に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、前記請求項1~3及び11に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~7及び9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、本件特許の優先日における技術常識(甲第2、3、5~9、11~14、21及び22号証を引用)及び周知技術(甲第10号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~7及び9に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、4、7、9、11及び13に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識(甲第3、5~9、13、14及び19~22号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1、4、7、9、11及び13に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(3) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~3、9及び11に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は甲第3号証に記載された発明及び本件特許の優先日における技術常識(甲第13及び14号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~3、9及び11に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(4) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項10、12及び14に係る発明は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識(甲第15~18号証を引用)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項10、12及び14に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
(5) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項11及び13に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、又は甲第5号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の技術常識(甲第19~20号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項11及び13に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
3 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、8及び9に係る発明について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、フッ化物イオンを含む溶液を用いる高耐久化処理や熱水を用いる高耐久化処理を施すことで、設定登録時の請求項1に係る発明のゼオライトを製造できることが記載されているが(段落【0045】~【0069】。下記第6の2(2)ア(ウ)。)、前記発明の詳細な説明の実施例においては、前記請求項1に係る発明の発明特定事項を満たすゼオライトとしてSi/Al原子比が750であるゼオライト(実施例1、4、29、30、34~36)しか製造されておらず、前記ゼオライトは、その水分吸着率が最大で5.6重量%(実施例36)となっている。
ここで、Si/Al原子比が増加するにつれてゼオライトの疎水性が増加し、Si/Al原子比が低下するにつれてゼオライトの疎水性が低下することは周知技術であり、当該周知技術を踏まえると、本件特許明細書に記載された製造方法に基づいて前記実施例におけるSi/Al原子比が750であるゼオライトよりもSi/Al原子比が低いゼオライトを製造しようとすれば、その水分吸着率は、前記実施例の最大値の5.6重量%よりも高くなることは明らかであり、前記請求項1に係る発明において特定されるSi/Al原子比が80に近いゼオライトを製造したとき、前記請求項1に係る発明において特定される水分吸着率の上限値である6.0重量%よりも高くなる蓋然性が極めて高い。
ところが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前記請求項1において特定されるSi/Al原子比が80に近いゼオライトを製造するときの水分吸着率の調整方法が何ら記載されていないから、Si/Al原子比が750未満であり、かつ水分吸着率が6.0重量%以下であるゼオライトを製造するには、当業者に過度の試行錯誤を強いることとなるので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、前記請求項1に係る発明ついて、実施可能要件を満たさない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項2、3、8及び9に係る発明について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、設定登録時の特許請求の範囲の請求項2に係る発明の発明特定事項を満たすゼオライトとしてSi/Al原子比が750であるゼオライト(実施例1、29、30、34、35)しか製造されておらず、前記ゼオライトは、その水分吸着率が最大で1.2重量%(実施例29)となっている。
そうすると、前記(1)に記載したのと同様の理由により、Si/Al原子比が750未満であり、かつ水分吸着率が6.0重量%以下であるゼオライトを製造するには、当業者に過度の試行錯誤を強いることとなるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、前記請求項2に係る発明について、実施可能要件を満たさない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項3、8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
(3) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項7~9に係る発明について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、設定登録時の特許請求の範囲の請求項7に係る発明の発明特定事項を満たすゼオライトとしてSi/Al原子比が750であるゼオライト(実施例4、36)しか製造されておらず、前記ゼオライトは、その水分吸着率が最大で5.6重量%(実施例36)となっている。
そうすると、前記(1)に記載したのと同様の理由により、Si/Al原子比が750未満であり、かつ水分吸着率が6.0重量%以下であるゼオライトを製造するには、当業者に過度の試行錯誤を強いることとなるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、前記請求項7に係る発明について、実施可能要件を満たさない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
4 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、8及び9に係る発明について
ア 本件特許明細書の段落【0008】、【0074】~【0144】(下記第6の2(2)ア(ア)、(エ))の記載からみれば、本件特許の発明の課題は、水熱耐久性を向上させたゼオライト及びその製造方法を提供することと解される。
そして、前記課題に対して、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においてはSi/Al原子比が80以上であることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、Si/Al原子比が750のゼオライト(実施例1、4、29、30、34~36)の水熱耐久性しか確認しておらず、Si/Al原子比が750ではないゼオライトによっても前記課題が解決できることは何ら示されていない。
ここで、本件特許明細書には、前記請求項1に係る発明の発明特定事項により前記課題が解決できることの機序として、原料ゼオライトに対して高耐久化処理を施すことで、ゼオライト骨格中のSiがマイグレーションして水熱耐久性を低下させるシラノール欠陥の数が減少し、これにより前記課題が解決できることが記載されているが(段落【0070】。下記第6の2(2)ア(ウ)。)、SiがOを介してAlと結合することでゼオライトの骨格構造の電気的なバランスが保たれていることは技術常識であり、骨格構造中のAlの割合が変化すれば、Siの電気的なバランスも当然変化し、これによりゼオライト骨格中のSiのマイグレーションにも影響が及ぶはずであるから、Si/Al原子比が750のゼオライトにより前記課題が解決できたとしても、当業者は、Si/Al原子比が750ではないゼオライトについてまで、同様に前記課題が解決できることを認識できない。
このため、当業者は、Si/Al原子比が750であるゼオライトでしか前記課題を解決できることが実証されていない本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を、前記請求項1まで拡張ないし一般化することができないから、前記請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
イ 本件特許明細書には、前記請求項1に係る発明の発明特定事項により前記課題が解決できることの機序として、原料ゼオライトに対して高耐久化処理を施すことで、ゼオライト骨格中のSiがマイグレーションして水熱耐久性を低下させるシラノール欠陥の数が減少し、これにより前記課題が解決できることが記載されているが(段落【0070】。下記第6の2(2)ア(ウ)。)、シラノール欠陥の数を減少させていないゼオライトにより前記課題を解決できることは記載も示唆もされていない。
このことからすると、前記課題を解決するには、ゼオライトに含まれるシラノール欠陥の数が少ないことが必要であると判断できるが、前記請求項1に係る発明においてはシラノール欠陥の数について何ら特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例には、シラノール欠陥の数を減少させていない、Si/Al原子比が80以上のゼオライトとして比較例1、2及び4のゼオライトが示されているが、これらは相対結晶化度(900℃)が20%以上となり、かつ、水分吸着量が6.0重量%以下となるようなものではない。更に、本件特許明細書の全体をみても、相対結晶化度(900℃)が20%以上となり、かつ、水分吸着量が6.0重量%以下となる、シラノール欠陥の数を減少させていない、Si/Al原子比が80以上のゼオライトが記載されているとはいえないのに、前記請求項1においてはシラノール欠陥の数について何ら特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、シラノール欠陥の数を減少させていない、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないゼオライトを包含するので、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項2、3、8及び9に係る発明について
ア 前記課題に対して、設定登録時の特許請求の範囲の請求項2に係る発明においてはSi/Al原子比が80以上であることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、Si/Al原子比が750のMFI型ゼオライト(実施例1、29、30、34、35)の水熱耐久性しか確認しておらず、Si/Al原子比が750ではないMFI型ゼオライトによっても前記課題が解決できることは何ら示されていない。
そうすると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、前記請求項2に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項3、8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
イ 前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記課題を解決するには、ゼオライトに含まれるシラノール欠陥の数が少ないことが必要であると判断できるが、前記請求項2においてはシラノール欠陥の数について何ら特定されていないから、前記請求項2に係る発明は、前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえない。
また、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記請求項2に係る発明には、シラノール欠陥の数を減少させていない、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないゼオライトが包含されているので、前記請求項2に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項3、8及び9に係る発明ついて検討しても事情は同じである。
(3) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項4、及び7~9に係る発明について
ア 前記課題に対して、設定登録時の特許請求の範囲の請求項4に係る発明においてはSi/Al原子比が80以上であることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、Si/Al原子比が750の*BEA型ゼオライト(実施例3、4、36)とAlを含まない*BEA型ゼオライト(実施例32)の水熱耐久性しか確認しておらず、SiとAlを含みSi/Al原子比が750ではない*BEA型ゼオライトによっても前記課題が解決できることは何ら示されていない。
そうすると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、前記請求項4に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項7、8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
イ 前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記課題を解決するには、ゼオライトに含まれるシラノール欠陥の数が少ないことが必要であると判断できるが、前記請求項4に係る発明においてはシラノール欠陥の数について何ら特定されていないから、前記請求項4に係る発明は、前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえない。
また、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記請求項4に係る発明には、シラノール欠陥の数を減少させていない、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないゼオライトが包含されているので、前記請求項4に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項7、8及び9に係る発明について検討しても事情は同じである。
(4) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項5~9に係る発明について
ア 前記課題に対して、設定登録時の特許請求の範囲の請求項5に係る発明においてはSi/Al原子比が80以上であることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、Si/Al原子比が120のMOR型ゼオライト(実施例7、8、37)の水熱耐久性しか確認しておらず、Si/Al原子比が120ではないMOR型ゼオライトによっても前記課題が解決できることは何ら示されていない。
そうすると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、前記請求項5に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項6~9に係る発明について検討しても事情は同じである。
イ 前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記課題を解決するには、ゼオライトに含まれるシラノール欠陥の数が少ないことが必要であると判断できるが、前記請求項5に係る発明においてはシラノール欠陥の数について何ら特定されていないから、前記請求項5に係る発明は、前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえない。
また、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記請求項5に係る発明には、シラノール欠陥の数を減少させていない、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないゼオライトが包含されているので、前記請求項5に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項6~9に係る発明について検討しても事情は同じである。
(5) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項10、12及び14に係る発明について
前記課題に対して、設定登録時の特許請求の範囲の請求項10に係る発明においてはSi/Al原子比が80以上であることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、前記請求項10に係る発明により製造されたゼオライトとして、Si/Al原子比が750のMFI型ゼオライト(実施例1、2、9~21、26~31)、Si/Al原子比が750の*BEA型ゼオライトとAlを含まない*BEA型ゼオライト(実施例3、4、32)、Si/Al原子比が120のMOR型ゼオライト(実施例7、8)の水熱耐久性しか確認していない。
そうすると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、前記請求項10に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項12及び14に係る発明について検討しても事情は同じである。
(6) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項11及び13に係る発明について
ア 前記課題に対して、設定登録時の特許請求の範囲の請求項11に係る発明においてはSi/Al原子比が80以上であることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、前記請求項11に係る発明により製造されたゼオライトとして、Si/Al原子比が750のMFI型ゼオライト(実施例33~35)、Si/Al原子比が750の*BEA型ゼオライト(実施例36)、Si/Al原子比が120のMOR型ゼオライト(実施例37)の水熱耐久性しか確認していない。
そうすると、前記(1)アに記載したのと同様の理由により、前記請求項11に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項13に係る発明について検討しても事情は同じである。
イ 前記課題に対して、前記請求項11に係る発明においては「50℃以上250℃以下の熱水に前記原料ゼオライトを接触させる工程」を特定しているが、前記「熱水」は、高温の水を意味するから、気化した水であっても液体の水であってもそれらが高温であれば前記請求項11に係る発明における「熱水」に該当すると解される。
ところが、この点に関し、本件特許明細書には原料ゼオライトに接触させる熱水の状態(気体・液体)について何ら記載されておらず、実施例33~37の記載をみても熱水の状態(気体・液体)を判断できない。
ここで、甲第3号証の記載(下記第6の1(1)ウ(ア)b)によれば、液体の熱水に対するゼオライトの構造安定性と気体の熱水に対するゼオライトの構造安定性は全く異なるから、原料ゼオライトに接触させる熱水の状態(気体・液体)が異なると、製造されるゼオライトの結晶性も大きく異なるはずであるし、非加圧状態で「熱水」を原料ゼオライトと接触させるのか、加圧状態で「熱水」を原料ゼオライトに接触させるのかによっても製造されるゼオライトの結晶性は大きく異なるはずである。
このことからみれば、「熱水」の状態や圧力が実施例33~37と同等であれば前記課題を解決できるとしても、これらが異なるときに前記課題を解決できると認識することができないから、前記請求項11に係る発明は、前記課題を解決できると認識できる範囲を超えているので、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項13に係る発明について検討しても事情は同じである。
5 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「結晶化度」は、本件特許明細書の段落【0078】(下記第6の2(2)ア(エ))の記載によれば、ゼオライトのX線回折パターンから非晶質によるブロードなバックグラウンドピークを補正により差し引いた後に、2θ=20~30°にあるピークの積分強度の和を用いて求めたものと理解できる。
ここで、ブロードなバックグラウンドピークには、非晶質であることに起因したピーク(以下、「非晶質ピーク」という。)だけでなく、通常、検出器の感度ノイズやX線の散漫散乱、蛍光X線などの環境要因に起因したピーク(以下、「環境要因ピーク」という。)も反映される。
ところが、本件特許明細書には、「結晶化度」を求めるためにX線回折パターンから差し引く非晶質によるブロードなバックグラウンドピークが「非晶質ピーク」だけを意味するのか、「環境要因ピーク」も含むのかが記載されていないから、非晶質によるブロードなバックグラウンドピークを補正により差し引いた後のX線回折パターンが一義的に定まらないので、「結晶化度」も一義的に定まらない。
また、2θ=20~30°にあるピークの積分強度の和は、X線回折パターンをピーク分離(ピークフィッティング)し、分離した各ピークの積分強度を合算することで求められるものと解されるが、ピーク分離する方法として様々な方法があることは本件特許の出願日当時の技術常識であり、ピーク分離する方法が異なれば、当然、分離されるピークも異なるし、分離して得られる波形を仮定する関数にも様々な関数があることは本件特許の出願日当時の技術常識であり、仮定する関数が異なれば、分離されるピークも異なるものとなる。
ところが、本件特許明細書には、ピーク分離する方法やピーク分離する際の関数が記載されていないから、ピーク分離の手法が明らかでなく、2θ=20~30°にあるピークの積分強度の和が一義的に定まらないので、「結晶化度」も一義的に定まらない。
そうすると、前記請求項1に係る発明における「結晶化度」が不明確であるから、前記請求項1に係る発明は不明確である。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項2~9に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項11及び13に係る発明について
設定登録時の特許請求の範囲の請求項11に係る発明における「熱水」について、本件特許明細書の段落【0066】(下記第6の2(2)ア(ウ)。)には「熱水は、本発明の効果が得られる限り、他の成分や不純物を含んでいてもよい。」と記載されているが、「熱水」にどのような成分をどのような含有量で含有させてもよいのかが明らかでないし、このことを明らかにする技術常識も存在しないから、前記「熱水」は意味が不明確であるので、前記請求項11に係る発明は不明確である。
更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項13に係る発明について検討しても事情は同じである。
6 証拠方法
甲第1号証:Masao NAKANO et al.,“Zeolite Based Adsorbents and Catalysts for Environmental Applications Utilizing a Function of Hydrocarbon-adsorption”,東ソー研究・技術報告,2001年,第45巻,p.29-35
甲第2号証:特開平11-228128号公報
甲第3号証:Lu Zhang et al.,“Factors that Determine Zeolite Stability in Hot Liquid Water” ,Journal of the American Chemical Society,2015年,Vol.137,p.11810-11819
甲第4号証:Masaki Okamoto et al.,“MFI-type zeolite with a core-shell structure with minimal defects synthesized by crystal overgrowth of aluminum-free MFI-type zeolite on aluminum-containing zeolite and its catalytic performance”,Microporous and Mesoporous Materials,2011年,Vol.143,p.413-418
甲第5号証:Rafal Baran et al.,“Influence of the nitric acid treatment on Al removal, framework composition and acidity of BEA zeolite investigated XRD, FTIR and NMR”,Microporous and Mesoporous Materials,2012年,Vol.163,p.122-130
甲第6号証:高光 泰之ら,「ナノサイズゼオライトの開発とその触媒機能」,東ソー研究・技術報告,2012年,第56巻,p.63-66
甲第7号証:P.R.Hari Prasad Rao et al.,“Synthesis of BEA by dry gel conversion and its characterization”,Microporous and Mesoporous Materials,1998年,Vol.21,p.305-313
甲第8号証:特開2008-80195号公報
甲第9号証:特開2008-80194号公報
甲第10号証:SHIGUANG LI et al.,“MTBE Adsorption on All-Silica β Zeolite”,ENVIRONMENTAL SCIENCE & TECHNOLOGY,2003年,Vol.37,No.17,p.4007-4010
甲第11号証:特開2011-62664号公報
甲第12号証:特開2000-61311号公報
甲第13号証:特開2016-215152号公報
甲第14号証:特許第5732170号公報
甲第15号証:特開2010-180080号公報
甲第16号証:特開2011-200845号公報
甲第17号証:特開2014-46267号公報
甲第18号証:特開2013-75276号公報
甲第19号証:特開2017-36204号公報
甲第20号証:特開2017-48105号公報
甲第21号証:Thomas C.Hoff et al.,“Thermal Stability of Aluminum-Rich ZSM-5 Zeolites and Consequences on Aromatization Reactions” ,The Journal of Physical Chemistry C,2016年,Vol.120,p.20103-20113
甲第22号証:Johan C.Groen et al.,“Decoupling mesoporosity formation and acidity modification in ZSM-5 zeolites by sequential desilication-dealumination”,Microporous and Mesoporous Materials,2005年,Vol.87,p.153-161
第5 取消理由の概要
1 令和6年7月9日付け取消理由通知書の取消理由の概要
(1) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、5及び9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項11及び13に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
本件特許の発明は、ゼオライト及びその製造方法に関するものであって、現在流通しているゼオライトは、水熱耐久性が低いことから、高水熱耐久性を有するゼオライトの開発が望まれている、という課題を、骨格中に少なくともSiを含むゼオライトであって、水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下であるゼオライトとすることで、解決するものといえる。
ところが、設定登録時の特許請求の範囲の請求項10~14に係る「ゼオライトの製造方法」においては、製造された「ゼオライト」の水熱耐久試験後の相対結晶化度や水熱耐久試験前の水分吸着率が特定されていないから、前記請求項10~14に係る発明により本件特許の発明の課題を解決できるとはいえないので、設定登録時の特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
2 令和6年12月10日付け取消理由通知書(決定の予告)の取消理由の概要
(1) 令和6年9月9日に提出した訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項5、7~14に係る発明について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、令和6年9月9日に提出した訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項5に係る発明の発明特定事項を満たす「MOR型のゼオライト」の製造方法は記載されていないし、前記請求項5に係る発明の発明特定事項を満たす「MOR型のゼオライト」を製造するには、当業者に過度の試行錯誤を要求するものといえるから、前記発明の詳細な説明の記載は、前記請求項5に係る発明について実施可能要件を満たさない。
更に、令和6年9月9日に提出した訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項7~14に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 令和6年9月9日に提出した訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項11、13に係る発明について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、令和6年9月9日に提出した訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項11に係る発明の発明特定事項を満たす「*BEA型のゼオライト」の製造方法は記載されていないし、前記請求項11に係る発明の発明特定事項を満たす「*BEA型のゼオライト」を製造するには、当業者に過度の試行錯誤を要求するものといえるから、前記発明の詳細な説明の記載は、前記請求項11に係る発明について実施可能要件を満たさない。
更に、令和6年9月9日に提出した訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項13に係る発明について検討しても事情は同じである。
第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断
事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由と第5の取消理由をまとめて判断する。
1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
(1) 甲各号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証には、以下のa~dの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
a 「Hydrothermal stability and hydrophobicity of FAU, MOR, FER, MFI, and BEA type zeolites with various SiO2/Al2O3 ratios have been examined under a variety of conditions. Some of them were found to exhibit high structural stability at 1000℃ in air containing water vapor and higher hydrophobicity. ・・・
1. Introduction
・・・
It has been reported that siliceous zeolites are effective for adsorption of organic compounds from paints, inks and solvents in air [1], and for removal of oragnic contaminations in water [2]. Higher hydrophobicity of zeolite adsorbents is required for these applications, since organic contaminants are extremely dilute in wet gas streams and in aqueous solituions.」(29ページ6行~左欄15行)
(当審訳:様々なSiO2/Al2O3比を持つFAU、MOR、FER、MFI及びBEA型ゼオライトの水熱安定性と疎水性をいろいろな条件下で調べた。その中には、水蒸気を含む空気中で、1000℃で高い構造安定性を示し、疎水性が高いものも見出された。・・・
1 イントロダクション
・・・
珪酸質ゼオライトは、空気中の塗料、インク、溶剤から有機物を吸着したり[1]、水中の有機汚染物質を除去したり[2]するのに有効であることが報告されている。有機汚染物質は湿潤ガス流や水溶液中では非常に希薄であるため、これらの用途ではゼオライト吸着剤の疎水性を高める必要がある。)
b 「2. Experimental
Commercially available zeolites (Tosoh Corp.) and some zeolites prepared in a laboratory scale were used in this study. “Fresh samples” were calcined in dry air at 500℃ for 1h, and “aged samples” were treated in air containing 10% water at a prescribed temperature for 5h. Hydrothermal stability was evaluated by the measurement of surface area and XRD crystallinity before and after the hydrothermal treatment. The surface area was measured by BET one-point method of N2. Hydrophobicity was indicated by the adsorbed amounts of H2O and benzene. The adsorbed amount of H2O was measured by TG analysis using each fresh sample hydrated in relative humidity of 80% at 25℃. The adsorbed amount of benzene was obtained from the adsorption isotherm at 25℃ by gravimetric method.」(30ページ左欄10行~最終行)
(当審訳:2. 実験
本研究では、市販のゼオライト(東ソー株式会社)および実験室規模で調製したゼオライトを使用した。「フレッシュ試料」は乾燥空気中で500℃、1時間焼成し、「エージング試料」は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理した。水熱安定性は、水熱処理前後の表面積とXRD結晶化度の測定により評価した。表面積はN2のBET一点法により測定した。疎水性はH2Oとベンゼンの吸着量で示した。H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定した。ベンゼンの吸着量は、25℃における吸着等温線から重量法により求めた。)
c 「3. Results and discussion
3.1. Hydrothermal stability and hydrophobicity of siliceous zeolites
Measured values of surface area before and after the aging, and adsorbed amounts of water and benzene of each sample are summarized in Table 1, and illustrated in Fig.1 and Fig.2. Although the decrease of surface area after the aging was observed with the increase of aging temperature, those of siliceous FER and MFI were almost maintained even after the treatment at 1000℃. The adsorbed amount of benzene was dependent on the structure of zeolites, but independent of the SiO2/Al2O3 ratio. On the other hand, the amount of water apparently decreased with increasing SiO2/Al2O3 ratio in each zeolite. These results show that hydrothermal stability and hydrophobicity increase with the increase of SiO2/Al2O3 ratio.」(30ページ右欄下から4行~31ページ右欄5行)
(当審訳:3. 結果と考察
3.1. ケイ酸質ゼオライトの熱水安定性と疎水性
各試料のエージング前後の表面積、水とベンゼンの吸着量の測定値を表1にまとめ、図1と図2に示した。エージング温度の上昇に伴い、エージング後の表面積の減少が観察されたが、ケイ酸質FERとMFIの表面積は、1000℃での処理後もほぼ維持された。ベンゼンの吸着量はゼオライトの構造に依存したが、SiO2/Al2O3比には依存しなかった。一方、水の量は、各ゼオライトのSiO2/Al2O3比が増加するにつれて明らかに減少した。これらの結果は、SiO2/Al2O3比の増加に伴い、水熱安定性と疎水性が増加することを示している。)
d 「
[図:0001425734000001.jpg]
」(30ページ)
(当審訳:表1 各種H+型ゼオライトの表面積と水及びベンゼンの吸着量
構造コード SiO2/Al2O3比 BETフレッシュ
・・・
MOR 26 440
220 450
・・・
MFI 40 350
390 360
1900 360
BEA 26 590
37 510
500 470
1700 460
エージング後の表面積[m2/g]a)
850℃ 900℃ 1000℃
・・・
360 330 20
390 380 330
・・・
330 320 320
360 360 350
360 350 350
390 250 20
400 330 10
450 400 310
480 470 390
吸着量フレッシュ[wt%] 注記d)
H2Ob) ベンゼンc)
・・・ ・・・ ・・・
14.4 9.5 D
8.8 9.6 D
・・・
9.9 9.1 S
4.0 8.3 S
3.2 9.0 S
23.7 18.8 S
18.5 18.8 S
16.0 17.5 D*
10.1 19.0 D*
a)フレッシュ:乾燥空気中で500℃、1時間焼成
エージング:10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理
b)20トール、25℃において
c)10トール、25℃において
d)準備方法:D:脱アルミニウム、S:合成、*:実験室規模)
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、様々なSiO2/Al2O3比を持つFAU、MOR、FER、MFI及びBEA型ゼオライトが記載されており、前記(ア)bの記載によれば、これらのゼオライトにおける「フレッシュ試料」は、乾燥空気中で500℃、1時間焼成したものであり、「エージング試料」は、10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したものであり、これらのゼオライトの水熱安定性は、水熱処理前後の表面積とXRD結晶化度の測定により評価したものであり、表面積はN2のBET一点法により測定し、疎水性はH2Oとベンゼンの吸着量で示したものであり、H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したものである。
(ウ) そして、前記(ア)dに記載されたSiO2/Al2O3比が1900のMFI型ゼオライトに注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「SiO2/Al2O3比が1900のMFI型ゼオライトであって、
フレッシュ試料のBET表面積が360m2/gであり、
1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が350m2/gであり、
フレッシュ試料のH2Oの吸着量が3.2wt%であり、
フレッシュ試料は乾燥空気中で500℃、1時間焼成したものであり、
エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したものであり、
表面積はN2のBET一点法により測定したものであり、
H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したものである、MFI型ゼオライト。」(以下、「甲1発明1」という。)
同様に、SiO2/Al2O3比が1700のBEA型ゼオライト及びSiO2/Al2O3比が220のMOR型ゼオライトに注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「SiO2/Al2O3比が1700のBEA型ゼオライトであって、
フレッシュ試料のBET表面積が460m2/gであり、
1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が390m2/gであり、
フレッシュ試料のH2Oの吸着量が10.1wt%であり、
フレッシュ試料は乾燥空気中で500℃、1時間焼成したものであり、
エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したものであり、
表面積はN2のBET一点法により測定したものであり、
H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したものである、BEA型ゼオライト。」(以下、「甲1発明2」という。)
「SiO2/Al2O3比が220のMOR型ゼオライトであって、
フレッシュ試料のBET表面積が450m2/gであり、
1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が330m2/gであり、
フレッシュ試料のH2Oの吸着量が8.8wt%であり、
フレッシュ試料は乾燥空気中で500℃、1時間焼成したものであり、
エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したものであり、
表面積はN2のBET一点法により測定したものであり、
H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したものである、MOR型ゼオライト。」(以下、「甲1発明3」という。)
イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
(ア) 甲第2号証には、以下のa~dの記載がある。
a 「【請求項1】 SiO2/Al2O3比が80以上であって、平均粒子径として30nm以上の一次粒子径を有する粒子から構成されていることを特徴とする高耐熱性β-ゼオライト。」
b 「【0005】 ところで、これまでのゼオライトの耐熱性の指標としては、主に、ゼオライトの骨格を構成する組成を示すSiO2/Al2O3比や、電荷を補償するために骨格中のAl近傍に存在するH+やNa+,Cu2+等のイオン種が用いられてきた。
【0006】 しかしながら、SiO2/Al2O3比やイオン種の組成が同一であるゼオライトであっても、使用した原材料や製造方法などによって、耐熱性が大きく異なることが判明した。
【0007】 このため、耐熱性(特に、自動車排ガスのような水分を含む雰囲気中での耐熱性(耐水熱性))が十分でないゼオライトを、自動車等の内燃機関の排ガス浄化用に用いた場合、ゼオライトの細孔構造の崩壊が進行するため、連続高速走行などの排ガス温度の高い条件での使用により浄化性能が劣化する恐れがあった。また、触媒用途として用いた場合、例えばコーキングの問題から加熱により再生処理を施す時に、ゼオライトの細孔構造が劣化してしまう場合があった。以上のことから、高耐熱性を有するゼオライトの材料特性をいかに保証するかが問題であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明者は、上記従来の問題に鑑みて、ゼオライトの耐熱性に対していかなる物性、特性が関与しているかについて鋭意検討を進めた結果、ゼオライトを構成する粒子の平均粒子径、その粒度分布、粒子形状、及び/又は結晶構造が深く関係していることを見出し、本発明に至ったものである。」
c 「【0030】(耐熱性の評価方法)H型の高耐熱性β-ゼオライトの粉末をアルミナ製ボートにのせ、電気炉中で水蒸気10%を含む雰囲気下に1000℃、4時間の耐久試験を実施し、耐久試験前後の比表面積を測定して、耐久処理後の値を耐久処理前の値で割った比表面積保持率で耐熱性を評価した。」
d 「【0041】(実施例6)硫酸アルミニウム水溶液を35重量%の水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)の水溶液中に混合して得た溶液に、コロイダルシリカ(30重量%)と水酸化ナトリウム水溶液を加え撹拌し、反応混合物を得た。この反応混合物を80℃まで加熱し、ゲルの粘性が上がるまで撹拌した。ゲルの粘性が上がった後、ゲルをニーダー(K-1型,ネオテック株式会社製)に移し、ゲルが乾燥するまでさらに80℃で混練を続け、結晶化用乾燥ゲルを作製した。結晶化用乾燥ゲルの組成は次の通りであった。
10Na2O・Al2O3・300SiO2・110TEAOH・770H2O
【0042】 上記の結晶化用乾燥ゲルを十分粉砕した後、オートクレーブに仕込み、自生圧力下で180℃、16時間の水蒸気処理を行った。水蒸気処理は、結晶化用乾燥ゲルを水と分離するような形でオートクレーブに仕込み、密閉容器内で加熱することにより行った。固体反応生成物を水洗し、遠心分離機で分離、洗浄を行い、80℃にて乾燥させた後、空気中540℃で4時間熱処理してテンプレートを除去した。更に、得られた粉末を硝酸アンモニウム水溶液中、80℃にて1時間処理し、イオン交換した。その後、分離、洗浄および乾燥を行った後、再び焼成を行い、H型のβ型珪酸塩分子篩を合成した。
・・・
【0049】 更に、それぞれ得られたH型の高耐熱性β-ゼオライト(実施例1~6、比較例1~2)について、X線回折パターンの半値幅の測定と耐熱性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
[図:0001425734000002.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には、SiO2/Al2O3比が80以上であって、平均粒子径として30nm以上の一次粒子径を有する粒子から構成されている高耐熱性β-ゼオライトが記載されており、前記(ア)cの記載によれば、前記高耐熱性β-ゼオライトの耐熱性は、H型の高耐熱性β-ゼオライトの粉末をアルミナ製ボートにのせ、電気炉中で水蒸気10%を含む雰囲気下に1000℃、4時間の耐久試験を実施し、耐久試験前後の比表面積を測定して、耐久処理後の値を耐久処理前の値で割った比表面積保持率で耐熱性を評価したものである。
(ウ) そして、前記(ア)dに記載された実施例6の高耐熱性β-ゼオライトに注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「SiO2/Al2O3比が80以上であって、平均粒子径として30nm以上の一次粒子径を有する粒子から構成されている高耐熱性β-ゼオライトであって、
硫酸アルミニウム水溶液を35重量%の水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)の水溶液中に混合して得た溶液に、コロイダルシリカ(30重量%)と水酸化ナトリウム水溶液を加え撹拌し、反応混合物を得て、この反応混合物を80℃まで加熱し、ゲルの粘性が上がるまで撹拌し、ゲルの粘性が上がった後、ゲルをニーダー(K-1型,ネオテック株式会社製)に移し、ゲルが乾燥するまでさらに80℃で混練を続け、結晶化用乾燥ゲルを作製したものであり、結晶化用乾燥ゲルの組成は次のとおりであり、
10Na2O・Al2O3・300SiO2・110TEAOH・770H2O
前記結晶化用乾燥ゲルを十分粉砕した後、オートクレーブに仕込み、自生圧力下で180℃、16時間の水蒸気処理を行い、水蒸気処理は、結晶化用乾燥ゲルを水と分離するような形でオートクレーブに仕込み、密閉容器内で加熱することにより行ったものであり、固体反応生成物を水洗し、遠心分離機で分離、洗浄を行い、80℃にて乾燥させた後、空気中540℃で4時間熱処理してテンプレートを除去し、更に、得られた粉末を硝酸アンモニウム水溶液中、80℃にて1時間処理し、イオン交換し、その後、分離、洗浄および乾燥を行った後、再び焼成を行い、H型のβ型珪酸塩分子篩を合成したものであり、
耐久前の比表面積が520m2/gであり、耐久後の比表面積が440m2/gであり、保持率が85%であり、
前記高耐熱性β-ゼオライトの耐熱性は、H型の高耐熱性β-ゼオライトの粉末をアルミナ製ボートにのせ、電気炉中で水蒸気10%を含む雰囲気下に1000℃、4時間の耐久試験を実施し、耐久試験前後の比表面積を測定して、耐久処理後の値を耐久処理前の値で割った比表面積保持率で耐熱性を評価したものである、高耐熱性β-ゼオライト。」(以下、「甲2発明」という。)
ウ 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
(ア) 甲第3号証には、以下のa~fの記載がある。
a 「ABSTRACT: The susceptibility of zeolites to hot liquid water may hamper their full utilization in aqueous phase process, such as those involved in biomass conversion and upgrading reactions. Interactions of zeolites with water strongly depend on the presence of hydrophilic moieties including Broensted acid sites (BAS), extraframework cations, and silanol defects, which facilitate wetting of the surface. However, it is not clear which of these moieties are responsible for the susceptibility of zeolites to liquid water. Previous studies have offered contradictory explanations because the role of each of these characteristics has not been investigated independently. In this work, a systematic comparison has been attempted by relating crystallinity losses to the variation of each of the five zeolite characteristics that may influence their stability in liquid water, including number of BAS, Si-O-Si bonds, framework type, silanol defects, and extraframework Al. In this study, we have systematically monitored the crystallinity changes of a series of HY, H-ZSM-5, and H-β zeolite samples with varying Si/Al ratio, density of BAS, zeolite structure, and density of silanol defects upon exposure to liquid water at 200℃. The results of this comparison unambiguously indicate that the density of silanol defects plays the most crucial role in determining susceptibility of zeolites to hot liquid water. By functionalizing the silanol defects with organosilanes, the hydrophobicity of defective zeolites is increased and the tolerance to hot liquid water is significantly enhanced.」(11810ページ)
(当審訳:要約:ゼオライトは高温の液体水に弱いため、バイオマス変換やアップグレード反応のような水相プロセスでの完全利用を妨げる可能性がある。ゼオライトと水との相互作用は、表面の濡れを促進するブレンステッド酸部位(BAS)、骨格外カチオン、シラノール欠陥を含む親水性部位の存在に強く依存する。しかし、ゼオライトの液体水に対する感受性の原因が、これらの部位のどれにあるのかは明らかではない。これまでの研究では、これらの特徴のそれぞれの役割が独立して調査されてこなかったため、矛盾した説明がなされてきた。この研究では、BASの数、Si-O-Si結合、骨格のタイプ、シラノール欠陥、骨格外Alなど、液体水中での安定性に影響を与えると考えられる5つのゼオライト特性の変化と結晶化度の損失を関連付けることにより、系統的な比較を試みた。本研究では、Si/Al比、BAS密度、ゼオライト構造、シラノール欠陥密度を変化させた一連のHY、H-ZSM-5、及びH-βゼオライト試料について、200℃の液体水への曝露による結晶化度の変化を系統的にモニターした。この比較の結果は、シラノール欠陥の密度がゼオライトの高温液体水に対する感受性を決定する上で最も重要な役割を果たしていることを明確に示している。シラノール欠陥を有機シランで官能基化することにより、欠陥のあるゼオライトの疎水性が高まり、高温の液体水に対する耐性が著しく向上する。)
b 「INTRODUCTION
Zeolites are remarkable microporous materials with tunable structure, acid density, and shape selectivity, which have shown unmatched performance in many vapor phase petrochemical and oil refining process, including cracking, hydrocracking, isomerization, aromatization,etc.1・・・
Since water vapor has been widely used to modify the structure and acid density of zeolites, the interaction of water and zeolites has been investigated extensively in the past, mostly involving water in the vapor phase.14-18However, the thermal susceptibility of zeolites in liquid water is curiously different from that in steam. That is, zeolites can sustain long treatments under steam at temperatures well above 500℃, they may collapse and lose their crystallinity after only a few hours in liquid water at 200℃. When a zeolite is exposed to water in the vapor phase at high temperature, dealumination occurs with relatively small damage to the microstructure. Under conditions of enough atom mobility, some of the Al cations move from metastable tetrahedral positions, stabilized by framework, to more stable octahedral (extraframework) positions. During this process, only a small fraction of the microporous volume is lost, with formation of mesoscale channels. By contrast, in liquid phase, a dramatic structural collapse occurs at much lower temperatures. It is important to note that while dealumination enhances the thermal and chemical stability of zeolites in the vapor phase,19 it seems to make the material more susceptible to attack by liquid water.」(11810ページ左欄1行~右欄下から5行)
(当審訳:イントロダクション
ゼオライトは、構造、酸密度、形状選択性が調整可能な注目すべき微多孔質材料であり、分解、水素化分解、異性化、芳香族化など、多くの気相石油化学および石油精製プロセスにおいて比類ない性能を発揮している。1・・・
水蒸気はゼオライトの構造と酸密度を修正するために広く使用されているため、水とゼオライトの相互作用は過去に広く研究されており、そのほとんどは気相中の水が関与している。14-18しかし、ゼオライトの液体の水中の熱感受性は、不思議なことに蒸気の熱感受性とは異なる。つまり、ゼオライトは500℃以上の水蒸気中で長時間の処理に耐えるが、200℃の液体水中では数時間で崩壊し、結晶性を失う可能性がある。ゼオライトが高温で水蒸気相にさらされると、微細構造への損傷が比較的少ない状態で脱アルミ化が起こる。原子の移動度が十分な条件下では、Al陽イオンの一部は、骨格によって安定化された準安定な四面体の位置から、より安定な八面体(骨格外)の位置に移動する。この過程では、メソスケールの流路が形成され、マイクロポーラス容積のごく一部が失われるだけである。対照的に、液相ではもっと低い温度で劇的な構造崩壊が起こる。脱アルミ化は、気相中のゼオライトの熱的・化学的安定性を高める一方で19、液体の水による攻撃を受けやすくすることに注意することが重要である。)
c 「EXPERIMENTAL SECTION
Materials and Methods. Most of the zeolites used in this study were provided by Zeolyst International. Two silicalite-1 samples, using either OH- or F- as mineralizing agent, were synthesized in our lab by the hydrothermal synthesis method adapted from standard procedures reported in the literature.31,32 The zeolite specifications, product codes, and names of the samples used in this work are summarized in Tabel 1.・・・The silicate-1 MFI zeolites, prepared by the two alternative routes, were calcined at 500℃ to remove the organic template (tetrapropylammonium hydroxide or tetrapropylammonium bromide).
・・・
The tests of measure the susceptibility of zeolites to hot liquid water were performed following the same procedure as that employed in our previous study5. That is, in each run, 0.5g of each zeolite sample was placed in a Teflon container placed inside a 50mL autoclave. Different amounts of water were introduced at the bottom of the same autoclave, but not directly in contact with the zeolite. Afterward, the autoclave was heated at 200℃ to generate steam at the autogenic pressure. After a specified reaction time, the autoclave was quenched with running water. The zeolite samples were collected in vials and then dried at 100℃ prior to analysis. Considering the vapor pressure (18.6atm) and gas compressibility factor (0.96) for water at 200℃, we determined the amount of water (n0=0.0224 mol) required to reach the saturation of the vapor in the given autoclave volume. The n/n0 ratio is used to represent the sum of the amount of liquid water placed in the autoclave and the amount of water already present inside the zeolite (about 2.78 mmol for 0.5 g zeolite) relative to the number of moles at saturation (n0). At n/n0 < 1, only water vapor is present. However, capillary condensation may occur at n/n0 values less than 1 in the small pores of the sample.」(11811ページ右欄4行~11812ページ左欄4行)
(当審訳:実験セクション
材料と方法 本研究で使用したゼオライトのほとんどは、Zeolyst International社から提供されたものである。OH-またはF-を鉱化剤として使用する2種類のシリカライト-1試料を、文献で報告されている標準的な手順を適応した水熱合成法により、当研究室で合成した31,32。ゼオライトの仕様、製品コード、今回使用した試料の名称を表1にまとめた。・・・2つの代替ルートで調製したシリケート-1MFIゼオライトを500℃で焼成し、有機テンプレート(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラプロピルアンモニウムブロミド)を除去した。
・・・
ゼオライトの熱水に対する感受性の測定は、以前の研究5と同じ手順で行った。すなわち、各測定において、各ゼオライト試料0.5gを50mLオートクレーブ内に設置したテフロン製容器に入れた。同じオートクレーブの底部に、ゼオライトに直接接触しないように異なる量の水を導入した。その後、オートクレーブを200℃で加熱し、自生圧力で蒸気を発生させた。所定の反応時間後、オートクレーブを流水で急冷した。ゼオライトサンプルはバイアル瓶に集められ、分析前に100℃で乾燥された。200℃における水の蒸気圧(18.6atm)と気体圧縮率(0.96)を考慮し、所定のオートクレーブ容積で蒸気が飽和するのに必要な水の量(n0=0.0224mol)を求めた。n/n0比は、飽和モル数(n0)に対する、オートクレーブ内に入れられた液体の水の量と、ゼオライト内部に既に存在する水の量(0.5gのゼオライトに対して約2.78mmol)の合計を表すために使用される。n/n0<1では、水蒸気のみが存在する。しかし、n/n0比が1未満では、試料の小さな孔で毛細管凝縮が起こる可能性がある。)
d 「
[図:0001425734000003.jpg]
」(11811ページ右欄)
(当審訳:表1.ゼオライトの仕様
製品コード ゼオライトの型 公称Si/Al比 陽イオン形態
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
N/A シリカライト-1 ∞ N/A
(MFI)
試料名
・・・
シリカライト-1)
e 「Influence of the Framework Type on Zeolite Susceptibility to Liquid Water. It has been widely proposed that the type of zeolite framework has a strong effect on the susceptibility of the material to liquid water4. It has been shown that ZSM-5 (MFI) and mordenite (MOR) zeolites are more stable than HY (FAU) or β (BEA) zeolites.17・・・
・・・
By contrast, an unsteamed HY 2.6, with the same framework, can be very stable in liquid water. A more direct comparison can be made with two pure-silica MFI zeolites synthesized by two different methods, using hydroxide or fluoride medium. As shown in Figure 11, the silicalite-1 product made by the fluoride route presented a very high stability upon exposure to water while the one from hydroxide route was very unstable and lost over 90% of its original crystallinity when exposed to hot liquid water.」(11816ページ右欄3行~30行)
(当審訳:ゼオライトの液体水に対する感受性に及ぼす骨格タイプの影響 ゼオライト骨格の種類は、材料の液体水に対する感受性に強い影響を与えることが広く提唱されている4。ZSM-5(MFI)及びモルデナイト(MOR)ゼオライトは、HY(FAU)又はβ(BEA)ゼオライトよりも安定であることが示されている17。・・・
・・・
対照的に、同じ骨格を持つ蒸気処理されていないHY2.6は、液体水中で非常に安定することができる。より直接的な比較は、水酸化物またはフッ化物媒体を用いた2つの異なる方法で合成された2つの純シリカMFIゼオライトで行うことができる。図11に示すように、フッ化物経路で製造されたシリカライト-1生成物は、水にさらされたときに非常に高い安定性を示したが、水酸化物経路で製造されたものは非常に不安定で、高温の液体水にさらされると元の結晶化度の90%以上が失われた。)
f 「
[図:0001425734000004.jpg]
」(11817ページ)
(当審訳:図11.ゼオライトHY(FAU骨格、A)、シリカライト-1及びH-ZSM-5(MFI骨格、B)、H-β(BEA骨格、C)の200℃の水攻撃時に保持される結晶化度の割合。蒸気処理したHY2.6と蒸気処理していないHY2.6は9時間、他の試料はすべて6時間試験した。)
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には、BASの数、Si-O-Si結合、骨格のタイプ、シラノール欠陥、骨格外Alなど、液体水中での安定性に影響を与えると考えられる5つのゼオライト特性の変化と結晶化度の損失を関連付けることにより、系統的な比較を試みたことが記載されている。
(ウ) そして、前記(ア)c~fに記載されたシリカライト-1に注目すると、甲第3号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「公称Si/Al原子比が∞のシリカライト-1であって、
前記シリカライト-1はMFI型ゼオライトであり、
OH-またはF-を鉱化剤として使用する2種類のシリカライト-1試料を、文献で報告されている標準的な手順を適応した水熱合成法により、当研究室で合成し、
2つの代替ルートで調製したシリケート-1MFIゼオライトを500℃で焼成し、有機テンプレート(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラプロピルアンモニウムブロミド)を除去し、
ゼオライトの熱水に対する感受性の測定を、各測定において、各ゼオライト試料0.5gを50mLオートクレーブ内に設置したテフロン製容器に入れ、同じオートクレーブの底部に、ゼオライトに直接接触しないように異なる量の水を導入し、その後、オートクレーブを200℃で加熱し、自生圧力で蒸気を発生させ、所定の反応時間後、オートクレーブを流水で急冷し、ゼオライトサンプルはバイアル瓶に集められ、分析前に100℃で乾燥して行ったものであり、
試験は6時間行い、
フッ化物経路で製造されたシリカライト-1生成物は、水にさらされたときに非常に高い安定性を示したが、水酸化物経路で製造されたものは非常に不安定で、高温の液体水にさらされると元の結晶化度の90%以上が失われた、シリカライト-1。」(以下、「甲3発明」という。)
エ 甲第4号証の記載事項及び甲第4号証に記載された発明
(ア) 甲第4号証には、以下のa~bの記載がある。
a 「ABSTRACT
MFI-type zeolite with a core-shell structure and minimal defects was synthesized by crystal overgrowth of aluminum-free MFI-type zeolite on aluminum-containing MFI-type zeolite crystals. The purpose of the zeolite shell is to passivate acid sites on the external surface of the zeolite core. When both the shell and the core are synthesized in the presence of fluoride ion, defects are minimal. In the case of synthesizing the shell in the absence of fluoride ion, core growth does not occur. When the core is synthesized in the absence of fluoride ion, significant defects develop and cause mesopores to form in the core-shell zeolite. As catalysts for methylation of toluene with methanol, only the core-shell zeolite with minimal defects shows high selectivity for p-xylene (96%).」(413ページ)
(当審訳:要約
アルミニウムを含有するMFI型ゼオライト結晶上にアルミニウムを含有しないMFI型ゼオライトを結晶成長させることにより、コアシェル構造を有し欠陥の少ないMFI型ゼオライトを合成した。ゼオライトシェルの目的は、ゼオライトコアの外面にある酸サイトを不動態化することである。フッ化物イオンの存在下でシェルとコアの両方を合成すると、欠陥は最小限に抑えられる。フッ化物イオン非存在下でシェルを合成した場合、コアの成長は起こらない。フッ化物イオン非存在下でコアを合成すると、重大な欠陥が発生し、コアシェルゼオライトにメソ孔が形成される。メタノールによるトルエンのメチル化触媒としては、欠陥の少ないコアシェルゼオライトのみがp-キシレンに対して高い選択性(96%)を示した。)
b 「1.Introduction
・・・
In this study, we examined synthesis conditions for crystal overgrowth without defects, and overgrew core zeolite prepared in the presence of fluoride ion to form core-shell zeolite with minimal defects. The studies using zeolites with no acidic sites on the external surface and no defects are important to obtain the information about catalytic properties of the inside of zeolites. We also tested the catalytic activity of the core-shell zeolite.
2.Experimental
2.1.Preparation of core zeolite
Core zeolite was prepared with fluoride ion as a mineralizing agent according to the method of Aiello [21,22]. Tetrapropylammonium bromide (TPABr) and ammonium fluoride (NH4F) were dissolved in water, after which aluminum hydroxide and fumed silica were added. The mixture was stirred for 2 h, then heated in an autoclave at 180℃ for 90 h with stirring. The formed particles were filtered, washed, and calcined at 550℃ for 7 h under a dry air stream. The gel composition ratio was Si:TPABr:NH4F:Al:H2O=1:0.125:0.9:0.05:33.
Core zeolite was also prepared by the conventional method. Aluminum nitrate, sodium hydroxide, and TPABr were dissolved in water, and tetraethyl orthosilicate was added dropwise. The mixture was stirred for 2 h, and then heated in an autoclave at 180℃ for 24 h. The formed particles were washed thoroughly, and then dried. The gel composition ratio was Si:TPABr:NaOH:Al:H2O=1.5:0.5:0.5:0.05:120.
2.2.Crystal overgrowth to synthesize the core-shell zeolite
Crystal overgrowth was achieved as follows. Fumed silica was added to an aqueous solution of TPABr and NH4F. The mixture was stirred for 2 h, following which the core zeolite was added. The mixture was stirred for 80 min, then heated in an autoclave at 180℃ for 90 h without stirring. The formed particles were filtered, washed, and calcined at 550℃ for 7 h under a dry air stream. The gel composition ratio was Si (fumed silica):TPABr: NH4F:H2O:Si(core zeolite)=1:0.125:0.9:33:1. Three types of zeolite were used as the core zeolite: zeolite prepared in the presence of fluoride ion before and after calcination and zeolite prepared by the conventional method in the absence of fluoride ion and without calcination.
Crystal overgrowth was also attempted under the same synthesis conditions used to prepare conventional zeolite. The gel composition ratio was Si:TPAOH:ethanol:H2O:Si(core zeolite)=2:0.5:8:120:2[14].
・・・
3.Results and discussion
3.1.Synthesis of the core-shell zeolite
As mentioned previously, three types of zeolite were used for the core zeolite. We adopt the following terminology: CF(NC)= core prepared in the presence of fluoride ion but not calcined: CF(C)= core prepared in the presence of fluoride ion and calcined: and CA(NC)= core prepared in the absence of fluoride ion but not calcined. Each was added to aluminum-free synthesis gel in the presence of fluoride ion, and the mixtures were heated under hydrothermal conditions at 180℃ for 90 h to produce the following zeolites (the suffix SF denotes shell synthesis in the presence of fluoride ion): CF(NC)SF, CF(C)SF, and CA(NC)SF. For CF(NC), a second hydrothermal synthesis in the absence of fluoride ion was also performed to produce CF(NC)SA.
・・・
[図:0001425734000005.jpg]
・・・
Table 1 also shows silicon-aluminum ratios calculated from elemental analysis and the quantity of acid sites by TPD of ammonia. The ratios determined by inductively coupled plasma (ICP) and NH3 TPD are almost the same as that for core prepared in the presence of fluoride ion, CF(C). The ratio for CF(NC) determined by ICP was the same as that for CF(C). The ratios determined by ICP for CF(C)SF and CF(NC)SF are 1.6 and 1.7 times larger than before shell formation(CF(C) and CF(NC)), respectively, and slightly less than the ratio of 2.0 obtained by calculation of the gel ratio during shell formation (Si of tetraethyl orthosilicate:Si of core zeolite=1:1). The reason for inconsistency of the ratios is probably that core-shell zeolites (CF(C)SF and CF(NC)SF) synthesized from CF(C) and CF(NC), respectively, have small aluminum-free zeolite particles (20% of the Si in the gel) and both elemental analysis and TPD were performed after removal of these particles. This result is consistent with the amount of small particles removed by sonication, about 20%.」(413ページ左欄1行~415ページ右欄7行)
(当審訳:1.イントロダクション
・・・
本研究では、欠陥のない結晶を過成長させるための合成条件を検討し、フッ化物イオン存在下で調製したコアゼオライトを過成長させ、欠陥の少ないコアシェルゼオライトを形成した。ゼオライト内部の触媒特性に関する情報を得るためには、外表面に酸性サイトがなく、欠陥のないゼオライトを用いた研究が重要である。また、コアシェルゼオライトの触媒活性もテストした。
2.実験
2.1.コアゼオライトの調製
Aiello[21,22]の方法に従って、フッ化物イオンを鉱化剤としてコアゼオライトを調製した。テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)とフッ化アンモニウム(NH4F)を水に溶解し、水酸化アルミニウムとヒュームドシリカを加えた。混合物を2時間撹拌した後、オートクレーブで180℃で90時間撹拌しながら加熱した。形成された粒子を濾過、洗浄し、乾燥空気流下で550℃で7時間焼成した。ゲル組成比はSi:TPABr:NH4F:Al:H2O=1:0.125:0.9:0.05:33であった。
コアゼオライトは従来の方法でも調製した。硝酸アルミニウム、水酸化ナトリウム、TPABrを水に溶解し、テトラエチルオルソシリケートを滴下した。混合物を2時間撹拌した後、オートクレーブで180℃で24時間加熱した。ゲル組成比はSi:TPABr:NaOH:Al:H2O=1.5:0.5:0.5:0.05:120であった。
2.2.結晶の過成長によるコアシェルゼオライトの合成
結晶の過成長は次のようにして達成された。フュームドシリカをTPABrとNH4Fの水溶液に加えた。混合物を2時間撹拌し、その後コアゼオライトを加えた。混合物を80分間撹拌した後、撹拌せずにオートクレーブで180℃で90時間加熱した。形成された粒子を濾過、洗浄し、乾燥空気気流下で550℃で7時間焼成した。ゲル組成比は、Si(フュームドシリカ):TPABr:NH4F:H2O:Si(コアゼオライト)=1:0.125:0.9:33:1であった。コアゼオライトとして、フッ化物イオンの存在下で焼成前及び後に調製したゼオライトと、フッ化物イオンの非存在下で焼成せずに従来法で調製したゼオライトの3種類を使用した。
従来のゼオライトの調製に使用したのと同じ合成条件で、結晶の過成長も試みた。ゲル組成比は、Si:TPAOH:エタノール:H2O:Si(コアゼオライト)=2:0.5:8:120:2であった[14]。
3.結果及び考察
3.1.コアシェルゼオライトの合成
前述したように、コアゼオライトには3種類のゼオライトを使用した。以下の用語を用いる: CF(NC)=フッ化物イオンの存在下で調製されたが、焼成されていないコア:CF(C)=フッ化物イオンの存在下で調製され、焼成されたコア:及びCA(NC)=フッ化物イオンの非存在下で調製され、焼成されていないコア。それぞれをフッ化物イオンの存在下でアルミニウムを含まない合成ゲルに添加し、混合物を水熱条件下180℃で90時間加熱し、以下のゼオライトを製造した:CF(NC)SF、CF(C)SF、CA(NC)SF(接尾辞SFはフッ化物イオン存在下でのシェル合成を示す。)。CF(NC)については、フッ化物イオン非存在下での2回目の水熱合成も行い、CF(NC)SAを生成した。
・・・
表1
コア及びコア-シェルゼオライトの特性
触媒 コア合成条件 シェル合成条件
・・・ ・・・ ・・・
CF(NC)SF F-有り 焼成なし F-有り
粒子の長軸の Si/Al
長さ[μm]c ICPa NH3TPDb
・・・ ・・・
18 63 62
a 誘導結合プラズマを用いて算出。
b アンモニアの温度プログラム脱離を用いて算出。
c SEM画像を用いて算出。
d 不明。
・・・
表1は、元素分析から算出したケイ素-アルミニウム比と、アンモニアのTPDによる酸性サイトの量も示している。誘導結合プラズマ(ICP)およびNH3 TPDによって決定された比は、フッ化物イオン存在下で調製されたコアのCF(C)とほぼ同じであった。ICPによるCF(NC)の比率はCF(C)の比率と同じであった。CF(C)SFとCF(NC)SFのICPによる比は、それぞれシェル形成前(CF(C)とCF(NC))の1.6倍と1.7倍であり、シェル形成時のゲル比(テトラエチルオルソシリケートのSi:コアゼオライトのSi=1:1)の計算で得られた比2.0よりわずかに小さい。比率の不一致の理由は、CF(C)とCF(NC)からそれぞれ合成されたコアシェルゼオライト(CF(C)SFとCF(NC)SF)には、アルミニウムを含まない小さなゼオライト粒子(ゲル中のSiの20%)があり、元素分析とTPDの両方が、これらの粒子を除去した後に行われたためと思われる。この結果は、超音波処理によって除去された小粒子の量、約20%と一致する。)
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第4号証には、アルミニウムを含有するMFI型ゼオライト結晶上にアルミニウムを含有しないMFI型ゼオライトを結晶成長させることにより、コアシェル構造を有し欠陥の少ないMFI型ゼオライトを合成したことが記載されている。
(ウ) そして、前記(ア)bに記載されたCF(NC)SFに注目すると、甲第4号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「アルミニウムを含有するMFI型ゼオライト結晶上にアルミニウムを含有しないMFI型ゼオライトを結晶成長させることにより、コアシェル構造を有し欠陥の少ないMFI型ゼオライトを合成する方法であって、
テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)とフッ化アンモニウム(NH4F)を水に溶解し、水酸化アルミニウムとヒュームドシリカを加え、混合物を2時間撹拌した後、オートクレーブで180℃で90時間撹拌しながら加熱し、形成された粒子を濾過、洗浄して、フッ化物イオンの存在下で調製されたが、焼成されていないコアCF(NC)を調製し、
フュームドシリカをTPABrとNH4Fの水溶液に加え、混合物を2時間撹拌し、その後コアゼオライトを加え、混合物を80分間撹拌した後、撹拌せずにオートクレーブで180℃で90時間加熱し、形成された粒子を濾過、洗浄し、乾燥空気気流下で550℃で7時間焼成して、結晶の過成長によるコアシェルゼオライトCF(NC)SFを合成する、コアシェルゼオライトの合成方法であり、
前記コアシェルゼオライトCF(NC)SFのSi/Al比は、ICPによれば63、NH3 TPDによれば62であり、
CF(NC)SFのICPによる比は、シェル形成前(CF(NC))の1.7倍である、コアシェルゼオライト(CF(NC)SF)の合成方法。」(以下、「甲4発明」という。)
オ 甲第5号証の記載事項及び甲第5号証に記載された発明
(ア) 甲第5号証には、以下のa~cの記載がある。
a 「ABSTRACT
Two different procedures were used to prepare dealuminated BEA zeolite. The first procedure realized in two steps consisted of first calcination of original tetraethylammonium (TEA) BEA(17) zeolite in air at 823 K for 15 h to remove organic template and then treatment of as resulted organic-free HAIBEA(17) zeolite with concentrated nitric acid solution for different times to remove part or all Al atoms. ・・・The second procedure realized in one step consisted of direct treatment of original TEABEA zeolite with concentrated nitric acid solution to remove simultaneously organic template and Al atoms. To obtain partly or totally dealuminated BEA zeolite the treatment time was 0.08 and 4 h respectively.」(122ページ)
(当審訳:要約
脱アルミニウムBEAゼオライトの調製には、2つの異なる手順が用いられた。最初の手順は、まず元のテトラエチルアンモニウム(TEA)BEA(17)ゼオライトを空気中823Kで15時間か焼して有機テンプレートを除去し、次に得られた有機物を含まないHAIBEA(17)ゼオライトを濃硝酸溶液で異なる時間処理して、一部またはすべてのAl原子を除去するという2段階で実現した。・・・1段階で実現した第2の手順は、もとのTEABEAゼオライトを濃硝酸溶液で直接処理し、有機テンプレートとAl原子を同時に除去することであった。部分的または全体的に脱アルミノ化したBEAゼオライトを得るための処理時間は、それぞれ0.08時間と4時間であった。)
b 「1.Introduction
・・・
The present work aimed to investigate the dealumination process using a beta zeolite with higher Si/Al ratio and two procedures of dealumination.・・・
The second procedure was realized in one step considered of direct treatment of original TEABEA zeolite with concentrated nitric acid solution to remove simultaneously organic template and Al atoms. To obtain partly or totally dealuminated BEA zeolite the treatment time was adjusted to 0.08 and 4 h respectively.
Both procedures allowed obtaining partly and totally dealuminated BEA zeolite without lost of its crystallinity. The composition of dealuminated zeolites was depended on the type the procedure applied and on the time of treatment with nitric acid solution.
2.Experimental
2.1.Materials
A tetraethylammonium (TEA)BEA with atomic Si/Al ratio of 17 (TEABEA(17)) provided by RIPP (China) was separated into two fractions and for each fraction different procedure of dealumination was applied to remove Al atoms. The first procedure was realized in two steps consisted of first calcination of original TEABEA zeolite in air at 823 K for 15 h to remove organic template and then treatment of resulted organic-free HAIBEA zeolite (4 g) with concentrated nitric acid solution (c = 13 mol L-1) at 353 K for different time (0.08, 0.16, 0.25, 0.5, 1.2, 3.4 and 5 h) upon vigorous stirring to remove part or all Al atoms from zeolite. Just after this step, the suspension was filtered on ceramic filter connected with pump. Then, the recovered solid was washed 5 times with 100 ml of distilled water. Finally, the solid was dried overnight at 368 K. The as obtained samples with different Si/Al ratio, marked in parenthesis, were labeled as HAISiBEA(297)(I), HAISiBEA(368)(I), HAISiBEA(947)(I) and SiBEA(1835)(I),respectively (Table 1).
The second procedure was realized in one step consisted of direct treatment of original TEABEA zeolite (4 g) with concentrated nitric acid solution (c = 13 mol L-1) at 353 K upon vigorous stirring to remove from zeolite simultaneously organic template and Al atoms. To obtain partly or totally dealuminated BEA zeolite the treatment was adjusted to 0.08 and 4 h respectively. Then, the suspension was filtered on ceramic filter connected with pump. Finally, the recovered solid was washed 5 times with 100 ml of distilled water and the solid was dried overnight at 368 K. The as obtained samples with different Si/Al ratio, marked in parenthesis were labeled as HAISiBEA(264)(II) and SiBEA(1141)(II),respectively.
Table 1 gives the nomenclature of the samples obtained by two procedures and their structural characteristics.」(122ページ左欄1行~右欄6行)
(当審訳:1. イントロダクション
・・・
本研究では、Si/Al比の高いβ型ゼオライトを使用し、2種類の脱アルミニウム法を用いて脱アルミニウムプロセスを調査することを目的とした。・・・
第二の手順は、元のTEABEAゼオライトを濃硝酸溶液で直接処理し、有機テンプレートとAl原子を同時に除去するという一工程で実現した。部分的または全体的に脱アルミノ化したBEAゼオライトを得るために、処理時間をそれぞれ0.08時間と4時間に調整した。
どちらの手順でも、結晶性を失うことなく、部分的及び全体的に脱アルミニウム化したBEAゼオライトを得ることができた。脱アルミニウム化ゼオライトの組成は、適用した手順の種類と硝酸溶液での処理時間に依存した。
2.実験
2.1.材料
RIPP社(中国)から提供された原子Si/Al比17のテトラエチルアンモニウム(TEA)BEA(TEABEA(17))を2つのフラクションに分離し、それぞれのフラクションに対して異なる脱アルミニウム処理を施し、Al原子を除去した。最初の手順は、まず元のTEABEAゼオライトを空気中823Kで15時間焼成して有機テンプレートを除去し、次に得られた有機物を含まないHAIBEAゼオライト(4g)を353Kで濃硝酸溶液(c=13molL-1)で異なる時間(0.08、0.16、0.25、0.5、1.2、3.4、5時間)、激しく攪拌しながら処理して、ゼオライトから一部またはすべてのAl原子を除去するという2段階で実現した。この工程の直後、懸濁液はポンプに接続されたセラミックフィルターでろ過された。その後、回収した固体を100mlの蒸留水で5回洗浄した。最後に、固体を368Kで一晩乾燥させた。得られた試料のSi/Al比を()で示し、それぞれHAISiBEA(297)(I)、HAISiBEA(386)(I)、HAISiBEA(947)(I)及びSiBEA(1835)(I)とした(表1)。
第二の手順は、もとのTEABEAゼオライト(4g)を353Kで濃硝酸溶液(c=13molL-1)で激しく攪拌しながら直接処理し、ゼオライトから有機テンプレートとAl原子を同時に除去するものであった。部分的または全体的に脱アルミノ化したBEAゼオライトを得るために、処理をそれぞれ0.08時間と4時間に調整した。その後、懸濁液をポンプに接続したセラミックフィルターでろ過した。最後に、回収した固体を100mlの蒸留水で5回洗浄し、368Kで一晩乾燥させた。得られた試料のSi/Al比を()で示し、それぞれHAISiBEA(264)(II)及びSiBEA(1141)(II)とした。
表1は、2つの方法で得られた試料の命名法とその構造的特徴を示している。)
c 「
[図:0001425734000006.jpg]
」(123ページ)
(当審訳:表1 BEA試料の組成と構造特性(化学分析、XRD)
試料 脱アルミニウム化手順
焼成温度/時間 HNO3濃度/時間
・・・ ・・・ ・・・
SiBEA(1141)(II) 焼成なし 13M/4時間
Si/Al(バルク) Al抽出(%) d302(Å)
・・・ ・・・ ・・・
1141 ~100 3.914
XRD相対結晶化度c
・・・
94
a もとのTEABEAゼオライト(Si/Al=17)を823Kの静止空気中で15時間焼成し、テトラエチルアンモニウム(TEA)テンプレートを除去した。
b HAIBEA(20)(I)は2段階で得られた:(i)HAIBEA(17)(I)をNH4NO3水溶液でイオン交換するとNH4AlBEA(20)(I)が得られ、(ii)後者の試料を空気中500℃で3時間焼成するとHAIBEA(20)(I)ゼオライトが得られる。
c XRDパターンからの(302)ピーク強度を用い、HAIBEA(17)(I)ゼオライトを100%結晶性とみなした試料の相対的結晶化度。)
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第5号証には、もとのTEABEAゼオライトを濃硝酸溶液で直接処理し、有機テンプレートとAl原子を同時に除去して、脱アルミニウムBEAゼオライトを調製することが記載されている。
(ウ) そして、前記(ア)b~cに記載されたSiBEA(1141)(II)に注目すると、甲第5号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「もとのTEABEAゼオライトを濃硝酸溶液で直接処理し、有機テンプレートとAl原子を同時に除去する、脱アルミニウムBEAゼオライトの調製方法であって、
RIPP社(中国)から提供された原子Si/Al比17のテトラエチルアンモニウム(TEA)BEA(TEABEA(17))を2つのフラクションに分離し、それぞれのフラクションに対して異なる脱アルミニウム処理を施し、Al原子を除去したものであり、
もとのTEABEAゼオライト(4g)を353Kで濃硝酸溶液(c=13molL-1)で激しく攪拌しながら直接処理し、ゼオライトから有機テンプレートとAl原子を同時に除去し、
部分的または全体的に脱アルミノ化したBEAゼオライトを得るために、処理を4時間に調整し、その後、懸濁液をポンプに接続したセラミックフィルターでろ過し、最後に、回収した固体を100mlの蒸留水で5回洗浄し、368Kで一晩乾燥させたものであり、
得られた試料のSi/Al比を()で示し、SiBEA(1141)(II)としたものであり、SiBEA(1141)(II)のSi/Al比は1141であり、XRDパターンからの(302)ピーク強度を用い、HAIBEA(17)(I)ゼオライトを100%結晶性とみなした試料の相対的結晶化度が94である、脱アルミニウムBEAゼオライトの調製方法。」(以下、「甲5発明」という。)
なお、甲第6号証~甲第22号証の摘記は省略する。
(2) 甲第1号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「SiO2/Al2O3比が1900のMFI型ゼオライト」は、本件発明1における「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかで」あることに相当する。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明1とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、
前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかである、ゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:「ゼオライト」が、本件発明1は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上」であるのに対して、甲1発明1は、「フレッシュ試料のBET表面積が360m2/g」であり、「1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が350m2/g」であり、「エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であり、「表面積はN2のBET一点法により測定したもの」である点。
・相違点2:「ゼオライト」が、本件発明1は、「前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が3.0重量%以下」であるのに対して、甲1発明1は、「フレッシュ試料のH2Oの吸着量が3.2wt%であり」、「H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したもの」である点。
(ウ) 事案に鑑み、始めに、前記(イ)の相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
まず、前記相違点2に係る「ゼオライト」の試験条件について対比すると、本件発明1は、「前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率」を求める際の試験条件が「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下」であるのに対して、甲1発明1は、「フレッシュ試料のH2Oの吸着量」を求める際の試験条件が「25℃、相対湿度80%の条件下」であるものである。
ここで、本件特許明細書の段落【0028】の記載(下記2(2)ア(ウ))からみれば、前記「相対水蒸気圧」は、吸着平衡状態にあるときの水蒸気の圧力(吸着平衡圧)P(mmHg)と水蒸気の飽和蒸気圧P0(mmHg)との比(P/P0)のことであるが、技術常識からみて、前記「相対水蒸気圧0.4の環境下」の蒸気量が「相対湿度80%の条件下」の蒸気量よりも多いとは考え難いから、甲1発明1に係るゼオライトを本件発明1の試験条件で試験した場合、「H2Oの吸着量」はより小さくなることが推認されるものである。
ところが、甲1発明1の「フレッシュ試料のH2Oの吸着量」は「3.2wt%」であり、甲1発明1の「フレッシュ試料」を前記相違点2に係る本件発明1の試験条件で試験した場合、「H2Oの吸着量」がより小さくなるとしても、「3.0重量%以下」となるということはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲1発明1が前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点2は実質的な相違点である。
したがって、前記(イ)の相違点1について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明1であるとはいえない。
(エ) 次に、前記相違点2の容易想到性について検討すると、前記(1)ア(ア)aの記載によれば、甲1発明1は、様々なSiO2/Al2O3比を持つFAU、MOR、FER、MFI及びBEA型ゼオライトの水熱安定性と疎水性をいろいろな条件下で調べたものであるから、「MFI型ゼオライト」の物性を甲1発明1で特定されたものとすることを前提として、水熱安定性と疎水性を条件を変えて調べたものといえる。
そして、甲1発明1に係るゼオライトにおいて、例えば「SiO2/Al2O3比」を増加させることで「H2Oの吸着量」が更に減少するとしても、そうすることは、甲1発明1に係る「MFI型ゼオライト」の物性を変化させることとなり、前記前提を破却することとなるから、そもそも想定されないので、甲1発明1を、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識や周知技術に関わりなく、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 次に、前記(ア)と同様にして本件発明1と甲1発明2とを対比すると、本件発明1と甲1発明2とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、
前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかである、ゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’:「ゼオライト」が、本件発明1は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上」であるのに対して、甲1発明2は、「フレッシュ試料のBET表面積が460m2/g」であり、「1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が390m2/g」であり、「エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であり、「表面積はN2のBET一点法により測定したもの」である点。
・相違点2’:「ゼオライト」が、本件発明1は、「前記ゼオライトが*BEA型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下」であるのに対して、甲1発明2は、「フレッシュ試料のH2Oの吸着量が10.1wt%であり」、「H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したもの」である点。
(カ) 事案に鑑み、始めに、前記(オ)の相違点2’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記(ウ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明2に係るゼオライトを本件発明1の試験条件で試験した場合、「H2Oの吸着量」はより小さくなることが推認されるが、そうであるとしても、「H2Oの吸着量」が「6.0重量%以下」となるということはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲1発明2が前記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点2’は実質的な相違点である。
したがって、前記(オ)の相違点1’について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明2であるとはいえない。
更に、前記相違点2’の容易想到性について検討すると、前記(エ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明2を、前記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識や周知技術に関わりなく、当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点1’について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(キ) 前記(ウ)、(エ)、(カ)によれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2及び3について
(ア) 前記ア(ア)と同様にして本件発明2と甲1発明1とを対比すると、本件発明2と甲1発明1とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMFI型のゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’’:「ゼオライト」が、本件発明2は、「水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1050℃)が20%以上」であるのに対して、甲1発明1は、「フレッシュ試料のBET表面積が360m2/g」であり、「1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が350m2/g」であり、「エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であり、「表面積はN2のBET一点法により測定したもの」である点。
・相違点2’’:「ゼオライト」が、本件発明2は、「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下」であるのに対して、甲1発明1は、「フレッシュ試料のH2Oの吸着量が3.2wt%であり」、「H2Oの吸着量は、25℃、相対湿度80%の条件下で、各フレッシュサンプルを水和させ、TG分析により測定したもの」である点。
(イ) 始めに、前記(ア)の相違点1’’が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
まず、前記相違点1’’に係る「ゼオライト」の試験条件について対比すると、本件発明2は、加熱前後の「相対結晶化度(1050℃)」を求める際の試験条件が「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱」するものであるのに対して、甲1発明1は、「エージング」前後の「BET表面積」を求める際の試験条件が「10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であって、前記「所定温度」が「1000℃」であるから、本件発明2の試験条件は、甲1発明1の試験条件よりも温度が50℃高く、時間が2時間短いものである。
そして、甲1発明1に係る「MFI型ゼオライト」を、温度が50℃高く、時間が2時間短い本件発明2の試験条件で試験した場合、「相対結晶化度」が「20%以上」となることを推認することはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲1発明1が前記相違点1’’に係る本件発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点1’’は実質的な相違点である。
したがって、前記(ア)の相違点2’’について検討するまでもなく、本件発明2が甲1発明1であるとはいえない。
更に、本件発明2の発明特定事項を全て有する本件発明3について検討しても事情は同じである。
(ウ) 次に、前記相違点1’’の容易想到性について検討すると、前記ア(エ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明1を、前記相違点1’’に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識や周知技術に関わりなく、当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点2’’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明1、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明2の発明特定事項を全て有する本件発明3について検討しても事情は同じである。
(エ) 前記(イ)、(ウ)によれば、本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明4及び7について
(ア) 前記ア(ア)と同様にして本件発明4と甲1発明2とを対比すると、本件発明4と甲1発明2とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である*BEA型のゼオライト(ただし、β型鉄シリケートを除く)。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’’’:「ゼオライト」が、本件発明4は、「水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1100℃)が20%以上」であるのに対して、甲1発明2は、「フレッシュ試料のBET表面積が460m2/g」であり、「1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が390m2/g」であり、「エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であり、「表面積はN2のBET一点法により測定したもの」である点。
(イ) 始めに、前記(ア)の相違点1’’’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、本件発明4は、加熱前後の「相対結晶化度(1100℃)」を求める際の試験条件が「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱」するものであるのに対して、甲1発明2は、「エージング」前後の「BET表面積」を求める際の試験条件が「10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であって、前記「所定温度」が「1000℃」であるから、本件発明4の試験条件は、甲1発明2の試験条件よりも温度が100℃高く、時間が2時間短いものである。
そうすると、前記イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明2が前記相違点1’’’に係る本件発明4の発明特定事項を有しているとはいえないから、前記相違点1’’’は実質的な相違点である。
したがって、本件発明4が甲1発明2であるとはいえない。
更に、本件発明4の発明特定事項を全て有する本件発明7について検討しても事情は同じである。
(ウ) 次に、前記相違点1’’’の容易想到性について検討すると、前記ア(エ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明2を、前記相違点1’’’に係る本件発明4の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識や周知技術に関わりなく、当業者が容易になし得ることではないから、本件発明4は、甲1発明2、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明4の発明特定事項を全て有する本件発明7について検討しても事情は同じである。
(エ) 前記(イ)、(ウ)によれば、本件発明4及び7は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件発明5、15及び16について
(ア) 前記ア(ア)と同様にして本件発明5と甲1発明3とを対比すると、本件発明5と甲1発明3とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMOR型のゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’’’’:「ゼオライト」が、本件発明5は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上」であるのに対して、甲1発明3は、「フレッシュ試料のBET表面積が450m2/g」であり、「1000℃でエージング後のエージング試料のBET表面積が330m2/g」であり、「エージング試料は10%の水を含む空気中で所定温度、5時間処理したもの」であり、「表面積はN2のBET一点法により測定したもの」である点。
・相違点3:「ゼオライト」が、本件発明5は、「前記加熱前の前記ゼオライトのミクロ孔容積に対する前記加熱後の前記ゼオライトのミクロ孔容積の割合であるミクロ孔容積維持率(900℃)が90%以上である」のに対して、甲1発明3は「ミクロ孔容積維持率(900℃)」が明らかでない点。
(イ) 事案に鑑み、始めに、前記(ア)の相違点3が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、甲1発明3の「ミクロ孔容積維持率(900℃)」をうかがわせる記載はないから、甲1発明3が前記相違点3に係る本件発明5の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点3は実質的な相違点である。
したがって、本件発明5が甲1発明3であるとはいえない。
更に、本件発明5の発明特定事項を全て有する本件発明15及び16について検討しても事情は同じである。
(ウ) 次に、前記相違点3の容易想到性について検討すると、前記ア(エ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明3を前記相違点3に係る本件発明5の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識や周知技術に関わりなく、当業者が容易になし得ることではないから、本件発明5は、甲1発明3、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明5の発明特定事項を全て有する本件発明15及び16について検討しても事情は同じである。
(エ) 前記(イ)、(ウ)によれば、本件発明5、15及び16は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1、2又は4の発明特定事項を全て含むものであるから、前記ア(キ)、イ(エ)、ウ(エ)に記載したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 申立人の主張について
(ア) 申立人は、申立人意見書において、甲第27~28号証を添付して、本件発明1は甲1発明1に対して進歩性を有しない旨を主張しており、その主張の内容は、概略、以下のとおりである。
甲第27号証:特開2011-241097号公報
甲第28号証:特開2000-335650号公報
本件発明1と甲1発明1との相違点である「水分吸着率」について検討すると、甲第1号証には、甲1発明1の「MFI型ゼオライト」が、有機物質や炭化水素を吸着するための材料として利用されることが記載され、ゼオライトの吸着能が水分によって低下することは、甲第27~28号証に記載されるとおり、当該技術分野における技術常識であり、甲第1号証でも、この技術常識を踏まえて、ゼオライトを吸着材として用いるにあたって、疎水性を高めることが必要であることが記載されている(前記(1)ア(ア)a)。
そして、甲第1号証には、「SiO2/Al2O3比」を増加させることによって疎水性が増加することが記載されているから(前記(1)ア(ア)c)、甲1発明1のMFI型ゼオライトを有機物質や炭化水素の吸着に用いるときに、前記技術常識を考慮して「SiO2/Al2O3比」を増加させて疎水性を高めることは、当業者にとって容易想到であり、本件発明1において「水分吸着率」を「3.0重量%以下」とすることに臨界的意義もないので、そうすることは単なる設計的事項にすぎない。
してみれば、甲1発明1の「H2Oの吸着量」を「3.0重量%以下」とすることは当業者が容易になし得ることであるから、本件発明1は甲1発明1及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) そこで、前記(ア)の主張について検討すると、甲1発明1は、「MFI型ゼオライト」の物性を甲1発明1で特定されたものとすることを前提として、水熱安定性と疎水性を条件を変えて調べたものといえ、甲1発明1に係るゼオライトにおいて、例えば「SiO2/Al2O3比」を増加させることは、甲1発明1に係る「MFI型ゼオライト」の物性を変化させることとなり、前記前提を破却することとなるから、そもそも想定されないことは、前記ア(エ)に記載したとおりである。
そうすると、甲第1号証に、「MFI型ゼオライト」が有機物質や炭化水素を吸着するための材料として利用されることが記載され、ゼオライトの吸着能が水分によって低下することは技術常識であり、この技術常識を踏まえて、ゼオライトを吸着材として用いるにあたって、疎水性を高めることが必要であることが記載され、更に、「SiO2/Al2O3比」を増加させることによって疎水性が増加することが記載されているとしても、甲1発明1に係るゼオライトの「SiO2/Al2O3比」を増加させて「H2Oの吸着量」を「3.0重量%以下」とする理由はないから、甲第27~28号証に記載された技術常識にかかわらず、甲1発明1の「H2Oの吸着量」を「3.0重量%以下」とすることは当業者が容易になし得ることではないので、申立人の前記(ア)の主張は採用できない。
キ 小括
よって、本件発明1~5、7及び9は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明、本件特許の優先日における技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の1(1)、同2(1)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)アの取消理由はいずれも理由がない。
(3) 甲第2号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「SiO2/Al2O3比が80以上であって、平均粒子径として30nm以上の一次粒子径を有する粒子から構成されている高耐熱性β-ゼオライト」は、本件発明1における「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかで」あることに相当する。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、
前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかである、ゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点4:「ゼオライト」が、本件発明1は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上」であるのに対して、甲2発明は、「耐久前の比表面積が520m2/gであり、耐久後の比表面積が440m2/gであり、保持率が85%であり、前記高耐熱性β-ゼオライトの耐熱性は、H型の高耐熱性β-ゼオライトの粉末をアルミナ製ボートにのせ、電気炉中で水蒸気10%を含む雰囲気下に1000℃、4時間の耐久試験を実施し、耐久試験前後の比表面積を測定して、耐久処理後の値を耐久処理前の値で割った比表面積保持率で耐熱性を評価したものである」点。
・相違点5:「ゼオライト」が、本件発明1は、「前記ゼオライトが*BEA型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下」であるのに対して、甲2発明の「水分吸着率」は明らかでない点。
(ウ) 事案に鑑み、始めに、前記(イ)の相違点5が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第2号証には、甲2発明の「水分吸着率」をうかがわせる記載はないから、甲2発明が、前記相違点5に係る本件発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点5は実質的な相違点である。
(エ) 次に、前記相違点5の容易想到性について検討すると、前記(1)イ(ア)bの記載からみれば、甲2発明は、これまでのゼオライトの耐熱性の指標として、主に、ゼオライトの骨格を構成する組成を示すSiO2/Al2O3比や、電荷を補償するために骨格中のAl近傍に存在するH+やNa+,Cu2+等のイオン種が用いられてきたが、SiO2/Al2O3比やイオン種の組成が同一であるゼオライトであっても、使用した原材料や製造方法などによって、耐熱性が大きく異なることが判明し、耐熱性(特に、自動車排ガスのような水分を含む雰囲気中での耐熱性(耐水熱性))が十分でないゼオライトを、自動車等の内燃機関の排ガス浄化用に用いた場合、ゼオライトの細孔構造の崩壊が進行するため、連続高速走行などの排ガス温度の高い条件での使用により浄化性能が劣化する恐れがあった、といった課題を解決するものである。
そして、甲2発明は、ゼオライトの耐熱性に、ゼオライトを構成する粒子の平均粒子径、その粒度分布、粒子形状、及び/又は結晶構造が深く関係していることを見出して、発明されたものである。
すると、甲2発明は、特段、「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率」に注目するものではないから、甲2発明において、「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率」を「6.0重量%以下」とする動機付けは存在しない。
また、甲第1、3、5号証及び摘記を省略した甲第6~22号証の記載をみても、「*BEA型のゼオライト」を「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下」とすることを開示した証拠はないから、甲2発明を、前記相違点5に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(イ)の相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて、又は甲2発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
(ア) 前記ア(ア)と同様にして本件発明4と甲2発明とを対比すると、本件発明4と甲2発明とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上である*BEA型のゼオライト(ただし、β型鉄シリケートを除く)である、ゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点4’:「ゼオライト」が、本件発明4は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1100℃)が20%以上」であるのに対して、甲2発明は、「耐久前の比表面積が520m2/gであり、耐久後の比表面積が440m2/gであり、保持率が85%であり、前記高耐熱性β-ゼオライトの耐熱性は、H型の高耐熱性β-ゼオライトの粉末をアルミナ製ボートにのせ、電気炉中で水蒸気10%を含む雰囲気下に1000℃、4時間の耐久試験を実施し、耐久試験前後の比表面積を測定して、耐久処理後の値を耐久処理前の値で割った比表面積保持率で耐熱性を評価したものである」点。
(イ) 始めに、前記(ア)の相違点4’が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
まず、前記相違点4’に係る「ゼオライト」の試験条件について対比すると、本件発明4は、「相対結晶化度(1100℃)」を求める際の試験条件が、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱」するものであるのに対して、甲2発明は、「前記高耐熱性β-ゼオライトの耐熱性」を、「H型の高耐熱性β-ゼオライトの粉末をアルミナ製ボートにのせ、電気炉中で水蒸気10%を含む雰囲気下に1000℃、4時間の耐久試験を実施」して評価したものであるから、本件発明4の試験条件は、甲2発明の試験条件よりも温度が100℃高く、時間が1時間短いものである。
そして、甲2発明に係る「高耐熱性β-ゼオライト」を、温度が100℃高く、時間が1時間短い本件発明4の試験条件で試験した場合、「相対結晶化度(1100℃)」が「20%以上」となることを推認することはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲2発明が前記相違点4’に係る本件発明4の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点4’は実質的な相違点である。
したがって、本件発明4が甲2発明であるとはいえない。
(ウ) 次に、前記相違点4’の容易想到性について検討すると、前記ア(エ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明は、特段、「相対結晶化度(1100℃)」に注目するものではないから、甲2発明において、「相対結晶化度(1100℃)」を「20%以上」とする動機付けは存在しない。
また、甲第1、3、5号証及び摘記を省略した甲第6~22号証の記載をみても、「*BEA型のゼオライト」の「相対結晶化度(1100℃)」を「20%以上」とすることを開示した証拠はないから、甲2発明を、前記相違点4’に係る本件発明4の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、本件発明4は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて、又は甲2発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明7、9、11、13について
本件発明7、9、11及び13は、本件発明1又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、前記ア(ウ)、同(エ)、イ(イ)及び同(ウ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて、又は甲2発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 小括
したがって、本件発明1、4、7、9、11及び13は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第2号証に基づいて、又は甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の1(2)、同2(2)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)イの取消理由はいずれも理由がない。
(4) 甲第3号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「公称Si/Al原子比が∞のシリカライト-1であって、前記シリカライト-1はMFI型ゼオライト」である「シリカライト-1」は、「Si/Alの原子比が80以上」といえるから、本件発明1における「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかであ」る「ゼオライト」に相当する。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲3発明とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)であって、前記ゼオライトが、MFI型のゼオライトおよび*BEA型のゼオライトのいずれかであるゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点6:「ゼオライト」が、本件発明1は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上」であるのに対して、甲3発明は、「各ゼオライト試料0.5gを50mLオートクレーブ内に設置したテフロン製容器に入れ、同じオートクレーブの底部に、ゼオライトに直接接触しないように異なる量の水を導入し、その後、オートクレーブを200℃で加熱し、自生圧力で蒸気を発生させ、所定の反応時間後、オートクレーブを流水で急冷し、ゼオライトサンプルはバイアル瓶に集められ、分析前に100℃で乾燥して行ったものであり、試験は6時間行い、フッ化物経路で製造されたシリカライト-1生成物は、水にさらされたときに非常に高い安定性を示したが、水酸化物経路で製造されたものは非常に不安定で、高温の液体水にさらされると元の結晶化度の90%以上が失われた」ものである点。
・相違点7:本件発明1は、「前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が3.0重量%以下」であるのに対して、甲3発明は、前記「水分吸着率」が明らかでない点。
(ウ) 始めに、前記(イ)の相違点6が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
まず、前記相違点6に係る「ゼオライト」の試験条件について対比すると、本件発明1は、「相対結晶化度(900℃)」を求める際の試験条件が、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱」するものであるのに対して、甲3発明は、「ゼオライトの熱水に対する感受性の測定」の際の試験条件が、「各ゼオライト試料0.5gを50mLオートクレーブ内に設置したテフロン製容器に入れ、同じオートクレーブの底部に、ゼオライトに直接接触しないように異なる量の水を導入し、その後、オートクレーブを200℃で加熱し、自生圧力で蒸気を発生させ、所定の反応時間後、オートクレーブを流水で急冷し、ゼオライトサンプルはバイアル瓶に集められ、分析前に100℃で乾燥して行った」ものであり、「試験」を「6時間」行ったものであるから、本件発明1の試験条件は、甲3発明の試験条件よりも温度が700℃高く、時間が3時間短いものである。
そして、甲3発明に係る「シリカライト-1」を、温度が700℃高く、時間が3時間短い本件発明1の試験条件で試験した場合、「相対結晶化度(900℃)」が「20%以上」となることを推認することはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲3発明が前記相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、前記相違点6は実質的な相違点である。
したがって、前記(イ)の相違点7について検討するまでもなく、本件発明1が甲3発明であるとはいえない。
(エ) 次に、前記相違点6の容易想到性について検討すると、前記(1)ウ(ア)aの記載によれば、甲3発明は、BASの数、Si-O-Si結合、骨格のタイプ、シラノール欠陥、骨格外Alなど、液体水中での安定性に影響を与えると考えられる5つのゼオライト特性の変化と「結晶化度」の損失を関連付けることにより、系統的な比較を試みたものであるから、「シリカライト-1」の物性を甲3発明で特定されたものとすることを前提として、ゼオライト特性の変化と「結晶化度」の損失を関連付けることにより、系統的な比較を試みたものといえる。
そして、甲3発明に係るゼオライトにおいて、ゼオライトの「相対結晶化度(900℃)」を「20%以上」とすることは、甲3発明に係る「シリカライト-1」の物性を変化させることとなり、前記前提を破却することとなるから、そもそも想定されないので、甲3発明を、前記相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識に関わりなく、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(イ)の相違点7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基づいて、又は、甲3発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2、3について
(ア) 前記(ア)アと同様にして本件発明2と甲3発明とを対比すると、本件発明2と甲3発明とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるMFI型のゼオライトである、ゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点6’:「ゼオライト」が、本件発明2は、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1050℃)が20%以上」であるのに対して、甲3発明は、「各ゼオライト試料0.5gを50mLオートクレーブ内に設置したテフロン製容器に入れ、同じオートクレーブの底部に、ゼオライトに直接接触しないように異なる量の水を導入し、その後、オートクレーブを200℃で加熱し、自生圧力で蒸気を発生させ、所定の反応時間後、オートクレーブを流水で急冷し、ゼオライトサンプルはバイアル瓶に集められ、分析前に100℃で乾燥して行ったものであり、試験は6時間行い、フッ化物経路で製造されたシリカライト-1生成物は、水にさらされたときに非常に高い安定性を示したが、水酸化物経路で製造されたものは非常に不安定で、高温の液体水にさらされると元の結晶化度の90%以上が失われた」ものである点。
・相違点7’:本件発明2は、「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下」であるのに対して、甲3発明は、前記「水分吸着率」が明らかでない点。
(イ) 始めに、前記(ア)の相違点6’が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
まず、前記相違点6’に係る「ゼオライト」の試験条件について対比すると、本件発明2は、「相対結晶化度(1050℃)」を求める際の試験条件が、「水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱」するものであるのに対して、甲3発明は、「ゼオライトの熱水に対する感受性の測定」の際の試験条件が、「各ゼオライト試料0.5gを50mLオートクレーブ内に設置したテフロン製容器に入れ、同じオートクレーブの底部に、ゼオライトに直接接触しないように異なる量の水を導入し、その後、オートクレーブを200℃で加熱し、自生圧力で蒸気を発生させ、所定の反応時間後、オートクレーブを流水で急冷し、ゼオライトサンプルはバイアル瓶に集められ、分析前に100℃で乾燥して行った」ものであり、「試験」を「6時間」行ったものであるから、本件発明2の試験条件は、甲3発明の試験条件よりも温度が850℃高く、時間が3時間短いものである。
すると、前記ア(ウ)に記載したのと同様の理由により、甲3発明が前記相違点6’に係る本件発明2の発明特定事項を有しているとはいえないから、前記相違点6’は実質的な相違点である。
したがって、前記(ア)の相違点7’について検討するまでもなく、本件発明2が甲3発明であるとはいえない。
更に、本件発明2の発明特定事項を全て有する本件発明3について検討しても事情は同じである。
(ウ) 更に、前記相違点6’の容易想到性について検討すると、前記ア(エ)に記載したのと同様の理由により、甲3発明を、前記相違点6’に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識に関わりなく、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(イ)の相違点7’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲3発明に基づいて、又は、甲3発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
更に、本件発明2の発明特定事項を全て有する本件発明3について検討しても事情は同じである。
ウ 本件発明9、11について
本件発明9及び11は、本件発明1又は2のいずれかの発明特定事項を有するものであるから、前記ア(ウ)、同(エ)、イ(イ)及び同(ウ)に記載したのと同様の理由により、甲3発明に基づいて、又は、甲3発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
したがって、本件発明1~3、9及び11は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、前記第4の1(3)及び2(3)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。
(5) 甲第4号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明10、12、14について
(ア) 本件発明10と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「アルミニウムを含有するMFI型ゼオライト結晶上にアルミニウムを含有しないMFI型ゼオライトを結晶成長させることにより、コアシェル構造を有し欠陥の少ないMFI型ゼオライトを合成する方法」は、本件発明10おける「骨格中に少なくともSiを含」む、「ゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法」に相当する。
また、甲4発明において、「テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)とフッ化アンモニウム(NH4F)を水に溶解し、水酸化アルミニウムとヒュームドシリカを加え、混合物を2時間撹拌した後、オートクレーブで180℃で90時間撹拌しながら加熱し、形成された粒子を濾過、洗浄して、ゲル組成比がSi:TPABr:NH4F:Al:H2O=1:0.125:0.9:0.05:33である、フッ化物イオンの存在下で調製されたが、焼成されていないコアCF(NC)を調製」する工程は、本件発明10において「骨格中に少なくともSiを含」む「原料ゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程」に相当する。
更に、甲4発明において、「フュームドシリカをTPABrとNH4Fの水溶液に加え、混合物を2時間撹拌し、その後コアゼオライトを加え、混合物を80分間撹拌した後、撹拌せずにオートクレーブで180℃で90時間加熱し、形成された粒子を濾過、洗浄し、乾燥空気気流下で550℃で7時間焼成して、結晶の過成長によるコアシェルゼオライトCF(NC)SFを合成する」工程は、技術常識からみて前記「TPABr」は「有機構造規定剤」といえ、「NH4Fの水溶液」は「フッ化物イオンを含む溶液」といえるから、本件発明10における「フッ化物イオンを含む溶液に前記原料ゼオライトを接触させる工程」であって、「前記原料ゼオライトと前記フッ化物イオンを含む溶液の接触が、有機構造規定剤の存在下で行われる」ことに相当する。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明10と甲4発明とは、
「骨格中に少なくともSiを含む、ゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含む原料ゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程、
フッ化物イオンを含む溶液に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトと前記フッ化物イオンを含む溶液の接触が、有機構造規定剤の存在下で行われる、ゼオライトの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点8:「ゼオライトの製造方法」が、本件発明10は、「請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された」、「Si/Alの原子比が80以上である」「ゼオライト」「の製造方法」であるのに対して、甲4発明は、「コアシェルゼオライト(CF(NC)SF)の合成方法」であって、「前記コアシェルゼオライトCF(NC)SFのSi/Al比は、ICPによれば63、NH3 TPDによれば62である」点。
・相違点9:本件発明10は、「原料ゼオライト」の「Si/Alの原子比が80以上である」のに対して、甲4発明は、「CF(NC)SFのICPによる比は、シェル形成前(CF(NC))の1.7倍である」点。
(ウ) 始めに、前記(イ)の相違点8が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲4発明における「コアシェルゼオライト(CF(NC)SF)のSi/Al比は、ICPによれば63、NH3 TPDによれば62である」から、「Si/Alの原子比が80以上である」「ゼオライト」であるとはいえないので、前記相違点8は実質的な相違点である。
(エ) 次に、前記相違点8の容易想到性について検討すると、前記1(1)エ(ア)bの記載からみれば、甲4発明は、欠陥のない結晶を過成長させるための合成条件を検討したものであって、フッ化物イオン存在下で調製したコアゼオライトを過成長させ、欠陥の少ないコアシェルゼオライトを形成したものであり、「前記コアシェルゼオライトCF(NC)SFのSi/Al比」を「ICPによれば63、NH3 TPDによれば62」とすることを前提とした上で、欠陥の少ないコアシェルゼオライトを形成するための適切な合成条件を見いだしたものといえる。
そして、そのような甲4発明において、「ゼオライトの製造方法」を、「Si/Alの原子比が80以上である」「ゼオライト」「の製造方法」とすることは、前記前提を破却することとなるから、そうする動機付けは存在しないので、甲4発明を、前記相違点8に係る本件発明10の発明特定事項を有するものとすることは、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に関わりなく、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(イ)の相違点9について検討するまでもなく、本件発明10は、甲4発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明10の発明特定事項を全て有する本件発明12及び14について検討しても事情は同じである。
イ 小括
したがって、本件発明10、12及び14は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、前記第4の2(4)の特許異議の申立て理由は理由がない。
(6) 甲第5号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明11、13について
(ア) 本件発明11と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「脱アルミニウムBEAゼオライトの調製方法」は、前記「脱アルミニウムBEAゼオライト」である「SiBEA(1141)(II)のSi/Al比」が「1141」であるから、本件発明11における「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法」に相当する。
また、甲5発明における「原子Si/Al比17のテトラエチルアンモニウム(TEA)BEA(TEABEA(17))」(以下、「TEABEA(17)」という。)は、本件発明11における「骨格中に少なくともSiを含」む「原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)」に相当し、甲5発明において「TEABEA(17)」を「2つのフラクションに分離」する工程は、本件発明11における「骨格中に少なくともSiを含」む「原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程」に相当する。
更に、本件特許明細書の段落【0065】~【0066】の記載(下記2(2)ア(ウ))によれば、本件発明において高耐久化処理に用いる「熱水」は、50℃以上250℃以下のものであって、他の成分や不純物を含んでいてもよいものであるから、甲5発明における353Kすなわち353-273=80℃の「濃硝酸溶液」は、本件発明11における「50℃以上250℃以下の熱水(ただし、硝酸アンモニウム水溶液を除く)」に相当し、甲5発明において、「もとのTEABEAゼオライト(4g)を353Kで濃硝酸溶液(c=13molL-1)で激しく攪拌しながら直接処理し、ゼオライトから有機テンプレートとAl原子を同時に除去」することは、本件発明11における「50℃以上250℃以下の熱水(ただし、硝酸アンモニウム水溶液を除く)に前記原料ゼオライトを接触させる工程」に相当し、甲5発明において、「全体的に脱アルミノ化したBEAゼオライトを得るために、処理を4時間に調整」することは、本件発明11において「前記原料ゼオライトを前記熱水に接触させる工程が、1時間~24時間行われる」ことを満たす。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明11と甲5発明とは、
「骨格中に少なくともSiを含み、かつSi/Alの原子比が80以上であるゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)の製造方法であって、
骨格中に少なくともSiを含む原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)を用意する工程と、
50℃以上250℃以下の熱水(ただし、硝酸アンモニウム水溶液を除く)に前記原料ゼオライトを接触させる工程と、を備え、
前記原料ゼオライトを前記熱水に接触させる工程が、1時間~24時間行われる、ゼオライトの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点10:「ゼオライトの製造方法」が、本件発明11は、「請求項1ないし4、7ないし9のいずれか一項に記載された」「ゼオライト」「の製造方法」であるのに対して、甲5発明は、「脱アルミニウムBEAゼオライトの調製方法」である点。
・相違点11:本件発明11は、「原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)」の「Si/Alの原子比が80以上である」のに対して、甲5発明は、「TEABEA(17)」の「原子Si/Al比」が「17」である点。
(ウ) 事案に鑑み、始めに、前記(イ)の相違点11が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲5発明における「TEABEA(17)」の「原子Si/Al比」は「17」であるから、「原料ゼオライト(ただし、FAU型原料ゼオライトおよびβ型鉄シリケートを除く)」の「Si/Alの原子比が80以上である」とはいえないので、前記相違点11は実質的な相違点である。
(エ) 次に、前記相違点11の容易想到性について検討すると、前記(1)オ(ア)bの記載によれば、甲5発明は、Si/Al比の高いβ型ゼオライトを使用し、2種類の脱アルミニウム法を用いて脱アルミニウムプロセスを調査することを目的としたものであって、脱アルミニウムを、元のTEABEAゼオライト、すなわち「原子Si/Al比」が「17」である「TEABEA(17)」を濃硝酸溶液で直接処理し、有機テンプレートとAl原子を同時に除去するという一工程で実現したものであり、そうすることで、結晶化することなく、部分的及び全体的に脱アルミニウム化したBEAゼオライトを得ることができたものであるから、「TEABEA(17)」の「原子Si/Al比」を「17」とすることを前提として、前記「TEABEA(17)」を濃硝酸溶液で直接処理し、有機テンプレートとAl原子を同時に除去することで、結晶化することなく、部分的及び全体的に脱アルミニウム化したBEAゼオライトを得たものといえる。
そして、そのような甲5発明において、「TEABEA(17)」の「Si/Alの原子比」を「80以上」とすることは、前記前提を破却することとなるから、そうする動機付けは存在しないので、甲5発明を、前記相違点11に係る本件発明11の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の優先日における技術常識に関わりなく、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(イ)の相違点10について検討するまでもなく、本件発明11は、甲5発明に基づいて、又は、甲5発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明11の発明特定事項を全て有する本件発明13について検討しても事情は同じである。
イ 小括
したがって、本件発明11及び13は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第5号証に記載された発明及び本件特許の優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、前記第4の2(5)の特許異議の申立て理由は理由がない。
(7) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についてのまとめ
以上のとおり、特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についての特許異議申立理由及び取消理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
(1) 実施可能要件の判断手法
明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。
そして、物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。
また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
(2) 実施可能要件の判断
ア 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下の(ア)~(エ)の記載がある。
(ア) 「【0002】
本発明は、ゼオライトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、骨格中の半金属元素および/または金属元素として珪素およびアルミニウムを含むゼオライト(例えば、MFI型ゼオライトや*BEA型ゼオライト等)が知られている。このような珪素およびアルミニウムを含むゼオライトは、例えば、吸着剤や触媒として工業的に広く用いられている。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、流通しているゼオライトは、水熱耐久性が低い。具体的には、ゼオライトに対し水蒸気が10体積%である雰囲気下で水熱耐久試験を行うと、水熱耐久試験前に比べて結晶化度が著しく低下してしまう。このため、高水熱耐久性を有するゼオライトの開発が望まれている。なお、特許文献1や非特許文献1、2に開示されている技術では、水熱耐久性が優位に向上しない。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、水熱耐久性を向上させたゼオライトおよびその製造方法を提供することを目的とする。」
(イ) 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]骨格中に少なくともSiを含むゼオライトであって、水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である、ゼオライト。
・・・
【0011】
[3]骨格中に少なくともSiを含み、かつAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上であるMFI型のゼオライトであって、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1050℃)が20%以上である、ゼオライト。
【0012】
[4]骨格中に少なくともSiを含み、かつAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上である*BEA型のゼオライトであって、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1100℃)が20%以上である、ゼオライト。
【0013】
[5]骨格中に少なくともSiを含み、かつAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上であるMOR型のゼオライトであって、水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上である、ゼオライト。
・・・
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、水熱耐久性を向上させたゼオライトおよびこのようなゼオライトを得ることができるゼオライトの製造方法を提供できる。」
(ウ) 「【0025】
<<<ゼオライト>>>
ゼオライトは、骨格中に少なくともSiを含むゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトを除く)である。ゼオライトは、FAU型ゼオライト以外のゼオライトであるが、これらのゼオライトの中でも、MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、およびMOR型ゼオライトは、優れた水熱耐久性を示すので、MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、またはMOR型ゼオライトであることが好ましい。MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、MOR型ゼオライトとは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めている構造コードでMFI構造、*BEA構造、またはMOR構造となる結晶構造を有するゼオライトである。なお、FAU型ゼオライトを除いているのは、水熱耐久性が有効に向上しないからである。ゼオライトが、FAU構造、MFI構造、*BEA構造、またはMOR構造であるか否かは、ゼオライトの粉末X線回折測定結果をFAU型ゼオライト、MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、またはMOR型ゼオライトの粉末X線回折パターンと比較することで、確認することができる。
【0026】
ゼオライトは、Alを含まない、またはAlを含む場合にはSi/Alの原子比が50以上であることが好ましい。ゼオライトが、Alを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上であれば、水熱耐久性を有効に向上させることができる。上記ゼオライトのSi/Alの原子比の下限は、50を超えることが好ましく、80以上であることがより好ましい。ゼオライトのSi/Alの原子比の上限は、特に限定されず、例えば、無限大、すなわちほぼSiO2のみで構成されるゼオライトでも有効であるが、5000以下であることが好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
【0027】
水蒸気が10体積%である雰囲気下で、上記ゼオライトに対し900℃で3時間加熱する水熱耐久試験(以下、この水熱耐久試験を「水熱耐久試験(900℃)」と称する。)を行ったとき、水熱耐久試験(900℃)後におけるゼオライトの相対結晶化度(900℃)は20%以上となっていることが好ましい。本明細書における「相対結晶化度」とは、加熱前(水熱耐久試験前)のゼオライトの結晶化度を100%としたときの相対的な結晶化度を意味する。水熱耐久試験(900℃)後におけるゼオライトの相対結晶化度は、30%以上となっていることがより好ましく、40%以上となっていることがさらに好ましい。
【0028】
水熱耐久試験前の上記ゼオライトの水分吸着率は、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下で測定したとき、6.0重量%以下であることが好ましい。水分吸着率が6.0重量%以下であれば、良好な疎水性を得ることができる。上記ゼオライトがMFI型ゼオライトである場合、優れた疎水性を得る観点から、上記水分吸着率は、3.0重量%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましい。また、上記ゼオライトが*BEA型ゼオライトである場合、優れた疎水性を得る観点から、上記水分吸着率は、4.0重量%以下であることがより好ましい。本明細書における「相対水蒸気圧」とは、吸着平衡状態にあるときの水蒸気の圧力(吸着平衡圧)P(mmHg)と水蒸気の飽和蒸気圧P0(mmHg)との比(P/P0)を意味する。上記水分吸着率は、水分吸着容量測定装置(製品名「VSTA」、株式会社アントンパール製)を用いて、25℃の環境下によって測定することができる。
・・・
【0030】
また、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、MFI型ゼオライトに対し1050℃で3時間加熱する水熱耐久試験(以下、この水熱耐久試験を「水熱耐久試験(1050℃)」と称する。)を行ったとき、水熱耐久試験(1050℃)後におけるMFI型ゼオライトの相対結晶化度(1050℃)は20%以上となっていることが好ましい。水熱耐久試験(1050℃)後におけるMFI型ゼオライトの相対結晶化度は、40%以上となっていることがより好ましく、60%以上となっていることがさらに好ましい。
・・・
【0035】
また、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、*BEA型ゼオライトに対し1100℃で3時間加熱する水熱耐久試験(1100℃)を行ったとき、水熱耐久試験(1100℃)後における*BEA型ゼオライトの相対結晶化度(1100℃)は20%以上となっていることが好ましい。水熱耐久試験(1100℃)後における*BEA型ゼオライトの相対結晶化度(1100℃)は、30%以上となっていることがより好ましく、50%以上となっていることがさらに好ましい。
・・・
【0038】
上記ゼオライトが、骨格中にAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上のMOR型ゼオライトである場合、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、MOR型ゼオライトに対し900℃で3時間加熱する水熱耐久試験(900℃)を行ったとき、水熱耐久試験(900℃)後におけるMOR型ゼオライトの相対結晶化度は20%以上となっていることが好ましい。水熱耐久試験(900℃)後におけるMOR型ゼオライトの相対結晶化度は、30%以上となっていることがより好ましく、40%以上となっていることがさらに好ましい。
・・・
【0041】
上記ゼオライトが、骨格中にAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上のMOR型ゼオライトである場合、MFI型ゼオライトと同様の理由から、水熱耐久試験前のゼオライトのミクロ孔容積に対する水熱耐久試験(900℃)後のゼオライトのミクロ孔容積の割合であるミクロ孔容積維持率(900℃)が、90%以上であることが好ましい。・・・
・・・
【0045】
<<<ゼオライトの製造方法>>>
上記ゼオライトは、以下のフッ化物イオンを含む溶液を用いた高耐久化処理または熱水を用いた高耐久化処理によって得ることができる。本明細書における「熱水」とは、50℃以上の水を意味するものとする。
【0046】
<<フッ化物イオンを含む溶液による高耐久化処理>>
まず、骨格中に少なくともSiを含む原料ゼオライトであって、Alを含まない原料ゼオライトまたはAlを含む場合にはSi/Alの原子比が50以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトを除く)を用意する。Si/Alの原子比が低い原料ゼオライトであると、後述する高耐久化処理を行ったとしても、水熱耐久試験を行ったときに、脱Alによって構造崩壊してしまい、水熱耐久性が有効に向上しないおそれがある。これに対し、Si/Alの原子比が50以上である原料ゼオライトに対して高耐久化処理を行えば、水熱耐久試験を行ったときに、水熱耐久性を有効に向上させることができる。原料ゼオライトのSi/Alの原子比の下限は、50を超えることが好ましく、80以上であることがより好ましい。原料ゼオライトのSi/Alの原子比の上限は、特に限定されず、例えば、無限大、すなわち、ほぼSiO2のみで構成される原料ゼオライトでもよいが、5000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましい。
・・・
【0052】
原料ゼオライトまたは粉砕後の原料ゼオライトを用意した後、原料ゼオライトを、フッ化物イオンを含む溶液に接触させて、原料ゼオライトの高耐久化処理を行う。この高耐久化処理により、水熱耐久性が向上したゼオライトを得ることができる。
【0053】
フッ化物イオンを含む溶液(以下、この溶液を「高耐久化溶液」と称することもある。)は、フッ化物イオンおよび溶媒の他、有機構造規定剤を含んでいてもよい。高耐久化溶液に、有機構造規定剤を含ませることにより、有機構造規定剤によってゼオライト中の細孔を充填し構造を安定化させることができるので、より水熱耐久性を向上させることができる。ただし、有機構造規定剤は、高耐久化溶液中に含まれていなくともよい。
【0054】
フッ化物イオンを含む溶液による高耐久化処理は、より水熱耐久性を向上させるために、高耐久化溶液を攪拌しながら行うことが好ましい。撹拌の有無および撹拌速度は特に限定されないが、攪拌速度は、1rpm以上1000rpm以下であってもよい。攪拌速度の下限は、好ましくは2rpm以上、より好ましくは5rpm以上であり、攪拌速度の上限は、好ましくは800rpm以下、より好ましくは500rpm以下である。
【0055】
上記高耐久処理を行う際の高耐久化溶液の温度は、特に限定されず、0℃以上374℃未満であればよい。高耐久化溶液の温度の下限は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、高耐久化溶液の温度の上限は、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、最も好ましくは100℃以下である。
【0056】
上記高耐久化処理を行う時間は、特に限定されないが、10分間以上であればよい。上記高耐久化処理を10分間以上行うことにより、確実に水熱耐久性が向上したゼオライトを得ることができる。フッ化物イオンを含む溶液による高耐久化処理を行う時間の下限は、特に制限はないが、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましい。また、上記高耐久化処理を行う時間の上限は、エネルギー消費の観点から、72時間以下であることが好ましく、48時間以下であることがより好ましい。
【0057】
<フッ化物イオン>
フッ化物イオンは、特に限定されないが、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム等のフッ化物を溶媒に溶解させることにより得ることができる。
【0058】
高耐久化溶液中のフッ化物イオンの濃度は、0.001質量%以上であることが好ましい。フッ化物イオンの濃度が、0.001質量%以上であれば、有効に水熱耐久性を向上させることができる。フッ化物イオンの濃度の下限は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。フッ化物イオンの濃度の上限は、ゼオライトの構造が崩壊することを抑制する観点から、25質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
<溶媒>
溶媒としては、特に限定されないが、水等が挙げられる。
【0060】
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤とは、ゼオライトの細孔径や結晶構造を規定する有機分子を意味する。有機構造規定剤の種類等によって、得られるゼオライトの構造等を制御することができる。
【0061】
有機構造規定剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム;モルホリン、・・・ヘキサメチレンイミン等の1級アミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミン等が挙げられる。これらの中でも、ゼオライト細孔中で骨格を安定化しやすいことから、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)を用いることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
高耐久化溶液が有機構造規定剤を含む場合、高耐久化溶液中の有機構造規定剤の濃度は、0.001質量%以上であることが好ましい。有機構造規定剤の濃度が、0.001質量%以上であれば、より有効に水熱耐久性を向上させることができる。有機構造規定剤の濃度の下限は、0.1質量%以上、1質量%以上であることが好ましい。有機構造規定剤の濃度の上限は、コストの観点から、50質量%以下、35質量%以下であることが好ましい。
【0063】
高耐久化処理後、ゼオライトを洗浄し、乾燥させる。その後、ゼオライトを250℃以上800℃以下で焼成してもよい。この焼成により、ゼオライトから有機物やフッ素を除去できる。これにより、高耐久化処理されたゼオライトを得ることができる。
【0064】
<<熱水による高耐久化処理>>
まず、上記同様に、骨格中に少なくともSiを含む原料ゼオライトであって、Alを含まない原料ゼオライトまたはAlを含む場合にはSi/Alの原子比が50以上である原料ゼオライトを用意する。原料ゼオライトは、フッ化物イオンによる処理の欄で説明した原料ゼオライトと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。また、原料ゼオライトは上記と同様に粉砕してもよい。
【0065】
原料ゼオライトまたは粉砕後の原料ゼオライトを用意した後、原料ゼオライトを50℃以上250℃以下の熱水に接触させて、原料ゼオライトの高耐久化処理を行う。この高耐久化処理により、水熱耐久性が向上したゼオライトを得ることができる。原料ゼオライトを熱水に接触させる際には、原料ゼオライトを熱水に直接投入して熱水に接触させてもよいが、原料ゼオライトを50℃未満の水に投入した後、原料ゼオライトが分散している水を加熱して、熱水に接触させてもよい。
【0066】
熱水としては、特に限定されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、水道水、または工業用水等を挙げることができる。これらの中でも、純水を好適に用いることができる。熱水は、本発明の効果が得られる限り、他の成分や不純物を含んでいてもよい。
【0067】
熱水の温度が50℃以上であれば、水熱耐熱性を向上させることができ、また250℃以下であれば、安全に作業することができる。熱水の温度の下限は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また、熱水の温度の上限は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下である。
【0068】
上記高耐久化処理を行う時間(原料ゼオライトを熱水に接触させる時間)は、特に限定されないが、1時間以上であればよい。高耐久化処理を1時間以上行うことにより、確実に水熱耐久性が向上したゼオライトを得ることができる。高耐久化処理を行う時間の下限は、特に制限はないが、2時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましい。また、高耐久化処理を行う時間の上限は、エネルギー消費の観点から、24時間以下であることが好ましく、6時間以下であることがより好ましい。
【0069】
上記高耐久化処理後、ゼオライトを洗浄し、乾燥させる。その後、ゼオライトを300℃以上800℃以下で焼成してもよい。この焼成により、ゼオライトから有機物やフッ素を除去できる。これにより、高耐久化処理されたゼオライトを得ることができる。
【0070】
本実施形態によれば、ゼオライトに対しフッ化物イオンを含む溶液または熱水を用いて高耐久化処理を行っているので、ゼオライトの水熱耐久性を向上させることができる。これは、以下の理由からであると考えられる。ゼオライトには、欠陥(シラノール欠陥)が存在するが、この欠陥が原因でゼオライトは水熱耐久性が低くなる。一方、フッ化物イオンは、ゼオライト骨格中のSi-O結合を切断および再配列させることができる。また、フッ化物イオンを原料ゼオライトに接触させると、ゼオライト骨格中のSiがマイグレーションし、表面積が減少するように欠陥が移動するので、欠陥が集まり、欠陥の数が減少する。したがって、フッ化物イオンを含む溶液を用いて高耐久化処理を行うと、フッ化物イオンの作用により欠陥が修復されるとともに、Siがマイグレーションして、欠陥の少ないゼオライトが得られる。なお、フッ化物イオンは、欠陥を修復する性能を有しているが、塩化物イオンや臭化物イオンは、欠陥を修復する性能を有していない。これは、フッ化物イオンの大きさが、塩化物イオンや臭化物イオンの大きさよりも小さいので、ゼオライト中に入りやすいからであると考えられる。また、熱水を原料ゼオライトに接触させると、フッ化物イオンを含む溶液の場合と同様に、ゼオライト骨格中のSiがマイグレーションし、表面積が減少するように欠陥が移動するので、欠陥が集まり、欠陥の数が減少する。したがって、熱水を用いて高耐久化処理を行うと、熱水の作用により、欠陥の少ないゼオライトが得られる。」
(エ) 「【実施例】
【0074】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。・・・
【0075】
<分析に用いた装置>
粉末X線回折装置:製品名「UltimaIV」、株式会社リガク製、CuKα線使用、電圧40kV、電流40mA、スキャンステップ0.02°、スキャン速度2°/min
ガス吸着量測定装置:製品名「Autosorb-iQ2」、株式会社アントンパール製、液体窒素温度
水分吸着容量測定装置:製品名「VSTA」、株式会社アントンパール製、25℃
【0076】
<実施例1、2および比較例1>
実施例1、2においては、まず、原料ゼオライトとしてMFI型原料ゼオライト(商品名「HSZ-890HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径0.7μm)を用意した。一方で、フッ化アンモニウム(NH4F)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、および水のモル比が、0.40:0.35:5.3となるように水にフッ化アンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムを添加して、フッ化物イオンを含む溶液を得た。そして、この溶液10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、170℃で所定時間攪拌せずに放置した。その後、この溶液から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例1、2に係るゼオライトを得た。なお、実施例1においては放置時間を3時間とし、実施例2においては放置時間を24時間とした。
【0077】
また、比較例1に係るゼオライトとして、MFI型ゼオライト(商品名「HSZ-890HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径0.7μm)を、フッ化物イオンを含む溶液での処理または後述する熱水での処理を行わずに用いた。
【0078】
そして、実施例1、2および比較例1に係るゼオライトに対して、それぞれ水熱耐久試験を行い、水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。具体的には、まず、ゼオライト1gを、アルミナセラミックス管に入れ、ゼオライトの上下に耐熱ウールを配置し、アルミナセラミックス管の中間位置でゼオライトを保持した。そして、そのアルミナセラミックス管をマッフル炉に配置し、アルミナセラミックス管の中に水蒸気10体積%を含む空気を流しながら、室温から所定の温度まで昇温させて、所定温度で3時間保持し、水熱耐久試験を行った。なお、実施例1、2および比較例1に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃、1050℃、1150℃でそれぞれ行われた。その後、自然冷却後にゼオライトを取り出した。水熱耐久試験前後において、実施例1、2および比較例1に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、得られたX線回折パターン(図1~図3参照)から結晶化度をそれぞれ求めた。結晶化度は、非晶質によるブロードなバックグラウンドピークを補正により差し引いた後に、2θ=20~30°にあるピークの積分強度の和を用いて求めた。なお、2θ=20~30°のピークの積分強度を用いるのは、サンプルの吸水による影響が小さいためである。そして、それぞれの水熱耐久試験毎に、結晶化度から水熱耐久試験前のゼオライトの結晶化度を100%としたときの水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。
【0079】
<実施例3、4および比較例2>
実施例3、4においては、まず、原料ゼオライトとして*BEA型原料ゼオライト(商品名「HSZ-990HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径0.7μm)を用意した。一方で、フッ化アンモニウム(NH4F)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、および水のモル比が、0.40:0.35:5.3となるように水にフッ化アンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムを添加して、フッ化物イオンを含む溶液を得た。そして、この溶液10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、170℃で所定時間攪拌せずに放置した。その後、この溶液から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例3、4に係るゼオライトを得た。なお、実施例3においては放置時間を3時間とし、実施例4においては放置時間を24時間とした。
【0080】
また、比較例2に係るゼオライトとして、*BEA型ゼオライト(商品名「HSZ-990HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径0.7μm)を、フッ化物イオンを含む溶液での処理または後述する熱水での処理を行わずに用いた。
【0081】
そして、実施例3、4および比較例2に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、それぞれ水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例3、4および比較例2に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターン(図5~図7参照)から水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。なお、実施例3、4に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は1050℃、1150℃で行われ、また比較例2に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は900℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃でそれぞれ行われた。
・・・
【0106】
<実施例29>
実施例29においては、まず、原料ゼオライトとしてMFI型原料ゼオライト(商品名「HSZ-890HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径3μm)を用意した。一方で、フッ化アンモニウム(NH4F)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、および水のモル比が、0.01:0.1:5.3となるように水にフッ化アンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムを添加して、フッ化物イオンを含む溶液を得た。そして、この溶液10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、80℃で3時間攪拌速度20rpmで攪拌しながら放置した。その後、この溶液から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例29に係るゼオライトを得た。
【0107】
そして、実施例29に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、それぞれ水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例29に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターンを得た(図25参照)。なお、実施例29に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、1050℃、1150℃でそれぞれ行われた。
【0108】
<実施例30>
実施例30においては、まず、原料ゼオライトとしてMFI型ゼオライト(商品名「HSZ-890HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径3μm)を用意した。一方で、フッ化アンモニウム(NH4F)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、および水のモル比が、0.40:0.35:5.3となるように水にフッ化アンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムを添加して、フッ化物イオンを含む溶液を得た。そして、この溶液10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、40℃で3時間攪拌速度20rpmで攪拌しながら放置した。その後、この溶液から処理物を取り出して、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例30に係るゼオライトを得た。
【0109】
そして、実施例30に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、それぞれ水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例30に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターン(図27(A)および図27(B)参照)を得た。なお、実施例30に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃で行われた。
・・・
【0112】
<比較例11~13>
比較例11~13においては、MFI型ゼオライトに低温スチーム処理を行った。具体的には、まず、MFI型ゼオライト(商品名「HSZ-890HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径3μm)を用意した。その後、水蒸気10体積%を含む空気中で、ゼオライトを所定温度で24時間加熱した。なお、比較例11においては、500℃で加熱し、比較例12においては、600℃で加熱し、比較例13においては、700℃で加熱した。
【0113】
そして、比較例11~13に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、それぞれ水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、比較例11~13に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターン(図29参照)から水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。なお、比較例11~13に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃、1050℃で行われた。
【0114】
<実施例32および比較例14>
まず、比較例14においては、フッ化物を用いてゼオライトの合成を行った。具体的には、シリカ源であるヒュームドシリカ(商品名「Cab-O-Sil(登録商) M5」、キャボット社製)とアルミナ源である水酸化アルミニウム(和光純薬製)を水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液に加え溶解させた後にフッ化アンモニウム水溶液を添加した。この混合物組成は、1SiO2:0.0167Al(OH)3:0.35テトラエチルアンモニウム:0.4NH4F:5.77H2Oとした。140℃にて6日間水熱処理の後に生成物を洗浄、回収した。そして、得られた生成物を550℃で焼成し、比較例14に係るゼオライトを得た。比較例14に係るゼオライトは、*BEA型ゼオライトであった。また、比較例14に係るゼオライトは、平均粒径10μmであった。
【0115】
また、実施例32においては、比較例14に係るゼオライトを300μmのジルコニアビーズを用いて9m/sにて60分粉砕した。一方、フッ化アンモニウム(NH4F)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、および水のモル比が、0.40:0.35:5.3となるように水にフッ化アンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムを添加して、フッ化物イオンを含む溶液を得た。そして、この溶液10gに対し上記粉砕後原料ゼオライト5gを加えて、170℃で24時間攪拌せずに放置した。その後、この溶液から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例32に係るゼオライトを得た。実施例32に係るゼオライトは、*BEA型ゼオライトであり、Alを含まないものであった。また、実施例32に係るゼオライトは、平均粒径0.15μmであった。
【0116】
そして、実施例32および比較例14に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、それぞれ水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例32および比較例14に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターンから水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。なお、実施例32および比較例14に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃、1000℃、1100℃、1150℃で行われた。
【0117】
<実施例33~35>
実施例33~35においては、まず、原料ゼオライトとしてMFI型原料ゼオライト(商品名「HSZ-890HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径3μm)を用意した。そして、純水10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、純水が所定温度となるように加熱した状態で24時間攪拌せずに放置した。その後、純水から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例33~35に係るゼオライトを得た。なお、実施例33においては純水の温度が80℃となるように、実施例34においては純水の温度が120℃となるように、また実施例35においては純水の温度が170℃となるように加熱した。
【0118】
そして、実施例33~35に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、それぞれ水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例33~35に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターンから水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。なお、実施例33、34に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃、1050℃でそれぞれ行われ、実施例35に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃、1050℃、1150℃でそれぞれ行われた。
【0119】
<実施例36>
実施例36においては、まず、原料ゼオライトとして*BEA型原料ゼオライト(商品名「HSZ-990HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=750、平均粒径0.7μm)を用意した。そして、純水10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、純水の温度が120℃となるように加熱した状態で24時間攪拌せずに放置した。その後、純水から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例36に係るゼオライトを得た。
【0120】
そして、実施例36に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例36に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターンから水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。なお、実施例36に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は1100℃、1150℃でそれぞれ行われた。
【0121】
<実施例37>
実施例37においては、まず、原料ゼオライトとしてMOR型原料ゼオライト(商品名「HSZ-690HOA」、東ソー株式会社製、Si/Al=120、平均粒径0.3μm)を用意した。そして、純水10gに対し上記原料ゼオライト5gを加えて、純水の温度が120℃となるように加熱した状態で24時間攪拌せずに放置した。その後、純水から処理物を取り出し、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。そして、乾燥させた処理物を550℃で焼成して、実施例37に係るゼオライトを得た。
【0122】
そして、実施例37に係るゼオライトに対し、実施例1と同様に、水熱耐久試験を行うとともに、水熱耐久試験前後において、実施例37に係るゼオライトに対して上記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、X線回折パターンから水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めた。なお、実施例37に係るゼオライトにおいては、水熱耐久試験は、900℃でそれぞれ行われた。
・・・
【0127】
表1に実施例1~37に係るゼオライトの型、Si/Alの比、相対結晶化度を示し、表2に比較例1~16に係るゼオライトの型、Si/Alの比、相対結晶化度を示した。
【表1】
[図:0001425734000007.jpg]
【0128】
【表2】
[図:0001425734000008.jpg]
【0129】
以下、結果について述べる。まず、表1、2および図4のグラフに示されるように、実施例1、2に係るゼオライトは、比較例1に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。また、表1、2および図8のグラフに示されるように、実施例3、4に係るゼオライトは、比較例2に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。また、表1、2および図12のグラフに示されるように、実施例5、6に係るゼオライトは、比較例3に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。また、表1、2および図16のグラフに示されるように、実施例7、8に係るゼオライトは、比較例4に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。この結果から、MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、およびMOR型ゼオライトを、フッ化物イオンを含む溶液に接触させると、水熱耐久性が向上することが理解できる。
【0130】
また、表2および図17(A)のグラフに示されるように、比較例5、6に係るゼオライトは、比較例7に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が低かった。また、図17(B)のグラフに示されるように、比較例8、9に係るゼオライトは、比較例10に係るゼオライトとほぼ水熱耐久試験後の相対結晶化度が変わらなかった。この結果から、ゼオライトのSi/Alの原子比が小さいと、水熱耐久性が有効に向上しないことが理解できる。
・・・
【0133】
図21のグラフから、溶液中のフッ化物イオンの濃度が極めて少なくても、水熱耐久性が向上することが理解できる。また、図28のグラフから、実施例1とは異なるフッ化物を用いて高耐久化処理を行った場合であっても、水熱耐久性が向上することが理解できる。また、図30のグラフから、低温スチーム処理よりも本発明の高耐久化処理の方が、水熱耐久性が向上することが理解できる。さらに、図31のグラフから、フッ化物を用いて合成したゼオライトよりも、合成後にフッ化物イオンを含む溶液で高耐久化処理した方が、水熱耐久性が向上することが理解できる。
【0134】
表1および表2ならびに図32、図33に示されるように、実施例33~35に係るゼオライトは、比較例1に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。また、図32のグラフから、MFI型ゼオライトに対し熱水による高耐久化処理を行うと、水熱耐久試験後のみならず、水熱耐久試験前のゼオライトの結晶化度も向上することが理解できる。
【0135】
表1、2および図34のグラフに示されるように、実施例36に係るゼオライトは、比較例2に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。
【0136】
表1および表2に示されるように、実施例37に係るゼオライトは、比較例4に係るゼオライトよりも、水熱耐久試験後の相対結晶化度が高かった。また、図35のグラフから、MOR型ゼオライトに対し熱水による高耐久化処理を行うと、水熱耐久試験後のみならず、水熱耐久試験前のゼオライトの結晶化度も向上することが理解できる。
【0137】
したがって、これらの結果から、MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、およびMOR型ゼオライトを、熱水に接触させると、水熱耐久性が向上することが理解できる。
・・・
【0139】
また、実施例19、34、36、37および比較例1、2、4に係るゼオライトの水熱試験前後でミクロ孔容積を測定し、上記式(1)に基づいてミクロ孔容積維持率を求めた。ミクロ孔容積は、上記ガス吸着量測定装置を用いてt-プロット法により算出された。
【0140】
以下、結果を表3に示す。
【表3】
[図:0001425734000009.jpg]
【0141】
表3に示されるように、実施例19、34に係るゼオライトの各ミクロ孔容積維持率は、比較例1に係るゼオライトのミクロ孔容積維持率よりも高かった。また、実施例36に係るゼオライトのミクロ孔容積維持率は、比較例2に係るゼオライトのミクロ孔容積維持率よりも高かった。さらに、実施例37に係るゼオライトのミクロ孔容積維持率は、比較例4に係るゼオライトのミクロ孔容積維持率よりも高かった。これらの結果から、ゼオライトをフッ化物イオンや熱水で処理すると、水熱耐久試験を行ったとしても、ミクロ孔容積の低減が抑制できることが理解できる。
【0142】
さらに、実施例1、4、29、30、34、35、36および比較例1、2に係る水熱耐久試験前のゼオライトにおいて、水分吸着率を測定した。水分吸着率は、上記水分吸着容量測定装置を用いて、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下で平衡に到達させることで測定された。
【0143】
以下、結果を表4に示す。
【表4】
[図:0001425734000010.jpg]
【0144】
表4に示されるように、実施例1、29、30、34、35に係るゼオライトの水分吸着率は、比較例1に係るゼオライトの水分吸着率よりも低かった。また、表4に示されるように、実施例4、36に係るゼオライトの水分吸着率は、比較例2に係るゼオライトの水分吸着率よりも低かった。これらの結果から、ゼオライトをフッ化物イオンや熱水で処理すると、水分を吸着しにくくなり、疎水性の傾向を示すことが理解できる。」
イ 実施可能要件の判断
(ア) 前記ア(ア)の記載によれば、本件発明は、ゼオライト及びその製造方法に関するものであって(段落【0002】)、前記ア(ウ)の記載によれば、前記ゼオライトは、骨格中に少なくともSiを含むゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトを除く)であり、FAU型ゼオライト以外のゼオライトであるが、これらのゼオライトの中でも、MFI型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、及びMOR型ゼオライトは、優れた水熱耐久性を示すので好ましいものであり、本件発明においてFAU型ゼオライトを除いているのは、水熱耐久性が有効に向上しないからである(段落【0025】)。
そして、前記ゼオライトの物性は、Alを含まない、またはAlを含む場合にはSi/Alの原子比が50以上であることが好ましいものであり、前記ゼオライトが、Alを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上であれば、水熱耐久性を有効に向上させることができるのであり、前記ゼオライトのSi/Alの原子比の下限は、80以上であることがより好ましいものであり(段落【0026】)、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、上記ゼオライトに対し900℃で3時間加熱する水熱耐久試験(以下、この水熱耐久試験を「水熱耐久試験(900℃)」という。)を行ったとき、水熱耐久試験(900℃)後におけるゼオライトの相対結晶化度(900℃)は20%以上となっていることが好ましいものであり、前記「相対結晶化度」とは、加熱前(水熱耐久試験前)のゼオライトの結晶化度を100%としたときの相対的な結晶化度を意味するものであり(段落【0027】)、水熱耐久試験前の前記ゼオライトの水分吸着率は、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下で測定したとき、6.0重量%以下であることが好ましいものであり、水分吸着率が6.0重量%以下であれば、良好な疎水性を得ることができるものであり、前記「相対水蒸気圧」とは、吸着平衡状態にあるときの水蒸気の圧力(吸着平衡圧)P(mmHg)と水蒸気の飽和蒸気圧P0(mmHg)との比(P/P0)を意味するものである(段落【0028】)。
また、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、MFI型ゼオライトに対し1050℃で3時間加熱する水熱耐久試験(以下、この水熱耐久試験を「水熱耐久試験(1050℃)」という。)を行ったとき、水熱耐久試験(1050℃)後におけるMFI型ゼオライトの相対結晶化度(1050℃)は20%以上となっていることが好ましいものであり(段落【0030】)、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、*BEA型ゼオライトに対し1100℃で3時間加熱する水熱耐久試験(以下、この水熱耐久試験を「水熱耐久試験(1100℃)」という。)を行ったとき、水熱耐久試験(1100℃)後における*BEA型ゼオライトの相対結晶化度(1100℃)は20%以上となっていることが好ましいものであり(段落【0035】)、前記ゼオライトが、骨格中にAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上のMOR型ゼオライトである場合、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、MOR型ゼオライトに対し900℃で3時間加熱する水熱耐久試験(900℃)を行ったとき、水熱耐久試験(900℃)後におけるMOR型ゼオライトの相対結晶化度は20%以上となっていることが好ましいものであり(段落【0038】)、前記ゼオライトが、骨格中にAlを含まない、またはSi/Alの原子比が50以上のMOR型ゼオライトである場合、水熱耐久試験前のゼオライトのミクロ孔容積に対する水熱耐久試験(900℃)後のゼオライトのミクロ孔容積の割合であるミクロ孔容積維持率(900℃)が、90%以上であることが好ましいものである(段落【0041】)。
(イ) そして、前記ゼオライトは、フッ化物イオンを含む溶液を用いた高耐久化処理又は熱水を用いた高耐久化処理による製造方法によって得ることができるものであり、「熱水」とは、50℃以上の水を意味するものであり(段落【0045】)、このうちフッ化物イオンを含む溶液による高耐久化処理による製造方法は、まず、骨格中に少なくともSiを含む原料ゼオライトであって、Alを含まない原料ゼオライトまたはAlを含む場合にはSi/Alの原子比が50以上である原料ゼオライト(ただし、FAU型ゼオライトを除く)を用意し、原料ゼオライト又は粉砕後の原料ゼオライトを用意した後、原料ゼオライトを、フッ化物イオンを含む溶液に接触させて、原料ゼオライトの高耐久化処理を行うものである。
ここで、フッ化物イオンを含む溶液(「高耐久化溶液」)は、フッ化物イオンおよび溶媒の他、有機構造規定剤を含んでいてもよく、高耐久化溶液に、有機構造規定剤を含ませることにより、有機構造規定剤によってゼオライト中の細孔を充填し構造を安定化させることができるので、より水熱耐久性を向上させることができるものであり、フッ化物イオンを含む溶液による高耐久化処理は、より水熱耐久性を向上させるために、高耐久化溶液を攪拌しながら行うことが好ましいものであり、前記高耐久処理を行う際の高耐久化溶液の温度は、0℃以上374℃未満であればよいものであり、前記高耐久化処理を行う時間は、10分間以上であればよいものであり、フッ化物イオンは、フッ化アンモニウム等のフッ化物を溶媒に溶解させることにより得ることができるものであり、高耐久化溶液中のフッ化物イオンの濃度は、0.001質量%以上であることが好ましく、フッ化物イオンの濃度の上限は、ゼオライトの構造が崩壊することを抑制する観点から、25質量%以下であることがより好ましいものであり、溶媒としては水等が挙げられるものである。
また、ゼオライトの細孔径や結晶構造を規定する有機分子である有機構造規定剤としては、テトラメチルアンモニウム等が挙げられるものであり、高耐久化溶液が有機構造規定剤を含む場合、高耐久化溶液中の有機構造規定剤の濃度は、0.001質量%以上であることが好ましく、有機構造規定剤の濃度の上限は、コストの観点から、50質量%以下であることが好ましいものであり、高耐久化処理後、ゼオライトを洗浄し、乾燥させ、その後、ゼオライトを250℃以上800℃以下で焼成してもよいものであり、これにより、高耐久化処理されたゼオライトを得ることができるものである(段落【0046】~【0063】)。
更に、熱水による高耐久化処理による製造方法は、まず、骨格中に少なくともSiを含む原料ゼオライトであって、Alを含まない原料ゼオライトまたはAlを含む場合にはSi/Alの原子比が50以上である原料ゼオライト、あるいは粉砕後の原料ゼオライトを用意した後、前記原料ゼオライトを50℃以上250℃以下の熱水に接触させて、原料ゼオライトの高耐久化処理を行うものであり、この高耐久化処理により、水熱耐久性が向上したゼオライトを得ることができるものであり、熱水としては、蒸留水等を挙げることができ、熱水は、本件発明の効果が得られる限り、他の成分や不純物を含んでいてもよいものであり、熱水の温度が50℃以上であれば、水熱耐熱性を向上させることができ、また250℃以下であれば、安全に作業することができるものである。
また、前記高耐久化処理を行う時間(原料ゼオライトを熱水に接触させる時間)は、1時間以上であればよいものであり、高耐久化処理を行う時間の上限は、エネルギー消費の観点から、24時間以下であることが好ましいものであり、前記高耐久化処理後、ゼオライトを洗浄し、乾燥させるものであり、その後、ゼオライトを300℃以上800℃以下で焼成してもよいものであり、これにより、高耐久化処理されたゼオライトを得ることができるものである(段落【0064】~【0069】)。
更に、前記ア(エ)によれば、本件特許明細書の実施例には、前記フッ化物イオンを含む溶液を用いた高耐久化処理又は熱水を用いた高耐久化処理による製造方法により、本件発明1(実施例1、4、29、30、34~36)、2(実施例1、29、30、34、35)、4(実施例3、4、32、36)及び5(実施例37)の発明特定事項を満たすゼオライトが製造できることが記載されているといえるし、前記ゼオライトの製造方法は、本件発明10及び11の発明特定事項を満たすものといえる。
なお、実施例4は、本件発明1の「相対結晶化度(900℃)」が測定されていないが、1050℃の水熱耐久試験の結果、相対結晶化度が83%であり、試験温度がこれより150℃低い本件発明1の「相対結晶化度(900℃)」が「20%以上である」ことが強く推認されるから、本件発明1の発明特定事項を満たすものといえ、実施例36についても事情は同じであり、実施例3は、本件発明4の「相対結晶化度(1100℃)」が測定されていないが、1150℃の水熱耐久試験の結果、相対結晶化度が43%であり、試験温度がこれより50℃低い本件発明4の「相対結晶化度(1100℃)」が「20%以上である」ことが強く推認されるから、本件発明4の発明特定事項を満たすものといえ、実施例4、32及び36についても事情は同じである。
(ウ) してみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1、2、4及び5の発明特定事項を満たすゼオライトを製造し、使用することができる。
更に、本件発明3、7~9、15及び16について検討しても事情は同じである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明10及び11の発明特定事項を満たすゼオライトの製造方法を使用することができる。
更に、本件発明12~14について検討しても事情は同じである。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。
(3) 取消理由について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~5、7~9、15及び16の発明特定事項を満たすゼオライトを製造し、使用することができること、及び、本件発明10~14の発明特定事項を満たすゼオライトの製造方法を使用することができることは前記(2)イ(ウ)に記載したとおりであるから、前記第5の2(1)及び(2)の取消理由は理由がない。
(4) 申立人の主張について
ア 前記第4の3(1)~(3)の申立人の主張は、総じて、実施例に記載されたSi/Al原子比が750であるゼオライトの「水分吸着率」の最大値が5.6重量%(実施例36)や1.2重量%(実施例29)であることと、Si/Al原子比が低下するにつれてゼオライトの疎水性が低下する、という本件特許の出願日当時の周知技術からみれば、Si/Al原子比が80に近いゼオライトを製造したとき、「水分吸着率」が、本件発明に係るゼオライトにおいて特定される「水分吸着率」の上限値よりも高くなる蓋然性が極めて高いから、本件発明の発明特定事項を満たすゼオライトを製造するには、当業者に過度の試行錯誤を強いることとなるので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合しない、というものである。
イ しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~5、7~9、15及び16の発明特定事項を満たすゼオライトを製造し、使用することができるし、本件発明10~14の発明特定事項を満たすゼオライトの製造方法を使用することができることは、前記(2)イ(ウ)に記載したとおりである。
また、本件発明には、特許請求の範囲で特定された発明特定事項を全て満たすゼオライトが包含され、そうでないものは包含されないと解されるから、仮に、Si/Al原子比が80に近いゼオライトを製造したとき、「水分吸着率」が、本件発明に係るゼオライトにおいて特定される「水分吸着率」の上限値よりも高くなるとしても、そのようなゼオライトは、そもそも本件発明には包含されないので、本件発明の発明特定事項を満たすゼオライトを製造する際に、当業者に過度の試行錯誤を強いることとなるとはいえない。
したがって、前記第4の3(1)~(3)の申立人の主張はいずれも採用できない。
ウ 更に、申立人意見書における申立人の主張について検討すると、実施可能要件についての申立人意見書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
本件発明1は、「前記ゼオライトが*BEA型のゼオライトである場合、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下である」、との発明特定事項を有し、本件発明4は「水分吸着率」が特定されていないから、これらは、「温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライト」の「水分吸着率が4.0重量%以下である」「*BEA型のゼオライト」を含むものであるが、請求項1及び4のいずれかを引用する本件発明11に係る「ゼオライトの製造方法」により、「水分吸着率が4.0重量%以下である」「*BEA型のゼオライト」が製造できるとはいえないから、本件発明11は、製造することができない「水分吸着率が4.0重量%以下である」「*BEA型のゼオライト」の製造方法が包含されているので、特許請求の範囲の請求項11について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。
更に、請求項11を引用する特許請求の範囲の請求項13について検討しても事情は同じである。
エ 以下、前記ウの主張について検討すると、前記(1)によれば、方法の発明の実施可能要件は、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があれば足りるものである。
そして、本件特許明細書の実施例には、本件発明11の発明特定事項を満たす、熱水を用いた高耐久化処理による製造方法により、本件発明1及び4の発明特定事項を満たす「*BEA型のゼオライト」(実施例36)が製造できることが記載されていることは、前記(2)イ(イ)に記載したとおりであるし、本件特許の出願日当時の周知技術からみれば、Si/Al原子比が向上するにつれてゼオライトの疎水性も向上し、「水分吸着率」が下げられることが推認できるから、発明の詳細な説明には、請求項1又は4を引用する本件発明11について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があるといえる。
また、本件発明11に係る「ゼオライトの製造方法」により製造できる「*BEA型のゼオライト」の「水分吸着率」の下限値は、前記「ゼオライトの製造方法」を満たす範囲内で当業者が通常採用する方法により製造できる範囲のものと解するのが妥当であるから、「水分吸着率が4.0重量%以下である」「*BEA型のゼオライト」が製造できるか否かにかかわらず、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1及び4の発明特定事項を満たす本件発明11の「ゼオライトの製造方法」を使用することができることに変わりはないので、特許請求の範囲の請求項11について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たしているといえる。
更に、請求項11を引用する特許請求の範囲の請求項13について検討しても事情は同じであるから、前記ウの主張は採用できない。
(4) 小括
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第4の3の特許異議申立理由及び第5の2の取消理由はいずれも理由がない。
3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1) サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。
(2) サポート要件についての判断
ア 前記2(2)ア(ア)の記載によれば、本件発明は、現在、流通しているゼオライトは、水熱耐久性が低く、具体的には、ゼオライトに対し水蒸気が10体積%である雰囲気下で水熱耐久試験を行うと、水熱耐久試験前に比べて結晶化度が著しく低下してしまうため、高水熱耐久性を有するゼオライトの開発が望まれている、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、水熱耐久性を向上させたゼオライトを提供することを目的とするものである。
イ これに対して、前記2(2)ア(イ)の記載によれば、本件発明は、ゼオライトを、骨格中に少なくともSiを含むゼオライトであって、水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上であり、温度25℃および相対水蒸気圧0.4の環境下での前記加熱前の前記ゼオライトの水分吸着率が6.0重量%以下であるゼオライト、骨格中に少なくともSiを含み、かつAlを含まない、又はSi/Alの原子比が50以上であるMFI型のゼオライトであって、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1050℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1050℃)が20%以上である、ゼオライト、骨格中に少なくともSiを含み、かつAlを含まない、又はSi/Alの原子比が50以上である*BEA型のゼオライトであって、水蒸気が10体積%である雰囲気下で、前記ゼオライトを1100℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(1100℃)が20%以上である、ゼオライト、又は、骨格中に少なくともSiを含み、かつAlを含まない、又はSi/Alの原子比が50以上であるMOR型のゼオライトであって、水蒸気が10体積%の雰囲気下で、前記ゼオライトを900℃で3時間加熱したとき、加熱前における前記ゼオライトの結晶化度に対する加熱後における前記ゼオライトの結晶化度の割合である相対結晶化度(900℃)が20%以上である、ゼオライトとすることで、水熱耐久性を向上させたゼオライトを提供でき、本件課題を解決できるものである。
そして、本件発明1、2、4及び5に係るゼオライトは、これらの物性のいずれかを満たすものである。
ウ そうすると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1、2、4及び5の発明特定事項を満たすゼオライトにより、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の請求項1、2、4及び5の記載はサポート要件に適合する。
更に、本件発明1、2、4及び5の発明特定事項のいずれかを有する本件発明3及び7~16について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3) 取消理由について
本件発明10~14は、いずれも、本件発明1~4、7~9のいずれかの発明特定事項を有するから、製造された「ゼオライト」の「相対結晶化度」や「水分吸着率」を前記(2)イに記載された範囲とすることが特定されているので、本件課題を解決するものといえる。
したがって、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するから、前記第5の1(2)の取消理由は理由がない。
(4) 申立人の主張について
ア 始めに、前記第4の4(1)ア、同(2)ア、同(3)ア、(4)ア、(5)、(6)アの主張について検討すると、これらの主張は、総じて、実施例にはSi/Al原子比が750や120のゼオライトしか記載されておらず、Si/Al原子比が750や120以外のゼオライトでは本件課題を解決できることを認識できないから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない、というものである。
イ ところが、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1~5及び7~9の発明特定事項を満たすゼオライトにより本件課題を解決できることを理解することができることは、前記(2)ウに記載したとおりであるし、Si/Al原子比が750や120以外のゼオライトでは本件課題を解決できないことを裏付ける証拠もないから、実施例にSi/Al原子比が750や120のゼオライトしか記載されていないとしても、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するので、前記アの主張はいずれも採用できない。
ウ 次に、前記第4の4(1)イ、同(2)イ、(3)イ、(4)イの主張について検討すると、これらの主張は、総じて、本件発明1~5及び7~9においてはゼオライトのシラノール欠陥の数が特定されていないから、シラノール欠陥の数を減少させていない、発明の詳細な説明中に記載されていないゼオライトが包含されるので、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない、というものである。
エ ところが、本件特許明細書の段落【0025】~【0028】、【0070】(前記2(2)ア(ウ))の記載によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、フッ化物イオンを含む溶液又は熱水を用いた高耐久化処理によりシラノール欠陥の数が減少することで、「Si/Alの原子比」が50以上、「相対結晶化度(900℃)」が20%以上、「水分吸着率」が6.0重量%以下となったゼオライトは、水熱耐久性が向上するものとなって、本件課題を解決できることを理解できる。
そして、本件発明1には、「Si/Alの原子比」が50以上、「相対結晶化度(900℃)」が20%以上、「水分吸着率」が6.0重量%以下であることを満たすゼオライトが特定されているから、本件発明1においてシラノール欠陥の数が特定されていないとしても、本件発明1の発明特定事項を満たすゼオライトにより、水熱耐久性が向上する範囲にまでシラノール欠陥の数が減少し、本件課題を解決できることを理解することができる。
更に、本件発明2~5及び7~9について検討しても事情は同じである。
したがって、本件発明1~5、7~9においてシラノール欠陥の数が特定されていないとしても、シラノール欠陥の数を減少させていない、発明の詳細な説明中に記載されていないゼオライトが包含されているとはいえないので、前記ウの主張もいずれも採用できない。
オ 次に、前記第4の4(6)イの主張について検討すると、前記第4の4(6)イの主張は、気化した水であっても液体の水であってもそれらが高温であれば本件発明11における「熱水」に該当すると解されることを前提としたものといえる。
ところが、本件特許明細書の段落【0045】(前記2(2)ア(ウ))の記載によれば、本件発明における「熱水」とは50℃以上の水を意味するものであり、水は、通常液体の水を意味するものである。
また、同段落【0112】~【0113】、【0133】(前記2(2)ア(エ))の記載によれば、本件特許明細書には、比較例11~13において、MFI型ゼオライトに、水蒸気10体積%を含む空気中で、ゼオライトを所定温度で24時間加熱する低温スチーム処理を行い、水熱耐久試験を行った結果、低温スチーム処理よりも本件発明の高耐久化処理の方が、水熱耐久性が向上することが記載されており、このことからみれば、低温スチーム処理、すなわち気化した水による処理は、本件発明における高耐久化処理とはいえないものである。
これらのことからみれば、本件発明における「熱水」は液体の状態をいうものと解するのが妥当であるから、前記前記第4の4(6)イの主張は前提において誤っているので、採用できない。
カ したがって、前記第4の4の主張はいずれも採用できない。
(5) 小括
よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、前記第4の4の特許異議の申立理由及び第5の1(2)の取消理由はいずれも理由がない。
4 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1) 明確性要件違反の判断手法
特許請求の範囲の記載が、明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点に立って検討する。
(2) 明確性要件についての判断
ア 始めに、前記第4の5(1)の特許異議申立理由について検討すると、本件特許明細書の段落【0075】~【0078】の記載(前記2(2)ア(エ))によれば、本件発明1における「相対結晶化度(900℃)」は、粉末X線回折装置:製品名「UltimaIV」、株式会社リガク製、CuKα線使用、電圧40kV、電流40mA、スキャンステップ0.02°、スキャン速度2°/minにより求めたものであり、具体的には、水熱耐久試験前後において、ゼオライトに対して前記粉末X線回折装置によるX線回折測定を行い、得られたX線回折パターンから結晶化度をそれぞれ求めたものである。
そして、結晶化度は、非晶質によるブロードなバックグラウンドピークを補正により差し引いた後に、2θ=20~30°にあるピークの積分強度の和を用いて求めたものであり、それぞれの水熱耐久試験毎に、結晶化度から水熱耐久試験前のゼオライトの結晶化度を100%としたときの水熱耐久試験後のゼオライトの相対結晶化度を求めたものである。
イ ここで、本件特許明細書には、得られたX線回折パターンからブロードなバックグラウンドピークにおける検出器の感度ノイズやX線の散乱、蛍光X線などの環境要因に起因したピークを差し引くか否かが記載されておらず、また、得られたX線回折パターンのピークを分離する際の方法や関数も記載されていないが、これらの事項は、当業者が、測定に使用した機器や技術常識に基づいて、データ分析の際に通常用いられる最適な手法を決定し、実行するものといえる。
そうすると、本件特許明細書に、得られたX線回折パターンから環境要因に起因したピークを差し引くか否かが記載されておらず、また、得られたX線回折パターンのピークを分離する際の方法や関数も記載されていないとしても、このことから、本件発明1における「相対結晶化度(900℃)」が、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件特許請求の範囲の請求項2~5及び7~9について検討しても事情は同じである。
ウ 次に、前記第4の5(2)の特許異議の申立理由について検討すると、本件特許明細書の段落【0045】、【0066】の記載(前記2(2)ア(ウ))によれば、本件発明11における「熱水」は、50℃以上の水を意味し、純水を好適に用いることができるものであるが、本件発明の効果が得られる限り、ほかの成分や不純物を含んでいてもよいものである。
このことからみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明11における「熱水」は、50℃以上の水であって、本件発明1~5及び7~9の発明特定事項を満たすゼオライトを製造できる範囲で、ほかの成分や不純物を含んでいてもよいものであることを理解できるから、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項11の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件特許請求の範囲の請求項12及び14について検討しても事情は同じである。
(3) 小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するから、前記第4の5の特許異議の申立理由はいずれも理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1~5及び7~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~5及び7~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項6は削除されたから、請求項6に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しなくなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700453