特許異議申立
2024-700103
包装材料及び包装製品
- 審判番号
- 2024-700103
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-026480
- 登録番号
- 7324412
- 請求日
- 2024年02月07日
- 審決日
- 2025年03月04日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】田中 理紗
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7324412号発明「包装材料及び包装製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7324412号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5~10〕について訂正することを認める。
特許第7324412号の請求項1、3~10に係る特許を維持する。
特許第7324412号の請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7324412号の請求項1~10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年2月16に出願されたものであって、令和5年8月2日にその特許権の設定登録がされ、同年8月10日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月 7日 :特許異議申立人田中理沙(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 7月30日付け:取消理由通知
同年 9月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、申立人に対し、令和6年10月15日付けで、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をしたが、その指定期間内に意見書の提出はされなかった。
第2 訂正の適否
令和6年9月26日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
1 訂正の内容
(1)訂正事項A
特許請求の範囲の請求項1の「 前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、」との記載を、「 前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールが化石燃料由来成分からなり、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項B
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項C
特許請求の範囲の請求項5の「 前記接着剤層の前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の包装材料。」との記載を、
「 少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールが化石燃料由来成分からなり、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールである、包装材料。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項D
特許請求の範囲の請求項6の「 前記基材層は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンを含む基材フィルムを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装材料。」との記載を、
「 少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層の前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含み、
前記基材層は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンを含む基材フィルムを有する、包装材料。」に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7、10も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項E
特許請求の範囲の請求項8の「 前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の包装材料。」との記載を、
「 少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記接着剤層の前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含み、
前記印刷層は、着色剤とポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含む、包装材料。」に訂正する(請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9、10も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項F
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1乃至9のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。」と記載されているのを、「請求項1及び3乃至9のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。」に訂正する。
訂正前の請求項1~10について、訂正事項A~Fによって記載が訂正される請求項1、2、5、6、8、10における引用関係から、当該請求項と連動して訂正される請求項1、2、5~10は一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項〔1、2、5~10〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項Aについて
訂正事項Aに係る訂正は、「印刷層」の「ポリオール」が「化石由来成分からなり」、「イソシアネート化合物」が「バイオマス由来成分を含」むことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の印刷層のポリオールやイソシアネート化合物を説明する【0062】、【0155】の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項Bについて
訂正事項Bに係る訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項Cについて
訂正事項Cに係る訂正は、訂正前の請求項5が「請求項1乃至4のいずれか一項」を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用する場合について独立形式請求項に改め、さらに、「接着剤層」の「ポリオール」が「化石燃料由来成分からな」ることを限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書等の接着剤層のポリオールを説明する【0078】の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項Dについて
訂正事項Dに係る訂正は、訂正前の請求項6が「請求項1乃至5のいずれか一項」を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用する場合について独立形式請求項に改め、さらに、「印刷層」の「多官能アルコール」が「バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含」むことを限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書等の印刷層のポリエステルポリオールのバイオマス由来の多官能アルコールを説明する【0064】の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項Eについて
訂正事項Eに係る訂正は、訂正前の請求項8が「請求項1乃至7のいずれか一項」を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用する場合について独立形式請求項に改め、さらに、「接着剤層」の「多官能アルコール」が「バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含」むことを限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書等の印刷層のポリエステルポリオールのバイオマス由来の多官能アルコールを説明する【0064】、及び接着剤層において印刷層と同様のポリオールを用いることを説明する【0079】の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項Fについて
訂正事項Fに係る訂正は、訂正事項Bに係る訂正により、請求項2が削除されたことに伴い、当該請求項2を引用しないものとするものであって、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおり、訂正事項A~Fに係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5~10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1、3~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲に記載により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールが化石燃料由来成分からなり、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールである、包装材料。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物のポリエーテルポリオールである、包装材料。
【請求項4】
前記印刷層の前記多官能アルコールまたは前記多官能イソシアネートの少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む、請求項3に記載の包装材料。
【請求項5】
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールが化石燃料由来成分からなり、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールである、包装材料。
【請求項6】
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層の前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含み、
前記基材層は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンを含む基材フィルムを有する、包装材料。
【請求項7】
前記基材フィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステルを含む、請求項6に記載の包装材料。
【請求項8】
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着剤層は、前記シーラント層に接しており、
前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記接着剤層の前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含み、
前記印刷層は、着色剤とポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含む、包装材料。
【請求項9】
前記シーラント層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含む、請求項8に記載の包装材料。
【請求項10】
請求項1及び3乃至9のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。」
第4 取消理由の概要
当審で通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。以下、申立人が提出した甲第○号証は、甲○と略記する。
(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項1~10:甲1、2、4~6
・引用文献一覧
甲1:特開2015-36208号公報
甲2:特開2015-38162号公報
甲4:特開2014-37522号公報
甲5:国際公開第2017/111033号
甲6:特開2017-48360号公報
第5 当審の判断
1 引用文献について
ア 甲1の記載事項
(ア)記載事項
甲1には以下の記載がある(下線は当審において付加。また、「・・・」は省略を示す。以下同様。)。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなバイオマス由来PETフィルムを用いたバリア性フィルムを従来の化石燃料由来のPET(化石燃料由来PET)からなるフィルム(化石燃料由来PETフィルム)と代替していくには、バイオマス由来PETを用いたバリア性フィルムの機能、即ちガスバリア性能が、従来の化石燃料由来PETを用いたバリア性フィルムと比べて同等かまたはそれ以上でなければならない。
・・・
【0008】
したがって、本発明の目的は、優れたガスバリア性を有するバイオマス由来のポリエステルを主成分として含む樹脂組成物を用いたバリア性フィルム、ならびにそれを用いた積層フィルムおよび包装体を提供することである。」
・「【0024】
<バリア性フィルム>
本発明の実施形態に係るバリア性フィルムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバリア性フィルムの構成を簡略に示す部分断面図である。図1に示すように、バリア性フィルム10は、基材層11と、蒸着層12と、ガスバリア性塗布膜13とを備えている。バリア性フィルム10は、基材層11、蒸着層12およびガスバリア性塗布膜13が、基材層11、蒸着層12、ガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。
【0025】
[基材層]
基材層11は、以下で説明するポリエステルを主成分として含む樹脂組成物からなるものである。
【0026】
(ポリエステル)
ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを共重合して得られるものである。本発明において使用されるポリエステルは、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールを含んでなり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸からなる。」
・「【0109】
シーラント層21を形成する材料として、ポリエチレンを用いる場合、その原料として、化石燃料から得られるエチレンの他に、バイオマス由来のエチレンを重合したものを用いてもよい。」
・「【0127】
接着層は、積層しようとする層(例えば樹脂層)の表面に、ラミネートに用いられる接着剤(ラミネート用接着剤)を塗布して乾燥させることにより形成することができる。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。・・・」
・「【0131】
<包装体>
積層フィルム20Aは、バイオマス由来のPETフィルムからなる基材層11に、PVD法を用いて形成された蒸着層12と、更にその上にガスバリア性塗布膜13とを、二層構造として設けることにより、蒸着層12の膜厚が薄くても高いバリア性を有する蒸着層12を形成できるため、包装体として好適に用いることができる。包装体としては、例えば、包装製品(包装袋)、蓋材、ラミネートチューブ、液体用容器、紙カップ、および各種ラベル材料などを挙げることができる。包装袋として、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。積層フィルムの厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。・・・」
・「【0148】
印刷層34は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、通常のインクビヒクルの一種または二種以上を主成分とし、必要に応じて、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他などの添加剤の一種または二種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料などの着色剤を添加し、溶媒、希釈剤などで充分に混練して得たインキ組成物を用いることができる。
【0149】
上記のインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの一種または二種以上を併用することができる。」
・「【0195】
<実施例1>
[バイオマス由来のポリエステルの合成]
テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、次いで、その重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行い、ポリマーを合成した。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。得られたペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC-60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のPETと同等であった。また、得られたバイオマス由来のPETの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。
【0196】
[バイマスPETフィルムの作製]
上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径1.0~4.0μmの多孔性シリカを600ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートとを溶融混練することによりマスターバッチを作製した。次いで、上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット60質量部と、再利用PET(フィルム製膜時の耳ロスなどの製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、マスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.13μmである二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。」(なお、「バイマスPETフィルム」は「バイオマスPETフィルム」の誤記と認める。)
・「【0214】
<実施例2>
[スタンディングパウチの作製]
実施例1で作製したバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に印刷層を形成した。次いで、バリア性フィルムの印刷面と、二軸延伸ナイロンフィルム(支持体)とをドライラミネート法を用いて貼合した。さらに、二軸延伸ナイロンフィルムと、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)とをドライラミネート法を用いて貼合して、積層フィルム1を得た。積層フィルム1は、外面から、基材層、蒸着層、ガスバリア性塗布膜、印刷層、接着剤層、二軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが、順次積層されたものである。
【0215】
また、外面から順に、二軸延伸ナイロンフィルム、酸化珪素の蒸着層、ガスバリア性塗布膜、接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが積層された積層フィルム2を準備した。なお、酸化珪素の蒸着層はCVD法を用いて形成されたものであり、CVD法を用いて形成された蒸着層は、有機物、すなわち、炭素成分を含む蒸着層である。側面シートとして上記の積層フィルム1を用い、底面シートとして上記積層フィルム2を用いて、図3に示すスタンディングパウチを作製した。」
(イ)引用発明
上記(ア)より、【0026】も参照して実施例2に着目すると、甲1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「外面から、基材層、蒸着層、ガスバリア性塗布膜、印刷層、接着剤層、二軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)が、順次積層された、スタンディングパウチの側面シートに用いる積層フィルム1であって、
基材層は、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールを含んでなり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸からなるポリエステルを主成分として含むバイオマスPETフィルムからなる、スタンディングパウチの側面シートである積層フィルム1。」
イ 甲2の記載事項
甲2には以下の記載がある。
・「【背景技術】
【0002】
塗料、樹脂粒子、エネルギー線硬化型塗料、インク、接着剤、エネルギー線硬化型接着剤、ウレタンフォーム等においては、樹脂に対して弾性を付与することがしばしば要求される。例えば、自動車用塗料においては、耐傷つき性を得るために、弾性を付与することが行われ、樹脂粒子においては、塗料、化粧料等に配合された場合の感触を改善するために、弾性を付与することが行われている。更にエネルギー線硬化塗料においても、塗膜に弾性を付与することで、耐衝撃性能を付与することも望まれている。また、接着剤、ホットメルト接着剤、印刷インキ組成物、エネルギー線硬化型接着剤等の用途においてもポリオールが使用されており、これらの性能を改善することも求められている。」
・「【0028】
第1の本発明のポリエステル樹脂は、炭素数8以上の直鎖状ジカルボン酸及び/又はジオール(I)を10~90質量%含有するものである。なお、本発明の配合量割合は、原料として使用するカルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸の配合量割合に従って算出したものである。
・・・
【0032】
第1の本発明のポリエステル樹脂は、炭素数4以上の分岐状ジカルボン酸及び/若しくはジオール(II-1)を5~80質量%、並びに/又は、3以上の官能基を有するポリオール、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1の多官能単量体(II-2)を2~40質量%含有するものである。・・・
・・・
【0047】
上記(I)、(II-1)、(II-2)、(III)の原料としては、植物由来の原料を使用することが好ましい。植物由来の原料を使用することによって、近年のCO2削減に対応することができるためである。より好ましくは、全樹脂原料に対して、40~95質量%の割合で植物由来の原料を使用することが好ましい。
【0048】
第2の本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸(a)、ジオール(b)及び多官能単量体(c)を必須成分とし、ジカルボン酸由来骨格は、コハク酸及び/又はセバシン酸単位を有し、ジオール由来骨格は、1,4-ブタンジオール及び/又は1,3-プロパンジオールを有し、植物由来の原料を全樹脂原料に対して40~95質量%の割合で含有し、かつ、非晶性のポリエステル樹脂である。」
・「【0074】
(塗料組成物)
上述した本発明の第1及び第2のポリエステル樹脂は、塗料組成物における樹脂バインダーとして使用することができる。より具体的には、ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び必要に応じて使用する水酸基含有アクリル樹脂(C)を含有する塗料組成物におけるポリエステル樹脂(A)成分として使用することができる。
・・・
【0076】
上記硬化剤(B)としては特に限定されず、水酸基、カルボキシル基等と反応を生じる官能基を2以上有する化合物を使用することができる。このような化合物としては例えば、ポリイソシアネート;メラミン樹脂等のアミノ樹脂等を挙げることができる。」
・「【0111】
(接着剤組成物)
上述したポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)を含有する組成物は、接着剤組成物として使用することもできる。接着剤組成物として使用する場合、上述した塗料組成物の場合と同様の硬化剤を使用し、同様の配合で使用することができる。
本発明の接着剤組成物はその用途を特に限定されるものではないが、例えば、多層複合フィルムを製造する場合の接着剤、鋼板などの金属箔や金属板あるいは金属蒸着フィルムと、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂などのプラスティックフィルムを接着する場合の接着剤等として使用することができる。」
ウ 甲4の記載事項
甲4には以下の記載がある。
・「【請求項1】
バイオポリオール成分と、イソシアネート成分(d)とを反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、
前記バイオポリオール成分は、植物由来の炭素数が2~10の短鎖ジオール成分(a)と植物由来のカルボン酸成分(c)とを用いて合成されてなるバイオポリエステルポリオール(B)、または植物由来の炭素数が2~10の短鎖ジオール成分(a)を用いて合成されてなるバイオポリエーテルポリオール(C)であり、
前記ポリオール成分が、前記バイオポリエステルポリオール(B)である場合、前記短鎖ジオール成分(a)は、植物由来の、エチレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび1,4-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、かつ前記イソシアネート成分(d)が、石油由来のイソシアネート(d1)または/および植物由来のイソシアネート(d2)であり、
前記ポリオール成分が、前記バイオポリエーテルポリオール(C)である場合、前記短鎖ジオール成分(a)は、植物由来の、エチレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび1,4-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、かつ前記イソシアネート成分(d)が、前記植物由来のイソシアネート(d2)であるとともに、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、グルタル酸、コハク酸、ダイマー酸およびリシンから合成されたものであり、さらに
上記バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28~95質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。」
・「【0011】
本発明は、以上のような従来型技術における種々の問題に鑑みてなされたものである。その目的は、植物由来の原材料を高い比率で使用したバイオポリウレタン樹脂において、これを適用した場合に、各種コーティング剤、各種塗料、印刷インキ、成形体、フィルム、シート類に要求されている耐久性や、その性能などが従来のものと遜色がないか、或いはむしろ向上させることができ、しかも、環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材であるバイオポリウレタン樹脂を提供することにある。」
エ 甲5の記載事項
甲5には以下の記載がある。
・「【請求項1】
ジカルボン酸に由来する構造単位と、脂肪族ジオールに由来する構造単位を含むポリエステルポリオールであって、
前記脂肪族ジオール単位として1,10-デカンジオールに由来する構造単位を含み、
数平均分子量が250~5000であり、
アルデヒド体を0.01~0.5重量%含有するポリエステルポリオール。
【請求項2】
前記ジカルボン酸が、バイオマス資源から誘導されたジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリエステルポリオール。
【請求項3】
前記ジカルボン酸が、バイオマス資源から誘導されたコハク酸を含むことを特徴とする請求項2に記載のポリエステルポリオール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエステルポリオール、1種以上のポリイソシアネート、及び鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂。」
・「[0106] <用途>
本実施形態のポリウレタンは、耐薬品性に優れ、良好な柔軟性、耐熱性、耐候性を有することから、フォーム、エラストマー、弾性繊維、塗料、繊維、粘着剤、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料、活性エネルギー線硬化性重合体組成物等に広く用いることができる。」
・「[0110] 本実施形態のポリウレタンは、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料、水系ウレタン塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
[0111] 本実施形態のポリウレタンは、また、粘着剤や接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用でき、また、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる。」
オ 甲6の記載事項
甲6には以下の記載がある。
・「【請求項1】
植物由来成分を有する芳香族ポリエステルウレタンポリオール(A)を主剤とし、多官能イソシアネート化合物(H)を硬化剤として構成された二液硬化型ポリエステルウレタン接着剤組成物(S)であって、
前記芳香族ポリエステルウレタンポリオール(A)が、酸成分に植物由来成分を有する芳香族ポリエステルポリオール(P1)30~99質量%と、酸成分が石油由来成分のみからなる芳香族ポリエステルポリオール(P2)1~70質量%とを、ジイソシアネートで共重合ウレタン化された、植物由来成分を有する芳香族ポリエステルウレタンポリオールであり、
前記芳香族ポリエステルポリオール(P1)が、石油由来又は植物由来の多官能アルコールと、植物由来の脂肪族多官能カルボン酸及び石油由来の芳香族多官能カルボン酸とを必須成分としてなる反応物であって、その数平均分子量が400~8000のポリエステルポリオールで、且つ、該ポリマー中の前記芳香族多官能カルボン酸が、(P1)中の全多官能カルボン酸成分の30~80モル%を占め、
前記芳香族ポリエステルポリオール(P2)が、石油由来又は植物由来の多官能アルコールと、石油由来の脂肪族多官能カルボン酸及び石油由来の芳香族多官能カルボン酸を構成成分としてなる反応物であって、その数平均分子量が400~8000のポリエステルポリオールで、且つ、(P2)中の前記芳香族多官能カルボン酸が、(P2)中の全多官能カルボン酸成分の40~90モル%を占め、
前記主剤と前記硬化剤からなる二液硬化型ポリエステルウレタン接着剤の固形分の合計中における植物由来成分が占める割合が、10質量%以上であることを特徴とする接着剤組成物。」
・「【0035】
本発明では、多官能イソシアネート化合物(H)として、上記の他、植物由来のイソシアネートを用いることもできる。植物由来のポリイソシアネートは、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のポリイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明を対比する。
・後者の「基材層」は前者の「基材層」に相当し、以下同様に、「印刷層」は「印刷層」に、「二軸延伸ナイロンフィルム」と「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)」との間の「接着剤層」は「接着剤層」に、「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)」は「シーラント層」に、「スタンディングパウチの側面シートに用いる積層フィルム1」は「包装材料」に、それぞれ相当する。
・後者の「・・・接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)が、順次積層された」ということより、「二軸延伸ナイロンフィルム」と「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)」との間の「接着剤層」と、「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)」とが接していることが明らかである。
そうすると、上記相当関係も踏まえると、後者の「外面から、基材層、蒸着層、ガスバリア性塗布膜、印刷層、接着剤層、二軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)が、順次積層された、スタンディングパウチの側面シートに用いる積層フィルム1であって」ということは、前者の「少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、及びシーラント層を含む包装材料であって、前記接着剤層は、前記シーラント層に接して」いることに相当する。
以上のことより、本件発明1と引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本件発明1は、「前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールが化石燃料由来成分からなり、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み」という事項を有するのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
上記相違点1について検討するに、引用発明の印刷層において、たとえバイオマス由来成分を活用すること自体が困難なものではないとしても、ポリオールを化石燃料由来成分としイソシアネート化合物をバイオマス由来成分を含むこととすることは、甲1には記載も示唆もなく、また、取消理由通知で示した甲2、4~6のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の事項を有するものは記載されておらず、引用発明において、甲2、4~6に記載される事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件発明1の事項には至らない。
したがって、本件発明1は、引用発明、甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、取消理由通知で採用しなかった、甲3(特開2018-2776号公報)、甲7(特開2017-114495号公報)、甲8(三井化学株式会社、「世界オンリーワンのポリウレタン材料2製品を事業化」と題した資料、2014年12月11日)、甲9(三井化学株式会社、「大牟田工場で新規ポリウレタン材料の新プラント建設が着工しました ~特殊イソシアネート事業の拡大によるコーティング・機能材事業の強化~」と題した資料、2015年4月20日)にも、相違点1に係る本件発明1の事項は、記載も示唆もないし、他に、相違点1に係る本件発明1の事項を開示ないし示唆する証拠もない。
(2)本件発明3について
前記(1)の相当関係を踏まえると、本件発明3と引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
〔相違点2〕
本件発明3は、「前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物のポリエーテルポリオールである」という事項を有するのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
上記相違点2について検討するに、引用発明の印刷層において、ポリオールを、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物のポリエーテルポリオールであるとすることは、甲1には記載も示唆もなく、また、取消理由通知で示した甲2、4~6のいずれにも、相違点2に係る本件発明3の事項を有するものは記載されておらず、引用発明において、甲2、4~6に記載される事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明3の事項には至らない。
したがって、本件発明3は、引用発明、甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、取消理由通知で採用しなかった申立人の各証拠にも、相違点2に係る本件発明3の事項は、記載も示唆もないし、他に、相違点2に係る本件発明3の事項を開示ないし示唆する証拠もない。
(3)本件発明5について
前記(1)の相当関係を踏まえると、本件発明5と引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
〔相違点3〕
本件発明5は、「前記接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールが化石燃料由来成分からなり、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み」という事項を有するのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
上記相違点3について検討するに、引用発明の接着剤層において、たとえバイオマス由来成分を活用すること自体が困難なものではないとしても、ポリオールを化石燃料由来成分としイソシアネート化合物をバイオマス由来成分を含むこととすることは、甲1には記載も示唆もなく、また、取消理由通知で示した甲2、4~6のいずれにも、相違点3に係る本件発明5の事項を有するものは記載されておらず、引用発明において、甲2、4~6に記載される事項を適用したとしても、上記相違点3に係る本件発明5の事項には至らない。
したがって、本件発明5は、引用発明、甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、取消理由通知で採用しなかった申立人の各証拠にも、相違点3に係る本件発明5の事項は、記載も示唆もないし、他に、相違点3に係る本件発明3の事項を開示ないし示唆する証拠もない。
(4)本件発明6について
前記(1)の相当関係を踏まえると、本件発明6と引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
〔相違点4〕
本件発明6は、「前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、前記印刷層の前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含み」という事項を有するのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
上記相違点4について検討するに、引用発明の印刷層において、ポリオールを、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含むこととすることは、甲1には記載も示唆もなく、また、取消理由通知で示した甲2、4~6のいずれにも、相違点4に係る本件発明6の事項を有するものは記載されておらず、引用発明において、甲2、4~6に記載される事項を適用したとしても、上記相違点4に係る本件発明6の事項には至らない。
したがって、本件発明6は、引用発明、甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、取消理由通知で採用しなかった申立人の各証拠にも、相違点4に係る本件発明6の事項は、記載も示唆もないし、他に、相違点4に係る本件発明6の事項を開示ないし示唆する証拠もない。
(5)本件発明8について
前記(1)の相当関係を踏まえると、本件発明8と引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
〔相違点5〕
本件発明8は、「前記接着剤層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、前記接着剤層の前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含み」という事項を有するのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
上記相違点5について検討するに、引用発明の接着剤層において、ポリオールを、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、前記多官能アルコールは、バイオマス由来のヘキサメチレングリコールを含むこととすることは、甲1には記載も示唆もなく、また、取消理由通知で示した甲2、4~6のいずれにも、相違点5に係る本件発明8の事項を有するものは記載されておらず、引用発明において、甲2、4~6に記載される事項を適用したとしても、上記相違点5に係る本件発明8の事項には至らない。
したがって、本件発明8は、引用発明、甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、取消理由通知で採用しなかった申立人の各証拠にも、相違点5に係る本件発明8の事項は、記載も示唆もないし、他に、相違点5に係る本件発明8の事項を開示ないし示唆する証拠もない。
(6)本件発明4、7、9、10について
本件発明4、7、9、10は、本件発明1又は3又は5又は6又は8の事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、前記(1)~(5)と同様の理由により、引用発明、甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)小括
以上のとおり、通知した取消理由により、請求項1、3~10に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
申立人は、バイオマス由来成分を用いる場合に、本件発明の課題が解決できることが、具体例によって裏付けられていないから、請求項1~10の記載は、サポート要件違反である旨主張する。
まず、特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記観点に立って検討する。
本件発明の課題は、「従来の包装材料において、積層体の印刷層や接着剤層は化石燃料由来の材料により形成されており、包装材料全体のバイオマス度を低下させる原因であった。そのため、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層を含む積層体から構成された包装材料において、包装材料全体のバイオマス度をより高めることが求められている。」(【0009】ということにあるものと認める。
そして、請求項1、3、5、6、8において、積層体の印刷層や接着剤層において、バイオマス由来成分を含むことが特定されている。
ここで、発明の詳細な説明をみると、【0143】~【0195】に記載される各実施例は、印刷層や接着層において、バイオマス由来成分を含むことが示されており、また、請求項1、3、5、6、8における訂正事項も、前記第2の2で説示したように【0062】、【0064】、【0078】、【0079】、【0155】などに記載されている。そして、印刷層や接着剤層においてバイオマス由来成分が含まれれば、従来の印刷層や接着剤層を化石燃料由来の材料により形成されてものに比較して、バイオマス度が向上することは明らかであるので、本件発明1、3~10は、上記課題を解決できると十分認識できるものである。
したがって、請求項1、3~10の記載は、サポート要件を満たしているので、申立人の上記主張は採用できない。
2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)
申立人は、本件明細書の実施例の記載からは、当業者がその物を作れるとはいえず、発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たしていない旨主張する。
まず、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かは、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記観点に立って検討する。
前記1で述べたように、発明の詳細な説明をみると、【0143】~【0195】に記載される各実施例は、印刷層や接着層において、バイオマス由来成分を含むことが示されており、また、請求項1、3、5、6、8における訂正事項も、前記第2の2で説示したように【0062】、【0064】、【0078】、【0079】、【0155】などに記載されている。そして、印刷層や接着層において、両方をバイオマス由来成分を含むものとすることや(【0011】~【0021】、それぞれの層を構成する複数の構成要素のいずれをバイオマス由来成分を含むものとしてよいことも示されているのであるから(【0148】、【0156】)、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1、3~10を実施できるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たしているので、申立人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1、3~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2に係る特許は、訂正により削除されたことにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700103