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特許異議申立

2024-700868

焼結鉱およびその製造方法、ならびに、水素還元用の焼結鉱およびその製造方法

審判番号
2024-700868
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-102110
登録番号
7447871
請求日
2024年09月11日
審決日
2025年02月05日
公報発行日
2025年03月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
  • 【異議申立人】岩部 英臣
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 相澤 啓祐
  • 審判官 池渕 立
分類
P1651.113-Y (C22B) / P1651.121-Y (C22B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7447871号発明「焼結鉱およびその製造方法、ならびに、水素還元用の焼結鉱およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7447871号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7447871号(請求項の数8。以下、「本件特許」という。)は、令和 3年 6月21日を出願日とする特許出願(特願2021-102110号)に係るものであって、令和 6年 3月 4日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和 6年 3月12日である。)。 その後、令和 6年 9月11日に、本件特許の請求項1~8(全請求項)に係る特許に対して、特許異議申立人である岩部 英臣(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。なお、令和 6年10月29日に特許異議申立書を補正対象とする手続補正書(方式)が提出されている。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許に係る特許出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)と、 前記焼結鉱について、水を用いて液中秤量法により測定した見かけ密度、および、該焼結鉱を粉砕し粒径-250μmに篩った後煮沸法または真空吸引法により測定した真密度を用いて求めた気孔率PB(体積%)と、の比PA/PBが0.23以上であり、前記気孔率PAが3~13体積%の範囲である、焼結鉱。 【請求項2】 前記気孔率PBが10~42体積%の範囲である、請求項1に記載の焼結鉱。 【請求項3】 前記水銀圧入法で測定した平均気孔径dAが0.7μm以下である、請求項1または2に記載の焼結鉱。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか1項に記載の焼結鉱において、気孔率の比PA/PBが0.25以上である、水素還元用の焼結鉱。 【請求項5】 請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結鉱を製造する方法であって、 結晶水含有量が4質量%以上の鉱石を含む原料を用いる、焼結鉱の製造方法。 【請求項6】 焼結用燃料として、気体燃料を吹き込むことを含む、請求項5に記載の焼結鉱の製造方法。 【請求項7】 前記気体燃料が水素ガス、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガスおよびそれらの混合ガスのうちから選ばれるいずれかの可燃性ガスである、請求項6に記載の焼結鉱の製造方法。 【請求項8】 請求項5~7のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法において、焼結鉱の気孔率の比PA/PBを0.25以上とする、水素還元用焼結鉱の製造方法。 第3 特許異議の申立ての理由の概要 本件特許の請求項1~8に係る特許は、以下の1、2のとおり、特許法第113条第2号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第9号証(以下、単に「甲1」等という。以下の3を参照。)である。 また、予備的主張として、以下の申立理由1-3が採用できないのであれば、本件発明1について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第4項第1号に適合しないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第113条第4号に該当する(以下の第4の1の 1-3(2)イ(キ)参照)。 1 申立理由1(新規性) 1-1 申立理由1-1 本件発明1、2、5は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 1-2 申立理由1-2 本件発明1は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 1-3 申立理由1-3 本件発明1は、甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 2-1 申立理由2-1 本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2-2 申立理由2-2 本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2-3 申立理由2-3 本件発明4、8は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲9に記載された事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2-4 申立理由2-4 本件発明6、7は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 (1)甲1:特開2017-75348号公報 (2)甲2:V. Shatokha et al., “Iron ore sinter porosity characterisation with application of 3D X-ray tomography”, Ironmaking & Steelmaking, 2013年7月18日, Vol.37, No.5, p.313-319 <URL:https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1179/030192310X12683045805865> (3)甲3:「2017 夏 No.96 NSSTつうしん」,日鉄住金テクノロジー株式会社,2017年7月1日 <URL:https://www.nstec.nipponsteel.com/download/communication/files/tsu-1704.pdf> (4)甲4:Tobin HARVEY et al., “Sinter Strength and Pore Structure Development using Analogue Tests”, ISIJ International, 2020年1月15日, Vol.60, No.1, p.73-83 <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational/60/1/60_ISIJINT-2019-247/_pdf/-char/ja> (5)甲4-1:甲4の発行年月日が記載された書類 <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational/60/1/60_ISIJINT-2019-247/_article/-char/ja> (6)甲5:特開2010-132964号公報 (7)甲6:L. X. Yang et al., “Introduction of Pisolitic Goethite Ore into a Chinese Ore Blend”, ISIJ International, 2000年7月15日, vol.40, No.7, p.647-653 <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational1989/40/7/40_7_647/_pdf/-char/ja> (8)甲6-1:甲6の発行年月日が記載された書類 <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational1989/40/7/40_7_647/_article/-char/ja/> (9)甲7:特開2018-104815号公報 (10)甲8:特開平10-324929号公報 (11)甲9:国際公開第2015/016145号 第4 当審の判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(新規性) 1-1 申立理由1-1 (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項 甲1には、「焼結鉱の製造方法および焼結鉱」(発明の名称)に関して、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。 (ア)「【請求項1】 鉄鉱石、副原料および固体燃料を配合しバインダーを添加して造粒した後、その造粒物を焼結する焼結鉱の製造方法であって、 Hを3質量%以上含有する有機バインダーを用い、 焼結鉱は、全気孔率に対する気孔径が100μm以下である微細気孔率の割合が0.42以上の組織を有する ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。 【請求項2】 有機バインダーの添加量は、固形分換算で0.01質量%以上1.5質量%以下である ことを特徴とする請求項1記載の焼結鉱の製造方法。 【請求項3】 有機バインダーは、リグニンスルホン酸塩を含有する ことを特徴とする請求項1または2記載の焼結鉱の製造方法。 【請求項4】 全気孔率に対する気孔径が100μm以下である微細気孔率の割合が0.42以上の組織を有する ことを特徴とする焼結鉱。」 (イ)「【0012】 本発明はこのような点に鑑みなされたもので、被還元性に優れた焼結鉱を容易かつ経済的に製造できる焼結鉱の製造方法および焼結鉱を提供することを目的とする。」 (ウ)「【発明の効果】 【0017】 本発明によれば、造粒する際にHを3質量%以上含有する有機バインダーを添加することにより、気孔径が100μm以下の比較的微細な気孔の割合を増加できるため、強度を低下させずに被還元性を向上でき、被還元性に優れた焼結鉱を容易かつ経済的に製造できる。」 (エ)「【0025】 一般的に焼結鉱は、気孔率が高いほど被還元性が向上するが、気孔率の増加は強度の低下を招くため、強度低下の抑制と被還元性の向上とを両立させるには、気孔構造を制御する必要がある。」 (オ)「【0038】 図3には、各条件で形成した焼結鉱の気孔率とバインダー添加量との関係を示す。なお、気孔率は、真密度および見掛け密度からJISM8717に準拠し算出した全気孔率、および、水銀圧入式ポロシメータで測定した焼結鉱における気孔径が100μm以下の微細気孔の割合を示す微細気孔率の2種類を測定した。 【0039】 真密度は試料を45μm以下に粉砕したHeガス置換法で測定した。また、見掛け密度は、試料の表面をパラフィンでコーティングして試料内部への液体の浸透を防止し、アルキメデス法で測定した。」 (カ)「【0043】 このようにバインダーを添加して微細な気孔が増加させて、焼結鉱が、全気孔率に対する100μm以下の微細気孔の微細気孔率の割合(焼結鉱における気孔径が100μm以下の微細気孔率/全気孔率)を示す微細気孔比率が0.42以上の組織を有することにより、落下強度(SI)を低下させずに、被還元性(RI)を向上できる。」 (キ)「【実施例】 【0058】 Hを含有する有機バインダーによる被還元性向上効果を確認するため、焼結鍋試験装置を用いて以下の試験を実施した。 【0059】 主原料としては表4に示す成分の各鉄鉱石を用いた。 【0060】 【表4】 [図:0001420344000001.jpg] 【0061】 この表4に示す各鉄鉱石と各原料とを、表5に示す割合で配合した。バインダーとしては、リグニンスルホン酸が主成分でパルプ廃液由来の液状の有機バインダーを用いた。表5に示すバインダーの添加量は固形分換算の値である。 【0062】 なお、No.1、No.2およびNo.3は、主原料と副原料とを同じ割合で配合し、バインダーの添加量に応じて固体燃料である粉コークスの添加量を調整した。 【0063】 No.4およびNo.5は、主原料と副原料とを同じ割合で配合し、バインダーの添加量に応じて固体燃料である粉コークスの添加量を調整した。 【0064】 No.6およびNo.7は、主原料と副原料とを同じ割合で配合し、バインダーの添加量に応じて固体燃料である粉コークスの添加量を調整した。 【0065】 【表5】 [図:0001420344000002.jpg] 【0066】 表5に示す配合の各種原料をドラムミキサーで水分を添加しながら造粒した後、造粒物を直径300mmで高さ400mmの焼結鍋に充填し、吸引圧5kPa一定で焼結を行い、その際の歩留、落下強度(SI)、耐還元粉化性(RDI)および被還元性(RI)を測定した。歩留は、焼結後のシンターケーキを2mの高さから4回落下させた際の粒径5mm以上の割合で評価した。SI、RDIおよびRIはJISに準拠した方法で測定した。また、焼結鉱における100μm以下の微細気孔の割合を示す焼結鉱中の微細気孔率を水銀圧入式ポロシメータで測定した。さらに、真密度および見掛け密度から全気孔率を算出した。また、これら焼結鉱中の微細気孔率および全気孔率に基づいて、全気孔率に対する気孔径が100μm以下の微細気孔率の割合(焼結鉱における気孔径が100μm以下の微細気孔率/全気孔率)を示す微細気孔比率を求めた。これらの結果を表6に示す。 【0067】 【表6】 [図:0001420344000003.jpg] 【0068】 表6に示すように、比較例であるバインダーなし(No.1、No.4およびNo.6)に比べ、バインダーを添加した本実施例(No.2、No.3、No.5およびNo.7)は、強度(SI)や耐還元粉化性(RDI)が同等以上で、被還元性(RI)が4%以上向上していた。 【0069】 すなわち、比較例であるNo.1に対して本実施例であるNo.2およびNo.3のSIおよびRDIが同等以上で、かつ、RIが向上していた。また、比較例であるNo.4に対して本実施例であるNo.5のSIおよびRDIが同等以上で、かつ、RIが向上していた。さらに、比較例であるNo.6に対して本実施例であるNo.7のSIおよびRDIが同等以上で、かつ、RIが向上していた。 【0070】 このような作用効果は、バインダーの添加により焼結鉱における100μm以下の微細気孔率が増加したためと考えられる。 【0071】 以上の結果により、バインダーとしてHを3質量%以上含有する有機バインダーを用いることにより、原料の配合等が制約されることなく、かつ、別の設備の設置や設備の改造が不要で、焼結鉱の強度を低下させることなく、被還元性を向上できることを確認できた。」 イ 甲1に記載された発明 上記ア(ア)~(キ)に摘記した甲1の記載事項を総合勘案し、特に実施例のNo.1に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「全気孔率(29.9%)に対する気孔径が100μm以下である微細気孔率(11.1%)の割合が0.37の組織を有する焼結鉱であって、 前記全気孔率は、試料を45μm以下に粉砕したHeガス置換法で測定した真密度と、試料の表面をパラフィンでコーティングして試料内部への液体の浸透を防止し、アルキメデス法で測定した見掛け密度とから算出したものであり、 前記微細気孔率は、水銀圧入式ポロシメータで測定したものである焼結鉱。」(以下、「甲1発明1」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 (ア)本件発明1に係る「焼結鉱」における「水銀圧入法で測定した気孔率PA」について、本件明細書の【0026】には、「(S12)得られた、粒径+1mm-2mmの焼結鉱をJIS R1655:2003に準拠して、水銀圧入法による気孔径分布を測定し、気孔径3.6nm~200μmの累積気孔体積から気孔率PA(S13)および平均気孔径dA(S14)を求める。」と記載されているから、水銀圧入法が開気孔率を求めるものであるとの技術常識(甲3の図1参照)を踏まえると、上記「気孔率PA」は気孔径200μm以下の開気孔を対象とするものであると解される。 (イ)一方、甲1発明1に係る「焼結鉱」における「気孔径が100μm以下である微細気孔率」は「水銀圧入式ポロシメータで測定したものである」から、当該「微細気孔率」は気孔径が100μm以下の開気孔を対象とするものであると解される。 (ウ)そして、気孔率が「体積」を基準とするものであることは技術常識に照らして明らかであり、甲1発明1における「微細気孔率(11.1%)」が「微細気孔率(11.1体積%)」を意味することは明らかであるから、本件発明1における「粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」「が3~13体積%の範囲である」と甲1発明1における「水銀圧入式ポロシメータで測定した」「気孔径が100μm以下である微細気孔率(11.1%)」とは、一見すると、「水銀圧入法で測定した気孔率(体積%)が3~13体積%の範囲である」点で共通するようにも解されるものの、上記(ア)、(イ)を踏まえると、本件発明1と甲1発明1とでは、「気孔率PA」又は「微細気孔率」の測定対象となる開気孔の気孔径の上限が「200μm」であるか「100μm」であるかの点で相違するため、結局のところ、両者は、「水銀圧入法で測定した気孔率(体積%)が3~13体積%の範囲である」点で共通するとはいえない。 (エ)そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、 「焼結鉱。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-1> 「焼結鉱」において、本件発明1では「粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」「が3~13体積%の範囲である」のに対し、甲1発明1では上記気孔率PA(体積%)が3~13体積%の範囲であるのか不明である点。 <相違点1-2> 「焼結鉱」において、本件発明1では「気孔率PA(体積%)と、」「粒径が5mm以上の」「焼結鉱について、水を用いて液中秤量法により測定した見かけ密度、および、該焼結鉱を粉砕し粒径-250μmに篩った後煮沸法または真空吸引法により測定した真密度を用いて求めた気孔率PB(体積%)と、の比PA/PBが0.23以上であ」るのに対し、甲1発明1では上記比PA/PBが0.23以上であるのか不明である点。 イ 相違点についての判断 イ-1 相違点1-1について (ア)まず上記相違点1-1について検討すると、申立人は、特許異議申立書において、以下のとおり主張している。 「甲1発明a(当審注:甲1発明1と同様に、実施例のNo.1を認定の基礎としたもの。)の微細気孔率として、対象とする気孔径の範囲を200μmまで拡張して考慮しても、依然として本件特許発明1の構成(構成C、D)(当審注:「構成D」が相違点1-1と同旨)を充足する。 まず、焼結鉱の気孔径分布は、気孔径が10μmまでの気孔が大半であり、100μm~200μmの範囲の気孔はわずかである。当該技術事項は本技術分野における技術常識であり、例えば甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証からも把握できる。」(第35ページ第15行~第21行) (イ)そこで、上記(ア)の主張について検討すると、仮に上記相違点1-1について、本件発明1と甲1発明1とでは、「気孔率PA」又は「微細気孔率」の測定対象となる開気孔の気孔径の上限が「200μm」であるか「100μm」であるかの点でのみ相違するとしても、焼結体の気孔構造は、原料及び焼結条件に左右されるものであり、甲1発明1に係る「焼結鉱」と甲2~4に記載の焼結体とが同一の原料及び焼結条件によって製造されたものであるとは認められないから、たとえ甲2~4に記載の焼結体では「気孔径が10μmまでの気孔が大半であり、100μm~200μmの範囲の気孔はわずかであ」ったとしても、甲1発明1に係る「焼結鉱」でも同様であるかは不明である。 (ウ)したがって、上記(ア)の主張を採用することはできず、甲1発明1に係る「焼結鉱」において、上記相違点1-1に係る「水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」が「3~13体積%の範囲である」かは不明であるというほかないから、上記相違点1-1は実質的な相違点であるといえる。 イ-2 相違点1-2について (ア)次に上記相違点1-2について検討すると、申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明aの「全気孔率」と本件特許発明1「気孔率PB」は、気孔率の比の算出に用いる他方の気孔率として、見かけ密度および真密度を用いて求めた気孔率である点で共通する。さらに、本件特許発明1における液中秤量法による見かけ密度と煮沸法又は真空吸引法による粉砕後の焼結鉱の真密度とを用いて求めた気孔率PBは、開気孔も閉気孔も含めた全気孔率に他ならないので、その点においても甲1発明aの「全気孔率」と本件特許発明1の「気孔率PB」は相違しない」(第34ページ下から11行目~下から5行目)ことを前提に、上記相違点1-2は実質的な相違点ではない旨を主張している。 (イ)そこで、上記(ア)の主張について検討すると、本件明細書には、次の記載がある。 a 「【0012】 すなわち、還元性の向上および低還元粉化性を両立させるためには、マクロからミクロまでの気孔率やその気孔構造を制御する必要がある。ところが、上記従来技術ではある範囲の気孔率のみに絞っており、そのような試みはなされておらず、還元性の向上と低還元粉化性を両立できる気孔構造の提案が課題であった。」 b 「【0023】 発明者らは、焼結鉱の被還元性に影響を与える気孔径200μm以下のミクロ気孔と、焼結鉱の強度に影響を与えるマクロ気孔とを測定して、定量し、焼結鉱、特に水素還元用焼結鉱として、望ましい特性を検討した。・・・」 c 「【0035】 ミクロ気孔の気孔率とマクロ気孔の気孔率の比(PA/PB)で整理すると、適切な被還元性と還元粉化性を両立させる条件が得られることを見出した。・・・」 (ウ)上記(イ)a~cに摘記した事項を踏まえると、ミクロ気孔とマクロ気孔とでは気孔径が異なっており、「ミクロ気孔の気孔率PA」が「マクロ気孔の気孔率PB」に完全に包含されるものでないことは明らかであるから、「甲1発明aの「全気孔率」と本件特許発明1「気孔率PB」は、気孔率の比の算出に用いる他方の気孔率として、見かけ密度および真密度を用いて求めた気孔率である点で共通する」からといって、「気孔率PBは、開気孔も閉気孔も含めた全気孔率に他ならない」などとはいえない。 (エ)したがって、上記(ア)の主張は前提において誤っており採用することはできず、甲1発明1に係る「焼結鉱」において、上記相違点1-2に係る「比PA/PBが0.23以上であ」るかは不明であるというほかないから、上記相違点1-2は実質的な相違点であるといえる。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえないから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (3)本件発明2、5について 本件発明2、5は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明2、5も同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (4)申立理由1-1のまとめ したがって、申立理由1-1によっては、本件特許の請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。 1-2 申立理由1-2 (1)甲2の記載事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2の記載事項 甲2には、次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を表し、以下同様である。また、翻訳文は申立人によるもの(ただし、(サ)、(セ)は当審によるもの)であり、以下同様である。 (ア)「 [図:0001420344000004.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000005.jpg] ) (イ)「 [図:0001420344000006.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000007.jpg] ) (ウ)「 [図:0001420344000008.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000009.jpg] (p.314上部)) (エ)「 [図:0001420344000010.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000011.jpg] ) (オ)「 [図:0001420344000012.jpg] [図:0001420344000013.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000014.jpg] ) (カ)「 [図:0001420344000015.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000016.jpg] ) (キ)「 [図:0001420344000017.jpg] ・・・ [図:0001420344000018.jpg] ・・・ [図:0001420344000019.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000020.jpg] [図:0001420344000021.jpg] ) (ク)「 [図:0001420344000022.jpg] [図:0001420344000023.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000024.jpg] ) (ケ)「 [図:0001420344000025.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000026.jpg] (p.316右欄上部)) (コ)「 [図:0001420344000027.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000028.jpg] ) (サ)「 [図:0001420344000029.jpg] 」 (翻訳: 5 3Dトモグラフィーと水銀試験を使用して得られた開気孔率のデータの比較(鉱石/精鉱比50:50の混合物から生成された焼結物 (p.317左欄上部)) (シ)「 [図:0001420344000030.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000031.jpg] ) (ス)「 [図:0001420344000032.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000033.jpg] (p.317右欄上部)) (セ)「 [図:0001420344000034.jpg] 」 (翻訳: 等価直径が>200μmの開気孔の比率に対する塩基度の影響を図9に示す。 (p.318左欄19-21行目)) (ソ)「 [図:0001420344000035.jpg] 」 (翻訳: [図:0001420344000036.jpg] (p.318左欄上部)) イ 甲2に記載された発明 上記ア(ア)~(ソ)に摘記した甲2の記載事項を総合勘案し、特に表1の焼結体サンプル4に着目すると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。ここで、上記焼結体サンプル4の開気孔率及び閉気孔率に関する数値については、上記ア(ケ)、(ソ)に摘記した図4、9に基づき、申立人が特許異議申立書(第18ページ12行目~第19ページ3行目)で示したものを採用した。なお、上記ア(セ)の摘記事項からすると、上記ア(ソ)に摘記した図9における「<200μm」との記載が誤記であり、「>200μm」との記載が正しいことは明らかである。 「塩基度(CaO/SiO2):1.4、精鉱/鉄鉱石の質量比率:20:80、3Dトモグラフィーを使用して得られた開気孔率:約17.5%(そのうち、>200μmの比率:約52%)、同閉気孔率:約4%、の焼結体混合物。」(以下、「甲2発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明における「焼結体混合物」は、精鉱と鉄鉱石とを混合して焼結したものであるから、本件発明1における「焼結鉱」に相当する。 (イ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「焼結鉱。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件発明1に係る「焼結鉱」において、「粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」「が3~13体積%の範囲である」のに対し、甲2発明に係る「焼結体混合物」において、上記気孔率PA(体積%)が3~13体積%の範囲であるのか不明である点。 <相違点2-2> 本件発明1に係る「焼結鉱」において、「気孔率PA(体積%)と、」「粒径が5mm以上の」「焼結鉱について、水を用いて液中秤量法により測定した見かけ密度、および、該焼結鉱を粉砕し粒径-250μmに篩った後煮沸法または真空吸引法により測定した真密度を用いて求めた気孔率PB(体積%)と、の比PA/PBが0.23以上であ」るのに対し、甲2発明に係る「焼結体混合物」において、上記比PA/PBが0.23以上であるのか不明である点。 イ 相違点についての判断 イ-1 相違点2-1について (ア)まず上記相違点2-1について検討すると、上記1-1(2)ア(ア)で述べたとおり、本件発明1に係る「焼結鉱」における「水銀圧入法で測定した気孔率PA」について、本件明細書の【0026】には、「(S12)得られた、粒径+1mm-2mmの焼結鉱をJIS R1655:2003に準拠して、水銀圧入法による気孔径分布を測定し、気孔径3.6nm~200μmの累積気孔体積から気孔率PA(S13)および平均気孔径dA(S14)を求める。」と記載されているから、水銀圧入法が開気孔率を求めるものであるとの技術常識(甲3の図1参照)を踏まえると、上記「気孔率PA」は気孔径200μm以下の開気孔を対象とするものであると解される。 (イ)一方、甲2発明に係る「焼結体混合物」において、開気孔率は約17.5%であり、そのうち、>200μmの比率は約52%であるから、≦200μmの比率は約48%であり、全気孔率に占める比率は約8.4%(=17.5%×48/100)と計算される。ここで、気孔率が「体積」を基準とするものであることは技術常識に照らして明らかであるから、上記「約8.4%」が「約8.4体積%」を意味することは明らかである。 (ウ)そして、甲3の図1によれば、水銀圧入法により測定可能な気孔径の下限は3nm程度であり、下限近傍の気孔径における体積率は極めて低いから、甲2発明に係る「焼結体混合物」における「気孔径3.6nm~200μmの累積気孔体積」も「約8.4体積%」であると認められる。 (エ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「気孔径3.6nm~200μmの累積気孔体積から」求まる開気孔率が「3~13体積%の範囲である」点で共通するものの、前者の開気孔率は「粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した」ものであるのに対し、後者の開気孔率は「3Dトモグラフィーを使用して得られた」ものである点で依然として相違する。 (オ)上記(エ)の点について、申立人は、特許異議申立書において以下のとおり主張している。 「甲2発明a(当審注:甲2発明と同様に、表1の焼結体サンプル4を認定の基礎としたもの。)の開気孔の気孔率はトモグラフィー法で求めた気孔率であるのに対し、本件特許発明1では水銀圧入法で測定した気孔率である点で相違する。しかし、測定方法の違いによって気孔率が大きく異なることはない。よって、甲2発明aの「トモグラフィー法で求めた200μm以下の開気孔の気孔率」と、本件特許発明1の「気孔率PA」は実質的に相違しない。」(第40ページ下から5行目~第41ページ1行目) (カ)そこで、上記(オ)の主張について検討すると、甲2発明における3Dトモグラフィーの使用前に、「粒径が5mm以上の」焼結体混合物「を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕した」のか不明である点はさておくとしても、上記(1)ア(サ)に摘記した図5に示されるように、同じ塩基度(CaO/SiO2):1.4の焼結物から開気孔率のデータを得たにもかかわらず、3Dトモグラフィー(約17.5%)と水銀試験(約10.4%)とでは数値が大きく異なるから、「測定方法の違いによって気孔率が大きく異なることはない」とは認められない。 (キ)したがって、上記(オ)の主張は前提において誤っており採用することはできず、甲2発明に係る「焼結体混合物」において、上記相違点2-1に係る「水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」が「3~13体積%の範囲である」かは不明であるというほかないから、上記相違点2-1は実質的な相違点であるといえる。 イ-2 相違点2-2について (ア)次に上記相違点2-2について検討すると、申立人は、特許異議申立書において、「上述の通リ本件特許発明1の気孔率PBは焼結鉱の全気孔率を意味するので、甲2発明aと本件特許発明1とはいずれも全気孔率である点で共通する」(第41ページ第2行目~第4行目)ことを前提に、上記相違点2-2は実質的な相違点ではない旨を主張している。 (イ)そこで、上記(ア)の主張について検討すると、上記1-1(2)イのイ-2(ウ)で検討したのと同様の理由により、「本件特許発明1の気孔率PBは焼結鉱の全気孔率を意味する」とは認められない。 (ウ)したがって、上記(ア)の主張は前提において誤っており採用することはできず、甲2発明に係る「焼結体混合物」において、上記相違点2-2に係る「比PA/PBが0.23以上であ」るかは不明であるというほかないから、上記相違点2-2は実質的な相違点であるといえる。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明であるとはいえないから、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (3)申立理由1-2のまとめ したがって、申立理由1-2によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 1-3 申立理由1-3 (1)甲5の記載事項及び甲5に記載された発明 ア 甲5の記載事項 甲5には、「焼結鉱の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (ア)「【要約】 【課題】希釈した気体燃料を供給することで、装入層全体の通気性を悪化させることなく、高強度の焼結鉱を高歩留で製造することのできる技術を提案する。 【解決手段】前記擬似粒子表面に石灰石副原料と凝結材の外層を形成した擬似粒子を得る造粒工程と、前記外層を保有した擬似粒子原料を、循環移動するパレット上に装入して、当該パレット上に前記外層を保有した擬似粒子原料の装入層を形成する装入工程と、装入層表面の炭材に点火炉を使って点火する点火工程と、気体燃料を装入層上方の空気中に供給して希釈して希釈気体燃料とし、該希釈気体燃料及び空気を前記パレット下に配置されたウインドボックスの吸引力により、上記希釈気体燃料を装入層内に吸引し、当該希釈気体燃料を焼結層内において燃焼させると同時に、装入層内に吸引した空気により、該装入層内の炭材を燃焼させることにより、焼結ケーキを生成させる気体燃料燃焼工程とを有する。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、下方吸引のドワイトロイド式焼結機を用いて高炉用焼結鉱を製造する際に用いる焼結用原料の製造方法に関するものである。より詳しくは、焼結原料中の石灰石原料と凝結材を焼結原料の造粒時擬似粒子の外層となるように造粒した擬似粒子化原料を使用して被還元性を高める焼結鉱を高強度化することができる焼結鉱の製造方法に関するものである。」 (ウ)「【0053】 本発明において、第1の気体燃料供給装置15Aによって装入層中に供給する気体燃料としては、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉ガスとコークス炉ガスとの混合ガス(Mガス)、都市ガス、天然ガス(LNG)またはメタン、エタン、プロパン、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガスのいずれかを用いることができる。本発明では、これらの気体燃料のいずれかを空気中に高速で吐出し、空気と混合させて希釈気体燃料とし、装入層中に供給(導入)する。」 (エ)「【0094】 次に、表10は、Cガス、LNG、Bガス中に燃焼成分として含まれる水素、CO、メタン、エタン、プロパンの含有量と発熱量を示したものである。 【0095】 【表10】 [図:0001420344000037.jpg] 」 (オ)「【0143】 図49は、プロパンガスの吹き込み有無による、成品焼結鉱の見掛け比重の変化を、また、図50は、プロパンガスの吹き込み有無による、水銀圧入式ポロシメーターによる0.5mm以下の気孔径分布の変化を測定した結果を示すものである。図49より、希釈されたプロパンガスの吹込みにより、見掛け比重が大きくなっていることがわかる。これは、プロパンガス吹込みにより、造粒粒子の外側からも加熱される結果、融液の流動が促進されて、0.5mm以上の気孔率が低下するためと考えられ、その結果、冷間強度が向上する。また、図50より、投入熱量一定として希釈プロパンガスを吹き込むことにより、0.5mm以下の気孔径の割合が増加していることがわかる。これは、焼結原料としての擬似粒子表面に石灰石副原料と凝結材の外層を形成した擬似粒子中の熱源が減少することで、被還元性に影響を及ぼす鉱石由来の500μm以下の微細気孔が残留しやすくなったためであり、その結果、高被還元性焼結鉱の製造が可能となる。」 (カ)「【実施例3】 【0150】 図27に示す試験鍋を用いて、表16に示したように、粉コークスの含有量(外数)を4.9mass%と4.8mass%の2水準に変化させた焼結原料からなる装入層中に、鍋の上方から、クーラー排ガスで濃度を1.0vol%と2.0vol%(対空気)の2水準に希釈したコークス炉ガス(Cガス)を吹き込み、焼結鍋試験(No.2~7)を行った。また、比較例として、粉コークスの含有量(外数)を5.0mass%とし、希釈ガスを吹き込まない例(No.1)についても同様に焼結鍋試験を行った。なお、この実施例においては、試験鍋に装入した焼結原料は、全厚を600mmとし、その上層部の400mmには、上記粉コークスを含む焼結原料を積層し、その下層の200mmには返鉱を積層した。 【0151】 また、上記希釈したCガスの吹き込みは、燃焼・溶融帯の位置が装入層表面から100~200mm、200~300mm、300~400mmのそれぞれの位置にあるときに、吸引圧力1200mmH2O(差圧1000mmH2O)で装入層中に導入した。なお、上記希釈Cガスの吹込み位置は、DL焼結機の全長を80mとしたとき、吹込み位置100~200mmの場合は、80(m)×100~200/600(mm)=13.3~26.6(m)の位置、つまり、パレット進行方向に向かって、パレットの移動起点から13.3~26.6mの間に、長さ13.3mの気体燃料供給装置を設置して希釈気体燃料を吹き込み、焼結操業を行った例に相当する。同様に、吹込み位置200~300mmの場合は、パレットの移動起点から26.6~39.9mの位置に、長さが13.3mの気体燃料供給装置を設置して焼結操業を行った例に、吹込み位置300~400mmの場合は、パレットの移動起点から39.9~53.2mの位置に、長さが13.3mの気体燃料供給装置を設置して焼結操業を行った例に相当する。 【0152】 【表16】 [図:0001420344000038.jpg] 【0153】 表17は、上記焼結鍋試験の結果を示すものである。この結果から、気体燃料を吹き込まない比較例のNo.1に比べ、気体燃料を吹き込む本発明例のNo.2~No.7は、いずれも焼結鉱の冷間強度(SI強度)や歩留りが向上しており、とくに、気体燃料の吹込み位置が装入層の中段以降であるNo.3、4、6、7の例において改善が著しいことがわかる。また、コークス量を4.9mass%とし、Cガス濃度を1vol%とした条件において、生産率が最も高くなることがわかった。また、焼結鉱の品質に及ぼす希釈気体燃料の吹き込み(供給)位置の影響については、還元率(RI)、還元粉化率(RDI)ともに、燃焼・溶融帯の位置が装入層表面から200~300mmの中段位置にある時に気体燃料の供給を行うことが最も効果的であることがわかった。 【0154】 【表17】 [図:0001420344000039.jpg] 」 イ 甲5に記載された発明 上記ア(ア)~(カ)に摘記した甲5の記載事項を総合勘案し、特に実施例3の実施No.2に着目すると、甲5には、次の発明が記載されていると認められる。 「原料配合割合がmass%で、Yandi(-8mm):33.76%、Carajas(-8mm):33.76%、珪石(-1mm):2.24%、生石灰:1.52%、石灰石(-3mm):8.72%、返鉱:20.00%、コークス(-3mm):4.9%(ただし、コークスの割合は外数である。)の焼結原料からなる装入層中に、鍋の上方から、クーラー排ガスで濃度を1.0vol%(対空気)に希釈したコークス炉ガス(Cガス)を吹き込み、焼結を行って製造された焼結鉱。」(以下、「甲5発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明とを対比すると、両者は、 「焼結鉱。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点5-1> 「焼結鉱」について、本件発明1では「粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」「が3~13体積%の範囲である」のに対し、甲5発明では上記気孔率PA(体積%)が3~13体積%の範囲であるのか不明である点。 <相違点5-2> 「焼結鉱」について、本件発明1では「気孔率PA(体積%)と、」「粒径が5mm以上の」「焼結鉱について、水を用いて液中秤量法により測定した見かけ密度、および、該焼結鉱を粉砕し粒径-250μmに篩った後煮沸法または真空吸引法により測定した真密度を用いて求めた気孔率PB(体積%)と、の比PA/PBが0.23以上であ」るのに対し、甲5発明では上記比PA/PBが0.23以上であるのか不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア)上記相違点5-1、5-2について、申立人は、特許異議申立書において以下のとおり主張している。 「しかし、甲5発明(当審注:上記(1)ア(カ)に摘記した実施例3の実施No.2~7をひとまとめにして認定の基礎としたもの。)は、以下に説明する通り、本件特許発明1の製造方法として本件特許明細書の段落0039、0040に記載の方法と共通する方法により製造された焼結鉱である。 まず本件特許発明1は、本件特許明細書の段落0039に「焼結鉱の製造は、常法が適用できる。なかでも、結晶水が4質量%以上の鉱石を配合して、焼結過程で結晶水を蒸発させると、焼結鉱に微細な気孔を生成することができ、ミクロ気孔率PAを高めることができるので好ましい。」と記載されている。また、本件特許の特許請求の範囲の請求項5にも「請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結鉱を製造する方法であって、結晶水含有量が4質量%以上の鉱石を含む原料を用いる、焼結鉱の製造方法。」と記載されている。よって、本件特許発明1は、結晶水含有量が4質量%以上の鉱石を含む原料を用いて製造される。 一方、甲5発明について、まず対応する甲第5号証の表16に記載されるNo.2~7の実施例は、通常の方法で製造された焼結鉱であると解されるので、その点において本件特許発明1の製造方法と共通する。また、甲5発明のYandi鉱は、例えば甲第6号証の表1に記載されるように、LOIが9.6%である。そして、LOIは、例えば甲第7号証に「〔LOI〕:結晶水含有量」(請求項2)、「鉄鉱石の結晶水含水率(LOI)」(段落0020)と記載されるように、結晶水含有量に対応する。したがって、Yandi鉱は結晶水含有量を4%以上含む鉱石である。よって、甲5発明の「Yandi鉱を含む原料を用い」る点は、本件特許発明1が、結晶水含有量が4質量%以上の鉱石を含む原料を用いて製造される点とも共通する。 次に、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落0040に「焼結用燃料として、気体燃料を吹き込むことで、……好ましい。ここで、気体燃料は、水素ガス、高炉ガス、コークス炉ガス、……のうちから選ばれるいずれかの可燃性ガスであることが好ましい。」と記載されている。よって、本件特許発明1は、焼結用燃料として気体燃料であるコークス炉ガスなどのガスを吹き込んで製造される。一方、甲5発明も、焼結用燃料として気体燃料であるコークス炉ガスを吹き込んで製造される。よって、甲5発明の「焼結用燃料として気体燃料であるコークス炉ガスを吹き込んで製造」する点は、本件特許発明1の製造方法と共通する。 以上の通り、甲5発明の焼結鉱は、本件特許発明1の製造方法と共通する方法で製造された焼結鉱であるので、本件特許発明1の焼結鉱と同様の構成を備える焼結鉱であると解される。よって、本件特許発明1は甲5発明に対して新規性がない。」(第41ページ下から3行目~第43ページ1行目) (イ)そこで、上記(ア)の主張について検討すると、「Yandi鉱」を冠する鉱石であれば、Yandi鉱山のどの場所から採鉱されたものであっても常に同じ成分を示すとの技術常識は存在せず、甲5に記載のYandi鉱と甲6に記載のYandi鉱とが同一のものであることを示す根拠も見いだせないから、たとえ甲6に記載のYandi鉱のLOIが9.6%であったとしても、甲5発明に係る「焼結鉱」の原料に含まれる「Yandi(-8mm)」のLOIも9.6%であるかは不明であるというほかない。 (ウ)したがって、上記(ア)の主張は前提において誤っている。仮にこの点はさておくとしても、本件明細書の【0039】に「焼結鉱の製造は、常法が適用できる。なかでも、結晶水が4質量%以上の鉱石を配合して、焼結過程で結晶水を蒸発させると、焼結鉱に微細な気孔を生成することができ、ミクロ気孔率PAを高めることができるので好ましい。」と記載されていれば、「結晶水が4質量%以上の鉱石」が原料に占める割合によって焼結鉱のミクロ気孔率PAは変化すると理解するのが自然である。そうすると、仮に甲5発明に係る「焼結鉱」が本件発明1に係る「焼結鉱」と同一の製造方法によって得られたものであったとしても、上記割合を考慮することなく、甲5発明に係る「焼結鉱」の原料に「結晶水が4質量%以上の鉱石」が配合されていることのみをもって、両者の「焼結鉱のミクロ気孔率PA」が同じとなるとはいえない。 (エ)また、上記(1)ア(カ)に摘記した【表16】には、「Yandi(-8mm)」以外の原料配合割合や吹込みガスの種類以外のガス吹込み条件も記載されており、これらも少なからず焼結鉱の気孔構造に影響を及ぼすと考えられるから、本件明細書の【0039】及び【0040】の記載を考慮したとしても、「「Yandi鉱を含む原料を用い」る点」及び「「焼結用燃料として気体燃料であるコークス炉ガスを吹き込んで製造」する点」さえ満たす焼結鉱であれば、「本件特許発明1の製造方法と共通する方法で製造された焼結鉱であるので、本件特許発明1の焼結鉱と同様の構成を備える焼結鉱である」と解することはできない。 (オ)したがって、上記(ア)の主張を採用することはできないから、上記相違点5-1、5-2はいずれも実質的な相違点であるといえる。 (カ)よって、本件発明1は、甲5発明であるとはいえない。 (キ)なお、申立人は、特許異議申立書において以下のとおり主張している。 「なお、仮に甲5発明の焼結鉱が本件特許発明1に該当しない場合、本件特許明細書に記載されている製造方法では本件特許発明1の焼結鉱が得られないということになる。すなわち、本件特許明細書の製造方法の記載に基づいて焼結鉱を製造しても、本件特許発明1の特徴部分の構成を有した焼結鉱を得ることができないということになる。その場合は、本件特許発明1の「比PA/PBが0.23以上」で、「気孔率PAが3~13体積%の範囲」である焼結鉱を得るために、本件特許明細書に記載のない様々な条件を設定・変更して不相当に多くの試行錯誤をしなければならず、本件特許明細書の発明の詳細な説明はいわゆる実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満たさないものとなる。」(第43ページ第2行~第10行) (ク)そこで、上記(キ)の主張について念のため検討すると、本件明細書には、次の記載がある。 a 「【0031】 (実施例) 各種の原料を表1の成分組成の範囲で配合し、各種操業条件で製造した焼結鉱を実機焼結機のサンプラーから採取した。・・・ 【0032】 【表1】 [図:0001420344000040.jpg] 」 b 「焼結鉱の製造は、常法が適用できる。なかでも、結晶水が4質量%以上の鉱石を配合して、焼結過程で結晶水を蒸発させると、焼結鉱に微細な気孔を生成することができ、ミクロ気孔率PAを高めることができるので好ましい。」(【0039】) c 「さらに、焼結用燃料として、気体燃料を吹き込むことで、焼結過程で融液量を増加させ、マクロ気孔率PBを減少させ、かつ、微細気孔を確保できるので好ましい。ここで、気体燃料は、水素ガス、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガスおよびそれらの混合ガスのうちから選ばれるいずれかの可燃性ガスであることが好ましい。」(【0040】) (ケ)本件明細書には、「焼結鉱の製造は、常法が適用できる」ことが記載され、また、「本件特許発明1の「比PA/PBが0.23以上」で、「気孔率PAが3~13体積%の範囲」である焼結鉱を得るため」の主な条件として、上記(ク)a~cの条件が記載されているから、「常法」を前提として、これらの条件を最適化する等により、本件発明1に係る「焼結鉱」を得ることができるといえる。そして、本件発明1に係る「焼結鉱を」得るために多少の試行錯誤は必要であるとしても、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるとは認められない。 (コ)したがって、本件発明1について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ、特許法第36条第4項第1号に適合するものである。 (サ)以上のとおり、「甲5発明の焼結鉱が本件特許発明1に該当しない」からといって、「実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満たさないものとなる」とはいえないから、上記(キ)の主張を採用することはできない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲5発明であるとはいえないから、本件発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえない。 (3)申立理由1-3のまとめ したがって、申立理由1-3によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 1-4 申立理由1のまとめ よって、本件発明1、2、5は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(進歩性) 2-1 申立理由2-1 (1)甲1に記載された発明 上記1の1-1(1)ア(ア)~(キ)に摘記した甲1の記載事項を総合勘案し、特に実施例のNo.2に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「全気孔率(31.2%)に対する気孔径が100μm以下である微細気孔率(14.0%)の割合が0.45の組織を有する焼結鉱であって、 前記全気孔率は、試料を45μm以下に粉砕したHeガス置換法で測定した真密度と、試料の表面をパラフィンでコーティングして試料内部への液体の浸透を防止し、アルキメデス法で測定した見掛け密度とから算出したものであり、 前記微細気孔率は、水銀圧入式ポロシメータで測定したものである焼結鉱。」(以下、「甲1発明2」という。) (2)本件発明1について (2-1)甲1発明2との対比、判断について ア 対比 本件発明1と甲1発明2とを対比すると、上記1の1-1(2)アと同様に、両者は、 「焼結鉱。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-3> 「焼結鉱」において、本件発明1では「粒径が5mm以上の焼結鉱を平均粒径が1~2mmの範囲となるように粉砕したのち水銀圧入法で測定した気孔率PA(体積%)」「が3~13体積%の範囲である」のに対し、甲1発明2では上記気孔率PA(体積%)が3~13体積%の範囲であるのか不明である点。 <相違点1-4> 「焼結鉱」において、本件発明1では「気孔率PA(体積%)と、」「粒径が5mm以上の」「焼結鉱について、水を用いて液中秤量法により測定した見かけ密度、および、該焼結鉱を粉砕し粒径-250μmに篩った後煮沸法または真空吸引法により測定した真密度を用いて求めた気孔率PB(体積%)と、の比PA/PBが0.23以上であ」るのに対し、甲1発明2では上記比PA/PBが0.23以上であるのか不明である点。 イ 相違点についての判断 イ-1 相違点1-3について (ア)まず上記相違点1-3について検討すると、申立人は、特許異議申立書において、本件発明1と甲1発明2とでは、「気孔率PA」の数値が「3~13体積%」であるか「14.0%」であるかの点でのみ相違することを前提に、「甲1発明b(当審注:上記1の1-1(1)ア(キ)に摘記した実施例のNo.2、3、5、7をひとまとめにして認定の基礎としたもの。)において「気孔率PAが3~13%」とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮により数値範囲を最適化したに過ぎない。よって、本件特許発明1は、甲1発明bに基づき当業者が容易に発明することができたものである。」(第40ページ第15行~第18行)と主張している。 (イ)そこで、上記(ア)の主張について検討すると、上記1の1-1(1)ア(イ)に摘記した【0012】によれば、甲1に記載された発明は、「被還元性に優れた」「焼結鉱を提供することを目的とする」ものであるところ、上記1の1-1(1)ア(カ)に摘記した【0043】によれば、「焼結鉱が、全気孔率に対する100μm以下の微細気孔の微細気孔率の割合(焼結鉱における気孔径が100μm以下の微細気孔率/全気孔率)を示す微細気孔比率が0.42以上の組織を有することにより、落下強度(SI)を低下させずに、被還元性(RI)を向上できる」のであるから、甲1発明2において、「微細気孔率」を高くする動機付けはあるとはいえても、低くすることには阻害要因があるというべきである。 (ウ)したがって、甲1発明2における「微細気孔率」が本件発明1における「気孔率PA」に相当すると仮定しても、甲1発明2において「「気孔率PAが3~13%」とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮により数値範囲を最適化したに過ぎない」とは認められず、上記(ア)の主張を採用することはできないから、甲1発明2において、上記相違点1-3に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 (エ)以上によれば、甲1発明2において、上記相違点1-3に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 イ-2 相違点1-4について (ア)次に上記相違点1-4について検討すると、上記1の1-1(2)イのイ-2(イ)aに摘記した本件明細書の【0012】には、「還元性の向上および低還元粉化性を両立させるためには、マクロからミクロまでの気孔率やその気孔構造を制御する必要がある。」と記載されているところ、焼結鉱において「マクロからミクロまでの気孔率やその気孔構造を制御する」点について、甲1には記載も示唆もされていない。 (イ)したがって、甲1発明2において、上記相違点1-4に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)また、甲5、8、9にも、焼結鉱において「マクロからミクロまでの気孔率やその気孔構造を制御する」点は記載も示唆もされていないから、甲5、8、9に記載された事項を参酌しても、上記(イ)の判断に変わりはない。 (エ)以上によれば、甲1発明2において、上記相違点1-4に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明2及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-2)甲1発明1との対比、判断について ア 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、両者は少なくとも上記1の1-1(2)ア(エ)に示した相違点1-2で相違するところ、上記相違点1-2は、上記(2-1)アに示した相違点1-4と実質的に同じであるから、上記(2-1)イのイ-2で検討したのと同様の理由により、甲5、8、9に記載された事項を参酌しても、甲1発明1において、上記相違点1-2に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 イ 以上によれば、甲1発明1において、上記相違点1-2に係る発明特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ したがって、上記1の1-1(2)ア(エ)に示した相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない (2-3)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由2-1のまとめ したがって、申立理由2-1によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 2-2 申立理由2-2 (1)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記2-1(2)(2-3)のとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3も同様に、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないところ、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)申立理由2-2のまとめ したがって、申立理由2-2によっては、本件特許の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。 2-3 申立理由2-3 (1)本件発明4、8について 本件発明4、8は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記2-1(2)(2-3)のとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明4、8も同様に、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないところ、本件発明4、8は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲9に記載された事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)申立理由2-3のまとめ したがって、申立理由2-3によっては、本件特許の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 2-4 申立理由2-4 (1)本件発明6、7について ア 対比 本件発明6、7は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記2-1(2)(2-3)のとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明6、7も同様に、甲1に記載された発明及び甲5、8、9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないところ、本件発明6、7は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)申立理由2-4のまとめ したがって、申立理由2-4によっては、本件特許の請求項6、7に係る特許を取り消すことはできない。 2-5 申立理由2のまとめ よって、本件発明1、3、4、6~8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、本件特許の請求項1、3、4、6~8に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許異議の申立ての理由のいずれによっても取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700868

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