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特許異議申立

2022-701107

印刷物、印刷物の製造方法、およびレーザー印刷用印刷媒体

審判番号
2022-701107
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-207314
登録番号
7070786
請求日
2022年11月11日
審決日
2024年04月05日
公報発行日
2024年07月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】王子ホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
  • 【異議申立人】平居 博美
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 河原 正
  • 審判官 清水 康司
分類
P1651.113-YAA(B41M) / P1651.121-YAA(B41M) / P1651.536-YAA(B41M) / P1651.537-YAA(B41M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7070786号発明「印刷物、印刷物の製造方法、およびレーザー印刷用印刷媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7070786号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕、〔9~14〕について訂正することを認める。 特許第7070786号の請求項1、4~9、12~14に係る特許を維持する。 特許第7070786号の請求項2、3、10、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第7070786号の請求項1~14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2021-207314号)は、2021年(令和3年)5月21日(先の出願に基づく優先権主張 2020年(令和2年)5月22日,2020年(令和2年)12月22日)を国際出願日とする特願2021-576104号の一部を令和3年12月21日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月10日にその特許権の設定の登録がされ、令和4年5月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。 令和4年11月11日 :特許異議申立人(以下「異議申立人」という。)による請求項1~14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「異議申立」という。また、異議申立人が証拠として提出した甲第1号証を「甲1」と略す、甲第2号証等も同様。) 令和5年 1月30日付け:取消理由通知書 令和5年 4月13日 :訂正請求書の提出 令和5年 4月13日 :意見書(特許権者)の提出 令和5年 6月 7日 :意見書(異議申立人)の提出 令和5年 9月15日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和5年11月21日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。) 令和5年11月21日 :意見書(特許権者)の提出 令和6年 2月 2日 :意見書(異議申立人)の提出 なお、令和5年4月13日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第7070786号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。 なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕、〔9~14〕についてなされたものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「レーザー印刷可能領域」(1行目及び2~3行目の2カ所)との記載を、「紫外線レーザー印刷可能領域」に訂正し、 「レーザー印刷領域」(2行目及び10行目の2カ所)との記載を、「紫外線レーザー印刷領域」に訂正し、 「酸化チタンは、シート媒体中に内添され、」との記載を、 「酸化チタンは、シート媒体中に内添され、 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、」に訂正し、 「シート媒体中のレーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μ以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、」との記載を、 「シート媒体中の紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下であり、フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、」に訂正し、 「レーザー印刷物」との記載を、「紫外線レーザー印刷物」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項4~6も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の讀求項4において、 「前記レーザー印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザー印刷物」との記載を、 「前記紫外線レーザー印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷物」に訂正する。 請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5~6も同様に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5において、 「前記レーザー印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザー印刷物」との記載を、 「前記紫外線レーザー印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項1または4に記載の紫外線レーザー印刷物」に訂正する。 請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6において、 「レーザー印刷物」との記載を、「紫外線レーザー印刷物」に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7において、 「フィルムであるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、」との記載を、 「フィルムであるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、 前記紫外線レーザーの波長は、350nm以上360nm以下であり、」に訂正し、 「前記シート媒体に酸化チタンが内添され、」との記載を、 「前記シート媒体に酸化チタンが内添され、 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、」に訂正し、 「シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であり(ただし、印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、」との記載を、 「シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下であり(ただし、印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、」に訂正する。 請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8において、 「条件(B1):前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上である。」との記載を、 「条件(B1):前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上30W以下である。」に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9において、 「レーザー印刷用印刷媒体」(2行目及び8行目の2カ所)との記載を、「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に訂正し、 「シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有董が0.3質量%以上であり、フィルムの厚みが15μm以上であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、」との記載を、 「シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下であり、前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、」に訂正する。 請求項9を直接又は間接的に引用する請求項12~14も同様に訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12において、 「前記レーザー印刷用印刷媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載のレーザー印刷用印刷媒体」との記載を、 「前記紫外線レーザー印刷用印刷媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項9に記載の紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に訂正する。 請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13~14も同様に訂正する。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13において、 「前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、謂求項9~12のいずれか1項に記載のレーザー印刷用印刷媒体。」との記載を、 「前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項9または12に記載の紫外線レーザー印刷用印刷媒体。」と訂正する。 請求項13を引用する請求項14も同様に訂正する (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14において、 「レーザー印刷用印刷媒体」との記載を、「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に訂正する。 3 訂正の要件の判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、「レーザー印刷可能領域」を「紫外線レーザー印刷可能領域」に限定し、「レーザー印刷領域」を「紫外線レーザー印刷領域」に限定し、「レーザー印刷物」を「紫外線レーザー印刷物」に限定し、 「シート媒体中の紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量」を「0.3質量%以上」から「2.0質量%以上7.5質量%以下」に限定し、 「フィルム」の厚みを「15μm以上」から「20μm以上250μm以下」に限定し、 「酸化チタン」が、「ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つ」であるものに限定し、 「フィルムを構成する樹脂」が、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含」むものから、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含」むものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0009】の「酸化チタンの変色は紫外線レーザーの照射により行われることが好ましい。」、「印刷可能領域とは、シート媒体が含有する酸化チタンの変色、好ましくは紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領城の中で、実際に酸化チタンが変色している箇所、好ましくは紫外線レーザーの照射により酸化チタンが変色し、視認可能となっている箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射部分を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領城の中で、酸化チタンが変色していない領域(部分)、たとえば、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。」との記載からすると、訂正事項1に係る「紫外線レーザー印刷可能領域」、「紫外線レーザー印刷領域」及び「紫外線レーザー印刷物」は、本件特許明細書の記載から導き出せるといえる。 また、訂正事項1に係る、酸化チタンの含有量については、請求項2及び本件特許明細書の【0010】(シート媒体がフィルムである場合について)に、酸化チタンの種類については、請求項3及び【0012】に、フィルムの厚みについては、【0029】にそれぞれ記載されている。 さらに、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことは、訂正前の請求項1、本件特許明細書の【0027】、実施例(【0147】、【0169】(【表2-1】)、【0170】(【表2-2】)に記載されている。 そうすると、訂正事項1は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~6についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1は、訂正要件を満たす。 (2) 訂正事項2及び訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項2及び訂正事項3は、それぞれ請求項2及び請求項3を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記アに照らせば、訂正事項2及び訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項2及び訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2及び訂正事項3は、訂正要件を満たす。 (3) 訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、「レーザー印刷物」を「紫外線レーザー印刷物」に限定する訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項4は、訂正事項2及び訂正事項3に係る訂正により請求項2及び請求項3が削除されたことに対応して、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用する記載であったものを、削除された請求項2及び請求項3を除いて、請求項1を引用する記載とする訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~6についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項4は、訂正要件を満たす。 (4) 訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、「レーザー印刷可能領域」を「紫外線レーザー可能領域」に限定し、「レーザー印刷物」を「紫外線レーザー印刷物」に限定する訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項5は、訂正事項2及び訂正事項3に係る訂正により請求項2及び請求項3が削除されたことに対応して、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれか1項を引用する記載であったものを、削除された請求項2及び請求項3を除いて、請求項1又は請求項4を引用する記載とする訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項5の記載を引用する請求項6についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項5は、訂正要件を満たす。 (5) 訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、「レーザー印刷物」を「紫外線レーザー印刷物」に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項6は、訂正要件を満たす。 (6) 訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7は、紫外線レーザーが、「前記紫外線レーザーの波長は、350nm以上360nm以下」であるものに限定し、「酸化チタン」が、「前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つ」であるものに限定し、「シート媒体中の紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量」を、「0.3質量%以上」から「2.0質量%以上7.5質量%以下」に限定し、「フィルム」の厚みを、「15μm以上」から「20μm以上250μm以下」に限定し、「フィルムを構成する樹脂」を、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む」ものから、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む」ものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項7に係る紫外線レーザーの波長の上限及び下限については、本件特許明細書の【0040】の記載から導き出せるといえる。 そうすると、上記1(イ)より、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項7は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項7の記載を引用する請求項8についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項7は、訂正要件を満たす。 (7) 訂正事項8について ア 訂正の目的 訂正事項8は、条件(B1)中の「照射する紫外線レーザーの出力」を、「0.8W以上」から「0.8W以上30W以下」に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項8に係る紫外線レーザーの出力の下限は、本件特許明細書の【0041】の記載から導き出せるといえる。 そうすると、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項8は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項8は、訂正要件を満たす。 (8) 訂正事項9について ア 訂正の目的 訂正事項9は、「レーザー印刷用印刷媒体」を「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に限定し、「シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量」を、「0.3質量%以上」から「2.0質量%以上7.5質量%以下」に限定し、「フィルムの厚み」を、「15μm以上」から「20μm以上250μm以下」に限定し、「酸化チタン」を、「ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つ」であるものに限定し、「フィルムを構成する樹脂」を、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む」ものから、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む」ものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記(1)イより、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項9は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項12~14についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項9は、訂正要件を満たす。 (9) 訂正事項10及び訂正事項11について ア 訂正の目的 訂正事項10及び訂正事項11は、それぞれ請求項10及び請求項11を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記アに照らせば、訂正事項10及び訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項10及び訂正事項11は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項10及び訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項10及び訂正事項11は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項10及び訂正事項11は、訂正要件を満たす。 (10) 訂正事項12について ア 訂正の目的 訂正事項12は、「レーザー印刷用印刷媒体」を「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に限定する訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項12は、訂正事項10及び訂正事項11に係る訂正により請求項10及び請求項11が削除されたことに対応して、訂正前の請求項12が請求項9~11のいずれか1項を引用する記載であったものを、削除された請求項10及び請求項11を除いて、請求項9を引用する記載とする訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項12は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項12の記載を直接又は間接的に引用する請求項13~14についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項12は、訂正要件を満たす。 (11) 訂正事項13について ア 訂正の目的 訂正事項13は、「レーザー印刷用印刷媒体」を「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に限定する訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項13は、訂正事項10及び訂正事項11に係る訂正により請求項10及び請求項11が削除されたことに対応して、訂正前の請求項13が請求項9~12のいずれか1項を引用する記載であったものを、削除された請求項10及び請求項11を除いて、請求項9又は請求項12を引用する記載とする訂正を含むから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項13は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項13の記載を引用する請求項14についても同様である。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項13は、訂正要件を満たす。 (12) 訂正事項14について ア 訂正の目的 訂正事項14は、「レーザー印刷用印刷媒体」を「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記(1)イより、訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項14は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項14は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項14は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項14は、訂正要件を満たす。 4 まとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許第7070786号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕、〔9~14〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1、4~9、12~14に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」という。請求項2以降についても同様。また、総称して、「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、4~9、12~14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 酸化チタンを含有する紫外線レーザー印刷可能領域を有するフィルムであるシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する紫外線レーザー印刷領域を有し(ただし、紫外線レーザー印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、 酸化チタンは、シート媒体中に内添され、 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、 シート媒体中の紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下であり、フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、 紫外線レーザー印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である、 紫外線レーザー印刷物。 「【請求項4】 前記紫外線レーザー印刷物が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷物。 【請求項5】 前記紫外線レーザー印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項1または4に記載の紫外線レーザー印刷物。 【請求項6】 下記条件(A1)~(A3)の少なくとも1つを満たす、請求項5に記載の紫外線レーザー印刷物。 条件(A1):前記透明樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つである。 条件(A2):前記透明樹脂層は、透明樹脂フィルムがシート媒体上に接着層を介して貼付されてなるか、または、透明樹脂フィルムをシート媒体上にラミネート加工してなる。 条件(A3):前記透明樹脂屠の厚みが5μm以上100μm以下である。 【請求項7】 フィルムであるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、 前記紫外線レーザーの波長は、350nm以上360nm以下であり、 前記シート媒体に酸化チタンが内添され、 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、 シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下であり(ただし、印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロビレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、印刷物の製造方法。 【請求項8】 下記条件(B1)~(B5)の少なくとも1つを満たす、請求項7に記載の印刷物の製造方法。 条件(B1):前記照射する紫外線レーザーの出力が0.8W以上30W以下である。 条件(B2):前記印刷する工程が、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である。 条件(B3):前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する。 条件(B4):シート媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される。 条件(B5):印刷する工程がインラインにて行われる。 【請求項9】 紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有するフィルムであるシート媒体からなる紫外線レーザー印刷用印刷媒体であり(ただし、印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、 シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下であり、前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、 紫外線レーザー印刷用印刷媒体。」 「【請求項12】 前記紫外線レーザー印刷用印刷媒体が、包装体、ラベル、および粘着テープから選択される、請求項9に記載の紫外線レーザー印刷用印刷媒体。 【請求項13】 前記印刷可能領域上に、さらに透明樹脂層を有する、請求項9または12に記載の紫外線レーザー印刷用印刷媒体。 【請求項14】 下記条件(C1)~(C3)の少なくとも1つを満たす、請求項13に記載の紫外線レーザー印刷用印刷媒体。 条件(C1):前記透明樹脂層を構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つである。 条件(C2):前記透明樹脂層は、透明栴脂フィルムがシート媒体上に接着層を介して貼付されてなるか、または、透明樹脂フィルムをシート媒体上にラミネート加工してなる。 条件(C3):前記透明樹脂層の厚みが5μm以上100μm以下である。」 第4 取消しの理由の概要 令和5年4月13日提出の訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1、4~9、12~14に係る特許に対して、当審が令和5年9月15日付けの取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 「●理由1(新規性)本件特許の請求項9に係る発明は、その最先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 ●理由2(進歩性)本件特許の請求項1、4~9、12~14に係る発明は、その最先の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その最先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4~9、12~14に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 (引用文献等一覧) 甲1:特開平10-237319号公報 甲2:特開平8-67068号公報 甲3:細川明寛、「紫外線レーザを利用した薬剤へのマーキング技術に関する研究」、東邦大学大学院薬学研究科博士論文、2013年、東邦大学 甲4:特開2002-309104号公報 甲5:特開2008-80805号公報 甲7:特開2005-320381号公報 甲8:特開2019-214392号公報」 (当合議体注:甲1又は甲2は、主引用例である。甲3~5、7~8は、副引用例であるか、あるいは、周知技術、技術常識を例示する文献である。) 第5 当合議体の判断 1 甲1に記載された事項 甲1には以下の記載がある(下線は合議体が付した。以下同様。)。 (1) 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物、樹脂成型物及びレーザー光線を使用したバーコードの記録方法に関するものである。 ・・・略・・・ 【0004】このような問題点を解決するために、ポリオレフィン樹脂成形物にレーザーマーキング法を適用するにあたっては、鮮明に発色する発色剤の検討が種々なされている。・・・略・・・しかし、これらの化合物を添加した樹脂組成物は、重金属を含む為、安全性、環境への影響等の問題点を、又、黄色酸化鉄を添加した樹脂組成物の場合は、化合物自体が着色しているため、組成物の色調が制限されるという問題点を有している。・・・略・・・この場合は着色はしていないものの真珠光沢がある為、真珠光沢を必要としない製品には使用できないという問題点がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】従って、有効成分自体が白色で、レーザー光線により鮮明な黒褐色から黒色に発色し、かつ機械による読みとり精度の高いマーキング用樹脂組成物が求められている。 ・・・略・・・ 【0007】 【発明の実施の形態】本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物は二酸化チタンを有効成分として含有する。二酸化チタンは、特に制限はなく、顔料用として市販されているものや微粒子状二酸化チタンを使用することができる。顔料用の二酸化チタンはルチル型、又はアナターゼ型の何れでも使用可能である。その粒径は特に制限はなく、例えば数μmから数十μm(重量平均粒径)程度が実用的である。・・・略・・・二酸化チタンの使用量は特に制限はないが、通常レーザーマーキング用樹脂組成物全量中に0.05~70重量%、好ましくは0.1~50重量%、より好ましく0.1~20重量%程度である。 【0008】本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂があげられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、・・・略・・・。 【0009】本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物には必要に応じて添加剤等を加えることが出来る。添加剤としては、例えば着色剤、充填剤・・・略・・・等が挙げられる。・・・略・・・又充填剤としては、例えば二酸化珪素、雲母類・・・略・・・等の珪素化合物、・・・略・・・挙げられる。 ・・・略・・・ 【0015】本発明のレーザーマーキング方法は二酸化チタンを含有する樹脂成型物の表面にレーザー光を照射することにより行われる。レーザー光としては、例えば炭酸ガスレーザー(波長約10600nm)などの遠赤外線レーザー、YAG(イツトリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー(波長約1060nm)などの近赤外線レーザー、エキシマレーザー等があげられ、好ましくはYAGレーザ、エキシマレーザーである。 ・・・略・・・ 【0016】本発明の二酸化チタンを含有する樹脂成型物の表面にレーザー光を照射することにより、照射部分に鮮明なコントラストの黒褐色から黒色のマークが得られる。」 (2) 「【0017】 【実施例】次に実施例に依って、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、部は重量部を意味する。又、実施例中「○」は黒褐色又は黒色のマークが得られ、マークの機械読み取り性が良いことを、「×」はマークの機械読み取り性が悪いこと、もしくは白色のマークしか得られないことを示している。 <マーキング条件> 装置 :ミヤチテクノス社製 YAGレーザー ML-4140C マーキング方法 :一筆書き方式 レーザ出力(W):50 周波数(kHz):1.8 速度(mm/s):80 焦点距離(mm) :140 バーコード種類 :CODE39 電流値(A) :11~15 <読み取り機械>Welcat社製 バーコードリーダー Touch 7Σ 【0018】実施例1 ポリエチレン(三井石油化学製 ハイゼックス1300J MI:30)100部、、顔料用の二酸化チタン(日本ピグメント製、PS-2902)5.0部を2軸ニーダーを用いて180℃で混練し、ロートプレックスミルで粉砕後、長径1mm以下のものを除去して本発明のマーキング用組成物とした。このものを射出成形機(山城精機製 SAV-40、以下に於て射出成形機とはこのものを指す)を用いて200℃で板状に成形し、その表面にYAGレーザー(ミヤチテクノス社製、ML-4140C)を用いてマーキングを施したところ鮮明な黒色マークを得、そのマークの機械読み取り性は良好(○)であった。 【0019】実施例2 ポリエチレン(三井石油化学製 ハイゼックス1300J MI:30)100部、雲母(クラレ製、クラライトマイカ600W 平均粒径8μm)0.5部、二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)1.0部を2軸ニーダーを用いて200℃で混練し、ロートプレックスミルで粉砕後、長径1mm以下のものを除去して本発明のマーキング用組成物とした。このものを50トンプレスを用いて180℃で厚さ0.1mmのフィルムとし、その表面にYAGレーザー(ミヤチテクノス社製、ML-4140C)を用いてマーキングを施したところ鮮明な黒色マークを得、そのマークの機械読み取り性は良好(○)であった。 ・・・略・・・ 【0023】 【発明の効果】本発明によると、有効成分として白色の二酸化チタンを使用するので、樹脂の色調に影響を与えないレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物が得られる。また、このレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の成型物の表面にレーザー光線を照射することにより鮮明な黒褐色から黒色のマークが得られる。このマークは、機械による読みとり精度が高いので、特にバーコード、カルラコード等の機械読み取り用マークとして有用である。」 2 甲1発明1~3 上記1の記載から、甲1には以下の3発明(以下、「甲1発明1~3」という。)が記載されていると認められる。参考のため、認定の根拠となった箇所を【】内に示す。なお、混乱をさけるために、黒色マークを付与する前の「フィルム」を単に「フィルム」といい、黒色マークを付与した「フィルム」を「マーキング済フィルム」という。 (甲1発明1) 「ポリエチレン100部、雲母0.5部、白色の二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)1.0部からマーキング用組成物を作成し、厚さ0.1mmのフィルムとし、その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施して得た鮮明な黒色マークを有するマーキング済フィルム。(【0019】、【0023】)」 (甲1発明2) 「ポリエチレン100部、雲母0.5部、白色の二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)1.0部からマーキング用組成物を作成し、厚さ0.1mmのフィルムとし、その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施して、鮮明な黒色マークを付与する、マーキング方法。(【0019】、【0023】)」 (甲1発明3) 「ポリエチレン100部、雲母0.5部、白色の二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)1.0部からマーキング用組成物を作成し、厚さ0.1mmのフィルムであって、その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施すことで、鮮明な黒色マークを付与することができる、フィルム。(【0019】、【0023】)」 3 甲2に記載された事項 甲2には以下の記載がある。 (1) 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、レーザ光でマーキング可能なレーザマーキング用組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】例えば電気機器や機具、電子機器や部品などのほか多くの分野で、製品の識別や部品機能の説明等のために、それらの外表面に文字や記号、あるいは線画や模様等を施す上で、印刷などに代えて精密仕上げが容易でコスト的にも有利なレーザマーキング方法が、近年注目され種々の提案がなされつつある。例えば酸化アルミニウムや酸化チタンを配合した弗素樹脂被覆物に、レーザ光を照射すると酸化アルミニウムや酸化チタンの酸化数が変わることによる色調変化(白→黒)を利用してマーキングする方法(特開平6-100716)、また、カーボンブラックおよび/またはグラファイトをポリエステル樹脂中に配合した組成物にレーザ光を照射して色調変化(黒→白、あるいは黒→灰色)させてマーキングする方法などが知られている(特開平4-246456)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらによる場合には、いずれも黒色/白色、灰色系での単調な色調変化であり、かつその色調変化も必ずしも大きくなく、そのため鮮明でコントラストの大きなマーキングが出来にくかったり、さらにはいわゆるカラーデザイン的な展開が制約されるなど、その改善が強く希求されている。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、かねてより、前記問題点の解決を図るべく種々検討を勧めた結果、種々の金属元素を含有して構成される二酸化チタン系を主体とする無機系発色性物質を、レーザマーキングに適用したところ、白色ないし淡色系の当該配合組成物が、レーザ光照射によって、種々の色相系で所望の色濃度に有色化がなし得られ、このものはマーキング表示として鮮明で十分なるコントラストの彩色意匠性を有し、多様なカラーデザイン的展開が図り得ることの知見を得、本発明はこれに基づいて完成したものである。 【0005】すなわち、本発明は、1.(a)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と、(b)レーザ光照射により色調変化し得る無機系発色性物質とを少なくとも含有し、かつ(c)前記(a)および(b)が、その合量の重量基準として、(a)成分が40~99%および(b)成分が1~60%であことを特徴とするレーザマーキング用組成物であり、 2.(b)成分が、(d)NiO,Cr2O3,MnO,FeO,Fe2O3,CoO,CuO,Li2O,MgO,ZnOおよびAl2O3から選ばれた少なくとも1種の成分と(e)Sb2O5,Sb2O3,Nb2O5,WO3,V2O5,Ta2O5およびMoO3から選ばれた少なくとも1種の成分とを含有して構成される二酸化チタン系発色性物質であることを特徴とする請求項1記載のレーザマーキング用組成物であり・・・略・・・・。 【0006】なお、本明細書において、成形用樹脂組成物の場合と被覆用樹脂塗液組成物の場合とを総称して、レーザマーキング用組成物と言う。 【0007】本発明において、前記(b)成分の無機系発色性物質としては、レーザ光照射によって白色ないし淡色系から濃色の有色カラー系に色調変化し得る種々のものを使用し得るが、とりわけ種々の金属元素を含有して構成される二酸化チタン系の有色焼成顔料の前駆体である未焼成物ないしは低温焼成物が好適である。 ・・・略・・・ 【0009】本発明において、前記(a)成分としては、種々の熱可塑性または熱硬化性の樹脂を使用し得るが、例えば・・・略・・・ポリエチレンテレフタレート・・・略・・・などの汎用エンジニアリング・プラスチックス、・・・略・・・ポリエチレン、ポリプロピレン・・・略・・・などの熱可塑性汎用樹脂・・・略・・・を使用することができる。しかして、前記(a)成分と(b)成分の割合は、(a)および(b)の合量の重量基準として、(a)成分が40~90%であり、(b)成分が1~60%である。前記において、熱可塑性の成形樹脂組成物系の場合にあっては、(b)成分の割合は、前記範囲の比較的低含有量領域で使用され、他方熱硬化性の被覆用樹脂組成物系の場合にあっては、(b)成分の割合は、前記範囲の比較的高含有量領域で使用される。前記において、(b)成分の割合が前記範囲より低きに過ぎると、所望のコントラストのマーキングがなし得られず、また(b)成分の割合が前記範囲より高きに過ぎると、レーザマーキングされた樹脂組成物や被覆物の保護特性(引張強度、衝撃強度、伸びなど)や外観性(表面平滑性、光沢など)が損なわれ易くなり好ましくない。 ・・・略・・・ 【0011】本発明のレーザマーキング用組成物に用いるレーザ光としては、種々のものを適用し得るが、例えばYAG レーザ、CO2レーザ、ArF レーザ、XeClエキシマレーザなどを挙げることができる。レーザ光の波長としては、種々の範囲に亘って使用し得るが、(b)成分の無機系発色性物質の色調変化を効率的になさしめ、マーキングを最適に行うには、取り分け300~400nmの領域が好ましい。また強度(レーザ光の照射エネルギー密度)は、種々の範囲で使用し得るが、1~10mJ/ns・cm2程度であるのが好ましい。」 (2) 「【0012】 【実施例】 実施例1 チタニル硫酸溶液を加熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリー1000ml(TiO2 200g/l)を2lビーカーに取り、攪拌下、硫酸クロム水溶液180ml(Cr2O3100g/l)を添加し、引き続きSb2O3粉末400gを添加し、しかる後アンモニア水でpH7に中和した後、濾過、洗浄した。得られたケーキを400℃で1時間電気炉内で焼成した後、このものを気流式粉砕機で粉砕して薄く緑色のかかった粉末Aを得た。このものを用い、下記配合にて樹脂組成物を作成し、この組成物を常法によりプレート状に成形した。 ポリエチレンテレフタレート樹脂 100重量部 粉末A 5重量部 の成形品に、マスクを用いXeCl(308nm)のエキシマレーザを、5mJ/ns・cm2のエネルギー密度でパルス幅20nsとして100パルス照射した。照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングが得られた。 ・・・略・・・ 【0014】 【発明の効果】本発明のレーザマーキング用組成物は、レーザ照射部が有彩色化するといった従来にないマーキングを可能にし、カラーの多様化等に有用であり、また、補色カラーの有機顔料や染料と併用することにより、コントラストが大きく判別が容易でカラフルなレーザマーキングを可能にする。」 4 甲2発明1~3 上記3の実施例1の記載から、甲2には、以下の3発明(以下、「甲2発明1~3」という。)が記載されていると認められる。なお、混乱をさけるために、マーキングを付与する前の「成形品」を単に「成形品」といい、マーキングを付与した「成形品」を「マーキング済成形品」という。 (甲2発明1) 「チタニル硫酸溶液を加熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリー1000ml(TiO2 200g/l)を2lビーカーに取り、攪拌下、硫酸クロム水溶液180ml(Cr2O3 100g/l)を添加し、引き続きSb2O3粉末400gを添加し、しかる後アンモニア水でpH7に中和した後、濾過、洗浄し、得られたケーキを400℃で1時間電気炉内で焼成した後、このものを気流式粉砕機で粉砕して薄く緑色のかかった粉末Aを得て、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部、粉末A5重量部の配合にて樹脂組成物を作成し、この組成物を常法によりプレート状に成形した成形品に、マスクを用いXeCl(308nm)のエキシマレーザを、5mJ/ns・cm2のエネルギー密度でパルス幅20nsとして100パルス照射し、照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングが得られた、マーキング済成形品。(【0012】)」 (甲2発明2) 「チタニル硫酸溶液を加熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリー1000ml(TiO2 200g/l)を2lビーカーに取り、攪拌下、硫酸クロム水溶液180ml(Cr2O3 100g/l)を添加し、引き続きSb2O3粉末400gを添加し、しかる後アンモニア水でpH7に中和した後、濾過、洗浄し、得られたケーキを400℃で1時間電気炉内で焼成した後、このものを気流式粉砕機で粉砕して薄く緑色のかかった粉末Aを得て、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部、粉末A5重量部の配合にて樹脂組成物を作成し、この組成物を常法によりプレート状に成形した成形品とし、この成形品に、マスクを用いXeCl(308nm)のエキシマレーザを、5mJ/ns・cm2のエネルギー密度でパルス幅20nsとして100パルス照射し、照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングを得る、レーザマーキング方法。(【0012】)」 (甲2発明3) 「チタニル硫酸溶液を加熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリー1000ml(TiO2 200g/l)を2lビーカーに取り、攪拌下、硫酸クロム水溶液180ml(Cr2O3 100g/l)を添加し、引き続きSb2O3粉末400gを添加し、しかる後アンモニア水でpH7に中和した後、濾過、洗浄した。得られたケーキを400℃で1時間電気炉内で焼成した後、このものを気流式粉砕機で粉砕して薄く緑色のかかった粉末Aを得て、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部、粉末A5重量部の配合にて樹脂組成物を作成し、この組成物を常法によりプレート状に成形した成形品であって、マスクを用いXeCl(308nm)のエキシマレーザを、5mJ/ns・cm2のエネルギー密度でパルス幅20nsとして100パルス照射することにより、照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングが得られる、成形品。(【0012】)」 5 甲3に記載された事項 甲3には以下の記載がある。なお、行数はスペースを考慮せずに数えた。 (1) 「第1節 UVレーザによるHPMCフィルムへのマーキング 第1項 目的 TiO2はキセノンランプやUVレーザを照射すると白色から黒色に色調変化が起こることが報告されている。・・・略・・・そこで本節では、フィルムコーティング錠の一般的なコーティングポリマーであるHPMCを使用し、TiO2を含有するフィルムとTiO2を含まないフィルムを作成し、UVレーザを照射した際に起こる変化を検証した。」 (p4第6行~13行) (2) 「第2項 実験方法 ・・・略・・・ 2.フィルムの調整 実験に用いたフィルムの処方を表1に示す。TiO2、HPMC、PEG-6000、タルク、積製水をポリトロンホモジナイザー(kinemachika AG)を用い5000rpmで10分間攪拌し、懸濁液を得た。懸濁液の気泡を取り除き、・・・略・・・均一に広げ、棚式乾燥機で乾燥(50℃)し、フィルムを作成した。 ・・・略・・・ 4-2.分散型ラマン顕微鏡法 SENTERRA(ブルカー・オプティクス株式会社)を用い分析を行った。・・・略・・・測定条件を表3に示す。 [図:0001412269000001.jpg] 」 (p4第14行~p5最下行及びp6「表3」) (3) 「図4にTiO2を含有するフィルムのラマンスペクトルを示す。(A)はUVレーザ照射前のフィルムのスペクトル、(B)はUVレーザ照射後の黒色粒子のスペクトルである。 (A)で観測された特性ピーク(396,516,638cm-1)はフィルムに含まれるTiO2のアナターゼ型の結晶構造に由来するピークである。しかし、UVレーザの照射により発生した黒色粒子ではこれらのピークは観測されなかった。これは、黒色粒子中のTiO2がラマン分光分析に対して不活性になったことを示している。 [図:0001412269000002.jpg] 」 (p8第1行~7行及びp8「図4」) (4) 「第2節 TiO2(粉末)へのUVレーザの照射 第1項 目的 ・・・略・・・本節ではTiO2の粉末にUVレーザを照射した際に起こる変化を調査した。 第2項 実験方法 ・・・略・・・ 2.UVレーザの照射 Nd:YVO4レーザ・・・を用い、シャーレに広げたTiO2にUVレーザを照射した。レーザの照射条件を表4に示す。 [図:0001412269000003.jpg] 」 (p9第1行~13行及び表4) (5) 「第3節 UVレーザ照射後TiO2のラマン分析 第1項 目的 第2節のXRDの結果よりUVレーザの照射によりTiO2はアナターゼ型からルチル型への転移が起こっていることが確認された。UVレーザを照射されたTiO2は図7で示したように均一ではなく部分的に黒色粒子が形成されていることを確認した。XRDは結晶格子を調べるための一般的な方法であるが、この黒色粒子はとても小さく、XRDで黒色粒子のみの特性を調べることは難しい。よって、本節ではTiO2の微量分析のために分散型ラマン顕微鏡分析を行った。 第2項 実験方法 第2節でUVレーザを照射したTiO2粉末についてSENTERRA(ブルカー・オプティクス株式会社)を用い、分散型ラマン顕微鏡法にて分析を行い、TiO2(アナターゼ型)、TiO2(ルチル型)とのラマンスペクトルによる構造の違いを比較検証した。 第3項 結果と考察 図8にラマンスペクトルの結果を示す。アナターゼ型の特性ピーク(396,516,638cm-1)の強度はUVレーザ照射後のTiO2の白色の部位ではおよそ半分になった。そして黒色の部位では非常に低くなり、ルチル型の特性ピーク(234,446,609cm-1)も観測されず、ラマンスペクトルの活性を示さなくなった。 第2節の図6のXRDの結果より、UVレーザの照射により、アナターゼ型からルチル型への転移が起こったことは明らかであるが、ラマンスペクトルの活性を示さなくなった。ラマンスペクトルとXRDは結晶の異なる深さを検出する。紫外領域に吸収をもつ結晶の紫外ラマンスペクトルは結晶の表面構造を検出する。UVレーザを照射した酸化チタンは黒色であり、可視領域にも吸収があると考えられる。本実験でのラマンスペクトル(532nm)はTiO2結晶の表面構造を表し、XRDはTiO2結晶のバルク構造を表したと考えられる。TiO2粉末にUVレーザを照射し形成した黒色粒子の分析結果はHPMCフィルムにUVレーザを照射し形成した黒色粒子の結果によく一致している。よって、UVレーザの照射によるHPMCフィルムヘのマーキングはUVレーザの照射により生じた酸素欠陥のTiO2(Ti(III))が発色に関与していると考えられた。 [図:0001412269000004.jpg] 」 (p15第1行~最下行及びp16「図8」) (6) 「第2章 UVレーザマーキングにおける発色制御因子の研究 TiO2はフィルムコート錠のフィルム中に乳白剤として頻繁に使用される添加剤である14-16)が、光触媒36・43)として広く産業で使用されている。TiO2は適当な波長のUVライトに曝すと強い酸化作用を生じる44,45)。」 (p17第1行~4行) 6 甲1を主引用例とする新規性及び進歩性について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。 (ア) 甲1発明1の「ポリエチレン」は、本件特許発明1の「ポリエチレン」に相当する。 (イ) 甲1発明1の「二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)」は、ルチル型である(甲7の【0019】参照。)。そうすると、甲1発明1の「二酸化チタン」は、本件特許発明1の「酸化チタン」に相当し、甲1発明1は、本件特許発明1の「前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり」との構成を具備する。 (ウ) 甲1発明1の「YAGレーザー」と、本件特許発明1の「紫外線レーザー」は、「レーザー」である点で共通する。 (エ) 甲1発明1の「マーキング用組成物」からみて、甲1発明1の「フィルム」を構成する樹脂は、「ポリエチレン」である。 甲1発明1の「フィルム」は、本件特許発明1の「フィルム」及び「フィルムであるシート媒体」に相当する。 そうすると、甲1発明1は、本件特許発明1の「フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み」との構成を具備する。 (オ) 甲1発明1の「二酸化チタン」は「マーキング用組成物」に含まれ、当該「マーキング組成物」を「フィルムとし」ていることから、甲1発明1は、本件特許発明1の「酸化チタンは、シート媒体中に内添され」との構成を具備する。 (カ) 甲1発明1の「フィルム」は「厚さ0.1mm」であるから、甲1発明は、本件特許発明1の「フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であり」との構成を具備する。 (キ) 甲1発明1の「その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施して得た鮮明な黒色マーク」は、本件特許発明1の「レーザー印刷領域」に相当し、甲1発明1の「その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施して得た鮮明な黒色マークを有するマーキング済フィルム」と、本件発明1の「紫外線レーザー印刷物」は、「レーザー印刷物」である点で共通する。 (ク) 甲1発明1は、「ポリエチレン100部、雲母0.5部、白色の二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)1.0部からマーキング用組成物を作成し、厚さ0.1mmのフィルムとし、その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施して得た鮮明な黒色マークを有するマーキング済フィルム」であるから、甲1発明1の「フィルム」が、「印刷可能領域」を有していることが明らかである。 また、甲1発明1の「鮮明な黒色マーク」は、「白色の二酸化チタン(石原産業製、タイペークCR-60)」が、「レーザー光線」の「照射」により、「白色」から「黒色」に変色したものと理解できる。 そうすると、甲1発明1の、「二酸化チタン」から「マーキング用組成物を作成し」、「フィルムとし」て、「その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施して得た鮮明な黒色マークを有するマーキング済フィルム」と、本件特許発明1の「紫外線レーザー印刷物」は、「酸化チタンを含有する」「レーザー印刷可能領域を有するフィルムであるシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する」「レーザー印刷領域を有」する「レーザー印刷物」である点で共通する。 また、甲1発明1の「フィルム」は、還元剤を含有していないことは明らかであるから、甲1発明1と、本件特許発明1は、「レーザー印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く」点で共通する。 イ 一致点及び相違点 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と,甲1発明1は、 「 酸化チタンを含有するレーザー印刷可能領域を有するフィルムであるシート媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有するレーザー印刷領域を有し(ただし、レーザー印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、 酸化チタンは、シート媒体中に内添され、 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであり、 フィルムの厚みが20μm以上250μmであり、フィルムを構成する樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、 レーザー印刷物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1-1-1) 本件特許発明1においては、「レーザー印刷可能領域」、「レーザー印刷領域」及び「レーザー印刷物」における「レーザー」が「紫外線レーザー」であり、本件特許発明1においては、「紫外線レーザー印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である」のに対して、甲1発明1においては、「レーザー」が「YAGレーザー」であり、ラマン強度の比についての特定もない点。 (相違点1-1-2) 「シート媒体中のレーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量」が、本件特許発明1においては、「2.0質量%以上7.5質量%以下であ」るのに対し、甲1発明1においては、約0.99質量%である点(フィルム中の二酸化チタンの含有量(%)は、{1.0(二酸化チタン)/(100(ポリエチレン)+0.5(雲母)+1.0(二酸化チタン))}×100より求めることができる。)。 ウ 判断 事案に鑑み相違点1-1-1及び相違点1-1-2をまとめて検討する。 (ア) 甲1でいう本発明は、従来、発色剤化合物自体が着色しているため、組成物の色調が制限されるという問題があった(甲1の【0003】~【0004】)ところ、有効成分(二酸化チタン)自体が白色で、レーザー光線により鮮明な黒褐色~黒色に発色し、かつ機械による読み取り精度の高いレーザーマーキング用樹脂組成物を提供することを課題とするものである(同【0005】、【0006】等)。 また、甲1には、二酸化チタンを、レーザーマーキング樹脂組成物全量中0.1~20質量%程度とすることがより好ましいこと(同【0007】)、実施例1として、二酸化チタンを約4.8重量%含有するポリエチレンからなるレーザーマーキング用樹脂組成物を射出成形機で板状に成形し、その表面にYAGレーザーを用いてマーキングを施し、鮮明な黒色マーク及び良好な機械読み取り性を得たこと(同【0018】)が記載されている。 そうすると、甲1発明1を改良しようとする当業者は、ポリエチレンフィルムの色調に影響を与えない範囲で、レーザー光線により鮮明な黒褐色~黒色に発色し、かつ機械による読み取り精度が高いマーキングを得られるよう、フィルム中の白色の二酸化チタン含有量を、0.1~20質量%の範囲で調整すること、その際に、例えば、実施例1の約4.8質量%を参考にして約0.99質量%から増加するよう動機付けられるといえるから、甲1発明1の二酸化チタン含有量が2.0~7.5質量%との構成に当業者が容易に想到し得たといえる。 (イ) しかしながら、本件特許明細書の【0010】(印刷可能領域における酸化チタンの好ましい含有量と十分な印字濃度を得る観点及びフィルムの強度低下を抑制する観点との関係について)、【0029】(フィルム媒体の好ましい厚み、紫外線レーザー照射によるフィルム樹脂の劣化について)、【0143】~【0171】の実施例3-1~3-25及び比較例3-1~3-6(特に、【0169】【表2-1】及び【0170】【表2-2】の「フィルム媒体」の「素材」、「厚み」及び「酸化チタン含有量」、「ラマンスペクトル」の「印刷領域/非被印刷領域」、「評価」の「印字鮮明さ」(【0158】)、「溶剤耐性」(【0159】)、「強度ダウンの評価」(【0161】)等参照)の記載によれば、 本件特許発明1の紫外線レーザー印刷物は、 ・シート媒体中の紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%~7.5質量%以下、 ・フィルムの厚みが20μm以上250μm以下、及び、 ・フィルムを構成する樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む構成により、 印字の鮮明さ(印字鮮明さがAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率(=100-(印字後の引張強度÷印字前の引張強度×100)が5%以下となる(【0161】))とをバランス良く両立できる、との効果を奏すると理解できるところ、このような効果は、最先の出願時に本願特許発明1の当該構成が奏するものとして、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと判断される。 してみると、本件特許発明1は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ) 異議申立人が令和6年2月2日に提出した意見書における主張について a 異議申立人は、 甲2(【0009】)には、酸化チタン含有量が少ないと、所望のコントラストのマーキングができず、印字鮮明さが損なわれ、酸化チタン含有量が多いと、レーザーマーキングされた樹脂組成物の引張強度等の強度が損なわれ、印刷物の強度が低下することが教示されているから、本件特許発明1の効果は、甲2から予測可能であり、格別顕著な効果とは認められない、 甲1の実施例1の酸化チタン含有量に基づき、甲1発明1において、酸化チタン含有量を2.0重量%以上7.5重量%以下とすることには動機付けがある、 甲1発明1において、甲1の【0007】及び甲2の【0009】の記載に基づき、マーキングのコントラストが所望よりも小さければ酸化チタンの含有量を増加させ、レーザーマーキングされた樹脂組成物の引張強度が所望よりも低くければ酸化チタンの含有量を低減させる(例えば、2.0重量%以上7.5重量%以下とする)ことは当然に行うことである、 甲3(上記5(6)参照)、甲10(特表2011-530631号公報)(【0003】参照)の記載からも、紫外線レーザー印刷後に印刷物の強度低下が発生すること、該強度低下に酸化チタンの含有量が関係することは、周知の事実であるといえる、と主張する。 しかしながら、甲2の【0009】でいうレーザーマーキングされた樹脂組成物(成形物)の引張強度の低下は、引張強度そのものの低下であって、引張強度のダウン率の抑制とは異なり、上記(イ)で述べた本件特許発明1の構成により奏される効果は、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと判断される。甲3、甲10にも、紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率に着目しこれを5%以下に抑制することは記載も示唆もされていない。 b 異議申立人は、強度ダウンの評価結果が、実施例3-2よりも、酸化チタン含有量が0.5質量%の実施例3-10及び3-16の方が優れるから、酸化チタンの含有量を「2.0質量%以上」とすることの有意な効果は見出せない、 厚み20.0μmの実施例3-13、3-18では強度ダウンの評価結果が「1」であるのに対し、酸化チタン含有量7.5質量%で同じである、厚み200μmの実施例3-14、3-19では強度ダウンの評価結果が「0」であり、フィルムの厚みが大きいほどに強度ダウンの評価結果が優れることが示されているから、フィルムの厚みが200μm以上(例えば250μm以下)と厚ければ、酸化チタンの含有量が7.5質量%超であっても、ある程度の含有量までであれば、強度ダウンの評価結果が良好とされる実施例3-13、3-18と同等の結果(強度ダウン「1」判定)のフィルムが得られることは容易に予測でき、本件実施例の具体的な開示から、酸化チタンの含有量を「7.5質最%以下」とすることの有意な効果は見出せない、 したがって本件実施例の具体的な開示から、「印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%以上7.5質量%以下」とすることの有意な効果は見出せない、とも主張する。 しかしながら、本件特許発明1の各実施例の記載から、200μm~250μmの厚みのフィルムからなる印刷物において、酸化チタンの含有量が2.0質量以上7.5質量%以下であれば、鮮明な印字が得られ、かつフィルムの強度低下を抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率5%以下)できると理解できるから、上記(イ)で述べた、本件特許発明1の構成により、印字の鮮明さ(印字鮮明さAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率を5%以下)とをバランス良く両立できるとの優れた効果が奏されることが当業者であれば認識できるといえる。 c よって、同意見書における異議申立人の上記主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、本件特許発明1は、甲1発明1及び甲2~甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (2) 本件特許発明4~6について 本件特許発明4~6は、本件特許発明1の構成を全て具備する発明であるから、上記(1)ウで述べた理由と同様な理由により、甲1発明1及び甲2~甲5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3) 本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と、甲1発明2とを対比すると、両者は、上記(1)イで抽出した相違点1-1-2に加えて、以下の点でも相違する。 (相違点1-7-1) 本件特許発明7においては、「レーザー」が、「紫外線レーザー」であり、「前記紫外線レーザーの波長は、350nm以上360nm以下であ」るのに対して、甲1発明2においては、「YAGレーザー」であり、波長も「350nm以上360nm以下」ではない点。 イ 判断 事案に鑑み相違点1-1-2及び相違点1-7-1についてまとめて検討すると、上記(1)ウで述べた理由と同様の理由により、 本件特許発明7の印刷物の製造方法は、 ・フィルムであるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、 ・シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%~7.5質量%以下、 ・フィルムの厚みが20μm以上250μm以下、及び、 ・フィルムを構成する樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む構成により、 印字の鮮明さ(印字鮮明さがAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率が5%以下)とをバランス良く両立できる印刷物を製造することができる、との効果を奏すると理解できるところ、このような効果は、最先の出願時に本願特許発明7の当該構成が奏するものとして、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと判断される。 してみると、本件特許発明7は、甲1発明2並びに甲2、甲3及び甲8に記載された事項に基づいて、業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明7は、甲1発明2及び甲2~甲3、甲8に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (4) 本件特許発明8について 本件特許発明8は、本件特許発明7の構成を全て具備する発明であるから、上記(3)で述べた理由と同様な理由により、甲1発明2及び甲2~甲5、甲8に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (5) 本件特許発明9について ア 対比 本件特許発明9と、甲1発明3とを対比すると、両者は、上記(1)イで抽出した相違点1-1-2に加えて、以下の点でも相違する。 (相違点1-9-1) 本件特許発明9においては、「レーザーにより印刷可能な印刷可能領域」及び「レーザー印刷用印刷媒体」が、それぞれ「紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域」及び「紫外線レーザー印刷用印刷媒体」であるのに対して、甲1発明3においては、「YAGレーザー」「により印刷可能な印刷可能領域」及び「YAGレーザー」「印刷用印刷媒体」である点。 イ 判断 (ア)新規性について 相違点1-1-2は、実質的な相違点であるから、本件特許発明9は、甲1に記載された発明であるということはできない。 (イ)進歩性について 相違点1-1-2及び相違点1-9-1をまとめて検討すると、上記(1)ウで述べた理由と同様な理由により、 本件特許発明9の紫外線レーザー印刷用印刷媒体は、 ・紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有するフィルムであるシート媒体からなる、 ・シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%~7.5質量%以下、 ・フィルムの厚みが20μm以上250μm以下、及び、 ・フィルムを構成する樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む構成により、 印字の鮮明さ(印字鮮明さがAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率が5%以下)とをバランス良く両立できる、との効果を奏すると理解できるところ、このような効果は、最先の出願時に本願特許発明9の当該構成が奏するものとして、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと判断される。 してみると、本件特許発明9は、甲1発明3並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明9は、甲1に記載された発明であるとも、甲1発明3及び甲2~甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうこともできない。 (6) 本件特許発明12~14について 本件特許発明12~14は、本件特許発明9の構成を全て具備する発明であるから、上記(5)イ(イ)で述べた理由と同様な理由により、甲1発明3及び甲2~甲5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 7 甲2を主引用例とする進歩性について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明1とを対比する。 (ア) 甲2発明1の「粉末A」の製造工程及び「樹脂組成物」の組成からみて、甲2発明1の「組成物を」「プレート状に成形した成形品」は、「ポリエチレンテレフタレート樹脂」及び「TiO2-Cr2O3-Sb2O3」からなる「粉末A」とを含む。 甲2発明1の「ポリエチレンテレフタレート樹脂」は、本件特許発明1の「ポリエチレンテレフタレート」に相当する。 (イ) 甲2発明1の「粉末A」に含まれる「TiO2」は、本件特許発明1の「酸化チタン」に相当する。 (ウ) 甲2発明1の「XeCl(308nm)のエキシマレーザ」は、本件特許発明1の「紫外線レーザー」に相当する。 (エ) 甲2発明1の「プレート状」の「成形品」と、本件特許発明1の「フィルムであるシート媒体」は、紫外線レーザによりマーキングを行う対象物である「媒体」である点で共通する。 (オ) 甲2発明1の「TiO2-Cr2O3-Sb2O3」からなる「粉末A」は、「プレート状に成形した成形品」に含まれるから、甲2発明1と、本件特許発明1は、「酸化チタンは」、「媒体中に内添され」ている点で共通する。 (カ) 甲2発明1の「マーキング済成形品」は、「XeCl(308nm)のエキシマレーザを」「照射し、照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングが得られた」ものである。 甲2発明1の「エキシマレーザ」「照射部」の「赤味黄色」の鮮明なマーキング」は、本件特許発明1の「紫外線レーザ印刷領域」に相当する。 また、甲2発明1の「マーキング済成形品」は、本件特許発明9の「紫外線レーザー印刷物」に相当する。 (キ) 甲2発明1においては、「エキシマレーザ」の「照射により」、「照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングが得られる」ことから、甲2発明1の「プレート状」の「成形品」は、紫外線レーザ印刷可能領域を有していることは明らかである。 また、甲2の【0002】~【0004】の記載によれば、酸化チタンは、「エキシマレーザ」の「照射」により、変色していることは明らかである。さらに、甲2発明1が、還元剤を含まないことは明らかである。 そうすると、甲2発明1の、「粉末A」を含有する「樹脂組成物」を「プレート状に成形した成形品」に「エキシマレーザを」「照射し、照射部が赤味黄色で、未照射部が淡緑色の鮮明なマーキングが得られた」「マーキング済成形品」と、本件特許発明1の「紫外線レーザー印刷物」は、「酸化チタンを含有する紫外線レーザー印刷可能領域を有する」「媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する紫外線レーザー印刷領域を有し(ただし、紫外線レーザー印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)」ている点で共通する。 また、上記(ア)及び(エ)より、本件特許発明1と、甲2発明1は、「媒体」を構成する樹脂が、「ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含み」との点で共通する。 イ 一致点及び相違点 本件特許発明1と、甲2発明1は、 「酸化チタンを含有する紫外線レーザー印刷可能領域を有する媒体上の少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する紫外線レーザー印刷領域を有し(ただし、紫外線レーザー印刷可能領域が還元剤を含有する態様を除く)、 酸化チタンは、媒体中に内添され、 ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む、 紫外線レーザー印刷物。」である点で一致し、以下の点で相違、又は、一応相違する。 (相違点2-1-1) 本件特許発明1においては、「媒体」が、「厚みが20μm以上250μm以下」の「フィルムであるシート媒体」であるのに対して、甲2発明1においては、「プレート状」の「媒体」である点。 (相違点2-1-2) 本件特許発明1においては、「酸化チタン」が「ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであ」るのに対して、甲2発明1においては、この点が明らかでない点。 (相違点2-1-3) 「媒体」中の「紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量」が、本件特許発明1においては、「2.0質量%以上7.5質量%以下」であるのに対して、甲2発明1においては、約1.5質量%である点(甲2発明1の「粉末A」中のTiO2の含有量は、約32質量%(=(200(g/l)×1(l))/(200(g/l)×1(l)+100(g/l)×180(ml)+400(g))×100)であるから、甲2発明1の「樹脂組成物」中のTiO2の含有量は、約1.5質量%(=(5×32(重量%)/(100+5)))×100)と求めることができる。)。 (相違点2-1-4) 本件特許発明1においては、「紫外線レーザー印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下である」であるのに対して、甲2発明1においては、この点が明らかでない点。 ウ 判断 事案に鑑み、相違点2-1-1及び相違点2-1-3をまとめて検討する。 (ア) 甲2には、(a)熱可塑性樹脂と、(b)レーザー光照射により色調変化し得る無機系発色性物質とを少なくとも含有し、かつ(c)前記(a)および(b)が、その合量の重量基準として、(a)成分が40~99%および(b)成分が1~60%であるレーザーマーキング用組成物において、 (b)成分が、(d)NiO,Cr2O3,MnO,FeO,Fe2O3,CoO,CuO,Li2O,MgO,ZnO及びAl2O3から選ばれた少なくとも1種の成分と(e)Sb2O5,Sb2O3,Nb2O5,WO3,V2O5,Ta2O5及びMoO3から選ばれた少なくとも1種の成分とを含有して構成される二酸化チタン系発色性物質であること(【0005】、【0009】)、 熱可塑性の成形樹脂組成物系の場合、(b)成分の割合は、前記範囲の比較的低含有量領域で使用されること、 (b)成分の割合が前記範囲より低いと、所望のコントラストのマーキングが得られず、(b)成分の割合が前記範囲より高いと、レーザーマーキングされた樹脂組成物の保護特性(引張強度等)が損なわれ易くなり好ましくないこと(【0009】)、 (b)成分の無機系発色性物質の色調変化を効率的に行い、最適なマーキングを行うには、レーザー光の波長として300~400nmが好ましいこと(【0011】)、が記載されている。 そうすると、甲2には、二酸化チタン系発色性物質である(b)成分の含有量(1~60重量%)を低含有量領域とすることが記載されているから、所望のコントラストのマーキングとレーザーマーキングされた樹脂組成物の適度な引張強度等の保護特性が得られる範囲で甲2発明1の改良を試みる当業者が甲2発明1の二酸化チタンの含有量を2.0~7.5質量%とすることは、当業者が容易に想到し得たといえる。 また、甲1の実施例2の記載を参考にして、甲2発明1の成形品を、厚み100μmのフィルムとすることは、当業者が容易に想到し得たといえる。 (イ) しかしながら、上記6(1)ウ(イ)で述べたとおり、本件特許発明1の紫外線レーザー印刷物は、 ・シート媒体中の紫外線レーザー印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%~7.5質量%以下、 ・フィルムの厚みが20μm以上250μm以下、及び、 ・フィルムを構成する樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む構成により、 印字の鮮明さ(印字鮮明さがAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率(=100-(印字後の引張強度÷印字前の引張強度×100)が5%以下となる)とをバランス良く両立できるとの、最先の出願時に本願特許発明1の当該構成が奏するものとして、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏すると、判断される。 してみると、本件特許発明1は、甲2発明1並びに甲1及び甲3に記載された事項に基づいて、業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ) 異議申立人が令和6年2月2日に提出した意見書における主張について 異議申立人は、同意見書において、上記6(1)ウ(ウ)a及びbで述べた主張と同じ主張を繰り返すとともに、 甲2発明1~3において酸化チタンの含有量を【0009】に開示の範囲内で、マーキングのコントラストが所望よりも小さければ酸化チタンの含有量を増加させ、レーザーマーキングされた樹脂組成物の引張強度が所望よりも低くければ酸化チタンの含有量を低減させることは当然に行うことであり、甲2発明1~3において、印刷領域における酸化チタンの含有量を2.0質最%以上7.5質量%以下とすることは、当業者が適宜行う設計事項である、と主張する。 しかしながら、上記(イ)及び上記6(1)ウ(ウ)で述べたとおりであるから、意見書における異議申立人の上記主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明1及び甲1、甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (2) 本件特許発明4~6について 本件特許発明4~6は、本件特許発明1の構成を全て具備する発明であるから、上記(1)ウで述べた理由と同様な理由により、甲2発明1及び甲1、甲3~甲5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3) 本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と、甲2発明2とを対比すると、両者は、少なくとも上記(1)イで抽出した相違点2-1-1及び相違点2-1-3と同じ点で相違する。 イ 判断 相違点2-1-1及び相違点2-1-3をまとめて検討すると、上記(1)ウで述べた理由と同様な理由により、 本件特許発明7の印刷物の製造方法は、 ・フィルムであるシート媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、 ・シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%~7.5質量%以下、 ・フィルムの厚みが20μm以上250μm以下、及び、 ・フィルムを構成する樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む構成により、 印字の鮮明さ(印字鮮明さがAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率が5%以下)とをバランス良く両立できる印刷物を製造することができる、との効果を奏すると理解できるところ、このような効果は、最先の出願時に本願特許発明7の当該構成が奏するものとして、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと判断される。 してみると、本件特許発明7は、甲2発明2並びに甲1、甲3及び甲8に記載された事項に基づいて、業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明7は、甲2発明2及び甲1、甲3、甲8に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (4) 本件特許発明8について 本件特許発明8は、本件特許発明7の構成を全て具備する発明であるから、上記(3)イで述べた理由と同様な理由により、甲2発明2及び甲1、甲3~甲5、甲8に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (5) 本件特許発明9について ア 対比 本件特許発明9と、甲2発明3とを対比すると、両者は、少なくとも上記(1)イで抽出した相違点2-1-1及び相違点2-1-3と同じ点で相違する。 イ 判断 相違点2-1-1及び相違点2-1-3をまとめて検討すると、上記(1)ウで述べた理由と同様な理由により、 本件特許発明9の紫外線レーザー印刷用印刷媒体は、 ・紫外線レーザーにより印刷可能な印刷可能領域を有するフィルムであるシート媒体からなる、 ・シート媒体中の印刷可能領域における酸化チタンの含有量が2.0質量%~7.5質量%以下、 ・フィルムの厚みが20μm以上250μm以下、及び、 ・フィルムを構成する樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、およびポリエチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含む構成により、 印字の鮮明さ(印字鮮明さがAあるいはB)と、フィルムの強度低下の抑制(紫外線レーザー照射による引張強度のダウン率が5%以下)とをバランス良く両立できる、との効果を奏すると理解できるところ、このような効果は、最先の出願時に本願特許発明9の当該構成が奏するものとして、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものと判断される。 してみると、本件特許発明9は、甲2発明3並びに甲1及び甲3に記載された事項に基づいて、業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明9は、甲2発明3及び甲1、甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (5) 本件特許発明12~14について 本件特許発明12~14は、本件特許発明9の構成を全て具備する発明であるから、上記(6)で述べた理由と同様な理由により、甲2発明3及び甲1、甲3~甲5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 令和5年9月15日付けの取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった異議申立書理由について 1 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について (1) 異議申立人の主張 異議申立人は、甲3の図8等記載に基づき、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域おける酸化チタンに由来するラマン強度との比は0.5以下となることが予測できることを根拠として、該比が実施例3-6では0.64、実施例3-8では0.67というように0.5よりも大きな値となったのは、本件特許発明においてはラマン強度の測定が、「印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷部を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離空けて測定した」(【0156】)と記載されるよう、目視での確認であるため測定箇所が実際の印刷領域及び/又は非印刷領域とズレており、正確に測定できていない可能性が考えられる、 本件特許発明において印刷領域及び/又は非印刷領域のラマン強度が正確に測定できていないことは、実施例において、印刷領域と非印刷領域におけるラマン強度の比と、印字鮮明さの結果との間に相関関係が成立していないことからも窺える、 本件特許発明には、印刷領域及び非印刷領域におけるラマン強度を正確に測定する方法が開示されていないといえるので、本件特許発明において規定する「印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比」は一義的に決定することができない、あるいは、当業者がその技術的内容を理解することができないから、実施できない、と主張する。 (2) 実施可能要件についての判断 甲3の図8のラマンスペクトルは、シャーレに広げたTiO2粉末にUVレーザを、波長355nm、出力3.14W、パルス幅25ns、パルス繰返レート20kHzの条件で照射し(上記5(4)参照)、UVレーザを照射したTiO2粉末について、SENTERRA(ブルカー・オプティクス株式会社)を用い、分散型ラマン顕微鏡法にて分析を行って得られたものである(上記5(5)参照)。 一方、本件特許発明においては、TiO2を内添したシート状のサンプルに、波長355nm、繰返周波数50kHz、スポット径104μm、スキャンスピード4000mm/sec、焦点距離250mm、ラインピッチ150μmの条件で照射し、「装置:レニショウ製 inVia Raman microscope QUONTOR」を使用して、励起レーザー:532nm、レーザーパワー:50mW(出力100%時)、レーザー出力:5%、測定モード:共焦点モード、照射時間:2.0sec、積算回数:10回、レーザースポット径:2.5μm、対物レンズ:20倍の条件で、「フォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)し」、「印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定し」、「非印刷部を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した」ものである。 ここで、甲3の記載からは、図8のラマンスペクトルを測定した際の分散型ラマン顕微鏡(SENTERRA(ブルカー・オプティクス株式会社))を用いた測定条件の詳細が不明である。また、ラマンスペクトルの測定対象、紫外線レーザの照射条件は、甲3記載のものと、本件特許発明のものとでは異なる。そうすると、甲3は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来する強度との比はいかに少なく見積もって0.5以下となると予測され、そうでない本件特許発明は、目視での確認であるため測定箇所が実際の印刷領域及び/又は非印刷領域とズレており、ラマン強度が正確に測定できていない可能性がある、と言えるに足りる証拠ではない。 また、マンセル表示による印字鮮明さの評価は、目視による評価であるから、客観的な評価といえないところ、発明の詳細な説明のラマン強度比と視認性の高さ(印字の鮮明さ)との関係についての一般記載(【0009】、【0030】等)や、実施例3-1~3-25の記載から、当業者は、ラマン強度の比が高ければ、印字の鮮明さが高く(視認性が高く)、ラマン強度の比が低ければ、印字の鮮明さが低い(視認性が悪い)との関係(ラマン強度の比と印字の鮮明さの相関)があることが理解できる。 そして、発明の詳細な説明におけるラマンスペクトルの強度の比に係る一般記載(【0009】、【0030】等)、ラマンスペクトルの強度の比の測定条件(【0155】~【0156】)及び実施例3-1~3-25の記載に基づけば、当業者であれば、ラマンスペクトル及びそのラマン強度の比の技術内容を理解することができ、また、ラマン強度の比を求めることができ、所定のラマン強度の比を有する印刷物を製造、使用することができる。 してみると、発明の詳細な説明には、本件特許発明について、当業者が、本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないということはできない。 2 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について (1) 異議申立人の主張 異議申立人は、厚みが15μmの比較例3-4は、本件特許発明1~3、7~11の構成要件を全て満たしているにも関わらず、印字鮮明さがD判定であるから、本件特許発明1~3、7~11は、その効果を奏することのできない発明を包含しており、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているから、サポート要件を満たしておらず、また、そうした発明は当業者が実施できないため、実施可能要件も満たしていないと主張する。 (2) サポート要件及び実施可能要件についての判断 本件訂正請求による訂正により、本件特許発明1は、「フィルムの厚みが20μm以上250μm以下であ」るとの発明特定事項を具備するものとなった結果、フィルムの厚みが15μmの比較例3-4は、本件特許発明1、4~9、12~14に包含されないものとなった。そうすると、本件特許発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているから、サポート要件を満たしていない、実施可能要件も満たしていないということはできない。 第7 令和5年6月7日提出の意見書における甲9に基づく主張について 異議申立人は、令和5年6月7日提出の意見書において、甲9(特表2006-508842号公報)を提出し、甲9を主引用例として、【0024】、【0048】、【0054】~【0056】、【0059】~【0065】、【0067】等の記載に基づき、本件特許発明1、4~9、12~14は、甲9及び甲3~甲5に基づいて容易に発明をすることができたものであると主張する。 しかしながら、甲9に基づく進歩性欠如の主張は、訂正の請求の内容に付随して生じる理由に係るものではなく、実質的に新たな理由を主張するものといえる。 また、甲9の【0060】等に記載のものは、レーザー書込み可能な組成物LP1~LP6を射出成形して厚み2mmに成形したプレートにパターンを書き込んだものであるから、甲9に基づく進歩性欠如の主張が、適切な取消理由を構成することが一見して明らかともいえない。 したがって、同意見書における甲9に基づく主張を採用しない。 第8 むすび 本件特許発明1、4~9、12~14は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 他に本件特許発明1、4~9、12~14を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項2、3、10及び11に係る特許は、訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、3、10及び11に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701107

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