特許異議申立
2024-700426
射出成形機用ベースフレーム
- 審判番号
- 2024-700426
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-064804
- 登録番号
- 7394008
- 請求日
- 2024年05月07日
- 審決日
- 2025年01月31日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友重機械工業株式会社
- 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
- 【異議申立人】角田 欣也
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 河原 正
- 審判官 西岡 貴央
- 分類
- P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7394008号発明「射出成形機用ベースフレーム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7394008号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7394008号の請求項1、3~13に係る特許を維持する。
特許第7394008号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7394008号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願(特願2020-64804号)は、令和 2年 3月31日を出願日とする出願であって、令和 5年11月29日にその特許権の設定の登録がされ、同年12月 7日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、その特許掲載公報発行の日から6月以内である令和 6年 5月 7日に、特許異議申立人 角田欣也(以下「異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 6年 8月19日付け:取消理由通知書
令和 6年10月21日 :特許権者による訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和 6年10月21日 :特許権者による意見書の提出
令和 6年10月22日 :応対記録(初回応対:令和 6年10月 4日)
令和 6年10月31日 :特許権者による手続補正書(補正対象:訂正請求書)
令和 6年12月13日 :異議申立人による意見書の提出
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7394008号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~13〕についてなされたものである。また、下線は訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「を備えるベースフレーム。」と記載されているのを、「を備え、前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し、前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定節所を有し、前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなるベースフレーム。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3~13も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項2に記載のベースフレーム。」と記載されているのを、「請求項1に記載のベースフレーム。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4、5、9~13も同様に訂正する。)
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項2に記載のベースフレーム。」と記載されているのを、「請求項1に記載のベースフレーム。」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~13も同様に訂正する。)
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「請求項2~8のいずれか一項に記載のベースフレーム。」と記載されているのを、「請求項1、3~8のいずれか一項に記載のベースフレーム。」に訂正する。(請求項9の記載を引用する請求項10~13も同様に訂正する。)
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10の「請求項2~9のいずれか一項に記載のベースフレーム。」と記載されているのを、「請求項1、3~9のいずれか一項に記載のベースフレーム。」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~13も同様に訂正する。)
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか一項に記載のベースプレート。」と記載されているのを、「請求項1、3~10のいずれか一項に記載のベースプレート。」に訂正する。(請求項11の記載を引用する請求項12、13も同様に訂正する。)
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれか一項に記載のベースプレート。」と記載されているのを、「請求項1、3~11のいずれか一項に記載のベースプレート。」に訂正する。(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~12のいずれか一項に記載のベースフレーム。」と記載されているのを、「請求項1、3~12のいずれか一項に記載のベースフレーム。」に訂正する。
2 訂正要件の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の「プラテン」、「プラテン取付けプレート」及び「連結ビーム」を、「前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し、前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有し」、「前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなる」ものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
(ア) 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、「プラテン」及び「プラテン取付けプレート」について、「固定プラテン32aは、全体として実質的に、正面視で四隅に丸みのあるほぼ正方形その他の矩形をなす板状を有するとともに、その下端部の底面に、ベースフレーム2の幅方向に互いに間隔をおいて底面から突出して幅方向外側に段差のあるブロック状等の一対の脚部32eを設けたものである」(【0017】)、「プラテン取付けプレート4の各サイドプレート部材5a、5bには、上記の各脚部32eの配設位置に合わせた位置にて、当該脚部32eのそれぞれのとの固定に用いられるプラテン固定箇所が設けられる」(【0017】)との記載がある。
(イ) また、本件特許明細書等には、「連結ビーム」及び「連結梁部材」について、「プラテン取付けプレート4のフレーム設置面Si側に、対をなすメインビーム3a、3bの幅方向の相互間に延びてメインビーム3a、3bどうしを連結する連結ビーム10を設ける」(【0020】)、「連結ビーム10は、具体的には、一本以上の連結梁部材10a、10bで構成することができる」(【0021】)との記載がある。
さらに、連結ビーム10を構成する二本の連結梁部材10a、10bを、長手方向に互いに離隔させて配置した(【0022】)ものとして下記図4(b)(ベースフレームの一部を切断して要部を取り出して示す、斜視図)が示され、プラテン取付けプレート4のサイドプレート部材5a、5b及びセンタープレート部材5cを、連結ビーム10(連結梁部材10a、10b)の長手方向の外側を向く側面の間に対して、可動プラテン32b側に若干ずらして配置したものとして下記図9(図4に示すベースフレームの要部の平面図の部分拡大図)が示されている。
【図4】 【図9】
[図:0001422431000001.jpg]
(ウ) そうすると、上記(ア)より、プラテンを、ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有するものとすること、プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有するものとすることは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、上記(イ)より、連結ビーム(10)が、ベースフレームの幅方向に延びる二本以上の連結梁部材(10a、10b等)を含んで構成されたものとすること、ベースフレームの長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材(10a、10b等)の配置領域と、前記プラテン取付けプレート4(サイドプレート部材5a等)の配置領域とが重複(図4、図9等)してなるものとすることは、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ) してみると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイに照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
エ 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~13についても同様である。
オ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アに照らせば、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイに照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
エ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たす。
(3) 訂正事項3、4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び訂正事項4は、訂正前の請求項3及び請求項6がそれぞれ請求項2の記載を引用するところ、訂正事項1に係る訂正により、請求項1において、請求項2の記載に対応して、「前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり」と訂正(記載が追加)されるとともに、訂正事項2に係る訂正により、請求項2が削除されたことに伴い、請求項3及び請求項6において、請求項1の記載を引用するように訂正し、記載の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アに照らせば、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイに照らせば、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
エ 請求項3の記載を引用する請求項4、5、9~13、請求項6の記載を引用する請求項7~13についても同様である。
オ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項3及び訂正事項4に係る訂正は、いずれも訂正要件を満たす。
(4) 訂正事項5~訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項9、10、11、12及び13がそれぞれ請求項2の記載を引用するところ、訂正事項2に係る訂正により、請求項2が削除されたことに伴い、請求項9、10、11、12及び13において、それぞれ引用する請求項から、請求項2を削除して、記載の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アに照らせば、訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイに照らせば、訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
エ 請求項9、10、11、12の記載をそれぞれ引用する請求項10~13、請求項11~13、請求項12~13及び請求項13についても同様である。
オ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項5~訂正事項9に係る訂正は、いずれも訂正要件を満たす。
3 まとめ
本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許第7394008号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1、3~13に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、請求項3以降についても同様とする。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
プラテンを有する型締装置を備えた射出成形機に用いられ、少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持するベースフレームであって、
当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなすメインビームと、
前記メインビーム上に溶接により接合されて配置され、前記プラテンが取り付けられるプラテン取付けプレートと、
前記プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなす前記メインビームの前記幅方向の相互間に延びて該メインビームどうしを連結する連結ビームと
を備え、
前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し、
前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有し、
前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなるベースフレーム。」
「【請求項3】
前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材のうち、前記長手方向に隣り合う少なくとも一対の前記連結梁部材が、当該長手方向に互いに離隔して配置されてなる請求項1に記載のベースフレーム。
【請求項4】
前記長手方向に互いに離隔して隣り合う前記連結梁部材が、互いに異なる前記長手方向の寸法を有する請求項3に記載のベースフレーム。
【請求項5】
前記プラテンが固定プラテン及び可動プラテンを含み、前記プラテン取付けプレートに前記固定プラテンが取り付けられ、
前記長手方向に互いに離隔して隣り合う前記連結梁部材のうち、前記可動プラテン側に位置する一方の前記連結梁部材の前記長手方向の寸法が、他方の前記連結梁部材の前記長手方向の寸法よりも小さい請求項4に記載のベースフレーム。
【請求項6】
前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材のうち、前記長手方向に隣り合う少なくとも一対の前記連結梁部材が、当該長手方向に互いに接触して配置されてなる請求項1に記載のベースフレーム。
【請求項7】
前記長手方向に互いに接触して隣り合う前記連結梁部材が、互いに等しい高さ方向の寸法を有する請求項6に記載のベースフレーム。
【請求項8】
前記長手方向に互いに接触して隣り合う前記連結梁部材が、少なくとも一部で互いに溶接により接合されてなる請求項6又は7に記載のベースフレーム。
【請求項9】
前記連結梁部材が、軸線方向に直交する断面として矩形断而を有する筒状の角パイプを含む諸求項1、3~8のいずれか一項に記載のベースフレーム。
【請求項10】
対をなす前記メインビームのそれぞれのフレーム設置面側に該メインビームから間隔をおいて配置されて、前記長手方向に延びる対をなすフレーム基部と
前記メインビームと前記フレーム基部との間に設けられた支柱と
をさらに備え、
前記長手方向で、少なくとも一本の前記連結梁部材の配置領域と、当該連結ビームのフレーム設置面側に位置する前記支柱の配置領域とが重複してなる請求項1、3~9のいずれか一項に記載のベースフレーム。
【請求項11】
前記連結ビーム上に配置されたプレート部材と、当該連結ビームとが、少なくとも一部で溶接により接合されてなる請求項1、3~10のいずれか一項に記載のベースプレート。(当合議体注:「請求項1、3~10のいずれか一項に記載のベースプレート。」との記載は、引用する請求項1、3~10の記載からみて、「請求項1、3~10のいずれか一項に記載のベースフレーム。」の明らかな誤記であると認められる。)
【請求項12】
前記連結ビームの各端部が、対をなす前記メインビームのそれぞれの幅方向の内側面に、溶接により接合されてなる請求項1、3~11のいずれか一項に記載のベースプレート。(当合議体注:「請求項1、3~11のいずれか一項に記載のベースプレート。」との記載については、引用する請求項1、3~10の記載からみて、「請求項1、3~11のいずれか一項に記載のベースフレーム。」の明らかな誤記であると認められる。)
【請求項13】
対をなす前記メインビームのそれぞれが、互いに溶接により接合された二本の主要梁部材を有する請求項1、3~12のいずれか一項に記載のベースフレーム。」
第4 取消しの理由の概要
(本件訂正請求による訂正前の)本件特許の請求項1~13に係る特許に対して、令和 6年 8月19日付けで特許権者に通知した取消しの理由(以下「取消理由」といい、この通知を「取消理由通知」という。)の概要は、次のとおりである。
「●理由1(新規性)
本件特許の請求項1~4、10~12に係る発明(以下、本件特許の請求項1に係る発明を、「本件特許発明1」といい、他の請求項も同様とする。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、10~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
●理由2(進歩性)
本件特許発明1~13は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(引用例等一覧)
甲1:特開2000-84979号公報(特許異議申立人が証拠として提出した甲第1号証。「甲第1号証」を「甲1」と略す。他も同様とする。)
甲2:特開2004-276553号公報
甲3:特開2016-124274号公報
引用例4:特開2000-289069号公報」
(合議体注:甲1は、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)における主引用例であり、甲2あるいは甲3は、それぞれが理由2(進歩性)における主引用例である。引用例4は、職権により追加した、周知の技術を例示する文献である。)
第5 当審の判断
1 甲1を主引用例とする新規性及び進歩性について
(1) 甲1に記載された事項
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 並列に配設された縦部材と、縦部材の上面に配設され且つ両縦部材に固定され、その上に射出成形機本体が搭載されるベース用平板部材と、縦部材の底面に配設され且つ両縦部材に固定された底部用平板部材とで構成された事を特徴とする射出成形機の高剛性フレーム。」
(イ) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機本体を搭載するための高剛性フレームの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形機本体(イ')は、大きく分けて金型(26)を有する金型機構部(A)と射出シリンダ(27)を有する射出機構部(B')とに別れ、それぞれの機構部(A')(B')はフレーム(C')上に搭載される。前記フレーム(C')は、図5~9から分かるように、底部フレーム部(30)と、底部フレーム部(30)から立設された複数の脚部(31)と、金型機構部(A')側の脚部(31)上に配設され、金型機構部(A')を支持する金型機構部側上部フレーム部(32)と、射出機構部(B')側の脚部(31)上に配設され、射出機構部(B')を支持する射出機構部側上部フレーム部(33)とで構成されている。
【0003】金型機構部(A')は射出機構部(B')に比べて重いため、金型機構部側上部フレーム(32)のメイン部材として、最も太径の2本の角鋼(35)を平行に配設し、それより細い断面長方形或いは正方形の角鋼(36)を繋ぎ部材として両者間に配設し、溶接にて固定している。
【0004】これに対して、射出機構部側上部フレーム(33)側では、射出機構部(B')は金型機構部(A')に比べて軽いため、射出機構部側上部フレーム(33)のメイン部材として、前記角鋼(35)より細い2本の角鋼(38)を平行に配設し、更にそれより細い断面正方形の角鋼(39)を繋ぎ部材として両者間に配設し、溶接にて固定している。そして、両上部フレーム部(32)(33)上に、金型機構部(A')及び射出機構部(B')に合わせてそれぞれ細長いベース用平鋼(40)が溶接されている。
【0005】このようなフレーム構造の設計思想は、重い金型機構部(A')を直接支える金型機構部側上部フレーム部(32)のメイン部材は出来るだけ太く頑強な部材を使用し、比較的強度を必要としない射出機構部側上部フレーム部(33)は、より華奢な構造とし、そして、強度不足の部分には補強材を追加して全体として強度上、無駄や過不足のない構造にする事にあった。
【0006】しかしながら、実際は前記設計思想に拘わらず、フレーム(C')全体としては、フレーム(C')の上部にある両上部フレーム部(32)(33)の重量が大きいためにトップヘビー状態となって共振しやすくなっている。従って、更にその上に重い射出成形機本体(イ')が搭載されると更にトップヘビー状態が促進され、稼働時に両者が共働してフレーム(C')を共振させるという問題があった。そして、そのような振動が発生した場合は、前述の補強材を追加して共振を抑えるというような事を行っていたが、全体としての強度向上による共振抑制にはさほど役に立たず、しかも部品点数だけが増加するという傾向にあった。
【0007】更に、このような複雑な構造のフレーム(C')では、フレーム(C')内に収納される製品搬送装置などの収納設計が極めて困難になり、コストアップの原因ともなっていたし、電装関係(41)については収納困難なため装置外面に取り付けざるを得ず、電装関係(41)が装置外面から大きく飛び出さざるを得ないという構造上の問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の解決課題は、従来の設計思想を破棄し、強度的には最強の構造で、機構的にも極めてシンプルなフレーム構造を追求する事にあり、加えて電装関係を高剛性フレーム内に収納できるようにする事にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】「請求項1」に記載の射出成形機の高剛性フレーム(C)は「並列に配設された縦部材(1)と、縦部材(1)の上面に配設され且つ両縦部材(1)に固定され、その上に射出成形機本体(イ)が搭載されるベース用平板部材(2)と、縦部材(1)の底面に配設され且つ両縦部材(1)に固定された底部用平板部材(3)とで構成された」事を特徴とする。
【0010】これによれば、高剛性フレーム構造(C)の基本構造は、並列に配設された縦部材(1)と、その上に配設・固定されたベース用平板部材(2)と、縦部材(1)の底面に配設・固定された底部用平板部材(3)とで構成された「直方体構造」であり、射出成形機本体(イ)の全荷重は、並列に配設された縦部材(1)で担持されることになるだけでなく、射出成形機本体(イ)の主たる作動方向(矢印方向)は高剛性フレーム(C)の長手方向、即ち縦部材(1)の伸長方向に一致しているため、前記作動によって縦部材(1)の変形を生じるような事が全くなく、極めてシンプルな構造であるにも拘わらず剛性不足を生じるような事はない。
【0011】しかもこのようなシンプルな構造であるため、内部空間が広くなり、しかも不要な突起部分などがなく内部空間自体もシンプルなため電装関係や製品搬送装置、油圧装置や油圧配管など高剛性フレーム(C)の内部に収納される部品の収納設計が極めて容易になる。
【0026】
・・・略・・・
【図面の簡単な説明】
・・・略・・・
【図5】従来のフレームの正面図
【図6】従来のフレームの平面図
【図7】従来の背面図
【図8】本発明の電装関係の部分拡大正面図
【図9】図8の平面図」
(ウ) 「【図5】
[図:0001422431000002.jpg]
【図6】
[図:0001422431000003.jpg]
【図7】
[図:0001422431000004.jpg]
【図8】
[図:0001422431000005.jpg]
【図9】
[図:0001422431000006.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記(1)の甲1の【0002】~【0003】及び【図5】~【図9】の【従来の技術】の「射出成形機本体(イ')」の記載によれば、甲1には、「射出成形機本体(イ')」に用いられ、「金型機構部(A')」と「射出機構部(B')」がその上に「搭載される」「フレーム(C')」の発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「射出成形機本体(イ')に用いられ、金型(26)を有する金型機構部(A')と射出シリンダ(27)を有する射出機構部(B')がその上に搭載される、フレーム(C')であって、
下記の【図5】(フレームの正面図)、【図6】(フレームの平面図)、【図7】(背面図)、【図8】(電装関係の部分拡大正面図)及び【図9】(【図8】の平面図)に図示されるように、
底部フレーム部(30)と、底部フレーム部(30)から立設された複数の脚部(31)と、金型機構部(A')側の脚部(31)上に配設され、金型機構部(A')を支持する金型機構部側上部フレーム部(32)と、射出機構部(B')側の脚部(31)上に配設され、射出機構部(B')を支持する射出機構部側上部フレーム部(33)とで構成され、(【0002】)
金型機構部(A')は射出機構部(B')に比べて重いため、金型機構部側上部フレーム(32)のメイン部材として、最も太径の2本の角鋼(35)を平行に配設し、それより細い断面長方形或いは正方形の角鋼(36)を繋ぎ部材として両者間に配設し、溶接にて固定し、(【0003】)
射出機構部側上部フレーム(33)側では、射出機構部(B')は金型機構部(A')に比べて軽いため、射出機構部側上部フレーム(33)のメイン部材として、前記角鋼(35)より細い2本の角鋼(38)を平行に配設し、更にそれより細い断面正方形の角鋼(39)を繋ぎ部材として両者間に配設し、溶接にて固定し、
両上部フレーム部(32)(33)上に、金型機構部(A')及び射出機構部(B')に合わせてそれぞれ細長いベース用平鋼(40)が溶接され、(【0004】)
装置外面に電装関係(41)が装置外面から大きく飛び出すように取り付けた、(【0007】)
フレーム(C')。
【図5】
[図:0001422431000007.jpg]
【図6】
[図:0001422431000008.jpg]
【図7】
[図:0001422431000009.jpg]
【図8】
[図:0001422431000010.jpg]
【図9】
[図:0001422431000011.jpg]
」
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と、甲1発明を対比する。
(ア) プラテン、型締装置、射出成形機、ベースフレーム
a 甲1発明の「フレーム(C')」の正面図(【図5】)、背面図(【図7】)及び技術常識から、甲1発明の「金型機構部(A')」は、【図5】において金型(26)と射出シリンダ(27)との間に、「金型(26)」を備えた固定プラテンを備えていることは明らかなことである。
b 甲1発明の「金型機構部(A')」における上記aの「金型(26)」を備えた固定プラテンは、本件特許発明1の「プラテン」に相当する。
また、甲1発明の「金型機構部(A')」及び「射出成形機本体(イ')」は、それぞれ本件特許発明1の、「プラテンを有する」とされる、「型締装置」、及び、「射出成形機」に相当する。
c 甲1発明の「フレーム(C')」は、「射出成形機本体(イ')に用いられ、金型(26)を有する金型機構部(A')」「がその上に搭載される」ものである。
そうすると、甲1発明の「フレーム(C')」は、本件特許発明1の「ベースフレーム」に相当し、上記bより、本件特許発明1の「ベースフレーム」と甲1発明の「フレーム(C')」は、「プラテンを有する型締装置を備えた射出成形機に用いられ、少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持する」点で共通する(甲1発明の【図5】~【図7】からも理解できることである。)。
(イ) メインビーム
甲1発明の「金型機構部側上部フレーム(32)のメイン部材」である「最も太径の」「平行に配設し」た「2本の角鋼(35)」(平面図【図6】参照)は、本件特許発明1の「メインビーム」に相当し、本件特許発明1の「メインビーム」と甲1発明の「2本の角鋼(35)」は、「当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなす」点で共通する(甲1発明の【図6】からも理解できることである。)。
(ウ) プラテン取付けプレート
a 甲1発明の「細長いベース用平鋼(40)」は、「金型機構部(A')」「に合わせて」「金型機構部側上部フレーム部(32)」「上に」「溶接され」ているところ、甲1発明の正面図【図5】及び背面図【図7】からみて、甲1発明の「細長いベース用平鋼(40)」は、2本からなり、それぞれが「2本の角鋼(35)」(本件特許発明1の「メインビーム」に相当(上記(イ)))の上に取り付けられていることが分かる。
同様に、甲1発明の当該2本の「細長いベース用平鋼(40)」には、上記(ア)の「金型機構部(A')」における「金型(26)」を備えた固定プラテン(本件特許発明1の「プラテン」に相当(上記(ア)b)が取り付けられていることが分かる。
b 上記(イ)と上記aより、甲1発明の2本の「ベース用平鋼(40)」は、本件特許発明1の、「前記メインビーム上に溶接により接合されて配置され、プラテンが取り付けられる」とされる、「プラテン取付けプレート」に相当する。
(エ) 連結ビーム
a 甲1発明の「2本の角鋼(35)」「より細い断面長方形或いは正方形の角鋼(36)」は、「2本の角鋼(35)」の「繋ぎ部材として両者間に配設し、溶接にて固定」するものであるところ、甲1発明の【図5】~【図7】からみて、甲1発明の「角鋼(36)」は、3本からなり、「ベース用平鋼(40)」の「フレーム(C')」設置面側で、対をなす「2本の角鋼(35)」(本件特許発明1の「メインビーム」に相当(上記(イ))の「フレーム(C')」幅方向の相互間に伸びて、「2本の角鋼(35)」どうしをそれぞれが連結していることが理解できる。
b 上記aより、甲1発明の「繋ぎ部材として」の、3本の「角鋼(36)」は、本件特許発明1の「連結ビーム」に相当し、本件特許発明1の「連結ビーム」と甲1発明の3本の「角鋼(36)」は、「前記プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなす前記メインビームの前記幅方向の相互間に延びて該メインビームどうしを連結する」点で共通する。
c 甲1発明の【図5】~【図6】からみて、甲1発明の3本の「角鋼(36)」の各配置領域は、「フレーム(C')」の長手方向で、(2本の)「ベース用平鋼(40)」の配置領域と重複していることが理解できる。
甲1発明の個々の「角鋼(36)」は、本件特許発明1の「連結梁部材」に相当する。
そうすると、上記(ウ)と上記aとbより、本件特許発明1と甲1発明は、「前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなる」点において共通する。
(オ) 上記(ア)~(エ)より、本件特許発明1の「ベースフレーム」と、甲1発明の「フレーム(C')」は、「メインビームと」、「プラテン取付けプレートと」、「連結ビームと」「を備える」点で共通する。
イ 一致点及び相違点
上記アの対比結果を踏まえと、本件特許発明1と甲1発明は、
「 プラテンを有する型締装置を備えた射出成形機に用いられ、少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持するベースフレームであって、
当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなすメインビームと、
前記メインビーム上に溶接により接合されて配置され、前記プラテンが取り付けられるプラテン取付けプレートと、
前記プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなす前記メインビームの前記幅方向の相互間に延びて該メインビームどうしを連結する連結ビームと
を備え、
前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなるベースフレーム。」の構成で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1-1)
本件特許発明1では、「前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し」、「前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有し」ているのに対して、甲1発明においては、「金型(26)を有する金型機構部(A')」「その上に搭載される」「フレーム(C')」の正面図【図5】、平面図【図6】及び背面図【図7】に図示された範囲にとどまる点。
ウ 判断
相違点1-1について検討する。
(ア) 新規性について
a 甲1発明の正面図【図5】、平面図【図6】及び背面図【図7】からは、【図5】の中央付近の位置に固定された、「金型機構部(A')」における「金型(26)」を備えた固定プラテン(「プラテン」)は、2本の「細長いベース用平鋼(40)」(「プラテン取付けプレート」に相当)に搭載され、取り付けられたものであること、また、2本の「細長いベース用平鋼(40)」(のそれぞれ)が、固定プラテン(「プラテン」)を搭載し固定するための箇所を有していることまでは把握できるものの、固定プラテンが、「フレーム(C')」の幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し、2本の「細長いベース用平鋼(40)」が、プラテンの一対の脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有することまでは把握することができない。
b そうしてみると、相違点1-1は実質的な相違点を構成しているから、本件特許発明1は、甲1発明であるということはできない。
(イ) 進歩性について
a 甲1でいう「本発明」は、【0002】~【0004】に記載された従来の技術である「フレーム(C')」における、
「フレーム(C')全体としては、フレーム(C')の上部にある両上部フレーム部(32)(33)の重量が大きいためにトップヘビー状態となって共振しやすく」、「その上に重い射出成形機本体(イ')が搭載されると更にトップヘビー状態が促進され、稼働時に両者が共働してフレーム(C')を共振させるという問題があった」、「そのような振動が発生した場合は、前述の補強材を追加して共振を抑えるというような事を行っていたが、全体としての強度向上による共振抑制にはさほど役に立たず、しかも部品点数だけが増加するという傾向にあった」(【0006】)、
「このような複雑な構造のフレーム(C')では」、「コストアップの原因ともなっていたし」、「電装関係(41)については」、「装置外面から大きく飛び出さざるを得ないという構造上の問題もあった」(【0007】)との問題点に鑑みなされたものであって、
「従来の設計思想を破棄し、強度的には最強の構造で、機構的にも極めてシンプルなフレーム構造を追求する事にあり、加えて電装関係を高剛性フレーム内に収納できるようにする」(【0008】)ことを課題として、
射出成形機の高剛性フレーム(C)を、「並列に配設された縦部材(1)と、縦部材(1)の上面に配設され且つ両縦部材(1)に固定され、その上に射出成形機本体(イ)が搭載されるベース用平板部材(2)と、縦部材(1)の底面に配設され且つ両縦部材(1)に固定された底部用平板部材(3)とで構成」すること(【0009】)を課題解決手段とするものである。
b これに対し、【従来の技術】の記載から把握される甲1発明の「フレーム(C')」は、強度、振動、複雑な構造及び電装関係が装置外面から大きく飛び出る点で好ましくないものである。
そうすると、甲1の記載に接した当業者が、強度、振動、複雑な構造及び電装関係が装置外面から大きく飛び出る点で劣る従来技術の甲1発明の「フレーム(C')」について、さらにこれを改良、設計変更しようと考えることはない。
さらに言えば、甲1でいう本発明は、上記aで述べたとおり射出成形機の高剛性フレーム(C)であり、フレームに搭載される金型機構部のプラテンのプラテン取り付けプレート(ベース用平鋼(40)、ベース用平板部材(2))の取付・固定は何ら注目されておらず、甲1の発明の詳細な説明には、プラテンのプラテン取り付けプレートへの取付・固定構造について何ら記載も示唆もないから、甲1には、プラテンのプラテン取り付けプレートへの取付・固定構造に着目して、プラテンを、フレームの構幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有する構造とし、プラテン取付けプレートを、プラテンの一対の脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有する構造とする動機付けとなるような記載はない。
そうしてみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
異議申立人が提出した甲2、甲3及び職権により追加した引用例4に記載された事項を含めて検討したとしても上記判断は変わらない。
c 令和 6年12月13日提出の意見書における異議申立人の主張について
(a) 同意見書3~5頁において、異議申立人は、
甲3の図1を参照するに、「2本の第二脚部22」は、互いに間隔をおいて「固定プラテン5」に設けられる一対の脚部であり、このような甲3に基づいて幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有するプラテンを甲1に補うことは、当業者であれば容易に成し得たことである、
射出成形機のベースフレームにおける固定プラテンの位置を固定することは本技術分野における技術常識であるから、プラテン取付けプレートである「ベース用平鋼(40)」に一対の脚部を固定するための固定箇所を設ける程度のことは、当業者であれば技術常識の範疇で容易に成し得たことである、
したがって、訂正後の請求項1の訂正箇所は、全て、甲1または甲3により開示ないし示唆されている、
よって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲1に甲3を組み合わせて当業者が容易に発明できたものであり、進歩性がない、
と主張する。
(b) しかしながら、上記bで述べたとおり、甲1に接した当業者が、強度、振動、複雑な構造及び電装関係が装置外面から大きく飛び出る点で劣る従来技術の甲1発明の「フレーム(C')」について、さらにこれを改良、設計変更しようとは考えることはないし、甲3に「2本の第二脚部22」が記載されていたとしても、甲1発明にこれを採用する動機付けもない。
したがって、異議申立人の上記(a)の主張を採用することはできない。
d 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。
また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、あるいは、甲1に記載された発明、甲2、甲3、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3) 本件特許発明3~13について
本件特許発明3~13は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記(2)ウで述べたとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということができず、また、甲1に記載された発明及び甲2、甲3、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない以上、本件特許発明3~13についても、同様な理由により、甲1に記載された発明であるということができず、また、甲1に記載された発明及び甲2、甲3、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない
2 甲2を主引用例とする進歩性について
(1) 甲2に記載された事項
ア 甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形機に関し、特に射出成形機のベースフレームに特徴を有する射出成形機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
射出成形機の型締機構においては、固定プラテンに取り付けられた固定側金型と、可動プラテンに取り付けられた可動側金型とを、可動プラテンを移動させて型の開閉、型締めを行うものである。そのため、可動側金型を固定側金型に対して平行に移動させる必要がある。すなわち固定側金型の面に対して垂直方向に可動側金型が移動し、かつ可動側金型の固定側金型との接合面は平行に保持される必要がある。この平行度が崩れると、金型の開閉動作が円滑に実行できなくなり、さらには、片当たりの型締めとなり、成形不良が生じ易くなる。又金型の破損が生じる可能性が大きくなる。
【0003】
そこで、この可動側金型を固定側金型に対して平行度を保持して移動させるようにするために、通常、可動プラテンにスライドプレート、ローラ、直動ガイド等のプラテンサポートを取り付け、射出成形機のベースフレーム上に設けた支持面上を摺動させ可動プラテン及び可動側金型を平行移動させている・・・略・・・。
【0004】
しかし、図8に示すようにベースフレーム1は、その自重、該ベースフレーム1上に載置され移動する可動プラテン6の重量、さらには、固定プラテン5やリアプラテン7の重量の影響を受けて撓みが生じる。その結果、固定側、可動側の金型の平行度、すなわち固定プラテン5と可動プラテン6の平行度はこのベースフレーム1の撓みによって影響を受ける。固定プラテン5と可動プラテン6の平行度はベースフレームの剛性に依存することになる。
【0005】
固定プラテンと可動プラテンの平行度を高精度に保持するには、ベースフレームの剛性を上げる必要があるが、ベースフレームには固定プラテンやリアプラテンの重量も加わるものであるから、撓みを抑え、高精度の平行度を保持できる剛性を有するベースフレームを得るには非常にコストがかかるという問題がある。
・・・略・・・
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
可動プラテンを固定プラテンに対して平行に移動させるためにベースフレーム上にスライドプレートやローラ等のプラテンサポートを設けたとしても、ベースフレーム自体が撓めば、可動プラテンの平行移動の精度が低下する。又、ベースフレーム上にさらにプレート等の補強部材を設け、該補強部材の上で可動プラテンを移動させるようにしても、ベースフレーム自体には、固定プラテン、リアプラテン、可動プラテンの重量が加わることになるので、ベースフレームの撓みが発生し、可動プラテンの平行移動を高精度に保持することは難しい。
そこで、本発明の目的は、ベースフレームの撓みを少なくすると共に、可動プラテンの平行移動の精度を向上させた射出成形機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に係わる発明は、タイバーによって連結された固定プラテンとリアプラテン及びタイバーに沿ってスライドする可動プラテンを持ち、固定プラテンと可動プラテンにより金型の型開閉を行う型締機構が床面上にベースフレームを介して載置された射出成形機において、固定プラテン及びリアプラテンを支持するベースフレームと前記可動プラテンを支持するベースフレームとが別々に床面上に載置されていることを特徴とするものである。
・・・
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態における射出成形機の正面図、図2は図1におけるA-A線矢視図である。
本実施形態では、第1、第2の2つのベースフレーム1a,1bが設けられ、第1のベースフレーム1a上には、射出機構3、型締機構2の固定プラテン5が固定され、又、型締機構2のリアプラテン7が摺動自在に載置されている。この実施形態では、型締機構2としてダブルトグル機構が用いられており、固定プラテン5には4本のタイバー8の一端がナット等により取り付けられている。
・・・略・・・
【0015】
タイバー8には、可動プラテン6が挿入され、該可動プラテン6とリアプラテン7間にはダブルトグル機構9が配設され、該ダブルトグル機構9を駆動するサーボモータ等の駆動源10がリアプラテン7に設けられている。該駆動源10を駆動してダブルトグル機構9を作動させ、可動プラテン6をタイバー8に沿ってスライドさせ、固定プラテン5に取り付けられた固定側金型12と可動プラテン6に取り付けられた可動側金型13の金型開閉、型締めを行う。
【0016】
可動プラテン6には、スライドプレート、ローラ、直動ガイド等から構成されるプラテンサポート11が下端に取り付けられており、このプラテンサポート11は、可動プラテン6の移動によって第2のベースフレーム1b上を摺動し、可動プラテン6を支えるものである。図2に示すように第2のベースフレーム1bは、第1のベースフレーム1aとは間隙を設け別体で構成されている。
・・・略・・・
【0017】
型締機構2を構成する固定プラテン5及びリアプラテン7は、第1のベースフレーム1aに取り付けられて支持されているが、可動プラテン6は第2のベースフレーム1bで支持される構造となっている。
・・・略・・・
【0019】
第2のベースフレーム1bは、第1のベースフレーム1aと別体で構成されているから、第1のベースフレーム1aが撓んだとしても図3に示すように、第2のベースフレーム1bはその影響を受けないので、可動プラテン6は固定プラテンに対して平行度を従来と比べて高精度に維持して移動させることができる。
【0020】
図4は、本発明の第2の実施形態における第1、第2のベースフレーム1a,1bのみを示す斜視図である。第1のベースフレーム1aは、第1の実施形態と同様に、射出機構3,型締機構2の固定プラテン5,リアプラテン7を支持し、第2のベースフレーム1bは、型締機構2の可動プラテン6をプラテンサポート11を介して摺動自在に支える点では、第1の実施形態と同一である。相違する点は、第1の実施形態においては第2のベースフレーム1bと第1のベースフレーム1aは接続されておらず別体で構成されていた。しかし、この第2の実施形態では、第1のベースフレーム1aと第2のベースフレーム1bは第1のベースフレーム1aの撓みの影響が少ない固定プラテン5側で、図4において符号P1で示すような位置で溶接等により接合し固定されている。
【0021】
第2のベースフレーム1bを第1のベースフレーム1aの固定プラテン側で溶接等により固定する場合には、上面が第1のベースフレーム1a上面と一致するように高さを調整して固定し、マウント22によって、第2のベースフレーム1bの上面の水平度を調整する。
・・・略・・・
【0027】
【発明の効果】
本発明は、固定プラテン、リアプラテンの重量により、これを支えるベースフレームが撓んでも、可動プラテンを支持するベースフレームはその影響を受けず、可動プラテンの重量を支えるのみであるから、撓み量は小さくなり、可動プラテンの傾きを小さく抑えることができる。これにより、固定プラテンに対する平行度を精度高く保持でき、金型の開閉、型締めを精度よく行うことができる。又、型締め動作の精度を向上させるには、可動プラテンを支えるベースフレームのみの剛性を上げればよく、ベース全体の剛性を上げるよりも低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の正面図である。
【図2】図1におけるA-A線矢視図である。
【図3】第1の実施形態におけるベースフレームの撓みを説明する説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるベースフレームのみを示す斜視図である。
・・・略・・・・
【図8】従来の射出成形機におけるベースフレームの撓みを説明する説明図である。」
(イ) 「【図1】
[図:0001422431000012.jpg]
【図2】
[図:0001422431000013.jpg]
【図3】
[図:0001422431000014.jpg]
【図4】
[図:0001422431000015.jpg]
・・・略・・・・
【図8】
[図:0001422431000016.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
(ア) 上記アの甲2の記載からみて、甲2には、「第2のベースフレーム1bと第1のベースフレーム1aは接続されておらず別体で構成され」(【0020】)た、甲2でいう本発明の「第1の実施形態」の「射出成形機」(【0014】~【0017】、【0019】、【図1】(本発明の第1の実施形態の正面図)及び【図2】(図1におけるA-A線矢視図))である、
「第1のベースフレーム1aは」、「射出機構3,型締機構2の固定プラテン5,リアプラテン7を支持し、第2のベースフレーム1bは、型締機構2の可動プラテン6をプラテンサポート11を介して摺動自在に支える点では」「同一である」が、「第1のベースフレーム1aと第2のベースフレーム1bは第1のベースフレーム1aの撓みの影響が少ない固定プラテン5側で、図4において符号P1で示すような位置で溶接等により接合し固定されている」点で相違する「第2の実施形態」の「射出成形機」(【0020】及び【図4】(第2の実施形態におけるベースフレームのみを示す斜視図))が記載されている。
(イ) 上記ア及び上記(ア)より、甲2には、「第2の実施形態」の「射出成形機」に用いられる、【図4】にその斜視図が示された、「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の発明として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 射出成形機に用いられる、下記の【図4】のその斜視図が示された、第1、第2のベースフレーム1a,1bであって、第1のベースフレーム1aは、射出機構3,型締機構2の固定プラテン5,リアプラテン7を支持し、第2のベースフレーム1bは、型締機構2の可動プラテン6をプラテンサポート11を介して摺動自在に支えるものであり、(【0020】)
第1のベースフレーム1a上には、射出機構3、型締機構2の固定プラテン5が固定され、型締機構2のリアプラテン7が摺動自在に載置され、型締機構2としてダブルトグル機構が用いられており、固定プラテン5には4本のタイバー8の一端がナット等により取り付けられ、(【0014】)
タイバー8には、可動プラテン6が挿入され、該可動プラテン6とリアプラテン7間にはダブルトグル機構9が配設され、該ダブルトグル機構9を駆動するサーボモータ等の駆動源10がリアプラテン7に設けられ、該駆動源10を駆動してダブルトグル機構9を作動させ、可動プラテン6をタイバー8に沿ってスライドさせ、固定プラテン5に取り付けられた固定側金型12と可動プラテン6に取り付けられた可動側金型13の金型開閉、型締めを行い、(【0015】)
可動プラテン6には、プラテンサポート11が下端に取り付けられており、プラテンサポート11は、可動プラテン6の移動によって第2のベースフレーム1b上を摺動し、可動プラテン6を支え、(【0016】)
型締機構2を構成する固定プラテン5及びリアプラテン7は、第1のベースフレーム1aに取り付けられて支持されているが、可動プラテン6は第2のベースフレーム1bで支持される構造となっており、(【0017】)
第1のベースフレーム1aと第2のベースフレーム1bは第1のベースフレーム1aの撓みの影響が少ない固定プラテン5側で、【図4】において符号P1で示すような位置で溶接等により接合し固定されている、(【0020】)
第1、第2のベースフレーム1a,1b。
【図4】
[図:0001422431000017.jpg]
」
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
(ア) プラテン、型締装置、射出成形機
a 甲2発明の「第1、第2のベースフレーム1a,1b」は、「射出成形機に用いられる」ものであって、「第1のベースフレーム1a上には、射出機構3、型締機構2の固定プラテン5が固定され、型締機構2のリアプラテン7が摺動自在に載置され」るものである。
また、甲2発明においては、「可動プラテン6には、プラテンサポート11が下端に取り付けられており、プラテンサポート11は、可動プラテン6の移動によって第2のベースフレーム1b上を摺動し、可動プラテン6を支え」ることにより、「第2のベースフレーム1bは、型締機構2の可動プラテン6をプラテンサポート11を介して摺動自在に支えるものであ」る。
b 甲2発明の「固定プラテン5」、「リアプラテン7」及び「可動プラテン6」は、本件特許発明1の「プラテン」に相当する。また、甲2発明の「型締機構2」は、本件特許発明1の、「プラテンを有する」とされる、「型締装置」に相当する。
そうすると、甲2発明の「射出成形機」は、本件特許発明1の、「プラテンを有する型締装置を備えた」とされる、「射出成形機」に相当する。
(イ) ベースフレーム
a 上記(ア)より、甲2発明においては、「第1、第2のベースフレーム1a,1b」上に「型締機構2」(「固定プラテン5」、「可動プラテン6」等)が載置され、支持されるといえる。
b 甲2発明の斜視図【図4】からみて、「第1、第2のベースフレーム1a,1b」は、それぞれが、その幅方向に互いに間隔をおいて位置し、その長手方向に並んで延びる対をなす上側メインビームと下側メインビームを備えて、それぞれのベースフレームを構成しているということができる。
c 上記aとbより、甲2発明の「第1、第2のベースフレーム1a,1b」は、本件特許発明1の、「少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持する」とされる、「ベースフレーム」に相当する。
(ウ) メインビーム、プラテン取付けプレート
a 甲2発明の【図4】に斜視図からみて、「第1、第2のベースフレーム1a,1b」は、上記(イ)bで述べた、(それぞれの)対を成す上側メインビームの上に共通のプレート部材(以下「甲2発明共通プレート部材」という。)を備えていることが理解できる。
また、同【図4】及び技術常識より、「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の上側メインビーム上の甲2発明共通プレート部材上に「型締機構2の固定プラテン5が固定され」ることは明らかである(第2の実施形態の前提である、第1の実施形態の正面図【図1】からも理解できることである。)。
b 上記(イ)bとaより、甲2発明の「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の(それぞれの)対を成す上側メインビームは、本件特許発明1の「メインビーム」に相当し、両者は、「当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなす」点において共通する。
上記aで述べた甲2発明共通プレート部材は、本件特許発明1の「プラテン取付けプレート」に相当し、両者は、「前記メインピーム上に」「配置され、前記プラテンが取り付けられる」点で共通する。
c 上記bより、本件特許発明1と、甲2発明とは、「メインビームと」、「プラテン取付けプレートと」「を備え」ている点で共通する。
イ 一致点及び相違点
上記アの対比結果を踏まえると、本件特許発明1と甲2発明は、
「 プラテンを有する型締装置を備えた射出成形機に用いられ、少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持するベースフレームであって、
当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなすメインビームと、
前記メインビーム上に配置され、前記プラテンが取り付けられるプラテン取付けプレートと、
を備えるベースフレーム。」の構成で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2-1-1)
本件特許発明1においては、「プラテン取付けプレート」が、前記メインビーム上に「溶接により接合されて」いるのに対して、甲2発明においては、これが明らかでない点。
(相違点2-1-2)
本件特許発明1においては、「前記プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなす前記メインビームの前記幅方向の相互間に延びて該メインビームどうしを連結する連結ビーム」「を備え」、「前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなる」のに対して、甲2発明においては、これが明らかでない点。
(相違点2-1-3)
本件特許発明1においては、「前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し」、「前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有し」ているのに対して、甲2発明においては、これが明らかでない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点2-1-2についてまず検討する。
(ア) 甲2発明の斜視図【図4】からは、甲2発明においては、甲2発明共通プレート部材の「第1、第2のベースフレーム1a,1b」設置面側で、
「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の長手方向の両端部のそれぞれにおいて、「第1のベースフレーム1a」の対をなす上側メインビームの「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の幅方向の相互間に延びて「第1のベースフレーム1a」どうしを連結する部材を備え、「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の長手方向の固定プラテン5側と反対側の端部において、「第2のベースフレーム2a」の対をなす上側メインビームの「第1、第2のベースフレーム1a,1b」の幅方向の相互間に延びて「第2のベースフレーム2a」どうしを連結する部材を備えていることまでは把握できる。
そうすると、甲2発明は、プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなすメインビームのベースフレーム幅方向の相互間に延びてメインビームどうしを連結する連結ビームを備え、連結ビームが、ベースフレーム幅方向に延びる二本以上(合計3本)の連結梁部材を含んで構成されているとまではいえる。しかしながら、同【図4】からは、プラテン取付けプレート(甲2発明共通プレート部材)直下に連結ビーム(連結梁部材)を備えているとまではいえず、二本以上の連結梁部材の配置領域とプラテン取付けプレートの配置領域とが重複しているということもできない。
(イ)a また、甲2発明は、固定プラテン及びリアプラテンを支持するベースフレームと可動プラテンを支持するベースフレームとが別々に床面上に載置されている構成(甲2の【0012】【課題を解決するための手段】)とすることにより、固定プラテン、リアプラテンの重量により、これを支えるベースフレームが撓んでも、可動プラテンを支持するベースフレームはその影響を受けず、可動プラテンの重量を支えるのみであるから、撓み量は小さくなり、可動プラテンの傾きを小さく抑えることができる(甲2の【0027】【発明の効果】)ものであるところ、甲2には、二本以上の当該連結する部材の配置領域を、プラテン取付けプレート(甲2発明共通プレート部材)の配置領域を重複させることは記載も示唆もされていない。
b さらに、ベースフレームの剛性を上げるために、ベースフレーム長手方向に延びる一対のメインビームどうしを連結する連結梁部材を(複数)設けることが本件特許出願時に周知の技術であるとしても、上記aで述べたとおり、(固定プラテン及びリアプラテンを支持するベースフレームと可動プラテンを支持するベースフレームとが別々に床面上に載置されている)甲2発明においては、固定プラテンを支えるベースフレームの撓みを許容するものであるから、甲2発明において、ベースフレームの剛性を上げる必要がなく、二本以上の連結梁部材を、その配置領域がプラテン取付けプレート(甲2発明共通プレート部材)の配置領域と重複するようにさらに設ける動機付けはない。
そうしてみると、甲2発明において、相違点2-1-2に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
甲1、甲3及び引用例4に記載された事項を含めて検討しても上記判断は変わらない。
(ウ) 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、本件特許出願時の周知の技術及び甲2、甲3、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3) 本件特許発明3~13について
本件特許発明3~13は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記(2)ウで述べたとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、本件特許出願時の周知の技術及び甲2、甲3、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件特許発明3~13についても、同様な理由により、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、本件特許出願時の周知の技術及び甲2、甲3、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4) 上記(1)~(3)においては、甲2の第2の実施形態に基づき、甲2発明を認定し、対比、判断を行ったが、これに替えて、第1の実施形態、第3の実施形態あるいは第4の実施形態に基づき、対比、判断を行っても、結論は同じである。
3 甲3を主引用例とする新規性及び進歩性について
(1) 甲3に記載された事項
ア 甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の固定プラテンに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は一般的な射出成形機の構成を説明するための概略図である。射出成形機は、ベースフレーム4上に型締機構部1と射出機構部2とを対向させて配置させ、両者の間のノズルタッチ機構3において、射出機構部2のスクリュ17の先端のノズルを固定側金型7の樹脂注入口に密着させている。
型締機構部1は、固定プラテン5、可動プラテン6を型締軸線に沿って備え、固定プラテン5に設けられたタイバー挿通部24にタイバー25を挿通して、可動プラテン6においても図示しないタイバー挿通部にタイバー25を挿通することによって、固定プラテン5と可動プラテン6とを、可動プラテン6が型締軸線方向に移動可能に装着する。固定プラテン5と可動プラテン6との間が型締空間となり、その型締空間側において、固定プラテン5には固定側金型7が装着され、可動プラテン6には可動側金型8が装着されている。
【0003】
可動プラテン6にはトグル機構であるクロスヘッドリンク11が連結され、クロスヘッドリンク11はボールネジ12のナットに連結されている。ボールネジ12のねじ軸はプーリ、ベルト機構13を介してサーボモータ14によって駆動される。サーボモータ14を駆動し、可動プラテン6を固定プラテン5に対して前後進させることによって、固定側金型7と可動側金型8の開閉と型締めを行う。
・・・略・・・
【0005】
図6は、射出成形機におけるベースフレーム4と固定プラテン5の斜視図である。ベースフレーム4は、上方に2本平行に配置された上メインパイプ32(32a、32b)と、下方に同じく2本平行に配置された下メインパイプ33(33a、33b)とを備え、上メインパイプ32aと上メインパイプ32bとの間が成形後の製品落下口31となる。上メインパイプ32と下メインパイプ33との間は複数の縦柱34によって連結され、上メインパイプ32と下メインパイプ33とによって型締機構部1、射出機構部2等が支えられる。
【0006】
すでに述べたように固定プラテン5はベースフレーム4に固定される。成形時の射出シリンダ先端のノズルを密着させた際のノズルタッチ力や、型締め時に受ける型締力によって、固定プラテン5が傾くように力を受ける。これらの力による固定プラテン5の傾きを防止するために、固定プラテン5はベースフレーム4の上メインパイプ32の鋼材にボルト等で固定される。
【0007】
図8は、従来の射出成形機における固定プラテン5の固定の例である。図8に示された固定プラテン5は、ベースフレーム4の上メインパイプ32に強固に固定されている。また、その他の固定方法として、下記の先行技術文献に開示されているような技術がある。
特許文献1には、図9に示されているように、ベースフレームに固定された際の固定プラテンの下側の略中央部に、固定プラテンの本体から突出する脚部を設けてベースフレームに固定する技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、固定プラテンの設けたリブとベースフレームの支柱を連結して固定プラテンを支えることで、固定プラテンの傾きを防止する技術が開示されている。
特許文献3には、固定プラテンの取付面を射出装置側に延長して、延長部分をボルトによってフレームに固定するようにして、固定プラテンの倒れを防止する技術が開示されている。
特許文献4には、固定プラテンの両側底部にベースフレームへの固定手段を有する脚部を設け、固定プラテンの中央底部には倒れ防止用の脚部を設ける技術が開示されている。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図8に示されている技術は、固定プラテン5がベースフレーム4の上メインパイプ32に強固に固定されている。このように固定された固定プラテン5において型締力を受けると、図7に示されているように、固定プラテン5のベースフレーム4に固定されている株(当合議体注:「株」は、「下部」の誤記と認められる。)はベースフレーム4の剛性により変形が抑制されるのに対し、上部は固定されていないため、変形の度合いが対称ではなく、上部が大きくたわむことがある。そのため、タイバー25の伸びについても各タイバー25ごとでばらつきが生じ、固定側金型7や可動側金型8への型締力の加わり方も不均一となるおそれがある。
【0011】
特許文献1に開示されている技術は、熱膨張や、型締力による固定プラテン5の変形の上下のばらつきを抑制している。しかしながら、ベースフレーム4は金型取り付け部の下の製品落下口を広く確保するため、ベースフレーム4の型締機構部1下は端部と比べて剛性が弱く、ノズルタッチの倒れに対して弱くなってしまうおそれがある。
【0012】
そこで本発明は、固定プラテンのノズルタッチ力による倒れを防ぎながら、型締力を発生させた際の固定プラテンのたわみが上下非対称になることを防止することが可能な射出成形機の固定プラテンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明では、ベースフレームに固定され、固定金型を支持可能な射出成形機の固定プラテンにおいて、前記固定プラテンは、金型を取り付け可能な金型取付面と、隅部に、タイバーを挿通して固定可能なタイバー挿通部と、下部の略中央部において突出し、ベースフレームに固定される第一脚部と、下部のタイバー挿通部近傍において突出し、ベースフレームに固定される第二脚部と、を有し、前記第二脚部は、タイバー軸方向の厚さが前記固定プラテンの厚さに対して薄い肉薄部を有し、前記肉薄部の厚さ方向中心と、前記固定プラテンの厚さ方向中心のタイバー軸方向の位置が略同一であることを特徴とする射出成形機の固定プラテンが提供される。
【0014】
請求項1に係る発明では、固定プラテンの脚部を薄くして変形しやすくしたために、ベースフレームに固定したタイバー挿通部が変形しやすくなり、ノズルタッチ時や型締力をかけた際の固定プラテンの上側と下側の変形差を小さくすることができる。また、固定プラテンを第一脚部、第二脚部で略中央部と端部付近でベースフレームに固定したことによって、ノズルタッチ力による固定プラテンの倒れが、中央部のみで固定した場合よりも小さくすることができる。
【0015】
本願の請求項2に係る発明では、前記第一脚部は、前記金型取付面と反対方向に延びてベースフレームに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の固定プラテンが提供される。
請求項2に係る発明では、第一脚部が固定プラテンの金型取付面と反対方向に延びてベースフレームに固定されることによって、射出軸方向における第一脚部と第二脚部との間隔を広げることができ、ノズルタッチ力による固定プラテンの倒れをより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、固定プラテンのノズルタッチ力による倒れを防ぎながら、型締力を発生させた際の固定プラテンのたわみが上下非対称になることを防止することが可能となる射出成形機の固定プラテンを提供することができる。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1は、本実施形態の固定プラテン5を装着時に射出ユニット2と対向する側から見た正面図であり、図2は同じ固定プラテン5の側面図である。本実施形態の固定プラテン5は、脚部が複数に分かれており、図1の正面図における左右方向略中央部に第一脚部21と、左右のタイバー挿通部24下部から出る2本の第二脚部22が設けられている。また、図2に示されているように、左右の第二脚部22は、上下方向で固定プラテン5とベースフレーム4との間の中央部付近において、タイバー軸方向の厚みが薄い肉薄部23が形成されている。肉薄部23は、タイバー軸方向の位置が略中央部になるように配置されて、固定プラテン5の厚さ方向の中心と、肉薄部23の厚さ方向の中心が略同一となるように配置されており、その前面及び背面は、固定プラテン5の金型取り付け面と略平行となるように形成されている。
【0019】
このような構成とすることによって、中央の第一脚部21と左右の第二脚部22の3点でベースフレーム4に固定されるため、固定プラテン5がノズルタッチ力を受けた際の上下の倒れや、左右の回転が抑制される。
・・・略・・・
【0020】
第一脚部21は略中央部に設けられ、変形の小さいところに設けられているため、脚を強くしても変形には影響しない。そのため、本実施形態においては、中央の第一脚部21は厚みを固定プラテン5と略同程度とし、左右の第二脚部22のみ中央に肉薄部23を設けた構成としている。このような構成とすることによって、ノズルタッチ力による倒れや、左右の回転を防止しつつ、タイバー挿通部24付近に適度な変形を起こすことが可能となる。
【0021】
図3は、本実施形態の固定プラテン5に力が加えられた際の変形形状を示している。図7に示されている、下部を固定したものと比較すると、左右の第二脚部22に肉薄部23を設けたことによって、図3に示されているように、固定プラテン5の下部においても適度な変形が生じ、固定プラテン5の上部、下部の変形差を小さくすることが可能となる。」
(イ) 「【図1】
[図:0001422431000018.jpg]
【図2】
[図:0001422431000019.jpg]
【図3】
[図:0001422431000020.jpg]
・・・略・・・
【図5】
[図:0001422431000021.jpg]
【図6】
[図:0001422431000022.jpg]
【図7】
[図:0001422431000023.jpg]
【図8】
[図:0001422431000024.jpg]
【図9】
[図:0001422431000025.jpg]
」
(当合議体注:【図5】については、便宜のために時計回りに90度回転させた。)
イ 甲3に記載された発明
上記アの甲3の記載からみて、甲3には、【0002】~【0006】、【図5】~【図7】等に記載された背景技術としての「一般的な射出成形機」の構成を前提として、【0018】~【0021】、【図1】~【図3】等の記載から理解される、甲3でいう本発明の一実施形態の射出成形機に用いられる「ベースフレーム4」の発明として、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 射出成形機に用いられるベースフレーム4であって、
射出成形機は、
ベースフレーム4上に型締機構部1と射出機構部2とを対向させて配置させ、両者の間のノズルタッチ機構3において、射出機構部2のスクリュ17の先端のノズルを固定側金型7の樹脂注入口に密着させるものであり、
型締機構部1は、固定プラテン5、可動プラテン6を型締軸線に沿って備え、固定プラテン5に設けられたタイバー挿通部24にタイバー25を挿通し、可動プラテン6においてもタイバー挿通部にタイバー25を挿通することによって、可動プラテン6を型締軸線方向に移動可能に装着し、
固定プラテン5と可動プラテン6との間が型締空間となり、その型締空間側において、固定プラテン5には固定側金型7が装着され、可動プラテン6には可動側金型8が装着され、(【0002】)
可動プラテン6にはトグル機構であるクロスヘッドリンク11が連結され、クロスヘッドリンク11はボールネジ12のナットに連結され、ボールネジ12のねじ軸はプーリ、ベルト機構13を介してサーボモータ14によって駆動され、サーボモータ14を駆動し、可動プラテン6を固定プラテン5に対して前後進させることによって、固定側金型7と可動側金型8の開閉と型締めを行い、(【0003】)
ベースフレーム4は、下記の【図6】の斜視図が示されるように、
上方に2本平行に配置された上メインパイプ32(32a、32b)と、下方に同じく2本平行に配置された下メインパイプ33(33a、33b)とを備え、
上メインパイプ32aと上メインパイプ32bとの間が成形後の製品落下口31となり、
上メインパイプ32と下メインパイプ33との間は複数の縦柱34によって連結され、
上メインパイプ32と下メインパイプ33とによって型締機構部1、射出機構部2が支えられ、(【0005】)
固定プラテン5はベースフレーム4に固定され、(【0006】)
固定プラテン5は、下記の【図1】の固定プラテン5を装着時に射出ユニット2と対向する側から見た正面図及び【図2】の側面図に示されるように、脚部が複数に分かれており、【図1】の正面図における左右方向略中央部に第一脚部21と、左右のタイバー挿通部24下部から出る2本の第二脚部22が設けられ、
左右の第二脚部22は、上下方向で固定プラテン5とベースフレーム4との間の中央部付近において、タイバー軸方向の厚みが薄い肉薄部23が形成され、肉薄部23は、タイバー軸方向の位置が略中央部になるように配置されて、固定プラテン5の厚さ方向の中心と、肉薄部23の厚さ方向の中心が略同一となるように配置されており、その前面及び背面は、固定プラテン5の金型取り付け面と略平行となるように形成され、(【0018】)
このような構成とすることによって、中央の第一脚部21と左右の第二脚部22の3点でベースフレーム4に固定されるため、固定プラテン5がノズルタッチ力を受けた際の上下の倒れや、左右の回転が抑制され、(【0019】)
第一脚部21は略中央部に設けられ、変形の小さいところに設けられているため、脚を強くしても変形には影響せず、そのため、中央の第一脚部21は厚みを固定プラテン5と略同程度とし、左右の第二脚部22のみ中央に肉薄部23を設けた構成とし、このような構成とすることによって、ノズルタッチ力による倒れや、左右の回転を防止しつつ、タイバー挿通部24付近に適度な変形を起こすことが可能となり(【0020】)
固定プラテン5に力が加えられた際、左右の第二脚部22に肉薄部23を設けたことによって、固定プラテン5の下部においても適度な変形が生じ、固定プラテン5の上部、下部の変形差を小さくすることが可能となる、(【0021】)
射出成形機に用いられるベースフレーム4。
【図6】
[図:0001422431000026.jpg]
【図1】
[図:0001422431000027.jpg]
【図2】
[図:0001422431000028.jpg]
」
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
(ア) プラテン、型締装置、射出成形機
a 甲3発明の「射出成形機」は、「ベースフレーム4上に型締機構部1と射出機構部2とを対向させて配置させ」るものであり、「型締機構部1」は、「固定プラテン5、可動プラテン6を」「備え」るものであり、「固定プラテン5はベースフレーム4に固定され」る。
また、甲3発明の「固定プラテン5」は、「【図1】の正面図における」「左右のタイバー挿通部24下部から出る2本の第二脚部22が設けられ」ているところ、甲3発明の【図6】からは、「【図1】の正面図における」「左右」の方向は、「ベースフレーム4」の幅方向に対応することが理解できる。
b 上記aより、甲3発明の「固定プラテン5」及び「可動プラテン6」は、本件特許発明1の「プラテン」に相当する。
また、甲3発明の「型締機構部1」は、本件特許発明1の、「プラテンを有する」とされる、「型締装置」に相当する。
そうすると、甲3発明の「射出成形機」は、本件特許発明1の、「プラテンを有する型締装置を備えた」とされる、「射出成形機」に相当する。
また、上記aより、甲3発明の「固定プラテン5」の「2本の第二脚部22」は、本件特許発明1の「一対の脚部」に相当し、甲3発明は、本件特許発明1の、「前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し」との構成を具備する。
(イ) ベースフレーム
a 甲3発明の、「ベースフレーム4は」、「上方に2本平行に配置された上メインパイプ32(32a、32b)と、下方に同じく2本平行に配置された下メインパイプ33(33a、33b)とを備え」、「上メインパイプ32と下メインパイプ33との間は複数の縦柱34によって連結され」、「上メインパイプ32と下メインパイプ33とによって型締機構部1、射出機構部2が支えられ」る。
b 上記aと(ア)より、甲3発明においては、「ベースフレーム4」上に、「型締機構部1」(「固定プラテン5」及び「可動プラテン6」)が、配置され、支持されているといえる。
そうすると、甲3発明の「ベースフレーム4」は、本件特許発明1の、「少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持する」とされる、「ベースフレーム」に相当する(甲3発明の【図6】からも理解できることである。)。
(ウ) メインビーム、プラテン取付けプレート
a 上記(イ)aより、甲3発明の「ベースフレーム4」が備える「上メインパイプ32(32a,32b)」は、本件特許発明1の「メインビーム」に相当し、本件特許発明1の「メインビーム」と甲3発明の「上メインパイプ32(32a,32b)」は、「当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなす」点において共通する。
b 甲3発明の「固定プラテン5」は、「中央の第一脚部21と左右の第二脚部22の3点でベースフレーム4に固定される」ところ、甲3の斜視図【図6】及び上記(ア)bより、甲3発明は、対をなす「上メインパイプ32(32a,32b)」の上にプレート部材(以下「甲3発明プレート部材」という。)を備え、甲3発明プレート部材上に「固定プラテン5」の「左右の」「2本の第二脚部22」がそれぞれ「固定」されているといえる。
甲3発明の甲3発明プレート部材は、本件特許発明1の「プラテン取付けプレート」に相当し、両者は、「前記メインビーム上に」「配置され、前記プラテンが取り付けられる」点で共通する。
また、甲3発明は、本件特許発明1の、「前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有し」との構成を具備する。
c 上記aとbより、本件特許発明1と甲3発明は、「メインビームと」、「プラテン取付けプレートと」「を備え」ている点で共通する。
イ 一致点及び相違点
上記の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と甲3発明は、
「 プラテンを有する型締装置を備えた射出成形機に用いられ、少なくとも前記型締装置が載置されて該型締装置を支持するベースフレームであって、
当該ベースフレームの幅方向に互いに間隔をおいて位置し、当該ベースフレームの長手方向に並んで延びる対をなすメインビームと、
前記メインビーム上に配置され、前記プラテンが取り付けられるプラテン取付けプレートと、
を備え、
前記プラテンが、前記幅方向に互いに間隔をおいて設けられる一対の脚部を有し、
前記プラテン取付けプレートが、一対の前記脚部のそれぞれとの固定に用いられる一対のプラテン固定箇所を有するベースフレーム。」の構成で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3-1-1)
本件特許発明1においては、「プラテン取付けプレート」が、前記メインビーム上に「溶接により接合されて」いるのに対して、甲3発明においては、これが明らかでない点。
(相違点3-1-2)
本件特許発明1においては、「前記プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなす前記メインビームの前記幅方向の相互間に延びて該メインビームどうしを連結する連結ビーム」「を備え」、「前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり、前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなる」のに対して、甲3発明においては、これが明らかでない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点3-1-2についてまず検討する。
(ア) 甲3発明の斜視図【図6】からは、甲3発明においては、甲3発明プレート部材の「ベースフレーム4」設置面側で、
「ベースフレーム4」の長手方向の両端部のそれぞれにおいて、対をなす「上メインパイプ32(32a,32b)」の「ベースフレーム4」の幅方向の相互間に延びて「上メインパイプ32(32a,32b)」どうしを連結する部材、及び、
「ベースフレーム4」の長手方向の中央部の甲3発明プレート部材の直下において、対をなす「上メインパイプ32(32a,32b)」の「ベースフレーム4」の幅方向の相互間に延びて「上メインパイプ32(32a,32b)」どうしを連結する部を備えていることまでは把握できる。
そうすると、甲3発明は、プラテン取付けプレートのフレーム設置面側で、対をなすメインビームのベースフレーム幅方向の相互間に延びてメインビームどうしを連結する連結ビームを備え、連結ビームが、ベースフレーム幅方向に延びる二本以上(合計3本)の連結梁部材を含んで構成されているとまではいえる。しかしながら、同【図6】からは、プラテン取付けプレート(甲3発明プレート部材)直下に前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材を備えているとまではいうことができない。
(イ)a また、甲3でいう「本発明は、射出成形機の固定プラテンに関する」(【0001】)ものであるところ、背景技術における、「固定された固定プラテン5において型締力を受けると、・・・略・・・固定プラテン5のベースフレーム4に固定されている下部はベースフレーム4の剛性により変形が抑制されるのに対し、上部は固定されていないため、変形の度合いが対称ではなく、上部が大きくたわむことがある」、「そのため、タイバー25の伸びについても各タイバー25ごとでばらつきが生じ、固定側金型7や可動側金型8への型締力の加わり方も不均一となるおそれがある」(【0010】)、「ベースフレーム4は金型取り付け部の下の製品落下口を広く確保するため、ベースフレーム4の型締機構部1下は端部と比べて剛性が弱く、ノズルタッチの倒れに対して弱くなってしまうおそれがある」(【0011】)との問題点に鑑みなされたものであって、「固定プラテンのノズルタッチ力による倒れを防ぎながら、型締力を発生させた際の固定プラテンのたわみが上下非対称になることを防止することが可能な射出成形機の固定プラテンを提供すること」(【0012】)を課題として、
「射出成形機の固定プラテンにおいて、ベースフレームに固定され、固定金型を支持可能な射出成形機の固定プラテンにおいて、前記固定プラテンは、金型を取り付け可能な金型取付面と、隅部に、タイバーを挿通して固定可能なタイバー挿通部と、下部の略中央部において突出し、ベースフレームに固定される第一脚部と、下部のタイバー挿通部近傍において突出し、ベースフレームに固定される第二脚部と、を有し、前記第二脚部は、タイバー軸方向の厚さが前記固定プラテンの厚さに対して薄い肉薄部を有し、前記肉薄部の厚さ方向中心と、前記固定プラテンの厚さ方向中心のタイバー軸方向の位置が略同一である」構成とすることを課題解決手段とするものである。
b そうすると、上記aより、甲3でいう本発明の一実施形態の射出成形機に用いられる「ベースフレーム4」である甲3発明は、「固定プラテン5」に「第一脚部21と」「2本の第二脚部22が設けられ」ているため、「中央の第一脚部21と左右の第二脚部22の3点でベースフレーム4に固定されるため、固定プラテン5がノズルタッチ力を受けた際の上下の倒れや、左右の回転が抑制され」、固定プラテン5に力が加えられた際、左右の第二脚部22に肉薄部23を設けたことによって、固定プラテン5の下部においても適度な変形が生じ、固定プラテン5の上部、下部の変形差を小さくすることが可能」なものであり、金型取り付け部の下の製品落下口31を広く確保する観点からベースフレーム4の型締機構部1下が端部と比べて剛性が弱いものであってもよいものと、当業者は理解できる。
また、甲3には、ベースフレーム長手方向に延びる一対のメインビームどうしを連結する二本以上の部材の配置領域を、プラテン取付けプレート(甲3発明プレート部材)の配置領域と重複させることは記載も示唆もされていない。
c してみると、ベースフレームの剛性を上げるために、ベースフレーム長手方向に延びる一対のメインビームどうしを連結する連結梁部材を(複数)設けることが本件特許出願時に周知の技術であるとしても、甲3発明においては、上記bで述べたとおり、ベースフレーム4の型締機構部1下が端部と比べて剛性が弱いものであってもよい(金型取り付け部の下の製品落下口31を広く確保する観点から好ましいことでもある)のであるから、甲3発明において、甲3発明プレート部材直下の「上メインパイプ32(32a,32b)」どうしを連結する部材に着目し、これを2本以上として、二本以上の連結梁部材が、その配置領域がプラテン取付けプレート(甲3発明プレート部材)の配置領域と重複する構成とする動機付けはない。
そうしてみると、甲3発明において、相違点3-1-2に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
甲1、甲2及び引用例4に記載された事項を含めて検討しても上記判断は変わらない。
(ウ) 令和 6年12月13日提出の意見書における異議申立人の主張について
a 同意見書5~6頁において、異議申立人は、
甲3の図5、図6にも示される一般的な射出成形機の構成を顧みれば、甲3の「上メインパイプ32(32a,432b)」は[上メインパイプ32(32a,32b)」どうしを連結する連結ビームを複数隔離して有しているといえる、
また、甲1の図6に示される複数の「角鋼(36)」を甲3の「上メインパイプ32(32a,32b)」に設けることは、周知の構成である、
したがって、訂正後の請求項1の「前記連結ビームが、前記幅方向に延びる二本以上の連結梁部材を含んで構成されてなり」は、実質的な相違点を構成しない、または甲1に基づいて当業者が容易に想到し得る範疇である、
甲1の図5、図6には、「フレーム(C')」の長手方向で、複数の「角鋼(36)」の配置領域と、「ベース用平鋼(40)」の配置領域とが重複している、
したがって、訂正後の請求項1の「前記長手方向で、前記連結ビームの二本以上の前記連結梁部材の配置領域と、前記プラテン取付けプレートの配置領域とが重複してなる」は、甲1に基づいて容易に甲3に補われ得る、
したがって、訂正後の請求項1の訂正箇所は、全て、甲1または甲3により開示ないし示唆されている、
よって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲3に甲1を組み合わせて当業者が容易に発明できたものであり、進歩性がない、
と主張する。
b しかしながら、甲3発明は、上記イ(イ)で述べたとおりのものであるところ、甲1に「フレーム(C')」の長手方向で、複数の「角鋼(36)」の配置領域と、「ベース用平鋼(40)」の配置領域とが重複している構成が記載されているとしても、甲3発明に、これを採用する動機付けがない。
したがって、異議申立人の上記aの主張を採用することはできない。
(エ) 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3に記載された発明、本件特許出願時の周知の技術及び甲1、甲2、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3) 本件特許発明3~13について
本件特許発明3~13は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記(2)ウで述べたとおり、本件特許発明1は、甲3に記載された発明、本件特許出願時の周知の技術及び甲1、甲2、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件特許発明3~13についても、同様な理由により、本件特許発明1は、甲3に記載された発明、本件特許出願時の周知の技術及び甲1、甲2、引用例4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第6 むすび
請求項1、3~13に係る特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700426