特許異議申立
2024-700560
生物源シリカの特性を制御する方法
- 審判番号
- 2024-700560
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-513268
- 登録番号
- 7407172
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2025年11月26日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キルト エルエルシー
- 【権利者代理人】弁理士法人浅村特許事務所
- 【異議申立人】合同会社 アイテクト
- 【異議申立人代理人】江口 基
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 塩谷 領大
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B) / P1651.853-YAA(C01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7407172号発明「生物源シリカの特性を制御する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7407172号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕、21、22について訂正することを認める。
特許第7407172号の請求項1~11、14~17、20~22に係る特許を維持する。
特許第7407172号の請求項12、13、18、19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7407172号の請求項1~22に係る特許についての出願(以下、「本件特許出願」という。)は、2019年(令和1年)8月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年9月5日(US)アメリカ合衆国、2019年4月5日(US)アメリカ合衆国、同年8月23日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和5年12月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件請求項1~22に係る特許に対して、令和6年6月12日に特許異議申立人合同会社アイテクト(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。その後の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 7月 5日 手続補正書の提出(申立人)
令和7年 3月19日付 取消理由通知
同年 6月 2日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 6月18日 手続補正書(2通)の提出(特許権者)
同年 7月 9日付 訂正拒絶理由通知
同年 8月27日 手続補正書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月17日 手続補正書の提出(特許権者)
なお、令和7年9月25日付けで通知書(訂正請求があった旨の通知)を申立人に送付したが、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求書の補正及びその適否
(1) 令和7年6月18日提出の手続補正書による補正について
令和7年6月18日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正1」という。)の内容は、令和7年6月2日提出の訂正請求書を、特許法施行規則様式第29の2備考15に規定された様式に適合するように補正するものであるから、本件補正1は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、本件補正1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正1を認める。
(2) 令和7年8月27日提出の手続補正書による補正について
令和7年8月27日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正2」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項1に「特定の狭い範囲内に制御された表面積」とあるのを「特定の狭い範囲内に制御されたBET表面積分析装置によって測定された表面積」に訂正する訂正事項、同請求項9に「表面積」とあるのを「BET表面積分析装置によって測定された表面積」に訂正する訂正事項、同請求項10に「0.50cc/g」とあるのを「BET表面積分析装置によって測定された0.50cc/g」に訂正する訂正事項、同請求項11に「0.40cc/g」とあるのを「BET表面積分析装置によって測定された0.40cc/g」に訂正する訂正事項、同請求項21に「特定の狭い範囲内に制御された表面積」とあるのを「特定の狭い範囲内に制御されたBET表面積分析装置によって測定された表面積」に訂正する訂正事項、及び同請求項21に「前記アモルファスシリカの表面積」とあるのを「前記アモルファスシリカのBET表面積分析装置によって測定された表面積」に訂正する訂正事項を削除するものであるから、本件補正2は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、本件補正2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正2を認める。
2 訂正の内容
令和7年6月18日提出の手続補正書、及び令和7年8月27日提出の手続補正書により補正された、令和7年6月2日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~20〕、請求項21、及び請求項22を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「少なくとも1つのフラックス剤を含有し、」と記載されているのを、
「少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~11、14~17、20も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量及び/又は熱処理温度が、制御され、それにより、10m2/gおよび450m2/gの範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し、
しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の前記量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御される」と記載されているのを、
「しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~11、14~17、20も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記アモルファスシリカの表面積が、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および/または熱処理温度を制御することにより、30m2/gおよび400m2/gの範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される」と記載されているのを、
「前記アモルファスシリカの表面積が、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度を制御することにより、最小表面積30m2/gおよび最大表面積400m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される」に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および/または熱処理温度を制御すること」と記載されているのを、
「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度を制御すること」に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に、
「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および/または熱処理温度を制御すること」と記載されているのを、
「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度を制御すること」に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項18を削除する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項19を削除する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項21に
「少なくとも1つのフラックス剤を含有し、」と記載されているのを、
「少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、」に訂正する。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項21に
「しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量及び/又は熱処理温度が、制御され、それにより、10m2/gおよび450m2/gの範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し」と記載されているのを、
「しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し」に訂正する。
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項22に
「少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質の量を制御することであって、」と記載されているのを、
「少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質の量を制御することであって、前記少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなり、」に訂正する。
3 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、願書に添付された明細書(以下、明細書、特許請求の範囲、又は図面をそれぞれ「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」といい、まとめて「本件特許明細書等」という。)の【0012】及び【0017】の記載に基づき、請求項1に記載された「少なくとも1つのフラックス剤」を「リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」「少なくとも1つのフラックス剤」に限定するものであるから、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1における「少なくとも1つのフラックス剤の量」及び/又は「熱処理温度」という選択肢を、「少なくとも1つのフラックス剤の量」及び「熱処理温度」に限定し、また、語順を入れ替えて、「少なくとも1つのフラックス剤の量」を制御することを明確にし、さらに、「10m2/gおよび450m2/gの範囲」について、「最小表面積」、「最大表面積」、「定義された」を挿入して、下限値及び上限値を明らかにすると共に、当該範囲を明確にするものであるから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」、及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項2によって新たな技術的事項が導入されるものでないから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項9の記載を、訂正事項2によって訂正された請求項1の記載に整合するための訂正であるから、訂正事項3は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、請求項10における「少なくとも1つのフラックス剤の量および/または熱処理温度」という選択肢を、「少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度」に限定するものであるから、訂正事項4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5は、請求項11の記載を、訂正事項4によって訂正された請求項10の記載に整合するための訂正であるから、訂正事項5は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6) 訂正事項6~9について
訂正事項6~9は、それぞれ、請求項12、13、18、19を削除するものであるから、訂正事項6~9は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7) 訂正事項10について
訂正事項10は、本件特許明細書の【0012】及び【0017】の記載に基づき、請求項21に記載された「少なくとも1つのフラックス剤」を「リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」「少なくとも1つのフラックス剤」に限定するものであるから、訂正事項10は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8) 訂正事項11について
訂正事項11は、請求項21における「少なくとも1つのフラックス剤の量」及び/又は「熱処理温度」という選択肢を、「少なくとも1つのフラックス剤の量」及び「熱処理温度」に限定し、また、本件特許明細書の【0012】及び【0021】の記載に基づき、「珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量」の制御方法を限定し、さらに、「10m2/gおよび450m2/gの範囲」について、「最小表面積」、「最大表面積」、「定義された」を挿入して、下限値及び上限値を明らかにすると共に、当該範囲を明確にするものであるから、訂正事項11は、「特許請求の範囲の減縮」、及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項11によって新たな技術的事項が導入されるものでないから、訂正事項11は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9) 訂正事項12について
訂正事項12は、本件特許明細書の【0017】の記載に基づき、請求項22に記載された「少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質」を「リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」「少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質」に限定するものであるから、訂正事項12は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕、21、22について訂正することを認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件訂正後の請求項1~11、14~17、20~22に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11、14~17、20~22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理する工程、
しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する、前記の方法。
【請求項2】
前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量が、前記珪質植物中のキレート剤の量を制御することによって操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キレート剤が、クエン酸、酢酸、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ジメルカプトコハク酸、トリメチルアミントリカルボン酸、アルファリポ酸、およびジエチレントリアミン五酢酸からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
キレート剤の量が、植物1kgあたり0.001kgから植物1kgあたり1kgまでである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
キレート剤がクエン酸であり、クエン酸の量が、植物1kgあたり0.01kgから植物1kgあたり0.1kgまでである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量が、前記珪質植物中に少なくとも1つの鉱酸を導入することによって制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの鉱酸が、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、および過塩素酸からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフラックス剤の前記量を20ppmから25,000ppmに制御することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アモルファスシリカの表面積が、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度を制御することにより、最小表面積30m2/gおよび最大表面積400m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アモルファスシリカの細孔容積が、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度を制御することによって、0.50cc/gおよび0.05cc/gの範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アモルファスシリカの細孔容積が、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量および熱処理温度を制御することにより、0.40cc/gおよび0.10cc/gの範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量が、300ppmおよび15,000ppmの範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水、鉱酸、キレート剤、およびpH調整化学物質のうちの少なくとも1つで、シリカを後洗浄することによって、熱処理されたシリカ中の前記少なくとも1つのフラックス剤の含有量が、10ppmおよび1,000ppmの範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
水、鉱酸、キレート剤、およびpH調整化学物質のうちの少なくとも1つで、シリカを後洗浄することによって、熱処理されたシリカ中の前記少なくとも1つのフラックス剤の含有量が、100ppmおよび500ppmの範囲内の特定の狭い範囲の中に制御される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱処理温度が200℃から1,000℃の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
(削除)
【請求項20】
前記アモルファスシリカ中の結晶構造の形成を妨げるために、少なくとも1つのフラックス剤の前記量及び熱処理温度が、制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理する工程、
しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し、
しかも、200℃から1,000℃の範囲の温度で前記珪質植物を熱処理する前に、前記少なくとも1つのフラックス剤が、前記アモルファスシリカに添加され、それによって、前記アモルファスシリカの表面積、細孔容積及び細孔径のうちの少なくとも1つを、目標仕様の範囲内に制御する、前記の方法。
【請求項22】
非珪質無機物を含む珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、以下の工程を含む、前記の方法:
a)キレート剤を含む水溶液に、前記珪質植物を浸漬することであって、前記キレート剤が、前記非珪質無機物の少なくとも一部を抽出する量で存在する;
b)前記珪質植物から水溶液を分離すること;
c)所望の量の予め選択された非珪質無機物質を珪質植物中に混合することによって、前記珪質植物中の少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質の量を制御することであって、前記少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなり、前記の少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質は、前記珪質植物に有益な特性を与えるために選択されたものである;及び
d)得られるシリカが多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理すること。」
第4 特許異議の申立てについて
1 申立ての理由の概要
申立人が主張する申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(新規性欠如)
ア 設定登録時の請求項1、6~9、14、17、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1、6~9、14、17、18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 設定登録時の請求項1、8、9、14、17、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1、8、9、14、17、18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
ウ 設定登録時の請求項1、6、9、17、18に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1、6、9、17、18係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1~20に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証、甲第2号証、又は甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~20係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 設定登録時の請求項21に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第1号証、甲第2号証、又は甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項21係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 設定登録時の請求項22に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3) 申立理由3(実施可能要件違反)
本件請求項1~22に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4) 申立理由4(サポート要件違反)
本件請求項1~22に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5) 申立理由5(明確性要件違反)
本件請求項1~22に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(6) 証拠方法一覧
甲第1号証 井上耕三ほか、「もみがら灰の加熱条件とその性状」、無機マテリアル、1996年、第3巻、第263号、第312~318ページ
甲第2号証 特開平11-323752号公報
甲第3号証 特表2009-522264号公報
甲第4号証 米国特許出願公開第2006/0222582号明細書
甲第5号証 梅田純子ほか、「農作物非食部バイオマスから高純度非晶質シリカの抽出プロセスとコンクリート用混和材としての利活用」、スマートプロセス学会誌、2014年、第3巻、第5号、第323~327ページ
甲第6号証 梅田純子ほか、「籾殻からの高純度非晶質シリカの生成プロセスに関する研究」、廃棄物学会研究発表会講演論文集、2007年
甲第7号証 国際公開第2008/053711号
甲第8号証 特表2003-529518号公報
なお、甲第8号証は、表面積及び細孔容積の測定方法の技術常識を示すために提示されたものである。
2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が特許権者に通知した、令和7年3月19日付けの取消理由は、概略、以下のとおりである。
(1) 取消理由1(新規性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証、又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 取消理由2(進歩性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証、又は甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3) 取消理由3(実施可能要件違反)
本件請求項12、13に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4) 取消理由4(サポート要件違反)
本件請求項1~22に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5) 取消理由5(明確性要件違反)
本件請求項1~21に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 甲号証の記載事項
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「もみがら灰の加熱条件とその性状」(タイトル)に関して、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様である。)。
ア 「1 緒言
もみがらを完全燃焼するとSiO2含有率約95wt%のもみがら灰がえられるが、その性状は燃焼方法によって大きく変化する1),2)。もみがら灰のシリカ成分は高い反応性を示すため、ケイ酸カルシウム材料、SiCおよびゼオライトなどのシリカ原料に適していることが報告されている3)~6)。もみがらをおだやかな条件下で灰化させると、もみがらの細胞構造がケイ酸質骨格として残るため比表面積の大きな反応性の高い無定型シリカがえられる7)。灰化温度が高くなるともみがら灰の比表面積が減少し、クリストバライトなどの結晶が生成する8),9)。もみがら灰をシリカ原料として用いる場合、反応性が高く、白色度も高いことがのぞましい。ここでは熱処理温度、時間および酸処理などの条件を変えてもみがら灰を調製し、その白色度、比表面積、吸水率およびアルカリ溶液への溶解速度ともみがら灰の加熱処理条件との関係を検討したので報告する。」(第312ページ左欄第1行~右欄第7行)
イ 「2 実験
2・1 もみがら灰の調製
もみがらは鳥栖市で採取したものを用いた。もみがら灰の調製としては、はじめに揮発成分をのぞくために磁製平底皿にもみがらを入れ、ドラフト内でガスバーナを用いて揮発成分がなくなるまで薬さじでかくはんしながら数分間熱処理を行い、炭化もみがらとした。各温度での熱処理は、炭化もみがらを箱型電気炉を用いて所定時間熱処理することにより行った。なお、600℃以上の熱処理には、炭化もみがらを500℃で2時間か焼成して残留炭素分をとばしたものを用いた。プラズマ処理もみがら灰は、プラズマ灰化装置(ヤマト科学MODEL PR-302)を用いて試料1gを酸素ガス流量100ml/min、300Wで6時間処理することにより調製した。酸処理は、もみがら灰2gを4NのHCl溶液50mlを入れたポリビンに投入し、90℃で所定時間静置処理することにより行った。比較に用いたシリカゲルは乾燥用(和光純薬)を粉砕した-125μmのもの、シリカガラスは、石英ガラス棒(東芝セラミックス)をエチルアルコール中で湿式粉砕した25-45μmのものを用いた。石英砂は試薬1級(片山化学)を用いた。その粒径は-45μmであった。」(第312ページ右欄第8行~第313ページ左欄第19行)
ウ 「3 結果と考察
3・1 熱処理による結晶化
揮発成分を除去した炭化もみがらを高温の炉に投入すると、残留炭素分の燃焼により試料が過熱することが観察された。また、急速に加熱すると炭素分がもみがら灰粒子の内部に未燃焼の状態で残存しやすい傾向がみとめられた。このため600℃以上の熱処理ではあらかじめ500℃で2時間、か焼成したもみがら灰を用いた。
もみがら灰の化学組成を表1に、また、熱処理したもみがら灰の粉末X線回折結果を図1に示す。
熱処理温度が700℃までは無定型のままであったが、800℃以上ではクリストバライトの生成がみとめられ、900℃になるとその回折線はいちじるしく高くなった。」(第313ページ左欄第28行~右欄第9行)
エ 「
[図:0001433052000001.jpg]
」(第313ページ)
(標題の当審訳:図1 種々の温度で熱処理したもみがら灰の粉末X線回折結果)
オ 「
[図:0001433052000002.jpg]
」(第313ページ)
(標題の当審訳:表1 もみがら灰の化学組成(wt%))
カ 「3・3 熱処理条件と表面特性および反応性
種々の温度で6時間熱処理したもみがら灰の比表面積の測定結果を表2に示す。
熱処理温度が高くなるとともに比表面積はいちじるしく小さくなった。プラズマ処理物は低温で灰化されているため大きな比表面積を示した。800℃以上ではクリストバライトへの結晶化および微細シリカの焼結が起こるために非常に小さな比表面積になった。」(第315ページ左欄第18~25行)
キ 「
[図:0001433052000003.jpg]
」(第315ページ)
(標題の当審訳:表2 種々の温度で熱処理したもみがらのB.E.T.比表面積)
ク 「4 まとめ
熱処理条件とえられたもみがら灰の結晶化、白色度、表面特性および反応性について検討を行った結果、以下のことが明らかになった。
1) 400~700℃の熱処理でえられる無定型もみがら灰のシリカ構造は、熱処理温度が高くなるとともにシリカガラスに類似したものになった。800℃以上ではクリストバライトへの結晶化が観察された。
2) 熱処理温度が高くなるとともにもみがら灰の白色度は大きくなったが、熱処理のみでは約90が上限であった。生もみがらおよびか焼成もみがら灰に対して酸による前処理を行うと、白色度は生もみがらを用いた場合は97、か焼成もみがら灰を用いた場合は93~95に向上した。
3) もみがら灰の吸湿率および比表面積は熱処理温度が高くなるとともに減少した。熱処理もみがら灰においては吸湿率と比表面積の間には直線関係がみとめられた。もみがら灰の細孔径分布のピーク細孔径は、シリカゲルの2nmに対し、4nmと大きかった。1N水酸化ナトリウム溶液に対する溶解速度は、熱処理温度が高くなるとともにいちじるしく低下した。溶解速度はもみがら灰の比表面積に比例しており、熱処理によるクリストバライトの生成は溶解速度にはほとんど影響をあたえなかった。」(第317ページ左欄第10行~右欄第11行)
(2) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「シリカ、セルロースおよびリグニン高含有素材の製造法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリカ、セルロースおよびリグニン高含有素材の製造法に関し、詳しくは木質系素材を爆砕または蒸煮処理し、必要に応じて灰化して得られるシリカ高含有素材の製造法に関する。」
イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、籾殻などの木質系素材からシリカ等の有用成分の含有率が高く、しかも比表面積の大きい素材を簡便に製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、木質系素材を爆砕または蒸煮処理することを特徴とするシリカ、セルロースおよびリグニン高含有素材の製造法である。請求項2記載の本発明は、木質系素材を爆砕または蒸煮処理した後、灰化することを特徴とするシリカ高含有素材の製造法である。請求項3記載の本発明は、木質系素材が、籾殻、稲藁、バガスおよび鋸屑のいずれかである請求項1または2記載の方法である。請求項4記載の本発明は、爆砕または蒸煮処理時に、水素イオン濃度10-6~10-1mol・dm-3の酸溶液または緩衝液を加えることを特徴とする請求項1または2記載の方法である。」
ウ 「【0014】また、灰化は、特に制限されず、適当な燃焼装置を用いて行うことができる。例えば、550~900℃、好ましくは600~700℃程度の温度で燃焼できる装置であれば、どのような装置でもよい。燃焼温度が900℃を超えると、非晶質のシリカにクリストバライト化が起こり、長時間燃焼させると灰化物の比表面積が低下するため好ましくない。一方、燃焼温度が550℃未満では、良好な物性を持つ灰化物が得られない。灰化することにより、素材処理物はシリカ含有量がさらに増す上に、比表面積が増大し、白色化するので、セラミック用原料、セメント用原料、製紙用サイズ剤、食品用濾過助剤など様々な用途に供することができる。」
エ 「【0016】
【実施例】以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1(爆砕処理)
未粉砕の籾殻100gを、爆砕装置(月島製作所製)の反応釜(耐圧40kg/cm2、容量2L)に入れ、ゲージ圧15kg/cm2で15分間処理した後、瞬時に常圧に戻すことによって爆砕した。続いて、スラリー状の爆砕物をステンレスメッシュ(0.5mm)の篩にて分別した。その後、固形分を減圧乾燥して灰分28.1%の籾殻処理物を得た。
【0017】該処理物は、茶褐色を呈し、繊維状に粉砕されていた。この処理物中のリグニン量は該処理物300mgを72%硫酸4.5mlで磨砕後、8%硫酸になるように加水し、100℃で2時間加水分解して得た残渣から灰分を差し引いたものとして算出した。また、ペントザン量を、オルシノール塩酸法(オルシン-塩化第二鉄-塩酸法、W.R.Fernell, H.K.King; Analyst, vol.78, p.80, 1953)により測定した。すなわち、硫酸加水分解時の濾過液またはその希釈液1mlにオルシノール試薬(組成:0.075% FeCl3・6H2O,0.2%オルシノール30%塩酸溶液)3mlを加え、煮沸水浴中にて20分間反応させた。煮沸後すぐに水冷し、発色した反応液を吸光度660nmの吸収極大にて比色定量し、ペントザン量を算出した。
【0018】硫酸加水分解によって得た可溶化溶液中の単糖を高性能陰イオン交換クロマトグラフィーにて分析し、残渣の構成糖を求めた。さらに、乾燥した処理物を、るつぼ中で400℃で1時間炭化し、繊維状の燻炭を得た。続いて、600℃のマッフルにて2時間灰化し、白色のシリカ高含有灰化物を得た。この灰化物の色彩を未粉砕のまま色差計(Σ90、日本電色製)にて測定した。また、灰化物の化学成分分析は、耐火粘土分析方法(JIS M8854)に従って分析用試料を調製し、各元素を高周波プラズマ発光分光分析装置(SPS4000型、セイコー電子製)で分析した。さらに、比表面積を比表面積装置(「モノソーブ」、湯浅アイオニクス製)にて測定した。結果を第1表~第5表に示す。
・・・
【0021】
【表3】
[図:0001433052000004.jpg]
【0022】
【表4】
[図:0001433052000005.jpg]
」
(3) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「生物起源のシリカ材料を含む歯磨剤」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている
ア 「【0001】
発明の分野
本発明は、独自の研磨性生物起源シリカ材料を含む独自の歯磨剤に関する。そのような組成物は、単独でも又は他の種類の研磨剤と組み合わせてもすぐれた研磨特性を示す。そのような組合せにおいては(一例として沈降シリカ材料との)、高い被膜(ペリクル)清掃性と穏やかな象牙質研磨レベルが同時に可能であるので、そのような生物起源シリカ添加剤がたとえ少量でも、歯磨剤の研磨性を低減しつつ効果的に歯表面を清掃する歯磨剤をユーザーに提供することができる。そのような生物起源シリカ粒子は、このように驚くほど有益な性質を歯磨剤組成物において提供する。本発明に包含されるのは、歯磨剤におけるそのような生物起源シリカ製品の、主たる研磨剤成分としての又はいずれかその他の種類の常用研磨材料と組み合わせての利用法である。」
イ 「【0018】
好適な生物起源シリカ材料は、米国特許第6,406,678号に見られるように籾殻から誘導される。そのようなシリカ製品の製造法は該特許に十分記載されており、該特許はその範囲で引用によって本明細書に援用する。そのような製造法の記載自体は、該引用文献に提供されているように次の通りである。
【0019】
籾殻に含有されるシリカの量は、それが育った地理的地域、及び米の品種によって多少変動しうるが、籾殻のシリカ含有量は一般的に乾燥重量の13~15%の範囲である。ほとんどの生物起源材料、例えば籾殻に含有されているシリカは、実質的にすべてが非常に望ましいアモルファス形であるが、多くのその他の不純物、特にリグニン及びセルロースのような長鎖炭化水素(カルシウム、マグネシウムなど及びそれらの化合物のような多数の無機鉱物も含む)の生物起源マトリックス中に結合されている。籾殻シリカは、生物起源材料中に見られるその他の不純物、主としてその炭化水素からのシリカの必要な分離を要する。炭化水素の除去後、残留する少量の無機鉱物は容易に実質的に除去できる。最終製品は、微粉砕された白色粉末の高純度アモルファスシリカである。
・・・
【0022】
籾殻シリカ製造スキームの第一の必須ステップは、酸化溶質を含有する水性溶液中に籾殻を浸漬することによって籾殻の有機物を削減することである。これは、任意の数の物質、例えば多くの塩素酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩、過マンガン酸塩及びある種の過酸化物化合物(例えばフェントン試薬)を用いて達成できる。それらは好適ではないが、本発明に包含される。過酢酸が好適な酸化溶質である。なぜならば、その残渣はプロセスの最終ステップ(所望による)で容易に除去できるからである。しかしながら、過酸化水素は、その使用後における唯一の残留物は水であるため、最も好適な酸化剤である。籾殻の有機物の完全削減を確実にするために過酸化物が籾殻の処理中に完全に使い尽くされなかった場合(典型的なことであるが)、残留酸素は短時間にわたって自然発生する。この発生は、加熱、機械的撹拌、電解又は様々なその他の公知手段によって促進できる。従って、本明細書中に開示された方法は非常に環境に優しいものである。
・・・
【0024】
上記削減ステップの後、籾殻を水で徹底的に濯いでもよく、好ましくは次に水分含有量10重量%以下にまで乾燥させる。籾殻の濯ぎは、行う場合、濯ぎ水自体がシリカへの望ましくない不純物に寄与しないように、鉄又は重金属含有量の極めて低い脱イオン水又はさらには蒸留水のような、なるべく純粋な水で行うべきである。
【0025】
乾燥はいずれかの従来手段によって実施できるが、熱風による乾燥が好適である。なぜならば、本明細書中に開示された方法は、容易に利用できる熱源を作り出すからである。籾殻からの有機物の削減ステップ後、そして好ましくは前述のような濯ぎ及び乾燥後、次に籾殻を“焼く”(酸素化ガスの存在下、熱によって燃焼、又は酸化する)。籾殻を焼く好適な温度範囲は約500~950℃である。該範囲より実質的に低い温度では籾殻の炭素質不純物が完全酸化するのに過度に長い時間がかかり、ある点では全く酸化しなくなることもある。該範囲より実質的に高い温度では、不純物、特に炭素質不純物の局所的発熱酸化のために発生するホットスポットが一部のシリカをアモルファス形から結晶形に変換し始めるリスクが増大するので望ましくない。
【0026】
籾殻は前述のように酸素含有ガスの存在下、高めた温度で酸化される。すべての籾殻の良好な酸素化を確実にするために、典型的には籾殻を薄床に置き、それに上方向の気流を通す。籾殻の酸化は空気中約600℃でとても迅速に起こるので、籾殻が温度設定点に達するまでに、視覚的に検出可能な炭素残渣なしに微細な白色アモルファスシリカへの酸化が完了する。
【0027】
シリカは安定で極めて多孔性で水及び酸(フッ化水素以外)に不溶性であるという事実により、酸化後に残留するカルシウム化合物のような特別の不純物を除去するために設計された様々な酸及びその他の溶液でさらに洗浄、濯ぎ、フラッシュを行うことができる。」
(4) 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「Process for recovering useful products and energy from siliceous plant matter」(発明の名称)(当審訳:珪質植物から有用な生成物とエネルギーを回収するプロセス)に関して、次の事項が記載されている
ア 「[0001] 1. Field of the Invention
[0002] The invention disclosed and claimed relates to a method for recovery of useful products and energy from siliceous plant matter by an environmentally sound process. With more particularity the invention herein set forth relates to recovery of products such as amorphous silica, lignin, hemicellulose, cellulose derived sugars and heat energy from the renewable resource of siliceous plants, including rice hulls, stalks and leaves, by a process which avoids a net increase of carbonization of the atmosphere and has decreased nitrous oxide and sulphur emissions. In addition, by varying certain steps of the invention, a practitioner thereof is able to selectively control the "quality" (namely with greater or lesser carbon content, more or less inorganic residue and more or less porosity) of the amorphous silica produced by the disclosed invention. Furthermore, the invention herein may be used to produce amorphous silica of greater purity (substantially free of elemental carbon, organic and inorganic impurities) and porosity (larger surface area per unit of weight) not previously able to be extracted by pyrolysis from siliceous plant matter.」
(当審訳:[0001] 1.発明の分野
[0002] 本開示及び請求される本発明は、環境に配慮したプロセスにより珪質植物から有用な製品及びエネルギーを回収する方法に関する。具体的には、本発明は、大気の炭化を純増させず、窒素酸化物及び硫黄の排出が低減されたプロセスにより、再生可能資源である珪質植物(籾殻、茎、葉を含む)から、アモルファスシリカ、リグニン、ヘミセルロース、セルロース由来の糖、及び熱エネルギーなどの生成物を回収することに関する。さらに、本発明の一部のステップを変更することにより、その実施者は、開示された発明により生成されるアモルファスシリカの「品質」(すなわち、より多く又は少ない炭素含有量、より多く又は少ない無機残渣、及びより多く又は少ない多孔性)を選択的に制御することができる。さらに、本発明により、従来は珪質植物から熱分解によって抽出できなかった、より高い純度(実質的に炭素元素、有機及び無機不純物を含まない)及び多孔性(単位重量あたりの表面積が大きい)のアモルファスシリカを製造することができる。)
イ 「[0019] Steps 4 and 5 (illustrated in FIG. 1) of the preferred embodiment of the invention are to soak the remaining solids in an aqueous solution which solubilizes metallic compounds and other such inorganic impurities (Step 4) and/or soak said material an aqueous solution which contains an oxidizing solute. ・・・
・・・
[0022] It is also noted that Step 4, namely solubilizing metallic compounds of the siliceous plant matter by aqueous solution (which solution dissolves the solubilized compounds) has other functions. Namely removal of metallic compounds prior to pyrolysis of the siliceous plant matter increases the porosity of amorphous silica resulting from pyrolysis, allows pyrolysis to be conducted at a higher temperature (without fluxing of the amorphous silica) and results in a more pure amorphous silica (having less inorganic impurities).
・・・
[0025] In the preferred embodiment of the invention, citric acid is the preferred solubilizing solute of Step 4 of the invention. However, other water-soluble chelating agents, including ethylenediamine, ethylenediaminetetracetic acid ("EDTA") and dimercaprol, as well as other water-soluble chelating agents known to those skilled in the art, may be used. ・・・」
(当審訳:[0019] 本発明の好ましい実施形態のステップ4及び5(図1に示す)は、残留固形物を、金属化合物及びその他の無機不純物を可溶化する水溶液に浸漬すること(ステップ4)、及び/又は前記材料を、酸化性溶質を含む水溶液に浸漬することである。・・・
・・・
[0022] ステップ4、すなわち水溶液によって珪質植物の金属化合物を可溶化するステップ(溶液が可溶化した化合物を溶解するステップ)は、他の機能も持つ。すなわち、熱分解前に珪質植物の金属化合物を除去することで、熱分解から生じるアモルファスシリカの多孔性を増加させ、(アモルファスシリカの流動が生じずに)より高温での熱分解を可能とし、(より少ない無機不純物を含む)より純粋なアモルファスシリカを生じさせることができる。
・・・
[0025] 本発明の好適な実施形態では、クエン酸が本発明のステップ4の好ましい可溶化溶質である。しかしながら、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメルカプロールなどの他の水溶性キレート剤、または当業者によって知られている他の水溶性キレート剤も使用可能である。・・・)
ウ 「1. A process for production of amorphous silica of selected porosity from siliceous plant matter comprising the steps of:
soaking said siliceous plant matter in an aqueous solution comprising means for solubilizing an amount of water insoluble metallic compounds which is effective to produce amorphous silica of said selected porosity;
removing the aqueous solution from said siliceous plant matter; and,
thereafter, thermally pyrolyzing said siliceous plant matter in the presence of oxygen.
2. The process of claim 1 wherein the means for solubilizing water insoluble metallic compounds is a solute which reacts with water insoluble metallic compounds to form water soluble compounds.
3. The process of claim 2 wherein said solute is comprised of a chelating agent.」(請求の範囲)
(当審訳:1.珪質植物から選択された多孔度の非晶質シリカを製造する方法であって、以下のステップを含む方法:
前記選択された多孔度の非晶質シリカを生成するのに有効な量の水不溶性金属化合物を可溶化する手段を含む水溶液に前記珪質植物を浸漬するステップ;
前記珪質植物から水溶液を除去するステップ;及び
その後、酸素の存在下で前記珪質植物を熱分解するステップ。
2.請求項1に記載の方法であって、水不溶性金属化合物を可溶化する手段が、水不溶性金属化合物と反応して水溶性化合物を形成する溶質である方法。
3.請求項2に記載の方法であって、前記溶質はキレート剤を含んでなる方法。)
4 当審の判断
事案に鑑み、前記1の申立ての理由と前記2の取消理由をまとめて、新規性及び進歩性欠如(申立理由1、2、取消理由1、2)、明確性要件違反(申立理由5、取消理由5)、サポート要件違反(申立理由4、取消理由4)、実施可能要件違反(申立理由3、取消理由3)の順で検討する。
(1) 新規性及び進歩性欠如(申立理由1、2、取消理由1、2)について
新規性及び進歩性欠如(申立理由1、2、取消理由1、2)については、主たる証拠毎にまとめて検討する。
ア 甲第1号証を主たる証拠とする新規性及び進歩性欠如について
(ア) 甲第1号証に記載された発明
a 前記3(1)の甲第1号証の記載事項から次の技術的事項を把握することができる。
(a) もみがらを穏やかな条件下で灰化させると、比表面積の大きな反応性の高い無定型シリカが得られること(前記3(1)ア参照)。
(b) もみがら灰の調製方法として、はじめに揮発分を除くために数分間熱処理を行って炭化もみがらとし、400℃~900℃で6時間熱処理を行って、ここで600℃以上の熱処理ではあらかじめ500℃で2時間、か焼成して残留炭素分をとばしたものを用いて、もみがら灰が調製されること(前記3(1)イ~エ参照)。
(c) 前記熱処理の温度が700℃までは得られたもみがら灰は、無定型のままであったこと(前記3(1)ウ参照)。
(d) 前記もみがら灰は、Al2O3、Fe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O、K2O、P2O5の金属成分を含んでいること(前記3(1)オ参照)。
(e) 前記熱処理では、熱処理温度400℃~700℃での比表面積は、熱処理温度が高くなるとともに、117.0m2/gから14.3m2/gまで変化したこと(前記3(1)カ~ク参照)。
b 前記aの技術的事項を「もみがら灰の調製方法」に注目して整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「もみがらを、数分間熱処理して揮発成分を除いて炭化もみがらとした後、400~700℃で6時間熱処理を行い、ここで600℃以上の熱処理ではあらかじめ500℃で2時間、か焼成して残留炭素分をとばしたものを用い、14.3m2/gから117.0m2/gの比表面積であり、Al2O3、Fe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O、K2O、P2O5の金属成分を含む無定型シリカからなるもみがら灰を得る、もみがら灰の調製方法。」
(イ) 本件発明1について
a 対比
(a) 本件発明1と甲1発明との対応関係は次のとおりである。
(i) 甲1発明の「無定型シリカからなるもみがら灰」は、技術常識からして多孔質であるから、甲1発明の「無定型シリカからなるもみがら灰を得る、もみがら灰の調製方法」は、本件発明1の「多孔質アモルファスシリカを製造する方法」に相当する。
(ii) 甲1発明の「もみがら」は、本件特許明細書で「もみ殻、茎および葉を含む珪質植物」(【0002】)と記載されているから、本件発明1の「珪質植物」に相当する。
(iii) 甲1発明の「もみがら」から得られた「もみがら灰」は、前記(i)、(ii)を踏まえると、「珪質植物に由来」する「多孔質アモルファスシリカ」に相当する。
(iv) 甲1発明の「Al2O3、Fe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O、K2O、P2O5の金属成分」は、もみがら由来のものであることは明らかであるから、前記(ii)を踏まえると、本件発明1の「珪質植物」に含有する「リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」「少なくとも1つのフラックス剤」に相当する。
(v) 甲1発明の「数分間熱処理して揮発成分を除いて炭化もみがらとした後、400~700℃で6時間熱処理を行い、ここで600℃以上の熱処理ではあらかじめ500℃で2時間、か焼成して残留炭素分をとばしたものを用い」、「無定型シリカからなるもみがら灰」を得ることは、本件発明1の「得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で」、「熱処理する工程」に相当する。
(vi) 甲1発明の「14.3m2/gから117.0m2/gの比表面積」の「もみがら灰を得る」ことは、前記(i)を踏まえると、本件発明1の「最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する」ことに相当する。
(b) 前記(a)の対応関係を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、
「制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、前記珪質植物を熱処理する工程、
しかも、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する、前記の方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1は、珪質植物の熱処理を「酸素の存在下」で行っているのに対して、甲1発明は、その点が明らかでない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより」、「制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成」しているのに対して、甲1発明は、「400~700℃で6時間熱処理」して、特定の比表面積であるもみがら灰を得ている点。
b 判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
はじめに、本件発明1の新規性欠如について検討すると、相違点2は、実質的なものといえるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。
次に、本件発明1の進歩性欠如について検討すると、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、フラックス剤を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中のフラックス剤の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、甲第4号証~甲第7号証に記載も示唆もされておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(ウ) 本件発明2~11、14~17、20について
本件発明2~11、14~17、20は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記(イ)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明6~9、14、17は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明2~11、14~17、20は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(エ) 本件発明21について
a 対比
本件発明21と甲1発明の対応関係は、前記(イ)a(a)の対応関係と同様であるから、本件発明21と甲1発明は、
「制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、前記珪質植物を熱処理する工程、
しかも、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する、前記の方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点3>
本件発明21は、珪質植物の熱処理を「酸素の存在下」で行っているのに対して、甲1発明は、その点が明らかでない点。
<相違点4>
本件発明21は、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより」、「制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し、しかも、200℃から1,000℃の範囲の温度で前記珪質植物を熱処理する前に、前記少なくとも1つのフラックス剤が、前記アモルファスシリカに添加され、それによって、前記アモルファスシリカの表面積、細孔容積及び細孔径のうちの少なくとも1つを、目標仕様の範囲内に制御する」のに対して、甲1発明は、「400~700℃で6時間熱処理」して、特定の比表面積であるもみがら灰を得ている点。
b 判断
事案に鑑み、相違点4から検討すると、前記(イ)bで検討したのと同様に、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、フラックス剤を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中のフラックス剤の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、甲第4号証に記載も示唆もされておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲1発明において、相違点4に係る本件発明21の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明21は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第4号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
イ 甲第2号証を主たる証拠とする新規性及び進歩性欠如について
(ア) 甲第2号証に記載された発明
a 前記3(2)の甲第2号証の記載事項から以下の技術的事項を把握することができる。
(a) 籾殻などの木質系素材を爆砕又は蒸煮処理し、灰化して、シリカ等の有用成分の含有率が高く、しかも比表面積の大きい、シリカ高含有灰化物を製造する方法に関すること(前記3(2)ア、イ参照)。
(b) 前記灰化は、550~900℃で燃焼するものであり、燃焼温度が900℃を超えると、非晶質のシリカにクリストバライト化が起こり、長時間燃焼させると比表面積が低下すること(前記3(2)ウ参照)。
(c) 前記方法の具体例として、実施例1では、未粉砕の籾殻を爆砕して籾殻処理物を得て、乾燥した処理物を400℃1時間炭化し、繊維状の燻炭を得て、続いて、600℃のマッフルにて2時間灰化することで、Na2O、K2O、MgO、Al2O3、CaO、Fe2O3、TiO2を含み、比表面積が209.2m2/gである、白色のシリカ高含有灰化物を得たこと(前記3(2)エ参照)。
b 前記aの技術的事項を「シリカ高含有灰化物の製造方法」に注目して整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「籾殻を爆砕して籾殻処理物を得て、乾燥した前記処理物を400℃1時間炭化し、繊維状の燻炭を得て、続いて、600℃のマッフルにて2時間灰化することで、Na2O、K2O、MgO、Al2O3、CaO、Fe2O3、TiO2を含み、比表面積が209.2m2/gであるシリカ高含有灰化物を得る、シリカ高含有灰化物の製造方法。」
(イ) 本件発明1について
a 対比
(a) 本件発明1と甲2発明との対応関係は次のとおりである。
(i) 甲2発明の「比表面積が209.2m2/gであるシリカ高含有灰化物」は、比表面積が制御されていることは明らかであるし、また、シリカ高含有灰化物に含まれるシリカは、非晶質であるといえるから、甲2発明の「比表面積が209.2m2/gであるシリカ高含有灰化物を得る、シリカ高含有灰化物の製造方法」は、本件発明1の「制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法」に相当する。
(ii) 甲2発明の「籾殻」は、前記ア(イ)a(a)(ii)での検討と同様に、本件発明1の「珪質植物」に相当する。
(iii) 甲2発明の「シリカ高含有灰化物」は、「籾殻」から得られており、さらに、前記(i)、(ii)を踏まえると、「珪質植物に由来」する「多孔質アモルファスシリカ」に相当する。
(iv) 甲2発明の「Na2O、K2O、MgO、Al2O3、CaO、Fe2O3、TiO2」は、籾殻由来のものであることは明らかであるから、前記(ii)を踏まえると、本件発明1の「珪質植物」に含有する「リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」「少なくとも1つのフラックス剤」に相当する。
(v) 甲2発明の「爆砕して籾殻処理物を得て、乾燥した前記処理物を400℃1時間炭化し、繊維状の燻炭を得て、続いて、600℃のマッフルにて2時間灰化することで」「シリカ高含有灰化物を得る」ことは、前記(i)を踏まえると、本件発明1の「得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で」、「熱処理する工程」に相当する。
(vi) 甲2発明の「比表面積が209.2m2/gであるシリカ高含有灰化物を得る」ことは、本件発明1の「最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する」ことに相当する。
(b) 前記(a)の対応関係を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、
「制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、前記珪質植物を熱処理する工程、
しかも、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する、前記の方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点5>
本件発明1は、珪質植物の熱処理を「酸素の存在下」で行っているのに対して、甲2発明は、その点が明らかでない点。
<相違点6>
本件発明1は、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより」、「制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成」しているのに対して、甲2発明は、「600℃のマッフルにて2時間灰化」して、特定の比表面積であるシリカ高含有灰化物を得ている点。
b 判断
事案に鑑み、相違点6から検討する。
はじめに、本件発明1の新規性欠如について検討すると、相違点6は、実質的なものといえるから、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるといえない。
次に、本件発明1の進歩性欠如について検討すると、前記ア(イ)bで検討したとおり、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、フラックス剤を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中のフラックス剤の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、甲第4号証~甲第7号証に記載も示唆もされておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲2発明において、相違点6に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(ウ) 本件発明2~11、14~17、20について
本件発明2~11、14~17、20は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記(イ)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明8、9、14、17は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明2~11、14~17、20は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(エ) 本件発明21について
a 対比
本件発明21と甲2発明の対応関係は、前記(イ)a(a)の対応関係と同様であるから、本件発明21と甲2発明は、
「制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、前記珪質植物を熱処理する工程、
しかも、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する、前記の方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点7>
本件発明21は、珪質植物の熱処理を「酸素の存在下」で行っているのに対して、甲2発明は、その点が明らかでない点。
<相違点8>
本件発明21は、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより」、「制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し、しかも、200℃から1,000℃の範囲の温度で前記珪質植物を熱処理する前に、前記少なくとも1つのフラックス剤が、前記アモルファスシリカに添加され、それによって、前記アモルファスシリカの表面積、細孔容積及び細孔径のうちの少なくとも1つを、目標仕様の範囲内に制御する」のに対して、甲2発明は、「600℃のマッフルにて2時間灰化」して、特定の比表面積であるシリカ高含有灰化物を得ている点。
b 判断
事案に鑑み、相違点8から検討すると、前記ア(イ)bで検討したのと同様に、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、フラックス剤を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中のフラックス剤の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、甲第4号証に記載も示唆もされておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲2発明において、相違点8に係る本件発明21の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、相違点7について検討するまでもなく、本件発明21は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第4号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 甲第3号証を主たる証拠とする新規性及び進歩性欠如について
(ア) 甲第3号証に記載された発明
a 前記3(3)の甲第3号証の記載事項から以下の技術的事項を把握することができる。
(a) 歯磨剤に含まれる研磨性生物起源シリカ材料に関すること(前記3(3)ア参照)。
(b) 前記生物起源シリカ材料の製造に関して、カルシウム、マグネシウムなど及びそれらの化合物のような多数の無機鉱物も含む籾殻を、酸化溶質を含有する水性溶液中に浸漬することによって籾殻の有機物を削減し、乾燥後、酸素化ガスの存在下、約500~950℃で燃焼又は酸化して、白色粉末の高純度アモルファスシリカが得られること(前記3(3)イ参照)
b 前記aの技術的事項を「生物起源シリカ材料の製造方法」に注目して整理すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「カルシウム、マグネシウムなど及びそれらの化合物のような多数の無機鉱物も含む籾殻を、酸化溶質を含有する水性溶液中に浸漬して、籾殻の有機物を削減し、乾燥後、酸素化ガスの存在下、約500~950℃で燃焼又は酸化して、白色粉末の高純度アモルファスシリカを得る、生物起源シリカ材料の製造方法。」
(イ) 本件発明1について
a 対比
(a) 本件発明1と甲3発明との対応関係は次のとおりである。
(i) 甲3発明の「高純度アモルファスシリカ」は、技術常識からして多孔質であるから、甲3発明の「白色粉末の高純度アモルファスシリカを得る、生物起源シリカ材料の製造方法」は、本件発明1の「多孔質アモルファスシリカを製造する方法」に相当する。
(ii) 甲3発明の「籾殻」は、前記ア(イ)a(a)(ii)での検討と同様に、本件発明1の「珪質植物」に相当する。
(iii) 甲3発明の「籾殻」から得られた「高純度アモルファスシリカ」は、前記(i)、(ii)を踏まえると、「珪質植物に由来」する「多孔質アモルファスシリカ」に相当する。
(iv) 甲3発明の「籾殻」に含まれる「カルシウム」は、前記(ii)を踏まえると、本件発明1の「珪質植物」に含有する「リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」「少なくとも1つのフラックス剤」に相当する。
(v) 甲3発明の「籾殻の有機物を削減し、乾燥後、酸素化ガスの存在下、約500~950℃で燃焼又は酸化」することで「高純度アモルファスシリカ」を得ることは、本件発明1の「得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で熱処理する工程」に相当する。
(b) 前記(a)の対応関係を踏まえると、本件発明1と甲3発明は、
「多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理する工程、
前記の方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点9>
本件発明1は、「制御された表面積を有する」ように「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成」しているのに対して、甲3発明は、「約500~950℃で燃焼又は酸化」している点。
b 判断
はじめに、本件発明1の新規性欠如について検討すると、相違点9は、実質的なものといえるから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるといえない。
次に、本件発明1の進歩性欠如について検討すると、前記ア(イ)bで検討したとおり、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、フラックス剤を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中のフラックス剤の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、甲第4号証~甲第7号証に記載も示唆もされておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲3発明において、相違点9に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(ウ) 本件発明2~11、14~17、20について
本件発明2~11、14~17、20は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記(イ)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明6、9、17は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明2~11、14~17、20は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証~甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(エ) 本件発明21について
a 対比
本件発明21と甲3発明の対応関係は、前記(イ)a(a)の対応関係と同様であるから、本件発明21と甲3発明は、
「多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、
前記多孔質アモルファスシリカは、珪質植物に由来し、前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる、以下の工程を含む方法であり:
a)得られるシリカが、検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理する工程、
前記の方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点10>
本件発明21は、「制御された表面積を有する」ように「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され、及び、熱処理温度が、制御され、それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成し、
しかも、200℃から1,000℃の範囲の温度で前記珪質植物を熱処理する前に、前記少なくとも1つのフラックス剤が、前記アモルファスシリカに添加され、それによって、前記アモルファスシリカの表面積、細孔容積及び細孔径のうちの少なくとも1つを、目標仕様の範囲内に制御する」のに対して、甲3発明は、「約500~950℃で燃焼又は酸化」している点。
b 判断
前記ア(イ)bで検討したのと同様に、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、フラックス剤を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中のフラックス剤の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、甲第4号証に記載も示唆もされておらず、また、このことが技術常識であるといえないから、甲3発明において、相違点10に係る本件発明21の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、本件発明21は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
エ 甲第4号証を主たる証拠とする進歩性欠如について
(ア) 甲第4号証に記載された発明
a 前記3(4)の甲第4号証の記載事項から以下の技術的事項を把握することができる。
(a) 再生可能資源である籾殻などの珪質植物から、アモルファスシリカを回収すること(前記3(4)ア参照)。
(b) 珪質植物から選択された多孔度の非晶質シリカを製造する方法に関し、前記選択された多孔度の非晶質シリカを生成するのに有効な量のキレート剤を含む水溶液に前記珪質植物を浸漬するステップと、前記珪質植物から水溶液を除去するステップと、その後、酸素の存在下で前記珪質植物を熱分解するステップを含むこと(前記3(4)ウ参照)。
(c) キレート剤を含む水溶液に前記珪質植物を浸漬するステップにおいて、熱分解前に珪質植物の金属化合物を除去することで、熱分解から生じるアモルファスシリカの多孔性を増加できること(前記3(4)イ参照)。
b 前記aの技術的事項を「選択された多孔度の非晶質シリカを製造する方法」に注目して整理すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「珪質植物から選択された多孔度の非晶質シリカを製造する方法であって、前記選択された多孔度の非晶質シリカを生成するのに有効な量のキレート剤を含む水溶液に前記珪質植物を浸漬して、珪質植物の金属化合物を除去するステップと、前記珪質植物から水溶液を除去するステップと、その後、酸素の存在下で前記珪質植物を熱分解するステップを含む、多孔性を増加させた非晶質シリカを製造する方法。」
(イ) 本件発明22について
a 対比
(a) 本件発明22と甲4発明との対応関係は次のとおりである。
(i) 甲4発明の「珪質植物から選択された多孔度の非晶質シリカを製造する方法」は、本件発明22の「珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造する方法」に相当する。
(ii) 甲4発明の「金属化合物」は、本件発明22の「非珪質無機物」に相当する。
(iii) 甲4発明の「前記選択された多孔度の非晶質シリカを生成するのに有効な量のキレート剤を含む水溶液に前記珪質植物を浸漬して、珪質植物の金属化合物を除去するステップ」は、前記(ii)を踏まえると、本件発明22の「キレート剤を含む水溶液に、前記珪質植物を浸漬することであって、前記キレート剤が、前記非珪質無機物の少なくとも一部を抽出する量で存在する」に相当する。
(iv) 甲4発明の「前記珪質植物から水溶液を除去するステップ」は、本件発明22の「前記珪質植物から水溶液を分離すること」に相当する。
(v) 甲4発明の「酸素の存在下で前記珪質植物を熱分解するステップ」は、「多孔性を増加させた非晶質シリカ」が得られていることから、本件発明22の「得られるシリカが多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理すること」に相当する。
(b) 前記(a)の対応関係を踏まえると、本件発明22と甲4発明は、
「非珪質無機物を含む珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造する方法であって、以下の工程を含む、前記の方法:
a)キレート剤を含む水溶液に、前記珪質植物を浸漬することであって、前記キレート剤が、前記非珪質無機物の少なくとも一部を抽出する量で存在する;
b)前記珪質植物から水溶液を分離すること;
d)得られるシリカが多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理すること。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点11>
本件発明22は、「c)所望の量の予め選択された非珪質無機物質を珪質植物中に混合することによって、前記珪質植物中の少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質の量を制御することであって、前記少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなり、前記の少なくとも1つの予め選択された非珪質無機物質は、前記珪質植物に有益な特性を与えるために選択されたものである」工程を有しているのに対して、甲4発明は、その点が明らかでない点。
b 判断
前記ア(イ)bで検討したのと同様に、珪質植物から多孔質アモルファスシリカを製造するに際して、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる非珪質無機物質を珪質植物中に混合することによって、珪質植物中の非珪質無機物質の量を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積を制御することは、技術常識であるといえないから、甲4発明において、相違点11に係る本件発明22の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、本件発明22は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
オ 新規性及び進歩性欠如(申立理由1、2、取消理由1、2)についての結論
以上のとおりであるから、本件請求項1~11、14~17、20~22に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立理由1、2、及び取消理由1、2に理由はない。
(2) 明確性要件違反(申立理由5、取消理由5)について
ア 明確性要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この観点に立って検討する。
イ 明確性要件の判断
(ア) 取消理由5では、次の点を指摘した。
a 指摘事項1
多孔質アモルファスシリカの「表面積」、「細孔容積」、及び「細孔径」の物性値は、測定方法によってその値が大きく変わることが技術常識であるところ、本件特許明細書には、これらの測定方法について記載されていないため、設置登録時の請求項1~22に記載された「表面積」、「細孔容積」、又は「細孔径」の物性値の数値範囲について、当業者が一義的に理解することができない。
b 指摘事項2
設定登録時の請求項1には、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量及び/又は熱処理温度が、制御され」と記載され、フラックス剤の量を制御することが必須の工程でないため、「しかも、前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の前記量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御される」ことが必須の工程であるのかが明確でない。
また、設定登録時の請求項21には、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量及び/又は熱処理温度が、制御され」と記載されているため、同様に「しかも、200℃から1,000℃の範囲の温度で前記珪質植物を熱処理する前に、前記少なくとも1つのフラックス剤が、前記アモルファスシリカに添加され、それによって、前記アモルファスシリカの表面積、細孔容積及び細孔径のうちの少なくとも1つを、目標仕様の範囲内に制御する」ことが必須の工程であるのかが明確でない。
c 指摘事項3
設定登録時の請求項19に記載された「化学的に制御される」ことは、どのような操作を意味するかが明らかでない。
(イ) 本件特許出願時の技術常識について
a 申立人が特許異議申立書に添付した甲第8号証(特表2003-529518号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0008】
前にも述べたように、商業的には、カーボン・ブラックは慎重に制御された燃焼プロセス内で重い残油原料を非常に高い温度下で処理することでつくられる。燃焼プロセスの条件を変えることで、いろいろな構造及び粒子サイズの何十というグレードが製造される。表面積及び孔体積などのカーボン・ブラックの構造的特性は沈降シリカ及びシリカ・ゲルに対して用いられるのと同様の方法を用いて評価、測定される。カーボン・ブラックの構造、例えば粒子間の結合度などを測定するための原理はASTM D2414 に従ってDBP(ジブチル・フタレート)オイル吸着によって決定され、その数値は100グラムの炭素あたりに吸着されるミリリットル(ml/100g)で表示される。表面積の測定は通常BET(Brunauer, Emmett, Teller)窒素吸着テスト法、ASTM D3037あるいはASTM D4820で行われ、数値は炭素1グラムあたりの平方メートル(m2/g)で表示される。一部のメーカーは表面積に対してはASTM D3765、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)吸着を用い、数値はほとんどの場合、BET値の場合と同様m2/gで表示される。また、一部のメーカーは表面積の測定方法として、ASTM D1510、カーボン・ブラック-ヨード吸着価の標準テスト法を用いている。例えば、mg/gで表現されるヨード価が高ければ高いほど粒子サイズは小さく、表面積は大きく、これらのことはゴム・エラストマに対する強化用カーボン・ブラックとしてより優れていることを示している。」
b 特許権者が令和7年9月17日付けの手続補正書に添付した乙第2号証(Yun Tian and Jianzhong Wu, "A Comprehensive Analysis of BET Area for Nanoporous Materials", AIChE Journal, 2018, Vol.64, No.1, p.286-293)には、次の事項が記載されている。
「The Brunauer-Emmett-Teller (BET) method has been used extensively to characterize the surface areas of porous materials by semiempirical fitting of gas-adsorption isotherms.」(第286ページ第1~2行)
(当審訳:Brunauer-Emmett-teller(BET)法は、ガス吸着等温線を半経験的にフィッティングすることにより、多孔質材料の表面積を評価するために広く用いられてきた。)
c 特許権者が令和7年8月27日付けの意見書に添付した乙第3号証(Jonathon Brame and Chris Griggs, Surface Area Analysis Using the Brunauer-Emmett-Teller (BET) Method, ERDC Technical Reports, 2016, EDRC/EL SR-16-3)には、次の事項が記載されている。
「The most commonly used method of measuring the surface area of nanomaterials is the Brunauer-Emmett-Teller (BET) surface adsorption method.」(Abstract欄第5~7行)
(当審訳:ナノマテリアルの表面積を測定する最も一般的に使用される方法は、Brunauer-Emmett-teller(BET)表面吸着法である。)
d 特開2003-183017号公報には、次の事項が記載されている。
「【0002】タイヤのようなエラストマー混合物の形での沈降ケイ酸の使用は、長い間公知であった。タイヤ中で使用されるケイ酸には、多くの要求がある。ケイ酸は、容易かつ良好にゴム中で分散可能であり、ゴム中に含有されるポリマー鎖もしくは通常の充填剤と良好に結合し、かつカーボンブラックに類似した高い摩耗耐性を有するべきである。従って、ケイ酸の分散性の他に、比表面積(BETまたはCTAB)および油分吸着能(DBP)が重要である。比表面積は、ケイ酸の内部および外部構造のための尺度である。両方の方法は異なる大きさの分子を吸着剤として使用するため、この両方の表面積率の比(すなわち、BET/CTAB表面積の商)は、ケイ酸の気孔寸法分布およびケイ酸の“外”表面積対“内”表面積の比を示す。ケイ酸の表面特性は、ケイ酸の可能性としてあり得る用途を決定的に決定するかもしくはケイ酸の特定の用途(例えば、エラストマー混合物用の担体系または充填剤)が特定の表面特性を要求する。」
e 前記a~dの記載事項によれば、表面積の測定には、「m2/g」で表示される「BET法」や「CTAB法」、「mg/g」で表示されるカーボン・ブラック-ヨード吸着価の標準テスト法などがあること、吸着分子の大きさの違いにより、「BET法」が多孔質材料の内部細孔と外部細孔の総表面積を測定する方法であるのに対して、「CTAB法」が外部表面積を測定する方法であること、BET法が多孔質材料の表面積を評価するために広く使用されていることは、本件特許出願時の技術常識といえる。
(ウ) 取消理由5に対する判断
a 前記(ア)aの指摘事項1について改めで検討すると、本件発明1では、「最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する」と特定されており、本件発明1の「表面積」は、「m2/g」で表示される測定方法で得られる値であることを理解できる。
また、本件特許明細書に「もみ殻などの生体源に由来するアモルファスシリカの所望の特性が、熱処理の前に植物中の不純物の量および性質を操作することによって、得ることができることが、見出された。植物中に保持されるフラックス剤の量と種類を選択することにより、所望の表面積、細孔容積、細孔寸法、研磨性および分散性特性を有するアモルファスシリカを製造することができる。」(【0007】)と記載されているように、本件発明1は、細孔容積や細孔寸法といった多孔質アモルファスシリカの内部構造を含めた特性を制御するものといえるから、本件発明1の「表面積」も、多孔質アモルファスシリカの内部細孔を含めた総表面積を示しているといえる。
そして、前記(イ)eの技術常識を踏まえると、本件発明1の「表面積」は、「m2/g」で表示される「BET法」や「CTAB法」のうち、多孔質材料の内部細孔と外部細孔の総表面積を測定する「BET法」で測定された「表面積」であると理解することが自然である。
したがって、本件発明1の「表面積」の物性値の数値範囲は、当業者が一義的に理解することができる。
本件発明9、21、22の「表面積」についても同様である。
また、本件発明10、11の「細孔容積」についても、「表面積」と同じ「BET法」で測定された「細孔容積」であると理解できるから、本件発明10、11の「細孔容積」の物性値の数値範囲も、当業者が一義的に理解することができる。
したがって、本件発明1、9、21、22の「表面積」や、本件発明10、11の「細孔容積」が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
b 前記(ア)bの指摘事項2について検討すると、本件訂正により、本件発明1おいて、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され」るとの発明特定事項が必須の工程であることが明確になった。
また、本件発明21において、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され」、「しかも、200℃から1,000℃の範囲の温度で前記珪質植物を熱処理する前に、前記少なくとも1つのフラックス剤が、前記アモルファスシリカに添加され、それによって、前記アモルファスシリカの表面積、細孔容積及び細孔径のうちの少なくとも1つを、目標仕様の範囲内に制御する」との発明特定事項が必須の工程であることが明確になった。
したがって、本件発明1の前記発明特定事項や、本件発明21の前記発明特定事項が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
c 前記(ア)cの指摘事項3について検討すると、本件訂正により、請求項19が削除されため、当該指摘事項3は、理由がないものになった。
(エ) 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の第83ページ第14行~第84ページ第9行において、設定登録時の請求項1及び22に記載の「混合」とは、フラックス剤(非珪質無機物質)が珪質植物の外部から新たに添加されることを意味するのか、あるいは、珪質植物が攪拌等の操作に供された結果、珪質植物の内部に存在するフラックス剤が珪質植物の内部において混合されることを意味するのかが明確でない旨を主張している。
しかしながら、本件発明1では、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され」と特定され、フラックス剤を珪質植物中に混合することで、珪質植物中のフラックス剤の量が制御されていることから、前記「混合」が、珪質植物の外部から新たに添加されることを意味していることは明らかである。
本件発明22における「混合」についても同様である。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
(オ) そして、本件請求項1~11、14~17、20~22のその余の記載をみても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確な記載は見当たらないから、本件請求項1~11、14~17、20~22の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件に適合する。
ウ 明確性要件違反(申立理由5、取消理由5)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由5、及び取消理由5に理由はない。
(3) サポート要件違反(申立理由4、取消理由4)について
ア サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、この観点に立って検討する。
イ 本件発明の課題について
本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件発明の詳細な説明」という。)の記載からして、本件発明の課題は、珪質植物から回収されたアモルファスシリカの所望の特性を選択的に増強することであるといえる(【0002】)。
ウ 本件発明の詳細な説明の記載について
(ア) 本件発明の詳細な説明には、多孔質アモルファスシリカは、非珪質無機物を含む珪質植物から得ることができ、特定の非珪質無機物が熱処理前に植物内に優先的に保持される場合、好ましい特性をアモルファスシリカに付与することができ、プロセスの最後に、得られるシリカが多孔質アモルファス形態のシリカからなるような温度で酸素の存在下で、珪質植物が熱処理されること(【0015】、【0016】)、非珪質無機物質は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、又はリンなどの元素又は化合物であること(【0017】)、アモルファスシリカの表面積を10~450m2/gの範囲内で、細孔容積を0.05~0.50cc/gの範囲内で制御できること(【0023】、【0024】)が記載され、また、珪質植物中の非珪質無機物質の量を制御する方法として、ケイ酸物質中のキレート剤の量を制御すること(【0018】)、珪質植物中に鉱酸を導入すること(【0019】)、シリカに所望の特性を与えるのに十分な量の所望の量の予め選択された非珪質無機物質を植物に戻すこと(【0021】)、水、鉱酸、キレート剤、及びpH調整化学物質などでシリカを後洗浄すること(【0026】)が記載され、さらに、非珪質無機物がフラックス剤であること(【0012】、【0013】)も記載されている。
(イ) 加えて、本件発明の詳細な説明の【0029】~【0073】には、本件発明に係る具体例として、粉砕もみ殻をキレート剤であるクエン酸溶液で処理して、洗浄、乾燥後に熱処理して、多孔質アモルファスシリカを得る方法において、もみ殻を処理するクエン酸の量を増やすと、シリカ中のフラックス剤の除去が向上すること(実験1)、クエン酸によるキレート化プロセス中又はキレート化に先立つ予備浸漬プロセス中で鉱酸を添加するともみ殻から除去されるフラックス剤の量が増加すること(実験2)、もみ殻組成物中のフラックス剤を変化させた場合に、シリカ中のNa、K、Ca、及びMgのフラックス剤合計量により、表面積が約20~約400m2/gの範囲内、細孔容積が約0.10~約0.43cc/gの範囲内で変化すること(実験3)、熱処理温度で、表面積が196~326m2/gの範囲内、細孔容積が0.24~0.34cc/g(当審注:表3中の「PV(m3/g)」は、「PV(cc/g)」の誤記である。)の範囲内、細孔幅を42.19~48.20Åの範囲内で操作できること(実験4)、シリカをクエン酸溶液で後洗浄すると、シリカ中に残留するフラックス剤をさらに低減できること(実験5)、前処理されたもみ殻サンプル中に、Li、K、Na、Ca、Mg、B、又はZnを再導入すると、これらの導入量により表面積を185~391m2/gの範囲内、細孔容積を0.21~0.40cc/gの範囲内で操作できること(実験6)が記載されている。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)の記載によれば、珪質植物を酸素の存在下で熱処理して多孔質アモルファスシリカを製造する方法において、珪質植物中のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、又はリンであるフラックス剤の量、あるいは、熱処理温度により、多孔質アモルファスシリカの表面積を10~450m2/gの範囲内、細孔容積を0.05~0.50cc/gの範囲内で制御できること、そして、珪質植物中の前記フラックス剤の量は、ケイ酸物質中のキレート剤の量を制御する工程、珪質植物中に鉱酸を導入する工程、フラックス剤を珪質植物に添加混合する工程、水、鉱酸、キレート剤、及びpH調整化学物質などでシリカを後洗浄する工程、又は、これらの工程を組み合わせることで制御できることを理解できるから、これらの工程を含む多孔質アモルファスシリカを製造する方法は、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる。
エ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比、検討
本件発明1は、前記第3に示したとおりであるところ、本件発明1は、「前記珪質植物は、少なくとも1つのフラックス剤を含有し、前記少なくとも1つのフラックス剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ホウ素、チタン、またはリンのうちの少なくとも1つからなる」こと、「検出可能な結晶構造を持たない多孔質アモルファス形態のシリカからなる温度で、酸素の存在下で前記珪質植物を熱処理する工程」、「前記珪質植物中の前記少なくとも1つのフラックス剤の量は、所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合することによって制御され」ること、「熱処理温度が、制御され」ること、及び「それにより、最小表面積10m2/gおよび最大表面積450m2/gによって定義された範囲内の特定の狭い範囲内に制御された表面積を有するアモルファスシリカを生成する」が特定された「制御された表面積を有する多孔質アモルファスシリカを製造する方法」であり、前記ウ(ウ)で検討した、多孔質アモルファスシリカを製造する方法の1つであるといえるから、本件発明1は、前記ウ(ウ)で検討したとおり、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。
また、本件発明2~11、14~17、20~22についても事情は同じである。
オ 申立人の主張について
(ア) 申立人は、特許異議申立書の第77ページ第25行~第78ページ第19行において、設定登録時の請求項1、22に記載された「混合」されることには、珪質植物の内部に存在するフラックス剤が内部で混合される態様を含むところ、本件発明の詳細な説明には、珪質植物の内部でフラックス剤を混合することで本件発明の課題を解決できることは記載されていないから、設定登録時の請求項1~20、22に係る発明は、本件発明の詳細な説明に記載されたものでない旨を主張している。
しかしながら、前記(2)イ(エ)で検討したとおり、本件発明1、22の「混合」は、珪質植物の外部から新たに添加されることを意味しており、珪質植物の内部に存在するフラックス剤が内部で混合される態様を含んでいないから、申立人の前記主張は前提が誤っているため採用できない。
(イ) 申立人は、特許異議申立書の第78ページ第20行~第79ページ第22行において、設定登録時の請求項1に記載された「フラックス剤を珪質植物中に混合する」ことや、設定登録時の請求項22に記載された「非珪質無機物質を珪質植物中に混合する」ことは、本件発明の詳細な説明の、シリカに所望の特性を与えるのに十分な量の所望の量の予め選択された非珪質無機物質を植物に戻すとの記載(【0021】)や、無機汚染物質を乾燥もみ殻サンプル上に噴霧したとの記載(【0058】、実験6)に対応しないから、設定登録時の請求項1~20、22に係る発明は、本件発明の詳細な説明に記載されたものでない旨を主張している。
しかしながら、前記(2)イ(エ)で検討したとおり、本件発明1、22の「混合」は、珪質植物の外部から新たに添加されることを意味しており、本件発明の詳細な説明に記載された、シリカに所望の特性を与えるのに十分な量の所望の量の予め選択された非珪質無機物質を植物に戻すこと【0021】)や、実験6の無機元素を再導入することに対応しており、本件発明1、22は、本件発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
(ウ) 申立人は、特許異議申立書の第79ページ第23行~第80ページ第13行において、本件発明の詳細な説明の「アルミニウムとマンガンが焼成シリカの特性に影響を与えない」(【0073】)との記載を根拠に、設定登録時の請求項1~22に係る発明は、フラックス剤として、アルミニウムとマンガンを選択した場合に本件課題を解決できない旨を主張している。
しかしながら、本件発明1~22は、フラックス剤の選択肢に、アルミニウムとマンガンを含まないから、申立人の前記主張は採用できない。
(エ) 申立人は、特許異議申立書の第80ページ第14行~第83ページ第12行において、珪質植物中のフラックス剤又は非珪質無機物質の量の制御に関して、設定登録時の請求項2~5に係る発明では、「前記珪質植物中のキレート剤の量を制御すること」、及び「所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合すること」で行うことが特定され、設定登録時の請求項6、7に係る発明では、「珪質植物中に少なくとも1つの鉱酸を導入すること」、及び「所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合すること」で行うことが特定され、設定登録時の請求項15、16に係る発明では、「水、鉱酸、キレート剤、およびpH調整化学物質のうちの少なくとも1つで、シリカを後洗浄すること」、及び「所望の量の前記少なくとも1つのフラックス剤を珪質植物中に混合すること」で行うことが特定され、設定登録時の請求項22では、「a)キレート剤を含む水溶液に、前記珪質植物を浸漬すること」、及び「c)所望の量の予め選択された非珪質無機物質を珪質植物中に混合すること」で行うことが特定されているところ、発明の詳細な説明には、これらを組み合わせることが記載されていないため、設定登録時の請求項2~7、15、16、22に係る発明は、本件発明の詳細な説明に記載されたものでない旨を主張している。
しかしながら、前記ウ(ウ)で検討したとおり、本件発明の詳細な説明に記載された珪質植物中のフラックス剤の量を制御するための各工程は組合せできることを理解できるから、本件発明2~7、15、16、22は、本件発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
カ サポート要件違反(申立理由4、取消理由4)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由4、及び取消理由4に理由はない。
(4) 実施可能要件違反(申立理由3、取消理由3)について
ア 実施可能要件の判断手法
物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
以下、この観点に立って検討する。
イ 実施可能要件の判断
本件発明の詳細な説明には、前記(3)ウ(イ)のとおり、多孔質アモルファスシリカを得る方法に関して、もみ殻組成物中のフラックス剤の量や熱処理温度を制御して、多孔質アモルファスシリカの表面積や細孔容積を操作できること(実験3、4)、そして、珪質植物中の前記フラックス剤の量の制御方法として、粉砕もみ殻をクエン酸溶液で処理すること(実験1)、クエン酸及び鉱酸で処理すること(実験2)、シリカをクエン酸溶液で後洗浄すること(実験5)、前処理されたもみ殻サンプル中にLi、K、Na、Ca、Mg、B、又はZnを再導入すること(実験6)が具体的に記載され、さらに、これらの制御方法の好ましい条件等も具体的に記載されている。
これらの記載を踏まえると、本件発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者において、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~11、14~17、20~22の「多孔質アモルファスシリカを製造する方法」を使用できるといえる。
したがって、本件発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~11、14~17、20~22について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
ウ 申立人の主張について
(ア) 申立人は、特許異議申立書の第76ページ第2~23行において、本件発明の詳細な説明の「アルミニウムとマンガンが焼成シリカの特性に影響を与えない」(【0073】)との記載を根拠に、設定登録時の請求項1~22に係る発明において、フラックス剤としてアルミニウム又はマンガンを選択してアモルファスシリカの特性を制御するためには、当業者の過度の試行錯誤を要するため、本件発明の詳細な説明には、設定登録時の請求項1~22に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を主張している。
しかしながら、本件発明1~22は、フラックス剤の選択肢に、アルミニウムとマンガンを含まないから、申立人の前記主張は採用できない。
(イ) 申立人は、特許異議申立書の第76ページ第24行~第77ページ第23行において、本件発明の詳細な説明の実験6に、アモルファスシリカの細孔径を特定の狭い範囲に制御できることが記載されていないことを根拠にして、本件発明の詳細な説明には、設定登録時の請求項12、13に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を主張している。
しかしながら、本件訂正により、請求項12、13が削除されため、当該主張は、理由がないものになった。
エ 実施可能要件違反(申立理由3、取消理由3)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由3、及び取消理由3に理由はない。
第4 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、本件請求項1~11、14~17、20~22係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~11、14~17、20~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項12、13、18、19は、前記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、本件請求項12、13、18、19に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700560