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特許異議申立

2024-700405

熱転写シート

審判番号
2024-700405
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-181033
登録番号
7375435
請求日
2024年04月26日
審決日
2025年03月25日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人インテクト国際特許事務所
  • 【権利者代理人】石橋 良規
  • 【異議申立人】伊藤 直宏
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 関根 洋之
  • 審判官 西岡 貴央
分類
P1651.113-YAA(B41M) / P1651.121-YAA(B41M) / P1651.537-YAA(B41M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7375435号発明「熱転写シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7375435号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4、7〕、〔5、8〕、〔6、9〕について訂正することを認める。 特許第7375435号の請求項1、4~9に係る特許を維持する。 特許第7375435号の請求項2、3に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7375435号の請求項1~7に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年9月30日を出願日とする出願であって、令和5年10月30日にその特許権の設定登録がされたものである。 本件特許について、令和5年11月8日に特許掲載公報が発行されたところ、その発行の日から6月以内である令和6年4月26日に、特許異議申立人 伊藤 直宏(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 6年 8月20日付け:取消理由通知 令和 6年10月21日 :訂正請求書、意見書(特許権者)の提出 (この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和 6年12月 6日 :意見書(特許異議申立人)の提出 第2 本件訂正請求について 1 訂正の趣旨及び訂正の内容 (1) 訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第7375435号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。 (2) 訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有している、熱転写シート。」と記載されているのを、「前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である、熱転写シート。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4、7も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「前記転写層がヒートシール層を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。」と記載されているのを、「前記転写層がヒートシール層を含む、請求項1に記載の熱転写シート。」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「前記転写層が溶融インキ層を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱転写シート。」と記載されているのを、「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、前記転写層が溶融インキ層を含む、熱転写シート。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、「前記離型層が、ポリビニルアルコールを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記ポリビニルアルコールの質量が5質量%以上25質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱転写シート。」と記載されているのを、「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、前記離型層が、ポリビニルアルコールを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記ポリビニルアルコールの質量が5質量%以上25質量%以下である、熱転写シート。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項9も同様に訂正する)。 キ 訂正事項7 (訂正事項7-1) 特許請求の範囲の請求項7に、「前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱転写シート。」と記載されているのを、「前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項1に記載の熱転写シート。」に訂正する。 (訂正事項7-2) 特許請求の範囲の請求項7に、「前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱転写シート。」と記載されているのを、「前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項5に記載の熱転写シート。」と記載し、新たに請求項8とする。 (訂正事項7-3) 特許請求の範囲の請求項7に、「前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱転写シート。」と記載されているのを、「前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項6に記載の熱転写シート。」と記載し、新たに請求項9とする。 (3) 一群の請求項、別の訂正単位とする求め 本件訂正前の請求項2~7は、請求項1を直接的又は間接的に引用していることから、本件訂正前の請求項1~7に対応する本件訂正後の請求項1、4~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 一方、後述するとおり、上記(2)の訂正事項5及び6に係る訂正は、訂正前の請求項5及び6の記載を他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるところ、特許権者から、訂正後の請求項5及び8並びに6及び9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、上記一群の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載された「転写層」について、「前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である」と限定するものであり、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無について 本件明細書の段落【0032】には、「図2に示す形態の熱転写シート100は、転写層10が、離型層2側から保護層5、受容層7がこの順で積層されてなる積層構造を呈している。」と記載されており、本件図面の【図2】には、「転写層10が、離型層2側から保護層5、受容層7がこの順で積層されてなる積層構造」である態様が記載されている。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「転写層」について、「前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である」と限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2、3について 訂正事項2、3は、それぞれ、請求項2、3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項2、3に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (3)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正事項2及び3に係る訂正で特許請求の範囲の請求項2及び3を削除することに伴って、これと整合するように請求項4の記載を改める訂正である。 そうすると、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。 また、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 (4)訂正事項5について 訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項5が引用する請求項1の記載を独立請求項の形式にするとともに、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれか一項を引用していたもののうち、請求項2~4を引用するものについて引用関係を解消する訂正である。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、訂正事項5に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (5)訂正事項6について 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項6が引用する請求項1の記載を独立請求項の形式にするとともに、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5のいずれか一項を引用していたもののうち、請求項2~5を引用するものについて引用関係を解消する訂正である。 したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、訂正事項6に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (6)訂正事項7について 訂正事項7のうち訂正事項7-1は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、請求項2~6を引用しないものとする訂正であるとともに、請求項間の引用関係を解消する訂正である。 また、訂正事項7のうち訂正事項7-2は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、請求項1~4、6を引用しないものとする訂正であるとともに、請求項間の引用関係を解消して訂正後の新たな請求項8とする訂正である。 また、訂正事項7のうち訂正事項7-3は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、請求項1~5を引用しないものとする訂正であるとともに、請求項間の引用関係を解消して訂正後の新たな請求項9とする訂正である。 したがって、訂正事項7-1~7-3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、訂正事項7に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (7)小括 以上(1)~(6)によれば、訂正事項1~7からなる本件訂正請求は、全ての訂正の要件を満たす適法なものである。 ここで、上記1(3)に示したとおり、特許権者は、訂正後の請求項5及び8並びに6及び9について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項とは別の訂正単位とすることを求めているが、上記2で検討したとおり、訂正事項1~7に係る訂正は、いずれも適法なものであって、別の訂正単位として適否を判断するまでもなく、本件訂正請求は適法といえる。 よって、訂正後の請求項〔1~4、7〕、〔5、8〕、〔6、9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明(以下、項番に従って「本件特許発明1」いう。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、次のものである。 「【請求項1】 基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、 前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、 前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である、熱転写シート。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記転写層がヒートシール層を含む、請求項1に記載の熱転写シート。 【請求項5】 基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、 前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、 前記転写層が溶融インキ層を含む、熱転写シート。 【請求項6】 基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、 前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、 前記離型層が、ポリビニルアルコールを含有しており、 前記離型層の総質量に対する前記ポリビニルアルコールの質量が5質量%以上25質量%以下である、熱転写シート。 【請求項7】 前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、 前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項1に記載の熱転写シート。 【請求項8】 前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、 前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項5に記載の熱転写シート。 【請求項9】 前記離型層が、シリコーンオイルを含有しており、 前記離型層の総質量に対する前記シリコーンオイルの質量が1質量%以上4質量%以下である、請求項6に記載の熱転写シート。 第4 取消しの理由の概要及び証拠方法 1 取消しの理由の概要 当合議体が令和6年8月20日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1:(新規性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~4、7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 ・甲1号証:特開昭62-297184号公報(後記「甲1」) ・甲2号証:特開平7-137427号公報(後記「甲2」) ・甲3号証:特開2019-72871号公報(後記「甲3」) ・甲11号証:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 会社概要(後記「甲11」)URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/business/company/、検索日:令和6年1月23日 ・甲12号証:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 沿革(後記「甲12」)URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/business/company/history.php、検索日:令和6年1月23日 ・甲13号証:ピーロイル(登録商標)資料(後記「甲13」) URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/industries/infrastructure/09.php、検索日:令和6年1月11日 ・引用文献1:特開2006-123533号公報 (当合議体注:甲1~甲3は主引用例である。甲11及び甲12は、甲1及び甲2に記載の「ピーロイル1010」の製造元に関する参考文献である。また、甲13は、甲3に記載の「ピーロイル1050」の成分に関する参考文献である。また、引用文献1は、当合議体が職権調査により発見した本件出願前の周知技術を示す文献である。) 2 特許異議申立人が提示した証拠方法 特許異議申立人によって特許異議申立書とともに提出された甲第1号証~甲第20号証並びに意見書とともに提出された甲第21号証~甲第25号証、甲第25A号証~甲第25E号証及び甲第26号証~甲第29号証は、次のとおりである。(以下、甲第1号証~甲第29号証を、それぞれ「甲1」~「甲29」という。) (1)特許異議申立書とともに提出された証拠方法(甲1~甲20) 甲1:特開昭62-297184号公報 甲2:特開平7-137427号公報 甲3:特開2019-72871号公報 甲4:特開2019-81335号公報 甲5:特開2014-104705号公報 甲6:特開2011-73383号公報 甲7:特開平8-310170号公報 甲8:特開2012-30521号公報 甲9:特開平9-188858号公報 甲10:本件特許の審査過程で提出された意見書 甲11:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 会社概要 URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/business/company/、検索日:令和6年1月23日 甲12:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 沿革 URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/business/company/history.php、検索日:令和6年1月23日 甲13:ピーロイル(登録商標)資料 URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/industries/infrastructure/09.php、検索日:令和6年1月11日 甲14:ピーロイル406 カタログ、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、作成日:平成30年10月 甲15:ピーロイル1070 カタログ、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、作成日:平成30年10月 甲16:ピーロイル1070 SDS、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、作成日:令和3年10月1日 甲17:アシオレジン(登録商標)資料、URL:https:///www.ashio-tokyo.co.jp/、検索日:令和6年1月11日 甲18:KEYENCE社ホームページ「樹脂成形エキスパート」URL:https://www.keyence.co.jp/ss/products/sensor/plastic-molding/about/crystalline.jsp、検索:令和6年2月29日 甲19:十時稔, “DSC(1)-装置および解析基礎編-”, SEN’I GAKKAISHI (繊維と工業),2009年、第65巻,第8号,p. 293-297 甲20:十時稔, “DSC(2)-高分子結晶の融解挙動編-”, SEN’I GAKKAISHI (繊維と工業),2009年、第65巻,第9号,p. 347-355 (2)令和6年12月6日提出の意見書とともに提出された証拠方法(甲21~甲29) 甲21:特開2002-219880号公報 甲22:特開昭62-238791号公報 甲23:特開2000-326640号公報 甲24:特開2005-319702号公報 甲25:特開2010-5885号公報 甲25A:特開平7-156532号公報 甲25B:特開2002-79765号公報 甲25C:特開2003-145816号公報 甲25D:特開2003-145950号公報 甲25E:特開2007-83472号公報 甲26:特開2011-224915号公報 甲27:特表2010-525416号公報 甲28:特開2002-264379号公報 甲29:特開2004-195941号公報 第5 取消しの理由についての当合議体の判断 1 甲2を主引用文献とした場合の新規性、進歩性 (1) 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明(甲2発明) ア 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付与したものであって、甲2に記載された発明の認定に用いた箇所を示す。 (ア) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、布地、陶器、プラスチック成形品などの各種基材に、複写機による画像を転写する上で有用な画像転写用シートに関する。」 (イ) 「【0002】 【従来の技術】Tシャツなどの布地や、陶器、プラスチック製品などの表面へのマーク・ロゴや画像印刷は、通常、スクリーン印刷を主体とする各種印刷法により行われている。しかし、これらの印刷法では、高価な印刷用原版を作製する必要がある。そのため、少部数の印刷には、コストの点から不向であるだけでなく、原版の作製に長時間を要するため迅速に印刷することが困難である。 【0003】これらの問題を解消するため、最近、カラー複写機を用いて、少部数の被転写体に迅速かつ安価に画像を転写するシステムが開発されている。このシステムは、コピー用紙に代えて、支持層及び熱接着層を有する熱転写シートを用い、この熱転写シートの熱接着層の表面に、原稿に対応するトナー画像を形成し、次いで、被転写体に前記熱転写層の表面を接触させ、加熱圧着することにより、熱転写シートの熱接着層とともにトナー画像を被転写体上に転写するものである。 【0004】しかし、上記のシステムは、特に連続して複写する場合に、熱転写シートが複写機に詰ったり、複写機の加熱定着ドラムに接着し易いという問題点を有する。このようなトラブルが発生すると、その都度転写シートを取り除く必要があり、大幅に生産性が低下する。また、熱転写シートの詰まりは複写機の故障の原因となり、補修に多大の時間と費用を要することになる。 【0005】また、上記のシステムでは、定型サイズの転写シート上に形成したトナー画像を、熱接着層とともに被転写体に熱転写するため、被転写体の画像部分及びその周辺が厚く見え、美観を損ね、風合いが悪くなる。」 (ウ) 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、複写機通紙性に優れ、しかも風合いの良好な画像の得られる画像転写用シートを提供することにある。」 (エ) 「【0009】前記支持層は、複写機に供することができるシート状物、例えば、紙、合成紙、化学繊維紙、合成樹脂シートやフィルムなどで形成できる。 ・・・ 【0011】前記離型層は、前記支持層と熱接着層との間に形成される。離型層は、被転写体に画像を転写する際、熱接着層を容易に剥離させる特性を有する物質で構成されていればよい。このような物質として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの界面張力の小さな樹脂、シリコーン樹脂、ワックスなどの剥離剤などが例示できる。 ・・・ 【0013】前記熱接着層を構成する成分としては、熱によって接着性を示す成分であればよく、例えば、熱接着性ポリマーなどが挙げられる。前記熱接着性ポリマーとしては、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの熱接着性ポリマーは、一種又は二種以上混合して使用できる。 ・・・ 【0019】本発明の主たる特徴は、支持層の厚みが50μm以上、熱接着層の厚みが60μm以下で、かつシート全体の厚みが60~200μmである点に存する。各層の厚みを前記特定の範囲に設定することにより、複写機の紙送り機構における転写シートの詰りを防止できると共に、風合いの優れた転写画像を得ることができる。 【0020】支持層の厚みは、好ましくは70~180μm、さらに好ましくは80~155μm程度である。支持層の厚みが50μm未満であると、剛性(腰)が小さく、複写機の紙送り機構で詰りが発生する。 【0021】また、熱接着層の厚みは、好ましくは1~60μm、さらに好ましくは5~30μm程度である。熱接着層の厚みが60μmを越えると、転写した部分が厚くなり、ゴワゴワして風合いを損なう。また、離型層の厚みは、例えば0.001~100μm、好ましくは0.01~60μm程度である。 【0022】さらに、シート全体の厚みは、好ましくは80~190μm、特に好ましくは90~160μm程度である。シート全体の厚みが、60~200μmの範囲を外れると、複写機の紙送り機構における噛み込みが不十分となり、紙詰りが生ずる。」 (オ) 「【0028】 【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 ・・・ 【0031】実施例2 厚み60μmのポリエチレンラミネートグラシン紙上に、長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製]を0.1μmの厚みに塗布して離型層を形成した後、この離型層の上に、熱接着層として、ナイロン12樹脂[商品名:ダイアミドT351;ダイセルヒュルス(株)製]を溶融押出してラミネートし、厚み80μmの画像転写シートを得た。この転写シートをA4サイズにカットし、富士ゼロックス(株)製カラー複写機AC635に装着し、原稿を転写シートの熱接着層の表面に100枚連続してコピーしたところ、紙詰りは全く発生しなかった。 【0032】次いで、原稿をコピーした転写シートを、コットン製のTシャツの上に、熱接着層の表面がTシャツと接触するように重ね、120℃で1分間加熱接着させた。その後、ポリエチレンラミネートグラシン紙及び離型層を同時に剥離して、Tシャツ上に転写された画像を観察した。その結果、転写画像の風合いは良好で、皺やゴワゴワした手触りはなかった。」 イ 甲2に記載された発明 甲2の上記ア(ア)~(オ)の記載に基づけば、甲2には、実施例2から理解される以下に示す「画像転写シート」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「厚み60μmのポリエチレンラミネートグラシン紙上に、長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製]を0.1μmの厚みに塗布して離型層を形成した後、 この離型層の上に、熱接着層として、ナイロン12樹脂[商品名:ダイアミドT351;ダイセルヒュルス(株)製]を溶融押出してラミネートし、 A4サイズにカットし、富士ゼロックス(株)製カラー複写機AC635に装着し、原稿を前記熱接着層の表面にコピーした、 厚み80μmの画像転写シートであって、 熱接着層の表面がTシャツと接触するように重ね、120℃で1分間加熱接着させ、その後、ポリエチレンラミネートグラシン紙及び離型層を同時に剥離して、Tシャツ上に画像を転写する、 画像転写シート。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 (ア) 「基材」について 甲2発明の「厚み60μmのポリエチレンラミネートグラシン紙」は、本件特許発明1の「基材」に相当する。 (イ) 「離型層」について 甲2発明の「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製]を0.1μmの厚みに塗布して」形成された「離型層」は、本件特許発明1の「離型層」に相当する。 (ウ) 「転写層」について 甲2発明の、「表面」に「原稿」が「カラー複写機」により「コピー」された「熱接着層」は、加熱接着により「離型層」から剥離し、Tシャツ上に転写されるものである。そうすると、甲2発明の「表面」に「原稿」が「カラー複写機」により「コピー」された「熱接着層」は、本件特許発明1の「転写層」に相当する。 (エ) 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された」について 甲2発明は、「ポリエチレンラミネートグラシン紙」上に、「離型層」を形成し、この離型層の上に、「熱接着層」を得ている。この甲2発明の構成と、上記(ア)~(ウ)を総合すると、甲2発明は、本件特許発明1の「基材、離型層、転写層がこの順で積層された」との要件を満たす。 (オ) 「前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており」について 甲2発明の「離型層」と「熱接着層」が、直接的に接していることは明らかである。これと、上記(イ)及び(ウ)を総合すると、甲2発明は、本件特許発明1の「前記転写層は、前記離型層と直接的に接して」いるとの要件を満たす。 (カ) 「前記転写層は、」「離型層から剥離可能に構成され、」について 甲2発明は、熱接着層の表面がTシャツと接着するように重ね、120℃で1分間加熱接着させ、その後、ポリエチレンラミネートグラシン紙及び離型層を同時に剥離して、Tシャツ上に画像を転写しているから、「表面」に「原稿」が「コピー」された「熱接着層」と、「離型層」とが、剥離しているといえる。 そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の「前記転写層は、」「離型層から剥離可能に構成され」るという要件を満たす。 (キ) 「受容層」について 甲2発明の「熱接着層」は、カラー複写機により、その表面に原稿がコピーされるものであるから、「熱接着層」の表面には、トナーにより画像が形成されているものと認められる。そうすると、甲2発明の「熱接着層」は、トナーを担持する点で、トナーを受容しているといえる。 以上を総合すると、甲2発明の「熱接着層」は、本件特許発明1の「受容層」に相当するといえる。 (ク) 「熱転写シート」について 甲2発明の「画像転写シート」は、「熱接着層の表面がTシャツと接触するように重ね、120℃で1分間加熱接着させ、その後、ポリエチレンラミネートグラシン紙及び離型層を同時に剥離して、Tシャツ上に画像を転写する」ものである。 上記画像の転写プロセスからみて、甲2発明の「画像転写シート」は、本件特許発明1の「熱転写シート」に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記ア(ア)~(ク)によれば、本件特許発明1と甲2発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点1-1―1) 本件特許発明1は、「離型層」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しているのに対して、 甲2発明は、「離型層」の形成に使用される「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂であるか一応明らかでない点。 (相違点1-1-2) 本件特許発明1は、「前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である」のに対して、 甲2発明は、「転写層」が、「表面」に「原稿」が「カラー複写機」により「コピー」された「熱接着層」からなる点。 ウ 判断 (ア) 相違点1-1-1について 融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂について、本件明細書には、以下の記載がある。(注:下線は合議体が付したものであり、判断等に用いた箇所を示す。以下同じ。) a 「【0056】 (実施例5) 離型層用塗工液1を、下記組成の離型層用塗工液5に変更して離型層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを得た。 【0057】 <離型層用塗工液5> ・アルキルペンダント系樹脂 5部 (ピーロイル(登録商標)1010 ライオン・スペシャリティ・ケミカル(株)) ・トルエン 95部」 b 「【0083】 【表1】 [図:0001423493000001.jpg] 」 本件明細書の上記(ア)、(イ)の記載によれば、「ピーロイル(登録商標)1010」は、「ライオン・スペシャリティ・ケミカル(株)」が製造するものであり、また、融点は85℃であると認められる。 一方、甲2発明の「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010]」は、「一方社油脂(株)製」であるところ、甲11及び甲12には、上記「ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社」は、2015年7月に、一方社油脂工業株式会社等が分割・合併した新会社である旨記載されている。そうすると、甲2発明の「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製]」と、本件明細書に記載された「ピーロイル(登録商標)1010 ライオン・スペシャリティ・ケミカル(株))」は、同一の材料であると推認される。 したがって、甲2発明の「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製]」の融点は、上記「ピーロイル(登録商標)1010 ライオン・スペシャリティ・ケミカル(株))」と同じ85℃であると認められる。 そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の「前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有」するという要件を満たす。 してみれば、上記相違点1-1-1は、実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点1-1-2について 相違点1-1-2について検討する。 甲2発明の「熱接着層」は、上記(2)ア(キ)で説示したとおり、本件特許発明1の「受容層」に相当する。 しかしながら、甲2には、甲2発明の「熱接着層」と「離型層」との間に、「保護層」を設けることについて記載も示唆もされていない。 また、特許異議申立人が提出したいずれの文献にも、甲2発明の「熱接着層」と「離型層」との間に、「保護層」を設けることを動機づける記載はない。 したがって、甲2発明において、相違点1-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 (ウ) 特許異議申立人の主張について a 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、令和6年12月6日付け意見書において、熱転写シートの技術分野において、離型層と受容層との間に保護層を形成することは甲21~甲25Eが開示するように周知の技術であり、甲21~甲25Eに記載の周知の技術を参照して、甲2発明における「離型層」と(訂正後の本件特許発明1の「受容層」に該当する)「熱接着層」との間に「保護層」を設けることに何ら困難性はないと主張する。(意見書66頁~75頁) b 判断 (a) 甲21等に記載された発明 甲21~甲25E(これらの甲号証のうちのいずれかを、以下「甲21等」という。)の記載(甲21の【0018】、【図2】等、甲22の9頁左上欄15行~右上欄7行、第2図等、甲23の【0045】、【図8】等、甲24の【0012】等、甲25の【0008】、【0012】、【0045】、【図1】等、甲25Aの【0027】~【0029】、【図5】、【図6】等、甲25Bの【0029】~【0030】、【図2】等、甲25Cの【0012】、【図2】等、甲25Dの【0022】、【図3】等、甲25Eの【0015】、【図1】等)によれば、甲21等には、以下に示す「中間転写記録媒体」の発明(以下「甲21等発明」という。)が記載されていると認められる。 「インクが転写された受像層を被転写媒体に転写するための中間転写記録媒体(又は「中間媒体」)において、 前記中間転写記録媒体は、支持体(又は「基材」)、離型層、保護層、受像層(又は「受容層」)がこの順で形成されたものであり、 前記保護層は、ホログラムなどの偽変造防止策を施す目的で設けられたものである、 中間転写記録媒体。」 (b) 判断 甲21等発明を認識した当業者が、甲2発明において、「離型層」と「熱接着層」との間に「保護層」を設けることに容易に想到し得たといえるかについて、以下検討する。 甲21等発明の「保護層は、ホログラムなどの偽変造防止策を施す目的で設けられたものである」。他方、甲2発明は、Tシャツ上に画像を転写するための熱転写シートであるところ、Tシャツの画像に偽変造を防止するという課題は想定し難いから、甲2発明において、偽変造の防止を目的として、甲21等発明を参考にして、甲21等発明の「保護層」をさらに設けようとする動機づけはない。 また、甲2発明は、約20μmの熱接着層の表面にコピーによる画像が形成されたものである。そして、この熱接着層の表面に形成されたコピーによるトナー画像は、熱転写により、Tシャツと熱接着層の間に挟持されることになり、Tシャツに転写された画像は、熱接着層により外部からの衝撃等から保護されることになるといえる。そうすると、甲2発明の「熱接着層」(本件特許発明1の「受容層」に相当)は、「保護層」としての機能も有しているといえる。ここで、甲2発明の「熱接着層」はあくまで「受容層」であって、保護層ではないものの、上記のとおり保護層としての機能を既に有していることから、コピーによる画像が形成された受容層の耐久性を向上させる目的で、さらなる「保護層」を、「離型層」と「熱接着層」との間に設ける動機づけはない。 以上を総合すると、甲21等の記載を参酌しても、甲2発明において、転写層を、基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造とすることの動機づけは存在しない。 また、特許異議申立人が提出した他の証拠を参酌しても、甲2発明において、相違点1-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用するという動機づけは見当たらない。 よって、特許異議申立人の主張は、採用すべき理由がない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件特許発明4、7について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項4、7は、いずれも、本件訂正後の請求項1を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明4、7は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明4、7も、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 本件特許発明5について ア 対比 本件特許発明5と甲2発明とを対比する。 上記(2)ア(ア)~(ク)で説示した内容は、本件特許発明5と甲2発明との対比でも同様である。 イ 一致点及び相違点 上記アによれば、本件特許発明5と甲2発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点1-5-1) 本件特許発明1は、「離型層」が、 融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しているのに対して、 甲2発明は、「離型層」の形成に使用される「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂であるか明らかではない点。 (相違点1-5-2) 本件特許発明1は、「前記転写層が溶融インキ層を含む」のに対して、 甲2発明は、「転写層」が、「表面」に「原稿」が「コピー」された「熱接着層」である点。 ウ 判断 (ア) 相違点1-5-1について 上記相違点については、上記(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点1-5-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点1-5-2について 相違点1-5-2について検討する。 甲2発明の転写層のうち、「熱接着層」が、本件特許発明5の「溶融インキ層」とは異なるものであることは明らかである。 また、甲2発明の転写層のうち、「熱接着層」の「表面」に「カラー複写機」により「コピー」された「原稿」は、技術常識を踏まえれば、トナーにより形成されているものと認められ、トナーと「溶融インキ」が異なるものであることは、技術的に明らかである。 また、甲2発明の「熱接着層」または、「熱接着層」に「コピー」された「原稿」を、「溶融インキ層」とすることは、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。 特許異議申立人は、特許異議申立書及び意見書において縷々主張するが、上記(イ)のとおりであるから、いずれも採用の限りではない。 したがって、甲2発明において、相違点1-5-2に係る本件特許発明5の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5) 本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲2発明とを対比する。 上記(2)ア(ア)~(ク)で説示した内容は、本件特許発明6と甲2発明との対比でも同様である。 イ 一致点及び相違点 上記アによれば、本件特許発明6と甲2発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点1-6-1) 本件特許発明6は、「離型層」が、 融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しているのに対して、 甲2発明は、「離型層」の形成に使用される「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂であるか明らかではない点。 (相違点1-6-2) 本件特許発明6は、「前記離型層が、ポリビニルアルコールを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記ポリビニルアルコールの質量が5質量%以上25質量%以下である」のに対して、 甲2発明は、「離型層」が「ポリビニルアルコールを含有」するものでない点。 ウ 判断 (ア) 相違点1-6-1について 上記相違点については、上記(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点1-6-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点1-6-2について 相違点1-6-2について検討する。検討する。 熱転写シートの「離型層」に「ポリビニルアルコール」を含有させることは、甲2及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。 したがって、甲2発明において、相違点1-6-2に係る本件特許発明6の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明6は、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6) 本件特許発明8について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項8は、本件訂正後の請求項5を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明8は、本件特許発明5の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(4)のとおり、本件特許発明5が、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明8も、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7) 本件特許発明9について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9は、本件訂正後の請求項6を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9は、本件特許発明6の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(5)のとおり、本件特許発明6が、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明9も、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8) 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1、4~9は、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠に記載された事項に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 甲1を主引用文献とした場合の新規性、進歩性 (1)甲1発明 甲1の2頁右上欄5行~右下欄15行、3頁左上欄5行~右下欄18行、第1図、第3図及び第5図から理解される、実施例2の「昇華転写式インクリボン」の発明を、甲1発明とする。 ここで、上記「第1図」、「第3図」及び「第5図」は、以下のものである。 「 [図:0001423493000002.jpg] [図:0001423493000003.jpg] [図:0001423493000004.jpg] 」 (2)本件特許発明1について ア 対比 (ア) 「基材」について 甲1発明の「ポリエステルより成る基材(2)」(3頁左上欄7~8行、右下欄10~15行参照。)は、本件特許発明1の「基材」に相当する。 (イ) 「離型層」について 甲1発明の「ピーロイル1010(商品名、一方社油脂(株)製)を使用して基材(2)上に乾燥後の厚さが0.3μ」で形成された「離形層(3)」(以下、単に「離形層(3)」という。3頁右下欄10~15行参照。)は、本件特許発明1の「離型層」に相当する。 (ウ) 「転写層」について 甲1発明の、「染料受容層(4)」、「染料移行防止層(5)」及び「接着層(6)」が「順次積層形成」したものは、「インクリボン(11)を紙(13)に接触させ、裏面から感熱ヘッド(14)で加熱して」、「紙(13)面側に全面的に転写」されるものである(3頁左下欄15行~19行参照。)。そうすると、甲1発明の、「染料受容層(4)」、「染料移行防止層(5)」及び「接着層(6)」を「順次積層形成」したものは転写層であるといえ(以下「甲1転写層」という。)、本件特許発明1の「転写層」に相当する。 (エ) 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された」について 甲1発明は、「ポリエステルより成る基材(2)」、「離形層(3)」、甲1転写層がこの順で積層されているから(第1図等参照)、本件特許発明1の、「基材、離型層、転写層がこの順で積層された」という要件を満たす。 (オ) 「前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、」について 甲1発明は、甲1転写層が、「離形層(3)」と直接的に接しており、且つ、「離形層(3)」から剥離可能に構成されていることは、甲1の記載(第5図B)から明らかである。 したがって、甲1発明は、本件特許発明1の「前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、」という要件を満たす。 (カ) 「前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しており、」について 甲1の3頁右下欄10~11行によれば、「ピーロイル1010」は、長鎖アルキルペンダント型アクリル樹脂に該当するから、甲1発明の「ピーロイル1010」は、本件特許発明1の「アルキルペンダント系樹脂」に相当することは明らかである。 そうすると、甲1発明は、本件特許発明1と、「前記離型層」が「アルキルペンダント系樹脂を含有している」という点で共通する。 (キ) 「受容層」について 甲1発明の「染料受容層(4)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「受容層」に相当する。 (ク) 「熱転写シート」について 甲1発明の「昇華転写式インクリボン」は、「感熱ヘッド(14)」を用いて、甲1転写層を「紙(13)面側に全面的に転写」させるための構成を部分的に備えている。上記構成からみて、甲1発明の「昇華転写式インクリボン」は、本件特許発明1の「熱転写シート」に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記ア(ア)~(ク)によれば、本件特許発明1と甲1発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 前記離型層が、アルキルペンダント系樹脂を含有している、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点2-1―1) 「アルキルペンダント系樹脂」の融点が、本件特許発明1では、「30℃以上100℃以下」であるのに対して、 甲1発明は、(長鎖アルキルペンダント型アクリル樹脂(ピーロイル1010(商品名、一方社油脂(株)製))の融点が一応明らかでない点。 (相違点2-1-2) 本件特許発明1は、「前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である」のに対して、 甲2発明は、「転写層」が、「基材(2)」から、「染料受容層(4)」、「染料移行防止層(5)」及び「接着層(6)」がこの順番で積層されている点。 ウ 判断 (ア) 相違点2-1-1について 上記相違点については、上記1(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点2-1-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点2-1-2について 相違点2-1-2について検討する。 甲1には、甲1発明の甲1転写層を、基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造とすることについて記載も示唆もされていない。 また、甲1発明は、「染料受容層(4)を被転写体(13)側のプリント面の全面に均一に転写した後、各色の昇華性インクの転写を行うことにより、被転写体自体に染料受容層(4)が設けられていない普通紙であっても鮮明にプリントをすることを可能とするもの」(2頁右下欄19行~3頁左上欄4行)であり、甲1発明が上記機能を有するためには、転写後の被転写体(13)の最表面に「染料受容層(4)」が位置する必要がある。 仮に甲1転写層を、基材側から保護層、染料受容層(4)がこの順番で積層された積層構造とした場合、すなわち、剥離層と染料受容層(4)との間に、保護層を設けた構成とした場合、転写後の被転写体(13)の最表面が保護層となり、染料受容層(4)は、後に転写される昇華性インク層を受容することができなくなってしまう。 よって、甲1発明において、転写層が、基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造を採用することには阻害要因が存在する。 したがって、甲1発明において、相違点2-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3) 本件特許発明4、7について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項4、7は、いずれも、本件訂正後の請求項1を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明4、7は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明4、7も、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない (4)本件特許発明5について ア 対比 上記(2)ア(ア)~(ク)で説示した内容は、本件特許発明5と甲1発明との対比でも同様である。 イ 一致点及び相違点 上記アによれば、本件特許発明5と甲1発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、 前記離型層が、アルキルペンダント系樹脂を含有している、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点2-5―1) 「アルキルペンダント系樹脂」の融点が、本件特許発明1では、「30℃以上100℃以下」であるのに対して、 甲1発明は、(長鎖アルキルペンダント型アクリル樹脂(ピーロイル1010(商品名、一方社油脂(株)製))の融点が一応明らかでない点。 (相違点2-5-2) 本件特許発明1は、「前記転写層が溶融インキ層を含む」のに対して、 甲1発明は、「転写層」が、「基材(2)」から、「染料受容層(4)」、「染料移行防止層(5)」及び「接着層(6)」がこの順番で積層されたものである点。 ウ 判断 (ア) 相違点2-5-1について 上記相違点については、上記1(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点2-5-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点2-5-2について 相違点2-5-2について検討する。 甲1発明の甲1転写層を、「溶融インキ層」を含むものとすることは、甲1及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。 よって、甲1発明において、相違点2-5-2に係る本件特許発明5の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明6について ア 対比 上記(2)ア(ア)~(ク)で説示した内容は、本件特許発明6と甲1発明との対比でも同様に成り立つ。 イ 一致点及び相違点 上記アによれば、本件特許発明6と甲1発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成され、 前記離型層が、アルキルペンダント系樹脂を含有している、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点2-6―1) 「アルキルペンダント系樹脂」の融点が、本件特許発明1では、「30℃以上100℃以下」であるのに対して、 甲1発明は、(長鎖アルキルペンダント型アクリル樹脂(ピーロイル1010(商品名、一方社油脂(株)製))の融点が一応明らかでない点。 (相違点2-6-2) 本件特許発明1は、「前記離型層が、ポリビニルアルコールを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記ポリビニルアルコールの質量が5質量%以上25質量%以下である」のに対して、 甲1発明は、そのように特定されていない点。 ウ 判断 (ア) 相違点2-6-1について 上記相違点については、上記1(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点2-6-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点2-6-2について 相違点2-6-2について検討する。 熱転写シートの「離型層」に「ポリビニルアルコール」を含有させることは、甲1及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。 よって、甲1発明において、相違点2-6-2に係る本件特許発明6の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明6は、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6) 本件特許発明8について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項8は、いずれも、本件訂正後の請求項5を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明8は、本件特許発明5の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(4)のとおり、本件特許発明5が、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明8も、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7) 本件特許発明9について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9は、本件訂正後の請求項6を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9は、本件特許発明6の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(5)のとおり、本件特許発明6が、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明9も、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲3を主引用文献とした場合の新規性、進歩性について (1) 甲3発明 甲3の【0013】、【0019】~【0032】、【0072】~【0076】、【0083】~【0084】、【0097】~【0111】、【0124】~【0128】、【0154】~【0157】【表1】から理解される、実施例102の「転写フィルム」の発明を、甲3発明とする。 (2) 本件特許発明1について ア 対比 (ア) 「基材」について 甲3発明の「ポリエステルフィルム1」は(【0124】)、本件特許発明1の「基材」に相当する。 (イ) 「離型層」について 甲3発明の「ポリエステルフィルム1の一方の面」に、下記組成からなる(組成物p2)を「グラビアコーターで塗布し100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥し」て形成された「離型層」は、本件特許発明1の「離型層」に相当する。 (組成物p2)(段落【0128】) ・長鎖アルキル基含有化合物(a);長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050)を固形分換算で10質量部 ・架橋剤(b);メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M-55)を固形分換算で2.5質量部 ・酸触媒(c);p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-700)を固形分換算で1.3質量部 ・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部 (ウ) 「転写層」について 甲3発明の、「離型フィルムの離型層上に、上記組成物を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、150℃、20分間乾燥し」て形成された「エポキシ樹脂含有層」(【0156】)は、本件特許発明1の「転写層」に相当する。 (エ) 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された」について 甲3発明は、「ポリエステルフィルム1」、「離型層」及び「エポキシ樹脂含有層」がこの順で積層されているから、甲3発明は、本件特許発明1の「基材、離型層、転写層がこの順で積層された」という要件を満たす。 (オ) 「前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており」について 甲3発明の、「エポキシ樹脂含有層」は、「離型層上」に塗布、乾燥して形成される。これと上記(ア)~(ウ)から、甲3発明は、本件特許発明1の、「転写層は、前記離型層と直接的に接しており」との要件を満たす。 (カ) 「前記転写層は、」「離型層から剥離可能に構成され、」について 甲3発明は、「離型層」を備えた「離型フィルム」は、「エポキシ樹脂含有層が熱プレスによって被着体に転写」された後、剥離されるものである(【0013】)。そうすると、甲3発明の「エポキシ樹脂含有層」は、本件特許発明1の「離型層から剥離可能に構成さ」れるという要件を満たす。 (キ) 「熱転写シート」について 甲3発明の「転写シート」は、「エポキシ樹脂含有層」が「熱プレスによって被写体に転写される」ものであるから(【0013】、【0111】等)、本件特許発明1の「熱転写シート」に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記ア(ア)~(キ)によれば、本件特許発明1と甲3発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点3-1-1) 本件特許発明1は、「離型層」が含有する「アルキルペンダント系樹脂」の融点が、30℃以上100℃以下であるのに対して、 甲3発明は、「離型層」の形成に使用される組成物p2に含まれる「長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂であるか一応不明である点。 (相違点3-1-2) 本件特許発明1は、「前記転写層が、前記基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造である」のに対して、 甲3発明は、転写層が、「エポキシ樹脂含有層」からなる点。 ウ 判断 (ア) 相違点3-1-1について 甲3発明の「長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050」について、甲13には、「ピーロイル1050」は、「長鎖アルキルペンダントポリマー」を成分とするものであり、「ピーロイル1010系の液状タイプ」である旨記載されている。 上記記載によれば、「ピーロイル1050」は、「ピーロイル1010」と同様、長鎖アルキルペンダントポリマーを含有しているものと推認される。そうすると、甲3発明の組成物p2に係る「ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050」も、「ピーロイル1010」と同様、融点が85℃のアルキルペンダント系樹脂を含有しているものと認められる。 以上を踏まえると、甲3発明は、本件特許発明1の「離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有」するという要件を満たし、上記相違点3-1-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点3-1-2について 相違点3-1-2について検討する。 甲3には、「エポキシ樹脂含有層」からなる転写層を、基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造とすることについて記載も示唆もされていない。 また、甲3発明の課題は、「熱プレス後の剥離性が良好であること、および精密電子機器の接点障害等の不具合発生を抑制することを同時に満足する、エポキシ樹脂含有層転写フィルム用離型フィルム、およびエポキシ樹脂含有層転写フィルムを提供すること」(【0009】)であるから、甲3発明は、「エポキシ樹脂含有層」を転写するための発明であることが理解できる。 そうすると、甲3発明の転写層である「エポキシ樹脂含有層」に換えて、「基材側から保護層、受容層がこの順番で積層された積層構造」とすることには阻害要因がある。 したがって、甲3発明において、相違点3-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲3及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3) 本件特許発明4、7について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項4、7は、いずれも、本件訂正後の請求項1を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明4、7は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明4、7も、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない (4)本件特許発明5について ア 対比 上記(2)ア(ア)~(キ)で説示した内容は、本件特許発明5と甲3発明との対比でも同様である。 イ 一致点及び相違点 上記アによれば、本件特許発明5と甲3発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点3-5―1) 本件特許発明1は、「離型層」が、 融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しているのに対して、 甲3発明は、「離型層」の形成に使用される「長鎖アルキル系離型剤[商品名:ピーロイル1010;一方社油脂工業(株)製」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂であるか明らかではない点。 (相違点3-5-2) 本件特許発明1は、「前記転写層が溶融インキ層を含む」のに対して、 甲3発明は、「転写層」が、「エポキシ樹脂含有層」からなるものである点。 ウ 判断 (ア) 相違点3-5-1について 上記相違点については、上記(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点3-5-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点3-5-2について 相違点3-5-2について検討する。 甲3には、甲3発明の転写層である「エポキシ樹脂含有層」を、溶融インキ層を含むものとすることについて記載も示唆もされていない。 また、甲3発明は、上記(2)ウで説示したとおり、「エポキシ樹脂含有層」を転写するための発明であるから、甲3発明の「エポキシ樹脂含有層」を、「溶融インキ層」を含む層とすることには阻害要因がある、または、「溶融インキ層」を含む層とすることの動機づけはない。 したがって、当業者であっても、甲3発明に基づいて上記相違点3-5-2に係る本件特許発明5の構成を満たすものとすることは、容易に想到し得たこととはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明6について ア 対比 上記(2)ア(ア)~(キ)で説示した内容は、本件特許発明6と甲3発明との対比でも同様に成り立つ。 イ 一致点及び相違点 上記アによれば、本件特許発明6と甲3発明は、 「基材、離型層、転写層がこの順で積層された熱転写シートであって、 前記転写層は、前記離型層と直接的に接しており、且つ、離型層から剥離可能に構成された、 熱転写シート。」 の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点3-6―1) 本件特許発明6は、「離型層」が、 融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有しているのに対して、 甲3発明は、「離型層」の形成に使用される組成物p2に含まれる「長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」1050」が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂であるか一応不明である点。 (相違点3-6-2) 本件特許発明6は、「前記離型層が、ポリビニルアルコールを含有しており、前記離型層の総質量に対する前記ポリビニルアルコールの質量が5質量%以上25質量%以下である」のに対して、 甲3発明は、そのように特定されていない点。 ウ 判断 (ア) 相違点3-6-1について 上記相違点については、上記(2)ウ(ア)で検討したとおりである。 そうすると、上記相違点3-6-1は実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点3-6-2について 熱転写シートの「離型層」に「ポリビニルアルコール」を含有させることは、甲3及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。 よって、甲3発明において、相違点3-6-2に係る本件特許発明6の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。 エ 小活 以上のとおりであるから、本件特許発明6は、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件特許発明8について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項8は、いずれも、本件訂正後の請求項5を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明8は、本件特許発明5の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(4)のとおり、本件特許発明5が、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明8も、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件特許発明9について 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9は、本件訂正後の請求項6を直接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9は、本件特許発明6の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(5)のとおり、本件特許発明6が、甲3発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明9も、甲2発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当合議体の判断 1 明確性要件違反 (1) 明確性要件についての判断 本件特許発明は、上記第3に記載されているとおりであり、樹脂の融点は、きわめて一般的な物性値であって、測定方法による測定値の変動(乖離)が、第三者の利益が不当に害されるほどのものとも認められない。 したがって、本件特許発明は明確である。 (2) 特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の3((4)エ-1(62頁24行~65頁3行)において、概略、以下の主張をしている。 (主張) 「前記離型層が、融点が30℃以上100℃以下のアルキルペンダント系樹脂を含有している」という発明特定事項につき、本件明細書にはアルキルペンダント系樹脂の融点の測定方法が記載されていないので、不明確である。 イ 判断 アルキルペンダント系樹脂の融点を測定するにあたり、当業者であれば従来公知の測定方法を適宜選択して測定できる。そして、選択した測定方法によって、融点の測定値が第三者の利益が不当に害される程度測定値がズレるとまではいえない。 したがって、本件明細書に、測定方法が記載されていなくても、第三者の利益が不当に害されるほどのものではない。 したがって、特許請求の範囲の記載は明確である。 (3)小括 上記(1)及び(2)のとおりであるから、特許異議申立理由(明確性要件)は、採用すべき理由がない。 2 サポート要件違反 (1) 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の3(4)エ-2(65頁4行~66頁6行)において、概略、以下の特許異議申立理由を主張をしている。 (特許異議申立理由) 本件特許発明の解決課題は、「転写層の転写性、箔切れ性、箔持ち性が良好な転写シートを提供すること」(【0005】)である。この点、本件明細書の実施例4、8、10では、「箔持ち評価」の結果はCで「転写層の箔落ちが大きくみられ使用上問題が懸念される」のであるから、これらの実施例の熱転写シートは箔持ち性が良好ではない。すなわち、本件特許発明1~5は、上記効果を奏せず上記課題を解決できないものを含む。従って、本件特許発明1~5については、上記事項に関し、サポート要件を満たしていない。 (2) 判断 ア 本件明細書の記載事項 本件明細書には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 (ア) 「本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、転写層の転写性、箔切れ性、箔持ち性が良好な熱転写シートを提供することを主たる課題とする。」(【0005】) (イ) 「転写層を有する熱転写シートには、被転写体上に転写層を転写するときの転写性が良好であることが求められている。さらに、このような熱転写シートには、被転写体上に転写層を転写するときの箔切れ性が良好であることや、転写層の箔持ち性が良好であることが求められている。ところで、転写層の転写性と、転写層の箔切れ性、及び転写層の箔持ち性は、いわゆるトレードオフの関係にあり、転写層の転写性を高くしていった場合には、転写層の箔切れ性や、箔持ち性が低くなる傾向にある。」(【0020】) (ウ) 「アルキルペンダント系樹脂を含有する離型層2によれば、当該離型層2上に設けられる転写層10を、被転写体上に転写するときの転写性を良好なものとできる。さらに、転写層10の転写性を良好な状態を維持させつつ、転写層10の箔切れ性や箔持ち性も良好なものとできる。」(【0023】) イ 本件明細書から把握される本件訂正発明の課題 上記ア(ア)の記載によれば、本件訂正発明の課題は、「転写層の転写性、箔切れ性、箔持ち性が良好な転写シートを提供すること」であると認められるところ、上記ア(イ)の記載をさらに参酌すると、トレードオフの関係にあるのは、転写層の「転写性」と、「箔持ち性」及び「箔切れ性」であることが理解できるから、上記課題である「転写層の転写性、箔切れ性、箔持ち性が良好な転写シートを提供すること」とは、「転写性」が良好であって、さらに「箔持ち性」及び「箔切れ性」のうち少なくとも一方が良好な転写シートを提供することを意味すると認められる。 ウ 判断 本件明細書に記載の実施例4、8、10の熱転写シートは、「転写性」の評価は「A」であり、「箔持ち性」及び「箔切れ性」の評価がともに最低評価である。これに対して、比較例1~4の熱転写シートは、いずれも「転写性」が最低評価であるか、又は、「箔持ち性」及び「箔切れ性」が最低評価である。 ここで、本件特許発明の課題は、上記イで認定したとおりであるから、本件明細書に記載された全ての実施例は「NG」とはなってはおらず、本件特許発明の課題を解決するものである。 そして、実施例1~10の実験結果も併せ考慮すると、本件特許発明1、4~9は、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できるものといえるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。 (3)小括 上記(2)のとおりであるから、特許異議申立理由(サポート要件違反)は、採用すべき理由がない。 3 新規性及び進歩性違反 (1) 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、令和6年12月6日付け意見書で、以下の主張をしている。 ア 訂正後の本件特許発明1は、甲26から新規性が欠如する。または、甲26、甲2、甲21~甲25及び甲25A~甲25Eから進歩性が欠如する。 イ 訂正後の本件特許発明1は、甲26から進歩性が欠如する。 ウ 訂正後の本件特許発明4は、甲26から新規性が欠如する。または、甲26、甲21~甲25及び甲25A~甲25Eから進歩性が欠如する。 エ 訂正後の本件特許発明5は、甲2及び甲27から進歩性が欠如する。 オ 訂正後の本件特許発明5は、甲28及び甲2から進歩性が欠如する。 カ 訂正後の本件特許発明5は、甲21及び甲2から進歩性が欠如する。 キ 訂正後の本件特許発明5は、甲29及び甲2から進歩性が欠如する。 ク 訂正後の本件特許発明5は、甲26から進歩性が欠如する。 (2)判断 これらの主張は、実質的に新たな理由及び証拠を提示しており、特許異議の申立て期間が特許掲載公報発行の日から6月以内に制限されている趣旨を踏まえ、採用しない。 第7 むすび 以上より、請求項1、4~9に係る特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に請求項1、4~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項2、3は、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申し立てについて、請求項2、3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700405

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