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特許異議申立

2023-701088

ショベル及びショベル用のシステム

審判番号
2023-701088
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-079856
登録番号
7257357
請求日
2023年10月11日
審決日
2025年10月06日
公報発行日
2025年12月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】住友重機械工業株式会社
  • 【権利者代理人】伊東 忠重
  • 【権利者代理人】伊東 忠彦
  • 【異議申立人】▲徳▼田 久子
  • 【異議申立人】高橋 詔男
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 土屋 真理子
  • 審判官 西田 秀彦
分類
P1651.841-ZB (E02F) / P1651.853-ZB (E02F) / P1651.537-ZB (E02F) / P1651.121-ZB (E02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第44条、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第4項、特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7257357号発明「ショベル及びショベル用のシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7257357号の請求項1-12に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 出願分割の経緯の概略 本件特許異議申立に係る特許第7257357号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和2年4月28日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって、平成25年3月19日に出願した特願2013-57399号を最先の出願とする、いわゆる第3世代の分割出願であるところ、出願の分割の経緯は、次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の提出日を示す。 最先の出願:特願2013- 57399号(平成25年 3月19日) 第1世代 :特願2016-231735号(平成28年11月29日) 第2世代 :特願2018-156226号(平成30年 8月23日) 本願 :特願2020- 79856号(令和 2年 4月28日) 2 本件特許の設定登録以降の手続の経緯の概略 (1) 本件特許異議申立の前までの手続の経緯 本件特許異議申立の前までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和5年 4月 5日 :設定登録(請求項1~12) 同月13日 :特許掲載公報の発行 (2)本件特許異議申立の手続の経緯 本件特許異議申立は、特許異議申立人徳田久子(「徳」は旧字体(「心」の上に「一」)。以下「申立人A」という。)により、本件特許の請求項1~12に係る特許に対して、特許異議申立人高橋詔男(以下「申立人B」という。)により、本件特許の請求項1~12に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。 本件特許異議申立における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和5年10月11日 :申立人Aによる特許異議申立書(以下 「申立書A」という。)の提出 同年10月13日 :申立人Bによる特許異議申立書(以下 「申立書B」という。)の提出 令和6年 2月 8日付け:取消理由通知書 同年 4月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書 の提出 同年 6月24日 :申立人Aによる意見書の提出 同年 7月 8日 :申立人Bによる意見書の提出 同年10月17日付け:訂正拒絶理由通知書 同年11月20日 :特許権者による意見書及び手続補正書 の提出 令和7年 2月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 4月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書 の提出 同年 5月12日付け:手続補正指令書(方式) 同年 6月 2日 :手続補正書(方式) 同年 7月17日付け:訂正拒絶理由通知書 同年 8月22日 :特許権者による意見書及び手続補正書 の提出 なお、令和6年4月15日提出の訂正請求書による訂正の請求は、令和7年4月11日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。 第2 訂正の適否 1 令和7年4月11日提出の訂正請求書による訂正の内容 特許権者は、令和7年4月11日に提出され、令和7年6月2日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、「特許第7257357号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」趣旨の請求をしており、本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正請求書の全体の記載からみて、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「下部走行体と、 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する、 ショベル。」と記載されているのを、 「下部走行体と、 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、作業不可状態と作業可能状態との間で切り換えられる前記ショベルの状態が前記作業不可状態及び前記作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定し、 前記作業不可状態と前記作業可能状態との切り換えは、イグニッションスイッチ又はゲートロックレバーを操作者が操作することによって実現される、 ショベル。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (合議体注:本件訂正請求書に記載の「1~7」は、「2~7」と記載すべきところの誤記と認める。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6に 「前記制御部は、前記ショベルの作業機械状態を判定し、前記作業機械状態に関する情報を記憶する、 請求項1に記載のショベル。」と記載されているのを、 「前記制御部は、前記ショベルの状態が前記作業可能状態であるか前記作業不可状態であるかを判定し、前記作業可能状態であるか前記作業不可状態であるかに関する情報を記憶する、 請求項1に記載のショベル。」に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に 「下部走行体と、 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する、 ショベル用のシステム。」と記載されているのを、 「下部走行体と、 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、作業不可状態と作業可能状態との間で切り換えられる前記ショベルの状態が前記作業不可状態及び前記作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定し、 前記作業不可状態と前記作業可能状態との切り換えは、イグニッションスイッチ又はゲートロックレバーを操作者が操作することによって実現される、 ショベル用のシステム。」に訂正する。 (請求項8の記載を引用する請求項9~12も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 訂正事項4は、次の訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなるものと認める。両者をまとめて、「訂正事項4」という場合がある。 ア 訂正事項4-1 願書に添付した明細書の段落【0005】における記載「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供すること」を「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」に訂正する。 イ 訂正事項4-2 願書に添付した明細書の段落【0007】における記載「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供すること」を「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」に訂正する。 (5)訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0006】の記載「前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する。」を「前記制御部は、作業不可状態と作業可能状態との間で切り換えられる前記ショベルの状態が前記作業不可状態及び前記作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定し、前記作業不可状態と前記作業可能状態との切り換えは、イグニッションスイッチ又はゲートロックレバーを操作者が操作することによって実現される。」に訂正する。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項1~7について、請求項2~7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、訂正前の請求項8~12について、請求項9~12は請求項8を引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項8~12に対応する訂正後の請求項8~12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 上記手続補正書(方式)により補正された訂正請求書の「7 請求の理由」の「(3)訂正の理由」の項目「ウ 明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明」には、「訂正事項4及び5は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図ることを目的とするものであり、これは一群の請求項1~7及び一群の請求項8~12に関係する訂正である。したがって、訂正事項4及び5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。」と記載されている。この記載のとおり、訂正事項4及び5に係る訂正はいずれも、一群の請求項1~7及び一群の請求項8~12のいずれにも関係する訂正である。 2 訂正拒絶理由の概要 令和7年7月17日付け訂正拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。 願書に添付した明細書の段落【0005】及び【0007】についての、訂正事項4-1及び訂正事項4-2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。 また、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 以上のとおりであるから、一群の請求項〔1-7〕及び〔8-12〕についてする本件訂正を認めることはできない。 3 令和7年8月22日提出の手続補正書による手続補正について (1)手続補正の内容 本件訂正に関し、手続の経緯は、上記第1の2において記載されたとおりであり、令和7年8月22日提出の手続補正書による手続補正(以下、単に「手続補正」という。)は、令和7年4月11日提出の訂正請求書、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書の全文を、上記手続補正書に添付した訂正請求書、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり補正するものである。 手続補正において、訂正請求書の「7 訂正の理由」の「(2)訂正事項」「エ 訂正事項4」の補正の前後は以下のとおりである。 ア 手続補正前 願書に添付した明細書の段落【0005】及び【0007】のそれぞれにおける記載「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供すること」を「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」に訂正する。 イ 手続補正後 願書に添付した明細書の段落【0005】及び【0007】のそれぞれにおける記載「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供すること」を「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定したショベルを提供すること」に訂正する。 (2)手続補正の適否についての当審の判断 ア 判断の基準 訂正拒絶理由通知に対しては、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求書の要旨を変更しないものであれば補正することができる。しかし、新たな訂正事項を加えることや、訂正事項を変更することは、訂正の要旨を変更するものである。(審判便覧67-05.3の4.(3)イ参照) イ 訂正事項4について 手続補正前後の訂正事項4に係る訂正の内容は、上記(1)ア及びイのとおり、手続補正前の訂正後に記載されていた「機能を有する」を、補正後の訂正後において削除するものである。このような補正により、訂正事項4に係る訂正の訂正後の段落【0005】及び【0007】において、提供するショベルに関して、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルから、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定したショベルに変更することになる。 訂正事項4に関する上記手続補正は、実質的に訂正請求時の訂正事項の内容を変更するものであって、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等ではない。 そうすると、訂正事項4に関する手続補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。 ウ 令和7年8月22日提出の意見書による特許権者の主張について 特許権者は、「(1-1)訂正事項4の訂正の目的について」において、「訂正事項4-1に係る訂正の訂正後の段落【0005】の記載「本発明は、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供することを目的とする。」を「本発明は、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定したショベルを提供することを目的とする。」に補正しました。」、「これにより、「不明瞭な内容である」と判断された記載に関する問題は解消されたものと考えます。」、「また、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定したショベル」は、段落【0227】及び段落【0228】において説明されていると考えます。」、「したがって、段落【0005】の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると考えます。段落【0007】の訂正についても同様です。」と主張し、 また、「(1-2)新規事項の追加について」において、「訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると考えます。」と主張している。 しかしながら、特許権者の上記主張は、手続補正後の訂正事項4に係る訂正について、訂正の目的が適法であること、及び、新規事項の追加ではないこと述べるものであって、手続補正が認められるべき理由は、何ら述べられていない。 よって、特許権者の上記主張は、上記イの判断を左右するものではない。 エ 手続補正の適否の判断のまとめ 以上のとおりであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法131条の2第1項の規定により、手続補正を認めない。 4 訂正についての当審の判断 (1)訂正の内容について 上記3のとおり、手続補正は認められないから、本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、上記1(1)~(5)に記載されたとおりのものである。 以下、本件訂正について検討する。 事案に鑑み、まず、訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなる訂正事項4について検討する。 (2)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなる訂正事項4に係る訂正について、特許権者は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである旨主張する(訂正請求書7(3)イ(エ)a)ので、はじめに、訂正事項4-1及び4-2に係る訂正のいずれもが、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するかについて検討する。 (ア)訂正事項4-1について a 「明瞭でない記載の釈明」について 「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時(既に確定した訂正がある場合は、その確定時)の明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、設定登録時(既に確定した訂正がある場合は、その確定時)の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。(審判便覧38-03 5.(1)参照) b 「明瞭でない記載の釈明」に該当するかについて 上記aの判断基準に基づいて、訂正事項4-1に係る訂正が「明瞭でない記載の釈明」に該当するか否かについて検討する。 以下、願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、図面及び特許請求の範囲と併せて「本件明細書等」という場合がある。 訂正前の本件明細書の段落【0005】には、 「本発明は、作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供することを目的とする。」と記載されている。 上記記載は、本発明の目的が、「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供すること」であることを示していて、それ自体意味は明瞭であり、また、本件明細書等の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載でもない。 また、訂正事項4-1に係る訂正により訂正された後の段落【0005】の記載全体は、「本発明は、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供することを目的とする。」であるところ、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能」については、本件明細書等のいずれにおいても説明されておらず、どのようなことを意味しているか理解できず、不明瞭な内容である。 なお、段落【0005】において、訂正前の「作業現場の作業者の位置を記憶可能な」の本来の意味が、「作業現場の作業者の位置を記憶可能な」という語句全てを差し替えた、本件明細書等において説明されていない上記「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有する」であるとはいえない。 よって、訂正事項4-1に係る訂正は、本件明細書等に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものではないから、明瞭でない記載の釈明には該当しない。 c 「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、又は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」に該当するかについて 訂正事項4-1に係る訂正は、訂正事項4-1に対応する一群の請求項1~7及び一群の請求項8~12に係る発明の範囲を減縮するものではないことは明らかであるから、特許請求の範囲の減縮には該当しない。 また、訂正事項4-1に係る訂正は、訂正前の段落【0005】における 誤記を訂正するものではないから、誤記の訂正にも該当しない。 さらに、訂正事項4-1に係る訂正が、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当しないことは明らかである。 d 訂正事項4-1についてのまとめ よって、訂正事項4-1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。 (イ)訂正事項4-2について a 「明瞭でない記載の釈明」に該当するかについて 上記(ア)aの判断基準に基づいて、訂正事項4-2に係る訂正が、「明瞭でない記載の釈明」に該当するか否かについて検討する。 訂正前の明細書の段落【0007】には、 「上述の手段により、本発明は、作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供することができる。」と記載されている。 上記記載は、本発明の効果が、「上述の手段」により、「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供することができる。」ことであることを示していて、それ自体意味は明瞭であり、また、本件明細書等の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載でもない。 また、訂正事項4-2に係る訂正により訂正された後の段落【0007】の記載全体は、「上述の手段により、本発明は、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供することができる。」であるが、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能」は、上記(ア)bで説明したとおり不明瞭な内容である。 なお、段落【0007】において、訂正前の「作業現場の作業者の位置を記憶可能な」の本来の意味が、「作業現場の作業者の位置を記憶可能な」という語句全てを差し替えた、本件明細書等において説明されていない上記「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有する」であるとはいえない。 よって、訂正事項4-2に係る訂正は、本件明細書等に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものではないから、明瞭でない記載の釈明には該当しない。 b 「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、又は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」に該当するかについて 訂正事項4-2に係る訂正は、訂正事項4-2に対応する一群の請求項1~7及び一群の請求項8~12に係る発明の範囲を減縮するものではないことは明らかであるから、特許請求の範囲の減縮には該当しない。 また、訂正事項4-2に係る訂正は、訂正前の誤記を訂正するものではないから、誤記の訂正にも該当しない。 さらに、訂正事項4-2に係る訂正が、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当しないことは明らかである。 c 訂正事項4-2についてのまとめ よって、訂正事項4-2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。 (ウ)小括 したがって、訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなる訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。 イ 新規事項の有無について (ア)訂正事項4について 上記ア(ア)でも説明したとおり、訂正事項4に係る訂正の訂正後の「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能」については、どのようなことを意味するか理解できず不明瞭な内容である。 仮に、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能」が、明確であるとしても、本発明が、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」を目的としていることや、本発明が、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」ができるという効果を奏すること等は、本件明細書等において、記載も示唆もされていない。 よって、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。 (イ)小括 したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 ウ 特許権者の主張について (ア)特許権者の主張 特許権者は以下のとおり主張する。 a 令和7年4月11日提出の意見書(5(3)中の(3-4)明細書の訂正について) (a)本件特許明細書の段落【0005】の記載は、本件の出願時に、本件の請求項1の内容に合わせるために、原出願(特願2018-156226号)の段落【0005】の記載「上述の点に鑑み、本発明は、作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする。」を「本発明は、作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供することを目的とする。」に書き換えたものであり、本件の請求項1の内容は、2023年1月5日提出の手続補正書によって補正されているため、段落【0005】の内容は、補正後の請求項1に対応する段落【0006】の記載との関係において不明瞭であり、段落【0007】の記載についても同様である。 (b)段落【0005】及び段落【0007】のそれぞれにおける記載「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベル」の「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベル」への訂正は、段落【0004】の記載「しかしながら、特許文献1~3の技術は何れも、所定範囲内に進入した作業者を確実に検出できることを前提としており、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定していない。」等に基づく。 (c)審判便覧38-03には、『「明瞭でない記載の釈明」に該当する場合の類型』として「イ それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すとき。」及び「ウ 発明の目的、構成又は効果が技術的に不明瞭となっている記載等を正し、その記載内容を明確にするとき」が記載され、「特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正は、上記イの類型に該当する。」と記載されています。 b 令和7年8月22日提出の意見書(5(1)中の(1-1)訂正事項4の目的について) 「審判便覧38-03.5(3)」には、「イ それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すとき。」が「「明瞭でない記載の釈明」に該当する場合の類型」として挙げられ、「特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正は、上記イの類型に該当する。」と記載されていて、段落【0005】の訂正は、「特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正」に該当すると考えます。 (イ)特許権者の主張の検討 a 上記(ア)a(a)、(c)及びb(記載が明瞭でないこと)について 上記ア(ア)bに示したとおり、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものではないから、明瞭でない記載の釈明には該当しない。 (a)特許権者は、訂正前の段落【0005】の記載内容が、2023年1月5日提出の手続補正書によって補正された(本件訂正前の)段落【0006】の記載との関係において不明瞭である旨述べる。 しかしながら、上記段落【0005】は、上記のとおりの目的が明確に記載されており、上記段落【0006】は【課題を解決するための手段】の項目であるとともに、「上述の目的を達成するために」との記載により、段落【0005】の目的の内容をうけて、目的達成のための手段の内容を記載したものであり、訂正前の段落【0005】と【0006】との間で不合理が生じていないし、本件明細書の出願時の段落【0006】には、【課題を解決するための手段】として、作業者の位置を記憶する旨の記載があるから、不合理は生じていない。 また、段落【0007】は【発明の効果】の項目であり、「上記の手段により」との記載により、段落【0006】に記載の手段の内容をうけて、その手段による効果を記載したものであり、段落【0006】と【0007】との間で不合理が生じていないし、本件明細書の出願時の段落【0006】には、【課題を解決するための手段】として、作業者の位置を記憶する旨の記載があるから、不合理は生じていない。 (b)訂正前の段落【0005】及び【0007】の記載内容はいずれも、上記のとおり、訂正前の段落【0006】の記載との対応関係は明瞭であり、訂正前の本件明細書の他の段落とも格別不合理な点は見当たらない。 また、訂正事項として、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)がなされているものの、段落【0005】及び【0007】の記載の訂正は、特許請求の範囲と整合させるためのもの、すなわち、訂正後の特許請求の範囲の記載に、段落【0005】及び【0007】の記載を整合させるものではない。 よって、訂正事項4に係る訂正が、「それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正す」ものとはいえない。 したがって、訂正事項4に係る訂正は、「審判便覧38-03.5(3)」の「イ」に該当しない。 (c)上記(a)で説明したとおり、訂正前の段落【0005】には、発明の目的が明瞭に記載されており、段落【0007】には、発明の効果が明瞭に記載されていることから、訂正事項4に係る訂正が、「発明の目的、構成又は効果が技術的に不明瞭となっている記載等を正し、その記載内容を明確にする」ものとはいえない。 したがって、訂正事項4に係る訂正は、「審判便覧38-03.5(3)」の「ウ」に該当しない。 (d)以上のとおりであるから、特許権者の主張は、上記アの判断を左右するものではなく、採用することはできない。 b 上記(ア)a(b)(訂正の根拠)について 上記イ(ア)で説明したとおり、本発明が、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」を目的としていることや、本発明が、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベルを提供すること」ができるという効果を奏することは、記載も示唆もされていない。 また、訂正事項4に係る訂正の訂正後の「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有する」との記載は、「作業者を検出し損ねる場合を想定した『機能』」について明記している一方、本件明細書の段落【0004】は、「特許文献1~3」の技術を示し、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定していない。」と記載されるにとどまり、何ら「本発明」の「機能」について記載も示唆もされていない。よって、訂正事項4に係る訂正の訂正後の上記事項が、本件明細書の段落【0004】の記載に基づいて導き出せるとはいえない。 よって、特許権者の主張は、上記イの判断を左右するものではなく、採用することはできない。 エ 訂正についての当審の判断のまとめ 以上のとおり、訂正事項4-1及び4-2に係る訂正は認めることはできず、これらに対応する一群の請求項〔1-7〕及び〔8-12〕についてする本件訂正を認めることはできない。 第3 本件特許について 上記第2のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、「本件特許発明1」等といい、全体を「本件特許発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~12に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 下部走行体と、 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する、 ショベル。 【請求項2】 カメラを有し、 前記制御部は、前記カメラの撮像空間に人を捉え、前記撮像空間内の前記ショベルの周囲における人の存否を判定する、 請求項1に記載のショベル。 【請求項3】 前記作業不可状態は、イグニッションスイッチがオフ状態の場合、或いは、ゲートロックレバーがロック状態の場合である、 請求項1又は2に記載のショベル。 【請求項4】 前記作業可能状態は、イグニッションスイッチがオン状態の場合で、且つ、ゲートロックレバーがロック解除状態の場合である、 請求項1乃至3のいずれかに記載のショベル。 【請求項5】 前記制御部は、人が存在すると判定すると人検知フラグを設定し、 前記人検知フラグを設定することで人を検知したことを記憶する、 請求項1乃至4のいずれかに記載のショベル。 【請求項6】 前記制御部は、前記ショベルの作業機械状態を判定し、前記作業機械状態に関する情報を記憶する、 請求項1に記載のショベル。 【請求項7】 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する監視空間は、前記撮像空間に含まれる、 請求項2に記載のショベル。 【請求項8】 下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する、 ショベル用のシステム。 【請求項9】 カメラを有し、 前記制御部は、前記カメラの撮像空間に人を捉え、前記撮像空間内の前記ショベルの周囲における人の存否を判定する、 請求項8に記載のショベル用のシステム。 【請求項10】 前記作業不可状態は、イグニッションスイッチがオフ状態の場合、或いは、ゲートロックレバーがロック状態の場合である、 請求項8又は9に記載のショベル用のシステム。 【請求項11】 前記作業可能状態は、イグニッションスイッチがオン状態の場合で、且つ、ゲートロックレバーがロック解除状態の場合である、 請求項8乃至10のいずれかに記載のショベル用のシステム。 【請求項12】 前記制御部は、人が存在すると判定すると人検知フラグを設定し、 前記人検知フラグを設定することで人を検知したことを記憶する、 請求項8乃至11のいずれかに記載のショベル用のシステム。」 第4 特許権者に通知した取消理由及び引用文献について 請求項1~12に係る特許に対して、当審において令和7年2月5日付け取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要及び引用した文献は、次のとおりである。 1(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 2(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 3(進歩性欠如) 請求項1~4、7、8~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、7、8~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 <引用した刊行物> 刊行物1:特開平5-93431号公報(申立書Aの甲第2号証、申立 書Bの甲第5号証) 刊行物2:特開2010-198519号公報(申立書Bの甲第2号 証) 刊行物3:特開平10-72851号公報(申立書Bの甲第3号証) 第5 刊行物について 1 刊行物1 (1) 刊行物1の記載 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、車両系建設機械の稼働中において、その作動範囲内に障害物の存在を、その機械に搭載した検出手段により感知したとき、自動的に作動停止手段を作動させ、かつ、上記障害物が存在しなくなったときの作動停止手段の自動解除時の安全装置に関するものである。」 イ 「【0002】 【従来の技術】車両系建設機械の作業範囲内または立入禁止範囲内に障害物が侵入したとき、運転者自らがそれを認知し、その運転操作を中止する方法のほか、かかる場合機械を自動停止させる手段が、従来から提案されており、その方法としては、上記障害物の存在を、その機械に取り付けた探査信号発信器と、該信号の障害物からの反射波を検出することのできる反射波検出器により感知したり、あるいは、障害物自体、たとえば、作業員等のような移動体に発信器を取りつけ、その発信器からの障害物信号を、機械に搭載した受信器によって感知し、それら障害物が危険範囲にあるときは自動的に機械のエンジンを停止させたり、各部作動用の操作レバーの操作を無効にしたりする方法がなされていた。 【0003】例えば、図3は上記後者に属する例であるが、図における移動性の障害物は作業員21である場合を示し、22はその頭部に取り付けられた発信器、23は車両系建設機械の代表例としてのブルドーザで、これに発信器24、24、・・・が取付けてある。・・・」 ウ 「【0009】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決のため、本発明は次のような手段を講じた。すなわち、車両系建設機械から探査信号を発信し、所定の範囲内にある障害物からの反射波を感知する検出器、または、上記のごとき障害物からの信号を検出する検出器により当該障害物を検知して障害物信号を出力する障害物検出手段と、機械操縦用の1または複数の操作レバーが、中立位置にあるときに中立信号を出力する中立検出手段と、前記障害物信号が引続き入力されると制御信号を出力するが、該障害物信号の入力が消滅し、かつ、上記中立信号が入力していると制御信号の出力を停止するコントローラと、該コントローラからの制御信号により前記1または複数の操作レバー操作行為を無効とするが、該制御信号が消滅すると、操作レバーの無効行為を、自動的に解除する作動停止手段と、を設ける。 【0010】車両系建設機械を運転しているとき、その作動範囲内、または立入禁止範囲内に障害物が存在すると、障害物信号がコントローラに入力され、該コントローラからは作動停止手段へ制御信号が入力されるので、すべての操作レバーの操作は無効となり、機械の、移動・作業行為などを含む作動は停止する。この時、各操作レバーの総てを中立に復帰させておき、前記作動または立入禁止範囲内から障害物が取り除かれると、コントローラからの制御信号は、作動停止手段に入力しなくなるので、作動停止は自動的に解除され、操作レバーにより自由に操縦可能となる。なお、障害物が取り除かれても、総ての操作レバーが、その時に中立位置にあって、中立信号がコントローラに入力されない限り上記制御信号は消滅しない。」 エ 「【0011】 【実施例】以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。図1はこの発明を全油圧式車両系建設機械に適用してときの1例を示すブロック図である。そうして、油圧系統の切換制御をリモートコントロール弁からのパイロット油圧で行う方式のものについて述べる。図において、6、7、8、9は、それぞれ、走行用、作業装置作動用油圧アクチュエータに圧油を分配する油圧切換弁(いずれも図示省略)の切換操作をするリモートコントロール弁であり、それらの操作レバーを操作することにより、それぞれのパイロット管路14、14、14、・・・にパイロット圧を発生させる。15、15、15、・・・は、上記リモートコントロール弁6、7、8、9で発生し、それぞれ2つのパイロット管路14に供給されるパイロット圧油のうち高い側の有効パイロット圧を選択的に取り出し、パイロット管路で、中立検出手段1に導くシャトル弁である。 【0012】この中立検出手段は各パイロット管路からのパイロット圧油の有無を検出し、総ての管路にパイロット圧が発生していないときは、中立信号をコントローラへ入力する作用をなすもので、例えば、各シャトル弁15からのパイロット管路の端末に設けた圧力スイッチと電源とを直列に接続した従来技術のものであってもよい。10,11,12,13は機体の外周にあり、障害物が存在する可能性のある方向に向けて設けた検出器であり、障害物を検知してそれに対応する信号を出力するもので、単数の場合、複数の場合など、その機械の形態、作動条件、作業環境に応じて増減され、それぞれの信号は障害物検出手段2へ導かれる。該障害物検出手段2は、1または複数の上記検出器のうちの1つからでも障害物を検知した信号が入力されると、コントローラ3に向けて障害物信号を出力する。 【0013】4および5は作動停止手段であり、制御信号が入力されている間だけ、機械の作動を停止せしめるが、その入力が消滅すると自動的に、元の状態に復帰するような機能で、例えば、制御信号が作動停止手段4に入力されると、走行用油圧アクチュエータへの管路を閉路し、その作動を停止せしめるが、信号が消滅すると復帰したり、あるいは、作動停止手段5に入力されると、作業装置の作動の全部または1部、もしくは1方向のみを停止せしめ、信号が消滅すると自動復帰したり、上記各作動用の操作レバーの操作を無効にしたりするもので、機械の種類、作業内容に応じた作動停止手段の様々な実施態様がある。 【0014】さらに、コントローラ3は前述したように、中立検出手段1からの中立信号と、障害物検出手段2からの障害物信号と、がその都度導かれるようになっているが、このコントローラ3の機能は、図2のフローチャートにも示すとおり、障害物信号が入力しているかぎり、作動停止手段4、5は制御信号を出力し、しかも、中立検出手段1からの中立信号が入力されない限り、たとえ、障害物信号の入力が消滅しても、該制御信号を引き続き出力する機能を有している。 【0015】以上の構成と機能の説明においても明らかなように、この発明の実施例における検出器が障害物を検知すると、作動停止手段が作動して機械の作動は中止されるが操作レバーなど、操作系の総てが中立位置に設定されないかぎり、作動停止手段の機能は自動復帰しないから、前述の、発明が解決しようとする課題において述べた第1の条件、第2の条件、第3の条件における問題点の総てを満たすものであり、障害物信号が出力されず、かつ、操作系のレバー類が中立であるときに限り機械運転の再開が可能となるようにしてある。上述の実施例においては、中立検出手段1としてパイロット油圧の有無を検出する方法としたが、勿論、この他に、機械的または電気的手段により中立操作位置であることを検出すればよく、また、作動停止手段4、5として、操作用のパイロット油圧を無効にする方法以外にも、動力伝達媒体である主回路圧油を開閉したり、機械伝達系の動力断接機構を作動させたりすることも、当然含まれるものであることは当然である。 【0016】 【発明の効果】この発明にかかる安全装置を車両系建設機械に装備しておくと、機械運転中において、作業装置の作動範囲内または立入禁止範囲内など、所定範囲に障害物が存在すると、障害物検出手段により障害物信号がコントローラに入力され、該コントローラは作動停止手段に対し制御信号を出力するので、機械の総ての作動は停止する。ついで、障害物信号が消滅し、かつ、中立信号がコントローラに入力されていると制御信号の出力はなくなり、作動停止手段の機能は自動的に解除され、元の操作を可能にするようにしてあるから、障害物の接近により作動停止となり、運転者が操作レバーを操作した状態にあるとき障害物が取り除かれても、急に作動が再開されることはないので、その切換わり時点での不意な作動が原因で事故を引き起こすようなことはなく、また、複数の障害物の侵入があるとき、運転者の見落としによる危害の発生もない安全装置がえられ、かつ、総て自動的に作動の停止とその解除がなされるので、運転にあたり、特別の注意や操作も必要とせず容易、かつ、安全である。」 オ 図面 (ア)図1 「 [図:0001429966000001.jpg] 」 (イ)図2 「 [図:0001429966000002.jpg] 」 (2)刊行物1に記載された発明 上記(1)より、刊行物1には、以下の2つの発明(以下、「刊行物1発明」、「刊行物1システム発明」という。)が記載されていると認められる。 (刊行物1発明) 「探査信号を発信し、所定の範囲内にある障害物からの反射波を感知する検出器により当該障害物を検知して障害物信号を出力する障害物検出手段と、機械操縦用の1または複数の操作レバーが、中立位置にあるときに中立信号を出力する中立検出手段と、前記障害物信号が引続き入力されると制御信号を出力するが、該障害物信号の入力が消滅し、かつ、上記中立信号が入力していると制御信号の出力を停止するコントローラと、該コントローラからの制御信号により前記1または複数の操作レバー操作行為を無効とするが、該制御信号が消滅すると、操作レバーの無効行為を、自動的に解除する作動停止手段と、を設けた安全装置を装備した車両系建設機械であって(【0001】、【0009】)、 検出器は、機体の外周にあり、障害物が存在する可能性のある方向に向けて設けられ(【0012】)、 作動停止手段4,5は、制御信号が入力されている間だけ、機械の作動を停止せしめるが、その入力が消滅すると自動的に、元の状態に復帰するような機能で、例えば、制御信号が作動停止手段4に入力されると、走行用油圧アクチュエータへの管路を閉路し、その作動を停止せしめるが、信号が消滅すると復帰したり、あるいは、制御信号が作動停止手段5に入力されると、作業装置の作動の全部または1部、もしくは1方向のみを停止せしめ、信号が消滅すると自動復帰したり、上記各作動用の操作レバーの操作を無効にしたりするものであり(【0013】)、 所定範囲に障害物が存在すると、障害物検出手段により障害物信号がコントローラに入力され、該コントローラは作動停止手段に対し制御信号を出力するので、機械の総ての作動は停止し、障害物信号が消滅し、かつ、中立信号がコントローラに入力されていると制御信号の出力はなくなり、作動停止手段の機能は自動的に解除され、元の操作を可能にするようにしてある(【0016】)、 車両系建設機械(【0001】)。」 (刊行物1システム発明) 「刊行物1発明用のシステム。」 2 刊行物2 (1)刊行物2の記載 ア 「【0001】 本発明は、作業機械周囲の障害物を監視する周囲監視装置に係わり、特に、作業機械の運転者への危険度提示及び危険回避に関するものである。」 イ 「【0021】 作業機械の一例である油圧ショベルの概観を図1に示す。油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成される。上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている。フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d(図1には図示しない)及び左右の走行モータ3e,3f(図示しない)の各アクチュエータによりそれぞれ駆動される。また、ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1dは、それぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8c,8dを備える。更に、機械の後方にカメラ13aを設置して後方シーンを撮影し、ミリ波レーダ(距離センサ)14aを設置して機械後方から障害物までの距離を計測する。また、機械の右側方にカメラ13bを設置して右側方シーンを撮影し、距離センサ14b(図示しない)を設置して機械右側方から障害物までの距離を計測する。 【0022】 図2は、作業機械の一例である油圧ショベルの作業における動作と処理の流れの手順例を示す説明図である。図2の説明例では距離センサとしてカメラ13aとミリ波レーダ14aを用いた例である。 【0023】 ある時間1701において、カメラ13aはシーンを撮影し、機械が掘削を開始1702すると障害物検知手段600が撮影したシーンを用いて画像処理1706を行い、掘削作業中1703の障害物の有無を検知する。一方、ミリ波レーダ14aは、機械の作業中は常時センシング1712を行っている。そこで、掘削作業中1703は、画像処理した結果1706である障害物有無と障害物の種別(人物か人物以外)、及び、ミリ波レーダ14aの障害物の距離データを統合(フュージョン)して、障害物有無と種別と障害物までの距離データの結果を出力1707する。運転員は、この結果をモニタや音声で確認し、操作変更時(後進や旋回等)に変更方向の周囲の危険度を確認しながら機械の操作を行う。 【0024】 いま、右側方の動作位置範囲内に人物が存在してフロント作業機を右旋回1704(フロント作業機1Aの信号1708、及び、カメラ画像を用いたオプティカルフロー1709で確認)した場合、人物と接触する可能性が高いので、接触を回避する制御1710としてフロント作業機を停止して、人物の安全を確保することを行う。また、右側方の動作位置範囲内に物体が存在した場合、接触を回避する制御1710としてフロント作業機1Aをゆっくり操作する。この時、接触回避制御の後は、カメラ13aの撮影シーンを用いた障害物検知手段600も停止させ、掘削開始時に再開してもよい。 【0025】 一方、後方の移動動範囲内に人物が存在して下部走行体が後進1705した場合、人物と接触する可能性が高いので、接触を回避する制御1711として下部走行体の移動を停止して、人物の安全を確保することを行う。 【0026】 ここで、カメラ13aでの検知は掘削中のみの例で示したが、機械の作業中は常時センシングを行ってもよい。」 ウ 図1 「 [図:0001429966000003.jpg] 」 上記イをふまえると、上記図1から、油圧ショベルが、下部走行体1e、上部旋回体1d及びフロント作業機1Aを含んでいる点が看取できる。 エ 図8 「 [図:0001429966000004.jpg] 」 上記イをふまえると、上記図8から、フロント作業機1Aが、上部旋回体1dの前方中央部に備えられている点が看取できる。 3 刊行物3 (1)刊行物3の記載 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば建設機械の作業範囲などの所定範囲内への侵入移動体の侵入を検出する侵入移動体検出装置に関するものである。」 イ 「【0019】まず、図1を用いて、建設機械としての油圧ショベル1に搭載された本発明に係る侵入移動体検出装置とその周辺装置の全体構成を説明する。 【0020】図1において、油圧ショベル1のフロント部は、ブーム2、スティック3およびバケット4が回動自在に連結されており、それぞれが油圧アクチュエータであるブームシリンダ5、スティックシリンダ6およびバケットシリンダ7で駆動される。 【0021】油圧ショベル1には侵入移動体検出用のカメラ8が搭載されている。このカメラ8の取付は模式的に記載されており、実際には、頑丈に固定し且つカメラ8に振動が作用しないようにマウントすることになる。 【0022】また、油圧ショベル1には油圧ショベルの作業範囲への人体の侵入を検出する侵入移動体検出装置主要部9と、遠隔操作室15へ信号を無線で送信する送信装置10とが搭載されている。」 ウ 図1 「 [図:0001429966000005.jpg] 」 4 周知技術 例えば、刊行物2及び刊行物3に記載されているように、次の技術が周知慣用技術(以下、「周知慣用技術1」という。)であるといえる。 (周知慣用技術1) 「ショベルの周囲において人の存否を判定すること。」 第6 当審の判断 事案を鑑みて、サポート要件から判断する。 1 サポート要件について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (2)判断基準に基づく判断 上記(1)の判断基準に基づいて、判断する。 ア 本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書」について「本件明細書」、全体を「本件明細書等」という。)の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、特許文献1~3の技術は何れも、所定範囲内に進入した作業者を確実に検出できることを前提としており、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定していない。そのため、ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある。 【0005】 本発明は、作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供することを目的とする。」 上記【発明が解決しようとする課題】(段落【0004】及び【0005】)の記載から、本件特許発明が解決しようとする課題は、 (ア)「所定範囲内に進入した作業者を確実に検出できることを前提としており、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定していない」ため、「ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある」こと (イ)「作業現場の作業者の位置を記憶可能なショベルを提供すること」 であると認められる。 イ 本件明細書等における課題の解決手段について (ア)本件明細書等の記載 a「【0019】 記憶部4は、各種情報を記憶するための装置であり、例えば、ハードディスク、光学ディスク、又は半導体メモリ等である。」 b「【0156】 次に、図15~図17を参照して、画像生成手段11が、人存否判定手段12の判定結果に基づいて出力画像の内容を切り換える処理(以下、「第1出力画像切換処理」とする。)について説明する。なお、図15は、ショベル60に搭載された3台のカメラ2のそれぞれの入力画像と、それら入力画像を用いて生成される出力画像とを示す図であり、図12に対応する。また、図16は、第1出力画像切換処理で用いられる空間モデルMDと処理対象画像平面R3との間の関係の一例を示す図であり、図4に対応する。また、図17は、第1出力画像切換処理で切り換えられる2つの出力画像の関係を説明する図である。 【0157】 図15に示すように、画像生成装置100は、3台のカメラ2のそれぞれの入力画像を空間モデルMDの平面領域R1及び曲面領域R2上に投影した上で処理対象画像平面R3に再投影して処理対象画像を生成する。また、画像生成装置100は、生成した処理対象画像に画像変換処理(例えば、スケール変換、アフィン変換、歪曲変換、視点変換処理等である。)を施すことによって出力画像を生成する。その結果、画像生成装置100は、ショベル60の近傍を上空から見下ろした画像と、ショベル60から水平方向に周囲を見た画像とを同時に表示する周辺監視用仮想視点画像を生成する。 【0158】 また、図15において、左側方カメラ2L、後方カメラ2B、及び右側方カメラ2Rのそれぞれの入力画像は、作業者が3人ずつ存在する状態を示す。また、出力画像は、ショベル60の周囲に9人の作業者が存在する状態を示す。 【0159】 なお、空間モデルMDの平面領域R1の高さは、ショベル60の接地面である路面に相当する高さに設定されている。そのため、図15の平面領域R1における画像では、9人の作業者のそれぞれの接地位置とショベル60のCG画像60CGとの間の距離は、9人の作業者のそれぞれとショベル60との間の実際の距離を正確に表している。しかしながら、作業者の画像は、接地位置(足下)から遠ざかるにつれて大きくなるように表示される。特に、図15に示すように、作業者の頭部は、ショベル60のCG画像60CGの大きさと比べても顕著に大きく表示されている。そのため、図15の出力画像を見たショベル60の操作者は、ショベル60と作業者との間の距離が実際の距離よりも大きいと錯覚するおそれがある。 【0160】 そこで、画像生成手段11は、人存否判定手段12により、左側方監視空間ZL、後方監視空間ZB、及び右側方監視空間ZRの何れかに人が存在すると判定された場合、出力画像の内容を切り換える。本実施例では、画像生成手段11は、空間モデルMDの平面領域R1の高さを、路面に相当する高さから人の頭の高さに相当する高さ(以下、「頭高さ」とする。)に切り換える。なお、頭高さは、予め設定される値であり、例えば150cmである。但し、頭高さは、動的に決定される値であってもよい。例えば、画像生成装置100は、人検出センサ6等の出力に基づいてショベル60の周囲に存在する作業者の高さ(身長)を検出できる場合、検出した身長に基づいて頭高さを決定してもよい。具体的には、ショベル60に最も近い作業者の身長に応じて頭高さを決定してもよく、ショベル60の周囲に存在する複数の作業者の身長の統計値(最大値、最小値、平均値等)に応じて頭高さを決定してもよい。」 c「【0201】 次に、図22~図25を参照して、警報制御手段13が人存否判定手段12の判定結果と、作業機械状態判定手段14の判定結果とに基づいて警報出力部7を制御する処理(以下、「第2警報制御処理」とする。)について説明する。なお、図22は、第2警報制御処理の流れを示すフローチャートであり、図23は、第2警報制御処理中に表示される出力画像の推移の一例を示す。また、図24は、作業機械状態判定手段14が作業機械の状態を判定する処理(以下、「作業機械状態判定処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、図25は、作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時に警報制御手段13が警報出力部7を制御する処理(以下、「作業開始時警報制御処理」とする。)の流れを示すフローチャートである。なお、警報制御手段13は、所定周期で繰り返し第2警報制御処理を実行し、作業機械状態判定手段14は、所定周期で繰り返し作業機械状態判定処理を実行する。また、警報制御手段13は、作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時に作業開始時警報制御処理を実行する。 【0202】 最初に、人存否判定手段12は、ショベル60の周囲に人が存在するか否かを判定する(ステップS21)。このとき、画像生成手段11は、表示部5が起動している場合には、例えば、図23の出力画像D31に示すような路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を生成して表示する。 【0203】 ショベル60の周囲に人が存在すると判定した場合(ステップS21のYES)、人存否判定手段12は、作業機械状態判定手段14による判定の結果(後述の図24参照。)を参照する(ステップS22)。この場合、人存否判定手段12は、ゲートロックレバー8をロック状態に固定してもよい。具体的には、人存否判定手段12は、操作者がゲートロックレバー8を引き上げることができないようにしてもよく、ゲートロックレバー8が引き上げられたとしてもロック解除状態とならないようにしてもよい。 【0204】 作業機械状態判定手段14によりショベル60が作業可能状態にあると判定された場合(ステップS22のYES)、人存否判定手段12は、検出信号を警報制御手段13に対して出力する。検出信号を受けた警報制御手段13は、警報を出力させるための警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させる(ステップS23)。 【0205】 本実施例では、警報出力部7は、警報音を出力する。具体的には、人存否判定手段12は、左側方監視空間ZLに人(ここでは作業者P10~P12である。)が存在すると判定した場合に警報制御手段13に対して左側方検出信号を通知する。そして、警報制御手段13は、左側方警報出力部7L、後方警報出力部7B、及び右側方警報出力部7Rに対して警報開始信号を出力し、3つ全ての警報出力部から警報音を出力させる。この場合、制御部1は、表示部5が起動していない場合には表示部5を起動させる。そして、画像生成手段11は、図21の出力画像D22に示すように、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像に切り換えて警報停止ボタンG1を重畳表示する。また、画像生成手段11は、図21の出力画像D23に示すように、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像上に警報停止ボタンG1を重畳表示してもよい。この場合、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。 【0206】 また、作業機械状態判定手段14によりショベル60が作業可能状態にないと判定された場合(ステップS22のNO)、人存否判定手段12は、検出信号を警報制御手段13に対して出力せず、NVRAM等に用意された人検出フラグの値を「1」(オン)に設定する(ステップS24)。なお、人検出フラグは、初期値として値「0」(オフ)が設定されており、検出フラグの値「1」(オン)は人を検出したことを表し、検出フラグの値「0」(オフ)は人を検出していないことを表す。この時点では、警報制御手段13は、検出信号を受けないため、警報開始信号を警報出力部7に対して出力することはなく、警報出力部7から警報を出力させることもない。また、警報制御手段13は、既に警報出力部7に対して警報開始信号を出力していた場合にはそれら警報出力部7に対して警報停止信号を出力してもよい。また、画像生成手段11は、表示部5が起動している場合には、ショベル60の周囲に人が存在すると判定されているにもかかわらず、人が存在しないと判定された場合と同様の出力画像を表示する。具体的には、画像生成手段11は、例えば図23の出力画像D32に示すような路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を表示する。但し、画像生成手段11は、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像に切り換えてもよい。 【0207】 一方、ショベル60の周囲に人が存在しないと判定した場合(ステップS21のNO)、人存否判定手段12は、作業機械状態判定手段14による判定の結果を参照することはなく、警報制御手段13に対して検出信号を出力することもない。 【0208】 この場合、画像生成手段11は、既に警報が出力されている場合には、ショベル60の周囲に人が存在いないと判定されているにもかかわらず、人が存在すると判定された場合と同様の出力画像を表示する。具体的には、画像生成手段11は、例えば図23の出力画像D33に示すような頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を警報停止ボタンG1と共に表示する。但し、画像生成手段11は、頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を、図23の出力画像D34に示すような路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像に切り換えてもよい。 【0209】 その後、警報制御手段13は、既に警報が出力されている場合には、警報停止ボタンG1が押下されたか否かを監視する(ステップS25)。そして、警報停止ボタンG1が押下されたと判定した場合(ステップS25のYES)、警報制御手段13は、警報停止信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7からの警報の出力を停止させる(ステップS26)。また、画像生成手段11は、頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像(出力画像D33参照。)を表示している場合には、頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像(出力画像D31参照。)に切り換えて表示する。 【0210】 一方、警報停止ボタンG1が押下されていないと判定した場合(ステップS25のNO)、警報制御手段13は、警報停止信号を警報出力部7に対して出力しない。すなわち、警報制御手段13が出力させた警報は、その後に人存否判定手段12がショベル60の周囲に人が存在しないと判定した場合であっても、警報停止ボタンG1が押下されるまで停止しない。また、画像生成手段11は、頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像(出力画像D33参照。)を表示している場合には、その頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像の表示を継続させる。 【0211】 なお、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下される前であっても、人存否判定手段12がショベル60の周囲に人が存在しないと判定した場合には、警報の内容を変更してもよい。具体的には、警報制御手段13は、既に出力している警報音の強弱、高低、出力間隔等を変更してもよく、或いは、既に発光させている警報ランプの強弱、発光色、発光間隔等を変更してもよい。警報を受ける操作者が、人存否判定手段12により人が存在すると判定されている場合と、人が存在しないと判定されている場合とを区別できるようにするためである。」 d「【0212】 次に、図24を参照して、作業機械状態判定手段14による作業機械状態判定処理について説明する。 【0213】 最初に、作業機械状態判定手段14は、イグニッションスイッチ9の出力に基づいて、イグニッションスイッチ9がオン状態にあるか否かを判定する(ステップS31)。 【0214】 イグニッションスイッチ9がオン状態にあると判定した場合(ステップS31のYES)、作業機械状態判定手段14は、ゲートロックレバー8の出力に基づいてゲートロックレバー8がロック解除状態にあるか否かを判定する(ステップS32)。 【0215】 ゲートロックレバー8がロック解除状態にあると判定した場合(ステップS32のYES)、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にあると判定する(ステップS33)。 【0216】 一方、イグニッションスイッチ9がオン状態にないと判定した場合(ステップS31のNO)、或いは、ゲートロックレバー8がロック解除状態にないと判定した場合(ステップS32のNO)、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にない、すなわち、ショベル60が作業不可状態にあると判定する(ステップS34)。 【0217】 その後、作業機械状態判定手段14は、NVRAM等に用意された作業可能フラグの値を判定結果に応じて設定する。人存否判定手段12は、図22に示す第2警報制御処理のステップS22においてこの作業可能フラグの値を参照し、参照した値に基づいて警報出力の有無を判断する。なお、作業可能フラグは、初期値として値「0」(オフ)が設定されており、作業可能フラグの値「1」(オン)は作業可能であることを表し、作業可能フラグの値「0」(オフ)は作業不可であることを表す。 【0218】 なお、作業機械状態判定手段14は、ゲートロックレバー8及びイグニッションスイッチ9の何れか一方の状態のみに基づいてショベル60が作業可能状態にあるか否かを判定してもよい。」 e「【0219】 次に、図25を参照して、警報制御手段13による作業開始時警報制御処理について説明する。 【0220】 最初に、警報制御手段13は、人検出フラグの値を参照する(ステップS41)。そして、人検出フラグの値が「1」オンであると判定した場合(ステップS41のYES)、警報制御手段13は、警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させる(ステップS42)。具体的には、警報制御手段13は、人存否判定手段12により、現時点においてショベル60の周囲に人が存在しないと判定された場合であっても警報を出力させる。本実施例では、警報制御手段13は、左側方警報出力部7L、後方警報出力部7B、及び右側方警報出力部7Rに対して警報開始信号を出力し、3つ全ての警報出力部から警報音を出力させる。この場合、警報制御手段13は、警報の出力が停止されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。 【0221】 その後、警報制御手段13は、警報開始後の経過時間を計測し、警報開始後に所定時間(例えば2秒間である。)が経過したか否かを判定する(ステップS43)。 【0222】 警報開始後に所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS43のNO)、警報制御手段13は、所定時間が経過するまで待機する。 【0223】 一方、警報開始後に所定時間が経過したと判定した場合(ステップS43のYES)、警報制御手段13は、警報停止信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7からの警報の出力を停止させる(ステップS44)。また、警報制御手段13は、人検出フラグの値を「0」(オフ)にリセットする(ステップS45)。なお、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで警報を停止させないようにしてもよい。 【0224】 以上の構成により、画像生成装置100は、監視空間内に人が存在すると判定した場合であってもショベル60が作業不可状態の場合には警報を出力しない。そのため、画像生成装置100は、ショベル60が作業不可状態にある場合に不要な警報が出力されてしまうのを防止できる。 【0225】 一方で、画像生成装置100は、現時点において監視空間内に人が存在しないと判定した場合であっても、ショベル60が作業不可状態にある間に作業者が監視範囲内に進入していた場合には警報を出力する。そのため、画像生成装置100は、ショベル60の周囲の監視空間に存在していた作業者が監視空間外に退出したことの確認を操作者に促すことができる。 【0226】 また、上述の作業開始時警報制御処理では、警報制御手段13は、人検出フラグの値が「1」(オン)でありさえすれば警報を出力させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、警報制御手段13は、人検知フラグの値が「1」(オン)に設定された時点からの経過時間が所定時間以上であれば警報を出力させないようにしてもよい。或いは、人存否判定手段12は、人検知フラグの値を「1」(オン)に設定した時点からの経過時間が所定時間に達した場合に人検知フラグの値を「0」(オフ)にリセットしてもよい。あまりにも古い検出記録に基づいて警報を出力させてしまうのを防止するためである。 【0227】 また、画像生成装置100は、人存否判定手段12が動体検出センサに基づいて作業者(動体)の存否を判定する場合、ショベル60が作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者を、ショベル60が作業可能状態になったときに検出し損ね、ショベル60の操作者がその作業者に気付かないままショベル60による作業を開始してしまうのを防止できる。 【0228】 また、画像生成装置100は、人存否判定手段12がオプティカルフローを用いて作業者(動体)の存否を判定する場合に、ショベル60が作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者を、ショベル60が作業可能状態になったときに検出し損ね、ショベル60の操作者がその作業者に気付かないままショベル60による作業を開始してしまうのを防止できる。」 f 図22 「 [図:0001429966000006.jpg] 」 g 図24 「 [図:0001429966000007.jpg] 」 h 図25 「 [図:0001429966000008.jpg] 」 (イ)本件明細書等に記載された課題解決手段について a 上記(ア)の本件明細書等には、ショベルの周囲に人が存在すると判定し(【図22】のステップ21のYES)、イグニッションスイッチがオン状態にないまたはゲートロックレバーがロック解除状態にないと判定した作業不可状態であった場合に(【図22】のステップ22のNO及び【図24】)、人検出フラグをオンに設定しておき(【図22】のステップ24)、後の作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に人検出フラグがオン設定であれば(【図25】のステップ41のYES)、警報を出力させる、または、警報を出力させることに加え、警報の出力が停止されるまで、ショベル60による作業を禁止する(段落【0220】)ことにより、ショベルが作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者Nを、ショベルが作業可能状態になったときに検出し損ねても、ショベルによる作業を開始してしまうのを防止する(段落【0227】及び【0228】)ことが記載されている。 上記記載をふまえると、上記アの課題のうち(ア)(「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合」であっても「操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまう」との課題を解決する手段は、ショベルの周囲に人が存在すると判定し、イグニッションスイッチがオン状態にないまたはゲートロックレバーがロック解除状態にないと判定した作業不可状態であった場合に、人検出フラグをオンに設定しておき、後の作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に人検出フラグがオン設定であれば、警報を出力させる、または、警報を出力させることに加え、警報の出力が停止されるまで、ショベルによる作業を禁止すること、と認められる。 b 「作業現場の作業者の位置を記憶可能」とする手段については、本件明細書等において、作業者の位置及び記憶に関して、本件明細書の段落【0011】に、「画像生成装置100が制御部1、記憶部4等で構成され」、段落【0157】に、「画像生成装置100が出力画像を生成し」、段落【0158】に、「出力画像は、ショベルの周囲に九人の作業者が存在する状態を示し」、段落【0159】に、「画像では、9人の作業者のそれぞれの接地位置とショベルのCG画像との間の距離が、作業者のそれぞれとショベルとの間の実際の距離を正確に表し」(段落【0159】)と記載され、さらに、段落【0019】に、「記憶部4が各種情報を記憶する装置」と記載されているが、「作業現場の作業者の位置を記憶可能」とする構成を示すものでなく、他の本件明細書には、対応する記載も示唆もない。 ウ 本件特許発明1~12が、課題を解決できると合理的に理解できるか否かについて (ア)本件特許発明1について a 本件特許発明1を特定する、特許請求の範囲における請求項1の記載は、上記第3の【請求項1】に示したとおりである。 すなわち、請求項1には、「下部走行体」、「上部旋回体」及び「アタッチメント」の「ショベル」の基本的構成に加えて、「ショベル」が「前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部」を有していること、また、「前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する」ことが記載されている。 b しかし、請求項1には、上記「ショベルの周囲における人の存否を判定する」ことが記載されているに留まるものであり、この「判定する」こと自体により課題解決できるものではなく、「判定」した結果に基づいて「作業が禁止」されることにつながる構成が特定されていないから、上記イ(イ)のa及びbで示した課題解決手段ないし構成が記載されておらず、上記アの課題を解決することができると合理的に理解されるものではない。 c したがって、本件特許発明1は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができず、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 (イ)本件特許発明2~7について 本件特許発明2~7を特定する、特許請求の範囲における請求項2~7の記載は、それぞれ、上記第3の【請求項2】~【請求項7】に示したとおりである。 そして、請求項2~7にも、上記イ(イ)の課題解決手段が記載されておらず、上記アの課題を解決することができると合理的に理解されるものではない。 なお、本件特許発明5は、「前記制御部は、人が存在すると判定すると人検知フラグを設定し、前記人検知フラグを設定することで人を検知したことを記憶する」ことが特定されているが、課題解決手段は、上記イ(イ)のとおりであって、本件特許発明5において、課題解決手段、特に「作業現場の作業者の位置を記憶可能」とすることが特定されていない以上、上記アの課題を解決することができると合理的に理解できない。 (ウ)本件特許発明8について 本件特許発明8を特定する、特許請求の範囲における請求項8の記載は、上記第3の【請求項8】に示したとおりである。 そして、請求項8の記載は、請求項1と同様であり、上記(ア)において請求項1について指摘したのと同様の理由により、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができず、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 (エ)本件特許発明9~12について 本件特許発明9~12を特定する、特許請求の範囲における請求項9~12の記載は、上記第3の【請求項9】~【請求項12】に示したとおりである。 そして、請求項9~12においても、上記イ(イ)の課題解決手段が記載されておらず、上記アの課題を解決することができると合理的に理解されるものではない。 (3)特許権者の主張について ア 特許権者は、令和7年4月11日提出の意見書において、「明細書の段落【0005】の記載を訂正し、本件特許発明が解決しようとする課題が、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベル」の提供であることを明確にし」、「これにより、請求項1における「前記ショベルの状態が前記作業不可状態及び前記作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定」すること(特に「作業不可状態」でショベルの周囲における人の存否を判定すること)が、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能」の一例であり、請求項1に係る発明は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、発明の詳細な説明に記載したものであると考えます。」と主張している。(13頁16~末行) しかしながら、本件明細書の段落【0005】の記載において、「所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定した機能を有するショベル」とする訂正は、上記第2で示したとおり、認めることができないものであり、また、本発明の課題解決手段は、上記(2)イ(イ)a及びbで示したとおりであって、上記(2)ウで説明したとおり、請求項1には、課題解決手段が記載されていないから、請求項1に係る発明は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 よって、特許権者の主張を採用することはできない。 (4)サポート要件の判断のまとめ 本件特許発明1~12に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 明確性要件について (1)請求項1及び8に「前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する」との記載について、次の点が不明である。前記記載は、本件明細書に実質的に記載されておらず、説明もない。 ア 「制御部」について 上記記載は、「制御部」が実行することを特定するものと理解できるが、「作業不可状態及び作業可能状態」をどのように「制御部」が把握するのかが特定されていない。 イ 本件明細書の記載について 本件特許発明の「制御部」に関して、本件明細書の段落【0015】には「制御部1は、例えば、後述する座標対応付け手段10、画像生成手段11、人存否判定手段12、警報制御手段13、及び作業機械状態判定手段14のそれぞれに対応するプログラムをROMやNVRAMに記憶し」との記載があり、また、段落【0053】には「作業機械状態判定手段14は、作業機械の状態を判定する手段である。本実施例では、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にあるか否かを判定する。」との記載がある。 これらの記載をふまえると、本件特許発明の「制御部」は、「作業可能状態」にあるか、「作業不可状態」にあるかを判定する手段を有すると解するのが自然である。 一方、本件明細書の段落【0203】には、【図22】に関して、「ショベル60の周囲に人が存在すると判定した場合(ステップS21のYES)、人存否判定手段12は、作業機械状態判定手段14による判定の結果(後述の図24参照。)を参照する(ステップS22)。・・・」との記載がある。 また、上記段落で参酌する【図22】は、第2警報制御処理の流れを示すフローチャート(段落【0008】参照。)であり、当該図から、「ショベルの周囲に人が存在すると判定したか?」(S21)との判定をし、「YES」となった場合の次ぎに、「作業可能状態?」(S22)が「YES」であるか「NO」であるかの判定をする、処理の順序が認められる。 【図22】 [図:0001429966000009.jpg] 請求項1及び8の「前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する」との記載が、上記段落【0203】や【図22】で示される実施例とは逆の判定順序のものが記載されていると理解できる。 そうすると、上記記載において、「前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても」との特定事項が、「制御部」のどのような機能、作用等を特定するものと理解することができるのかが不明確である。 (2)請求項6に記載の「前記ショベルの作業機械状態」と、請求項6が引用する請求項1に記載の「前記ショベルの状態」との関係が不明確である。 (3)明確性要件についてのまとめ 前記(1)及び(2)のとおりであるから、請求項1、6、8に係る発明及び各請求項を引用する請求項2~7、9~12に係る発明は、明確でない。 3 進歩性について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と刊行物1発明とを対比する。 (ア)刊行物1発明の「車両系建設機械」と、本件特許発明1の「ショベル」とは、「車両系建設機械」である点で共通する。 (イ)刊行物1発明の「障害物検出手段」は、「探査信号を発信し、所定の範囲内にある障害物からの反射波を感知する検出器により当該障害物を検知」することで「障害物信号を出力」している。よって、「障害物検出手段」は、車両系建設機械の周囲に存在する「障害物からの反射波」を感知することで、「障害物信号を出力」すなわち、車両系建設機械の周囲に障害物が存在していると判定し、「障害物からの反射波」を感知しなければ、その周囲に障害物が存在していないと判定しているといえる。 また、本件特許発明1の「ショベルの周囲における人」は、ショベルを作動させる場合においてショベルの周囲における障害となる物体であるといえる。そうすると、刊行物1発明の「障害物」と、本件特許発明1の「ショベルの周囲における人」とは、「ショベルの周囲における障害となる物体」である点で共通する。 そうすると、刊行物1発明「障害物検出手段」と、本件特許発明1の「前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部」とは、「前記ショベルの周囲における障害となる物体の存否を判定する制御部」の点で共通する。 (ウ)刊行物1発明は、「所定範囲に障害物が存在すると」、「機械の総ての作動は停止」することから、障害物検知手段が、作業可能状態の場合に、周囲の障害物の存否の判定をしていることは明らかである。また、刊行物1発明は、「障害物信号が消滅し、かつ、中立信号がコントローラに入力されていると制御信号の出力はなくなり、作動停止手段の機能は自動的に解除され、元の操作を可能」にしていることから、障害物検知手段が、作業停止の状態、すなわち、作業不可状態の場合に、周囲の障害物の存否を判定していることは明らかである。 (エ)上記(イ)及び(ウ)をふまえると、 刊行物1発明が、「障害物検知手段」を有していて、「障害物検知手段」において、「所定範囲に障害物が存在すると」、「機械の総ての作動は停止」させ、また、「障害物信号が消滅し、かつ、中立信号がコントローラに入力されていると制御信号の出力はなくなり、作動停止手段の機能は自動的に解除され、元の操作を可能」にすることと、本件特許発明1が、「前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における人の存否を判定する」こととは、「前記ショベルの周囲における障害となる物体の存否を判定する制御部を有し、前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における障害となる物体の存否を判定する」点で共通する。 そうすると、本件特許発明1と刊行物1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「車両系建設機械であって、 前記車両系建設機械の周囲における障害となる物体の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても前記ショベルの周囲における障害となる物体の存否を判定する、 ショベル。」 <相違点1> 車両系建設機械について、本件特許発明1では、「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベル」であるのに対して、刊行物1発明では、そのような特定がされていない点。 <相違点2> ショベルの周囲における「障害となる物体」が、本件特許発明1では、「人」であるのに対して、刊行物1発明では、「障害物」である点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点1について 刊行物2には、「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベル」が、記載されている。 そして、刊行物1発明と刊行物2に記載された事項は、車両系建設機械という共通の技術分野に属していると共に、制御部によって、周囲における障害となる物体の存否を判定するという共通の作用及び機能を有しているといえる。 したがって、刊行物1発明に刊行物2に記載された事項を適用し、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 (イ)相違点2について 刊行物1の段落【0002】(上記第5の1(1)イ参照)には、「障害物」という用語が「作業員」を含む意味で用いられていることが記載されていることから、刊行物1発明の「障害物」は、「作業員」すなわち、「人」が含まれる意味で用いられているといえる。 また、ショベルの周囲において人の存否を判定することは、上記刊行物2及び刊行物3に記載されているとおり、周囲慣用の技術(周知慣用技術1)である。 したがって、刊行物1発明に、周知慣用技術1を適用して、相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、刊行物1発明、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件特許発明2について ア 対比・判断 本件特許発明2と刊行物1発明とを対比すると、上記相違点に加えて、下記の点で相違し、その他の余の点で一致する。 <相違点3> 本件特許発明2は、カメラを有し、前記制御部は、前記カメラの撮像空間に人を捉え、前記撮像空間内の前記ショベルの周囲における人の存否を判定するのに対して、刊行物1発明は、そのような特定がされていない点。 上記相違点について検討する。 相違点1及び相違点2については、上記(2)イで検討したとおりである。 上記相違点3について検討する。 刊行物2には、車両系建設機械において、カメラを備え、当該カメラを用いた障害物検知手段が記載されている。 そして、刊行物1発明に、上記刊行物2に記載の事項を適用して、相違点3に係る本件特許発明2のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明2は、刊行物1発明、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件特許発明3及び4について 上記2(1)のとおり、「前記ショベルの状態が作業不可状態及び作業可能状態の何れであっても」との構成が明らかでないところ、「作業不可状態」及び「作業可能状態」となることを単に述べ、しかも、仮に、請求項3の記載が、「作業不可状態」の例として、イグニッションスイッチがオフ状態、或いは、ゲートロックレバーがロック状態であることを意味し、また、請求項4の記載が、「作業可能状態」の例として、イグニッションスイッチがオン状態で、且つ、ゲートロックレバーがロック解除状態であることを意味する程度の意味であるとすれば、このような事項は、当該技術分野においては、例示するまでもなく、一般的な技術事項である。 したがって、本件特許発明3及び4は、刊行物1発明、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件特許発明7について ア 対比・判断 本件特許発明7と刊行物1発明とを対比すると、上記相違点1及び2に加えて、下記の点で相違し、その他の余の点で一致する。 <相違点3’> 本件特許発明7は、カメラを有し、前記制御部は、前記カメラの撮像空間に人を捉え、前記撮像空間内の前記ショベルの周囲における人の存否を判定」し、「前記ショベルの周囲における人の存否を判定する監視空間は、前記撮像空間に含まれる」のに対して、刊行物1発明は、そのような特定がされていない点。 上記相違点3’について検討する。 相違点1~2については、上記(1)イで説明したとおりである。 上記相違点3’について検討する。 刊行物2には、車両系建設機械において、カメラを備え、当該カメラを用いた障害物検知手段が記載されている。また、カメラを用いて障害物の存否を判定する場合において、障害物の存否を判定する監視空間を、カメラの撮像空間に含まれるようにすることは、例示するまでもなく、周知慣用の技術(周知慣用技術2)である。 そして、刊行物1発明に、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術2を適用して、相違点3’に係る本件特許発明7の構成とすることは、当業者であれば容易いなし得ることである。 イ 小括 したがって、本件特許発明7は、刊行物1発明に、刊行物2に記載の事項、周知慣用技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件特許発明8について 上記(1)と同様であり、本件特許発明8は、刊行物1システム発明、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)本件特許発明9について 上記(2)と同様であり、本件特許発明9は、刊行物1システム発明、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)本件特許発明10及び11について 上記(3)と同様であり、本件特許発明10及び11は、刊行物1システム発明、刊行物2に記載の事項及び周知慣用技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 まとめ 以上のとおり、請求項1~12の記載は、特許法36条6項1号及び2号の規定を満たしていないから、請求項1~12に係る特許は、同法113条4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件特許発明1~4、7~11は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~4、7~11に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701088

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